(1)経営方針、経営環境、経営戦略等
当社は、「ビジネスの未来をデジタルで創る、ビジネスの未来をユーザーと創る。ユーザーエクスペリエンスからすべてが始まる。」を経営ビジョンとし、培ってきたユーザーエクスペリエンスデザイン(顧客体験設計:以下、UXD)とデジタル技術のノウハウを活かして、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)とデジタルマーケティングを支援する事業を行っています。また、UXD領域においてNo.1ブランドになることを目指し、既成概念にとらわれない提案力や先端的な技術力を強みとした、独自性の高いサービスを提供し続けることを方針としております。
インターネットの普及、スマートフォンの各世代への浸透、各種サービスのオンライン化、および常時接続環境の拡大等により、人々の生活様式、価値観、購買行動などが劇的に変化しています。企業や行政をはじめとするあらゆる組織体が、このような変化に対応するために、デジタル技術を用いてビジネスモデルやビジネスプロセスを変革するDXに取り組んでおり、当市場に対する投資需要が旺盛であることは、当社の事業環境として追い風と考えています。一方で、市場の拡大に伴い、戦略コンサルティング企業、広告代理店、SIベンダー等がデジタルマーケティング領域に参入し、当社をとりまく競争環境は厳しくなっています。また、DXが顧客企業の経営の中核に据えられるようになった結果、組織改革や多様な社内システムの連携が必要になり、技術上も進行管理上も、DXを推進するプロジェクトの難易度は高まっております。
このような事業環境の中、当社は、「徹底したユーザー視点でサービスを考える」UXDや、マーケティング、システム開発のノウハウを融合した独自のソリューションを提供しております。また、今後、顧客企業は、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)と呼ばれる顧客と直接繋がることで生み出される新たな収益基盤の開発に一層注力していくと想定し、戦略的に重要なオウンドメディア領域を中心とした新サービスの開発支援に注力することで差別化を図っております。さらには親会社である株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)との資本業務提携を通して、高度なシステム開発およびプロジェクト管理のノウハウを取り込み、競合企業に対して競争優位を確保しております。
当社は、今後の事業成長に向けて、当社の強みを活かしつつ、その優位性を高めるために、オウンドメディア領域内でのサービス提供領域を広げ、Webから様々なデバイスまで、デジタル・リアルを問わないマルチチャネル化を進めていく方針です。強固な顧客基盤を有するNTTデータとの協業を強化して営業効率を高め、多様化するニーズに対して複数のソリューションを総合的に提案する活動を推進し、オンラインとオフラインの垣根のない最良のユーザーエクスペリエンス(顧客体験:以下、UX)の実現を通して、顧客企業のデジタルマーケティング及びDXに大きな成果をもたらすことで、当社事業の成長を図っていきます。また、多様なソリューションを横展開できるようにノウハウの型化に注力するとともに、SaaS型サービスを組み合わせて効率化し、事業の収益性を高めて行く方針です。
一方、デジタル業界は人材の流動性が高く、当社人材の流出リスクも高い上、DXに対する投資需要の高まりに伴って優秀な人材の獲得も益々困難になってきており、当社の今後の成長に向けて人材の確保・育成は急務の課題となっております。人材採用に注力するとともに、パートナー企業と協働して若手IT・デジタル人材を育成する取組みを推進しております。またジョブ型雇用や地方採用など雇用形態の多様化の他、テレワークや時短など柔軟な勤務形態の充実をはかり、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂性)に対応した施策を推進し、多様な価値観を持つ多様な人材が、やりがいを持って生き生きと挑戦できる魅力的な職場環境作りに努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
主な成長性・収益性の指標として、売上高及び売上総利益率、営業利益率を重視しております。なお、当社は中長期的な成長を目指して新サービスの開発、M&A等の投資を積極的に行う方針であり、短期的には営業利益率が低下することがあります。
(3)優先的に対処すべき課題
当社は、以下の事項を主要な課題として認識し、持続的な成長を図ってまいります。
① 人材の確保と育成
引き続きデジタル業界は人材の流動性が高く、またDXに対する投資需要の高まりに伴ってデジタル人材の需要は急増しており、優秀な人材の獲得も益々困難になってきております。当社の今後の成長に向けて人材の確保・育成は急務の課題であり、採用チャネルの多様化を含めて人材採用に注力するとともに、パートナー企業と協働して若手IT・デジタル人材を育成する取組みを推進しております。当社では「既存サービスの拡大」「新規サービスへの取り組み」の強化に取り組んでいます。中長期的な視野で事業の主軸となる人材を定め、戦略的に確保・育成するとともに、それらの人材のパフォーマンスを最大化するための仕組みを整備してまいります。
② 既存サービスの拡大
DXは一過性のシステム開発やソリューション導入では解決できず、顧客企業内での横断的で能動的な連携が不可欠であり、それらを踏まえた上での高いレベルでのプロジェクト計画策定力と推進力が求められます。また、サービスや製品が飽和する社会において、供給側の企業と需要側のエンドユーザーを適切に結びつけるためにもUXを中心としたアプローチの優位性は年々高まっています。当社は事業成長に向け、当社が強みとするオウンドメディア領域内でのサービス提供領域を広げ、Webからアプリなど様々なデバイスに対応し、デジタル・リアルを問わないマルチチャネル化を進めていく方針を掲げ、デジタルとリアルでの一貫したUXの実現に向けた取り組みを始めています。今後はこの動きをさらに加速し、マルチチャネルでの顧客企業とエンドユーザーの接点を改善することで顧客企業のビジネス支援を強化し、当社の提供価値を高めて事業収益性を向上させてまいります。
③ 新規サービスへの取組み
将来的な事業規模の拡大と収益性の向上を目指し、従来型の受託サービスと並行して、新しい領域のサービス立ち上げの取り組みを行っています。地域活性化などの社会課題解決を切り口とした自治体との連携や、パートナー企業との共創によるサービス開発を複数進めており、新たな事業基盤とするべく投資を継続してまいります。
④ NTTデータグループ企業との協業
親会社であるNTTデータとの資本業務提携以降、NTTデータが持つ顧客資産や技術力を背景として、案件拡大や新規顧客開拓において成果を上げています。NTTデータとの注力領域については引き続き協議を重ね、より一層の協働強化を行い、NTTデータグループ企業の顧客企業に対してUXを基軸としたサービス提供並びに取引規模拡大を図ってまいります。
⑤ イノベーションを生み出す職場環境づくり
デジタル技術の発展に伴い、多様な背景、経験、文化を持つデジタル人材が必要となっております。当社は、リモートワーク制度やフレックス制度、時短勤務制度に加え、社外での活動を可能とする副業制度や兼業制度を導入しており、ジョブ型雇用や地方採用など雇用形態の多様化の他、柔軟な勤務形態のさらなる充実を図っていく方針です。また、当社は、サステナビリティ経営への取組みを目的として、2023年5月に、「サステナビリティ委員会」を設置しており、人材こそが最も重要な資本と位置付け、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂性)に対応する施策を推進し、多様な価値観を持つ多様な人材が、やりがいを持って生き生きと挑戦することで組織のイノベーションを生み出す職場環境作りに努めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当社は、顧客企業や社会が抱える課題をデジタルの力で解決する事業を行っております。顧客企業や社会が持続的に発展していくため、UX(顧客体験)設計ノウハウとデジタルテクノロジーを活用したソリューションを提供、進化させて行くとともに、新たな価値を創出するビジネスに継続的に取り組みます。また人材育成や多様性の尊重等を強化する企業活動を行い、自身を変革し続けることで、当社の持続的な成長をはかっていく方針です。
①ガバナンス
当社は、サステナビリティ経営への取組みを目的として、2023年5月に、「サステナビリティ委員会」を新設しました。サステナビリティ課題について、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行います。
<取締役会>
取締役会は、サステナビリティ課題に対する取組み状況について、サステナビリティ委員会から年1回以上の報告、付議を受けてモニタリングを行い、設定した対応策や目標を監督します。また、監査等委員会は、サステナビリティ委員会に対して適宜助言を行います。
<サステナビリティ委員会>
サステナビリティ委員会は、マテリアリティ(重要課題)の特定や見直しをはじめ、ダイバーシティや労働環境、人権、環境問題など社会問題に関する施策、取組みについて審議、議論を行います。マテリアリティを含む重要事項につきましては、業務執行の最高機関である経営会議での審議、議論を経て、取締役会に報告、付議を行い、取締役会における審議結果は、経営計画やリスク管理・評価に反映されます。同委員会の委員長は代表取締役とし、メンバーは、リスク管理部門や人事部門などの管理部門責任者の他、事業部門、次世代を担う若手社員などで構成され、審議、議論を深めるため、年4回以上の頻度で開催します。
(体制図につきましては
②リスク管理
サステナビリティ委員会は、サステナビリティ課題に係るリスクと機会を洗い出し、識別されたリスクについて影響度等を評価します。また重要度に応じて対応策と目標を策定し、経営会議における審議を経て、取締役会に報告、付議します。取締役会は、報告、付議されたリスクを審議し、決定した対応策や目標を監督します。同委員会は、対応策の実施を全社的に推進するとともに、関係部門に対して必要な指示を行い、経営計画の施策として取り上げたものについては、各部門の計画に組み込んだ上で進捗管理を行います。また、対応策の取組み状況や設定した目標の進捗状況について、経営会議及び取締役会に定期的に報告します。
(2)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
①戦略
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
(ⅰ)人的資本の位置づけと基本方針
当社は、デジタルマーケティングを中心に、顧客企業や社会が抱える課題をデジタルの力で解決する事業を行っており、人材こそが、最も重要な資本と考えています。社会が必要とする新しい価値の創造には、多様な価値観や好奇心から生まれる斬新な発想や、高い専門性を持つ多様なプロフェッショナルの集合体としての実装力が必要となります。当社事業における人材が活躍するためには、日々変化、進化する専門知識の習得に加え、数多くの実務経験を通して自らが変化、進化し、常に挑戦し続けるマインドと挑戦できる環境が重要となります。生活のあらゆる場面でデジタル環境への変革が進む中、IT人材不足の深刻化が予想されており、当社は社会の持続性を支えるためにも、社会変革に必要な人材を確保・育成するとともに、多様な価値観を持つ多様な人材が、やりがいを持って生き生きと挑戦できる環境の整備を進めてまいります。
(ⅱ)人材育成方針
当社は、人材育成方針として、従業員の内発的動機を引き出すことを主眼においています。従業員それぞれが高い専門性を持ち続けることを奨励しており、社内研修や外部セミナーへの参加の他、スキルアップ支援制度を導入して自発的な取組みを促進しています。また専門知識や社会課題をテーマとして学び合う勉強会などを通じて、お互いに刺激を受けてモチベーションを高め、知識や経験を共有することで自己成長のスピードを早めるとともに、多様なプロフェッショナルの集合体として機能する組織力の醸成に注力します。
(ⅲ)社内環境整備方針
<人材の採用と登用>
当社は、中途採用を主として、思想、信条、性別、国籍等に関係なく、能力や実績を重視した公正な採用を実施しております。また人材登用の考え方として、自ら学び、チームワークを大切にし、内発的動機を引き出す人材を重視しています。女性の採用につきましては、女性活躍推進法の趣旨に則り、積極的な採用を実施しておりますが、過去の傾向から管理職位への登用には課題があると考えており、管理職に対するダイバーシティ研修の他、キャリアプラン支援など実効性のある施策に中長期的に取り組みます。
<多様性の確保>
当社は、従業員の生産性やワーク・ライフ・バランスの向上を図るため、従業員が、それぞれのライフスタイルや育児・介護等のライフイベントに応じて多様な働き方を選択できるように、リモートワーク制度やフレックス制度、時短勤務制度に加え、趣味や得意分野での社外での活動を可能とする副業制度や兼業制度を導入しています。多様なバックグラウンドや経験を持つ人材が活躍するためには、組織全体でダイバーシティとインクルージョンに対する意識を一層高める必要があり、多様性と組織力を尊重する文化を醸成します。
②指標及び目標
当社では、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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目標指標 |
実績 2023年3月期 |
実績 2024年3月期 (当事業年度) |
目標
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76.2% |
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27.3% |
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(注)UXD(顧客体験設計)スキル取得のために当社が独自で開催する講習
目標指標につきましては、サステナビリティ委員会等で検討し、充実させていく方針です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)事業及び事業環境に関するリスク
① 人材の確保・育成
当社の事業におきましては、個々の人材の知識や能力に依存する要素が大きく、優秀な人材の継続した確保と育成が必要となります。人材確保につきましては、優れた専門性を有した多様性に富む人材の採用に努めるとともに、働き方の多様化に対応した雇用形態や、リモートワークを中心とした柔軟な勤務形態など、労働環境の整備を推進しております。また人材育成については、各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、内発的動機を引き出す教育プログラムや人材マネジメントの拡充を図って行く方針です。しかしながら、このような取組みにもかかわらず、優秀な人材の確保及び育成が想定通りに進まなかった場合には、競争力の低下や事業拡大の制約要因となり、中長期的な成長が低下する可能性があります。
② 景気変動
当社の取引は、顧客企業のDX予算やマーケティング予算の影響を強く受けます。地政学リスクの高まりによる資源価格の高騰や物価上昇による個人消費への影響等、景気の変動によって顧客企業の予算が縮小した場合には、受注が減少し、売上高が減少する可能性があります。また、当社の事業領域に対する企業の投資意欲が後退した場合には、新たな顧客企業の獲得が想定どおりに進まない可能性があり、当社の事業展開、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 競合激化
当社の事業領域におきましては、専業の競合企業が複数あるほか、コンサルティング領域の企業や広告代理店、システムインテグレーター、個人事業主等も参入しており、厳しい競合環境にあります。また、当社の事業は特許等で保護されているものではないため、当社が保有する技術及びノウハウ等が陳腐化し、市場競争力が低下する可能性があります。当社は、優秀な人材の確保・育成や、競争優位性の維持・向上に向けたサービスの拡充、またさらなる成長基盤の開発に努めていく方針ですが、これらの取組みが想定どおりの成果をあげられない場合や、費用が想定以上に増加した場合には、当社の事業展開、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。
④ 受注案件の採算性
当社は、プロジェクト案件の採算性等を十分検討して受注活動を行っておりますが、仕様変更への対応等により、当初の見積り以上の作業工数が必要となる場合があり、想定以上の費用負担によりプロジェクトが不採算化するリスクがあります。また、受注競争の激化や受注拡大に伴う人員不足等に起因した外注費の増加、見積り精度の低下等が生じた場合には、事業全体の採算性の悪化につながり、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社ではプロジェクト単位、顧客単位の採算性を可視化し、受注時及びシステム要件定義時のレビュー等の強化をはかり、受注案件の採算性を適正に確保することに努めております。
⑤ 新規サービス
当社は、事業規模の拡大と新たな収益基盤の構築に向けて、新規サービスの開発に対する取組みを継続的に進めて行く方針です。人材の確保やプロダクトの開発等に関する追加投資が発生し、損益が悪化する可能性があるほか、新規サービスが安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要する場合も予想され、全体の利益率が低下する可能性があります。当社では、新規サービスの開始や投資に当たっては、投資回収方針等を吟味した上で計画を策定しておりますが、将来の環境変化等により、新規サービスが当初の計画どおりに進捗せず、投資に見合う十分な回収を行うことができなかった場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 技術革新
当社は、インターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、当該領域の技術革新や顧客ニーズの変化は非常に早く、極めて激しい技術開発競争が行われており、新しいサービスが相次いで市場に展開されています。当社は多様性に富む優秀な人材の確保に努め、新技術の知見やノウハウの獲得に注力しておりますが、当社が予期しない革新的な技術が開発され、当社の対応が遅れた場合は、当社が提供するサービスの競争力が低下し、当社の事業展開や業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑦ M&A
当社は、パートナー企業との業務提携や資本提携等を通じて事業の拡大を図っていく方針であり、当社と提携先の持つ技術やノウハウ等を融合することにより、事業シナジーを発揮することを目指しております。M&Aを行う場合には、対象企業の財務内容、契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを回避するように努めておりますが、時間的な制約等から十分なデューデリジェンスが実施できない可能性のほか、買収後において偶発債務の発生等のリスクがあります。また、新サービスを目的とした提携においてはその性質上、当該新サービスによる当社の事業及び業績への影響を確実に予測することは困難であり、当初見込んだ効果が発揮されない場合や、これらの提携等が何らかの理由で解消された場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ NTTデータとの資本・業務提携
当社は、NTTデータと資本・業務提携契約を締結しており、2024年3月31日現在、同社の議決権所有割合は48.5%でありますが、実質的な支配力基準により、当社は同社の連結子会社となっております。当社は自ら経営責任を負い、独立した経営を行うとともに、重要事項等については同社に報告を行っております。現状、同報告は当社の意思を妨げたり、拘束したりするものではなく、同社においても同様の認識であることを確認しておりますが、同社は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあるほか、議決権の行使にあたり、同社の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。また今後、同社の経営方針や事業戦略が変更された場合、あるいは同社の当社株式の保有比率に大きな変更があった場合等においては、当社の事業運営、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 特定顧客への依存
当社の事業は、インターネット関連投資を行う企業等を主たる顧客としており、顧客の経営方針、戦略等から特定顧客との取引が急激に拡大し、結果として特定顧客への依存度が相対的に高くなる場合があります。当社は、バランスの取れた受注活動を行い、特定顧客への依存度が過度に高くならないように努めておりますが、人材リソースの問題等からこのような依存度が高い状況が発生した場合、主要顧客の戦略の変化や業務上のトラブル、その他何らかの要因等により主要顧客との取引が急激に減少した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(2)コンプライアンスに関するリスク
① 顧客情報、個人情報の漏洩
当社が取り扱う機密情報及び個人情報について、漏洩、改竄又は不正使用が生じた場合には、適切な対応を行うための費用や損害賠償請求、また信用の失墜や顧客企業との取引停止等によって、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社は、これらの情報管理を事業運営上の重要事項と認識しており、必要なシステム面でのセキュリティ対策や社員教育を継続的に強化して行く方針です。なお、当社は、社団法人情報サービス産業協会よりプライバシーマークの認定(認定番号第11820395)を受けております。
(3)財政状態に関するリスク
① 業績の季節偏重
当社の業績は、多くの顧客の事業年度末となる3月に納品・検収が集中することから第4四半期会計期間に偏重する傾向があり(3月単月売上高541百万円:通期売上高の15%)、当事業年度におきましては、売上高の29%、営業利益の124%、経常利益の124%を第4四半期会計期間に計上しております。当社は、当該季節的要因を踏まえた受注活動やプロジェクト運営に努めておりますが、顧客企業のスケジュールの変更や人材リソースの不足等により、予定通りに 納品・検収が行われなかった場合には、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 災害等に係るリスク
地震、火災等の自然災害や、戦争、テロ、感染症の流行(パンデミック)等が発生し、当社において人的被害または物的被害が生じた場合には、当社の業務の遂行が困難となり、当社の業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。当社では危機管理規程を定め、平時より危機管理対策委員会を中心に災害等への備えを行い、インシデントが発生した場合には、非常事態宣言を発令し、危機管理対策委員会を中心に対応を行うとともに、インシデントの種類や内容に応じて事業継続計画(BCP)を発令し、当社の事業継続を確保する体制を執っております。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しの動きがみられました。その一方、円安に起因する輸入価格高騰による物価上昇や、深刻な人手不足による人件費の高騰など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いています。
当社が事業領域とするデジタルマーケティング関連領域におきましては、デジタル技術を用いて製品やサービス、ビジネスモデルを変革する「デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)」に対する国内企業の投資意欲は底堅く、2023年の情報サービス業全体の売上高は、前年比106.7%、またインターネット付随サービス業全体の売上高は前年比106.3%と堅調に推移しています(経済産業省発表「特定サービス産業動態統計調査」)。行動制限の緩和に伴って生活者の購買行動はさらに多様化し、多くの企業において、顧客一人ひとりのニーズに応えるサービスの開発やマーケティング活動がますます重要になるとともに、少子高齢化に伴う労働人口の減少や賃金上昇への対応として、デジタル技術を活用した生産性向上や競争力強化など抜本的なビジネス改革に対する取り組みが必要となっています。
このような事業環境の中、当社は今後の事業成長に向けて、オウンドメディア領域内でのサービス提供領域を広げ、Webから様々なデバイスまで、デジタル・リアルを問わないマルチチャネル化を進めて行くとともに、デジタル技術を活用した新しいサービスの開発に注力する方針としています。2023年9月に、プロダクト型ビジネスへの取り組み及びDX領域におけるケイパビリティの強化を目的として、企業向けシステムの開発基盤をクラウドサービスとして提供する株式会社Hexabase(本社:東京都千代田区、代表取締役 岩﨑英俊)と資本提携いたしました。同社との協業を通じ、従来のWebサイト開発事業の質と範囲を拡張し、新たな事業機会を創出するとともにエンジニアリング領域における人材獲得、育成に取り組んでいます。同年12月には、株式会社TIGEREYE(本社:東京都中央区、代表取締役 上村学)が提供する生体認証クラウドサービス「TIGEREYE SOLUTION」について代理店パートナー契約を締結し、顧客企業に提供するソリューションの充実を目指しています。
一方、企業のDXに対する投資意欲の高まりに伴い、業界を問わないデジタル人材の獲得競争がますます激しくなっており、当社は人材の確保・育成を最重要課題と位置づけ、対応スピードを上げて取り組んでおりますが、人材採用につきましては計画通りに進捗しない状況が続くこととなりました。
業績に関しましては、上半期においてプロジェクトの規模の縮小や終了が重なり、また人材リソース(人材ケイパビリティ)の制約等から受注が伸び悩み、親会社グループからの受注も減少したことから、売上高は前事業年度比で減少しております。利益面につきましては、売上高の減少による利益の減少に加え、次期以降に向けたサービスの開発コストや人材の確保・育成に関する費用の増加等により、前事業年度比で減少いたしました。
以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ11百万円増加し、3,188百万円(前年同期比0.4%増)となりました。
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ54百万円減少し、471百万円(前年同期比10.3%減)となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ65百万円増加し、2,717百万円(前年同期比2.5%増)となりました。
b.経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高3,630百万円(前事業年度比7.4%減)、営業利益144百万円(前事業年度比48.5%減)、経常利益144百万円(前事業年度比48.6%減)となりました。当期純利益は、法人税、住民税及び事業税を27百万円、法人税等調整額を10百万円計上したことから106百万円(前事業年度比47.0%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、以下に記載の各キャッシュ・フローにより2,160百万円となり、前事業年度末に比べ59百万円減少いたしました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益144百万円を計上し、増加要因として、棚卸資産の減少額12百万円、未払金の増加額15百万円、減価償却費の計上6百万円等があり、また減少要因として、仕入債務の減少額25百万円、賞与引当金の減少額3百万円、法人税等の支払額39百万円等により、81百万円の収入(前年同期は153百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、減少要因として投資有価証券の取得による支出90百万円、有形固定資産の取得による支出4百万円、無形固定資産の取得による支出6百万円により、100百万円の支出(前年同期は敷金及び保証金の回収による収入等により127百万円の収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、減少要因として配当金の支払い40百万円により、40百万円の支出(前年同期は22百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の事業内容に、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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SIPS事業 |
3,366,121 |
△18.0 |
667,111 |
△26.7 |
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合計 |
3,366,121 |
△18.0 |
667,111 |
△26.7 |
(注)当社は、SIPS事業の単一セグメントであります。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
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SIPS事業 |
3,630,562 |
△7.4 |
|
合計 |
3,630,562 |
△7.4 |
(注)1.当社は、SIPS事業の単一セグメントであります。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(現 株式会社NTTデータグループ) |
1,352,954 |
34.5 |
321,582 |
8.9 |
|
株式会社NTTデータ |
- |
- |
800,279 |
22.0 |
|
スターバックスコーヒージャパン株式会社 |
508,299 |
13.0 |
447,404 |
12.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当事業年度末における資産につきましては、前事業年度末に比べ11百万円増加し、3,188百万円(前年同期比0.4%増)となりました。主な増加要因は、投資有価証券の増加90百万円等によるものであります。主な減少要因としては、現金及び預金の減少59百万円、仕掛品の減少12百万円等であります。
(負債合計)
当事業年度末における負債につきましては、前事業年度末に比べ54百万円減少し、471百万円(前年同期比10.3%減)となりました。主な増加要因は、未払金の増加12百万円等によるものであります。主な減少要因としては、買掛金の減少25百万円、未払費用の減少29百万円、未払消費税の減少13百万円等によるものであります。
(純資産合計)
当事業年度末における純資産につきましては、前事業年度末に比べ65百万円増加し、2,717百万円(前年同期比2.5%増)となりました。増加要因は当期純利益106百万円の計上、また減少要因は配当金の支払い40百万円であります。以上の結果、自己資本比率は、前事業年度末の83.5%から85.2%となりました。
2)経営成績
(売上高)
売上高は、前事業年度に比べ288百万円(7.4%)減少し、3,630百万円となりました。売上高の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(営業費用及び営業損益)
売上原価は、売上高の減少に伴った外注費の減少等により、前事業年度に比べ215百万円(7.1%)減少し、2,813百万円となりました。以上の結果、売上総利益は817百万円(前年同期比8.2%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ62百万円(10.3%)増加し、672百万円となりました。主な要因は、新規プロダクトの開発による研究開発費29百万円の増加、人件費の増加24百万円等によるものであります。以上の結果、営業利益は144百万円(前年同期比48.5%減)となりました。
(営業外損益及び経常損益)
営業外収益は、前事業年度に比べ59千円(11.9%)減少し、440千円となりました。営業外費用は、前事業年度に比べ31千円(2.4%)減少し、1百万円となりました。以上の結果、経常利益は144百万円(前年同期比48.6%減)となりました。
(特別損益及び税引前当期純損益)
税引前当期純利益は144百万円(前年同期比48.6%減)となりました。
(当期純損益)
当期純利益は、法人税、住民税及び事業税27百万円の計上の他、法人税等調整額10百万円を計上したことから106百万円(前年同期比47.0%減)となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、顧客企業から依頼を受け、デジタルマーケティング関連のサービスを提供する受託型のビジネスモデルを主な収益源としております。デジタルマーケティングのコンサルティング、ウェブサイトやソーシャルメディアのコンテンツやデザインの制作、マーケティングシステムの開発や運用、データ分析等のサービスを、大企業を中心とする法人に対してプロジェクト形式で提供しております。
各プロジェクトの収益は、売上からプロジェクトに関わった人件費や外注費等を差し引いた額となります。プロジェクトの管理が適切に行われない場合、顧客企業の要望と当社が制作する成果物との間に不整合が生じ、既に制作した成果物の改修等に人件費、外注費等のコストを追加投入することになり、プロジェクトの収益は悪化します。また、売上総利益には人員の稼働率も大きな影響を及ぼします。当社の固定費は主に人件費であり、受注の低迷等によって稼働率が低下した場合、会社の収益性は悪化します。当社が安定的に利益を創出するためには、適正な稼働率を確保した安定的な受注と、プロジェクトの適切な管理が重要な要素になります。
当事業年度におきましては、顧客都合によるプロジェクトの規模の縮小や終了が重なったほか、人材リソース(人材ケイパビリティ)の制約等から受注が伸び悩み、親会社グループからの受注も減少したことから、売上高、各段階利益ともに前事業年度比で減少しております。当社は受注の拡大に向け、強味とするUX(ユーザー・エクスペリエンス「顧客体験」)の知見を活かす形でサービスの提供領域を広げ、デジタル・リアル(店舗等)を問わないマルチチャネル化にスピードを上げて取り組み、また営業面を中心に、親会社であるNTTデータ及びNTTデータグループ企業との協業を強化して行く方針です。顧客企業に対して複数のソリューションを総合的に提供することで顧客基盤を強固にするとともに、多様なパートナー企業との共創により、デジタル技術を活用したプロダクトや新しいサービスの開発等、人員の稼働に過度に依存しないビジネス構造への転換にも積極的に取り組んで行く方針です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況・検討内容
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益144百万円を計上したことを主な要因として81百万円の収入となりました。当事業年度末における現金及び現金同等物は2,160百万円であり、通常の運転資金として不足のない水準と認識しております。2024年度における当社の主な短期的な資金需要としましては、営業活動上の運転資金の他、配当支払い等を見込んでおります。
当社の短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金となります。また緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱など不測の事態に機動的に対応するため、金融機関との間でコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結し、資金の流動性を確保しております。2024年度の経済見通しにつきましては、不安定な国際情勢や円安、物価の高騰に伴う購買意欲の変化等の流動的な要因により、景気の先行きは不透明な状況が続くと予想される一方、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に対する企業の投資意欲は底堅く、当社の事業領域におけるニーズは引き続き高い状態が続くと期待され、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、人件費及び外注費であり、運転資金については、主に内部資金により調達しております。また、当社では、サービスの拡充に向けた体制強化や、中長期的な資本集約型ビジネスの開拓を目的として必要に応じてM&Aを行っていくことを方針としており、将来的な資金需要が発生する可能性がありますが、報告日現在において、発表すべき事象はございません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、特に次の重要な会計方針が当社の財務諸表の作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a.貸倒引当金
当社は、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見込額を貸倒引当金として計上することとしております。
将来、顧客企業の財務状況が悪化し支払能力等が低下した場合には、引当金の計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
b.受注損失引当金
当社は、顧客企業より受注済みの案件のうち、当該受注契約の履行に伴い、翌事業年度以降に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、将来の損失に備えるため翌事業年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金として計上することとしております。
c.固定資産の減損処理
当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討しております。
将来の事業計画や市場環境の変化により、減損の兆候が発生した場合、減損損失を計上する可能性があります。
d.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社は、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その額に変動を生じた場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により、利益が変動する可能性があります。
該当事項はありません。
当事業年度における研究開発費の総額は
これは、主にヘッドレスCMS製品の開発費用であります。