第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、コミュニケーションを事業ドメインとし、企業、通信事業者、官庁・自治体、社会インフラ事業者といった幅広いお客様にシステム、サービスを提供しております。通信インフラの施工からはじまり、時代の変化に合わせて企業のネットワークのSIや働き方改革などのソリューション・サービスへと事業を拡大してきた「施工力を有するSIer」という独特のポジションを築いております。日本全国に営業や多様な技術者、各種サービス拠点を有し、お客様のインフラを素早く高い技術でサポート出来ることや、お客様の現場に根付いたサービスを提供出来ることが当社の特徴の1つになっております。このような特徴を活かし、様々な製品やサービス、ネットワークなどをインテグレートして、お客様に使いやすいものとしてご提供するのが当社の付加価値であり、NECグループとして要求される高い技術力・信頼性を、NEC製品に限らず、お客様のニーズに合わせたマルチベンダーサービスとして提供しております。このような当社の付加価値を強化するために、最先端/ベンチャー技術を含む様々なパートナーと共創するとともに、様々な製品・サービスを自ら使いこなし、その効果を実証した上で、時代に先駆けてお客様に使いやすい新たなサービスとして素早く創造し提供していくことに取り組んでおり、このようなイノベーションの加速により、成長力、収益力の強化を図ってまいります。

 また、当社グループでは2017年1月に、これまで培ってきた価値観やDNA、将来を見据えた目指す姿・企業像などを明文化した「私たちNECネッツエスアイグループは世界中の人々が安心・安全で豊かな明日を過ごせるよう、長年培ってきた確かな技術と信頼のサービスで海底から宇宙まで、つながる社会を支え、より快適で便利なコミュニケーションをデザインし続けます」というNECネッツエスアイグループ宣言を制定いたしました。

 これに基づき、当社は、自社の強みを活かしパートナーとの共創で新しいバリューチェーンをプロデュースするコミュニケーションサービス・オーケストレーターとして、「コミュニケーションで創る包括的で持続可能な社会」の実現を目指しております。これは、コミュニケーション技術により世界中のすべての人が十分な情報に接し、教育や医療等が格差無く受けられる社会、自由なコミュニケーションにより世界中の壁が取り払われた平和な社会、コミュニケーションによる知恵をあわせてあらゆる社会課題を解決する社会であります。当社は、この目指す社会像への貢献と自社の持続的な成長実現のための重要な取り組みとして「マテリアリティ」を6項目特定しております。

 社会の持続的発展のための優先的な価値提供のマテリアリティとして、「誰もがより活き活きと働ける環境の創造」、「先進テクノロジーを活かした楽しく豊かな街づくり」、「発展する社会の安心安全を支える万全なサービスの提供」という3つを掲げ、コミュニケーション技術の活用や幅広いパートナーとの共創等を通じて2030年までに実現させてまいります。

 さらに、社会にこうした価値を創出し続けるために、「健全で透明性の高い経営の徹底」をベースに「新たな価値を創出するイノベーション力の強化」、「一人ひとりが活き活きと輝く環境づくり」といった特に重要な自社成長のための3つのマテリアリティを実践することで、自社の経営基盤の強化にも取り組んでおります。

 また、気候変動が深刻化してくるなかで、持続可能な社会の実現に向けて、自社だけでなくパートナーと連携して環境負荷の低減を図るとともに、お客様の環境課題の解決に向けたサービスの提供を進めてまいります。

 当社グループはお客様にとって必要不可欠なパートナーとして、より一層ご満足頂けるサービスを提供するとともに、高い競争力と収益力を備えた存在感を発揮する会社として、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2)経営戦略

 現在、地域紛争をはじめとする国際的緊張の高まりや地球温暖化に伴う気候変動問題、人口の増加に伴う食糧問題、日本においては少子高齢化に伴う労働力不足や自然災害など、持続可能な社会の実現に向けて様々な課題に直面し、社会構造や人々の暮らしも大きく変容してきております。また、ボーダレス化の進行により、国籍や業種、既存の枠組みといったさまざまな垣根が無くなりつつあり、そのなかで社会や企業は、経営スピードを上げ、国際競争力を高めるために、ビジネスモデルやプロセス、労働生産性・働き方の革新を迫られております。

 一方、テクノロジーの面では、デジタル技術の進化やネットワーク技術の高速/高度化など、新型コロナウイルス感染症を経て、大きな変革の波がより加速しております。

 当社グループは、このような動きに対応し、中期経営計画(2023年3月期から2025年3月期)において、「DX×次世代ネットワーク(Beyond 5G(※1))」をテーマとして、成長に向けた取り組みの加速を図っております。

 これは、これまで積み重ねた実践ノウハウと現場を知り尽くしている当社グループの強みを「実践型&現場密着型コンサルティング」に昇華させ、当社グループの事業領域である実装、運用フェーズにおける高い技術力・信頼性、全国対応力といった強みと組み合わせることで顧客価値の創造、向上を図るものです。これにより、お客様との関係性を「ともに新しい社会価値を創造していく戦略パートナー」に深化させ、経験、データの蓄積を通じて、社会・顧客価値の創造力をさらに高めていくリカーリングモデルの確立を目指しております。

 このリカーリングモデルを推進するにあたり、以下の3点を重点テーマとして取り組んでおります。

 

① オリジナルな価値創造の加速

起点となる実践型&現場密着型コンサルティング機能の強化を進めるとともに、お客様の課題に寄り添った用途別DXサービスメニューならびに共通プラットフォームの強化・拡充を行い、スピード・コスト面と、お客様伴走による最適解提供という両面での最適化を推進します。さらに、それらを通じてお客様やパートナーとの共創実践によるイノベーションを加速し、他社から一歩先んじた新たな提供サービスにつなげるリカーリングモデルを構築します。

② 課題解決力の高度化

企業、通信事業者、官庁・自治体、社会インフラ事業者といった幅広いお客様向けに蓄積してきた現場力やノウハウに、次世代ネットワーク・インフラの構築力とデジタル・サービスの創出・提供力とを組み合わせることで、お客様の経営課題のみならず気候変動対応などの社会課題の解決につながる、より高度なサービスを提供し、サステナブルな社会価値の創造を目指します。

③ “全社”のDXネイティブ化

業務におけるデジタル技術と次世代ネットワークの活用をさらに徹底し、推進することで、品質・スピード・生産性ならびに収益力の向上を図るとともに、それらをリファレンスモデルとして確立し、お客様への提供を目指すと同時にこれらを担う人材の育成にも注力いたします。

 

 これらの取り組みを推進した結果、中期経営計画2年目となる当期においては、コンサルティング型アプローチの拡大やリカーリングな取引関係を築くことが出来た大口顧客数の増加などに成果が見られ、大手通信事業者の設備投資抑制の影響を大きく受けたなかでも、過去最高の受注高、売上高、売上総利益を上げることができました。

 収益性についても、企業向けを中心としたDXソリューション分野において、お客様との共創関係が強化されるなかで、働き方DXサービスや次世代ネットワーク・セキュリティなどの注力分野が大幅に拡大しており、企図したとおりの成果が出始めていると考えております。今後、デジタル技術を活用した取り組みを他の領域へも適用していくことがさらなる収益性の改善に重要と認識しております。

 

 これらを受け、新年度における事業分野別の取り組みは以下のとおりです。

 DXソリューション分野では、マルチクラウドから既存のICT(※2)インフラまでをつなぐ独自のサービス基盤を活用しつつ、自社実践ノウハウを活かした働き方DXサービスや次世代ネットワーク・セキュリティなど、市場のニーズに即したテーマを中心に、お客様との共創パートナーとしてリカーリングな事業を加速させてまいります。

 ネットワークソリューション分野では、大手通信事業者の設備投資が抑制されるなかで、高度な技術力を活用し、市場の拡大が期待される海洋や宇宙・防衛などの社会基盤事業を拡大するとともに、次世代ネットワークを軸に独自事業を確立してまいります。

 社会・環境ソリューション分野では、消防システムなど市場が活性化する領域や当社の強みを有する領域にフォーカスするとともに、幅広い社会・公共領域での顧客基盤とその提供サービスを熟知した事業ノウハウを基盤に、社会インフラやその運用現場へのDX技術の活用や、安心安全・環境負荷低減につながるソリューションの提供に注力してまいります。また、このようなライフラインを支えるサービス基盤についてもデジタル技術を実装することで、より高品質で効率的な基盤へと強化してまいります。

 

 なお、当社グループにとって、最大の経営資源は「人材」です。全社のDXネイティブ化を進めるとともに、魅力ある会社としての組織風土のさらなる改善を図ることで、従業員のエンゲージメント向上に努めております。一人ひとりが活き活きと輝く職場の実現に向け、インクルージョン&ダイバーシティに取り組むとともに健康経営を推進し、働き甲斐のある環境を維持・向上させることで、従業員にとっての「身体的・精神的・社会的に良好な状態(well-being)の向上」を支援し、健全な経営とともに、豊かな社会の実現に貢献してまいります。

(健康経営の推進について:https://www.nesic.co.jp/sustainability/social/health/index.html)

 

 

 これら戦略の実行により、2025年3月期においては、以下の財務目標の達成を目指しております。

 

2025年3月期

目標

(参考)

2024年3月期

売上高

3,650億円

3,595億円

営業利益

(営業利益率)

290億円

(7.9%)

251億円

(7.0%)

親会社株主に帰属する当期純利益

(当期純利益率)

180億円

(4.9%)

153億円

(4.3%)

 

 加えて、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)それぞれの取り組みを推進することが当社の企業価値の持続的な向上に繋がると考え、非財務目標を設定して取り組んでおり、当社グループの企業価値向上と、社会価値の提供の拡大に努めてまいります。

 

 

目標

2024年3月期

達成時期/補足

温室効果ガス排出量※1

(Scope 1、2)

89%削減

(2020年3月期比)

66%削減

(2020年3月期比)

2025年3月期まで

高度人材

の育成※2

コンサル人材

190人

75人

2025年3月期

DX人材

1,190人

564人

2025年3月期

次世代NW人材

1,580人

1,440人

2025年3月期

エンゲージメントスコア※3

50%

28%

2025年3月期

女性管理職比率

10.0%

7.0%

2027年3月期

注:エンゲージメントスコア以外は当社単独値

※1.企業として気候変動対応への貢献をさらに加速化、責務を果たすべく、2022年5月の発表からScope1、2のCO2排出量削減目標を前倒し修正しております。2024年3月期の削減率については、第三者検証実施前の算定値に基づくものであり、検証の結果変更の可能性があります。

※2.資格/研修等による従来の定義に加え、習得したスキルレベルなどを判定基準に加えたことにより、2022年5月の発表から定義や目標値を見直しております。

※3.社員と企業の愛着心や信頼関係を数値化したスコア。関連質問6問(6件法(1~6点))で平均が4.5以上となった社員の割合

(スコア:グローバル人事コンサルティング会社 「 Kincentric 社 」 サーベイによる)

 

※1 5G:

第5世代移動通信システムを指し、5th Generationの略。

※2 ICT:

Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。

2【サステナビリティに関する考え方および取り組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(サステナビリティ方針)

 NECネッツエスアイグループは「コミュニケーションで創る包括的で持続可能な社会」の実現に向け、企業活動や事業を通じて、安心・安全で快適な暮らしおよび地球環境の維持、改善に向けステークホルダーの皆様とともに取り組んでまいります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンスおよびリスク管理

① ガバナンス

社会と自社のサステナブルな成長に取り組むことが重要な経営課題であると認識しております。

経営戦略に関わる重要事項として、サステナビリティ・ESG戦略や、事業に大きな影響を及ぼすリスクや機会についての戦略・施策検討や意見交換、およびモニタリングを、経営品質向上委員会の下部組織であり代表取締役執行役員社長兼CEOが委員長を務めるサステナビリティ推進委員会にて実施しております。

サステナビリティ推進委員会には社外取締役等がオブザーバーとして参加し、さらに当該委員会での討議結果を取締役会へ報告することで、当社グループのサステナビリティが適切に推進されるよう監督しております。

 

<当社グループのサステナビリティ推進体制>

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② リスク管理

近年、地政学リスクの高まりと発現による安全保障上の脅威や、感染症リスクを代表とする多重的なリスク、気候変動による大規模自然災害の増加など、企業が考慮しなくてはならない脅威の範囲が広がっております。

 当社グループでは、サステナビリティ全般におけるリスク管理について、高度に変化する事業環境のなかで、多様化するリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスク管理を行っております。サステナビリティ全般の重要リスクおよび機会につきましては、経営品質向上委員会を中心としたリスク管理体制にて抽出、管理を実施しております。また、経営戦略やそれに基づく施策の方針につきまして議論する機関であるサステナビリティ推進委員会において、討議を通じて得た対策を実行するとともに、コーポレートガバナンス・コードを踏まえ取締役会への報告を実施し、継続して社外への開示を行っております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

・気候変動対応

・人的資本

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下のとおりであります。

 

① 気候変動対応

当社グループにおいては、気候関連財務開示の重要性を認識した上で、IFRS財団が、当連結会計年度末日時点において、企業の気候関連開示の進捗に関する監督をTCFD(※1)から引き継いでいることから、こちらのコアコンテンツのフレームワークとの平仄を考慮に入れた上で、TCFDが推奨する4つの開示項目「a.ガバナンス」「b.戦略」「c.リスク管理」「d.指標および目標」に基づいて開示しております。

 

a. ガバナンス

サステナビリティ経営における気候変動への対応は、事業活動において経営判断を要する重要な課題であるため、代表取締役執行役員社長兼CEOの責任のもと、環境方針を制定しております。その方針に基づき、自社の環境負荷・リスクの継続的な低減と事業を通じた貢献の拡大という両面から商品開発等の取り組みを行っております。

 サステナビリティ推進委員会内のテーマを扱う中央環境管理委員会は、委員長を環境担当役員が務め、中長期目標の策定や省エネに関わる投資などの環境経営推進上の重要事項につきまして討議を行っております。

 事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件(ビジョン、中期経営戦略、大型投資など)につきましては、サステナビリティ推進委員会で討議し、取締役会に報告しております。

 さらに、NECグループの一員として「2050年を見据えた気候変動対策指針」に基づき、NECグループ環境経営目標である「NEC環境ターゲット2030」の達成に向け、事業活動によるCO2排出量削減目標を設定し活動を推進しております。

 当社のカーボンニュートラル戦略/経営を強化、推進するため、2022年4月に「カーボンニュートラル推進本部」を設置いたしました。カーボンニュートラル推進本部では、全社のカーボンニュートラル戦略の立案、方針策定、マイルストン、目標等の骨格策定を行うとともに、関連部門と連携し、競争優位性の構築、新事業機会の探索、顧客/パートナーとの共創やカーボンニュートラル達成に必要なグリーントランスフォーメーション(GX)戦略の立案を進めております。

 

b. 戦略

当社グループは、気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトの評価および対応策の立案が、当社が目指す社会像「コミュニケーションで創る包括的で持続可能な社会」の実現、および事業の持続可能性に不可欠であると認識しております。

当社グループでは、気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、下記の複数シナリオにおけるシナリオ分析を実施し、あわせてNECグループとして想定した国内の脱炭素シナリオにつきましても参照し、自社の長期戦略における事業環境認識と照合、差異分析を行いました。

 

参照シナリオ

1.5~2℃シナリオ

4℃シナリオ

移行シナリオ

国際エネルギー機関(IEA)による移行シナリオ

APS(Announced Pledges Scenario)

NZE(Net Zero Emissions by 2050)

国際エネルギー機関(IEA)による移行シナリオ

STEPS(Stated Policies Scenario)

物理シナリオ

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動予測シナリオ

RCP1.9、RCP2.6

SSP1-1.9 、SSP1-2.6

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動予測シナリオ

RCP8.5

SSP5-8.5

 出典:IPCC AR5・6 、IEA World Energy Outlook 2021・2022

 

本シナリオ分析には、環境、企画、広報部門ならびに事業部門が連携し、全社にて議論を重ね進めております。議論の結果、1.5℃~2℃シナリオにおいては、特に脱炭素社会への移行に向けた大胆な政策や技術革新が進められると分析いたしました。移行リスクにつきましてはエネルギー価格の上昇や資材価格高騰、部材確保難などが顕在化すると分析いたしました。

4℃シナリオにおいては、基本的にリスクや機会につきましては同様となるものの、大雨・洪水の多発や激甚化に伴う顧客設備復旧対応や障害発生頻度の増大などの物理リスクが相対的に高くなると考えられます。一方で、脱炭素化に向けた社会全体での温室効果ガス排出抑制・再生可能エネルギーへのニーズの高まりは、当社にとってカーボンニュートラルに貢献するさまざまなICT(※2)サービスを提供する機会につながると評価しております。

それぞれのリスクの詳細と影響額、ならびにリスクへの対応とそれによる成長機会について分析・評価した結果は、当社ポータルサイト「気候変動問題への取り組み」をご参照ください。

https://www.nesic.co.jp/sustainability/environment/teigen.html#anc-Col3

 

c. リスク管理

 気候変動に関するリスク管理はサステナビリティ全般のリスク管理のなかで、同じシステムに則り対応を行っております。

 

 

d. 指標および目標

当社グループでは、1996年に環境方針を制定して以来、事業活動における継続的な環境負荷低減はもとより、環境に配慮した製品・サービスをお客様に提供することによって、社会全体の環境負荷低減に貢献し、持続可能な社会の実現のための活動を継続して実施しております。

NECグループの一員として、NECグループ環境経営目標である「NEC環境ターゲット2030」に沿って、2023年度にGHG削減目標につきまして主要KPIを設定しましたが、企業として気候変動対応への貢献をさらに加速化、責務を果たすべく、Scope1、2のCO2排出量削減目標を前倒ししております。

また、Scope3につきましては、サプライチェーンへの働きかけを通じCO2排出量データの精緻化を進めるとともに、2023年度にSBTi(※3)が示す水準に整合した削減目標を設定いたしました。

 

<主要KPI 目標/達成状況(当社単体)>

 

削減目標(2019年度比)

備考

Scope1、2

2023年度

▲ 57% ⇒ ▲ 66%(削減実績)

 

2024年度

▲ 89%

2024年度末時点
Scope2実質ゼロ達成

2030年度

▲100%

2030年度末時点

Scope1、2実質ゼロ達成

Scope3

2030年度

▲ 35%

 

 

Scope1、2、3の第三者認証後の確定値につきましては、2024年秋頃に当社ポータルサイト「環境データ」に掲載される予定となっておりますので、ご参照下さい。

https://www.nesic.co.jp/sustainability/environment/data.html

 

② 人的資本

a. 戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針)

当社は、「コミュニケーションで創る包括的で持続可能な社会」の実現を掲げ、社会やお客様とともに持続的に成長・発展していくことを目指しており、その価値創出の源泉は「人材」であると考えております。

 

(イ)「変化し続けるNECネッツエスアイ × 挑戦し成長し続ける個人」

当社グループは、お客様のニーズと技術変化にあわせて事業の変革を繰り返し、成長し続けてきました。これらの歴史のなかで培われ、磨き続けてきたDNAが「挑戦心」「自律性」「共創力」「専門性」であります。

当社グループは、技術、環境変化に適応した人材の育成、機動的な配置等により、常にお客様に最適なサービスの提供を追求し、変化、成長し続けてまいりました。私たちは、それに不可欠な一人ひとりの社員がプロフェッショナルとして自律的に挑戦を続け、高みを目指す環境づくりが重要であると考えております。これらにより、組織/個人が創造性とパフォーマンスを最大限発揮し、当社グループが持続的に成長、発展し続けることを目指してまいります。

2022年5月発表の中期経営計画「Shift up 2024」では、社会実装段階に入りつつある「DX(※4)×次世代ネットワーク」の具現化と、より高い社会価値の提供に向け、高度な専門性を有する多様な人材の獲得・育成を進めるとともに、人材への積極的な投資を進めていきます。

これら社会課題の解決と事業成長の両面を支える人材戦略への取り組みを加速してまいります。

 

(ロ)自社実践を通じた創造性、イノベーション人材の育成

当社は、2007年より他社に先駆けて働き方改革に取り組み、全社での自社実践・実証を通じてさまざまなサービスを創出するとともに、制度や仕組み、オフィス環境につきましても、これらの実践成果に基づき繰り返し改善を進めてきました。テレワークや分散型ワークもいち早く全社導入し、その実証・検証の成果、ノウハウがコロナ禍においてお客様に積極的に採用されるなど、お客様課題改善に大きく寄与しました。

また、先進技術の実証とオープンイノベーション創出の拠点として2020年に「日本橋イノベーションベース」を新設し、お客様やパートナー企業、ベンチャー企業など多様な関係者とのフラットな対話や共創を通じたイノベーション創出を誘発する環境整備を進めております。これらの諸活動を通じた人材育成にも注力しております。

 

(ハ)成長戦略実現のコアとなる高度人材育成

当社は、中期経営計画「Shift up 2024」において、コンサルタント人材、DX人材、次世代ネットワーク人材を重点強化人材と位置付け、高度な専門性を持つ人材の育成、獲得を強化しております。

2022年4月に新設したビジネスプロセスイノベーション推進本部に上流コンサル人材を集約し、専門性の高い提案活動を強化するとともに、諸活動を通じた実践的な人材強化を進めてまいります。また、DX先端技術領域においては、米国サンノゼの拠点に定期的に人材を派遣し、スタートアップ企業との事業共創や先端技術によるイノベーション推進を担う人材育成・拡充にも取り組んでおります。これらDX等の先端技術領域や基礎的な技術教育は、2020年に開設した「新川崎テクニカルベース」を拠点に、レベルに応じた教育体系やプログラムの拡充、様々な技術研修を通じて、専門性を有する人材の育成、技術力の強化に取り組んでおります。

 

(ニ)新たな価値を創出する多様な人材活躍・登用の推進

変化の激しい事業環境下において、多様な個性を持った社員がそれぞれの能力を十分に発揮することが、持続的な成長に不可欠なイノベーション創出の土壌とエンゲージメントを含めた社員の活力の強化につながるとの考えのもと、インクルージョン&ダイバーシティの取り組みを強化しております。2020年4月には、全社横断のインクルージョン&ダイバーシティ推進委員会を設立するなど、女性活躍推進をはじめ、外国人、高齢者、障がい者など、さまざまな属性を持つ社員が個性や創造性を十分発揮出来る風土およびキャリア醸成機会の提供に努めております。

また、属性に加えて、専門性や経験、感性、価値観などの多様性の確保にも注力しており、経験者採用による即戦力の強化を進めております。専門人材の拡充および組織管理職等の積極的な採用により、組織力および事業力の強化に多様な視点を活かす取り組みに注力するなど、人材の多様性推進に向け全社一体で取り組んでまいります。

ⅰ.女性活躍推進

当社では、女性管理職比率10%を目標(2027年3月期)に掲げ、女性活躍推進に積極的に取り組んでおります。主任、管理職への計画的な育成、登用の推進、次世代の女性活躍促進に向けたメンター・メンティ制度導入など組織横断的なサポート・ケアにより、働きやすさ向上とキャリア醸成に取り組んでおり、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定(最高位である3段階目の認定)を取得しております。

ⅱ.高齢者活躍推進

当社は、多くの経験や技術スキルを蓄積した社員が、定年後も活躍し続けることは、持続的な事業力強化や技術伝承など後継育成においても極めて重要であると考えております。その観点から「シニアパートナー制度」など整備し、それぞれの強み・専門性に応じた処遇を行うなど、高齢者が長く活躍出来るための取り組みを推進しております。

 

(ホ)自律的な成長・キャリア開発への挑戦機会の提供

当社では、「人事諸制度・処遇」「計画的な人事ローテーション」「適切な機会を捉えた研修機会」を組み合わせて統合的な人材育成を進めております。また、社員が自律的なキャリア形成を考え、そこに向けて自ら挑戦出来る機会、諸制度を提供しております。

新入社員から経営層まで、階層ごとに必要なスキルやマインドを習得出来る教育体系や全社横断プロジェクトへの自発的な参画促進を目的とした社内兼業制度の整備に加え、年齢・役職に問わず、全社員にチャンスが与えられるビジネスアイデアコンテスト「出る杭」を2021年から実施しており、新たな挑戦をする社員を育て評価する取り組みも進めております。

また、ラーニングカルチャー醸成のために17,000を超えるコースを自己負担なく自由に受講出来るオンラインの学習サービスを導入するなど、社員が自律的にキャリア形成する環境整備も進めております。

これらの取り組みは、「第5回プラチナキャリア・アワード」で最優秀賞を受賞するなど、社外からも高く評価されております。

 

(社内環境整備に関する方針)

当社では、多様な社員が安心して働き続けられる仕組みと、一人ひとりが自身の能力を十分に発揮し、共創やイノベーション、新しい価値を加速して生み出すための環境整備を進めております。あわせて、イノベーションの前提となる社員の活発なコミュニケーションを、Well-beingとインクルージョン&ダイバーシティの両面を推進することにより、個人、組織がより活性化し、イノベーションや新たな価値が創造されるとともに、持続的なエンゲージメント向上をもたらす良好なサイクルが生まれると考えております。

 

(イ)柔軟な働き方・働く場の整備

当社は、2007年から自社での実践・実証を通じた働き方改革と働く場であるオフィス環境改善に取り組むパイオニアとして、働きやすさと働き甲斐を持って社員が高いパフォーマンスを発揮出来る環境や制度、仕組みの持続的な改善に取り組んでおります。

育児休暇から復帰した女性社員によるプロジェクトチームからの提案を受けた実証実験を経て、2017年7月よりテレワークを全社導入しており、さらに2019年10月からは、コーポレートスタッフは首都圏7カ所に設置された通勤時間30分以内の最寄りのサテライトオフィス(アクティビティベース)や在宅勤務を併用した分散型ワークを実施しております。

また、多様な働き方への環境づくりとして、コアタイムのないフレックスタイム制度(スーパーフレックス)や時間単位有給休暇取得制度を2022年3月期より導入しております。テレワークと併用することで、社員一人ひとりの働く時間と場所の自律的なデザインを後押しし、個人やチームがより高い生産性を発揮することを期待しております。

 

(ロ)ワークライフバランス・両立支援の推進

当社では、社員が安心して働き続けられる環境整備に向け、労使で協力して取り組んでおります。

ⅰ.仕事と育児の両立

子どもを持つ社員が男女ともに安心して仕事と育児を両立出来るよう両立支援制度の充実ならびに施策に取り組んでおります。「従業員の多様な働き方を可能にする勤務制度」「育児関連制度の充実」「育児休職取得・復職しやすい環境づくり」等を高い水準で取り組んだ結果が評価され、2021年1月に次世代育成支援対策推進法の特例認定企業として「プラチナくるみん」マークを取得しております。

ⅱ.仕事と介護の両立

仕事と介護の両立を出来るよう両立支援制度の拡充、セミナーの開催、有益なノウハウ等の情報共有を行っております。2022年度には、介護等の事情がある社員に対し、所属の勤務地から遠く離れた場所に居住しながら勤務する働き方として遠隔地居住勤務制度を導入するなど、個々の事情に応じた多様な働き方をサポートする制度の拡充に積極的に取り組んでおります。

 

(ハ)健康経営の推進

当社の持続的な成長にとって、社員が健康であり続けることが不可欠であります。社員とその家族が健康的な習慣を身につけ、健康を維持・増進させることは、心身・社会的に充実した状態(Well-being)を作り、人生を豊かにするものであると考えております。当社では、代表取締役執行役員社長兼CEO自らが責任者となった健康経営推進体制のもと、「健康経営宣言」を制定し、健康経営の理念浸透や社員の健康増進に関する各種施策に取り組んでおります。

ⅰ.健康経営宣言

一人ひとりが活き活きと輝く環境づくり~日本一、健康で、コミュニケーションの良い会社へ~

社員とその家族一人ひとりが、自ら心身のコンディションを整え健康を大切にする文化、夢に向かってワクワクとした気持ちで働く環境・状態を創造します。

すべての社員の健康や活力を原動力として、豊かな社会の実現に貢献します。

ⅱ.健康経営への取り組み

当社では、従来より健康増進やメンタルヘルスケア、時間外勤務の抑制、有給休暇の取得徹底などを推進しております。近年は特に、生活習慣病リスクの低減に向け、脱たばこへの支援、対象者へのがん検診無償化、健康状態の見える化による健康意識向上・行動変容への取り組みを強化、推進しております。

健康状態の見える化では、希望者全員(2024年4月時点で約2,900名)にウエアラブル端末を配布し、健康管理アプリを活用した運動習慣や自律的な健康管理の意識・行動変容を促進する取り組みも進めております。また、社員の健康リテラシー向上施策の一環として2021年から受験推奨している一般社団法人日本健康生活推進協会が主催する日本健康マスター検定の認定保有者(ベーシック)が2,200名(2024年3月検定までの累計)を超え、国内でもトップクラスになっております。

これらの取り組みなどにより、健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))に認定されるなど、対外的にも評価されております。

 

(ニ)公平・公正な評価・処遇

公正な評価の実現に向けては、年齢、性別などに関わらず事業への貢献に応じた評価を行う処遇制度を確立し、各種法令、労働協約、社内規程に基づいて、役割と成果に応じた適正な賃金、賞与を支給しております。さらに、正規従業員には退職一時金、確定拠出年金制度(DC年金)などを設置し、中長期的なモチベーションにつながるインセンティブを導入しております。

 

(ホ)労働安全衛生の推進

当社は、従業員(派遣社員も含む)の安全と健康の確保と、快適で働きやすい職場の維持・向上のために、「安全衛生方針」において、理念、方針、目標を定めております。

ⅰ.基本理念

NECネッツエスアイは、労働安全衛生に関する諸法規を遵守し、職場および現場の作業環境を維持・向上させることにより、従事する者に安全で健康かつ快適な環境を提供します。

ⅱ.基本方針

1.法令・諸規則の遵守

2.職場・現場環境の維持・向上

3.従事者の健康増進

ⅲ.安全衛生目標

1.労働災害の撲滅

2.交通事故の削減

3.過重労働対策の推進

4.健康増進

 

b. 指標および目標

また、当社グループでは、上記「a.戦略」において記載した、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に関連する進捗につきまして、以下の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、以下のとおりであります。

 女性管理職比率

・目標:2027年3月末 10%

・実績:2024年3月末 7.0%(2023年3月末 5.9%)

 エンゲージメントスコア

・目標:2025年3月期 50%

・実績:2024年3月期 28%(2023年3月期 32%)

 ※グローバル人事コンサルティング会社 「Kincentric社」のサーベイを利用

50%は概ねグローバル上位25%に該当し、Tier1レベル

 

※1 TCFD:

気候関連財務情報開示タスクフォース。

※2 ICT:

Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。

※3 SBTi:

Science Based Targets initiativeの略。

※4 DX:

Digital Transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業の性質上、お客様の重要情報に接する機会が多く、また多くのお客様情報を保有していることから、情報セキュリティ確保を重要な経営課題と位置付け、「NECネッツエスアイグループ情報セキュリティ宣言」および「個人情報保護方針」を定め、代表取締役執行役員社長兼CEOをトップとした情報セキュリティ推進体制を確立し、グループ内の情報管理の強化を進めております。これらの方針、体制のもと、お客様や社内の情報管理・取り扱いをはじめとした情報セキュリティにつきまして、常に高い水準を維持出来るよう、「お客様対応作業および企業秘密取り扱いの遵守事項」等を含め、社内ルールを更新、整備し、従業員の意識向上を図るべく教育・啓発活動に取り組んでおります。

 また、情報システム面として、業務データの暗号化や情報漏洩対策を強化したPCの導入を推進するほか、日々、巧妙化・高度化するサイバーセキュリティ攻撃等の脅威に対応するため、当社独自のNESIC-CSIRT(Computer Security Incident Response Team)/SOC(Security Operation Center)を構築し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、緊急時に適切な対応を実現する体制を構築するなど、セキュアな情報システム構築にも取り組んでおります。第三者の認証につきましては、全社でプライバシーマークを取得するとともに、業務の特性に応じて、事業部単位で情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISO/IEC27001の認証を取得しております。

 このように当社グループでは、お客様情報の保護、管理に徹底して取り組んでおりますが、万が一、情報漏洩等の情報セキュリティに関する問題が発生した場合には、賠償費用の発生や、営業停止、取引停止に加え、当社グループの信用失墜による業績悪化が予想されるなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)システムやサービスの品質に関するリスク

 当社グループは、システムやサービスに対するお客様の要求が常に高度化、複雑化し続けるなか、最新の技術に基づくシステム、サービスの提供に努めるため、従業員等への教育を実施するとともに、ISO9001に基づいた活動等を通じ、常に最高品質、安全を追求し続けております。

 当社グループでは、このように品質管理に徹底して取り組んでおりますが、万が一、お客様の営業活動に影響を及ぼす欠陥や障害等が生じた場合には、賠償費用の発生や、営業停止、取引停止に加え、当社グループの信用失墜による業績悪化が予想されるなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)作業現場の重大事故に関するリスク

 当社グループは、お客様から大小様々な建設工事を請け負っており、現場の安全品質確保を重要な経営課題と位置付け、「安全衛生基本方針」および「品質マネジメント基本方針」を定め、安全品質推進体制を確立し、グループ内の安全品質管理の強化を進めております。このような体制下、現場において安全に作業を進めるとともに、安全品質リスクアセスメント、危険予知ミーティングの実施徹底や従業員等に対しても安全教育を実施し、事故が発生しないように日々取り組んでおります。

 当社グループでは、このように作業現場の安全品質確保に徹底して取り組んでおりますが、万が一、人身や施工物に関わる重大事故が生じた場合には、損害の補償、賠償費用の発生や、営業停止、取引停止に加え、当社グループの信用失墜による業績悪化が予想されるなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループでは、「NECネッツエスアイグループ行動規範」において、良き企業市民として社会的責任を果たすこと、ならびに関係法令および社内規程を常に遵守することを定め、当社グループをあげてコンプライアンスの徹底に努めております。従業員等を対象に、企業人としてのモラルや自覚の徹底および法令遵守に係る教育・啓発活動を定期的に実施するとともに、浸透度を確認するためのコンプライアンス意識調査を行い、調査の結果に応じて啓発活動を実施しております。また、職場に潜むコンプライアンスリスクに関するディスカッションを通じた課題認識の共有と対策の検討を行うため職場懇談会を開催し、コンプライアンス意識のさらなる醸成を図っております。

 

 

 また、当社は代表取締役執行役員社長兼CEOを委員長とする経営品質向上委員会を設置し、不正行為の根本的な原因究明、再発防止・予防策の検討およびリスク管理に関する活動方針につきまして審議するとともに、それらの活動に関する監督を行っております。本委員会において審議した事項のうち、重要なものにつきましては、常務会や取締役会へ報告しております。また、企業倫理・法令違反等の問題に関する社内外内部通報相談窓口「企業倫理ホットライン」、「セクハラ・人間関係ホットライン」を設置し、違法行為等の未然防止や早期発見に努めております。

 当社グループでは、このようにコンプライアンスに関する制度や仕組みの整備や施策の実行に徹底して取り組んでおりますが、万が一、コンプライアンスに関する従業員等による違法行為等が発生した場合には、第三者に対する賠償費用の発生や、営業停止、取引停止に加え、当社グループの信用失墜による業績悪化が予想されるなど、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)長時間労働・過重労働に関するリスク

 当社グループでは、労働環境の改善や勤務管理システムの整備を行い、従業員等に対しては教育を行うなどし、長時間労働・過重労働により生じる弊害を取り除くべく意識の定着に取り組んでおります。

 当社グループでは、このような取り組みを進めておりますが、万が一、長時間労働・過重労働が発生した場合、それに起因する生産性の低下、健康不良による休職、人材の流出、重大な事故の発生等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)与信リスク

 当社グループは、お客様との契約にあたって信用調査等を行うとともに、契約後においても債権管理等を徹底するなど、厳格な与信管理を行っております。具体的には、営業部門から独立した与信管理の担当部署を設置し、社内規程に基づき、信用状況を審査するとともに第三者承認手続きを行うなど、社内体制および制度面においても与信管理の厳格化に取り組んでおります。なお、債権の回収状況、滞留状況につきましても定期的にレビューし、必要に応じた貸倒引当金の計上を行うなど、事前のリスク回避に努めております。また、外部機関の信用不安情報を営業部門に提供することにより、債権保全に関する管理強化を促し、損失回避のための内部統制を強化しております。

 しかしながら、当社グループが債権を有するお客様の財政状態悪化や予期せぬ倒産等が発生した場合には、債権の回収遅延や貸倒れによる損失、追加的な引当金の計上などにより、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)日本電気株式会社との取引関係に関するリスク

 日本電気株式会社は、当社グループがお客様に提供するネットワークシステムに関する情報通信機器のメインサプライヤーであるとともに、日本電気株式会社がお客様に提供するネットワーク関連システムにつきまして、当社グループがその構築ならびに保守サービスを請け負う関係にあるなど、大口、かつ安定的な取引先であります。

 従いまして、日本電気株式会社との事業連携関係における当社グループの役割分担および位置付けが大きく変更された場合や同社製品・機器の市場での競争力、ポジショニングに大きな変化が生じた場合には、当社グループの業績および事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人材の確保に関するリスク

 当社グループでは、高い技術力・専門性や変革創造力が求められる事業を行っておりますので、優秀で多様な価値観をもった人材を獲得し維持する必要があり、また、そのような人材の獲得に際しては、国内外の企業と競合する可能性があります。

 当社グループでは、日頃より優秀で多様な人材の獲得や育成等に努めておりますが、こうした人材を継続的に採用し定着を図ることができなかった場合には、戦略・主要分野での人材確保が困難となり、策定した経営計画が想定どおりに実行出来ないこと等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)海外事業に関するリスク

 当社グループは、東南アジア、南米、サウジアラビアをはじめとした世界各地で数多くのプロジェクトを手掛けております。当社グループでは、これまで蓄積してきた海外事業に関するノウハウや経験を生かし、プロジェクト管理を徹底するとともに、緊急事態への対応を含めた海外事業に関するリスク管理体制を整備しております。

 当社グループでは、海外事業の遂行にあたり、様々な対策を行っておりますが、政治情勢の悪化やテロ行為・戦争等が発生した場合には、構築中のシステム破損やプロジェクト中断、これらに伴う追加コスト負担や、納期の遅延による賠償責任の発生等の影響が想定されるほか、急激に為替相場が変動した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)大規模災害等に関するリスク

 当社グループでは、地震や津波、台風等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症、テロリストによる攻撃等が発生した場合、また、事業遂行上重要な要素となっている情報システム・通信ネットワークがこれらの要因や停電等の予期せぬ要因により遮断・停止等の影響を受けた場合には、円滑な事業運営が阻害される恐れがあります。

 このような大規模災害等が発生した場合においても、即座に対策本部を設置するほか、情報収集や対策を速やかに実行出来る体制を構築しております。お客様システムの保守・運用、アウトソーシング等のサポート・サービスでは、バックアップ体制を整備し、常にお客様に安心してご利用頂けるようBCP(事業継続計画)を策定し、万全の体制を整えております。現在、当社グループでは、今後発生が危惧されている東海地震、首都直下地震、南海トラフ巨大地震等の発生に関する被害予測をもとに、情報・コミュニケーションツールの整備と積極活用を図りBCP対策の強化に日々取り組んでおります。

 当社グループでは、これらの対策を行っておりますが、大規模な災害等が発生した場合、事業活動の中断、また、壊滅的な損害を被ることも予想されます。このような場合には、損害を被った施設・設備等の修復のために多額の費用発生や、営業、生産、調達業務の機能や物流体制等が著しく低下することが想定されることから、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)知的財産に関するリスク

 当社グループでは、事業活動および将来の事業展開に有用な特許権、意匠権、商標権等の知的財産権の取得および保持に努めるとともに、他社の知的財産権に対しても、調査を行い、問題発生の防止を図るために細心の注意を払っております。

 しかしながら、当社グループのシステムやサービス等において、当社グループが意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、知的財産権に関連する争訴への発展や、販売中止や設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。このような場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日、以下、当期)のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。

 このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。

 企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。

 こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。

 DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。

 5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。

 さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。

 そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。

 加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。

 

  これらの結果、当期における連結業績は、

売上高               3,595億 5百万円(前期比  12.1%増加)

営業利益               251億20百万円(前期比  10.4%増加)

経常利益               246億84百万円(前期比   7.5%増加)

親会社株主に帰属する当期純利益    153億29百万円(前期比  11.0%増加)

      <参考>

受注高               3,772億34百万円(前期比   6.0%増加)

となりました。

 

 売上高は、製造業や公共企業などの企業向けや官公庁向けを中心に受注が好調に推移したなか、豊富な受注残からの売上が本格化したことなどにより全セグメントで増加し、前期比12.1%増加の3,595億5百万円となりました。

 利益面では、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により販売費及び一般管理費が拡大しましたが、売上高拡大の本格化により、営業利益は前期比10.4%増加の251億20百万円、経常利益は7.5%増加の246億84百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は11.0%増加の153億29百万円となりました。

 

セグメント情報につきましては次のとおりであります。

 

 DXソリューション事業

 コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、売上高は前期比13.5%増加の1,297億10百万円となりました。

 

 ネットワークソリューション事業

 通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、売上高は前期比4.9%増加の830億88百万円となりました。

 

 社会・環境ソリューション事業

 受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、売上高は前期比15.0%増加の1,371億61百万円と大きく拡大いたしました。

 

<セグメントの概要>

セグメント

主な事業内容

DXソリューション事業

主に企業などの業務系ICTプラットフォームに関するシステムインテグレー

ションおよびこれらに関するアウトソーシング/クラウドサービスや、

最先端/デジタル技術を活用し、お客様のビジネス変革に資するソリュー

ション、サービスの提供、ならびにコンタクトセンターサービスの提供

ネットワークソリューション事業

主に通信事業者や、宇宙・海洋・放送などの専門技術が必要な社会基盤事業者向けの、信頼性が要求される公共性の高いネットワークインフラに関するシステムインテグレーション、サービスの提供、ならびにネットワーク機器などの製造開発、販売およびシステムインテグレーションの提供

社会・環境ソリューション
事業

主に社会・公共事業者向けの施工事業、および当社が提供する各種ICTシステム、サービスに関する保守、運用などの全社サービス基盤の運用とそれらを活用したテクニカルサービスなどのサポートサービスの提供、ならびに海外現地法人によるネットワークインフラの施工事業

その他

主に情報通信機器等の仕入販売

 

②キャッシュ・フローの状況

 当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は202億28百万円となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。これは主に、有形固定資産および無形固定資産の取得によるもので、前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。

 この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。なお、配当金につきましては、前年度末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、70億67百万円の支払となっております。

 

③生産、受注および販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

DXソリューション事業

132,818

8.3

ネットワークソリューション事業

82,108

△10.9

社会・環境ソリューション事業

142,596

7.5

その他

19,710

128.4

合計

377,234

6.0

 

b.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

DXソリューション事業

129,710

13.5

ネットワークソリューション事業

83,088

4.9

社会・環境ソリューション事業

137,161

15.0

その他

9,545

17.9

合計

359,505

12.1

(注)主な相手先の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

日本電気㈱

70,597

22.0

77,708

21.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

a. 概要

 当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けた動きが見られ、緩やかな回復が続きました。一方で、為替の変動、海外紛争の長期化などに伴う物価上昇や海外景気の下振れ、さらには令和6年能登半島地震の経済に与える影響など留意するリスクもあり、先行き不透明な状況が続いております。

 このような経済環境下、当社グループの事業領域におけるお客様の投資意欲は、分野ごとに濃淡がありましたが、全般的には堅調に推移いたしました。

 企業においては、DX(※1)などの最先端技術を活用した、オフィス、在宅といった場所にとらわれない新しい働き方や、製造業などにおけるスマートファクトリー化、それに伴うセキュリティの見直しなどのニーズが強まっております。通信事業者においては、全般的に、昨年度来の設備投資抑制の動きが一段と強まりました。ローカル5Gにおいては、通信事業者における5Gサービス本格普及の遅れの影響を受けて端末デバイスの低価格化が進まず、市場の立ち上がりに遅れが出ておりますが、発電所や医療など、高速無線ネットワークのなかでも高セキュリティや安定性などといったローカル5Gが強みとする特徴が必須となる領域から、徐々に実装への動きが見られております。官庁・自治体、公益関連においては、官庁・自治体における働き方改革への動きが顕在化してくるとともに、防災・減災や安全保障をテーマとしたネットワーク整備のニーズの高まりが見られ、また、道路等の交通インフラ分野でのICT(※2)投資も活発に行われました。

 こうした市場環境のもと、当社グループでは、2022年5月に発表した中期経営計画「Shift up 2024」に基づき、Sustainable Symphonic Societyの実現に向け社会への提供価値を高めるべく、DX×次世代ネットワークを軸に、自社実践によるノウハウやお客様の現場を熟知している強みを活かしたお客様目線のコンサルテーションと顧客伴走によるスパイラル型成長を行う新しい事業モデルへのシフトに注力しております。

 DX領域につきましては、2007年より取り組んでいる働き方改革関連事業を、さらにお客様の経営力、事業力強化につながるサービスへと進化させるべく、積極的なDX技術の活用によるイノベーションを生む働き方/プロセス改革に取り組み、そこから得られた技術・ノウハウなどを強みとしてサービス開発や提案型モデル(オファリングモデル)を強化してまいりました。また、企業向けのみならず自治体DX推進のニーズが高まる官庁・自治体向けには、パートナー企業とともに自治体の閉域ネットワークに対応したサービスを順次リリースし、お客様がソリューションを実際に目で見て体験出来る課題解決型ショーケースを活用したお客様提案を加速するとともに、様々な自治体とDX推進に関する協定を締結するなど、連携も強化しております。通信事業者向けにおいても、投資が抑制されているインフラ領域の体制効率化を進める一方で、お客様の業務プロセスに対する知見を活かし、DX技術による業務自動化サービスなど、運用効率化につながるDXサービスの提供へと領域の拡大を進めております。

 5Gを含む次世代ネットワーク領域につきましては、先行市場に向けた対応を強化するとともに、海外企業や東京大学発のベンチャー企業などとのパートナーシップによる製品・サービスの強化、技術者の育成など、市場の本格立ち上がりに備えた積極的な取り組みを行いました。

 さらに、新たな事業領域の開拓として、ICTを活用した陸上養殖により、気象等の諸条件に左右されず水産資源の安定的供給を実現すべく山梨県にサーモンの陸上養殖場を設立しておりましたが、2023年8月より育成したサーモンの出荷を開始いたしました。

 そして、これらの取り組み成果を、より迅速にお客様に実装するため、全社横断組織であった新事業開発機能を、2023年4月に各事業部門への融合を図りました。また、成長戦略を支えるコンサルティングやDX、次世代ネットワークに対応した高度人材の育成や、健康経営の推進など、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮するための施策を積極的に推進するなど人的資本経営の強化を進めてきました。

 加えて、社会課題としての重要性がさらに拡大している気候変動対応に関して、次世代ネットワーク活用や最先端のDXソリューション実証の場として2023年3月に移転した新本社ビルを活用し、カーボンニュートラルの実現に向けたオフィスビル活用の検証を行うなど、その強化を進めております。また、これまで培ってきた様々な環境関連のサービス、ノウハウと当社の全事業とを組み合わせて気候変動対応型ビジネスの強化を図っており、2023年5月には経済産業省の「GXリーグ」にも参画いたしました。情報開示の面でも、2023年6月にはTCFD(※3)のフレームワークに基づく2度目の情報開示を行うとともに、カーボンニュートラル実現に向けた目標を前倒し修正いたしました。

 

b. 売上高

 売上高は、前述の取り組みの結果、3,595億5百万円(前期比12.1%の増加)となりました。

 DXソリューション事業の売上高は、コンタクトセンター事業を行う子会社における新型コロナ関連ビジネスの売上が減少しましたが、DX技術を活用した働き方改革や次世代ネットワーク・セキュリティ分野など中期経営計画における注力領域に加えて、既存領域も増加し、1,297億10百万円(前期比13.5%増加)となりました。

 ネットワークソリューション事業の売上高は、通信事業者向けは設備投資抑制の影響を受け厳しさが継続しておりますが、宇宙や放送関連などといった社会基盤事業が増加したことに加え、改刷需要を捉えた製造子会社の売上増加により、830億88百万円(前期比4.9%増加)となりました。

 社会・環境ソリューション事業の売上高は、受注残からの売上本格化も追い風に、道路・交通などの国内ICT施工領域を中心に増加したことに加え、当期に受注した官公庁向け機器調達大型案件の売上もあり、1,371億61百万円(前期比15.0%増加)となりました。

 

c. 売上総利益

 売上総利益は、712億28百万円(前期比7.0%の増加)となり、売上総利益率は19.8%となりました。

 

d. 販売費及び一般管理費、営業利益

 販売費及び一般管理費は、データ経営の強化とその実践を通じた提案力の向上に向けた新基幹システムの導入に係る費用など成長に向けた費用の増加により、前期比23億13百万円増加の461億8百万円となりました。

 一方で、売上高拡大の本格化により、営業利益は251億20百万円(前期比10.4%の増加)となりました。

 

e. 営業外損益、経常利益

 営業外損益は、前期比6億55百万円悪化の4億35百万円の損(純額)となりました。

 この結果、経常利益は246億84百万円(前期比7.5%の増加)となりました。

 

f. 親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比11.0%増加し、金額にして15億16百万円増加の153億29百万円となりました。

 

g. 資産

 当期末の総資産は、前期末に比べ178億97百万円増加し、2,848億97百万円となりました。流動資産は、前期末に比べ167億28百万円増加し、2,374億64百万円となりました。これは主に、現金及び預金が49億58百万円、受取手形、電子記録債権、売掛金及び契約資産が合計で119億11百万円増加したことなどによるものであります。固定資産は、前期末に比べ11億68百万円増加し、474億33百万円となりました。

 

h. 負債

 当期末の負債は、前期末に比べ61億30百万円増加し、1,274億16百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金、電子記録債務が合計で45億52百万円、未払消費税等が21億79百万円、契約負債が15億31百万円増加したことなどによるものであります。

 

i. 純資産

 当期末の純資産は、前期末に比べ117億66百万円増加し、1,574億81百万円となりました。

これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が153億29百万円、第91期期末および第92期中間配当金の支払70億75百万円により利益剰余金が82億54百万円増加したことなどによるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当期の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ49億58百万円増加し、735億7百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、202億28百万円となりました。これは主に、売上債権および契約資産の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加、法人税等の支払などによるものであります。前期と比べると174億11百万円の資金の増加となっております。

 なお、当社グループでは資本効率性の指標であるROEを高め、資本コストを上回るリターンを継続的に実現し、最大化するためには、運転資本の効率化を追求する必要があると考えており、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの圧縮に努めております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当社は新たな技術をもたらす有望なスタートアップ企業との事業共創に継続的に取り組んでおります。

こうした取り組みにより、投資活動の結果使用した資金は、48億48百万円となりました。前期と比べると86百万円の資金の増加となっております。

 この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、153億79百万円の資金の増加となりました。前期と比べると174億97百万円の資金の増加となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、105億20百万円となりました。これは主に、配当金の支払および短期借入金の返済などによるもので、前期と比べると12億76百万円の資金の減少となっております。

 配当金につきましては、前期末の1株当たり配当金を23円、中間の1株当たり配当金を24.5円にしたことにより、前期と比べると77百万円増加し、70億67百万円の支払となっております。

 

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの事業展開のための材料および機器の購入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の経費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費および当社グループの事業所の不動産賃借料等であります。当社グループは国や自治体、通信事業者等の公共的なインフラ構築をはじめとした信頼性の高いサービスを継続的に提供する責務があり、健全な財務基盤が要求されます。このため突発的な資金需要等に備え、売上高の2カ月程度は現預金として確保しておきたいと考えております。この資金の財源は主として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。また、事業を行うための設備計画等に照らして、必要な資金を調達(主に銀行等金融機関からの借入)しており、今後、事業成長や大きな投資等でさらなる資金需要が出てきた際は、株主価値に配慮し、売上高の2カ月分を超過した現預金に加え、健全性を損なわない範囲での負債の活用を優先してまいります。

 なお、当社は短期的な資金調達方法として、国内金融機関2社と合計80億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値ならびに報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行っております。当社は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

a. 一定期間にわたり履行義務が充足される施工工事等の収益認識

 当社グループは、施工工事等において、一定の期間にわたり充足される履行義務のうち、合理的な進捗度の見積りが出来るものにつきましては、期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、見積工事原価総額に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。将来工事原価総額の見積りの前提条件の変更等(設計変更や天災等)により当初見積りの変更が発生する可能性があります。

 

b. 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産につきまして、将来の課税所得および、実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来実現出来ないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩し額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現出来ると判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の追加計上額を利益として計上します。

 

c. 退職給付に係る負債

 退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しておりますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。

 

※1 DX:

Digital Transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企

業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。

※2 ICT:

Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。

※3 TCFD:

気候関連財務情報開示タスクフォース。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、DXソリューション、ネットワークソリューション、社会・環境ソリューションの各事業分野を中心に、国内外のお客様に対して、付加価値が高く競争力のあるソリューションやサービスを提供するため、研究開発活動を継続して行っております。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は1,092百万円であります。

 セグメントごとの主要な研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1)DXソリューション事業

 デジタル技術を活用した企業などのDX(※1)や働き方改革を実現するサービス創出に向け、各種クラウドサービスの技術検証や、クラウドサービス活用におけるセキュリティ強化および運用高度化に関わる技術検証・研究開発を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は88百万円であります。

 

(2)ネットワークソリューション事業

 5G(※2)分野におけるオールインワン型ローカル5Gシステムに関する研究開発を行っております。

 また貨幣識別装置における改札対応に関する技術開発を行いました。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は640百万円であります。

 

(3)社会・環境ソリューション事業

 安心安全なまちづくりに貢献するヘリコプターテレビシステム自動追尾受信機や、陸上養殖事業におけるオペレーション自動化・高効率育成および、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を活用した電力使用の高効率型データセンターに関する研究開発を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は362百万円であります。

 

※1 DX:

Digital Transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)・クラウドサービス等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。

※2 5G:

第5世代移動通信システムを指し、5th Generationの略。またローカル5Gとは、地域・産業のニーズに応じて地域の企業や自治体等が個別に利用出来る5Gネットワークのこと。