文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、社業を通じて社会に貢献することを企業理念とし、セキュリティサービス事業を中心として、防災、メディカルサービス、保険、地理空間情報サービス、BPO・ICT、その他の様々な分野の事業を展開しており、これらを複合的・融合的に提供することで、より「安全・安心・快適・便利」な社会を実現する「社会システム産業」の構築を目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び業績目標
外部環境が大きく変化し不確実性の増す今日において、当社グループの方向性を明確にするために、2017年に策定した「セコムグループ2030年ビジョン」では、これまで当社グループが培ってきた社会とのつながりをベースに、想いを共にするパートナーが参加して様々な技術や知識を持ち寄り、暮らしや社会に安心を提供する社会インフラ「あんしんプラットフォーム」構想を掲げております。「あんしんプラットフォーム」構想では、時間や空間にとらわれないサービスの提供、一人ひとりのお客様に寄り添った最適なサービスの提供および生活の中にある様々なリスクに対して、事前の備えから事後の復旧まで、安心にフォーカスしたきめ細やかな切れ目のないサービスの提供を目指し、当社グループが展開する様々な事業間の連携をさらに深め、当社グループの総合力を最大限活用できるように努めております。
このような中、「セコムグループ2030年ビジョン」の実現に向けて、今後の目指すべき方向性をより明確化し、2030年に向けた成長をさらに確かなものとするため、2023年5月に「セコムグループ ロードマップ2027」を策定いたしました。社会環境の変化から生じる様々なニーズを捉え、新たなサービスとして次々と提供していくことで、これからもあらゆる場面で、確かな「安全・安心」をお客様にお届けすることを目指してまいります。あわせて、新たな価値創造による新事業の創出・育成や、既存業務の拡充を着実に進め、当社グループの成長スピードをさらに加速してまいります。
以上の経営戦略のもと、実効性のあるコーポレートガバナンスを実現し、ESG(E:環境、S:社会、G:企業統治)課題へ適切に対処するとともに、社会とのつながりを強め、様々な社会課題を解決することで、社会と共に成長を続け、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
(3)経営環境及び優先的に対処すべき課題
当社は、日本のセキュリティサービス事業のパイオニアとして、創業以来社会の変化に先んじてサービスを進化させ、業界をリードしてまいりました。現在は、セキュリティサービス事業を中心に、防災、メディカルサービス、保険、地理空間情報サービス、BPO・ICT、その他事業を展開しています。また、海外では、16の国と地域に進出し、現地の状況を踏まえた当社グループならではのサービスを提供し、セコムブランドのグローバル市場への浸透を進めております。
一方、当社グループを取り巻く環境においては、テクノロジーの進化、労働力人口の減少、体感治安の悪化、高齢化の進行、自然災害の頻発化・激甚化等への対応が課題となっております。このような状況下において、当社グループは、これらの課題解決に貢献するため、以下の取り組みを推進しております。
①新しい技術・ノウハウの積極的な活用
テクノロジーの進化が進む中、最先端技術を活用した付加価値創造・サービス品質向上等を実現するため、新しい技術やノウハウを積極的に情報収集し、活用してまいります。また、こうした取り組みを通じて、国内および海外において、最新技術と人財を融合した新商品・新サービスの創出に取り組んでまいります。
②国内事業(サービス・商品の競争力の向上)
国内事業においては、法人マーケット向けのサービスや商品の品質向上・機能向上を図り競争力を高めていくとともに、高齢者見守り等の新サービスを提供することにより、個人マーケットの更なる開拓等に注力してまいります。また、セコムグループの経営資源を最大限に活用することにより、多様化するお客様のニーズに応える付加価値の高いサービスを提供することで、「安全・安心・快適・便利」な社会の構築を目指してまいります。
③海外事業の強化
海外事業においては、広告宣伝をはじめとした販売促進を行いながら、高まる安心ニーズに対して、最先端技術を積極的に取り入れ、現地ニーズに合った海外のローカルマーケット向けの事業企画・商品開発や大型物件への対応など、事業展開を強化してまいります。また、現地における積極的な採用、教育・研修の充実により、海外事業におけるサービス品質を向上してまいります。
④業務効率化及び業務品質の向上
労働力人口の減少による人手不足への対応に当たり、システムへの投資により機能改善を図ることで業務の効率化を推進し、生産性向上、収益性向上、サービス品質の向上に繋げてまいります。あわせて、業務プロセスおよび社内の事務処理や組織の見直しを図り、コスト削減を促進してまいります。
⑤競争力向上のための人財確保
当社グループでは、最新技術の活用や海外展開のためのIT人財およびグローバル人財が必須であることに加え、国内事業におけるサービス向上の面においても人員の確保が必要です。労働力人口が減少する中でも、事業展開を支える人財の採用強化を進め、成長分野を強化するための人財の再配置などの組織戦略を推進してまいります。また、既存社員の育成、変化適応力の向上のための教育・研修の強化、社員それぞれの個性を活かし、公私ともに豊かで充実した人生を送る基盤としての環境整備等を継続して進めてまいります。
⑥コンプライアンス・ガバナンス体制の強化
上記の取り組みを推進するに当たり、「安全・安心」を提供する当社グループにとって、法および法の精神の遵守によりお客様からの信頼を確保・維持し続けることは、経営上極めて重要な課題であります。当社グループでは、創業以来受け継がれてきた「セコムの理念」を通じて、より一層のコンプライアンス体制の強化に努めております。また、ガバナンス体制の強化も継続して推進し、ステークホルダーの皆様から選ばれ続ける会社づくりに取り組んでまいります。
当社グループでは、「社業を通じ、社会に貢献する」という企業理念のもと、「企業と社会が共に持続的に発展することが重要である」という考え方を根底に据えて、創業以来、事業を通じたサステナブルな社会の実現に向けて取り組んでいます。考え方および取組の状況は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
また、当社グループのサステナビリティに関する考え方や取組の詳細は、ウェブサイト上で公表しているサステナビリティレポートをご参照ください。
https://www.secom.co.jp/corporate/sustainability/
① サステナビリティ課題全般
当社では、サステナビリティの取り組みを経営戦略と一体化することを目的として、サステナビリティ担当役員管轄のもと、2019年にサステナビリティ推進室を設置しました。ESG課題への対応を促進するほか、グループ全体への浸透活動、ステークホルダーに向けた情報発信等を担い、活動状況は適宜、サステナビリティ担当役員から代表取締役社長、取締役会に報告されます。なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制の詳細については、
サステナビリティ推進体制図

当社は取締役会での討議を経て策定された「セコムグループサステナビリティ基本方針」や個別の方針である「環境方針」「人権方針」を指針としながら社会課題の解決に取り組んでいます。これら方針のもとで、「セコムグループ2030年ビジョン」も踏まえ、当社が社会とともに持続的成長を遂げるために取り組む6つのサステナビリティ重要課題「お客様視点のサービス」「先端技術の活用とパートナーシップ」「社員の自己実現とダイバーシティ」「人権尊重と誠実な企業活動」「脱炭素・循環型社会」「地域コミュニティとの共生」を特定しました。課題ごとに重要目標達成指標(KGI)と、その度合いを測る指標(KPI)を設定し、PDCAを活用しながら各種取り組みを着実に進めています。また、「セコムグループ ロードマップ2027」で掲げる「サステナビリティ戦略」に沿った施策に着手しています。

また、当社では、サステナビリティに関するリスクも含めた全社横断的なリスクの把握及び対策の検討等を行うため、リスク管理担当役員を委員長とする「リスク対策委員会」を開催し、必要に応じて、代表取締役社長および取締役会に報告しております。詳細は、
<指標と目標>
当社は、サステナビリティ重要課題ごとにKGI・KPIを以下のとおり設定し、目標達成に向けた取り組みを進めています。なお、当社グループの連結子会社は業種・業態が多岐に渡り、現時点においては当社グループとして統一されたKGI・KPIを設定することが困難です。そのため目標のバウンダリーは、「『カーボンゼロ2045』を達成する」を当社および連結子会社、その他を当社としております。また、実績値はサステナビリティレポート2023で公表している内容を記載しております。
(注)1 KPIの進捗は、ウェブサイト上で公表している
https://www.secom.co.jp/corporate/sustainability/
サステナビリティレポート2024は、2024年10月に公表予定です。
2 当連結会計年度において目標値を30%から50%へ引き上げました。
② テーマ別
[気候変動への対応]
当社では、リスク管理担当役員を委員長として本社主要部門の責任者で構成する「リスク対策委員会」において、気候変動を含めた全社横断的なリスクの把握および対策の検討等を行っています。全社的な調査結果をベースにリスクの洗い出しを行い、その影響の範囲、規模、想定被害額、緊急度、発生頻度などの視点から評価、対策が検討され、リスクの分析・評価結果を代表取締役社長に報告、重要性の高い案件は取締役会に報告されます。
気候変動問題は、それへの対応が世界共通の課題であると同時に、当社グループのセキュリティ、データセンター、メディカルなどの各事業の安定的・継続的な運営とサービス提供にとっても重要な課題です。この認識のもと、2019年にTCFD提言に賛同する署名を行いました。賛同を機に、TCFD提言に沿った検討を進め、当社グループの事業活動に影響を及ぼすと想定される気候変動リスクと機会を、以下のとおり特定しました。
当社グループの気候変動におけるリスクおよび機会
これら気候変動への取り組みはサステナビリティ推進室が中心となって、評価、対応を行う体制となっています。SBT、RE100、TCFD提言など気候関連の動向、炭素税や排出規制等の見通しなど、中長期的な気候変動におけるリスクと機会について幅広く情報収集と検討を続けています。
温室効果ガス排出については、2045年までにネットゼロを目指すとともに、その通過点である2030年度までに2018年度比で45%削減する中長期目標を策定し、温室効果ガス削減を進めています。
さらにグループの主要子会社で構成する「セコムグループサステナビリティ会議」を適宜開催し、気候変動に関連するさまざまなリスクと温室効果ガス削減などへの対応方針、関連する課題について情報共有し、グループ全体で「カーボンゼロ2045」への対応を推進しています。
<指標と目標>
当社は、気候変動におけるKGI・KPIを以下のとおり設定し、目標達成に向けた取り組みを進めています。
(注)1 目標のバウンダリーについて、「『カーボンゼロ2045』を達成する」はセコム㈱および連結子会社、その他はセコム㈱であります。
2 実績値はサステナビリティレポート2023で公表している内容を記載しております。
KPIの進捗は、ウェブサイト上で公表している
https://www.secom.co.jp/corporate/sustainability/
サステナビリティレポート2024は、2024年10月に公表予定です。
[人的資本への対応]
当社グループが「安全・安心・快適・便利」な社会を実現する「社会システム産業」の構築を目指すにあたって、人財は価値創造の源泉です。「社員の自己実現とダイバーシティ」をサステナビリティ重要課題の一つに位置付け、人的資本の価値を最大化するための人事施策を実行しています。「セコムグループ ロードマップ2027」における「人財戦略」では、求める人財像を明示したうえ、その人財が活躍できる基盤を整えるべく「従業員エンゲージメントの向上」「ワーク・ライフ・バランスの推進」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」に注力します。

人材育成方針
当社グループの「安全・安心」を提供するサービスの多くは、「人」を通じて提供されており、お客様からの「信頼」のもとに成り立っています。創業以来、「会社の発展と社員の向上は一体不可分」という人事運営の基本理念に基づいて、社会貢献意欲の高い人財を採用・育成することで成長を遂げてきました。今後も、人権方針のもと社員一人ひとりの多様なポテンシャルを最大限に引き出しつつ、「創意」や「強靭さ」、「国際性」を備えた人財の育成に取り組み、「自分達が変えていく」という強い思いを伴った企業文化を醸成することで、会社と個人が持続的に成長していくことを目指します。
基幹業務である警備業の研修・教育に加えて、管理職研修や部門別・職能別の研修を強化しています。また、海外留学制度、通信教育助成制度、希望する部署・職種の申告制度など、自律的なキャリア構築を支援する仕組みも整備しているほか、グループ会社間の、業種を超えた人財交流を実施して、適応力と広い視野を持った多様な人財の能力開発に取り組んでいます。
当社グループの社外との「共想・オープンイノベーション」を推進する「オープンイノベーション推進担当」を設置して、様々な分野の方が新たな価値の創造に向けて議論する「セコムオープンラボ」を開催するなどの活動を行っています。また、当社グループの新たな「対話」「協働」「発信」を実践する先進的な場となることを目指して2022年7月にはセコム本社ビル(東京都渋谷区)に「HARAJUKU 3rd Place」を開設し、ビジネスデザイン研究室が駐在して部門横断的活動を担っています。これらの施策において社内外の多様な人財が関わり合い、創意発揮することを通じて、求める人財の戦略的な育成に繋げてまいります。
社内環境整備方針
当社が「安全・安心」をお客様に提供し続けるためには、まず自らの業務執行体制が正常に機能していなければなりません。課題や問題を未然に発見し、適切に対応するためには、“風通しの良い”組織において多様な人財が活き活きと活躍できることが必要です。
2017年10月に、D&I推進担当を配置の上で「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を行いました。女性の職域拡大やリーダー育成をはじめ、多様な人財の確保と活躍促進に取り組んでいます。併せて、休暇取得促進制度や、法定を上回る出産・育児・介護支援制度などワークライフバランスの充実を図っています。
また、社員の健康管理・増進の取り組みとして、セコム健康保険組合およびセコム医療システム株式会社と協働し、健康診断・成人検診の受診結果データを利活用するための基盤を2018年に整備しました。このデータを利用したシステムを活用し、産業医から従業員への指導とその進捗管理を行っているほか、保健師等による健康指導や相談対応を行うサービスを社員に提供しています。
今後も社員のwell-beingを基礎とした理想的な組織を維持・発展すべく、社内環境を整備してまいります。
<指標と目標>
当社は、人的資本におけるKGI・KPIを以下のとおり設定し、目標達成に向けた取り組みを進めています。
(注)1 目標のバウンダリーはセコム㈱であります。
2 実績値はサステナビリティレポート2023で公表している内容を記載しております。
KPIの進捗は、ウェブサイト上で公表している
https://www.secom.co.jp/corporate/sustainability/
サステナビリティレポート2024は、2024年10月に公表予定です。
また、「多様性を活かした人財活躍を実現する」の実績値につきましては、
3 当連結会計年度において目標値を30%から50%へ引き上げました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。以下のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の早期対応に努める所存であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
①社会・経済
当社グループは、日本国内において主要事業を展開しているため、我が国の社会情勢、経済状況、金利変動等により国内の景気が低迷すると、当社グループの様々な契約の新規受注などに影響を及ぼす可能性があります。また、原材料不足などに起因する部品提供の停止等により、システムやサービスを計画通り販売・提供できない可能性があります。そのため、当社グループは社会情勢や経済政策などを注視し、市場のニーズを取り込んで常に最新の警備システムやサービスの開発・販売を行うとともに、サプライチェーンの動向を踏まえた計画的な物流管理など適時適切に対応しております。
②国際的な事業活動に伴うリスク
当社グループは、16の国と地域に進出しており、現地の政治、経済、社会情勢、労使関係、商慣習・文化等の相違、外資規制等の法規制の変更、インフラの整備状況、テロや紛争の発生など、日本国内とは異なるリスクがあります。当社グループは、海外進出時には、起こり得る各種リスクの十分な検討を行い、進出後は、現地での不断の情報収集を行い、速やかに対策を講じております。なお、当社の連結財務諸表は、通貨の円換算時の為替レートの変動による影響を受けます。
③自然災害・パンデミック
気候変動の進行などによる自然災害の頻発・甚大化、大規模な地震、火災や大規模停電、広域回線障害やインフラ損壊などの大事故、ウイルス・伝染病等の集団感染(パンデミック)などの事態が発生した場合、情報システムの停止、電子データの消失の可能性、及び当社グループのサービス提供や事業遂行などに支障をきたす可能性があります。当社グループでは、災害等の発生やパンデミックなどに備え、マニュアルの整備、対策品の備蓄、機動的な対応体制、訓練の実施などの対応策を講じております。
④法規制の変更
「安全・安心」というサービスを主に提供している当社グループの事業は、警備業法をはじめとした厳格かつ詳細な法令や規制に従うことを要求されております。このような法令や規制に変更が生じた場合には、速やかに対応する必要があり、大きな負担が発生する可能性があります。法規制の変更に基づくリスクを回避するため、当社グループでは関係当局の動向を注視し、適時適切に対応してまいります。
⑤技術環境の変化
当社グループが展開している事業分野において、新しい技術の急速な発展や技術環境の大きな変化により、迅速で大規模な開発・投資が必要となる可能性があります。当社グループは、専門組織を中心に研究・開発を推進するとともに、他社とも連携し、最先端技術などを広く活用して、常に最適なサービスやシステムの創出に努めております。
⑥労働市場の逼迫
少子化の進行などに伴い、当社グループが展開している各事業に必要な人材を確保できない場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。当社グループは、グループ横断的な採用活動や適正な人員配置の実施をはじめ、研修・教育体系を整備し人材育成を行うなど、必要な人材の確保・維持に努めています。また、従業員エンゲージメントの向上や、より少ない労働力でも事業運営を推進できるよう先端技術を活用した業務の効率化や生産性の向上に努めております。
⑦競争激化
当社グループの各事業分野への他社の新規参入や、競合会社の低価格戦略や新サービス展開などにより、当社グループの競争環境が激化するリスクがあります。これらの環境においても、サービス品質の向上、商品価値の拡大を進めるとともに、適切なコスト管理を通じて適正な収益の確保に努めます。なお、当社グループの主要事業であるセキュリティサービス事業への新規参入は、設備等の初期投資額が膨大であることや、即応体制の整備やノウハウの取得が困難であることなどから、参入障壁は高いものと考えております。
⑧年金債務
当社グループの年金資産の時価が下落し、年金資産の運用利回りが期待運用収益率を下回った場合や、予定給付債務を計算する基礎となる保険数理上の前提・仮定に変更があった場合には、数理計算上の差異が発生する可能性があります。厚生年金基金の代行部分を国に返上したことや、退職給付制度を確定拠出型年金制度およびキャッシュバランス制度(在籍期間中の年収に応じて毎年累積した額に10年国債応募者利回りの3年平均の利息を付与する制度)に移行したことにより、将来の数理計算上の差異発生リスクを低減しております。
①契約先・取引先にかかる信用リスク
当社グループは、営業活動や投融資活動などにおいて、主に国内の取引先に対し発生する信用リスクにさらされています。当社グループは、取引先の経営状況を把握するなど、リスクの早期発見・対応に努めております。
また、警備契約やリース契約などにおいて契約先が不測の事態に陥った場合、当社の初期投資等が損失になる可能性がありますが、特定の大口契約を有していないため、リスクは分散されております。
②情報漏洩
当社グループは、膨大な顧客情報や機密情報を取り扱っているため、当該情報が外部に漏洩した場合は、信用失墜や損害賠償請求などが発生するリスクがあります。当社グループは、外部からのネットワーク不正侵入への対策に加え、内部からの情報漏洩防止のため、規則・マニュアルを整備し、社員教育を徹底するとともに、ソフト・ハードの両面から情報漏洩対策を日々強化するなど、システム・人材の両面から情報流出の防止に努めております。
③投資
当社グループは、株式等、価格変動リスクを有する様々な有価証券を有しております。そのため、保有する有価証券の価値が下落した場合、評価損が発生する可能性があります。当社グループは、投資効率が低く保有意義の乏しい投資にならないよう厳格に審査の上、総合的な経営判断のもと、投資・売却を決定しております。
また、M&A、他社との資本提携・業務提携などの戦略的投資においては、当初想定したシナジー効果等が得られなかった場合、のれんの減損損失等が発生する可能性があります。当社グループは、M&A等の戦略的な投資に当たっては、専門機関も活用しながら各種デュー・デリジェンスを慎重かつ重点的に実施することで、リスクを低減させております。
④オペレーショナルリスク
当社グループは、業務遂行上の事故、情報管理・労務管理・職場環境での不適切な行為、顧客への営業等に関する不適切行為、事務処理や会計処理における誤入力や入力漏れ、ヒューマンエラー、プロセス・システムなどの機能不全、委託業者・取引先業者による不適切行為などが発生するリスクがあります。当社グループでは、リスク対策委員会による会社横断的な対策の検討や、会社理念の透徹、行動規範の遵守、定期的な研修、運用・ルールの徹底、システム管理、カメラの導入などにより、不適切な行為の防止・抑止に努めております。
⑤グループガバナンス
当社グループは、セキュリティサービス事業を中心とした様々な分野において、グループ各社が主体となり事業活動を推進しております。そのため、グループ各社における経営判断・投資判断、内部における不適切な行為などによりグループ経営に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当社の内部監査部門による監査、定期的なグループ経営会議を通じたグループ情報および運営理念の共有、内部通報制度などによりグループガバナンスを強化しております。
①メディカルサービス事業におけるリスク
当社グループは、メディカルサービス事業において、医療機関に対し貸付および債務保証等を実施しており、診療報酬の引き下げなど医療制度の改定等による事業環境の変化などにより影響を受ける可能性があります。メディカルサービスの事業運営においては、事業環境変化への柔軟かつ迅速な対応、医療機関の経営状況の継続的な監視および経営改善支援などを行うことにより、適正なリスクコントロールに努めております。
②保険事業におけるリスク
当社グループは、保険事業において火災保険などの損害保険を販売しており、地震・風水害などの自然災害、火災その他の大事故により影響を受ける可能性があります。
当社グループは保険引受にあたっては、「契約引受規程」に基づき引受を行い、継続的な損害率の検証を行うなど、適正なリスクコントロールに努めており、また巨大災害・集積リスクについては再保険カバーや異常危険準備金積立てにより対応しております。資金運用にあたっては、流動性の確保を重視するなど、様々なリスク・負債特性に合わせた運用を行っております。
③不動産価値変動のリスク
当社グループは、不動産賃貸事業などにおいて、不動産を有しております。不動産の価値は、マクロ経済など様々な要因により変動するリスクを有しております。当社グループは、その様々な要因やその資産の活用状況、タイミングなどを総合的に勘案し、取得・保有・売却などの意思決定を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の日本経済は、雇用・所得環境が改善する下で、設備投資や個人消費などで緩やかな回復の動きが見られました。一方、物価上昇や世界的な金融引締め等による経済の下振れリスク、海外経済情勢、さらには金融・為替市場の動向などに留意が必要な状況が続きました。
このような状況において、当社グループは、「安全・安心・快適・便利」な社会を実現する「社会システム産業」の構築をめざし、「セコムグループ2030年ビジョン」の実現に取り組んでいます。また、2023年5月には、ビジョン実現に向けて今後の目指すべき方向性をより明確化し、成長をさらに確かなものとするために「セコムグループ ロードマップ2027」を策定し、各種取り組みを積極的に展開しております。
2023年4月には、「セコム・ホームセキュリティ」のご契約先向けに、日本初となる「Apple Watch」の転倒検出機能と連携したセコムへの緊急通報と、日常の健康管理ができる「YORiSOS(よりそす)」アプリの提供を開始しました。また、10月には、日本初となる、AIを活用して巡回・侵入監視を行うセキュリティドローン「セコムドローンXX(ダブルエックス)」の開発を発表するなど、様々な取り組みを通じて、ますます多様化・高度化するお客様の安心ニーズに対し、きめ細やかな切れ目のないサービスを提供することに努めました。
なお、2024年3月には、国際的な環境NGOのCDPが2023年に実施した気候変動質問書の「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、4年連続で最高評価である「リーダー・ボード」に選定されました。
セグメントごとの業績につきましては、次のとおりであります。
セキュリティサービス事業では、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)を中心に、常駐警備や現金護送のサービスを提供するとともに、安全商品を販売しております。
事業所向けでは、防犯や防災をはじめ、従業員の就業管理などによる事業効率化に至るまで、企業の事業運営に有益な機能をオールインワンで提供するシステムセキュリティ「AZ」を提供しております。当連結会計年度は、オフィスビルや研究施設、工場、大型商業施設などあらゆる建物に対応した入退室管理システム「AZ-Access」(エーゼット・アクセス)の販売を開始し、「AZ」とともに拡販に努めました。
家庭向けでは、防犯・防火ニーズに加え、お客様の生活スタイルに柔軟に対応でき、様々な機器と接続することでサービスを拡張できる「セコム・ホームセキュリティNEO」を提供しております。当連結会計年度は、「セコム・ホームセキュリティ」のオプションサービスとして配信している「YORiSOS(よりそす)」アプリの利用拡大を図るなど、利便性の向上したホームセキュリティシステムを積極的に拡販しました。
海外では、経済発展が続く東南アジアを中心に、緊急対処サービスや画像監視を特長とするセキュリティサービスの拡販に努めるとともに、最先端技術を取り込みながら機械警備のデジタルトランスフォーメーションを推進し、現地市場に適応したサービス、システムの開発・導入を推進しました。
当連結会計年度は2022年7月より連結子会社となった株式会社セノンの寄与、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)の販売が堅調に推移したこと、安全商品の売上が増大したことなどにより、売上高は6,140億円(前期比5.3%増加)となり、営業利益は人件費の増加により、1,127億円(前期比1.1%増加)となりました。
防災事業では、オフィスビル、プラント、トンネル、文化財、船舶、住宅といった様々な施設に対し、お客様のご要望に応えた高品質な自動火災報知設備や消火設備などの各種防災システムを提供しております。当連結会計年度も、国内防災業界大手2社である能美防災株式会社およびニッタン株式会社が、それぞれの営業基盤や商品開発力などを活かした防災システムの受注に努めました。
当連結会計年度は火災報知設備や消火設備の増収により、売上高は1,606億円(前期比10.3%増加)となり、営業利益は火災報知設備の原価率の改善などにより、153億円(前期比33.7%増加)となりました。
メディカルサービス事業では、訪問看護サービスや薬剤提供サービスなどの在宅医療サービスを中心として、シニアレジデンスの運営、電子カルテの提供、医療機器・医薬品等の販売、介護サービス、医療機関向け不動産賃貸等様々なメディカルサービスを提供しております。
当連結会計年度はインドにおける総合病院事業会社タクシャシーラ ホスピタルズ オペレーティング Pvt.Ltd.の増収および医薬品の販売が好調となったことなどにより、売上高は801億円(前期比3.2%増加)となり、営業利益は原価率の上昇などにより、51億円(前期比11.8%減少)となりました。
保険事業では、当連結会計年度もセキュリティシステム導入によるリスク軽減を保険料に反映した事業所向けの「火災保険セキュリティ割引」や家庭総合保険「セコム安心マイホーム保険」、ガン治療費の実額を補償する「自由診療保険メディコム」、セコムの緊急対処員が要請に応じて事故現場に急行するサービスを付帯した自動車総合保険「セコム安心マイカー保険」など、当社グループならではの保険の販売を推進しました。
当連結会計年度は保険引受収益および運用収益の増収などにより、売上高は581億円(前期比4.7%増加)となり、営業利益は自然災害による損害の減少などにより、25億円(前期比146.1%増加)となりました。
地理空間情報サービス事業では、航空機や車両、人工衛星などを利用した測量や計測で地理情報を集積し、加工・処理・解析した空間情報サービスを、国および地方自治体などの公共機関や民間企業、さらには新興国や発展途上国を含めた諸外国政府機関に提供しております。
当連結会計年度は国内公共部門および国内民間部門の減収などにより、売上高は605億円(前期比2.6%減少)となり、営業利益は人件費の増加による販売費及び一般管理費の増加により、53億円(前期比21.5%減少)となりました。
BPO・ICT事業では、データセンターを中核に、セコムならではのBCP(事業継続計画)支援や情報セキュリティ、クラウドサービス、認証サービスの提供に加えて、コンタクトセンター業務を含む様々なBPO業務の受託・運営を行っています。
当連結会計年度はコンタクトセンター業務やバックオフィス業務全般のBPOサービスを提供する株式会社TMJの減収により、売上高は1,272億円(前期比0.7%減少)となり、営業利益はデータセンター事業の原価率の改善により、118億円(前期比1.8%増加)となりました。
その他事業には、不動産賃貸および建築設備工事などが含まれます。
当連結会計年度は売上高は540億円(前期比10.4%増加)となり、営業利益は73億円(前期比10.4%増加)となりました。
これらの結果、当連結会計年度における連結売上高は2022年7月より連結子会社となった株式会社セノンの寄与や、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)の販売が堅調に推移したこと、安全商品の売上が増大したことなどによる、セキュリティサービス事業の増収などにより、1兆1,547億円(前期比4.9%増加)となりました。営業利益は地理空間情報サービス事業などの減益はありますが、セキュリティサービス事業、防災事業および保険事業などの増益により、1,406億円(前期比2.9%増加)となりました。経常利益は米国などにおける投資事業組合運用益で75億円増加したことなどにより、1,668億円(前期比6.9%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,019億円(前期比6.1%増加)となりました。
なお、当連結会計年度の売上高、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を達成することができました。
(財政状態の状況)
当連結会計年度末の総資産は、前期末比917億円(4.6%)増加の2兆807億円となりました。
流動資産は、現金及び預金が814億円(15.6%)減少の4,409億円となり、流動資産合計は前期末比699億円(6.9%)減少の9,375億円となりました。
固定資産は、投資有価証券が1,273億円(42.7%)増加の4,256億円、有形固定資産が284億円(7.1%)増加の4,323億円、退職給付に係る資産が140億円(25.3%)増加の695億円となり、固定資産合計は前期末比1,616億円(16.5%)増加の1兆1,432億円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前期末比170億円(2.5%)増加の6,900億円となりました。
流動負債は、未払金が64億円(14.6%)増加の510億円、現金護送業務用預り金が45億円(3.8%)増加の1,235億円、設備未払金等の減少によりその他が96億円(31.8%)減少の208億円となり、流動負債合計は前期末比8億円(0.2%)増加の3,783億円となりました。
固定負債は、繰延税金負債が89億円(81.8%)増加の198億円、リース債務が82億円(56.0%)増加の228億円となり、固定負債合計は前期末比162億円(5.5%)増加の3,117億円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金が614億円(5.6%)の増加、自己株式が407億円(37.3%)の減少、その他有価証券評価差額金が218億円(116.5%)の増加、為替換算調整勘定が117億円(112.0%)の増加、非支配株主持分が146億円(9.7%)の増加となり、純資産合計は前期末比746億円(5.7%)増加の1兆3,906億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の58.5%から58.8%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の5,427.63円から5,816.74円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、全体で1,657億円の資金の増加(前連結会計年度は1,464億円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益1,637億円、減価償却費652億円であります。また、主な資金の減少要因は、法人税等の支払額441億円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、全体で1,622億円の資金の減少(前連結会計年度は704億円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、警報機器及び設備等の有形固定資産の取得による支出812億円、投資有価証券の取得による支出601億円、関連会社株式の取得による支出337億円であります。また、主な資金の増加要因は、投資有価証券の売却及び償還による収入340億円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、全体で954億円の資金の減少(前連結会計年度は778億円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、自己株式の増加額440億円、配当金の支払額404億円、リース債務の返済による支出64億円であります。
これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ894億円減少して4,241億円となりました。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
経営成績の分析
(概要)
当社グループは、セキュリティサービスを中心に防災、メディカルサービス、保険、地理空間情報サービス、BPO・ICT、不動産賃貸などの事業活動全般にわたってサービスの拡充、営業の拡大、システムの構築、商品の開発に努めるなど、積極的な事業展開を図ってまいりました。
当連結会計年度における連結売上高は2022年7月より連結子会社となった株式会社セノンの寄与や、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)の販売が堅調に推移したこと、安全商品の売上が増大したことなどによる、セキュリティサービス事業の増収などにより、1兆1,547億円(前期比4.9%増加)となりました。営業利益は地理空間情報サービス事業などの減益はありますが、セキュリティサービス事業、防災事業および保険事業などの増益により、1,406億円(前期比2.9%増加)となりました。経常利益は米国などにおける投資事業組合運用益で75億円増加したことなどにより、1,668億円(前期比6.9%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,019億円(前期比6.1%増加)となりました。
(売上高)
2022年7月より新たに連結子会社となった株式会社セノンの寄与もあり、売上高は前期比4.9%増加の1兆1,547億円となりました。各事業セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、セキュリティサービス事業が53.2%、防災事業が13.9%、メディカルサービス事業が6.9%、保険事業が5.0%、地理空間情報サービス事業が5.2%、BPO・ICT事業が11.0%、その他事業が4.8%となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上原価は、前期比5.1%増加の7,974億円となり、売上高に占める割合は前連結会計年度の68.9%から69.1%になりました。
販売費及び一般管理費は、前期比5.3%増加の2,166億円となり、売上高に占める割合は前連結会計年度の18.7%から18.8%になりました。
これらの結果、当連結会計年度の営業利益は1,406億円(前期比2.9%増加)となりました。
(経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度は、米国などにおける投資事業組合運用益の増加などにより、営業外収益が前期比82億円(35.5%)増加となり、営業外費用が前期比15億円(38.7%)増加したことにより、経常利益は1,668億円(前期比6.9%増加)となりました。
法人税、住民税及び事業税ならびに法人税等調整額の合計は前期比23億円(4.9%)増加の495億円となり、税金等調整前当期純利益に対する負担率は前連結会計年度の30.8%から30.3%に低下しました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益が前期比22億円(22.0%)増加の122億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は1,019億円(前期比6.1%増加)となり、売上高当期純利益率は前連結会計年度の8.7%から8.8%になりました。また、1株当たり当期純利益は前連結会計年度の445.02円から482.04円、ROEは前連結会計年度の8.4%から8.5%となりました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
セキュリティサービス事業は、2022年7月より連結子会社となった株式会社セノンの寄与、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)の販売が堅調に推移したこと、安全商品の売上が増大したことなどにより、売上高は6,268億円(前期比5.3%増加)となり、営業利益は人件費の増加により、1,127億円(前期比1.1%増加)、売上高営業利益率は前連結会計年度の18.7%から18.0%になりました。
資産は、長期貸付金、退職給付に係る資産、有形固定資産などが増加しましたが、現金及び預金などの減少により、9,715億円(前期比3.8%減少)となりました。
防災事業は、火災報知設備や消火設備の増収により、売上高は1,638億円(前期比10.1%増加)となり、営業利益は火災報知設備の原価率の改善などにより、153億円(前期比33.7%増加)、売上高営業利益率は前連結会計年度の7.7%から9.4%になりました。
資産は、繰延税金資産などが減少しましたが、投資有価証券、退職給付に係る資産、受取手形、売掛金及び契約資産などの増加により、1,961億円(前期比5.0%増加)となりました。
メディカルサービス事業は、インドにおける総合病院事業会社タクシャシーラ ホスピタルズ オペレーティング Pvt.Ltd.の増収および医薬品の販売が好調となったことなどにより、売上高は803億円(前期比3.2%増加)となり、営業利益は原価率の上昇などにより、51億円(前期比11.8%減少)、売上高営業利益率は前連結会計年度の7.5%から6.4%になりました。
資産は、長期貸付金などが減少しましたが、現金及び預金、有形固定資産などの増加により、1,426億円(前期比4.6%増加)となりました。
保険事業は、保険引受収益および運用収益の増収などにより、売上高は608億円(前期比3.9%増加)となり、営業利益は自然災害による損害の減少などにより、25億円(前期比146.1%増加)、売上高営業利益率は前連結会計年度の1.8%から4.2%になりました。
資産は、有価証券、現金及び預金などが減少しましたが、投資有価証券などの増加により、2,569億円(前期比7.6%増加)となりました。
地理空間情報サービス事業は、国内公共部門および国内民間部門の減収などにより、売上高は607億円(前期比2.6%減少)となり、営業利益は人件費の増加による販売費及び一般管理費の増加により、53億円(前期比21.5%減少)、売上高営業利益率は前連結会計年度の10.9%から8.8%になりました。
資産は、退職給付に係る資産、受取手形、売掛金及び契約資産などの増加により、731億円(前期比4.3%増加)となりました。
BPO・ICT事業は、コンタクトセンター業務やバックオフィス業務全般のBPOサービスを提供する株式会社TMJの減収により、売上高は1,403億円(前期比1.0%増加)となり、営業利益はデータセンター事業の原価率の改善により、118億円(前期比1.8%増加)、売上高営業利益率は前連結会計年度と同率の8.4%になりました。
資産は、有形固定資産などの増加により、1,809億円(前期比11.2%増加)となりました。
その他事業は、売上高は554億円(前期比9.7%増加)となり、営業利益は73億円(前期比10.4%増加)、売上高営業利益率は前連結会計年度の13.2%から13.3%になりました。
資産は、短期貸付金などの減少により、1,453億円(前期比1.8%減少)となりました。
なお、以上のセグメント売上高および営業損益はセグメント間取引を含む数値であり、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況(経営成績の状況)」に記載した売上高(セグメント間取引を含まない外部顧客に対する売上高)とは一致しません。
財政状態の分析
財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況(財政状態の状況)」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額が441億円となりましたが、税金等調整前当期純利益が1,637億円、減価償却費が652億円となったことなどにより、全体では1,657億円の資金の増加となりました。
前連結会計年度との比較では、投資事業組合運用益が75億円増加となりましたが、税金等調整前当期純利益が103億円の増加、リース債権及びリース投資資産の増減額が前連結会計年度の36億円の増加に対し12億円の減少、未払消費税等の増減額が前連結会計年度の12億円の減少に対し30億円の増加、法人税等の支払額が33億円減少となったことなどにより、営業活動から得た資金は前期比193億円(13.2%)の増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却及び償還による収入が340億円となりましたが、警報機器及び設備等の有形固定資産の取得による支出が812億円、投資有価証券の取得による支出が601億円、関連会社株式の取得による支出が337億円となったことなどにより、全体では1,622億円の資金の減少となりました。
前連結会計年度との比較では、関連会社株式の取得による支出が335億円増加、有形固定資産の取得による支出が315億円増加、投資有価証券の売却及び償還による収入が192億円減少となったことなどにより、投資活動に使用した資金は前期比918億円(130.3%)の増加となりました。
この結果、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの純額)は、34億円の資金の増加(前連結会計年度は759億円の資金の増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の増加額440億円、配当金の支払額404億円、リース債務の返済による支出64億円となったことなどにより、全体では954億円の資金の減少となりました。
前連結会計年度との比較では、自己株式の増加額が142億円増加となったことなどにより、財務活動に使用した資金は前期比176億円(22.7%)の増加となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期比894億円(17.4%)減少の4,241億円となりました。
当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、以下のとおりであります。
当社グループは、柔軟な事業活動を行い、強固な財務基盤を保つために、高い流動性を維持することを基本方針としております。また、「社会システム産業」の構築に向けて、営業活動から得た資金や、市場調達および金融機関からの借入等により調達した資金で、積極的に事業投資活動を行っております。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は692億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,241億円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、会計方針の適用ならびに資産、負債、収益および費用の報告金額に影響を与える判断、見積りの設定を行うことが必要となります。これらの見積りは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性を伴うため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の評価において、減損損失の兆候がある場合には、減損の判定を行っています。事業用資産においては管理会計上の区分で資産グルーピングを行い、賃貸不動産および遊休資産などは個別物件単位で区分を行い、当連結会計年度で収益性が著しく低下した場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額の見積りは、処分価額、不動産鑑定評価額などで算出する正味売却価額、将来キャッシュ・フロー、割引率などで算出する使用価値などにより測定しております。正味売却価額上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資産グループの使用期間中および使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率などの仮定は、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
b. のれん及びその他無形資産
当社グループでは、のれん及びその他の無形固定資産の評価において、減損損失の兆候がある場合には、減損の判定を行っています。のれん及びその他の無形固定資産の回収可能価額の見積りや減損判定に当たっては、必要に応じて外部専門家などによる評価を活用しております。なお、回収可能価額の測定で使用する、将来キャッシュ・フロー、割引率などの仮定は、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
c. 貸倒引当金
当社グループでは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、過去の実績、将来の見通し等を総合的に勘案して見積もられた回収不能見込額を、貸倒引当金として計上しております。回収不能見込額の見積りにおいて使用される仮定は、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、回収不能見込額が増減し、貸倒引当金を増額または減額する可能性があります。
d. 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、将来の課税所得の見積りにあたっては、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されていますが、見積りは、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化などにより、影響を受ける可能性があり、また、税制改正により実効税率が変更された場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益が変動する可能性があります。
e. 退職給付費用及び退職給付に係る負債
当社および当社と同一の退職給付制度を有する国内連結子会社においては、退職金制度と確定拠出型年金制度を採用しております。退職給付費用及び退職給付に係る負債について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、金利変動の市場動向等、入手可能なあらゆる情報を総合的に判断して決定した割引率、予想昇給率、退職率、統計数値に基づいて算出される死亡率および年金資産の長期期待運用収益率などが含まれております。これら年金数理計算の前提条件には将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって影響を受ける可能性があるため、前提条件と実際の結果が異なる場合、または前提条件の変更がある場合には、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
(1) セコムSCセンターの賃貸借契約
当社は1996年4月23日に研究・情報の拠点として、日鉄鉱業株式会社と三鷹日新ビル(呼称:セコムSCセンター)および敷地等の賃貸借契約を締結いたしました。また、2010年より賃貸借契約を締結した三鷹日新ビルアネックス(呼称:セキュアデータセンター)を含めて表示しております。
(2) セコム本社ビルの賃貸借契約
当社は有限会社原宿ビルと、セコム本社ビルおよびその敷地等の賃貸借契約を更新継続しております。
当社グループ(当社および連結子会社)は、安全を核とする「社会システム産業」を確立させるために、提出会社において研究部門と開発部門を組織し、必要な技術の研究、開発に積極的に取り組んでおります。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額
研究部門(IS研究所)では、当社の成長の原動力となるべく、未来を見据えた研究活動を行っており、AI、IoT、サイバーセキュリティなどこれからの技術動向を捉え、最先端の技術開発に取り組んでいます。
未来の社会に必要となるサービスを創造するための最適アプローチとして、当社の技術と世の中の技術の融合を加速させるためのオープンイノベーションを推進し、研究所がこれまでに築き上げた外部組織との幅広い繋がりをもとに、産学官連携を強力に推し進めております。
今後、将来に向けて、当社が目指す、安全・安心で快適・便利な社会の実現に向け、最先端の技術の力でサービス提供にかかる貴重な「人の力」を大きく増幅させる研究開発により、サービスイノベーションを推進してまいります。
① 画像監視の高度化に対応するための空間認識技術、対象物検知技術、行動認識技術、人物同定および人属性の解析技術、画像AIのブラックボックス化を回避する機械学習技術、それらの核となる画像認識・機械学習の先端技術の研究等
② 光、スペクトル情報、電磁波、可聴音、超音波など多様な領域のセンシング技術および各種センサーの融合活用技術の研究等
③ デジタル社会の安全や信頼を確保するための新たな暗号・認証技術、サイバーセキュリティ技術の研究等
④ IoT機器やAIを活用した高度なサービス実現のためのシステムアーキテクチャやプライバシー保護技術の研究等
⑤ 地理情報システム「GIS(Geographic Information System)」や3次元建物情報モデル「BIM(Building Information Modeling)」などを統合した空間情報およびその応用技術の研究等
⑥ サービス品質・効率向上のためのオペレーション解析・最適化技術・シミュレーション技術に関する研究等
⑦ 超高齢社会の今後の動向を見据えた遠隔医療、医療の質向上・経営効率化の為の病院内のデータ分析技術の研究等
⑧ 将来の社会システムへの影響の大きい環境エネルギーなどの社会的課題や新たな犯罪・事故の芽を察知するための研究等
⑨ 犯罪・事故、重要な社会現象に関するリスクマネジメント的観点からの研究等
⑩ プロトタイプ構築において仕様変更を前提とした設計方法の研究、システムの安定動作実現に関する研究等
⑪ クラウドコンピューティングやAI技術の活用のための要素技術の研究等
当社では、1960年代にIoTの先駆けとも言える国内初のオンラインセキュリティシステムを開発しました。開発部門(技術開発本部)では、そのオンラインセキュリティシステムを始め、「社会システム産業」の基幹となる技術やシステムの開発を行っております。
例えば、ご契約先での異常発生を感知するセンサー、家庭向けから大規模施設向けにいたる幅広い用途に応じたセキュリティ・出入管理、消火・防災、ロボット・ドローン、人やモノの位置情報、そして高齢者のみまもり等、社会のニーズに適合したシステムや商品を積極的に開発しております。
当社グループでは、2030年に向けたビジョンで「あんしんプラットフォーム」構想を掲げており、その実現のためには社会のニーズを先取りした、独創性と高い信頼性が確保されたシステム・商品開発が必要不可欠です。開発部門では、これからもAI・IoT・ビッグデータなどを積極的に活用した新サービス・新商品を意欲的に供給していくための開発推進体制を構築して取り組んで行きます。
① 開発戦略グループ
商品開発テーマの推進・管理、戦略的な新システム・新商品の企画を行う。
社内外の技術連携を推進し、グループシナジーを活かした新商品およびサービス創出を推進する。
② クラウドエンジニアリンググループ
クラウドの活用を推進し、新サービスの企画・開発、社内外の多様なサービスとの連携を実現する。
③ 管理・技術情報グループ
先端技術・技術動向の調査、技術開発本部の円滑な運営に関わる環境整備・管理業務を行う。
④ 品質保証グループ
セコムのシステム・商品の品質保証業務を担う。フィールドの意見を活かし、様々な事案の解析・改善を行う。
また、当社グループ各社の開発機器の品質向上に関する連携・サポートを行う。
⑤ 海外グループ
積極的なグローバル展開を目的として、当社の高信頼性機器開発のノウハウを活かして、海外各社の機器開発支
援を行う。
⑥ 開発センター
セコムのシステム・商品の開発・設計を担う開発実行部門。システム・要素技術によりチーム編成し、各チーム
の連携により高品質・高機能・独創的な新システム・商品の開発を推進する。
また、防災事業では、社会の安全に貢献することを基本理念として、火災事象の基礎研究をベースとした火災の早期検知・消火方法の確立に努めており、これらをもとに新しい防災システムの構築および機器の開発を行っております。地理空間情報サービス事業では、パスコ総合開発センターが中心となって基礎技術や応用技術の研究開発を行い、プロジェクトチームを編成して、既存業務の効率化技術の研究開発、新製品の研究開発等を行っております。
提出会社における研究開発分野および研究開発体制は、下図のとおりであります。
