第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、グループ経営理念を以下のとおりとし、グループの総合力を発揮するなか、お客さまや地域の課題解決に取り組むことで、地域の持続的な成長に貢献してまいります。

〔グループ経営理念〕

「グループ経営理念」は、株式会社十六銀行(以下「十六銀行」という。)の基本理念を受け継ぎ、十六フィナンシャルグループにおける基本的な精神として、全役職員の活動のよりどころとするものであり、「私たちの使命」、「私たちのめざす姿」、「私たちの価値観」で構成しております。また、これを実践していくための役職員の具体的な行動を「私たちの行動基軸」としております。

 


 

(2) 中長期的な経営戦略

当社グループは、2023年4月からグループ経営の羅針盤となる「長期ビジョン」(10年間)と、長期ビジョンの前半5か年を計画期間とする「第2次中期経営計画」をスタートさせております。

① 長期ビジョン「16Vision-10」(2023年4月~2033年3月)

10年後のなりたい姿である長期ビジョンのテーマは、「一歩先を行き、いつも地域の力になる」としております。140年超の歴史を有する十六銀行が培った、広く深い顧客基盤や日々集積する情報、張り巡らされた人的ネットワークを活用するとともに、事業領域の拡大等への環境完備を強みとして、常に一歩先を行き、いつも地域の力になる地域総合金融サービスグループを目指してまいります。

 


 

〔長期ビジョンで大切にする価値観〕

当社グループでは、長期ビジョンの実現に向け、「お客さま」や「役職員」への在り方につきまして、以下のとおり定めております。全役職員がこの価値観を大切にし、共有するなか、私たちが生まれ育ったこの地域で、キラリと輝く人や企業を育ててまいります。

 


 

② 第2次中期経営計画(2023年4月~2028年3月)

長期ビジョンの前半5か年を計画期間とする第2次中期経営計画を「1st stage」とし、10年後のなりたい姿からバックキャストで描いた「トランスフォーメーション戦略」「ヒューマンイノベーション戦略」「マーケットインアプローチ戦略」「地域プロデュース戦略」の4つの基本戦略を全社的な取組みとして推進していくことで長期ビジョンの実現を目指してまいります。

 


 

〔長期ビジョン実現に向けた変革〕

長期ビジョンを実現させるためには、従来からの既成概念に捉われず、新たな発想でトランスフォーメーションを巻き起こしていく必要があり、『C~E』のXを軸とする7つのトランスフォーメーションにより、サステナビリティを実現させてまいります。

 


 

 

(3) 目標とする経営指標

① 長期ビジョン:2023年4月~2033年3月(10年間)

当社は、長期ビジョンの実現に向けて、社会課題の解決と、企業としての持続的な成長や企業価値向上を両立していく方針であります。

付加価値の向上や効率化の推進により、預貸金や為替といったコアビジネスの真価を発揮しつつ、事業領域の拡大や新規事業への挑戦により、総合金融サービス機能をフル活用するなかで、成長分野での収益拡大を目指してまいります。


② 第2次中期経営計画:2023年4月~2028年3月(5年間)

長期ビジョンの前半5か年を計画期間とする第2次中期経営計画におきましては、「総合金融サービスグループ」として、グループシナジーを最大限に発揮するなか、収益性・効率性・健全性の向上をはかり、着実な利益成長と強固な財務基盤を目指してまいります。


③ 第2次中期経営計画の達成状況

第2次中期経営計画の初年度である2023年度におきましては、連結当期純利益について、2027年度の200億円以上の目標に対し193億円、連結ROEについて、5%以上の目標に対し4.62%、連結修正OHRについて、50%台の目標に対し60.20%、連結自己資本比率について、11%以上の目標に対して10.81%の実績となりました。

4つの基本戦略のもと、グループの収益性・効率性・健全性は向上しており、第2次中期経営計画は順調に進捗しております。

<計数目標2027年度>

項 目

目 標

2023年度実績

連結当期純利益

200億円以上

193億円

連結ROE

5%以上

4.62%

連結修正OHR

50%台

60.20%

連結自己資本比率

11%以上

10.81%

 

 

 

(4) 対処すべき課題

雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されるものの、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが国内景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

さらには、地域経済は、人口減少や超高齢社会の進展と産業構造の変化や事業承継・後継者問題を背景とする企業数の減少により、将来的な市場規模の縮小が懸念されております。

こうした環境のもとで、当社グループがこれからも地域にあり続け、地域とともに成長していくためには、当社グループが地域とひとつになり、主体的に貢献する意欲と姿勢をもって行動することが求められています。従来からの資金繰り支援に加え、グループの経営資源を結集してコンサルティング機能を発揮するとともに、課題解決に向けた多様なソリューションを提供することで、地域の持続的な成長に貢献してまいります。

また、当社グループは、2023年4月から「第2次中期経営計画」をスタートさせております。

本計画にて掲げる4つの基本戦略をグループ一体となって実践していくことで、常に一歩先を行き、いつも地域の力になる地域総合金融サービスグループを目指してまいります。

〔4つの基本戦略〕

トランスフォーメーション戦略

『デジタルで変える』

トランスフォーメーションを起点としたサステナビリティの実現

ヒューマンイノベーション戦略

『人材づくり』

役職員一人ひとりが自立的に活躍できる組織環境の整備

マーケットインアプローチ戦略

『営業を変える』

ソリューション提案力の高度化と多様な課題解決に向けた営業深化

地域プロデュース戦略

『地域を変える』

一歩踏み込んだ地域への関わりと緊急時も含めた強靭な地域の創生

 

 

当社グループは、グループ経営理念に掲げる、「お客さま・地域の成長と豊かさの実現」を果たしつつ、企業価値の向上をはかることで、お客さま、株主のみなさまをはじめとする全てのステークホルダーの方々のご期待にお応えしてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1) サステナビリティ

当社グループでは、サステナビリティを巡る取組みについての基本的な方針として「サステナビリティ方針」を策定しています。

 

「サステナビリティ方針」

十六フィナンシャルグループは、サステナビリティへの取組みを重要な経営課題と認識しています。気候変動をはじめとするさまざまな社会課題の解決に本業である「地域総合金融サービス業」を通じて取り組み、グループ経営理念である「お客さま・地域の成長と豊かさの実現」に貢献するとともに、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

(※)サステナビリティの定義:お客さま・地域の成長と豊かさを実現できる社会を創り、将来の世代に引き継ぐこと

 

 

 

① ガバナンス

当社グループでは、「サステナビリティ方針」で公表しているとおり、サステナビリティへの取組みを重要な経営課題と認識しています。また、「十六フィナンシャルグループSDGs宣言」では、「地域経済の活性化」「地域社会の持続的発展」「環境保全と気候変動対策」「多様な人材の活躍推進」「ガバナンスの高度化」を重点課題(マテリアリティ)としています。

この課題に適切に対応するため、取締役社長を議長とし、グループ経営会議の構成員、統括部長、サステナビリティ統括室長等により構成される「サステナビリティ会議」を設置しています。同会議は、原則として3か月に1回以上開催し、気候変動を含むサステナビリティに関する取組方針の策定、目標の設定及び取組状況の確認といった重要事項について審議しており、その結果を経営戦略やリスク管理に反映しています。また、同会議における審議事項については、取締役会へ3か月に1回以上定期的に報告し、適切に監督される体制を整備しています。

さらに、サステナビリティ会議の下部組織として、「サステナブルビジネス」「環境活動」「D&I」「気候変動・TCFD」を所管する4つのワーキンググループを設置しています。各ワーキンググループは、担当常務役員を含む、グループ各社の組織横断的なメンバーで構成されており、原則として毎月1回以上開催し、それぞれが所管する事項について審議した結果を、サステナビリティ統括室に報告しています。

〔サステナビリティ経営体制〕

 


 

② 戦略

多様化・複雑化する環境・社会課題を解決し、「お客さま・地域の成長と豊かさの実現」に貢献することが、金融機関としての大きな役割であり、当社グループにとっての重要な戦略となります。

「十六フィナンシャルグループSDGs宣言」では、当社グループの経営理念、事業内容、地域特性等を考慮し、5つの重点課題(マテリアリティ)を設定しています。また、これらの重点課題に取り組むため、ビジネス、マネジメントの両面から特に注力すべき取組施策を定め、当社グループ全体で取り組んでいます。

 


 

 

 

③ リスク管理

当社グループは、サステナビリティ関連の機会とリスクを、ビジネス、環境、D&Iなどの観点から認識し、サステナビリティ会議にて審議しています。サステナビリティ関連のリスクを低減しつつ、ビジネス機会を創出することで、当社グループの企業価値向上に努めています。

また、当社グループでは、経営に重大な影響をもたらす可能性があるリスクをトップリスクと位置付けています。トップリスクについては、蓋然性及び影響度の観点から、今後約1年以内に事業戦略に支障をきたし収益力を低下させるなど、財政状態、経営成績に重大な影響をもたらす可能性があるリスク事象を、取締役会にて選定しています。2024年3月の取締役会にて10のトップリスクを選定しており、その1つを「気候変動に関するリスク」としています。気候変動リスクの管理については、「(2) 気候変動対応(TCFD提言に基づく開示) ③リスク管理」において後述します。

 

④ 指標と目標

当社グループは、サステナビリティへの取組みを一層強化していくために、5つの重点課題(マテリアリティ)に対して、10項目の「サステナビリティKPI」を設定しています。「サステナビリティKPI」の進捗状況については、サステナビリティ会議にてモニタリングし、その結果を取組みに反映しています。

 


 

 

(2) 気候変動対応(TCFD提言に基づく開示)

気候変動に伴う自然災害や異常気象は経済活動に様々な影響を及ぼし、取引先が実施する気候変動対策は取引先の企業価値を左右する重要な要素となるとともに、その対応次第では当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたなか、当社グループはTCFD提言に賛同を表明し、同提言が開示を推奨する枠組みに基づく情報開示に積極的に取り組んでいます。

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

① ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1) サステナビリティ ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

(気候変動に伴う機会とリスク)

当社グループでは「短期」「中期」「長期」の時間軸を設定し、気候変動に伴うリスクと機会を分析しています。シナリオ分析結果等を活用し、脱炭素社会に向かうお客さまをサポートする能動的な対話(エンゲージメント)の実施や、サステナブルファイナンス、トランジションファイナンス等の金融支援の強化により、事業機会の創出やリスク低減につなげていきます。

 

評価項目

主な機会やリスク

時間軸

 

製品・サービス

お客さまの脱炭素社会への移行を支援する投融資やコンサルティング提供等、ビジネス機会の増加

・災害対策のための公共事業やお客さまの設備資金需要の増加

短期~長期

 

中期~長期

資源の効率性

・省資源、省エネルギー化、新技術の活用による事業コストの低下

短期~長期

エネルギー源

レジリエンス

・地域のレジリエンス強化に向けた、防災・減災に関する地公体等との協力体制構築の増加

・気候変動に対する適切な取組みと開示による企業価値の向上

短期~長期

 

短期~長期

 

 

物理的

リスク

急性

リスク

・異常気象の増加・深刻化に伴うお客さまの業績悪化、担保価値の毀損による貸出資産価値の低下

・当社グループ拠点や役職員の被災に伴う業務の中断

短期~長期

 

短期~長期

慢性

リスク

・降水や気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇等に伴うお客さまの業績悪化、担保価値の毀損による貸出資産価値の低下

中期~長期

移行

リスク

政策・法律

・気候変動に関する政策、規制強化などに伴うお客さまの業績悪化による貸出資産価値の低下

中期~長期

技術

・低炭素技術への投資の失敗、移行コストなどに伴うお客さまの業績悪化による貸出資産価値の低下

中期~長期

市場

・消費者行動の変化、原材料コストの上昇などに伴うお客さまの業績悪化による貸出資産価値の低下

中期~長期

評判

・気候変動に対する適切な取組みや開示が他社比劣後することによる企業価値の低下

短期~長期

 

※ 「短期」:5年程度、「中期」:10年程度、「長期」:30年程度

 

 

(気候変動に伴うビジネス機会への対応)

脱炭素社会への移行に伴い、お客さまの資金需要の拡大や事業再編、新たな金融商品・サービスの需要増加が見込まれ、当社グループにとってはビジネス機会が増えています。当社グループは、金融・非金融機能を活用した様々なファイナンスやソリューションの提供に積極的に取り組み、お客さまの課題解決に努めます。

 

◇環境課題解決へのファイナンス

お客さまの脱炭素経営や環境配慮への取組みに向けた資金調達に対応するため、ファイナンス商品のラインナップを充実させて、提供しています。

 

 <グリーンローン・グリーン私募債>

再生可能エネルギー発電設備の導入や省エネ性能の高い機器への切替えなど、資金使途を環境課題の解決に資する資金に限定した融資商品です。外部機関からセカンドオピニオンを取得するスキームにより、社会や利害関係者に向けて、自社の環境への取組姿勢を発信することができます。

 <サステナビリティ・リンク・ローン>

SDGs・ESGに関する事業挑戦目標であるサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、その達成度合いに応じて金利などの貸出条件を優遇する融資商品です。パリ協定が求める水準と整合する温室効果ガス排出量削減目標の設定などにより、お客さまの脱炭素経営への取組みを支援します。

 <ポジティブインパクトファイナンス>

企業活動が、環境・社会・経済のいずれかの側面に与える影響を包括的に分析・評価し、ポジティブなインパクトの創出とネガティブなインパクトの低減に資するKPIを設定する融資商品です。KPI達成状況のモニタリングを通じて、お客さまの取組みを継続的に支援します。

 

 

◇地域企業の脱炭素化支援

お客さまの温室効果ガス排出量の可視化・削減目標の設定についてコンサルティングを実施し、カーボンマネジメントを支援しています。

2021年8月のサービス開始以降、217社に脱炭素コンサルティングを提供しています。また、お客さまのSBT認定(中小企業版)支援にも取り組んでおり、当社グループのサポートにより、これまでに154社が認定を受けています。

 

取扱実績

2021年度

2022年度

2023年度

合計

脱炭素コンサルティング

47件

91件

79件

217件

SBT認定支援

2件

43件

109件

154件

 

 


さらに、脱炭素経営移行計画の作成支援や排出量算定のためのシステム環境の提供など、お客さまの脱炭素経営実現に向けた継続的なサポート体制を構築しています。

 

 

(気候変動に伴うリスクの事例)

当社グループは、気候変動リスクを4つのカテゴリーに整理しています。気候変動から生じる物理的リスク及び移行リスクについては、以下のような事例が想定されます。

リスクカテゴリー

定義

物理的リスクの

事例

 

移行リスクの

事例

 

時間軸

時間軸

信用リスク

お客さまの財務状況の悪化等により、オフ・バランス資産を含めた資産の価値が減少ないし消失し損失を被るリスク

異常気象の増加・深刻化に伴うお客さまの業績悪化、担保価値の毀損による貸出資産価値の低下

短期~長期

気候変動に関する規制強化、低炭素技術への投資失敗、消費者行動の変化などに伴うお客さまの業績悪化による貸出資産価値の低下

中期~長期

市場リスク

金利、為替及び株式等の様々な市場のリスク・ファクターの変動により、資産及び負債(オフ・バランスを含む)の価値が変動し損失を被るリスク並びに資産及び負債から生み出される収益が変動し損失を被るリスク

異常気象の増加・深刻化に伴う投資先の業績悪化による保有有価証券価格の下落

短期~長期

気候変動に関する規制強化、低炭素技術への投資失敗、消費者行動の変化などに伴う投資先の業績悪化による保有有価証券価格の下落

短期~長期

流動性リスク

運用と調達の期間のミスマッチや予期せぬ資金の流出により、必要な資金確保が困難になる、または通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスク、市場の混乱等により市場において取引ができなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク

異常気象で被災したお客さまの資金需要発生による預金流出

短期~長期

気候変動リスクへの対応の遅れに伴う当社グループの信用悪化による資金調達環境悪化及び預金流出

短期~長期

オペレーショナル
・リスク

業務の過程、役職員等の活動もしくはシステムが不適切であること、または外生的な事象により損失を被るリスク

当社グループ拠点や役職員の被災に伴う業務の中断

短期~長期

気候変動への不適切な対応等に伴う罰金、訴訟による損失

短期~長期

 

 

 

(シナリオ分析)

気候変動に関するリスクが当社グループに及ぼす影響を把握するため、「物理的リスク」「移行リスク」についてシナリオ分析を実施しています。

◇物理的リスク

雨が多い日本では、毎年大雨による河川の氾濫などにより、水害が発生しています。また、近年は、局地的に短時間で激しい雨が降るゲリラ豪雨が増加傾向にあり、当社グループの営業エリアにおいても大きな被害が発生しています。

物理的リスクでは、気候変動による大規模洪水の発生頻度の上昇を想定し、「RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)」を前提に、岐阜県・愛知県内において、気候変動に起因する大規模水害が発生した場合の与信関係費用への影響を試算したところ、約65億円の増加が見込まれるという結果となりました。

◇移行リスク

与信エクスポージャーが大きいセクターやTCFD提言が定義する炭素関連セクター等を対象に定性的な分析を行った結果、当社グループにおいて移行リスクの影響が大きいセクターとして「電力セクター」「自動車セクター」を選定しました。

移行リスクでは、「RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ)」、「NZEシナリオ(1.5℃シナリオ)」を前提に、炭素税の導入など脱炭素社会への移行に伴う費用増加や売上高減少、市場の将来動向などを勘案のうえ、与信関係費用への影響を試算したところ、約30億円の増加が見込まれるという結果となりました。

 

物理的リスク

移行リスク

シナリオ

IPCC/RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)

IPCC/RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ)

IEA/NZEシナリオ(1.5℃シナリオ)

リスク事象

大規模水害

脱炭素社会への移行

分析対象

岐阜県・愛知県内の貸出先

岐阜県・愛知県内の不動産(建物)担保

(保証付住宅ローンは除く)

電力セクター

自動車セクター

分析内容

お客さまの事業停止・停滞に伴う業績悪化

当社グループの不動産(建物)担保の毀損

お客さまの費用増加や売上高減少に伴う業績悪化

分析期間

2050年まで

2050年まで

分析結果

与信関係費用増加額 最大約65億円

与信関係費用増加額 累計約30億円

 

※ IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) : 気候変動に関する政府間パネル

※ IEA (International Energy Agency) : 国際エネルギー機関

 

分析結果は、一定の前提条件のもとに試算しています。今回の分析範囲においては、当社グループの財務への影響は限定的なものとなりましたが、引き続きシナリオ分析の高度化に努めていきます。

 

(炭素関連資産)

2024年3月末の十六銀行の貸出残高に占める炭素関連資産の割合は23.0%です。

※貸出残高=貸出金、外国為替、支払承諾等の合計

 

③ リスク管理

(気候変動リスクの特定・評価プロセス)

当社グループでは、経営に重大な影響をもたらす可能性があるリスクをトップリスクと位置付けています。トップリスクについては、蓋然性及び影響度の観点から、今後約1年以内に事業戦略に支障をきたし収益力を低下させるなど、財政状態、経営成績に重大な影響をもたらす可能性があるリスクを、取締役会にて選定しています。2024年3月の取締役会にて10のトップリスクを選定しており、その1つを「気候変動に関するリスク」としています。異常気象・自然災害の増加や、気候変動対策における国際的機運の高まりをふまえて選定したものであり、気候変動・脱炭素対応への遅れ等による貸出先の業績悪化やビジネスモデルの陳腐化をリスクシナリオとした予兆管理やリスクコントロール策を講じています。

 

(気候変動リスクの管理プロセス)

当社グループでは、統合的リスク管理の枠組みを整備しており、グループ全体の金融リスクを「信用リスク」、「市場リスク」、「流動性リスク」、「オペレーショナル・リスク」に分類のうえ、管理しています。気候変動リスクについては、金融リスクのリスクドライバーであるとの考えのもと、信用リスクやオペレーショナル・リスクなどのリスク管理の枠組みで管理しています。

また、収益、リスク、資本を有機的に結合し、一体管理を通じて企業価値の向上を目指す観点から、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を導入しています。気候変動リスクについては、リスクアペタイト方針に取組みの深化やエンゲージメントを促進する旨を定め、適切な管理に努めています。

 

(投融資方針の策定)

当社グループでは、「持続可能な社会の形成に向けた投融資方針」を定めています。

◇基本方針

十六フィナンシャルグループ(当社及び連結子会社により構成される企業グループをいう。)は、環境・社会的課題解決に向けた取組みを、投融資業務を通じて積極的に支援することにより、お客さまの中長期的な企業価値向上や持続的成長に寄与するよう努めます。

一方、環境・社会に対する重大なリスクまたは負の影響を与える可能性のある投融資については、慎重に判断することで、その影響を低減・回避するよう努めます。

 

 

◇セクター横断的に禁止する投融資

児童労働や強制労働、人身売買等の人権侵害への直接的または間接的な関与が認められる企業に対する投融資等は行いません。

 

 

◇特定セクターに対する方針

石炭火力

発電

石炭火力発電は、他の発電方式と比べ温室効果ガスの排出量や有害物質の排出量が多いといわれており、気候変動や大気汚染等、環境に重大な負の影響を及ぼす可能性があります。

石炭火力発電所の新設及び既存発電設備の拡張を資金使途とする投融資等は行いません。ただし、災害時対応や日本政府のエネルギー政策に沿った案件等を例外的に検討する場合は、慎重に対応します。

非人道的兵器製造

クラスター弾、対人地雷、生物・化学兵器の非人道性を踏まえ、資金使途にかかわらず、こうした兵器を製造する企業に対する投融資等は行いません。

パーム油農園開発

パーム油が、日常生活に欠かせない製品に使用されている原料である一方で、パーム油農園の開発において、気候変動や地域住民・社会、生態系へ負の影響や、違法伐採や児童労働などの人権侵害が行われている可能性があります。

パーム油農園開発に対する投融資等については、お客さまが行う環境・社会配慮に向けた対応状況等を確認し、地域経済や環境への影響を考慮したうえで慎重に対応します。

森林伐採

大規模な森林破壊は気候変動や地域住民・社会、生態系へ重大な負の影響を及ぼす可能性があります。

大規模な森林伐採や違法な森林伐採、焼却が行われている事業に対して投融資等を行いません。また、森林伐採を伴う資金使途に対する投融資等については、地域経済や環境への影響を考慮したうえで慎重に対応します。

 

 

④ 指標と目標

(CO2排出量実績)

当社グループでは、自社のCO2排出量(Scope1,2)に加え、サプライチェーンにおける排出量(Scope3)についても算定しています。

 

2023年度 CO2排出量実績(速報値)

算定項目

CO2排出量(t-CO2)

Scope1

直接排出

1,351

Scope2

間接排出

6,153

Scope1,2の合計

 

7,504

Scope3

カテゴリ1

購入した製品・サービス

14,761

カテゴリ2

資本財

7,199

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

1,468

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

1,857

カテゴリ5

事業活動から出る廃棄物

50

カテゴリ6

出張

236

カテゴリ7

雇用者の通勤

2,940

カテゴリ13

リース資産(下流)

428

カテゴリ15

投資(上場株式・社債)

353,201

投資(事業性融資)

3,153,964

Scope3の合計

 

3,536,104

 

 

 

(当社グループのCO2排出量の削減目標と実績推移)

当社グループのエネルギー使用に伴って発生するCO2排出量(Scope1,2)について、以下の削減目標を設定し、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいきます。

目標

2030年度までにカーボンニュートラルを達成します。

 

 

CO2排出量(Scope1,2)

 


2023年度のCO2排出量は、2013年度比42.7%の削減となりました。店舗照明のLED化や高性能な空調設備への更新などを進めたことにより、電気使用量を前期比3.5%削減しました。また、十六銀行本店ビルに加え、新たに十六銀行電算センター・事務センタービルにもCO2フリー電気を導入しており、再エネ比率の向上にも努めています。一方で、電気の排出係数(電力会社が公表する使用電力量1KWhあたりのCO2排出量を示す数値)が増加した影響により、CO2排出量は前期比微減にとどまりました。引き続き、CO2フリー電気の導入拡大や環境配慮型店舗の導入、営業車両のHV・EV化等を検討のうえ、CO2排出量削減に向けて取り組んでまいります。

なお、2021年度及び2022年度の実績については、数値の信頼性を確保するため、独立した第三者の保証を取得しています。

 

(投融資先のCO2排出量(Scope3 カテゴリ15)の算定)

金融機関のCO2排出量においては、投融資を通じた間接的な排出(Scope3 カテゴリ15)が大きな割合を占めるため、この算定、モニタリング、削減への取組みを進めることが重要となります。当社グループでは、PCAFスタンダードの算定手法を活用し、保有有価証券(国内上場株式・社債)及び事業性融資(国内法人向け融資)を対象としてCO2排出量を算定しています。

投融資先のCO2排出量(Scope3 カテゴリ15)

セクター

 CO2排出量(t-CO2)

上場株式・社債

事業性融資

石油・ガス

2,661

463,246

電力・ユーティリティ

231,236

115,910

空運

96

33,287

海運

1,682

20,507

陸運

19,335

190,947

自動車

8,729

25,626

金属・鉱業

8,511

258,512

化学

5,967

99,844

建築資材・資本財

36,448

456,872

不動産管理・開発

330

4,629

飲料・食品

6,277

856,882

農業

0

22,893

製紙・林業

459

76,386

その他

31,470

528,423

対象アセット合計

353,201

3,153,964

合計

3,507,165

 

対象アセット

上場株式・社債

事業性融資(国内法人向け融資)

*財務データ不足先は除く

CO2排出量の

算定方法

CO2排出量=Σ(各投融資先の排出量×当社グループの投融資の寄与度)

各投融資先の排出量は企業開示データ等のScope1,2を使用。データが取得できない場合は、PCAFデータベースから引用した売上高あたりの先進国・セクター別の排出係数を用いて推計。

寄与度=当社グループの投融資残高/投融資先の資金調達総額

基準日

投融資残高

2024年3月末時点

投融資先の財務データ・排出量データ

2024年3月末時点で当社グループが保有する最新の決算期データ

データ

クオリティ

スコア

1.5

3.6

カバー率

90.1%

(算定先の上場株式・社債/上場株式・社債の合計)

98.0%

(算定先の融資残高/融資残高の合計)

 

 

今後、CO2排出量算定範囲の拡大やデータクオリティスコアの向上に向けて、取り組んでまいります。

また、今回の算定結果については、国際的な基準の明確化や推計の高度化等により、今後大きく変化する可能性があります。

 

(サステナブルファイナンス実行額目標)

当社グループでは、お客さまの環境課題の解決に向けた取組みを本業を通じて支援し、脱炭素社会の実現に貢献するため、サステナブルファイナンスの実行額について以下の目標を設定しています。

 

 2030年度目標額(9年間累積)

2023年度までの実行額

進捗率

サステナブルファイナンス実行額

2兆円

4,594億円

22.9%

 

うち環境分野

8,000億円

1,704億円

21.3%

 

※サステナブルファイナンス:持続可能な社会の実現に資するSDGs・ESGへの取組みに向けた投融資等

※環境分野:環境への負荷を軽減する取組みに向けた投融資等

 

(3) 人的資本

① 戦略

(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

当社グループは、グループ経営理念において、私たちの価値観(value)のひとつとして「多様性と受容(Diversity&Inclusion)」を掲げております。これを受け、2023年度から2027年度を計画期間とする第2次中期経営計画では「ヒューマンイノベーション戦略」を掲げ、以下の方針のもと、人材の価値を最大限に引き出すとともに、役職員一人ひとりが自律的に活躍できる組織環境を整備しております。

◇人材育成方針

当社グループでは、以下の考え方のもと、お客さまや地域の成長と豊かさ、サステナビリティの実現のため、能力を最大限に発揮し、お客さまとの信頼関係を構築でき、グループの各種戦略を積極的にチャレンジできる人材の育成に努めてまいります。

 


 

 

◇社内環境整備方針

当社グループでは、グループ経営で最も重要な人材の育成を中心に、役職員のモチベーションアップやスキル向上に資する以下の取組みを実行し、役職員一人ひとりが自立的に活躍できる組織環境を整備してまいります。

 


 

〔経営戦略と人事戦略の融合〕

金利のある世界が到来するなど取り巻く環境が変化するなか、ミドルマネジメント層のリーダーシップとマネジメントを強化するために、2024年2月より「リーダーシップ研究会」を開催しております(2024年2月から5月にかけて全6回開催。2023年度中は4回開催。)。対象者を、支店長、本部マネージャーなどのミドルマネージャー約210名とし、経営陣による講話やグループワーク、チームごとのプレゼンテーションを通じて、リーダーとして与えられた環境のなかでパーパスや長期ビジョンにかなった「自身のリーダーシップ」を発揮できる自律型人材の育成と、成長マインドセットに基づく「ミドルアップダウン経営」の機能強化を目指しております。

また、第2次中期経営計画において「トランスフォーメーション戦略」を掲げるなか、IT・DX人材の育成をはかるため「自己啓発資格取得奨励金制度」の対象資格に各種IT・デジタル関連資格を加えるなど、社員の学びを支援しており、2023年度末時点のIT・DX人材は175名となりました。

さらに、2023年度よりエキスパート制度を導入し、44名の応募がありました。エキスパートに任命した社員は、本人の同意なく他部署への異動を行わず、専門性を重視した評価を行うことで、経営戦略の実現を担う重要ポスト人材の育成をはかっております。

〔チャレンジングな組織風土の醸成〕

2023年4月に十六銀行に籍を置く全社員が、持株会社である当社に転籍し、当社を起点として連結子会社への人的リソースの最適配分や、社員の個性を活かした配置を進めております。

加えて、2023年4月からは、新たな人事制度をスタートしております。社員がマイビジョン(私のめざす姿)を表明し、グループ経営理念と重ね合わせるなかで、実現したいこと、チャレンジしたいことをコミットする「マイビジョン・コミット」や、社員の趣味、特技、資格、地域貢献活動、仕事から離れた特性などを評価する「ダイバーシティレビュー」など、新たな評価制度を通じて、社員の自立性、独自性、独立性に基づくサステナブルな成長を促すとともに、多様性を引き出し、社員一人ひとりが地域の生活者として豊かな人生を実現することを目指しております。

また、各種業務への社内公募を行うキャリアチャレンジ制度には、2023年度は延べ128名からの応募が寄せられました。今後も意欲的でチャレンジングな社員の成長を後押ししてまいります。

 

〔適切な人的資本投資〕

当社グループでは、役職員一人ひとりが10年後にめざす姿(マイビジョン)を定め、その一人ひとりの想いを実現するための人材育成として、階層別・業務別に各種研修を実施しております。階層別研修では、新入社員に対する入社後3か月間の研修のほか、「新任役席者研修」や「新任管理職研修」、新任支店長や新任マネージャーを対象とした「マネジメント研修」などを実施しております。また、業務別研修では、「融資業務研修」や「預り資産営業研修」に加え、「対話力やソリューション営業力の強化に向けた研修」などを実施しております。これらの研修を実施した結果、2023年度の研修費用は70,545千円、研修時間(延べ)は78,820時間となりました。

また、社員の積極的な自己啓発を支援するために「自己啓発資格取得奨励金制度」を設け、指定する資格・検定試験に合格した場合に奨励金を支給しております。2023年度の「自己啓発資格取得奨励金制度」の利用件数は481件、合計奨励金額は6,586千円となりました。なお、2024年4月には、高難易度の資格・検定試験について奨励金額を増額するとともに、新たに3つの資格を制度の対象に加えるなど、多様なチャレンジを後押ししております。

2023年4月にスタートした新人事制度では、年齢ではなく、能力と職務に応じた処遇を実現する給与体系を構築しました。また、2024年7月には、2年連続のベースアップを実施し、定期昇給と合わせ、平均5.2%の賃上げを実施いたします。特に若年層については、初任給を月額26万円に引き上げるなど、重点的に引き上げ、優秀な人材の確保に努めております。

〔人材・働き方の多様性確保〕

2023年4月より、育児短時間勤務と育児時間外勤務免除の期間を子が小学校3年生を修了するまでに拡充しました。また、育児短時間勤務の勤務時間を6時間または7時間とし、始業時刻から終業時刻の範囲内で柔軟に働くことを可能とした結果、2023年度の育児短時間勤務利用者は104名となりました。

2017年4月に導入した配偶者出産休暇(3日間の特別休暇)は、取得が社内で定着しており、2023年度の取得率は92.3%となりました。現在は男性も長期で育児に関する休暇や休業が取得できるよう推進しており、2023年度の男性の育児休業取得率(7日以上)は71.0%となりました。

また、仕事と生活の両立・有給休暇取得促進のため導入されている半日年次有給休暇の活用や、休暇が取得しやすい職場づくりを通して有給休暇取得率の向上に努めており、2023年度の取得率は54.7%となりました。

設備面では、職員全員に業務用スマートフォンを貸与し、場所を問わずコミュニケーションが取れる環境を整備しております。加えて、2023年9月からは、Google Workspaceを導入し、ファイルの共同編集、グループチャット、オンライン会議、カレンダー共有などをスムーズに行うことができる環境を整えるなど、効率的なデジタルコミュニケーションにより生産性を高めております。

当社グループでは、職員一人ひとりが女性・男性の区別なく多様な活躍ができるよう、リスキリングの機会充実に努めております。また、女性管理職の育成を目指す「次世代リーダー研修」のほか、「女性管理職向け融資業務研修」など、女性の活躍推進に向けた研修も継続的に実施しており、2023年度末時点の女性管理職比率は9.1%となりました。

 

 

② 指標と目標

(当該方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績)

 

 

指標の内容

目標

2023年度実績

内容

時期

経営戦略と人事戦略の融合

IT・DX人材の育成(注)1

300

2030年度末

175

エキスパート制度応募者数

44

チャレンジングな組織風土の醸成

キャリアチャレンジ制度応募者数(延べ)

128

適切な人的資本投資

研修費用

70,545千円

研修時間(延べ)

78,820時間

自己啓発資格取得奨励金制度の利用件数及び合計奨励金額

481件

6,586千円

人材・働き方の多様性確保

育児短時間勤務者数

104

配偶者出産休暇取得率

92.3

男性の育児休業取得率(7日以上)(注)2

100

2030年度末

71.0

有給休暇取得率

80

2030年度末

54.7

女性管理職比率

20

2030年度末

9.1

 

(注) 1 IT・DX人材とは、情報処理安全確保支援士や応用情報技術者試験、基本情報技術者試験などの上位デジタル資格・試験に合格した者及びIT・デジタル関連業務の経験が6か月以上ある者としております。

2 社内の育児目的休暇を含む育児休業等を7日以上取得した者の人数により算出しております。「第1 企業の概況」中、「5 従業員の状況」に記載の育児・介護休業法の規定に基づく「男性労働者の育児休業取得率」とは算出方法が異なるものであります。

3 各種施策の継続または現状以上の数値を目指すが目標を定量的に算定することが難しい項目については、目標を設定しておりません。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

(1) トップリスクの認識

当社グループでは、蓋然性及び影響度の観点から「今後約1年以内に、事業戦略に支障をきたし収益力を低下させるなど、財政状態、経営成績に重大な影響をもたらす可能性があるリスク事象」をトップリスクとして選定し、あらかじめ必要な対策を講じてリスクを制御するとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的に対応可能とする管理に努めています。

2024年3月の取締役会にて選定したトップリスクは以下のとおりです。

リスク事象

リスクシナリオ(例)

金利ある世界での競争激化

・貸出金・預金の獲得競争の激化

・預金の調達コスト上昇及び流動性リスクの増大

景気後退、金融市場混乱

・金利上昇、株価下落による有価証券評価損益の悪化

インフレ再燃、中国・米国不動産不況からの景気後退

政治・地政学リスク

・自国第一主義の台頭による世界の分断、米中対立による関税引上げ

・ロシア・ウクライナ戦争、中東情勢の緊迫化

・中台・朝鮮半島有事の勃発

気候変動に関するリスク

・脱炭素対応の遅れによる当社グループの企業価値低下

・異常気象に伴う事業停止・担保価値の低下

脱炭素化移行の遅れによる企業業績の悪化・与信関係費用増加

自然災害リスク

大規模な地震、風水害の発生による資産の毀損・業務継続困難

サイバー攻撃・DXの急激な進展

・サイバー攻撃による顧客からの信認低下

デジタル化の進展による他業界との競争激化

与信関係費用増大

インフレ再燃による原材料高、人手不足による企業業績の悪化

人的・コンプライアンスリスク

不適切な行為による当社グループの企業価値低下

反社会的勢力への対応及びマネー・ローンダリング対策の不備

・反社会的勢力との取引発生による信用失墜

マネー・ローンダリング対策不備、外為法令等違反による行政処分・信用失墜

システム障害

システム障害による顧客からの信認低下

 

当社グループの事業その他に関するリスクについて、上記トップリスクに係る分析を踏まえ、株主・投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、株主・投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項は、株主・投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(2) 外部環境等に関するリスク

自然災害の激甚化、深刻な感染症の流行やサイバー攻撃などの外的要因によるリスクへの対応としてそれぞれにリスク事案を想定した業務継続計画を策定し、重要な業務を維持すべき水準において提供し続けるために、外部環境の変化に合わせ計画内容の見直し及び初動対応訓練を適宜実施しておりますが、不測の事態が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があり、さらには社会的評価の低下を招く可能性があります。

業務継続計画で
想定する不測の事態

影響

大規模地震や台風等の

自然災害

・営業店等施設の損壊による業務停止、修復費用の発生

・役職員の罹災による就労困難

・株価・債券価格の下落

・取引先の倒産や延滞が増加 等

深刻な感染症の流行

・役職員の感染症罹患による就労困難

・株価・債券価格の下落

・取引先の倒産や延滞が増加 等

サイバー攻撃

・個人情報の流出による補償、信用失墜

・不正操作によるデータの改竄、資金流出

・システム障害による業務停止、それに付随した補償費用支払及び信用失墜

インターネットバンキングの不正利用による被害発生

フィッシングサイト、フィッシングメールによる被害発生 等

通信障害や外部委託先に起因するシステム運用に関する障害

・個人情報の流出による補償、信用失墜

・不正操作によるデータの改竄、資金流出

・システム障害による業務停止、それに付随した補償費用支払及び信用失墜 等

 

 

(3) 銀行業務固有のリスク

① 信用リスク

信用リスクとは、与信先の財務状況の悪化等により、資産の価値が減少ないし消失し、当社グループが損失を被るリスクをいいます。その主な内容及び対応は以下のとおりであります。

リスクの内容

対応

(イ)不良債権の増加

当社グループは、地方公共団体、一般事業先及び個人などに対して融資並びに保証業務を行っております。これら業務については、信用リスク管理を適切に行っておりますが、国内・海外の景気動向、当社グループの営業地域における景気動向、不動産市況、取引先の経営状況及び経済環境の変動等によっては、不良債権及び与信関係費用が増加する可能性があり、その結果、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

・統一的な尺度であるVaR(Value at Risk)※を用いて、その値をリスク量として月次で計測し、計測したリスク量が配賦資本の範囲内に収まるようリスク管理体制を整備し業務運営を行っております。

・信用格付と業種に基づき個社別の与信限度額を設定しております。

・業種別総与信額ガイドラインにより、相対的にリスクが高い業種について総与信額上限をガイドラインとして設定しております。

 

 

※VaR計測の前提

統計手法

モンテカルロ・シミュレーション法

信頼区間

99%

保有期間

1年

測定頻度

月次

 

 

(ロ)貸倒引当金の増加

当社グループは、自己査定基準に基づき貸出金等の資産査定を行い、債務者区分に応じて必要と認める額を貸倒引当金として計上しておりますが、経済状態全般の悪化により、設定した前提及び見積りの変更、担保価値の下落、またはその他の予期せぬ理由により貸倒引当金の積み増しを余儀なくされるおそれがあり、その結果、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループの経営理念、経営戦略・方針、内部管理態勢、融資方針やリスク管理等を踏まえ認識した信用リスクをより適確に反映するため、新たな見積り方法を適用した場合、貸倒引当金を積み増す可能性があります。

(ハ)貸出先の信用不安

当社グループは、取引先に債務不履行等が発生した際、法的な権利の実行によらず、私的整理による再建に経済合理性が認められると判断される場合には、取引先に対して債権放棄、または追加貸出などを行って支援を継続する場合もあり得ます。その結果、与信関係費用が増加し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ニ)担保価値の下落

当社グループは、与信の安全性を確保するために、取引先の不動産や有価証券に担保権を設定することがありますが、不動産市況の低迷や有価証券価格の下落等により、担保処分時において、当初の想定どおりに不動産もしくは有価証券を処分できない可能性があります。その結果、与信関係費用が増加し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ホ)特定の取引先等への貸出の集中

特定の取引先に与信が集中し、当該大口与信先の信用状況が悪化した場合には、与信関係費用が増加し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ヘ)特定業種への貸出の集中

業界動向の影響を受けることにより、当該業種に属する企業の財政状態が悪化した場合には、与信関係費用が増加し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ト)地域経済の動向からの影響

当社グループは岐阜県及び愛知県を主な営業基盤としています。そのため、地域経済が悪化した場合には、取引先の信用状況の悪化等により、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 市場リスク

市場リスクとは、金利、為替及び株式等の様々な市場のリスク・ファクターの変動により、資産及び負債の価値が変動し損失を被るリスク並びに資産及び負債から生み出される収益が変動し損失を被るリスクをいいます。その主な内容及び対応は以下のとおりであります。

リスクの内容

対応

(イ)預貸金等の金利変動リスク

預金や市場からの資金調達と貸出金等による資金運用に適用される金利は、取引の契約時点、あるいは契約後の予め定められた金利更改時点の約定期間別の市場金利を基準に決定されます。したがって、株式会社十六銀行(以下「十六銀行」という。)の資金調達・運用の期間毎の残高構成によっては、市場金利の変動要因が当社グループの収益にとってマイナスに作用する可能性があります。

・統一的な尺度であるVaR(Value at Risk)※を用いて、その値をリスク量として日次もしくは月次で計測し、計測したリスク量が配賦資本の範囲内に収まるよう有価証券の残高や損失額に限度額を設定しております。

・市場リスクを適切に管理するための組織体制を整備し、定期的なモニタリングを通じて業務運営を行っております。

 

※VaR計測の前提

統計手法

分散共分散法

信頼区間

99%

保有期間

金利変動
リスク

6か月

価格変動
リスク

10営業日または6か月

測定頻度

金利変動
リスク

月次

価格変動
リスク

日次

 

(ロ)有価証券の価格変動リスク

当社グループは、有価証券運用業務を行っており、金利、株価、為替の変動等により損失を被るリスクに晒されております。

リスク・シナリオ

影響

国内または海外の市場金利が上昇した場合

保有する国債をはじめとする債券ポートフォリオの価値が減少

株価が大幅に下落した場合

保有する株式ポートフォリオに減損または評価損が発生

為替が円高になった場合

外貨建資産が減価

 

上記いずれの場合も、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ハ)デリバティブ取引

十六銀行は取引先のニーズにお応えするほか、十六銀行の資産・負債の金利リスク等のヘッジ、または一定の限度額範囲で収益獲得を目的としたトレーディング取引等のため、デリバティブ取引を利用しております。ただし、相場の変動あるいは取引の相手方が倒産などにより契約通りに取引を履行できなくなった場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 流動性リスク

流動性リスクとは、資金の運用と調達に絡み正常な取引を履行できないリスクをいいます。その主な内容及び対応は以下のとおりであります。

リスクの内容

対応

(イ)資金繰りリスク

運用と調達の期間のミスマッチや予期せぬ資金の流出により、必要な資金確保が困難になる、または通常よりも著しく高い金利での資金調達や手持ち有価証券の売却による資金調達を余儀なくされることにより損失を被る可能性があります

・定期的に金融危機などを想定したシナリオをもとに流動性のストレステストを実施しております。

・資金の出し手に対し、定期的に資金調達枠を確認しております。

(ロ)市場流動性リスク

市場の混乱等により市場において取引ができなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされたりすることにより損失を被る可能性があります。

 

④ 自己資本に係るリスク
(イ) 自己資本比率規制

当社は、連結自己資本比率を「銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2006年金融庁告示第20号)に定められた国内基準である4%以上に維持しなければなりません。また、十六銀行は、連結自己資本比率及び単体自己資本比率を「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2006年金融庁告示第19号)に定められた国内基準である4%以上に維持しなければなりません。これらの自己資本比率が基準である4%を下回った場合には、金融庁長官から、業務の全部または一部の停止等を含む様々な命令を受けることとなります。

本項に記載した様々なリスク要因の不利益な展開に伴い自己資本が毀損した場合、自己資本比率の基準及び算定方法が変更された場合には、連結・単体の自己資本比率に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ロ) バーゼルⅢ最終化

バーゼル銀行監督委員会は2017年12月に「バーゼルⅢ:金融危機後の改革最終化」を公表いたしました。同文書には、信用リスク・アセットの計測方法の見直し、オペレーショナル・リスクの計測方法の見直し、資本フロアの導入等が含まれており、本邦では早期適用を希望する金融機関は、金融庁への届出により2023年3月末以降の適用が可能となります。当社は、内部モデルを採用しない国内基準銀行持株会社であり、2025年3月末から適用されますが、こうした自己資本比率規制の強化により、当社の自己資本比率が現行水準より低下する可能性があります。

(4) 業務運営に関するリスク

① オペレーショナル・リスク

オペレーショナル・リスクとは、業務の過程、役職員等の活動もしくはシステムが不適切であること、または外生的な事象(自然災害や外部からの不正等)により損失を被るリスクをいいます。その主な内容及び対応は以下のとおりであります。

リスクの内容

対応

(イ)事務リスク

当社グループの役職員等が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより、業務もしくは風評上に悪影響を及ぼす可能性があります。

・オペレーショナル・リスクを適切に管理するための組織体制及び諸規程を整備し、統制自己評価(CSA(Control Self Assessment))により、業務に潜在するリスクを評価し、リスクの高い業務を対象に改善検討を行っております。

・システムの安定稼動の維持に努めるとともに、コンピュータシステムの事故・故障等の発生、あるいはコンピュータシステムの不正使用やサイバー攻撃その他の不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等による異例事案が発生した場合に備えて、コンピュータシステム障害・異例時の対策に関する規程の整備やバックアップ体制の充実、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の活動等を実施しております。

 

CSIRTとは、コンピュータやネットワーク(特にインターネット)上で何らかの問題(主にセキュリティ上の問題)が起きていないかどうか監視すると共に、万が一問題が発生した場合にその原因解析や影響範囲の調査を行ったりする組織の総称をいいます。

 

 

・人材の育成や教育・研修活動を通じて法令等遵守意識の醸成に努めております。

・業務継続計画を策定し、初動対応訓練を適宜実施して備えております。

(ロ)システムリスク

当社グループは勘定系システムをはじめ、様々なコンピュータシステムに業務の多くの部分を依存しています。異例事案が生じた場合、その程度によっては、業務の停止及びそれに伴う損害賠償の負担、その他の損失や追加負担費用が発生する可能性、当社グループの信用や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス感染等のリスクに対処するための対策や、厳格化する関連規制への対応には、多額のコストを要することや当社グループの事業上の制約となる可能性があり、当社グループの業務の遂行や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ハ)法務リスク

当社グループの役職員等の業務上における顧客に対する過失等による義務違反、不適切なビジネス慣行及びマーケット慣行から生じる損失及び損害(和解、あっせん、調停並びに仲裁等により生ずる罰金、違約金及び損害賠償金等を含む。)が発生した場合には、業務の遂行や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ニ)人的リスク

当社グループにおける人事運営上の不公平及び不公正(報酬、手当または解雇等の問題)または差別的行為(セクシャルハラスメント等)から生じる損失及び損害が発生した場合には、業務の遂行や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ホ)有形資産リスク

当社グループの店舗、事務所、電算センター等の施設は、常に地震や台風等の災害その他の事象による損害を被るリスクに晒されております。災害その他の事象から生じる土地、建物及び設備等の有形資産の毀損及び損害が発生した場合には、業務の遂行や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ヘ)風評リスク

当社グループに関するネガティブな報道やインターネット等を通じた悪質な風評の流布が発生した場合には、これらが正確な事実に基づいたものか否かにかかわらず、当社グループの経営成績及び株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ト)外生的な事象によるリスク

「(2)外部環境等に関するリスク」をご参照下さい。

 

② 財務に関するリスク
(イ) 税効果会計

現時点の会計基準に基づき、将来実現すると見込まれる税務上の便益を繰延税金資産として計上しておりますが、繰延税金資産が会計上の判断または何らかの制約により減額された場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ロ) 固定資産の減損会計に関するリスク

固定資産の減損に係る会計基準または適用指針が変更された場合、あるいは保有する固定資産に損失が発生した場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ハ) 退職給付債務に関するリスク

退職給付債務及び退職給付費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件が変更された場合、または実際の年金資産の時価が下落した場合には、未積立退職給付債務が増加することにより、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ その他のリスク
(イ) 情報漏洩に係るリスク

当社グループは事業活動を遂行していくうえで、顧客情報を大量に保有しているため、情報管理に関する規程及び体制の整備、役職員等一人ひとりに対する教育の徹底をはかっておりますが、当社グループの役職員等が正確な事務を怠る、あるいは不正等を起こすことにより、外部への漏洩や紛失、改竄及び災害による消失等を招いた場合には、取引先からの損害賠償請求など直接的な損害や、風評上に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ロ) 外部委託に伴うリスク

当社グループは、外部委託先が委託業務の遂行に支障をきたす事態となった場合、顧客情報の漏洩等があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、外部委託する対象業務には銀行基幹システムにかかる運用・保守も含まれ、委託先のデータセンター等で何らかの障害が発生した場合には、銀行業務の運営に支障をきたし、その程度によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ハ) 金融犯罪に係るリスク

キャッシュカードの盗難や振り込め詐欺をはじめとする金融犯罪が多発している現状を踏まえ、当社グループは、セキュリティ強化をはかっております。しかしながら、金融犯罪の高度化等により、被害を受けた取引先への補償や、未然防止対策に係る費用が必要となる場合には、当社グループの経費負担が増大し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ニ) 重要な訴訟事件等の発生に係るリスク

現在特に記載すべき事項はありませんが、今後の事業活動の過程で訴訟等を提起される可能性があります。

(ホ) 格付低下のリスク

当社及び十六銀行は外部格付機関から格付を取得しておりますが、仮に格付が引き下げられた場合には、当社グループの資本及び資金調達における条件が悪化し、収益性の低下から経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(へ) 規制変更に関するリスク

当社グループは、現時点での規則(法律、規則、政策、実務慣行等)に従って業務を遂行しておりますが、将来におけるこれらの規制の新設・変更・廃止によって生じる事態が、業務の遂行、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ト) 持株会社の収益構造に関するリスク

当社は銀行持株会社であり、当社の収入の大部分は子会社である十六銀行から受領する配当金等に依存しております。一定の状況下では、様々な規制上または契約上の制限により、この金額が制限される場合があります。また、十六銀行が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当金等を支払えない等の状況が生じた場合には、当社は株主に対する配当の支払いができない可能性があります。

(5) その他の重要なリスク

① ビジネス戦略が奏功しないリスク

当社グループは、経営計画に基づく様々なビジネス戦略を実施しておりますが、各種施策は必ずしも奏功するとは限らず、以下のような要因が生じた場合など、当初想定した成果をもたらさない場合は、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

日本銀行の政策金利引き上げ等に伴う預金の調達コストの上昇により、貸出における利鞘が改善しないこと

・手数料収入が想定とかい離すること

・効率化等各種変革の効果が想定とかい離すること

・出資・資本提携等の効果が想定とかい離し、のれん等の無形固定資産の価値が毀損すること

② 競争に関するリスク

当社グループは岐阜県及び愛知県を主な営業基盤としていますが、当該営業基盤における他金融機関との競争に加え、金融制度の大幅な規制緩和等により、AIやブロックチェーン等のデジタル技術の進展をもとにした他業種からの金融業界への参入が相次いでおり、競争が一段と激化してきております。その結果、当社グループの競争力が相対的に低下し、業務の遂行及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 業務範囲の拡大に伴うリスク

当社グループは、地域金融機関を取り巻く環境の変化に対応するため、2021年10月1日に持株会社体制へ移行し、規制緩和に対応した新規事業への参入など、事業領域を拡大することで、経営成績の維持、向上に取り組んでおりますが、新たな事業領域におけるリスクが、想定を上回る、または想定していなかったものであった場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

〔財政状態及び経営成績の状況〕

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が法令上、5類感染症に移行して人流が回復したことなどから、社会経済活動の正常化が一層進みました。これにより、旅行や飲食などのサービス消費が回復し、インバウンド需要も増加したほか、半導体などの部材不足の影響が緩和されたことにより、関連産業の裾野が広い自動車の生産が増加するなど、企業業績は堅調に推移しました。一方、海外ではロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化などの地政学リスクが収まらず、米欧を中心とする世界的なインフレや円安の長期化などから、原材料価格や人件費の上昇など、企業活動における各種コストが高止まりしました。また、採用難による人手不足の深刻化や物価上昇による消費マインドの下押し懸念など、先行きが不透明な状況が続くなか、本年3月に日本銀行がマイナス金利政策の解除を決め、金融政策の正常化に踏み出すなど、金融環境も大きな転換点を迎えました。

当社グループの主要な営業基盤である岐阜・愛知両県におきましても、自動車の品質不正問題に伴い、一時的に下押し圧力を受けたものの、主要産業のひとつである輸送用機械を中心として、生産や輸出が持ち直しました。個人消費については、人流がコロナ禍前の水準に回復し、持ち直しの動きが続くなか、物価上昇に賃金上昇が追いつかず、節約志向も強まっています。

こうした状況のなか、当連結会計年度の連結業績は、次のとおりとなりました。

 

<財政状態>

当連結会計年度末の連結財政状態につきましては、総資産は前連結会計年度末比3,444億81百万円増加7兆5,350億38百万円となり、負債は前連結会計年度末比2,862億53百万円増加7兆842億48百万円となりました。また、純資産は前連結会計年度末比582億28百万円増加の4,507億90百万円となりました。

主要な勘定残高につきましては、預金等(譲渡性預金含む)は前連結会計年度末比1,217億54百万円増加6兆4,017億34百万円、貸出金は前連結会計年度末比1,429億67百万円増加4兆8,384億14百万円、有価証券は前連結会計年度末比88億23百万円増加1兆4,733億29百万円となりました。

 

<経営成績>

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

銀行業におきましては、経常収益は、資金運用収益及び株式等売却益が増加したことなどから、前連結会計年度比150億97百万円増加952億73百万円となりました。経常費用は、資金調達費用及びその他業務費用が増加したことなどから、前連結会計年度比148億45百万円増加687億44百万円となりました。この結果、セグメント利益(経常利益)は前連結会計年度比2億53百万円増加265億29百万円となりました。

リース業におきましては、経常収益は前連結会計年度比4億円増加273億48百万円、経常費用は前連結会計年度比3億67百万円増加268億88百万円となり、セグメント利益(経常利益)は前連結会計年度比33百万円増加4億60百万円となりました。

金融商品取引業、クレジットカード業等のその他におきましては、経常収益は前連結会計年度比9億34百万円増加153億6百万円、経常費用は前連結会計年度比10億68百万円増加90億19百万円となり、セグメント利益(経常利益)は前連結会計年度比1億33百万円減少62億87百万円となりました。

この結果、グループ全体での当連結会計年度の経常収益は前連結会計年度比161億50百万円増加1,288億35百万円、経常費用は前連結会計年度比155億5百万円増加1,009億27百万円となり、経常利益は前連結会計年度比6億46百万円増加279億8百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比6億88百万円増加193億18百万円となりました。

 

〔キャッシュ・フローの状況〕

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、預金の増加などにより1,567億68百万円の収入(前連結会計年度は1兆3,692億7百万円の支出)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却などにより706億57百万円の収入(前連結会計年度は81億84百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより65億43百万円の支出(前連結会計年度は59億21百万円の支出)となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、当連結会計年度中に2,208億90百万円増加9,682億68百万円となりました。

 

① 国内・国際業務部門別収支

資金運用収支は前連結会計年度比17億66百万円増加528億94百万円、役務取引等収支は前連結会計年度比1億56百万円減少185億91百万円、その他業務収支は前連結会計年度比93億49百万円減少△123億93百万円となりました。

種類

期別

国内業務部門

国際業務部門

相殺消去額

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

資金運用収支

前連結会計年度

48,295

2,832

51,128

当連結会計年度

49,143

3,750

52,894

うち資金運用収益

前連結会計年度

48,480

5,416

53,896

当連結会計年度

49,318

10,191

59,510

うち資金調達費用

前連結会計年度

184

2,584

2,768

当連結会計年度

175

6,441

6,616

信託報酬

前連結会計年度

0

0

当連結会計年度

3

3

役務取引等収支

前連結会計年度

18,416

330

18,747

当連結会計年度

18,220

371

18,591

うち役務取引等収益

前連結会計年度

23,821

499

24,321

当連結会計年度

24,198

528

24,727

うち役務取引等費用

前連結会計年度

5,404

169

5,573

当連結会計年度

5,978

157

6,135

その他業務収支

前連結会計年度

1,315

△4,360

△3,044

当連結会計年度

△787

△11,606

△12,393

うちその他業務収益

前連結会計年度

27,371

2,657

△178

29,851

当連結会計年度

28,214

2,088

30,303

うちその他業務費用

前連結会計年度

26,056

7,017

△178

32,895

当連結会計年度

29,001

13,694

42,696

 

(注) 1 「国内業務部門」とは、当社及び連結子会社の円建取引であります。

「国際業務部門」とは、連結子会社の外貨建取引(含むユーロ円建取引)であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

2 「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門との間における取引額等であります。

 

 

② 国内・国際業務部門別資金運用/調達の状況

資金運用勘定の平均残高は前連結会計年度比950億4百万円増加の6兆7,039億42百万円となり、資金運用利回りは前連結会計年度比0.07ポイント上昇の0.88%となりました。資金調達勘定の平均残高は前連結会計年度比3,988億74百万円減少の6兆9,688億22百万円となり、資金調達利回りは前連結会計年度比0.06ポイント上昇の0.09%となりました。

(イ) 国内業務部門

種類

期別

平均残高

利息

利回り

金額(百万円)

金額(百万円)

(%)

資金運用勘定

前連結会計年度

6,487,470

48,480

0.74

当連結会計年度

6,563,013

49,318

0.75

うち貸出金

前連結会計年度

4,556,488

37,760

0.82

当連結会計年度

4,707,343

38,244

0.81

うち商品有価証券

前連結会計年度

475

1

0.26

当連結会計年度

98

0

0.47

うち有価証券

前連結会計年度

1,208,830

9,112

0.75

当連結会計年度

1,237,537

10,218

0.82

うちコールローン及び
  買入手形

前連結会計年度

18,113

3

0.01

当連結会計年度

34,710

6

0.01

うち預け金

前連結会計年度

619,160

1,526

0.24

当連結会計年度

500,423

773

0.15

資金調達勘定

前連結会計年度

7,243,191

184

0.00

当連結会計年度

6,827,500

175

0.00

うち預金

前連結会計年度

6,227,166

143

0.00

当連結会計年度

6,279,770

133

0.00

うち譲渡性預金

前連結会計年度

13,865

2

0.01

当連結会計年度

13,000

2

0.01

うちコールマネー及び
  売渡手形

前連結会計年度

164,575

△41

△0.02

当連結会計年度

93,335

△34

△0.03

うち売現先勘定

前連結会計年度

当連結会計年度

うち債券貸借取引
  受入担保金

前連結会計年度

67,365

6

0.00

当連結会計年度

114,403

11

0.01

うち借用金

前連結会計年度

777,177

60

0.00

当連結会計年度

333,831

49

0.01

 

(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、当社及び十六銀行以外の連結子会社については、月末毎の残高に基づく平均残高を利用しております。

2 「国内業務部門」とは、当社及び連結子会社の円建取引であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

3 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度920,938百万円、当連結会計年度439,287百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度7,000百万円、当連結会計年度7,000百万円)をそれぞれ控除して表示しております。

 

 

(ロ) 国際業務部門

種類

期別

平均残高

利息

利回り

金額(百万円)

金額(百万円)

(%)

資金運用勘定

前連結会計年度

205,857

5,416

2.63

当連結会計年度

223,803

10,191

4.55

うち貸出金

前連結会計年度

18,542

385

2.07

当連結会計年度

12,929

263

2.03

うち商品有価証券

前連結会計年度

当連結会計年度

うち有価証券

前連結会計年度

173,490

4,833

2.78

当連結会計年度

198,473

8,710

4.38

うちコールローン及び
  買入手形

前連結会計年度

7

0

4.76

当連結会計年度

うち預け金

前連結会計年度

1,099

0

0.02

当連結会計年度

1,720

0

0.01

資金調達勘定

前連結会計年度

208,893

2,584

1.23

当連結会計年度

224,196

6,441

2.87

うち預金

前連結会計年度

18,803

18

0.10

当連結会計年度

14,290

16

0.11

うち譲渡性預金

前連結会計年度

当連結会計年度

うちコールマネー及び
  売渡手形

前連結会計年度

2,476

108

4.36

当連結会計年度

1,438

79

5.52

うち売現先勘定

前連結会計年度

92,975

2,307

2.48

当連結会計年度

113,242

6,042

5.33

うち債券貸借取引
  受入担保金

前連結会計年度

当連結会計年度

うち借用金

前連結会計年度

5,860

150

2.56

当連結会計年度

5,330

304

5.72

 

(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、十六銀行以外の連結子会社については、月末毎の残高に基づく平均残高を利用しております。

2 「国際業務部門」とは、連結子会社の外貨建取引(含むユーロ円建取引)であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

3 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度45百万円、当連結会計年度33百万円)を控除して表示しております。

 

 

(ハ) 合計

種類

期別

平均残高(百万円)

利息(百万円)

利回り
(%)

小計

相殺
消去額

合計

小計

相殺
消去額

合計

資金運用勘定

前連結会計年度

6,693,327

△84,389

6,608,938

53,896

53,896

0.81

当連結会計年度

6,786,816

△82,874

6,703,942

59,510

59,510

0.88

うち貸出金

前連結会計年度

4,575,031

4,575,031

38,145

38,145

0.83

当連結会計年度

4,720,272

4,720,272

38,507

38,507

0.81

うち商品有価証券

前連結会計年度

475

475

1

1

0.26

当連結会計年度

98

98

0

0

0.47

うち有価証券

前連結会計年度

1,382,321

1,382,321

13,946

13,946

1.00

当連結会計年度

1,436,011

1,436,011

18,928

18,928

1.31

うちコールローン

  及び買入手形

前連結会計年度

18,121

18,121

3

3

0.02

当連結会計年度

34,710

34,710

6

6

0.01

うち預け金

前連結会計年度

620,259

620,259

1,526

1,526

0.24

当連結会計年度

502,143

502,143

773

773

0.15

資金調達勘定

前連結会計年度

7,452,085

△84,389

7,367,696

2,768

2,768

0.03

当連結会計年度

7,051,696

△82,874

6,968,822

6,616

6,616

0.09

うち預金

前連結会計年度

6,245,969

6,245,969

162

162

0.00

当連結会計年度

6,294,060

6,294,060

149

149

0.00

うち譲渡性預金

前連結会計年度

13,865

13,865

2

2

0.01

当連結会計年度

13,000

13,000

2

2

0.01

うちコールマネー

  及び売渡手形

前連結会計年度

167,051

167,051

66

66

0.03

当連結会計年度

94,774

94,774

44

44

0.04

うち売現先勘定

前連結会計年度

92,975

92,975

2,307

2,307

2.48

当連結会計年度

113,242

113,242

6,042

6,042

5.33

うち債券貸借取引

  受入担保金

前連結会計年度

67,365

67,365

6

6

0.00

当連結会計年度

114,403

114,403

11

11

0.01

うち借用金

前連結会計年度

783,038

783,038

210

210

0.02

当連結会計年度

339,162

339,162

354

354

0.10

 

(注) 1 「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門との間における取引額であります。

2 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度920,984百万円、当連結会計年度439,321百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度7,000百万円、当連結会計年度7,000百万円)をそれぞれ控除して表示しております。

 

 

③ 国内・国際業務部門別役務取引の状況

役務取引等収益は前連結会計年度比4億6百万円増加の247億27百万円となり、役務取引等費用は前連結会計年度比5億62百万円増加の61億35百万円となりました。

種類

期別

国内業務部門

国際業務部門

相殺消去額

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

役務取引等収益

前連結会計年度

23,821

499

24,321

当連結会計年度

24,198

528

24,727

うち預金・貸出業務

前連結会計年度

3,798

3

3,802

当連結会計年度

3,707

4

3,711

うち為替業務

前連結会計年度

3,440

212

3,653

当連結会計年度

3,417

200

3,618

うち信託関連業務

前連結会計年度

44

44

当連結会計年度

59

59

うち証券関連業務

前連結会計年度

3,688

258

3,946

当連結会計年度

4,379

302

4,682

うち代理業務

前連結会計年度

111

111

当連結会計年度

105

105

うち保護預り・

貸金庫業務

前連結会計年度

177

177

当連結会計年度

169

169

うち保証業務

前連結会計年度

1,988

24

2,013

当連結会計年度

1,914

20

1,935

うちクレジット

カード業務

前連結会計年度

2,645

2,645

当連結会計年度

2,707

2,707

役務取引等費用

前連結会計年度

5,404

169

5,573

当連結会計年度

5,978

157

6,135

うち為替業務

前連結会計年度

323

69

392

当連結会計年度

318

69

387

 

(注) 1 「国内業務部門」とは、当社及び連結子会社の円建取引であります。

「国際業務部門」とは、連結子会社の外貨建取引(含むユーロ円建取引)であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

2 「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門との間における取引額であります。

 

 

④ 国内・国際業務部門別預金残高の状況

○ 預金の種類別残高(末残)

種類

期別

国内業務部門

国際業務部門

相殺消去額

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

預金合計

前連結会計年度

6,250,394

16,586

6,266,980

当連結会計年度

6,376,251

12,483

6,388,734

うち流動性預金

前連結会計年度

4,407,243

4,407,243

当連結会計年度

4,619,178

4,619,178

うち定期性預金

前連結会計年度

1,796,512

1,796,512

当連結会計年度

1,730,253

1,730,253

うちその他

前連結会計年度

46,638

16,586

63,224

当連結会計年度

26,819

12,483

39,302

譲渡性預金

前連結会計年度

13,000

13,000

当連結会計年度

13,000

13,000

総合計

前連結会計年度

6,263,394

16,586

6,279,980

当連結会計年度

6,389,251

12,483

6,401,734

 

(注) 1 「国内業務部門」とは、連結子会社の円建取引であります。

「国際業務部門」とは、連結子会社の外貨建取引(含むユーロ円建取引)であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

2 「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門との間における取引額であります。

3 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金

4 定期性預金=定期預金

 

 

⑤ 貸出金残高の状況
(イ) 業種別貸出状況(末残・構成比)

業種別

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国内(除く特別国際金融取引勘定分)

4,695,447

100.00

4,838,414

100.00

製造業

613,683

13.07

604,031

12.48

農業、林業

4,788

0.10

4,924

0.10

漁業

9

0.00

7

0.00

鉱業、採石業、砂利採取業

6,321

0.13

6,379

0.13

建設業

144,404

3.08

144,478

2.99

電気・ガス・熱供給・水道業

53,390

1.14

55,240

1.14

情報通信業

14,634

0.31

13,535

0.28

運輸業、郵便業

117,213

2.50

106,589

2.20

卸売業、小売業

286,308

6.10

280,888

5.81

金融業、保険業

301,359

6.42

394,472

8.15

不動産業、物品賃貸業

456,501

9.72

469,656

9.71

学術研究、専門・技術サービス業

22,054

0.47

23,347

0.48

宿泊業

15,324

0.33

14,734

0.31

飲食業

18,836

0.40

17,123

0.35

生活関連サービス業、娯楽業

34,922

0.74

30,940

0.64

教育、学習支援業

5,658

0.12

6,106

0.13

医療・福祉

95,958

2.04

95,724

1.98

その他のサービス

35,370

0.75

32,470

0.67

地方公共団体

479,308

10.21

480,861

9.94

その他

1,989,400

42.37

2,056,904

42.51

特別国際金融取引勘定分

政府等

金融機関

その他

合計

4,695,447

4,838,414

 

(注) 「国内」とは、連結子会社であります。

 

(ロ) 外国政府等向け債権残高(国別)

該当事項はありません。

 

 

⑥ 国内・国際業務部門別有価証券の状況

○ 有価証券残高(末残)

種類

期別

国内業務部門

国際業務部門

相殺消去額

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

国債

前連結会計年度

175,681

175,681

当連結会計年度

172,543

172,543

地方債

前連結会計年度

527,522

527,522

当連結会計年度

520,160

520,160

社債

前連結会計年度

323,855

323,855

当連結会計年度

307,826

307,826

株式

前連結会計年度

133,372

133,372

当連結会計年度

185,933

185,933

その他の証券

前連結会計年度

135,071

169,003

304,074

当連結会計年度

134,550

152,315

286,865

合計

前連結会計年度

1,295,503

169,003

1,464,506

当連結会計年度

1,321,014

152,315

1,473,329

 

(注) 1 「国内業務部門」とは、当社及び連結子会社の円建取引であります。

「国際業務部門」とは、連結子会社の外貨建取引(含むユーロ円建取引)であります。

ただし、円建対非居住者取引、特別国際金融取引勘定分等は国際業務部門に含めております。

2 「相殺消去額」は、国内業務部門と国際業務部門との間における取引額であります。

3 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。

 

⑦ 「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく信託業務の状況

連結会社のうち、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む会社は十六銀行1社です。

(イ) 信託財産の運用/受入状況(信託財産残高表)

資産

科目

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

銀行勘定貸

38

100.00

169

100.00

合計

38

100.00

169

100.00

 

 

負債

科目

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金銭信託

38

100.00

169

100.00

合計

38

100.00

169

100.00

 

(注) 共同信託他社管理財産については、前連結会計年度及び当連結会計年度の取扱残高はありません。

 

(ロ) 元本補填契約のある信託の運用/受入状況(末残)

科目

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

金銭信託

(百万円)

貸付信託

(百万円)

合計

(百万円)

金銭信託

(百万円)

貸付信託

(百万円)

合計

(百万円)

銀行勘定貸

38

38

169

169

資産計

38

38

169

169

元本

38

38

169

 -

169

負債計

38

38

169

169

 

 

(自己資本比率の状況)

(参考)

自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(2006年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。

なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用し、オペレーショナル・リスク相当額の算出においては粗利益配分手法を採用しております。

 

連結自己資本比率(国内基準)

 

 

(単位:億円、%)

 

2023年3月31日

2024年3月31日

1 連結自己資本比率 (2/3)

10.54

10.81

2 連結における自己資本の額

3,398

3,488

3 リスク・アセットの額

32,211

32,260

4 連結総所要自己資本額

1,288

1,290

 

 

(資産の査定)

(参考)

資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(1998年法律第132号)第6条に基づき、株式会社十六銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(1948年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。

 

1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権

 破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。

 

2 危険債権

 危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。

 

3 要管理債権

 要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。

 

4 正常債権

 正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。

 

十六銀行(単体)の資産の査定の額

債権の区分

2023年3月31日

2024年3月31日

金額(億円)

金額(億円)

破産更生債権及びこれらに準ずる債権

120

129

危険債権

511

483

要管理債権

21

20

正常債権

47,351

48,781

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

「生産、受注及び販売の状況」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の分析

当連結会計年度の業績は次のとおりであります。

〔連結損益状況〕

 

前連結会計年度

(百万円)(A)

当連結会計年度

(百万円)(B)

 前連結会計年度比
(百万円)(B)-(A)

連結コア業務粗利益 (注)1

74,581

73,376

△1,205

資金利益

51,128

52,894

1,766

役務取引等利益

18,748

18,595

△153

その他業務利益(除く国債等債券損益)

4,705

1,887

△2,818

経費(除く臨時処理分)

43,929

44,176

247

連結コア業務純益 (注)2

30,652

29,200

△1,452

国債等債券損益

△7,749

△14,280

△6,531

連結実質業務純益 (注)3

22,902

14,919

△7,983

与信関係費用

1,604

917

△687

うち一般貸倒引当金繰入額

△680

△1,076

△396

うち不良債権処理額

2,292

2,004

△288

株式等関係損益

3,601

13,331

9,730

その他

2,363

573

△1,790

経常利益

27,262

27,908

646

特別損益

△266

△106

160

うち減損損失

150

11

△139

税金等調整前当期純利益

26,996

27,801

805

法人税等合計

8,236

8,281

45

当期純利益

18,760

19,519

759

非支配株主に帰属する当期純利益

129

201

72

親会社株主に帰属する当期純利益

18,630

19,318

688

 

(注) 1 連結コア業務粗利益=資金利益+役務取引等利益+その他業務利益(除く国債等債券損益)

2 連結コア業務純益=連結コア業務粗利益-経費(除く臨時処理分)

3 連結実質業務純益=連結コア業務純益+国債等債券損益

 

連結コア業務純益

連結コア業務粗利益は、資金利益は増加したものの、その他業務利益(除く国債等債券損益)が減少し前連結会計年度比12億5百万円減少の733億76百万円となりました。

資金利益は、貸出金利息、有価証券利息配当金とも増加したことなどから、前連結会計年度比17億66百万円増加の528億94百万円となりました。

役務取引等利益は、投資信託等の窓口販売業務や金融商品仲介業務に積極的に取り組んだことなどから預り資産関連手数料が増加しました。またクレジットカード業務、信用保証業務も堅調に推移しましたが、住宅ローンの団体信用生命保険料など支払手数料が増加した結果、185億95百万円とほぼ前連結会計年度並みとなりました。

その他業務利益(除く国債等債券損益)は、外貨調達コストの増加などから前連結会計年度比28億18百万円減少の18億87百万円となりました。

また、経費(除く臨時処理分)は引き続き効率的な業務運営に努め441億76百万円とほぼ前連結会計年度の水準となりました。

これらの結果、連結コア業務純益は前連結会計年度比14億52百万円減少の292億円となりました。

 

経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益

国債等債券損益は、外国債券や投資信託のロスカットを実施したことなどから、前連結会計年度比65億31百万円減少の△142億80百万円となりました。

株式等関係損益は、政策投資株式の売却を進めたことから、前連結会計年度比97億30百万円増加の133億31百万円となりました。

また、与信関係費用は、前連結会計年度比6億87百万円減少の9億17百万円となりました。

これらの結果、経常利益は前連結会計年度比6億46百万円増加の279億8百万円となりました。

さらに、特別損益は、前連結会計年度計上した減損損失の反動減により1億60百万円増加したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比6億88百万円増加の193億18百万円となりました。

 

② 財政状態の分析

〔預金等(譲渡性預金を含む)〕

預金等残高(譲渡性預金含む)につきましては、個人及び法人預金の増加を主因として、前連結会計年度末比1,217億54百万円増加6兆4,017億34百万円となりました。

 

前連結会計年度

(A)

当連結会計年度

(B)

 前連結会計年度比

(B)-(A)

預金等残高(末残)

百万円

6,279,980

6,401,734

121,754

 預金

百万円

6,266,980

6,388,734

121,754

  個人預金

百万円

4,361,188

4,405,290

44,102

  法人預金その他

百万円

1,905,792

1,983,444

77,652

 譲渡性預金

百万円

13,000

13,000

 

(注) 「法人預金その他」とは、法人預金、公金預金、金融機関預金の合計であります。

 

〔貸出金〕

貸出金残高につきましては、アフターコロナに向けた地域のお客さまの資金繰り相談などに積極的にお応えしたことや、住宅ローンを中心とした個人ローンの取組みなどにより、前連結会計年度末比1,429億67百万円増加4兆8,384億14百万円となりました。

 

前連結会計年度

(A)

当連結会計年度

(B)

 前連結会計年度比
(B)-(A)

貸出金残高(末残)

百万円

4,695,447

4,838,414

142,967

 うち住宅ローン残高

百万円

1,924,723

1,992,304

67,581

 

 

〔有価証券〕

有価証券残高につきましては、市場環境の変化に柔軟に対応しつつ、リスクとリターンのバランスが保たれるポートフォリオを構築し、中長期的に総合損益の拡大を目指すという基本方針のもと、適切な運用に努めた結果、前連結会計年度末比88億23百万円増加1兆4,733億29百万円となりました。

 

前連結会計年度

(A)

当連結会計年度

(B)

前連結会計年度比
(B)-(A)

有価証券残高(末残)

百万円

1,464,506

1,473,329

8,823

 株式

百万円

133,372

185,933

52,561

 債券

百万円

1,027,059

1,000,530

△26,529

 その他

百万円

304,074

286,865

△17,209

 

(注) 「その他」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。

〔不良債権〕

当連結会計年度末の銀行法及び金融機能の再生のための緊急措置に関する法律に基づく債権額は、危険債権が減少したことなどにより、前連結会計年度末比20億52百万円減少655億80百万円となりました。

 

銀行法及び金融機能の再生のための緊急措置に関する法律に基づく債権

 

前連結会計年度

(A)

当連結会計年度

(B)

前連結会計年度比
(B)-(A)

破産更生債権及び

これらに準ずる債権

百万円

13,194

14,198

1,004

危険債権

百万円

52,315

49,379

△2,936

要管理債権

百万円

2,121

2,002

△119

 三月以上延滞債権

百万円

113

△113

 貸出条件緩和債権

百万円

2,008

2,002

△6

合計

百万円

67,632

65,580

△2,052

総与信に占める割合

1.39

1.31

△0.08

 

 

 

〔連結自己資本比率(国内基準)〕

当連結会計年度末の連結自己資本比率は、内部留保の蓄積などから自己資本が増加したことなどにより、前連結会計年度末比0.27ポイント上昇10.81%となりました。

 

前連結会計年度

(A)

当連結会計年度

(B)

前連結会計年度比
(B)-(A)

連結自己資本比率

10.54

10.81

0.27

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「(キャッシュ・フローの状況)」における記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、成長分野への投資・新規事業への参入をはじめ、設備投資や株主還元等の支出については、自己資金での対応を基本としております。また、貸出金や有価証券での運用については、顧客からの預金にて大部分を調達するとともに、必要に応じて、日銀借入金等により調達を行っております。

なお、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達方法等については、「第3 設備の状況」中、「3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

〔貸倒引当金〕

連結子会社の貸倒引当金は、予め定めている償却・引当基準に則り、債務者区分に応じて必要と認める額を以下のとおり計上しております。

貸倒引当金の計上方法は、「第5 経理の状況」中、「1連結財務諸表等」の「(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項 (5) 貸倒引当金の計上基準」に記載しております。

また、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況」中、「1連結財務諸表等」の「(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

当社の経営者は、貸倒引当金の計上にあたって用いた会計上の見積りは合理的であり、貸倒引当金は適切に計上されていると判断しております。

 

⑤ 目標とする経営指標についての分析

目標とする経営指標についての分析につきましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。