第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営基本方針

 当社グループは、ミッションとして「住まいを通して人を幸せにする世界を創る」を掲げており、このミッションを実現するために、家主様からお預かりした賃貸物件を介して、入居者様には快適な暮らしを、家主様には安定した賃貸経営を提供して、入居者様・家主様の満足度を高めることを追求しております。

 また、事業活動における具体的な指針とするため、経営方針として、①お客様第一主義に徹する、②重点主義に徹する、③お客様の要望に合わせ、我社を創造する(造り変える)、④高能率・高賃金主義に徹する、以上の4項目を定めています。これらはそれぞれ、CS重視の経営、経営資源の重点的な投入、市場環境への適応、高い生産性と成果主義の人事処遇を企図したものであります。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、継続的かつ安定的な収益の向上を目的とし、今後も賃貸住宅への旺盛な需要が見込まれる地域、具体的には世帯数の増加が見込まれる大都市圏及び人口の流動性の高い中核都市を中心に新規出店を進めてまいります。また、店舗数の増加を通じて、規模の利益による経営の効率化と関連事業の成長機会獲得に注力するとともに、新商品・新規事業による収益源の多様化にも取り組んでまいります。このような方針で事業を展開する上で、当社グループとしては、成長性として営業収益、収益性として営業利益・経常利益を重要な経営指標として考えております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループはこれまで不動産賃貸仲介を事業の柱として成長を遂げてきました。その事業規模の拡大は、店舗数の増加をベースとして、周辺商品・周辺事業に収益の間口を広げながら、IT技術の活用と人材の質を競争力の礎とすることで実現してきたものでした。一方で、新型コロナウイルス感染症の広がりによる転居需要の減少に直面したときに営業収益の減少を補いきれずに減益になったことは、事業ポートフォリオの見直しの必要性を示唆するものでありました。

 このような状況を踏まえ、今後の更なる発展のためには、事業領域の拡大及び競争力の強化等による成長の加速と、継続収入型サービスによる安定収益基盤の構築を含めた新たな事業ポートフォリオの構築が中長期的な経営戦略として重要であると認識しております。

 そして、今後の成長に向けて事業を前進させていく上で、以下の4項目を重点方針として定めております。

 

① 既存事業の競争力強化(不動産テック活用のその先のフェーズへ)

 事業成長のためには、店舗の競争力の維持・強化は重要な要素となります。当社では、これまでも不動産テックと呼ばれるIT技術やAI(人工知能)を積極的に活用することで、反響・集客の強化とお客様の利便性の向上、社内の生産性の向上を推し進めてまいりました。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代においてはデータの蓄積と活用が継続的な顧客接点の確保とサービス提供における競争優位性の確保に極めて重要であると認識の下、基幹システムの刷新を進めて新たな時代に備えてきました。今後に向けては、賃貸不動産DXが一層進歩することを想定し、更なるIT技術の導入・活用によりDX時代の競争優位を確保することを目指します。また、DX時代には業界内外の過去の垣根が意味を失い、データで結びついた新たな顧客向けサービス・内部向けツールが従来の分断されたサービス等に置き換わる可能性を視野に入れ、業界内外の企業との協業を積極的に図りながら当社グループの競争力の向上を図り続けてまいります。

 

② 既存事業の店舗数増加による規模の拡大(新規出店・M&A)

 不動産賃貸仲介においては店舗数の増加が事業規模拡大のベースになりますが、その構造が急速に変わることは当面はないものと予想しております。これまでは世帯数の増加が見込まれる大都市圏及び人口の流動性の高い中核都市に積極的に店舗展開をするとともに、出店機会の増加と地域需要変動の吸収余力を高めることを考慮し、地方都市も視野に入れた出店を推し進めてまいります。また、当業界では地域に優良な不動産会社が多く存在しており、成長施策の一環としてM&Aによる会社の取得も視野の一部に入れて、適宜、適切と考えられる取り組みを進めてまいります。

 

③ 事業領域拡大による収益構造の転換(新たな事業ポートフォリオの構築)

  不動産賃貸仲介を起点とした従来の事業に加えて、データや資本財を通じたサービスや継続収入型サービスに事業領域を拡大し、安定収益基盤を含んだ新たな事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。なお、事業領域の拡大においては、自前資源による取り組みに限定せず、異業種を含めた優れた経営資源を持つ他社との業務提携・資本提携も積極的に推し進めてまいります。

 

④ グループ経営を前進させるための内部体制の強化

 当社は2019年4月にジューシィ出版株式会社(現 ハウスコムテクノロジーズ株式会社)を子会社化して以降、エスケイビル建材株式会社、株式会社宅都(現 大阪ハウスコム株式会社)、株式会社シーアールエヌを子会社化し、当社グループの拡大を進めてまいりました。グループ経営を進める上では、グループ全体の統制とグループ各社の活発な事業展開を両立することが重要であり、それらを実現するかたちで内部体制を強化することが必要であると認識しています。その担い手となる人材については多様な働き手・多様な働き方を受容して人的資源の厚みを増すことで充足を図り、グループ経営を前進させるための組織や仕組みの構築に注力してまいります。また、サービスの提供・消費においては顧客体験が重要性を持つ時代が到来しているとの時代認識の下、新たな顧客体験を創出できるように、従業員自らが体験の価値を感じ取り入れていくことを促進し、これからの時代にフィットした人材を涵養してまいります。

 

(4) 経営環境

 当社グループの現時点での事業の中心は不動産賃貸仲介業務であり、その主となる居住用物件の賃貸仲介の潜在的な需要規模は、地域における世帯数の動向や人口流出入の状態、持ち家と賃貸住宅に係る志向の状態に基づき、家族構成の変化、生活改善、転勤・転職、進学等による引越しニーズにより顕在化すると考えられています。また、経済情勢に伴う企業活動の活発さや雇用環境により、その顕在化の程度は影響を受ける傾向にあります。

 競争環境においては、店舗網の規模や地域的な広がり等の出店戦略の巧拙だけでなく、インターネット上のサービスの拡充とスマートフォンの普及による部屋探しの仕方の変化が広まったことにより、不動産テックと呼ばれるIT技術を活用して部屋探しのお客様のニーズを満たすことが競争力の重要な要素になっています。また、そうした技術に基づくサービスに加えて、地元に根ざした地域情報を豊富に持ち、リアリティのある新生活のストーリーをお客様に提案する力も重要性を増しており、企業としての総合的な対応力が業績を左右し得る事業環境が続いております。

 このような市場における需要環境、技術革新の動向と競争環境を考慮して、「(3)中長期的な会社の経営戦略」において中長期的な戦略の要所を示すとともに新たな成長のために必要な4項目を挙げております。そして、それぞれの項目について足元の外部環境・内部環境や各地域の状況に合わせて機敏に対応することが、経営において肝要であると認識しています。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは「(3) 中長期的な会社の経営戦略」に示した、新たな成長のために必要な4項目の取り組みを中心とした事業運営を進めております。そして、今後の発展に向けて事業を前進させていく上では、コンプライアンスやお客様満足度向上の追求等は揺るがせてはならない必要不可欠なものであると受け止めております。

 このような状況認識に基づき、優先的に対処すべき課題は以下のとおりです。

 

① コンプライアンスの徹底

 当社グループは、宅地建物取引業法に基づき、監督官庁(国土交通大臣または都道府県知事)から宅地建物取引業免許を取得しており、当社グループが属する不動産賃貸仲介業界は、当該法規制等の下に事業展開しております。法令遵守は企業存続の基本であり、前提であることから、宅地建物取引業法のみならず、関係諸法令を遵守することは当然のことであるとの認識で事業活動しております。これは将来においても変わることのない方針であるため、全社的に更なる徹底が必要であると考えており、全従業員を対象としたeラーニングシステムを活用し、コンプライアンス意識の更なる醸成を進めてまいります。

 

② お客様満足度の向上

 部屋探しのお客様の満足度を高めるためには、仲介斡旋可能な賃貸物件の品揃え(幅広く多数の物件をご紹介できること)と、当社スタッフが高い提案力と好感の持てる接客でお客様に向き合うことが重要であると考えられます。それらをより良くしていくために、物件についての仕入れ・空室情報の入手と、各種研修やOJT等を通じたサービス水準の向上に努めてまいります。

 

③ 人材育成の強化

 優秀な人材を確保することができなければ事業の発展は困難であり、お客様満足度の向上も企業価値の向上も、いずれも実現は困難になります。そのため、事業活動の要となる人材の確保・育成強化に努めてまいります。具体的には、入社時からはじまり各職種・各階層別に策定された各種研修プログラムに基づき、計画的に研修を実施し、知識の向上ではeラーニングシステムを活用し人材育成を強化しております。また、経験の幅を広げ蓄積を重ねていくため、店舗間の異動や本社-店舗間の異動を適切なタイミングで行うように努めてまいります。

 

④ IT技術の積極的な導入と活用の浸透(店舗競争力の強化)

 店舗競争力の強化は事業戦略の重要方針の1つであり、そのなかでも、現在、不動産テックと呼ばれるIT技術を活用して部屋探しのお客様のニーズを満たすことが、競争力の重要な要素になっています。当社グループは、早くよりAI(人工知能)を活用した部屋探し支援サービスやマイボックス(個人別連絡用WEBサイト)、AIを活用したチャット機能などを導入してきました。また、最近の社会情勢下で求められるオンラインサービスにも対応済みです。こうした技術の活用は、単に仕組みの導入だけでなく運用における習熟が快適な利便性の鍵になり得るとともに、常により利便性の高いものが求められる可能性があります。これら技術の導入について常に見直しを進め、スピーディーに習熟して高い品質の実運用を行えるようにするとともに、業務フローやバリューチェーンの変更と一体化させた不動産DXの実現を進めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

   当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを、企業価値を高めるための取り組みとして捉え、2023年3月に取締役会に報告の上、サステナビリティ委員会を設置いたしました。サステナビリティ委員会により当社グループが特に重点的に取り組むべき課題をE(環境)S(社会)G(企業統治)の観点と当社グループの事業の特徴から「7つのマテリアリティ(重要課題)」として選定いたしました。今後、当社グループの持続的な成長のためには、サステナビリティへの取り組みと成長戦略の一体化が不可欠であると考えております。

「私たちは、住まいのサービス業として、お客様に快適な暮らしを、家主様には安定した経営を提供することを通じて、事業活動の継続的な発展と持続可能な社会の実現を目指します。」をサステナビリティの基本方針として掲げ、経営資源や蓄積したノウハウなど、グループ全体の強みを活かしながら、課題の解決と利益創出の両立を目指します。なお、ハウスコムのサステナビリティの取り組み内容は当社のウェブサイトにて公表しております。(https://www.housecom.co.jp/sustainability/)

 

(1) ガバナンス

 当社グループが特に重点的に取り組むべき課題「7つのマテリアリティ」の推進に向け、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」の設置とともに、経営企画部を中心とした「サステナビリティ事務局」を設置いたしました。サステナビリティ事務局で検討・答申があった課題に対してサステナビリティ委員会にて検討・協議を行い方針の議論・決定を行います。サステナビリティ委員会で決定された方針等は定期的に取締役会へ報告するとともに、サステナビリティ事務局を通して各部門・グループ会社に共有することで、当社グループ全体でサステナビリティに関する課題に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

 当社グループにおいては、サステナビリティに係る戦略として、「7つのマテリアリティ」の推進を掲げており、「7つのマテリアリティ」の内容及び目標は(4)指標及び目標に記載の通りであります。また、リスク及び機会への対処の必要性という観点では、サービス業としての事業特性を鑑み、特に人材・組織の領域の重要性が高いと考えております。

 

<人材戦略>

 人材戦略については、「個のエンゲージメント」として従業員が会社に愛着をもつ事、愛着を持つために個人個人のアイデンティティを伸ばしていく事が重要な鍵であるとして、年齢・性別・国籍・障害の有無にかかわらず多様な人材が活躍できる場所を創出するとともに、それぞれの特性や能力を最大限発揮できる職場環境の整備や人材育成の取り組みを行い企業価値の最大化を図る事を目指しています。

 人材戦略の重要な要素としてダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を活かし、その能力が発揮できるようにする取り組み)を掲げています。劇的に変化する世界情勢、外部環境の中、働き方の多様性を高める事により、多様な人材が集まり魅力的な職場を構築できると考え、リモートワークや地域限定社員、アスリート社員、障害者、外国籍などの採用を進めています。そして、グループ全体研修や事業会社別の各種研修の実施・1on1ミーティングの強化により組織の活性化を図ります。

 こうした取り組みの結果、数々の賞を受賞しております。「ジェンダー」「LGBTQ+」「障害」「多文化共生」「育児・介護」の5つに焦点を当てた「D&Iアワード2023」では、最上位の「ベストワークプレイス」に3年連続で認定されました。その中でも、職場におけるLGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティへの支援が評価され、「PRIDE指標2023」で最上位の「ゴールド」を受賞することができました。また、スポーツ庁よりスポーツを通じて社会全体の活性化に貢献する「スポーツエールカンパニー2024」に認定されました。さらに、健康経営を推進する企業を顕彰する「健康経営優良法人2024」にも認定されました。

 また、主たる事業である不動産関連事業においては、宅地建物取引士(宅建士)の資格を保有することが事業展開上も人材育成上も重要性を持つため、その保有比率を高めることを目指してまいります。

 

(3) リスク管理

 サステナビリティ委員会において「7つのマテリアリティ」への取り組み状況について評価・管理するとともに、サステナビリティ観点での新たなリスク及び機会について識別いたします。具体的には、サステナビリティ委員会を定期的に開催し、取り組み状況を確認するとともに、気候変動を含む環境課題や社会課題に対する施策や方針・リスクなどサステナビリティに関する事項について審議・議論を進めてまいります。また半年に1回取締役会に報告を行い、経営に反映いたします。このような体制・運営を通じて、当社グループとしてサステナビリティに関するリスク管理を行ってまいります。

 

(4) 指標及び目標

マテリアリティ

短期~中期目標

(2023年度~2025年度)

長期目標

1.環境

事業活動による環境危機への対応

2025年度までに事業活動の温室効果ガス(スコープ1・2)を33.6%削減する(2017年度対比)。

2030年度までに事業活動の温室効果ガス(スコープ1・2)を55.0%削減する(2017年度対比)。

2025年度までにエネルギー効率(売上高(億)/GJ)を135.0%にする(2017年度対比)。

2030年度までにエネルギー効率(売上高(億)/GJ)を200.0%にする(2017年度対比)。

2025年度までに再生可能エネルギー利用店舗を100.0%にする(切替可能店舗に限る)。

2030年度までに再生可能エネルギー利用店舗を100.0%にする(切替可能店舗に限る)。

2025年度まで毎年コピー用紙使用量を前年対比2.1%削減する。

2030年度までにコピー用紙使用量を10.0%削減する(2020年対比)。

2.社会

地域社会との共創

地域の皆様とのコミュニケーションを大切にし、地域課題の解決につながる貢献活動を推進する。

地域の皆様とのコミュニケーションを大切にし、地域課題の解決につながる貢献活動を推進する。

3.人材・組織

より活力をもって働くことができる企業風土の構築

2025年度目標

・女性管理職比率:8.5%※

2030年度目標

・女性管理職比率:10.0%※

2025年度目標

・障害者雇用率:3.1%

2030年度目標

・障害者雇用率:3.1%

2025年度目標

・宅建士取得率:45.0%

2030年度目標

・宅建士取得率:50.0%

4.企業統治

透明性の高い経営を行えるガバナンス体制の構築

適切な情報開示により透明性の確保実施。グループ間連携の強化を行いリスクマネージメントを共有しガバナンスの強化を実施する。

適切な情報開示により透明性の確保実施。グループ間連携の強化を行いリスクマネージメントを共有しガバナンスの強化を実施する。

5.土地・資産

資産の活用・維持・向上を支援

家主様の資産の最適化を実現する。

家主様の資産の最適化を実現する。

6.賃貸住宅

安全・充実した賃貸住宅の提供

全ての人に満足度の高いお部屋探しを提供する。

全ての人に満足度の高いお部屋探しを提供する。

7.暮らし生活

安心して暮らせる環境を提供

地域コミュニティーの創出を行い地域の活性化に貢献する。

地域コミュニティーの創出を行い地域の活性化に貢献する。

 

<人材における主な指標及び目標>

項目

2023年度実績

短期~中期目標

(2023年度~2025年度)

長期目標

(2030年度)

女性管理職比率

女性管理職比率:9.7

2025年度目標

・女性管理職比率:8.5%※

2030年度目標

・女性管理職比率:10.0%※

障害者雇用率

障害者雇用率:3.3

2025年度目標

・障害者雇用率:3.1

2030年度目標

・障害者雇用率:3.1%

宅建士取得率

宅建士取得率:44.7

2025年度目標

・宅建士取得率:45.0

2030年度目標

・宅建士取得率:50.0%

 

※女性管理職比率の2025年度目標比率と2030年度目標比率は、それぞれ2021年度に策定したものを掲載しております。

 

<実績>

項目

2022年度

2023年度

温室効果ガス ※

2,647t-CO2

1,949t-CO2

エネルギー効率売上高 ※

0.00497売上(億)/GJ

0.00596売上(億)/GJ

再生可能エネルギー利用店舗

67店舗切替済み

64店舗切替済み

コピー用紙使用量 ※

49.95t

50.00t

女性管理職比率

9.2%

9.7%

障害者雇用率

3.6%

3.3%

宅建士取得率

43.8%

44.7%

※温室効果ガス・エネルギー効率売上高・コピー用紙使用量について、2022年度の報告対象期間は2021年4月1日から2022年3月31日であり、2023年度の報告対象期間は2022年4月1日から2023年3月31日であります。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものです。

 以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化したときに当社グループの経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。なお、当社グループはリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」において定め、リスク管理の基盤としての内部統制システムと組織横断的に構成するコンプライアンス監視委員会において、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスク顕在化の予防を図っております。

 

(1) 外部環境について

① 宅地建物取引業法及び関係諸法令の変更について

 当社グループは不動産業に属するため、監督官庁 (国土交通大臣または都道府県知事) から宅地建物取引業免許を取得しており、かつ「宅地建物取引業法」及び関連する各種法令によって規制を受けて事業活動しております。現時点におきましては、当該免許の取消し等重大な行政処分の対象となる事由は発生しておりませんが、将来何らかの理由によって当該免許の取消しを含む行政処分がなされ、またはその更新が認められない場合には、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法令等が改廃または新たな法的規制が生じた場合にも、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、法規制等の遵守を徹底すべく社内のコンプライアンス教育に努めるとともに、遵守状況を確認するための社内チェック体制の構築・運用を行っております。

(注)1.当社グループ各社の宅地建物取引業免許の最新の内容は次のとおりです。

ハウスコム株式会社

 免許証番号:国土交通大臣(5)第6094号

 有効期間 :2020年12月5日から2025年12月4日まで

ハウスコム東東京株式会社

 免許証番号:東京都知事(1)第108283号

 有効期間 :2022年9月3日から2027年9月2日まで

ハウスコム西東京株式会社

 免許証番号:東京都知事(1)第108225号

 有効期間 :2022年8月20日から2027年8月19日まで

ハウスコム東神奈川株式会社

 免許証番号:神奈川県知事(1)第31769号

 有効期間 :2022年9月6日から2027年9月5日まで

ハウスコム西神奈川株式会社

 免許証番号:神奈川県知事(1)第31770号

 有効期間 :2022年9月6日から2027年9月5日まで

ハウスコム千葉株式会社

 免許証番号:千葉県知事(1)第18235号

 有効期間 :2022年8月31日から2027年8月30日まで

ハウスコム埼玉株式会社

 免許証番号:埼玉県知事(1)第24888号

 有効期間 :2022年8月19日から2027年8月18日まで

ハウスコム関東株式会社

 免許証番号:国土交通大臣(1)第10263号

 有効期間 :2022年10月13日から2027年10月12日まで

ハウスコム静岡株式会社

 免許証番号:静岡県知事(1)第14629号

 有効期間 :2022年8月23日から2027年8月22日まで

ハウスコム東海株式会社

 免許証番号:国土交通大臣(1)第10227号

 有効期間 :2022年8月19日から2027年8月18日まで

大阪ハウスコム株式会社

 免許証番号:国土交通大臣(2)第8685号

 有効期間 :2019年10月8日から2024年10月7日まで

琉球ハウスコム株式会社

 免許証番号:沖縄県知事(1)第5498号

 有効期間 :2022年8月18日から2027年8月17日まで

 

(注)2.免許の欠格要件の主なものは次のとおりです。

●免許取消しの日から5年を経過しないもの(免許不正取得・情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分に違反をして免許取消されたもの)

●免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をした場合

●不正又は不誠実な行為をすることが明らかな場合

●事務所に専任の宅地建物取引士を設置していない場合

 

② 不動産の表示に関する公正競争規約について

 不動産業界は公正取引委員会の認定を受け、「不動産の表示に関する公正競争規約」及び「不動産業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」を設定しております。当社グループはこれらの規約を遵守し業務を遂行するように努めておりますが、万一、不測の事態によって規約に違反する行為が行われた場合、何らかの制約を課されお客様からの信頼性が低下することにより、業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクへの対応として、法規制等の遵守を徹底すべく社内のコンプライアンス教育に努めるとともに、遵守状況を確認するための社内チェック体制の構築・運用に取り組んでおります。

 

③ 経済情勢等の変動について

 当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金利動向、住宅税制等の影響を受けやすいため、これら諸情勢に変化があった場合には、賃貸住宅の家主様の事業意欲の減退及び入居需要の低下等によって賃貸住宅市況に影響し、その結果、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 世帯数の減少について

 不動産業のうち、賃貸仲介業界にとりましては、人口の減少・世帯数の減少により、入居者需要の面で重大な影響があります。人口は2008年より減少の局面に入りました(2024年4月12日公表、総務省統計局「人口推計の結果」による。〉が、世帯総数につきましては、2030年をピークとして減少局面に入るとの将来予測(2024年4月12日公表、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」2024年推計による。)が公表されております。世帯数の減少局面の到来が早まれば、不動産賃貸仲介市場における需要の縮小が予想されます。今後の世帯数の減少に基づく市場動向によっては、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 大手仲介管理会社との競合等について

 大手仲介管理会社による多店舗展開及び賃貸物件の自社への取り込みが強化されている状況においては、当社グループが取り扱う賃貸物件の確保が困難になる可能性があります。適時に十分な賃貸物件の確保ができなかった場合には、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクへの対応として、当社グループは店舗網の拡大に努めるとともに、管理会社や個人の家主様を対象に取引先を広げ、賃貸物件の確保に注力しております。

 

⑥ 自然災害等の発生について

 当社グループは、首都圏・中部圏・関西圏の三大都市圏及び九州圏を主たる営業エリアとしており、当該エリアで自然災害やテロ等、不測の事態が発生した場合は、その発生規模の程度によって人的・物的な被害を受ける可能性があり、当社グループの業績及び事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクへの対応として、当社グループはBCP(事業継続プラン)を作成するとともに、その見直しを適宜進めております。

 

 

(2) 事業展開及び組織体制について

① 店舗展開について

 当社グループは積極的な店舗展開による成長を目指しておりますが、下記の要因により、出店計画に支障が生じ、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、出店案件について社内外から広く情報を集めることに努めております。

 

ア.出店予定地での物件の制約について

 当社グループが出店を希望する駅前やロードサイドの好立地の物件は、同業他社のみならず、他業者も出店等を希望する物件でもあるため、適切な物件が見つからず、出店できないまたは別条件の物件に出店する等、当初の出店計画に支障が生ずる可能性があります。

 

イ.競合他社の店舗展開等の動向について

 当社グループは、首都圏・中部圏・関西圏の三大都市圏及び九州圏を主たる営業エリアとして事業展開しておりますが、当該地域は、同時に当社グループと競合関係にある事業者も事業展開を進めている地域でもあります。当社グループは、今後も多店舗展開の営業方針に基づいた出店計画によって、当該地域に店舗展開してまいりますが、同業他社の店舗展開の状況によっては当社グループの出店計画に支障が生ずる可能性があります。

 

② ブランドイメージによる影響について

 当社グループの賃貸仲介サービスの営業拠点は一部の例外を除いて「ハウスコム」を統一ブランドとして事業展開しており、何らかの不祥事や当社に対するネガティブな情報や風評が流れた場合にはブランドイメージの低下を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、子会社の大阪ハウスコム株式会社は主として「ミニミニ」ブランドのフランチャイジー(加盟店)として店舗を運営しており、株式会社シーアールエヌは、「クラスモ」ブランドを展開し、フランチャイザー(本部)として運営を行っています。これらブランドのイメージが低下した場合、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これらの当該リスクへの対応として、法令遵守を徹底すべく社内のコンプライアンス教育に努めるとともに、顧客満足に係る活動及び教育に注力しております。

 

③ 人材の確保について

 当社グループの現在の事業構造においては、店舗数の拡大と事業の拡張を進める場合、必要とする人員数が増加する状況にあります。今後の事業の拡大に向けて計画的な人員増強に努める方針ですが、十分な人員の増強が図れなかった場合には、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、新卒採用及び中途採用、カムバック採用に注力するとともに、短時間正社員の採用など、採用の多様化を進めております。

 

④ 親会社(大東建託株式会社)グループとの関係について

 2024年3月期末日現在において、当社の親会社である大東建託株式会社は当社の議決権の52.3%を保有しています。当社は、大東建託グループにおいて、親会社グループの管理物件だけでなくグループ外の管理会社及び個人の家主様の賃貸物件を対象として、その賃貸仲介及び周辺サービス業務を担う会社と位置づけられております。当社の経営方針、事業展開等の重要事項の決定において、独立性は保たれていると認識しておりますが、今後、同社における当社株式保有比率に大きな変動があった場合、あるいは、同社グループの事業戦略が変更された場合には、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は大東建託株式会社及びグループ各社と取引を行っておりますが、取引条件については、その妥当性について十分な審議を行っております。また大東建託グループの一部事業については当社ビジネスと競合し得るものもあります。主な内容は以下の通りです。

 

ア.大東建託リーシング株式会社との関係について

 大東建託リーシング株式会社は、大東建託株式会社の連結子会社であり、不動産仲介賃貸借及び入居斡旋等の不動産仲介業務を行っており、その仲介斡旋する物件は大東建託パートナーズ株式会社の管理物件がほとんどを占めております。当社は、家主様自らが管理している物件及び大東建託パートナーズ株式会社も含めた幅広い管理会社からの依頼物件の仲介斡旋を取り扱い、賃貸仲介手数料を収益の柱としております。当社は大東建託パートナーズ株式会社の管理する物件も取り扱っておりますが、年間の仲介件数に占める割合は約16%であり、個人の家主様が直接管理する物件や他の管理会社が管理する物件の占める割合が大きくなっています。これらの状況が示すように、当社グループは親会社グループから独立した事業内容を備えているとともに、取扱い物件の重複が限定的であることから、大東建託リーシング株式会社との重要な競合の可能性は低いものと認識しています。

 

イ.大東建託パートナーズ株式会社との関係について

 大東建託パートナーズ株式会社は、大東建託株式会社の連結子会社であり、家主様 (建物所有者) と建物管理契約や一括借り上げを行い、家主様に代って賃貸経営管理を行っております。アにて記載のとおり、当社は大東建託パートナーズ物件の取扱いも行っておりますが、仲介件数に占める割合は限定的であり、同社との間に重要な取引はないと認識しております。

 

 

ウ.D.T.C. REINSURANCE LIMITEDとの関係について

 D.T.C. REINSURANCE LIMITEDは、大東建託株式会社の連結子会社であり、当社並びに大東建託グループの紹介する保険会社の一部の保険契約について当該会社への再保険が行われております。また当社は、当該会社の優先株式を保有しており、毎期配当収入を得ております。

 

 

(3) 財政状態及び業績の変動等について

① 収益の季節的変動性について

 当社グループの事業収益は、日本の慣習である年度末や年度初めでの新卒の入社や人事異動、並びに進学等による転居需要の多い第4四半期、特に3月に集中する傾向があります。その季節的変動性の要因となっている日本の慣例や慣習に変化があった場合には、転居需要の分散により、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

② M&Aにおけるのれんの減損リスク等の影響

 当社グループでは、企業買収の際に生じたのれんを計上しております。また、グループ外企業に部分的な出資を行った場合にはその出資額を投資有価証券として計上しております。これらの資産については、今後の事業計画との乖離等によって期待されるキャッシュ・フローが生み出されない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ システムトラブルについて

 当社グループの基幹システム等は、耐震構造等を備えた外部のデータセンターにシステム機器を設置する等、 一定の安全を確保しております。しかしながら、地震、火災その他の自然災害、システム、ハード及び通信イン フラの不具合、電源供給の停止、コンピュータウイルスなど、現段階で当社グループにおいて予測不可能な事態 により長期間にわたりシステムを停止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社グループの業績及び事業活動 に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 個人情報の管理について

 当社グループの事業においては、多くのお客様の個人情報を取り扱っており、個人情報取扱事業者に該当しております。このため当社グループは「個人情報保護規程」及び「個人情報保護マニュアル」を作成して、全社員に個人情報の管理の徹底を図っております。しかしながら、不測の事態によって、当社グループが保有する個人情報が社外へ漏洩した場合は、社会的信用の失墜、トラブル解決のための費用負担等により、当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクへの対応として、システム化やペーパーレス化等による漏洩機会抑制の仕組みの導入を図るとともに、法規制等の遵守を徹底すべく社内のコンプライアンス教育に努めております。

 

⑤ 訴訟等の可能性について

 当社グループは、事業展開において宅地建物取引業法やその他関連法令を遵守した営業活動を推進しておりますが、お客様との認識の齟齬その他に起因して賃貸仲介物件等に関するクレーム・トラブル等が発生する場合があります。

 当該クレーム等の対応については、当社グループではお客様満足度向上の観点から「クレーム対応マニュアル」を策定して、全社員に指導を徹底するとともに、早期解決の一環として「お客様相談室」をハウスコム本社内に設置して対応の一元化を図っております。

 現在のところは重大な訴訟事件等は生じておりません。しかしながら、今後においてこれらクレーム等に起因 して重大な訴訟等が提起された場合には、当社グループに対するお客様からの信頼性の低下、損害賠償請求等に よって当社グループの業績及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクへの対応として、 法令遵守を徹底すべく社内のコンプライアンス教育に努めるとともに、顧客満足に係る活動及び教育に注力して おります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度の我が国の経済は、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっているものの、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類感染症に変更され、正常化が進みました。

 

 このような環境の下、当社グループのコア事業である不動産賃貸仲介業界におきましては、賃貸需要が回復軌道に乗り、外国人居住者が大都市圏を中心に増加していることも相まって、2024年に入ってからも賃貸需要は底堅く推移しています。しかしながら、ウクライナ情勢や中東情勢の長期化、為替の変動、原材料や物価の上昇、能登半島地震等の外的要因により国内の諸産業が影響を受け、その結果、転居需要にも影響が生じる可能性も考えられます。また、進行する人材不足がサービス品質や収益の低下を招くことも懸念されます。こうした変動下においても、収益を確保し、持続的な成長を可能にするため、さらなる事業の効率化を推し進めるとともに、当社グループの「個」にフォーカスし、社員各々の価値を最大限に引き出して中長期的な企業価値向上につなげることが、当社グループの重要な経営課題になっています。

 

 当社グループは、2023年6月20日に関西圏で不動産に関する「クラスモ」ブランドを展開するフランチャイズ本部である株式会社シーアールエヌの株式を取得(2023年11月に完全子会社化)し、事業の多角化を進めました。また、DX化の推進による店舗での業務の質的向上・効率化を図るとともに、人材不足への対応といたしましては、従来の採用活動だけではなく、外国人、アスリート、障害者、シニアの方々も対象とした採用の多様化を積極的に進めました。採用の他にも、リテンションや人材育成の強化、外部リソースの活用に取り組み、また、店舗の定休日設定や有給休暇取得の奨励等、グループワイドで働き方改革を推進しました。さらに、多様な人材が活躍する職場環境や体制づくりのため、各種LGBTQ施策をグループ内に導入し、「PRIDE指標2023」において「ゴールド」を受賞しました。

 

 これらの事業運営を進めてきた結果として、当社グループの連結経営成績は、営業収益13,529百万円(前期比4.6%減、650百万円減)、営業利益502百万円(前期比27.5%増、108百万円増)、経常利益685百万円(前期比10.5%増、65百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益410百万円(前期比25.5%増、83百万円増)となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりです。また、セグメント区分による各事業の内容・連結決算への反映期間は(注1)(注2)に記載しております。

 

① 不動産関連事業(注1)

 当社グループのコア事業で、不動産賃貸仲介業務及び関連サービスから成る不動産関連事業は、営業収益は11,951百万円(前期比4.7%減、589百万円減)、セグメント利益は2,378百万円(前期比8.8%増、193百万円増)となりました。店舗の統廃合等を進めた結果、仲介件数はグループ全体で77,546件と前期比5.7%減少し、当セグメントの営業収益の減少をもたらしました。これは、働き方改革の推進、労働効率の向上、業務のDX化を進めている中で、営業収益と営業費用のバランスの最適化を図ったことによるものです。こうした中で、進学・就職・転勤などにより賃貸仲介需要が高まることに伴い当社グループの収益が年間で最も高くなることが例年の傾向となっている1月~3月において当期は、不動産ポータルサイトへの計画的かつ効果的な広告施策により、取り扱い物件に関するお客様からのお問い合わせ数が順調に増加し、広告への投資効率も大きく向上したことが収益性の向上に寄与しました。

 また、大阪ハウスコム株式会社は本社の基幹システム活用やバックオフィス業務の本社移管が進み、事業効率、収益性が向上しました。前期には当社グループとは決算期が異なっていた同社について、2023年3月期は賃貸仲介件数がハイシーズンを迎える3月分を含む13か月間の営業収益を計上しましたが、2024年3月期からは同社の決算期をグループの決算期に合わせ、2023年4月から2024年3月までの12か月間の営業収益を計上しました。

 

 

② 施工関連事業(注2)

 不動産仲介を契機とする家主様・入居者様からの原状回復工事やリフォーム工事、鍵交換・サニタリー工事の依頼に対応する諸工事等と、リフォームや改修工事等に関わる営繕・建築請負工事、下請け工事等から成る当社グループの施工関連事業について、営業収益は1,577百万円(前期比3.7%減、60百万円減)、セグメント利益は196百万円(前期比7.2%増、13百万円増)となりました。住宅の資産価値を向上させる手段の一つとしてのリフォームを中心とした「ハウスコムコミュニケーションズ株式会社」の協力会社とのアライアンス強化や施工の内製化が進み、収益性の向上に寄与しました。

 

(注1)「不動産関連事業」はハウスコム株式会社及び子会社13社の合計14社により構成されています。また、当連結会計年度の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。

ハウスコム株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム東東京株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム西東京株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム東神奈川株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム西神奈川株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム千葉株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム埼玉株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム関東株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム静岡株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコム東海株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

大阪ハウスコム株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

琉球ハウスコム株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

ハウスコムテクノロジーズ株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

株式会社シーアールエヌ 2023年7月1日より2024年3月31日迄。

 

(注2)「施工関連事業」は子会社2社により構成されています。また、当連結会計年度の連結業績への反映期間は、以下のとおりです。

エスケイビル建材株式会社 2023年1月1日より2023年12月31日迄。

ハウスコムコミュニケーションズ株式会社 2023年4月1日より2024年3月31日迄。

 

 当社グループの当連結会計年度における経営成績は、以下の通りです。

(単位:千円)

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減額

増減率

営業収益

 

 

 

 

不動産関連事業

12,540,795

11,951,172

△589,623

△4.7%

施工関連事業

1,638,522

1,577,880

△60,642

△3.7%

合計

14,179,318

13,529,052

△650,265

△4.6%

営業利益

 

 

 

 

不動産関連事業

2,185,101

2,378,475

193,374

8.8%

施工関連事業

183,596

196,864

13,267

7.2%

調整額

△1,974,374

△2,072,768

△98,394

合計

394,323

502,571

108,247

27.5%

経常利益

620,673

685,683

65,010

10.5%

親会社株主に帰属する当期純利益

327,351

410,857

83,505

25.5%

 

 

(参考)ハウスコム株式会社単体における経営成績は、以下のとおりです。

(単位:千円)

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減額

増減率

営業収益

 

 

 

 

仲介手数料収入

2,801,453

225,161

△2,576,291

△92.0%

仲介業務関連収入

1,972,770

348,709

△1,624,061

△82.3%

完成業務高

648,952

468

△648,483

△99.9%

関係会社経営指導料

976,184

2,511,917

1,535,732

157.3%

その他の収入

872,114

143,262

△728,852

△83.6%

合計

7,271,476

3,229,519

△4,041,957

△55.6%

営業費用

7,235,867

3,003,060

△4,232,807

△58.5%

営業利益

35,608

226,458

190,850

536.0%

経常利益

258,288

406,445

148,156

57.4%

当期純利益

154,979

187,515

32,536

21.0%

 

 ハウスコム株式会社は、2022年10月1日に実施した分社化により、営業収益の一部が子会社にて計上されることとなったため、2024年3月期に単体で計上する営業収益が2023年3月期に比べ大きく減少しております。単体における当事業年度の業績は、営業収益3,229百万円(前期比55.6%減)、営業利益226百万円(前期比536.0%増)、経常利益406百万円(前期比57.4%増)、当期純利益187百万円(前期比21.0%増)となりました。

 2022年10月に持株会社体制へ移行し、分社化を実施して以来、ハウスコム株式会社と連結子会社15社でコア事業である不動産賃貸仲介業務及びその関連サービスや、原状回復工事・リフォーム・請負建築工事等の施工関連事業に従事しています。当分社化の後、子会社が店舗で行う賃貸仲介等によって発生する仲介手数料・付帯収入及びリフォーム事業の収益は原則として子会社の営業収入として計上されるとともに、人件費・家賃・諸経費等の店舗運営費用は子会社の費用として計上される等、当社グループ内で発生する営業収益・費用の多くは子会社で計上されるようになりました。一方で、関係会社経営指導料については2023年3月期が分社後の10月から3月が計上されていることに対し、2024年3月期は4月から3月までが計上されております。これらの結果、ハウスコム株式会社単体で計上する営業収益が2023年3月期に比べ大きく変動し、その増減率は55.6%減となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

 該当事項はありません。

 

② 受注実績

 該当事項はありません。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

不動産関連事業

11,951,172

95.3

施工関連事業

1,577,880

96.3

合計

13,529,052

95.4

(注)主な相手先別については、前連結会計年度及び当連結会計年度における相手先別の販売実績の総販売実績に対す

る割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2) 財政状態

 当連結会計年度末における総資産は、10,781百万円(前連結会計年度末は11,482百万円)となり、前連結会計年度末と比べ701百万円減少しました。

 

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、6,480百万円(前連結会計年度末は5,808百万円)となり、前連結会計年度末と比べ672百万円増加しました。これは現金及び預金が408百万円増加したことが主たる要因であります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、4,300百万円(前連結会計年度末は5,674百万円)となり、前連結会計年度末と比べ1,373百万円減少しました。これは営業保証金が956百万円減少したことが主たる要因であります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、2,639百万円(前連結会計年度末は3,597百万円)となり、前連結会計年度末と比べ958百万円減少しました。これは持株会社体制移行前に供託していた営業保証金が還付されたことにより、当該還付金で短期借入金1,000百万円を返済したことが主たる要因であります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は、901百万円(前連結会計年度末は866百万円)となり、前連結会計年度末と比べ34百万円増加しました。これは退職給付に係る負債が55百万円増加したことが主たる要因であります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、7,240百万円(前連結会計年度末は7,018百万円)となり、前連結会計年度末と比べ222百万円増加しました。これは剰余金の配当を123百万円行ったこと、並びに親会社株主に帰属する当期純利益410百万円を計上したことが要因であります。

 

 当社グループの当連結会計年度末における財政状態は、以下のとおりです。

(単位:千円)

 

 

2023年3月末

2024年3月末

増減額

流動資産

5,808,093

6,480,363

672,269

有形固定資産

403,035

330,997

△72,038

無形固定資産

1,810,592

1,517,818

△292,774

投資その他の資産

3,460,811

2,451,830

△1,008,981

資産合計

11,482,533

10,781,008

△701,524

 

 

2023年3月末

2024年3月末

増減額

流動負債

3,597,622

2,639,287

△958,334

固定負債

866,451

901,167

34,716

純資産

7,018,459

7,240,553

222,094

 

 

2023年3月末

2024年3月末

自己資本比率

60.9%

66.9%

 

 当社グループの財政状態は、これまでの事業活動の結果として資金と資本の蓄積が進み、高い水準の自己資本比率(66.9%)となっており、安全性の高い状況にあると認識しています。企業環境と事業戦略により重視すべき基準が変わり得るため単独の指標による評価は行っておりませんが、現時点では、成長投資向け資金・株主還元用原資が確保されているとともに、不確実性に対応することのできる財務内容であるものと評価しております。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、5,228百万円(前連結会計年度末4,820百万円)となり、前連結会計年度末と比べ408百万円増加しました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、754百万円(前連結会計年度に獲得した資金670百万円)となり、前連結会計年度に対して84百万円収入が増加しました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益568百万円、非資金取引である減価償却費321百万円であります。主な減少要因は法人税等の支払額310百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果獲得した資金は、907百万円(前連結会計年度に使用した資金1,279百万円)となり、前連結会計年度に対して2,186百万円収入が増加しました。主な増加要因は、営業保証金の回収による収入961百万円であります。主な減少要因は、定期預金の預入による支出100百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、1,253百万円(前連結会計年度に獲得した資金883百万円)となり、前連結会計年度に対して2,137百万円支出が増加しました。主な減少要因は、短期借入金の返済による支出1,000百万円であります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、重要な設備計画(資本的支出)を予定していないため、問題ないものと判断しております。

 

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率(%)

60.9

66.9

時価ベースの自己資本比率(%)

73.6

68.3

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

(注)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成して

います。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定

を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連

結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。