当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「姿かたちを変えながら一生に寄り添い、幸せの時を広げる。」を企業理念として掲げております。「おいしい」「たのしい」「うれしい」など、人が生きている幸せを実感するときにそばにいることを事業活動の目標とし、その事業の源である自然への感謝を忘れずに、その恵みを様々な姿かたちにして広く社会に届け、幸せの時が広がる未来にずっと貢献できる企業グループを目指して一歩ずつ挑戦してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。引き続き成長分野への経営資源の投入を進めながら収益力の強化を図ってまいります。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社グループの財務の実態把握に努めてまいります。
(3)経営環境、事業上及び財務上の対処すべき課題等
当社グループは、砂糖事業が売上高の大半を占めております。国内の砂糖消費量は、人口減や甘味需要の多様化を受け漸減傾向にありますが、健康寿命の延伸や新しいライフスタイルの定着などが、人々の食のあり方そのものに新たな広がりをもたらしております。最先端のITを活用したフードテックにより、食品ロスが削減され環境保全に大きく影響するなど、食の持つ新たな可能性に期待の眼差しが向けられており、DXの推進やサステナビリティ意識の向上に対する取り組みは、さらに速度を増すことが想定されております。その一方で、砂糖事業は、農業政策・通商政策の影響を受けやすい事業構造にあります。また、少子化と高齢化の一段の進行による国内の労働力・労働者層の変化や人材獲得競争の激化、さらには、エネルギー価格の上昇、原材料価格の高騰や地政学的リスクの増大による世界的な政治経済の不安定化などにより、当社グループの事業を取り巻く環境は、より一層厳しさを増しております。
このような状況下、当社グループは、当連結会計年度より、2023年3月期から2026年3月期までを対象とする「中期経営計画-2026 Diversify into Nutrition & Health」をスタートさせました。中期経営計画では、グループ全体の成長戦略「グループビジネスモデルの変革」と「経営資源の再配分」を基本方針として掲げ、グループ内事業の最適化を図ることで、①国内砂糖事業の強靭化、②海外事業の拡大、③ライフ・エナジー事業の成長、④グループの持つ研究開発力の集積・強化、⑤持続可能な社会実現への貢献を推進してまいります。中期経営計画の達成に向け、グループの全役職員が多様な力を結集し、「人と社会の幸せの ちからになる」ために、人々の様々なライフステージにおいて必要とされる栄養と健康のソリューションをお届けする企業グループを目指してまいります。また、当社の連結子会社であった三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱は、2022年10月1日を効力発生日として合併し、商号をDM三井製糖㈱に変更いたしました。意思決定の迅速化や合併効果の早期実現を図り、人材や経営資源の集中と再配分をすることで、グループ経営をより一層深化させ、収益力の強化を実現してまいります。
国内砂糖事業につきましては、海外事業やライフ・エナジー事業といった成長領域へ経営資源の再配分をするべくその強靭化を追求し、バリューチェーン全体を抜本的に見直し、最適な原料糖調達や物流体制の構築による輸送・配送効率の向上を図ってまいります。また、環境に配慮した生産体制のもとでのエネルギー使用量の削減や、付加価値のある販売戦略を推進するとともに、燃料価格や原料糖価格の高騰に対し、即効性のある収益向上策を講じてまいります。国内砂糖産業の長期安定への貢献としては、日本甜菜製糖㈱との資本業務提携契約に基づき、連結子会社である北海道糖業㈱が同社への生産委託を開始し、北海道全体のビート糖生産体制の見直しを始めとする課題解決に向け取り組んでまいります。また、鹿児島・沖縄にも生和糖業㈱や石垣島製糖㈱などの原料糖を取り扱う連結子会社があるため、引き続き安定的な原料糖調達を実施し、サトウキビ産業を維持することで、特に離島経済の繁栄や国土の保全(国境防衛)にも貢献してまいります。
海外事業につきましては、堅調な経済成長を持続するASEAN・中国・中東において、当社グループの進出エリアごとに、以下の各種施策を推進してまいります。①シンガポール:中東、ベトナムへの進出によりシンガポールを中心とした精製糖サプライチェーン構築を目指してまいります。連結子会社SIS’88 Pte Ltdの同国における高いブランド力や、中東向けリテール商品の好調さを活かすべく、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイに新たなリパック拠点を建設し、中東エリアにおける更なる拡販体制を構築してまいります。また、SIS’88Pte Ltdの連結子会社であるAsian Blending Pte Ltdでは、ベトナムに新たな製造拠点を建設し、収益力の強化を図ってまいります。②中国:砂糖消費大国での事業拡大により巨大市場の取り込みを図ります。持分法適用関連会社である中糧糖業遼寧有限公司では、中国政府による徹底したゼロコロナ政策下においても維持された安定収益力を引き続き強固なものとしてまいります。また、同じく持分法適用関連会社である遼寧長和制糖有限公司では、主力製品となる精製糖小袋とブラウンシュガーの生産体制を整備し、販売体制の強化及び多種商品の販売による収益力強化を図ってまいります。その他様々なパートナー企業との事業拡大や新規事業検討を進め、ライフ・エナジー事業も含めた中国市場の開拓を進めてまいります。③タイ:50年以上の知見を活かしASEAN地域における高品質砂糖の供給拠点となるべく、生産機能を持分法適用関連会社であるKaset Phol Sugar Ltd.に集約し、効率化を図るとともに、原料糖・精製糖とも新工場を本格稼働させ、グループ全体の収益に貢献してまいります。
ライフ・エナジー事業につきましては、糖質・糖質由来成分に関して、グループ内に蓄積された長年の知見に加え、「栄養」「健康」領域に視野を広げ、特に「タンパク質」の機能に着目することで、日々のパフォーマンスや個々人のライフステージに適した栄養補給食を提供し、持続可能な社会に貢献してまいります。パラチノースを活用したスポーツ・eスポーツ向け市場の拡大や、連結子会社であるニュートリー㈱が得意とする栄養療法食品を提供するヘルスケア事業を深化させる一方、「Nutrition by Life Stage」をキーワードに、当社グループの素材や技術を複合する研究開発を軸に新たな事業の柱を創出し、国内では在宅市場への展開を見据えた介護・医療食品の拡大、海外では各国市場に即した製品展開などで、拡大する高齢化市場におけるプレゼンスを示してまいります。また、既存事業との親和性を考慮しながら、M&A等を活用することにより、当社グループが栄養補給の付加価値食品に描くストーリーを共有できるパートナー企業を募ってまいります。
研究開発につきましては、エネルギー源となる機能性糖質・タンパク質の開発、健康食の新たな提供方法・効率的な摂取方法の研究に着眼し、外部共同研究なども活用しながら、グループが有する商材・知見・技術を活かした多様な商品開発を進めてまいります。また、連結子会社であるDM三井製糖㈱に、当社グループの研究開発体制の中心となるDM三井グループ研究所を設置いたしました。㈱タイショーテクノスやニュートリー㈱といった連結子会社等との人材交流も含めた更なる連携を強化し、グループ総合力を最大限に発揮することで、ライフ・エナジー事業の成長を牽引し、新たな事業の柱を創出してまいります。
不動産事業につきましては、引き続き所有不動産の活用による安定的なキャッシュ創出に努めるとともに、一層の資産の効率化並びに収益力の強化を図ってまいります。
サステナビリティにつきましては、当社グループの基本方針である「5つの「寄り添い」で持続可能な社会の実現を目指す」をもとに設定した、10項目の重要課題及びKPI(評価指標)の実現に向けて、各種施策を推進してまいります。詳細につきましては、「2サステナビリティに関する考え方及び取り組み」をご参照ください。
当社並びに連結子会社であるDM三井製糖㈱、㈱ディーツーモンドシュガー・カンパニー、ダイヤマーケットクリエーション㈱、㈱タイショーテクノス、明糖倉庫㈱及びナカトラ不動産㈱は、2023年5月1日付で本店所在地を、また、北海道糖業㈱は、同日付けで東京オフィス所在地を東京都港区芝五丁目26番16号に移転・集約いたしました。在京グループ各社の拠点集約により、コミュニケーションの活性化及び更なる連携強化を通じたグループシナジーの創出を加速してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが本報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ戦略
① ガバナンス
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当社グループでは、気候変動問題・人権問題等のサステナビリティに関する課題への対応がリスクの低減かつ企業の成長にもつながる重要な経営課題の一つだと認識しており、サステナビリティ経営推進体制を右図のように構築しております。 サステナビリティ委員会で検討・審議された内容を経営会議に答申し、経営会議や取締役会でさらに検討・審議を重ねております。 |
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(サステナビリティに関する各組織の役割・機能)
[取締役会]
取締役会では、経営会議を通じてサステナビリティ委員会から定期的(年4回)に報告を受け、サステナビリティ基本方針や重要課題、重要課題に対する目標の最終決定、気候変動に関するリスク及び機会への対応方針の決定を行うとともに、気候変動対応を含めサステナビリティ全般に関する執行側の取り組みを監督しております。
[サステナビリティ委員会]
当社では、経営会議の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、定期的(年4回)に開催され、代表取締役社長を委員長とし、委員長が任命する取締役、主要な事業会社であるDM三井製糖㈱の執行役員、外部有識者で構成され、以下の役割を担っております。
・グループ推進体制及び運営方針策定
・当社グループとしてのサステナビリティに関する基本方針及び活動テーマ等の方針策定
・気候変動に関するリスク及び機会に関する方針策定
・気候変動を含むサステナビリティに関する重要課題のKPI設定
・進捗状況のモニタリング
[サステナビリティ推進室]
当社グループのサステナビリティへの取り組みを推進するため、当社及び主要な事業会社であるDM三井製糖㈱にサステナビリティ推進室を設置しております。当社グループの各子会社と連携を図り、サステナビリティ経営上の基本方針や重要課題、目標設定、戦略、アクションプラン等の立案や、具体的な活動の推進、サステナビリティに関する研修企画や啓発活動、対外的な情報発信を行っております。
なお、実施した活動と今後の計画についてはサステナビリティ委員会及び経営会議を通じて定期的に当社の取締役会にて報告を行い、持続的な成長に資するよう取締役会で議論のうえ、評価・改善を行ってまいります。
② リスク管理
当社のサステナビリティ戦略上のリスク管理体制の整備状況については、全社的なリスク管理体制の下でリスク管理規則に基づき、代表取締役社長をリスク管理最高責任者、各部門の担当執行役員等をリスク管理部門責任者、当社グループの各子会社については、原則として、当該会社の代表取締役社長をリスク管理部門責任者とした上で、リスク管理事務局である法務・コンプライアンスグループを中心に、定期的なリスク評価や規程類の整備などに努めております。
(当社に関する重要課題の特定結果)
持続可能な社会の実現への貢献とグループの持続的な成長のために、10項目を重要課題として特定いたしました。
(重要課題の特定プロセス)
重要課題の特定にあたっては、以下の3つのステップで検討いたしました。当社のサステナビリティ推進室メンバーによるワークショップを中心に文献調査、社外有識者に対するヒアリングを通じて当社グループを取り巻く課題を抽出し、ステークホルダーの関心度・当社グループへの影響度分析を行うなど、幅広い視点から検討を行いました。
1.わが国及び当社グループを取り巻く課題の抽出・分析
当社のサステナビリティ推進室メンバー9名によるワークショップ、文献調査、社外有識者に対するヒアリングを通じて20項目の課題を抽出し、各課題の具体的なリスク及び機会やその影響例について分析いたしました。
2.ステークホルダーの関心・当社グループへの影響度分析
ステークホルダーの関心度、当社グループが生じさせる好影響と悪影響、当社グループの操業・業績への影響度を分析いたしました。
3.重要課題の特定
1、2の結果を勘案し、当社グループが重点的に取り組むべき課題の優先順位付けを行い、重要課題を特定いたしました。
③ 戦略及び④ 指標と目標
当社グループは、サステナビリティ基本方針に掲げる5つの「寄り添い」を通じて、持続可能な社会の実現を目指します。事業の源である自然への感謝を忘れずに、その恵みを様々な姿かたちで広く社会に届け、企業を取り巻く地球環境や社会の課題に真摯に向き合い、その解決を図りながら新たな価値を生み出します。
また、特定した重要課題に対しては、指標と目標を設定することで、サステナビリティ戦略の方向性を明確にし、各目標の進捗状況をモニタリングし、取り組みに反映しております。
5つの「寄り添い」を通じた重要課題への取り組みと目標
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1.環境に寄り添う 気候変動・水資源問題への取り組み、廃棄物の削減をとおして環境改善に貢献します。
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気候変動問題 |
リスク(●) 機会(○) |
●気候変動の助長、生産・輸送過程でのCO2排出、地球温暖化による原料農産物の作柄への影響、気象災害激甚化による工場など生産設備への被害、炭素税導入による費用負担 〇CO2排出削減のための生産プロセスイノベーション、環境負荷に配慮した包装資材の開発・促進 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・環境マネジメントシステムISO14001の運用 ・省エネルギーな生産方法への転換、省エネルギー機器の導入 ・CO2削減に向けた生産技術部門のグループ企業横断的な取り組みの推進 ・最適生産方法・物流体制検討プロジェクトの推進 ・環境配慮資材の調達 |
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KPI(評価指標) |
2030年度までにCO2排出量46%削減(2015年度比) (2021年度 CO2排出量削減実績:2015年度比△11%減少) |
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2050年度までにカーボンニュートラル達成 |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱、北海道糖業㈱、関門製糖㈱ |
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水資源問題 |
リスク(●) 機会(○) |
●水資源枯渇による原料農産物の作柄への影響、水質悪化、水不足による生産部門(工場)の安定操業への影響 ○水使用量低減のための生産プロセスイノベーション |
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2023年3月期の主な取り組み |
・工場排水の水質検査・排水処理場での処理等による適正管理 |
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KPI(評価指標) |
2030年度までに水資源排出量20%削減(2015年度比) (2021年度 水資源排出量削減実績:2015年度比+3%増加(北海道の一部製糖所における原料となるてん菜の処理量の増加等に伴い操業日数が延びたこと等による。)) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱、北海道糖業㈱、関門製糖㈱ |
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廃棄物問題 |
リスク(●) 機会(○) |
●廃棄物による水質・土壌汚染(農業・生産部門への悪影響)、産業廃棄物の処理コスト増大 ○廃棄物の削減(リデュース)・リユース・リサイクル促進によるコスト・ダウン、環境負荷に配慮した包装資材の開発・促進、副産物の有効利用による新たなビジネスの創出 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・廃棄物等の分別の徹底・適正処理 ・生産に伴う副産物・廃棄物の資源化 ・製糖副産物(バガス)を活用した商品開発への取り組み促進 |
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KPI(評価指標) |
2030年度までに廃棄物ゼロエミッションを達成 (2021年度リサイクル率87%) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱、北海道糖業㈱、関門製糖㈱ |
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2.人に寄り添う 労働安全衛生を強化し、ダイバーシティ&インクルージョン(人財の多様性と包摂性)への配慮をつうじて、人権が尊重される社会の実現に貢献します。
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人権の尊重 |
リスク(●) 機会(○) |
●当社グループ内における人権侵害の発生と企業価値の毀損、サプライチェーン上での人権侵害の発生による原材料調達及び製品販売への影響 ○当社グループ内における人権の尊重による従業員のモチベーションアップ・生産性の向上・イノベーションの誘発・優良人材の獲得、サプライチェーン全体での人権尊重強化による企業価値や商品価値の向上 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・人権方針の策定に向けた準備・検討、人権に関する社内研修の実施 (2023年4月1日付でDM三井グループ人権方針及びDM三井グループ調達方針を制定) |
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KPI(評価指標) |
人権に関する教育や取り組みの社内研修を実施 (従業員への研修受講率100%) |
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サプライチェーンにおける原材料調達責任をはたすため、人権デューデリジェンスを実施(2025年度まで) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社16社及び持分法適用関連会社10社 |
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労働安全衛生の強化 |
リスク(●) 機会(○) |
●重篤な労災事故発生による従業員への影響及び企業価値の毀損 ○安全文化の醸成による企業文化の向上及びステークホルダーからの信頼獲得、労働安全衛生の徹底による従業員の心理的安全性確保とそれによる生産性の向上 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・労働安全衛生マネジメントシステムISO45001の運用 ・当社グループ全社を対象にした労働安全研修「安全の日」の実施(1月19日) ・活発なコミュニケーションによる課題抽出(スピークアップ活動) ・確実なコロナ対策の実施による安定的な生産継続 ・設備(監視カメラの設置等)や作業手順に対する導入・変更前の社内安全審査の実施 |
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KPI(評価指標) |
労働災害「ゼロ(休業災害1日以上を対象)」の達成 (2022年度休業災害実績3件/DM三井製糖㈱) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社16社 |
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ダイバーシティ&インクルージョン |
リスク(●) 機会(○) |
●性差別等による企業文化の劣化と採用難による人材不足、新たな発想力の低下 ○多様な価値観を受け入れる企業風土の醸成、多様な人材の活躍による従業員のワークエンゲージメントの向上及びイノベーションの誘発、従業員の心理的安全性向上による生産性の向上、人材獲得機会の増加 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・ダイバーシティ&インクルージョンに関する研修等の実施 詳細は「 |
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KPI(評価指標) |
女性管理職比率10%達成(2025年度まで) |
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障がい者雇用率3%以上 |
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男性従業員の育児休業取得率100% |
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出産した従業員等及び出産予定で退職した従業員等の合計数のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している者の割合が70%以上 |
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ダイバーシティ&インクルージョンの社内教育を実施(従業員の研修受講率100%) |
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ダイバーシティ&インクルージョンに関する相談窓口を設置 |
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国籍/性別(性的マイノリティー・LGBT)/年齢/障がいの有無に配慮した人事制度の導入 |
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従業員意識調査(働きやすさの調査)実施 |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社16社 |
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3.幸せの時に寄り添う 「適糖」生活を広げ、食の基盤づくりをとおして皆さまの幸せな未来に貢献します。
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糖分過不足による健康阻害 |
リスク(●) 機会(○) |
●不正確な情報による糖類過不足の発生とそれによる健康阻害 ○正しい知識の啓発による適正な糖分摂取とそれによる商品提供機会の増大・新たな需要の創造 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・小児糖尿病患者とその家族の会である「つぼみの会」の講習会(年2回開催)に協賛企業として参加 ・小学校での食育授業の実施 ・正しい砂糖の知識に関する社内データベースの構築及び各種メディアや学生向けの教育授業を通しての正しい砂糖知識の啓発活動の実施 ・栄養摂取に関する専門家との意見交換会及び学会・業界団体を通しての講演会・勉強会等の開催 |
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KPI(評価指標) |
糖分過不足による弊害についてのエビデンスに基づいた知見の蓄積 |
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糖分過不足による弊害の解消=「適糖生活」の概念構築に向けた勉強会、外部専門家との意見交換の実施 |
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日本人一人ひとりの生活実態・健康状態に合わせた「適糖生活」モデルの構築 |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱ |
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4.健康に寄り添う 食品安全の徹底とともに、健康寿命の延伸、栄養ニーズの充実、美味しさの革新をとおして、皆さまの健やかな生活に貢献します。
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食品安全の徹底 |
リスク(●) 機会(○) |
●食品安全衛生上の重篤な問題による顧客(消費者)への健康被害発生及び企業価値の毀損 ○食品安全の徹底による顧客(消費者)の信頼獲得とブランド価値・企業価値の向上 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・FSSC22000等のGFSI認証規格のほか、ISO9001やJFS-Bといった国際的な品質や食品安全に関する認証を継続し、品質向上・食品安全の強化を実施 ・品質保証部門による食品生産現場への定期監査実施 |
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KPI(評価指標) |
自社製造製品での重篤な健康危害(食中毒等)発生ゼロ (2022年度重篤な健康危害発生ゼロ/DM三井製糖) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社10社及び持分法適用関連会社2社 |
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KPI(評価指標) |
DM三井グループの国内外精製糖製造工場:GFSI認証規格を取得・継続 |
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他の国内食品製造工場:HACCPを含む食品安全に関する国際規格の取得拡大推進 |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社9社及び持分法適用関連会社7社 |
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健康促進・栄養改善 |
リスク(●) 機会(○) |
●顧客の健康促進・栄養改善に資する商品の欠如による売り上げの減少、少子高齢化による市場縮小 ○顧客の健康促進・栄養改善に資する新たな商品の開発、顧客の健康志向や拡大するヘルスケアマーケットへの対応による売り上げの増大・企業価値の向上 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・DM三井製糖㈱にDM三井グループ研究所を設置(グループ研究開発体制の構築) ・パラチノースを配合した新商品「ZUNOUP(ズノアップ)」の販売開始 ・エネルギー源となる機能性糖質・タンパク質の開発 詳細は「 |
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KPI(評価指標) |
健康関連分野(ライフ・エナジー分野)の売上高を500億円まで拡大(2025年度まで) (2022年度ライフ・エナジー事業売上高223億円) |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社3社 |
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5.地域社会に寄り添う 産業の振興をとおして、地域社会の維持・発展に貢献します。
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地域経済の発展 |
リスク(●) 機会(○) |
●国内地方経済の衰退による生産拠点での人材確保問題、国内原料農産物の生産減少 ○地域経済活性化による人口増加と人材獲得機会及び消費拡大、地域農業の活性化による生産性向上と原料農産物の安定供給 |
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2023年3月期の主な取り組み |
・石垣島さとうきび生産体験研修実施 ・小学校での食育授業実施 ・徳之島での生物多様性保全活動(NPO法人)支援 ・地域の子供食堂・養護施設等への食品寄附活動 ・地域の清掃活動への参加 |
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KPI(評価指標) |
砂糖原料生産地(沖縄/鹿児島/北海道)の地域経済・自然環境保護に貢献する活動を、毎年合計3件以上実施 |
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バウンダリー:北海道糖業㈱、生和糖業㈱、石垣島製糖㈱ |
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KPI(評価指標) |
地域に貢献するサステナビリティ関連活動を継続的実施 |
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バウンダリー:DM三井製糖㈱のほか、連結子会社12社 |
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(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社は、2023年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに参加いたしました。
自然の恵みを大切に使わせて頂きながら主力事業を行う当社グループにとって、気候変動による様々な影響は、優先の高い課題であると認識しております。
TCFD提言に沿ってシナリオ分析に基づいたリスク・機会の検討を進めており、識別されたリスク・機会を事業推進上のリスクマネジメント及び経営戦略に反映するとともに、今後その進捗を積極的に開示してまいります。そして社会全体の脱炭素化に貢献しながら、さらなる成長を目指してまいります。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれております。詳細については、「
② リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ戦略のリスクに含めて管理しております。詳細については、「
③ 戦略
当社グループの事業は、原材料の大半が気候変動リスクの影響を大きく受ける農産物であること、また製造・加工・販売の過程において多くのエネルギーを消費しており低炭素社会への移行リスクの影響を大きく受けることから、気候変動を重要なリスクと認識しております。
当社グループでは、当社の中期経営計画との時期整合性、またパリ協定、日本政府の掲げる目標年といった外部環境要素を踏まえ、気候変動による影響について時間的範囲を、2050年度をゴールとし、その中間目標年を2030年度と定めております。
(重要リスクの特定)
気候変動に関するリスク及び機会については、当社の主力事業である国内製糖事業を対象に、農林水産省が公開している資料を基に網羅的なリストアップを行いました。さらに、当社事業への財務的影響の大きさ等に鑑み、「気象災害の激甚化による当社グループ工場等の被害額増大」を短期及び中期の物理的リスクとして、「炭素税の導入による費用増加」を長期の移行リスクとして、特に重要なリスクとして特定いたしました。
重要なリスクについては、シナリオに基づく評価を行いました。物理的リスクについては、当社グループの精製糖工場が沿岸域に位置することから4℃シナリオにおける日本沿岸域の被害想定額増加率、移行リスクについては、1.5℃シナリオにおける炭素価格を、それぞれWRI(世界資源研究所)、IEA(国際エネルギー機関)が公開している資料からパラメーターとして設定し、当社における影響額を推計しております。
また当社グループでは、既に取り組んでいる対応策も含め、リスクの最小化に向けて体制を整備しております。
なお、気候変動が及ぼす農作物の収穫量の変化や、異常気象等に伴う原材料の調達への影響については、今後、分析してまいります。
(識別した重要リスクへの対応策)
「気象災害の激甚化による当社グループ工場等の被害額増大」については、過去に国内工場で高潮被害を受けている他、大型台風による設備への風害も発生しております。
気候変動によるリスク顕在化の不確実性に対応するため、当社グループでは、予防の観点で設備の定期メンテナンスを実施し、自社工場の千葉、神戸、福岡に加えて、製糖委託工場を含む6工場による供給網の他、定期的なBCP訓練やその見直し、原材料調達先との連携や複数購買など、当該事象発生時において主要事業の早期復旧を図るための体制を整備しております。さらには、緊急時の供給体制を構築し、基礎調味料であり重要なエネルギー源でもある砂糖の安定供給を確かにすることで、サプライヤーとしての信頼を構築することは気候変動における機会になりうると考えております。
「炭素税の導入による費用増加」については、当社の中核である精製糖事業では主に生産プロセスで大量のエネルギーを必要とすることから、創エネ、省エネ、脱炭素エネルギーの採用(グリーン電力の購入、バイオマス燃料等)による2050年CO2排出量実質ゼロに向けた取り組みを推進する他、サプライヤーや顧客と連携したCO2削減や商品及び価格体系の見直しによって、財務リスクの最小化に取り組んでまいります。
今後は、重要なリスクについての更なる精査や、他の気候変動にかかるリスクと機会の検証を進め、当社グループの気候変動に対するレジリエンス強化に取り組んでまいります。
④ 指標と目標
サステナビリティ委員会では、リスクについて方針を策定、あるいは気候変動を含むサステナビリティに関するKPI(評価指標)を設定し、進捗状況をモニタリングしております。これらの検討、審議された内容は経営会議及び取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しております。
今後、当社グループではCO2排出量について「2030年度までに2015年度比で46%削減」し、さらに「2050年度までにカーボンニュートラル達成(スコープ1・2において)」を目標としております。
また、環境問題に関連するKPI(評価指標)として、以下の2点を定めております。
・水資源排出量の削減
2030年度までに水資源排出量を2015年度比で20%削減
・廃棄物排出量の削減
2030年度までに廃棄物ゼロエミッションを達成
※ゼロエミッションを廃棄物再資源化率98%以上と定義
当社グループでは、これらの目標達成により持続可能な社会を実現するべく、取り組みを進めてまいります。
なお、2021年度における当社グループにおけるCO2排出量は、以下のとおりであり、2015年度比で11%削減しております。
・スコープ1・2のCO2排出量(2021年度)
当社グループの主な排出元であるDM三井製糖㈱、北海道糖業㈱、関門製糖㈱のCO2排出量
:303,917トン-CO2
(3)人的資本
① 人材育成方針や社内環境整備方針
当社グループでは、2022年5月に策定した中期経営計画において、基盤となる国内砂糖事業の強靭化を推進するとともに、経営資源の再配分により、成長分野であるライフ・エナジー事業及び海外事業の成長と拡大を目指すことを基本方針としておりますが、持続的成長、企業価値向上の実現には、更なる多様な視点と価値観の尊重が重要であると認識しております。今後の中長期の戦略となる成長分野である海外等への事業領域の拡大やコーポレート機能の充実に対応していくために、外国人やキャリア採用を含めた様々な知見のある多様な人材を確保し、これらの測定可能な目標設定と併せ、体系整備を含めた人材育成や多様な人材が活躍できる職場環境整備を推進してまいります。
a. 人材育成方針
当社グループは、従業員の「自立×自律」をキーワードに、主体的に業務に取り組む自立した人材の育成を目指し、教育体系を整えております。近年、「グローバル化」や「連結経営」の展開とともに国内外を問わず様々な場所で働く機会が増えており、専門知識や語学などの個の実力アップ、階層に則した現場でのマネジメント力の発揮が更に求められてきております。
このため、階層別、ビジネススキルと社外参加型の研修も組み合わせて将来を担う人材の育成を図っております。これに加えて、新たな成長分野を構築するため社内プロジェクトを複数立ち上げて組織横断的に自らチャレンジできる体制も整えました。グローバルの観点では、語学スキルの向上を支援する仕組みを整備するとともに、海外への若手従業員の派遣等、グローバルマインド醸成の機会を増やしております。
また、通信教育やe-ラーニング、資格取得の奨励金制度等、従業員の自発的な成長を後押しできる幅広い教育機会の提供にも取り組んでおります。
b. 社内環境整備
当社グループは、働き方改革や健康で健全な環境作り、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、全ての従業員が多様性を受け入れて尊重しあい、仕事と家庭の両立を図りつつ、それぞれの能力を最大限発揮して活躍できる職場環境を整備し、会社の成長につなげてまいります。
1.働き方改革
当社及び主要な事業会社であるDM三井製糖㈱では、兼業・副業を含む場所や時間に左右されない働き方を支援し、テレワーク勤務制度(在宅勤務、サテライトオフィス利用)及びフレックス勤務制度を導入しております。個人の状況に応じた多様な働き方の選択により時間を有効活用し、仕事とプライベートの充実に加えて、業務の生産性向上につなげております。
2.健康で健全な環境作り
全ての従業員が心身ともに健康であるために、様々な取り組みを実践しております。日頃の「健康管理」においては、保健師(看護師)による日々の健康管理や健診後のフォロー、インフルエンザ予防接種、ストレスチェック・メンタルヘルス研修を含むEAP(従業員支援プログラム)の運用を効果的に実施し、eラーニングや女性特有の健康管理に関する動画配信等を通じて従業員自身がこころやからだの状況について気付きを得られる取り組みを行っております。「健康経営」においては、健康経営度調査への参加や健康保険組合と連携して歯科検診補助をはじめとした各種施策を行うなど、社内の課題を速やかに把握し、対応を行っております。今後も従業員の心身の健康維持・向上に努めてまいります。
3.ダイバーシティ&インクルージョンの推進
キャリア採用・障がい者採用を含め、様々な知見やポテンシャルを持つ方や性別・国籍など属性の違いを超えた多様な人材の採用に努めております。また、介護離職防止に向けた「仕事介護の両立セミナー」を定期的に開催しております。制度面では、育児や介護、仕事との両立をサポートするため、法定を上回る内容の短時間勤務制度や介護休暇制度、家族の介護または配偶者の転勤を理由に退職した従業員が、一定の期間を空けて再び会社への就業を希望した場合に、雇用の機会を提供するジョブ・リターン制度等を設けております。
今後は、ダイバーシティ&インクルージョンに関する社内教育を実施していくと共に、コミュニティーの中でマイノリティの従業員が孤立せずに相談しやすくするため、既にあるヘルプラインを拡大し、相談窓口の設置に取り組んでまいります。また、エリアを限定した勤務地での就業や60歳以上従業員の柔軟な就業環境整備をはじめ、ダイバーシティに配慮した人事制度を順次導入し、従業員のエンゲージメントサーベイを実施するなど、性別・年齢・障害・国籍を問わず多様な人材が生き生きと働けるよう、様々な取り組みを行ってまいります。
② 人材育成方針や社内環境整備方針に関する指標の内容、当該指標による目標・実績
a. 女性の活躍推進
管理職手前の階層の女性従業員を対象としたキャリアアップ意欲の喚起ならびに管理職に必要なマネジメント能力付与のための研修実施等により、キャリア開発、職場風土醸成に取り組んでおります。当社グループの目標として女性管理職比率10%(2026年3月末まで)を掲げております。主要な連結子会社では、DM三井製糖㈱、㈱タイショーテクノス及びニュートリー㈱は女性管理職比率の目標である10%を達成しておりますが、今後は次世代女性管理職候補者の育成にも注力をし、さらに女性の管理職比率を向上させるよう、グループで取り組みを推進してまいります。
b. 男性従業員の育児休業の取得
男性も育児に参画し、仕事と子育ての両立ができるよう、育児休業を取得しやすい環境の整備に努めてまいります。2023年3月期は、主要な連結子会社では、DM三井製糖㈱の男性育児休業取得率は87.5%に達しましたが、2028年3月期に連結ベースでの男性育児休業取得率100%を目標に、グループ全体でも取得率向上に取り組んでまいります。
当社グループの事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を以下に記載いたします。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)食の安全性に関する事項
当社グループは、安全安心な製品を安定的に供給するための生産・品質管理体制を整備し、万全の体制で臨んでおります。しかし、品質上の重大な問題等が発生した場合、顧客の信頼喪失、売上低下、生産の停止や製品の回収、管理体制の強化や対策のための費用の発生を含め、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは品質上の重大な問題を未然に防ぐため、ISOやFSSCなどの規格を取得・活用し、マネジメントシステムを効果的に運用することで、食品安全の強化並びに製品・サービス品質及び顧客満足度を向上、フードディフェンスを強化しております。また、食品事故が発生した場合を想定し、最小限の被害に抑えるための行動マニュアルや情報管理マニュアルを整備し、品質事故対応訓練を定期的に実施しております。
(2)農業政策等の事業環境に関する事項
当社グループは、砂糖事業が売上高の大半を占め、北海道・鹿児島県・沖縄県に国産糖製造会社を有しております。その結果、砂糖事業を取り巻く環境の変化や、農業政策・通商政策の影響を受けやすい事業構造にあります。また、国内の砂糖消費量は、人口減や甘味需要の多様化等により漸減傾向にあります。国内砂糖事業は、政府の農業政策と「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」(※)等の法令に基づく制度の中で行っておりますが、今後の政府の農業政策の変更、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)・TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の進捗により、海外から砂糖を使用した安価な製品が輸入される場合や、将来的に安価な精製糖が輸入される場合には、売上の減少や固定資産の減損リスクなど当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは日頃より不断の情報収集に努め、想定に応じた影響度の把握と対策を常に検討しております。一方、堅調な経済成長が持続するASEAN・中国・中東では砂糖需要が増加傾向にあるため、シンガポールの連結子会社や、タイ及び中国の持分法適用関連会社を通じて海外砂糖事業の拡大を図ってまいります。地政学的リスクを注視していく必要があるものの、原料糖調達ルートの多様化やグローバルな事業展開を進めることで国内の農業政策の変化による影響を分散し、長期安定的な成長に向けた体制を構築してまいります。
(※)甘味資源作物の価格調整措置を通じて、国内の農家所得等の安定及び精製糖メーカーを含む関係事業の健全な発展の実現を目的とする法律。輸入される原料糖よりもコストの高い国産原料糖を生産する国内の砂糖産業を支えるため、農林水産省による需給調整のもと、精製糖メーカーが、海外から原料糖を輸入する際、輸入価格に上乗せして調整金を支払う義務などを負っている。
(3)原料糖及び商品仕入価格並びに製商品の販売価格の変動に関する事項
当社グループは、主力である砂糖事業において、原料糖が外貨建ての相場商品であり、為替変動リスクの他、エネルギー価格の上昇や地政学的リスクの増大、主要生産国であるブラジルやタイ、オーストラリア等の天候やサトウキビの生育状況などによって市況が大きく変動する場合があります。また、製品価格も競争や代替甘味料へのシフト等の市場環境の変化により変動することがあります。ライフ・エナジー事業においても、海外からの商品仕入において、為替や海上輸送コストの変動リスクを有しております。原料糖及び商品仕入価格の変動等を製商品価格に適切に反映できない場合や、製商品価格改定の間にタイムラグが生じた場合には、原価率の上昇など当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは社内規則に基づき、担当部門における役職員への適切な権限付与、取引区分の明確化などにより、リスク管理を徹底しております。また、日頃より不断の情報収集に努め、適時適切に価格反映を実施するなど、想定に応じた影響度の把握と対策を常に検討しております。
(4)気候変動に関する事項
当社グループは、国内外にて事業活動を行っておりますが、気候変動に伴う大規模自然災害等により、予想を超える事態が発生し、製品生産への支障が長期間にわたった場合、売上低下などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、製造・加工・販売の過程において多くのエネルギーを消費しており、低炭素社会への移行に際して生じるリスクの影響を大きく受けることから、気候変動を重要なリスクと認識しております。気候変動への対応の詳細につきましては、「2サステナビリティに関する考え方及び取り組み(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)」をご参照ください。
(5)事業投資に関する事項
当社グループは、成長戦略の一環として、国内外における事業投資を推進しております。M&Aに際しては、対象となる企業について詳細なデューデリジェンスを実施し、リスク回避に努めておりますが、その後の偶発債務の発生、対象会社の事業運営に支障をきたす事態等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、各国の通貨、法律、会計、税務等制度に則って事業を行っており、グループ全体としてコンプライアンスを徹底しておりますが、各政策・制度の急激な変更、廃止や地政学的リスクの顕在化等により、各社における事業活動が制限され、対応のための費用負担等が発生する可能性があります。投資に伴って計上するのれん及び無形固定資産につきましては、将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、対象となる事業において将来の収益力が低下した等により、減損処理が必要になった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。重要な事業投資につきまして、十分な事前協議を行った上で、経営会議を経て取締役会にて決定しており、また、投資後、各社への経営幹部人材の派遣、取締役会等の重要会議への出席や定期的な経営管理により、事業価値の向上に努めております。
(6)人材確保及び育成に関する事項
当社グループは、積極的な事業投資を推進しておりますが、国内の労働力・労働者層の変化を受け、新卒・中途採用競争が激化し、必要な人材の確保及び育成を計画通り実施することが困難となった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。かねてより、労働安全衛生を最優先とした職場環境整備や、時流に適合した働き方改革を推進することで、適正な人材の確保に尽力しておりますが、当社グループの持続的な成長を実現させていくためにも、より一層ダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。人材確保及び育成への対応の詳細につきましては、「2サステナビリティに関する考え方及び取り組み(3)人的資本」をご参照ください。
(7)地震・台風・豪雨等に起因する大規模自然災害及び感染症拡大に関する事項
当社グループは、国内外で事業展開しておりますが、地震・台風・豪雨等に起因する大規模自然災害の発生により、原料糖の調達や製品の生産・流通が困難となる可能性があります。また、感染症の拡大に伴う行動制限政策等により、需要が低迷し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、事業継続計画(BCP)を策定の上、定期的な見直しや訓練を実施しております。また、大規模自然災害下や感染症拡大下での、従業員の安全衛生と製品の安定供給を最優先した事業運営体制を整備し、リモートワーク制度の導入、職域接種への賛同・協力といった施策に取り組んでおります。生産拠点では、確実な感染症対策を含む高度な衛生基準のもと、生産継続を確保する体制を整え、維持しております。
経営成績等の状況の概要
(1)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度のわが国経済は、度重なる新型コロナウイルス感染症拡大の波を受けながらも、年度末に向け落ち着きを見せ、基本的な感染防止対策の継続と社会経済活動との両立を進めることで、緩やかな景気の持ち直しが見られました。一方、エネルギー価格の上昇や急速な円安、長引く原材料価格の高騰や増大する地政学的リスクなどにより、依然として先行き不透明な状態が続いております。
このような状況下、当社グループは、当連結会計年度より、2023年3月期から2026年3月期までを対象とする「中期経営計画-2026 Diversify into Nutrition & Health」をスタートさせております。中期経営計画では、グループ全体の成長戦略「グループビジネスモデルの変革」と「経営資源の再配分」を基本方針として掲げ、グループ内事業の最適化を図ることで、①国内砂糖事業の強靭化、②海外事業の拡大、③ライフ・エナジー事業の成長、④グループの持つ研究開発力の集積・強化、⑤持続可能な社会実現への貢献の5つの柱を実現すべく、DM三井グループ一丸となって各種施策を推進してまいりました。
砂糖事業
海外粗糖相場は、1ポンド当たり19セント半ばから始まり、世界最大の輸出国であるブラジルの天候不順を受けた減産見通し・ウクライナ情勢による国際商品市況の高止まりを背景に、4月中旬に20セントを超えるに至りました。その後、世界経済の不透明感による景気減退観測・消費低迷により、一時17セント半ばまで下落いたしました。11月以降は、北半球の主要産糖国の減産見通しを受け上昇し、高止まりを続けたまま2月末には約6年振りとなる22セント台に達した後、22セント前半で当連結会計年度末を迎えました。
国内市中相場は、204円~205円から始まり、海外粗糖相場の高止まり、エネルギー価格の高騰や急速な円安などの影響を受け、227円~229円で当連結会計年度末を迎えております。
国内の精製糖販売は、家庭用需要が、食品値上げラッシュによる消費者の購買意欲抑制を受け低迷している一方で、政府による国内観光需要喚起策の実施や入国制限緩和によるインバウンド需要の復活といった、新たな行動制限なしで社会経済活動の再開に取り組む方針などを受け、飲料・外食・土産物向け需要は回復いたしました。出荷価格につきましては、当連結会計年度において3回、1kg当たり計24円の引き上げを行ったものの、海外粗糖相場とエネルギー価格の高止まりや急速な円安による原料費、海上運賃、工場エネルギーコスト、包装資材及び物流費などの上昇の影響を大きく受けました。
また、国内の原料糖販売は、北海道、鹿児島及び沖縄の連結子会社において販売量が伸長いたしました。一部において、原料費及び燃料費単価上昇等による原価率の悪化による影響を受けたものの、利益面においても堅調さを見せました。
海外では、シンガポールにおいて、新型コロナウイルスに係る行動制限の緩和により販売量は回復いたしましたが、感染拡大に起因する労働力不足・電力価格の上昇・輸送コストの高騰などによる原価率の悪化、事業拡大のための拠点移転費用の発生が、利益面に影響を与えました。
以上の結果、砂糖事業は、売上高138,523百万円(前連結会計年度比12.2%増)、営業利益207百万円(前連結会計年度比91.5%減)となりました。
期中の砂糖市況
海外粗糖相場(ニューヨーク砂糖当限、1ポンド当たり)
始値 19.42セント 高値 22.36セント 安値 17.60セント 終値 22.25セント
国内市中相場(日本経済新聞掲載、東京上白大袋1㎏当たり)
始値 204円~205円 終値 227円~229円
ライフ・エナジー事業
パラチノースは、新型コロナウイルスや円安による仕入価格上昇の影響を受けながらも、乳飲料や海外向け販売で前年同期並みに推移いたしました。パラチニットはキャンディ・ゼリー用途で、さとうきび抽出物は環境消臭・飼料用途の国内販売で、ともに堅調さを見せました。また、食用色素・品質改良剤の販売やバイオ事業の受注増による増収が大きく貢献いたしました。利益面では、流動食製品のリニューアルに伴う生産調整の遅れや、全体としての円安や海上輸送費の高騰などの影響を受けたものの、バイオ事業の受注増による増益などにより、利益は回復いたしました。
なお、2022年9月7日に公表の通り、連結子会社である三井製糖㈱(現DM三井製糖㈱)及びニュートリー㈱が、テルモ㈱と同社の栄養食品及び関連製品に関する事業を譲り受ける契約を締結し、第3四半期連結会計期間において、当該譲り受けを完了いたしました。
以上の結果、ライフ・エナジー事業は、売上高22,367百万円(前連結会計年度比2.4%増)、営業利益393百万円(前連結会計年度比155.8%増)となりました。
不動産事業
岡山工場跡地における新規賃貸開始案件もありましたが、前連結会計年度における収益用不動産の売却に伴う賃貸料収入の減少等により、売上高2,420百万円(前連結会計年度比7.3%減)、営業利益498百万円(前連結会計年度比51.8%減)となりました。
なお、岡山工場跡地における再開発案件は、上記新規案件をもって全てが当連結会計年度にて完了いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は163,310百万円(前連結会計年度比10.4%増)、営業利益は1,100百万円(前連結会計年度比69.7%減)となりました。
営業外損益におきましては、フィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーにつき、2019年2月以降、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱とNovartis Pharma AG(以下「ノバルティス社」という。)との間で、ノバルティス社がライセンス契約の有効性に関し疑義を提起する仲裁手続きがなされておりました。当社は、本仲裁手続きが開始されて以降、ノバルティス社が疑義を提起している部分の受取ロイヤリティーについては、収益としては認識しないこととしておりましたが、2023年2月14日に公表の通り、ノバルティス社の主張を全面的に否定する仲裁廷の判断を受け、第3四半期連結会計期間末時点の長期仮受金17,552百万円(固定負債の部にその他の内数として記載)を、当連結会計年度において一括して収益として認識いたしました。その結果、当該長期仮受金に、当連結会計年度における受取ロイヤリティー937百万円を合わせ、営業外収益として計上しております。その他、持分法投資損益において、中国における新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳格な行動制限を受けた関連会社の販売量減、タイ国関連会社での損益悪化等を受けたものの、経常利益は19,058百万円(前連結会計年度比447.8%増)となりました。
また、連結子会社である北海道糖業㈱において、今後のビート(てん菜)糖事業に関する内外環境・需給動向を踏まえた長期的な生産量・価格の見直しを主とする事業性の再評価を行った結果、同事業関連の固定資産につき減損損失が発生したことや、繰延税金資産の取り崩しなどがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益は7,911百万円(前連結会計年度比116.3%増)となりました。
なお、当社の連結子会社であった三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱は、2022年10月1日を効力発生日として、合併し、商号をDM三井製糖㈱に変更いたしました。意思決定の迅速化や合併効果の早期実現を図り、人材や経営資源の集中と再配分をすることで、グループ経営をより一層深化させ、収益力の強化を実現してまいります。
(2)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社グループは、主力の砂糖事業において、原料となる粗糖が相場商品であること、また製品価格も競争や市場環境等により変動する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事業環境下、当社グループでは適切な原料糖調達と適正販売価格帯の維持に努めてまいりました。
(3)経営上の目標指標に関する分析
当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。当連結会計年度のROEは7.6%となりました。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社グループの財務の実態把握に努めてまいります。当連結会計年度のEBITDAは8,216百万円となりました。
配当金額につきましては、引き続き株主の皆様に対する利益の還元を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、将来の成長に向けた事業展開と、経営基盤強化のための内部留保の充実にも配慮しつつ、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。その上で、年間配当金額は、連結配当性向が100%を超えない限り、最低配当金額として1株当たり60円の配当を実施することとし、都度の経営環境を総合的に勘案し、現金配当と機動的な資本政策を組み合わせた総還元性向50%を目処とした株主還元を行ってまいりました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動で6,228百万円増加、投資活動で21,561百万円減少、財務活動で11,655百万円増加したことにより、前連結会計年度末に対して3,467百万円減少し、27,610百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は6,228百万円(前連結会計年度は資金の増加6,356百万円)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益13,846百万円、減価償却費6,054百万円、減損損失6,028百万円等による資金の増加があった一方で、長期仮受金の減少15,331百万円、売上債権の増加2,010百万円、法人税等の支払3,380百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は21,561百万円(前連結会計年度は資金の増加344百万円)となりました。
これは主に投資有価証券の売却による収入648百万円等による資金の増加があった一方で、賃貸等不動産及び工場設備等に係る有形固定資産の取得による支出17,730百万円、事業譲受による支出4,610百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の増加は11,655百万円(前連結会計年度は資金の増加6,570百万円)となりました。
これは主に社債の発行による収入10,000百万円、借入金の純増額8,159百万円等による資金の増加があった一方で、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出4,114百万円、配当金の支払1,942百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は47,998百万円となっております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
砂糖事業(百万円) |
113,532 |
106.1 |
|
ライフ・エナジー事業(百万円) |
11,629 |
123.9 |
|
合計(百万円) |
125,162 |
107.6 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
砂糖事業(百万円) |
28,499 |
127.6 |
|
ライフ・エナジー事業(百万円) |
5,515 |
114.7 |
|
合計(百万円) |
34,014 |
125.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3)受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社以下同じ)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(4)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
砂糖事業(百万円) |
138,523 |
112.2 |
|
ライフ・エナジー事業(百万円) |
22,367 |
102.4 |
|
不動産事業(百万円) |
2,420 |
92.7 |
|
合計(百万円) |
163,310 |
110.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
三井物産㈱ |
47,704 |
32.3 |
51,401 |
31.5 |
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な判断に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比6,626百万円増加し196,123百万円となりました。連結貸借対照表の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。
①流動資産
流動資産は、前連結会計年度末比57百万円減少し88,877百万円となりました。これは主として、現金及び預金の減少3,475百万円、売掛金の増加2,209百万円、商品及び製品の減少1,656百万円、仕掛品の増加565百万円、原材料及び貯蔵品の増加1,439百万円、その他流動資産の増加761百万円等があったことによるものであります。
②固定資産
固定資産は、前連結会計年度末比6,684百万円増加し107,246百万円となりました。これは主として、建物及び構築物の増加3,507百万円、機械装置及び運搬具の減少3,780百万円、土地の増加9,621百万円、建設仮勘定の減少5,199百万円、のれんの増加1,755百万円等があったことによるものであります。
③負債
負債は、前連結会計年度末比3,975百万円増加し83,545百万円となりました。これは主として1年内返済予定の長期借入金の減少5,000百万円、社債の増加10,000百万円、長期借入金の増加11,770百万円、繰延税金負債の増加2,114百万円、長期仮受金の減少15,331百万円等があったことによるものであります。
④純資産
純資産は、前連結会計年度末比2,651百万円増加し112,578百万円となりました。これは主として、連結子会社株式の取得による資本剰余金の減少1,539百万円、利益剰余金の増加5,966百万円、為替換算調整勘定の増加1,648百万円、非支配株主持分の減少3,313百万円等があったことによるものであります。
(3)経営成績
当連結会計年度における経営成績の概要につきましては、「経営成績等の状況の概要(1)当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。なお、連結損益計算書の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。
①売上高
売上高は、前連結会計年度比15,430百万円増加し163,310百万円となりました。これは主として、砂糖事業の売上高の増加15,092百万円等があったことによるものであります。
②営業利益
営業利益は、前連結会計年度比2,529百万円減少し1,100百万円となりました。これは主として、砂糖事業において原料費の上昇に伴う原価の悪化等があったことによるものであります。
③経常利益
経常利益は、前連結会計年度比15,579百万円増加し19,058百万円となりました。これは主として、受取ロイヤリティーの増加等によるものであります。
④親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度は経常利益の増加及び負ののれん発生益の減少、減損損失の増加等を主因として、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比8,184百万円増加し13,846百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純損失を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比4,254百万円増加し7,911百万円となりました。
(4)キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況につきましては、「経営成績等の状況の概要(4)キャッシュ・フローの状況の分析」に記載しております。
該当事項はありません。
当社の連結子会社であった三井製糖㈱及び大日本明治製糖㈱の合併を機に、両社の研究開発部門が統合し、DM三井製糖㈱(合併後の新商号)の研究開発組織として、2022年10月1日付で、DM三井グループ研究所が発足いたしました。当該研究所は、事業開発部門と一体となり、当社グループのライフ・エナジー事業を中心とする事業の更なる拡大発展と、新規事業領域への展開を目指して研究活動を実施しております。なお、当連結会計年度にかかる研究開発費用の総額は
主な内容は、次の通りであります。
ライフ・エナジー事業
DM三井グループ研究所を核として、主にライフ・エナジー事業に関係するグループ3社(ニュートリー㈱、㈱タイショーテクノス、北海道糖業㈱)と連携した研究開発を行っております。研究開発テーマとしては、従来から行っているDM三井製糖㈱が持つ既存素材(パラチノース、さとうきび抽出物、業務用調味料)、㈱タイショーテクノスが持つ既存素材(ゲル化剤・酵素・着色料など)、ニュートリー㈱の栄養療法食品に加え、グループ各社とのシナジーが発揮できる新規事業領域に関連するテーマにも着手いたしました。
DM三井製糖㈱では、パラチノースについて新たな機能性の探索に焦点を当てた研究(脳機能及び血管機能に関する臨床試験)を実施し、大学や研究機関との共同研究として複数の論文発表を行いました。また、さとうきび抽出物及び業務用調味料について、味やにおいの改善効果を機器分析により測定し、官能検査ではできなかった成分面からの数値化による解析を行っております。㈱タイショーテクノスでは、新型コロナウイルスの感染予防需要もあり、抗ウイルス製剤の開発が活況な他、原料高騰しているゲル化剤(ローカストビーンガム等)代替素材や、プラントベースフード向けのゲル化剤・酵素・着色料について研究開発を行いました。ニュートリー㈱では、嚥下障害対応食品・栄養療法食品・流動食について、それぞれ商品開発に取り組んでおり、海外展開に向けた商品開発も行いました。
グループシナジーを活用した新規事業領域の研究テーマとしては、将来的な理想の高齢者食に向け、グループ各社の素材を組み合わせたプラントベースフードのアプリケーション開発と、ニュートリー㈱の商品開発との融合を目指した連携を開始いたしました。また、近年注目している乳酸菌の培養・機能性に関する研究では、培養受託している北海道糖業㈱と連携した研究開発活動を行っており、将来的なニュートリー㈱の栄養療法食品への機能性活用を目指した連携を開始いたしました。
砂糖事業
精製糖関連の連結子会社・関連会社を活用した加工糖新商品開発と、その用途開発及び品質に関連する非定常的な依頼分析に取り組んでおります。また、タイ国製糖事業関連では、関連工場の副産物であるさとうきびの搾りかす(バガス)の高度利用の研究開発に取り組み、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託実証事業を当連結会計年度に完了いたしました。更に、新規取組として、バガスを活用した代替タンパクに関する研究及びサトウキビ以外の未利用作物からの有用成分探索研究を、製糖関連会社各拠点の地理的な利点を活かして行っております。
その他
DM三井グループ研究所と事業開発部門が連携するプロジェクト体制を敷き、プロジェクト(目的指向)とスキル(各部署の役割)の二軸が交差したマトリクス組織による運営を開始いたしました。グループ各社の研究開発と連携した新規事業の探索や、グループ間の技術的課題をプロジェクトとして設定し、これまで蓄積してきた特許・ノウハウ等の知的財産権のグループ内での有効利用も図ってまいります。