文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営基本方針
当社は、本年6月20日をもちまして創業から50年を迎えました。この節目にあたり、これまで託されてきた想いを次世代へとつなぎながら、この先も更なる企業成長を続けていくため、グループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定いたしました。ステークホルダーの皆さまからの信頼と期待に応えながら、次の50年、100年を共に未来を切り開くパートナーであり続けるために、これからも変革と挑戦を重ね成長してまいります。
また、事業活動における具体的な指針とするため、当社では以下の5項目を経営基本方針として定めています。
① 顧客第一主義に徹する(CS重視の経営)
② 重点主義に徹する(経営資源の重点的な投入)
③ 顧客の要望に合わせ、当社を創造(造り変え)する(市場環境への適応)
④ 現金取引主義を貫徹する(キャッシュ・フロー重視)
⑤ 高い生産性を背景とした高賃金主義に徹する(成果主義の人事処遇)
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、「売上高営業利益率7%以上」「ROE(自己資本当期純利益率)20%」を確保することを重要な経営指標目標として定めています。当期においては、売上高営業利益率6.1%、ROE18.4%となっています。
(3) 経営環境と対処すべき課題
当連結会計年度における国内経済は、個人消費や設備投資の持ち直し、雇用情勢の改善等により、緩やかな景気回復基調が継続しました。しかしながら、世界的な金融引締め政策および日本銀行の金融緩和政策変更、資材・エネルギー価格の高騰、建設業や運送業における2024年問題等、依然として先行き不透明な状況が続いております。新設住宅着工戸数は、2023年4月~2024年3月累計で800,176戸、前年同期比7.0%の減少となりました。一方、当社グループが主力とする賃貸住宅分野においては、建築資材の高騰等の影響もあり、2023年4月~2024年3月累計では前年同期比2.0%減少の340,395戸となりました。
このような環境の中、賃貸住宅分野においては、新型コロナウイルスの第5類移行に伴い様々な制限が緩和されたことにより、展示施設や現場見学会などの販促活動の活性化を図ったこと、キャンセル額が低水準で推移したこと等により、受注は新型コロナウイルス発生前の水準まで回復し、あわせて完成工事高は当初の想定を上回る売上高を計上することができました。
国内の住宅市場では、アフターコロナにおける生活者の住まいやライフスタイルの多様化、気候変動に伴う自然災害の激甚化、省エネや創エネ性能の高い住宅への関心の高まり等を背景に、快適性と環境性を両立した住まいが求められています。こういったニーズを満たす商品やサービスの開発・展開によって企業価値の向上を図るとともにサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
創業50年を迎えた当社は、100年企業へと向かう次の50年の新たな一歩として、当社グループが2030年にありたい姿“DAITO Group VISION 2030” を描きました。
VISION 2030では、パーパスに基づく考動を基盤に社員の力を最大化し、コア事業の領域とコア周辺事業の生活・暮らしサービスを拡大します。そして、コア事業の領域とコア周辺事業を有機的につなぐことで、まちの活性化・地方創生の実現を目指します。
また、VISION 2030実現へむけ2024年度を始期とする新たな3ヵ年計画を策定しました。本中期経営計画では、2030年へ向け、「グループ一丸新たな挑戦」をスローガンに、企業価値の最大化へ向けた経営を推進してまいります。
セグメント別の中長期的な経営戦略は以下のとおりです。
① 建設事業
建設事業では、地域密着型イベントの積極展開により当社オーナー様や自治体、地元企業との連携を深めるとともに、BtoBの請負体制の強化による受注ルートの拡大や営業要員の拡充により受注拡大を図ってまいります。また、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの環境配慮型賃貸住宅の供給にも引き続き積極的に取り組み、社会的課題の解決に寄与していきます。
② 不動産事業
不動産事業では、蓄積されたデータに基づくマーケティング力と高い入居斡旋力を背景に、高水準の入居率を維持しつつ、入居者様のライフスタイルに合わせた良質な住空間と暮らしのサービスを引き続き提供していきます。また、ITを活用したサービスや、「いい部屋ネット」のフランチャイズ展開、他者物件の管理契約獲得や不動産売買仲介事業により、更なる収益の拡大を図っていきます。
③ その他の事業(金融事業+その他事業)
その他の事業では、既存の介護・保育事業やエネルギー事業に加え、投資マンション事業やサービスオフィス事業など、グループ間のシナジーを追求しつつ、当社グループの事業領域拡大に向けた新規事業の育成・強化等にも引き続き取り組んでまいります。
また、不動産開発事業の拡大に伴い、2025年3月期より「不動産開発事業」を独立した報告セグメント区分にすることとしました。ビルドセット事業・リノベ再販事業への投資を拡大し、また北米を起点に海外での不動産管理・販売にも着手し、「世界一の大家さん」を目指してグローバル展開を進めてまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ全般に関する取り組み
[大東建託グループのサステナビリティ経営について]
当社グループは、創業50年を機に、これからも社会の持続性に向けて価値を提供し続けるために、パーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定しました。このパーパスからバックキャストで定めた2030年のありたい姿「DAITO Group VISION 2030」の実現に向け、取り組むべき重要課題である「7つのマテリアリティ」の解決を視野にいれて、中期経営計画2024-2026を打ち出しました。
当社グループのサステナビリティ経営とは、「DAITO Group VISION 2030」の実現と「パーパス」の体現そのものであり、事業活動を通じてマテリアリティを解決し、人々がくらしやすいまちづくりと、まちの活性化の実現を目指すことこそ、当社グループのサステナビリティの考え方となります。
① サステナビリティ基本方針
当社グループは、サステナビリティ基本方針を「大東建託グループは、豊かな暮らしを支える企業として、社会の変化を成長の機会と捉え、ステークホルダーのみなさまと共に、事業活動の発展と持続可能な社会の実現を目指します。」と定めています。この方針は、当社グループの価値創造ストーリーでもあり、事業を通じた「DAITO group VISION 2030」の実現とパーパスの体現により、持続可能な社会の実現を目指します。
⇒サステナビリティに関する取り組みは、下記WEBサイトをご覧ください。
② サステナビリティ推進体制(ガバナンス)
当社グループのサステナビリティ経営の推進体制は、サステナビリティ経営の執行を担う「サステナビリティ推進会議」、経営からの監督を担う「取締役会」、そして、これらの経営と執行の橋渡しを行う「サステナビリティ推進課」の3組織により構成されています。「サステナビリティ推進会議」は代表取締役社長執行役員CEOを議長、「7つのマテリアリティ」の推進責任者である取締役執行役員をメンバーとしており、サステナビリティに関する施策の協議・決議を行っています。同会議での決議事項は、「取締役会」へ定期的に報告を行っています。
③ サステナビリティ推進に向けた取り組み(戦略)
当社グループのサステナビリティ経営は「ビジョン2030」とその先の「パーパス」の実現そのものであり、事業活動を通じて、7つのマテリアリティを解決することで持続可能な社会の実現を目指すことです。
「7つのマテリアリティ」は、企業活動によって提供する社会的価値を高めるための「経営マテリアリティ」と、当社グループの事業のさらなる拡大を促すための「事業マテリアリティ」から成っており、事業活動を通したこれらの課題解決に取り組むことで、サステナビリティ経営を通した社会課題の解決と企業価値の向上の両立を目指しています。
「7つのマテリアリティ」は、当社グループの執行役員および経営企画・事業戦略部門の責任者を中心とした次世代を担うメンバーによるプロジェクトチームによって、2021年に特定を進めました。当社グループを取り巻く、社内外の現状および社会変化等を踏まえ「あるべき姿」を抽出し、現状と理想のギャップ分析を実施し、マテリアリティ要素を洗い出しました。その上で、キャッシュ・フローおよび環境・社会へのインパクト評価を実施し、最終的に「7つのマテリアリティ」として特定しています。
④ サステナビリティに関するリスク管理体制(リスク管理)
サステナビリティに関するリスクは、取締役会の諮問機関であるリスクマネジメント委員会で評価しています。リスクマネジメント委員会は、当社グループの重大な財務上または戦略的な影響を及ぼすリスクと機会の特定・評価を行っています。リスクマネジメント委員会では、当社グループ事業に影響を与える「あらゆるリスク項目」を各事業部門にて洗い出し、リスクマネジメント委員会にて集約し、短・中・長期における発生可能性と当社事業への影響度等を踏まえスコアリングを行い、「重要リスク項目」の評価・特定を行っています。その項目を踏まえ、取締役会にて、特に重大な財務上または戦略的な影響を及ぼす「重点管理リスク項目」のモニタリングを実施しています。
⑤ マテリアリティKPIと長期目標(指標と目標)
「7つのマテリアリティ」に対し、KPIおよび中長期目標を設定し進捗を管理しています。2024年度に策定した2024年度から2026年度に向けた中期経営計画の非財務KPI・目標は、マテリアリティKPIより抽出しており、事業活動を通じたサステナビリティ経営に取り組んでいきます。

(2) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応
① 基本方針
当社グループは、気候変動を中心とした環境への取り組みを、企業価値を高めるための取り組みとして捉え、2020年に環境経営戦略「DAITO 環境ビジョン2050」を策定し、「建築」「暮らし」「ごみ」「企業」「自然」「人」の6つの領域における環境配慮の取り組みの方向性を示しました。さらに、当社グループが特に重点的に取り組むべき課題として2021年に特定しました「7つのマテリアリティ(重要課題)」には、「事業活動による気候危機への対応」を掲げました。同時に、気候変動課題の重要なKPIである「温室効果ガス排出量削減率」については、2024年度~2026年度の中期経営計画の非財務指標としても設定しており、事業活動を通じた気候変動への対応に取り組んでいきます。
また、当社は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、気候変動が事業に与える「リスク」と「機会」の把握に努めるとともに、統合報告書やサステナビリティレポートなどにおいて透明性の高い情報開示を行っています。
⇒気候変動に関する主な取り組みは、統合報告書およびサステナビリティレポートをご覧ください。
② 気候変動対応に関する推進体制
当社グループでは、(1) サステナビリティ全般に関する取り組みでも記載のとおり、特に重点的に取り組むべき課題「7つのマテリアリティ」の推進に向け、代表取締役社長執行役員CEOを議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、課題解決に向けた具体的な取り組みの協議、推進を行っています。ここで協議した内容は、定期的に取締役会へ報告を行い、方針や取り組みへの助言と進捗管理をしています。また、環境経営プロジェクト委員会を設置し、グループ会社も含めた環境経営体制の構築を強化しています。定期的な全体会議を通して、現状の把握と課題解決に向けた議論を行い、グループ全体の環境に関する気候変動への対応を中心とした取り組みを推進しています。
③ 事業リスク・機会の認識と事業戦略
当社グループは「7つのマテリアリティ」にも設定している「気候危機(気候変動)」を特に重要な環境課題として認識しています。気候危機は当社グループの事業活動に対して、さまざまな「リスク」と「機会」をもたらす可能性があり、企業としてそれらに対応していくことが重要であると考えています。今後、当社グループが長期的に存続・成長していくために、これらの「リスク」と「機会」を見極め、企業としての強み(経営資源・専門性など)を活かしながら経営戦略への反映が必要であると考えています。
<事業リスク・機会の認識>
a.気候変動におけるリスクと機会
気候変動におけるリスクと機会を評価するため、気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ、2℃未満シナリオ、4℃シナリオ)に基づき、短期・中期・長期の事業への影響を評価・分析しています。
●移行リスク
●物理的リスク
●機会
b.財務的影響の分析・算定
気候変動におけるリスクと機会を評価するため、財務的影響についても算定しています。
[前提要件]
・実施時期:2023年1月(1.5℃シナリオを新たに採用)
・対象期間:2023年~2050年(短期:2025年、中期:2030年、長期:2050年)
・対象範囲:大東建託グループにおける建築・不動産事業
・算定要件:気候変動シナリオ(STEPS、NZE、RCP等)に基づき分析項目別に対象期間内に想定される利益影響額を算定リスクは事象が発生した際の影響額で算定
●移行リスク
炭素税導入による営業活動、施工現場管理、物流などに対する課税や、材料コストの増加が想定されます。コスト増加に伴う販売価格高騰により、オーナー様の賃貸事業へのマインド低下につながり、売り上げ減少になることを政策・法規制リスクとして想定しています。また、電動車両(EV)の普及及び再生可能エネルギーへの移行に伴うコスト増加を技術リスクとして想定しています。

●物理的リスク
気温によって、突発的な風水害が多発し、太陽光パネルの破損等による修繕費の発生することを急性リスクとして認識しています。また、気温上昇により、工事現場の環境が悪化し、現場労働効率の低下や、事務所の空調費用の増加などを、慢性リスクと認識しています。

●機会
当社グループが、先行してZEH賃貸住宅を標準化し、LCCM賃貸住宅を開発・販売している現状は、将来に向けた準備と捉えることができ、市場シェア拡大などに有利となる機会になると認識しています。

④ 気候変動対応に関するリスク管理体制
気候変動に関するリスクについても、サステナビリティ関連のリスクと同様に、「リスクマネジメント委員会」にて評価を実施しています。気候変動を起因とする異常気象・自然災害については、「重点管理リスク項目」として特定しており、大規模な自然災害により、顧客・従業員・管理建物・建築建物・事業所が被災し、復旧に多大な時間とコストを要することで、個々の事業継続に支障をきたすと考え、具体的対策を協議・実施しています。
⑤ 気候変動関連の中長期目標
<温室効果ガス削減目標>
温室効果ガスの削減に向けて、SBTの認定を取得した温室効果ガス削減目標を設定しています。
●事業活動に消費するエネルギー由来のCO2排出量(スコープ1・2)
2030年までに(2017年度比)55%削減
*SBT 1.5℃水準として認定取得済、SBTネットゼロ水準として認定申請中
●当社グループの賃貸集合住宅の使用時に排出されるCO2排出量(スコープ3)
2030年までに(2017年度比)55%削減
*SBTネットゼロ水準として認定申請中
(旧目標「2030年まで16%削減」はSBT 2℃水準として認定取得済)
<再生可能エネルギー目標>
事業活動に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを目指して「RE100」に加盟し、目標を設定しています。
●2040年までに、当社グループの事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに
●賃貸住宅での太陽光発電設備拡大による再生可能エネルギー普及促進に貢献
<エネルギー効率目標>
エネルギー消費量の削減などを目指して「EP100」に加盟し、目標を設定しています。
●2030年までに当社グループのエネルギー効率を2倍(2017年度比)に
※エネルギー効率=売上高/エネルギー消費量
<再生可能エネルギー供給量目標>
バイオマス発電の稼働により自社再生可能エネルギーの供給拡大を目指して、目標を設定しています。
●2030年までに自社再生可能エネルギー供給量を4,000万kWhに
(3) 人的資本に関する開示
当社グループの新中期経営計画の主要な柱として「人的資本経営の推進」を掲げております。パーパスの実現に向けて、今後も従業員の「働きやすさ×働きがい」の向上を通じて従業員の力を最大化すべく、人的資本に関する各種取り組みを強化していきます。
<全体体系図(経営戦略に連動した人事戦略の企画・実行)>

[人材育成の方針]
① 人材育成方針
<人材育成>
a.当社の人材育成プログラム
2016年4月から8年間実施してきた人材育成プログラムを2024年4月に刷新しました。
当社は取り巻く環境変化に適応するべく中長期的なビジョンを掲げ、そこに到達する新たな経営戦略を打ち出しています。外部・内部の環境変化に適応して継続的に成長するためには、その戦略を実現できる人材が必要となります。
例えば、人口減少や少子高齢化による労働力不足といった外部環境変化に対しては、採用等の外部調達だけでなく、既存社員が業務上の問題を解決して遂行するスキルを向上させながらモチベーション高くパフォーマンスを発揮することが今まで以上に必要となります。また事業領域拡張を目指した組織体制の構築といった内部環境変化に対しては、新規事業展開に必要なスキルを開発できる人材やボトムアップを実現できる自主自律の風土醸成が必要となります。
今回の人材育成プログラムの刷新は、このような人材を育成することを目的としています。
プログラム設計においては、まず当社が目指す方向を実現できる組織像を定義し、組織を構成する社員の要件(人材要件)を再定義しています。現在の当社に必要なのはどのような人材なのかについて、階層毎に求める役割、行動、能力(人材要件)を定め、求める能力・スキルを習得できる研修プログラムにしました。
特長としては、①「ヒューマンスキル」「問題解決スキル」「経営スキル」を3本柱として担当層からスキルが積み上がるカリキュラム、②いつでも、どこでも好きな時に学べて先端技術のリスキルもできるWEBオンデマンド学習コンテンツを希望者全員に提供する自律的学習の環境整備、③多様な価値観を持つメンバーのモチベーションをマネジメントできる人材を客観的指標で評価する管理職登用試験の導入、があります。一方、事業特性に応じた職種別のスキルの習得は、職種毎に教育機能を組織化した部門でカリキュラムを構築し、OJTを中心に展開をしてます。
[人材育成プログラムにおける考え方]

[スキル別 人材育成プログラム]

b.建託士 試験制度
当社では、社業や建物賃貸事業に関する知識習得を目的として、オリジナルの社内資格として認定する「建託士」試験制度を導入しています。当社グループの「賃貸経営受託システム」を中心に、市場関連知識、商品知識、税務知識、専門用語など、土地の有効活用を提案する上で必要な幅広い知識習得を支援しています。
c.資格取得者数
通信教育や事業との関連性が高い資格(一級建築士・1級建築施工管理技士など)の取得に向けた各種支援を実施しています。また、資格取得者には一定要件のもと、資格技能手当を支給しています。
〔主な資格取得者数〕
(注)1.大東建託・大東建託パートナーズ・大東建託リーシングの合計数となります。
2.取得者数には資格試験合格者も含みます。
〔人材育成関連の指標〕
今後、人材育成プログラムにおいて、社員の自主自律の学習の促進に向けた「WEBオンデマンド学習への申込数や学習時間や全社員に対する割合」、リーダーとしての能力向上に向けた「管理職登用試験で実施するアセスメント結果の他社比較や過去からの推移」、事業領域拡大に向けた「社員が学習したスキルの拡がり(既存事業領域を超えた学習コースの受講状況等)」を測定していきます。
d.[挑戦風土の醸成]社内ベンチャー制度「ミライノベーター」
当社グループでは、2020年4月より新規事業の創出によるグループ売上利益の拡大と、それに必要な社内起業家支援、それを支える当社グループ従業員が能動的に企画立案できる企業風土の創出を目指した、社内ベンチャー制度「ミライノベーター」を継続的に開催しています。従業員には自らのアイデアを提案できる場、そして自らの成長を会社の成長とともに実感できるチャレンジングな環境づくりを提供し続けたいと考えています。本制度は、段階に応じたワークショップや個別相談会とインセンティブに加え、事業化に向けて社内外のメンターや執行役員クラスが提案者のサポートを行うことで、事業の蓋然性を高めるとともに、提案者の経営目線も養っています。また、ミライノベーターを経験した社員がメンターとして提案者のサポートを行うことで、人的資本の好循環が生まれています。その結果、過去5回の選考で、目標提案数延べ780件に対し、延べ1,062件の応募があり、そのうち最終審査を通過したアイデア22件※が事業化に向けて実証実験を行ってきました。
※2024年3月末時点の定時応募及び随時応募件数
e.DX人材の育成(当社グループ)
大東建託グループのDX戦略に基づき、当社グループの業務・事業領域の知識を持ち合わせたうえで、データとデジタル技術を活用できる人材を育成するため、以下の取り組みを推進しています。
→DX人材社内認定制度の導入、DX人材の可視化、レベル別DX研修・DXワークショップの実施など
(当社グループの本社所属の全管理職については必須研修を実施済)
〔DX人材社内資格認定者数〕

※「大東建託グループ×DX戦略」(当社HPより)
f.サクセッションプラン
グループ・パーパスを実現するうえで経営者として明確なビジョンと必要な資質を持ち、既存事業の深化及び新規事業の創出などを牽引できる次世代リーダーを計画的に発掘・育成するため、CEOサクセッションプランを本格的に導入しました。2023年度は新CEO要件定義書の策定や次々期CEO候補者プールの構築(選定)、キャリア検討委員会の開催(評価、育成計画の策定、タフアサインメント)などを実施しており、引き続き、当取り組みを強化していきます。
<人材の確保>
当社は新卒採用及び中途採用により事業に必要な人材を確保しており、優秀な人材の採用に向けて、市場環境に対応した採用手法の改善や訴求方法の見直し(SNS活用・新卒ご家族様向け会社説明会・新たな募集層や募集ルートの拡大など)を行っています。
さらに特定分野においては、市場価値の高い公的資格や高度な知識・技能を有した従業員を認定する「専門職制度」(エキスパート・スペシャリスト職)を導入しており、新技術や新製品の開発、新規事業の開拓、大規模プロジェクトの遂行といった事業優位性の向上に大きく寄与する領域で多数の専門職が活躍しています。
また、シニア層の活躍推進を目的として、定年制度の見直し・処遇改善を行っています。最長で70歳まで正社員と同等の処遇が継続される等、モチベーション高く、働き続けられる職場環境を構築しています。
(2023年度 雇用継続率:93.3%)
<評価・報酬>
当社は経営基本方針に「高い生産性を背景とした高賃金主義に徹する(成果主義の人事処遇)」を掲げており、従来より成果主義を導入し、属性に関係なく、役割・貢献・成果に応じた適正な処遇の配分を実施しています。
職種毎の事業特性に応じた諸手当の充実化にも柔軟に対応しています。評価制度においては、経営計画と各組織及び従業員の個人目標との連動性を高めるため、目標管理制度を導入しています。今後も社会情勢を踏まえながら、採用競争力や人材定着力を高める適正な報酬水準の実現と従業員の目標達成意欲につながる評価制度の運用を強化していきます。
〔直近の主な取組み〕
従業員の生活支援と優秀人材の確保を図り、以下を実施
・「インフレ手当」の支給:一定要件のもと、一律100,000円(2023年6月)
・新卒初任給引き上げ :総合営業職・設計職・施工管理職について一律月額20,000円引き上げ
(2024年4月より)
※2023年以前の一部新卒入社従業員の給与も引き上げ
・賃上げ(ベア)の実施 :全従業員について定期昇給含め平均5.1%程度の賃上げ(2024年4月より)
・技術職の処遇向上 :一級建築士や1級施工管理技士等の資格を保有する技術職への月額20,000~
30,000円の資格手当の導入(2024年4月より)
<株式報酬>
当社グループ従業員の働きがいの向上及び会社の成長=社員の成長・株主との価値共有を図るため、譲渡制限付株式の付与を実施します。
[社内環境整備の方針]
① 多様性に関する取り組み
当社グループは、サステナビリティ経営を推進していく上で、企業として持続的な成長をし続けるためには、個を尊重し、認め合い活かしていく、ダイバーシティが必要不可欠だと考えています。社員の成長が会社の成長であり、優秀な人材の確保(採用・就業継続)、育成が経営上の最重要課題と考え、当社ではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、「みんなの個性を、会社の力に。」をテーマに「多様性が強みとなる」組織づくりを目指しています。
<ダイバーシティ推進体制>
当社では2015年にダイバーシティ推進専門組織として人事部内にダイバーシティ推進課を新設し、更なる推進強化のため、2022年度より人事部から独立させ、部として取り組みを進めています。多種多様なバックグラウンドを持つ人材が、お互いに尊重し合い、いきいきと活躍できる組織作りの実現には、トップダウンだけではなくボトムアップも必要不可欠であると考えています。そのため、当社グループは従業員からの声を収集しやすい風土や体制づくりに注力し、集められた声をもとに制度の見直しや職場環境の改善に取り組んでいます。
<ダイバーシティ推進に向けた取り組み>
2024年度より中期経営計画がスタートし、ダイバーシティ推進においても中期経営計画~ダイバーシティ推進編~を掲げて取り組みをスタートしています。具体的には価値創造とイノベーションを生み出すために、多様な目線で挑戦する“ コミュニケーションの質 ”とし、4つの軸、「個性を活かす(自分らしさ)、つながる(タテ・ヨコ・ナナメ)、対話・考動(理解を深めて動く)、Well Being(幸せ)」 を大切に多様性が強みとなる組織づくり“ 十人十色を活かす ”組織づくりを目指していきます。そして、「ジェンダー平等」「多様な人材の活躍」「働き方改革」「ワークライフバランス」を主軸に職場環境の整備を行っていきます。「ジェンダー平等」では、女性管理職比率の向上のため、優秀な女性を登用するだけでなく、資質のある女性を見つけ出し、計画的に育成して引き上げるという考え方へ変えるために、2021年10月からクオータ制を導入した「女性育成プログラム」を始動し、結果、女性管理職比率6.5%(2024年4月時点)と過去最高を更新することができました。引き続き、クオータ制を展開し、目標として設定した女性管理職数の登用に向けて、各職種の執行責任者(役員)が候補者を選定し、それぞれにあった育成計画を立て、女性に特化した研修の参加、上司とのレビュー、役員との交流(上級管理職候補者対象)などにより候補者本人たちの不安の解消や自信、意欲につなげています。クオータ制を職種毎ではなく全社的に推進するために、執行責任者で構成された女性活躍推進委員会を定期的に開催し、経営層主導で推進しています。2024年4月からは2027年までを見据えた更なる推進に向け「第2期女性プログラム」をスタートさせ、新たな施策として「育成対象者マンツーマンサポート」「昇進後アフターフォロー」を実施していきます。
<ダイバーシティ関連の指標・目標>
(注)「障がい者雇用率」はグループの数値です。
② 健康・wellbeing経営に関する取り組み
当社は、老若男女を問わず多様な従業員が心身共に健康で活き活きと働けることが企業の持続的な成長において重要であると考えています。従業員の健康保持・増進に積極的に取り組み、健康・wellbeing経営を推進します。
<健康経営推進体制>
当社では、従業員の健康保持増進を重要な経営上の課題とし健康と安全に関する取り組みを推進しています。人事部とダイバーシティ推進部が中心となり、健康保険組合等と連携しながら課題の抽出や施策の実施から評価改善まで戦略的に取り組んでいます。また、従業員の心身の健康や労働環境の向上に努めるために、現場の意見を速やかに取り入れられるよう、全国200以上の支店に約1,000名にものぼる衛生管理者を健康経営推進担当者として配置し、産業医や保健師と連携を図っています。
<健康経営に関する取り組み>
「大東建託グループ健康宣言」に基づき、専門職の力を使いつつ、従業員全員が楽しみながら自身の健康を考えていけるような健康施策を推進しています。また、健康保険組合と連携し、ヘルスケアアプリを活用導入した情報提供、インフルエンザの予防接種、ウォーキングキャンペーンなどを実施しています。特に禁煙対策に力を入れており、就業時間内の禁煙を浸透させています。また、昨年度に実施した手上げ式の卒煙プロジェクトは160名以上の立候補があり、自力にも関わらず、50%以上の成功率となっています。
<健康経営関連の指標・目標>
③ 従業員エンゲージメント・職場環境向上に関する取り組み
<従業員エンゲージメント・職場環境向上に向けた取り組み>
a.従業員エンゲージメント調査
当社グループは2021年度より「従業員エンゲージメント調査」を実施しています。全社及び各部署における組織の強み・弱みといった組織状態を明確にし、全社組織課題の解決に対しては本社が主導し、各部署に応じた組織課題には各管理職が主導するという両輪で、各種施策の検証や職場改善活動に取り組んでいます。今後も、自主自律の精神の元、従業員一人ひとりが主役となって、自らの仕事を喜んで、楽しんで取り組める企業を目指し、「働きやすさ」と「働きがい」を増進し、社員の力の最大化に向けて取り組んでいきます。
●調査結果を踏まえた組織風土改革への取り組み
b.社内評価指標「健全経営ランキング」
当社では、組織活性施策として、従業員エンゲージメントのほか、2018年8月より営業成績や収益という短期的な業績結果だけではなく、「生産性」「人材育成」「働きやすい職場環境づくり」など、プロセスや就労環境といった支店・部門の中長期的な健全経営に欠かせない要素にも着目した独自の評価指標「健全経営ランキング」を導入・展開しています。評価項目毎に共通の基準・計算式に従って評価ポイントを算出した上で各支店・部門のランキングを決定・開示し、従業員主導の就労環境改善につなげています。また、優良支店の従業員とそのご家族様が一緒に使える褒賞制度の導入や、組織運営において特に影響力の大きい支店長に対する評価指標への組み込み(経営視点意識・人的資本経営力の向上)など、制度の浸透・運用力強化につながる工夫なども行っています。
<主な評価項目>
〔従業員エンゲージメント・職場環境向上関連の指標〕
(注)株式会社リンクアンドモチベーション「エンゲージメントサーベイ」において調査を実施した、同社の算定基準による当社の評価及び偏差値になります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 原材料費等の高騰による原価の上昇、利益率の低下
当社は、賃貸建物の建設において、当社が元請けとなり、当社の現場監督(施工技術者)が直接施工業者に分離分割発注を行い、完成工事原価の抑制を実施しています。しかしながら、各種建設資材の価格上昇や労務費の上昇などにより、売上総利益率が低下する可能性があります。
(2) 税制改正による業績への影響
当社は、土地所有者に土地有効活用として賃貸マンション・アパートの建設を提案するコンサルティング営業を行い、建設受注を獲得しています。現在において土地活用の有効な手段は、建物賃貸事業経営とされていますが、税制改正により建物賃貸事業に関連する税負担等に変更があった場合、受注高が変動し業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利の急上昇による受注キャンセル
土地所有者が建物賃貸事業を行う際、建物の建築代金は金融機関からの借入れにて調達することが一般的です。現在、長期金利は、依然、低金利状況が続いており、土地所有者が建物賃貸事業に踏み切る一つの要因となっています。金利が急激に上昇した場合、採算悪化を懸念した土地所有者が発注キャンセルを申し出るケースや建築プランの見直しが必要となるケースが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法施行・法改正等に伴う経費増
当社グループは、建設業許可、建築士事務所登録及び宅地建物取引業免許等の許認可を受けて事業を展開し、またこれらの関連法令をはじめその他各種の法令等に基づいた企業活動を行っています。これらの法令等を遵守するためにコーポレートガバナンス及びコンプライアンス推進体制を強化していますが、新たな法令等が施行された場合、当該法令等に対応するための経費が追加的に発生し、業績に影響を与える可能性があります。
(5) 個人情報の漏洩等のリスク
当社グループは、土地所有者や入居者等、様々なお客様の個人情報をお預りしています。個人情報保護には特に配慮し対策を進め事業活動を行っていますが、万一、個人情報の漏洩等があれば、信用を大きく毀損することとなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 自然災害によるリスク
大規模な地震や台風等の自然災害が発生した場合、被災した当社グループの建築現場・事業所・情報設備等の修復やお客様の建物の点検、被災したお客様への支援活動等により、多額の費用が発生する可能性があります。また、被災地域において、社会インフラが大規模に損壊し、相当期間に亘り生産・流通活動が停止することで建築資材・部材の供給が一時的に途絶えたり、多数の社員が被災し勤務できなくなることにより、契約締結・工事着工・工事進捗や入居者斡旋活動が滞り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(7) 品質管理等に関するリスク
当社グループでは、施工基準書に定めた品質の確保に対して、施工業者、工事監督、設計者(工事監理者)による確認を行い品質確保に努めています。検査時には特に各工程の隠蔽部の確認を行い、完成時には施工状況を施工品質記録にまとめ「自主検査報告書」をお施主様へ開示しています。しかしながら、予期せぬ事情により重大な品質問題が発生した場合、レピュテーションの著しい低下により、業績に影響を与える可能性があります。
(8) 建設技能労働者減少に関するリスク
建設技能労働者数は年々減少しており、2025年には286万人まで減少(2015年対比16%減)すると予測されています。建設技能労働者数減少を見据えた対策として、部材のユニット化による現場作業の省力化や、作業補助機などによる作業員の効率化、および外国人技能実習制度を通した協力業者に対して技能実習生の受入れの支援などを行っています。しかしながら、想定を超える建設技能労働者の減少や超高齢化の進行によって業務の生産性低下や工期の長期化等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
(9) 気候変動に関するリスク
当社グループは、気候変動が事業活動に与える「リスク」へ適切に対応し、気候変動による「機会」を成長の機会として捉え事業活動を行っていますが、シナリオ分析で想定した以上の気候危機や、法改正や新たな法令などが施行された場合、業績に影響を与える可能性があります。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方と取組 (2)気候変動への取り組みとTCFDへの対応」に記載しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度における国内経済は、個人消費や設備投資の持ち直し、雇用情勢の改善等により、緩やかな景気回復基調が継続しました。しかしながら、世界的な金融引締め政策および日本銀行の金融緩和政策変更、資材・エネルギー価格の高騰、建設業や運送業における2024年問題等、依然として先行き不透明な状況が続いております。
新設住宅着工戸数は、2023年4月~2024年3月累計で800,176戸、前年同期比7.0%の減少となりました。一方、当社グループが主力とする賃貸住宅分野においては、建築資材の高騰等の影響もあり、2023年4月~2024年3月累計では前年同期比2.0%減少の340,395戸となりました。
このような環境の中、賃貸住宅分野においては、新型コロナウイルスの第5類移行に伴い様々な制限が緩和されたことにより、展示施設や現場見学会などの販促活動の活性化を図ったこと、キャンセル額が低水準で推移したこと等により、受注は新型コロナウイルス発生前の水準まで回復し、あわせて完成工事高は当初の想定を上回る売上高を計上することができました。
以上の結果、当社グループの連結業績は、売上高1兆7,314億67百万円(前期比4.5%増)、利益面では、営業利益1,048億19百万円(前期比4.8%増)、経常利益1,087億20百万円(前期比4.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益746億85百万円(前期比6.1%増)となりました。
売上高は、前連結会計年度に比べ738億41百万円(4.5%)増加し、1兆7,314億67百万円となりました。これは主に、工事が順調に進捗したこと等により完成工事高が328億62百万円(7.2%)増加し、一括借上物件の増加等に伴い不動産事業売上高が261億62百万円(2.4%)増加したことによるものです。売上総利益は、前連結会計年度に比べ263億29百万円(10.2%)増加し、2,847億77百万円となりました。これは主に、完成工事高の増加等により、完成工事総利益が174億14百万円(17.8%)増加し、一括借上物件の増加等により不動産事業総利益が32億17百万円(2.5%)増加したことによるものです。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ215億11百万円(13.6%)増加し、1,799億58百万円となりました。これは主に人件費が159億58百万円増加したこと等によるものです。
この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ48億18百万円(4.8%)増加し、1,048億19百万円となり、経常利益は、前連結会計年度に比べ48億21百万円(4.6%)増加し、1,087億20百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
建設事業は、工事が順調に進捗したこと等により、完成工事高が4,924億34百万円(前期比7.2%増)となりました。また、完成工事総利益率は、価格改定効果の寄与により、前期比2.1ポイント増加の23.4%となりました。また、営業利益は、289億3百万円(前期比35.5%増)となりました。
建物種別の完成工事高及び次期繰越工事高は、次のとおりです。
(注)前事業年度及び当事業年度において完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
受注工事高は、新型コロナウイルスの収束に伴い、展示施設や現場見学会などの販促活動の活性化を図ったこと、キャンセル額が低水準で推移したこと等により、5,904億7百万円(前期比17.2%増)となり、2024年3月末の受注工事残高は、7,870億46百万円(前期比9.0%増)となりました。
受注実績は、次のとおりです。
(注)当社グループでは、建設事業及び不動産事業の一部以外は受注生産を行っていません。
生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載していません。
②不動産事業
不動産事業は、「賃貸経営受託システム」による一括借上物件の増加等を背景に、一括借上を行う大東建託パートナーズ株式会社の家賃収入が増加したことや「連帯保証人不要サービス」を提供するハウスリーブ株式会社の収入拡大等により、不動産事業売上高が1兆1,291億64百万円(前期比2.4%増)となり、営業利益は820億40百万円(前期比0.6%増)となりました。
不動産事業の売上実績の内訳は、次のとおりです。
管理戸数は、前期比2.4%増の1,289,397戸となりました。
入居者斡旋件数(注1)は、前期比1.1%減の337,611件となりました。2024年3月の家賃ベース入居率(注2)は、居住用で前年同月比0.1ポイント減少の97.9%、事業用で前年同月比0.1ポイント減少の99.4%となりました。
(注) 1.大東建託リーシング㈱、大東建託パートナーズ㈱の合計件数(他社管理物件含む)
2.家賃ベース入居率=1-(空室物件の借上家賃支払額/家賃総額)
③金融事業
金融事業は、土地オーナー様、入居者様へ家賃や家財を補償する少額短期保険ハウスガード株式会社の契約数の増加等により、売上高が前期比7.9%増の116億26百万円、営業利益は前期比39.1%増の61億85百万円となりました。
④その他
その他の事業は、新型コロナウイルスの収束に伴うマレーシアホテルの稼働率の改善、投資マンションの販売戸数、ビルドセットおよびリノベーション・再販の販売棟数が増加したこと等により、その他の事業売上高は982億41百万円(前期比16.6%増)、営業利益は144億25百万円(前期比35.5%増)となりました。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前期末比181億60百万円増加の1兆800億69百万円となりました。これは主に、販売用不動産311億47百万円、繰延税金資産50億89百万円が増加した一方、現金預金213億75百万円が減少したことによるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
①建設事業
建設事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ108億5百万円減少し、1,142億9百万円となりました。これは主に、その他の棚卸資産の減少によるものです。
②不動産事業
不動産事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ48億42百万円増加し、3,848億73百万円となりました。これは主に、太陽光発電設備の新規設置による機械及び装置の増加、一括借上修繕引当金の増加に伴う繰延税金資産の増加及び一括借上物件の増加に伴う前払家賃(前払費用)の増加によるものです。
③金融事業
金融事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ178億77百万円増加し、1,510億80百万円となりました。これは主に、大東ファイナンス株式会社による貸付金の増加によるものです。
④その他
その他事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ483億62百万円増加し、2,290億1百万円となりました。これは主に、大東建託株式会社及び株式会社インヴァランスの販売用不動産の増加によるものです。
当連結会計年度末の負債は、前期末比172億92百万円増加の6,742億68百万円となりました。これは主に、一括借上修繕引当金146億38百万円が増加したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産は、前期末比8億67百万円増加の4,058億円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により746億85百万円が増加した一方、自己株式の取得により501億77百万円、配当金の支払いにより362億30百万円減少したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前期末比0.6ポイント減少して37.6%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度において現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比172億74百万円減少し、当連結会計年度末の残高は2,290億38百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、908億76百万円の獲得(前連結会計年度は821億2百万円の獲得)となりました。主な獲得要因は、税金等調整前当期純利益の計上1,106億7百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益1,018億36百万円)、減価償却費170億89百万円、一括借上修繕引当金の増加額146億38百万円及び未成工事受入金の増加額100億20百万円です。一方、主な使用要因は、法人税等の支払額356億88百万円及び販売用不動産の増加額311億47百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、131億14百万円の使用(前連結会計年度は570億93百万円の使用)となりました。主な獲得要因は、定期預金の払戻による収入309億20百万円です。一方、主な使用要因は、定期預金の預入による支出268億19百万円、有形固定資産の取得による支出145億77百万円、無形固定資産の取得による支出50億31百万円です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、967億87百万円の使用(前連結会計年度は400億63百万円の使用)となりました。主な獲得要因は、自己株式の処分による収入20億65百万円です。一方、主な使用要因は、自己株式の取得による支出501億77百万円、配当金の支払額362億30百万円及び長期借入金の返済による支出122億23百万円です。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローにより獲得した資金及び金融機関からの借入れ及び社債発行により調達した資金を運転資金、投資資金並びに配当金の支払等に投入しています。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2.いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
4.キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。また利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
当社は、2023年10月30日に自己株式を取得することを決議し、2023年11月21日に取得が完了しております。なお、自己株式の取得にはコミットメント型自己株式取得(FCSR)を用いております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当社は、土地所有者の皆様に建物賃貸経営を総合的にお任せいただき、その価値を高めていくために、事業効率の高い賃貸建物を提案しています。そして、多様化する入居者様ニーズに対応するため、商品開発部・技術開発部を主幹担当部門として、新工法・資材の開発を含め、商品ラインナップの充実に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発活動に係る投資総額は
商品開発部においては、「環境」「防災」「ライフスタイル」の3つを軸にした「新しい価値」を創造する賃貸住宅のラインナップを充実させるため、上半期7商品、下半期6商品の計13商品を新たに開発しており、一部をご紹介いたします。
「環境」に配慮した商品『ニューライズ』は、標準でZEHオリエンテッド基準に対応した商品です。太陽光パネルや建物の高断熱化、省エネ性能の高い設備のオプション設置により、ZEHからLCCM基準まで対応しており、企業活動を通じて脱炭素社会の実現に貢献ができる商品です。今期はファミリー向けの間取タイプや狭小間口の敷地にも計画対応出来る間取タイプを拡充し、環境貢献をさらに進めるべく、商品提案力を強化致しました。
「防災」に配慮した『ぼ・く・ラボ賃貸』第3弾となる『ドーモ』はシングル向けの商品です。いつもの暮らしが災害時の「もしもに備える」をコンセプトに、アウトドア感覚を取り入れたインナーテラスや水害にも強い鉄骨らせん階段を採用しています。また災害の原因となる環境負荷に対し低減策としてZEHにも対応しています。
「ライフスタイル」に配慮した50周年記念商品『ヴィジョン マイタグ』は、多摩美術大学との産学共同研究により、Z世代の視点を通して次世代の「ライフスタイル」を反映しており、第1号棟も完成致しました。住人同士が相互のコミュニケーションを暮らしの価値と感じ、その価値観が街とつながることで賃貸住宅が地域活性の場として貢献する新しい住まいです。また都市部向け商品『ニューデフィ』は、忙しいシングル層向けに最近の部屋干ニーズを反映した「サンルーム」を1・2階住戸ともに採用するなど、ライフスタイルニーズを取り入れた商品です。
その他にも『ルタンウィル北海道』や『ニューライズ多雪』など全国の各地域環境にあわせた商品ラインナップを取りそろえ、社会環境変化や多様な市場・入居者様ニーズに対応すると共に、「高齢化対策」として住宅型有料老人ホーム『ソエルガーデン』も開発するなど、幅広く取り組んでおります。
デジタル技術を活用したDX戦略の1つとしてBIMの研究開発も継続して進めております。BIMによる商品開発により営業・工事・管理までグループ全体で活用し、総合賃貸業の強化を図っていきます。
技術開発部門においては、持続可能な社会、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、継続した賃貸集合住宅の省エネルギー化を推進しております。
2023年度は、これまで一般、寒冷地域(省エネ基準地域区分での1~7地域)にて提案を行っておりました、木造のZEH基準(ZEH Oriented)を満たす賃貸集合住宅(以下ZEH賃貸集合住宅)について、沖縄仕様(省エネ基準地域区分8地域)の開発を完了させ、販売開始いたしました。本開発により全国においてZEH賃貸集合住宅の提案が可能になるとともに、鉄骨造の商品につきましてもZEH賃貸集合住宅での販売を新たに開始いたしました。
また、太陽光発電設備を搭載したZEH賃貸集合住宅においても、京セラ株式会社と電力買取契約を締結し、FITによらない電力需給スキーム(非FIT)での販売を2023年4月より開始しており、販売エリア、販売対象商品の拡大を行い、再エネ賦課(ふか)金の電気料金への上乗せによる電力利用者の負担増加という社会的課題への取り組みを強化致しました。
脱炭素社会への更なる実現に向け、成長過程で炭素を固定する木材を使用した木質材料、CLTパネルを採用した商品『フォルターブ(4階建て耐火木造)』に、新たに木の現しを室内外に設けて木を身近に感じられる商品『フォルターブⅢ(3階建て準耐火木造)』の販売を開始し、これらCLT商品においてもZEH-Oriented以上を達成する仕様の開発も完了しております。
そして、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)基準を満たす賃貸集合住宅(以下LCCM賃貸集合住宅)についても、2022年度に引き続き、2023年度も国土交通省所管の補助金事業(サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)LCCM低層共同住宅部門)にて採択を受けました。本補助事業の採択を受けたのは2年連続して当社だけとなります。
現場職人不足という社会課題への対応として資材の軽量化を目的とし、建物屋根の下葺き材に従来のアスファルト素材の約1/4程度の重量となる樹脂素材のルーフィング材の導入を、一部地域から開始致しました。
当社は、業界最高水準の技術力を目指し、オーナー様、入居者様、現場で施工する協力業者様を満足させる「資材・設備」、「機能性」、「意匠性」、「耐久性」、「施工性」等の研究・開発を行って参ります。
構造開発分野における取り組みとして、工学院大学との産学連携による「CLTパネルを用いた水平構面のせん断試験に関する共同研究」を実施しました。この研究を通じて、CLTパネル工法と2×4工法を組み合わせた床版の設計が可能になり、CLTの持つ意匠性を活かした柔軟な設計を進めています。また、2×4工法の技術向上を目的として、林野庁補助事業「令和5年度 都市木造建築技術実証事業」を通じて、「2×4材を利用した重ね床根太」の開発研究を行い、その実用化に向けた取り組みを継続しています。さらに、弊社が重要課題として位置付けている「持続可能な木材の調達と活用」に関して、国産材のより広範な活用を目指し、2024年1月に岩手県で国産アカマツなどを使用した100%国産ランバー材を活用した2×4工法の賃貸住宅を建設しました。岩手県はアカマツの主要生産地でありながら、マツ枯れの問題が進行しており、未被害材の伐採・利用を通じて被害の拡大防止と資源の有効活用を進めています。この背景を踏まえ、2022年にけせんプレカット事業協同組合、国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所、岩手県林業技術センターと協力し、アカマツの強度試験を実施しました。その結果を基に、弊社初の国産材100%の2×4工法賃貸住宅が実現しました。木材を多く利用する弊社にとって、世界情勢に左右されない安定供給が可能な国産材の活用は不可欠です。弊社は引き続き国産材の導入研究を継続し、地域の林業振興及び地域創生に貢献していきます。
環境分野における取り組みとして、「省エネルギー住宅のCO2排出削減量」をクレジット化する方法論を2021年1月に日本で初めてJクレジット制度に登録し、2023年度は498tを創出しました。創出したクレジットは「いい部屋ネットレディス2023(ゴルフ大会)」、「大東建託オープン2023(テニス大会)」で発生するCO2排出量を算定し、カーボンオフセットを実施しました。
また、2023年9月に2030年を見据えた次世代型賃貸住宅「ゼロカーボンハウス」が東京都青梅市に完成いたしました。ゼロカーボンハウスは、LCCM住宅に蓄電池として利用する「電気自動車」や昼間の太陽光電力でお湯を沸かす「おひさまエコキュート(オール電化)」、電力需給を自動管理する「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」などを導入し、市場電力の調達をできるだけ避け、太陽光発電による創エネ電力で最大限自給自足する住宅です。自給自足率は約80%となり、それでも不足する電力は、木質バイオマス発電の再エネ電力を調達することで、再エネ100%(ゼロカーボン)を実現しています。
その他の環境分野の取り組みとして、当社グループは2023年6月にサステナブルな世界の実現を目指すイニシアティブ、国連グローバル・コンパクト(以下UNGC)に署名しました。UNGCは、企業が人権、労働、環境保護、腐敗防止の4つの分野において、国際的な原則を遵守することを約束するものです。当社グループはこれに賛同し、持続可能な発展に貢献するためのさまざまな取り組みを進めてまいります。
また、RE100達成に向け兵庫県朝来市にあるバイオマス発電所及び燃料供給施設の事業継承を行う契約を2023年7月に締結致しました。同9月にバイオマス発電事業を行う子会社「大東バイオエナジー株式会社」を設立し、営業運転開始を2024年4月目標とし事業継承手続きを進めてまいりました。
本事業への参入により西日本エリアの自社グループ274拠点に再生可能エネルギーを供給することで、国内RE100達成率50%を達成する見込みとなっております。
その他、2020年より、弊社品川本社ビルを使いながらZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化に向けた改修工事を試験的にすすめ、2023年3月、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のZEB認証を取得しました。
当社も、2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しており、今回のZEB化改修計画により同ビルは、事務所用途部分で基準一次エネルギー消費量から40%以上、建物全体では20%以上削減することができます。国内でZEBの認証を取得した物件の内、10万m2超の既存ビル改修のZEB化は国内初の事例となります。今後は、本社ビルの運用を通じてエネルギー収支を引き続き検証するとともに、2050年ネットゼロ目標の着実な達成と脱炭素社会実現に貢献します。