第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「モノづくりを通じて社会の発展と創造に貢献する」ことを経営理念とし、お客様、社員、株主及び地域社会の満足度を高めることを会社経営の基本方針としております。
 具体的には次のとおりであります。

・ お客様のためには、知恵と技術を結集した高品質な製品とサービスを提供してまいります。

・ 社員のためには、仕事を通じて自己実現の機会を与え、快適で働き甲斐のある職場環境を醸成してまいります。

・ 株主のためには、期待と信頼に応えられるよう最大限の企業努力をしてまいります。

・ 地域社会のためには、安全と環境を重視し、相互に良好な信頼関係を築いてまいります。また、当社独自の環境方針を定め、全社一丸となって地球環境の保全に取り組んでおります。

 

(2) 経営環境

当社を取り巻く経営環境は、長引く高インフレ、中国や欧州の需要低迷、地域紛争の影響などの逆風があるものの、世界経済においては引き続き緩やかに成長が見込まれ、また、供給過剰・在庫超過の状態にあった半導体ならびにFPDにおいても需要が回復傾向にあり、生成AI・自動車・通信等の分野で需要増が期待できる半導体については、各国が戦略物質として重要視し、そのサプライチェーン確保の動きを活発化している状況であることから、半導体製造装置およびFPD製造装置の周辺技術に強い当社においても安定的な成長が見込まれます。

さらに、昨今の技術革新、特に半導体の飛躍的な進化により、多岐にわたる産業セクターにおいて革新的な自動化・省人化が加速度的に進行しつつあり、今後ますますクリーンルームやFA関連機器・装置のニーズが高まることは、当社にとって継続的な追い風となります。

当社は、従来からの経営計画における基本的な方針及び経営戦略を継承しつつ、現状に適合した新たな中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を策定しており、今後のより高度なニーズにお応えするため、アルミフレームメーカーかつFA装置メーカーであるオンリーワンとしての当社の強みを活かし、更なる営業体制・製造体制の強化を図ることで、当社を取り巻くいかなる外部環境にも対処することにより、継続的な増収増益を見込んでおります。

 

(3) 目標とする経営指標

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)は、ROE(当期純利益/株主資本)及びEPS(当期純利益/発行済株式総数)であります。当該KPIを採用した理由は、投資家が当社の経営方針・経営戦略等を理解する上で重要な指標であり、経営方針・経営戦略等の進捗状況や、実現可能性の評価等を行うことが可能となるためであります。

① 将来的な目標数値・・・・ROE 15%以上、EPS 140円以上

② 中期経営計画における業績計画数値

KPI

2025年3月期

計画値

2026年3月期

計画値

2027年3月期

計画値

売上高(百万円)

6,600

7,100

7,500

営業利益(百万円)

25

142

301

営業利益率(%)

0.38

2.00

4.01

1株あたり当期純利益(円)〔EPS〕

2.98

16.94

35.90

株主資本利益率(%)   〔ROE〕

0.5

2.6

5.4

 

(注)上記KPIについては有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

なお、中期経営計画における業績計画数値については、原材料価格、エネルギー価格及び物流コストの高騰等、様々な要因による影響の懸念が残ることにより、今後、計画を変更しなければならない可能性があります。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社は「モノづくりを通じて社会の発展と創造に貢献する」との経営理念のもと、「製造業の品質向上と合理化に貢献」をミッションと位置づけております。このため、フレキシブルな「アルファフレームシステム」を基本に、「カクチャTM」・「マーキングシステムTM」を組み合わせることで、高度で高効率な装置製作に貢献することや、個々の部品の要求品質が高まる中、洗浄装置、検査装置、クリーン装置等、顧客ニーズを的確に捉えることはもとより、それ以上の顧客満足度を高め、製造業の高品質化・高効率化に貢献することとしております。

これら使命の推進にあたり、「FAは永遠のテーマ ~何処もやっていない事をやろう!“PASSION & CHALLENGE”~」を掲げ、柱となる事業分野におけるビジネス基盤を強固なものにすると共に、新規取り組みにも果敢に挑戦することによって高品質・高付加価値製品を提供し、更なる業績向上、企業価値創造を目指した事業展開を基本方針としております。

1)中期経営計画における当社の将来像

”Only One企業“

・アルミフレームの専門メーカー

・アルミフレームを活用したFA装置メーカー

2)中期経営戦略

・FA事業一体化による効率運営……

ⅰ自動化省力化設備を広く理解し、顧客のアルファフレーム潜在ニーズを掘り起こす。

ⅱ高剛性のアルファフレームを活用し、大型構造物件受注の拡大をはかる。

・企業ブランディングの確立…………

ⅰ安心(実績とデータに基づく技術力)

ⅱ便利(モジュール品、キット品などの企画力)

ⅲ柔軟(「カクチャTM」「マーキングシステムTM」などの個別案件対応力)

・技術革新への取り組み………………

ⅰ今後、ますます高度化する情報通信技術により大きく変貌していく社会環境に対応するため、拡大かつ高度化する半導体及びFPD市場並びにその関連生産設備に活用される“アルファフレームシステム”の技術力を強化するとともに供給能力を拡充する。

ⅱ次世代の高度化する生産形態に対し、FA装置メーカーとしての対応能力を強化する。

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、コスト競争力・収益力をより強固なものとし、多様化するお客様のニーズに対して柔軟かつタイムリーに対応する、環境変化に強い企業体質づくりを当面の課題として捉えております。

そのために、当社の技術力を活かして「製造業の品質向上と合理化に貢献」を当社のミッションと位置づけ、「(1) 会社の経営の基本方針」及び「(4) 中長期的な会社の経営戦略」に記載の、経営方針及び中期経営計画を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。

(特に優先度の高い対処すべき事業上及び財務上の課題)

① 販売戦略の強化

当社の主力製品である「アルファフレームシステム」の収益の増加を図るために、お客様の人的負担の削減と効率化をサポートする「カクチャTM」「マーキングシステムTM」を活用し、設計から組立までの支援を含めた当社の総合的な優位を前面に出した販売戦略を推進しております。これらのサービスは、新しい付加価値の創造としてお客様より高い評価を得ており、リピート注文も増加していることにより、これらサービスの更なる充実に努めてまいります。

また、今後の科学技術の進歩・高度化、省エネ推進による環境技術導入の高まりにより、多岐にわたる産業で、クリーン環境技術の需要が拡大しております。この分野においては、当社特有の高機能なクリーン技術の一層の普及活動に努めてまいります。そして、美観と仕様変更に対するフレキシビリティを兼ね備えた「アルファフレームシステム」に洗浄・検査・搬送・梱包の各分野において蓄積された多くのコアとなる機械要素技術を融合させた製品づくりを目指し、高品質・高付加価値製品の提供に努めてまいります。

 

② 開発力の強化

当社は、お客様のニーズにお応えすべく、製造業の「モノづくり」に貢献する製品を継続的に提供し、更なる高精度化・高品質化・高付加価値化を達成するために研究開発活動は必須事項と捉えております。

付加価値を加えた新製品の継続的な開発は、他社との差別化を図る上で重要であり、次世代を展望した開発体制の整備は、当社の長期的な成長の礎になるものと考えております。

さらに、今後の競争を勝ち抜くためには、当社設立時より培ってきた洗浄・検査・搬送・梱包の各分野での技術力とお客様のニーズを結びつける製品の開発スピードを速める努力が求められております。このように、研究開発レベルの向上は当社にとっての重要課題と位置づけ、より組織的な研究開発体制の強化を図ってまいります。

また、生産工場における個々の部品の要求品質が高まる中での自動化のニーズは、高効率化及び高品質化はもとより、これまでの大量生産に適した生産設備とは異なり、多品種、変種変量生産に適した新たな生産設備へ要求が高まっている状況であります。当社は、これまでどおり、洗浄装置、検査装置、クリーン装置等、お客様のニーズを的確に捉え、製造業の高効率化・高品質化に貢献できるよう、新技術を取り入れた次世代のFA装置や「アルファフレームシステム」を活用したユニット化等の開発に注力してまいります。

③ 生産体制の強化

当社では、お客様からの「高品質・低コスト・短納期」の強い要求にお応えすべく、製造工程の見直しや各製造拠点や外注先との連携等によって、その最適化・効率化を全社的に図り、作業時間短縮や品質向上に向けた生産機械設備の改良・導入を検討し、製造原価及び諸経費の低減活動に取り組み、生産効率を高める作業環境の整備に注力しております。これらの施策によって、生産体制の充実を図り、よりコストパフォーマンスに優れた製品群の提供に努め、お客様の満足度向上を図ってまいります。

 

(その他の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)

① 人材確保と育成の強化

当社は、お客様の多種多様なニーズを先取りし、製品の高精度化・高品質化・高付加価値化を実現することによってお客様からの高い信頼を獲得するためには、高度な技術とサービスを提供することが重要であり、そのためには、「新製品の開発や当社技術力の向上」及び「商品知識や要素技術の習得」ができるノウハウを持った優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。特に業容の拡大を図るには、これら人材が必須となっており、将来を見据えての積極的な採用を推進しております。また、教育制度の充実により、専門能力の底上げを図りながら、各部門の継続的な成長を支える人材育成を進めてまいります。

② 管理体制の強化

当社は、企業の社会的責任を果たすべく、リスク管理やコンプライアンスを徹底し、お客様のニーズを捉えた積極的な営業展開を図り、製造原価及び諸経費の低減活動を推進するとともに、開発力及び生産体制の強化を図ってまいりたいと考えております。また、内部統制の管理体制の充実を図り、安全品質管理体制の向上及びお客様の満足度向上を目指してまいります。

(6) 株式会社の支配に関する基本方針

当社では、会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針については、特に定めておりません。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) ガバナンス

当社では、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化するため、2022年4月1日付で、SDGs推進分科会を設置しております。当分科会では持続可能性の観点における企業価値向上を目指し、サステナビリティに係る当社の在り方を提言することを目的として、以下の内容の協議等を行っております。

①中長期的な視点に立ち、サステナビリティに関する重要課題の特定

②サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会の識別

③サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会への対応の基本方針の策定

また、取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。経営会議、SDGs推進分科会で協議・決議された内容の報告を受け、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針および実行計画等についての審議・監督を行っております。

(2) 戦略

当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

① 人材育成方針

当社は「新製品の開発や当社技術力の向上」及び「商品知識や要素技術の習得」ができるノウハウを持った優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。そのために、OJTや階層別教育、自己啓発の支援等を通じて専門能力の底上げを図りながら、各部門の継続的な成長を支える人材育成を進め、社員個々にも業務を通じて自己実現の機会を与えてまいります。

② 社内環境整備方針

中長期的な企業価値向上のためには、「革新・刷新・変革」を継続することが重要であり、その原動力となるのは多様な個人の掛け合わせであると考えます。これを実現するためには、性別や年齢、人種などに関係なく様々な人材が活躍できる環境や仕組みを整備し、多様な人材が意欲をもって活躍する活力ある組織の構築を推進していくとともに、優秀な人材を確保するため、新卒者を対象とした定期採用に加え、即戦力として期待できる中途採用も積極的に行っております。

(3) リスク管理

当社におけるサステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、SDGs推進分科会の中で検討を行い、共有しております。重要なリスクは、経営会議の協議を経て戦略、計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。

(4) 指標及び目標

当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2027年3月まで15以上

12.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) 業績変動について

① アルミフレームの販売価格競争について

当社の主力製品である「アルファフレームシステム」は、製造設備の自動化、クリーン化に使用される専門製品であり、1986年に産業用アルミフレームを開発・製造して以来、販売を通じて、利用者の裾野を拡げてまいりました。そうした裾野拡大に伴い、高い剛性や拡充の容易さといった専門性を必要としない分野(多くは小口単体販売の分野)においてもアルミフレームは使用されております。こうした分野では、日本国内における競合他社による廉価販売が、当社のアルミフレームの売上高へ影響を及ぼす可能性があると同時に、海外で生産される廉価製品が進出する可能性も否定できません。当社の知的財産権を侵害するケースには厳正な対処をとる体制としておりますが、海外製品では厳正な対処の実効性が上がるまで時間を要する可能性があり、その結果、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 取引先各社の設備投資動向の影響について

「アルファフレームシステム」は、電子部品業界、デジタル家電業界及び工作機械業界向けの比率が高く、最近では特にFPD製造設備関連企業からの需要が高水準で推移致しました。また、装置部門が製作する洗浄装置や検査装置等及び商事部門が取扱う生産財は、主に自動車関連業界で利用されております。これら幅広い業種の製造業各社の設備投資動向は必ずしも一致しておらず、取引先各社における主力製品の市場投入計画やその販売動向によって大きく変動する可能性があり、その結果、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 主要原材料の市況変動について

「アルファフレームシステム」の主な原材料はアルミ構造部材であります。このアルミ構造部材の仕入価格は、アルミニウムの国内スポット価格等をベースとして四半期ごとに仕入先との間で交渉を行って決定しているため、世界的なアルミニウム地金価格の大きな変動が当社の製造原価に影響を及ぼす可能性があります。よって、アルミニウム地金価格が急激に高騰し、速やかに販売価格への転嫁を実施する等の対応が困難な場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存について

当社は特定の取引先に対する依存度が高くなっており、特に大型機械設備投資案件を受注し、売上計上した事業年度の売上高が大きく伸長する場合があります。当社としましては、これらの取引先と友好的な信頼関係を維持し、売上拡大を目指す方針であります。また、新規大口ユーザーに対しては、ご要望に早急にお応え出来るよう営業、設計、製造の各部署が連携し、販売先の多様化に努めております。しかしながら、特定取引先との取引の継続が困難になった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があることから、特定取引先の設備投資動向について注視していく必要があります。

(3) 製造物責任(PL)について

当社は販売する製品の品質に万全を期することに努めるとともに、製造物賠償責任に関して生産物賠償責任保険(PL保険)に加入しております。しかしながら、予測できない原因により製品に欠陥が生じ、重大なクレームや製造物責任を問われることはないという保証はございません。現時点におきまして、そのようなクレームや製造物責任を問われる事態が想定される事象は発生しておりませんが、万一そのような事態が発生した場合には、社会的な信用の低下、ユーザーへの保証や訴追費用・賠償費用等、当社が負担すべき費用が生産物賠償責任保険で補填しきれない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 外部経営環境に関わるリスクについて

当社の主要生産・研究施設は、富山市内またはその周辺に所在しております。これらの施設が、地震・洪水・台風等の不可避な自然災害による甚大な被害や、近時の新型コロナウイルス感染症のような感染症の発生・蔓延等によって、生産活動を縮小または停止せざるを得ない状況になる可能性があります。なお、当社では愛知県清須市に愛知事業所、埼玉県児玉郡にアルファフレーム北関東、並びに福岡県大牟田市にアルファフレーム九州と、富山県外にも生産・出荷拠点を開設するとともに、長野県、埼玉県並びに神奈川県に生産委託先を確保し、災害発生時においても生産継続が可能な体制を敷いております。しかしながら、国内のみならず海外での大規模な自然災害、テロ攻撃や地域紛争、戦争、感染症の発生・蔓延等によって、生産活動に必要とする材料や部材等の調達が困難になる可能性もありますので、このような状況が発生した場合には、顧客への製品供給が長期間にわたって滞る可能性があり、この結果、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 海外からの資材調達について

当社の連結子会社であったNIC Autotec (Thailand) Co.,Ltd.は、2022年3月20日をもって解散し、2023年8月31日付にて清算が結了しましたが、同連結子会社が構築してきた当社製品の販売及び資材調達については、当社と協力関係にある現地企業を当社の代理店(協力工場)に指定し、これら業務を委託しております。

当社の事業拡大において、タイ王国からの資材調達は引き続き重要な位置づけとなっております。つきましては、以下のようなリスクが想定され、今後、資材調達が滞るような事態が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

① 予期しない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

② 不利な政治的要因の発生

③ テロ、戦争、感染症、自然災害等による社会的混乱

④ 予期しない労働環境の急激な変化

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況
・経営成績

当社は、2023年8月31日付で当社の子会社であったNIC Autotec(Thailand)Co.,Ltd.の清算が結了したことに伴い、第1四半期累計期間までは連結決算でありましたが、第2四半期会計期間より非連結決算に移行しました。

当事業年度におけるわが国経済は、混沌とした国際情勢に伴い世界経済の状況も刻々と変化し続けている中、先行きの不透明感が続きました。このような状況下において、当社主力製品である「アルファフレームシステム」の一般顧客向け販売は堅調に推移しました。しかし、自動化・省人化装置等については、様々な案件に対して積極的に取り組み続けているものの、AI等々、これからの驚異的な技術革新に対応するための半導体関連企業及びFPD製造関連企業の設備投資が来期以降にずれ込むこととなり、当事業年度においての受注は低調な結果となりました。また、提案営業の強化、お客様の利便性を高める新製品の開発を推進するとともに、製造原価低減に向けた生産体制の見直しにも取り組んでいるものの、地政学リスクや円安に端を発した原材料価格の高止まりによる製造原価への影響は継続しており、利益確保が困難な状況となりました。

この結果、当事業年度の売上高は4,852百万円(前期比72.9%)、営業損失が478百万円(前期は営業損失142百万円)、経常損失が482百万円(前期は経常損失112百万円)、当期純損失は繰延税金資産の取り崩しが発生した結果、599百万円(前期は当期純損失158百万円)となりました。

なお、当社は当事業年度より、組織体制を見直し、これまでの3部門のうち「アルファフレーム部門」と「装置部門」を統合し「FA部門」とすることといたしました。この事業体制変更により、経営資源の更なる有効活用を推進してまいります。これに伴い、報告セグメントについても「FA部門」と「商事部門」の2部門へ変更しております。

セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。

また、第2四半期会計期間より非連結決算に移行したことから、セグメント別の業績について、前事業年度との比較は行っておりません。

[FA部門]

FA部門におきましては、「アルファフレームシステム」の一般顧客向けの販売では、差別化を図った提案営業活動、すなわち当社独自の設計サポートサービス「カクチャTM」及び組立作業の省人化を可能とする「マーキングシステムTM」を訴求することで売上高は堅調に推移いたしました。

また、装置品においては、複数のロボットシステム、生産設備及び洗浄装置等を受注いたしました。しかしながら、自動車業界にて電動化に伴う投資需要が高まる一方で、依然として半導体関連及びFPD関連の市場全体の設備投資は延期傾向であり、来期以降に本格化する見込みのため、新規及び大型構造物案件等々において受注の鈍化が継続する状況となりました。

この結果、当部門の売上高は3,785百万円となりました。

[商事部門]

商事部門におきましては、消耗品や治工具類の需要が安定しており、これらの売上高は堅調に推移しましたが、機械設備関係については、中国経済の減速に伴う海外景気の下振れ懸念等により主要顧客の設備投資が控えられることとなり、受注が減少する状況となりました。

この結果、当部門の売上高は1,067百万円となりました。

 

・財政状態

当事業年度末における総資産は、前期末と比べ986百万円減少し、6,953百万円となり、負債は、前期末と比べ164百万円減少し、3,504百万円となりました。正味運転資本(流動資産から流動負債を控除した金額)は1,094百万円であり、流動比率は155.9%であります。

また、当事業年度末の純資産合計は、前期末と比べ822百万円減少し、3,449百万円となりました。自己資本比率は49.6%となっております。

(流動資産)

当事業年度末における流動資産の残高は、前年度末と比べ580百万円減少し、3,052百万円となりました。これは主に、現金及び預金が45百万円増加した一方で、電子記録債権が323百万円、売掛金が126百万円、商品及び製品が47百万円、原材料及び貯蔵品が77百万円、未収還付法人税等が42百万円、それぞれ減少したことなどによります。

(固定資産)

当事業年度末における固定資産の残高は、前年度末と比べ405百万円減少し、3,901百万円となりました。これは主に、土地が92百万円増加した一方で、建物(純額)が120百万円、工具、器具及び備品(純額)が42百万円、建設仮勘定が60百万円、関係会社株式が80百万円、繰延税金資産が136百万円、それぞれ減少したことなどによります。

(流動負債)

当事業年度末における流動負債の残高は、前年度末と比べ79百万円増加し、1,958百万円となりました。これは主に、短期借入金が200百万円増加した一方で、電子記録債務が111百万円減少したことなどによります。

(固定負債)

当事業年度末における固定負債の残高は、前年度末と比べ244百万円減少し、1,546百万円となりました。これは主に、長期借入金が197百万円、リース債務が35百万円、それぞれ減少したことなどによります。

(純資産)

当事業年度末における純資産は、前期末と比べ822百万円減少し、3,449百万円となりました。これは主に、当期純損失の計上599百万円、配当金に係る利益処分223百万円があったことにより、利益剰余金が823百万円減少したことなどによります。

② キャッシュ・フローの状況

当社は、第2四半期会計期間より非連結決算に移行したことから、キャッシュ・フローの状況について、前事業年度との比較は行っておりません。

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は402百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、313百万円のキャッシュ・インとなりました。これは減価償却費の計上が282百万円、売上債権の減少による資金の増加が485百万円、棚卸資産の減少による資金の増加が98百万円あった一方で、税引前当期純損失が460百万円、仕入債務の減少による資金の減少が66百万円、未払消費税等の減少による資金の減少が82百万円あったことなどが主な要因であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、0百万円のキャッシュ・インとなりました。これは関係会社の整理による収入102百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出が97百万円あったことなどが主な要因であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、268百万円のキャッシュ・アウトとなりました。これは短期借入金の純増による資金の増加が200百万円あった一方で、長期借入金の返済による支出が197百万円、配当金の支払額が223百万円あったことなどが主な要因であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績及び商品仕入実績

当事業年度の生産実績及び商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

なお、当社は、第2四半期会計期間より非連結決算に移行し、連結財務諸表を作成していないため、前年同期比を記載しておりません。

・ 生産実績

セグメント名称

生産高(千円)

前期比(%)

FA部門

3,785,234

合計

3,785,234

 

 
・ 商品仕入実績

セグメント名称

品目

仕入高(千円)

前期比(%)

商事部門

工業用砥石

99,928

機械設備

517,111

工具・ツール・油脂類

297,019

 合計

914,058

 

 

b. 受注実績

当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

FA部門

4,016,246

933,881

商事部門

963,834

167,018

合計

4,980,081

1,100,900

 

 

c. 販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント名称

販売高(千円)

前期比(%)

FA部門

3,785,234

商事部門

1,067,720

合計

4,852,954

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合。

相手先

前事業年度

当事業年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

キヤノン株式会社

686,800

14.2

ダイドー株式会社

512,815

10.6

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

<売上高>

FA部門におきましては、「アルファフレームシステム」の一般顧客向けの販売では、差別化を図った提案営業活動、すなわち当社独自の設計サポートサービス「カクチャTM」及び組立作業の省人化を可能とする「マーキングシステムTM」を訴求することで売上高は堅調に推移いたしました。

また、装置品においては、複数のロボットシステム、生産設備及び洗浄装置等を受注いたしました。しかしながら、自動車業界にて電動化に伴う投資需要が高まる一方で、依然として半導体関連及びFPD関連の市場全体の設備投資は延期傾向であり、来期以降に本格化する見込みのため、新規及び大型構造物案件等々において受注の鈍化が継続する状況となりました。

商事部門におきましては、消耗品や治工具類の需要が安定しており、これらの売上高は堅調に推移しましたが、機械設備関係については、中国経済の減速に伴う海外景気の下振れ懸念等により主要顧客の設備投資が控えられることとなり、受注が減少する状況となりました。

これらの結果、売上高は4,852百万円(前期比72.9%)となりました。

<売上総利益、販売費及び一般管理費>

当事業年度は、継続的に製造原価低減に向けた生産体制の見直しに取り組んでまいりましたが、地政学リスクや円安に端を発した原材料価格の高止まりによる製造原価への影響は継続しており、利益確保が困難な状況となりました。これらの結果、売上総利益は755百万円(前期比69.3%)となりました。

また、販売費及び一般管理費につきましては、経費節減に努めつつ、COVID-19の影響による活動制限がほぼ無くなり、積極的な営業活動を推進した結果、1,233百万円(前期比100.1%)となりました。

<営業損益、経常損益及び当期純損益>

当事業年度は、売上高の減少に伴い売上総利益が減少し、販売費及び一般管理費はほぼ前年並みとなったことから、営業損失が478百万円(前期は営業損失142百万円)、経常損失が482百万円(前期は経常損失112百万円)、当期純損失は繰延税金資産の取り崩しが発生した結果、599百万円(前期は当期純損失158百万円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況及び分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、当社の運転資金需要のうち主なものは、製品製造に係る材料費、労務費、外注費、諸経費や商事部門の商品仕入、並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、建物及び機械装置並びに土地等の設備投資によるものであります。当社は事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたって見積りが必要な事項につきましては、過去の実績及び現在において入手可能な情報に基づき総合的に検討し、合理的な基準にて会計上の見積りを行っておりますが、実際の数値はこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。

当社の財務諸表に係る重要な会計方針については「第5[経理の状況] 1[財務諸表等] (1)[財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 取引基本契約書(仕入取引に関する基本契約)

 

会社名

契約内容

契約期間

三協立山株式会社

当社の主力製品であるアルファフレームのアルミ製構造部材に関する仕入取引に関しての基本契約であり、当社及び三協立山株式会社の保有する技術、ノウハウに関する機密保持や、当社以外の他社に対する製造販売の禁止、品質保証等を定めた契約であります。

また当社と三協立山株式会社が相互協力してアルミ押出形材(アルミ製構造部材)の開発を行ってきた経緯も踏まえ、相互信頼関係のもと継続的、安定的にアルミ製構造部材供給を行うこと等を定めたものであります。

自 2003年4月1日
至 2004年3月31日
(注)

 

(注) 契約期間については、契約年月日より1年間であり、以降1年ごとの自動更新となっております。 

 

(2) 取引基本契約書(外注取引に関する基本契約)

 

会社名

契約内容

契約期間

株式会社
アルファテック

FA部門において、特にアルファフレームの切断から出荷までを依頼している重要かつ継続的な外注先に対し、機密保持も踏まえ、取引基本契約を締結しております。

自 2016年5月19日
至 2017年5月18日
(注)

アルミファクトリー
株式会社

FA部門において、特に組立作業を依頼している重要かつ継続的な外注先に対し、機密保持も踏まえ、取引基本契約を締結しております。

自 2012年12月15日
至 2013年12月14日
(注)

株式会社シバサキ

FA部門において、特に組立作業を依頼している重要かつ継続的な外注先に対し、機密保持も踏まえ、取引基本契約を締結しております。

自 2019年2月13日
至 2020年2月12日
(注)

株式会社渡辺功機

FA部門において、アルファフレームの切断から集荷までと構造物の組立作業を依頼している重要かつ継続的な外注先に対し、機密保持も踏まえ、取引基本契約を締結しております。

自 2011年11月21日
至 2012年11月20日
(注)

 

(注) 契約期間については、契約年月日より1年間であり、以降1年ごとの自動更新となっております。

 

(3) 継続的売買基本契約書(販売代理店契約)

 

会社名

契約内容

契約期間

ダイドー株式会社

FA部門において、「アルファフレームシステム」の販売に係る継続的な取引に関し、販売取引の基本契約書を締結するものであります。

自 2018年9月6日
至 2019年9月5日
(注)

高津伝動精機株式会社

FA部門において、「アルファフレームシステム」の販売に係る継続的な取引に関し、販売取引の基本契約書を締結するものであります。

自 2018年9月4日
至 2019年9月3日
(注)

 

(注) 契約期間については、契約年月日より1年間であり、以降1年ごとの自動更新となっております。

 

 

6 【研究開発活動】

当事業年度の研究開発活動としては、お客様そして市場からの需要動向に呼応した市場環境への速やかな対応に加え、従来以上にオリジナリティあふれた研究開発を行うとともに、開発プロセスの効率化に取り組んでおります。なお、当事業年度の研究開発活動に係る費用の総額は75百万円であります。
 セグメント別の研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

FA部門

当部門では、「アルファフレームシステム」においては、ますます多様化していくお客様のニーズに対応するための製品ラインアップの拡充と環境に配慮した製品開発及び従来製品の転換に注力しており、お客様の要望による特殊断面形状のお客様専用アルミフレーム供給も推進しております。
 また、当社独自で開発したアルファフレーム専用の受発注・設計・組立支援ソフトを活用し、市場動向や顧客ニーズへの感度を高め、重点分野への早期対応を目指しております。

FA装置およびクリーンブース等においては、当社に蓄積された洗浄・検査・搬送・梱包のそれぞれの機能のために固有かつ不可欠な技術を活かし、個別のお客様のニーズに応える装置の設計・製造を行っております。

自動車部品関係では、電気自動車やハイブリッド車関連の新機能部品に対応するため、従来よりも高いレベルの品質を実現する装置開発を行っております。

工作機械関係では、協働ロボットのニーズが増加するなかで、ロボット架台のスピーディな提供システムの開発や周辺設備の開発を行っております。

FPD関係では、大型化や高性能化の要求に対し素早い対応を行っております。また厳しいコストダウン要求にも対応するよう合理的な生産システムの開発や、新技術を取り入れた隔壁構造の試作研究も行っております。

医薬品や食品分野では、お客様との協力関係のもと蓄積したFA技術やアルファフレーム活用の提案を行っております。

製品又は技術名

内 容

アルファフレーム
シリーズ

剛性・材質・製造方法を再度見直し、品質・商品価値を高める。

高機能部品のバリエーションを追加。

四角ナット・ナットホルダー・ブラケット等の部品レベルの品質向上。

サポートサービス
「カクチャTM
「マーキングシステムTM
「構造解析」
 

アルファフレームでの製作効率化の課題となっていた設計・組立・現地据付をサポートします。

※ 商品名:「カクチャTM」<PAT>

専用の受発注・設計・組立支援ソフトを活用したサポートサービス。

※ 商品名:「マーキングシステムTM」<PAT>

組立に必要な情報を直接フレームにプリントすることで作業時間を大幅削減することができる世界初のシステム。
当社にて蓄積されたノウハウ、事例に基づき部材・部品を選定し設計を行い、お客様に最適なコーディネートを提案する。

※ ナット付きフレーム

マーキング情報に従い組立に必要なナットが挿入されたフレームを提供、購入者の作業時間を劇的に短縮可能

FEM工学的な解析・シミュレーションを用いて最適で素早い構造体設計を可能にする。

大型クリーンブース

大型FPD製造装置用クリーンブースや半導体製造用チャンバーブースの品質向上を図る。

ロボティクス関係

ロボットを活用したシステムインテグレーション体制を構築し、ロボット架台やその周辺ユニットの標準化を図る。

架台の剛性に関しての研究、技術力を高め商品開発を行う。

ロボットシュミレーターやオフラインティーチングを活用し立ち上げ期間を短縮

洗浄装置

洗浄基盤技術の確立、メカニズムを探り開発及びモジュール化を視野に入れ標準化を図る。

従来よりも一段レベルの高い洗浄乾燥技術や省エネ技術の確立を目指す。

医薬品・食品関係

従来の枠に囚われない柔軟な発想を行い、これまで蓄積した技術やアルファフレームの活用を目指す。