文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「地域のすべての方々の食生活をより豊かに、より楽しく」を長期ビジョンに掲げております。「お客さまに価格以上の価値を提供し続ける」、「働く全員が仕事に誇りを持ち、生活を楽しめる会社にする」、「無駄をなくし、生産性の高い独自のモデルを構築する」、「すべての関係者と協力しながら社会課題の解決に貢献する」、これらを実現することで持続的な成長を図ってまいります。
当社グループは、スーパーマーケットを営む単一セグメントであり、当社を含むライフスタイル業態とディスカウント業態の2つの業態で構成されております。単一セグメントでありながら、異なるビジネスモデルを持つグループ各社が自律的な成長を果たすことで、グループでの商圏シェアの向上を図ってまいります。
(ライフスタイル業態)
当社は、「ミールソリューションの充実」と「価格コンシャスの強化」を基本方針とし、「豊かで楽しく健康的な食生活提案型スーパーマーケット」づくりを進めております。当社は、小商圏高頻度来店型の食品スーパーマーケットであることから、地域ごとに異なるニーズに対してきめ細かく対応し、店舗の近くにお住まいのすべてのお客さまにご満足いただけるよう、「チェーンとしての個店経営」「全員参加の商売」「徹底した現場主義」を運営方針としております。
当社の強みは、「商品力」と「販売力」であり、名物商品の「おはぎ」、プライベートブランド商品の開発など、当社でしか購入できない商品の開発に取り組むとともに、店舗における旬・主力商品の提案、クッキングサポートの展開、FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の活用など販売力強化にも取り組んでおります。
(注)「ミールソリューション」とは、お客さまの毎日の食事の献立の提案や料理のアドバイスなど食事に関する問題の解決のお手伝いをすること。
「価格コンシャス」とは、お客さまが買いやすい値段、値頃(ねごろ)を常に意識して価格設定を行うこと。
「FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)」とは、ロイヤルカスタマーの維持拡大を図るための販売促進に関するマーケティング政策のことで、ポイントカード等でお客さまの購買データを分析して、個々のお客さまに最も適した商品・サービスを提供すること。
せんどうは、生鮮食品に圧倒的な強みを持つ食品スーパーマーケットを運営し、千葉県市原市を中心にドミナントエリアを形成しております。
(ディスカウント業態)
エイヴイでは、主に広域のお客さまの「まとめ買い」ニーズに対応するために、圧倒的な品揃えと低価格を実現することで、競合他社との差別化を図っております。具体的には、プロセスセンターの活用、自社でのシステム開発、効率的な店舗オペレーションによる運用などのノウハウを積み重ね、徹底的に「ローコストオペレーション」を追求しており、神奈川県横須賀市を中心に横浜や県央エリアなどへの出店も進めております。
また、同一のフォーマットであるフーコットは、埼玉県内や東京都の多摩エリアでの新規出店を進めており、エイヴイとは異なる地域でのディスカウント業態の出店も進めることで、グループでの商圏シェアの向上を図ってまいります。
「500店舗、売上高1兆円」を長期の数値目標としております。
また、「売上高経常利益率4%以上」を継続的に確保することで、各ステークホルダーに対する適切な還元や持続的な成長を実現するための成長投資が可能になると考えております。
当社は、「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって地域文化の向上・発展に寄与する」を経営理念に掲げており、地域にお住まいのすべての方々に、毎日の生活での「幸せ」をご提供し続ける、地域のコミュニティの中心として、食に関わる生活文化を継承・創造することが当社の「存在意義」だと考えております。
当社の経営方針である「豊かで楽しく健康的な食生活提案型スーパーマーケット」を実現することで、地域の皆さまに対して、当社の店舗に買い物に行くことで、健康で幸せな生活を送ることができる、食に関する様々な悩みが解決される、人とのつながりや豊かな暮らしについて学ぶ機会があるという価値を提供し、持続的な成長を図ってまいります。
(5) 第11次中期経営計画の概要(2025年3月期~2027年3月期)
第11次中期経営計画期間におきましては、「グループでより強くなる」をメインテーマに掲げて、ライフスタイル業態とディスカウント業態の各社が自律的な成長を果たすことで、商圏シェアの向上を図るとともに、「グループ売上高1兆円体制」に向けた基盤づくりについても進めてまいります。
① グループとしての商圏シェアアップ
・ ライフスタイル業態とディスカウント業態でのシェア向上
・ ライフスタイル業態でのM&Aの継続検討
② グループ共通機能の強化(グループ売上高1兆円に向けた基盤づくり)
・ 人事、財務、内部統制、店舗開発、物流、システム、製造
・ 経営人材の育成、人材交流・学び合い
③ 成長市場への投資と協業
・ ベトナム市場での成長支援と協業
・ 国内ベンチャーとの協業と新たな価値の創出
ヤオコー単体 第11次中期経営計画の骨子
当社は、第10次中期経営計画期間においては、「『2割強い店づくり』の実現」をメインテーマに掲げ、取り組みを進めました。コロナ禍という特殊な与件があったものの、EDLPによる集客、企画を通じた販売力強化、AI自動発注導入によるカイゼンの進化などで「利益創出・投資・成長」のサイクルが着実に回り始め、1店舗当たりの売上高を大きく増加させることが出来ました。一方で、「働きやすさの実現」、「旗艦店の進化」などでは課題も残りました。
第11次中期経営計画期間におきましては、変化を捉えて自ら変化し「価値」を生み出せる企業しか勝ち残れないとの強い危機意識を持ち、各種施策に取り組んでまいります。
① メインテーマ「シン・ヤオコー:昭和モデルから令和モデルへの構造転換」
・ 専業主婦・パートタイムモデルから共働き・フルタイムモデルへ
・ 店舗だけからサプライチェーン全体で価値を生み出すモデルへ
・ 店舗だけから店舗を超えて商品・サービスを提供できるモデルへ
・ 紙ベース・属人管理モデルから、デジタルベース・自動化モデルへ
・ 資源消費型モデルから資源循環型モデルへ
② 目指すこと
・ 地域社会にもっと大きな価値を生んでいく
・ 人が価値を生む仕事に集中できる仕組みをつくる
・ 1店舗当たりの支持を高めることで価値創造と働きやすさを同時実現
(目標:1店舗平均売上高30億円)
③ 重点施策・重点目標
イ 商品・販売戦略
・ 顧客別対応の進化
・ 生鮮部門の構造改革と集客力向上
・ SPA型商品開発によるカテゴリー強化
ロ 運営戦略
・ デジタルを活用したカイゼンの進化
・ サプライチェーン全体での省人化とムダの削減
・ 省エネ・リサイクルの継続
ハ 育成戦略
・ 人が集まり、人が育つ職場づくり
・ 心身の健康を高める働きやすさの実現
・ グループ売上高1兆円に向けた次世代リーダーの育成
ニ 出店・成長戦略
・ ドーナツエリアを中心とした出店継続
・ 各フォーマットでのチャレンジと深化
・ ネットスーパーの黒字化と新サービスの立ち上げ
少子高齢化に伴うマーケットの縮小が想定されますが、過疎化が進む地方や欧米諸国などと比較しても、当社グループの出店エリアでのシェアは依然低く、グループ各社が各々の強みを磨き、自律的な成長を果たしていくことで、まだまだ成長の余地はあると考えております。また、マーケットの縮小に合わせて極小商圏でも運営を可能にする店舗フォーマットづくりに取り組んでまいります。
② 労働力不足
従業員ひとりひとりが「働き甲斐」を持てる企業集団を目指してまいります。特に当社においては、店舗作業の「カイゼン」の取組みと同時に、業務効率化を目的としたIT・機器の導入、店舗作業の省力化を目的としたデリカ・生鮮センターの積極活用など積極的な設備投資も継続しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、グループ経営理念として「地域のすべての方々の食生活をより豊かに、より楽しく」を掲げ、その実現と企業価値をさらに向上させるため、サステナビリティの観点を取り入れ事業運営を行っております。
当社は、代表取締役社長を議長とする経営推進会議、コンプライアンス委員会、リスクマネジメント委員会、環境委員会等の会議体を有し、サステナビリティの観点から企業価値を向上させるため、経営に関する重要課題を共有、議論し、リスク管理、経営判断を行っています。取締役会は、重要事項の報告を受けるとともに、サステナビリティ全般のリスク・機会についての監督に関する責任と権限を有しています。
「人材」は、当社の経営方針「豊かで楽しく健康的な食生活を提案する」を実現するために最も重要な企業価値向上の源泉です。経営方針の実現に向け、「チェーンとしての個店経営」「全員参加の商売」による運営を行うには現場で自ら考えて行動する人材が不可欠となります。そのような人材を輩出するための教育・育成方針は、主に人事委員会や代表取締役社長が議長を務める経営推進会議で議論、承認を受けており、労働環境については年1回以上取締役へ報告する場を設け、共有を図っております。また、従業員の健康増進を図るため、2022年3月にCHO(Chief Health Officer)を設置し、健康経営の推進役を担っています。
気候変動問題は、当社を取り巻く環境の長期的変化の一つと捉えており、全社横断で取り組むべき事項と認識しています。環境問題の重要事項について、代表取締役社長を議長とし、年1回以上開催する環境委員会で方針を議論、決定、進捗モニタリングを実施します。また、環境問題を統括するCSO(Chief Sustainability Officer)が取締役会で活動状況を定期報告する等、気候変動が環境や社会に与える影響も踏まえ、取締役会による監督が図られる体制となっています。

(人的資本に関する戦略)
① 人材育成方針
当社は運営方針として「チェーンとしての個店経営」「全員参加の商売」を企業発展のバックボーンとして掲げております。店舗運営において本部主導ではなく店舗主導の経営スタイルで、現場に裁量権があり、その現場で働く「人」の成長が店舗の成長、ひいては企業としての成長となります。
これらの考え方に基づき、各種教育研修や人事制度の充実をもって、自らが考え動き、チームで結果を出せるよう人材の教育とリーダー育成に努めております。代表的な施策は以下のとおりです。
・ 階層別義務教育の実施
・ 選抜教育の実施
・ 国内外流通視察、産地研修 等の実施
・ 目標設定と評価制度運用の取組み
② 社内環境整備方針
人の成長は、現場で働く従業員の「働き甲斐」と「働きやすさ」を共に高めることによって促されるものと当社では考えています。まずは一人ひとりが働きやすい職場環境を作ること。この環境づくりが、全員参加で高い目標にチャレンジする働き甲斐のある組織風土を生み出す基となります。「チームで仕事」の好循環の中で「人」が成長していく。そんな組織を目指します。
当社では、働きやすい職場環境づくりの推進のために、種々の環境整備を行っております。代表的なものは以下のとおりです。
・ 女性活躍等推進専担部署「ダイバーシティ推進担当部」の設置
・ 仕事と育児、介護の両立支援
・ 健康づくりの推進
・ 障がい者雇用の推進
・ 正社員等への区分変更制度
(気候変動への対応に関する戦略)
当社は、気候変動におけるリスクと機会について整理し、事業への財務的影響を把握しています。財務的影響の分析にあたって、政策・法規制が脱炭素社会へ移行するリスクではInternational Energy Agency(IEA)が公表するWorld Energy OutlookからStated Policies Scenario(以下「STEPS」と称する)、Sustainable Development Scenario(以下「SDS」と称する)、Net Zero Emissions by Scenario(以下「NZEシナリオ」と称する)を使用しました。気候変動によって起こる気温の上昇から想定される物理リスクはIntergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)が公表する第5次報告書からRCP8.5 scenario(以下「RCP8.5」と称する)、RCP2.6 scenario(以下「RCP2.6」と称する)を使用しました。財務的影響を試算するにあたってはNZEシナリオ、SDS、RCP2.6を1.5℃(2℃未満)シナリオ、STEPS、RCP8.5を4℃シナリオとまとめ分析を行いました。当社へ影響を及ぼすリスク・機会と財務的影響を試算した項目は下記のとおりになります。明確化された重要リスク、機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減等につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。

当社の全社的なリスクマネジメントは、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を機関として設置しており、年間2回以上開催しています。リスクマネジメント委員会は、当社を取り巻くリスクの特定、リスク評価と洗い替え、リスクの顕在化を防ぐための手続きや体制の整備、リスクが顕在化した場合の対応方法や体制の整備に関する事項を、全社的な視点で策定しています。
(4) 指標と目標
当社は、第11次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、気候変動及び人的資本に関する2031年3月期の非財務目標を下記のとおり定めました。なお、当事業年度実績について、気候変動に関する一部実績は、確定に時間を要するため、有価証券報告書上では見込値とし、統合報告書で確定値を記載いたします。
① 気候変動に関する指標・目標(2031年3月期)と実績
② 人的資本に関する指標・目標(2031年3月期)と実績
上記「(2) 戦略(人的資本に関する戦略)」において記載した、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、連結グループに属するすべての会社では行われておりません。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営んでおり、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われている提出会社のものを記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
少子高齢化に伴いマーケットの縮小が見込まれる一方で、国内外のマクロ経済の先行きが極めて不透明な中で、「消費の二極化」と言われる状況が加速する可能性があります。当社は、旬・主力商品の価格対応、節約志向の強いヤングファミリー層向けの商品開発など「価格コンシャス強化」に取り組むとともに、ディスカウント業態である連結子会社エイヴイ、フーコットの出店によりグループ全体で「価格対応」に取り組んでまいります。一方、こうした消費動向の変化の対応に遅れた場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、スーパーマーケット、GMS、ドラッグストア、コンビニエンスストア、特定の食領域に特化した専門店や店舗を有しないEコマースなどとも競合関係にあります。また、当社グループは、国内需要に依存したスーパーマーケットを展開する単一のセグメントであります。グループ各社が自律的な成長を果たせず、当社グループの競争力が強化できない場合には、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが展開するスーパーマーケットは労働集約産業である一方で、生産年齢人口が大きく減少していくことが予想されております。労働環境の改善、勤務制度の整備、教育やインセンティブプランの設定などを通じた「働き甲斐」の向上への取組み、ダイバーシティや「健康経営」の推進など人材確保に向けた様々な取組みを行っておりますが、これらが計画通りに進まない場合には、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、社会保障費の増大、最低賃金の引き上げなどにより、中長期に渡って従業員に関する費用が増加していくことが見込まれます。「カイゼン」やITシステムや各種センターを活用した店舗作業削減などの施策に取り組んでおりますが、これら施策が進捗通りに進まない場合には、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
デジタルデバイスが浸透したことにより、日本国内においても耐久消費財を中心にECをはじめとするオンライン取引が大きく伸長しております。当社においては、今後も、ネットスーパーを拡大させる計画であり、基幹システムの刷新など情報システム分野での設備投資は積極的に行っております。当社グループの成長に寄与するテクノロジーについては、設備投資や外部企業との連携などにより積極的に取り込んでいく計画ではありますが、想定以上にテクノロジーが大きく進展した場合などについては、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、季節的な商品販売動向に基づいて、販売計画を立てておりますが、想定外の気候的な変動により、売上の減少や過剰在庫を招くなど、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
環境問題に対しては、当社は、マイバック運動、食品ロスの軽減、自社エコセンターによるリサイクル推進、節電や再生エネルギーの活用など積極的に取り組んでおります。環境問題への取組み方針を策定し、脱炭素、リサイクルに向けて対応を進めてまいりますが、対処が遅れたり解決できない場合には、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、生鮮食品からドライ・加工食品、日配食品など食品中心に広範囲にわたって商品を扱っております。食品の安全性・衛生管理については、お客さまに安心してお買い物いただけるよう、トレーサビリティ(商品履歴の管理)、成分表示、衛生管理等を徹底し、品質管理及び商品の表示に関する担当組織の強化を図り、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底し、安全で衛生的な店づくりを心がけておりますが、食中毒や食品事故等が発生した場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼすほか、社会的信用・ブランドイメージが大きく毀損する可能性があります。
当社グループは、自社で展開するスーパーマーケットをメインに、ドラッグストア、生活雑貨や衣料品を取り扱う企業などをテナントとして誘致して、住宅地又はロードサイドなど、日常生活圏に立地している生活密着型の商業施設を運営しております。商業施設の中では景気変動の影響は小さいと想定しておりますが、景気後退に伴うテナントの撤退、賃料減額などにより、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、店舗に係る有形固定資産など多額の固定資産を保有しております。出店判断時点での売上予測と売上実績が大きく乖離するなど、店舗の収益性が低下することで各店舗の帳簿価額が回収できない場合については、減損処理を行っております。2023年3月期は739百万円、2024年3月期は2,517百万円の減損損失を計上しており、当社グループは蓋然性の高い出店計画・投資計画を立てるべく取り組んでおりますが、今後も減損損失を計上する可能性があり、当社グループの財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、店舗を含め多数の事業拠点を有しております。各拠点では自然災害や感染症などに対する防災や事業継続性の確保に努めております。しかしながら、想定をはるかに超えた状況が発生し、事業拠点に物理的な損害が生じた場合、当社グループの販売活動や流通・仕入活動が阻害された場合、さらには人的被害が発生した場合などには当社グループの財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) システムトラブル
当社グループは、通信ネットワークやコンピューターシステムを使用し、商品の調達や発注・販売など多岐にわたるオペレーションを実施しております。システムの運用・管理には万全を期しておりますが、想定外の自然災害や事故等により設備に甚大な被害があった場合や、コンピューターウイルスの不正侵入又は従業員の過誤等によるシステム障害が発生した場合は、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、スーパーマーケット事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ24,177百万円増加し、342,409百万円となりました。これは主に、流動資産のその他に含まれている預け金、現金及び預金、売掛金、新規出店・既存店の改装等に係る投資により有形固定資産が増加したためであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ2,111百万円減少し、174,506百万円となりました。これは主に、買掛金、流動負債のその他に含まれている未払費用及び未払金が増加したものの、社債、借入金が減少したためであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ26,289百万円増加し、167,902百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金、新株の発行により資本金及び資本剰余金が増加したためであります。
既存店売上高が大きく増加したことに伴い、当社グループの売上高は前期比で大きく上昇しました。特に当社においては、原料価格などの上昇が続く中で、価格対応を強化するなどにより、トップラインの確保(お客さまの満足度向上)に注力しました。
結果として、利益面では、売上増加を主要因とする営業総利益の増加が販売費及び一般管理費の増加を上回り、当連結会計年度における売上高は595,348百万円(前期比9.9%増)、営業利益は29,328百万円(同11.8%増)、経常利益は28,877百万円(同12.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は18,243百万円(同15.1%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,301百万円増加し、48,079百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は37,163百万円(前期比3,886百万円増)となりました。これは主に、法人税等の支払があったものの、税金等調整前当期純利益及び減価償却費を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は26,785百万円(前期比16,269百万円増)となりました。これは主に、新規出店・既存店改装に係る投資による支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は8,075百万円(前期比176百万円減)となりました。これは主に、長期借入金の返済及び配当金の支払によるものであります。
当社グループは、スーパーマーケット事業の単一セグメントであるため、部門別に販売及び仕入の状況を記載しております。
(注) 総販売実績に対し、10%以上に該当する販売先はありません。
(注) 上記の金額は、実際仕入額によっております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、「地域のすべての方々の食生活をより豊かに、より楽しく」を長期ビジョンとして掲げ、企業価値の創造と持続的な成長に向け取り組んでおります。消費者の価格ニーズが一層高まるなか、「消費の二極化」が加速することを想定して、グループ全体で価格対応を進めてまいります。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に加え、雇用・所得環境が改善するなかで、緩やかな回復傾向がみられました。一方で、世界的な金融引き締めによる景気の下押しリスクや、長期化するウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化により先行き不透明な状況が継続しております。
食品スーパーマーケット業界においても、オンライン取引を含め、業界の垣根を越えた厳しい競争に加え、商品の値上げや円安基調が強まり、原材料、人件費をはじめとした各種コストの高騰は継続し、極めて厳しい状況が続いております。
こうした環境下、当社は「ミールソリューションの充実」と「価格コンシャスの強化」を基本方針とし、第10次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の最終年度としてメインテーマである「『2割強い店づくり』の実現」に向け、「価格対応」、「個店の販売力強化」、「独自の商品開発・開拓」、「生産性の向上」の重点施策に取り組んでまいりました。
[商品・販売戦略]
商品面につきましては、当社の独自化・差別化につながる品揃えを実現するべく、ミールソリューションの充実に注力しております。また、バリューチェーン全体で競争優位を実現するため製造小売業へ踏み込み、SPA型の商品開発の拡大を図っております。さらに、豊かで楽しく健康的な食生活の更なる充実に向けて、 プライベートブランド Yes!YAOKOに新たな健康ライン「Happiness(ハピネス)」を加え、11月より順次展開しております。
販売面につきましては、二極化対応を継続し、価格コンシャスを強化してまいりました。「厳選100品」やカテゴリー別価格対応、生鮮の頻度品などで価格政策に取り組んでおります。同時に、技術力を高めることで魅力的な売場づくりに注力いたしました。また、集客強化を図るべく、単品量販を推進する「日本一企画」、地方の特産品を品揃えする「産地フェア」や、イタリア大使館貿易促進部とパートナーシップを結び、直輸入商品を中心とした「イタリアフェア」を全店で実施いたしました。昨年3月から導入開始したキャッシュレス決済サービス「ヤオコーPay」は6月から全店展開となり、お客さまのお買物の利便性を高めるべく、取組みを推進しております。
[運営戦略]
生産性向上のために、自動化による業務改善やデジタルを活用したカイゼンに取り組んでおります。グロッサリー商品を対象としたAIによる需要予測に基づく自動発注システムの活用は順調に推移し、生産性向上に寄与しています。また、レジ部門においてはフルセルフレジの導入を進めております。
昨年2月に新設した草加物流センター(埼玉県草加市)は、初となる自社WMS(倉庫管理システム)や店舗及び構内作業軽減のため順立てシャトル、GTPシャトルを新たに導入し、順次管轄店舗を拡大、安定稼働を図ってまいりました。
また、循環型社会に向けて廃棄削減、節電、リサイクル推進の取組みを継続しております。エコセンターにおいては、当初想定以上の稼働が続いておりますが、店舗での資源回収の更なる向上を図り、活用拡大してまいります。
[育成戦略]
カイゼンと並行して、働き方に対する意識改革や労働環境を改善する取組みを継続しました。
主体的な成長を促し、働きがいにつながるよう階層別教育機会の見直しを行い、セミナー、研修を実施しております。また、女性活躍のための働きやすさ改善を図ってまいります。
さらに、70歳まで働ける健康づくりの推進などの健康経営にも取り組んでおります。
[出店・成長戦略]
当連結会計年度は、8月にスクラップ&ビルドにより深谷上野台店(埼玉県深谷市)をリニューアルオープン、11月に松戸上本郷店(千葉県松戸市)、2月に東大和清原店(東京都東大和市)と横浜天神橋店(神奈川県横浜市)、3月に川崎枡形店(神奈川県川崎市)を開設いたしました。加えて、既存店の活性化策として、11店舗の大型改装を実施しております。
また、店舗を拠点とするヤオコーネットスーパーは6店舗追加し、24店舗で展開しております。
当社グループは各々が独自の「強み」を磨くことを企図し、各社が独立運営を行っております。株式会社エイヴイでは、「圧倒的な低価格」と「徹底したローコスト運営」を基本方針とし、その具現化を図る施策や取組みを鋭意進めております。また、株式会社フーコットにおいては、「美味しいもの、圧倒的な品揃え、低価格とそれらを支えるローコストオペレーションの徹底追求」を経営方針とし、今期に開設した深谷店(埼玉県深谷市)と三芳店(埼玉県入間郡三芳町)を含め、埼玉県を中心に5店舗を運営しております。
また、持分法適用会社である株式会社せんどうとは、互いの強みを学びながら、具体的な取組みとして、デリカ商品の供給を進めております。
2024年3月31日現在の店舗数は、グループ全体で205店舗(ヤオコー187店舗、エイヴイ13店舗、フーコット5店舗)となっております。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は595,348百万円(前期比9.9%増)、営業利益は29,328百万円(同11.8%増)、経常利益は28,877百万円(同12.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は18,243百万円(同15.1%増)となりました。
ロ 目標とする経営指標に基づく経営成績等に関する分析
当社グループの目標とする経営指標につきましては、「売上高経常利益率4%以上」の継続的な確保を目指しております。
上記「イ 経営成績の分析」に記載しております戦略課題に取り組んだ結果、新規出店及び既存店売上高の増加により、当連結会計年度における売上高は595,348百万円(前期比9.9%増)となりました。利益面につきましては、売上高の増加を主因とした売上総利益及び営業収入の増加が、人件費や地代家賃などの増加による経費増を上回った結果、営業利益は29,328百万円(前期比11.8%増)となりました。
結果として、当連結会計年度における売上高経常利益率は4.9%となり、当社グループが目標とする経営指標を達成することができました。
当連結会計年度においては、物価上昇が続き、消費の二極化が進む中で、当社グループ全体で価格対応を進めました。当社においては、節約志向に対応した価格強化や企画を通じた販売力の強化などにより、一品単価の上昇に加え、客数の増加により、既存店売上高の昨年比は107.7%と好調に推移しました。また、ディスカウント業態のフーコットについては新規出店を行い、エイヴイの既存店売上高も大きく上昇しました。
なお、物価上昇や所得格差拡大の影響により、中長期的には更なる消費の二極化が想定されます。また、人手不足の深刻化、建築費や金利の上昇に伴う新店や改装投資の負担増加、業態の垣根を越えた競争の激化など、引き続き当社を取り巻く経営環境は不透明な状況が見込まれます。
当社グループは、主として営業活動により得られた資金のほか、金融機関からの借入及び社債の発行により必要資金を調達しており、新規出店、既存店の改装等の設備資金及び店舗運営費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要に対応しております。
当連結会計年度においては、業績の堅調な推移により安定的にキャッシュ・フローを創出できた結果、十分な流動性を確保しているものと考えております。当社グループでは、財務健全性を図りながら、適正な株主還元と厳しい競争環境を勝ち抜くための成長投資を継続していく計画であります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、当社グループの経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績、現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項」に記載しておりますが、以下の会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。
イ 固定資産の減損
当社グループは、店舗に係る有形固定資産をはじめとする多額の固定資産を保有しており、店舗の収益性が低下するなど、固定資産の回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に減損処理を行っております。回収可能価額の評価にあたっては、資産グループの時価や割引後将来キャッシュ・フロー等様々な仮定を用いて合理的に見積りを行っておりますが、今後、地価等の大幅な下落や店舗を取り巻く競争環境の激化等、想定を上回る変化が生じた場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
ロ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の計上にあたっては、回収可能性を考慮して、繰延税金資産総額から評価性引当額を減額しております。繰延税金資産の回収可能性については、当社グループの業績の推移などから将来の課税所得を合理的に見積り判断しておりますが、今後、課税所得の予測に影響を与える変化が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
ハ 退職給付費用及び退職給付債務
退職給付費用及び債務は、割引率、死亡率、退職率等の数理計算上の前提条件に基づき算出しております。今後、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合には、将来の退職給付費用及び債務が変動する可能性があります。
ニ 資産除去債務の計上
当社グループは、主に店舗用に賃借した土地建物において、不動産賃借契約に基づき返還時に必要とされる原状回復義務等に備えるため、資産除去債務を計上しております。計上にあたっては、過去の実績を基に算定した原状回復費用の見込み額を現在価値に割り引いて算出しているため、今後、過去の実績と実際の原状回復費用が異なる場合や見積りに影響する新たな事実等が発生した場合には、資産除去債務の見積り額が変動する可能性があります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。