文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断したものです。
(1) 会社経営の基本方針
当社は創業以来、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」ことを経営基本方針の中心に据えて事業を進めてまいりました。今後も、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、社会課題に正面から向き合って、新しい価値を創造することを目指してまいります。地球環境問題をはじめ、さまざまな社会課題に正面から向き合い、社会の発展や課題解決に大きな貢献を果たすために、事業競争力を強化し、株主の皆様や投資家、お客様、取引先、従業員をはじめとするすべての関係者の皆様にご満足いただけるような価値提供を通じて、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(2) 会社の経営戦略と対処すべき課題
当社の使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けては、喫緊の課題である地球環境問題を筆頭に、様々な社会課題を解決しなければなりません。そこで当社は、グループ共通の戦略として「地球環境問題の解決」と「お客様一人ひとりの生涯にわたる健康・安全・快適」の領域において競合を超えるお役立ちを果たしてまいります。
2024年度においては、イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心に、これまでの金融引き締めによる実体経済への影響などが懸念され、世界経済の先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、設備投資需要が堅調に推移し、実質賃金の改善を背景に個人消費も持ち直すことが期待される一方で、こうした世界経済の動向が懸念材料となっています。
このような経営環境のもと、当社は2022年度から取り組む中期戦略の最終年度として、ROE(株主資本利益率)向上に資する取り組みに注力していきます。特に、投資領域と定めた車載電池・空質空調・SCMソフトウェアの3事業について、事業基盤をより強固にするために収益性の向上に取り組んでいきます。また、人的資本経営や競争力強化のスピードを加速する取り組み(現場革新活動・PX(注)など)によるグループ全体の経営基盤強化も進めていきます。
(注) PX (Panasonic Transformation):DX(デジタルトランスフォーメーション)を核としたパナソニックグループ横断の取り組みで、ITシステムの変革に留まらない、経営基盤強化のための重要戦略として推進。
<中期経営指標(KGI:Key Goal Indicator)と進捗>
事業の競争力を徹底強化し、キャッシュ創出力を向上。
・累積営業キャッシュ・フロー :2.0兆円(2022-2024年度)
・ROE(株主資本利益率) :10%以上(2024年度)
・累積営業利益 :1.5兆円(2022-2024年度)
2023年度の経営成績は、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。上記中期経営指標に対して、2022年度は営業キャッシュ・フロー 5,207億円、ROE 7.8%、営業利益 2,886億円であり、2023年度は営業キャッシュ・フロー 8,669億円、ROE 10.9%、営業利益 3,610億円でした。2024年度の見通しでは、ROEと累積営業利益は未達が見込まれる一方で、累積営業キャッシュ・フローは達成が視野に入ってきています。これは、各事業が当初想定通りの収益力を付けられなかったものの、キャッシュ・フロー重視の経営が定着したものと認識しています。
今後は各事業の成長性を見極め、ROIC(投下資本収益率)に基づいて厳格に全ての事業を管理し、次期中期戦略に向けて成長性と収益性を軸とした事業ポートフォリオマネジメントに取り組んでまいります。これらの活動を通して、中長期的に収益成長を果たすグループへと変革してまいります。
<投資領域の事業基盤強化>
・車載電池事業
当社の重点投資領域である車載電池事業の市場において、長期的にはモビリティの電動化は進行するも、当社が注力する北米市場では、自動車メーカー各社の車両ラインアップ拡充戦略の転換により、バッテリーEV市場の一時的な減速が起こっています。
そうした中で、当社は車載電池事業での強固な競争基盤の構築に向け、日米における顧客拡大に伴う供給基盤の拡充や各工場における生産性の向上、高容量を実現した4680サイズの開発を始めとする技術基盤の強化を継続して進め、ROIC(投下資本収益率)の改善を図ります。また、投資戦略については、顧客需要に基づき柔軟かつ慎重に決定してまいります。
・空質空調事業
欧州市場において、ヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)の市場環境は、ガス価格の高騰が落ち着き、補助金施策の見直しや欧州景気の悪化を受け、足元の成長は鈍化しているものの、環境規制が先行する欧州では、中長期的に需要拡大へ転換すると見込んでいます。
そうした中で、当社は、需要回復に備え、インストーラー(設置事業者)との関係強化やインストーラーに選ばれる価値訴求をした商品力強化など、シェア獲得に向け着実に手を打ち、この領域での当社のポジションを優位なものとするための基盤強化を継続推進してまいります。
・サプライチェーンマネジメントソフトウェア事業
当社の連結子会社である米国ソフトウェア会社Blue Yonder Holding, Inc.が進める改革を継続して推進してまいります。具体的には、R&D強化による商品力向上やお客様接点の強化などの事業基盤強化の継続や、M&Aによる商品力強化やリアルタイムに多方向でデータ連携ができるSCMプラットフォームの提供により、競争基盤の強化を進めてまいります。そして、パナソニック コネクト㈱の強みである現場のエッジデバイスから得られる様々なデータとの連携による自律化ソリューションによって、さらなるお役立ちを果たしてまいります。
<事業ポートフォリオマネジメント>
株主の皆様やお客様、お取引先様、従業員を含む全ての利害関係者の幸せとグループの価値向上に向けて、1つ目の判断軸にグループ共通の戦略との適合性を、2つ目の判断軸に将来の変化を見越した事業の立地・競争力を置き、3つ目の判断軸にはベストオーナーの視点を考え方に据えて、事業ポートフォリオの見直しや事業構造の組み換えを推進しています。
さらには、事業ポートフォリオの見直しを進めていく上で、各事業の立地・競争力を管理するため、2022年度からは各事業会社の財務健全性を評価し、キャッシュ・フローを重視する経営を定着させてきました。2024年度からは、これに加えて各事業が強固な収益体質を構築するためにROIC(投下資本収益率)での管理を厳格化していきます。
そして、ROICが事業別WACCを下回り、かつ成長性のない事業を課題事業と位置付け、そうした課題事業を2026年度までにはゼロにしていきます。また、事業別WACC+3%ポイントを超えるROIC水準を全事業で目指してまいります。
車載電池事業、空質空調事業、サプライチェーンマネジメントソフトウェア事業は、それぞれエナジーセグメント、くらし事業セグメント、コネクトセグメントの事業です。なお、セグメント毎の成長戦略については、2024年6月にPanasonic Group事業会社戦略説明会2024を開催し、説明資料を当社ウェブサイトに掲載していますのでご参照ください。
https://holdings.panasonic/jp/corporate/investors/presentations.html
文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断したものです。
(1) ガバナンス
当社グループでは、グループCEOが委員長を務め、委員長から任命を受けた執行役員及びグループ会社の役員等によって構成されるサステナビリティ経営委員会を原則月1回開催しています。
サステナビリティ経営委員会は、取締役会の監督の下、当社グループのサステナビリティに関する重要テーマについての議論・方向付けを行い、グループ経営会議等を通してグループ全体に展開・徹底しています。また、その内容は必要に応じて取締役会においても報告・共有されグループとしての意思決定につなげています。
(2) リスク管理
当社グループは、財務及び社会への影響の視点で、重要な機会とリスクをマテリアリティとして特定しています。
マテリアリティの特定にあたっては、まず、社会からの要請や予見される将来課題等から、機会及びリスクになる課題を抽出しました。次にこれらについて、当社グループ及びステークホルダー視点で重要度評価を行い、最重要課題及び重要課題を抽出しました。このプロセス及び抽出したマテリアリティについて社外の専門家との対話を通じて妥当性を確認し、当社グループのサステナビリティ経営委員会、グループ経営会議、当社取締役会での議論を経て、マテリアリティを特定しました。
このマテリアリティをもとにサステナビリティの取り組みを推進し、新たな事業機会の活用とリスクの低減を通じて、サステナビリティ経営の向上を図っていきます。また特定したマテリアリティは、今後の環境変化やステークホルダーとの対話を踏まえ、適切に見直していきます。
当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを管理するエンタープライズリスクマネジメント
(全社リスクマネジメント、「ERM」)の取り組みについては「
(3) 戦略、指標及び目標
当社グループは、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献すること」を経営基本方針の中心に据え、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現を目指しています。この経営基本方針の実践こそが、当社にとってのサステナビリティ経営であると考えています。
その中で、グループ共通戦略として、「環境」と「くらし」の領域で新しい事業機会を最大限に活用し、持続的な価値創出を目指します。「環境」の領域では、「地球環境問題の解決」へのお役立ちのために、2022年度に長期環境ビジョン“Panasonic GREEN IMPACT”を掲げ、取り組みを進めています。「くらし」の領域においては、「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」へのお役立ちのために、多様なお客様一人ひとりにあった価値を提案できる
“くらしのソリューション・プロバイダー ”となることを目指し、グループの総合力を発揮していきます。
一方、様々なリスクを低減し、持続的に価値を創出していくための経営基盤の強化を図ります。これら、グループ共通戦略及び経営基盤の強化におけるマテリアリティのうち、最重要課題とその指標及び目標は以下の通りです。
「
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マテリアリティ |
指標 |
目標 |
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グループ |
地球温暖化進行と |
CO2削減インパクト |
3億トン |
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全工場 CO2排出量 |
実質ゼロ |
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廃棄物リサイクル率 |
99%以上 |
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お客様一人ひとりの生涯にわたる |
継続検討 |
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持続的に価値を創出 していくための基盤 |
ビジネス |
重大なコンプライアンス違反の発生 |
0件 |
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自社の |
継続検討 |
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社員の ウェルビーイング |
重篤災害・重大災害の発生 |
0件 |
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「従業員意識調査」の社員エンゲージメント/社員を活かす環境 |
グローバル 最高水準 (2023年80%以上) |
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コーポレート・ |
株主との建設的な対話の充実 |
実施 |
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取締役会実効性評価の実施と改善施策への取組み |
実施 |
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PHD取締役会の社外取締役比率 |
1/3以上 |
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業績連動型役員報酬における非財務指標の採用 |
実施 |
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人権の尊重 |
当社グループ各社に対する人権デュー・ディリジェンスにおいて特定された、強制労働につながり得る課題の是正推進 |
実施 |
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外国人移住労働者を雇用する当社グループ拠点に |
100% |
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サイバー |
セキュリティ意識の向上と行動変容を促進するための全従業員向けの教育・訓練の実施 |
年4回以上 |
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専門チームによる脅威情報・脆弱性情報の定常的な |
実施 |
||
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サイバー攻撃を想定した専門チームによるインシデント対応訓練の実施 |
年1回以上 |
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重大インシデント発生件数 |
0件 |
||
上記の指標及び目標については、事業環境の変化等を踏まえて、適時適切に見直しを実施しており、継続検討中の
指標及び目標については、来年度以降、随時開示をしていきます。
(4) サステナビリティに関する取り組み紹介
①地球環境問題
当社グループは、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、2022年に長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を発表しました。目指すゴールは、責務としてスコープ1~3(注)1にあたる自社グループバリューチェーン(注)2におけるCO2の排出を実質ゼロにすることによる排出削減1.1億トンに加え、事業活動を通じた社会への排出削減貢献2億トンにより、2050年に全世界の排出総量の約1%にあたる3億トン(注)3以上の削減インパクトを創出することです。
PGIがゴールと定める削減インパクトの2/3を占める削減貢献量は、自社の技術や製品、サービスを使用した場合にどれだけのCO2削減効果が見込めるかを推定する指標です。当社グループは、この削減貢献量が企業の脱炭素への貢献として適切に評価されるよう、国や業界・金融界を巻き込んで、その社会的意義・国際標準化の必要性の議論を先導しています。2023年8月に発行したサステナビリティデータブックでは、削減貢献量の事例や算定式などを初めて開示しました。IEC(国際電気標準会議)・GXリーグ(注)4・WBCSD(持続可能な発展を目指すグローバル企業団体)での標準化活動やガイダンス作成に参画する他、これまで様々な国際イベントで発信し続けてきた成果として、2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、及び5月のG7広島首脳サミット、それぞれの成果文書において「削減貢献量を認識することに価値がある」「脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取り組みを奨励・促進」と明記されるに至りました。その後も2023年11月にドバイで開催されたCOP28(注)5において、PGIを実現する先進環境技術の展示やセミナー、及びパネルディスカッションへの登壇を通じ、削減貢献量の意義や国際標準化の必要性などを発信しました。
事業を通じて地球環境問題解決に貢献していく、という決意を込めたPanasonic GREEN IMPACTが目指すゴールには、カーボンニュートラルとともに、サーキュラーエコノミー(CE)(注)6の実現も含んでいます。2022年に公表した環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」では、脱炭素に向けた目標設定に加え、CEの実現につながる工場廃棄物のリサイクル率(99%以上を維持)、再生樹脂の使用量(2022~2024年3年累計9万トン)、CE型事業モデル数(2024年までの累計13事業)の目標も設定しています。更にグループにおけるCEへの取り組みを加速させるため、2023年12月に「サーキュラーエコノミーグループ方針」を策定し、各事業会社の事業特性に応じたアプローチでの課題の特定や、長期戦略・中期行動計画の策定を進めています。
わたしたちの次の世代、さらに未来の世代にわたって、人々が安心してこの地球でくらしていけるよう、今後も事業活動を通じて、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みをグループ一体となり加速していきます。
なお、当社グループは2019年5月にTCFD(注)7提言への賛同を表明しています。
当社グループは、マテリアリティ特定プロセスを経て、地球温暖化進行を当社グループにおける最重要課題とし、気候変動に関するリスクと機会の特定にあたっては、TCFD提言を踏まえ、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントを実施することを想定し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。
<TCFD提言に基づく開示>
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ガバナンス |
当社グループでは、環境経営推進体制のトップには取締役会が位置しており、グループ環境経営について取締役会への報告を実施しています。 グループCEOと事業会社社長などの経営幹部が出席するグループ経営会議で確認し、方向性や課題、特に重要な施策について意思決定しています。特に重要内容は取締役会に諮られています。グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」は、このプロセスを経て、2022年4月に発信しています。グループの環境経営活動の推進にあたっては、2021年12月に設置された、 グループCEOが主宰するサステナビリティ経営委員会での意思決定を通じて、グループ全体で 連携して推進できる体制を構築しています。 |
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戦略 |
気候変動がもたらす影響について、当社グループ事業のリスクと機会を把握した上で、影響の ある項目について当社グループ事業へのインパクト分析を行い、最も影響のある項目を軸に 2030年を想定した社会シナリオを策定し、そのシナリオに対応した戦略を検討し、当社グループの戦略のレジリエンスを検証しました。 |
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リスク管理 |
当社グループは環境リスクを継続的に低減させていくためのマネジメント体制として、事業会社ごとの環境リスク管理体制を組織し、グループ全社のリスクマネジメントの基本的な考え方に則り、毎年度、環境リスクの洗い出しとグループ全社リスクマネジメント推進、及び環境リスク発現時の迅速な対応を進めています。また、当社グループでは、パナソニックホールディングス㈱(PHD)及び事業会社で同一のプロセスに基づくリスクマネジメントを推進しています。 PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会では、当社グループの経営・事業戦略と 社会的責任の観点から審議を行い、グループ重要リスクを決定します。2024年度は、グループ 重要リスクのうち、戦略リスクとして気候変動・環境規制/サーキュラーエコノミーの進展、 オペレーショナルリスクとして自然災害、サプライチェーンマネジメントが取り上げられています。 |
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指標と目標 |
当社グループは、温室効果ガス(GHG)削減の中長期の目標を設定し、2017年10月にSBT(注)82度 目標として認定を受けました。さらに、新たに設定したGHG削減目標が2023年5月に1.5度目標の認定を受けました。(下記の表を参照) |
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GHG排出量目標(SBT1.5度目標認定) |
目標 |
目標進捗率 |
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当社グループ事業活動における排出量 (スコープ1、2) |
2030年に90%削減(2019年度比) |
23% |
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当社グループ製品使用に伴う排出量 (スコープ3) |
2030年に30%削減(2019年度比) |
― (注)9 |
(注)1 スコープ1~3 :国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告の基準である「温室効果ガス(GHG)プロトコル」の中で設けられている排出量の区分。スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ1、2以外の事業者の活動に関連する他社の排出
2 バリューチェーン :原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスにいたるまでの企業の一連の事業活動
3 全世界の排出総量の約1%にあたる3億トン以上:2020年エネルギー起源CO2排出量(出典:IEA)による(CO2削減貢献量の排出係数は2020年基準)
4 GXリーグ :カーボンニュートラルにいち早く移行するための挑戦を行う企業群が官・学・金と一体となり経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)のための議論と新たな市場創造を実践する場として経済産業省が設立した枠組み
5 COP28 :第28回 国連気候変動枠組条約締約国会議。気候変動問題解決に向けた国際会議として約200カ国・地域等が参加
6 サーキュラーエコノミー(CE) :循環経済。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化するなど、モノのシェアリングやサービス化で資源の有効活用を図る経済システム
7 TCFD :Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けて、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、2017年に提言を公開
8 SBT :Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満、できれば1.5度未満に抑えるという目標に向け、科学的知見と整合した削減目標
9 ― :算出対象製品拡大による排出量増加のため進捗率は算出せず
なお、サステナビリティデータブック2024年3月期版は2024年9月頃に下記のウェブサイトに掲載予定です。
https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/data-book.html
②人事戦略
当社グループは、創業以来、人材を重要な資本として捉える「人的資本経営」の考え方を大切にしてきました。それは一人ひとりが自主責任感に基づき挑戦する社員稼業と、互いに言うべきことを言い知恵を出し合う衆知経営からなる自主責任経営です。私たちはこの経営基本方針の実践をグループ共通の経営戦略とした上で、事業会社が競争力を磨き上げることで「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を具現化していきます。
そこで当社グループ共通の「一人ひとりが活きる経営の心構え」(後述)では「人財を預かる全ての人」と「組織を預かる全ての責任者」の心構えを定めています。そして、社員一人ひとりが理想の社会実現に向けて経営基本方針の実践を目指すための行動指針としては「Panasonic Leadership Principles(PLP)」(下記)があります。私たちは具体的な行動を通じて、より高い付加価値を社会に創出していきます。
そしてこの付加価値を高める重要な4つの要素が、「ケイパビリティ(階層別の能力開発)」「社員エンゲージメント(自発的な挑戦意欲)」「社員を活かす環境(能力を活かし、働きやすい環境)」「多様な人材」です。
私たちは、これらの要素の源泉は一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」であると考え、自主責任経営の前提として位置付けています。
この実現をグループ共通の人事戦略とし、「安全・安心・健康に、はたらく。」、「やりがいを持って、はたらく。」、「個性を活かしあって、はたらく。」の3つの柱で取り組みを推進し、付加価値を創出します。
当社グループは、「社員のウェルビーイング」を実現するため3つの柱の取り組みに紐付く指標を設定して、特に「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」を示す指数、女性管理職比率(管理職に占める女性労働者の割合)(日本)、労働災害の件数をグループ共通の最重要指標と定めています。
「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」を示す指数は、「従業員意識調査」で測定する肯定回答率(%)です。これは社員の意識を定点観測する取り組みとして毎年グループ社員を対象に実施している調査(2023年度の回答者数は約15.7万人)です。2030年度にはこの指数をグローバル最高水準(80%以上)とすることを目標としています。調査結果は年々上昇傾向にあり、2023年度の「社員エンゲージメント」指数は68%、「社員を活かす環境」を示す指数は66%でした。
(a)安全・安心・健康に、はたらく。
― 安全・安心・健康な職場づくり
安全・コンプライアンスは事業運営の大前提です。当社グループはパナソニック ホールディングス
㈱の取締役会が制定改訂する「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準(以下、「コンプライアンス行動基準」)」、及びグループCEOが発信する「パナソニックグループ 労働安全衛生ポリシー」において、パナソニックグループで働く人の安全と健康の確保を定めています。労働安全衛生については、モノづくり現場における重篤・重大災害の防止に向けて、設備安全基準の教育の展開・浸透を図るとともに、リスクアセスメントに基づき非定常作業時における安全確保の徹底を図っています。
また、衛生管理においても今般の法改正を踏まえ、化学物質管理の自律化に向けた人材育成と職場管理体制の強化に取り組んでいます。健康については、グループ全体に「健康メッセージ」を発信しています。社員のウェルビーイングの実現に向けた健康投資を強化する方針を明確化するとともに、各事業会社においても従来からの会社、労働組合、健康保険組合が一体となった「健康パナソニック活動」に加え、独自の取り組みにも着手しています。定期健康診断や従業員意識調査、ストレスチェックなどの結果をレビューし、成果の確認を行うとともに、更なる改善と強化につなげていきます。なお、日本では経済産業省が推進する「健康経営優良法人」の取り組みを進めており、2024年3月時点ですべての事業会社が健康経営優良法人として認定されています。さらにパナソニック コネクト㈱及びパナソニック㈱は、ホワイト500(注)に認定されています。
また、コンプライアンス遵守においては、あらためて社員自らの関わる事業・地域に関する法規制についての教育を実施しています。加えて、グローバルホットライン「EARS」等を活用し、問題の早期発見・未然防止について周知徹底を図ると同時に、あらゆるハラスメントの根絶に向けた啓発活動の強化に取り組んでいます。
(注)ホワイト500:大規模法人部門における健康経営優良法人の中で特に取り組みが優良とされる上位法人500社
(b)やりがいを持って、はたらく。
― 自発的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援
当社グループでは前述の通り「一人ひとりが活きる経営の心構え」を定めています。一人ひとりが活きるとは、互いに言うべきことを言い、多様な意見を積み重ねて質の高い意思決定を行い、より高い価値を生み出すことです。「人財を預かる全ての人」及び「組織を預かる全ての責任者」の心構えを次の通り定め、人材育成の基本としています。
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一人ひとりが活きる経営の心構え |
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背景
パナソニックグループの存在意義は「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現です。 一人ひとりが活きるとは、互いに言うべきことを言い、多様な意見を積み重ねて質の高い意思決定を行い、より高い価値を生み出すことです。 そのためには、社員一人ひとりは、それぞれの個性を最大限に発揮し、「社員稼業」を実践すること、そして、組織を預かる全ての責任者は、社員一人ひとりが「社員稼業」を実践できる環境を整え支援するとともに「衆知を集める全員経営」を実践することが求められます。
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位置づけ 本心構えは、「一人ひとりが活きる経営」を実践するために、「人財を預かる全ての人」と「組織を預かる全ての責任者」の心構えを示すものです。なお、「人財を預かる全ての人」とは、役職を問わず人財の成長に関わる全ての人のことを意味します。また、全ての社員に求められる心構えは、信条・七精神を含む経営基本方針に表される通りです。
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人財を預かる全ての人の心構え 1. 一人ひとりの多様な個性を尊重する 2. 一人ひとりの思いを大切に育む 3. 一人ひとりの挑戦を後押しする
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心理的安全性を高め、相互協力の関係性を築くこと 社会へのお役立ちの意欲を喚起し、信頼して任せること 誠意と大きな愛情をもって挑戦を支援し、失敗からの学びを奨励すること
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組織を預かる全ての責任者の心構え 1. 目指す姿を明示すること 2. 成果達成の道筋を共有すること 3. 挑戦への阻害要因を取り除くこと 4. 人への投資を十分に行うこと
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目指す姿を明確にし、対話を通じて共感を高め、実践への意欲を喚起すること あるべき姿に向かう日々の目標と指標を一人ひとりと共有し、参画意識を高めること 内向きな仕事を見直し、「やめる・減らす・変える」を判断すること 一人ひとりが個性を発揮し、力を伸ばすことができる環境を整えること
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なお、経営責任者は一人ひとりが活きる経営の最終責任を負います。
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そして、社員一人ひとりがその個性や能力を最大限に発揮し、働きがいを高められるよう、採用、人材育成、評価・処遇、異動・配置などの様々な場面において一人ひとりの体験価値を高め、挑戦し活躍できる機会づくりを推進しています。
<経営者づくり>
当社グループの持続的な成長を実現するためには、事業を牽引する多様な経営者が必要不可欠であり、そのために中長期にわたる後継者のパイプラインづくりを推進しています。具体的には、パナソニックホールディングス㈱執行役員及び事業会社社長等の26の重要ポストを対象とし、後継者の早期発掘と「適所適材」を基本に、国籍や職歴、性別、年齢等の属性に限らない多様性あふれる経営者づくりを推進しています。そのためにグループ全体最適視点で後継者の発掘・育成・配置・モニタリングを複眼的に議論・推進するグループタレントマネジメントコミッティーを設置し、現在100名規模の後継者のキャリア開発に取り組んでいます。
<PX、GXを推進する人材の育成>
PXとはPanasonic Transformationの略です。お客様サービスと事業オペレーションの2つの側面から形成されるパナソニックのデジタルトランスフォーメーションをPXと称し、ITの変革、オペレーティング・モデルの変革、カルチャーの変革を推進しています。この推進にあたってはすべての経営者がコミットして「7つの原則」を制定し、それぞれの現場でPXを推進する全社員に対する約束としています。その原則の一つに、「現場も含めたグループ内で、データ・テクノロジーを利活用する人材を増やし支援する」があります。これに関し、経営層も含め、社員一人ひとりが各々の現場で、データ・テクノロジーを利活用し、付加価値創出ができるよう知識・スキルの向上を支援していくとともに、PXを推進する専門人材の採用・育成に注力していきます。また、GXとは国が提唱・推進する「Green Transformation」の略です。当社グループは、環境に関する長期ビジョン「PGI」を発信し、サステナブルな地球環境の実現に向けてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどに関わる知見を有する人材の育成を推進しています。
<A Better Dialogue(本人と上司の対話)>
一人ひとりの成長や挑戦を支援するグループ共通の取り組みのひとつが「A Better Dialogue」です。本人と上司との対話の「質」と「量」を高めるこの取り組みは、一人ひとりの想いを引き出す1on1 Meetingに加え、「キャリア・能力開発」、「目標管理」、「コンピテンシーレビュー」の3つの仕組みで構成されています。こうした多様な対話機会の提供を推進し、2023年度は日本では実施率83%、満足度84%となっています。
<公募異動>
一人ひとりの自発的な挑戦意欲、自律したキャリア形成を支援する仕組みの一つが公募異動です。グループ共通の制度としては、eチャレンジ(募集中の案件に対して、応募することができる公募制度)・eアピール(希望する部門に自らアピールすることができる制度)、複業(所属部門に身を置きながら、社内の新しい業務を経験できる制度)があります。2023年度はeチャレンジ・eアピールには募集人員を大きく上回る約1,700名の社員が手を挙げ、うち約500名が挑戦しました。また複業には約50名が挑戦しました。その他、各事業会社でも独自の公募異動が活発化しています。
(c)個性を活かしあって、はたらく。
― Diversity, Equity & Inclusion(DEI)の推進
当社グループは2021年に制定したグループ共通の方針である、Panasonic Group DEI Policyを軸に、3つの視点でDEIを推進しています。1つ目はトップコミットメントです。これは、経営者自らがDEI推進にコミットし、事業戦略に織り込んで推進することです。グループDEI推進委員会を定期的に開催し、経営者と社員の対話を通じてアクションを決定し、取り組みを加速させていきます。2つ目はインクルーシブな職場環境づくりです。これは、社員の多様な個性に気付き、それを活かすマネジメントや組織環境をつくっていくことです。例えばアンコンシャス・バイアストレーニングを各地域で推進しています。3つ目は社員一人ひとりへのサポートです。ジェンダー、LGBTQ+、障がいのある人、高年齢者、また育児や介護を抱える人など、多様な個性を持つ一人ひとりが、それぞれの挑戦に向き合えるよう支援することです。様々な個性に応じたコミュニティの活動展開の支援や制度・仕組みの構築、運用の見直しなどを実施しています。
<ジェンダーの公平性の取り組み>
当社グループでは報酬体系上、性別による格差はありません。一方で、とりわけ日本地域では、上級の管理職や意思決定をする職位において、より多くの女性を登用する必要があることを認識し、多様性の確保に注力しています。このため、前述のインクルーシブな職場環境づくりに加え、評価や登用のあり方について公平性の観点から見直しを図っています。また、女性社員向けの勉強会、女性リーダー向けのキャリアストレッチセミナーの開催、ロールモデルの価値観や仕事観にふれる機会づくりなどにも取り組んでいます。
<妊娠・育児中の社員へのキャリアサポート>
会社制度の理解促進を図るとともに、上司のマネジメントガイドとして妊娠中から育児期まで、それぞれの部下の状況に合わせたコミュニケーションを推進しています。さらに、希望する誰もが育児とキャリアを両立できるようグループ各社において制度の整備と職場風土の醸成に取り組んでいます。具体的にはより安心して休業を取得できるよう、一日単位の有給の育児休暇の新設や、最大2年間の育児休業制度のうち一定期間を有給化するなどの取組みを推進しています。加えて、働く時間と場所の柔軟化など、単に休業という選択肢に留まらず、一人ひとりのニーズに応じて育児と仕事を両立するための制度整備を図っています。
当社グループでは、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを的確に把握し、適切な対策を講じることによって、事業目的の達成と持続的かつ安定的な発展をより確実なものにすることを経営における重要課題と位置づけ、「パナソニックグループリスクマネジメント基本規程」に基づきグループのリスクマネジメント活動を推進しています。
リスクマネジメントの専任部門であるパナソニック ホールディングス㈱(以下、「PHD」)のエンタープライズリスクマネジメント室(以下、「PHD ERM室」)がリスクマネジメント活動を推進し、グループ・チーフ・リスクマネジメント・オフィサーを委員長、PHDの各機能部門のトップを委員とした「PHD エンタープライズリスクマネジメント委員会」(以下、「PHD ERM委員会」)を定期的に開催しています。
当社グループは、短期的な事業目的の達成に向けた事業計画の遂行や日常的な業務遂行において「損失」や「脅威」となる不確実な事象を「オペレーショナルリスク」と定義しています。当社グループでは年1回のサイクルで、外部要因・内部要因の変化等を踏まえて想定されるオペレーショナルリスクを網羅的に洗い出すことで「リスクインベントリー」を更新し、インベントリー上の全てのリスクを対象として、財務・非財務両面の評価軸によるリスクアセスメントを実施しています。PHD ERM委員会では、当該評価を基礎として、当社グループの経営・事業戦略と社会的責任の観点から審議を行い、当社グループの経営上重要かつグループ全体で一定水準以上の管理が必要なリスク(以下、「グループ重要リスク」)を決定します。決定したグループ重要リスクについては、当該リスクを担当する機能部門が中心となって、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングに取り組む中で、継続的な改善を目指しています。
オペレーショナルリスクのマネジメントに加えて、当社グループでは、中長期的な事業目的の達成に向けた事業戦略の策定・意思決定に際して考慮すべき「機会」又は「脅威」となりうる不確実な事象を「戦略リスク」と定義し、リスク許容度に応じた適切なリスクテイクを推進するリスクマネジメントを実施しています。戦略リスクに関しては、事業戦略に影響する可能性のあるリスクについて、リスクシナリオから「機会」もしくは「脅威」、又はその両方になりうる事象の単位まで管理対象を細分化することにより、当該リスクを担当する機能部門を特定しています。当該事象に対しては、不確実性及び発現した際の影響度の評価を行い、必要な事象については対応策を策定・実行し、それ以外の事象についてはリスク発現の予兆を捉えるための先行指標の設定及び定期的なモニタリングの対象とし、外部環境の変化等に応じた適時の対応を講じることとしています。このように、当社グループでは、対象となる時間軸や影響の種類に応じたリスクマネジメントを推進することで、事業とリスクの一体的な管理に貢献し、事業競争力強化に結びつけることを目指しています。
PHD ERM委員会は、これらのリスクマネジメントのPDCAサイクルに基づき、グループ重要リスクや対応策の進捗状況等を定期的に取締役会及びPHD戦略会議に報告しています。また、内部監査機能が連携し、リスクアセスメント結果に基づき選定したテーマによる監査を実施しています。
また、各事業会社においても、「事業会社ERM委員会」を設置し、自主責任経営のもと各事業会社グループのリスクマネジメント活動を同様のサイクルで推進しています。各事業会社では、グループ共通のリスク項目にそれぞれの事業領域に応じたリスクを追加したリスクインベントリーを用いてリスクアセスメントを実施し、事業会社経営上の重要リスク(以下、「事業会社重要リスク」)を決定します。
そして、各事業会社では、決定されたグループ重要リスク及び事業会社重要リスクに対して、対応策の策定・実行及び進捗状況のモニタリングを実施します。特にグループ重要リスクに関しては、グループで共通の対策に加えて、各リスクを担当する事業会社の機能部門がPHDの機能部門と連携し、当該事業会社の事業領域に応じ必要な独自の対応策を策定・実行します。PHDの機能部門は各事業会社におけるグループ共通及び独自の対応策の進捗状況をモニタリングすることで、当社グループ全体でリスクが適切に管理されていることを確認し、必要な場合は適宜対策の見直しや徹底を促しています。
加えて、当社グループでは、適切かつ健全なリスクテイク及びリスクコントロールを志向する「リスクカルチャー」を醸成するため、入社時及び海外赴任前の従業員を対象として、リスクマネジメントの基本的な考え方や危機発生時の対応等に関する研修を実施しています。グループの成長及び将来にわたる社会の発展に貢献するため、従業員一人ひとりのリスク対応力向上を図っています。
このような枠組みにより、PHDでは当社グループ全体のリスクマネジメントの推進及び高位平準化を図っています。
[リスクマネジメント体制図]
[リスクマネジメントプロセス]
なお、当社グループの2024年度の主なグループ重要リスクと、それらの「3 事業等のリスク」における記載箇所は下記のとおりです。
[グループ重要リスク(オペレーショナルリスク)]
[グループ重要リスク(オペレーショナルリスク・戦略リスク)該当項目]
事業活動に影響を与える可能性のあるリスク(グループ重要リスクを含む)のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。当社グループの事業、業績及び財政状態は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりです。なお、下記「(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク」及び「(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク」については、事業活動に影響を与える可能性の程度に応じて、「特に重視しているリスク」及び「重視しているリスク」に分けて記載しています。また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断したものです。
(1) 経済環境に関するリスク
経済状況の変動
当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国又は地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。2024年度の経営環境は、日本において設備投資需要が堅調に推移し、実質賃金の改善を背景に個人消費も持ち直すことが期待され、緩やかな持ち直しが見込まれますが、世界経済は中東情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心にこれまでの金融引き締めによる実体経済への影響が懸念され、先行きの見通しにくい状況が続き、当社グループはこうした影響を少なからず受けるとみられます。このようなリスクに対処するため、新たに事業構造改革の実施が必要となった場合、それによる費用増大等の可能性があります。
世界経済が想定以上に悪化する場合や、急激な社会の構造的変化、消費者の消費行動変化が起こる場合等には、当社グループを取り巻く経営環境が現在の予想よりも厳しくなる可能性もあり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
このような経営環境の変化に対して、当社グループは今後も影響を見極めつつ適切な対応策を取ってまいります。
為替相場の変動
外貨建てで取引されている製品・サービス等のコスト及び価格は為替相場の変動により影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。加えて、海外の現地通貨建ての資産・負債等は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、為替相場の変動による影響を受けます。当社グループでは総じて、現地通貨に対する円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響を及ぼしますが、一部通貨に対する円安は、輸入商品価格の上昇を通じて、事業によっては業績に悪影響を及ぼすこともあります。
2023年度は、前年度と比較して、ドルやユーロに対して円安に動いたことによる輸出影響が大きく、全体として業績に対して好影響を及ぼしました。また2024年度については、年間を通してドルやユーロに対して円高に動くと想定しており、全体としては業績に対して一定の悪影響が生じることを見込んでいます。しかしながら、為替相場に過度な変動があった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が大きな悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、事業活動を通じて得た外貨を同一外貨建ての支出に充てる「為替マリー」や、将来における外貨の売却価格もしくは購入価格と数量を事前に契約しておく「為替予約取引」、消費地に近い地域で製品の生産を行う「地産地消型製造」等により、経営への影響の軽減を図っています。
金利の変動
金利の変動により支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値が影響を受けるため、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループは事業資金等を円及び他通貨での有利子負債等により調達しており、国際的な政情不安等による経済情勢の変化を受けた金融市場の不安定化や、金融政策の変更等により金利が上昇した場合、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
資金調達環境の変化
当社グループは、事業資金等を社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。当社グループは、国際的な政情不安等、様々な外的要因により金融市場が不安定となり、又は悪化した場合、あるいは格付機関による当社の信用格付の引下げ等の事態が生じた場合、必要な資金を必要な時期に適当と考える条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、資金調達コストが増加する可能性があり、それにより、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループでは、事業の競争力強化や運転資本の圧縮等を通じて、事業からのキャッシュ・フロー創出力向上を図るとともに、保有資産の見直し等のバランスシートからの資金創出に継続的に取り組む等、資金創出力の強化に努めています。なお、2024年6月に複数の金融機関との間で期間を3年間とする総額6,000億円のコミットメントライン契約(注)を締結しており、現金及び現金同等物の残高とあわせて十分な流動性を確保することで経営への影響の軽減を図っています。
(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約
株式価値の下落
当社グループは、金融資産の一部として国内外の企業等の株式を保有していますが、株価下落等の株式価値の減少により、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。
(2) 当社グループの事業運営活動に関するリスク
a. 特に重視しているリスク
国際的な事業運営における障害
当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略のひとつとしていますが、海外では為替リスクに加え、政情不安(テロ・戦争等を含む)、経済動向の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。また、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入規制や外国為替規制の変更、税率変更等を含む税制改正及び移転価格課税等の国際課税リスク、海外での商慣習の差異といったさまざまな政治的、法的その他の障害に遭う可能性があります。
特に、昨今の貿易規制・経済制裁に関する各国の法規制の変更は、グローバルに生産拠点を持ち、製品を供給している当社グループの事業に大きな影響を与えます。当社グループはこうした動向を注視し、グローバルで連携して日々の情報収集及びITの活用により、当社グループの事業に影響のある新たな貿易規制・制裁を早期に把握し、グローバルポリシー、ガイダンスを適宜更新する等の対応や、新たな規制分野で対象となる貨物・技術の該非判定を徹底して実施しています。また、社内への周知徹底、取引リスク回避のための対応策の発信等、国内外の従業員啓発にも取り組み、ガバナンス及びコンプライアンスのさらなる強化に努めています。
また、経済安全保障分野については、各国で産業基盤強化の支援やサプライチェーンの強靭化、先端的な重要技術の研究開発、機微技術の流出防止や輸出管理強化等の施策の推進・強化が進められる中、我が国でも2022年に成立した「経済安全保障推進法」が施行されています。今後の経済安全保障政策の動向が当社グループの事業に与える影響を絶えず注視しながら対応をしてまいります。
地政学リスクについては、国際情勢に加えて欧米諸国、中国等の政策・法規制の動向に関するモニタリングを通じて、当社グループの事業への影響の把握及び適時の対応に努めています。米中対立に関しては、貿易摩擦に端を発する市場のデカップリングや各国の経済安全保障政策の強化、世論の対極化等に起因する事業環境の急激な変化によって、グローバルに生産拠点や市場を有している当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、特定重要物資の重要鉱物のうち、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の主要負極材料である黒鉛に関しては、当社の子会社であるパナソニック エナジー㈱が、北米企業及び北米に供給拠点を持つ企業との間で供給契約を締結するなど、北米でのサプライチェーン強靭化及び電池材料生産時の環境負荷低減の実現に努めています。他方で、このような取り組みの推進にかかわらず、米中対立に伴うさらなる輸出規制の強化やサプライチェーンの多角化が進まないことによって、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。ロシア・ウクライナ情勢に関しては、これまでの当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微でしたが、軍事侵攻が長期化する中、エネルギー・原材料価格のさらなる高騰等によって、今後、事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、中東情勢の緊迫化に関連し、それ以外の国・地域を含む国際情勢が不安定化することで、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの国家間・地域内の対立や武力行使等の激化に加えて、各国の政権交代や政策転換等に伴って政治的・社会的混乱が広がった場合、事業環境の変化がさらに加速又は不透明化し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、中長期的視点でのサプライチェーンの複線化や製品の地産地消も見据えた生産体制の点検・再構築に取り組んでいくとともに、こうした動向について、事業に対する脅威及び各国の経済安全保障政策に基づく税制関連措置の活用等の機会も含めて引き続き注視してまいります。
環境問題・気候変動
当社グループでは、気候変動を含む地球環境問題の解決は、当社グループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」という遠大な使命の中で最優先で取り組むべき課題であると考えています。
特に重視しているリスクとして、環境問題への意識の高まりに伴う、国際社会での環境規制・政策の導入・拡大があげられます。2023年3月に国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、パリ協定に基づく世界のCO₂ 排出削減量の達成に向けたさらなる段階的な目標を示したことで、企業の取り組みにも一層の加速が求められています。また、欧米をはじめとした、電気・電子機器に関するリサイクル及び「修理する権利」の法制化により、修理を前提とした製品の長寿命化や原材料の再資源化等に応えるビジネスモデルへの変革が喫緊の課題となっています。これらの動向を注視し、環境重視の政策・環境規制に対応した新規技術・事業開発の機会の拡大や、サステナブル・エシカル消費といった消費者の意識変化による環境志向型の製品やサービスの需要拡大を見据えた事業活動を実施してまいります。一方で、炭素税や排出権取引制度等のカーボンプライシングの導入等によりエネルギー調達コストが増加すること、排出権の購入を余儀なくされること、環境負荷の低い材質への切り替えにより製造コストが増加すること、低炭素製品のコモディティ化等により、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、こうした環境問題対策が遅れることにより欧州をはじめとする各国市場への事業進出機会の喪失や取引停止等による事業機会の喪失につながる可能性があります。加えて、各国のエネルギー安全保障、気候変動対策に関連する法制度に基づく税控除、補助金等を活用した事業機会への参入にあたり、想定通りの効果が得られず、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、米国IRA(インフレ抑制法)をはじめとする気候変動対策関連の法制度が廃止又は縮小される場合、また、当該事業環境の変化に起因して製品需要が当社グループの見込みを割り込む場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。とりわけ、パナソニック エナジー㈱の車載電池事業に関連し、米国の自動車CO₂排出規制の緩和等の政策によって北米自動車市場のEV化率のスピード及び顧客需要が当社グループの見込みよりも低下する場合は、設備投資計画が後ろ倒しとなる可能性の他、車載電池の減産等により、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、資源不足・資源制約によるサーキュラーエコノミーの進展により、再生可能エネルギーの積極利用による企業価値の向上が図れる機会が増大すると同時に循環資源を用いた低炭素製品の需要拡大も見込まれます。一方で、循環資源(再生材・再利用原材料)の価格上昇・供給不足による生産コストの増大や生産の遅延が頻発・常態化する可能性があります。脱炭素循環型社会への移行状況について、EUにおける炭素国境調整メカニズム(CBAM)、米国におけるグリーンニューディール政策その他の各国の関連法令等に関する動向を中心に注視してまいります。
2021年5月に、当社グループは「2030年にグループのCO₂排出を実質ゼロ」を目標とすることを発表しました。また、2022年1月には、グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(以下、「PGI」)」を発信し、私たちが提供する商品を通じてお客様が排出するCO₂も含めた自社バリューチェーン全体の1.1億トンのCO₂排出に見合う削減の責務を果たすことに加え、さらに幅広い事業領域を活かして、社会へのCO₂削減貢献量を拡大するとの方針を示しています。その目標として、2050年までにグループの事業活動を通じて、現時点の全世界のCO₂総排出量の「約1%」にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指します。特に大きなCO₂削減貢献目標を掲げている事業である環境車向け車載電池事業や欧州での空質空調事業による貢献に向けた取り組みに加えて、エネルギーの地産地消を目指し、水素及び太陽光発電で燃料電池工場の稼働に必要な電力の100%を再生可能エネルギーでまかなう「RE100ソリューション」の実証施設の稼働を2022年にスタートさせています。
また、当社グループでは、2022年7月に、2050年の目標に向けたマイルストーンとして2024年までの環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」を策定し、自社バリューチェーンにおけるCO₂排出の削減量(OWN IMPACT)、既存事業による社会へのCO₂排出の削減貢献量(CONTRIBUTION IMPACT)、サーキュラーエコノミー領域のそれぞれにおいて、2024年までに実現する具体的な行動計画と2030年の目標をあるべき姿からのバックキャスト(逆算)で定めています。この2024年までに、当社グループでは37拠点でCO₂排出の実質ゼロ化を実現することを計画しており、2023年度はパナソニック エナジー㈱の二色の浜工場がCO₂ゼロ工場として本格生産を開始するなど、計画実現に向けて取り組みを拡大しています。
一方で、現時点において削減貢献量は国際的に統一された算定方法が確立されていないことから、当社グループでは積極的に認知活動及び標準化に向けた働きかけを行っています。2023年3月には当社が参画する「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」及びGXリーグからそれぞれ削減貢献量のガイダンス・指針が発表されたことを受け、同じく当社が参画する「国際電気標準会議(IEC)」における国際規格化への議論の状況と合わせてこれらに準拠した算定に取り組むとともに、2023年度には先行して当社グループの「サステナビリティ データブック」で製品分野毎の削減貢献量の算定式及び算定事例をルール化に先行して開示しています。しかしながら、当社グループが現在採用している方式と異なる算定方法が標準化された場合には、当該時点において削減貢献量の見直しを行う可能性や、目標の達成状況が変動する可能性があります。
また、当社グループでは地球環境問題において、資源効率が脱炭素化に寄与するとともに、地球上の限られた天然資源の消費を削減することが必要であることを認識し、持続可能な社会の実現に貢献するため、2023年12月に当社グループの事業活動においてサーキュラーエコノミーを推進・具体化する上で共通の指針となる「サーキュラーエコノミーグループ方針」を策定しました。あわせて、サーキュラーエコノミーの重要性を踏まえて、当社グループの事業運営の基盤となるPGIのステートメントを改定し、各事業におけるさらなる取り組みの強化に繋げてまいります。
当社グループは、地球温暖化の進展による特定の商品・サービスに対する需要の変化や、環境問題への意識の高まりによる国際社会での環境規制・政策の導入・拡大を見据えながら、関連ビジネス市場を通じてこうした活動を強化し、環境問題、気候変動問題に取り組んでまいります。
情報セキュリティ及びサイバーセキュリティに関するリスク
当社グループは、事業の過程で、顧客等のプライバシーや信用に関する情報(顧客の個人情報を含む)や、他社等の機密情報を入手することがあります。また、顧客や他社等の情報以外に、当社自身の営業秘密(当社グループの技術情報等)を取り扱っています。これらの情報は、システムの不正アクセスやサイバー攻撃を含む意図的な行為や従業員や業務委託先の過失等により外部に流出する可能性があります。
また、当社の製品・サービス、生産設備、管理システムは、インターネットを利用するものが増加しており、製品・サービスへのネットワークを介した予期せぬ侵入、不正操作等による外部への機密情報・個人情報の漏洩、外部への情報流出、サービス停止、工程への影響等が発生する可能性があります。さらに、当社の製品・サービスにサイバーセキュリティ上の脆弱性が発見された場合、当社製品の大規模なリコールや製品・サービスの長期間の提供停止等に発展することに加えて、多大な対策費用等が発生する可能性があります。また、製造業である当社グループにおいては、サイバーセキュリティインシデントの発生による当社グループへの原材料、部材の供給停止又は当社グループが提供元となる提供先への悪影響等、いわゆるサプライチェーンにおけるサイバーセキュリティリスクも当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。
当社グループでは、より高度な情報セキュリティレベルを実現するために、IT環境の健全性の確保及びサイバーレジリエンスの向上に取り組んでいます。特に、国内のみならず海外子会社のインフラを含むネットワーク、サーバ、パソコン等を対象としたさらなる異常監視の拡大及び工場内部のセキュリティ監視との一体化と、グローバルかつ一元的なセキュリティ監視体制の強化のための対策を実施しています。また、従前より当社グループの製品やサービスのセキュリティを検査、担保する体制を整備し、運営のさらなる強化に努めています。さらに、技術的な対策に加えて、情報セキュリティ教育プラットフォームの構築及びグローバルの従業員に対する定期的な教育実施、システム運用等の委託先に対する定期的なセキュリティチェックの取り組み等、人的な対策も強化・推進しています。各国の個人情報保護又はサイバーセキュリティに関する法令・規制については、その動向を外部専門家とともに調査したうえで、当社規程等へ反映、社内へ周知する仕組みを運営することによって、法令・規制等への対応を進めています。
2023年度はサイバーセキュリティ強化に向けた取り組みとして、情報、製品、工場セキュリティの共通機能を統合し、複合的なサイバーセキュリティリスク及びサプライチェーン全体への一元的・網羅的な対応を推進するため、4月よりPHDに「サイバーセキュリティ統括室」、各事業会社に「サイバーセキュリティ統括責任者」を設置しました。これらの組織に関連機能部門を含めた機能横断でのサイバーセキュリティ対応推進体制を構築し、サイバーハイジーンとサイバーレジリエンスの戦略的な実行に向けて連携を図っています。また、インシデント発生時の対応プロセスの見直しと合わせて、PHD及び事業会社の組織横断によるインシデント対応訓練を実施し、グループ内での連携を確認しました。
一方で、当社として最大限の防御策は講じるものの、激化・巧妙化するサイバー攻撃を完全に防御できず、その結果、事業活動の停止・中断や当社グループのイメージ・評判の低下により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
AI(人工知能)の利活用に関するリスク
生成AI等のAIの急速な技術進歩及び普及に伴い、昨今、様々な分野でのAIの活用が進んでいます。当社グループにおいても、AIの特性に起因するリスクへの対応を図りながらAIの利活用を段階的に拡大し、業務の生産性向上や新たなビジネスアイデア創出、事業競争力の向上を目指しています。
当社グループでは、AIの利活用の拡大に伴う機会及び脅威を見極めるとともに、グループ全体で適時・適切な対策を講じるため、全事業会社のAI倫理の担当者に加えて法務、知財、情報、品質部門等の担当者が参画する「AI倫理委員会」を設置しています。2022年には責任あるAI活用を実践するため「AI倫理原則」を定め、AI開発現場でのAI倫理リスクチェックシステムの運用、グループ全社員を対象としたAI倫理教育やAI技術人材育成の推進によって、グループ横断のAIガバナンス体制を強化しています。
当社グループでは、2023年2月から当社の子会社のパナソニック コネクト㈱が「Azure OpenAI Service」を基に開発したAIアシスタントサービスを国内全社員対象に提供開始したことを皮切りに、4月からは当該サービスの対象を当社グループの国内全社員約9万人に拡大し、本格的な利用を開始しました。一方で、これらの利用に際しては、特に個人情報をはじめとする生成AIへの入力及び出力情報の取り扱いを含めた適切な情報活用についての注意喚起を徹底しています。
また、当社グループでは、AIの利活用加速に向けたAI技術戦略として、基盤モデルと少数データ学習により、わずかなデータで導入できるAIや、端末機器への効率的な実装を実現するロボティクス・エッジAI技術により多様なフィジカル空間へ簡単に実装できるAIなど、あらゆるお客様にAIを素早くお届けするための「Scalable AI」、そして、先に挙げたグループ横断のAIガバナンス体制に加え、AIへの信頼性に関する技術開発により、あらゆるお客様の信頼にこたえる「Responsible AI」の取り組みを強化しています。特に、AIの信頼性に対しては、要素技術と開発プロセスの両面からアプローチすることで、説明性や信頼性を担保することに努めています。「人間のための」「人間による」「人間に寄り添う」責任あるAI利活用を通じて、一人ひとりの生涯の健康、安全、快適へのお役立ちを果たすことを目指しています。
一方で、AIの効果的な利活用や開発が想定通り進まない場合は、当社グループの事業機会や製品・サービスの競争力が失われ、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、AIの利活用に伴ってプライバシー、セキュリティ、公平性及び著作権の侵害その他のコンプライアンスに関連する問題が発生した場合、当社グループのブランドイメージや信用が失われるだけでなく、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
有能な人材確保における競争
当社グループは「企業は社会の公器である」という考え方を経営の基本とし、人材についても社会からお預かりした貴重な経営資源として、「社員稼業」と「衆知経営」を実践し、事業の創出と成長の源泉及び組織活力の維持を担う人材の継続的な確保に努めています。
このような理念のもと、2023年3月に新たな採用ブランドスローガンとして「誰かの幸せのために、まっすぐはたらく。」を制定しました。当社グループにおける幅広い事業領域や職種を有するパナソニックグループの「多様な挑戦の機会」、「人づくり」を大切にする風土のもと、「誰かの幸せのために、まっすぐはたらきたい」と思える仲間と共に、これからの幸せをつくりたいという想いを込めています。
また、当社グループでは、一人ひとりが心身ともに健康で、挑戦の機会を通じて幸せと働きがいを感じている状態、つまり「社員のウェルビーイング」の実現をグループ共通の人事戦略として、「安全・安心・健康な職場づくり」、「自律的な挑戦意欲と自律したキャリア形成支援」及び「Diversity, Equity & Inclusionの推進」に取り組んでいます。2022年度以降、順次「働く時間」「働く場所」の選択肢の拡大のための制度を部分的に導入しています。社会環境の急速な変化や価値観の多様化が進む中、社員一人ひとりの多様なニーズにきめ細かく対応し挑戦を後押しするために、今後も取り組みを加速していきます。
さらに、専門性の高い人材の採用や育成を目的として、事業会社制移行後は各事業会社において独自の人材戦略及び人事制度を導入しています。当社の子会社であるパナソニック コネクト㈱では、2023年4月に従来のメンバーシップ型マネジメントから、ジョブディスクリプション(JD)の導入や公募による登用・配置を中心とするジョブ型マネジメントへの切り替えを全社一斉で実施、2023年度からは新たに社員紹介による採用としてリファラル採用を導入し、成長事業及びコア事業のそれぞれの事業の専鋭化の実現に向け、組織・人材強化を目指しています。パナソニック インダストリー㈱では、独自の「役割・人財要件定義」を策定し、原則、係長クラス以上の異動・昇格について「公募型」を導入しました。これまでの会社主導のキャリア形成から、社員自らが自律的にキャリアを選択していくための制度へと改定し、社員の挑戦を後押しすることで、人と組織が共に成長し続ける会社を目指しています。
一方で、有能な人材の確保をめぐる競争は激化しています。上記の取り組みが進まず、在籍している社員の流出防止や、経営戦略の推進に必要な人材の獲得ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
労働安全・労働時間管理
当社グループは、各種法令や当社の経営基本方針に基づき、グループCEOが発信する「パナソニックグループ 労働安全衛生ポリシー」において、従業員の安全と健康の確保を定めています。また、この方針を実践するため「安全衛生管理規程」を制定し、安全衛生活動の展開によって従業員の健康の保持促進を図るとともに労働災害を防止することで、事業発展への貢献を目指しています。
当社グループでは、グループの安全衛生管理に係る重要な方針や政策を審議・諮問する機関として、グループ安全衛生管理部門の責任者を委員長とする全社中央安全衛生委員会、各事業会社・事業場にも安全衛生組織を設置し、グループ一体で安全衛生管理を推進する体制を構築しています。
また、当社グループでは安全・安心な職場づくりの推進のため、労働安全衛生マネジメントシステムに基づき、定期的にリスクアセスメントを実施し、職場の労働災害や疾病にかかるリスクを洗い出し、危険度の高いリスクから確実にリスク低減策に取り組んでいます。加えて、過去の重篤な労働災害を分析し、災害発生の代表的なパターンを明確化することによって、リスクアセスメント等における重点確認ポイントの共有化を図り、類似災害の再発や未然防止のための対策を効果的かつ着実に推進することを目指しています。
さらに、各事業会社における自律的な安全衛生管理の取り組みを推進するため、当社グループの各事業会社の安全衛生担当者が参加する「健康・安全衛生フォーラム」や、経営層を対象とした研修等を開催し、知見の共有及び意識醸成に努めています。また、適正な労働時間の把握・管理については、昨今のリモートワーク拡大も踏まえ労働時間に関する客観的データの収集・活用方法を刷新するとともに、従業員に対する継続的な意識啓発、勤務管理システムの拡充等により過重労働の防止に努めています。
一方で、職場作業環境又は作業手順の不備、不適切な労務管理等により重篤な事故等が発生した場合、従業員や関係者が肉体的又は精神的な被害を受ける可能性があります。また、その場合、労働基準法、労働安全衛生法等の労働関連法令に違反することで、当社グループが刑事処分、行政処分を受け、又は安全配慮義務不足に対して損害賠償訴訟の対象となり、当社グループの社会的評価に加えて、事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
b.重視しているリスク
競合他社との競争
当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発・生産・販売を行っており、それらの特性ごとに異なる事業の最適な在り方やお客様への貢献が求められています。また、各事業が向き合う市場においては、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の専門企業まで多様な企業と競合し、それぞれの事業環境の変化に適時に対応することが不可欠です。当社グループは、戦略事業への投資を推進していますが、特定の事業に対する投資を、競合他社と同程度に、又はタイムリーに、場合によっては全く実施できない可能性もあります。また、競合他社がそれぞれの競合事業において当社グループよりも大きな財務力、技術力及びマーケティング資源を有している可能性があります。
そうした競合環境の中、当社グループでは、長期視点で戦略を再構築し、競争力強化を目指しています。まず、喫緊の課題である環境問題の解決に向けた取り組みを強化することで、お客様へのお役立ちを通じて競争力の強化を図ってまいります。また、キャッシュの獲得を前提として、事業会社のみならずグループとしても強みを持つ事業に戦略的に投資してまいります。
次に、競争力の強化には、事業のあらゆる現場において、ムダや滞留を撲滅し事業のスピードを高める「オペレーション力」が不可欠です。当社グループでは、正味付加価値を生まない業務のIT活用による効率化を推進すると同時に、事業の競争力強化テーマ、開発設計、製造・販売、調達等グループ共通でスケールメリットのあるテーマについてビジネスプロセスの変革に取り組んでいます。加えて、デジタル技術の活用と業務改善活動の積み重ね、職場のあらゆるムダと滞留、手戻りを排除する活動を展開することにより、コストを削減し、競争力強化を図っています。
他社との提携・企業買収等の成否
当社グループは、新しい製品やサービスの提供等を目指し、他社との業務提携や合弁会社設立、他社の買収等を行っており、これら戦略的提携や企業買収の重要性は増加傾向にあります。当社グループでは、重要な戦略的提携については、検討の段階に合わせて所定の審議を実施しており、事業戦略との整合性、検討の抜け漏れの有無確認、価格や契約内容の妥当性、リスクの洗い出し、統合プラン等の検証を実施していますが、相手先とのコラボレーションが円滑に進まない可能性や、当初期待した効果が得られない可能性、投資の全部又は一部が回収できない可能性があります。また、事業展開の過程で相手先が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があります。加えて、これらの相手先が事業戦略を変更した場合等には、当社グループは提携関係を維持することが困難になる可能性があります。企業買収については、買収にかかる多額の費用が発生する可能性や、買収後の事業統合・再編等にあたり、期待した成果が十分に得られない、又は予期しない損失を被る可能性があります。
当社グループは、2021年9月にBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)の80%分の株式を追加取得し同社を完全子会社化しています。当社グループは、Blue Yonderの様々なサプライチェーン分野でのケイパビリティを取り込むことで、現場プロセスイノベーションの実現を加速し、また、両社のシナジー最大化に取り組んでいます。しかしながら、キーマネジメントメンバーを含めた優秀な人材の保持及び従業員の士気の維持ができない場合、事業環境や競合状況の変化等により、Blue Yonderの競争力が大きく低下する場合、重要な顧客やその他関係者との良好な関係を維持できない場合等により、これらの期待した効果が十分に得られない可能性があります。また、完全子会社化に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2023年度はBlue Yonderにおいて、機能強化を目的とした追加買収を複数行っているため、買収によるのれん及び無形資産計上額は増加しています。事業環境や競合状況の変化等により期待した効果が得られないと判断され、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、又は適用される割引率が高くなった場合は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(詳細は「(6)その他のリスク」の「非金融資産の減損」を参照)。
これらのリスクに対して、2022年7月に就任した新CEOを含む新たなBlue Yonderの経営陣と共に、成長戦略に伴う重点施策等を着実に推進し、Blue Yonderの事業競争力の更なる強化を進めています。引き続き、外部環境を意識した商品戦略や販売体制の強化、買収事業の速やかな統合等を通じて、リスク軽減を図っていきます。
なお、Blue Yonderを中心としたサプライチェーンマネジメント(以下、「SCM」)事業を取り巻く環境は大きく変化しています。企業のSCMソリューションに対する期待が高まり、市場拡大が見込めるとともに、研究開発活動(R&D)やM&A等の投資競争が激化しています。そのような中、SCM事業の競争力を強化するためには、資本市場の力を借りてグローバルでの成長を加速させるために株式上場を行うことが最適であると判断し、当社が議決権の過半数を保有する重要な連結子会社と位置付ける事を前提に、Blue Yonderを中心としたSCM事業の株式上場に向けた準備を開始することを、2022年5月11日に公表しています。株式上場に関しては、証券取引所その他の関係当局の承認や許認可等を得られることが前提となり、株式上場の準備過程における検討の結果次第では、当社グループの組織再編が必要な場合やSCM事業は株式上場しないという結論に至る可能性もあります。
当社グループは、Blue Yonderの事業成長及び両社のシナジー最大化に向けて、PMI(買収後の経営統合)を着実に推進しています。具体的には、両社間において新たな経営体制・協業プランを推進し、本件取引完了後のリスク軽減を図っています。
事業再編の成否
当社グループは、多くの子会社及び関連会社等を有していますが、経営の効率化と競争力の強化のため、グループ事業体制を再編(他社への事業又は株式の譲渡や、グループ内の組織又は拠点再編等を含む)することがあります。しかし、現在及び将来における再編において、当初期待した成果が十分に得られない可能性、判断や意思決定に時間を要し事業構成の組替がスムーズに進まない可能性、適切な事業ポートフォリオ・マネジメントが実行できない可能性があります。
当社は、各事業の成長性を見極め、グループ内で将来にわたってお役立ちを果たせる事業か、あるいはグループ外での競争力獲得が事業の成長のスピードに寄与するか、ベストオーナーの視点に基づく事業ポートフォリオの見直しを実施しており、そのひとつとして、2024年3月には、当社とApollo Global Management, Inc.をはじめとするアポロ・グループは、パナソニック オートモーティブシステムズ㈱(以下、「PAS」)の事業に関して両社が共同パートナーになることを目的に、PAS株式の譲渡に関する株式譲渡契約及び株主間契約を締結しました。引続き、当社は、持株会社として、各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、当社グループの成長戦略と事業ポートフォリオの見直しを推進し、グループとしての企業価値向上に努めていきます。
原材料等の需給・輸送の混乱、価格高騰
当社グループの製造事業にとって、十分な品質の原材料、部品、機器、サービス等をタイムリーに必要なだけ入手することが不可欠であり、当社グループは、信頼のおける供給業者を選定しています。しかし、当社グループのサプライチェーンにおける災害・事故、感染症の流行・拡大又はサイバー攻撃の発生等により、供給が不足又は中断した場合や業界内で需要が増加した場合には、供給業者の代替や追加、他の部品への変更が困難な場合があります。加えて、当社グループが部材を納入している取引先においてこれらの事象により生産の中断・停止、生産規模の縮小又は倒産等が生じた場合、当社グループの販売数量が減少する可能性があります。これらの事象により当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、昨今では、原材料・燃料費の高騰に加え、国内・海外双方でのドライバー不足等が続いています。当社グループでは、原材料・部材の高騰に対しては、先物予約ヘッジを積極的に推進し、グループでの集中購買をさらに加速し、価格上昇の抑制や安定確保に取り組んでいます。また、物流費の上昇については、積載効率向上による使用コンテナ本数の削減、海上輸送ルートの複線化、中長期的なコンテナスペースの確保に加え、出荷平準化の推進等の合理化活動の強化に取り組んでいます。
特に、働き方改革関連法により、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限規制が適用されることに伴う物流「2024年問題」に関しては、物流・運送業界の人手不足や売上減少に起因する事業・取引撤退、廃業による物流の停滞を回避することを最優先とし、物流・運送業界の労働環境改善及び持続的な物流オペレーションの双方を実現するための適切な物流費用への転嫁等の施策を検討しています。
このように、原材料の高騰や物流費用の上昇をはじめとする生産コスト増に対する取り組みを継続していますが、内部努力だけでは当該影響を吸収しきれない状況であることから、当社グループでは、2022年8月以降、国内向けの家電製品の出荷価格を改定しています。今後は、商品価値に見合った適正価格に基づき、安定した販売を実現することで、お客様のニーズに沿った製品開発による「お役立ち」につなげてまいります。しかしながら、こうした価格改定が適時に実現できないことや、価格改定によって製品への需要が減少することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、中東情勢及びロシア・ウクライナ情勢等の国家間・地域内の対立やテロ・戦争、米中対立の激化等により各国の経済制裁や物流の混乱が深刻化した場合、さらなるコストの上昇や、国際間物流に関する輸送リードタイムの長期化により、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
製品価格の下落
当社グループは、国内外の市場において激しい競争にさらされており、当社グループにとって十分に利益を確保できる製品価格を設定することが困難な場合があります。当社グループはコスト削減、高付加価値商品の開発に取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力は、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与える可能性があります。BtoC(一般消費者向け)分野のうち、国内向けの家電機器については、従来型の取引形態に起因する販売価格の下落が製品のライフサイクルの短縮化を引き起こし、顧客志向の開発や製品の競争力に影響を及ぼしています。当社グループでは、2020年より販売店との取引形態の見直しと新たな「指定価格制度」の導入に取り組んでおり、販売価格の維持及びより付加価値の高い製品の開発につなげる試みを始めています。他方で、当該制度が販売店・一般消費者を含む国内の家電機器市場で受け入れられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。一方で、BtoB(企業向け)分野においては、依存度の高い特定の取引先からの企業努力を上回る価格下落圧力や製品需要の減少・設備投資圧力等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
技術革新・業界標準における競争
当社グループは、新製品やサービスをタイムリーに開発・提供していく必要があります。当社グループの主要事業においては、BtoC(一般消費者向け)分野及びBtoB(企業向け)分野のいずれにおいても技術革新が重要な競争要因になっており、当社グループが将来の市場ニーズを把握しきれず、これに応えるための新技術を正しく予想し開発できない場合や、当社グループが開発・提供した技術が業界において主流とならず、競合他社が開発した技術が業界標準となった場合には、新しい市場での競争力を失う可能性があります。
(3) 将来の見通し等の未達リスク
当社グループは、グループ経営目標として、中期経営指標(KGI)を設定し、その実現に向けた具体的な施策を推進しています。これらのKGIは、設定時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定しますが、2024年度の世界経済は、地政学リスクや欧米を中心とした金融引き締めによる実体経済への影響等により、先行きの見通しにくい状況が続いており、今後、こうした世界経済の影響や事業環境の悪化、その他の要因により、KGIの達成や期待される成果の実現に至らない可能性があります。
中長期戦略の推進にあたっては、世界経済や事業環境の動向を踏まえ、定期的な進捗管理と課題の見極めや適時適切な対策の検討・実践等を通じて、未達リスクの最小化に努めてまいります。
(4) コンプライアンス・訴訟・レピュテーション等に関するリスク
a. 特に重視しているリスク
コンプライアンスリスク
当社グループでは、世界のどの国・地域においても公正な事業を推進するため、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」において、「社会の公器」として法令や社会道徳に反しないことはもちろん、私心にとらわれず高い倫理観や適切な知識を持って業務を遂行できるよう、当社グループ各社及び当社グループ社員一人ひとりが果たすべき約束を定め、全社員に共有・徹底しています。
当社グループでは「独占禁止法・競争法違反」や「贈収賄・腐敗行為」等の重大なリスクに対し、グローバル規程に基づくコンプライアンス徹底のための研修や、贈収賄・腐敗行為に関するリスクベースアプローチによるコンプライアンス監査等の取り組みを通じて未然防止、早期発見に努めています。さらに、年間を通じ、全社員に対する基本的なコンプライアンスの教育に加え、必要な対象者への事業特性や地域特性を踏まえたリスクに応じたコンプライアンスの教育等、倫理・法令順守意識のグローバルな定着とリスクへの対応力向上をめざした取り組みを実施しています。また、当社グループでは、不祥事の防止や早期解決を目的に、国内外の拠点や取引先からも通報ができる一元的な内部通報窓口としてグローバルホットラインを設け、適切な社内調査を通じて問題の早期発見と是正を図っています。
このような取り組みの推進にかかわらず、万が一、当社グループにおいてコンプライアンス違反行為が発生又はコンプライアンス上の問題に直面した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
人権・労働コンプライアンス
「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」では、私たちの社会的責任のひとつとして「人権の尊重」を掲げています。当社グループの事業活動は、グループで働く社員はもとより、製品・サービスをご利用いただいているお客様、調達・販売等に関わっていただいているお取引先様、さらにはビジネスパートナーの皆様など、多くの方々に支えていただくことで成り立っています。当社グループが「社会の公器」であるならば、そうした方々の犠牲の上に自らの発展を図ることは許されず、透明で公明正大な事業活動に徹して社会と共に発展していくことが、人びとのくらしの向上や社会の発展につながっていくと考えています。
これに基づき、当社グループでは「パナソニックグループ 人権・労働方針」を制定しています。事業活動・取引に適用されるすべての法令の順守を前提として、「国際人権章典」や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」で表明された国際的に認められた人権の尊重や働きがいのある労働環境の実現と、これらに関する様々なステークホルダーの皆様との対話に取り組んでいくことを明記しています。また、この方針に従って「人権・労働コンプライアンス規程」を定め、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、事業会社の事業領域及びバリューチェーンに関連する人権への負の影響の把握・予防・低減に向けた具体的な取り組みを推進しています。人権・労働に関する重要な法的要請の変更等については、情報を収集して各拠点に徹底し、コンプライアンス強化に努めています。
このような取り組みの推進にかかわらず、万が一、当社グループが人権侵害行為を引き起こす又は人権侵害行為への関与や加担等に直面した場合、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があるほか、投融資の引き上げ、顧客からの取引停止、消費者による不買運動等の発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
サプライチェーンに係るリスク
当社グループは、グローバルで約13,000社以上の購入先様と取引をしています。近年、サプライチェーンにおける企業の社会的責任の要請は日増しに強くなっており、人権・環境分野を中心として各国・地域で新たな規制が制定、施行されるなどの法制化の動きにも表れています。当社グループでは、サプライチェーンにおけるCSR(企業の社会的責任)推進の取り組みを強化するため「サプライチェーン・コンプライアンス規程」を制定し、サプライチェーン・コンプライアンスに関する基本方針や、その実践のための社内ルールについて定め、実践状況については定期的なマネジメントレビューを行っています。これらの内容は調達業務に従事する従業員にも徹底し、購入先様と共に責任ある調達活動を実践できる人材を育成するため、当該従業員に対するグローバルでの教育・研修を実施することにより、汚職・腐敗防止等のコンプライアンス、サプライチェーン上での人権・労働、安全衛生等の課題を含むCSRに関する基礎知識等の定着を図っています。
また、当社グループでは、購入先様に順守頂きたいCSRの要請事項(人権・労働、安全衛生、地球環境保全、情報セキュリティ、企業倫理等)について、法令及び国際規範を踏まえた「パナソニック サプライチェーンCSR 推進ガイドライン」を定め、その順守を契約書等で購入先様に義務付けています。購入先様には、当該ガイドラインの要求事項に関する二次以降の購入先様への伝達及び順守状況の確認を要請することで、サプライチェーン全体でのCSRの徹底を図っています。さらに、サプライチェーンに対するデュー・ディリジェンスの一環として、購入先様に対し、ガイドラインの要請事項の順守状況をチェックシートに基づき自主精査するためのCSR自主アセスメントの定期的な実施とその結果に基づく是正を促すとともに、2023年度より、各事業会社がリスクベースアプローチで購入先監査実施計画を策定し、自社及び第三者機関による購入先監査を開始しています。
しかしながら、サプライチェーンにおける責任ある調達活動への取り組みによって期待した成果が得られない場合、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
品質コンプライアンス
当社グループは、経営基本方針に則り、常に製造・販売する製品の安全性を確保して、お客様に安全・安心をお届けすることが経営上の重要課題であり、社会的責任であると考えています。また、グループの品質方針を「常にお客様及び社会の要望に合致し、満足していただける製品及びサービスの提供を通じ、真にお客様に奉仕する」と定めています。各事業会社が、担当する製品の品質に対する責任を持ち、品質マネジメントシステムを構築・運用しています。特に、品質不正への取り組みは、パナソニックグループ コンプライアンス行動基準にある法令と企業倫理の順守に基づき、法規・法令だけでなく、業界基準やお客様とのお約束等も守ることを明確にしています。
その一方で、当社の子会社であるパナソニック インダストリー㈱(以下、「PID」)の電子材料事業部が製造・販売する成形材料、封止材料及び電子回路基板材料の153品番において、米国の第三者安全科学機関であるUL Solutions(以下、「UL」)の認証登録等の際、複数の不正行為を行っていたこと(以下、「本件不正」)が判明しました。これを受け、PIDは、UL違反事案の調査、その他の品質不正の有無に関する調査及び調査結果を踏まえた原因分析と再発防止策の提言を目的に、社外有識者による外部調査委員会を2024年1月12日付で設置しました。外部調査委員会の調査は継続中です。
本件不正について、ULに報告を行った結果、一部製品のUL認証が2024年5月31日付けで取り消されました。なお、一部の製品のUL認証の取り扱いについては、PIDとULとの間で協議が続けられています。UL認証の登録を有しないPID製品のうち、今後もUL認証品として販売を継続する必要があるものについては、その認証の取得に向けて取り組んでまいります。
また、PIDは、本件不正に関連し、ISO9001(注1)及びIATF16949の登録認証機関であるLRQAリミテッドから、郡山工場、郡山西工場、四日市工場及び南四日市工場のISO9001認証及びIATF16949認証を取り消されております。PIDは、ISO9001認証及びIATF16949認証についても、その認証の再取得に向けて取り組んでまいります。
PIDは、対象となる製品をご購入いただいているお客様に個別にご説明の上、協議を行うとともに、本件不正の全容解明に向け、引き続き外部調査委員会による調査活動に全面的に協力しています。
本件不正に関連する損失や、新たな品質不正行為の判明に伴う損失が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(注1) ISO(国際標準化機構)9001は、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
(注2) IATF(International Automotive Task Force)16949は、自動車産業向け品質マネジメントシステムに関する国際規格です。
b. 重視しているリスク
製造物責任や補償請求による直接・間接費用の発生
当社グループでは、製品安全に対する知見や不安全事象の未然防止策を、グループの安全規格へ盛り込むと共に、日々のリスク管理を行っています。しかしながら、製品の欠陥による品質問題(不安全事故等)が発生した場合、欠陥に起因する損害(間接損害を含む)に対して、当社グループは生産物賠償責任保険で補償しきれない賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用を負担する可能性があります。また、当該問題が生じることにより、当社グループのイメージ・評判の低下、顧客の流出等を惹起し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
知的財産権に関連した損害
当社グループは、事業に対する知的財産起点での戦略提案、グローバルな知的財産の獲得・保護・活用及び知的財産に係る紛争の予防と解決により、現在と将来にわたる事業の優位性と安全の確保を目指すとともに、近年では社会課題の解決への貢献も視野に入れて、知的財産活動を推進しています。当社グループは、上記方針のもと、事業戦略及び研究開発戦略を踏まえた知的財産戦略に基づき、自ら研究開発を行うとともに、他者とも共創関係を構築することによって、グローバルな知的財産ポートフォリオの構築に努めています。しかしながら、当社グループが出願する特許及びその他の知的財産については、国・地域によっては、当該国・地域における知的財産制度・審査基準や経済安全保障制度等の適用・運用等により、権利が付与されない場合や、知的財産権が十分に保護されない場合があります。
当社グループは、必要に応じて弁護士、弁理士、外部コンサルタント、取引関係者、政府機関等の協力を得ながら、当社グループの保有する特許、ブランド、デザイン及びその他の知的財産に関する侵害品・模倣品の監視及び排除に努めています。しかしながら、当該知的財産が第三者によって侵害され、当該侵害品・模倣品が出現した場合には、当社グループの正規品の販売に対する悪影響やブランドイメージの毀損等が発生する可能性があります。また、当社グループは、戦略的に当該知的財産のライセンス等を付与する場合があります。ライセンス等の付与にあたっては、適切な条件の下で行うよう努めていますが、当社グループにとって不利な条件で当該知的財産のライセンス等をせざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが自らの知的財産を保護又は活用するために相当の費用及び経営資源を費やして訴訟等を提起しなければならない場合があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社グループは、第三者の知的財産を尊重するためグループ全体に適用する「知的財産基本規程」等の社内規程を定め、従業員全員が順守するように定期的な教育を行っており、また、第三者の知的財産を利用する必要があるときは適切なライセンスを取得するよう努めています。しかしながら、第三者が保有している知的財産権については、当社グループが当該知的財産のライセンスを取得できないこと、取得していたライセンスが継続できないこと、又は不利な条件でライセンスを取得及び継続せざるを得ない可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産に関して訴訟等を提起されることがあり得ます。当該訴訟等には、多額の費用及び経営資源が費やされることがあり得ます。また、当該訴訟等において当社グループの主張が認められない場合には、当社グループが特定の技術等を利用できなくなることや損害賠償責任を負う可能性があり、これらの事象が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
その他の法的規制等による不利益及び法的責任
当社グループは、日本及び諸外国・地域の規制に従って事業を行っています。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、製造物責任、環境保護、消費者保護、労使関係、金融取引、内部統制及び事業者への課税に関する法規制に加え、事業及び投資を行うために必要とされる政府の許認可、電気通信事業及び電気製品の安全性に関する法規制、国の安全保障に関する法規制及び輸出入に関する法規制等があります。より厳格な法規制が導入されたり、当局の法令解釈が従来よりも厳しくなったりすることにより、技術的観点や経済的観点等から当社グループがこれらの法規制に従うことが困難となり、事業の継続が困難と判断される場合には、当社グループの事業は制限を受けることになります。また、当社グループがこれらの法規制等に違反し、又は法令順守のための内部統制体制が不十分であったと当局が発見又は判断した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分又は損害賠償訴訟の対象となり、また、当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 災害・事故等に関するリスク
a.災害・事故等一般に共通するリスク
当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。地震、津波、洪水等の自然災害(気候変動によって発生するものを含む)、火災・爆発事故、テロ・戦争、感染症の流行・拡大やサイバー攻撃等が発生した場合に、当社グループの拠点の従業員、設備、情報システム等が損害を被ることで、一部の操業が中断し、生産・出荷の遅延及び損害を被った設備等の修復費用が発生する可能性があります。加えて、これらの災害・事故等が、部品等の供給業者や製品納入先等といった当社グループのバリューチェーン上で発生した場合には、供給業者からの部品等の供給不足又は中断、製品納入先における生産活動の中断又は停止等により当社グループの生産活動・販売活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、こうしたリスクを低減するため、サプライチェーンも含めたBCP(事業継続計画)を策定し、定期的な見直しを行っています。また、「パナソニックグループ 緊急対策規程」を制定し、グループ全体に大きな影響を及ぼすおそれのある緊急事態の発生に備えて、危機発生時のエスカレーション及び判断のプロセスを含む対応の基本方針、当該緊急事態への対応に際した組織体制及び各機能部門・事業会社の役割等を規定しています。2022年度は「事業継続マネジメント(BCM)ガイドライン」を改定し、内閣府の南海トラフ地震及び首都圏直下型地震の最新の被害想定並びにそれらに対応した防災・減災対策を織り込むとともに、調達、物流、IT等の各機能部門で策定するBCPとの連携を明確化するなど、継続的な実効性向上に努めています。
b.自然災害
気候変動を背景とした異常気象の増加等、世界的に頻発化かつ激甚化傾向にある自然災害に対しては、平時における備えを強化するとともに、緊急時には迅速な緊急事態体制への移行を可能とするため、当社グループ全体で「防火・防災対策委員会」を設置しています。「防火・防災対策委員会」では、地震、水害等の災害の内容に応じた対策強化を図っています。特に、過去の災害時には電力需給のひっ迫が生じたことも踏まえ、事業継続のための非常用電源設備の設置等をBCPに取り入れています。また、2023年度にはグループ全体で各拠点の被災状況の適時の報告及び一元化を可能とする「災害ポータル」の運用を開始しました。各拠点からの対応・支援要請及びグループ全体への影響を可視化することで、緊急事態体制移行の判断や初動対応の迅速化を図れるよう、本格的な活用に向けて各事業会社への周知及びさらなる機能改善を図っています。さらに、毎年緊急時を想定した訓練を実施し、グループ緊急対策本部における対応及び事業会社緊急対策本部との連携を確認しています。2024年1月には、南海トラフ地震の発災に伴って関西地域を中心に甚大な被害が発生したとの想定に基づくグループ防災訓練を実施しました。各事業会社が被災地以外の場所で緊急対策本部を立ち上げる中で、グループ緊急対策本部も東京に本部を設置し、被災情報の整理、連携及び支援要請等の初動対応を確認しました。
さらに、当社グループは、リスクマネジメントの取り組みの一環として、自然災害の中でも当社グループの事業への影響が甚大であると想定される南海トラフ地震、首都圏直下地震をストレス事象とし、その影響分析を実施しました。2023年度は、当該分析結果に基づき地震の揺れ又は津波の被害想定が大きい地域に所在する拠点の実地調査を行いました。各拠点における施設・設備の対策状況や避難・初動対応手順の策定及びそれらに基づく訓練の実施状況に加えて、避難場所の安全性や備蓄品の充分性についても確認し、必要な点については対策強化及び継続的なフォローアップの検討を進めています。
2024年1月に発生した能登半島地震にあたり、現時点では、当社グループの社員、拠点及び事業に大きな被災又は被害影響は確認されていませんが、当社グループのお取引先様の被災状況等によって、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。一方で、このような取り組みの推進にかかわらず、万が一発災時に対策不備又は合理的な想定を超える甚大な影響による被害が生じた場合、従業員や関係者の人命にかかわる事態が発生する可能性や、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、人命安全を最優先にさらなる取り組みの強化を図りながら、今後も適切なリスク認識の醸成及びリスクコミュニケーションの強化を図ってまいります。
c.感染症リスク
2023年度は、新型コロナウイルス感染症については国内外での制限緩和が進み、国内でも「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の「5類感染症」へ移行しました。当社グループ全体でも本感染症による大きな悪影響は発生しませんでした。
当社グループでは、本感染症に限らない、感染症全般に対する平時における備えとして、各事業会社における感染症版BCPの策定及びマスクや消毒用アルコール、体温計等の適切な備蓄確保を推進することにより、全従業員の健康・安全及び事業継続体制の維持に取り組んでいます。また、感染症の蔓延やそれに伴う当社グループの社員及び事業等への影響の大きさに応じ、前述の「パナソニックグループ 緊急対策規程」に基づき緊急事態体制に移行し、社員の人命・健康の安全確保を優先とした対応を進めてまいります。
一方で、今後も本感染症に係る変異株の発生、本感染症以外の新たな感染症の流行・拡大の発生により、従業員や関係者の人命にかかわる事態が発生する可能性や当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。引き続き感染症全般に関する国内外の感染状況や各国の行政の動向を注視し、適切に対応していきます。
d.テロ・戦争・暴動・政情不安
当社グループ又は当社グループのサプライチェーンが拠点を有する国・地域における政情不安、軍事的緊張が顕在化した場合やテロ・戦争等が発生した場合は、事業継続への支障が生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。中東情勢及びロシア・ウクライナ情勢に関しては、現時点では当社グループの業績及び財政状態に直接与える影響は軽微と見込んでいますが、当社グループの事業及び拠点を多く展開している東アジア地域の政情が不安定化した場合は、従業員や関係者の人命にかかわる事態が発生する可能性や当社グループの事業、業績及び財政状態に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、拠点を有する国・地域における有事又は緊張の高まりへの対応を強化するため、各国・地域間の対立や政権交代等のイベントに伴い起こりうる政治的・社会的混乱等をリスクシナリオとして特定し、人命安全を最優先としたBCPの整備や各機能部門におけるレジリエンス高度化の取り組み等、平時における対策を進めています。
(6) その他のリスク
非金融資産の減損
当社グループは、有形固定資産、のれん、無形資産及び使用権資産等、多くの非金融資産を保有しています。非金融資産(棚卸資産及び繰延税金資産等を除く)については、当該資産又は資金生成単位(以下、「当該資産」)の減損の兆候の有無を判定し、減損の兆候がある場合には、当該資産の回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。なお、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については、減損の兆候の有無にかかわらず、毎期減損テストを実施しています。減損テストの結果、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識する可能性があります。
退職給付に係る負債
当社グループは、一定の受給資格を満たす日本国内の従業員について外部積立による退職年金制度を設けています。当社及び一部の国内子会社は、確定給付年金制度から、各々の移行日以降の積立分(将来分)及び移行日以前の積立分(過去分)の一部について確定拠出年金制度へ移行していますが、確定拠出年金制度に移行していない部分については、金利の低下により確定給付制度債務に関する割引率を引き下げる必要が生じる可能性や、株価の下落により制度資産の公正価値の減少をもたらす可能性があり、その結果、退職給付に係る負債が増加し、親会社の所有者に帰属する持分が減少する可能性があります。
繰延税金資産の認識
当社グループは、繰延税金資産について、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。認識された繰延税金資産については、期末日に見直しており、税務便益が実現する可能性が高くなくなった部分を減額することにより、法人所得税費用が増加する可能性があります。
持分法適用会社の業績・財政状態
当社は、複数の持分法適用会社の株式を保有しています。各社は各々の事業及び財務に関する方針のもとで経営を行っており、当社はその方針決定に関与することができる重要な影響力を有していますが、支配には至らないため、通常、方針そのものの決定は行いません。これらの持分法適用会社の業績・財政状態の悪化により、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。
重要性がある会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表注記「3.重要性がある会計方針」に記載しています。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。
なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。
(3)当連結会計年度の経営成績の分析
2023年度の世界経済は、総じて、緩やかに減速しました。イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心とした金融引き締めが下押ししました。一方、日本経済は、緩やかに持ち直しました。個人消費を中心に、物価高によるマイナス影響があったものの、設備投資が堅調に推移したほか、インバウンド需要が回復したことなどが背景となります。
当社は2022年度から持株会社と事業会社からなる新しいグループ体制における3カ年の中期戦略を実行しています。このような経営環境のもと、同戦略の2年目となる2023年度は、中期経営指標(KGI)として掲げた「累積営業キャッシュ・フロー2兆円、ROE(株主資本利益率)10%以上、累積営業利益1.5兆円」の達成に向けて、競争力の徹底強化を推進し、各事業におけるキャッシュ・フロー重視経営の定着と成長領域での事業基盤の構築を進めてきました。重点投資領域と定めた車載電池事業では、パナソニック エナジー㈱が、ゼロエミッションモビリティとインフラソリューションを製造するノルウェーのHexagon Purus ASAと、北米における商用車向け車載電池供給契約を2023年4月に締結しました。また、マツダ㈱及び㈱SUBARUとそれぞれ中長期的パートナーシップの構築に向けた協議を開始し、その結果、2024年3月に車載用円筒形リチウムイオン電池供給につき、マツダ㈱とは供給に向けた合意書を、㈱SUBARUとは供給に関する協業基本契約を締結するなど、顧客基盤の拡大を図ってきました。さらに、投資領域に定めたサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア事業では、パナソニック コネクト㈱の子会社であるBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「ブルーヨンダー」)が、米国のOne Network Enterprises, Inc.を買収する契約を2024年3月に締結するなど、成長に向けた事業変革を行ってきました。
また、当社は各事業の成長性を見極め、ベストオーナーの視点に基づく事業ポートフォリオの見直しを実施しており、2024年3月には、当社とApollo Global Management, Inc.をはじめとするアポロ・グループは、パナソニック オートモーティブシステムズ㈱(以下、「PAS」)の事業に関して両社が共同パートナーになることを目的に、PAS株式の譲渡に関する株式譲渡契約及び株主間契約を締結しました。
①売上高
当年度の連結売上高は、8兆4,964億円(前年度比1%増)となりました。インダストリー・エナジーが減収となりましたが、オートモーティブ・コネクトの販売増に加え、為替換算の影響もあり、増収となりました。
②営業利益
営業利益は、3,610億円(前年度比25%増)となりました。戦略投資などの固定費の増加や原材料高騰の影響はありましたが、価格改定・合理化の進捗や為替の影響に加え、米国インフレ抑制法に係る補助金(以下、「米国IRA補助金」)の計上(連結財務諸表注記「24.政府補助金」参照)などにより、増益となりました。
③税引前利益
金融収益は890億円(前年度490億円)、金融費用は247億円(前年度211億円)となりました。この結果、税引前利益は、4,252億円(前年度3,164億円)となりました。
④親会社の所有者に帰属する当期純利益
法人所得税費用は、前年度の359億円の損に対し、402億円の益となりました。これは、当年度にパナソニック液晶ディスプレイ㈱の解散(特別清算)及び同社に対する債権放棄を決議したことに伴う法人所得税費用の減少を1,213億円認識したこと(連結財務諸表注記「13.法人所得税」参照)によるものです。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、4,440億円(前年度2,655億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、190円21銭(前年度113円75銭)となりました。
⑤セグメントの経営成績
当社グループは、経営管理上、事業の成果を「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しています。
なお、2023年10月1日付で、一部の事業をセグメント間で移管しています。2022年度のセグメント情報については、2023年10月1日付の形態に合わせて組み替えて算出しています。
a くらし事業
当セグメントの売上高は、前年度並みの3兆4,944億円となりました。
当年度は、電材事業や北米コールドチェーン事業などは増収となりましたが、海外家電事業の減収や、空質空調事業での欧州を取り巻く環境の悪化による需要減に加え、中国事業の一部を非連結化した影響もあり、全体では前年度並みの売上となりました。
主な分社の状況は、くらしアプライアンス社では、美容家電が堅調も、その他商品は中国・アジアなどで需要が伸び悩み、減収となりました。
空質空調社では、アジアの空質空調等が増収となりましたが、市況悪化の影響を受けた国内ルームエアコンや欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下、「A2W」)の需要減などにより、減収となりました。
コールドチェーンソリューションズ社では、北米のショーケースが好調に推移し、増収となりました。
エレクトリックワークス社では、国内の非住宅照明をはじめ、電設資材の販売が堅調に推移し、価格改定の効果もあり、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、1,216億円となりました。海外家電事業や欧州A2Wの減販影響はありましたが、北米コールドチェーン事業や国内・海外の電材事業の増販益に加え、前年度に計上した一時費用の反動などもあり、前年度から182億円の増益となりました。
b オートモーティブ
当セグメントの売上高は、前年度比で15%増加し、1兆4,919億円となりました。
当年度は、世界的な車載半導体及び部材のひっ迫が緩和したことにより、市場の自動車生産台数が当年度当初の見通しに比べて増加、また、顧客の自動車生産の回復基調も継続しました。加えて、為替換算の影響もあり、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、428億円となりました。人件費の高騰による固定費の増加や車載半導体などの部材高騰の影響は継続しましたが、増販益に加えて、部材価格の高騰や為替影響に対する価格改定、合理化及び車載充電器の収益性改善などの取り組みを行いました。また、国内工場でのAI導入ライン展開により生産性を2倍にするなどのオペレーション力強化施策を継続し、経営体質強化の取り組みによる効果もありました。同時に車載コックピットシステム事業では統合HPC(高性能車載コンピューター)戦略を進め、車載エレクトロニクス事業では車載充電器の高電圧・高出力化の取り組みや、新たな車室空間コンセプトモデルの提案、ソリューションビジネスの開発・推進など、将来に向けた成長投資を行いつつも、セグメント全体では、前年度から266億円の増益となりました。
c コネクト
当セグメントの売上高は、前年度比で7%増加し、1兆2,028億円となりました。
当年度は、プロセスオートメーション事業は減収となりましたが、アビオニクス事業、現場ソリューション事業、ブルーヨンダーなどが堅調に推移し、増収となりました。
主な事業部の状況は、モバイルソリューションズ事業部では、国内向けノートパソコンの販売増加などにより、増収となりました。
プロセスオートメーション事業部では、パソコン・スマートフォン市場での需要減が継続し、中国市況停滞の影響もあり、実装機が低調に推移したことにより減収となりました。
現場ソリューションカンパニーでは、既存事業での大型案件の獲得を含む国内ソリューション案件の順調な獲得などにより、増収となりました。
パナソニック アビオニクス㈱では、世界的に旅客需要が堅調に推移し、機内エンターテインメント・通信システム及び機体メンテナンス・リペアサービスがともに好調で、増収となりました。
ブルーヨンダーでは、SaaS(注) の好調な販売が継続するなど、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、404億円となりました。プロセスオートメーション事業の減販損やブルーヨンダーでの戦略投資などはありましたが、アビオニクス事業及び現場ソリューション事業の増販益や、モバイルソリューション事業の収益性改善などにより、前年度から200億円の増益となりました。
(注)SaaS:Software as a Serviceの略。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが必要な機能を利用できるサービス
d インダストリー
当セグメントの売上高は、前年度比で9%減少し、1兆426億円となりました。
当年度は、環境車向けコンデンサーや生成AIサーバー向け製品の販売増加に加え、為替換算の影響もありましたが、中国FA市場や情報通信インフラ市場などの市況低迷に加え、半導体事業譲渡に伴う商流変更の影響などにより、全体では減収となりました。
主な事業の状況は、電子デバイス事業では、環境車向けコンデンサーが引き続き好調に推移し、生成AIサーバー向けコンデンサーの需要拡大により販売が増加しました。一方、汎用サーバーや基地局向けコンデンサーに加え、中国市況停滞による産業用リレーの販売が減少するなど、全体では減収となりました。
FAソリューション事業では、中国やアジアの市況停滞に加え、中国FA市場での競争激化の影響で産業用モーター等の販売が減少し、減収となりました。
電子材料事業では、生成AIサーバー向けの多層基板材料の需要拡大により、増収となりました。
当セグメントの営業利益は、311億円となりました。原材料価格の高騰や固定費の増加の影響を価格改定や合理化でカバーし、円安の効果もありましたが、中国市況低迷の影響による減販損が大きく、前年度から357億円の減益となりました。
e エナジー
当セグメントの売上高は、前年度比で6%減少し、9,159億円となりました。
当年度は、北米での車載電池生産は搭載車種の旺盛な需要により好調に推移しました。一方、米国における電気自動車購入者への補助金対象外となった高価格帯車種の需要減の影響を受けて、当該車種向けの国内工場は減産となりました。加えて、民生・動力向けの販売が減少し、米国IRA補助金の顧客との有効活用に係る会計処理(注)の影響もあり、全体では減収となりました。
主な事業の状況は、車載事業では、需要が好調な北米工場は販売が増加しましたが、国内工場は需要減により販売が減少。加えて、米国IRA補助金の会計処理の影響もあり、全体でも減収となりました。
産業・民生事業では、生成AI市場の拡大によりデータセンター向け蓄電システムが好調に推移しましたが、市況回復の遅れから、電動アシスト自転車など民生・動力向けリチウムイオン電池などの販売減少の影響が大きく、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、888億円となりました。産業・民生向けの減販損や、車載電池事業で国内工場減産による影響や将来の成長に向けた固定費の増加、過去の製造不具合品対応に関する引当計上がありましたが、北米車載電池工場の増販益や生産性の向上に加え、米国IRA補助金の計上などにより、前年度から556億円の増益となりました。
(注)顧客との有効活用分は、有効活用の方法は未確定も、収益認識基準が適用され、売上高のマイナス計上を実施
f その他(報告セグメントに含まれない事業)
その他の事業については、売上高は、1兆2,195億円(前年度比1%増)、営業利益は、前年度に比べ増益の595億円(前年度比5%増)となりました。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3.事業等のリスク」に記載しています。
(5)財政状態及び流動性
①流動性と資金の源泉
当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。
(資金)
当年度末の現金及び現金同等物の残高は1兆1,196億円となり、前年度末に比べ3,001億円増加しました。当年度は、社債償還資金への充当及び今後の事業展開に必要な資金の確保を目的とし、2023年9月に円建無担保普通社債2,600億円を発行しました。運転資金などの調達を主にコマーシャルペーパー(CP)の発行により行いました。なお、2023年9月に第16回円建無担保普通社債700億円(2016年9月発行)、2023年12月に第20回円建無担保普通社債800億円(2020年12月発行)を満期到来により償還いたしました。
これらの結果、当年度末の円建無担保普通社債の残高は7,100億円、円建公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)(注)の残高は4,000億円、米ドル建無担保普通社債の残高は15億米ドルとなりました。
(注)ハイブリッド社債(劣後特約付社債):資本と負債の中間的性質を持ち、利息の任意繰延、超長期の償還期限、清算手続き及び倒産手続きにおける劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有した社債
(有利子負債)
有利子負債は、無担保普通社債の発行等により、前年度末の1兆4,571億円から当年度末には1兆6,263億円へと増加しました。なお、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2021年6月に複数の取引銀行と期間を3年間とするコミットメントライン契約(注)を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額6,000億円ですが、借入実績はありません。なお、当該契約は2024年6月に満期を迎えたことに伴い、同月に総額6,000億円で契約を更新しています。
(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約
(格付け)
当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。
R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期)
S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期)
ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:安定的)
②キャッシュ・フロー
当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは8,669億円、投資活動により減少したキャッシュ・フローは5,788億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、2,881億円(前年差1,114億円の良化)となりました。
なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは8,669億円(前年度は5,207億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、棚卸資産の減少などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少したキャッシュ・フローは5,788億円(前年度は3,440億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、車載電池を中心とした設備投資の増加などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により減少したキャッシュ・フローは835億円(前年度は6,070億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、前年度に新体制への移行に伴う一時的な借入を返済したことや、当年度において無担保普通社債を発行したことなどによるものです。
これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は1兆1,196億円となり、前年度末に比べ3,001億円増加しました。
③設備投資額と減価償却費
当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の3,091億円から2,589億円増加し、5,680億円となりました。主要な設備投資は、「エナジー」における車載用のリチウムイオン電池等の生産設備及び北米の新工場建設、「くらし事業」におけるA2W他の家庭用電化機器・電設資材等の生産設備、「インダストリー」における電子部品・制御機器等の生産設備、「オートモーティブ」における車載機器等の生産設備、「コネクト」におけるB2Bソリューション事業関連機器等の生産設備です。
減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の1,966億円から106億円増加し、2,072億円となりました。
④資産、負債及び資本
当年度末の総資産は9兆4,112億円となり、前年度末に比べ1兆3,517億円の増加となりました。これは、主に現金及び現金同等物、有形固定資産などの増加や、円安による為替変動の影響などによるものです。
負債は、前年度末に比べ4,197億円増加し、4兆6,893億円となりました。これは、主に無担保普通社債の発行や円安による為替変動の影響によるものです。
親会社の所有者に帰属する持分は4兆5,441億円となり、前年度末に比べ9,257億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益及び円安の進行によるその他の包括利益の計上などによるものです。また、非支配持分を加味した資本合計は4兆7,219億円となりました。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の44.9%から増加し、48.3%となりました。
(1) クロスライセンス契約
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相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
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Koninklijke Philips Electronics N.V. |
オランダ |
携帯電話・AV製品に関する特許実施の相互許諾 |
自 2007年3月 至 特許満了日 |
(2) パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社の株式の譲渡に関する株式譲渡契約及び株主間契約の締結
当社は、2024年3月29日付の取締役会において、当社100%出資の連結子会社であるパナソニック オートモーティブシステムズ株式会社(以下、「PAS」)の事業に関して、Apollo Global Management, Inc.をはじめとするアポロ・グループ(以下、「Apollo」)と当社が共同パートナーになることを目的に、PASの全株式を、Apolloが投資助言するファンドが間接的に全株式を保有するStar Japan Acquisition 株式会社(以下、「新PAS親会社」)に譲渡するとともに、当社が新PAS親会社の全株式を保有する持株会社であるStar Japan Holdings株式会社(以下、「本持株会社」)の株式20%を取得すること(以下、「本件取引」)に関し、新PAS親会社との間で、株式譲渡契約を締結すること、及びApolloとの間で株主間契約を締結することを決議し、同日付で締結しました。
本件取引により、2024年度末までのクロージング予定日(規制当局の承認を含む一般的な契約上の条件等を満たすことを前提とし、以下「クロージング予定日」)をもって、PASは当社の連結子会社ではなくなり、本持株会社(本持株会社の孫会社となるPASを含む)は当社の持分法適用会社となります。主な内容は次のとおりです。
①本件取引の内容:
当社は、オートモーティブ事業に関して、Apolloと共同パートナーとなるため、本件取引に先立ち、本件取引の対象事業であるオートモーティブ事業を行っている当社の各連結子会社の事業・資産等をPASのもとに集約する組織再編を行う予定です(注)。その後、クロージング予定日に当社はPASの全株式を新PAS親会社に譲渡し、本持株会社の株式の20%を取得します。なお、本件取引後もPASはその商号及び当社の商標を一定期間使用する予定です。
(注) 本件取引に先立ち実施予定の組織再編により、本件取引の対象であるオートモーティブ事業を行っている当社の各連結子会社の事業・資産等はPASのもとに集約されますが、Ficosa International, S.A.(以下「Ficosa」)は、本件取引の対象とはならず、引き続き当社の連結子会社のままとなります。
②譲渡価額:
企業価値3,110億円からFicosaの企業価値及びコスト構造の変化に伴う調整額である約700億円を控除した約2,400億円に、今後PASの純有利子負債、運転資本及び設備投資額に基づく調整等を行い、最終的な譲渡価額を確定します。
(3) 米国 One Network Enterprises, Inc.の買収契約の締結
当社は、2024年3月29日付の取締役会において、当社100%出資の連結子会社であるパナソニック コネクト株式会社の子会社であるBlue Yonder Holding, Inc.が、米国One Network Enterprises, Inc.を約8億3,900万ドルで買収する契約を締結することを決議し、同日付で締結しました。
買収の完了は、通例の前提条件の適合、必要な規制承認などを含み、2024年度第2四半期をめどに予定されています。
当社グループは成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、「地球環境課題の解決」への貢献と、「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」へのお役立ちを目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。
(1) くらし事業
主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・省エネ・CO2排出削減に貢献する空調・給湯・暖房領域での研究開発を強化
空調・給湯・暖房領域で中長期研究開発を強化するための体制構築に取り組みました。滋賀県草津市に新研究拠点を設立、カーボンニュートラル実現に向けてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)対応やヒートポンプ・自然冷媒など地球環境に配慮した技術開発を推進、拠点建屋では当社省エネ製品をフル活用し、従来の建物で消費される一次エネルギーを基準に53%のエネルギー削減を実現、ZEB Ready(注)を達成しています。またAI・クラウドを活用した空質空調のソリューション事業開発に特化した拠点を大阪の梅田に開設、当社が培ってきたデータ分析・AI技術を活用し顧客接点強化を図りました。
・投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能な「廃家電自動解体システム」を開発
使用済み家電製品の解体作業のさらなる効率化を目指し、平林金属㈱の協力のもと、「廃家電自動解体システム」を開発しました。家電製品のリサイクルにおいて、業界初となる投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能なシステムとなります。国内では、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)に沿って、適切にリサイクル処理を行っていますが、一方で、家電リサイクル工場においては、労働人口の減少や、繁忙期に集中する作業負荷などの課題を抱えており、さらなる作業の効率化が求められています。本システムでは、今後、回収量の増加が見込まれるエアコン室外機に焦点を当て、部品ごとに解体品位を維持したまま、解体工程で最も時間がかかる室外機カバーからコンプレッサー外しまでの工程を自動化することで、より安定的・継続的な家電リサイクルを実現します。
今後も開発を推進し、さらなる資源循環に貢献してまいります。
(2) オートモーティブ
主に車載向けのコックピットシステム、キャビンUX(ユーザーエクスペリエンス)、EVパワエレなどの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・クラウド対応したデジタルコックピットソリューションの開発
車両開発サイクルの初期段階から自動車開発者を支援するための、クラウドサービス環境の利用を前提としたクラウドネイティブな車載ソフトウェア開発環境Virtual SkipGen™(vSkipGen™)を開発・構築しました。vSkipGen™は、自動車においてこれまで一体であったハードウェアとソフトウェアを分離し、クラウドサーバーの計算能力を活用して、それぞれを独立して進化させることで、市場投入までの時間を短縮し、ソフトウェアの品質を向上させています。新たな開発環境による試作段階でのハードウェアの削減を含め、パナソニックグループの環境目標にも貢献してまいります。
また、複数のECU(Electronic Control Unit)の機能を集約し冗長なコンポーネントを削除することにより、車両のコストと重量の削減との統合による複雑さを軽減ができる、Neuron™ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムも開発しました。このHPCシステムは、高性能かつ大量データの入力処理機能を備え、アップグレード可能で拡張性があり、進化する車載プラットフォームに対応できる将来性を備えています。
これらの先端的な取り組みにより、コックピット領域において、インフォテインメント機器やフルディスプレイメーターなどの実績のある商材をさらに発展させUX価値の向上・環境への貢献を図り、今後、急速に進化するモビリティニーズに対応するソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)化の進化に貢献してまいります。
・車載サイバーセキュリティ対策をより強固で安全にするサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションを開発
自動運転技術の発展や、デジタル化の進展、コネクテッドカーと呼ばれるネットワークに接続する車両の増加などに伴い、年々高まる自動車を狙ったサイバー攻撃リスクに対し、セキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」を開発しています。
本年開発した「VERZEUSE®」のサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションは、セキュアブートによるプログラム起動時のチェックのみならず、実行中もセキュリティ監視機能が正しく動作していることを完全性監視ソフトウェアが常時チェックします。この完全性監視ソフトウェアを信頼された領域に配置し、信頼された領域からセキュリティ監視機能のチェックを行う多段構成を取ることで、車両内におけるセキュリティ監視機能を堅牢化します。「VERZEUSE®」の仮想化セキュリティソリューションは、ICT分野の世界的アワードInforma Tech Automotive Award2023において「Collaborative Partnership of the Year」を受賞しています。
サイバー攻撃の脅威からの車両の保護を一段階上位の安全性で実現するセキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」により、安心・安全なモビリティ社会の発展に寄与してまいります。
(3) コネクト
主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・倉庫ソリューションの上位レイヤーから実行レイヤーまでの最適化を実現する技術を開発
倉庫管理システム上の入出荷情報に応じて、AIアルゴリズムがロボットアームや自動倉庫、人による作業などのタスクを最適に割り当て、商品の出荷作業の同期を実現する新技術「タスク最適化エンジン(仮称)」を開発しました。本技術により、物流の大きな課題であるトラックの荷待ち時間を最大50%削減することが可能です。さらに、本技術と連動して倉庫内で商品のピッキングを行うロボットハンドを制御するロボット制御プラットフォームを開発しました。これらをオープンプラットフォームとして提供していきます。
今後も、ハードとソフト、AIに加え、IE(Industrial Engineering)の知見を組み合わせた当社の実行系ソフトウェアと、米国子会社Blue Yonder Holding, Inc.のソフトウェアを繋げることで、世界トップクラスのサプライチェーンプラットフォームを構築し、世界中の社会課題やお客様の経営課題解決に貢献してまいります。
・つかんだものを落とさずに回し続けられるロボットハンド制御技術を開発
カメラ画像を、ロボットを制御するための視覚機能として活用し、対象物の形状や姿勢に応じてロボットハンドを制御しながら、把持した対象物の位置や姿勢をロボットハンド内で変更することが可能な技術を中央大学と共同開発しました。本技術は、製造現場での部品組立作業、物流現場での様々な形状の対象物を高密度に整列させる箱詰め作業や、形状に個体差がある青果等において個体毎に形状をリアルタイムで検出し対象物を整列させる作業など、これまで人手に頼っていた作業の自動化に貢献します。こうした技術は、小売店舗等の流通現場においても、商品陳列など対象物を決まった姿勢で並べる作業への応用が見込まれます。
(4) インダストリー
主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・開発ノウハウとデジタル技術を組み合わせて実験設備を自動化したスマートラボを開設
大阪府門真市の旧本社構内に24時間/365日稼働する自動実験室スマートラボを導入・開設しました。スマートラボは、これまで進めていたAIやMI(マテリアルインフォマティクス)、PI(プロセスインフォマティクス)と装置を組み合わせることで、飛躍的に材料開発プロセスの高度化・スピード化が図れます。
コンデンサの開発向けに導入しており、材料準備、濃度調整や温度管理、実験データの収集など、これまでは技術者が手作業で行っていた単純作業を自動化することで、技術者はより創造性ある付加価値の高い研究開発業務に集中することができるようになります。また、遠隔操作による実験が可能になることで、日本国内に限らずグローバルで技術者の活躍の場を広げていきます。
今後は、電子材料やモータなど他の製品開発にも展開していく予定で、スマートラボを起点にインダストリー事業の技術開発を強化してまいります。
(5) エナジー
主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・EV電池のエネルギー密度のさらなる向上を実現する次世代電池開発を加速
現在負極材に広く使用されている黒鉛に比べ、理論値で約10倍という高い容量を有する特徴を持つシリコン材を使いこなす技術を開発してきました。加えてパートナー企業と連携して高容量かつ充電時の膨張を抑制する技術を導入することで、負極材中の黒鉛をより多くの比率でシリコン材に置き換え、エネルギー密度を向上させることが可能となります。
今後も更なる電池の高性能化を推進し、体積当たりのエネルギー密度を現行比で2025年までに5%向上、2030年までに25%向上させるという目標の実現を目指します。
(6) その他
エンターテインメント&コミュニケーション
主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・新たなオペレーションシステム(OS)搭載による体験価値を創出するテレビを開発
これまで培ってきた高画質・高音質技術、通信・デジタル技術、機器連携などのハード・ソフトウェア技術を活用し、Amazon Fire TVが持つUX開発力やコンテンツ力を融合することで、視聴者一人ひとりのライフスタイルや視聴環境に応じたストレスフリーなコンテンツとの出会い、コンテンツに最適な画質・音質による映像の没入体験、家と移動空間またIoT機器や録画機器とのシームレスなつながりを実現する技術開発を行います。2024年度のグローバルフラッグシップモデルから、OSにAmazon Fire TVを搭載し、コンテンツ適応画質などの独自技術を取り入れ、操作性や機器連携を進化させた新製品を導入していきます。
今後も映像・音響・通信の技術で、お客様のウェルビーイングに貢献する商品サービスを提供してまいります。
ハウジングシステム
主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・震度7の繰り返す巨大地震にも耐えられる独自の基準を設定した「テクノストラクチャーEX」を開発
1995年阪神淡路大震災以降に震度6弱以上の地震は60回以上発生しており、2016年熊本地震においては震度7の激震が同一観測点で2回計測されるなど、繰り返す地震によって建物の被害が拡大しました。地震への備えがより求められる背景のもと、「テクノストラクチャー工法」の特徴である緻密な許容応力度計算による耐震性に加え、独自人工地震波による動的な建物変形を可視化する「4D災害シミュレーション」と、地震の力を吸収するオリジナル制震ダンパー「テクノダンパー」を組み合わせることで、建物への影響を最小限に抑制する技術「テクノストラクチャーEX」を開発し、繰り返す巨大地震への強さを実現しました。
今後も、人々の「くらし」に寄り添い、人と社会へ新たな価値を提供してまいります。
技術部門・共通事項
主に、技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術・共通技術基盤開発などを行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・世界初、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発
当社独自の材料技術やインクジェット塗布製法と、レーザー加工技術を組み合わせることでサイズ、透過度、デザインなどの自由度を高め、カスタマイズにも対応可能な世界初ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発しました。30cm角モジュールで18.1%の世界最高レベルの光電変換効率を有しています。プロトタイプを試作し神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンにて性能や耐久性などの技術検証を含めた1年以上にわたる長期実証実験を昨年8月より実施しています。またメートル級の試作ラインを導入し、大面積製造プロセスを開発中です。
今後もペロブスカイト太陽電池をまち・くらしに調和する「発電するガラス」と位置づけ、再生可能エネルギーの創出と都市景観の調和を両立するとともにCO2削減に貢献してまいります。
・画像認識を中心としたAI技術の社会実装に向けた技術開発を推進
当社が長年培ってきた画像認識技術をAIに適用、膨大なデータ数・計算量を低減し社会実装する技術を開発しています。例えば、種々の属性に共通して有効となる顔認証モデルを学習することで、データ数が少ない特定モデルの認証精度低下を抑制する技術や、AIモデルが学習していない物体の「知ったかぶり誤認識」を防ぐ技術、悪天候環境で画像認識精度を上げる技術などを開発、いずれもAIや画像認識領域で権威のある国際学会に採択されました。こうした採択数は年々増加(前年比1.5倍)しています。また生成AI活用による業務効率向上を目的に大規模言語モデルをベースに自社向けのAIアシスタントサービスを開発、自社独自情報も活用できるよう機能を拡大、業務での活用を目的とした運用を開始しています。
今後も当社は、AI活用技術の社会実装を加速し、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献する研究開発を推進していきます。
・くらしに密着し、しごとの現場で社会課題解決に貢献するロボット活用技術を開発
深刻化する物流領域での労働力不足や効率化に貢献するロボット活用技術を推進しました。荷物配送の現場では、これまで培ってきた自動配送ロボット技術・実証実績に基づき、改正道路交通法を踏まえた届出制による自動配送ロボットの運用を業界に先駆け実現しました。また物流倉庫の現場では、ロボット制御技術、センシング技術、AI技術を組み合わせて一元制御することにより、倉庫で変動する多様な商品への対応が可能となった「ロボット制御プラットフォーム」を開発、ひとによる作業や機能の制約を解き放つ技術群を開発しました。
今後も当社は、ロボット技術があるからこそ実現できる、より便利な世の中や、より豊かな世界を目指し、開発を加速いたします。
(注) 「ZEB(ネットゼロエネルギービル)」を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な
省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削
減に適合した建築物