第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

 平和不動産グループでは、2020年度から2023年度の4か年を「街づくりに貢献する会社」として挑戦・飛躍していく期間と位置づけ、中期経営計画「Challenge&Progress」を推進してきました。

 日本橋兜町・茅場町における街づくりおよび札幌の大規模再開発を推進し、外部成長・内部成長を通じた付加価値創出のビジネスモデルに転換するとともに、サステナビリティ施策の推進による社会課題の解決に貢献することで、業績においては連結営業利益120億円以上、EPS200円以上、ROE6%以上など、すべてのKPIを達成し、グループとして大きな飛躍を遂げる4年間となりました。

 今後のわが国経済は、雇用・所得環境が改善するもとで、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されます。一方、世界的な物価上昇や金融引き締めによる海外景気の下振れ等には引き続き注意すべき状況です。

 また、当社グループの経営環境においては、働き方の多様化・質的変化、インバウンド需要拡大、人口減少・少子高齢化、都市・地域間競争の激化など、都市環境とライフスタイルの変化が進み、さらに資本効率向上への期待の高まり、サステナビリティ経営の高度化、デジタル技術の進展、自然災害の脅威増大などにより、当社グループを取り巻く環境が目まぐるしく変化している状況です。

 こうした経営環境を踏まえ、当社グループでは2024年3月29日に平和不動産グループパーパス「人々を惹きつける場づくりで、未来に豊かさをもたらす」を制定するとともに、平和不動産グループ長期ビジョン「WAY 2040」を策定し、2024年4月30日には新中期経営計画「WAY 2040 Stage 1」を策定いたしました。これらの計画に沿い、再開発事業の拡大、利益成長と資本効率向上の両立、社会価値の向上、経営基盤の強化等に取り組むことにより、企業価値の向上に努めてまいります。

 

◇新中期経営計画策定の背景および位置づけ

新中期経営計画「WAY 2040 Stage 1」(2024年度〜2026年度)では、長期ビジョン「WAY 2040」のスローガンである「場づくりの連続で、非連続な成長を遂げる“Bazukuri Company”へ」のファーストステージとして、日本橋兜町・茅場町ブランドの確立、当社史上最大規模となる札幌再開発プロジェクトおよび長期ビジョンを実現するための新規事業分野への進出に挑戦することにより、「非連続な成長へのスタートダッシュ」の期間と位置付けます。

 

◇長期ビジョン実現に向けた新中期経営計画における重点戦略

 (1)再開発事業の拡大 〜人々を惹きつける場づくりの全国展開〜

 ①日本橋兜町・茅場町ブランドの確立

  東京初進出の「キャプションby Hyatt 兜町東京」のオープンによる新たな機能の導入によって街の様々な機能の相乗効果を創出いたします。また、FinGATEの拡張、平日・休日ともに賑わいをもたらす個性的な商業店舗の誘致・運営およびサステナブル先進タウン化等により、人々を惹きつける場づくりを多彩に展開し、日本橋兜町・茅場町ブランドを確立いたします。

 ②当社史上最大規模となる札幌再開発プロジェクトの推進

  当社史上最大規模の再開発プロジェクトとなる大通西4南地区第一種市街地再開発事業および札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発事業を2028年の竣工に向け着実に推進し、札幌においても人々を惹きつける場づくりを展開することにより、札幌の都市競争力の強化に貢献いたします。

 ③全国における再開発プロジェクトの展開

  "Bazukuri Company”としてのプレゼンスを高めるため、全国主要都市における当社保有アセットを中心とした再開発プロジェクトの事業化を推進します。

 

 (2)利益成長と資本効率向上の両立 〜賃貸事業+資本回転型ビジネスの拡大と新規事業分野への進出〜

 ①ビルディング事業における付加価値創出ビジネスモデルの展開

  ポートフォリオの入替えを通じて、物件売却益を獲得するとともに、付加価値創出のビジネスモデルをサステナブルに展開します。

 ②アセットマネジメント事業の収益拡大

  平和不動産リート投資法人の成長サポート等により、アセットマネジメントフィーの拡大を図るとともに仲介ビジネスの安定的な成長等により、資本効率の高いグループ収益の拡大を図ります。

 ③長期ビジョンを実現するための新規事業分野への進出

  長期ビジョンのスローガンとして掲げる「非連続な成長」を遂げるためにホテル事業の強化およびM&Aの活用等による新規事業分野への進出を模索します。

 

 (3)社会価値の向上 〜サステナビリティ施策の推進〜

 ①サステナビリティ経営の実践

  “Bazukuri Company”としての活動により、GHG排出量ネットゼロをはじめとした環境・社会課題の解決に取り組み、各ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションにより、サステナブルな社会の実現に貢献します。

 ②サステナブルな街づくりの推進

  環境配慮、防災力向上等の社会課題解決に対応したビル開発、建物運営および設備投資を実施し、GHG排出量の削減等に取り組みつづけることにより、資産ポートフォリオの競争力を向上させます。

 

 (4)経営基盤の強化 〜成長加速に向けた人的資本の最大化〜

 ①株主資本コストおよび株価を意識した経営の実践

  2024年度から2026年度のROE目標として、株主資本コストを上回る7%以上を設定します。2024年度から2026年度の株主還元においては、株主資本コストおよび資本効率等を意識し、連結配当性向50%とし、自己株式取得については株価水準、投資計画および財務状況等を総合的に勘案し、機動的に実施します。

 ②人的資本の最大化

  長期ビジョンにおいて非連続な成長を遂げるため、キャリア開発およびDX人材の育成等によるパーパスの実現を担う人づくり、多様性を推進し活かす組織づくりおよび健康経営をはじめとした働きやすく活き活きとした職場づくりに取り組み、人的資本経営を推進します。

 ③コーポレート・ガバナンスの更なる強化

  取締役会の機能強化、政策保有株式の縮減等により、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を図ります。

 

◇計数計画

 (1)財務・非財務KPI

財務KPI

利益目標

EPS

270円以上(2026年度)

連結営業利益

140億円以上(※)(2026年度)

資本効率

ROE

7%以上(2024年度~2026年度)

株主還元

連結配当性向

連結配当性向50%程度(2024年度~2026年度)とし、自己株式取得については株価水準、投資計画および財務状況等を総合的に勘案し、機動的に実施

非財務KPI

環境

GHG排出量

2025年度までに2018年度比80%削減(Scope1+2)

2050年度までにネットゼロ達成(Scope1+2+3)

水使用量

各用途において前年度より低減

廃棄物使用量

各用途において前年度より低減

社会

新卒女性採用比率:30%以上(5年平均採用数)

女性管理職比率:2030年度までに20%以上

キャリア採用者管理職比率:2030年度までに40%以上

健康診断実施率:毎年100%

がん検診(2年毎)実施率:35歳以上100%

ストレスチェック受検率:毎年100%

有給休暇取得率:毎年70%以上

男性育児休暇取得率:2030年度までに100%

救命講習資格保有者:全役職員

ガバナンス

連結純資産に対する政策保有株式残高比率:2026年度までに10%以下

 

※連結営業利益内訳

    ・ビルディング事業:138億円

    ・アセットマネジメント事業:24億円

    ・全社・消去:△22億円

※参考指標(財務健全性):ネットD/Eレシオ2.0倍程度

 

 

 (2)キャピタルアロケーション(2024年度〜2026年度)

2024年度

期初キャッシュ:約280億円

2026年度

期末キャッシュ:約200億円

事業による創出等:約700億円

(うち物件売却収入:約370億円)

再開発投資:約600億円

(内訳)

日本橋兜町・茅場町:約160億円

札幌:約400億円

その他:約40億円

物件取得投資:約230億円

有利子負債収入:約400億円

CAPEX:約170億円

株主還元:約180億円

※現時点における大通西4南地区第一種市街地再開発事業(2028年度竣工予定)および札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発事業(2028年度竣工予定)の竣工までの想定投資総額は合計約1,200億円。

 

 上記に記載した各KPI及び投資計画は、いずれも現時点における目標値又は計画値であって、その実現を保証するものではなく、実績値はこれらと大きく乖離する可能性があります。また、これらのKPI及び投資計画については経営環境の変化等に伴い、随時見直されることがあります。これらのKPI及び投資計画の達成を困難にする可能性がある主要なリスク要因については、後記「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

 当社は、サステナビリティビジョン“Bazukuri Companyとしての活動により環境・社会課題の解決に取り組み、各ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて満足度を高めることでサステナブルな社会の実現に貢献します。」に基づき、利益成長と社会課題解決を高次元で両立させることを目指しています。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティ経営の実践に向けた、サステナビリティ施策の円滑な推進を目的に、委員長を代表執行役社長、委員を執行役、執行役員及び各部署の所属長として構成する「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会を中心に気候変動などの環境に対する取り組みを含めサステナビリティ施策に関するPDCAをモニタリングし重要な内容については取締役会への報告等を行うことによりサステナビリティ経営の実効性を高めていますサステナビリティ委員会は年2回の開催を原則としていますが必要に応じ適宜開催いたします

 

<気候関連課題に係るガバナンス>

 気候関連課題に係る最高責任者はサステナビリティ推進に係る最終決定権限者である代表執行役社長とし気候関連課題に係る執行責任者はサステナビリティ推進に係る執行責任者である経営企画部サステナビリティ推進室担当役員としています

 気候関連課題に係る執行責任者はサステナビリティ委員会において気候変動による影響の識別・評価リスクと機会の管理適応と緩和に係る取り組みの進捗状況指標と目標の設定等の気候変動対応に関する事項を気候関連課題に係る最高責任者に対して定期的に報告していますそしてサステナビリティ委員会の出席者により各議題について審議・検討した上で気候関連課題に係る最高責任者により意思決定を行います

 詳細は、当社ウェブサイトの「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。なお、当社ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性があります。
 https://www.heiwa-net.co.jp/sustainability/environment/climate_change.html

 

(2)戦略

 当社グループではサステナビリティビジョンに基づき当社が目指す社会価値及びマテリアリティ(重要課題)について当社の経営計画GRIガイドラインISO26000SDGsなどを参考に社会課題を洗い出し当社としての重要度及びステークホルダーにとっての重要度という2軸で検討し次のとおり特定しております。

 

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<気候関連課題に係る戦略>

 気候変動の進行に伴い想定される不確実性を当社のビジネス戦略に考慮するためリスク・機会の識別を1.5℃上昇シナリオ下と4℃上昇シナリオ下に分けて行いましたシナリオ分析の詳細は以下のとおりです

 

分類

当社への関連内容

当社への財務的な影響

発生時期

財務影響度

2030年

2050年

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

移行

リスク

政策と法

炭素税の導入等によるGHG排出に対する課税の強化や物件に対する省エネ基準の強化

・物件のGHG排出量に対する税・罰金等の負担が増加

・炭素集約度の高い部材に対する課税が発生

・対応のための改修費用の負担が増加

中期

技術

再エネ・省エネ技術の進化・普及

・保有物件の設備の新技術導入の費用が増加

中期

市場

脱炭素のニーズ増加を背景とした関連サプライヤーによるサービス価格の上昇

・ZEB/ZEHをはじめ脱炭素対応の物件開発や建築コストの増加

中期

評判

テナント・入居者の需要変化
(より気候変動への対応が進んだ物件を選択する、または対応していない物件を避ける)

・脱炭素対応が遅れる場合、新規テナント・入居者獲得が難化、リテンションが低下することによる賃料収入の減少

短期

物理的

リスク

急性

台風による風害等、集中的豪雨による内水氾濫や近傍河川の氾濫等による浸水により物件が損害を被る

・修繕費の増加、稼働率の低下など

中期

慢性

猛暑日や極寒日などの増加により空調需要が増加

・空調の運転・メンテナンス・修繕更新費用の増加

中期

機会

資源の
効率

高効率設備等の導入による省エネ化

・省エネ性能の向上による修繕・運用コストの削減

短期

製品・
サービス

環境性能および災害対応力の高い設備・サービスの提供によるテナント・入居者・利用者への訴求

・環境・BCP対応強化に伴う他物件との差別化によるテナント獲得機会および賃貸収入の増加

中期

市場

新規投資家層の開拓、銀行の融資判断の変化

・グリーンファイナンスによる資金調達コストの低下

短期

※時間軸の凡例:「短期」3年以内、「中期」4~10年以内、「長期」10年以上

※財務影響度の凡例:「/」10~20億円、「/」:0~10億円、「」財務影響なし

 

 上記のシナリオ分析結果を踏まえ、当社では再生可能エネルギーの活用、BCP対策、サステナブルファイナンスの活用、環境認証の取得、ステークホルダーとの協働等の取り組みを推進し、事業のレジリエンスを高めてまいります。

 詳細は、当社ウェブサイトの「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。なお、当社ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性があります。
 https://www.heiwa-net.co.jp/sustainability/environment/climate_change.html

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>

 当社は、新たな成長を実現するうえで多様な視点や価値観の存在の重要性を認識し、人材多様性の確保を図るとともに、あらゆる人材に対し、能力開発及びキャリアアップの機会を公平に提供し、従業員の働きがいを高め、成長意欲と主体性を持った人材を育成していきます。

 多様な人材が働きやすい職場環境や制度の整備について、積極的に取り組んでいきます。

〇安全で働きやすい環境への取組み

・健康経営推進(「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」大規模法人部門、「スポーツエールカンパニー

 2024」、「令和5年度東京都スポーツ推進企業」認定、健康経営宣言他)

・ワークライフバランス推進(フレックスタイム制度、在宅勤務制度、ノー残業デー、プラスワン休暇、リフレッ

 シュ休暇、子育て支援、介護支援他)

・人材育成への取組み(新卒採用、中途採用、人材育成制度、階層別研修、資格取得支援、英語研修、自己啓発支

 援他)

 また、当社は新たに策定した長期ビジョン「WAY 2040」において非連続な成長を遂げるため、人的資本経営の基本方針「平和不動産グループは、多様な人材の獲得と大切にする価値観を備えた人材の育成により、人的資本経営を推進します。」を制定し、キャリア開発およびDX人材の育成等によるパーパスの実現を担う人づくり、多様性を推進し活かす組織づくりおよび健康経営をはじめとした働きやすい環境づくりに取り組み、人的資本経営を推進いたします。

 

人材戦略

戦略

施策

パーパスの実現を担う人づくり

・パーパスの浸透

・長期ビジョン実現に向けた人材の定義・獲得・育成

・挑戦できる人材の育成

・サステナビリティ施策の推進

多様性を推進し活かす組織づくり

・女性活躍の推進

・多様な人材活躍の推進

働きやすい環境づくり

・健康経営の推進

・社内コミュニケーションの活性化

・ワークエンゲージメントの向上

 

 

(3)リスク管理

 当社は、サステナビリティに関するリスクと機会に対応するため、当社グループに係るリスク全般の把握及びリスク顕在時の対応を適切に行うことを目的としたリスク管理委員会において、気候変動リスクを含むESG関連リスクを対象リスクとして定め、リスクの軽減と機会の実現に取り組んでいます。

 なお、当社が認識している主要なリスク等については、後記「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

<気候関連課題に係るリスク管理>

 気候変動対応に係る執行責任者は年に1度必要と思われる各部署からの担当者をワーキンググループとして招集し当社に係る気候関連のリスクの識別及び評価を行いますなお当該分析における気候関連リスクは以下の枠組みに基づきます

移行リスク    :社会経済が低炭素・脱炭素に移行することにより生じる事業上の影響

(ア)政策・法規制のリスク:政策的に脱炭素を推進することによる規制強化等のリスク

(イ)技術リスク     :低炭素・脱炭素に関する新技術開発その主流化によるリスク

(ウ)市場のリスク    :エネルギー価格の変動サービス需要の変化など市場に係るリスク

(エ)評判上のリスク   :顧客一般市民従業員投資家などステークホルダーからの評判のネガティブ変化によるリスク

物理的リスク   :気候変動が進行し従来の気候パターン気候現象から変化することによって生じる事業上の影響

(オ)急性の物理的リスク :台風や洪水など事象に起因するリスク

(カ)慢性の物理的リスク :長期的高温や低温など気候パターンの長期的なシフトに起因するリスク

 またリスク洗い出しの過程において当社の事業上の機会となりうるテーマ要素が識別された場合はリスクとは別に気候関連の機会として記録しその実現性等について検討します気候変動対応に係る執行責任者は定期的にサステナビリティ委員会に対してワーキンググループによるリスク洗い出し及び機会の検討に関する進捗および結果を報告します

 詳細は、当社ウェブサイトの「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。なお、当社ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性があります。
 https://www.heiwa-net.co.jp/sustainability/environment/climate_change.html

 

(4)指標及び目標

 当社では、サステナビリティビジョン“Bazukuri Companyとしての活動により環境・社会課題の解決に取り組み、各ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて満足度を高めることでサステナブルな社会の実現に貢献します。」及び当社が目指す社会価値、マテリアリティに沿い、指標及び目標として以下のようなKPIを定めています。

 

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<気候関連課題に係る指標及び目標>

 気候関連リスクの軽減または機会の実現を目的にKPIを定め目標設定及びそのモニタリングに取り組んでいますKPIとして定めているGHG排出量に関する目標のうち、中期目標実績推移は以下のとおりです

 詳細は、当社ウェブサイトの「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。なお、当社ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性があります。
 https://www.heiwa-net.co.jp/sustainability/environment/climate_change.html

 

目標

実績(t-CO2)

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

GHG排出量(Scope1+2):

2025年度までに80%削減(2018年度比総量目標)

30,230

30,439

28,330

23,576

15,140

※2021年度以前は、当社グループが保有する不動産ポートフォリオ(共同所有による持分が物件全体の25%に満たない物件及び棚卸資産は除く)を対象範囲としています。2022年度は、当社グループが保有する不動産ポートフォリオ(棚卸資産は除く)を対象範囲としています。

※温室効果ガス(GHG)排出量=Scope1+2

 Scope1:事業者が所有又は管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

 Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

※2020年度、2021年度、2022年度データは第三者保証を受けています。

※2023年度データにつきましては、現在集計中です。

 

<人材の多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標、その状況>

 当社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む人材の多様性の確保に努めています。

 また、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、女性新卒採用比率及び中途採用者管理職比率の数値目標を定めているほか、中途採用者や専門知識を有する人材等を積極的に登用するため、多様な人材を受け入れています。

 

指標

目標

実績(2023年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2025年度目標:10以上

14.3

男性労働者の育児休業取得率 ※1

2025年度目標:50以上

女性新卒採用比率 ※2

2025年度目標:30以上

50.0

(採用4名のうち女性2名)

中途採用者管理職比率(外国人含む)※3

2025年度目標:40程度

37.1

※1 当事業年度において育児休業取得の対象となる男性労働者は存在しませんでした。

※2 女性新卒採用比率については、毎年30%以上を目標としています。

※3 「外国人」についてはその必要性を認識しつつも、当社の事業形態や経営戦略に照らし、単独での目標設定

   はせず中途採用者管理職比率に含めて管理することとしています。

 

 また、当社は2024年3月29日に制定した上記「(2)戦略<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>」記載の人的資本経営基本方針のもと、長期ビジョン実現のために新たな数値目標を設定し、組織力の強化、社内の人材育成・外部からの人材獲得を進めながら人的資本の最大化を図ってまいります。

 

主な施策および数値目標

戦略

施策

目標

パーパスの実現を担う人づくり

定期的な研修会・情報発信

2以上/年

資格・リスキリング支援投資額

1人当たり5万円以上/年

多様性を推進し活かす組織づくり

新卒女性採用比率

30%以上(5年平均採用数)

女性管理職比率

2030年度までに20以上

キャリア採用者管理職比率

2030年度までに40%以上

働きやすい環境づくり

健康診断受診率

100/年

有給休暇取得率

70以上/年

男性育児休暇取得率

2030年度までに100

 なお、上記「(2)戦略<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>」及び「(4)指標及び目標<人材の多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標、その状況>」については、提出会社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結子会社に属する全ての会社では行われてはいないため、連結子会社における記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループでは、事業遂行上のリスクを「リスク管理委員会」にて把握・検討し、対象となるリスク及び管理の所在等を明確にしております。また、リスクを適切に管理・統制すると共に、リスクの顕在化を可能な限り防止し、顕在化した場合はその影響を最小限にとどめるため、リスクマネジメント体制を整備しております。

 

(1)ビルディング事業について

 当社グループは、ビルディング事業において証券取引所、オフィス、商業施設及び住宅等の開発・賃貸・管理並びに売却等を行っておりますが、このうち企業向けオフィスビルの賃貸がビルディング事業セグメントの営業利益の過半を占めております。

 オフィス賃貸事業は、地価の動向等のほかに、経済情勢、需給バランスの悪化など様々な要因によって、新規入居や退去の状況、賃料改定動向等の賃貸市況が変化し、賃貸料の水準や稼働率が影響を受ける可能性があり、これらの結果、賃貸収益が減少し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、景気変動による賃貸料減少の影響を相対的に受けにくいと判断している東京都心3区、地方主要都市を中心にビルディング事業を展開することなどにより、賃貸収益が大きく減少するリスクの低減を図っておりますが、当該地域における賃貸料や稼働率が当社が想定する以上に景気変動、需給バランスの悪化等による影響を受けた場合などには、当社グループの賃貸収益に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 不動産開発及び売却においては、景気動向や不動産市場における需要の悪化、資材その他の建築費等の上昇等による投資の採算性の低下、今後の金利及び為替の動向、地価の動向、競合の状況、開発用地の仕入れの状況、共同事業者の破綻、開発の遅延、税制の変更等により、想定どおりの収益を獲得できず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、売却目的不動産等のリスクコントロールに関する取扱いを定めること等により、売却までに景気変動等の影響を受ける可能性の低減を図っておりますが、当社グループが想定しない事情が生じた場合や、想定どおりの時期に売却できない場合等においては、想定した収益を獲得できない可能性があります。また、住宅分譲事業については、現在進行中のプロジェクトはありませんが、今後住宅分譲事業を行う場合には、大型物件の竣工及び引渡し等による業績変動、共同事業者の破綻、供給過剰による販売競争の激化等により、想定どおりの収益を獲得できない可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)日本橋兜町・茅場町及び札幌再開発等の不動産開発について

 当社グループでは日本橋兜町・茅場町及び札幌再開発等の不動産開発を行っておりますが、既存ビルの取壊し等の際には、テナントの立ち退きに関する費用や建物の除却損等により特別損失が発生することがあります。また、現在賃貸収益を得ている既存の賃貸事業資産を再開発する際には、開発期間中は当該資産からの賃貸収益が減少することがあります。さらに、不動産開発に際しては、計画的な事業計画の立案・推進等を行っておりますが、当社が計画時に想定していなかった事情により、地価や資材その他の建築費等の上昇、開発にかかる許認可手続きの遅延、関係者との合意形成期間の長期化、建設工事等の不備やオフィス市況の悪化によるテナント誘致の遅延等が生じることにより、想定外の費用発生やプロジェクトの遅延もしくは中止による賃貸収益の減少等を余儀なくされる場合があり、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)賃貸事業資産及び収益用不動産への投資と有利子負債残高の推移について

 当社グループは、収益力の強化・安定を目指し、賃貸事業資産及び収益用不動産の取得や建替え、開発等を進めておりますが、その取得資金や建設資金等を主に有利子負債により調達していることから、金融情勢や金利の動向等によっては金融費用が増加し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループは、有利子負債残高及びネットD/Eレシオを適切な水準に維持し、有利子負債の調達の大半を長期による借入とし、借入の大半について金利を固定化して金利変動による影響を少なくするべく対処しておりますが、金融情勢や金利の動向等の環境が当社グループの想定と異なる状況となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、過去5連結会計年度における有利子負債残高及びネットD/Eレシオ等は、次のとおりであります。

 

 区   分

第100期

  2019年4月1日~
2020年3月31日

第101期

  2020年4月1日~
2021年3月31日

第102期

  2021年4月1日~
2022年3月31日

第103期

  2022年4月1日~
2023年3月31日

第104期

  2023年4月1日~
2024年3月31日

有利子負債残高(百万円)

186,977

215,727

206,236

226,895

231,323

ネット有利子負債残高(百万円)

158,208

186,025

178,009

198,987

202,902

ネットD/Eレシオ(倍)

1.5

1.6

1.5

1.7

1.6

 (注)有利子負債は、短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、流動負債 その他(一

    部)、社債、長期借入金、長期未払金であります。ネットD/Eレシオは、ネット有利子負債(有利子負債から現

    金及び預金・有価証券を減じたもの)を純資産で除したものであります。

 

 

(4)資産価格の変動について

 当社グループが保有する賃貸事業資産については、一部の少額資産を除き外部の不動産鑑定会社による鑑定評価等の価格評価を毎期末に取得しており、資産価格の変動を注視しておりますが、今後の不動産市況の動向等により、当社グループが保有する不動産の価格が下落した場合等には、減損損失及び棚卸資産に対する評価損の計上等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、投資有価証券を保有しており、政策保有株式については、中長期的な事業展開上有益であると考えられる、取引関係の強化、財務活動の円滑化、事業提携の強化等を目的として、株式の政策保有を行っています。当社は、毎年、取締役会において、中長期的な事業展開上有益であると考えられる、取引関係の強化、財務活動の円滑化、業務提携の強化等の保有目的に沿っているか、及び個別の政策保有株式について、保有に伴う便益や資本コスト等を総合的に勘案し、保有の適否を検証しております。かかる検証の結果、保有の妥当性が認められないと判断された場合には、株価や市場動向等を考慮して売却することにより縮減していくこととしておりますが、株式の市場価格が下落するなど、保有する投資有価証券の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(5)繰延税金資産に係る財務上の影響について

 当社グループは、将来の課税所得の見積り等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を評価しております。当社グループの経営計画に基づき将来の課税所得を見積っておりますが、景気変動、不動産市況、金融情勢の変化等により、計画どおりに推移せず、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を回収できないと判断した場合、あるいは税制関連の法令改正がなされ、法人税率の引き下げ等が行われた場合、繰延税金資産を減額し、税金費用を計上することになります。その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(6)三菱地所株式会社との資本業務提携について

 当社は、2011年2月17日付で、三菱地所株式会社との間で資本業務提携契約を締結しました。現在、同契約に基づき、三菱地所株式会社との間で密接な事業上の協働関係を構築のうえ、日本橋兜町・茅場町地区の再開発に関する取り組みを中心に事業シナジーを最大化させるべく当該資本業務提携に取り組んでおりますが、事後的に発生した想定外の事象や環境の変化等によって、当該資本業務提携について当初期待した効果が得られない可能性があるほか、将来、何らかの事由により当該資本業務提携が終了する可能性もあり、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自然災害等について

 地震その他の自然災害、事故やテロその他の人災により保有資産が劣化または消滅することにより修繕、建替のために多額の支出を余儀なくされたり、賃貸収益が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、保有資産に対する防災機能の強化及びBCP対策の強化等の施策により、自然災害等による影響の低減を図っておりますが、当社グループの想定しない事情が生じた場合には、これらの施策による効果が得られない可能性があります。

 

(8)不動産関連法制について

 当社グループの各事業には、借地借家法、建築基準法、都市計画法等、各種法規制が適用されております。将来、これらの法規制が改正された場合や、新たな法規制が設けられた場合には、新たな義務や費用負担の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、法規制改正情報等の早期入手、弁護士による見解入手、許認可行政機関との円滑なコミュニケーション等を行っておりますが、このような施策にもかかわらず、当社グループの想定と異なる法規制の改正や新規制定が行われる可能性があります。

 

(9)従業員による不正リスクについて

 当社グループは、内部統制システムの整備・維持を図り各種法令等の遵守に努めております。役職員の意識改革、管理体制の強化・充実等、内部通報制度の充実、不正行為に対する厳格な対応等の再発防止策を徹底しておりますが、これらの施策にも関わらず、従業員による不正行為があった場合、当社グループの社会的信用、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(10)サステナビリティに関するリスクについて

 当社グループは、当社グループの経営計画なども踏まえつつ社会課題を洗い出し、当社としての重要度及びステークホルダーにとっての重要度という2軸で検討し、当社が目指す社会価値及びマテリアリティ(重要課題)を特定しており、サステナビリティ経営を重要課題の一つとして認識しています。当社グループの事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、「(7)自然災害等について」に記載のリスクに加え、環境負荷の小さい不動産開発・運営を求める規制の強化による開発機会の減少や運営費用の増加、環境負荷の小さなオフィスビルへの顧客企業のニーズの変化及びこれらに対応できないことによるレピュテーションの低下などがあります。当社グループは、サステナビリティ経営の実践に向けた、サステナビリティ施策の円滑な推進を目的に、代表執行役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を中心に、気候変動などの環境に対する取り組みを含め、サステナビリティ施策に関するPDCAをモニタリングし、重要な内容については取締役会への報告等を行うことにより、サステナビリティ経営の実効性を高めておりますが、これらのリスクへの対応が遅れる場合は、当社グループへの業績及び財務状況に想定を超える影響を与える可能性があります。

 

(11)情報セキュリティに関するリスクについて

 当社グループでは、各事業において個人情報をはじめとする多くの機密情報を取り扱っており、サイバー攻撃、当社グループの役職員によって外部への情報漏えいが発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、損害賠償の発生等により、当社グループへの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。当社グループは、情報セキュリティ管理体制の確立、基本方針に基づいた社内規程の整備、情報セキュリティの確保に必要な教育等の継続的な実施等による不正アクセス、破壊、情報漏えい、改ざん、紛失、盗難などの脅威から情報資産を確保し、安全性を確保するために、適切な対策の実施に努めておりますが、サイバー攻撃は日々高度化しており、これらの対策によっても全ての情報漏えいを防ぐことができる保証はなく、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループへの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。また、当社グループは業務運営にあたって情報通信システムを用いており、当該システムがサイバー攻撃を受けた場合や当該システムにシステム障害が発生した場合などには一定期間業務運営が停止することなどにより当社グループへの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(12)感染症に関するリスクについて

 新型コロナウイルス感染症のような感染症の大規模な流行が発生した場合、国内外における行動制限や経済活動の停滞等に伴い、当社グループの賃貸事業資産においてホテル稼働率の低下、入居テナントの業績悪化等による賃貸料の減額・退去、自社経営の店舗売上の減少等が起こり、当社グループへの業績及び財務状況に影響が生じる可能性があります。当社グループは、リスクマネジメント体制によりリスクマネジメントを行っておりますが、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループへの業績及び財務状況に想定を超える影響を与える可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するもとで、各種政策の効果もあり、緩やかな景気の回復が継続しました一方で金融資本市場の変動リスクや海外景気の下振れ物価上昇金融資本市場等の影響等を引き続き注意する必要がある状況です

 不動産業界におきましては賃貸オフィス市場については新築ビル等における大型募集の開始等があったもののオフィス需要の回復が進んだことから東京都心部において空室率は低下に転じました不動産投資市場については日本の比較的低金利の資金調達環境等を背景に不動産投資の需要は底堅く安定的に推移いたしました

 こうした環境のもと、当社グループの連結業績につきましては、売上高は444億33百万円(前期比89百万円、0.2%減)、営業利益は130億22百万円(同22億37百万円、20.7%増)、経常利益は114億63百万円(同18億16百万円、18.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は84億50百万円(同6億86百万円、7.5%減)となり、中期経営計画「Challenge & Progress」において計数目標として掲げた2023年度連結営業利益120億円以上をはじめ全てのKPIを達成するとともに、連結営業利益は過去最高益を更新いたしました。

 各セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

比較

売上高

営業利益

売上高

営業利益

売上高

営業利益

ビルディング事業

40,848

10,572

40,544

12,639

△303

2,066

アセットマネジメント事業

3,674

2,071

3,888

2,197

214

126

調整額

△1,859

△1,814

44

44,522

10,784

44,433

13,022

△89

2,237

 前連結会計年度及び当連結会計年度における主要な顧客ごとの売上高及び売上高に対する当該割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

平和不動産リート投資法人

13,365

30.0

8,164

18.4

合同会社新札

4,500

10.1

 (注)当該割合が100分の10未満の金額及び割合については、記載を省略しております。

 

  (1)ビルディング事業

 ビルディング事業のうち、賃貸収益は、前期取得した平和不動産名古屋伏見ビル(愛知県名古屋市)及び平和不動産桜通ビル(愛知県名古屋市)の賃貸収益貢献及び空室の埋め戻しに伴う賃貸収益の増加等により、263億82百万円(前期比12億51百万円、5.0%増)となりました。また、物件売却収入は、販売用不動産売却の減少により、127億80百万円(同12億84百万円、9.1%減)となりました。これにその他を含めた本事業の売上高は、405億44百万円(同3億3百万円、0.7%減)、営業利益は、126億39百万円(同20億66百万円、19.5%増)となりました。

 なお、当連結会計年度末における当社グループのビルの空室率は2.83%(再開発関連の貸し止め等を除く)となります。

 

 

<売上高の内訳>                                      (単位:百万円)

区  分

前連結会計年度

当連結会計年度

面積(㎡)

金額

面積(㎡)

金額

賃貸収益

土地賃貸面積   3,380.75

25,130

土地賃貸面積   3,272.00

26,382

建物賃貸面積 434,916.94

建物賃貸面積 381,500.28

物件売却収入

14,065

12,780

その他

1,652

1,382

40,848

40,544

 

  (2)アセットマネジメント事業

 アセットマネジメント事業のうち、アセットマネジメント収益は25億65百万円(前期比82百万円、3.3%増)、

仲介手数料は13億22百万円(同1億31百万円、11.0%増)となり、本事業の売上高は38億88百万円(同2億14百万

円、5.8%増)、営業利益は21億97百万円(同1億26百万円、6.1%増)となりました。

 

<売上高の内訳>                                      (単位:百万円)

区  分

前連結会計年度

当連結会計年度

比較

アセットマネジメント収益

2,482

2,565

82

仲介手数料

1,191

1,322

131

3,674

3,888

214

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5億8百万円増加し、263億16百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益124億9百万円及び棚卸資産の減少62億73百万円等により、195億84百万円の資金の増加となりました。(前期は239億52百万円の増加)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出181億90百万円及び事業譲受による支出12億31百万円等により、193億56百万円の資金の減少となりました。(前期は402億50百万円の減少)

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出160億50百万円及び短期借入金の純減額30億円等があった一方、長期借入れによる収入198億27百万円等により、2億80百万円の資金の増加となりました。(前期は139億94百万円の増加)

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

項目

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率

 31.6%

 31.1%

 31.7%

 30.0%

 30.9%

時価ベースの自己資本比率

 31.2%

 33.7%

 38.4%

 34.0%

 36.0%

債務償還年数

6.5年

26.0年

6.0年

9.5年

11.8年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

 22.8倍

 6.2倍

 24.2倍

 16.2倍

 11.8倍

ネットD/Eレシオ

1.5倍

1.6倍

1.5倍

1.7倍

1.6倍

 (注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。

           自己資本比率:自己資本/総資産
           時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
           債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
           インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
           ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現金及び預金・有価証券)/純資産

2.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、流動負債 その他(一部)、社債、長期借入金、長期未払金であります。また、利払いは、連結損益計算書に計上されている支払利息を使用しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

 生産、受注及び販売の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループでは2020年4月30日に公表した中期経営計画「Challenge & Progress」の事業戦略に沿い、再開発事業の推進、外部成長をはじめとしたビルディング事業、アセットマネジメント事業等に取り組むことにより、企業価値の向上に努めてまいりました。当連結会計年度においては、「プレジオ新大阪ROUGE」(大阪府大阪市)の取得および「キャプション by Hyatt 兜町 東京」(東京都中央区)の建築等による外部成長及び賃料増額改定による内部成長等に取り組みました。当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、上記に加え、ビルディング事業における物件売却益の増加等により、営業利益は130億22百万円(前期比22億37百万円増)、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益の減少等により親会社株主に帰属する当期純利益は84億50百万円(前期比6億86百万円減)となりました。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「3 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に主たる要因としては、国内経済の動向や賃貸オフィス市況及び不動産投資市場等の不動産市況の動向等が挙げられます。

 また、当連結会計年度末の資産、負債、純資産の状況は次のとおりであります。

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

比較

資産

398,333

405,979

7,645

負債

279,009

280,334

1,324

純資産

119,324

125,645

6,321

有利子負債

226,895

231,323

4,428

(注)有利子負債は、短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、流動負債 その他(一部)、

   社債、長期借入金、長期未払金であります。

 

(資産)
 当連結会計年度末における資産合計は4,059億79百万円となり、前連結会計年度末比76億45百万円の増加となりました。これは時価の上昇等に伴う投資有価証券34億40百万円、「キャプション by Hyatt 兜町 東京」(東京都中央区)の建築費の支払い等に伴う建設仮勘定33億16百万円及びのれん6億45百万円の増加等によるものです。

 なお、当連結会計年度末における賃貸等不動産及び賃貸等不動産として使用される部分を含む不動産に関する連結貸借対照表計上額は3,044億87百万円(期中減少41億62百万円)、時価は4,212億46百万円(期中増加10億61百万円)となっております。

 

(負債)
 当連結会計年度末における負債合計は2,803億34百万円となり、前連結会計年度末比13億24百万円の増加となりました。これは営業未払金38億3百万円の減少等があった一方、有利子負債44億28百万円及び未払消費税等10億96百万円の増加等によるものです。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は2,313億23百万円、ネットD/Eレシオ1.6倍となりました。中期経営計画「Challenge & Progress」の計数目標としてネットD/Eレシオ1.8倍以下を掲げておりますが、当該水準の範囲内となっております。

 

(純資産)
 当連結会計年度末における純資産合計は1,256億45百万円となり、前連結会計年度末比63億21百万円の増加となりました。これは利益剰余金47億13百万円及びその他有価証券評価差額金18億96百万円の増加等によるものです。

 なお、中期経営計画「Challenge & Progress」の最終年度である当連結会計年度の業績が、計画の数値目標を上回ったこと等を総合的に勘案して普通配当に加え特別配当を実施し、連結総還元性向70%程度の目標に沿った株主還元を実行いたしました。

 

 また、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(財政状態の分析)

 当連結会計年度末におけるセグメントごとの資産の状況は、ビルディング事業の資産は物件売却に伴う販売用不動産の減少等があった一方、「プレジオ新大阪ROUGE」(大阪府大阪市)の取得および「キャプション by Hyatt 兜町 東京」(東京都中央区)の建築等に伴う有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末比で40億5百万円増加し、3,414億45百万円となりました。また、アセットマネジメント事業においては保有する平和不動産リート投資法人投資口の時価評価額の減少等により、前連結会計年度末比で6億11百万円減少し、246億53百万円となりました。

 

<セグメントごとの資産の状況>                               (単位:百万円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

比較

ビルディング事業

337,439

341,445

4,005

アセットマネジメント事業

25,264

24,653

△611

調整額

35,629

39,881

4,251

連結財務諸表計上額

398,333

405,979

7,645

 

(経営成績の分析)

 セグメントごとの経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源については、主に事業活動から生じるキャッシュイン、金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達となっており、これら調達した資金を運転資金、再開発事業やビルディング事業等の成長投資、株主還元及び安定的な経営のための内部留保にバランス良く配分いたします。なお、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、事業資産の運営費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用及び支払利息等の営業外費用であります。

 また、ネットD/Eレシオを財務規律の指標と位置付け、資本政策、財務規律の適切な水準を維持することを基本方針としており、当連結会計年度末における借入金及び社債等の有利子負債残高は2,313億23百万円、有利子負債から現金及び預金・有価証券を減じたネット有利子負債残高は2,029億2百万円、ネットD/Eレシオは1.6倍となっております。

 なお、当社は、再開発事業やビルディング事業をはじめとする長期的な事業を安定的に展開し、株主価値を向上させるために必要な内部留保の確保を前提とした上で、株主還元を実施しております。資本コスト及び資本効率を意識しつつ、事業投資リターン水準を踏まえ、2020年度から2023年度においては連結総還元性向70%程度を目標に利益還元することを基本方針としております。当該方針に基づき、当連結会計年度の配当金の総額は59億69百万円(特別配当額17億97百万円を含む)となりました。その結果、当連結会計年度の連結総還元性向は70.6%となっております。

 

③重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。なお、連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 また、特に、固定資産の減損及び販売用不動産の評価については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、当社の株主である三菱地所株式会社と下記の資本業務提携契約を締結しております。

 相手先

契約締結日

内容

三菱地所株式会社

 2011年2月17日

日本橋兜町・茅場町地区の再開発に関する取り組み等の推進について、包括的な協働関係を構築し、当該事業及びその関連事業に係るノウハウの相互提供並びに顧客基盤の相互提供を行うもの。

 

 

 なお、当社は、2024年6月7日開催の取締役会において、大成建設株式会社(以下「大成建設」といいます。)との間で資本業務提携を行うこと(以下「本資本業務提携」といいます。)を決議し、同日付で資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といいます。)を締結いたしました。併せて、当社、大成建設及び三菱地所株式会社(以下「三菱地所」といいます。)は、本資本業務提携契約並びに当社及び三菱地所間の2011年2月17日付「資本業務提携契約書」に関し、3社間で資本業務提携に係る協定書(以下「本協定」といいます。)を同日付で締結いたしました。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。