当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営環境について
2024年度以降も当社を取り巻く国内ITサービス業界全体は堅調に拡大すると見込まれていますが、地方公共団体を中心とする公共分野においては「自治体システム標準化」を迎える2025年に向けて、従来型の自治体ソリューション市場は急拡大するとともに、標準化対応後の環境は大きく変化しつつあります。
一方、当社の注力分野であるDX市場は堅調に推移することが予測されています。特に公共分野においては2023年に施行されたこども基本法や、同法に基づく大綱による「こどもまんなか社会」の実現など、政府は子育て政策に注力しており、当社が強みを持つ福祉分野の拡大とともに、自治体DX、地域の民間向けDX需要のさらなる拡大につながると期待されています。
(2) 当社グループの経営戦略について
当社グループは、「創造と和と挑戦をもって お客さまからの信頼をもとに未来をひらき、世界中のお客さまと感動と喜びを分かち合い、豊かで安全・安心な社会の創生に貢献する」という経営理念に基づき、事業活動を通じた社会課題解決と、ITテクノロジーを活用した新たな価値の創造に取り組んでいます。
<対処すべき課題>
当社グループはこれまで、お客様の経営課題解決に寄与するDX企業として様々なソリューションを提供してまいりました。今年度より新たに始動させた「2026中期経営計画」ではAIを活用したDXソリューションを拡充し、お客様のDX化を加速させるとともに、当社自らもAIを活用して、さらにDX企業としての進化を遂げることにより、お客様に高度で、高品質なソリューション・サービスを提供してまいります。
事業戦略の3つの柱として「地方公共団体情報システムの標準化対応」、「次世代ソリューションの開発」、「事業基盤拡充」に取り組み、中期経営計画の実現とともに、持続可能な社会の創造に貢献するAI×DX企業として、各種施策を推進してまいります。
①地方公共団体情報システムの標準化対応
地方自治体情報システム標準化方針に則り、当社の自治体向けソリューション「WebRings」の標準化対応開発を計画通り進め、2024年度より本格的に標準化システムへの移行を進めていきます。全国の拠点網を活用するとともに、アライアンス先の日本電子計算株式会社とも連携し、万全の体制で標準準拠システムへの移行支援を進めてまいります。
②次世代ソリューションの開発
「手続きBaton」をはじめ、自治体DX、地域・民間DXソリューションの拡充および業務資本提携先である株式会社三菱総合研究所グループとともにAIを活用した自治体向けソリューション「AI相談パートナー」の拡販を進めてまいりました。このノウハウを活用し、地域・民間での相談業務DXソリューションとして、拡販を進めてまいります。さらに、株式会社三菱総合研究所との協業関係を深化させ、シンクタンク×ITの実行力を発揮し、住民の課題解決・地域のデジタル化を推進する「地域共創DX」にも取り組んでまいります。
また、自治体システム標準化後を見据え、次世代WebRingsの開発へ着手いたします。次世代WebRingsは、多様化する住民サービスに応えるべく、「つながる」をコンセプトとし、自治体と民間事業者をつなげ、異業種横断的な住民サービスの提供を目指します。
③事業基盤拡充
全国の拠点網の拡充を図るとともに、アライアンスを通じて、同業他社との連携を通じて、顧客数の拡大・顧客基盤の拡充を図ります。
加えて、自治体から、地域・民間へと、さらに多くのお客様にサービスを提供できるようソリューションの拡充を進めてまいります。
また、経営基盤の強化を図るべく、「人的資本投資」、「財務・資本戦略」、「ITインフラ投資」を推進してまいります。「人的資本投資」として、社員一人ひとりが輝くための制度・仕組み・環境を整備し、自律型人材を育成し、戦略的な人材配置や外部プロフェッショナル人材の登用、人材のリスキルを積極的に行ってまいります。「財務・資本戦略」としては、株主・投資家の価値向上に向けた資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応、事業拡大に向けた戦略的投資、資本構成の最適化、株主還元施策などを進めてまいります。
また、セキュリティ対策の更なる強化、AIを主とした生産性・品質向上に寄与するITインフラの高度化を実現する「ITインフラ投資」を行います。
社員一人ひとりが輝き、持続的に成長し、活躍することのできる環境・企業風土を醸成し、さらなる成長企業として当社グループは、挑戦・進化してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、経営理念に謳われている「豊かで安全・安心な社会の創生」に向けて、事業活動を通じて社会課題解決に取り組み、事業成長とサステナブルな社会への貢献を実現していきます。
[ガバナンス]
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当社はサステナビリティ活動を経営の重要事項と捉えており、中長期的かつ社外視点を反映させるため、「取締役会」を意思決定機関と定めています。 具体的な活動は、サステナビリティ推進部門が企画し、経営会議で協議、審議されたうえで取締役会に上程され適切かつ迅速に意思決定されます。決定された事項に基づき、サステナビリティ推進部門を中心に各部門・グループ会社でサステナビリティ活動に取り組んでいます。 |
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[戦略]
当社グループでは、「持続可能な社会の創造に貢献するDX企業」へと変革に向けて「経営基盤強化」に取り組んできました。「2026中期経営計画」では、『挑戦・進化し続ける企業』として、お客様と共に未来をつくるAIを活用したDX企業を目指してまいります。
以下の基本方針に基づいて活動しています。
<基本方針>
地球環境問題への取組み
・脱炭素社会実現への貢献に向け、すべての企業活動において気候変動リスクの低減に取り組みます。
社会との関わり
・すべてのステークホルダーへの適切な情報開示と対話により、信頼構築に努めます。
・持続可能な地域社会の実現に貢献する、高品質かつ価値あるサービスの提供に努めます。
人権の尊重
・あらゆる人権侵害、差別等の加担への回避に努め、いかなる場合にも人権を尊重します。
取引先との公正・適正な取引
・透明かつ適正な取引を行うことで取引先との信頼関係を強化し、あらゆる腐敗行為防止に取り組みます。
社員との関わり
・多様性のある組織づくり、働きがいのある職場づくりに努め、社員一人ひとりが活躍できる環境・風土を醸成します。
ガバナンス
・社会に向け持続的に価値を創出するとともに、透明性・信頼性の高い企業統治を行います。
[リスク管理]
当社は、サステナビリティ関連のリスクおよび機会を識別、評価し、管理するためのリスク管理体制を強化しています。
リスク管理については、リスク管理部門が全社リスクマネジメントを統括し、リスク項目ごとに関連する部門がリスクオーナーとして管理しています。リスク管理状況については、リスク管理部門より、取締役会、経営会議に報告を行っています。
<リスクマネジメントプロセス>
企業を取り巻くリスクは多種多様となっていることから、事業の遂行におけるリスクを網羅的、かつ一元的に把握する体制を構築しています。平時においてリスクの洗い出しを行い、リスクシナリオを整理したうえで、「影響度・発生可能性・管理体制充実度の評価」、「リスク対応策の策定」、「初期段階のリスク通報」、「予兆段階・危機段階の活動内容」を整理したリスク管理基準を設けています。
(2) 人的資本
当社は「2026中期経営計画」の重点戦略として「サステナブル経営」を掲げ、その柱の一つとして「人的資本投資」を位置づけております。
[ガバナンス]
経営戦略・事業戦略に連動した人材戦略を実現するため、取締役会・経営会議における議論を経た基本戦略をベースに、人事担当役員・人事部門と経営企画部門・財務部門・事業企画部門との横断的な協議を行い、個別施策を立案・推進しています。
また、人材育成の面では、開発現場における最新の技術知見を活かすために、「人材開発センター」を開発部門に設置して、チャレンジし続ける人材育成および事業や技術トレンドの変化に応じたリスキリングに取り組んでいます。
[戦略]
2026中期経営計画における人的資本投資の戦略としては、①自律型人材の育成、戦略的配置、②多様な人材の確保、③評価・処遇制度の見直し、の3点を柱としています。
①自律型材育成、戦略的配置
IT人材育成指標である「iCD(iコンピテンシ ディクショナリ)」を活用し、社員一人ひとりがスキル開発計画を作成し、上司と計画を共有しています。更に今後、社員全員が中長期的なキャリアプランを作成、共有することで自律的にキャリアをデザインするとともに、業務戦略に基づく人材ニーズに応じた戦略的配置を進めてまいります。
なお、人材育成に関する指標においては、一人当たり研修時間は4時間増加し、117.6時間となりました。特にDX人材研修では「新人DX研修」「データサイエンスワークショップ」等を実施し、受講者数が増加しました。2026中期経営計画においてはAI関連の研修を強化してまいります。
②多様な人材の確保
若年層人口の減少および新卒採用市場の競争激化に対応するため、初任給の見直し、若年層の住宅補助策の拡充を図ります。また採用人材の間口を更に広げるため、地方就職イベントへの出展増、働き方改革の浸透を通じた女性採用比率の向上、第二新卒採用等に注力します。
また、SE経験者以外を含めたキャリア採用を強化し、外部プロフェッショナル人材の数と質の拡充を図ってまいります。
なお、多様性に関する指標では女性管理職比率は13.5%と1.3ポイント上昇しました。また健康安全・労働慣行に関する指標では平均残業時間は月14.8時間と0.6時間減少しました。
③評価・処遇制度の見直し
自律型人材の育成を通じて「AIを活用するDX企業」への変革をリードするため、年功序列型の制度を改め、専門職やマネジメント職への早期登用、戦略的登用を実施します。評価・処遇制度も職務能力や実績成果をより重視した体系に見直してまいります。
[リスク管理]
採用の難易度が高まることが最大のリスクと考えています。このリスクに対処するために、社員の成長機会と活躍できる環境つくりに努めております。教育研修の充実、ダイバーシティ施策の推進、新しい働き方の推進、社員の心身のケアのための制度等による環境整備と風土醸成に取り組んでいます。
[指標と目標]
人的資本に関する指標と目標(当社単体)
当社グループでは、人的資本戦略に関する戦略および指標については、当社において関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みを行っているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループでの指標等の記載が困難であります。このため以下の指標における目標と実績は当社単体のものを記載しております。
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2022年度 |
2023年度 |
目標値 |
補足 |
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人材育成に関する指標 |
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113.6時間 |
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|
306千円 |
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(2020年度からの累計人数) |
382名 |
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選抜研修受講者数
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流動性に関する指標 |
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24.5% |
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--- |
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18.39年 |
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多様性に関する指標 |
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22.1% |
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次年度期初数値 |
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37.1% |
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12.2% |
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次年度期初数値 |
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|
83.0% |
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男性を100とした場合の女性の割合(正規労働者) |
|
|
93.3% |
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当社独自制度のパパ育児休暇を含む(2010年度より導入) |
|
|
100% |
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健康安全・労働慣行に関する指標 |
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15.4時間 |
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目標:総実労働時間年間2,000時間 |
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15.9日 |
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57.4% |
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年平均 |
(注)正規雇用労働者を対象として集計
(3) 気候変動への対応
[ガバナンス]
当社では、環境保全活動を推進するにあたり、環境に関する国際規格「ISO14001」に準じた環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management System)を構築し、継続的な改善に取り組んでいます。
[戦略]
当社は、「事業活動を通じた環境負荷の低減」と「オフィス活動を通じた環境負荷の低減」「環境関連法規制の遵守」の3つを柱に、「もったいない5R」を合言葉に当社独自の環境活動に取り組んでいます。「もったいない5R」とは、環境省が推進する3R(Reduce、Reuse、Recycle)に2つのR(Relationship、Reengineering)を加え、当社の目指すべき姿を目指した環境アクションプランを実践しやすく表したものです。
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|
環境側面(5R) |
活動 |
|
事業活動を通じた環境負荷の低減 |
Reengineering (環境に配慮した製品の提供) |
・お客様への環境配慮システムとインフラの提供 ・高品質な製品の提供 |
|
オフィス活動を通じた環境負荷の低減 |
Reduce(省エネ) Reuse(再利用) Reduce・Recycle (廃棄物の削減・抑制) Relationship (地域貢献) |
・再生可能エネルギーを使用、省エネの設備搭載オフィスを選定(カーボンニュートラル) ・リサイクル原料使用のオフィス家具 ・紙使用量、電力使用量の削減 ・グリーン購入 ・社内事務用品の再利用 ・環境教育の実施による、従業員の環境に対する意識の向上 |
|
環境関連法規制の遵守 |
Reduce・Recycle (廃棄物の削減・抑制) |
・廃棄物の発生抑制と徹底管理 ・産業廃棄物管理マニフェストの管理 ・外部機関による認証や内部監査による確認・評価 2004年~:ISO14001の認証取得 2015年~:経済産業省「SABC評価制度」8年連続S評価取得 |
[リスク管理]
環境問題に関わるリスクについてはサステナビリティ全般のリスク管理に含み、リスクおよび機会を識別、評価し事業に与える影響に関して分析を進めるとともに、分析結果を踏まえた対応策に沿って取組みを進めています。
[指標と目標]
ゼロカーボン(脱炭素)を意識した取組みと、当社の事業形態に見合う環境法規制の100%遵守を目標に、環境活動を通じてエネルギー使用量などの削減に継続的に取り組んでいます。
環境パフォーマンスデータ
※経済産業省資源エネルギー庁「省エネルギー法定期報告書」より一部抜粋したものです。
①エネルギー使用量
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2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
|
消費電力(kWh) |
8,065 |
7,214 |
6,664 |
|
ガス(千㎥) |
22 |
23 |
15 |
|
原油換算(kl) |
2,063 |
1,846 |
1,680 |
②CO2排出量
|
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2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
|
CO2排出量(t-CO2) |
|
|
|
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の防止及び発生した場合の適切な対処に努めておりますが、予測されない事態が発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境リスク
当社グループの属する情報サービス産業においては、顧客の情報化投資動向や情報技術動向の急激な変化、新規参入企業の増加等により事業環境が大きく変化する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。この事業環境の変化に対応するため、当社グループでは、顧客・業界における情報化投資の実行時期や実行規模を見極め、適宜事業ポートフォリオを見直し、適切な資源配分を行っております。また、常に技術革新動向を注視し質の高い技術者の育成に取り組んでおります。
(2) システム開発リスク
ソフトウェアの受託開発及びパッケージ製品などにおいて、品質不良や納期遅延等が発生し、コスト増加により不採算案件が生じるリスクやソフトウェアの不具合により顧客の業務に影響を及ぼすリスクがあります。その結果、顧客との取引契約に関して債務不履行が発生した場合、顧客から契約上の損害賠償請求または提訴を受けるリスクや情報サービス企業として信用失墜のリスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特に2024年度から本格的に自治体システム標準化対応がスタートしますが、リプレースは同時並行で集中するため、納期遅延等が発生する可能性があります。これらを回避するために、当社では品質管理部門を設置し、担当役員や外部専門家を配置するなど、管理体制の強化に取り組んでおります。具体的には、見積り段階での受注額の妥当性やリスクの評価、プロジェクトの進捗状況の管理、品質や見積り精度の向上、開発プロセスの標準化などに注力しています。また、AI活用による短期間での高品質なソフトウェア開発手法の導入も重要な取組みとしています。
(3) システム運用リスク
アウトソーシングなどの運用サービスにおいて、大規模災害による想定外の損害や長期の電力不足、サイバー攻撃、運用ミスなどにより、システムダウンや回線障害が発生し、顧客の事業が停止もしくは中断した場合、顧客から契約上の損害賠償請求または提訴を受けるリスクや情報サービス企業として信用失墜のリスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらを回避するために、当社グループではITIL(※1)に準拠した体制の整備、バックアップ機能の充実、運用ツールの強化等の設備投資、運用管理レベルの向上、技術者教育、
BCP(※2)の策定などに継続的に取り組んでおります。
(4) 投資に関するリスク
当社グループは、事業拡大や競争力強化のため新規事業の立ち上げ、ソフトウェア開発投資、設備投資、資本提携などを行っております。しかしながら、社会情勢の変化や景気悪化などにより、投資案件が計画どおりに進まず当初見込んでいた利益が得られない場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらを回避するために、当社グループでは、投資に伴う事業計画、投資効果やリスク等について十分に検討したうえで、投資を実施しております。
(5) 情報漏洩リスク
当社グループは、業務上、顧客が保有する特定個人情報を含む個人情報や機密情報を含む情報資産を取り扱う場合があります。このような状況下において、コンピュータウイルスによる感染や不正アクセス等のサイバー攻撃、もしくは人為的過失等により、機密情報の漏洩や改ざん等が発生する可能性があります。この結果、顧客から契約上の損害賠償請求または提訴を受けるリスクや情報サービス企業として信用失墜のリスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらを回避するために、当社グループではサイバーセキュリティの強化として、ファイアウォールや侵入検知システムの強化を図り、サイバー攻撃に対応する体制を整備しております。また、
ISMS(※3)やプライバシーマーク(※4)など各種認証の維持・取得に積極的に取り組むとともに、コンプライアンス研修や教育などを通じて社員への啓蒙活動を継続的に実施しております。
(6) 大規模災害に関するリスク
当社グループは、BCPを策定し従業員の安全確保、被害の防止・軽減及び早期復旧等危機管理の徹底に取り組んでおります。しかしながら、首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模震災をはじめとする自然災害の発生などにより事業継続に支障が起きた場合や事業の一部調整を行った場合は、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これを回避または軽減するために、当社では、(3)システム運用リスクで述べた対策のほか、連絡体制の整備、訓練等社員への教育、事業拠点の見直し等を行っております。
(7) 感染症等の流行に関するリスク
当社グループは、重大な感染症等の流行に対し、従業員の安全確保、感染の防止及び感染者が発生した場合の対応等危機管理の徹底に取り組んでおります。しかしながら、新たな感染症等の流行により事業継続に支障が起きた場合や事業の一部調整を行った場合は、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これを回避または軽減するために、当社では、テレワークの活用、事業のオンライン化、事業拠点の見直し等を行っております。
(8) 人材確保に関するリスク
当社グループの事業活動は人材に大きく依存しています。中長期的に、少子高齢化の環境のもと、社員流出や採用難が今後深刻化し、人員不足を起因としたサービスの低下や風評等につながる場合には、顧客の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、人材の採用や育成を強化するとともに、人事制度や福利厚生制度の見直しを図ることで、多様で柔軟な働き方を提供する等、各種対策に取り組んでおります。
[用語解説]
※1 ITIL(アイティル):Information Technology Infrastructure Libraryの略
英国商務局が策定した、コンピュータシステムの運用・管理業務に関する体系的なガイドライン。ITサービス管理を実行する上での業務プロセスと手法を体系的に標準化しています。
※2 BCP(ビー・シー・ピー):Business Continuity Planの略
企業が、自然災害、大火災、パンデミック、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく事業継続計画です。
※3 ISMS(アイ・エス・エム・エス):Information Security Management Systemの略
情報セキュリティ管理の国際標準に基づき定められた情報セキュリティマネジメントシステムの適合性評価制度です。継続的に情報セキュリティリスクを管理しリスク回避や軽減を図り、この認証基準に適合したマネジメントシステムを構築・維持できている企業や団体が第三者機関により認証されます。
※4 プライバシーマーク
プライバシーマーク制度は、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に準拠した「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針」に基づいて、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を、第三者機関が客観的に審査・評価して、事業活動に関してプライバシーマークの使用を認める制度です。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます)の状況の概要は次のとおりであります。
① 当連結会計年度の取組み
当連結会計年度は「2023中期経営計画」の最終年度の総仕上げとして「自治体向け情報システムWebRingsの標準化対応」「DXソリューションの拡充」「サステナブル経営の推進」を軸に事業を推進してまいりました。
「自治体向け情報システムWebRingsの標準化対応」
当社のコア事業である公共分野においては、地方公共団体情報システムの標準化対応(自治体システム標準化対応)の期限延伸により、計画面および収益面で影響を受けましたが、2024年度以降に本格化する自治体システム標準化対応に向けて新たに品質管理部門を設置するなど準備を進めています。確実な移行支援に向けて、2024年度後半より導入作業を開始する予定です。
「DXソリューションの拡充」
中期経営計画に基づき強固な顧客基盤と豊富なサービスラインナップ、当社グループの総合力を強みとし、持続可能な社会の創造に貢献するDX企業グループへの変革を図ってまいりました。
特に自治体DXに関連したDXソリューションの拡充を中心に取り組み、業務資本提携先である株式会社三菱総合研究所グループや他企業とのアライアンスを推進し、かねてより販売中のAIを活用した自治体向けソリューション「AI相談パートナー」の拡販、民間分野へのDXサービスの提供を進めてまいりました。
「サステナブル経営の推進」
前年度に引き続きDX企業としてサステナブルな経営を支える人材を育成するべく、テクニカル人材育成体系に基づくDXリテラシーの底上げと、選抜者への集中教育によるDX人材の強化育成に注力いたしました。
当連結会計年度において当社は監査等委員会設置会社へ移行し、監督・監査機能の強化を行いコーポレートガバナンスの一層の強化を図ってまいりました。
また、当社は2023年5月、東京駅至近に全社営業の発信地として位置付けた「八重洲オフィス」を開設し、2023年9月には、新たに東京都中央区にオフィスビルを取得しました。同オフィスビルにはアイネスグループ各社の本部・本社機能を集約し、グループ経営の意思決定迅速化、生産性向上、コミュニケーション強化を図り、経営基盤強化と企業価値の向上を目指してまいります。
② 経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度の売上高は405億57百万円と前期比4.4%の減収となりました。
公共分野につきましては、標準化前のリプレース需要の減少などにより、185億4百万円(前期比6.8%減)となりました。
金融分野につきましては、前年度と概ね同水準の77億65百万円(同2.0%増)となりました。
産業分野につきましては、主に基幹システム開発案件の減少などにより142億87百万円(同4.3%減)となりました。
商品・サービス別では、公共分野における前年度開発案件の保守フェーズへの移行などによりシステム開発が減少しシステム保守が増加しました。
当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、以下、業種別及び商品・サービス別の売上高を示しております。
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[業種別連結売上高] |
(単位:百万円) |
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区分\期別 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
対前年 |
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自 2022年4月1日 |
自 2023年4月1日 |
||||
|
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
||
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公 共 |
19,853 |
46.8% |
18,504 |
45.7% |
△6.8% |
|
金 融 |
7,616 |
18.0% |
7,765 |
19.1% |
2.0% |
|
産 業 |
14,934 |
35.2% |
14,287 |
35.2% |
△4.3% |
|
合 計 |
42,404 |
100.0% |
40,557 |
100.0% |
△4.4% |
(注)当連結会計年度より、グループ事業再編に伴い、従来「その他」に区分していたグループ会社売上高を、
公共・金融・産業へ表示しました。前連結会計年度についても同様に組替再表示しております。
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[商品・サービス別連結売上高] |
(単位:百万円) |
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区分\期別 |
前連結会計年度 自 2022年4月1日 至 2023年3月31日 |
当連結会計年度 自 2023年4月1日 至 2024年3月31日 |
対前年 増減率 |
||
|
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
||
|
システム開発 |
17,333 |
40.9% |
16,371 |
40.3% |
△5.6% |
|
運用 |
14,831 |
35.0% |
13,903 |
34.3% |
△6.3% |
|
システム保守 |
4,853 |
11.4% |
4,984 |
12.3% |
2.7% |
|
情報機器販売 |
1,080 |
2.5% |
1,245 |
3.1% |
15.4% |
|
その他 |
4,304 |
10.2% |
4,051 |
10.0% |
△5.9% |
|
合 計 |
42,404 |
100.0% |
40,557 |
100.0% |
△4.4% |
損益面においては、主に公共分野の減収および新営業オフィス開設に伴うコスト増や本社移転に伴う一時費用計上などにより、営業利益は28億77百万円(前期比24.3%減)、経常利益は27億32百万円(同29.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億95百万円(同29.3%減)となりました。
当連結会計年度末における財政状態は、総資産は544億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億4百万円増加しました。
流動資産は、現金及び預金や有価証券の減少等により46億40百万円減少し、202億83百万円となりました。固定資産は、オフィスビル取得による土地や建設仮勘定の増加等により105億44百万円増加し、341億43百万円となりました。
流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の増加等により11億86百万円増加し、76億1百万円となりました。固定負債は、長期借入金の増加等により32億13百万円増加し、90億35百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により15億3百万円増加し、377億90百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます)は前連結会計年度末に比べ38億96百万円減少し、52億65百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は21億42百万円(前期比7.9%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上26億72百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は99億87百万円(同388.3%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出96億26百万円及び有価証券の売却による収入23億円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は39億48百万円(前期は8億49百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入50億円等によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における商品・サービス別の生産実績を示しております。
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商品・サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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システム開発(百万円) |
16,591 |
95.5 |
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運用(百万円) |
13,845 |
93.2 |
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システム保守(百万円) |
4,951 |
101.6 |
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情報機器販売(百万円) |
1,278 |
117.5 |
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その他(百万円) |
4,074 |
94.5 |
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合計(百万円) |
40,741 |
95.9 |
(注)金額は売価換算によっております。
b.受注実績
当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における当社グループ全体の受注実績を示しております。
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受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
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39,885 |
99.0 |
c.販売実績
当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における商品・サービス別の販売実績を示しております。
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商品・サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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システム開発(百万円) |
16,371 |
94.4 |
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運用(百万円) |
13,903 |
93.7 |
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システム保守(百万円) |
4,984 |
102.7 |
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情報機器販売(百万円) |
1,245 |
115.4 |
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その他(百万円) |
4,051 |
94.1 |
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合計(百万円) |
40,557 |
95.6 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載については、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績及び財政状態の状況」に記載しております。
(財政状態について)
2020年度まで、財務体質の向上を目指して保有不動産の処分を行ってまいりましたが、2023年度はDXビジネスの拡大やコロナ禍後の働き方改革に見合った拠点戦略を展開し、2023年5月、東京駅至近に全社営業の発信地として位置付けた「八重洲オフィス」の開設や、さらに首都圏オフィスや支社の改廃・設置を行いました。また2023年9月には、新たに東京都中央区に本社ビルを取得しました。これらの拠点戦略関連投資を中心に設備投資総額は109億円となりました。一方で本社ビルの取得資金として、金融機関より長期借入金50億円の資金調達を実施しております。この結果、総資産は544億円となり、前連結会計年度末に比べ59億円増加しましたが、同本社ビルへアイネスグループ各社の本部・本社機能を集約することにより、グループ経営の意思決定の迅速化や生産性の向上、コミュニケーション強化を図り、経営基盤強化と企業価値の向上を目指してまいります。
(経営成績について)
当社の過去10年の連結業績推移は図1のとおりであります。
過去10年の売上高の推移では、2018年度以前は300億円台後半が続いていましたが、2019年度以降は400億円台に拡大しました。
要因は、強固な自治体顧客基盤を強みとする公共分野において、少子高齢化などを背景とした福祉関連等のさまざまな法制度改正の需要を着実に取り込み、同分野における売上高の拡大を図ってきたことが大きく寄与しています。
2020年3月に新型コロナ緊急事態宣言が発出されましたが、実質的な「コロナ禍前」と考えられる2019年度をピークに2020年度、2021年度は減収傾向となったものの、2022年度では2019年度並みの売上高水準に回復しております。一方で直近の2023年度は、自治体システムの標準化を控えたリプレース需要の減少などにより、2022年度から減収となり、406億円となりました。
損益面では、営業利益において、2023年度は、主に公共分野の減収および先述の八重洲オフィス開設に伴うコスト増などにより、2022年度の過去最高益である38億円から減益となり、29億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益も同様に2022年度の25億円から減益の18億円となりました。
当連結会計年度の業績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりです。
財政状態及び経営成績の状況から、図2のとおり自己資本利益率(ROE)は、親会社株主に帰属する当期純利益の過去最高益を更新した2022年度の7.2%から大きく減少し、4.8%となりました。また、基礎的収益力を示す売上高営業利益率についても、過去最高となる営業利益を計上した2022年度の9.0%から減少し、7.1%となっております。なお、2024年度は、新たに始動させた「2026中期経営計画」の初年度となりますが、事業戦略の3つの柱となる「地方公共団体情報システムの標準化対応」、「次世代ソリューションの開発」、「事業基盤拡充」に取り組み、当中期経営計画における3年後(2026年度)の業績や指標の目標値として売上高500億円、売上高営業利益率10%以上、ROE8%以上、ROIC7%以上とそれぞれ定めた上で、目標の達成に向けて引き続き各種施策を推進してまいります。
(経営成績に重要な影響を与える要因について)
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローについて)
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況等は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(資本の財源及び資金の流動性について)
資本の財源につきましては、財務の健全性や資本の効率性など当社グループにとって最適な資本構成を追求しながら、将来の成長のための内部留保の充実と株主の皆様への利益還元との最適なバランスを考え、安定した財源を維持することを基本としております。
当社グループは、短期の運転資金につきましては原則自己資金で賄うこととし、設備投資や長期の運転資金につきましては自己資金または金融機関からの長期借入で賄うこととしており、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としております。
これらの方針に基づき、図4のとおり、株主の皆様への利益配当につきましても、急速な市場の変化に対応するため財務基盤の充実を図りつつ、業績および経営環境等を総合的に勘案しながら安定かつ継続的に配当を実施してまいりました。また、当連結会計年度におきましては本社ビルの取得資金として、金融機関より長期借入金50億円の資金調達を実施しております。
今後も営業活動により得られたキャッシュ・フローやグループ内余剰資金の有効活用等による運転資金の効率化を進め、これらの活動で得られた資金を活用して「2026中期経営計画」の実現に向け、事業拡大に向けた戦略的投資や資本構成の最適化、また株主様への還元施策などを進めてまいります。
なお、新型コロナ感染症に関連した行動制限の解除による経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、ウクライナや中東情勢等による社会情勢不安や円安等に起因した原材料高騰に伴う物価上昇等により、先行き不透明な状況が継続しております。
このような状況下、当社グループにおきましても今後の業績にマイナス影響を及ぼす可能性はありますが、現状の純資産額の水準ならびに資金状況から事業運営上、支障はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。
(受注制作のソフトウェアに係る収益及び費用の計上基準)
受注制作のソフトウェア開発について、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合に、その進捗を発生したコストに基づくインプット法(原価比例法)により見積って収益を認識しております。なお、収益総額、見積原価総額及び決算日における進捗率について、当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。
(受注損失引当金)
受注制作のソフトウェア開発のうち、原価総額が収益総額を超過する可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合、損失見込額を受注損失引当金として計上しています。ただし、受注制作のソフトウェア開発は契約ごとの個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、契約時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況及び採算性等によって損失額が大きく変動する可能性があります。
(市場販売目的のソフトウェア)
市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法につき、見込販売本数に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額のいずれか大きい額を減価償却費として計上しております。なお見積有効期間は3年以内であります。販売期間の経過に伴い、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、当該超過額を一時の費用として計上しております。したがって、これらの金額は将来の当該ソフトウェアの販売見込により影響を受ける可能性があります。
(退職給付に係る負債)
退職給付債務及び年金資産は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率等の将来に関する一定の見積数値に基づいて算定されています。退職給付債務の計算に用いる割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しています。また、年金資産の長期期待運用収益率は、将来の収益に対する予測や過去の運用実績を考慮して決定しています。見積数値と実績数値との差異や、見積数値の変更は、将来の退職給付債務及び退職給付費用に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合は繰延税金資産の計上額が大きく変動する可能性があります。
当連結会計年度中において、経営上の重要な契約等はありません。
当社グループは、急激な変化を続けている社会環境の中で、新たな社会ニーズを見据え、今後の事業の中心となる製品・サービスの研究開発及び長期的成長の基盤となる基礎的研究や新技術の研究に注力しております。なお、当連結会計年度の研究開発活動に要した研究開発費は
当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発活動を示しております。
今後の事業の中心となる製品・サービスの研究開発
2023年、IT市場ではいくつかの注目すべき発展が見られました。まず、AI分野は生成系AIの進展によりさらに注目を集めました。
2022年末に公開されたOpenAIによるChatGPTを皮切りに、2023年度はさまざまな領域で新たなコンテンツを生成できるモデルの開発が進みました。この成長は産業全体でのAI採用の動きを促進し、官民連携の新たな取組みも見られました。次に、クラウドベースのシステムやサブスクリプションモデルの傾向が深まり、これらがビジネスモデルとして確立されています。また、リモートワークの定着により企業はクラウドソリューションの採用を強化しており、スケーラブルなクラウドインフラへの需要が増加しています。
DXの重要性は、引き続きIT市場の成長を牽引しています。企業は技術を活用して業務や製品、サービスの革新を進めており、この傾向はワークフローの最適化、データ分析、顧客体験の向上などに注力する分野での成長に寄与しています。
以上のような傾向が2023年度のIT市場全体で見受けられました。
このような環境の下、アイネス総合研究所でも研究の中心を生成AI活用にシフトし進めてまいりました。また生成AI以外にも、アイネスグループの事業において将来必要となる技術研究を進めました。
① 生成AI活用のための研究
・生成AI(ChatGPT)社内業務活用POC(デジタルトランスフォーメーション支援)
・自治体向けLGWANサービスである「AI相談パートナー」へのAI実装(自治体との実証実験)
・ChatGPT以外の各種LLM(大規模言語モデル)の研究
② アイネスの事業において将来必要となる技術研究
・xR(extended Reality:現実世界と仮想世界を融合するIT技術)活用による疑似リアル研究
・メタバース研究
・施策検討のためのデータ分析研究(高齢者の健康寿命)[デジタル田園都市国家構想交付金事業]