文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)当連結会計年度における経営成績の状況及び経営者の視点による分析・検討内容
|
連結業績概要 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年同期 |
|
|
(千円) |
(千円) |
差額 (千円) |
増減率 (%) |
|
|
売上高 |
2,696,814 |
2,808,027 |
111,212 |
4.1 |
|
EBITDA(営業利益+減価償却費) |
682,822 |
658,755 |
△24,067 |
△3.5 |
|
営業利益 |
234,567 |
176,223 |
△58,343 |
△24.9 |
|
経常利益 |
236,432 |
208,984 |
△27,447 |
△11.6 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
158,150 |
146,131 |
△12,018 |
△7.6 |
当社グループは、「テクノロジーと心で、たくさんのいい生活を」というミッションの実現に向け、「心地いいくらしが循環する、社会のしくみをつくる」というビジョンを掲げ、不動産業並びに不動産市場における様々な課題を解決するシステム・アプリケーションを企画・開発し、継続課金モデル・サブスクリプションで料金をお支払いいただくクラウド・SaaSとして提供することで、不動産業並びに不動産市場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する事業を展開しております。
当社がフォーカスする不動産業ならびに不動産市場においては、引き続き業務効率化と、より良い顧客サービスの提供を企図したDXの推進は大きな関心事項となっており、業務全般のシステム化と賃貸住宅管理業法への対応の中でSaaSが選好される流れは継続していると見ております。
当連結会計年度においては、エンタープライズ企業への当社SaaSの新規導入や、既存顧客へのアップセル/クロスセル等により、SaaSの月額利用料について平均顧客単価は引き続き上昇の傾向が継続し、SaaSの月額利用料収入を中心とするサブスクリプション売上は前年同期比7.6%増の2,435,104千円となりました。
ソリューション売上については、主に不動産賃貸管理業を中核とする比較的規模の大きなエンタープライズ企業への当社SaaSの導入に向け注力してきたことに伴い、ソリューション売上を構成する拡張開発・導入支援プロジェクトについて、顧客規模の大型化並びに案件規模の大型化、要件の複雑化、期間の長期化傾向がみられました。いくつかの進行中のプロジェクトについては部分的に納品・売上計上に至っているものの、当初見込みより遅れており、次年度以降に納品・計上がずれ込む案件が発生しております。そのためソリューション売上については前年同期比で13.8%減の372,922千円となりました。
以上の結果、売上高は2,808,027千円(前年同期比4.1%増)と、前年同期より111,212千円の増収となりました。
また、サブスクリプションの顧客数は当連結会計年度末時点で1,505法人(前年同月1,490法人)となり、平均月額単価(※1)については、3月実績約140,100円/法人(前年同月133,200円/法人)となりました。
(※1)「当月のサブスクリプション売上高」を「当月のサブスクリプション顧客数」で除した数字で、100円未満を切り捨てております。
(※2)SaaS導入後の運用支援契約に基づく経常的な売上高につきまして、2024年3月期から「ソリューション売上」ではなく「サブスクリプション売上」の区分として表示しております。それに伴い、過年度の平均月額単価に関しましても、同方針に基づいて再算出した数値を表示しております。
なお、売上高の内訳については下記のとおりであります。
|
品目詳細 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年同期 |
|||
|
売上高(千円) |
構成割合(%) |
売上高(千円) |
構成割合(%) |
差額(千円) |
増減率(%) |
|
|
サブスクリプション(注)1 |
2,264,103 |
84.0 |
2,435,104 |
86.7 |
171,001 |
7.6 |
|
ソリューション(注)2 |
432,711 |
16.0 |
372,922 |
13.3 |
△59,788 |
△13.8 |
|
合計 |
2,696,814 |
100.0 |
2,808,027 |
100.0 |
111,212 |
4.1 |
(注)1. サブスクリプション:SaaSの月額利用料収入など、解約の申し出がない限り毎月継続的に発生する収益であり、当社のMRR(Monthly Recurring Revenue、月間経常収益)であります。
2. ソリューション :SaaSの初期設定、システム導入・運用支援、システムの受託開発、他社サービスの代理店販売・紹介料など、その他のサービスに係る収益であります。
3.SaaS導入後の運用支援契約に基づく経常的な売上高につきまして、2024年3月期から「ソリューション売上」ではなく「サブスクリプション売上」の区分として表示しております。それに伴い、過年度の売上高に関しましても、同方針に基づいて組み替えた数値を表示しております。
当社SaaSを運用するサービスインフラ基盤であるIaaS(Infrastructure as a Service)を提供するベンダーとは米ドル建てでの取引を行っており、昨今の円安の影響でその利用料等が増加いたしました。また、新卒採用を中心とした人的資本投資の拡大、ならびに導入支援プロジェクトの大型化に伴う協力会社への外注費の増加等により、売上原価は1,206,534千円(前年同期比10.0%増)となりました。
新卒を中心とした積極的な採用によるマーケティング・セールス・サポート体制の拡充により、人的資本への投資を進めた結果、販売活動にかかる人件費および求人関連費等が増加いたしました。その結果、販売費及び一般管理費は1,425,268千円(前年同期比4.4%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるEBITDAは658,755千円(前年同期比3.5%減)と前年同期より24,067千円の減益、営業利益は176,223千円(前年同期比24.9%減)と前年同期より58,343千円の減益となりました。
なお先述した米ドル建てでの取引に係る為替リスクの低減手段として為替予約を行っており、昨今の円安の影響で当該為替予約に係る為替差益が営業外収益として発生いたしました。その結果、経常利益は208,984千円(前年同期比11.6%減)と前年同期より27,447千円の減益となりました。
なお、当社グループの開示上の報告セグメントは「クラウドソリューション事業」の単一セグメントであるため、セグメントの業績については記載を省略しております。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因及び客観的な指標の達成、進捗状況について
当社グループの経営成績は、様々な要因から影響を受けております。中でも経営成績に特に重要な影響を与える要因は、「顧客数」及び「平均月額単価」であります。「顧客数」及び「平均月額単価」が計画どおりに達成できない場合や新サービスの開始時期等が計画通りに進捗しなかった場合は、経営成績に悪影響を与える可能性があります。
なお、上記に記載した事項以外に、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び「3.事業等のリスク」に記載している事項も、経営成績に影響を与えるものとして考えられると見ております。
また、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載している中長期的な経営目標である指標としての「顧客数:5,000社」及び「顧客単価(月額):100,000円以上」の達成、進捗状況につきましては、前述の「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)当連結会計年度における経営成績の状況及び経営者の視点による分析・検討内容」をご参照ください。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての経営者の視点による分析・検討内容
①財政状態の分析
(ⅰ)資産
当連結会計年度末における資産合計は、2,540,599千円となり、前連結会計年度末から183,539千円の増加となりました。主な増加要因は、ソフトウエアの増加157,979千円、当社SaaSの拡張開発・導入支援について進行中のプロジェクトに係る仕掛品の増加47,304千円等であります。
(ⅱ)負債
当連結会計年度末における負債合計は593,879千円となり、前連結会計年度末から71,915千円の増加となりました。主な増加要因は、顧客から前払いで受領しているSaaS月額利用料の増加に伴う前受金の増加43,977千円、未払金の増加31,682千円等であります。
(ⅲ)純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は1,946,719千円となり、前連結会計年度末から111,624千円の増加となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加146,131千円、及び配当金実施に伴う利益剰余金の減少34,507千円によるものであります。
②キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べて67,600千円減少し、739,371千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、618,327千円の増加(前年同期635,758千円の増加)となりました。主な収入の要因は、減価償却費482,531千円及び税金等調整前当期純利益208,984千円等であります。
(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、656,485千円の減少(前年同期525,402千円の減少)となりました。主な支出の要因は、SaaSの新規開発・機能拡充等に係る無形固定資産の取得による支出637,556千円等であります。
(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、34,484千円の減少(前年同期34,481千円の減少)となりました。支出の要因は、配当金の支払額34,484千円であります。
(ⅳ)資本の財源、資金の流動性等その他キャッシュ・フロー関連分析
当社グループの事業活動における資金需要の主なものとしましては、拡販サービスを始めとするクラウドサービスの開発に必要な資金であり、当該開発投資額につきましては原則として営業活動によるキャッシュ・フローから調達することを基本としており、これが資本の財源であります。
その他、資金の流動性等キャッシュ・フローに関連する指標は、次のとおりです。
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
自己資本比率(%) |
81.0 |
83.0 |
78.2 |
77.9 |
76.6 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
115.3 |
204.9 |
125.9 |
149.3 |
166.0 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.1 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
2,002.3 |
4,179.9 |
50,250.2 |
167,084.9 |
3,306,566.0 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注)2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)をベースに計算しております。
(注)3.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。
(注)4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループのクラウドソリューション事業における、システム・アプリケーションの受託開発、当社クラウド・SaaS導入/運用の支援等につきましては、請負契約の形態をとっており、「生産」という概念には適合しないため、記載しておりません。
② 受注実績
当社グループのクラウドソリューション事業における、システム・アプリケーションの受託開発、当社クラウド・SaaS導入/運用の支援等につきましては、請負契約の形態をとっており、その受注実績は下記のとおりであります。
|
品目 |
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
システム・アプリケーションの受託開発、 当社クラウド・SaaS導入/運用の支援 等(千円) |
339,551 |
99.3 |
172,406 |
88.0 |
③ 販売実績
当連結会計年度のクラウドソリューション事業における販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
サブスクリプション (千円) |
2,435,104 |
107.6 |
|
ソリューション (千円) |
372,922 |
86.2 |
|
合計(千円) |
2,808,027 |
104.1 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
(注)2.SaaS導入後の運用支援契約に基づく経常的な売上高につきまして、2024年3月期から「ソリューション売上」ではなく「サブスクリプション売上」の区分として表示しております。それに伴い、前年同期比に関しましても、同方針に基づいて組み替えた数値を表示しております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に、当社は、主力であるクラウド・SaaSの提供にあたり、サービス提供用のシステムを開発しており、収益獲得効果が確実なものについて資産計上しておりますが、マーケット状況の急激な変化等によりその効果が実現しない可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、顧客とそのエンドユーザーである消費者により良いサービスを提供し続けるために、新しい情報技術を日常的に調査し、有用と判断したものについて顧客向けサービス用に取り込むことで当社の提供するクラウドサービスを進化させ続けており、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(クラウドソリューション事業)
当社グループは学校法人早稲田大学等とソフトウェアシステムおよびサービスの高信頼・高効率・高価値開発運用に関する研究を共同して取り組んでおります。本研究はテスト工程における品質検査情報を用いてソフトウェアの欠陥発生を予測する開発意思決定支援に関する研究と、ソフトウェア開発の計画立案を支援し、顧客満足度を向上する目的としてユーザのソフトウェア利用履歴等をもとに機械学習等を用いて実ユーザのユーザ像を導出・分析する方法の研究であり、当該研究開発費は