第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

(1)経営方針

当社グループは、2020年5月に、2030年近傍を見据えた目指す姿である長期ビジョン『G-STEP30(ジーステップ・サーティ)』、及び3か年の中期経営計画『G-STEP30 1st(ジーステップ・サーティ ~ファースト)』を策定した。長期ビジョン『G-STEP30』は、前中期経営計画で掲げた「3つのG Growth:事業成長戦略の推進、Global:グローバル事業展開の強化・推進、Governance:グループガバナンスの強化」を継続的なテーマとして、長期展望にてステップを踏みながら目指す姿の実現に取り組む。

ユニチカグループの経営理念である「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」を基本とし、目指す姿としては「お客様から選ばれ続ける企業」とした。

2020年度を初年度とする中期経営計画『G-STEP30 1st』は、「強固な事業ポートフォリオの構築」「グローバル事業展開の推進」「社内風土・意識改革」を計画の骨子としている。当社グループは、各施策を確実に実行し、持続的成長へ向けた企業経営基盤を強化し、新中期経営計画最終年度は、売上高1,470億円、営業利益110億円を目指す。

(2)経営環境及び対処すべき課題等

「暮らしと技術を結ぶことにより社会に貢献する」という経営理念に基づき、当社グループは、2030年近傍を見据えた目指す姿である長期ビジョン「G-STEP30」及び2021年3月期を初年度とした3か年の中期経営計画「G-STEP30 1st」を策定している。この中期経営計画では「Growth:事業成長戦略の推進」「Global:グローバル事業展開の強化・推進」「Governance:グループガバナンスの強化」の「3つのG」として推進するとともに、「強固な事業ポートフォリオの構築」「グローバル事業展開の推進」「社内風土・意識改革」を骨子とした課題に重点的に取り組み、持続的成長に向けた企業運営基盤を整備していく。

「強固な事業ポートフォリオの構築」では、高付加価値品の展開の加速や環境配慮型製品の拡充による事業収益力の強化に取り組み、「グローバル事業展開の推進」では、グローバル生産体制の構築、グローバル人材の育成・強化、「社内風土・意識改革」では、品質保証体制の確立、リスクマネジメントの再構築、製造現場の強化に取り組んでいく。特に品質保証体制の確立では、過去の品質不適切事案を鑑み、品質保証委員会を中心に品質保証への取り組みを充実させている。今後も引き続き更なる取り組みをグループ各社で進めていく。また、リスクマネジメントの再構築では、リスクマネジメント委員会を中心に、全社でリスクの洗い出しと評価を行い、特に重要なリスクについて、対応策の立案と体制の構築を進める。

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社の重要課題の1つである財務体質の健全化については、在庫削減等の運転資金の効率化に努め、今後も着実に自己資本の蓄積、有利子負債の削減を進める。

足元の経済環境は、新型コロナに加え、地政学的リスクも加わり、原燃料価格や物流費の高騰が進んでおり、業績に対する影響が懸念されるが、更なるコストダウンや価格改定を含めた商品構成の見直しなどにより影響の最小化に取り組み、収益の確保に努める。

また、長期ビジョンで掲げた“3つの「暮らし」へのアプローチでSDGsに貢献”するというグループミッションに従い、当社におけるサステナビリティ活動に関する優先課題(マテリアリティ)を設定し、それぞれの優先課題に対する取り組みを深めて、持続可能な社会の実現に貢献していく。中でも、事業活動における環境負荷の低減に継続して取り組むとともに、「強固な事業ポートフォリオの構築」の一環として、環境配慮型製品の開発と市場投入を一層進める。さらに、企業の持続的成長には、人材の確保、育成・強化が不可欠であり、多様な人材が活躍できる働きがいのある職場づくりなどへの取り組みを推進している。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標

当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、当期純利益を重視している。また、財務体質強化の観点からは、自己資本比率向上、有利子負債の削減を念頭に置くとともに、キャッシュ・フローについても重要視し、重点管理している。

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがある。なお、当社グループはこれらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避やその影響を最小限に止めるなどの事前対応、または発生した場合の事後対応に努めるものとしている。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

(1)法令等の順守に関するもの

当社グループが事業を遂行していく上で、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。

なお、当社、連結子会社である日本エステル株式会社およびその他3社の計5社が製造、加工または販売した高伸度防砂シートに関して、代表者東亜建設工業株式会社およびその他2社の計3社で構成された特定建設工事共同企業体から那覇空港滑走路増設埋立工事の一部工区において当該高伸度防砂シートが短期間で著しく強度低下したために、陥没や空洞が発生したとして損害賠償(2,142百万円)並びに遅延損害金の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起されている。この訴訟は現在、係争中であり、当社としては相手側の主張が誤りであることを立証するなど、適切な防御を行ってゆく所存であるが、今後の事態の進展によっては、当社グループの業績及び財政状況等に影響を与える可能性がある。

(2)財務報告に関するもの

当社グループでは、不正な会計処理等により適切な財務報告がなされないリスクが発生する可能性がある。当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの信用の失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。

(3)製品の安全・品質保証に関するもの

当社グループは製品の品質管理に万全を期し、製品の欠陥等の発生を未然に防止している。また、万が一の製品事故に備えた損害保険に加入している。しかしながら、予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用、社会的信用の毀損、多大な補償・訴訟費用、賠償費用の負担などにより、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

(4)情報システムに関するもの

当社グループでは、情報管理に関する規程等を整備し、厳正な情報管理に努めている。従業員、業務委託先又はその他の者による不正なアクセス等により、今後、仮に当社が保有する個人情報やその他重要な情報が外部に漏えい等した場合には、損害賠償請求や行政調査、指導又は処分を受ける可能性があり、また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じること、当社グループの社会的信用が毀損すること等により、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。

(5)災害・事故等に関するもの

当社グループにおいて、合繊原料など化学物質を取り扱う工場を中心として、万一、甚大な事故災害が発生した場合は、それに伴って生じる社会的信用の低下、補償などの対策費用、生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

(6)その他ユニチカグループの業務遂行に関するもの

①原燃料価格の変動にかかるもの

当社グループにおいて、高分子事業及び合成繊維事業にて取り扱う製品は、主としてナフサから精製される化学原料を加工したものである。また事業所などで使用される重油、天然ガスなどの原料も含めて、石化原燃料の購入価格の変動をタイムリーに製品価格への転嫁や生産性向上などの内部努力により吸収することができず、十分なスプレッドを確保できなかった場合は、各原燃料価格の変動が当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

②為替・金利レートの変動にかかるもの

当社グループの海外事業については、円建ての取引を基本としているが、現地通貨建てにて取引を行う項目に関しては、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける場合がある。これら為替レートの変動が生じた場合、円換算後の売上高やコストへの影響が生じ、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、金利変動によるリスクについては、為替変動と同様に当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

③海外事業にかかるもの

当社グループは東アジア、欧米並びに南米などの地域において事業展開を図っているが、予測しえないカントリーリスクの発生の懸念もある。これらの事象が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

④貸し倒れにかかるもの

当社グループの取引先の信用不安によって予期せぬ貸し倒れが顕在化し、それに伴う追加の損失や引当の計上が必要となる場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

⑤固定資産の減損にかかるもの

当社グループでは、さまざまな有形固定資産や無形資産を保有している。これらの資産は、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っている。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定については慎重に検討しているが、事業環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上することも予測され、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

なお、当連結会計年度において、当社及び当社グループが保有する固定資産について2,169百万円の減損損失を計上した。

⑥新型コロナウイルス感染症にかかるもの

当社グループにおける生産に関しては、様々な感染防止対策の実施が成果を発揮し、国内拠点、海外拠点ともに大きな影響もなく操業を継続することが出来ている。しかしながら、新型コロナウイルスの収束の時期は不透明であり、事業活動への影響が現時点では予測できない状況となっている。感染症の拡大の影響により、売上高の減少や減産による操業率の低下、また、当社グループ従業員の感染者発生などによる生産の一時停止など、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

⑦その他の主な変動要因にかかるもの

上記の他、事故、地震・台風・竜巻などの自然災害が、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおり

である。

なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用

している。この結果、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、売上高については前連結会計年度と比較しての増減額及び前期比(%)を記載せずに説明している。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記

載のとおりである。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」とする。)拡大の影響を断続的に受けた。期間を通して感染拡大防止策を講じながら経済の回復が進んだが、変異株の流行拡大期においては企業の生産活動や個人消費が抑制され、回復が停滞した。一方で、原料価格や物流費、エネルギーコストの高騰が進み、企業の業績を押し下げる要因となった。また、2022年に入り勃発した、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給や物流への影響が懸念され、更には期末に円安が進むなど、先行きが見通せない状況で推移した。

このような状況の下、当社グループは、2年目を迎えた中期経営計画「G-STEP30 1st(ジーステップ・サーティ ~ファースト)」に掲げる成長ステージに向けた基盤強化を最優先とした基本方針である、強固な事業ポートフォリオの構築、グローバル化の推進、社内風土・意識改革の実現に努めてきた。

この結果、当連結会計年度の売上高は114,713百万円(前期は110,375百万円)となった。営業利益は6,005百万円(前期比0.2%減)となり、経常利益は6,399百万円(同18.9%増)となった。また、連結子会社のTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)及び産業繊維事業部の事業用資産に対して減損損失2,169百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は2,223百万円(同42.5%減)となった。なお、収益認識会計基準等の適用による売上高への影響は3,088百万円の減少となった。

事業セグメント別の経営成績は次のとおりである。

[高分子事業セグメント]

高分子事業セグメントは、原燃料価格の高騰によるマイナス影響を受けた。一方、当年度に入り、需要は戻りつつあり、その結果、販売が伸長した。

フィルム事業では、包装分野は、コロナ禍における「新しい生活様式」の定着により、期間を通じて販売が堅調に推移した。また、バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」や、環境配慮型食品包装フィルムなどの高付加価値品の販売が伸長した。工業分野は、電気電子分野を中心に販売が伸長し、高付加価値品では、シリコーンフリー離型ポリエステルフィルム「ユニピール」を中心に着実に販売を伸ばした。一方で、海外子会社において、海上物流の混乱や、海上運賃高騰によるマイナス影響を大きく受けた。この結果、事業全体で増収減益となった。

樹脂事業では、幅広い用途で需要が回復したが、自動車用途においては、国内外の工場休転による生産台数減少の影響により、回復は鈍化した。ナイロン樹脂、ポリアリレート樹脂「Uポリマー」は、ともに電気電子用途での需要回復を受け、販売が回復した。高耐熱ポリアミド樹脂「ゼコット」は、自動車用途と電気電子用途で新たに採用され、販売が伸長した。その他の機能樹脂の各素材も堅調であった。この結果、事業全体で増収増益となった。

以上の結果、高分子事業セグメントは増収増益となり、売上高は50,837百万円(前期は41,436百万円)、営業利益は6,645百万円(前期比17.0%増)となった。なお、収益認識会計基準等の適用による売上高への影響は、3,224百万円の増加となった。

[機能資材事業セグメント]

機能資材事業セグメントは、当年度後半に建築土木用途の需要が回復したため、セグメント全体で販売は伸長したが、原燃料価格の高騰や、海上物流の混乱の影響を受けた。

活性炭繊維事業では、主力の浄水器用途は、業務用浄水器向けの需要が回復した。また、海外で新規顧客を獲得し、販売を伸ばした。自動車用途、電子産業関連用途においては、半導体不足に伴う生産減少の影響を受け、苦戦した。

ガラス繊維事業では、産業資材分野は、民間投資の回復に伴い、テント、シート等の建築土木用途の販売が回復した。電子材料分野のICクロスは、不足する半導体への旺盛な需要により販売が堅調であった。また、超薄クロスや低熱膨張クロスなどの高付加価値品の販売が伸長した。

ガラスビーズ事業では、道路用途は、需要の回復に遅れが出た影響で、販売は前年度並みで推移した。反射材用途は海外への販売が伸長し、工業用途もブラスト用途などの販売が好調であった。

不織布事業では、生活資材用途は、前年度に旺盛であった医療用ガウンや除菌シートなどの需要は落ち着いた。スキンケア用途は、人流抑制により低調に推移した。一般産業資材、建築土木用途は、新型コロナの影響による前年度の需要減少から緩やかに回復したが、自動車用途は半導体不足等の影響により販売が減少した。タイの連結子会社タスコでは、海上物流の混乱とコスト増大により、域外への輸出を中心に収益が悪化した。

産業繊維事業では、短繊維は、各用途で需要が回復し、ポリエステル高強力糸は、建築土木用途で工事需要が回復したことで販売が伸長したが、いずれについても原燃料価格高騰の影響を受けた。高付加価値品の中空糸膜材料は販売が伸長した。

以上の結果、機能資材事業セグメントは増収減益となり、売上高は34,372百万円(前期は29,628百万円)、営業利益は24百万円(前期比96.9%減)となった。なお、収益認識会計基準等の適用による売上高への影響は2,316百万円の増加となった。

[繊維事業セグメント]

衣料繊維事業では、前年度に旺盛であった医療用ガウンの需要が落ち着いたことにより、販売が減少した。ユニフォームやレディス衣料の需要が緩やかに回復し、販売を伸ばしたが、原燃料や物流費の高騰、更に円安等の影響を受け、大幅なコスト上昇により厳しい環境となった。

以上の結果、繊維事業セグメントは減収減益となり、売上高は29,446百万円(前期は39,278百万円)、営業損失は610百万円(同368百万円の損失)となった。なお、収益認識会計基準等の適用による売上高への影響は8,629百万円の減少となった。

[その他]

その他の事業については、売上高は58百万円(前期は31百万円)、営業損失は55百万円(同78百万円の損失)となった。なお、収益認識会計基準等の適用による売上高への影響はなかった。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,177百万円減少し、18,415百万円となった。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加などがあったが、税金等調整前当期純利益の計上や仕入債務の増加などにより、8,666百万円の資金の増加(前期比41.7%減)となった。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、8,989百万円の資金の減少(前期は6,171百万円の資金の減少)となった。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済やB種種類株式の取得及び消却などにより、4,212百万円の資金の減少(前期は4,141百万円の資金の減少)となった。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、㈱ユニオン、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

46,671

26.6

機能資材事業

22,661

0.5

繊維事業

627

△0.2

報告セグメント計

69,960

16.5

その他

合計

69,960

16.5

 (注)生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。

b.受注実績

当社グループは主として見込生産を行っている。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

高分子事業

50,837

機能資材事業

34,372

繊維事業

29,446

報告セグメント計

114,655

その他

58

合計

114,713

 (注)1.販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。

2.当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、前期比(%)を記載していない。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績及び財政状態の分析

a.売上高

当連結会計年度の売上高は114,713百万円となった。新型コロナウイルス感染症による生産減少や市況悪化からの回復によるプラス影響を受けた。特に、高分子事業セグメント及び機能資材事業セグメントの電気電子用途や建築土木用途の販売が増加したことなどにより、全体の売上が増加したためである。

b.営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ12百万円(0.2%)減益の6,005百万円となった。売上高の増加がプラス要因となった一方で、原燃料価格および物流費の高騰のマイナス要因が強くなったため、全体では減益となった。

c.営業外損益と経常利益

当連結会計年度の営業外損益については、為替の影響の好転などにより、営業外収益は、954百万円(96.9%)増加の1,940百万円となり、営業外費用は、75百万円(4.6%)減少の1,546百万円となった。これらの要因により、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ1,017百万円(18.9%)増益の6,399百万円となった。

d.特別損益

当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、前連結会計年度において、宇治事業所での火災に伴う受取保険金を計上していたことなどにより、前連結会計年度に比べ3,956百万円(85.8%)減少の653百万円となった。特別損失は、機能資材事業セグメントでの減損損失の計上などにより、前連結会計年度に比べ1,654百万円(31.1%)減少し3,667百万円となった。

e.親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益については、営業利益段階での減益や特別利益の減少などが影響し、前連結会計年度に比べ、1,640百万円(42.4%)減少の2,223百万円の当期純利益となった。

f.総資産

総資産は、前連結会計年度末に比べ995百万円増加し、191,399百万円となった。これは、主として、棚卸資産が増加したことや、設備投資により固定資産が増加したことなどによるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ883百万円減少し、148,328百万円となった、これは、主として有利子負債が減少したことによるものである。純資産は、前連結会計年度末に比べ1,878百万円増加し、43,071百万円となった。これは、主として、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。

ロ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析

当連結会計年度の事業セグメント別の経営成績については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。

ハ.資本の財源及び資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。

 

b.契約債務

2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超

3年以内

3年超

5年以内

5年超

短期借入金

2,065

2,065

長期借入金

91,825

91,647

110

19

48

リース債務

448

74

132

240

0

 

c.財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしている。また、運転資金の効率的な調達を行うため、当社と取引銀行1行との間で5,000百万円のコミットメントライン契約を締結し、資金の流動性を確保している。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。

財務体質健全化については、在庫削減等による運転資金の効率化によって有利子負債の圧縮に努めている。

②重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としている。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりである。

4【経営上の重要な契約等】

合弁関係

契約会社

相手先

対象国

契約内容

契約締結年月日

(有効期間)

当社

PT.GRAHA UPAYA MANDIRI

丸紅株式会社

インドネシア

左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立

 資本金10,000千USD
 当社出資比率60.00%

(提出日現在:資本金43,800千USD
      当社出資比率87.27%)

(1995年11月15日P.T.EMBLEM ASIA設立)

1995年5月29日

(契約発効後、合弁会社の存続する期間)

 

5【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。

当連結会計年度の研究開発費は3,601百万円であり、この中には中央研究所で行っている全社共通テーマの各事業部門に配賦できない費用1,147百万円が含まれている。

(1)高分子事業セグメント

フィルム事業では、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルム「ユニアミド」は、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けの採用が増加し、販売量は着実に増加している。また、顧客からの様々な要望に応えるため、新たな生産設備の投資を意思決定した。2021年8月より工事を着手し、2023年1月に稼働を見込んでいる。これにより、生産能力の向上と多品種対応が可能となり、今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、耐熱性と無色透明性、優れた衝撃吸収性能などの特長を活かした用途への展開を進めていく。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、年々、高まる高品位化への要望に対応することで、銘柄も増加し、着実に販売量が拡大している。また、高粗度PETフィルム「エンブレットPTH、PTHA」の性能が国内だけでなく、海外まで認められて、販売量が拡大している。柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」もボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に国内だけでなく、海外でも採用が拡大し、ユニチカバリアフィルム商品群の主力銘柄に成長した。さらに、昨今の環境問題への意識の高まりの中、循環社会による持続可能な成長社会を目指す「Circular Economy:CE 循環経済」の考えに基づいて、当社の重合設備にてケミカルリサイクルし、再生した樹脂を使用したフィルム「エンブレムCE」と「エンブレットCE」は、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルを併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、二酸化炭素の排出量を削減できるため採用が進んでいる。さらに、エンブレムCEにバリア性を付与した、「エンブレムKCN」も新たに上市し、食品包装分野を中心に採用が拡大している。

樹脂事業では、当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途などのほか、自動車用ランプ用途で引き続き販売を継続しているほか、新たに開発した溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」Ⅴシリーズの引き合いも増えており、優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進んでおり、早期実績化を目指している。ポリアリレート樹脂の旺盛な需要に応えるため行っていた増産工事が2018年12月に完了し、生産能力20%アップを実現した。ポリアミド樹脂については、世界的に需給がひっ迫するPA66や同6Tの代替銘柄を開発、提案を実施した結果、多くの引き合いを集めている。中でも、PA6T代替の高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は、電気・電子用途のほか、摺動用途など多くの自動車用テーマを獲得して採用が進んでいる。

オレフィン系エマルションである「アローベース」は包装材料などの接着層、コーティング層として拡大しているほか、金属と樹脂といった異種材料の接着に効果が認められ引き合いが増加している。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについては、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられ、ユーザーでの評価が続いている。ナノコンについては、メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードで、家電関係や自動車関係に採用が増えており、特に注目度の高い欧州での自動車内装材への採用が始まった。中央研究所発の新素材である「セルロースナノファイバー配合ナイロン6」は、重合工程でセルロースナノファイバーを樹脂中にナノレベルで均一に分散させる独自の製造方法により得られる。この樹脂は、発泡成形すると気泡の大きさが均一になる特色があり、「樹脂化」、「軽量化」のキーワードで注目を浴びている。また、通常のフィラー配合樹脂では発現しない特性も確認されており、高機能化樹脂としての用途開発を推進している。

バイオマスプラスチック事業では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」とともに、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」については後述の3Dプリンター用フィラメントなど、その成果を示す例が出てきている。

当事業セグメントに係る研究開発費は1,473百万円である。

(2)機能資材事業セグメント

ガラス繊維事業では、産業資材用途で顧客ニーズに応えたガラスクロス及びそれら処理加工品の製品開発を進め、ユーザーから好評価を得ている。また、電子材料用途では、超薄クロスの生産技術革新に取り組むとともに、高性能な新規ICクロスも開発中である。

活性炭繊維事業では、液相分野においては、浄水器用及び工業フィルター用の高性能化とコストダウンにより国内外での競争力の強化を図っている。また、気相分野においては、自動車用に加え、空気清浄機やマスクなど、空気脱臭用の高性能化とコストダウンにより海外展開を進めていく。

ガラスビーズ事業では、粒度分布をシャープにコントロールした「高精度ユニビーズ」について、半導体や電気・電子材料分野向けを中心とした新規ユーザー獲得に向け、さらなる技術改良・開発に取り組んでいる。また、従来製品にはない新規ガラス材料を素材とする球状製品について、ユーザーからのニーズに応えるべく、当事業部のガラス熔解・粉砕・球状化・分級・異形選別などのノウハウを生かした技術開発を進めている。

不織布事業では、スパンボンド分野にて、極太の異形断面糸形状である「ディラ」は、類をみない繊維構造で硬さと高通気性からフィルター材、ワイパー材他、多様な用途への展開を図り、採用実績に繋がっている。また、「ディラ」の特長を活かして、他不織布、他素材との複合品の開発も行っており、さらなる拡販を行う。農業分野へは多様なニーズに応えるべく開発を進めており、従来からのべたがけシートについて、透光・保温を兼ね備え、かつさらなる耐久性の向上を目指した開発を進めた結果、開発が完了し、2018年度から本格販売を行い高評価を得ている。また、さらに透明性を向上した高透光性シートの開発も進めている。多機能(抗アレルゲン・消臭・抗菌等)の性能を有する新たな用途への開発も進めており、アレル物質低減機能などを付与した「ユニダイヤ」を2018年6月より上市している。さらに、「エルベス」等への同様の性能付与についても開発を開始している。土木分野では、コンクリート面に貼り付けることで、コンクリートの高品質化を可能にし、構造物の長寿命化に貢献するコンクリート湿潤養生シート「アクアパック」を開発し、2019年9月より上市している。また、タイ国における新機台の増設により、今までと違った素材を提供することが可能となり、新規用途を含めた開発を進めている。スパンレース分野では、コットン素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めている。撥水や抗菌等の機能性付与や他シートとの複合、柄付け等の意匠性の開発により採用実績に繋がっている。また、コットンと長繊維不織布との積層品を「コットエース プラス」として、2021年上期より販売を開始している。コットンの風合いを活かしつつ、長繊維不織布の強度やシール性をうたった積層品であり、各種分野への拡販を進めている。今後もユーザーの要望に応える製品をタイムリーに提供できるよう開発を進めていく。

産業繊維事業では、ポリ乳酸紡糸技術による「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントにおいて、ポリ乳酸製オリジナル、『3Dプリンター用“感温性”フィラメント』、そしてポリ乳酸製の弱点をカバーして造形表現の幅を広げることを実現する易研磨性ポリ乳酸フィラメントも品揃えに加えた。

また、業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量、かつ、長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬液に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。さらに、孔を微細化した限外濾過膜、ナノ濾過膜の開発に成功し、蒸留等の分離プロセスを膜分離で代替できる省エネルギー技術としてNEDO助成事業に採択され実用化開発を進めている。その他、高性能・高機能な膜分離を実現させるため、他素材も含めた研究開発を加速している。

当事業セグメントに係る研究開発費は956百万円である。

(3)繊維事業セグメント

衣料繊維事業では、環境対応型高機能繊維の開発に注力している。グループ企業の工場廃材をケミカルリサイクルした潜在捲縮型ポリエステル繊維「Z-10」及び、20葉断面シルキー調ポリエステル繊維「セシェ」の開発が完了し上市した。高機能リサイクルポリエステル繊維シリーズは、今後も、太陽光遮蔽性ポリエステル繊維「サラクール」、マイクロ繊度ポリエステル繊維「EQ」等、順次上市していく予定。紡績糸においてもリサイクルポリエステル繊維による紡績糸「パルパーエコ」の商品を拡充した。主要グループ企業であるユニチカトレーディング(株)、日本エステル(株)、ユニテックスにおいてGRS(Global Recycled Standard)認証を取得した。また、ユニチカトレーディング(株)、ユニチカテキスタイル(株)、P.T.UNITEXにおいて、オーガニックコットンの国際認証であるGOTS(Global Organic Textile Standard)も取得した。一方、バイオマス繊維としては、ナイロン11繊維「キャストロン」、ナイロン56繊維「BEAMEX ECO+」、DUPONTの植物由来繊維「SORONA」を紡績した「パルパー Made with Sorona Polymer」を開発し、市場では大きな注目を浴びている。2019年末から世界的に大流行している新型コロナウイルス感染症に対応した商品として、医療現場従事者向けに、より高機能なアイソレーションガウン用素材「ユニソフィア」シリーズを開発し、販売を開始した。当社初の試みとして、独自のECサイトを立ち上げ、一般消費者向けに高機能マスクの販売を開始、市場から高い評価を得られている。また、ユニチカトレーディング(株)とシキボウ(株)とで、繊維部門における企業間ビジネス連携に合意した。今後、両社の国内外の工場を活用した、ユニークで高機能な商品開発を目指していく中で、2021年12月に初の両社合同展示会を開催した。

当事業セグメントに係る研究開発費は24百万円である。