当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当行グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当行グループは、経営理念「地域の発展に役立つ存在感のある銀行になろう」「お客さまのニーズに応え堅実で信頼される銀行になろう」「全員が働くことに喜びをもち誇りに思う銀行になろう」のもと、「地域に密着し、真に地域の発展に役立つ銀行」を目指し、役職員一丸となって各種施策に取組んでおります。
2022年度において、パーパス「“つながり”の強さで、地域の輝く未来をつくる」を制定するなどの企業理念体系の再定義を行っており、先行きが不透明で変化の速い時代において、当行および役職員の判断軸を共有することで様々な変化に対応していきたいと考えております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
地域金融機関を取り巻く経営環境は、少子化による人口減少や高齢化の進行等の社会構造における大きな変革期を迎えており、デジタル技術の進展や規制緩和に伴う他業態を含めた競合環境の激化等、日々厳しさを増しております。また、地域のお取引先は、ゼロゼロ融資の返済本格化、円安の影響による物価高騰や人手不足等の課題を抱えており、ファイナンス支援、本業・経営改善支援により一層取組むことで、地域経済の活性化に貢献したいと考えます。
2023年度から第1次中期経営計画「インテグリティある組織への変革」(2023年度~2025年度)をスタートしました。「中小規模事業者向け専門の金融機関としてのビジネスモデル構築」等の5つの重点戦略を掲げ、将来の成長に向けた大胆な構造改革を行いながら、「自発的に考えて行動できる人材」を育成し、組織を強くしていく計画としています。その初年度である2023年度は、投資専門子会社の設立や人事諸制度改定の着手など、中期経営計画を着実に進めるための土台作りを進めました。
地域・お取引先の課題解決ニーズに対し、迅速かつ高度なサービスを提供できる行職員を育成することで、安定的な収益基盤を確保するとともに、当行の持続可能なビジネスモデルを一層進展させることを目指し、役職員一丸となって各種施策に取組んでまいります。
文中の将来に関する事項は、当行グループが有価証券報告書提出日現在において、合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組状況は、次のとおりです。
当行グループは、「南日本銀行グループSDGs宣言」を制定し、地域社会が抱える課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献し、地域とともに持続的に成長していくことを目指しています。また、近年、世界中で異常気象や自然災害による被害が甚大化するなど、当行グループが基盤とする鹿児島県においても企業経営に大きな影響を及ぼす可能性が高まっており、これまで以上に気候変動への対応を重要な経営課題と捉え、対応に取組んでいく必要があると認識しています。こうした状況を踏まえ、当行グループは2023年5月にTCFD提言に賛同し、気候変動への対応を強化するとともに、TCFD提言を踏まえた情報開示の充実に努めていく方針です。
(1)ガバナンス
当行グループが目指す経営方針・戦略等の具現化や地域社会が抱える課題解決を通じた持続可能な社会の実現に向けて、その進捗を管理するとともに、実効性を高めることを目的としてサステナビリティ委員会を設置しております。
本委員会は、頭取を委員長とし、取締役、監査役及び部長・室長で構成しており、経営計画の進捗に関する協議に加え、持続可能なビジネスモデルの確立を図るため、サステナビリティを中心に据えた考え方や取組みの浸透に資する協議を行っております。
※サステナビリティ委員会の主な協議事項
・経営計画にかかる事項の進捗に関するモニタリング
・経営計画にかかる事項の問題点・課題の洗い出し、それに対する改善策の立案、決定
・SDGs宣言の重要課題、事業者支援・地域活性化にかかる事項のモニタリング
・気候変動に関連する取組み
さらに、気候変動に関連する取組みについては、気候変動対応ワーキンググループをはじめとする各執行機関において全行横断的な協議を行うとともに、サステナビリティ委員会にて各施策の取組状況等について協議・管理することとしています。また、これらの協議内容については、取締役会へ報告・付議を行う態勢としております。
(2)戦略
①サステナビリティに関する戦略
「南日本銀行グループSDGs宣言」では、「地域経済の回復及び持続的な成長への貢献」「地域社会とのパートナーシップ及び環境問題への取組み支援」「全役職員の活躍促進」の3つの重点課題を掲げ、地域とともに持続的に成長していくことを目指しております。特に「地域経済の回復及び持続的な成長への貢献」については、鹿児島県を基盤とする地域金融機関として、事業者へのファイナンス支援や本業支援、経営改善支援などの金融仲介機能を発揮するとともに、デジタル・トランスフォーメーション等を活用した金融サービスの提供を通じて、地域経済の持続的な成長に貢献したいと考えております。
また、当行グループでは、気候変動に関する「リスク」と「機会」を以下の通り認識しています。今後、シナリオ分析を実施するなど、気候変動に関するリスクが財務に与える影響の把握等に努めてまいります。
■リスク
■機会
②人的資本に関する戦略
当行は、地元中小規模事業者の支援にやりがいを感じ、お客さまに信頼される行職員の育成と、個々の能力を向上させる行内環境の整備を推進いたします。行職員同士の対話を大切にし、共に成長し続けることを支援することにより、地域経済の持続的な成長に貢献してまいります。
イ. 地元中小規模事業者の支援にやりがいを感じる行員の育成
(ⅰ)若手行員の段階的な成長支援
1年目から5年目までの行員に対しては、年次研修を毎年実施し今後のキャリアの明確化とリーダーシップの養成を図っております。また、各ステージに応じて融資業務能力の向上を目的とした4段階の研修を実施しており、お客さまの課題を解決できる行員を育成しております。
(ⅱ)学びの機会の提供
地元の大学でのセミナー参加、第二地方銀行協会での研修、外部講師による研修、公的資格取得のための支援など、行職員が幅広い知識を習得するため様々な学びの機会を提供しております。
(ⅲ)外部機関への派遣
人材育成を目的として、地域経済活性化支援機構、鹿児島県中小企業活性化協議会など外部機関への派遣を行っております。
(ⅳ)女性活躍推進のための取組
女性活躍推進の施策として、女性の行職員を鹿児島商工会議所、第二地方銀行協会等の外部セミナーへ積極的に参加させております。また、人事アドバイザーによる面談を実施し、個々のキャリア形成を支援する取組を行っております。
(ⅴ)地元を愛する行員の育成
地元鹿児島を理解し愛する行員を育成するため、新入行員のスタートアップ研修時には、鹿児島の史跡を探訪し、歴史や郷土の偉人について学ぶ機会を設けております。
また、行内の昇格基準資格科目に「かごしま検定」を取り入れ、地元を愛する行員の育成に努めております。
ロ. 個々の能力を向上させる行内環境整備
(ⅰ)人事・育成・評価制度の見直し
働きがいのある環境を作り、人材の成長を支援する人事制度・評価制度の導入を目指し、約半世紀ぶりに新たな人事諸制度の構築に取組んでおります。人事諸制度改革の趣旨を行職員が十分理解したうえで個人の成長や働きがいを高め、組織の価値向上に努めてまいります。
(ⅱ)イクボスの推進
2017年11月に、「イクボス宣言」を行い、鹿児島市イクボス推進同盟加盟企業として仕事と生活を両立しやすい環境づくりに取り組んでおります。これからもワークライフバランスの実現にむけて積極的に取り組んでまいります。
(ⅲ)働き方改革の推進
2023年11月に、鹿児島県が推進する「かごしま『働き方改革』推進企業」に認定されました。長時間労働縮減の促進、休暇の取得促進、女性活躍推進、治療と仕事の両立支援・健康支援、育児と仕事の促進、障害者の活躍促進等を掲げ、今後も働きやすい職場環境作りに取り組んでまいります。
(3)リスク管理
リスク管理委員会において、定期的に全行的なリスク管理体制についてモニタリングを行っていますが、当行グループがESG戦略を進める上で発生するリスクや機会の管理についても、構築に向けた検討を進めてまいります。
(4)指標と目標
①サステナビリティに関する指標及び目標
当行グループは、SDGs宣言において前述のとおり3つの重点課題を掲げ、地域とともに持続的に成長していくことを目指しております。当行グループの取組みに関する情報開示の高度化に向けた検討を進めてまいります。
また、気候変動への対応として、自社のCO2排出量を算定し、環境配慮型店舗への建て替えやLED照明化、電気自動車の導入など、削減に向けた取組みを進めております。削減状況については以下の通りですが、具体的な目標値については、今後の環境に関する政策や当行グループの戦略等を踏まえて設定する予定です。
■CO2排出量(SCOPE1・2)の過去3年間の実績推移(南日本銀行) (単位:t-CO2)
②人的資本に関する指標及び目標
当行のパーパスである「“つながり”の強さで、地域の輝く未来をつくる」の具現化にむけ、「自発的に考えて行動できる人材」を増やし、変革に適応できる自律型組織の確立を目指してまいります。
イ.指標及び目標
中小規模事業者向け専門の金融機関として、金融業務能力向上を目的とした研修の実施や自己啓発のための通信教育等の推奨を行っております。
お客さま本位の質の高い金融サービスの提供を目的に、業務上必要とされる知識の習得、資格の取得に対する行職員の自発的取組みを支援するため、資格、検定、通信教育の取得に対する奨励金制度を設けております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当行及び当行グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
(1) 信用リスク(不良債権問題)
当行及び当行グループでは、従来から資産の健全性の確保や、不良債権の圧縮に努めております。しかしながら、貸出運用資産については、貸出先の業況悪化や担保価値の下落等により、将来貸倒れによる損失発生のリスクがあります。
これらに対応するため、当行及び当行グループは、融資先の状況把握を行い、担保価値の変動等を勘案して適切に貸倒引当金を計上しておりますが、実際の貸倒れが貸倒引当金計上時点の前提及び見積りと大きく乖離する場合、貸倒引当金が不十分となり、貸倒引当金の積み増しをせざるを得なくなる可能性があります。
また、経営状況が悪化した貸出先に対し、債権放棄等を行って支援する場合があります。さらに、担保権を設定した不動産若しくは有価証券等に対する担保権の執行が、流動性の欠如や価格の著しい下落等によって、事実上できない場合があります。この結果、与信関連費用等が増加する可能性があります。
加えて当行及び当行グループは、鹿児島県を中心に九州地区を営業基盤としており、また、業種別貸出状況において、卸・小売業及び不動産業の貸出金の割合は、他の業種に比べて多くなっております。そのため、今後の地域経済の景気動向あるいは特定業種の経営状況の悪化等によっては不良債権額あるいは与信関連費用が増加し、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 流動性リスク
当行及び当行グループでは、運用と調達のミスマッチや予期せぬ資金の流失により、決済に必要な資金調達に支障を来たしたり、通常より著しく高い金利での調達を余儀なくされることにより、損失を被るリスクがあります。当行及び当行グループは、当行及び当行グループの資金運用・調達構造に即した資金繰りを行い、万一、不測の事態が発生した場合でも合理的かつ機動的に対応できる体制を整えておりますが、想定以上の事態が発生した場合は、当行及び当行グループの財務状況・資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
(3) 市場リスク(有価証券運用)
当行及び当行グループでは市場性のある有価証券を保有しております。債券については、金利が上昇した場合には保有する国債等の債券価格が下落し、株式については、株価が下落した場合には株式の減損または評価損が発生する等の金利リスク及び価格変動リスクがあります。当行及び当行グループは、このような市場リスクの変動状況を常に把握し、適切なリスク管理を行っておりますが、想定以上に金利の上昇や株式相場の下落等が生じた場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼし自己資本の減少につながる可能性があります。
(4) オペレーショナル・リスク
① 事務リスク
当行及び当行グループは、役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより損失を被るリスクがあります。当行及び当行グループは、全ての業務に事務リスクが存在することを認識し、その軽減を図るよう努めておりますが、想定を超えた事務リスクが発生した場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② システムリスク
当行及び当行グループでは、内外の要因によるコンピュータ・システムのダウンや誤作動・不正使用、コンピュータ・ウィルス等により損失を被るリスクがあります。当行及び当行グループは、システム全般に関するリスクを的確に認識・把握し、適切なリスク管理を行うことで、トラブル・事故・不祥事・苦情等による損失等を未然に防止するよう努めておりますが、重大なシステムトラブル等が発生した場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法務リスク
当行及び当行グループでは、多様な銀行業務における諸取引・契約締結の結果、お取引先や第三者から損失の賠償を求められたり、トラブル・紛争等が発生するリスクに晒されております。このような事態を招かぬよう、当行及び当行グループでは、適正なコンプライアンス態勢を構築するとともに、その重要性を全行員へ浸透させるべく、教育・研修活動を実施しておりますが、今後、様々な業務遂行にあたり、法令違反及び訴訟が提起された場合には、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ イベント・リスク
当行及び当行グループでは、テロ・大地震・大噴火・大停電・新型疫病等の偶発的要因から発生した事件・事故等により損失を被るリスクがあります。これらに備えて、当行では各種のコンティンジェンシー・プランを策定しておりますが、重大なイベント・リスクが発生した場合、当行及び当行グループの業務運営、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) レピュテーショナル・リスク(風評リスク)
当行及び当行グループでは、種々の緊急事態の発生による風評や銀行経営の内容が誤って伝えられること等により、当行及び当行グループの経営にマイナスの影響が発生するリスク及び、直接・間接を問わず不測の損失を被るリスクがあります。当行では、風評リスクに関する「コンティンジェンシー・プラン」を策定し、風評リスクに備える態勢を整えておりますが、誤った情報の広範囲に渡る伝播など不可抗力による事態が発生した場合、当行及び当行グループの業務運営、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 顧客情報管理
当行及び当行グループでは膨大な顧客情報を取扱っており、その情報漏洩が企業の信用を失墜させ、ひいては預金流出につながるリスクが潜在することを強く認識しております。
また「個人情報保護法」への対応として、プライバシーポリシーをはじめ、個人情報に関する各種管理規程等を整備するとともに、役職員に対する教育・研修により情報管理の重要性を周知徹底しております。
しかしながら、顧客情報漏洩等の問題が発生した場合には、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、情報漏洩に伴い発生した損害に対して、損害賠償責任が発生する可能性があります。
(7) 自己資本比率規制
① 自己資本比率規制及びその影響要因
当行及び当行グループでは、銀行法により自己資本比率規制の適用を受けており、国内基準を採用しております。2024年3月末の連結自己資本比率は厳正な資産査定を行った上で、国内のみで営業する銀行に必要とされる自己資本比率4%を超える8.26%を維持しております。
しかしながら、今後、当行及び当行グループの自己資本比率が要求される水準を下回った場合には、早期是正措置が発動され、監督当局から業務の全部または一部停止等を含む様々な命令を受けることになります。
当行の自己資本比率は、以下のような要因により影響を受ける可能性があります。
・不良債権処理に伴う与信関連費用の増大
・有価証券の減損処理、評価損の拡大
・自己資本比率の基準及び算定方法の変更
・本項記載のその他の不利益な展開
② 繰延税金資産
繰延税金資産は、現時点におけるわが国の会計基準に基づき、一定の条件の下で、将来における税金負担額の軽減効果として貸借対照表に計上することが認められております。
この繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果が係る予測・仮定と異なる可能性があります。当行及び当行グループが、将来の予測・仮定に基づいて繰延税金資産の一部または全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産を減額することになり、その結果、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があるとともに、自己資本比率の低下を招く可能性があります。
(8) 退職給付債務
当行及び当行グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率等に基づいて算出されております。
実際の結果がこれらの前提条件と異なった場合、または前提条件が変更された場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 固定資産の減損会計
当行及び当行グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。今後、地価の動向及び対象となる固定資産の収益状況によっては、当行及び当行グループが所有する固定資産の減損処理に伴う損失が発生し、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 規制変更に関するリスク
当行及び当行グループは、現時点での規則(法律、規則、政策、実務慣行等)に従って業務を遂行しておりますが、将来におけるこれらの規制の新設・変更・廃止並びにこれらによって生じる事態が、業務遂行や当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 事業戦略、業務範囲拡大に関するリスク
当行及び当行グループは、収益力強化のために、様々な事業戦略を展開し、また、法令等の規制緩和に伴う業務拡大を前提とした営業戦略を実施しておりますが、種々の要因により、これらの戦略が当初想定していた成果を得られない可能性があります。
(12) 競争に伴うリスク
当行及び当行グループが主な営業基盤とする鹿児島県を含む九州地区は、近年地域金融機関の競争環境が激化しております。
当行及び当行グループがこのような事業環境において競争優位を得られない場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 格付け低下のリスク
格付機関が当行の格付けを引き下げた場合、当行が市場において資本・資金調達を行うことが困難となったり、資金調達コストの増加を招く可能性があります。その結果、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 金融犯罪にかかるリスク
キャッシュカードの偽造・盗難、インターネットバンキングに係る預金の不正払戻し等の金融犯罪が多発する現状を踏まえ、当行及び当行グループはセキュリティの強化に努めております。しかしながら、金融犯罪の高度化により、被害を受けたお客様への補償や、未然防止対策にかかる費用が増大した場合、当行及び当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 感染症拡大にかかるリスク
新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に伴い、当行グループの貸出金等の信用リスクに影響が生じる可能性があります。貸倒引当金の算定に際しては、その計算基礎となる債務者区分等について、入手可能な情報に基づく最善の見積りを行っておりますが、新型コロナウイルス感染症等の感染が想定を超えて拡大し、経済への影響が長期化した場合には、与信費用等が増加する可能性があります。
(16) 気候変動リスク
気候変動に伴う自然災害や異常気象が増加した場合は、当行の店舗等への物理的な被害による損失や、お取引先の財務状況や担保資産の価値等に悪影響を及ぼし与信関連費用が増加するなど、当行グループの営業成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
○金融経済環境
当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、社会経済活動の正常化が進みつつあります。一方で、ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢などを背景とした地政学上のリスクや円安の影響による原材料価格及びエネルギーコストの上昇等の影響により、先行きの見通しは不透明な状況が続いています。
県内経済におきましても、社会経済活動が回復し、国内旅行者の増加やインバウンドによる外国人観光客の増加等により、観光・宿泊・飲食関連においては持ち直しの動きがみられますが、資源・原材料価格の高騰や為替変動、働き手不足の影響により、全体としては厳しい状況が続くと思われます。
○企業グループの状況
私ども南日本銀行グループは、取引先事業者に対して迅速な資金繰り支援を行うとともに、WIN-WINネット業務(新販路開拓支援業務)を中心とした各種支援により、厳しい環境にある事業者及び個人のお客さまにしっかりと寄り添い、地域経済の回復・活性化に貢献できるよう取組んでおります。
また、2023年度から第1次中期経営計画「インテグリティある組織への変革」(2023年度~2025年度)をスタートしました。「中小規模事業者向け専門の金融機関としてのビジネスモデル構築」等の5つの重点戦略を掲げ、将来の成長に向けた大胆な構造改革を行いながら、「自発的に考えて行動できる人材」を育成し、組織を強くしていく計画としています。その初年度である2023年度は、投資専門子会社の設立や人事諸制度改定の着手など、中期経営計画を着実に進めるための土台作りを進めました。
なお、当行は、2023年9月に創業110周年を迎え、パーパスである『“つながり”の強さで、地域の輝く未来をつくる』を目指すべき考え方のベースとして、地域とともに次の120周年に向けて取組んでまいります。
○財政状態の状況
預金は、前連結会計年度末に比べ5億円減少し、7,765億円となりました。
貸出金は、前連結会計年度末に比べ48億円増加し、5,832億円となりました。
有価証券は、前連結会計年度末に比べ43億円増加し、846億円となりました。
また、連結自己資本比率(国内基準)は、8.26%となりました。
○経営成績の状況
経常収益は、貸出金利息や株式等売却益の減少等により前連結会計年度に比べ、8千6百万円減少し、145億6千5百万円となりました。
一方、経常費用は、与信関連費用が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ、2億3千7百万円減少し、125億3千万円となりました。
この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ1億5千2百万円増加し、20億3千5百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ8千1百万円増加し、16億1千3百万円となりました。
日銀のマイナス金利政策の解除により、政策金利の引き上げが実施されても、貸出金利の引き上げには慎重に対応する必要があると考えており、今後もお取引先の本業支援や事業再生支援に取り組む「WIN-WINネット業務」に注力し、地域経済活性化に貢献することで収益力を高める方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、借用金の減少等により249億8千4百万円のマイナスとなり、前年比288億6千5百万円減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得等により、19億3千7百万円のマイナスとなり、前年比35億3千4百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により4億5千万円のマイナスとなり、前年比151億2百万円増加しました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度の残高は、前連結会計年度に比べ273億7千2百万円減少し、1,101億1千9百万円となりました。
「生産、受注及び販売の実績」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当行グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当連結会計年度の貸出金の期中平残はアパートローンを中心とした消費者ローンが減少したため、前連結会計年度に比べ42億9千2百万円減少し、5,759億7千8百万円となりました。
中小企業への貸出金については増加しており、当行グループが従来より取り組む「WIN-WINネット業務(新販路開拓支援業務)」を通じて、地域の中小企業のニーズを捉えた取り組みを行った結果であると考えます。
一方、当連結会計年度の預金の期中平残は流動性預金は増加したものの、定期性預金が減少したため、前連結会計年度に比べ59億2千8百万円減少し、7,777億3千7百万円となりました。流動性預金の増加は、年金振込、給与振込の推進とATMの機能の多様化等による顧客利便性の向上を図った結果であります。
また、有価証券の期中平残については市場における金利変動リスクや価格変動リスクを考慮した運用の結果、前連結会計年度に比べ23億1千6百万円減少し、813億4千3百万円となりました。今後も金利リスク・為替リスク・価格変動リスクに留意し取り組む方針です。
当連結会計年度の資金運用収益は、貸出金の期中平残が減少し、貸出金利回りが前連結会計年度比0.03ポイント低下したことにより貸出金利息が2億3千4百万円減少したこと及び預け金利息が4千2百万円減少したことなどから、前連結会計年度に比べ2億4千1百万円減少し、125億9千9百万円となりました。貸出金については、今後も地域金融機関として地元中小規模事業者向けの貸出を強化し、資金運用収益の増加を図る方針です。
一方、当連結会計年度の資金調達費用は、預金期中平残が減少したことや、預金利回りが低下したことなどから前連結会計年度に比べ2百万円減少し、1億1千6百万円となりました。
以上のことから当連結会計年度の資金運用収支は前連結会計年度に比べ2億3千8百万円減少し、124億8千3百万円となりました。
役務収益は保険等の金融商品販売手数料や為替手数料等の増加により前連結会計年度に比べ5千5百万円増加し、15億1千8百万円となりました。役務費用については、支払保証料等が減少したことから、前連結会計年度に比べ1億1千6百万円減少し、17億2千2百万円となり、役務収支は前連結会計年度に比べ1億7千1百万円増加し、△2億3百万円となりました。
その他業務収益は、有価証券売却益の減少等により前連結会計年度に比べ7百万円減少し、1千8百万円となりました。その他業務費用は、有価証券売却損の増加等により前連結会計年度に比べ1億4千3百万円増加し、1億7千2百万円となり、その他業務収支は前連結会計年度に比べ1億4千9百万円減少し、△1億5千3百万円となりました。
当連結会計年度の経常利益は、貸倒引当金繰入額の減少等により前連結会計年度に比べ1億5千2百万円増加し、20億3千5百万円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加等により前連結会計年度に比べ8千1百万円増加し、16億1千3百万円となりました。
当行グループは、今後も「WIN-WINネット業務(新販路開拓支援業務)」を中心として高い顧客満足をいただけるサービスの提供に注力することにより質の高い金融仲介機能を発揮し、地域経済活性化への貢献を果たすことで安定した利益の計上を目指します。
本業収益であるコア業務純益(単体)は、営業経費が当初予想を下回ったこと等から予想比2億8千1百万円のプラスとなりました。また、経常利益は、コア業務純益が予想を上回ったことや、与信費用(単体)が予想を下回ったことから予想比7億8千5百万円のプラスとなりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、予想比7億6千3百万円のプラスとなりました。
当行グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、資金の運用源である貸出金が47億2千4百万円増加したことや、借用金が229億円減少したこと等により249億8千4百万円のマイナスとなり、前連結会計年度に比べ288億6千5百万円の収入減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券に係るキャッシュ・フローが減少したことにより19億3千7百万円のマイナスとなり、前連結会計年度に比べ35億3千4百万円の収入減少となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、4億5千万円のマイナスとなり、前連結会計年度に比べ151億2百万円の増加となりました。
なお、当行グループでは設備投資及び株主への配当等については自己資金で対応する方針です。
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度の残高は、前連結会計年度の残高に比べ273億7千2百万円減少し、1,101億1千9百万円となりました。
当行グループでは個人預金等により安定的な資金を調達し、地域の中小企業への貸出と有価証券で運用しておりますが、常に流動性リスクをチェックすることにより資金繰りの安定を図っております。
④連結財務諸表の作成にあたって用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当行グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
⑤目標とする経営指標
2024年度は第1次中期経営計画の2年目となります。2025年3月期に達成を目指す経営指標は、以下のとおりであります。
○コア業務純益 24億円
○貸出金期中平残 5,867億円
○預金期中平残 7,782億円
○貸出金利回り 1.91%
資金運用収益は貸出金利息や預け金利息等の減少により前連結会計年度に比べ2億4千1百万円減少し、125億9千9百万円となりました。また、資金調達費用も預金利息の減少等により前連結会計年度に比べ2百万円減少し、1億1千6百万円となりました。その結果、資金運用収支は前連結会計年度に比べ2億3千8百万円減少し、124億8千3百万円となりました。
役務取引等収支は前連結会計年度に比べ1億7千1百万円増加し、△2億3百万円となりました。
その他業務収支は有価証券関係損益の減少等により前連結会計年度に比べ1億4千9百万円減少し、△1億5千3百万円となりました。
(注) 1.国内業務部門は当行の円建取引及び連結子会社の業務、国際業務部門は当行の外貨建取引であります。
2.「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借利息であります。
3.資金調達費用は、金銭の信託見合費用(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除して表示しております。
資金運用勘定は前連結会計年度に比べ、平均残高が394億7千8百万円減少し、7,941億8千4百万円、利息が2億4千1百万円減少し、125億9千9百万円となりました。平均残高の減少は、国内業務部門において預け金が326億7千万円減少したことや貸出金が42億9千2百万円減少したことが主因であります。
資金調達勘定は前連結会計年度に比べ、平均残高が307億7千万円減少し、7,807億9千1百万円、利息が2百万円減少し、1億1千6百万円となりました。平均残高の減少は、国内業務部門で借用金が248億4千5百万円減少したことが主因であります。
(注) 1.平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、連結子会社については、原則として半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2.国内業務部門は、当行の円建取引及び連結子会社の業務であります。
3.資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度390百万円、当連結会計年度387百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除して表示しております。
(注) 1.平均残高は、日々の残高の平均に基づいて算出しております。
2.国際業務部門は、当行の外貨建取引であります。
3.国際業務部門の外貨建取引の平均残高は、月次カレント方式(前月末TT仲値を当該月のノンエクスチェンジ取引に適用する方式)により算出しております。
(注) 1.資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度390百万円、当連結会計年度387百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除して表示しております。
2.「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息であります。
役務取引等収益は、前連結会計年度に比べ5千5百万円増加し、15億1千8百万円となりました。
役務取引等費用は、前連結会計年度に比べ1億1千6百万円減少し、17億2千2百万円となりました。
この結果、役務取引等収支は前連結会計年度に比べ1億7千1百万円増加し、△2億3百万円となりました。
(注) 国内業務部門は当行の円建取引及び連結子会社の業務、国際業務部門は当行の外貨建取引であります。
(注) 1.国内業務部門は当行の円建取引及び連結子会社の業務、国際業務部門は当行の外貨建取引であります。
2.預金の区分は、次のとおりであります。
①流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
②定期性預金=定期預金+定期積金
(注) 国内は当行の円建取引及び連結子会社の業務であります。
該当事項はありません。
(注) 1.国内業務部門は当行の円建取引及び連結子会社の業務、国際業務部門は当行の外貨建取引であります。
2.「その他の証券」には、外国債券等を含んでおります。
(参考)
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、当行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1.破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2.危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3.要管理債権
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4.正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
該当事項はありません。
該当事項はありません。