第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「わたしたちは、世界中でお客様の価値最大化に貢献していきます。」という企業理念のもと、実際に事業活動を展開していくにあたって、法令を遵守し社会規範・企業倫理に従って行動するという観点から、具体的「行動基準」を定め、当社グループ共通の尺度として周知徹底を図っております。

また、地球環境保全、社会貢献、人権尊重等について企業としての社会的責任を果たすとともに、CS(顧客満足)を基盤として企業価値の最大化を図り、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会等の全てのステークホルダーの期待に応えてまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標及び対処すべき課題

① 2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「経営改革プラン」の成果

当社グループは、「経営改革プラン」最終年度である2024年3月期の目標値として、売上高1,350億円、営業利益率8.0%、配当性向40%目途、ROE8.5%を設定し、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組んでまいりました。

高収益企業への変革に向けた組織再編につきましては、これまで以上に全体最適を進めるため「事業部制」を廃止し、「カンパニー制」を採用いたしました。全社における研究開発の推進と調達を含めた生産活動の円滑化のため、「R&Dセンター」及び「生産センター」を創設いたしました。併せて、最適資源配分と固定費削減に向けた希望退職と配置転換を実施いたしました。また、多様な人材の処遇、キャリア形成、専門的人材の活躍が可能な新人事制度を導入いたしました。

生産性改善に向けて、国内外生産拠点の役割を見直し、再編を進めてまいりました。世界的なEV化の流れを背景にEVの動力源となるリチウムイオン電池への高い需要から、その部材であるセパレータフィルムの製造装置の増産体制を構築いたしました。今後持続的な経済成長が期待できるインドにおきましては、射出成形機の生産能力増強のため、インド新工場の建設を進めてまいりました。新工場では油圧式中大型機の増産及び電動式機種の生産を計画しております。また、国内外の生産拠点再編に伴い、相模工場一部敷地の有効活用のため、物流施設の事業化を開始いたしました。

これらの取り組み等により、「経営改革プラン」最終年度(2024年3月期)の定量目標として設定した売上高、営業利益率、ROEの目標値を超過達成いたしました。

 

 

② 目標とする経営指標及び対処すべき課題

 


 

米中貿易摩擦、ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学リスク継続、部材・エネルギー価格の上昇などにより、当社グループを取り巻く経営環境は不透明、不確実性が増しております。当社グループは、次の時代へ向かって「経営改革プラン」で進めてまいりました内部構造改革の成果をもとに、2027年3月期を最終年度とする新中期経営計画「中計2026」を進めてまいります。新たな定量目標を設定し、その達成に向け、事業ポートフォリオの変革を中心とした各種施策を遂行してまいります。

 販売戦略につきましては、欧州・北米・インド市場へ経営リソース投入による売上規模拡大、サービス事業の強化、生産年齢人口の減少を背景とした顧客からの生産工程の自動化ニーズに対応するためのシステムエンジニアリング販売等により、利益率の改善を図ってまいります。

 生産戦略につきましては、更なる生産性の改善やインド新工場での射出成形機の増産、沼津工場再編を進めてまいります。DX戦略を推進し、高品質なモノづくりを実現してまいります。

 事業戦略につきましては、今後製造業が直面する「メガトレンド」に卓越した技術力で応え、社会的課題の解決と企業価値向上の両立を目指すため策定した「長期ビジョン2030」をもとに、エネルギー関連と生産性の向上を軸として事業ポートフォリオを設定することで、目指すポートフォリオに向けた技術開発を推進し、常に顧客に寄り添いニーズに合った商品を創出、提供し続けてまいります。特に車載用電池として、リチウムイオン電池から将来置き換わるとされる次世代電池に対応する技術・製品の開発に引き続き注力してまいります。また、M&A/アライアンスなどを活用し、当社グループの企業価値向上に向けた投資を推進してまいります。

 引き続き、法令遵守、ISO9001、14001をベースとした品質・環境管理の徹底、事業ポートフォリオ変革と連携した人材戦略、社会貢献への積極的な取り組みなど、ESG経営の推進により持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指してまいります。

 

(3) 次期の見通し

今後の経済環境は、足元で景気の減速感が続く中、中国での経済不況、長引くウクライナ情勢や中東情勢、物価上昇などにより、先行き不透明な状況が続くものと考えられます。

このような状況のもと、世界市場の需要動向を見極めた上で、脱炭素社会、循環型社会の実現へ向けた自動車のEV化、風力発電などの再生可能エネルギー関連へ対応した商品の提供と開発、更なる生産性改善、商品力・生産性の向上を目指したDX戦略の推進などの諸施策に加え、2024年4月よりスタートした中期経営計画「中計2026」(2027年3月期を最終年度とする)で掲げている事業ポートフォリオの変革を中心とした各施策を遂行していきます。

2025年3月期の見通しについては、売上高1,700億円、営業利益140億円、経常利益126億円、親会社株主に帰属する当期純利益92億円を予想しています。

なお、通期見通しにあたっての為替レートは、1米ドル=145円を前提としています。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全体に関する考え方及び取組

 当社グループでは、世界のモノづくりを支える企業として、当社の技術で応える形で社会的課題の解決への取り組みを進めております。2021年に制定したサステナビリティ基本方針においては、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指しており、豊かな地球環境を未来に残すことを配慮した上で、持続可能な資源利用に繋がるサプライチェーンの強化、公正かつ透明性の高いサステナビリティ経営を推進しております。また、「長期ビジョン2030」において、製造業が直面する課題の一つとして気候変動対応があるということを認識しており、温室効果ガスの削減や省エネ技術の実現などに対して当社の技術を使用して課題解決に貢献できるようその実現に努めております。当社グループの環境アクションプランとしては、2030年までに2013年比で温室効果ガスを50%以上削減する目標を掲げております。

 当社グループでは、サステナビリティ経営の一環として、TCFD提言に基づく気候変動リスク及び機会の特定、並びにシナリオ分析を、成形機カンパニー、工作機械カンパニー、制御機械カンパニーで実施いたしました。今後もTCFDガイドラインに即したシナリオ分析を通じて気候変動に対応することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

①ガバナンス
a.サステナビリティ基本方針

 わたしたちは、経営理念に基づき、技術力を活かして世界中のお客様が抱える課題を解決し、基幹産業の発展に貢献することにより、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指していきます。

・グローバルな社会的課題に対して、当社が保有する卓越した技術で応え、課題の解決と企業価値向上を両立させます。

・環境・人権に配慮し、持続可能な資源利用に繋がるサプライチェーンを強化します。

・公正かつ透明性の高い経営を実現します。

 

b.サステナビリティ推進体制

当社グループのサステナビリティの推進は、次に示す体制で行っており、その中心となるのがサステナビリティ推進委員会です。同委員会では、当社グループの諸活動が、当社グループと社会の持続的発展に向けて機能するとともに、それらの諸活動が、ステークホルダーに適正に評価されるよう、各執行機関に必要な提言を行います。サステナビリティ推進委員会は経営会議構成メンバーが出席する委員会であり、社長(CEO)が委員長を務めています。委員会で決定された内容は経営企画本部長から取締役会に報告されます。


 

1)当社グループのサステナビリティの推進に関わる組織

・取締役会:サステナビリティ推進委員会の活動を報告または決議する。

・サステナビリティ推進委員会:経営会議構成メンバーが出席する委員会。当社のサステナビリティ活動に関する各部門からの提案を審議、決定する。

・事務局:経営企画本部が事務局を担い、各部門からの提案、報告内容について委員会で審議するか確認する。

 

2)サステナビリティ推進委員会の所掌事項

・人財戦略策定

・環境方針策定

・気候変動対応

・長期ビジョンに基づく研究開発

・環境貢献製品・技術開発

・SDGsへの対応

 

3)取締役会への報告

  当社グループのサステナビリティに関わる事項については、サステナビリティ推進委員会に対して四半期に一度提案・報告をしており、ここで議論された内容を含む活動報告はサステナビリティ推進委員会を通じて取締役会に報告されます。

 

4)取締役会での審議事項

 人財戦略、環境方針、気候変動に関する重要事項について審議します。

 

リスク管理
 当社グループのリスクマネジメント体制としては、次のとおりリスク管理委員会を設置しており、各カンパニー・センター・スタッフ部門では、日常の管理活動の中でリスク予知、予防活動及び自己点検等のモニタリングを行っています。

 当社グループの経営上のリスクの特定、評価、管理体制としては、リスク・コンプライアンスマネージメント規程に基づき、社長が任命したリスクマネージメントオフィサー(RMO)を最高責任者とし、RMOを委員長として管理部門・本部長・カンパニー長で構成されているリスク管理委員会が実施しています。 

 


 

 

(2)気候変動

①ガバナンス

 気候変動に関わる方針や活動は社長(CEO)が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会で決定されます。取締役会はサステナビリティ推進委員会の活動に関する報告を受けるなど、適切に監督を実施しています。

 

②戦略

 当社に影響を与える気候関連のリスクと機会を識別し、その財務的影響を把握するため、シナリオ分析を実施しました。分析対象は成形機・工作機械・制御機械の3カンパニーのバリューチェーン全体で、当社の全ての既存事業をカバーしています。2030年と2050年を時間軸として設定し、各年度時点における財務影響を評価しました。

 

シナリオ分析の前提

項目

シナリオ分析における前提

対象範囲

3カンパニー(成形機・工作機械・制御機械)のバリューチェーン全体
 ※全既存事業をカバー

分析時間軸

2030年、2050年

時間的範囲の定義

短期:2025年

中期:2030年

長期:2050年

対象温度シナリオ

4℃シナリオ、1.5℃シナリオ

 

 

対象温度シナリオの詳細

シナリオ

想定内容

参照シナリオ

4℃シナリオ

産業革命前から2100年までの世界平均気温が最大4℃上昇し、台風や洪水などの物理的被害が激甚化するシナリオ。技術発展・社会変容が十分進まない。

移行リスク: IEA STEPS, APS

物理リスク: IPCC SSP5-8.5, SSP3-7.0

1.5℃シナリオ

産業革命前から2100年までの世界平均気温上昇を1.5℃未満に抑えるために、技術発展・社会変容が進む事を想定したシナリオ。

移行リスク: IEA NZE

物理リスク: IPCC SSP1-1.9, 1-2.6

 

 

a.シナリオ分析の実施プロセス

 分析プロセスとして、まず初めに対象事業のバリューチェーン全体において想定されるリスクと機会を洗い出し、その中から特に自社に対する影響が重大と考えられる項目を抽出しました。次に、抽出した各項目について、4℃・1.5℃シナリオで想定される外部環境や自社事業の状況を整理した後、各項目が自社に影響を与え得るロジックを検討しました。その後、各項目のロジックに沿った外部データ等を参照し、財務影響を試算しました。最後に、財務影響評価の結果を受けて、各項目に対する取り組みの方針を検討し、必要に応じて取り組みの進捗を管理する指標や目標を設定しました。

 

b.シナリオ分析の結果及び対応策

  上記の前提で分析を行い識別したカンパニーごとのリスクと機会のうち、重要度・優先度の高い項目とその財務影響は次のとおりです。

 

 

1) 成形機カンパニー


 

2) 工作機械カンパニー


 

3) 制御機械カンパニー


 

 当社グループは、「長期ビジョン2030」でも掲げているとおり、グローバル製造業が直面するメガトレンドに卓越した技術革新で応え、社会的課題の解決と企業価値向上の両立を目指しています。例えば再生可能エネルギー、二次電池、自動車の軽量化や自動運転、リサイクルなどの分野においても、脱炭素に貢献する高付加価値製品を提供します。


 

③リスク管理

  「(1)サステナビリティ全体に関する考え方及び取組 ②リスク管理」をご参照ください。

 

④指標及び目標

a.中期及び長期目標について

 当社グループは、国連気候変動枠組条約締約国会議のCOP21で採択された国際的な枠組みである「パリ協定」と国内外の動向を参考に、海外生産拠点を含め、2021年度から2025年度までの5年間の中期目標「第2次環境アクションプラン」と2030年度を最終年度とする長期目標を設定しました。

 気候変動に関しては、Scope1,2のCO2排出量を2030年度までに2013年度比で50%削減 (13.8t-CO2/億円)する原単位目標、再生可能エネルギーの使用量を2025年度に電気使用量の7.5%超、2030年度に20%超とする目標を設定しています。この目標は、気候変動の緩和を目的としており、パリ協定の国際目標に貢献することを目指しています。

 気候関連の目標および実績値は、次のとおりです。

 

2014年3月期(基準年)

2024年3月期

2026年3月期(目標)

2031年3月期(目標)

CO2排出量の削減(t-CO2/億円)

27.6

13.5(△51%)

16.4(△41%)

13.8 (△50%)

再生可能エネルギー
 (太陽光発電利用・未利用エネルギー使用)

電気使用量の7.5%超を太陽光発電

電気使用量の20%超を再エネ発電

 

(注)1.()内の数値は基準年である2014年3月期比増減率

2.目標の対象範囲は提出会社を含めた国内連結会社のみ(目標数値は海外連結会社を含め見直し予定)

3.CO2排出量の削減目標は総量目標であり、純排出量目標ではない。

 

 また、当社におけるScope1,2,3排出量の目標および実績値は、次のとおりです。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2031年3月期

(目標)

Scope1 排出量

(千t-CO2)

3.0

2.8

2.7

2.7

2.6

1.7

Scope2 排出量

(千t-CO2)

22.5

18.6

18.8

21.0

19.3

11.1

Scope1-2 排出量

(千t-CO2)

25.5

21.4

21.5

23.7

21.9

12.8

Scope3 排出量

(千t-CO2)

951.2

881.8

820.3

842.1

1,423.5

510.0

合計

(千t-CO2)

976.7

903.2

841.8

865.8

1,445.4

522.8

【参考】原単位

(t-CO2/億円)

20.9

22.5

20.5

18.8

13.5

13.8

 

(注)1.目標の対象範囲は提出会社を含めた国内連結会社のみ(目標数値は海外連結会社を含め見直し予定)

2.環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」をもとに算定。また、Scope3のうちカテゴリ8、10、13、14は該当しないため算定対象外。

 

b.脱炭素に向けた移行計画

1) 当社のオペレーションによるCO2排出量の削減

 CO2排出量の2030年度の削減目標の達成に向けて、「中計2026」に伴う工場再編計画に基づいた太陽光発電パネルの設置計画を進め、太陽光発電やその他の再生可能エネルギーを活用していくことで、Scope2排出量の削減を図っていきます。

 

2) 当社のサプライチェーンでのCO2排出量の削減

 Scope3排出量に関しては、これまで自動車の軽量化を通じた環境負荷の低減への貢献、ストーンペーパーやセルロースナノファイバー等の環境負荷が小さい新素材開発への貢献、EVの普及や蓄エネに欠かせないリチウムイオン電池向けセパレータフィルム量産への貢献などを通じて、削減に貢献してきました。

 今後は、製品の徹底したダウンサイジングにより材料の使用量を削減し、材料の生産に必要なエネルギー使用量を削減するなど製品を起点としたCO2排出の削減に取り組む他、電動化技術や制御技術、究極の摺動と回転の技術を活かした省エネ技術を組み込み、製品のエネルギー使用量や油の使用量を削減するなど製品の使用におけるCO2排出の削減に取り組みます。更には、創エネ技術の開発によるCO2排出の削減にも取り組みます。

 また、当社のデジタルトランスフォーメーション・SHIBAURA DXによる「“技術”と“モノづくり”の革新」が生み出す「完成度99.7%を実現するリアルとデジタルを融合した空間、Virtual Lab.」は、開発時の試作レス・検証レスを実現し、サプライチェーン全体のCO2排出を削減します。さらには、Virtual Lab.を産学連携の拠点として提供し、CO2排出削減など社会的課題の解決に貢献する技術を創出します。

(3) 人的資本・多様性

①ガバナンス

 「(1)サステナビリティ全体に関する考え方及び取組 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

技術の継承と新たな技術の習得、グローバル人財の育成等に主眼を置き、芝浦機械グループ発展の基礎となる人財の育成と獲得に努めています。

 

a.人財戦略の基本方針

当社グループは、中期経営計画「経営改革プラン」(2024年3月期を最終事業年度とする)において、「長期ビジョン2030」で目指す「革新的な技術力で世界の製造業のメガトレンドに応える企業集団」を見据え、カンパニー制の導入やR&Dセンター、生産センターの設置など組織の改編を実施しました。こうした戦略遂行のための組織を基礎とし、長期ビジョンを見据えた人的資本の強化を進めています。特に、変わりゆく外部環境へ対応するため、研究開発・DX戦略、製造技術、営業、コーポレート(経営企画・人事・財務等)等において、新規分野に関する知見を有する人財の増強に努めています。同時に、人財の定着と生産性の向上、イノベーションの創出を通じた持続的な企業価値向上に向けて、働き方改革や多様性の向上に取り組んでいます。

さらに、グローバルに拠点を擁する当社グループでは、グローバル人事ポリシーを定めており、グローバル戦略の推進に向けた全社共通の人事戦略を推進しつつ、拠点を有する国と地域の制度や商慣習等に合わせてローカライズした地域ごとの人事制度を運用しています。

 

グローバル人事ポリシー

人事制度はそれぞれの地域の歴史、文化および法令を反映したものであり、その制度の違いを正しく理解し、認識しなければならない。

芝浦機械グループは、以下の基本方針に基づき、各地域の事情を反映した、その地域にふさわしい人事制度を構築する。

1.個人の多様な価値観を認め、人格とプライバシーを尊重する。

2.一人ひとりを公正に評価し、公平に取り扱う。人種、宗教、ジェンダー、国籍、心身障害、年齢、性的指向等に関する差別的言動、暴力行為、セクシャル・パワーハラスメントは行わない。

3.安全・健康で快適な職場環境づくりに努める。

4.諸制度の設計および運用は、従業員に納得性のあるものとする。

 

b.人事制度

当社グループは2021年4月より「長期ビジョン2030」の実現に向けて、多様な人財の処遇、キャリア形成、専門職人財の活躍が可能な新人事制度を導入しています。

 

c.採用

従来の新卒一括採用(メンバーシップ型雇用の継続)と、経営・事業戦略実現のために必要なスキルを持った人財のキャリア採用を両輪として、人財の採用を行っています。新卒一括採用では、入社後の育成やローテーションを通して、5年、10年先の当社グループを担う従業員として、リーダーシップ、海外志向性を持った学生を中心にジェンダーや国籍を問わず人物本位で採用を実施しています。

キャリア採用では、ジョブ型雇用を基本とし、変わりゆく外部環境へ対応するため、特に新規分野(IT・エネルギー)などにおいて、従来の機械工学に留まらず、物理や化学、情報工学ほか、幅広い学術分野における知見を有する人財を採用する方針を掲げています。特に高いスキルを有する高度プロフェッショナル人財に関しては、専門職として総合職とは異なる柔軟な給与体系を設けています。

 

d.人財育成

今後の社会的課題解決と企業価値向上を両立させるため、「自ら考え自ら行動」し、キャリア自律により「変革」と「革新」を成し遂げる人財の育成を基本方針としています。

 

1)技術者育成

当社グループは、将来を担う中堅や若手技術者を対象とした技術者教育を実施しています。基礎技術の習得、CAD教育や、博士号や技術士など技術者として高度な資格を有する人財から資格取得のアドバイスなどを行っています。このように幅広い内容を学ぶことにより業務に直結したスキルの向上につなげています。また、設計や製図の知識以外にも、技術者として必要なマーケティング戦略、語学教育、モノづくりの基礎知識を得るための研修を展開し、多分野で活躍できる人財の育成を行っています。

 

2)リスキリング

働き方の多様化や技術の進展などによる産業構造の根本的な変化によって、今後新たに必要となる知識やスキルを習得することを目的に、人財の再教育や再開発をするリスキリングにも着手しています。

 

e.ダイバーシティとインクルージョンの取り組み

当社グループは、多様な個性を持つ従業員がそれぞれの力を十分発揮できるようダイバーシティ(多様性)の推進に取り組んでいます。

 

1)人間尊重の基本方針

芝浦機械は、「芝浦機械グループ行動基準」を定め、そのもとで基本的人権および個人の多様性を受容し、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現を支援することを方針としています。

・各国・各地域の法令等を踏まえ、人権に関する様々な国際規範を理解し、基本的人権を尊重します。また、児童労働、強制労働を認めません。

・芝浦機械グループにおいて、基本的人権を侵害する行為があった場合には、適切な措置を講じます。また、調達取引先においても、基本的人権を侵害する行為が認められる場合は、改善を求めていきます。

・人権尊重のため、関連するステークホルダーと対話を進めます。

・創造的、効率的に業務を遂行できる環境を整え、ワーク・ライフ・バランスの実現を支援します。

・安全で快適な職場環境を実現するよう努めます。

 

2)多様な人財の活躍推進

ジェンダー、国籍、年齢等にとらわれない人物本位の採用、各人の適性に応じた適材適所の職場配置を推進しています。

 

3)育児・介護に関する制度と活用状況

過去5年間において、女性従業員の育児休業取得率、復職率は100%です。当社グループでは、短時間勤務制度や本人からの申し出によって残業を免除する制度のほか、積立保存休暇の利用目的に「看護」を追加し、ワーク・ライフ・バランスを支える制度を整えています。

 

f.ワーク・ライフ・バランス

当社グループでは男女ともに働きがいのある職場環境の確立を目的として様々な取り組みを実施しています。

取組の内容

育児・介護休暇制度

従業員が安心して育児・介護を行えるよう様々なサポートを行っています。

当社の具体的な実施内容

出産休暇、育児休業、看護休暇、介護休業、介護休暇、短時間勤務

年次有給休暇の計画的な取得促進

半日単位や、本人の希望による任意の時期に3日連続(または2日連続を2回)で休暇を取得できる制度のほか、メモリアル(誕生日)に休暇を取得できる制度を導入するなど、年次有給休暇の計画的な取得促進に努めています。

積立保存休暇

長期療養や親族の介護・看護、自己啓発・ボランティア活動に利用できる制度です。

ハラスメント相談窓口の設置

ハラスメント行為(セクハラ・パワハラ等)のない職場づくりのため、相談窓口の設置やハラスメント予防教育を行っています。

男女共同参画に関する公共団体の登録

沼津本社所在地である静岡県・沼津市において、男女共同参画社会づくり宣言事業所(静岡県)、男女共同参画推進事業所(沼津市)に登録しています。

 

 

 

g.安全と健康

安全と健康は経営の基盤であり、当社グループに関わるすべての従事者が安心して働ける職場を構築するため、グループ全体が一丸となって活動の活性化を図ります。

 

1)安全衛生活動の展開

安全な職場を目指し、交通事故や火災等も含めたゼロ災害に向け、当社グループで安全衛生活動に積極的に取り組み、安全・安心な職場環境づくりを推進します。

 

2)労働安全衛生マネジメントシステムの推進

「安全と健康の確保は企業活動と不可分の関係にあることを認識し、労働災害と交通事故の防止、感染症予防と健康づくりに努める」との理念により、当社では中央労働災害防止協会の「JISHA方式適格OSHMS(※)」の認証を取得しています。グループ各社でも「OSHMS」を水平展開し、安全衛生管理水準のレベルアップを図っています。

※ JISHA方式適格労働安全衛生マネジメントシステム

 

3)ストレスチェック・エンゲージメントサーベイの実施

従業員のエンゲージメント状態を把握・分析することによって、従業員が熱意をもち、いきいきとした状態で働くための個人支援・職場環境改善を目的としたエンゲージメントサーベイを、ストレスチェックと同時に実施(2023年度 受検率100%)しております。

(2023年度 高エンゲージメント者・準高エンゲージメント者割合:21.0%、高ストレス者割合:11.3%)

合わせて管理職向け研修会を実施し、さらなるエンゲージメントの向上・高ストレス者の低減へ取り組んでおります。

 

③リスク管理

 「(1)サステナビリティ全体に関する考え方及び取組 ②リスク管理」をご参照ください。

 

④指標及び目標

a.ダイバーシティとインクルージョンの取り組み

1)育児・介護に関する制度と活用状況

過去5年間において、女性従業員の育児休業取得率、復職率は100%です。当社グループでは、短時間勤務制度や本人からの申し出によって残業を免除する制度のほか、積立保存休暇の利用目的に「看護」を追加し、ワーク・ライフ・バランスを支える制度を整えています。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(目標)

育児休業取得者

()

9

10

18

25

31

育児休業復職率

()

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

介護休業取得者

()

1

0

0

0

1

短時間勤務制度利用者
(育児)

()

9

3

6

10

11

短時間勤務制度利用者
(介護)

()

0

0

0

0

0

 

(注) 1.提出会社を含めた国内連結会社のみの集計数値となっております。

2.2025年3月期における目標のうち、育児休業取得者、介護休業取得者及び短時間勤務制度利用者については定量的な目標数値を定めることが困難であるため、記載をしておりません。

 

2)育児と両立しやすく長期継続しやすい仕事環境

2024年3月期の平均勤続年数は19.3年(男性:19.2年、女性:20.5年)であり、長期にわたって腰を落ち着けて働く従業員が多いことが当社の特徴となっています。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(目標)

平均勤続年数(男性)

()

18.8

18.1

18.8

19.3

19.2

平均勤続年数(女性)

()

19.6

19.1

19.7

20.6

20.5

平均勤続年数(全体)

()

18.8

18.2

18.9

19.4

19.3

 

(注) 1.平均勤続年数は提出会社のみの集計数値となっております。

2.2025年3月期における目標については定量的な目標数値を定めることが困難であるため、記載をしておりません。

 

b.ワーク・ライフ・バランス

男女ともに働きがいのある職場環境の確立を目的として、育児休業の取得率および有給休暇の取得率について次の目標を設定しております。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(目標)

育児休業取得率
(男性)

()

13.9

18.4

43.8

56.8

65.1

50.0

育児休業取得率
(女性)

()

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

育児休業取得率
(全体)

()

22.5

24.4

50.0

61.0

67.4

有給休暇取得率

()

67.2

56.2

62.9

73.5

77.3

70.0

 

(注) 育児休業取得率は提出会社を含めた国内連結会社のみ、有給休暇取得率は提出会社のみの集計数値となっております。

 

c.安全と健康

安全な職場を目指し、交通事故や火災等も含めたゼロ災害に向け、次の目標を設定しております。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(目標)

休業災害度数率

()

1.16

0.35

0.00

0.31

0.94

0.00

 

(注) 提出会社のみの集計数値となっております。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であり、これらのリスク管理体制等については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

 

(1) 期末経営成績の変動について

当社グループは、扱う商品が生産財という事業の特性から、売上高、営業損益が期末に偏る傾向があります。従って、売上高及び利益の一部が翌期にずれ込んだ場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 競合等の影響について

当社グループは、射出成形機、工作機械などの生産財を製造・販売していますが、同業との間に、品質、価格、サービス等において競合が生じています。今後、需要の低下または過剰供給が生じ販売競争が激化した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 海外依存リスクについて

当社グループの海外売上高は全体の73.7%を占めておりますので、世界各地域の政治、経済、社会情勢の変化や各種規制、為替レートの変動、その他突発的な外部要因などが、業績に影響を与える可能性があります。

また、国際的な海上物流における需給バランス等により、海上運賃上昇、船舶確保のリスクが発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 半導体、電気品、部材等の調達品の納入遅延、価格上昇について

当社グループの製品に使用される半導体、電気品、部材等の調達品は国際的な需給バランス・エネルギー価格・為替等の影響により納入遅延、価格上昇のリスクが発生いたします。

調達品については複数調達リソースの確保、代替調達品の使用等を行いリスクの軽減をはかっていますが、製品の一部には受注から生産、売上までの期間が長いことから、見積原価の変動により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 金利変動リスクについて

当社グループは、事業資金の一部を金融機関から借入金として調達しております。当社グループとしては、中期経営計画に則り、財務体質の強化に注力する方針でありますが、現行の金利水準が変動した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(6) 退職給付債務について

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づき算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。割引率や運用利回りに変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(7) 自然災害、感染症の流行、紛争及びテロ等による影響について

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、多くの国に製造・販売拠点を設けております。それらの地域において、大地震・水害等の自然災害、感染症の流行、紛争及びテロ等が発生した場合、調達品の確保を含め当社グループの生産、業績及び財務状況に重大な影響を与える可能性があります。

 

(8) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動において機密情報として、個人情報、営業情報を保有しております。これら各種情報の取扱いには細心の注意を払っており、サイバー攻撃等による情報への不正なアクセス、改ざん、漏洩、紛失等を防ぐために、管理体制及び取扱規則を定めるとともに外部専門機関の助言を得るなど、適切な措置を講じています。情報漏洩等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を与える可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進みましたが、中国における景気低迷や米国をはじめ世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響の継続、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え中東情勢が緊迫化するなど先行き不透明な状況で推移いたしました。わが国経済は設備投資に一部持ち直しの動きが見られたものの、物価上昇や海外景気の下振れによる景気の下押し圧力が継続いたしました。

当社グループを取り巻く経済環境は、世界的に脱炭素化などの社会課題解決に向けた動きが加速していることを背景として、EV、再生可能エネルギー、労働生産性向上などに関連した需要が継続しているものの、部材・エネルギー価格の上昇や中国における景気低迷の影響などにより厳しい状況が継続いたしました。

このような経済環境のもとで、当社グループは当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画である「経営改革プラン」に基づき、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行を推進してきました。「経営改革プラン」期間中にはコロナ禍での経済活動の停滞や、部材需給逼迫、部材・エネルギー価格の高騰などがあったものの、EV関連の設備投資需要の拡大に対応する中で、押出成形機事業が大きく貢献し、「経営改革プラン」最終年度(2024年3月期)の売上高、営業利益、営業利益率の目標値を超過達成いたしました。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ480億7千1百万円増加し、2,531億7千2百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べ254億8千4百万円増加し、1,414億6千6百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べ225億8千7百万円増加し、1,117億5百万円となりました。

 

 

b.経営成績

当連結会計年度の受注高は中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の反動減及び景気低迷の影響を受け、1,211億5千5百万円(前連結会計年度比36.8%減、海外比率67.3%)となりました。売上高は中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の大幅な増加により、1,606億5千3百万円(前連結会計年度比30.4%増、海外比率73.7%)となりました。損益については、規模増加などによる増益効果により、営業利益は136億1千4百万円(前連結会計年度比136.1%増)、経常利益は146億4百万円(前連結会計年度比176.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は相模物流施設の事業化に係る当社相模工場の南側一部敷地の売却益の計上などにより、179億2千万円(前連結会計年度比178.2%増)となりました。なお、当社相模工場の一部敷地の売却益については、等価交換方式のため譲渡先が譲渡資産土地上に建設した建物の持分取得に充てられております。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(成形機事業)

射出成形機においては、販売は国内、インドで増加したものの、米国、中国で減少いたしました。受注は国内、北米で増加したものの、中国における景気低迷の影響により減少いたしました。

ダイカストマシンにおいては、自動車向けが、販売は国内、北米、東南アジアで増加、受注は国内、韓国、インドで増加いたしました。

押出成形機においては、リチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置が、販売は中国で大幅に増加、中長期におけるEVの普及拡大は予測されるものの、足元ではEV需要の伸びの鈍化、EV用電池の生産過剰等が懸念される中、セパレータフィルムの生産性を向上させる次世代機種への切換時期が重なり、受注は中国で大幅な反動減となりました。

この結果、成形機事業全体の受注高は895億9千3百万円(前連結会計年度比42.2%減、海外比率78.3%)、売上高は1,235億2千1百万円(前連結会計年度比43.7%増、海外比率84.3%)、営業利益は129億5千6百万円(前連結会計年度比180.9%増)となりました。

 

(工作機械事業)

工作機械においては、販売は北米におけるエネルギー関連向けが増加したものの、国内における産業機械向けが減少いたしました。受注は北米におけるエネルギー関連向けが増加したものの、中国における景気低迷の影響により減少いたしました。

超精密加工機においては、販売は中国における車載用光学系金型向けが増加したもののスマートフォン用光学系金型向けが減少いたしました。受注は中国における光学系金型向けが減少いたしました。

この結果、工作機械事業全体の受注高は226億1千5百万円(前連結会計年度比13.7%減、海外比率47.8%)、売上高は259億8千万円(前連結会計年度比4.9%減、海外比率52.6%)、営業利益は5億8百万円(前連結会計年度比5.2%減)となりました。

 

(制御機械事業)

制御機械においては、販売は国内における電子制御装置及びシステムエンジニアリングが増加いたしました。受注は国内、中国における産業用ロボットが減少いたしました。

この結果、制御機械事業全体の受注高は76億8百万円(前連結会計年度比17.1%減、海外比率7.4%)、売上高は99億1千9百万円(前連結会計年度比14.5%増、海外比率6.0%)、営業利益は3億3千3百万円(前連結会計年度比31.3%減)となりました。

 

(その他の事業)

その他の事業全体の受注高は13億3千7百万円(前連結会計年度比3.2%増、海外比率1.1%)、売上高は12億3千1百万円(前連結会計年度比1.5%減、海外比率1.8%)、営業損失は2億2千3百万円(前連結会計年度は営業利益1億4千1百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ7億3千3百万円増加し、515億8千8百万円となりました。

なお、当連結会計年度における各活動によるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、93億7百万円の増加になりました。これは主として、棚卸資産の増加による支出219億7千5百万円、有形及び無形固定資産除売却益の増加107億7千3百万円があったものの、税金等調整前当期純利益の増加による収入253億2千1百万円、契約負債の増加による収入261億4千1百万円等があったことによります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、38億5百万円の減少になりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出31億1千1百万円等があったことによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、67億3百万円の減少になりました。これは主として、長期借入金の返済による支出33億円、配当金の支払額33億8千3百万円等があったことによります。

 

なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2022年3月

2023年3月

2024年3月

自己資本比率(%)

50.0

43.5

44.1

時価ベースの自己資本比率(%)

49.5

37.1

34.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.3

15.0

1.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

128.3

5.5

76.1

 

(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動キャッシュ・フロー

4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動キャッシュ・フロー/利払い

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

成形機(百万円)

152,663

54.0

工作機械(百万円)

25,945

4.3

制御機械(百万円)

19,822

6.1

報告セグメント計(百万円)

198,432

39.1

その他(百万円)

587

△41.5

合計(百万円)

199,019

38.5

 

(注) 1.金額は、販売価格によっております。

2.生産高の実績については、製品の製造を行っている当社、東栄電機㈱、SHIBAURA MACHINE (SHANGHAI) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE MANUFACTURING (THAILAND) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE INDIA PRIVATE LIMITEDの連結生産高の実績となっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績及び連結会計年度末受注残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

受注残高(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比

(%)

当連結会計年度

(2024年3月31日現在)

前年同期比

(%)

成形機

89,593

△42.2

146,119

△18.8

工作機械

22,615

△13.7

18,818

△15.2

制御機械

7,608

△17.1

4,844

△26.4

報告セグメント計

119,817

△37.1

169,781

△18.7

その他

1,337

3.2

540

24.3

合計

121,155

△36.8

170,322

△18.6

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

成形機(百万円)

123,521

43.7

工作機械(百万円)

25,980

△4.9

制御機械(百万円)

9,919

14.5

報告セグメント計(百万円)

159,421

30.7

その他(百万円)

1,231

△1.5

合計(百万円)

160,653

30.4

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度は「経営改革プラン」の最終年度にあたり、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組んでまいりました。

「経営改革プラン」の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標及び対処すべき課題」を参照ください。

 

b.経営成績等

1)財政状態

(資産)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ480億7千1百万円増加し、2,531億7千2百万円となりました。増加の主な内訳は、受取手形、売掛金及び契約資産が41億5千3百万円、商品及び製品が300億1千万円、建物及び構築物(純額)が99億2千6百万円増加したこと等によります。

(負債)

負債は、前連結会計年度末に比べ254億8千4百万円増加し、1,414億6千6百万円となりました。増加の主な内訳は、支払手形及び買掛金が55億2千8百万円減少したものの、契約負債が263億1千5百万円増加したこと等によります。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べ225億8千7百万円増加し、1,117億5百万円となりました。増加の主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益179億2千万円の計上があったこと等によります。

この結果、D/Eレシオ9.9%(前連結会計年度末は15.7%)、自己資本比率は44.1%(前連結会計年度末は43.5%)となりました。

 

2)経営成績

(売上高)

国内、中国、インドを中心に増加し、1,606億5千3百万円(前連結会計年度比30.4%増)となりました。

(営業利益)

営業利益は、売上規模の増加等により、136億1千4百万円(前連結会計年度比136.1%増)となりました。

(経常利益)

営業外損益は、為替差益の計上等により、前連結会計年度に比べ14億7千6百万円の利益(純額)が増加し、9億9千万円の利益(純額)となりました。この結果、経常利益は146億4百万円(前連結会計年度比176.6%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

特別損益は、固定資産売却益の増加等により、前連結会計年度に比べ95億1千5百万円の利益(純額)が増加し、107億1千6百万円の利益(純額)となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は253億2千1百万円(前連結会計年度比290.7%増)となりました。税金費用は法人税等合計74億円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は179億2千万円(前連結会計年度比178.2%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

資金需要

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは運転資金需要、設備投資及びM&Aを含む投資資金需要であります。

運転資金需要については、生産活動に必要な材料費・人件費及び経費等、受注獲得に向けた引合費用等の販売費、商品力強化及び新商品の開発に資する研究開発費が主な内容であります。投資資金需要については、事業規模拡大及び生産性向上を目的とした有形・無形固定資産投資、既存設備の維持・改修に係る修繕費、適切なM&A・アライアンスの実行に要する資金などが主な内容であります。

 

財務政策

当社グループは、運転資金投入、投資資金投入ともに営業キャッシュ・フローを源泉としつつ、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保する施策として、有利子負債による資金調達を実施しております。当連結会計年度末における当社グループの有利子負債残高は110億3千万円となりました。

金融機関には十分な借入枠を有しており、当社グループの事業規模の維持拡大に向けた運転資金及び投資資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において100億円のコミットメントラインを設定しており、手元流動性の補完にも機動的に対応が可能となっております。

今後も売上債権、棚卸資産の回転期間短縮や固定資産の稼働率向上を通じて資産効率の改善を図るとともに、大規模な設備投資、M&Aなどに向けた長期資金の調達については、中期経営計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断していくこととしております。

 

③重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

当社グループは、事業活動によって経常的に創出される付加価値の最大化及び株主資本の有効活用がすべてのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「売上高」、「売上高営業利益率(ROS)」、「自己資本利益率(ROE)」及び「配当性向」を重点指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は1,606億5千3百万円(前連結会計年度比30.4%増)、「売上高営業利益率(ROS)」は8.5%(前連結会計年度比3.8ポイント増加)、「自己資本利益率(ROE)」は17.8%(前連結会計年度比10.3ポイント増加)、「配当性向」は18.9%(前連結会計年度比21.4ポイント減少)となりました。引き続きこれらの指標の継続的な改善に向け、取り組んでまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(権利義務規定に関する契約)

当社は、相模工場敷地の有効活用を目的として三井不動産株式会社と共同で事業化を推進している物流施設の竣工に伴い、同社との間で当該物流施設に関する権利義務を規定する契約を2023年9月29日付で締結しました。

 

(株式取得に関する契約)

当社は、2024年1月31日開催の取締役会において、ポッカマシン株式会社の全株式を取得することを決議いたしました。当該決議に基づき、同日付でポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社と株式譲渡契約を締結し、2024年3月1日付で全株式を取得いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、国内外の市場の変化や成長する産業分野に貢献するために、当社のR&Dセンター、生産センターおよび各製品事業カンパニーの開発部門が中心となって、生産の高効率化と製品の高機能化に加え、エネルギー・環境の分野に貢献する新商品創出のための研究開発を行っております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、3,162百万円であり、各セグメント別の研究開発の目的、主要課題及び研究開発費は次のとおりであります。なお、上述の研究開発費には、R&Dセンターで行った各セグメントに配分できない研究開発費2,019百万円が含まれております。

(1) 成形機

成形機は、射出成形機とダイカストマシンのハイサイクル化、高精度化、成形品質の向上、知能化および省エネルギー・環境負荷低減を目的として、芝浦機械エンジニアリング㈱と連携を取りながら、電動射出成形機やダイカストマシン及びそれらの付加価値向上に繋がる成形技術等の研究開発を行っております。また、押出成形機については、高機能化を目的とした混練技術やエネルギー・環境および高機能素材関連に注力した新たな成形システムの研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は、638百万円であります。

 

(2) 工作機械

工作機械は、機械の高速化、高精度化、知能化および複合加工による高生産性の実現を目的として、門形マシニングセンタ、横中ぐり盤、立旋盤、横形マシニングセンタ等に関わる研究開発を行っております。精密機械分野では、超精密マシニングセンタ超精密非球面加工機及びそれらの主要素である高速主軸等の要素開発や超精密加工技術等の研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は、226百万円であります。

 

(3) 制御機械

制御機械は、生産効率の向上に貢献することを目的として、制御の高速化・高精度化と作業の自動化・省人化に対応するため、東栄電機㈱と連携を取りながら、高機能NC制御装置・サーボ制御装置、IoT、システムロボット等の研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は、268百万円であります。

 

(4) その他

その他では、材料加工及び鋳造技術に係る研究開発を行っております。

当セグメントに係る研究開発費は、9百万円であります。