文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)経営方針
当社グループは、2020年5月に、2030年近傍を見据えた目指す姿である長期ビジョン『G-STEP30(ジーステップ・サーティ)』、及び3か年の中期経営計画『G-STEP30 1st(ジーステップ・サーティ ~ファースト)』を策定した。長期ビジョン『G-STEP30』は、前中期経営計画で掲げた「3つのG Growth:事業成長戦略の推進、Global:グローバル事業展開の強化・推進、Governance:グループガバナンスの強化」を継続的なテーマとして、長期展望にてステップを踏みながら目指す姿の実現に取り組む。
ユニチカグループの経営理念である「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」を基本とし、目指す姿としては「お客様から選ばれ続ける企業」とした。
2020年度を初年度とする中期経営計画『G-STEP30 1st』は、「強固な事業ポートフォリオの構築」「グローバル事業展開の推進」「社内風土・意識改革」を計画の骨子としている。当社グループは、各施策を確実に実行し、持続的成長へ向けた企業経営基盤を強化し、新中期経営計画最終年度は、売上高1,470億円、営業利益110億円を目指す。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
高分子事業セグメントのフィルム事業では、包装分野は「エンブレムHG」などの高付加価値品の拡販や、非食品用途での販売拡大に注力するとともに、ケミカルリサイクルによる環境配慮型素材であるナイロンフィルム「エンブレムCE」及びポリエステルフィルム「エンブレットCE」の拡販を進める。工業分野は「ユニピール」などの高付加価値品の拡販を進め、耐熱性ポリアミドフィルム「ユニアミド」は、新規用途展開を進める。さらに、ナイロンフィルムについては、生産能力の増強を進めるインドネシア子会社のP.T.EMBLEM ASIA(エンブレムアジア)を中心に、グローバル展開を推進し、高付加価値品も含めた拡販体制を整える。樹脂事業では、エンジニアリングプラスチック製品は、世界的に供給不足が続いている6Tナイロン、66ナイロンの代替素材として「ナノコンポジットナイロン」や「ゼコット」の拡販に注力するとともに、高付加価値品の販売を強化し、海外展開も進める。また、「Uポリマー」は、北米や中国向けで拡販を進める。
機能資材事業セグメントの活性炭繊維事業は、浄水器用途は、フィルターの高性能化を進めるとともに、北米や欧州での拡販に注力する。VOC除去用途は、更なるグローバル展開を進め、臭気対策品等のニーズに対応した製品展開も進める。ガラス繊維事業では、産業資材分野は、環境関連用途と電気電子分野関連資材用途の販売強化に注力し、透明不燃シートは建築用途のみならず、新規用途への展開を進める。電子材料分野のICクロスは、超薄物タイプのシェア拡大に加え、低熱膨張タイプなどの高付加価値品の拡販を進める。ガラスビーズ事業では、道路用途は路面標示用を中心に拡販を進め、工業用途では高付加価値品へのシフトにより、収益性の向上に努める。不織布事業では、産業資材を中心に高付加価値品へのシフト、新規用途への展開や新規需要の取り込みを図るとともに、コストダウン施策を推進する。また、タイ子会社のTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.(タスコ)を中心に、欧米、アジアへの拡販に注力する。産業繊維事業では、短繊維は、強みのある技術を活かし、バインダー繊維を主力とした二成分素材の拡販に注力する。ポリエステル高強力糸は、建築土木用途での新商品の展開を進める。また、中空糸膜の拡販に努めるほか、環境配慮型素材としてモノマテリアルや生分解性素材などの開発・上市を進める。
繊維事業セグメントの衣料繊維事業は、使用済みPETボトルなどを使用した独自のポリエステル素材「エコフレンドリー」やバイオマス素材「キャストロン」などの環境配慮型素材の販売を拡大する。また、デジタル化対応や自然災害対応等の市場動向にマッチした新規事業の立ち上げを推進するとともに、他社とのアライアンス戦略による事業強化に努め、収益力を高める。
研究開発については、当社グループが保有する高分子重合、材料設計、高分子加工などのコア技術を発展・深化させるとともに、独自の構造制御技術などを強化し、次世代フィルム、高機能樹脂、高機能不織布など成長を牽引する製品開発を加速する。特に中空糸膜については“環境貢献型の素材”として様々な分野で事業拡大を推進する。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況の中、感染再拡大による経済活動抑制や市況悪化などによる影響が想定されるが、当社グループ全体において、生産性向上に向けた体制を着実に構築することにより利益確保に努める。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を軽減することを課題とし、国内外の拠点において、グループ従業員及び関係者の安全、健康に十二分に配慮して業務を実施し、社会で必要とされる当社の製品やサービスを安定的に供給していく。
財務体質の健全化については、在庫削減等の運転資金の効率化に努め、今後も着実に、自己資本の蓄積、有利子負債の削減を進める。
社内風土・意識改革については、品質保証を含めたコンプライアンスや規範意識の理解浸透に徹底して取り組む。
また、長期ビジョン、中期経営計画双方での当社の基本姿勢である“環境との共生”については、事業活動における環境負荷低減に努めることに加えて、SDGsへの全社的な取り組みを推進するとともに、地球環境及び社会ニーズに応える環境配慮型素材の開発や環境対応ビジネスの強化を推進し、サステナブル社会の実現に積極的に貢献していく。さらに、企業の持続的成長には、人材の確保、育成・強化が欠かせないとの考えから、多様な人材を惹きつける柔軟な働き方や働きがいのある職場づくりなどの取り組みをより一層進めていく。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標
当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、当期純利益を重視している。また、財務体質強化の観点からは、自己資本比率向上、有利子負債の削減を念頭に置くとともに、キャッシュ・フローについても重要視し、重点管理している。
当社グループの経営成績、財政状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがある。なお、当社グループはこれらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避やその影響を最小限に止めるなどの事前対応、または発生した場合の事後対応に努めるものとしている。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。
(1)法令等の順守に関するもの
当社グループが事業を遂行していく上で、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。
なお、当社が、愛知県豊橋市(以下「豊橋市」)から1951年に譲り受けた工業用地を第三者に売却したことは、用地の譲り受けた際の契約に違反するとして、豊橋市住民が豊橋市長に対し、当社に対して損害賠償の支払等を請求するように求めていた訴訟(当社は補助参加人として参加)について、最高裁判所第三小法廷決定により、名古屋高等裁判所の判決が確定した。当判決に従い、2,609百万円の損害賠償金及び遅延損害金を支払った。
(2)財務報告に関するもの
当社グループでは、不正な会計処理等により適切な財務報告がなされないリスクが発生する可能性がある。当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの信用の失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの業績又は財政状況に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(3)製品の安全・品質保証に関するもの
当社グループは製品の品質管理に万全を期し、製品の欠陥等の発生を未然に防止している。また、万が一の製品事故に備えた損害保険に加入している。しかしながら、予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用、社会的信用の毀損、多大な補償・訴訟費用、賠償費用の負担などにより、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(4)情報システムに関するもの
当社グループでは、情報管理に関する規程等を整備し、厳正な情報管理に努めている。従業員、業務委託先又はその他の者による不正なアクセス等により、今後、仮に当社が保有する個人情報やその他重要な情報が外部に漏えい等した場合には、損害賠償請求や行政調査、指導又は処分を受ける可能性があり、また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じること、当社グループの社会的信用が毀損すること等により、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある。
(5)災害・事故等に関するもの
当社グループにおいて、合繊原料など化学物質を取り扱う工場を中心として、万一、甚大な事故災害が発生した場合は、それに伴って生じる社会的信用の低下、補償などの対策費用、生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
なお、2019年1月8日に当社の宇治事業所において火災が発生し、ナイロン重合設備の一部が焼損した。当社は再発防止策の徹底に努めていく。
(6)その他ユニチカグループの業務遂行に関するもの
①原燃料価格の変動にかかるもの
当社グループにおいて、高分子事業及び合成繊維事業にて取り扱う製品は、主としてナフサから精製される化学原料を加工したものである。また事業所などで使用される重油、天然ガスなどの原料も含めて、石化原燃料の購入価格の変動をタイムリーに製品価格への転嫁や生産性向上などの内部努力により吸収することができず、十分なスプレッドを確保できなかった場合は、各原燃料価格の変動が当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
②為替・金利レートの変動にかかるもの
当社グループの海外事業については、円建ての取引を基本としているが、現地通貨建てにて取引を行う項目に関しては、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける場合がある。これら為替レートの変動が生じた場合、円換算後の売上高やコストへの影響が生じ、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、金利変動によるリスクについては、為替変動と同様に当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
③海外事業にかかるもの
当社グループは中国、香港、インドネシア、タイなどの東アジア、欧米並びに南米などの地域において事業展開を図っているが、特に中国、東南アジアを中心として、次のようなリスクがある。これら事象が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
・予期し得ない法律や規制、税制等の変更
・不利な政治的要因の発生
・テロ、戦争などによる政治的、社会的混乱
・疫病などの流行
④貸し倒れにかかるもの
当社グループの取引先の信用不安によって予期せぬ貸し倒れが顕在化し、それに伴う追加の損失や引当の計上が必要となる場合は、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
⑤固定資産の減損にかかるもの
当社グループでは、さまざまな有形固定資産や無形資産を保有している。これらの資産は、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っている。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定については慎重に検討しているが、事業環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上することも予測され、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
⑥新型コロナウイルス感染症にかかるもの
当社グループにおける生産に関しては、様々な感染防止対策の実施が成果を発揮し、国内拠点、海外拠点ともに操業への大きな影響もなく操業を継続することが出来ている。しかしながら、新型コロナウイルスの収束の時期は不透明であり、事業活動への影響が現時点では予測できない状況となっている。感染症の拡大の影響により、売上高の減少や減産による操業率の低下、また、当社グループ従業員の感染者発生などによる生産の一時停止など、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
⑦その他の主な変動要因にかかるもの
上記の他、事故、地震・台風・竜巻などの自然災害が、当社グループの業績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性がある。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、景気が急速に悪化し、その後は、感染拡大防止に配慮しつつ経済活動は緩やかに再開されたが、冬期に入り感染の再拡大を受けて減速感が強まった。世界経済も、北半球が冬期に入ると感染ペースが再加速し、ワクチン接種開始など収束に向けた期待も高まる一方で、変異株の感染拡大により防疫措置が強化されるなど、収束が見通せず景気低迷の長期化が懸念され、先行き不透明な状況で推移した。
このような状況の下、当社グループは、昨年5月に公表した新中期経営計画「G-STEP30 1st(ジーステップ・サーティ ~ファースト)」に掲げる成長ステージに向けた基盤強化を最優先とした基本方針である、強固な事業ポートフォリオの構築、グローバル化の推進、社内風土・意識改革の実現に努めてきた。
この結果、当連結会計年度の売上高は110,375百万円(前期比7.7%減)となった。営業利益は6,018百万円(同10.1%増)となり、経常利益は5,381百万円(同70.6%増)となった。また、2019年1月に発生した宇治事業所の火災事故の受取保険金3,676百万円を特別利益に計上したこと、連結子会社の大阪染工株式会社及び産業繊維事業の事業用資産に対して減損損失3,397百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は3,864百万円(前期は2,158百万円の損失)となった。
事業セグメント別の経営成績は次のとおりである。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較している。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)1.報告セグメントの概要」に記載している。
[高分子事業セグメント]
高分子事業セグメントは、宇治事業所の火災事故の復旧は順調に進んだが、新型コロナウイルス感染症拡大により、自動車用途や電気電子用途などの産業分野において販売が影響を受けた。
フィルム事業では、包装分野は、外出自粛の影響により、コンビニエンスストア向け商品や土産菓子用途などは低調であったが、巣ごもり需要による食品分野などの一時的な販売増加もあり、底堅く推移した。また、バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」などの高付加価値品は国内外で順調に売上を伸ばした。工業分野は、半導体分野は堅調に推移し、高付加価値品では、シリコーンフリー離型ポリエステルフィルム「ユニピール」は堅調に推移した一方で、耐熱性ポリアミドフィルム「ユニアミド」の販売は減少した。この結果、事業全体で減収、利益は横ばいとなった。
樹脂事業では、ナイロン樹脂は、電気電子用途や建材、生活雑貨など幅広い用途で販売が減少した。自動車用途は、生産台数減少の影響を受けたが、年度後半から回復した。ポリアリレート樹脂「Uポリマー」は、情報端末機器用途や事務機器用途、生活用品用途に加え、海外販売も苦戦した。機能樹脂の各素材も、消費活動や生産活動の停滞の影響を受け、販売が減少した。この結果、事業全体で減収減益となった。
以上の結果、高分子事業セグメントは減収減益となり、売上高は41,436百万円(前期比9.3%減)、営業利益は5,682百万円(同0.7%減)となった。
[機能資材事業セグメント]
機能資材事業セグメントは、新型コロナウイルス感染症拡大により、医療用ガウンや一部の衛生材向けの販売は伸長したが、自動車、建築土木など多くの用途で販売が影響を受けた。
活性炭繊維事業では、環境関連用途では、電子産業関連の好調を受け、堅調に推移したが、主力の浄水器用途は、住宅設備関連用に加え、業務用の販売が減少し、VOC除去用途も低調であった。
ガラス繊維事業では、産業資材分野は、設備投資の抑制や工事物件の延期及び中止に伴い、テント、シート等の建築土木用途の販売が苦戦した。自動車用途及び環境関連用途は、年度後半から回復した。電子材料分野のICクロスは、情報端末機器関連用途で超薄物や低熱膨張タイプなどの高付加価値品の販売が好調であった。また、パソコンやサーバー向けの半導体用途も好調であった。
ガラスビーズ事業では、工業用途は、自動車を中心とする機械部品関連の需要減少の影響を受け販売が減少し、反射材用途及び道路用途も低調に推移した。
不織布事業では、建築土木用途を中心に産業資材用途、自動車用途、国内のスキンケア用途が低調に推移した。一方で、生活資材用途は医療用ガウンや除菌シートなどが伸長し、好調に推移した。
産業繊維事業では、短繊維は、建材用途や自動車用途では低調に推移する一方で、生活資材用途はコロナ影響による一時的な需要増加も見られ、産業資材用途も堅調に推移した。ポリエステル高強力糸は、建築土木用途で、工事延期及び休止等の影響を受け販売が大きく減少した。
以上の結果、機能資材事業セグメントは減収増益となり、売上高は29,628百万円(同8.4%減)、営業利益は792百万円(前期は4百万円の利益)となった。
[繊維事業セグメント]
衣料繊維事業では、新型コロナウイルス感染症拡大により、医療用ガウン及び感染防護服用途の販売が大きく増加した。一方で、主力のユニフォーム分野は、サービス・オフィス関連などを中心に需要が低迷し、レディス・スポーツ等の分野も低調となり、全般的に厳しい状況で推移した。
以上の結果、繊維事業セグメントは減収減益となり、売上高は39,278百万円(前期比5.0%減)、営業損失は368百万円(前期は8百万円の利益)となった。
[その他]
その他の事業については、売上高は31百万円(前期比77.1%減)、営業損失は78百万円(前期は289百万円の損失)となった。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,399百万円増加し、22,593百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少や訴訟に対する賠償金等の支払があったが、たな卸資産の減少や宇治事業所の火災事故に係る保険金の受取などにより、14,869百万円の資金の増加(前期比51.8%増)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に伴う支出などにより、6,171百万円の資金の減少(前期は10,192百万円の資金の減少)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済などにより、4,141百万円の資金の減少
(前期は3,482百万円の資金の減少)となった。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの生産活動の大半は、当社、日本エステル㈱、ユニチカテキスタイル㈱、ユニチカグラスファイバー㈱、㈱ユニオン、P.T.EMBLEM ASIA及びTHAI UNITIKA SPUNBOND CO.,LTD.で行われているため、これらの会社の実績により記載している。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
高分子事業 |
36,854 |
△7.4 |
|
機能資材事業 |
22,559 |
△7.9 |
|
繊維事業 |
628 |
△20.3 |
|
報告セグメント計 |
60,042 |
△7.7 |
|
その他 |
- |
- |
|
合計 |
60,042 |
△7.7 |
(注)1.生産高を明確に表示するため、外注生産高を含む総生産高で記載している。
2.上記の金額には消費税等は含まれていない。
b.受注実績
当社グループは主として見込生産を行っている。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
高分子事業 |
41,436 |
△9.3 |
|
機能資材事業 |
29,628 |
△8.4 |
|
繊維事業 |
39,278 |
△5.0 |
|
報告セグメント計 |
110,343 |
△7.6 |
|
その他 |
31 |
△77.1 |
|
合計 |
110,375 |
△7.7 |
(注)1.上記の金額には消費税等は含まれていない。
2.販売実績が総販売実績の10%以上の相手先はない。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績及び財政状態の分析
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ9,161百万円(7.7%)減収の110,375百万円となった。新型コロナウイルス感染症拡大による生産減少や市況悪化の影響を受けた。特に、高分子事業セグメント及び機能資材事業セグメントの自動車用途や建築土木用途、繊維事業セグメントの販売が減少したことなどにより、全体の売上が減少したためである。
b.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ551百万円(10.1%)増益の6,018百万円となった。売上高の減少がマイナス要因となった一方で、原燃料価格が比較的低位に推移したことやコスト削減等のプラス効果により、全体では増益となった。
c.営業外損益と経常利益
当連結会計年度の営業外損益については、為替の影響の好転などにより、営業外収益は、459百万円(87.4%)増加の985百万円となり、営業外費用は、1,217百万円(42.9%)減少の1,622百万円となった。これらの要因と、営業利益段階での増益により、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ2,227百万円(70.6%)増益の5,381百万円となった。
d.特別損益
当連結会計年度の特別損益については、特別利益は、2019年に発生した宇治事業所での火災に伴う受取保険金などの計上により、前連結会計年度に比べ4,526百万円増加の4,610百万円となった。特別損失は、機能資材事業セグメントや繊維事業セグメントでの減損損失の計上などにより、前連結会計年度に比べ354百万円(7.1%)増加し5,321百万円となった。
e.親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株式に帰属する当期純利益については、営業利益段階での増益や特別利益の増加などが影響し、前連結会計年度に比べ、6,022百万円増加の3,864百万円の当期純利益となった。
f.総資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ3,323百万円減少し、190,403百万円となった。これは、主として、たな卸資産が減少したことや、繊維事業セグメントの連結子会社での固定資産及び機能資材事業セグメントの産業繊維事業での固定資産について減損損失などを計上したことなどによるものである。負債は、前連結会計年度末に比べ5,581百万円減少し、149,211百万円となった、これは、主として有利子負債が減少したことによるものである。純資産は、前連結会計年度末に比べ2,259百万円増加し、41,192百万円となった。これは、主として、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。
ロ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析
当連結会計年度の事業セグメント別の経営成績については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりである。
ハ.資本の財源及び資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
b.契約債務
2021年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりである。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超 3年以内 |
3年超 5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
2,130 |
2,130 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
94,667 |
2,664 |
91,946 |
17 |
38 |
|
リース債務 |
378 |
153 |
112 |
77 |
35 |
c.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしている。また、運転資金の効率的な調達を行うため、当社と取引銀行1行との間で5,000百万円のコミットメントライン契約を締結し、資金の流動性を確保している。なお、当連結会計年度末における借入実行残高はない。
財務体質健全化については、在庫削減等による運転資金の効率化によって有利子負債の圧縮に努めている。
②重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。この作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としている。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりである。
合弁関係
|
契約会社 |
相手先 |
対象国 |
契約内容 |
契約締結年月日 (有効期間) |
|
当社 |
PT.GRAHA UPAYA MANDIRI 丸紅株式会社 |
インドネシア |
左記2社との共同出資によるナイロン6同時二軸延伸フィルム製造販売会社設立 資本金10,000千USD (提出日現在:資本金41,190千USD (1995年11月15日P.T.EMBLEM ASIA設立) |
1995年5月29日 (契約発効後、合弁会社の存続する期間) |
当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。
当連結会計年度の研究開発費は
(1)高分子事業セグメント
フィルム事業では、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルム「ユニアミド」は、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けの採用が増加し、販売量は着実に増加している。また、顧客からの様々な要望に応えるため、新たな生産設備の投資を意思決定した。2021年8月より工事に着手し、2023年1月に稼働を見込んでいる。これにより、生産能力の向上と多品種対応が可能となり、今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、耐熱性と無色透明性、優れた衝撃吸収性能などの特長を活かした用途への展開を進めていく。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、年々、高まる高品位化への要望に対応することで、銘柄も増加し、着実に販売量が拡大している。また、高粗度PETフィルム「エンブレットPTH、PTHA」の性能が国内だけでなく、海外まで認められて、販売量が拡大している。柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」もボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に国内だけでなく、海外でも採用が拡大し、ユニチカバリアフィルム商品群の主力銘柄に成長した。また、ユニチカを代表するバリアフィルム、「エンブレムDCR」の新銘柄として、バリア性と低温での耐ピンホール性をさらに向上させた「エンブレムDCR-25(K)」を上市し、好評を得ている。さらに、昨今の環境問題への意識の高まりの中、循環社会による持続可能な成長社会を目指す「Circular Economy:CE循環経済」の考えに基づいて、当社の重合設備にてケミカルリサイクルし、再生した樹脂を使用したフィルム「エンブレムCE」と「エンブレットCE」を上市した。ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルを併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、再生材料の利用比率を高めることができた。
樹脂事業では、当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」(Tシリーズ含む)については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途などのほか、自動車用ランプ用途で引き続き販売を継続しているほか、新たに開発した溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」Vシリーズの引き合いが増えており、優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進んでおり、早期実績化を目指している。ポリアリレート樹脂の旺盛な需要に応えるため行っていた増産工事が2018年12月に完了し、生産能力20%アップを実現した。高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は電気・電子用途のほか、摺動用途でも採用が進んでいる。オレフィン系エマルションである「アローベース」は包装材料などの接着層、コーティング層として拡大しているほか、金属と樹脂といった異種材料の接着に効果が認められ引き合いが増加している。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについては、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられ、ユーザーでの評価が続いている。ナノコンについては、メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードで、家電関係や自動車関係に採用が増えており、特に注目度の高い欧州での自動車内装材への採用が始まった。中央研究所発の新素材である「セルロースナノファイバー配合ナイロン6」は、重合工程でセルロースナノファイバーを樹脂中にナノレベルで均一に分散させる独自の製造方法により得られる。この樹脂は、発泡成形すると気泡の大きさが均一になる特色があり、「樹脂化」、「軽量化」のキーワードで注目を浴びている。また、通常のフィラー配合樹脂では発現しない特性も確認されており、高機能化樹脂としての用途開発を推進している。
バイオマスプラスチック事業では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」とともに、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」については後述の3Dプリンター用フィラメントなど、その成果を示す例が出てきている。さらに、グループ内の全事業における技術開発に関わる支援および技術企画を担う技術開発本部内に、サステナブル推進グループを2019年5月に新設し、当該グループを2020年7月にはサステナブル推進室に昇格させ、環境配慮型素材の開発を全社的に推し進めていく体制を整えた。
当事業セグメントに係る研究開発費は
(2)機能資材事業セグメント
ガラス繊維事業では、産業資材用途で顧客ニーズに応えたガラスクロス及びそれら処理加工品の製品開発を進め、ユーザーから好評価を得ている。また、電子材料用途では、超薄クロスの生産技術革新に取り組むとともに、高性能な新規ICクロスも開発中である。
活性炭繊維事業では、液相分野においては、浄水器用及び工業フィルター用の高性能化とコストダウンにより国内外での競争力の強化を図っている。また、気相分野においては、自動車用に加え、空気清浄機やマスクなど、空気脱臭用の高性能化とコストダウンにより海外展開を進めていく。
ガラスビーズ事業では、粒度分布をシャープにコントロールした「高精度ユニビーズ」について、半導体や電気・電子材料分野向けを中心とした新規ユーザー獲得に向け、さらなる技術改良・開発に取り組んでいる。また、従来製品にはない新規ガラス材料を素材とする球状製品について、ユーザーからのニーズに応えるべく、当事業部のガラス熔解・粉砕・球状化・分級・異形選別などのノウハウを生かした技術開発を進めている。
不織布事業では、スパンボンド分野にて、極太の異形断面糸形状である「ディラ」は、類をみない繊維構造で硬さと高通気性からフィルター材、ワイパー材他、多様な用途への展開を図り、採用実績に繋がっている。また、「ディラ」の特長を活かして、他不織布、他素材との複合品の開発も行っており、さらなる拡販を行う。農業分野へは多様なニーズに応えるべく開発を進めており、従来からのべたがけシートについて、透光・保温を兼ね備え、かつさらなる耐久性の向上を目指した開発を進めた結果、開発が完了し、2018年度から本格販売を行い高評価を得ている。また、さらに透明性を向上した高透光性シートの開発も進めている。多機能(抗アレルゲン・消臭・抗菌等)の性能を有する新たな用途への開発も進めており、アレル物質低減機能などを付与した「ユニダイヤ」を2018年6月より上市している。土木分野では、コンクリート面に貼り付けることで、コンクリートの高品質化を可能にし、構造物の長寿命化に貢献するコンクリート湿潤養生シート「アクアパック」を開発し、2019年9月より上市している。また、タイ国における新機台の増設により、今までと違った素材を提供することが可能となり、新規用途を含めた開発を進めている。スパンレース分野では、コットン素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めている。撥水や抗菌等の機能性付与や他シートとの複合、積層、柄付け等の意匠性の開発により採用実績に繋がっている。今後ともユーザーの要望に応える製品をタイムリーに提供できるよう開発を進めていく。
産業繊維事業では、ポリ乳酸紡糸技術による「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントにおいて、ポリ乳酸製オリジナル、『3Dプリンター用“感温性”フィラメント』、そしてポリ乳酸製の弱点をカバーして造形表現の幅を広げることを実現する易研磨性ポリ乳酸フィラメントも品揃えに加えた。また、業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量、かつ、長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬液に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。さらに、孔を微細化した限外濾過膜、ナノ濾過膜の開発に成功し、蒸留等の分離プロセスを膜分離で代替できる省エネルギー技術としてNEDO助成事業に採択され実用化開発を進めている。その他、高性能・高機能な膜分離を実現させるため、他素材も含めた研究開発を加速している。
当事業セグメントに係る研究開発費は
(3)繊維事業セグメント
衣料繊維事業では、環境対応型高機能繊維の開発に注力している。グループ企業の工場廃材をケミカルリサイクルした潜在捲縮型ポリエステル繊維「Z-10」及び、20葉断面シルキー調ポリエステル繊維「セシェ」の開発が完了し上市した。高機能リサイクルポリエステル繊維シリーズは、今後も、太陽光遮蔽性ポリエステル繊維「サラクール」、マイクロ繊度ポリエステル繊維「EQ」等、順次上市していく予定。紡績糸においてもリサイクルポリエステル繊維による紡績糸「パルパーエコ」の商品を拡充した。主要グループ企業であるユニチカトレーディング(株)、日本エステル(株)、ユニテックスにおいてGRS(Global Recycled Standard)認証を取得した。一方、バイオマス繊維としては、ナイロン11繊維「キャストロン」、DUPONTの植物由来繊維「SORONA」を紡績した「パルパー Made with Sorona Polymer」を開発し、市場では大きな注目を浴びている。2019年末から世界的に大流行している新型コロナウイルス感染症に対応した商品として、アイソレーションガウンを、国内サプライチェーンを整備した上で、2020年に関係省庁に対して緊急供給した。また、医療現場従事者向けに、より高機能なアイソレーションガウン用素材「ユニソフィア」シリーズを開発した。さらに、当社初の試みとして、独自のECサイトを立ち上げ、一般消費者向けに高機能マスクの販売を開始、市場から高い評価を得られている。また、ユニチカトレーディング(株)とシキボウ(株)とで、繊維部門における企業間ビジネス連携に合意した。今後、両社の国内外の工場を活用した、ユニークで高機能な商品開発を目指していく。
当事業セグメントに係る研究開発費は