文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
当社は、長年培ってきた含窒素有機化合物群におけるコアテクノロジーをさらに進化させるほか、新たなコアテクノロジーの確立を図ることにより、新しい柱としての基幹化合物、機能製品、気相製品を創出し、高付加価値高機能製品を提供してまいります。これらを通じて社会の発展に貢献するとともに、株主の皆様のために公正な収益活動を営み、併せて地域社会と協調し、あらゆる取引先等の信頼と期待に応え、また従業員にとりまして働きがい、生きがいの感じられる企業を目指します。
当社を取り巻く環境
今後の見通しにつきましては、緩やかな回復が続くと想定されますが、ロシア・ウクライナ紛争の終結が見えないことや、日本国内において賃上げや物価高を踏まえた金融政策の見直しが議論されていることなど、今後も不透明な経営環境が続くものと予想されます。
このような状況の中、当社製品の需要は、触媒関連製品や電材関連製品について徐々に回復していくことを見込んでおりますが、引き続き売価是正や拡販に取り組み収益の確保を図るとともに、次期が最終年度となる中期経営計画に掲げた、「事業成長戦略加速」、「経営基盤強化」、「人材育成強化加速」を着実に実行し、企業価値向上を一層推進してまいります。
中期経営計画(2022年度-2024年度)進捗状況
中期経営計画の最終年度である2024年度は、触媒関連製品及び電材関連製品の需要回復に加えて、光学材料製品の大幅な伸長を見込んでおります。一方、医薬中間体や樹脂関連製品は、中長期的には引き続き堅調な需要を見込んでいるものの一部製品の販売時期ずれにより前期比で減少する見込みです。
中期経営計画で策定したアクションプランは概ね計画どおり進捗しているものの、経営環境は上述のとおり依然として厳しく、2024年度の利益目標達成は非常にハードルが高いと認識しております。このような状況下ですが、全社一丸となって諸課題に取り組み早期の業績回復に努めてまいります。

※EBITDA:金利・税金・償却前利益
(Earnings before interest, taxes, depreciation and amortization)
<経営指標推移>

※ROIC :投下資本利益率 (Return on invested capital)
※CCC :現金循環化日数(Cash conversion cycle)
<事業成長戦略加速>
基盤製品の競争力強化/高付加価値化、機能製品・新規事業拡大及び事業ポートフォリオの高度化の諸課題については、次の項目(①から③)に示すとおり順調に進捗しております。特に2023年10月に稼働開始した研究パイロットプラントでは医薬原料である少量高付加価値製品の初生産を実施する等、これまで対応できなかった領域でのビジネスが可能となり一層の拡充に向け取り組んでおります。また、一層の競争力強化を図る為、アミンビジネスにおけるインド現地企業との事業提携の可能性や基盤プラント再編について継続検討しております。

<経営基盤強化>
デジタル革新、ガバナンス革新、サステナビリティ革新は概ね計画どおり進捗しております。マネジメント革新のうち投下資本利益率(ROIC)は、当社の資本コスト(WACC)である8%をROIC目標に掲げ取り組んでおりますが、2023年度のROIC実績は1%と最終年度である2024年度での目標達成のハードルは極めて高い状況です。一層の収益性の改善を図るほか、よりBS(効率性向上)を意識した経営へのシフトの重要性を社内に浸透させるとともに、ROIC改善に繋がるKPIを部署別に設定し実現を図ることにより、目標の早期達成に向け全社員の最優先課題として推進してまいります。また、現金循環化日数(CCC)については、更なる短縮に取り組み一層の資本効率化を進め企業価値向上を図ってまいります。

<人材育成強化・加速>
継続課題である幹部社員及び管理社員のマネジメント能力の強化に加え中堅・若手社員の早期戦力化に注力してまいります。また、人的資本に関わる指標の積極開示を行うとともに、指標の改善・向上に向けた諸課題の解決を通じて従業員のエンゲージメント向上につなげてまいります。

将来の成長ドライバーによる業績の改善
中長期的なビジネスの拡大及び業績改善への寄与を牽引する成長ドライバーとして、以下の製品群の開発、拡販に注力してまいります。
①CO2吸収材関連
当社のアミン化合物製品のラインナップは100種類にも及んでおり、顧客ニーズに応じて様々な用途向けの製品開発を行うことが可能です。CO2吸収材用途については、昨今のカーボンニュートラル達成に向けた世界的な関心の高まりを背景に、国内外のメーカー・研究機関から多数の引き合いを受けております。また、顧客からの要求に柔軟に対応するとともに、当社独自のアミン化合物の開発を推進するために、CO2吸脱着評価システムを導入しており、カーボンニュートラルの実現に向けて検討を加速してまいります。
②有機金属触媒
当社では従来から、世界の主要ポリマーメーカー向けに有機金属触媒の供給を行っております。現在、世界的な景気停滞や個人消費の低迷等により、需要が大きく減退しておりますが、2024年度後半にはポリマー需要の回復に伴い既存製品の拡販及び業績への大幅な寄与を見込んでおります。また、複数の顧客から新規製品開発の引き合いを受けており、将来に向けてビジネスの拡大に注力してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は「信用と誠実を旨とし、英知と活力を結集して積極果敢に挑戦し、社業の発展を期する。」「独創的技術の開発による有用な製品・課題解決策の提供を通じて社会の発展に貢献する。」を経営理念とし、自社の社業の発展だけでなく、独創的技術の開発により社会の発展に貢献することを目指しております。この経営理念に基づき、持続可能な社会への実現に貢献するため「サステナビリティ基本方針」を制定しております。
当社は、サステナビリティに関する取り組みを重要課題と認識しており、その取り組みを加速させるための体制を構築しております。取締役会の諮問機関として、代表取締役社長を委員長、独立社外取締役をメンバーとする「サステナビリティ委員会」を設置し、取締役会に対して課題に対する取り組み方針の提言や進捗に対する評価などの答申を行っております。サステナビリティ委員会は2023年度に計2回開催しております。また、経営会議の中に「サステナビリティ推進統括会議」を設置しており、サステナビリティに関する方策の検討と具体的な取り組みの推進を行うとともに、取り組み内容を定期的に取締役会に対して報告することにより、取締役会の監督が適切に図られる体制としております。以下、「ガバナンス体制図」のとおりです。
また、当社ではリスク管理の統括機関として、代表取締役社長を委員長とした「内部統制委員会」を設置しており、統合的なリスク管理として「事故・災害リスク」「情報セキュリティリスク」「法令違反・コンプライアンスリスク」「税・財務リスク」「人事・労務リスク」「事業リスク」「政治・社会リスク」の7つのカテゴリーを管理しております。同委員会では定期的に重要リスクの識別を行い、リスクの対応方針、取り組み計画を策定の上、実施状況について評価、管理しております。
ガバナンス体制図 2024年3月31日現在

当社は、住友化学グループとして設定している持続可能な価値創出のための重要課題(マテリアリティ)を共有しており、各重要課題に対する主要取組み指標「KPI」を設定しています。社会価値創出に関する重要課題という点では、環境分野への貢献として、CO2排出量(Scope1+2)、エネルギー消費原単位改善をKPIとしており、CO2排出量は2030年度に2013年度対比50%削減を目標にしています。その他、食糧分野への貢献として農薬原料・中間体売上高、ヘルスケア分野への貢献として医薬原料・中間体売上高、ICT関連分野への貢献として電子材料関連製品売上高をそれぞれKPIに設定しております。また、将来の価値創造に向けた重要課題という点では、イノベーションの推進として新製品売上高比率と合理化金額累積、DXによる競争力強化としてデジタル成熟度、人材:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、育成・成長、健康として、新卒採用に占める女性社員の割合及び障がい者雇用率をそれぞれKPIに設定しております(以下表「持続可能な価値創出のための重要課題」)。各KPIに対する2023年度の進捗実績は以下表「サステナビリティKPI進捗実績」のとおりです。これらのKPIを活用し、取組み状況の管理と開示を進めるとともに、社内外のステークホルダーとの対話も推進してまいります。各KPIの詳細(実績や進捗状況等)については、2024年10月頃、当社ウェブサイトで公表予定の「広栄化学レポート」をご覧ください。
持続可能な価値創出のための重要課題

サステナビリティKPI進捗実績

※1 2023年度から算出方法を変更。売上高当たりのエネルギー消費量を、2020年度実績を100として指数化。
※2 合理化によって創出された製造原価に占める変動費や固定費の改善実績値から算出。2019年度からの累積。
※3 経済産業省のDX推進指標を基に定めた12の項目について6段階で評価しデジタル成熟度レベルを判定。
(2)人的資本に関する開示
当社は、現行中期経営計画(2022年度~2024年度)において、「人材育成強化・加速」を基本方針の一つとしております。従業員一人一人のパフォーマンスが最大限に発揮されることや社員のやりがい、ワークエンゲージメントの向上につなげることを目的に、「マネジメント強化」、「中堅社員育成・若手社員の早期戦力化」、「人事制度見直し」を3本柱として人材育成に取り組んでいます。「マネジメント強化」は、執行役員や管理社員のマネジメント力強化に向けた各種研修や研鑽の場の創設を検討しており、2023年度は執行役員を対象としたコーチング研修を実施いたしました。コーチング研修は2024年度以降に、理事や部長層に範囲を広げて開催していく予定です。また、経営層との対話により課長層の視座をあげることを目的としたBird’s-eye view セッションの実施を計画しております。「中堅社員育成・若手社員早期戦力化」は、近年の設備増強に伴う大幅な生産能力増強に対応して受け入れた多数の社員の早期戦力化を最優先に考え、入社から一人前になるまでのきめ細かいプログラムを実施する等、KOEI Vision 2030達成に資するような教育体系の抜本的な見直しに着手したところです。「人事制度見直し」は、60歳以降の雇用制度見直しに着手しており、定年延長を見据えた人事制度を検討しております。また、従業員意識調査やストレスチェック等の結果もふまえながら、社員が自己の成長ややりがいを感じられる人事諸制度への改革を目指しております。

多様な人材が活躍できる環境づくりを目的に、「人材: ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、育成・成長、健康」のKPIとして、新卒採用に占める女性社員割合及び障がい者雇用率を設定しております。当社における女性社員の割合は、2024年3月末時点で11.7%、女性管理職の割合は4.2%、係長級の割合は19.6%となっており、取組みの成果が出て昨年度と比べてそれぞれ改善しております(2023年3月末実績 女性社員割合10.8%、女性管理職3.4%、女性係長級17.7%)。新卒採用に占める女性社員割合の目標を達成することにより女性社員の割合を増加させ、延いては女性の係長級及び管理職の割合を増加させていくことを目指しておりますが、現在、新卒採用だけではなく、経験者採用においても女性や外国人等多様な人材の採用に注力しており、今後の更なる改善を目指して、KPIの見直しや目標数値の設定も検討してまいります。
価値創造の基盤づくりという点では、社員の生活の安定や一人一人が生き生きとして仕事に取り組める環境づくりを目的に、研修・教育分野以外でも人的資本に関する投資を積極的に進めております。希望する社員に独身寮の居室を提供できるよう、独身寮の整備を進めておりましたが、2024年2月に新独身寮の運営を開始したところです。また、社員が健康で生き生きと仕事に取り組めるよう、専任の看護保健師を中心に健康増進活動に注力しているところですが、体制強化も含め活動のさらなる充実を進めていくこととしております。
当社の経営成績、財務状況等(株価を含む)に影響を及ぼすリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであり、また本記載は将来発生し得るすべてのリスクを網羅したものではありません。
その他、当社には、退職給付債務の変動リスク、金利変動及び株式相場変動リスク、重大な製品欠陥等に係る品質リスク、知的財産や製造物責任などに係る訴訟リスク、取引先に対する債権の貸倒リスク、ハラスメントに関するリスクなどがあり、これらのリスクが顕在化した場合は、当社の経営成績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度のわが国経済は、個人消費の回復や堅調なインバウンド需要、自動車生産の正常化に伴う輸出の回復などが景気を下支えしました。一方で、ロシア・ウクライナ紛争の長期化による資源・エネルギー価格の高騰及び供給不足や、為替相場における急激な円安の進行など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような情勢の下、当社は、売価是正、拡販に注力するとともに、生産の合理化・効率化による製造原価低減など一層のコスト削減に取り組み、全社を挙げて収益確保に努めてまいりました。
この結果、当事業年度の売上高は、触媒関連製品等の需要低迷の影響により機能性化学品の販売が減少しましたが、北米向けの農薬関連製品等の販売増加及び為替の影響による増収により、194億27百万円(前事業年度比4.4%増収)となりました。利益面では、為替の影響及び売価是正の成果や、電力・ガス価格高騰に対する政府補助などに伴う単価下落による増益要因があったものの、前事業年度に稼働したファイン製品製造設備や当事業年度に稼働した研究パイロットプラントの減価償却費の増加、棚卸資産減少に伴う負担固定費の増加などの減益要因により、営業利益は4億15百万円(前事業年度比50.1%減益)、経常利益は3億47百万円(前事業年度比59.4%減益)、当期純利益は2億99百万円(前事業年度比56.6%減益)となりました。
(製品グループ別売上高)
なお、当社の事業セグメントは、ファイン製品事業のみの単一セグメントであり重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております。
流動資産は、未収消費税(流動資産その他)及び棚卸資産などが減少しましたが、売掛金の増加により、前事業年度末に比べ5百万円増加の149億35百万円となりました。
固定資産は、独身寮(リース資産)や研究パイロットプラント新設などによる有形固定資産の増加により、前事業年度末に比べ2億16百万円増加の243億68百万円となりました。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ2億21百万円増加し393億4百万円となりました。
流動負債は、買掛金や未払金の増加などにより、前事業年度末に比べ8億13百万円増加の94億92百万円となりました。
固定負債は、リース債務などが増加しましたが、長期借入金が減少し、前事業年度末に比べ3億56百万円減少の79億92百万円となりました。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ4億56百万円増加し174億84百万円となりました。
純資産は、当期純利益の計上及び配当金の支払いなどにより、前事業年度末に比べ2億34百万円減少し、218億19百万円となりました。自己資本比率は前事業年度末の56.4%から55.5%となりました。
当事業年度の現金及び現金同等物の期末残高は5億62百万円となり、前事業年度末の3億68百万円から1億94百万円増加しました。これは財務活動によるキャッシュ・フローが、長期借入金の返済による支出15億円などにより18億45百万円の支出となりましたが、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローが、減価償却費の計上や未収消費税等の減少などにより19億89百万円の収入になったことによります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業活動に係る運転資金需要の増加などの支出がありましたが、税引前当期純利益を3億58百万円、減価償却費を29億66百万円計上したことに加え、未収消費税等の減少による収入などにより、39億79百万円の収入(前事業年度は33百万円の支出)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、研究パイロットプラント新設など固定資産の取得による支出により、19億89百万円の支出(前事業年度は50億94百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出や、配当金の支払などにより、18億45百万円の支出(前事業年度は49億8百万円の収入)となりました。
当事業年度における生産実績は212億24百万円(前事業年度比0.5%増)であります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社は原則的に将来の予想に基づいて見込生産を行っております。
当事業年度における販売実績は194億27百万円(前事業年度比4.4%増)であります。
主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、原則として財務諸表に基づいて分析した内容であります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社の財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。
財務諸表作成にあたり、当社が採用している会計方針において使用している重要な会計上の見積り及び前提条件は、以下のとおりであります。
(貸倒引当金)
当社は、支払実績及び信用情報等を査定して販売先から営業担保を預っており、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に債権の回収可能性を検討して貸倒引当金を計上しております。
販売先の財務状況及び支払能力に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(棚卸資産)
当社は、棚卸資産の貸借対照表価額については、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により計上しております。
当社は、得意先の需要予測に基づき生産計画を策定しており、また、当社の生産設備であるマルチプラントでは生産切替回数増加によるロスを極力抑えるため、まとめ生産を行っております。このため、生産から販売まで長期間を要する場合があります。長期保有在庫の販売予測の見積りにおいては、将来の販売数量が重要な構成要素となりますが、これらは国内外における需要等の外部経営環境の影響を受けることから不確実性を伴い、見積りにおける仮定の選択に係る判断が長期保有在庫の評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(投資の評価)
当社は、長期的な取引関係の維持・強化のため株式を所有しております。当社は、投資価値の下落が一時的でないと判断した場合に株式の減損処理を実施しております。時価のある「その他有価証券」については、期末時価が帳簿価額を50%以上、若しくは3期連続で30%以上50%未満下回った場合に減損処理を実施しております。また、時価のない「その他有価証券」については、原則として評価対象となる純資産額が帳簿価額を50%以上下回った場合に減損処理を実施しております。
将来の株式市場の動向、投資先の業績動向によりこれら投資の評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産の計上にあたり、今後の事業計画及び将来減算(加算)一時差異の解消スケジュール等を基に合理的で実現可能なタックス・プランニングを検討し、将来の課税所得等の予測を行っております。その結果、将来実現が困難と判断される繰延税金資産については、評価性引当額を計上しております。
将来の業績及び課税所得実績の変動等により、繰延税金資産の計上に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付費用及び債務)
当社の従業員退職給付費用及び債務は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて計上しております。この前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率が含まれており、退職給付債務を計算する際に用いる数理上の前提の変更、年金制度の変更による未認識の過去勤務費用の発生等により、退職給付費用及び債務の算定に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(減損損失)
当社は、収益性の低下や時価の下落といった減損の兆候の見られる固定資産については、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて減損処理を実施しております。
将来の収益性の低下や時価の下落等により、これら固定資産の評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(受注損失引当金)
当社は、受注契約のうち損失が発生する可能性が高く、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能な受注契約について、損失見込額を受注損失引当金として計上しております。
将来の市場環境の変動等により製造原価が見積原価を超過することが見込まれる場合、追加の受注損失又は引当金計上が必要となる可能性があります。
(売上高、売上原価、売上総利益と営業利益)
当事業年度の売上高は、触媒関連製品等の需要低迷の影響により機能性化学品の販売が減少しましたが、北米向けの農薬関連製品等の販売増加及び為替の影響による増収により、前事業年度に比べ8億25百万円増加の194億27百万円となりました。
当事業年度の売上原価は、前事業年度に稼働したファイン製品製造設備や当事業年度に稼働した研究パイロットプラントの減価償却費の増加などにより、前事業年度に比べ2億9百万円増加の141億48百万円となりました。
この結果、売上総利益は、減価償却費の増加などの減益要因があったものの、為替の影響及び売価是正の成果や、電力・ガス価格高騰に対する政府補助などに伴う単価下落による増益要因により、前事業年度に比べ6億15百万円増益の52億78百万円となりました。
販売費及び一般管理費は、製造プラントの操業休止期間の設備維持管理費用14億42百万円の計上などにより、前事業年度に比べ10億32百万円負担が増加の48億63百万円となりました。この結果、営業利益は4億15百万円となり、前事業年度に比べ4億17百万円減益となりました。
(営業外損益と経常利益)
営業外収益は、当事業年度は外貨建て取引の決済における為替差額が損失に転じたことなどにより、前事業年度に比べ54百万円減少し10百万円となりました。営業外費用は、借入金の支払利息の増加や為替差損影響などにより、前事業年度に比べ36百万円増加の78百万円となりました。この結果、当事業年度の営業外損益は前事業年度に比べ91百万円減少し、67百万円の損失となりました。
これにより、経常利益は3億47百万円となり、前事業年度の8億55百万円から5億8百万円の減益となりました。
(特別損益と当期純利益)
特別利益64百万円(投資有価証券売却益)、特別損失53百万円(固定資産除却損)を計上した結果、税引前当期純利益は3億58百万円となり、前事業年度の9億25百万円から5億67百万円の減益となりました。法人税、住民税及び事業税81百万円及び法人税等調整額△22百万円を控除した結果、当期純利益は2億99百万円となり、前事業年度に比べ3億91百万円の減益となりました。
当社は、円滑な事業活動に必要な水準の流動性の確保と財務の健全性維持を資金調達の基本方針としております。
当社は、上記の資金調達の基本方針に則り、国内金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、短期借入金及び長期借入金により必要資金を調達しております。
直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境も考慮した上で当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っております。
当社は、常に独自技術の開発を理念として、新製品の開発からプロセスの構築・合理化に至るまで、積極的な研究開発活動に取り組んでおります。
研究開発本部は、千葉研究所および研究開発技術部で構成され、医農薬中間体、有機金属錯体等の受託案件の工業化研究、イオン液体・ウレタン関連製品等の自前機能性製品の開発を担っております。また生産・技術本部の生産技術部では、既存製品の合理化研究に取り組んでおります。
また、社内だけでなく、国内外の企業・大学・研究機関などとの積極的なオープンイノベーションを通じて、高度技術の修得と新規コアテクノロジーの確立ならびに独自技術を用いた環境負荷低減を目指した研究開発推進に努めております。
当事業年度の主な成果として、受託製品では、医農薬中間体や有機金属触媒/助触媒等の新規受託を拡大し、工業化に至っております。機能性製品では、近年取り組んでおりますイオン液体では、環境に配慮した分野への用途開発や、PFASフリーイオン液体の製品開発を推進しております。基盤製品でありますアミン類、ピリジン類におきましては、プロセス合理化に加え、二酸化炭素の分離・回収向けCO2吸収材(アミン化合物)の受託を推進しており、カーボンニュートラルの実現に向けて検討を加速しております。
本年度稼働開始した研究パイロットプラントは、ラボの実験装置と生産プラントの中間規模の設備で、新製品の工業化にあたって、操作条件、安全性、製品の品質など実際に運転、検証することで生産プラントへのスムーズな技術移管を行います。
当事業年度における研究開発費の金額は
なお、当社の事業セグメントは、ファイン製品事業のみの単一セグメントのため、研究開発費の総額と内容を記載しております。