本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社は、事業環境や社会環境の変化、デジタルトランスフォーメーションやサステナビリティ経営といった時代の要請に応えるため、2021年10月1日付で経営理念を改定し、「モノを動かし、心を動かす。」としました。当社グループの競争力の源泉であり、これまで培ってきた「保管」「搬送」「仕分け・ピッキング」、すなわち「モノを動かす」技術でお客さまへの提供価値を変革し、健全で心豊かに生きられる社会の実現を目指していきます。
<中期経営計画の総括>
2024年3月期を最終年度とする3カ年中期経営計画「Value Transformation 2023」では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたものの、初年度は当初経営目標(連結売上高5,400億円、営業利益率10.5%、各年度ROE10%以上、連結配当性向3カ年平均30%以上)達成に向け、おおむね好調に推移し、計画2期目に売上高目標を6,000億円に上方修正しました。
2023年3月期以降は、原材料・人件費高騰に伴うコスト増加が顕著になり、利益面に大きな影響を及ぼしましたが、価格転嫁の促進や製品の標準化、部品点数の削減、工期短縮といった自助努力によるコスト削減を推進し、利益率改善に注力しました。
この結果、2024年3月期は、売上高・ROEとも経営目標を達成しました。また、2023年3月期、2024年3月期と2期連続で営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新しましたが、2024年3月期の営業利益率は、わずかに目標には届かない結果となりました。
なお、連結配当性向に関しては、3カ年平均32.7%となり、目標としていた3カ年平均30%以上を達成しました。経営目標に対する達成状況、主な成果と課題は以下のとおりです。
<経営目標に対する達成状況>
<成果と課題>
<長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」及び「2027年中期経営計画」の概要>
次なる成長と企業価値向上を目指すため、2030年のありたい姿として長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」を、その中間点として2027年12月期を最終年度とする「2027年中期経営計画」(以下、新中計)を策定しました。
なお、当社は2024年12月期より決算期(事業年度の末日)を毎年3月31日から毎年12月31日に変更しました。詳細は、「第6 提出会社の株式事務の概要」をご参照ください。
<「Driving Innovative Impact 2030」について>
『未来を見据えた新たな発想での取り組みを強化し、ステークホルダーへ革新的な影響を生み出すことにより、目指すべき経済・社会価値を実現する』との強い想いを込めています。
<策定のコンセプト>
1.短期志向から長期・バックキャスト志向へ
未来の社会像や課題を想起し、まず2030年のありたい姿を「Driving Innovative Impact 2030」として設定した上で、その中間点として「2027年中期経営計画」を策定しました。
2.経済価値と社会価値の両立へ
経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、その実現に向けた施策・ロードマップを策定しました。
<2030年のありたい姿・2027年経営目標>
<注力する領域・枠組み>
経済価値及び社会価値の実現に向け、「Value Transformation 2023」の課題や事業環境・社会の持続可能性を考慮し、事業領域と事業・経営基盤領域それぞれに注力する枠組みを設定し、各種施策を実践していきます。
長期ビジョン及び新中計の詳細は、『長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」、および「2027年中期経営計画」策定のお知らせ』(2024年5月10日公表)又は当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.daifuku.com/jp/ir/assets/20240510_3.pdf
〔図〕長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」と2027年中期経営計画

(2) 経営環境
① 事業環境
日本においては人口の減少と物流2024年問題に伴う労働力不足が深刻化する一方、北米を中心とする海外においては人件費が急激に上昇し、物流・生産現場における自動化・無人化ニーズがグローバルで拡大しています。
また、生成AIの普及に伴い半導体需要が飛躍的に増加すると同時に、経済安全保障の観点から各国政府が自国内における設備投資を促進しているため、各地域で半導体投資が活発化しています。
各国政府がCO2排出量削減目標を掲げる中、xEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVなど電動車の総称)関連投資も当面継続が見込まれます。
これまで、限定的な自動化投資しか行われてこなかった空港においては、慢性的な労働力不足に伴う各種課題が顕在化しており、「空港のスマート化」が求められています。
これらの事業環境を踏まえ、当社グループが提供するマテリアルハンドリングを核とする「モノを動かす」技術への期待がますます高まっていくことは確実であり、ビジネス機会を着実に捉え、更なる成長に繋げていきます。
② 競争環境
生成AIに代表される先端技術の革新が急速に進展し、特定の技術力・製品を持った新興企業が参入してきています。また、低価格を強みとする中国企業も台頭しています。
日本においては、国内競合企業が自社の製品と海外企業の先端製品を組み合わせることで提案力を強化する等、競争は激化しています。
次世代技術に重点を置いた開発力を強化すると同時に、DX/AIリテラシーの向上に向けた人材育成に注力し、グローバルに最適・最良のシステムを提供するという当社グループの強みに磨きをかけ、厳しい競争に打ち勝っていきます。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新中計の根幹となる事業ポートフォリオについては、従来どおり、①一般製造業・流通業向けシステム、②半導体・液晶生産ライン向けシステム、③自動車生産ライン向けシステム、④空港向けシステムの4つのコア事業に、⑤洗車機・関連商品と⑥電子機器を加えた6つの事業で継続的な発展を目指します。
当連結会計年度は、グループ全体の構造改革で収益性向上を図るため、
・事業体質の見直しと新たな事業への挑戦
・現地法人の構造改革による収益性向上
・先端技術・新規事業開発とDX推進の継続
などに取り組みました。
各事業において、お客さまの近くで調達・生産して製品・システムを提供する、いわゆる「地産地消」の推進を図る中で、日本では滋賀事業所を5年程度かけて再編(一般製造業・流通業向けシステム及び半導体・液晶生産ライン向けシステム等を中心とした工場生産設備の維持更新や増強)するプロジェクトが進行中です。
一般製造業・流通業向けシステムでは、インド(Daifuku Intralogistics India Private Limited)で新工場建設を、北米(Daifuku Intralogistics America Corporation)では既存工場と同規模の工場増設を進めています。
半導体・液晶生産ライン向けシステムでは中国(大福自動搬送設備(蘇州)有限公司)で新工場が稼働を開始したほか、韓国(Clean Factomation, Inc.)では工場をリニューアルし生産能力が拡大しました。
一方、市場が大きく変化している中国の自動車生産ライン向けシステム(大福(中国)自動化設備有限公司)、及びプロジェクト管理の不備により一過性コストを計上したオセアニアの空港向けシステム(Daifuku Oceania Limited)では抜本的な構造改革に着手しました。
また、すべての現地法人で、営業利益率10%以上の早期達成に向けた改善計画を実行しており、一部では既に成果が表れています。
事業領域の拡大に向けては、新規事業や先端技術の開発も重要テーマです。2024年4月、代表取締役社長(CEO)直下にCTO(Chief Technology Officer)をトップとする専担組織「ビジネスイノベーション本部」を新設しました。「次世代技術」に重点をおいた開発力の強化と、オープンイノベーション推進により、成長のドライバーとなる先端技術開発を強化すると同時に、企業価値向上に貢献する新規事業を創出していきます。また、DX/AI人材の育成に向けた取り組みも強化していきます。
また、「サステナビリティ」「コンプライアンス」「ガバナンス」「安全」についても引き続き重要な課題であると捉えています。
① サステナビリティ経営
持続可能な社会の実現に向けて、企業の役割がますます大きくなる中、特に「国内外脱炭素目標の設定と評価」「ダイバーシティの推進」等にこれまで以上にグローバルレベルで取り組んでいくことが求められています。当社グループではこれまで、サステナビリティ経営の推進組織として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を2020年4月に設置し、その取り組みについて適宜、取締役会に報告してきましたが、これを「サステナビリティ経営委員会」及びその下部組織として「サステナビリティ推進委員会」に再編しました。前者で経営戦略の重要な議論や計画の進捗・成果の確認などを行って経営の高度化を図り、後者が経営戦略に基づきグループ横断の取り組み等を推進していきます。
2022年11月より、当社グループ最大の工場である滋賀事業所においてメガソーラーを含め事業所内で使用する電力をすべて再生可能エネルギー由来へと切り替えたのをはじめ、グループ各社でも再生可能エネルギー導入を進めてきました。これにより、「ダイフク環境ビジョン2050」で設定している2030年の当社グループのスコープ1、2のCO2排出量削減目標(2018年度比50.4%減)の早期達成が視野に入ってきました。このため長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」策定に合わせて、2030年のCO2排出量削減目標を60%減に上方修正しました。
人的資本への投資では、グループ人材マネジメント基盤を構築し、グローバルかつダイバーシティの観点で、各事業の特性に応じた専門人材の育成・登用に努めています。
② コンプライアンスの徹底・グループガバナンスの強化
コンプライアンスが事業活動すべての前提になることに変わりはありません。単に法律を遵守すればいいということに止まらず、当社グループの今と未来を支えるのは、一人ひとりの高い倫理観と責任ある行動であることを、教育・研修などを通じグローバルベースで徹底していくとともに、不正が起こりうる可能性を想定して事業構造の改革に引き続き注力していきます。
コーポレートガバナンスについては、当連結会計年度は取締役10名中5名の社外取締役を選任しています。また、企業経営経験者、財務・会計や法律の専門家、女性・外国人の登用など取締役会の多様性も確保しています。
③ 「安全専一※」の徹底
一人ひとりの社員が最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境づくりに努めていくうえで、社員やその家族、お客さま、お取引先の生命・健康・安全を確保することが何よりも優先されます。「安全は、『第一』『第二』と相対的な順位を付けるものではなく、絶対的なもの、『専一』なものである」という意識をグローバルに浸透させ、引き続き、グループ一体となって災害や不安全行為の撲滅に取り組んでいきます。
※「安全専一」は、古河機械金属株式会社の登録商標です。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、2024年3月31日現在において当社グループが判断したもので、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) サステナビリティ全般に関する開示
社是「日新(ひにあらた)」、経営理念「モノを動かし、心を動かす。」のもと、グループ行動規範に従い、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指しています。サステナビリティ経営の実践に際しては、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則からなる「国連グローバル・コンパクト」に賛同・署名するとともに、「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて取り組んでいます。また、2030年のありたい姿である長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」と、その中間点となる2027年中期経営計画(以下、新中計)において、経済価値と社会価値双方の視点を踏まえた統合目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。2024年4月には、当社グループがサステナビリティを推進するにあたり、すべての役員・社員の理解及び共感を促進するため「ダイフクグループサステナビリティ基本方針」を策定しました。
① ガバナンス
1) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対する監督・執行体制
取締役会は、サステナビリティ関連のリスクや機会に対応するための経営戦略をはじめ、中長期的な企業価値の向上に向けた取り組みを監督します。取締役会においては、代表取締役社長(CEO)がサステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に対して責任を負っています。取締役会のメンバーは、研修や有識者との意見交換、お客さまとの対話等を通じて、サステナビリティ課題への見識を高めることで、当社グループの取り組みを監督するためのスキル及びコンピテンシーの向上を図っています。
当社は、2024年12月期よりサステナビリティに関する委員会の体制を見直し、「サステナビリティ経営委員会」を新設しました。従来のサステナビリティ委員会の役割は、サステナビリティ経営委員会の傘下で「サステナビリティ推進委員会」が担います。サステナビリティ経営委員会は、サステナビリティ課題についての重要事項を取締役会へ報告、上程するほか、中長期的な企業価値の向上に重きを置いた経営戦略上の重要な議論、計画の進捗・成果の確認などを行います。その傘下にあるサステナビリティ推進委員会及び「環境経営分科会」「人権・サプライチェーン分科会」「人的資本経営分科会」は、サステナビリティ経営委員会と連携し、経営戦略に基づいた実務レベルのより具体的な施策を検討・実行する役割を担っています。
〔図〕サステナビリティに関する委員会の体制(2024年12月期)

〔表〕各組織の役割
2) サステナビリティ関連目標のモニタリングとインセンティブ
サステナビリティ課題に対する計画・目標は、2024年3月期までサステナビリティアクションプランにて設定し、旧サステナビリティ委員会で進捗管理をしていましたが、2024年12月期以降は新中計の枠組みの中でサステナビリティ経営委員会が進捗管理を行い、取締役会が監督しています。
また、2024年12月期より社内取締役を対象とした役員報酬制度を改定しており、業績連動報酬の支給基準において、サステナビリティ関連の評価指標も考慮して評点を算出することとしています。賞与については安全及びCO2排出量削減目標の進捗状況、株式給付信託(BBT)については外部のESG評価機関(MSCI、FTSE、CDP)における評価とCO2排出量削減目標の達成度が評点の算出基準に含まれています。詳細は、「
〔表〕2024年3月期におけるサステナビリティ関連の取締役会等での議題
② 戦略
サステナビリティに対する取り組みは、2022年3月期から2024年3月期にかけてサステナビリティアクションプランのもとで推進してきましたが、2024年12月期以降は長期ビジョン、及び新中計における枠組みに統合し、推進していきます。長期ビジョン、及び新中計の策定にあたっては、未来の社会像からバックキャスティングを行い、当社グループがお客さまに対して提供する製品・サービス(アウトプット)と、それらを通じて社会に提供される価値(アウトカム)を整理しました。その上で、長期ビジョン及び新中計の達成に向けてグループで対応する重要課題をマテリアリティと定義し、それらを軸に戦略・施策・行動計画を具体化しました。新中計の詳細は、「
③ リスク管理
当社グループは、国内外のグループ会社を対象としたリスクアセスメントを定期的に行っており、企業活動に大きく影響を与える重要なリスクを特定・評価しています。重要なリスクに対して、リスクマネジメント委員会が全社的なリスクマネジメントを行い、対応策の立案や方針・規程・体制等の整備及び充実を図っています。リスクアセスメントで認識されたリスク情報は、必要に応じて取締役会をはじめとする他の会議体へ報告・共有され、経営戦略に反映されます。詳細は、「
新中計の策定では、重要課題(マテリアリティ)の特定プロセスにおいて、2024年3月期に実施したリスクアセスメントの結果をインプット情報の一つとして活用しました。機会とリスクの検討結果、他社の動向、ESG評価機関からの要請事項などもインプット情報として合わせて考慮し、課題の候補を「ステークホルダーへの影響度」と「長期ビジョン達成への影響度」の2軸で評価し、マテリアリティを特定しました。
優先して対応すべきサステナビリティ関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会も連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。
④ 指標と目標
サステナビリティアクションプラン
当社グループは、重要課題(マテリアリティ)に対するKPI(実績評価指標)及び目標を設定し、毎年進捗状況を開示しています。新中計におけるKPI及び目標の詳細は、以下のURLをご参照ください。
2027年中期経営計画におけるマテリアリティ及びKPI
サステナビリティアクションプランの最終年度である2024年3月期の実績は2024年8月に当社ウェブサイトで開示予定です。詳細は、以下のURLをご参照ください。
サステナビリティアクションプラン
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/management/plan/
サステナビリティアクションプラン 2022年3月期~2023年3月期実績
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/assets/pdf/management/plan/actionplan_results_2021.pdf
(2) 気候変動に関する開示
① ガバナンス
気候関連のリスク及び機会は、前述のサステナビリティ全般のガバナンスのプロセスにおいてモニタリング、管理、監督されています。
② 戦略
1) 気候関連のリスク及び機会の特定
<気候関連のリスク及び機会の洗い出し>
事業運営に影響を与える気候変動要因は、脱炭素社会に向けた規制強化や低炭素化に向けた技術の進展、気候変動対応による市場の変化、気候変動による災害等の頻発等が挙げられます。当社グループの事業内容を踏まえ、各要因によって引き起こされる気候関連の移行リスク・物理的リスク・機会を洗い出しました。
〔図〕当社グループの事業に影響する主な要因

<気候関連のリスク及び機会の評価>
洗い出した移行リスク・物理的リスク・機会の項目に対して、当社グループの事業への影響度の大きさを定性・定量で評価し、これらの結果を、「リスク発現・機会実現までの期間」「リスク発現・機会実現の可能性」「財務影響度」を軸に、以下のとおり整理しました。それぞれのリスク及び機会について、適切な対応策を実行していきます。下記表の「期間」「可能性」「影響度」の定義は以下のとおりです。また、「リスク・機会への主な対応」の詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。
気候変動
〔表〕当社グループにおける重大リスク・機会
2) 重大リスクのシナリオ分析
気候関連のリスク及び機会を特定した項目のうち、今後顕在化する可能性が高く、重大な事業影響を与えるリスクについてシナリオ分析を実施しました。シナリオは、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)によって示されているものを参照しました。
移行リスク
移行リスク・機会は、炭素税(カーボンプライシング)導入による操業コストの影響について、関連するエネルギーコストと併せて、以下のシナリオを設定して分析を行いました。炭素税は、将来想定されるGHG排出量(スコープ1及びスコープ2)を、当社グループ2030年売上予測、排出量削減目標を基に、排出量削減を進めた場合(脱炭素シナリオ)とそうでない場合(成り行きシナリオ)とで算出し、IEAにおいてシナリオ別に予測される炭素価格をかけあわせて事業影響額を評価しました。エネルギーコストは、当社グループが削減目標どおりに取り組みを進めた場合(脱炭素シナリオ)と取り組みを進めずに事業規模が拡大した場合(成り行きシナリオ)とでエネルギー使用量を設定し、IEA等で示されるエネルギー価格の推移を参考に、今後のエネルギーコストについて評価しました。
〔表〕当社グループで想定した気候変動シナリオ(移行リスク)
<炭素税>
成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合は、2030年で約6億円のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、2030年時点では、約3億円のコスト増が見込まれます。
<エネルギーコスト>
成り行きシナリオ(4℃シナリオ)の経路をたどった場合、2023年3月期時点と比較して、2030年では約37%のコスト増が見込まれます。一方、脱炭素の取り組みを積極的に推進した脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)においては、 2023年3月期時点と比べて、2030年では、約12~16%のコスト増が見込まれます。
炭素税の負担、エネルギーコストの双方において、脱炭素シナリオ(1.5℃/1.7℃シナリオ)に比べ、成り行きシナリオ(4℃シナリオ)での負担が大きく、当社グループとして脱炭素化、省エネ化の取り組みを積極的に進める理由・メリットがあることが再認識されました。
取り組みを進めるためには、大規模な投資が必要となるものの、取り組みを進めない場合には取り組みを進める場合に比べ、数億円規模で追加負担が想定されます。事業に影響を与えるリスクを軽減するため、2030年の削減目標の達成を目指して脱炭素化の取り組みを強化していきます。
物理的リスク
物理的リスクは、温暖化進行による気象災害の増加が重大なリスクとなります。そこで、当社グループ主要24拠点(国内1拠点、海外23拠点)について、気象災害がもたらす影響を定性的に評価しました。評価では、2℃シナリオ(SSP1‐2.6)、4℃シナリオ(SSP5‐8.5)下における洪水、高潮、干ばつ、熱波の各拠点のハザードを調査し、ハザードの多寡に応じてA(高リスク)~E(低リスク)の5段階のグレードを付与しました。本評価でA~Bの高リスクとなった拠点数の推移を以下に示します。
評価の結果、洪水、高潮、干ばつは、2℃シナリオ、4℃シナリオのいずれにおいても高リスク拠点数はほぼ増加せず、気候変動による影響は限定的であることがわかりました。熱波は、4℃シナリオの2050年、2090年にかけて高リスク拠点数が増加することがわかりました。熱波による影響は、空調コストや機器メンテナンスの増加、ヒートストレスによる生産性低下等が挙げられます。当社グループでは、工事現場・工場での従業員の熱中症対策を進めるなど、リスクを軽減する取り組みを積極的に進めていきます。
〔表〕当社グループで想定した気候変動シナリオ(物理的リスク)
〔表〕気候変動による高リスク拠点数
③ リスク管理
気候関連のリスク及び機会の識別については、外部専門家のアドバイスのもと見直しを実施し、2024年12月期に開示しました。移行リスク、物理的リスク、機会の各項目に対し、発現時期、発生可能性、当社グループへの影響度を、定性・定量の両面から評価し、重大なリスクと機会を特定しています。加えて、移行リスクと物理的リスクについて、複数の気温上昇を想定したシナリオ分析も行いました。詳細は、「(2) 気候変動に関する開示 ②戦略」をご参照ください。優先して対応すべき気候関連のリスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会とも連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。
④ 指標と目標
当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」及び新中計において「気候変動への対応」を重要課題と捉え、以下の目標を設定しています。2030年12月期目標は、2023年にSBT(Science Based Targets)イニシアティブの認定を受けており、スコープ1・スコープ2については、1.5℃水準の目標、スコープ3(カテゴリ1及び11)についてはWB(Well-below)2℃水準の目標となっています。2024年5月、2030年12月期のスコープ1・スコープ2の削減目標(2019年3月期比)を50.4%から60%へとさらに上方修正するとともに、再生可能エネルギー由来の電力比率の目標を新設しました。
※スコープ3のカテゴリ1及びカテゴリ11合わせての目標
参考:カーボンニュートラルへのロードマップ

(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
① 戦略
当社は、経営理念に基づいた多様な人材の雇用と、従業員の一人ひとりが「働きがい」と「働きやすさ」を感じ、いきいきと仕事ができる環境の整備を推進しています。具体的には、「従業員エンゲージメントの向上」「グループ人材マネジメント基盤の構築」「女性管理職の登用推進」に取り組んでいます。
〔表〕重点施策
② 指標と目標
人的資本に関する戦略に基づき、体系的かつ重点的に施策を展開しています。指標及び目標については、2024年12月期から開始する新中計をもとに、エンゲージメントの向上、人材の確保・育成、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から以下のとおり設定しています。
〔表〕指標及び目標
③ 目標に対する取り組み
1) 従業員エンゲージメントの向上
2021年11月に国内グループ会社を対象に「ダイフクグループ エンゲージメントサーベイ」を実施し、お客さま志向や経営層への信頼といった強みの部分が見られた一方、組織間の連携や従業員個人のキャリア形成支援などが課題として認識されました。サーベイ結果を参考にしながら、2023年4月に役割・成果をベースとした貢献による処遇を基軸とする新人事処遇制度(資格制度、報酬制度、評価制度)を導入しました。同時に、従業員の長期的なキャリア形成を支援するため、2024年3月期より社内出向制度・社内公募制度を開始しています。
また、2023年6月には海外グループ会社向けにエンゲージメントサーベイを実施。個社毎にサーベイ結果を踏まえてアクションプランを策定し、日本本社から適宜サポートを行いながら、ダイフクグループ全体で従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
なお、2024年12月期には国内グループ会社及び海外グループ会社の一部でエンゲージメントサーベイの実施を予定しており、国内グループ会社においては2回目の実施となりますので、「働きがい」・「働きやすさ」の日本平均スコアとの比較に加えて、前回調査結果との経年比較及び課題の改善状況の確認を行います。
2) グループ人材マネジメント基盤の構築
一定層以上の人材をグループ人材と位置付け、その「評価」と「育成」を事業部門ならびにグループ横断的に促進する体制を2024年3月期より運用開始しています。具体的には、①ダイフクグループで経営に重要なインパクトを及ぼすポジションをキーポジションとして選定、②キーポジションに求められる「役割・責任」「行動特性(コンピテンシー)」「経験、能力、資格」をポジション毎に文書化、③キーポジションの後継候補者をリスト化、④後継候補者の育成計画の策定・実施、の流れで進めています。キーポジションに対する後継候補者の育成や登用は「人材委員会」にて一元的に管理し、後継候補者の充足度及び育成施策のモニタリング、キーポジションへの登用の承認、事業部門間の異動に関する調整、決定を行います。
〔図〕後継者育成計画のステップ

3) 女性管理職の登用推進
管理職登用時の特別枠の設定に加え、女性管理職候補の裾野を拡大するため、管理職昇格の要件となる係長昇進においても特別枠を新たに設定しました。また、将来の女性管理職の育成を目的とした女性リーダー育成プログラムを新設し、女性リーダー候補のリーダーシップスキルの獲得及びキャリアビジョンの明確化を図るとともに、受講者の上司向けには女性従業員のキャリア形成支援に関する研修を実施しています。
4) 障がいのある従業員の活躍
滋賀事業所に所属の「業務サービスグループ」では、公共職業安定所、就労アドバイザーならびに学校関係者等と連携しながら障がい者の定期採用を継続的に行っており、一人ひとりが能力を発揮し、やりがいを持って働き続けられるよう、独自の教育プログラムを組んで人材を育成しています。入社後5年程度を目安に実習を重ねながら適性を見極め、職務能力を段階的に高めることで、各事業部の製造部門をはじめとする現場で活躍できる人材を輩出しています。
当社における人材の多様性の確保を含む社内環境整備に関する方針、人材の育成に関する方針等は以下のURLをご参照ください。
コーポレートガバナンス・コードの各原則に係る当社の取り組み状況
本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) リスクの管理体制
当社グループは、代表取締役社長(CEO)を最高責任者として、以下のとおり3線モデルを基本とするリスクマネジメント体制を構築しています(下図)。リスク対応の実行主体である事業部門(第1線)が行うリスク管理を、コーポレート部門をはじめとするリスク所管部署(第2線)が支援、指導、監督します。また、監査部門(第3線)が第1線及び第2線のリスク管理の取組みについて監査します。
〔図〕リスクマネジメント体制

当社グループは、これらの取組みを全社的な観点でモニタリング、対応指示及び進捗管理を行うために、代表取締役社長が委員長、事業部門長及び事業部長、安全衛生管理本部、コーポレート部門等の責任者を委員とするリスクマネジメント委員会を設置しており、同委員会は以下の事項を所管しています。同委員会は年数回程度の開催を予定しており、2024年3月期は5回開催しました。委員会の取組み状況等については必要に応じ取締役会へ報告を行います。
① リスクマネジメント委員会の所管事項
1) リスク管理体制の企画及び立案ならびに関連規定の整備
2) リスクアセスメント結果を踏まえたシビアリスク(経営層が中心となって組織横断的に優先管理すべきリスク)の選定
3) シビアリスク対応方針の決定、指示、進捗管理及びモニタリング
4) 年次レビューの実施及び結果のフィードバック
5) リスク意識向上のための各種情報共有、その他リスクマネジメントの重要性、考え方及び手法等に関する教育・訓練・研修等の実施方針の決定、指示
6) 危機対応に関する教育訓練及び演習等の対応方針決定、指示
② 平常時及び非常時の体制
当社グループのリスクマネジメント体制は、平常時はリスクマネジメント委員会が上記①の活動を行い、リスクが顕在化する前に、その可能性や被害の極小化に努めています。
リスクが顕在化し、危機対応を行うべき事態が発生した際は速やかにBCP推進体制へ移行します。
発見・連絡・対応からなる初期対応を行い、その後は業務継続の可否を見極めながら、被害管理、復旧対応に当たります。同体制はBCP推進部門が全社の対応を取りまとめた上で、リスク所管部署がリスク顕在化後の対応に当たるだけでなく、平常時から事前準備に努めています。
(2) 主要なリスク(シビアリスク)の選定及び対応のフロー

(3) 主要なリスク(シビアリスク)の評価と対応
当社グループにおいて「シビアリスク」と呼称しており、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは次のとおりです。ただし、これらは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。
① 主要なリスク(シビアリスク)のリスク評価一覧
② 主要なリスク(シビアリスク)の内容と対応策
(4) 主要なリスク(シビアリスク)の変動
「レピュテーションリスク」の評価見直しについて
2023年3月期有価証券報告書においては、「マスコミによる批判、風評被害」、「メディア対応の失敗」、「広告・宣伝の失敗」といったリスクを「レピュテーションリスク」と総称して主要なリスク(シビアリスク)としておりました。企業規模や業績の拡大により当社グループの社会的な認知度の上昇、マスメディアへの露出機会増、またSNSによる誤情報及び不適切な表現の拡散のおそれが増すといった状況は引き続き存続しています。しかしながら、記者会見を想定した役員層へのメディアトレーニング実施や、SNSを利用する際の留意点を示したガイドライン策定及び不適切投稿や情報漏洩発見時の報告ルート整備等を進めた結果、一定程度リスクが低減したものとして、「レピュテーションリスク」は、2024年12月期における主要なリスク(シビアリスク)の対象外とすることとしました。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における世界の経済は、中国経済の減速、欧米の金融引き締めに伴う景気減速懸念等があったものの、総じて順調に推移しました。
事業環境としては、自動車産業でxEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVなど電動車の総称)投資が活発化しています。また、航空旅客数の回復に伴い空港における自動化投資も伸長しています。ここ数年、北米・日本において高水準で継続したeコマース関連投資は一時的な停滞局面にありますが、一般製造業の投資は回復基調にあります。半導体産業では中国におけるレガシー半導体投資が高水準で継続し、低調であったロジック・メモリー投資にも回復の兆しが見えてきました。
このような経済・事業環境の下、当社グループの受注は、前年度に前倒し受注があった半導体・液晶生産ライン向けシステムは大きく減少しましたが、ほぼ期初の計画通りに推移しました。
売上は、豊富な前期末受注残高をベースに自動車生産ライン、空港向けシステムが好調に推移した一方、一般製造業・流通業、半導体・液晶生産ライン向けシステムは前年同期の実績には及びませんでした。
この結果、受注高は6,203億12百万円(前年同期比15.9%減)、売上高は6,114億77百万円(同1.6%増)となりました。
利益面は、全体としては期初計画を大きく上回りました。一般製造業・流通業向けシステムは北米において原材料・人件費高騰に伴うコスト増加分の価格転嫁が進展したこと等により、収益性が改善しました。半導体・液晶生産ライン向けシステムは減収の影響を受けましたが、コスト削減により収益性が改善しました。自動車生産ライン向けシステムは増収に伴い収益性が改善しました。空港向けシステムでは原材料・人件費高騰の影響、及びオセアニアの一部案件における一過性コストの計上により収益性が低下しました。
この結果、営業利益は620億79百万円(同5.5%増)、経常利益は642億7百万円(同7.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は454億61百万円(同10.2%増)となり、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも2期連続で過去最高を更新しました。
なお、当期の当社グループの平均為替レートは、米ドルで141.20円(前年同期132.09円)、中国元で19.87円(同19.50円)、韓国ウォンで0.1080円(同0.1020円)等となりました。為替の変動により、前期比で受注高は約17億円、売上高は約187億円、営業利益は約15億円、それぞれ増加しました。
2024年3月26日に公表した「決算期(事業年度の末日)の変更に関するお知らせ」のとおり、当社グループでは第108回定時株主総会での決議をもって決算期(事業年度の末日)を毎年3月31日から毎年12月31日に変更しています。決算期変更の経過期間となる2024年12月期は、当社並びに国内を中心とした3月決算の子会社は2024年4月1日から12月31日までの9カ月間を、海外を中心とした子会社は2024年1月1日から12月31日までの12カ月間を連結対象としています。
現時点での2024年12月期の業績予想は、受注高5,750億円、売上高5,500億円、営業利益520億円、経常利益535億円、親会社株主に帰属する当期純利益390億円、営業利益率9.5%としています。
受注高については、中国を除いた地域での半導体関連の一時的な投資抑制が続くことが見込まれるものの、自動車産業におけるxEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVなど電気自動車の総称)関連投資、航空旅客数の回復に伴う空港における自動化投資、日本国内や北米における人件費高騰を背景とした製造業の省人・省力化投資の回復を取り込んでいきます。売上高は、豊富な前期末受注残高をベースに順調に推移することを見込んでいます。また、利益面についても前年度の下期より原材料・人件費高騰に伴うコスト増加分の価格転嫁が進展しており、収益性の改善に寄与しています。
2024年12月期の為替レートは対米ドル149.89円(2024年3月期実績レート141.20円)、対中国元20.75円(同19.87円)、対韓国ウォン0.1121円(同0.1080円)などで計画を立てており、為替による大きな影響は見込んでいません。
上記の業績予想は、主に受注済の案件の進捗見込みや今後受注が見込まれる案件の確度や時期、期中の進捗度合いを想定し算出していますが、現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、国内外の顧客の動向・競合状況、「3 事業等のリスク」に記載している各種リスク要因などのさまざまな不確定要素により、実際の業績は記載の見通しと異なる可能性があります。
2024年3月期 実績
セグメントごとの業績は次のとおりです。受注・売上は外部顧客への受注高・売上高を、セグメント利益は親会社株主に帰属する当期純利益を記載しています。
なお、当連結会計年度より、量的重要性が増加したことに伴い、従来「その他」に含めていた「大福自動搬送設備(蘇州)有限公司(DSA)」を報告セグメントとしています。これに伴い、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメントにより作成しています。
当社グループのうち、株式会社ダイフク、株式会社コンテックをはじめとする国内の会社が3月末決算であるのに対し、海外子会社については、そのほとんどが12月末決算のため2023年1月から12月末までの期間の状況を記載しています。
〔表〕報告セグメントの業績
※1 DNA = Daifuku North America, Inc.
※2 CFI = Clean Factomation, Inc.
※3 DSA = 大福自動搬送設備(蘇州)有限公司
受注は、eコマース関連投資が一時的な停滞局面にある一般製造業・流通業向けシステム、前年度に前倒し受注や為替の影響を受けて大きく増加した半導体・液晶生産ライン向けシステムが減少しました。
売上は、自動車生産ライン向けシステムが好調に推移したものの、一般製造業・流通業、半導体・液晶生産ライン向けシステムは減収となりました。
セグメント利益は、自動車生産ライン向けシステムの増収や関係会社配当金の増加等があったものの、一般製造業・流通業向けシステムの減収の影響を受けました。
この結果、受注高は2,136億33百万円(前年同期比27.1%減)、売上高は2,388億77百万円(同0.0%増)、セグメント利益は332億23百万円(同2.4%減)となりました。
日本市場では、製造業向けを中心に販売が順調に推移しましたが、北米市場では主力の医療機器業界で在庫調整が続き、横ばいとなりました。
セグメント利益は、在庫の適正化に伴う評価減を計上したため、減益となりました。
この結果、受注高は197億42百万円(前年同期比2.3%増)、売上高は190億80百万円(同2.6%増)、セグメント利益は8億91百万円(同9.8%減)となりました。
受注は、一般製造業・流通業向けシステムは大型案件を含めて好調に推移しましたが、空港向けシステムが前年同期から減少しました。
売上は、豊富な前期末受注残高を背景にすべての領域で順調に推移しました。
セグメント利益は、増収及び一般製造業・流通業、自動車生産ライン向けシステムにおける原材料・人件費高騰に伴うコスト増加分の価格転嫁の進展等により、大きく増加しました。
この結果、受注高は2,020億61百万円(前年同期比4.3%減)、売上高は1,757億95百万円(同10.7%増)、セグメント利益は111億8百万円(同79.6%増)となりました。
※2024年1月1日付で、Daifuku North America Holding Companyから社名変更しました。
④ Clean Factomation, Inc.(CFI)
受注は半導体メーカーの投資意欲が旺盛だった前年同期から大きく下回り、売上も減少しました。
セグメント利益は、減収に伴い減益となりました。
この結果、受注高は248億22百万円(前年同期比48.5%減)、売上高は306億37百万円(同28.2%減)、セグメント利益は18億88百万円(同36.2%減)となりました。
⑤ 大福自動搬送設備(蘇州)有限公司(DSA)
大福自動搬送設備(蘇州)有限公司は、主に中国の半導体メーカーにクリーンルーム内搬送システムを提供しています。
前年度よりレガシー半導体向けの投資が高水準で継続しており、受注、売上、セグメント利益ともに前年同期を上回りました。
この結果、受注高は466億74百万円(前年同期比14.8%増)、売上高は300億83百万円(同19.7%増)、セグメント利益は54億93百万円(同181.3%増)となりました。
「その他」は、当社グループを構成する連結子会社67社のうち、上記②③④⑤以外の国内外の子会社です。これらの各社は、マテリアルハンドリングシステム・洗車機等の製造・販売・工事・サービスを行っています。主な子会社の状況は、次のとおりです。
国内子会社:
株式会社ダイフクプラスモアは、各種洗車機の販売等を行っています。販売台数は、前期からの顧客への政府補助金政策が当連結会計年度も続いたことから順調に推移しました。
海外子会社:
中国、台湾、韓国、タイ、インドなどにマテリアルハンドリングシステムの生産拠点があり、最適地生産・調達体制の一翼を担いつつ、販売・工事・サービスも行っています。
また、北中米、アジア、欧州、オセアニアには販売・工事・サービスを行う子会社を幅広く配置しています。
受注は、主に前年度アジアにおいて半導体・液晶生産ライン向けシステムを前倒し受注した反動により減少しました。売上は、前期末受注残高をベースに概ね順調に推移しました。
セグメント利益は、オセアニアにおける一部案件で一過性コストを計上した影響を大きく受けました。
この結果、受注高は1,133億77百万円(前年同期比9.4%減)、売上高は1,186億98百万円(同2.5%増)、セグメント利益は8億95百万円(同75.7%減)となりました。
業種別や仕向地別の詳細については、「[表]業種別受注高・売上高及び[表]仕向地別受注高・売上高」をご参照ください。
[表]業種別受注高・売上高
[表]仕向地別受注高・売上高
資産は、前連結会計年度末に比べ946億2百万円増加し、6,461億54百万円となりました。これは主に現金及び預金が392億97百万円、受取手形・完成工事未収入金等及び契約資産が215億56百万円、原材料及び貯蔵品が48億88百万円、有形固定資産が124億14百万円、満期保有目的債券の取得等により投資有価証券が112億51百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ681億71百万円増加し、2,873億99百万円となりました。これは主に電子記録債務が110億82百万円減少したものの、契約負債が156億75百万円、転換社債型新株予約権付社債が610億88百万円それぞれ増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ264億31百万円増加し、3,587億55百万円となりました。これは主に自己株式の取得に伴う200億45百万円の減少があったものの、利益剰余金が314億35百万円、為替換算調整勘定が84億61百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ340億56百万円増加し、1,364億45百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、371億17百万円となりました(前年同期は200億34百万円の増加)。これは主に、仕入債務の減少が181億46百万円、法人税等の支払額が221億96百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が632億87百万円、契約負債の増加が130億66百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、295億82百万円となりました(前年同期は118億74百万円の減少)。これは主に、固定資産の取得による支出が197億31百万円、投資有価証券の取得による支出が72億28百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の増加は、227億32百万円となりました(前年同期は301億87百万円の減少)。これは主に、自己株式の取得による支出が200億5百万円、配当金の支払額が140億18百万円あったものの、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入が610億82百万円あったことによるものです。
連結キャッシュ・フローの指標は次のとおりです。
自己資本比率 :(純資産-非支配株主持分-新株予約権)/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち短期借入金、長期借入金、転換社債型新株予約権付社債を対象としています。
5 利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
6 2023年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っています。このため、2023年3月期連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、時価ベースの自己資本比率を算定しています。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に調達・配分することを財務戦略の基本方針としています。
強固な財務体質の維持に関しては、自己資本比率の水準を50%以上に保ち、「A(シングルAフラット)」以上の発行体格付(株式会社格付投資情報センター(R&I)による格付)の維持向上を目指し、リスク耐性の強化を図ります。
同時に、営業キャッシュ・フローによる十分な債務償還能力を前提に、厳格な財務規律のもとで金融機関からの借入や社債の発行などの活用も進めることにより、資本コストの低減及び資本効率の向上にも努めてまいります。
② 経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、適正な手元現預金の水準について、売上高の約1.5~2.0カ月分を安定的な経営に必要な手元現預金水準とし、それを超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。また、株主の皆さまに対する利益還元を最重要事項と位置づけ、剰余金の配当については、株主の皆さまへのさらなる利益還元を視野に入れて、連結当期純利益をベースとする業績連動による配当政策を取り入れるとともに、残余の剰余金については内部留保金として、今後の成長に向けた投資資金に充てる方針です。
設備投資・研究開発に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。前中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期の3年間累計)では総額822億円となりました。
③ 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要のうち主なものは、製品を製造するための、原材料・部品の仕入、加工、組立等の変動費、ならびに製造間接費・販売費及び一般管理費等の固定費です。
固定費の主なものは人件費、構内外注費、設計外注費、研究開発費、賃借料等です。
④ 資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しています。グループ内では資金効率を高めるため、余資は当社に集中し、不足するグループ会社に配分する制度を国内グループ会社で運用しています。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上のため信用格付を取得しており、有価証券報告書提出日現在において、株式会社格付投資情報センターによる発行体格付は「A(シングルAフラット)」となっています。一方、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金は問題なく調達可能であると認識しています。なお、国内金融機関において300億円のコミットメントラインを設定しており、緊急時の資金調達手段を確保しています。2024年3月期には転換社債型新株予約権付社債を発行し、国内外の生産能力増強のための設備投資資金、ならびに資本効率の更なる改善を目的とする自己株式取得資金を調達しました。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(6) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社です。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社及び連結上の調整額です。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 「その他」は報告セグメントに含まれない国内外の子会社及び連結上の調整額です。
当連結会計年度(2024年3月期)の受注高は、前年度に前倒し受注や為替の影響で大きく増加した半導体・液晶生産ライン向けシステムの反動減があり前年度からは15.9%減少しましたが、売上高は豊富な前期末受注残高を背景に順調に推移したことにより1.6%増となり過去最高となりました。また、営業利益は5.5%増、経常利益は7.4%増、親会社株主に帰属する当期純利益は10.2%増となり、いずれも過去最高を更新しました。
ここ数年、北米や国内において高水準で継続したeコマース関連投資は一時的な停滞局面にありますが、一般製造業の投資は回復基調にあります。半導体産業は中国におけるレガシー半導体向けを除き投資が依然として抑制されていますが、下期より引き合いが増えつつあり回復の兆しが見えてきました。
一方で、自動車産業のxEV関連投資、航空旅客数の回復に伴う空港における自動化投資は活発化しており好調に推移しました。
当社グループの経営成績の分析の詳細については、「(1) 経営成績等の状況の概要」、課題分析や今後の施策などの詳細は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
2022年3月期からスタートした3カ年中期経営計画「Value Transformation 2023」では、最終年度である当連結会計年度(2024年3月期)の連結売上高6,000億円を経営目標の一つとして掲げており、前述の4つのコア事業(一般製造業・流通業向けシステム、半導体・液晶生産ライン向けシステム、自動車生産ライン向けシステム、空港向けシステム)を取り巻く環境の濃淡を相互補完し、達成しました。
一方、最終年度の営業利益率は10.5%を目標にしていましたが、2023年3月期より収益性低下要因となった原材料・人件費高騰に伴うコスト増の販売価格への転嫁が進展したものの、最終年度の営業利益率は10.2%に止まりました。
なお、「Value Transformation 2023」におけるROEは、2022年3月期以降、13.1%、13.2%、13.2%となり、各年度で目標である10%以上を達成しました。
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めています。
当社グループの収益構造は、親会社株主に帰属する当期純利益の大部分をダイフクが上げている形になっています((1) 経営成績等の状況の概要 [表]報告セグメントの業績)。ダイフクのさらなる収益性向上を図ることはもちろん、海外を中心としたダイフク以外のセグメントの収益性向上が課題です。これについては現在、すべての現地法人で営業利益率10%の早期達成を実現するための改善計画を立案し、実行しています。
また、当社グループのさらなる成長(経済価値の向上)については、このたび、2030年のありたい姿を長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」として設定した上で、その中間点として「2027年中期経営計画」を策定して各種施策の実践を通じ取り組んでいきます。詳細については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
該当事項はありません。
当社グループでは、「保管」「搬送」「仕分け・ピッキング」の機能を持つ機械設備とそれを支える電子機器の新システム・新製品の開発に取り組んでいます。昨今は、企業に求められる社会的責任が、経済活動のみならず環境・社会活動を含む概念へと広がっており、環境・安全等にも配慮したシステムや製品の開発にも努めています。
これらの研究開発活動によって生み出した知的財産の保護や利活用について、2024年3月期を最終年度とする前中期経営計画では、海外の各現地法人に知的財産の担当者を配置し、グループ間の関係の深化に努めました。2027年中期経営計画では、知的財産の戦略的活用の強化を目指しています。各事業で生み出した知的財産を専門組織が横断的に管理することで、グループ内の無形資産(暗黙知)の権利化(形式知)を拡大し、さらなる競争優位性の強化に努めていきます。
当連結会計年度(2024年3月期)における当社グループが支出した研究開発費の総額は、
報告セグメントごとの内訳は次のとおりです。
報告セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
なお、大福自動搬送設備(蘇州)有限公司(DSA)の研究開発活動は小規模であり記載を省略しています。
(1) 株式会社ダイフク
① 一般製造業・流通業向け製品
自律走行搬送ロボットを活用したピース搬送システム「ソーティングトランスファーロボット-S」の販売を開始しました。1時間当たり最大10,000ピースの仕分け能力があり、ネット通販などの超多量仕分けに対応できます。
また、海外の高層自動倉庫のニーズに対応するため、高さ40mクラスのクレーンの評価ができる第二高層棟を滋賀事業所内に新設しました。軽量化、待機電力の削減、高効率部品の使用など、消費電力削減により環境負荷低減に貢献する新型クレーンを開発し、2024年中の販売開始を目指しています。
② 半導体・液晶生産ライン向け製品
半導体生産ライン向けでは、後工程と呼ばれる積層パッケージ分野で自動化が進んでおり、多種多様な搬送物に備えて、新たな搬送・保管システムの開発を進めています。また、最先端の回路線幅である2~3ナノ向けの搬送・保管システムについては、24時間365日システム稼働を止めない高い信頼性や機器の消費電力削減を追求するとともに、コントロールシステムにはAIを導入し、高効率・高能力を生み出せるシステムの開発を進めています。
③ 自動車生産ライン向け製品
自動車メーカーでは現在、xEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVなど電動車の総称)を含めた混流生産や生産量の変動など、変化に柔軟に対応できる生産ラインが求められています。これに対応するため、従来のコンベヤシステムより生産ラインを容易に変更できる、台車けん引式のAGVを活用した搬送システムを新たに開発しました。
また、人手不足を背景にした自動化ニーズの高まりを受けて、生産ラインの搬送システムとそれに付随する自動化設備を合わせて提供できるよう、継続して研究・開発に取り組んでいます。
④ 空港向け製品
日本国内2例目となるRFIDを活用したバゲージトレイシステムが、2023年4月より稼働を開始しました。
受託手荷物の検査ライン向けに、新たにマグネットテープガイドを必要としない自立走行型AGV(AMR)の開発を終え、市場に投入しました。この技術をグループ間で共有しシナジー効果醸成に取り組んでいます。
オランダ子会社の製品である「スマートセキュリティレーン」(保安検査レーン)を北米で生産できるように改良し、アメリカ運輸保安局(TSA)の認証も取得し市場に投入しました。
⑤ 洗車機
フルサービスSS(サービスステーション)向けの新型洗車機「グロッサNEO」「ユーロスStyle」を開発しました。採用率の高いオプションを標準装備した「グロッサNEO」には、“仕上がり重視”“静音特化”モデルをラインアップ。「ユーロスStyle」でも、標準モデル以外に仕上がりや洗浄力を重視したモデルを4種のカラーバリエーションから選択できるようにしました。また、洗車機本体とコールセンターをネットワークでつなぐ「洗車機スマートサポート」では、遠隔操作や通話、最新プログラムのダウンロードなどの機能を拡充しました。稼働率向上による油外収益拡大に貢献していきます。
以上に記載の①~⑤を中心に、当社が支出した研究開発費の総額は
(2) コンテックグループ
産業用コンピュータ製品では、「ビジネスコンピュータLPC-400」を開発し、2024年4月より販売を開始しました。150mm×150mmの超小型サイズ、かつホコリを吸い込まないファンレス構造で低価格を実現しました。
IoT機器製品では、IEEE802.11ah対応無線LANコンバータ「RP-WAH-SR」を開発し、2023年12月より販売を開始しました。従来の920MHz帯の無線通信と比較して高速かつ長距離のネットワークが構築可能です。また、2023年11月より薬局向けの調剤監査システム「audit®-i」(オーディット・アイ)の販売を開始しました。従来モデルの約半分に軽量・コンパクト化し、AIを活用した薬剤種類判別機能(特許取得済)を採用しています。
当グループが支出した研究開発費の金額は
(3) Daifuku North America, Inc.(DNA)グループ
一般製造業・流通業向けシステムでは、ピッキングやソーティングシステムの開発に力を入れています。
自動車生産ライン向けシステムでは、引き続き静音化に向けた商品の拡充、及び塗装工場でのニーズが根強いPRB(Power Roller Bed)システムの改良を進めています。
当グループが支出した研究開発費の総額は
(4) Clean Factomation, Inc.(CFI)
韓国の半導体メーカーのお客さまに密着して、より効率の高い窒素パージ保管システムや、後工程のパッケージング分野向けの搬送・保管機器の開発などを実施しています。
また、過去に納めたシステムのリニューアル開発なども行っています。
当子会社が支出した研究開発費の総額は