当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
経営理念 「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」
経営方針
1.社会から信頼される活力ある企業文化の創造
2.株主価値を高める経営とコンプライアンスの徹底
3.誠実で自由闊達な社風の醸成と創造性に富む人材の育成
(2)経営戦略等
当社グループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」の経営理念に基づき事業活動を行っております。「ありたい姿」として「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ 健康応援オーケストラ」を掲げ、「医療と健康、美」の事業フィールドで社会価値、顧客価値を創造する事業を「広げ」、強固な流通インフラで「支え」、また、様々な分野のパートナーが持つ価値を「つなぐ」ことで、誰もが心身ともに健やかに暮らせる社会の実現と、企業価値の向上を目指しております。
この実現に向けて、「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever~たゆまぬ変革を~」(以下、本中期ビジョンという)を策定し、2022年10月31日に発表いたしました。
また、2022年10月、メディパルグループサステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を策定いたしました。
(3)経営環境
少子高齢化が進むわが国において、高齢者の増加や生産年齢人口の減少が社会や経済に影響を与え、当社グループの各事業を取り巻く環境においても変化が起きてくると想定しております。セグメントごとの事業環境は以下のとおりです。
医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等卸売事業における事業環境は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、国内の経済活動が正常化した結果、医療機関の受診機会が増加したこと等により伸長しました。
このような中、株式会社メディセオ(東京都中央区、以下、「メディセオ」)を始めとする医薬事業各社においては、新たな価値創造を目指し、地域医療コーディネーターとして、医療機関・調剤薬局・自治体等を「つなぐ」活動を展開しました。女性診療科領域を専門とする「ウィメンズコーディネーター※1」や希少疾病領域を専門とする「RD-MR※2」をはじめ、医薬品の専門知識と機動性を有した当社の営業担当者AR※3たちが、予防・診断・治療等の情報を総合的に提供し、疾患啓発や潜在患者の発掘、専門医への橋渡しなどを行い、地域におけるヘルスケア課題の解決に向けて取り組みました。
なお当期は、東七株式会社(長崎県佐世保市、以下、「東七」)を連結子会社化し、また株式会社メディスケット(埼玉県三郷市、以下、「メディスケット」)が本格稼働しました。
[用語解説]
※1 ウィメンズコーディネーターとは、女性診療科領域の専門知識を有するARなどに付与した社内呼称であります。
※2 RD-MR(Rare Disease MR)とは、希少疾病領域に特化したARなどに付与した社内呼称であります。
※3 AR(Assist Representatives)とは、MR(Medical Representative)認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称であります。
化粧品・日用品、一般用医薬品等卸売事業
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業における事業環境は、依然として原材料・エネルギー価格上昇及び、それに伴う物価高騰の影響を受けた一方で、脱コロナの動きが進んだことにより、外出機会や訪日外国人客数が増加するなど、緩やかな回復基調を見せました。
販売面では、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、マスクや消毒液などの衛生関連品の需要減少が続いた一方で、レジャーやオフィス回帰など外出機会の増加や、一部インバウンド需要の回復、セルフケア意識の高まりなどにより、化粧品や一般用医薬品の需要が増加しました。
このような中、市場の変化を的確に捉え、生活者のニーズを満たす新たな商品調達を行い、鮮度の高いマーチャンダイジング提案を行いました。
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業
動物用医薬品等卸売事業における事業環境は、飼料や光熱費高騰等の生産コスト増加により厳しい環境下にありましたが、一方で養鶏の市場が回復し、またコンパニオンアニマル※に関わる市場も成長を見せています。このような状況の中、ワクチンの新規採用やコンパニオンアニマル向けの医薬品の販売を強化しました。
食品加工原材料卸売等関連事業における事業環境は、相場高騰による販売価格への転嫁や新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い需要の回復が見られました。このような中、全国展開の強みを生かした営業の推進や、商品の調達と提案、商品付加価値を高める新製品の企画開発の推進、お得意様の商品企画から流通にいたるまでをトータルにサポートする取組みを行いました。
[用語解説]
※ コンパニオンアニマルとは、伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物を指しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
<主な連結経営目標・計画>
ROE 9% (2027年3月期)
経常利益 1,000億円 (2027年3月期)
成長投資 1,000億円 (2023年3月期から2027年3月期までの累計)
<サステナビリティ中長期目標>
温室効果ガス排出量削減目標(Scope1+Scope2) 2030年度 50%削減(2020年度比)
2050年度 カーボンニュートラル
管理職に占める女性割合 2030年度 20%以上
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
「医療用医薬品等卸売事業」の事業環境につきましては、医療の高度化等に伴う医薬品の厳格な品質管理と迅速かつ安定的な供給がますます重視されてきています。この環境下で医薬品卸売企業に対しては、サプライチェーン全体の最適化を実現する流通ネットワークの構築や、情報収集・提供活動が求められています。また、薬価改定が毎年行われるようになり、医療用医薬品市場の大きな成長が見込めなくなっている状況を踏まえ、顧客ニーズの変化に応じた新しいサービスや製品の提供などビジネスの創出も重要になっています。
このような状況の中、2025年3月期においては、当社グループ独自の機能である「ALC※1」と「AR」を活用し、新しい時代の流通価値を提供してまいります。
ALCは2009年に神奈川県に設置して以降、全国に拡大し、昨年13か所目のALCとして「阪神ALC」を稼働、これをもって高機能物流サービスを全国の医療機関に提供できるようになりました。当社グループでは、ALCを通じて医療用医薬品等の安定供給を継続するとともに、当社連結対象の子会社であるメディスケットへの業務委託を通じ、医薬品・検査資材等の供給と臨床・治験・研究等の検体の集荷を最適化することに加え、GDPガイドライン※2に準拠した高品質な物流サービスを提供していきます。メディスケットでは、今後、外部企業からの物流受託を行うことで新しい収益機会の創造にも取り組んでいきます。
ARについては、2010年に取組みを開始し、約2,000名のMR認定試験合格者が、医療関係者への総合的な情報提供活動や地域におけるヘルスケア課題の解決に向けた営業活動を展開しています。現在、これらの機能に対する需要や期待が高まっており、この「2つのA」を活用した取組みをより強力に推進することで収益基盤の強化に努めてまいります。
「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」につきましては、物価高騰に伴う商品単価の上昇が継続することに加えて、賃上げの促進・継続に伴う所得環境の改善による個人消費の持ち直しや、訪日外国人客数の増加によるインバウンド需要が増加する見通しです。
このような状況の中、2025年3月期においては、営業機能の進化に伴う小売業様との取引の拡大や、さらには2024年9月から食品の物流受託を開始することで新たな収益源の確保へとつなげてまいります。
なお、食品の物流受託開始に伴うイニシャルコスト発生による売上総利益率の悪化、また2024年問題を背景とする配送費上昇や人材投資の負担の影響を受けて販管費の増加を計画していますが、増収による売上総利益額の増加によりこれらの固定費増を吸収することで、営業利益への貢献を見込んでいます。
また、当事業を牽引する株式会社PALTAC(大阪市中央区、以下、「PALTAC」)は、2027年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を新たに策定しました。持続的成長の実現に向けた「変革による新たな価値創造への基盤づくり」の3か年と位置付け、「既存事業の収益性改善」「新たな価値創造に向けた挑戦」を進めてまいります。既存の事業領域で構築した基盤を活かし、新たな価値創造に挑戦することで価値提供領域の拡大及び収益性の向上を図ってまいります。
「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」の動物用医薬品では、飼料価格及び生産資材価格の高止まり状況が続く中、一方で養鶏は昨シーズンの鳥インフルエンザから生産が回復し、コンパニオンアニマル向け市場では治療の進歩等による犬猫の長寿化が進むことが予想されます。このような状況の中、畜水産市場では利益率の高い製品の販売強化、またコンパニオンアニマル向け市場では抗体医薬品と新規取り扱い製品の普及拡大と深耕に取り組んでまいります。
食品加工原材料卸売等関連事業につきましては、国内人口の減少や少子高齢化を始め、原料価格の高騰等による厳しい市場環境が引き続き見込まれます。一方で、食の安全や健康に対する意識の高まり、消費者ニーズの多様化に伴い技術革新が進み、新たな需要が生まれるなど事業環境は常に変化しています。このような中、新たに連結対象の完全子会社となったMP五協フード&ケミカル株式会社(大阪市北区、以下、「MP五協F&C」)が主力とする多糖類※3を軸に国内及び海外での販売を強化し、また化成品分野では、半導体市場向けの電子薬剤を中心に商品開発への取組み等を通じた顧客サービスの強化に努め収益拡大を図ってまいります。
[用語解説]
※1 ALC(Area Logistics Center)とは、医療用医薬品や医療材料などを扱う高機能物流センターで、主に調剤薬局、病院、診療所に商品を供給しております。
※2 GDPガイドライン(Good Distribution Practice=医薬品の適正流通)とは、流通経路(仕入・保管・供給)の管理が保証され、医薬品の完全性が保持されるための手法、さらに、偽造医薬品の正規流通経路への流入を防止するための適切な手法を定めたものであります。
※3 多糖類とは、グルコースやマンノース等の単糖が長くつながったものの総称で、広義では10個以上の単糖が結合することで構成されている炭水化物を指しております。たれ・ソース・ドレッシング・佃煮・ゼリー・プリン・アイスクリームなどの加工食品にユニークな食感を付与したり、つくりたての状態を保持するなどの機能を有するとともに、嚥下困難者の皆さま向けの食品にも活用されております。また、近年では、化粧品など、食品以外の商品にも用いられております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティについて
当社グループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」の経営理念のもと、事業活動を行っています。環境問題などへの社会的な関心が高まるなか、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値向上をめざすために、当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方として「サステナビリティ方針」を明文化しました。
サステナビリティ方針
未来へつなごう「元気と、かがやき」
私たちメディパルグループは、 「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」 の経営理念のもと、 地球環境と社会の課題をさまざまなステークホルダーとともに解決します。 この地球で、だれもが今日より元気でかがやける未来のために。 私たちは、持続可能な社会の実現と企業価値向上をめざしていきます。 |
また、当社グループの経営理念に基づく事業活動やSDGsをはじめとした社会課題との関連性を整理し、その解決と当社グループの持続的な成長を両立させるための重要課題(マテリアリティ)として6項目を特定しました。特定プロセスにおいては、社会・ステークホルダーの重要度が高く、かつ、当社グループの重要度が高い課題について、内容を統合・整理し、CSR委員会で優先順位や妥当性を議論しました。最終的には、取締役会の決議を経て、マテリアリティを公表しました。その後、すべてのマテリアリティについて目標(KPI)を設定し、マテリアリティの進捗状況を定期的に確認しています。今後、社会・事業変化に合わせて適宜見直しを実施し、さらに、進捗状況の開示やステークホルダーとの対話を通じて、各取組みの強化につなげていきます。
<重要課題(マテリアリティ)>
・持続可能な「医療と健康、美」の流通
・新たな価値創造による収益性の向上
・未来を担う人材の育成
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進
・脱炭素への取組み
・健全で透明性の高い企業経営
① サステナビリティ推進体制(ガバナンス・リスク管理)
当社グループでは、サステナビリティ方針に基づき、グループ全体のサステナビリティの取組みや推進策、中長期目標などの重要事項について、サステナビリティ経営を推進するCSR委員会で議論しています。審議した内容は担当取締役(CSR委員会 委員長)から取締役会に上程し、決議しています。連結子会社は決定されたサステナビリティに関連する推進策について、担当部門主導のもと施策を実行し、具体的な内容や進捗をCSR委員会に報告しています。担当取締役はその内容を定期的に取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制を整備しています。
また、厳しい経営環境の変化を踏まえ、当社グループにおけるリスクと機会の重要性をCSR委員会で定期的にモニタリングし、案件に応じて取締役会に報告・提言を行っています。
(2)気候変動への対応
① 戦略
当社グループは、自動車などを使用した物流を行う企業として、より環境に配慮した流通体制を構築することが重要な課題と捉えており、2022年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。TCFDが推奨する枠組みに則り、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオ※を参考に、気候変動が事業に与える影響を評価したうえで、戦略策定に取り組んでいます。
※ 参考にしたシナリオ
2℃未満シナリオ:温室効果ガス排出規制等が現状より進み、今世紀末までの平均気温が産業革命以前と比べて2度未満に抑えられる世界
4℃シナリオ :現状を上回る対策がとられず、今世紀末までの平均気温が産業革命以前と比べて4度上昇する世界
<想定されるリスク>
2℃未満シナリオでは、炭素税などの導入に伴うコスト増加や再生可能エネルギーの需要増による調達不足及び調達コストの増加などのリスクが高まると想定されます。また、4℃シナリオでは、防災機能を高めるための設備投資費用の増加や、自然災害による営業・物流拠点などの損害や操業停止、交通麻痺などによる配送遅延、供給網への被害などのリスクが想定されます。しかし、当社グループでは平時から大規模災害などのさまざまなリスクを想定し、1つの物流センターが供給できない状況でも、他の物流センターから配送を補完するバックアップ体制を整えています。そのため当社グループの気候変動に起因した自然災害によるリスクの影響は僅少であると考えています。
<想定される機会>
2℃未満シナリオでは、エシカル商材や健康食品などの需要拡大が見込まれると想定しています。また、いずれのシナリオにおいても、当社グループが築き上げてきた高度な物流機能を活かすチャンスであると考えています。安定供給を維持する物流基盤の構築や品質管理(GDPガイドライン)に準拠した業務手順の徹底により需要拡大が見込まれると想定しています。
上記のシナリオ分析結果を踏まえ、お得意様と協働した新たな医薬品流通最適化モデルの構築や中間流通機能の強化及びステークホルダーとの連携・協働を通じて、サプライチェーン全体での流通最適化・効率化に取り組んでいます。
なお、財務への影響については今後の検討課題として認識しており、想定される影響を踏まえた対応策の検討をさらに深めていくとともに、シナリオ分析を進めていく予定です。
② 指標及び目標
気候変動への取組みを評価するための指標として温室効果ガス(Scope1,Scope2)を用い、当社グループ全体で中長期的な温室効果ガス排出量削減目標を掲げています。
<脱炭素への取組みに関する中長期目標>
2031年3月期:50%削減(2021年3月期比)
2051年3月期:カーボンニュートラル
<基準値及び実績>
|
単位 |
2021年3月期(基準値) |
2024年3月期(速報値) |
温室効果ガス排出量 (Scope1※1,Scope2※2) |
t-CO2 |
|
|
※1 自社の燃料使用に伴う排出
※2 自社の電力使用に伴う排出
<今後の取組み>
既述の気候変動に伴うリスクと機会への対応策として以下の取組みを予定しています。
対応策 ・環境配慮型電力への切り替えなど再生可能エネルギー利用量の拡大 ・太陽光パネルの設置など再生可能エネルギーの自家発電設備の導入 ・車両台数や配送回数の削減 ・営業車両、配送車両の電気自動車やハイブリッド車への切り替え ・ドローンの活用など持続可能な流通の実現に向けたサプライチェーンマネジメントの実施 ・異常気象を想定した災害対策マニュアルの見直し及び災害対策訓練の実施 ・気候関連情報開示の充実 |
(3)人的資本
当社グループは、「2027メディパル中期ビジョンChange the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」と「ありたい姿」の実現に向け、「人材は、競争優位や企業価値を創造する源泉」という考え方のもと、“成長戦略”と連動した“人材戦略”を推進しています。
当社グループには、「誠実」「倫理観」「使命感」を共通の価値観に持つ多様な従業員が集っており、一人ひとりの個性や能力、強みを大切にした人材戦略を遂行しています。積極的な人材投資を行い、潜在的な人的資本の価値を発掘・顕在化させ、ハーモニーを奏でるように融合してさまざまな可能性を追求していくことで、持続的な企業価値向上につなげています。
①人材戦略の全体像
社会価値・顧客価値を創造しグループの持続的成長を図るため、「ありたい姿」の実現に向けた成長戦略と人材戦略との連動を特に重視し、施策にも反映していきます。具体的には、組織・人材それぞれの「ありたい姿」を定義し、その実現に向けた「ありたい人材ポートフォリオ」の構築を推進する人材マネジメント施策を展開します。これによりいかなる環境変化に直面しても、主体的に物事を考え、常に自己変革し、人々の健康と社会の発展に貢献し続けたいと考えています。
a.人材情報の一元化・可視化・分析
当社グループでは、人材マネジメントのさらなる推進のため、タレントマネジメントシステムを活用し、社員一人ひとりの詳細な業務経験や資格情報、業務経験から得られたスキルや本人のキャリアプランなどを一元化・可視化・分析することで、適所適材の人材配置が可能な体制の構築を進めています。あわせて、人員数や適材の充足状況を確認し、事業戦略と連動した人材ポートフォリオの構築の実現をめざします。
b.未来志向型人材の育成
当社グループの経営理念を実現し、未来を担う人材像として「未来志向型人材」を定義しました。人材要件を明確にしたうえで、採用、育成、人事制度、評価・報酬などを見直しながら、「未来志向型人材の育成」を積極的に推進し、「創造性豊かな企業文化醸成」及び「多様な人材活躍」を促す施策を実践していきます。
今年度は、グループ各社からアサインされたメンバーによるプロジェクトを立ち上げ、当社グループの未来を担う人材像である「未来志向型人材」の要件定義に基づき、コンピテンシー評価制度の構築を行いました。今後、グループ各社へ順次導入を行い、グループ共通の評価制度とすることで、未来志向型人材の育成とタレントマネジメントの推進を行い、戦略的な人材ポートフォリオのシフトにつなげていきます。
<未来志向型人材>
・共通の価値観
当社グループの人材は「誠実」「倫理観」「使命感」を共通の価値観として、意思決定の基準とし、大切にしています。
「誠実」 常に真心を持って、公正・正直に行動している。
「倫理観」 法律、業界ルールはもちろんのこと、世間一般の常識に沿っている。
「使命感」 組織や自らのあるべき姿に向かって、責任を持って行動している。
・当社グループの未来に向けて、事業基盤を強固にし、変革を推進しながら多様な方向へ事業を発展させるための人材(未来志向型人材)要件として、「経営理念を伝える」「豊かな創造性」「本質を見極める」「周囲を巻き込む」「コミュニケーション」「分析・課題抽出・解決」の6つを定めています。
人材像 |
具体的行動 |
経営理念を伝える (ビジョンを持って伝える) |
・常に経営理念を実現するための意思決定をする。 ・自ら明確なビジョンを設定し、情熱を持って周囲の人に語り共感させる。 |
豊かな創造性 (新たな価値創造) |
・多方面からの情報を収集し、新たな社会価値・顧客価値を創造する。 ・既存のやり方にとらわれず、過去の延長線上から脱却できる革新的・独創的アイデアを提案する。 ・物事を外から見る目を持っている。 |
本質を見極める (自分への問い) |
・メディパルグループの存在意義、自らの存在意義を自分に問い続ける。 ・何のために取り組むのかを自らに問い、手段が目的にならないようにする。 ・自他の成長のための努力を惜しまない。 |
周囲を巻き込む (チームワークとネットワーク) |
・自らが所属する組織のみではなく、部門を超えて周囲の協力を引き出しながら一体感を醸成する。 ・組織目標達成のために、リーダーシップを発揮している人に自ら積極的に協力し、守備範囲以上の仕事をしながら建設的な意見を述べる。 ・常に自らのアンテナを高くし、情報・人的ネットワークを広げる。 |
コミュニケーション (高い対話力) |
・他者と信頼を構築しながら話を傾聴し、本音ベースでの対話を実践する。 ・的確なフィードバックと自由闊達で建設的な意見交換を実践する。タフな会話ができる。 ・他人の意見を聴くことで、自らの成長につなげる。 |
分析・課題抽出・解決 (組織課題への取組み) |
・科学的に自らが所属する組織の現状を分析・課題を抽出し、主体的に課題解決に取り組む。 ・出来ない理由を探すのではなく、どうしたらできるのかを考え、常にスピード感を持って行動に移す。 |
c.従業員エンゲージメント
当社グループでは職場風土調査を実施し、その結果を分析し、人材育成の施策立案に役立てています。同調査は、従業員エンゲージメントやワークエンゲージメントに関連する項目を含んでおり、社員と会社の結びつきや仕事に対する意欲を測定し、高めていくことを目的の一つとしています。今後も、定期的に同調査を実施しながら人材育成への取組みを検証し、事業成長を支える人材育成を進めていきます。
d.適所適材の人材配置
当社グループは、社員一人ひとりとの対話を大切にし、個々のキャリアに寄り添うことを基本原則としたジョブローテーションを行っています。また、社内公募による意欲の高い人材が活躍できる機会の創出、当社グループ会社間の人材交流など、組織戦力の最大化を図るための適正な人材配置を実施しています。
e.ダイバーシティ&インクルージョンの取組み
重要課題(マテリアリティ)の1つに「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を定め、従業員をはじめ、あらゆる人々の基本的人権を尊重し、一人ひとりが互いを認め合う企業文化を築いていくための取組みを行っています。異なる個性や能力を最大限発揮することで企業活力向上につなげ、だれもが「元気と、かがやき」をもって仕事ができる環境づくりに取り組んでいます。
ダイバーシティ&インクルージョン宣言
「かがやく個性で、未来をつくる」
性別・国籍・経歴などにとらわれない多様な価値観を持った人材が意見を 出し合い、互いを認め合うことで、自身の成長と会社の発展につなげていきます。 |
② 指標及び目標
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するための中長期的目標として、当社グループ全体で管理職に占める女性割合の向上を掲げています。
<ダイバーシティ&インクルージョンの推進に関する中長期目標>
・
<実績>
|
単位 |
2024年3月期 |
女性管理職比率 |
% |
|
今後も事業活動を通じて各課題を解決し、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値向上をめざしてまいります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)医療保険制度について
当社グループが主たる事業とする医療用医薬品等卸売業界は、わが国の社会保障制度や医療政策と密接に関連しております。わが国では、人口構造の変化による社会保障給付費の増大などの環境変化に伴い、医療制度改革が進められております。
今後、予測できない大幅な制度変更が行われ、当社グループの事業構造に関わるような事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)薬価制度について
当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品は、薬価基準に収載されており、薬価基準は保険医療で使用できる医薬品の範囲と使用した医薬品の請求価格を定めたものであります。従って、薬価基準は実質的に販売価格の上限として機能しております。
医療費抑制策の一環として、薬価基準で定められた価格(薬価)は市場実勢価格の調査結果に基づいて改定が行われております。
(2019年10月消費税増税に伴う薬価改定率(薬剤費ベース):▲2.40%)
(2020年度薬価改定率(薬剤費ベース):▲4.38%)
(2021年度薬価改定率(薬剤費ベース):未公表)
(2022年度薬価改定率(薬剤費ベース):▲6.69%)
(2023年度薬価改定率(薬剤費ベース):未公表)
(2024年度薬価改定率(薬剤費ベース):▲4.67%)
これまで原則として2年に1度実施されていた薬価改定が2021年度からは中間年の改定が実施されております。医療機関等への販売価格低下等の影響が生じた場合には、医療用医薬品等卸売事業の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3)特有の法的規制等に係るものについて
当社グループは、各種の医薬品及びその関連商品を取り扱っており、主に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」の規定により、各事業所が所轄の都道府県知事より必要な許可、登録、指定及び免許を受け、あるいは監督官公庁に届出の後、販売活動を行っております。このため、監督官公庁等の許認可の状況により、医療用医薬品等卸売事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、将来的に規制緩和等によって、異業種の事業者が当社グループの事業領域に参入した場合には、当社グループのビジネスモデルや従来有する強みを維持または拡大することが困難となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4)医療機関等との取引慣行について
当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品は、納入停滞が許されない生命関連商品であることから、取引価格が未決定のまま医療機関等に納入し、納入後に価格交渉を行うという特有の取引慣行が存在しております。かかる取引慣行を改善するために、2018年4月に流通改善ガイドラインの運用が開始されましたが、交渉が難航した場合には、過去の実績等を勘案し、合理的に判断した見積価格により売上計上しております。
このため、決定した取引価格と見積価格との差異が生じた場合には、医療用医薬品等卸売事業の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2024年3月期における医療用医薬品の売上高2.2兆円のうち、取引価格の決定比率(金額ベース)は99.6%となっており、期末には取引価格がほぼ確定する傾向となっております。
(過去3年間の取引価格の決定比率 2021年3月期:99.9%、2022年3月期:99.8%、2023年3月期:99.6%)
(5)製薬企業等との取引慣行について
当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品の仕入先である製薬企業等との間には、実質的な仕入価格の引き下げ効果のある「割戻金(リベート)」や「報奨金(アローアンス)」などの取引慣行が存在しております。(2024年3月期の医療用医薬品等卸売事業における報奨金(アローアンス)の未精算額165億67百万円)。製薬企業等とは良好な取引関係を継続しておりますが、製薬企業等の営業戦略に大幅な変更が生じ、かかる取引慣行に変化が生じた場合には、医療用医薬品等卸売事業の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6)競争環境の変化について
当社グループが主たる事業とする化粧品・日用品、一般用医薬品卸売業界において、業種・業態を超えた競争の激化やM&Aによる規模拡大が続いております。このため、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業では取引先のニーズを捉え、環境の変化に即座に対応できる組織を構築しております。しかしながら、今後さらなる競争の激化や取引先の企業再編等により取引先の政策や取引条件が大幅に変更された場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)システムトラブルについて
当社グループでは、「医療と健康、美」の流通を安定的に支える社会インフラとして、サプライチェーンを効率化、高度化するために、IT化を積極的に推し進めております。
当社グループの事業運営は、コンピュータネットワークシステムに依拠していることから、基幹システムのサーバ・ネットワークの二重化やサーバ設置建屋の免震・防災・停電対策及びデータバックアップ環境の設置などのほか、ウイルス対策、不正アクセス対策、モバイルパソコンのデータ暗号化などのセキュリティ対策を講じておりますが、万が一、システムが機能停止した場合には、販売・物流に大きな支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8)情報の漏洩について
当社グループが保有する顧客情報や機密情報等の情報資産の保護については、情報セキュリティポリシーに基づき、外部に漏洩しないよう管理体制の整備に努めるとともに、全従業員を対象に年2回の情報セキュリティ研修を実施しておりますが、不測の事態により、これらの情報が漏洩した場合には、社会的信用の低下による売上高の減少や対策費用の増加等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9)災害、交通事故、感染症について
当社グループは、医薬品、日用品など、健やかな生活に欠かせない商品の流通を担っており、平時・有事を問わず、必要とされる商品を確実にお届けするために、さまざまな対策を施しています。
①災害について
当社グループは、地震・台風等の自然災害や新型インフルエンザの流行などに備え、危機管理体制や有事の際迅速に供給活動を行うためのBCP(事業継続計画)を策定しておりますが、万が一、大規模災害が発生した場合には、事業が停止し、販売機会損失による売上高の減少または復旧費用の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②交通事故について
当社グループでは、お得意先への営業や商品の配送に多くの車両を用いております。当社グループ全体の車両台数は、約9,600台となっており、環境負荷の低い車両の導入を進めるとともに、交通事故を防ぐために、ドライブレコーダーの設置や自動ブレーキを装備した車両の導入などを進めております。
また、安全運転月間を定めたり、警察の指導による講習会を開催するなど、交通事故防止の啓発活動に積極的に取り組んでおりますが、万が一、重大な交通事故を発生させてしまった場合は、社会的信用が低下し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③感染症について
当社グループでは、生命関連商品の安定供給を担う企業グループとして、社会経済活動に影響を与えるような感染症の流行の際には、様々な事態の発生を想定し、安定供給体制維持(全国物流センターの相互連携によるバックアップ、商品在庫の充実、機器の定期メンテナンスを前倒しで実施)、感染拡大防止(従業員の感染予防の徹底、車両や設備の洗浄及び消毒の徹底、医療機関での感染拡大の防止)に取り組んでおります。
しかしながら、当社グループの従業員に感染が拡大するなどして、万が一、物流機能が停止する事態に陥った場合には、医薬品等の安定供給が困難となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10)気候変動について
当社グループは、さまざまなステークホルダーとともに脱炭素社会の実現に向けた取組みを実施しております。一部物流センター間の医薬品輸送において、トラックから鉄道コンテナを利用した輸送へと切り替えるとともに、お得意様と協業し新たな医薬品流通最適化モデルを構築することで温室効果ガス排出量削減を積極的に進めております。
しかしながら将来、災害対策の設備投資、炭素税等のコストが発生した場合や、風水害が甚大化し、営業・物流拠点等の被災や操業停止などが発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)労働力の確保について
当社グループが取り扱う医薬品や日用品などを安定的に流通させるためには、質の高い人材の確保、適正な要員配置が必要不可欠であります。
昨今は、人口減少、少子高齢化などによって、流通分野における労働力の確保は厳しさを増してきております。物流センターの省力化や配送見直しによる効率化を推進するとともに、働き方改革に取り組み、労働環境の改善と整備に努めておりますが、労働需給がさらに逼迫し、人材を十分に確保できなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、法令や制度の改正、物価変動等により従業員に関わるコストが大幅に増加した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)投資について
当社グループは、持続的成長に向け将来への積極投資を行っております。
①物流インフラ投資について
当社グループは、安全・安心な流通を担うという社会的使命を果たすため、物流やシステムに対する設備投資を積極的に行い、最先端技術を導入しております。これらは、当社グループの競争力を維持するためにも不可欠なものでありますが、投資コストが増大した場合や想定した投資回収ができない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2024年3月期における設備投資額は203億円であります。
②事業開発投資について
当社グループは、事業基盤の拡大と収益源の多角化を進めるため、製薬企業等への新薬開発投資や、海外での新薬開発事業に取り組んでおります。これは、当社グループがもつ物流力や営業ネットワークなどの経営資源を有効に活用し、希少疾病の治療を待つ患者さんに医薬品を安定供給することを目的とした取組みでありますが、新薬の開発は時間を要するほか、中止に至るなど、必ずしも順調に進行しないことがあります。そのような場合には、想定どおりの収益獲得に至らず損失が発生する可能性もあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③資本提携、業務提携について
当社グループは、「事業ポートフォリオのシフトとパートナーとの協働で変革・成長する」という中期ビジョンの基本方針に則り、ライフサイエンス分野のベンチャー企業やスタートアップ企業への出資のほか、デジタル分野やロジスティクス分野といった業界の垣根を越えた提携を積極的に進めております。
こうした資本提携、業務提携の実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っておりますが、予期せぬ環境変化や想定した事業計画からの大幅な乖離が生じた場合には、減損損失等が発生するなどして、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(13)法令違反について
当社グループは、「コンプライアンスの徹底」を経営方針の一つに掲げ、社員教育や啓発活動を継続して行っております。
また、公益通報に関する窓口を社内及び社外に設置し、グループ内部の問題を早期に発見することに努めております。
なお、2021年1月29日に開催された取締役会において、経営トップがコンプライアンスを重視する姿勢を明確にするため、新たに企業活動指針を制定いたしました。経営トップが全国の拠点を行脚して、当該指針を制定した背景とその精神を全社員に浸透させております。
また、取締役会の諮問機関として、コンプライアンス委員会を設置し、当社グループのコンプライアンスを継続的にモニタリングし、遵法精神に則った企業風土を確立してまいります。
しかしながら、法令違反等の問題が発生した場合には、行政処分による課徴金や刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等の支払いが生じるだけでなく、当社グループの社会的信用の失墜による悪影響など、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらの他にも、さまざまなリスクが存在しており、ここに記載されたリスクが当社グループのすべてのリスクではありません。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の概況
当社グループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念に基づき、『医療と健康、美』の事業フィールドにおいて、「医療用医薬品等卸売事業」「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」を展開しています。医療用医薬品、医療機器、臨床検査試薬、日用品、化粧品、食品加工原材料など、いずれも人々の生命や健やかな暮らしを支えるために欠かせない商品を取り扱っており、平時・有事を問わず、止まることなくお届けできる物流機能と流通ネットワークの構築は、社会インフラを担う企業として重要な責務であると認識しています。この基本姿勢のもと、当社グループではBCP(事業継続計画)を策定しており、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震においても、必要とされる商品の被災地での安定供給に努めました。
当社グループでは、経営理念の実現に向けて2027年3月期を最終年度とする「2027メディパル中期ビジョンChange the 卸 Forever~たゆまぬ変革を~」(以下、「本中期ビジョン」)を策定しています。本中期ビジョンでは、人材戦略・財務戦略を基盤とし、事業ポートフォリオのシフトとパートナーとの協働によるグループの持続的成長に向けて、5つの成長戦略である「海外への進出」「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」「持続可能な流通の構築」「地域医療における価値共創」を展開しています。
これらの戦略に沿って、当期においては、東七とMP五協F&Cを連結子会社化しました。また、2023年11月、MP五協F&Cとメディパルフーズ株式会社(札幌市中央区、以下、「メディパルフーズ」)の統合に関する基本合意書を締結しました。
さらに、超希少疾病領域のグローバルな新薬開発の取組みの一環として、2023年9月、当社とJCRファーマ株式会社(兵庫県芦屋市、以下、「JCR」)は、JCRが開発中のライソゾーム病の一種であるムコ多糖症ⅢB型に対する治療薬(JR-446)の海外における事業化に関する実施許諾契約及び日本における共同開発・商業化契約を締結しました。現在、両社は、確立された標準治療が無いムコ多糖症ⅢB型治療において革新的な治療薬の開発を進めています。加えて、MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合を通じて国内のベンチャー企業への投資を行い、収益基盤の拡大と企業価値の最大化を目指すとともに、持続可能な経済社会の実現に貢献しています。
セグメント別の主な取組みは以下のとおりです。
医療用医薬品等卸売事業
2023年10月、メディセオは当社グループとして13か所目となる「阪神ALC(兵庫県西宮市)」を稼働させました。メーカーと医療機関等をシームレスにつなぐとともに災害対策を施した有事に強い物流センターとして、2009年に「神奈川ALC(横浜市戸塚区)」を開設して以降、機能強化と全国展開を進め、「阪神ALC」稼働により全国均質な物流サービス網が完成しました。また、当社とH.U.グループホールディングス株式会社(東京都港区)の合弁会社であるメディスケットは、両社の物流を集約することによる効率化だけではなく、外部企業からの物流受託を行うことで新しい収益機会を創造してまいります。メディスケットは、「医療と健康、美」を支える国内最大級のヘルスケア物流プラットフォームの構築を目指しており、現在はシェアリングロジスティクスの基盤整備に取り組んでいます。
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業
2023年8月、PALTACは物流の2024年問題を始めとする配送課題の解決に向けて、株式会社プラネット(東京都港区) が提供する物流EDI (Electronic DataInterchange )を活用したASN (Advanced Shipping Notice:事前出荷情報)を導入した効率的な商品入荷業務フローの本格運用を開始しました。入荷情報を事前に把握することで、荷受けに伴う作業を効率化し、ドライバーの待機時間の削減を図っています。また、2024年1月より、同社は小売業様の食品廃棄ロスの改善に向け、AI需要予測による自動発注サービスの提供を開始し、小売業様の発注に係る業務の効率化に加え、食品廃棄ロス改善といった社会的課題の解決に貢献しています。
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業
2023年11月に統合に関する基本合意書を締結したMP五協F&Cとメディパルフーズは、健康志向の食品や機能性表示食品などお得意様や消費者の食へのニーズが多様化する環境変化に対応し、食品加工原材料卸売等関連事業をさらに発展させていくために、経営資源の有効活用と全国規模の顧客基盤の強化を進めています。なお、本統合の完了日は2024年10月1日を予定しています。
当期の業績
当連結会計年度における経営成績は、以下の通りであります。
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
3,360,008 |
3,558,732 |
+198,724 |
+5.9% |
売上総利益 (対売上高比率) |
224,304 (6.68%) |
246,654 (6.93%) |
+22,350 (+0.26pp) |
+10.0%
|
販売費及び一般管理費 (対売上高比率) |
175,331 (5.22%) |
199,324 (5.60%) |
+23,992 (+0.38pp) |
+13.7%
|
販売費及び一般管理費(下記①②除く) |
171,156 |
191,494 |
+20,338 |
+11.9% |
①事業投資費 |
4,175 |
5,772 |
+1,597 |
+38.3% |
②のれん・無形資産償却費(*) |
- |
2,056 |
+2,056 |
- |
営業利益 (対売上高比率) |
48,972 (1.46%) |
47,330 (1.33%) |
△1,642 (△0.13pp) |
△3.4%
|
上記①②を除く営業利益 |
53,147 |
55,159 |
+2,011 |
+3.8% |
経常利益 |
65,122 |
64,570 |
△551 |
△0.8% |
特別損益 |
4,939 |
10,170 |
+5,231 |
+105.9% |
税金等調整前当期純利益 |
70,061 |
74,741 |
+4,679 |
+6.7% |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
38,806 |
41,474 |
+2,668 |
+6.9% |
(*)2027メディパル中期ビジョンに掲げた成長投資に伴い発生したのれん・無形資産償却費
〔売上高〕
売上高は、前期から1,987億24百万円(5.9%)増収の3兆5,587億32百万円となりました。
・医療用医薬品等卸売事業で1,061億27百万円(4.8%)、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業で478億14百万円(4.3%)、動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業で400億68百万円(54.2%)の増収となり、全事業セグメントにおいて売上高は前期を上回りました。
・上記、全セグメントの増収に加えMP五協F&C及び東七を連結対象としたこと、また2022年12月に開始したメディスケットの事業が本格稼働したことが、当期の増収に寄与しています。
〔営業利益〕
営業利益は、前期から16億42百万円(3.4%)減益の473億30百万円となりました。
・売上総利益は、増収に加え売上総利益率が前期(6.68%)を上回る6.93%となったことにより、223億50百万円(10.0%)の増益となりました。売上総利益率は、前期に計上した一過性の新型コロナウイルス感染症ワクチンに係る関連収益の減少等による影響を、MP五協F&Cを連結対象としたことによる利益率向上により、前期から改善しました。
・販売費及び一般管理費は、MP五協F&C及び東七を連結対象とした影響や事業投資費等が前期から増加したこと等により、239億92百万円(13.7%)の増加となりました。また、MP五協F&Cの子会社化に伴うのれん・無形資産償却費を当期より販売費及び一般管理費に計上しています。
・この結果、営業利益は減益となりましたが、将来の事業成長の源泉として必要な事業投資費の計上と上記の償却費が当期より発生したことが影響しているものであり、これらの要因を除いたベースでは、前期から20億11百万円(3.8%)の増益となっています。
〔経常利益〕
経常利益は、前期から5億51百万円(0.8%)減益の645億70百万円となりました。
・情報提供料収入の増加等により営業外損益は改善しましたが 、営業利益の減益を吸収できず、経常利益は減益となりました。
〔親会社株主に帰属する当期純利益〕
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期から26億68百万円(6.9%)増益の414億74百万円となりました。
・特別損益は101億70百万円の益となり52億31百万円改善しました。これは、政策投資株式売却益が減少したものの、前期に投資有価証券評価損を計上したことや、当期に本社移転に伴う受取補償金及び東七の子会社化に伴う段階取得差益を計上したこと等によるものです 。
セグメントの経営成績は次のとおりであります。
医療用医薬品等卸売事業
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
2,189,667 |
2,295,795 |
+106,127 |
+4.8% |
売上総利益 (対売上高比率) |
132,247 (6.04%) |
144,123 (6.28%) |
+11,876 (+0.24pp) |
+9.0%
|
販売費及び一般管理費 (対売上高比率) |
110,328 (5.04%) |
126,651 (5.52%) |
+16,322 (+0.48pp) |
+14.8%
|
販売費及び一般管理費(下記を除く) |
106,153 |
120,878 |
+14,724 |
+13.9% |
事業投資費 |
4,175 |
5,772 |
+1,597 |
+38.3% |
営業利益 (対売上高比率) |
21,918 (1.00%) |
17,471 (0.76%) |
△4,446 (△0.24pp) |
△20.3%
|
上記の事業投資費を除く営業利益 |
26,093 |
23,244 |
△2,848 |
△10.9% |
〔売上高〕
売上高は、前期から1,061億27百万円(4.8%)増収の2兆2,957億95百万円となりました。
・東七の連結子会社化及びメディスケットが本格稼働したことや、新型コロナウイルス感染症の流行による同感染症治療薬の販売増、またインフルエンザの流行による抗インフルエンザ薬の販売増により増収となりました。
〔営業利益〕
営業利益は、前期から44億46百万円(20.3%)減益の174億71百万円となりました。
・売上総利益は、東七の連結子会社化及びメディスケットが本格稼働したことにより118億76百万円(9.0%)の増益となりました。なお、売上総利益率は、メディスケットが本格稼働したことにより前期(6.04%)を上回る6.28%となりました。
・販売費及び一般管理費は、メディスケットが本格稼働したことや事業投資費等の影響により、163億22百万円(14.8%)増となりました。
・この結果、営業利益は44億46百万円(20.3%)の減益となりましたが、中期ビジョンに掲げた成長投資の増加影響に加えて、前期に計上した一過性の新型コロナウイルスワクチン関連収益や、当期の新規事業におけるロイヤリティ契約の終了等を要因とするものです。
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
1,104,152 |
1,151,966 |
+47,814 |
+4.3% |
売上総利益 (対売上高比率) |
82,395 (7.46%) |
86,358 (7.50%) |
+3,963 (+0.03pp) |
+4.8%
|
販売費及び一般管理費 (対売上高比率) |
57,923 (5.25%) |
59,185 (5.14%) |
+1,262 (△0.11pp) |
+2.2%
|
営業利益 (対売上高比率) |
24,472 (2.22%) |
27,172 (2.36%) |
+2,700 (+0.14pp) |
+11.0%
|
〔売上高〕
売上高は、前期から478億14百万円(4.3%)増収の1兆1,519億66百万円となりました。
・新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、マスクや消毒液などの衛生関連品の需要減少が続いた一方で、レジャーやオフィス回帰など外出機会の増加や、一部インバウンド需要の回復、セルフケア意識の高まりなど、市場の変化を的確に捉えた取組みにより売上高が前期を上回りました。
〔営業利益〕
営業利益は、前期から27億円(11.0%)増益の271億72百万円となりました。
・売上総利益は、売上拡大を軸とする利益拡大施策が奏功したことに加え、前期に計上していた栃木物流センター稼働に伴う一過性費用の減少等の影響により売上総利益率が前期(7.46%)を上回る7.50%となったことにより、39億63百万円(4.8%)の増益となりました。
・販売費及び一般管理費は、売上拡大に伴い12億62百万円の増加となりましたが、売上高比率は固定費吸収効果や配送効率化により0.11ポイント改善し、5.14%になりました。
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
73,954 |
114,023 |
+40,068 |
+54.2% |
売上総利益 (対売上高比率) |
9,738 (13.17%) |
16,259 (14.26%) |
+6,520 (+1.09pp) |
+67.0%
|
販売費及び一般管理費 (対売上高比率) |
7,213 (9.75%) |
13,531 (11.87%) |
+6,318 (+2.11pp) |
+87.6%
|
販売費及び一般管理費(下記を除く) |
7,213 |
11,475 |
+4,261 |
+59.1% |
のれん・無形資産償却費(*) |
- |
2,056 |
+2,056 |
- |
営業利益 (対売上高比率) |
2,525 (3.41%) |
2,727 (2.39%) |
+202 (△1.02pp) |
+8.0%
|
上記の償却費を除く営業利益 |
2,525 |
4,783 |
+2,258 |
+89.4% |
(*)2027メディパル中期ビジョンに掲げた成長投資に伴い発生したのれん・無形資産償却費
〔売上高〕
売上高は、前期から400億68百万円(54.2%)増収の1,140億23百万円となりました。
・当期より、MP五協F&Cを連結対象とした影響により大幅に増加しました。
・動物用医薬品の販売は、畜水産向け市場においては、飼料や光熱費高騰等の生産コスト増加により引き続き厳しい市場環境となっていますが、ワクチンの新規採用や大手先との取引が増加しました。また動物用医薬品のコンパニオンアニマル向け市場は、皮膚治療薬や駆虫薬の販売が増加したことにより、売上高は堅調に推移しました。
・食品加工原材料の販売は、MP五協F&Cを連結対象としたことや、相場高騰による販売価格への転嫁や、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴う市場の回復及び新規取引の拡大などにより増加しました。
〔営業利益〕
営業利益は、前期から2億2百万円(8.0%)増益の27億27百万円となりました。
・売上総利益は、増収に加え、売上総利益率が前期(13.17%)を上回る14.26%となったことにより65億20百万円(67.0%)の大幅な増益となりました。売上総利益率については、相対的に利益率の高いMP五協F&Cを連結対象としたことが大きく寄与し、前期から改善しました。
・販売費及び一般管理費は、MP五協F&Cを連結対象としたことや、MP五協F&Cの子会社化に伴うのれん・無形資産償却費を計上したことにより、63億18百万円(87.6%)の増加となりました。
・営業利益は、上記ののれん・無形資産償却費などによる販管費増加を、売上総利益の増加で吸収し増益となっています。のれん・無形資産償却費を除いたベースでは、前期から22億58百万円(89.4%)の増益となっています。
(注)セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は1兆7,991億27百万円となり、前連結会計年度末より894億68百万円増加いたしました。
流動資産は1兆2,441億90百万円となり、前連結会計年度末より649億9百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金の増加351億23百万円、受取手形及び売掛金の増加287億42百万円によるものであります。
固定資産は5,549億37百万円となり、前連結会計年度末より245億59百万円増加いたしました。これは主に、阪神ALC等の有形固定資産の増加25億89百万円、株価上昇に伴う上場株式の評価替え等による投資有価証券の増加182億41百万円によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は1兆625億15百万円となり、前連結会計年度末より409億11百万円増加いたしました。
流動負債は1兆77億19百万円となり、前連結会計年度より362億円増加いたしました。これは主に、支払手形及び買掛金の増加333億31百万円によるものであります。
固定負債は547億96百万円となり、前連結会計年度末より47億11百万円増加いたしました。これは主に、株価上昇に伴う上場株式の評価替え等による繰延税金負債の増加48億99百万円によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は7,366億12百万円となり、前連結会計年度末より485億57百万円増加いたしました。
株主資本は5,402億65百万円となり、前連結会計年度末より278億35百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金の増加245億92百万円および自己株式の減少50億33百万円によるものであります。
その他の包括利益累計額は600億83百万円となり、前連結会計年度末より111億55百万円増加いたしました。これは主に、株価上昇に伴う上場株式の評価替えによるその他有価証券評価差額金の増加89億8百万円によるものであります。
非支配株主持分は1,362億63百万円となり、主にPALTACの純資産の増加により、前連結会計年度末より95億65百万円増加いたしました。
(注)当連結会計年度において、前連結会計年度に暫定的な会計処理を行っていた住友ファーマフード&ケミカル株式会社(現MP五協フード&ケミカル株式会社)の企業結合が確定し「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ①連結貸借対照表」に含まれる比較情報に取得原価の当初配分額の重要な見直しを反映しているため、前連結会計年度末からの増減金額の記載にあたっては、当該反映をおこなった金額との比較をしております。
③キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円) |
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
16,146 |
61,843 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△39,494 |
△7,817 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△43,541 |
△25,248 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
0 |
0 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△66,889 |
28,778 |
現金及び現金同等物の期首残高 |
260,450 |
193,561 |
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増減額 |
- |
5,744 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
193,561 |
228,084 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より287億78百万円増加し、また東七が第1四半期連結会計期間から新たに連結対象になったことによる期首取込額57億44百万円とあわせて当連結会計年度末には2,280億84百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、618億43百万円(前年同期比456億97百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益747億41百万円、減価償却費169億31百万円、仕入債務の増加252億69百万円、売上債権の増加230億53百万円、棚卸資産の増加7億79百万円、法人税等の支払242億98百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、78億17百万円(前年同期比316億77百万円の減少)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入105億56百万円、阪神ALC等の有形固定資産の取得による支出155億60百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、252億48百万円(前年同期比182億93百万円の減少)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出100億90百万円、配当金の支払138億44百万円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
医療用医薬品等卸売事業 |
2,295,795 |
104.8 |
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業 |
1,151,966 |
104.3 |
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業 |
114,023 |
154.2 |
計 |
3,561,784 |
105.8 |
調整額(セグメント間消去) |
△3,051 |
- |
合計 |
3,558,732 |
105.9 |
(注)セグメント間の内部売上高を含んでおります。
b.仕入実績
仕入実績と販売実績の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況、②財政状態の状況、③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループにおける資本の財源は、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、現金および現金同等物、政策投資株式の売却に伴う収入等になります。当連結会計年度末の借入金残高はありませんが、今後は、財務健全性を確保しつつ、当社グループにとって最適な資本構成を追求してまいります。
資金の流動性につきましては、事業活動を支える観点で充分な流動性を確保するとともに、金融機関からの当座貸越枠として1,851億円を設定し、突発的な資金需要にも対応しうる体制の構築をもって、流動性リスクに備えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目事象は以下のとおりです。
なお、当社グループの取り扱う商品は、医薬品や食品、日用品など人々が生活をしていくうえで必要不可欠なものであることから、その需要が大きく減少することは想定しづらいと考えております。従いまして、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定において、新型コロナウイルスの影響は軽微であります。
a.繰延税金資産
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b.独占禁止法関連損失引当金
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
c.のれんおよび顧客関連資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
d.退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い国債利回りなどを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率などを考慮して設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、正味売却価額により測定しておりますが、売却予定の資産については売却予定価額を基に算定しておりますので、前提条件に変更があった場合、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
f.納入価格の見積り設定について
当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品は、納入停滞が許されない生命関連商品であることから、取引価格が未決定のまま医療機関等に納入し、納入後に価格交渉を行うという取引慣行が存在しております。取引価格が決定するまでは、過去の実績等を勘案し、合理的に判断した見積価格で売上計上を行っておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際に決定した取引価格との差異が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2024年3月期における医療用医薬品の売上高2.2兆円のうち、取引価格の決定比率(金額ベース)は99.6%となっており、期末には取引価格がほぼ確定する傾向となっております。
(過去3年間の取引価格の決定比率 2021年3月期:99.9%、2022年3月期:99.8%、2023年3月期:99.6%)
該当事項はありません。
当連結会計年度における研究開発費の総額は、
連結会計年度における各セグメント別の研究の目的・主要課題及び研究開発費は次の通りであります。
(1)医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等卸売事業において、当社は、患者数が極めて少ない領域にも、治療薬をお届けできるよう努めることが、医療に携わる企業としての社会的責任であると考え、JCRファーマ株式会社と海外における事業化についての実施許諾契約を結び、J-Brain Cargo®を適用した治療薬の研究をあらたに行っております。
医療用医薬品等卸売事業における当連結会計年度の主な研究開発活動は、臨床試験開始に向けて必要な研究であり、研究開発費の総額は
(2)化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業において、当社の連結子会社である株式会社PALTACは、労働人口減少が進行し、生産性の高い仕組みを構築することがますます重要である環境下において、物流ノウハウと融合することを目的にAI・ロボットなどの最新技術の研究開発活動を行っております。
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業における当連結会計年度の主な研究開発活動は、大きさ、重さ、形状などが異なる何万種もの商品を自動で識別し、ピッキングするロボットアームの設計・開発であり、研究開発費の総額は
(3)動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業において、当社の連結子会社であるMP五協フード&ケミカル株式会社は、「技術革新による付加価値のある製品の創造に努め、持続的な成長に向けて邁進する」という基本方針に基づき、付加価値の高い新規製品開発や技術開発の基盤強化、戦略的・タイムリーな技術支援を実施しております。
動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業における当連結会計年度の主な研究開発活動は、食品分野では、主に介護食品用増粘多糖類の開発、化成品分野では、脱プラスチック社会に向けた生分解性プラスチック関連素材の開発や、半導体製造に必要不可欠な電子薬剤の研究開発を行っており、研究開発費の総額は