第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 (1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは「住友事業精神」と「住友電設グループ企業理念」に基づき、顧客をはじめ株主、社会等のステークホルダーの信頼に応えるべく、事業の発展に取り組んでおります。また、経営の効率化・迅速化を図るとともに、すべてのステークホルダーの利益にかなうことが重要であるとの認識のもと、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、以下の基本的な考え方に沿って、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組むこととしております。

(a) 株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行う。
(b) 株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。
(c) 会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。

(d) 取締役会の経営に関する基本方針等の決定機能及び監督機能を重視し、それらの機能の実効性が確保される体制の整備及び取締役会の運営に注力する。業務執行については、権限及び責任を明確化し、事業環境の変化に応じた機動的な業務執行体制を確立することを目的として、執行役員制並びに事業本部制を導入している。また、経営健全性確保の観点から、監査役監査の強化を図ることとし、独立社外監査役と常勤の監査役が内部監査部門や会計監査人と連携して適法かつ適正な経営が行われるよう監視する体制としている。

(e) 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で、株主との建設的な対話を行う。

 

「住友事業精神」

 住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を基盤とし、その要諦は1882年に制定された住友家法の中で初めて条文化され、1891年に家法の中の「営業ノ要旨」として2箇条に取り纏められたものであります。[住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋]

第一条  我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし

第二条  我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、苟も浮利に趨り、軽進すべからず

 

第一条は

住友の事業は、何よりも信用・信頼を大切にすることを基本にすべきであると謳っております。

第二条は

社会の変化に迅速・的確に対応し利潤を追求すべきであり、既存の事業に安住することなく常に事業の興廃を図るという積極進取の精神が重要と説いております。その一方で、「浮利」、即ち、一時的な目先の利益や道義にもとる不当な利益を追い、軽率、粗略に行動することを厳に戒めております。

 

「住友電設グループ企業理念」

住友電設グループは、社会的使命と責任を認識し、
 ・ 豊かな社会を支える快適な環境作りを事業目的とし、社会の繁栄に寄与します。
 ・ 信用と技術を重視し、顧客満足度の高いエンジニアリングサービスを提供します。
 ・ 高い企業倫理に則り、コンプライアンスに基づいた公正で透明性のある経営を推進します。
 ・ 創造力豊かな社員を育て、活力と潤いのある企業を目指します。


事業の推進にあたっては、コンプライアンスを経営の基礎に据え、法令の遵守を経営の最重要課題と位置づけております。

コンプライアンスに違反した利益の追求は企業として決して許されるものではなく、利益とコンプライアンスが対立するような場合には、必ずコンプライアンスを優先して事業活動を推進しております。

 

「社員行動指針『SEM VALUE』」

 『SEM VALUE』は、「住友電設グループ企業理念」のもと、社員が大切にすべき価値観について共有し、社会から信頼される企業としてより一層飛躍するために、「社外(社会)に対する姿勢」「社内(社員間)における姿勢」「未来へ向けた姿勢」の3つを軸に、住友電設らしさとも言える「誠実さ」「チームワーク」の精神をこれまで以上に大切にし、未来に向かって果敢にチャレンジしていく姿勢を表しております。

 

『SEM VALUE』

・ 誠実 Sincerity       社会のニーズに誠心誠意応えよう

・ チームワーク Teamwork   多様性を認め合いチームの力を発揮しよう

・ 創造 Creation           高い技術で持続可能な未来を創造しよう

 

 当社グループは、社員行動指針『SEM VALUE』に基づき、社会から求められる企業を目指し、「チーム住友電設」として総合力を発揮し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

「サステナビリティ方針」

 当社グループは「住友電設グループ企業理念」に基づき、公正で透明性の高い経営と社会・環境に調和した事業活動を通じて、顧客をはじめ株主、社会等のステークホルダーの信頼をより確かなものにするとともに、持続可能な社会構築への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、以下に掲げる指針に沿って積極的にサステナビリティ活動を推進しております。

・ 事業活動、製品およびサービスにおいて環境負荷低減を目指すとともに、環境負荷の少ない事業分野の拡大を目指します。

・ 信用と技術を重視し、顧客満足度の高いエンジニアリングサービスの提供に努めます。

・ 海外事業における事業基盤のさらなる強化と事業領域の拡大を通じ、グローバルに社会の繁栄に寄与する活動を推進します。

・ 人権と多様性を尊重し、安全で働きがいのある職場づくりに努めます。

・ コンプライアンスを重視した公正な事業を推進するとともに、企業情報を適正に開示して透明性の確保に努めます。

 

 当社は、サステナビリティに関する取組みの一つとしてTCFD提言への賛同表明を行いました。今後、TCFDのフレームワークに基づく活動の推進を通じて、気候変動が事業並びにバリューチェーンにもたらすリスクと機会、それに伴う財務的影響などを分析し、経営戦略への組込みと情報開示を継続的に行ってまいります。

 

 

 (2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略並びに対処すべき課題

今後の事業環境の見通しにつきましては、データセンター等デジタル関連の成長分野の他、将来に向けては大都市圏を中心とした再開発事業等の大型案件が継続し、また、再生可能エネルギーをはじめとするカーボンニュートラル関連投資も堅調に推移すると予想されます。情報通信分野においてもIoT化等のICT環境の整備はより一層推進されること、さらには翌年の開催に向けた大阪・関西万博関連工事の本格化や、その後のIR関連投資等も期待されます。しかしながら足元では、人件費の上昇をはじめ、資機材価格の高止まりや調達遅延等、依然として先行きは不透明な状況にあり、今後の社会情勢、市場動向を注視していく必要があります

このような環境のもと、当社グループは、2020年度からスタートした5ヵ年の中期経営計画「VISION24」において、「総合設備企業グループ」として、各部門の施工力、技術力の底上げに向けて資源を投入し、売上高の拡大を図るとともに、各部門が連携した総合力で、客先へのトータルサービスを拡大するための各重点施策を着実に推進しております。

 

1.テーマ

新たな成長戦略と総合力で持続的発展を!

 

2.数値目標(2024年度 連結)

・受 注 高:2,000億円

・売 上 高:2,000億円

・経常利益(率):150億円(7.5%)

・成長投資:200億円(5年間)

・ROE(自己資本当期純利益率):10%をターゲット

・自己資本比率:50%水準を維持

・配当性向:40%をターゲット(2024年度)

 

3.重点施策

■安全・品質・コンプライアンス

・安全・品質の確保

・コンプライアンスの徹底

 

■人材の確保・育成と働き方改革

・研修施設、教育プログラムの拡充

・人材の確保

・生産性向上への効率化追求

・総労働時間の削減

・ダイバーシティへの取組み強化

 

■顧客満足度向上の追求

・提案営業力の強化

・施工力の確保・強化

・期待領域への注力

・新技術、新工法への対応

 

■未来を見据えた企業価値の向上

・ESG、SDGsへの取組み

・財務体質の維持と株主還元の充実

・健康経営の推進

・福利厚生の充実、職場環境整備による従業員満足度の向上

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 住友電設グループ サステナビリティ方針

 当社グループは「住友電設グループ企業理念」に基づき、公正で透明性の高い経営と社会・環境に調和した事業活動を通じて、顧客をはじめ株主、社会等のステークホルダーの信頼をより確かなものにするとともに、持続可能な社会構築への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、以下に掲げる指針に沿って積極的にサステナビリティ活動を推進しております。

・ 事業活動、製品およびサービスにおいて環境負荷低減を目指すとともに、環境負荷の少ない事業分野の拡大を目指します。

・ 信用と技術を重視し、顧客満足度の高いエンジニアリングサービスの提供に努めます。

・ 海外事業における事業基盤のさらなる強化と事業領域の拡大を通じ、グローバルに社会の繁栄に寄与する活動を推進します。

・ 人権と多様性を尊重し、安全で働きがいのある職場づくりに努めます。

・ コンプライアンスを重視した公正な事業を推進するとともに、企業情報を適正に開示して透明性の確保に努めます。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 2022年1月、経営会議の諮問機関として社長を委員長、経営会議メンバーを委員としたサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティに関する重要課題への対応に係る事業戦略やリスクと機会に関する取り組みを審議・決定しております。またその内容を四半期に1回経営会議及び取締役会に提言・報告しております。

 サステナビリティ委員会の下部組織に、SDGs委員会、TCFD推進プロジェクト、カーボンニュートラル推進室等を設置し、各部門と連携しサステナビリティに関する重要課題解決へ向けた取組みを推進し、その進捗トレース結果については定期的にサステナビリティ委員会に報告をしております。


 

 

(3) 重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
 ①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
 ②人的資本及び多様性

 

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

  ①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

当社グループは、気候変動問題をはじめとする地球環境への対応を重要な経営課題の一つとして2003年に制定した「環境基本理念」「環境方針」に基づき、事業活動を行っております。

この度、当社グループでは2023年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明いたしました。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードの内容も踏まえ、TCFD提言に基づいた気候変動に関する重要情報を開示しております。

〈戦略:シナリオ分析〉

気候変動が当社の事業に及ぼす影響(リスク・機会)について、2050年を想定したシナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関連したリスク」と「気候変動に伴う物理的影響に関連したリスク」「気候変動緩和・適応策による機会」について、TCFDの枠組みをもとに分析しております。

なお分析手法については、今後も継続的に見直しをおこない精緻化に努めてまいります。

また、設定した戦略が財務に与える影響については今後開示していく予定です。

 

(シナリオ分析のステップ)

ステップ1

ステップ2

ステップ3

ステップ4

●情報収集

TCFD推奨開示項目をベースに外部情報を加味して、建設業界におけるリスクと機会の項目を整理

●リスク・機会の特定

気候変動がもたらす当社事業に与える影響を検討し、影響度の大きいリスクと機会を特定

●対応策の検討・決定

特定したリスクと機会への対応策をTCFD推進プロジェクトチームが中心となり、各部門と意見交換し作成。サステナビリティ委員会に報告

●情報開示

 

 ※シナリオ分析には以下のシナリオを参照しております。

・脱炭素社会への移行のシナリオ

国際エネルギー機関(IEA)…産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が1.5℃相当となるシナリオ

・自然災害の激甚化のシナリオ

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)…産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4.0℃相当となるシナリオ

 

低炭素経済へ「移行」するリスク

※時間軸(短:2025年、中:2030年、長:2050年)

リスクの種類

項目

考えられる影響

当社グループとしての対応

政策・

法規制

炭素税導入

・事業活動によるCO2排出への課税

・炭素価格導入により建材調達コスト増、それに伴う採算悪化、価格競争力の低下

・企業活動における省エネの推進

・製造時のCO2排出量を抑制した建設資材(低炭素資材)の採用による調達コスト低減、VE/CD提案や設備提案

・新素材開発情報の定期収集と社内展開

・車両HV・EV化、再エネ由来の電気を購入することによるGHG排出削減

省エネ政策の強化

・GHG排出やエネルギー使用に関する法規制強化に伴う対応コストの増加

・脱炭素社会に向けた産業構造や設備投資需要の変化

・法規制対応への遅れや対応漏れによる法令違反

・再エネ・省エネに関する新技術・新工法の開発

・顧客への積極的提案・事業活動における関連法規情報の早期収集

情報開示義務

・情報開示義務拡大に伴う対応コスト増

・開示義務内容の早期把握と適切な情報開示

技術

再エネ・省エネに関する新技術の普及

・関連技術への対応が遅れることで、顧客からの信頼や競争力が低下し、受注機会が減少する

・再エネ・省エネに関する新技術・新工法の開発

・新技術の社内教育と顧客への積極的提案

市場

顧客の選好変化

・温室効果ガスの削減、ZEB化等の顧客ニーズへの対応不備による受注機会の喪失

・環境負荷低減志向を背景とした競争激化による受注機会の喪失

・市場動向とニーズの早期把握及びそれらに対応するための新技術把握・開発や各種許認可取得推進

評判

ステークホルダーからの要求変化

・顧客からのサステナブル経営に関する高レベルな要求に対応が遅れることによる受注機会の喪失

・開示情報遅れや情報不足による、投資家からの企業評価低下

・ステークホルダーからの要求を満たせず市場からの撤退を余儀なくされる

・顧客要求の早期把握、適時的確な情報開示

・環境関連課題への継続的な取り組みと、TCFD提言への対応をはじめとする適切な情報開示

 

 

 

気候変動による「物理的」変化に関するリスク

※時間軸(短:2025年、中:2030年、長:2050年)

リスクの種類

項目

考えられる影響

当社グループとしての対応

急性

自然災害の激甚化

・豪雨や台風の頻発・激甚化により、自社社屋や工事現場への損害発生、ライフラインの停止、関係者の被災、工事見合わせ等により、事業運営に伴うコストの増加、受注機会の喪失

・当社事業継続確保に向けたBCP対応の強化

・災害発生時に柔軟な対応ができる体制の維持(在宅勤務等)

・関係各所(協力会社、調達先、各事業者)との災害支援協力体制の準備

慢性

異常気象の深刻化

平均気温上昇

・建設現場の健康リスクが増大(熱中症や感染症等)

・作業効率低下、引渡し遅延、真夏の作業制限増加、対策コストの増加

・設備(電気・機械)の周囲温度上昇による技術的トラブル増加

・動力用水光熱費等のコスト増

・健康管理に対する組織的な取り組み強化及び新技術商品の採用推進(リストアラーム、webカメラ等)

・DXによる品質、生産性向上と労働時間抑制の両立

・他業界との包括的な省エネ技術開発

・経費削減努力と自社の省エネルギー対策推進

・新設建物のZEB化

 

 

気候変動緩和策・適応策による「機会」

※時間軸(短:2025年、中:2030年、長:2050年)

機会の

種類

項目

考えられる影響

当社グループとしての対応

資源の効率性

効率性のよい建築物の普及

・省エネルギー、再生可能エネルギー、ZEB等への需要が拡大し、受注機会が増加する

・ZEBプランナー登録会社向け引合案件の増大

・再生可能エネルギー関連工事の営業・施工体制と技術力の強化

・ZEB化の事業性と快適性の実現に向けた技術開発および提案力の強化

・会社としてZEBプランナー登録

エネルギー源
 

再生エネルギーの利用拡大

・再生可能エネルギー関連工事需要の増加

・新技術開発・導入による引き合いや受注の増加

・再生可能エネルギー関連工事対応のため社内外体制強化

製品/サービス

低炭素適応商品/サービスの開発、拡大

・インフラ強靭化ニーズの増加、設備更新期の前倒しに伴う収益機会の増加(災害や暑熱に備える設備・製品サービス等)

・工事計画段階からの各種リスク低減技術提案等による顧客からの信頼向上、引き合いや受注の増加

・センサ、IT等を活用した防災面での社会インフラモニタリングのニーズ増加

・再生可能エネルギー事業の積極的推進と施工実績を含めた情報発信(PVシステム、ペロブスカイト等)

・SF6ガスのリサイクル技術確立による新事業創出

・顧客(新規・既存)からの情報収集によるニーズの発掘

・気候変動に適応した製品・サービスを提供する営業体制の構築

・防災、減災に関連するセンサーモニタリング(IoT)技術へのエンジニアリング技術強化

市場

・再生可能エネルギーの需要増加

・災害に強い建物・設備ニーズの拡大

・持続可能な都市や地域の形成

・ステークホルダーの評価

・再生可能エネルギーに関する設備や施設への需要が増加し、引き合い、受注機会が増加

・インフラに関するソリューションや受注機会増加

・脱炭素への取り組みや各種認定・認証の取得(ZEBプランナー等)より、顧客からの信頼を獲得する

・ICT技術に基づく、働き方改革、ICTマネジメント等のソリューションサービスなどの需要・機会が拡大

・再生可能エネルギー関連工事の営業・施工体制と技術力の強化

・新たな社会インフラに対応できる技術開発の促進、技術力の向上

投資家の投資判断の変化(ESG投資の拡大)

・気候変動への取組とその内容を適切に開示することで企業価値の向上につながる

・気候変動への継続的な取り組みと、TCFD提言への対応をはじめとする適切な情報開示

強靭性(レジリエンス)

レジリエンス(強靭性)技術に対する需要の拡大

・レジリエンス対応サービスの需要増大

・リニューアル需要の増加

・計画時のBCP対応技術提案による顧客からの信頼向上

・顧客ニーズに迅速に対応する体制強化

 

 

<リスク管理>

当社グループでは、気候変動問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクの一つとして位置付け、「サステナビリティ委員会」において適切に管理しております。また、「サステナビリティ委員会」の下に「TCFD推進プロジェクト」を設置し、各部門が十分連携の上、気候変動に伴うリスクが当社に及ぼす影響を選別・評価し、対策を立案・推進しております。

 

<指標と目標>

当社グループは、政府による「2050年カーボンニュートラル」方針に沿って、より一層CO2の排出削減に取り組んでまいります。また以下の通りCO2排出量削減目標を設定し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。

※日本政府削減目標 2030年 46%削減(2013年度比)

 

CO2排出量削減目標(2021年度比)

 2030年 ・Scope1+2 46.2%削減

・Scope3  27.5%削減

 2050年 ・カーボンニュートラルの実現

 

 

 

2021年度及び2022年度 温室効果ガス排出量

 

 

 

(単位:t-CO2)

対象

排出量実績

目標年排出量

(基準年度)
 2021年度

2022年度

2030年度

Scope1+2

5,766

5,100

3,102

(Scope1)

3,087

2,413

(Scope2)

2,679

2,687

Scope3

688,809

771,341

499,387

 

対  象:住友電設、関係会社連結(2021年度及び2022年度)

算定基準:GHGプロトコルに基づく算定方法

算定範囲:Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(車両燃料等)

     Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

     Scope3 Scope1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出等)

 

②人的資本及び多様性

当社グループは、変化の激しい事業環境において、持続的な成長と企業価値の向上を実現し、真に社会から求められる総合エンジニアリング企業を目指すためには、人と技術の永続的な成長が必要と考えています。ついては、経験・技能・キャリア等が異なる多様な人材を継続的に採用・育成・登用し、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境づくりに取り組んでおります。また、2023年度からは、社員満足度&エンゲージメント調査を実施し、社員の意識を総合的・客観的に把握することで、課題解決策の立案・実行につなげています。

 

〈戦略〉

・ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループは、経験・技能・キャリア等が異なる多様な人材を継続的に採用するとともに、活躍を後押しし、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境づくりに取り組んでおります。

 

イ 女性活躍推進

当社は、女性社員がより活躍し、イキイキと働ける職場づくりを目指しております。積極的な採用活動(総合職新卒採用10%以上、キャリア採用も含めた管理職・総合職採用全体の10%以上を女性とする)と女性社員を対象としたキャリア形成施策(職種転換制度や研修等)の強化により女性総合職(管理職)比率の向上を図るとともに、「女性社員が働きやすい環境=全社員が働きやすい職場」と捉え、意識改革や環境、ワーキンググループからの提言に基づく制度の見直しにも取り組んでおります。その種々の取組みが評価され、2022年10月24日、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良である企業や法人に対して厚生労働省が認定する「えるぼし(2段階目)」を取得しました。

 

ロ 障がい者採用

当社は、企業の社会的責任であることはもちろんのこと、組織のダイバーシティ向上等を目的として、障がい者の採用を推進しております。2024年6月1日時点の雇用率は2.60%です。また、パラスポーツ選手の活動支援にも取り組んでおり、デフ卓球、デフサッカーおよびデフバレーボールのトップアスリートを採用し、競技と仕事の両立の支援を行っております。今後もさらなる業務の拡大や職域の開拓を図り、引き続き障がい者の活躍を支援してまいります。

 

ハ 外国籍社員採用

当社は、優秀な人材の確保、内なるグローバル化による社員の視野拡大と組織のダイバーシティ向上、および海外事業の強化等を目的として、外国籍社員の採用・育成・登用を進めております。

 

ニ シニア人材の活躍推進

当社は、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が進展し、特に建設業では、人材不足やシニア人材比率の増加などの環境変化が大きな課題となっている中で、2021年4月に定年年齢を60歳から65歳に引き上げるとともに、雇用上限年齢設定の無い再雇用制度を導入しております。これにより、豊富な経験や高度な技術力をもつシニア人材が働きがいや高い意欲をもって活躍できる職場環境を整備し、さらなる顧客満足度の高いエンジニアリングサービスの提供を目指してまいります。

 

・ワーク・ライフ・バランス

当社グループは、社員が健康でイキイキと働ける職場づくりの一環として、さまざまな機会にトップメッセージを発信するとともに、労使が協力して長時間労働の是正に取り組んでおります。労働時間を適正に把握した上で、モデル現場活動や現場支援組織の設置などの具体的な取り組みを通じて、業務の効率化、合理化を推進しております。また、各事業の特徴や社員個々人の事情による働き方の多様化に対する仕組みとして、テレワーク勤務制度やフレックスタイム制を導入し、繁閑に応じたメリハリのある働き方を推進することで、生産性の向上を目指してまいります。

 

イ 働き方改革の推進

当社は、長時間労働が常態化している建設業界において、その是正が当社にとって最も重要な課題の一つとして捉え、さまざまな施策を実施し、総実労働時間の短縮に努めております。

・トップメッセージの発信

・現場業務の一部を店社側で担う組織の設置

・モデル現場活動

・IT機器や業務支援アプリの活用

・テレワーク勤務制度、フレックスタイム制、時間単位有休の導入

 

ロ 仕事と育児・介護の両立支援

当社は、社員が育児や介護をしながらも、長期間休業することなく、仕事との両立を支援することを目的として、さまざまな事情に対応する柔軟な働き方ができる仕組みの導入や福利厚生制度を活用した経済的支援を行っております。特に男性が家事・育児を分担することを推奨し、配偶者出産休暇や育児休業の取得促進につなげるため、休暇・休業の一部を有給とする制度を設けております。その他にも、妊娠期、子の看護や家族介護、不妊治療のための休暇制度の充実を図っております。

 

ハ 健康経営の推進

当社グループは、中期経営計画VISION24の重点施策の一つである「未来を見据えた企業価値の向上」に掲げる「健康経営の推進」を具現化するため、健康経営に関する基本方針として「住友電設グループ健康経営宣言」を制定し、当社グループで働く従業員の健康保持・増進に向け、各種施策を進めております。当社は、種々の取組みが評価され、従業員の健康保持・増進において特に優良な取組みを実践している企業や法人に対して、経済産業省と日本健康会議が共同で顕彰する「健康経営優良法人 2024(大規模法人部門)」に認定されました(2022年の初認定から継続中)。

 

 ・人材育成

 当社グループは、「人材の育成~プロ集団へ」を教育理念とし、次の「基本方針」に基づき、社員一人ひとりが「プロ集団」の一員となるべく、教育体系を構築しております。

 

人材育成基本方針

 ・ 技術・能力開発の推進

 ・ 個々人の力が発揮できる仕組み・風土作り

 ・ マルチエンジニアの育成

 ・ グローバル人材の育成


 

 また、2020年度から始まった中期経営計画(VISION24)においても、「人材の確保・育成と働き方改革」を重点項目の一つに掲げ、教育のさらなる拡充に努めてまいります。

 

 

イ 全社教育体系の構築

従来型の知識教育や資格取得支援に加え、「問題を発見する能力」「問題の真因に迫り、課題を分類・整理する能力」「問題・課題を解決する能力」などの能力開発に重点を置いた教育を展開しております。

具体的には、「階層別研修」や各種「専門コース」と、各部門の事業に即した内容で実施するOJTを含む「部門別教育」を有機的に結合させ、全社一体となって人材育成に取り組んでおります。

 

ロ 全社研修施設の活用

全社研修施設「住友電設川崎テクニカルセンター」では、座学研修はもとより、電気設備をはじめ電力設備、情報通信設備、空調給排水設備など各種技術について実機を使って学ぶことができる他、VR危険体感設備等を備えた安全危険体感室も設置しており、専門知識だけではなく実践的な技術や疑似体験に基づく高い安全意識が身につく研修を実施しております。

 

ハ グローバル人材の育成

当社グループにおける主軸のひとつである海外事業の安定した継続のため、海外派遣制度によりグローバルに活躍できる人材の育成に注力しております。海外での業務を経験させるとともに、異文化の理解やグローバルなコミュニケーションスキルを向上させることで、国内外の柔軟なローテーションを可能にし、将来の海外グループ会社の幹部候補となる人材の育成につなげております。

また、海外グループ会社の事業基盤強化、事業領域拡大、ローカル化の推進に向け、経営的視点で考え行動するグローバル人材の育成を目的に、現地駐在員およびナショナルスタッフの幹部社員を対象とした幹部育成研修も実施しております。

 

<指標と目標> 

当社は、人的資本及び多様性関する各種施策を推進するうえでの指標として、下記数値目標を設定しています。

区分

項目

2023年度実績

目標

ダイバーシティ&

インクルージョン

総合職新卒採用に占める女性社員の割合

6.1

10%以上

2025年度迄

管理職・総合職採用に占める女性社員の割合

7.8

10%以上

2025年度迄

女性管理職比率

2.4

2.6%以上

2030年度

ワーク・ライフ・

バランス

男性育児休業取得比率

70

100

2024年度

 

上記数値については、当社グループの主要な事業を営む会社において、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、必ずしも当社グループに属する全ての会社では行われていないことから、当社単体での指標及び目標値としております。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループでは、リスクの全社一元管理を進め、個別リスク管理によるバラツキを是正し、全社の対策レベルの向上を図ることを目的に「リスク&コンプライアンス委員会」を設けております。

「リスク&コンプライアンス委員会」では、当社グループに重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクに対しては、個別の委員会、主管部門と連携し、未然防止から発生対応までの対策を講じていくとともに、会社全体のリスク管理方針の決定と指示、推進を行っております。

このようなリスク管理体制のもと、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 建設市場の縮小リスク

 当社グループの主要事業は設備工事業であり、建設市場の動向が経営成績に与える影響は大きいと考えられます。当社グループは、コスト削減や技術力強化に努め、競争力の強化に取り組んでおりますが、想定を超える国内建設投資の減少、市場の縮小が続いた場合、競合他社との受注競争が更に激化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 取引先の信用リスク

当社グループは、取引先の財務状態に応じた与信管理を実施し、可能な限り信用リスク回避のための方策を講じておりますが、万一、発注者、協力会社及び共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、請負代金、工事立替資金等の回収不能や工事の進捗に支障をきたすこともあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 不採算工事の発生リスク

当社グループの主要事業である設備工事業においては、工事の受注に際して、施工内容や工期、想定リスク等を十分に検討した上で、工事原価を見積り、受注判断を行っておりますが、想定外の事象の発生等に伴う追加原価が発生し、これを請負代金に反映することが困難な場合には、工事採算を低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、施工途中において設計変更や追加工事、工期延長等が発生した場合、見積原価の見直しを行い、取引先と請負代金の交渉を行っておりますが、想定以上の追加原価が発生し、これを請負代金に反映することが困難な場合には、工事採算を低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 資材価格の高騰リスク

当社グループは、建設資材等を調達しており、資材価格の変動リスクに対して、受注時に早期契約による建設資材価格の決定や銅価格のヘッジを行う等、リスクの軽減に努めておりますが、資材価格等が予想を上回って急激に高騰した際、これを請負代金に反映することが困難な場合には、工事採算を低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外における事業活動リスク

 当社グループは、主に東南アジアや中国に設立した現地法人を拠点として事業活動を行っております。当社は、これらの海外子会社に対して、出資・融資等の投資に加え、人材派遣、技術支援等を通じ、経営指導を行っておりますが、これら海外での事業活動には、次のようなリスクがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ①予期しない法律又は規制の変更

 ②不利な政治又は経済要因

 ③テロ、戦争、その他社会的混乱等

 ④為替レートの急激な変動

 

 

(6) 施工に係る事故・労働災害等のリスク

 当社グループは、工事の施工において、安全並びに品質を第一とし、それぞれ「労働安全衛生マネジメントシステム」、「品質マネジメントシステム」を推進し、無事故・無災害及び品質クレームの撲滅に取り組んでおり、社員をはじめ協力会社に対する教育、指導も積極的に実施しております。

 しかしながら、建設業は、①一般の製造業のように固定した生産工場で同一の物を生産するのとは異なり、常に異なる場所で、異なる物を施工する生産形態であり、また、施工場所も全国各地、海外に点在していること。②他の業者と共同で一つの施工物を完成させるため、当社グループの施工範囲以外にも注意が必要であること。③施工にあたり、いくつもの協力会社と一体となり作業を行うため、当社グループ社員のみならず、協力会社の社員の安全管理にも十分留意する必要があること。④建設業の性質上、機械化が進みづらく、人の手に依存していること等により様々な施工上の危険要因があります。

 以上のような施工上のリスクを認識し、当社グループでは、事故を未然に防ぐために、施工現場単位で施工前に十分な検討を行い、必要な対策を講じておりますが、予期せぬ事故が発生した場合や施工した建設物等に契約不適合があった場合、多額のコストの発生や当社グループの信用の低下など当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 建設技術者・技能労働者不足リスク

当社グループは、協力会社の採用支援を含め、建設技術者・技能労働者の確保に積極的に取り組んでおりますが、今後、建設技術者・技能労働者の需給関係が急激に逼迫し、必要人員の確保が困難となった場合には、受注機会の喪失や工期遅延等の問題が発生する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に係るリスク

 当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な負担を課される、又は事業の遂行に関する制約が加えられることにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) コンプライアンスに係るリスク

 当社グループは、法令遵守に加え、人権の尊重、公正な取引、知的財産等に係る基本方針を盛り込んだ「住友電設グループ社員行動基準」を制定するとともに、コンプライアンス研修等の各種施策を実施し、コンプライアンスの徹底に取り組んでおりますが、役職員個人による法令違反を含むコンプライアンスの問題が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 保有資産の価値下落リスク

当社グループは、営業上の必要性から不動産、有価証券等の資産を保有しております。

不動産に関しては、保有する固定資産について減損兆候の判定を実施し、また、有価証券等に関しては、取締役会で個別銘柄毎に保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかという観点を含め、経済合理性並びに将来の見通し等を総合的に勘案し、保有の適否について検討を行っておりますが、これらの保有資産の時価が著しく下落した場合等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 退職給付に係るリスク

当社グループの退職給付債務及び費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出しております。年金資産に関しては住友電設確定給付企業年金の諮問機関として企業年金管理委員会を設置しており、適切な人材を配置するとともに、運用幹事会社から法令や運用に関する情報提供や助言を得る環境を整備しておりますが、金利水準の低下及び株式や債券等の年金資産の価格下落等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(12) 情報漏洩に係るリスク

当社グループは、個人情報や機密情報を適切に管理するため、情報セキュリティに関する方針及びルールを制定し、社内体制の構築や従業員教育に取り組んでおりますが、外部からの攻撃等予期せぬ事態により、情報が漏洩した場合、損害賠償の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 自然災害等に係るリスク

当社グループでは、地震や大規模自然災害が発生した場合に備えた事業継続計画(BCP)を策定しております。震災発生時には、総合設備会社の社会的責任としてインフラ復旧工事に積極的に協力するとともに、自社施工中現場、竣工物件の早期復旧に全力を傾注することを基本方針とし、事業の早期復旧、継続させるための対策を講じておりますが、当社グループが事業展開する国内外の各国・各地域で不測の巨大地震や風水害等による想定を超える被害が発生した場合は取引先の設備投資計画の延期や縮小、凍結による工事量の減少、進行中工事の中断、建設資材の調達納入遅延が発生する恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 感染症に係るリスク

当社グループでは、2011年4月に新型インフルエンザに備えた事業継続計画(BCP)を策定しております。

しかし、当社グループが事業活動を行う国・地域で感染症の感染拡大が長期間にわたって続き、国内外ともに経済活動の抑制、縮小が続いた場合は、取引先の設備投資計画の延期や縮小、凍結による工事量の減少、進行中工事の中断、建設資材の調達納入遅延が発生する恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 気候変動に係るリスク

当社グループでは、気候変動問題をはじめとする地球環境への対応を重要な経営課題の一つと認識しており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、気候変動が事業並びにバリューチェーンにもたらすリスクと機会、それに伴う財務的影響などを分析し、経営戦略への取組みと情報開示を行っております。

しかし、気候変動対策への取組みに関する社会的要求が高まる中、技術開発や市場変化に対する当該取組みが不十分であった場合、環境負荷低減志向を背景とした競争激化や顧客ニーズへの対応不備により、受注機会の喪失、減少となり財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて気候変動対策に関連する新たな法令や規制の導入がなされた場合には、対応費用の増加により当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析等)

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における当社グループを取り巻く経済環境は、社会経済活動の正常化が進み、インバウンド需要の回復や、個人消費を中心に総じて堅調に推移いたしました。しかしながら、国内においては、円安の進行や原材料価格の高止まりをはじめ、人手不足や賃金上昇等による物価の上昇傾向が続いております。また、当社グループが事業展開している東南アジア地域においても、軟調な輸出により景気回復が鈍化する等、国内外とも景気の先行きは依然として不透明な経済状況で推移いたしました

 

このような状況の中、当社グループは、「住友事業精神」と「住友電設グループ企業理念」に基づく経営の基本方針に沿って、電気の安定供給等の社会インフラ維持に努めるなど、社会の要請に応えるべく事業活動を展開しております。また、2020年度よりスタートした中期経営計画「VISION24」(2020~2024年度:5ヵ年計画)に基づき、「新たな成長戦略と総合力で持続的発展を!」をテーマに掲げ、「総合設備企業グループ」として、各部門の施工力、技術力の底上げに向けて資源を投入し、より一層の成長・拡大を図るため、グループ一体となって取り組んでおります

この結果、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。

 

受 注 高

2,258億65百万円

(前連結会計年度比

19.6%増

売 上 高

1,855億24百万円

(前連結会計年度比

5.9%増

営 業 利 益

125億48百万円

(前連結会計年度比

6.8%減

経 常 利 益

135億02百万円

(前連結会計年度比

6.2%減

親会社株主に帰属する当期純利益

100億60百万円

(前連結会計年度比

7.2%増

 

 

受注高につきましては、国内外の大型工事の受注により、一般電気工事を中心に設備工事業全体で増加したことから、前期より増加いたしました。売上高につきましては、国内の電力工事や一般電気工事を中心に大型手持工事が進捗した結果、前期より増加いたしました

利益面では、働き方改革・職場環境の改善等、事業の根幹を支える人材の確保・育成のための経費増をカバーすべく、工事採算の改善、経費削減にグループ一体となって取り組んでまいりましたが、営業利益、経常利益で前期を下回る結果となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、政策保有株式の縮減を目的とした投資有価証券売却益等により、前期より増加いたしました

 

受注高は225,865百万円(前連結会計年度比19.6%増)、売上高は、185,524百万円(同5.9%増)となりました。事業の種類別では、設備工事業の受注高は218,020百万円(同21.6%増)、売上高は177,679百万円(同7.2%増)となり、機器販売を中心とするその他事業の受注高及び売上高は7,844百万円(同17.0%減)となりました。

 

売上総利益は、採算の改善にグループを挙げて取り組んでまいりましたが、24,213百万円(同0.2%減)、売上総利益率は13.1%となりました。販売費及び一般管理費は11,665百万円(同8.1%増)となり、営業利益は12,548百万円(同6.8%減)、営業利益率は6.8%となりました。

 

営業外収益は1,019百万円(同2.9%増)、営業外費用が65百万円(同13.0%増)となった結果、営業外収支は953百万円の黒字となり、経常利益は13,502百万円(同6.2%減)と前連結会計年度と比べ減益となり、経常利益率は7.3%となりました。

 

特別利益には投資有価証券売却益1,309百万円を計上しました。特別損失には子会社株式売却損80百万円、固定資産廃却損43百万円を計上し、合計で123百万円となりました。

 

以上の結果、税金等調整前当期純利益は14,687百万円(同0.0%減)となりました。ここから、法人税等4,360百万円、法人税等調整額24百万円、非支配株主に帰属する当期純利益242百万円を差し引き、親会社株主に帰属する当期純利益は10,060百万円(同7.2%増)となりました。

 

 

なお、設備工事業における種類別の受注高、売上高の概況は、次のとおりであります。
 電力工事部門は、電力会社向け工事の増加により、受注高は34,249百万円(同41.6%増)となりました。売上高は手持案件が堅調に進捗したことで、24,510百万円(同28.0%増)となりました。

一般電気工事部門は、国内外でデータセンター案件等の大型工事の受注により、受注高は138,371百万円(同23.3%増)となりました。売上高は手持工事を順調に消化し、111,137百万円(同4.9%増)となりました。

情報通信工事部門は、通信キャリアの投資抑制により移動体基地局工事が減少したものの、大阪・関西万博の情報ネットワーク工事等の大型受注や手持工事の進捗により、受注高は30,543百万円(同3.2%増)、売上高は29,616百万円(同3.9%増)となりました。

プラント・空調工事部門は、大型のプラント工事の受注や手持工事の進捗により、受注高は14,856百万円(同11.4%増)、売上高は12,414百万円(同3.0%増)となりました。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、売上債権が増加したことに加え、保有株式の株価上昇により投資有価証券が増加したこと等から、前連結会計年度末より19,077百万円増加181,664百万円となりました。当連結会計年度末の負債合計は、工事量の増加に伴い仕入債務の増加や未成工事受入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ7,763百万円増加70,732百万円となりました。当連結会計年度末の純資産合計は、保有株式の株価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したこと等から、前連結会計年度末より11,314百万円増加110,932百万円となりました。この結果、自己資本比率は58.3%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

①キャッシュ・フロー
 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上に加え、売上債権・仕入債務等の増減、法人税等の支払額を加減した結果、当連結会計年度は8,514百万円の収入(前連結会計年度は5,094百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入があったものの、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は499百万円の支出(前連結会計年度は2,388百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払い等により、当連結会計年度は3,835百万円の支出前連結会計年度は3,502百万円の支出)となりました。この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の54,428百万円に対して、4,656百万円増加し、59,085百万円となりました。

 

②資本の財源及び資金の流動性
 当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入により調達しております。当社グループは、「質」にこだわる経営を推進し、健全かつ強固な財務体質を構築してきました。また2020年度よりスタートした中期経営計画「VISION24」において、持続的な成長を目指すため、5年間で200億円の成長投資を行っていく予定であります。

 国内外の経済は先行きの不透明感が継続しておりますが、当社は十分な流動性資金を確保しており、事業運営への影響はありません。

 

(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2020年度よりスタートした中期経営計画「VISION24」に基づき、「新たな成長戦略と総合力で持続的発展を!」をテーマに、「総合設備企業グループ」として、各部門の施工力、技術力の底上げに向けて資源を投入し、売上高の拡大を図るとともに、各部門が連携した総合力で、客先へのトータルサービスを拡大するための各重点施策を着実に推進しております。当社グループは、中期経営計画「VISION24」において、経営上の目標の達成状況を判断するために、「受注高」、「売上高」、「経常利益(率)」、「ROE(自己資本当期純利益率)」、「自己資本比率」及び「配当性向」を重要な指標として測定することとしており、2024年度の数値目標として、「受注高:2,000億円」、「売上高:2,000億円」、「経常利益(率):150億円(7.5%)」、「ROE(自己資本当期純利益率):10%をターゲット」、「自己資本比率:50%水準を維持」、「配当性向:40%をターゲット(2024年度)」をそれぞれ掲げております。なお、当連結会計年度におきましては、「受注高:225,865百万円」、「売上高:185,524百万円」、「経常利益(率):13,502百万円7.3%)」、「ROE:10.0%」、「自己資本比率:58.3%」、「配当性向:37.3%」となり、2024年度の数値目標達成に向け着実に前進しております。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結企業集団が営んでいる事業の大部分を占める設備工事業では生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。

 

(2) 受注実績

 

セグメントの名称

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

設備工事業

179,335

218,020

電力工事

24,192

34,249

一般電気工事

112,211

138,371

情報通信工事

29,597

30,543

プラント・空調工事

13,334

14,856

その他事業

9,451

7,844

合計

188,787

225,865

 

 

(3) 売上実績

 

セグメントの名称

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

設備工事業

165,669

177,679

電力工事

19,148

24,510

一般電気工事

105,950

111,137

情報通信工事

28,517

29,616

プラント・空調工事

12,052

12,414

その他事業

9,451

7,844

合計

175,120

185,524

 

 

(4) 受注残高

 

セグメントの名称

前連結会計年度末
(百万円)

当連結会計年度末
(百万円)

設備工事業

122,423

162,764

電力工事

20,192

29,931

一般電気工事

75,476

102,711

情報通信工事

17,683

18,610

プラント・空調工事

9,069

11,511

その他事業

合計

122,423

162,764

 

 

 

なお、参考のため提出会社単独の事業の状況は次のとおりであります。

受注工事高及び施工高の状況

(1) 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高

 

期別

工事種別

前期繰越
工事高
(百万円)

当期受注
工事高
(百万円)


(百万円)

当期完成
工事高
(百万円)

次期繰越工事高

当期施工高
(百万円)

手持工事高
(百万円)

手持工事高
のうち
施工高
(%)

手持工事高
のうち
施工高
(百万円)

第98期

(自 2022年

4月 1日

至 2023年

3月31日)

電力工事

15,149

24,130

39,279

19,086

20,192

2

443

19,203

一般電気工事

52,445

76,573

129,019

69,541

59,478

1

782

68,796

情報通信工事

16,604

29,290

45,894

28,197

17,697

7

1,279

28,381

プラント・
空調工事

7,787

13,335

21,122

12,052

9,069

0

35

11,991

その他

439

439

439

439

91,985

143,769

235,755

129,317

106,437

2

2,540

128,812

第99期

(自 2023年

4月 1日

至 2024年

3月31日)

電力工事

20,192

34,241

54,434

24,502

29,931

2

677

24,737

一般電気工事

59,478

95,860

155,338

77,185

78,153

1

1,098

77,501

情報通信工事

17,697

30,290

47,987

29,377

18,610

7

1,256

29,354

プラント・
空調工事

9,069

14,876

23,946

12,419

11,526

0

50

12,434

その他

458

458

458

458

106,437

175,727

282,165

143,943

138,221

2

3,082

144,485

 

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。

2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。

3 当期施工高は(当期完成工事高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致しております。

 

(2) 受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

 

期別

工事種別

特命(%)

競争(%)

計(%)

第98期

(自 2022年4月 1日

至 2023年3月31日)

電力工事

71.1

28.9

100.0

一般電気工事

48.6

51.4

100.0

情報通信工事

86.5

13.5

100.0

プラント・空調工事

37.4

62.6

100.0

第99期

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

電力工事

86.1

13.9

100.0

一般電気工事

64.5

35.5

100.0

情報通信工事

90.7

9.3

100.0

プラント・空調工事

75.4

24.6

100.0

 

(注) 百分比は請負金額比であります。

 

 

(3) 完成工事高

 

期別

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

第98期

(自 2022年4月 1日

至 2023年3月31日)

電力工事

19,086

19,086

一般電気工事

3,176

66,364

69,541

情報通信工事

546

27,651

28,197

プラント・空調工事

8

12,044

12,052

その他

439

439

3,730

125,586

129,317

第99期

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

電力工事

24,502

24,502

一般電気工事

1,003

76,182

77,185

情報通信工事

1,170

28,207

29,377

プラント・空調工事

33

12,386

12,419

その他

458

458

2,206

141,736

143,943

 

 

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。

第98期の請負金額1,400百万円以上の主なもの

発注者

工事名称

楽天モバイル㈱

楽天モバイル 基地局建設工事(関東 Phase1)

㈱錢高組

SCSK千葉第3ビル新築工事

㈱大林組

京都市上下水道局南部拠点整備事業

清水建設㈱

プロロジスパーク草加プロジェクト2階・3階カスタマー工事

㈱大林組

京セラ㈱鹿児島国分工場 新研究棟新築工事

 

 

第99期の請負金額1,500百万円以上の主なもの

発注者

工事名称

関西電力送配電㈱

新加古川線改良工事ならびにこれに伴う除却工事(2工区)

㈱日本総合研究所

㈱日本総合研究所 鰻谷センター 非常用発電機更改工事

住友・HEXEL特定建設工事共同企業体

(仮称)千葉県総合救急災害医療センター電気設備工事

デジタル東京2特定目的会社

(仮称)NRT12新築工事(電気設備工事)

㈱奥村組

(仮称)ニトリ名古屋DC 新築工事

 

 

2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。

 

 

(4) 手持工事高(2024年3月31日現在)

 

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

電力工事

29,931

29,931

一般電気工事

2,725

75,427

78,153

情報通信工事

703

17,906

18,610

プラント・空調工事

11,526

11,526

3,429

134,792

138,221

 

 

(注) 手持工事のうち請負金額2,300百万円以上の主なもの

発注者

工事名称

完成予定

東京電力パワーグリッド㈱

リニア地点8供給工事(8工区)

2027年10月

㈱NTTファシリティーズ

(仮称)Sunrise Inzai4新築工事のうちFO工事(電力・電気設備工事)Phase1

2025年 1月

関西電力送配電㈱

姫路火力東線(南姫路S/S)~№5間他改良工事ならびにこれに伴う除却工事

2024年10月

㈱日本総合研究所

日総研鰻谷センターUPS更改工事

2028年 1月

㈱大林組

淀屋橋駅西地区市街地再開発事業

2026年 3月

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因や当該要因への対応については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照のこと。

 

(重要な会計方針及び見積り)

 当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠し、作成されております。この連結財務諸表作成にあたり、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。当社の重要な会計方針のうち、特に見積り、判断の度合いが高いものは以下の項目であります。なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

収益の認識

 当社は工事契約に関して、一定の期間にわたり充足される履行義務は、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識し、一時点で充足される履行義務は、工事完了時に収益を認識することとしておりますが、業界の慣行から追加工事を含め、正式な契約書の締結が遅れる場合があり、この場合には、当社は期末日時点において合理的に請負代金を見積り、収益計上をしております。従って、当社の見積りと実績が異なった場合、翌期の損益に影響を与える可能性があります。

また、工事原価総額の見積りにあたっては、利害を別とする関係部門間で協議し、工事契約を遂行するための作業内容を特定・網羅し、かつ個々に適切な原価を算定した上で、着工後の工期変更、人件費・労務費の増減、使用部材の価格変動や仕様変更がある場合、適時に工事原価の見直しを行っております。

しかしながら、大規模工事においては工事原価の変動要素が多く、工期も長期にわたることから、設計変更や追加工事、工期延長等の可能性があります。そのため、工事内容の見直しがあった場合には、当連結会計年度末時点の工事原価総額の見積りにおいて不確実性があり、翌連結会計年度の損益に影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、最新技術、情報技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。

当社の研究開発活動は、技術本部が中心となり、各事業部門と連携して、当社独自、又はメーカーや大学と共同して推進しております。

当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1) 設備工事業

①カーボンニュートラル・省エネルギー技術

太陽光発電等の創エネルギー技術で発電した電力を蓄電池等の蓄エネルギー技術で有効に活用し、脱炭素社会実現に向けてカーボンニュートラルを推進しております。また市場のニーズに合った各種省エネルギー提案技術力の強化、及び省エネルギー診断技術の活用を推進しております。

 

②BMS(ビルディング マネジメント システム)技術

設備の監視・制御において、クラウドを利用したシステム構築技術を進めております。電気・空調・衛生設備などの監視だけでなく、エネルギー管理などのビルマネジメントシステムを構築しております。

また、IoTや5Gなど新しい技術を活用し、ニューノーマル時代に求められるBMSの開発を推進してまいります。

 

③セキュリティシステム技術

工場における人・車両の入退出管理、Webカメラによる侵入監視、研究室などへの入退出管理機能だけでなく、セキュリティ用社員カードを利用した食堂・購買のキャッシュレス化など多様なシステムに対応しております。また、防犯機能だけでなく、災害時の安否確認機能など各種の防災機能を持った工場向け「統合セキュリティシステム」として活動を展開しております。

物流システムにおいて、ETC(電子料金収受システム)のDSRC(狭域通信)技術に着目し、各種機能への利用にも取り組んでおります。

 

④ローカル5G*

モバイルキャリアが提供するパブリック5Gとは異なり、個別のニーズに応じて、企業や自治体等が自らの敷地内でスポット的に構築できる通信システムであり、総務省が普及に向けて取組んでいます。同技術に対応できるように川崎テクニカルセンターでローカル5Gインフラを構築し、実証実験の場として通信技術の習得やシステムの開発や検証、展開を進めてまいります。

* 5G:第5世代移動通信システムのことであり、高速大容量・低遅延通信・多数同時接続という特徴を持っています。

 

⑤HACCP*による食品衛生管理手法への対応

飲食店や食品製造工場において、HACCPによる食品衛生管理をクラウドで一元管理するシステムを開発いたしました。「誰でも・わかりやすく」をコンセプトに、スマートデバイスやパソコンを利用した簡単な操作により、HACCPに沿った食品の衛生管理を実現いたしました。パートナー企業との協業により、本システムの展開に取り組んでまいります。

* HACCP:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を分析した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。

 

(2) その他事業

高度情報化社会に伴い、関連事業における様々な技術開発活動に取り組んでまいります。

 

当社の研究開発活動の専従人員は、2024年3月末現在33名であり、当連結会計年度の研究開発費総額は751百万円であります。なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。