第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針
 当社はオンライン金融事業を営むマネックス証券株式会社(日本)及びTradeStation Group, Inc.(米国)並びに暗号資産交換業を営むコインチェック株式会社(日本)を始め、その他国内外に金融関連の子会社及び持分法適用会社を有する持株会社です。なお、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えております。当社グループは、次に掲げる企業理念および行動指針を基に、個人投資家の日々の生活及び資産形成に必要な総合金融サービスの提供を目指していきます。

 

 ① 企業理念
 MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表しています。
 常に変化し続ける未来に向けてマネックスグループは、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインするとともに、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指します。

 

 ② 行動指針

・自主性をもって事業を創造する

 一人一人が未来のあるべき姿と当社事業の成長のために自ら考え進んでいきますプロフェッショナル意識を持ち必要な知識や技術を追求し自らの価値を高めるよう努めます

・公正であることを尊重する

 多様な背景や考え方を尊重します一人一人の能力が最大限発揮できる透明性のある公正なチームを構築することで当社の企業価値の向上につなげるとともにより良い社会の実現を目指します

・企業理念の実現に貢献する

 私たちのステークホルダーの価値創造に貢献します未来における人の活動において生涯バランスシートを最良化するため何が望まれているかを想像して個人およびチームが短期的かつ長期的な目標に向かって邁進します

 

(2) 目標とする経営指標及び現状の経営環境
 当社グループは連結における年度の業績予算を策定していますが、当社グループはオンライン証券ビジネスやクリプトアセットビジネスなどをグローバルに展開しており、経済環境や相場環境等の影響を大きく受けるため、業績予想を行うことが困難な状況にあります。当社の業績予想および収益計画は、投資家に対して誤った情報を提供する可能性があることから適切でないと考えているため、開示しておりません。一方、資本効率に関する目標としてROEが妥当と考えており、10%を達成すべき水準と考えております。
 2024年3月期の連結決算については、親会社の所有者に帰属する当期利益は313億円となり、前年比847%増となりました。暗号資産等の市場環境の回復と各グループ会社の事業戦略推進が奏功し、主要事業群は収益基盤の拡大に成功しました。またNTTドコモとの資本業務提携による株式売却益等も計上しましたROEについては、NTTドコモとの資本業務提携にかかる利益を含めると27%となり、それを除く実力値ベースでは、8%となりました。今後、資本効率を意識し、利益につながる成長投資を促進することで、継続的にROE10%を出せるように努めてまいります。

 

(3) 対処すべき課題

Ⅰ全社戦略

1) 最適な事業ポートフォリオの追求

当社グループはグループ各社の成長戦略を推進しつつ、アセットマネジメント事業など新たな成長投資領域へ投資することで、グループ全体のポートフォリオの最適化を図り、さらなる企業価値向上を目指します(主要グループ各社の成長戦略については下記Ⅱ参照)。

 

2) 資本コストを意識した成長投資の実現

当社グループは資本コストとの対比でROE10%以上を経営目標としております。今後も、資本効率を意識し、利益につながる成長投資を促進することで、継続的にROE10%以上を達成するよう努めていきます。

 

3) 人的資本経営の高度化

当社グループが常に革新的な、最良の商品・サービスをお客様に提供し、社会から信頼、尊敬される企業であり続けるためには、その推進力である社員一人ひとりの力が何よりも重要です。そのため当社グループでは「人材」を最も重要な経営資源と捉え、全社で掲げる「人材育成方針」のもと、持続的な成長と企業価値の向上にむけて社員がもつポテンシャルを最大限引き出すための人材育成環境づくりに取り組んでいきます。

 

Ⅱグループ各社の事業戦略

1) マネックス証券

本年1月から開始したNTTドコモとの資本業務提携により、マネックス証券は、従来の成長曲線をはるかに超える非連続的な成長機会を獲得しました。また、イオン銀行からの投資信託保有口座の移管も本年1月に完了し、イオン銀行との金融商品仲介を通じた包括提携も始まりました。パートナー企業との提携を通じて、顧客基盤と預かり資産を飛躍的に拡大させていきます。

今後はNTTドコモとの提携をさらに推進し、dカードでの投資信託のクレカ積立サービスやdポイントを利用した投資信託の購入など、新しいサービスも提供予定です。これらの取り組みや新NISAスタートも追い風に、投資未経験者層やパートナー企業のお客様など、これまでリーチしていなかった新たな顧客層との接点を拡大し、日本における投資・資産形成の裾野を広げることで、さらなるマネックス証券の事業基盤強化を目指していきます。そのために、システム基盤やコールセンターなどの顧客対応キャパシティも充実させていく考えです。

 

2) TradeStation

米国のTradeStationは、長年にわたり高評価を得ている自社開発の取引プラットフォームを強みとして高頻度に取引をするアクティブトレーダー層から高い支持を受けています。アクティブトレーダー顧客を主体とした収益貢献度の高い大口顧客にフォーカスし、彼らに「究極のトレーダー体験を提供する」ことを課題と認識しています。また、強固なAPI技術を活用し、革新的な取引・分析ソリューションを提供するフィンテック企業の顧客の取引も取り込んでいきます。

具体的な施策として、世界最高水準を目指した取引体験の提供や強力な取引・分析ツールの活用により、顧客の取引活性化を進めていきます。また、Trading Viewをはじめとするパートナー企業とのAPIを活用した連携を通じ、ユーザーのLTV(Life Time Value)の向上に取り組んでいきます。さらに、アウトバウントセールス(対面営業)やコンシェルジュサービスなどを実施し、高付加価値顧客のロイヤリティ向上を目指します。

 

3) コインチェック

コインチェックは、日本においてBTC(ビットコイン)をはじめとする暗号資産を取扱う販売所および取引所の運営を主要事業としています。暗号資産市場のボラティリティの高さと事業環境の変化の速さを背景に、日本国内における競合優位性の堅持がさらに重要な課題になっています。このような課題認識のもと、加速的な成長を目指し、暗号資産市場およびWeb3産業の裾野を拡げるべく「コインチェックとつながる人口の拡大」を目指してBtoCに加えてBtoBtoCへ事業ポートフォリオの拡充を進め、収益の多様化を図っています。

具体的な施策として、トークンを使った企業の資金調達手法の1つであるIEO※1や初めて販売されるNFT※2コレクションをNFTマーケットプレイスで取扱うINO※3の成功事例を積上げるとともに、多様な法人顧客のニーズに合わせたサービス提案ができる体制の強化に取組んでいます。

また、商品の多様化に向けて米ドルを裏付け資産とするステーブルコインUSDCを発行するCircle社との提携を発表し、取扱い開始に向けて準備を進めております。

Web3事業領域で、安心して利用いただける暗号資産交換業者として法人にも個人にも最初に選ばれる会社となることを目指して、技術力の向上やセキュリティの強化にも取り組んでいます。

グローバル戦略については、コインチェックの持株会社となる予定のCoincheck Group B.V.と米国のSPACとの統合によるナスダック市場への上場に向けた手続を進めております。

 

1 Initial Exchange Offering

2 Non Fungible Token

3 Initial NFT offering

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。なお、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えているため、以下マネックス証券株式会社の内容も含めて記載しております。

 

(1)サステナビリティ全般に関する開示

1)企業理念に沿った当社グループの基本方針および取組み

当社は、「MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表わしています。常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化すること」を目指すことを企業理念に掲げています。

当社は、当社グループの役員および従業員(名称の如何に関わらず当社グループの業務に従事する者のすべてを含む。以下、総称して「役職員」)が上記企業理念を実現するための行動指針を制定し、役職員一人ひとりが遵守すべき規律を定めています。そして、当社グループ役職員を対象とする社内報への掲載や社内研修の実施を通じ、企業理念を役職員に浸透させるための取組みを行っています。

 

2)ガバナンス体制

当社グループ独自の経営課題と社会課題の解決を目指すため、当社グループのステークホルダーにとっての重要度(縦軸)と当社グループの業績に与える影響についての重要度(横軸)を「マネックスグループのマテリアリティ・マトリックス」(以下、「マテリアリティ・マトリックス」)として特定しています。

マテリアリティ・マトリックスは、ステークホルダーの考えや財務的影響度および当社グループの企業理念への影響度を数値化することによって、当社グループがリスクと機会の観点で取組むべき各課題を解決するための優先順位を可視化したものです。こうして、当社グループでは、執行役との協議を重ねたうえでマテリアリティ・マトリックスを策定し、最終的には取締役会での報告、協議を経て決定しました。当社グループのウェブサイトにて上記の過程を踏まえたマテリアリティ・マトリックスを公開(※)しています。

マテリアリティ・マトリックスにて数値化、可視化された各課題は、縦横の3象限ずつ計9象限に分けてプロットしており、数値的に重要とされる課題は、本業のなかで取組むべき最重要項目として、各執行役が推進責任者となり、目標設定、進捗管理をして、半期ごとに進捗状況および今後の課題を取締役会に報告しています。

また、様々なステークホルダーとともに社会的課題の解決に取組み、新しい価値を創造することで持続可能な社会の実現に貢献することを「MONEX サステナビリティ・ステートメント」として制定しており、取締役全員がコミットしています。

(※)https://www.monexgroup.jp/jp/sustainability/mg_esg.html

 

マテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目

執行役/担当

コーポレート・ガバナンス

代表執行役社長CEO

リスクマネジメント

リスク管理統括責任者

イノベーション

代表執行役会長

金融リテラシーの向上

代表執行役社長CEO

金融サービスへのアクセス向上

代表執行役社長CEO

セキュリティ&プライバシー

情報セキュリティ担当執行役

人材採用・人材育成、労働慣行、

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン

人事担当執行役

コンプライアンス(AML&腐敗防止)

内部統制担当執行役

サステナブルファイナンス

日本セグメント担当執行役

 

当社グループは、ESG活動に取組むに当たり、社内の横断組織である「ESG/サステナビリティ推進タスクフォース」が中心となり、上記のマテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目での取組みや気候変動をはじめとする環境問題に関して、審議および検討を行っています。これらのESGに関する取組みについては、定期的に取締役会に報告され、承認を受けながら、グループ全体を巻き込んで、各種課題の取組みとESGに関する情報開示を推進しています。

 

3)リスク管理

当社は、事業目的を安定的に達成するためには、経営に影響を与えるリスクを常に許容範囲にとどまるように管理することが重要と考えています。こうした経営方針に基づき、「統合リスク管理規程」等に定めた10のリスクを適切に識別、分析、評価したうえで、セグメントを担当する執行役が各リスクについての具体的な管理方法、体制を決定しています。セグメントを担当する執行役は、リスクが発生あるいはリスクが発生する蓋然性が高いと判断した場合、CEOが定めるリスク管理統括責任者と各リスクを担当する執行役に対して報告する体制を構築しており、リスク管理統括責任者は、リスク管理体制に関する整備状況、運用状況を把握し、毎月取締役会に報告しています。

また、サステナビリティにおけるリスク管理は、マテリアリティ・マトリックスの特定プロセスの中で、当社グループの業績に与える影響としての重要度(横軸)を決定するうえで、各課題のリスクと機会に対する財務的影響度を数値化して評価しており、各執行役は、マテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目として評価された課題の推進責任者として、リスクを管理しています。

 

4)戦略、指標および目標

短期および中長期にわたる当社グループの戦略に影響を与える指針として、上記のとおり、当社は企業理念への影響度を数値化して、マテリアリティ・マトリックスを特定しています。特定されたマテリアリティ・マトリックスのうち、最重要項目においては、推進責任者である各執行役が進捗を管理しながら、半期ごとに進捗状況および今後の課題を目標設定して取締役会に報告しています。

 

5)取組み実績

当社はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用する日本株式を運用対象とする6つのESG指数である「FTSE Blossom Japan Index」「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」「Morningstar Japan ex-REIT Gender Diversity Tilt Index」のすべての構成銘柄に選定されています。

 

(2)人的資本、多様性に関する開示

1)基本方針および取組み

当社グループは、人材を最も重要な経営資本と捉え、企業理念の実現を促す3つの行動指針を定めています。行動指針を体現するために求められる人材の能力や行動を明らかにし、人事評価基準にも適用することによって、役職員一人ひとりが自ら考え行動するインセンティブを創出し、個々人の生産性を高めることで組織として最大のパフォーマンスを発揮できる体制を整えています。

 

行動指針

「自主性をもって事業を創造する」

一人一人が、未来のあるべき姿と当社事業の成長のために自ら考え進んでいく。プロフェッショナル意識を持ち、必要な知識や技術を追求し、自らの価値を高めるよう努める。

 

「公正であることを尊重する」

多様な背景や考え方を尊重する。一人一人の能力が最大限発揮できる透明性のある公正なチームを構築することで、当社の企業価値の向上につなげるとともに、より良い社会の実現を目指す。

 

「企業理念の実現に貢献する」

私たちのステークホルダーの価値創造に貢献する。未来における人の活動において、生涯バランスシートを最良化するため、何が望まれているかを想像して、個人およびチームが短期的かつ長期的な目標に向かって邁進する。

 

少子高齢化に伴う労働人口の減少や金融・経済のボーダレス化に伴い、新しい商品やサービスの競争が複雑化している現状において、限られた労働力で最大限の成果を生み出す「効率性や生産性の改善・向上」のみならず、新しい未来やイノベーションを生む人材育成がこれまで以上に重要な課題となります。

当社グループは、人的資本および多様性の充実に取組むうえで、当社グループが求める人材が、その能力を最大限発揮できる就業環境を整えるため、2つの方針を策定しています。

 

・人材育成方針

「当社グループは、高い志と情熱をもって変革を試みる役職員のチャレンジ精神を鼓舞する環境を整えることにより、組織やチームの出力の質を高め新たな未来の価値を創造できる自律型人材を育成します。」

 

・社内環境整備方針

「当社グループは、多様な人材の多様な働き方を受入れ、組織やチームの活性化を実現する役職員一人ひとりの主体性ある取組みが公正に評価される環境を整えます。」

 

2)重点課題(指標)および目標

次の重点課題にフォーカスし、その改善に取り組んでいます。

 

(a)多様性の確保と公正な評価制度(報酬体系)

当社グループの人事制度においては、性別、年齢、国籍などによらず、企業価値への貢献度を最も重要な評価基準として人事評価をおこなっており、その結果にのみ基づいて人事処遇するため、多様性を損ねない組織体制を構築しています。

賃金格差(ペイギャップ)については、男女別の報酬体系を持たないため、個々人の貢献度や習熟度に対する評価結果や職種の違いに伴う格差は生じますが、性差による格差は生じません。

なお、多様性がどの程度の品質で確保されているかを測る指標として、評価と報酬の観点から「女性管理職比率」と「男女賃金格差」を計測しています。(2024年3月期の実績は下表のとおり)

項目

区分

男性

女性

評価

人数比率

全社員

76%

24%

女性の数を人口比に近づく程度まで増やしたいと考えています。

 

管理職者

78%

22%

貢献度に沿って適正に処遇すべきで、目標は定めません。

ペイギャップ

全社員

100%

86%

男女別の給与体系を持たないため、原則男女間格差は生じませんが、左記は報酬に関する職種間格差から生じたものです。

 

非管理職

100%

81%

 

管理職者

100%

102%

対象会社:マネックスグループ株式会社、コインチェック株式会社、TradeStationグループ各社

 

(b)人材の育成・開発

日本セグメントにおいては、Off-JTや自己学習により身につけた基礎能力や専門分野に必要となる知識・スキルを、OJTにおいて繰返し実践させることを通じて、時にはストレッチアサインメントを課すことで自身の経験としての成功体験を積み重ねる機会を提供しています。また社内育成担当による1対1のコミュニケーションの機会を設けるなど質の高い人材育成環境を整備しています。

 

米国セグメントは、社員教育プログラムを通じて、顧客特性の理解、自社が提供するサービスやシステム、金融業界に関する豊富な知識を社員に提供しています。 また、リーダーシップと能力開発にも力を入れており、1対1のコーチングや、誰でも受講できるリーダーシップと能力開発の研修コースを提供しています。

 

クリプトアセット事業セグメントにおいては、組織内での課題解決型アプローチに加え、技術共有会やエンジニア任意参加の横断型技術交流など社員による自発的な勉強会が開催されており、ポジティブラーニング制度を活用し費用を補助しています。

 

(c)働き方の柔軟性

当社グループは、役職員一人ひとりが最も高いアウトプットを出せる働き方環境を選択できるように様々な制度を設計しております。

時間や場所の制約を受けない働き方が可能になる制度設計(フレックスタイム制度や在宅勤務制度)や出産、育児および介護など多くの役職員が経験しうる重大なライフイベントに対する支援など、役職員間の相互理解と協力が得られる企業風土や文化に根差した体制を整えており、出産や育児および介護による休職者が100%復職できる環境を維持します。

項目

育児休暇を取得した人数

取得比率

男性育児休業取得率

5人

83

対象会社:マネックスグループ株式会社、コインチェック株式会社

 

(d)組織エンゲージメントサーベイ

2022年より日本拠点の当社およびマネックス証券株式会社の役職員を対象にした組織エンゲージメントサーベイを実施しています。人的資本に関する課題にフォーカスしたスコアについては、役職員全員に対して、所属する部門やグループの結果を周知しているため、部門やグループごとに改善策を討議し、日々試行錯誤に努めることができる体制を整えています。本サーベイの結果、多くの役職員が当社グループの企業理念に共感し、多様な価値観を尊重しながら、グループが直面する課題に対して当事者意識を持って取り組み、企業価値の向上に向けた活動に積極的に参加する企業文化や風土が醸成されていることが示されました。

米国セグメントおよびクリプトアセット事業セグメントにおいても、組織エンゲージメントサーベイを毎年実施しており、測定結果を分析し、適切な施策を導入することにより、役職員の定着率の向上と健全な職場環境の醸成に役立てています。

3【事業等のリスク】

1.当社に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクについては、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。また、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えているため、以下マネックス証券会社の内容も含めて記載しております。

 

(1) ビジネスリスクについて

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、全社戦略として、成長投資領域へ投資できず、グループ全体のポートフォリオの最適化を図れない可能性があります。また、利益につながる成長投資を促進できず、ROE10%を計上出来ない可能性があります。さらに、人材育成環境づくりが他社比で劣後し、競争力を低下させる可能性があります。

事業戦略としても、マネックス証券において、パートナー企業との連携が遅れ新規口座や預かり資産を獲得できず中長期での事業基盤を強化できない場合には、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があります。また、TradeStationでは大口顧客を想定より取り込めず、収益が拡大しない可能性があります。さらに、クリプトアセット事業セグメントでの米国上場が想定より遅延する場合には、投資に一定の制限がかかることで、将来の収益や利益を逸失する可能性があります。

 

(2) 信用リスクについて

a. 顧客取引に関わる信用リスク

  当社グループは、信用取引、先物・オプション取引、FX取引等により、顧客に対して信用供与するため、株式市況、為替市況等の変動によっては顧客に対する信用リスクが顕在化する可能性があります。ただし、当社グループは、前金、保証金又は担保の差し入れを受けており、また、取引状況の日常的なモニタリングを通じたポジションの偏り等のリスクを把握し管理していることなどから、顧客に対する信用リスクの顕在化は限定的と判断しています。

  ただし、今後の市場環境等の急激な変動により、顧客立替金が生じる場合において、顧客からこれを十分回収できない可能性があり、その場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

b. 取引金融機関等に関わる信用リスク

  当社グループは、FX取引及び暗号資産取引におけるカバー取引、貸株取引等により、取引金融機関及び暗号資産交換業者等に対する信用リスクに晒されています。当社グループの取引金融機関及び暗号資産交換業者等は、基本的には国内又は海外で認知された金融機関及び暗号資産交換業者であるため信用リスクは限定的です。また、取引金融機関に対する格付引下げ等の信用不安につながり得る情報を入手した場合には、関係部門間で連携をとりながらリスク回避のために必要な措置を講じておりますが、今後の市況等の急激な変動により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

  なお、信用リスクを含む金融リスクに関する定量的な分析は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.金融リスク管理」に記載しています。

 

(3) 情報セキュリティリスクについて

  当社グループは、主要セグメントである日本、米国、クリプトアセット事業セグメントにおいて、取引の根幹をなす基幹システムを内製開発・自社保有しておりますが、システムの不具合、処理能力不足、通信回線の障害などによりシステムの機能不全に陥った場合には、事業運営に重大な支障が生じるおそれがあります。

  グローバルにビジネス展開をしている当グループでは、深刻化するサイバーセキュリティに対する脅威からお客様の情報や資産を守り、安心してお取引を行っていただくため、金融庁が制定している金融商品取引業者向けの総合的な監督指針や、米国国立標準技術研究所(NIST)800シリーズを参照し、包括的なサイバーセキュリティ対策の強化に努めています。また、マネックスグループ全体でサイバー攻撃により発生した事象への対応、および被害を軽減させるためのグローバルな体制を構築しており、当社に設置したマネックスグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心に、当社グループ各社にもCSIRTを設置しています。マネックスグループCSIRTはグループ各社のCSIRTとの協力体制の下、ガバナンスの強化を行い、各社のCSIRTは各社の業務、情報資産、そしてシステムを守る機能を果たしており、組織運営、システム対応、人的対応、外部連携の以上4つの軸でサイバーセキュリティ対策を推進しています。

  しかしながら、上記の対応において、何らかの不備、あるいは現段階では予測できない原因により、当社グループの適切な対応が遅れる、又は適切な対応がなされなかった場合や、外部からのサイバー攻撃等により個人情報や機密情報などが漏えいした場合には、当社グループの信用低下や被害者からの損害賠償請求等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、暗号資産交換業を営むコインチェックは、不正アクセスに対する備えとして、預り暗号資産の大半を安全性の高いコールドウォレット(※1)で保管しており、不正アクセスに対するリスクの低減を図っています。しかしながら、外部からの攻撃等により、ホットウォレット(※2)で保管している暗号資産を窃取され、不正送金が行われた場合には、当社グループの信用低下や被害者からの損害賠償請求等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

※1 インターネット等の外部とのネットワークとつながっていない遮断された環境に保管されているウォレット

※2 外部とのネットワークとつながっている環境に保管されているウォレット

 

(4) その他のリスク

  株式会社しずおかフィナンシャルグループは、当社の議決権の5%超を保有しています。現在の状況が継続する場合、当社は銀行法第52条の23第1項各号に掲げる会社以外の会社の議決権の50%超を保有することができない等の制約を受けます。その結果、当該制約により経営環境等の変化に適切に対応できず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

2. 当社のリスク管理状況

 

 (1)リスク管理体制

当社は、経営に影響を与えるリスクを許容できる一定の範囲内にとどめることが事業目的達成に資するという考え及びCOSO* ERMフレームワークに基づき、「統合リスク管理規程」等に定めたリスクを適切に識別、分析、評価したうえで、当社および当社グループ会社の各々のリスクについて、適切な管理体制を整備しています。以下の体制の通り、CEOが任命するリスク管理統括責任者がリスク管理体制に関する整備状況、運用状況を把握し、VaR管理も含めて定期的に取締役会に報告しています。

また、取締役会はそのリスク管理体制に関する整備状況等を確認すること、さらに、内部統制システムが有効に機能するよう体制の整備および運用状況についての内部監査を実施し、取締役会はリスク管理の有効性評価をしています。

なお、当社のリスク管理体制は、監査委員会から独立して運営しています。

 

*COSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission:トレッドウェイ委員会支援組織委員会)

 

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(2)リスク管理方法

1)グループVaRにおける定量的なリスク管理

 当社グループは、グループ全体で保有するリスク量が許容額に収まっているかを把握するため、毎月グループVaRを計算し、定量的に管理しています。市場リスクについては、一定の期間内(保有期間二週間)に一定の確率(信頼区間片側99%)で被りうる最大損失額、信用およびオペレーショナルリスクについては、上記に準じて発生しうる最大損失額を算出しており、その合計値であるグループ全体のリスク量がリスク許容額(連結株主資本から固定的な資産を控除した額の1/2)と比べどういう状況にあるか取締役会に報告し、取締役が確認しています。

 

① 市場VaR

 市場リスクは、株式、金利、為替、暗号資産など、当社グループが保有する資産価格の変動により損失を被るリスクとして、月末時点の各資産残高にそれぞれの金融商品等における価格変動率を乗じてリスク額を計算しています。なお、当社グループにおける金融商品取引業においては、ブローカー業務における収益の計上がほとんどであり、トレーディング目的として自己で保有することで収益を計上する取引はごく一部であり、当社グループの金融商品取引業における市場リスクは限定的です。

 

② 信用VaR

 信用リスクは、各社の金融商品取引、暗号資産取引における取引先および顧客の貸倒れリスクとして、取引先リスクおよび顧客リスクを計算しています。取引先リスクについては、取引金融機関に対する預金残高や金融商品取引等で発生する保証金および証拠金の残高に対して、各金融機関に付与されている外部格付評価機関の格付け評価に紐づいたデフォルト率を乗じて、リスク額を計算しています。顧客リスクは、信用供与された各社の金融商品取引等における過去の貸倒れ実績に基づくデフォルト率に、該当する取引の残高を乗じて計算したリスク額や、過去リターン実績に基づく一日のリターンの範囲をリスク額として算出しています。

 

③ オペレーションVaR

  オペレーションVaRは、暗号資産取引における顧客の預かり資産であるウォレット残高に、コールドウォレットおよびホットウォレットごとに設定した不正送金リスク率を乗じてサイバー攻撃によって生じうる損失をサイバーセキュリティリスクとしてリスク額として計算しています。サイバーセキュリティリスク以外のオペレーショナルリスクとして、各セグメントの金融費用控除後営業収益に一定の率を乗じた額により、リスク額を算出しています。

2)グループRCMにおける定性的なリスク管理と主要な取組み

 グループVaRとしての定量的なリスク管理に加えて、網羅的に残存リスク(グループ全体の影響度×発生確率/統制)の算出、評価をしたリスクコントロールマトリックスを取締役会に報告して、当社グループのリスクの状況を定性的に管理しています。

 当社グループがオンライン金融商品取引業のサービスを営む上で最も重要なリスクであるサイバーセキュリティリスクにおいてはマネックスグループCSIRTを中心に各社で設置されたCSIRTとの協力体制のもとグローバルな体制を構築しています一方暗号資産取引を営むコインチェックおよびTradeStation Crypto Inc.のウォレット管理においては各社が不正送金に対して適切な管理体制を構築しリスクの低減を図っています

 

グループRCMにおけるリスクの定義および主要な取組み

リスク

カテゴリー1

リスク

カテゴリー2

リスクの定義

主要な取組み

ビジネス

リスク

戦略リスク

既存ビジネスの競争力低下および新規ビジネスへの参入遅延などのリスク

 

日本セグメントはアセマネモデルの推進により事業基盤強化を目指し、米国セグメントはアクティブトレーダー層のロイヤリティ向上と取引活性化によるLTVの向上、クリプトアセット事業セグメントは、デジタル経済圏の創出やグローバル戦略の展開を目指す(1.(1)で詳細を記載)

経営管理リスク

会社全体の業績やコストを管理できず、グループ全体の収益性が低下するリスク

取締役会等に月次でセグメントごとの業績やKPIを報告

市場関連

リスク

市場関連リスク

市場リスク要因の変動による保有資産(オフバランスシート資産を含む)の変動による損失のリスク

FX取引につきカバー取引に関する規定に基づき、外国為替ポジションを適切に制御(暗号資産交換取引につき、基本的に自己ポジションは保持していない)

VaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算

信用リスク

信用リスク

取引先および顧客へのクレジットリスク(気候変動リスクに晒されている取引先のクレジットリスクを含む)

取引状況の日常的なモニタリングを通じてポジションの偏り等のリスクを把握

VaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算(1.(2)で詳細を記載)

流動性

リスク

流動性リスク

資金繰り管理における不備等で資金確保が困難になるリスク

直接金融・間接金融の活用等資金調達手段を多様化

情報セキュリティ

リスク

情報セキュリティリスク

情報資産の漏洩、毀損等により機密性、完全性等が損なわれることで損失を被るリスク

情報セキュリティ委員会の実施や定期的モニタリング、従業員へのセキュリティ教育の継続的実施

サイバーセキュリティリスク

サイバー攻撃等により、重要情報漏洩、システムの不正使用、又はサービス停止をすることで損失を被るリスク

グローバルな体制を構築し、組織運営、システム対応、人的対応、外部連携の軸で対策を推進

暗号資産取引におけるウォレット残高をVaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算(1.(3)で詳細を記載)

システム

リスク

システム構築リスク

システムダウンや誤作動およびシステムの不正使用等により顧客ならびに当社が損失を被るリスク

第三者による定期的脆弱性診断の実施や脆弱性検知時における即時対応

事務リスク

事務リスク

従業員等のヒューマンエラーおよび清算機構やシステムベンダーなどの第三者に頼る事務リスク

新規プロジェクトや商品サービス導入時の主要事務リスクのレビューによる形式知化等

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リスク

カテゴリー1

リスク

カテゴリー2(*)

リスクの定義

主要な取組み

リーガル

リスク

マネー・ロンダリング及びテロ資金供与リスク

マネー・ロンダリング、及びテロ資金供与に利用されそうになるリスク

各グループ会社における対策の徹底及びグローバルな報告体制構築を通じたマネー・ロンダリング対策に係る課題の把握と対応

コンプライアンスリスク

社内外の法令・規制等の厳守を怠ったために罰則・訴訟等を受けるリスクや、契約上の障害により損失を被るリスク

コンプライアンス責任者からの定期的な法令遵守項目の周知徹底や、契約締結における確認フローのシステム化

レピュテーション

リスク

風評リスク

マスコミ報道、風評・風説等により会社の評判が悪化することで損失を被るリスク(気候変動を含む環境問題への対応が遅れることにより、当社の評判が悪化し、顧客取引の減少等により損失を被るリスクを含む)

マスコミ関係者やPR支援会社との連携強化による、風評被害発生リスクの最小化努力

気候変動対応に関する取組みを積極的に情報開示

災害リスク

自然災害リスク

自然災害によるビジネス持続性リスク(自然災害による取引先の事業停滞に起因する資産の毀損リスクを含む)

当社グループの主要な拠点において災害、テロ攻撃等の発生に備えた事業継続計画の策定や、有事の対応策の事前検討(1.(4)で詳細を記載)

その他の

リスク

組織に関するリスク

組織内で発生するモラル低下などにより事業目的の達成を制限されるリスク

主要セグメントで実施しているタウンホールミーティングや、個人投資家向けオンライン説明会での当社CEOによる質疑応答の公開、および当社CEOから内部通報制度の対象者であるグループ全社員への定期的な周知

情報開示リスク

不正な会計、IR情報を開示するリスク

適切な内部統制の構築・運用に加え、公認会計士資格を有する社外取締役と会計監査人の連携等による、不正な会計処理を未然に防止する体制構築

情報開示委員会による適時開示等プレスリリースの事前チェック

その他

カントリーリスク、政治リスク

グローバル拠点間の経営陣が出席する会議における、グローバルな経営環境等の情報共有

(*)上記のリスクカテゴリー2に対応する残存リスク(グループ全体の影響度×発生確率/統制)を算出

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

 ① 経営成績の状況

  当社グループ(当社及び連結子会社)は、金融商品取引業、暗号資産交換業、有価証券の投資事業を主要な事業として、「日本」・「米国」・「クリプトアセット事業」・「アジア・パシフィック」・「投資事業」の5つの報告セグメントとしています。

  当社は2023年10月4日付で、当社、当社の子会社であるマネックス証券株式会社及び株式会社NTTドコモの三社間で資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といいます。)を締結しました。本業務資本提携契約に基づき、2024年1月4日付で当社はマネックス証券株式会社の単独株式移転により設立された中間持株会社の株式を株式会社NTTドコモに一部譲渡し、中間持株会社は株式会社NTTドコモを割当先とする第三者割当増資を完了しました。これにより、中間持株会社(ドコモマネックスホールディングス株式会社)に対する議決権所有割合は、当社が約51%、株式会社NTTドコモが約49%となりますが、実質支配力基準に基づきマネックス証券株式会社と中間持株会社は株式会社NTTドコモの連結子会社となり、当社においては持分法適用会社となりました。

  これに伴い、当連結会計年度において、マネックス証券株式会社の事業に関わる損益を非継続事業に分類するとともに、前連結会計年度についても同様の形で再表示しています。

  なお、報告セグメントの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6セグメント情報」をご参照下さい。

 

 (連結)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

継続事業

 

 

 

 

受入手数料

24,033

27,159

3,126

13.0%増

トレーディング損益

5,566

8,380

2,813

50.5%増

金融収益

20,320

26,182

5,862

28.8%増

売上収益

960

253

△708

73.7%減

その他の営業収益

4,961

4,823

△138

2.8%減

営業収益

55,841

66,796

10,956

19.6%増

その他の収益

1,390

16,860

15,470

持分法による投資利益

473

473

収益合計

57,567

84,973

27,406

47.6%増

金融費用

7,184

8,056

871

12.1%増

売上原価

210

127

△83

39.6%減

販売費及び一般管理費

47,201

50,303

3,102

6.6%増

費用合計

56,601

59,736

3,135

5.5%増

税引前利益

966

25,237

24,271

法人所得税費用

215

8,074

7,859

継続事業からの当期利益(A)

751

17,162

16,412

非継続事業

 

 

 

 

非継続事業からの当期利益(B)

2,573

14,312

11,739

456.2%増

当期利益(A)+(B)

3,324

31,475

28,151

846.8%増

親会社の所有者に帰属する当期利益

3,392

31,293

27,901

822.5%増

 

・継続事業

  税引前利益は25,237百万円(前連結会計年度は966百万円)となり、継続事業からの当期利益は17,162百万円(前連結会計年度は751百万円)となりました。

・営業収益

  米国セグメントでの委託手数料の増加及び日本セグメントでのその他の受入手数料の増加などにより、受入手数料は27,159百万円(前連結会計年度比13.0%増)となりました。また、クリプトアセット事業セグメントで暗号資産の販売所取引の増加したことなどにより、トレーディング損益は8,380百万円(同50.5%増)となり、米国セグメントで受取利息が増加したことなどにより、金融収益は26,182百万円(同28.8%増)となりました。

 

・収益合計

  その他の収益が16,860百万円となっていますが、当連結会計年度にはドコモマネックスホールディングス株式会社の株式についての公正価値評価益が含まれております。持分法による投資利益は、主に日本セグメントにかかるものです。

 

・費用合計

  販売費及び一般管理費は、クリプトアセット事業セグメントで減少した一方、日本セグメント及び米国セグメントで増加した結果、50,303百万円(同6.6%増)となり、費用合計は59,736百万円(同5.5%増)となりました。

 

・非継続事業

  非継続事業からの当期利益は、当社における連結除外以前のマネックス証券株式会社にかかる利益となります。従って、前連結会計年度は年度通期12か月分の利益が含まれている一方、当連結会計年度は第3四半期までの9か月分の利益のみが含まれます。また、当連結会計年度にはドコモマネックスホールディングス株式会社の株式についての売却益が含まれております。

 

各セグメントの詳細は「セグメント別の状況」でご説明します。

 

 セグメント別の状況は以下のとおりです。

 (日本)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

1,027

2,771

1,744

169.9%増

 金融収益

3,310

2,352

△957

28.9%減

 その他の営業収益

4,032

4,506

474

11.8%増

 営業収益

8,368

9,629

1,261

15.1%増

 金融費用

3,092

2,392

△700

22.6%減

 販売費及び一般管理費

5,065

7,505

2,440

48.2%増

 その他の収益費用(純額)

1,909

16,524

14,615

765.5%増

 持分法による投資利益又は損失(△)

△42

505

547

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

2,078

16,760

14,683

706.6%増

 

  日本セグメントは、主にマネックスグループ株式会社とマネックス・アセットマネジメント株式会社で構成されています。なお、従来、マネックス証券株式会社は日本セグメントに含まれていましたが、当連結会計年度からの非継続事業への分類及びこれに伴う前連結会計年度の再表示の結果、日本セグメントにマネックス証券株式会社は含まれていません。

  当連結会計年度の日本経済は、通期で製造業は小幅に非製造業は大きく景況感が改善しました。好調な企業業績から最終利益を上方修正する企業が多く、とりわけ非製造業がインバウンド需要の拡大など恩恵を受けました。しかし製造業では当年度末にかけて自動車産業で工場の稼働停止などをうけ景況感は伸び悩みました。物価は、前年度からのコストプッシュのインフレが当年度前半では継続していましたが、当年度後半にかけてピークアウトし日本ではターゲットである2%台に落ち着きました。また、春闘では前年を上回る5%台の賃上げ率が発表されました。それらを経て2024年3月の日銀会合にて17年ぶりにマイナス金利解除とイールドカーブコントロールの撤廃が決定されました。一方でドル円は、通期で円安に推移しました。第3四半期には日米金利差の縮小期待が伺われ、一時140円台に推移するも、当年度末では151円台まで戻しています。株式市場は2024年2月にバブル期の最高値を約34年ぶりに更新し、勢いそのままに翌3月に初の4万円台をつけ、当年度末時点では40,369円となりました。

  こうした中、投資信託関連収益の増加及び仲介報酬手数料の増加などにより、受入手数料は2,771百万円(同169.9%増)となりました。また、金融収益は、為替変動の影響を受け2,352百万円(同28.9%減)となり、その他の営業収益は4,506百万円(同11.8%増)となりました。以上の結果、営業収益は9,629百万円(同15.1%増)となりました。

  金融費用は2,392百万円(同22.6%減)となり、金融収支は△40百万円(前連結会計年度は217百万円)となりました。

  販売費及び一般管理費は、M&Aに伴う専門家報酬の増加、ベースアップ等による人件費の増加、取引活況に伴う支払手数料の増加などの結果、7,505百万円(同48.2%増)となりました。

  その他の収益費用(純額)が16,524百万円の利益(同765.5%増)となっていますが、前連結会計年度には円安による為替差益等が含まれており、当連結会計年度にはドコモマネックスホールディングス株式会社の株式についての公正価値評価益が含まれております。

  持分法による投資利益は、主に2024年1月からのドコモマネックスホールディングス株式会社にかかるものです。

  以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は16,760百万円(同706.6%増)となりました。

 

 (米国)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

21,335

23,176

1,842

8.6%増

 金融収益

16,693

23,978

7,285

43.6%増

 売上収益

534

368

△166

31.0%減

 その他の営業収益

715

660

△56

7.8%減

 営業収益

39,276

48,182

8,905

22.7%増

 金融費用

4,309

6,241

1,931

44.8%増

 売上原価

464

321

△143

30.9%減

 販売費及び一般管理費

33,176

35,352

2,176

6.6%増

 その他の収益費用(純額)

△1,554

△595

959

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

△227

5,674

5,901

 

  米国セグメントは、主にTradeStation Securities, Inc.で構成されています。米国セグメントにおいてはアクティブトレーダー層を主要な顧客層としており、市場のボラティリティ(値動きの度合い)の上昇および稼働口座数増加にともなう取引量増加が収益に貢献する傾向にあります。また、顧客の預り金を運用することで金融収益を獲得していることから、金利が上昇すると収益に貢献する傾向にあります。

  当連結会計年度の米国経済は、好調な労働市場に支えられた旺盛な個人消費により堅調に推移しました。FRBは、インフレ抑制を目的として2022年3月より金融引き締めを実施してきましたが、インフレ鈍化の傾向を受け、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを最後に5会合連続で政策金利の据え置きを決定しました。政策金利見通しでは2024年の複数回の利下げが示唆されており、市場では金融引き締め局面が終了したとの見方が広がりました。一方、当連結会計年度後半には、米国消費者物価指数(CPI)や雇用統計など各種経済指標が市場予想を上回る結果が続き、好調な雇用情勢と根強いインフレを背景に早期利下げ観測が後退する展開となりました。こうした中、一時5.0%台まで到達した米長期金利は年末にかけて3.8%程度まで大幅に低下しましたが、早期利下げ観測の後退にしたがって再び上昇基調にあります。株式市場は、ソフトランディングと利下げ期待を背景に堅調に推移しました。特に生成AIの普及に脚光が集まるなど、大手ハイテク株が市場を牽引する相場となりました。前年度末時点で33,274ドルだったNYダウ平均は史上最高値を更新し、当年度末時点では39,807ドルとなりました。

  なお、米ドルの対円レート(期中平均)は前連結会計年度比で7.3%円安となったことから、米国セグメントの業績はその影響を受けています。

  このような環境の下、米国セグメントにおいては、当連結会計年度のDARTs(Daily Average Revenue Tradesの略称で、1営業日当たりの収益を伴う約定もしくは取引の件数)は208,610件(前連結会計年度比2.5%減)となりましたが、先物の取引量が増加した結果、委託手数料は米ドルベースで2.0%増加しました。また、株式及びオプションの取引量は減少したものの、不稼働口座手数料の改定もあり、その他の受入手数料は米ドルベースで0.1%増加しました。その結果、受入手数料は米ドルベースでは1.2%増加し、円換算後では23,176百万円(同8.6%増)となりました。また、金融収益は、金利上昇により米ドルベースでは33.9%増加し、円換算後では23,978百万円(同43.6%増)となりました。以上のことから、営業収益は米ドルベースで14.3%増加、円換算後で48,182百万円(同22.7%増)となり、過去最高を記録しました。

  金融費用は6,241百万円(同44.8%増)となり、金融収支は米ドルベースで33.5%の増加、円換算後では17,737百万円(同43.2%増)となりました。

  販売費及び一般管理費は、支払手数料が増加したものの、アクティブトレーダーにフォーカスする戦略への転換に伴い広告宣伝費が減少した結果、米ドルベースで0.7%減少し、円換算後では35,352百万円(同6.6%増)となりました。

  その他の収益費用(純額)は595百万円の損失(前連結会計年度は1,554百万円の損失)となっていますが、前連結会計年度には戦略転換に伴う一時費用1,551百万円が含まれています。

  以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は、5,674百万円(前連結会計年度は227百万円のセグメント損失)となり、過去最高を記録しました。

 

 (クリプトアセット事業)                              (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

1,055

729

△326

30.9%減

 トレーディング損益

5,567

8,380

2,813

50.5%増

 売上収益

962

248

△714

74.2%減

 営業収益

7,583

9,356

1,773

23.4%増

 金融費用

3

4

1

31.0%増

 売上原価

210

121

△89

42.5%減

 販売費及び一般管理費

8,090

6,758

△1,332

16.5%減

 その他の収益費用(純額)

△155

365

520

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

△876

2,838

3,714

 

  クリプトアセット事業セグメントは、主にコインチェック株式会社で構成されています。

  当連結会計年度の暗号資産市場は米国におけるビットコイン現物ETFの承認を受けて大きく上昇しました。2023年6月にブラックロックなどがビットコイン現物ETFを申請してからは、SECによる審査延期によって下落する場面もありましたが、各社で申請内容の改善が繰り返される中で期待買いが継続しました。2024年1月、ついに米国でビットコイン現物ETFが成立し、直後は事実売りが強まりましたが、現物ETFへの資金流入によってビットコインを中心に価格が高騰しました。株式市場においても米国における利下げ開始やソフトランディングへの期待で史上最高値の更新が続き、このようなリスクオンムードの中、ビットコインは1,000万円を上抜けて史上最高値を更新しました。イーサリアムも現物ETFや大型アップグレードへの期待で史上最高値を更新し、一部ではミームコインと呼ばれるアルトコインの投機的な売買も活発になりました。

  このような環境の下、コインチェック株式会社においては、当連結会計年度における取引所暗号資産売買代金は2兆9,786億円となり、前連結会計年度比で12.9%増加しました。販売所暗号資産売買代金は2,346億円となり、前連結会計年度比で49.3%増加しました。

  こうした中、前連結会計年度にはIEOの収益が含まれているため、受入手数料が729百万円(前連結会計年度比30.9%減)と減少したものの、ビットコイン及びアルトコインの販売所取引が増加したことによりトレーディング損益は8,380百万円(同50.5%増)となりました。一方、NFTの販売収益の減少により売上収益は248百万円(同74.2%減)となりました。以上のことから、営業収益は9,356百万円(同23.4%増)となりました。

  販売費及び一般管理費は、広告宣伝費及び専門家報酬が減少したことにより6,758百万円(同16.5%減)となりました。

  以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は2,838百万円(前連結会計年度は876百万円のセグメント損失)となりました。

 

 

 

 (アジア・パシフィック)                             (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

630

493

△138

21.8%減

 トレーディング損益

△0

△0

0

 金融収益

212

400

188

88.3%増

 その他の営業収益

261

188

△73

28.1%減

 営業収益

1,103

1,080

△23

2.1%減

 金融費用

50

141

91

182.7%増

 販売費及び一般管理費

1,205

1,057

△148

12.3%減

 その他の収益費用(純額)

△45

31

75

 持分法による投資利益又は損失(△)

38

△4

△42

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

△158

△91

67

 

  アジア・パシフィックセグメントは、主に香港拠点のMonex Boom Securities(H.K.) Limited(以下「マネックスBoom証券」)で構成されています。

  当連結会計年度の香港経済は、家計所得の上昇や政府支援策が下支えとなった個人消費主導で堅調な成長を示しております。中国本土及び世界各国からの観光客が回復したことによりサービス輸出も力強い回復を見せました。一方で株式市場は緊張が続く米中関係への懸念や中国経済への懸念から軟調に推移しましたが、年明け以降は中国経済指標の反転を受けて底打ちの兆しを示しております。ハンセン指数は前年度末時点の20,400ポイントから2024年1月に一時15,000ポイント割れとなったものの、当年度末時点では16,541ポイントとなりました。

  また、香港ドルの対円レート(期中平均)は前連結会計年度比で7.5%円安となったことから、アジア・パシフィックセグメントの業績はその影響を受けています。

  このような環境の下、委託手数料が減少したことにより、受入手数料が493百万円(前連結会計年度比21.8%減)となりました。また、銀行の実効金利が上昇したことから金融収益が400百万円(同88.3%増)となりました。その他の営業収益は188百万円(同28.1%減)となり、営業収益は1,080百万円(同2.1%減)となりました。

  販売費及び一般管理費は、人件費及び広告宣伝費が減少したことにより1,057百万円(同12.3%減)となりました。

  以上の結果、セグメント損失(税引前損失)は91百万円(前連結会計年度は158百万円のセグメント損失)となりました。

 

 (投資事業)                                    (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

増減率

 金融収益

705

287

△418

59.2%減

 営業収益

705

287

△418

59.2%減

 金融費用

397

183

△214

53.8%減

 販売費及び一般管理費

91

108

17

18.6%増

 その他の収益費用(純額)

4

45

41

 持分法による投資利益又は損失(△)

△5

△28

△23

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

216

13

△203

93.8%減

 

  投資事業セグメントは、主にマネックスベンチャーズ株式会社、MV1号投資事業有限責任組合、MV2号投資事業有限責任組合、東京ウェルネスインパクト投資事業有限責任組合で構成されています。

  当連結会計年度は、複数の保有銘柄の評価損益や売却損益により、金融収益が287百万円(前連結会計年度比59.2%減)となり、営業収益は287百万円(同59.2%減)となりました。

  金融費用は主にMV1号投資事業有限責任組合等の持分損益を計上したことから183百万円(同53.8%減)となりました。

  販売費及び一般管理費は、108百万円(同18.6%増)となりました。

  以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は13百万円(同93.8%減)となりました。

 

 ② 財政状態の状況

 (連結)                                 (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月末)

当連結会計年度

(2024年3月末)

増減

 資産合計

1,504,110

761,642

△742,467

 負債合計

1,403,355

628,519

△774,836

 資本合計

100,754

133,123

32,369

 親会社の所有者に帰属する持分

99,641

131,712

32,071

 

  当連結会計年度において、マネックス証券株式会社を連結子会社から除外したことに伴い、マネックス証券株式会社の事業に関わる資産及び負債が減少しました。

  資産合計は金銭の信託や信用取引資産などが減少した結果、761,642百万円(前連結会計年度比742,467百万円減)となりました。また、負債合計は預り金や受入保証金などが減少した結果、628,519百万円(同774,836百万円減)となりました。

  資本合計は配当金の支払などにより減少したものの、当期利益などにより増加した結果、133,123百万円(同32,369百万円増)となりました。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

 (連結)                                 (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

 営業活動によるキャッシュ・フロー

△30,977

8,055

39,032

 投資活動によるキャッシュ・フロー

△21,873

△86,353

△64,480

 財務活動によるキャッシュ・フロー

△34,156

△5,106

29,050

 現金及び現金同等物の期末残高

175,159

97,935

△77,224

 

  当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による収入8,055百万円(前連結会計年度は30,977百万円の支出)、投資活動による支出86,353百万円(同21,873百万円の支出)及び財務活動による支出5,106百万円(同34,156百万円の支出)でした。この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物は97,935百万円(前連結会計年度末比77,224百万円減)となりました。

 

  当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度における営業活動により取得した資金は、8,055百万円となりました。

  有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減により33,260百万円、短期差入保証金の増減により15,224百万円の資金を支出する一方、受入保証金及び預り金の増減により71,578百万円の資金を取得しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度における投資活動により使用した資金は、86,353百万円となりました。

  定期預金の払戻による収入により9,909百万円の資金を取得する一方、子会社売却による支出77,339百万円、定期預金の預入による支出により11,960百万円、無形資産の取得により5,836百万円の資金を使用しました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  当連結会計年度における財務活動により使用した資金は、5,106百万円となりました。

  長期借入債務の調達による収入により28,160百万円、社債発行による収入により7,788百万円の資金を取得する一方、長期借入債務の返済による支出20,361百万円、社債の償還による支出により8,500百万円、短期借入債務の収支により6,988百万円の資金を使用しました。

 

 

 ④ 生産、受注及び販売の実績

  金融商品取引業を営む会社を中心とする企業集団であるため、「生産、受注及び販売の実績」は該当する情報がないので記載していません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

  当社は、2024年1月より株式会社NTTドコモ及びマネックス証券株式会社との資本業務提携を開始し、従来の枠組みでは得難い大きな成長機会を掴むことができました。この提携により株式売却益188億円および持分法の適用に伴う公正価値評価益158億円(共に税金及び税効果考慮前)も計上しています。また、株式会社イオン銀行からマネックス証券株式会社への投資信託保有口座の移管も2024年1月に完了し、株式会社イオン銀行との金融商品仲介を通じた包括提携も始まりました。このようなパートナー企業との提携を通じて、顧客基盤と預かり資産を積み上げ、収益構造の強化に成功しました。

  米国セグメントでは、アクティブトレーダー層にフォーカスして顧客獲得を目指す戦略のもと、顧客の取引が堅調に推移する中、顧客預り金からの金利収益が大幅に増加し、営業収益及び当期利益がともに過去最高となりました。

  クリプトアセット事業セグメントでは、2023年末から暗号資産市場が回復し、取引量が前年を上回ったことで増収となりました。こうした中、固定費を削減し、市場環境に合わせて広告宣伝費を柔軟にコントロールした結果、早期黒字化を達成しました。

  このように、市場環境の回復と各グループ会社の事業戦略推進が奏功し、主要事業群が収益基盤を拡大した結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は313億円となりました。

 

 

 

 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 (キャッシュ・フローの状況)

  当社グループの事業活動における主な資金使途としては、有価証券担保貸付金に関するものの他、M&A及び事業投資等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、社債による直接金融、シンジケートローン及び銀行借入等による間接金融により資金を調達しております。

  なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

 (資本の財源)

 2024年3月末の財政状態計算書

 

資産                     7,616億円

 

負債                    6,285億円

 

 

主な資産は金融商品取引業及び暗号資産交換業に関連するもの    5,516億円

 

 

 

主な負債は金融商品取引業及び暗号資産交換業に関連するもの    5,963億円

 

 

 

 

 

その他                    164億円

 

 

 

現金及び現金同等物        979億円

 

その他                    322億円

 

 

 

資本                    1,331億円

 

固定的な資産(注)          957億円

 

(注)固定的な資産は、有形固定資産、無形資産、持分法投資、有価証券投資(公正価値ヒエラルキーがレベル3のものに限る)です。

 

  当連結会計年度末の資本合計は1,331億円であり、固定的な資産957億円を上回っています。差額については以下の原資とする予定です。

  1.証券子会社における自己資本の維持に関する規制への対応

  2.将来の事業投資に備える内部留保

  3.株主還元(配当金及び自己株式取得)

 

 (重要な資本的支出の予定)

  重要な資本的支出の予定は、証券子会社における設備投資であり、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

 

 (資金の流動性)

  当社グループでは、経営に必要な資金を大手金融機関をはじめとする複数の金融機関からの借入、インターバンク市場からの調達、また資本市場における社債の発行により調達し、一時的な余資は流動性の高い短期金融資産で運用しています。当社グループでは資金繰り状況及び見通しの把握を随時行っており、かつ、複数の金融機関との間で当座借越契約、コミットメントライン契約等を締結していることで、十分な流動性を確保しています。なお、債務の期日別の残高については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.金融リスク管理」に記載のとおりです。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループは、グローバルなオンライン金融機関グループとして事業展開を推進する中で、財務情報の国際的な比較可能性を向上させるため、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。

  当社グループの連結財務諸表を作成するにあたって、のれんの減損テストにおける使用価値の算定等重要な判断や見積りを行っていますが、これらの見積りは実際の結果と異なる場合があります。当社が採用した重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」、同「22.無形資産」に記載のとおりです。

 

 ④ その他

  当社の連結財務諸表において、子会社であるコインチェック株式会社の暗号資産販売所の収益は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」だけでなく、IFRS第9号「金融資産の分類と測定」も適用されると判断し、暗号資産の販売価額と購入価額の純額を収益として計上(以下「純額表示」という。)しています。しかし、2024 年 5月8日「当社連結子会社 Coincheck Group B.V.の Thunder Bridge Capital Partners IV, Inc.との De-SPAC による ナスダック上場の登録申請書類公表等に関するお知らせ」等でお知らせした通り、米国におけるナスダック上場の申請プロセスにおいて、登録申請書類の一部であるコインチェック株式会社の財務諸表においては同取引には IFRS第15号のみが適用され、結果として両者を総額で表示(以下「総額表示」という。)する必要があるとの結論に達しました。一方、当社の連結財務諸表においては、報告主体が異なることに加え、以下の理由により引き続き純額表示を継続する方針です。

  当社は、純額表示はIFRSに準拠していると考えており、また、これまで純額表示で連結財務諸表を提出してきたことを踏まえると、総額表示に変更することは、却って日本の資本市場参加者を混乱させる恐れがあると考えています。従って、日本の資本市場参加者の意思決定に資する情報の提供及び有価証券報告書の提出という目的においては、継続して純額表示を行うことにより、より有用な情報を提供することができると考えています。

  現行の会計方針は日本の会計基準(実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」)と整合的であり、日本において連結子会社で暗号資産交換業を営んでいる他のIFRS適用企業においても純額表示が採用されています。このため、当社は、日本の資本市場においては、純額表示を継続することが同業他社との財務情報の比較可能性を確保することにつながり、日本の資本市場における財務諸表利用者にとってより有用であると考えております。

  なお、仮に当社が、2023年3月期における連結財務諸表においてコインチェック株式会社の暗号資産販売所の収益と費用を総額で表示した場合、関連する収益は176,924百万円、費用は177,643百万円となり、総額表示によった場合、純額表示と比べて連結ベースで収益が169,340百万円、費用が169,340百万円多く計上されることになります。2024年3月期における連結財務諸表においてコインチェック株式会社の暗号資産販売所の収益と費用を総額で表示した場合の関連する収益、費用の金額及び純額表示と比べたときの連結ベースでの収益と費用の増加額は算定中です。但し、収益と費用を純額表示と総額表示のどちらによって表示した場合であっても、2023年3月期および2024年3月期の連結ベースの当期純利益および期末時点の純資産の金額に影響はありません。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)日本セグメントにおける契約

 当社は2023年10月4日付で、当社、当社の子会社であるマネックス証券株式会社(以下「マネックス証券」といいます。)及び株式会社NTTドコモ(以下「NTTドコモ」といいます。)の三社間で資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といいます。)を締結しました。本業務資本提携契約に基づき、2024年1月4日付で当社はマネックス証券の単独株式移転により設立された中間持株会社の株式をNTTドコモに一部譲渡し、中間持株会社はNTTドコモを割当先とする第三者割当増資を完了しました。これにより、中間持株会社に対する議決権所有割合は、当社が約51%、NTTドコモが約49%となりますが、実質支配力基準に基づきマネックス証券と中間持株会社はNTTドコモの連結子会社となり、当社においては持分法適用会社となりました。

 

(2)クリプトアセットセグメントにおける契約

 当社は、当社の連結子会社でコインチェック株式会社の持株会社となる予定のCoincheck Group B.V.と米国のNasdaq Global Marketに上場している特別買収目的会社(SPAC)であるThunder Bridge Capital Partners IV, Inc.(以下「THCP」)との合併(以下「本合併」)に関して2022年3月22日付で締結し、2023年5月31日付変更契約により変更されたBusiness Combination Agreementについて、THCP株主総会にて同社定款上の買収を実現するための期限である2024年7月2日を2025年1月2日迄半年延長すること等の議案(以下「延長議案」)が承認されることを条件に、本合併を実現する期限を2025年1月2日迄半年延長する等の変更契約を契約当事者間で締結しました

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。