当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
独立系メンテナンス企業である当社グループは、「何よりも安全のために。」「見えないからこそ手を抜かない。」「信頼を礎に。」の企業理念のもと、メンテナンス品質の向上を図るとともに、メーカー主導の価格体系の見直しによる「適正価格の実現」を図ってまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、成長性と収益性を高め、安定的な事業成長によって企業価値を継続的に向上させることが株主重視の経営であると認識しております。成長性においては売上高成長率を、収益性においては売上高営業利益率を重要な指標と位置付けております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
継続的な成長を実現するために、当社グループは中長期的に以下の戦略を策定し、実行しております。
① 保守・保全事業の推進
・地域ごとの事業子会社制の採用により各地域の営業力を強化するとともに、M&Aを活用した事業エリアの拡大等により、基幹事業である保守・保全事業の更なる成長を図る。
② リニューアル事業の強化
・営業体制の拡充、自社製品の開発等によりリニューアル事業を更に強化する。
③ 人材の確保・育成
・採用力の強化により、安定成長を支える人材を確保する。
・人材育成により、技術水準及びメンテナンス品質の向上を図る。
④ 財務基盤の安定化
・上記の戦略を可能とするために財務体質の改善を図る。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
エレベーター等のメンテナンス業界におきましては、不動産の供給増加によるエレベーター等の増加、物件所有者及びビル管理会社のコスト削減要求等により、事業機会が増加する一方、エレベーター等の安全稼動への社会的要請の高まりから、高品質なサービスの提供が求められております。
一方でわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により、経済活動の正常化が進み、景気動向は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢の長期化や円安の進行に伴う物価上昇等の影響により、依然として先行き不透明な状況にあることから、企業の経費削減ニーズは今まで以上に高まると予想されております。当社グループが属するエレベーター等のメンテナンス市場におきましては、顧客におけるコスト意識の高まりに加え、エレベーター等の運行の安全への要求が強まっていくものと想定しております。このような事業環境の下、当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであると認識しております。
① 国内事業基盤の構築・拡大
当社グループが安定的成長を図るうえで、事業基盤の構築・拡大が課題であると認識しております。具体的には、継続的収益及び保全・リニューアル業務への展開に繋がる、保守契約台数を増大させることが最も重要であると考えております。
② 人材確保及び育成
当社グループの事業競争力の根幹は、エレベーター等の安全運行に必要な高品質なメンテナンスサービスを提供できる人材であり、そのような人材の確保と育成は今後の当社グループの成長にとって不可欠であると考えております。
当社グループでは、これまで行ってきた従業員への研修を継続・強化するとともに、社内技術、品質認定制度を確立することで、技能水準の高い人材の育成を図ります。
また、人材の確保につきましては、企業認知度と労働条件の向上を目指すとともに、新卒・中途採用の積極的な増加を図り、当社グループの要求する品質を担保できる外注業者の利用により、適宜、人員補充を行ってまいります。
③ 海外事業展開の推進
高品質なメンテナンスサービスに対する需要は、日本市場のみならず海外市場においても広く存在するものと考えております。当社グループが日本市場で培ってきた複数メーカーのエレベーター等に対応できる技術力や教育研修のノウハウ等を活用することで、海外市場への展開、成長を図ります。
④ 事業拡大のための資本・業務提携の検討
当社グループの企業価値向上に資するような他社の買収、他社とのジョイントベンチャーや業務提携を検討してまいります。
⑤ 研究開発の推進
約50mのエレベーターのテストタワーを備えた研究開発施設JES Innovation Center(通称JIC)及びJICに隣接するJES Innovation Center Lab(通称JIL)にてエレベーターリニューアル等の研究開発活動等を推進しております。
⑥ 財務基盤の安定化
当社グループの今後の事業拡大のためには拠点拡充、進化するエレベーター等に対応するための研究開発、人材への投資や研修施設の拡充等、先行投資及び継続投資が必要となります。将来の資金需要に備え、内部留保の確保を図るとともに、借入等による資金調達にて財務基盤の安定化を行ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、エレベーター等の保守・保全業務及びエレベーターのリニューアル業務を行うメンテナンス事業を行っております。「何よりも安全のために。」「見えないからこそ手を抜かない。」「信頼を礎に。」を経営理念として、エレベーター等の利用者の安心・安全のために高品質のサービス提供を続けることが重要であると考えております。
当社グループでは、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、2021年11月16日に開催の取締役会において、「サステナビリティ基本方針」を決議いたしました。また、サステナビリティ経営の強化及び推進のために、2022年5月にサステナビリティ委員会を設置いたしました。
サステナビリティ経営を実践することで、経済価値と社会・環境価値の向上を目指してまいります。
(サステナビリティ基本方針)
当社グループでは、「何よりも安全のために。」、「見えないからこそ手を抜かない。」、「信頼を礎に。」という企業理念のもと、事業活動を通じて自らの強みを生かして優先的に取り組むべき課題を、①「品質安全」、②「労働安全及び従業員エンゲージメント」の2つのマテリアリティ(重要課題)として特定し、持続可能な社会の実現に取り組み、全てのステークホルダーから信頼され、必要とされる企業を目指します。
①品質安全
当社グループは、「品質の保持」、「安心の提供」を大きな社会的責任と考えており、お客様に満足していただける高品質で安全なサービスを提供し、社会に貢献することを目指します。
②労働安全及び従業員エンゲージメント
当社グループは、事業を支える最も重要な基盤は人材であると考えており、従業員の安全を確保すること、また、従業員1人1人が働きやすく、やりがいをもって職務を遂行できる環境を整えることで、当社グループの持続的な発展へとつなげてまいります。
(サステナビリティ委員会)
昨今、企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上につながるものとして、サステナビリティの重要性が高まっております。このような背景のもと、サステナビリティにかかる課題の解決、リスク・機会の特定による、経営計画と連動したサステナビリティへの取り組みの推進を目的として、取締役会の傘下に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。本委員会は取締役副社長執行役員CFOを委員長として、委員はその目的に照らして、担当職務等に基づき適切と認められる人材による構成となっております。環境、社会、ガバナンス、その他サステナビリティに関する課題とあわせて、経営、事業との整合性の確認及び施策の管理及び監督を行っております。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制として、サステナビリティ委員会が、サステナビリティ戦略及び計画の策定、リスクの抽出、評価、対応策の検討、進捗管理、目標とすべき指標の設定等について審議を行うとともに、取り組み状況のモニタリング等を実施し、取締役会に報告・提言を行っております。
また、サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関する課題等について当社グループ会社への指導等を行い、各グループ会社から報告を受ける体制を取り、グループ全体のサステナビリティ強化に努めております。
(2)戦略
当社グループは、エレベーター等のメンテナンス事業を通じて、商業施設、住宅施設などで日々利用されるエレベーター等の安心と安全のために、24時間365日体制でエレベーター等の状態を管理しております。エレベーター等は日常生活において重要な社会インフラであり、メンテナンス事業を通じて安全に稼働することは、当社が取り組む最大の社会貢献であると考えております。そのために当社グループは、品質向上、技術力の向上、そのための研究開発の強化に努めております。
当社グループが、持続的な成長のために取り組む、サステナビリティに関する主な内容は以下のとおりです。
a.品質安全に関する取組
当社グループは、品質の保持、安心・安全の提供を重要な社会的責任と考えており、利用者の皆様に満足していただける高品質で安全なサービスを提供し、社会に貢献することを目指しております。そのために以下の取り組みを行っております。
①人材育成
当社グループの競争優位性は、様々なエレベーターメーカー機種に対する高度な技術力にあります。持続的な成長・発展のためには、メンテナンス事業を担う技術力を持った人材の育成が重要であると考えております。エレベーター等を巡る公的資格としては検査に関するものは存在しますが、点検に関するものは設けられておりません。当社はこのような現状を踏まえ、エレベーター等の安全を担保するためには社内資格制度を充実させる必要があると考えて、そのための多種多様な教育・資格制度を設け、優れた人材の育成に努めております。
また社会環境変化に応じた持続的な成長のためには、多様性のある人材を確保することが重要であると認識しております。これまで性別、国籍等を問わない採用を行っており、今後も事業計画を踏まえた上で、多様性のある人材の採用、研修制度の整備を推進する方針です。
(研修プログラム「STEP24」 社内認定制度)
STEP24は、昇降機の基礎知識と安全ルールから、実務に沿った現場実習、国内主要メーカー各機種に応じた幅広い知識を学び、未経験からメンテナンス員として活躍ができる技術水準まで育成する仕組みとなっております。
当社グループは独自にエンジニアの評価資格制度(昇降機保守担当資格者制度)を導入しております。「G5 昇降機安全作業資格者」、「G4 昇降機準保守担当資格者」、「G3 昇降機保守担当資格者」など設定しております。STEP24研修全カリキュラム終了後に学科及び実技試験を実施し、合格者はG3に認定され、保守担当者として全ての作業を1人で行うことが許可されます。更なる専門性を高めるため、G2、G1を新たに設けて、従業員のキャリアパスの拡充を行っております。
また、国内主要メーカー各機種の様々な機種に対応できるスペシャリストを養成するため、技術の習熟度に応じた各種教育・研修を継続的に実施しています。多岐にわたるカリキュラムにより従業員の技術向上に努めております。
②品質安全
当社グループは、メンテナンス事業のエキスパートとして、安全を第一に考え、品質の向上に努めております。ガバナンス及びリスク管理として、技術本部が品質安全に関する課題の分析と改善策の策定を行い、各グループ会社に共有・支援を行っております。具体的には、毎月、品質管理の結果を技術本部及び各グループ会社で分析を行い、故障低減に努めております。技術本部長は定期的に取締役会に品質概況報告として、故障率等のデータと改善策について報告を行っております。
また、持続的な成長に向けた戦略として、技術本部が中心となり、保守契約台数の増加に向けた体制強化を推進しております。
b.労働安全に関する取組
当社グループは、事業を支える従業員の安全を確保すること、そのための環境を整備することが持続的成長において重要であると考えております。そのために以下の取り組みを行っております。
①労働安全衛生
当社グループは、労働安全衛生法に基づき安全衛生委員会を設置し、衛生管理者、安全管理者、安全運転管理者、防火管理者を選任し、毎月1回、従業員の危険又は健康障害を防止するための対策など重要事項について、十分な審議を行っております。
また、エレベーターメンテナンスに従事する技術者に安全免許制度を設け、安全講習の受講を通じて、技術職の安全意識向上を図っております。
②働きやすい職場環境の整備
当社グループは、厚生労働省の快適職場指針を参考に、従業員の負担を軽減するための職場環境の整備を行っております。
また、多様な人材の活躍を促進していくためには社内制度や社内環境の整備が不可欠であることから、育児、介護などライフステージ応じた人事制度の整備、職場環境の整備を推進することで、従業員が安心して働くことができる支援を行っております。
(3)リスク管理
当社グループの持続的な成長のために、環境、社会課題などサステナビリティに関するリスク管理は重要であると考えております。サステナビリティ委員会を中心としたガバナンス体制を通じて、当社グループが直面する、あるいは、将来発生する可能性のあるサステナビリティ関連のリスクを識別し、評価、管理を行い、取締役会への報告等、適切な対応を実施しております。また、サステナビリティに関するリスク及び機会の内容を踏まえて、コンプライアンス委員会など常設委員会と連携を行い、事業運営のチェック及び統制の充実に取り組んでおります。
当社は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同を表明しております。サステナビリティ委員会が検討を行い、TCFD提言に基づく情報開示を進め、気候変動にかかるリスクと機会の開示を行いました。
(4)指標及び目標
当社グループは事業計画に応じて必要な人材採用・確保に努めております。日本国内マーケットを中心に保守契約台数の増加、売上高、営業利益の向上を目指しております。そのため、事業成長に伴い従業員数の増加、エレベーター等のメンテナンス事業を推進する技術職の人数の増加を重要指標として管理しております。
2024年3月期末における従業員数は1,868名と、前年同期の1,766名から102名増加しております。また、技術職は2024年3月期末で1,159名と、前年同期の1,096名から63名増加しております。
当社グループとしては引き続き保守契約台数の状況等を踏まえて、人材採用・確保に努め、前年同期以上の人員確保を目標といたします。
以下において、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。
なお、以下の記載事項は、特に断りがない限り、当連結会計年度末現在の事項であり、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項につきましては、不確実性を有しており、将来生じる結果と異なる可能性がありますので、記載しております事項に対する判断は、以下記載事項及び本項目以外の記載内容も合わせて慎重に行われる必要があります。
(1)特定の仕入先への依存リスク
当社グループはエレベーター等のメンテナンスを主たる事業としております。
当社グループは、エレベーター等のメンテナンスのために必要となるパーツの購入先を複数にするなどパーツが確保できなくなるリスクを低減するよう努めておりますが、パーツによっては品質維持の目的によりメンテナンス対象となるエレベーター等のメーカー(系列会社を含む)のみからの購買としております。
当社グループは、これらのパーツについて一定量の在庫の保有、パーツのリサイクル、海外市場等からの調達の検討によりパーツの供給不足や調達時期の遅れに備えておりますが、なんらかの理由により、これらのパーツを適時・適量に確保できない場合には、当社グループのメンテナンス業務を適時に実施できない可能性があります。
また、これらのパーツを構成する素材の価格上昇等の理由により、これらのパーツの価格が上昇し、そのコストをサービス価格に転嫁できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合に関するリスク
メンテナンス市場には、エレベーター等メーカー、メーカー系列のメンテナンス専業会社及び独立系メンテナンス会社等、大小様々な競合会社等が多数存在しており、競合の激化により新規獲得数の減少や契約切り替え等が発生し、当社グループのシェアが低下する可能性があります。また、サービス価格が下落した場合、メンテナンスの単一事業を行っている当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)技術革新について
エレベーター及びエスカレーターは随時新機種が発売・設置されており、当社グループでは国内主要メーカーのどの機種でも保守できるよう技術水準の向上に努めておりますが、今後、メーカーによる急激な技術革新が進み、当社グループが適時に対応できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。
(4)法的規制について
① 当社グループが行う保守・保全業務のうち法定検査については、建築基準法において昇降機等検査員等の資格を有する者が行う旨定められております。当社グループでは事業規模に応じて昇降機等検査員の確保に努めておりますが、何らかの理由で昇降機等検査員を十分に確保できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 当社グループが行うリニューアル業務では、建設業法に基づく機械器具設置工事業の許可を得て事業を展開しておりますが、建設業法・建築基準法その他関係法令の改廃等が行われた場合に、製品の仕様変更が必要となる等の理由により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)知的財産権について
当社グループは多くの知的財産権を保有し、維持・管理しており、必要に応じて技術調査等を行うことで知的財産権侵害問題の発生を回避するよう努めております。
しかし、当社グループの知的財産権が無効とされる可能性や模倣される可能性等があり、当社グループの保有する知的財産権の保護が損なわれた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者の知的財産権を侵害したことにより、当社グループが当該第三者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
(6)メンテナンス用パーツの在庫及び評価リスクについて
当社グループでは、エレベーター等の保守・保全、リニューアル業務のためのパーツ棚卸資産として保有しておりますが、メンテナンス対象となるエレベーター等が多機種であることに加え、メンテナンス期間が長期間となることが想定されるため、棚卸資産が増加する可能性があります。
当社グループでは、基準在庫数による管理を行うなど、パーツの重要性に応じた在庫管理を実施しておりますが、収益性の低下等に伴い、棚卸資産の資産価値が低下した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)事故・災害等に伴うリスク
当社グループは、エレベーター等の保守・保全業務及びリニューアル業務を行っております。
これらの業務を行うに当たって、当社グループは、国土交通省の「建築保全業務共通仕様書」に準拠し、また、社内で設定した独自の安全基準を遵守することにより、顧客及び利用者の安全を確保するよう十分配慮しております。
しかし、地震等の災害・利用者の使用方法・エレベーター等の欠陥に起因する事故の他、メンテナンス作業における当社グループ社員又は業務委託先の人的なミス等により機器の損傷事故や場合によっては人身事故に至る可能性があります。
当社は、グループ社員及び業務委託先への安全指導の徹底や損害賠償責任保険の加入によりリスク回避に努めておりますが、保険でまかないきれない損失の発生や信頼失墜により、当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
(8)労働災害に係るリスク
エレベーター等のメンテナンス作業は、危険を伴う作業であるため、当社グループでは「何よりも安全のために。」を経営理念のひとつに掲げ、作業員の安全教育を徹底することにより事故防止に努めております。
しかしながら、万が一、重大な事故・労働災害等が発生した場合、一時的に補償金等の負担が生じ、また、当社グループの社会的信用に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)買収又は業務提携に関するリスク
当社グループは、他社の買収、他社とのジョイントベンチャーや業務提携を行っております。しかしながら、買収又は提携等が円滑に行われない場合や、買収した会社の事業、ジョイントベンチャー、業務提携が当初見込みどおりの期間で予想どおりの効果を得られない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)海外事業の展開に伴うリスク
当社グループは、海外への事業展開を行っておりますが、海外市場での事業活動には、次のようないくつかのリスクがあります。
① 予期しない法律や規制の変更
② 社会・政治及び経済状況の変化又は治安の悪化
③ 各種税制の不利な変更又は課税
④ 異なる商習慣による取引先の信用リスク等
⑤ 労働環境の変化や人材確保・教育の難しさ
⑥ 為替リスク
これらのリスクを最小限に抑えるため、現地顧問弁護士や会計事務所等からも迅速に情報を入手し、いち早く対策が打てる体制を構築する方針でありますが、リスクの顕在化により、サービスの提供が困難になり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)瑕疵担保責任等について
当社グループでリニューアル工事を実施したエレベーターの工事実施部分(当社製品)が、取扱説明書等に準拠した適切な据付、連結及び保守・点検管理が行われている等の所定の条件のもとで保証期間中(引渡から12ヶ月間)に故障した場合には、当社指定の方法により、無償で故障部品を修理又は交換することとしております。
また、当社グループは、当社製品の重大な欠陥、又は当社の製作及び施工の重大な過失によって直接生じた顧客の損害については、賠償の責任を負っております。
当社グループが何らかの理由により、瑕疵担保責任あるいは損害賠償責任の追及を受け、賠償責任を負うこととなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材確保と育成について
当社グループは、高い専門性を有する技術者の確保及び、今後の事業拡大を見据えた営業部門人員、管理部門人員の増強を図っております。また、人材育成にも注力し、技術力の向上及び内部管理体制の一層の強化、充実に努めております。事業拡大に先行して人員を増強し費用負担が先行した場合、もしくは事業に必要な人員を確保できなかった場合、人材育成が想定どおりに進捗しなかった場合等、これらの施策が適時適切に行えなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)顧客情報の管理
当社グループは、保守・保全及びリニューアル契約に関するものをはじめとし、多くの顧客情報を取り扱っているため、外部からのネットワーク不正侵入への対策はもとより、内部からの情報漏洩防止のため、情報漏洩を防止するシステムを導入するとともに、「情報セキュリティポリシー」「個人情報・特定個人情報保護規程」等を整備し、情報流出の防止に努めております。
しかし、万一、不測の事態により顧客情報が外部に漏洩した場合には、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)システム障害
当社コントロールセンターでは、万一のトラブルに遅滞なく対応できるよう、24時間365日体制でエレベーター等の状態を監視しております。
コントロールセンターのサービスは、コンピュータシステムと通信ネットワークにより提供されているため、当社は定期的にバックアップを取ることにより、システムトラブル発生の未然防止又は回避に努めておりますが、自然災害や不慮の事故、想定を上回る急激なアクセス増等の一時的な過負荷その他の要因によりコンピュータシステムにトラブルが生じ業務に支障が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)有利子負債について
当社グループの有利子負債残高(リース債務を含む)は、2024年3月期連結会計年度末現在で6,740百万円であり、有利子負債依存度は20.7%となっております。そのため金融市場の混乱や景気低迷、金融機関の融資姿勢の変化により借換えが困難になった場合や、市場金利の急速な上昇等により支払利息が急激に増加した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、借入金の一部には財務制限条項が付されております。財務制限条項に抵触した場合、貸付人の請求があれば期限の利益を失うため、直ちに債務の弁済をするための資金が必要になり、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
財務制限条項の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係) ※2 財務制限条項」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(貸借対照表関係) ※2 財務制限条項」に記載のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により、経済活動の正常化が進み、景気動向は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢の長期化や円安の進行に伴う物価上昇等の影響により、依然として先行き不透明な状況にあることから、企業の経費削減ニーズは今まで以上に高まると予想されております。
エレベーター等のメンテナンス業界においては、マンションストック戸数は順調に増加を続けていること及びオフィスビルの供給量の増加等に伴い、市場は緩やかな拡大傾向にあります。
このような市場環境の下、当社グループは、独立系メンテナンス会社への契約切り替えによる企業のコスト削減ニーズに応えるため、全国展開体制の更なる整備、人材獲得・育成による品質安全強化、営業体制の強化を行ってまいりました。
保守・保全業務については、保守契約台数が堅調に推移し、当連結会計年度の保守・保全業務の売上高は26,531百万円(前年同期比14.5%増)となりました。リニューアル業務については、事業拡大に備えた営業体制の強化や部品供給停止物件の提案強化等により、当連結会計年度のリニューアル業務の売上高は14,255百万円(前年同期比36.2%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績につきましては、売上高は42,216百万円(前年同期比20.9%増)、営業利益は6,821百万円(前年同期比36.1%増)、経常利益は6,851百万円(前年同期比34.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,515百万円(前年同期比43.2%増)となりました。
当社グループは、「メンテナンス事業」の単一セグメントでありますが、売上高を売上種類別(保守・保全業務、リニューアル業務及びその他)に示すと、以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
売上種類 |
2024年3月期 |
2023年3月期 |
|||
|
金額 |
構成比率 |
対前期増減率 |
金額 |
構成比率 |
|
|
保守・保全業務 |
26,531 |
62.8% |
14.5% |
23,178 |
66.4% |
|
リニューアル業務 |
14,255 |
33.8% |
36.2% |
10,468 |
30.0% |
|
その他 |
1,429 |
3.4% |
13.5% |
1,259 |
3.6% |
|
合計 |
42,216 |
100.0% |
20.9% |
34,907 |
100.0% |
① 経営成績の分析
(売上高)
保守・保全業務の営業強化及び営業エリアの拡大により、保守契約台数は約100,230台と堅調に推移し、保守・保全業務の売上高は26,531百万円(前連結会計年度比14.5%増)となりました。また、リニューアル業務については、事業拡大に備えた営業体制の強化や部品供給停止物件の提案強化等により、リニューアル業務の売上高は14,255百万円(前連結会計年度比36.2%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は42,216百万円(前連結会計年度比20.9%増)となりました。
(売上総利益)
保守契約台数増加に伴い、材料仕入、外注費等が、また、技術系(保守、工事)の人員の増加により人件費が増加したことにより、当連結会計年度の売上原価は26,263百万円(前連結会計年度比21.4%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は15,952百万円(前連結会計年度比20.2%増)となりました。
(営業利益)
業容の拡大に伴う人員増加等により人件費等が増加した結果、販売費及び一般管理費は9,131百万円(前連結会計年度比10.5%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の営業利益は6,821百万円(前連結会計年度比36.1%増)となりました。
(経常利益)
営業外収益は97百万円(前連結会計年度比42.3%減)、営業外費用は67百万円(前連結会計年度比15.0%減)となりました。
営業外収益の主な内容は保険解約返戻金22百万円及び受取賃貸料26百万円で、営業外費用の主な内容は支払利息22百万円であります。
この結果、経常利益は6,851百万円(前連結会計年度比34.3%増)となりました。
(税金等調整前当期純利益)
特別利益は6百万円(前連結会計年度比61.0%減)、特別損失は14百万円(前連結会計年度比46.6%増)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は6,843百万円(前連結会計年度比34.0%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税、住民税及び事業税に法人税等調整額を合わせた税金費用は2,295百万円(前連結会計年度比19.8%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は4,515百万円(前連結会計年度比43.2%増)となりました。
② 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ3,536百万円増加し、32,539百万円となりました。これは主に、売掛金が1,570百万円、原材料及び貯蔵品が1,279百万円、有形固定資産が917百万円増加したこと等によるものであります。
(負債)
負債については、前連結会計年度末と比べて426百万円増加し、15,749百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が839百万円、未払法人税等が508百万円増加した一方で、短期借入金が990百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
純資産については、前連結会計年度末と比べて3,110百万円増加し、16,789百万円となりました。これは主に、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益を4,515百万円計上したことにより増加した一方で、配当金の支払により1,513百万円減少したこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べて79百万円減少し、1,875百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は5,280百万円(前年同期は4,253百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益6,843百万円、減価償却費1,403百万円等の増加要因に対し、売上債権の増加額1,567百万円、法人税等の支払額1,825百万円等の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,841百万円(前年同期は3,509百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,958百万円、無形固定資産の取得による支出670百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,529百万円(前年同期は954百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の借入による収入2,400百万円等の増加要因に対し、長期借入金の返済による支出2,422百万円、配当金の支払額1,513百万円、短期借入金の純減額990百万円等の減少要因によるものであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状況を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めております。運転資金需要のうち主なものは、当社グループのサービス提供のため、エレベーター等のパーツ調達、人件費等の営業費用によるものの他、納税資金等であります。運転資金及び経常的な設備投資については、手持資金、間接金融及びリース取引等により資金調達を行っております。今後も事業活動を支える資金調達については、低コストかつ安定的・機動的な資金の確保を主眼にして多様な資金調達方法に取り組んでまいります。
⑤ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積り・仮定設定を必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループが属するエレベーター等のメンテナンス市場におきましては、顧客におけるコスト意識の高まりに加え、エレベーター等の運行の安全への要求が強まっていくものと想定しております。
当社グループは設立以来、「何よりも安全のために。」「見えないからこそ手を抜かない。」「信頼を礎に。」の企業理念のもと、メンテナンス品質の向上を図るとともに、メーカー主導の価格体系の見直しによる「適正価格の実現」を目標としてまいりましたが、今後も持続的な成長を実現していくためには、「エリアごとの事業会社による迅速なサービスの提供による顧客満足度の向上」、「M&Aを含めた国内外の事業展開エリアの拡大」「高品質のメンテナンス提供を可能とする人材の確保・育成」を特に重要と認識しております。
当社経営陣は、これらの課題に適切に対応するため、最善の経営方針を立案・実行するよう努めてまいります。
なお、上記以外の経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループは、メンテナンス事業の単一セグメントであるため、「生産、受注及び販売の実績」につきましては、セグメント別の記載を省略しております。
① 生産実績
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
② 受注実績
当連結会計年度の受注実績を、売上種類別に示すと、次のとおりであります。
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売上種類の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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|
リニューアル業務 |
16,329,467 |
124.8 |
7,853,309 |
133.9 |
|
合計 |
16,329,467 |
124.8 |
7,853,309 |
133.9 |
(注)当社グループは受注によるサービス提供を行っておりますが、保守・保全業務及びその他については、受注から売上までの期間が短いため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績を売上種類別に示すと次のとおりであります。
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売上種類の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
保守・保全業務 |
26,531,337 |
114.5 |
|
リニューアル業務 |
14,255,755 |
136.2 |
|
その他 |
1,429,420 |
113.5 |
|
合計 |
42,216,512 |
120.9 |
(注)主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先が無いため記載を省略しております。
該当事項はありません。
当社グループにおいて、研究開発活動は当社のみが行っております。
当社は、社会のエレベーター設置台数・依存度の増加に対応するため、各種最新要素技術をいち早く取り入れ、エレベーターメンテナンス品質の向上を図るための研究開発活動を行っております。
当連結会計年度の研究開発は、PRIMEサーバー・コンソールの機能向上及び高機能化、設備コスト・人員コストの削減を目的とした遠隔監視端末の高機能化並びに、リニューアルコストの削減と工事期間の短縮を狙ったQuick Renewal製品の開発をテーマとして取り組みました。
この結果、当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は
なお、当社グループはメンテナンス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
当社グループでは、技術本部において研究開発を継続的に実施しておりますが、その基本方針は以下のとおりです。
(1)リモート遠隔点検サービス「PRIME」に係る研究開発
「PRIME」は、当社が独自に開発したリモート遠隔点検システム及びそれを利用し提供するサービスの総称であります。
エレベーター遠隔監視システムは、エレベーターに接続し動作状況を監視する遠隔監視端末と、そこから報告・警告を受ける監視サーバー、及びその報告・警告を監視員が確認するための監視コンソールで構成されています。
(1-a)遠隔監視端末
遠隔監視端末は、様々なメーカー製のエレベーターを遠隔監視システムに対応させるため、動作状況の監視技術の研究開発を行っております。主に有線通信技術の検討になりますが、ハードウェア・ソフトウェアプロトコル、技術範囲を限定せず広範囲に検討・調査を進めております。
動作状況の収集手段としては、エレベーター制御盤からの取得のほか、加速度センサー、温度センサーなどの各種センサーを利用した取得など、動作状況監視方法多様化のための研究を継続しております。
遠隔監視端末から各種情報を伝達させるための通信インフラは、昨今の無線通信網の主流であるLTE(4G)通信を採用し、社外からの妨害や、コンピューターウィルスの侵入について耐性の高い、当社専用の閉域網を敷設することでネットワーク通信のセキュリティを担保しております。また、M2M/IoT通信端末として、さらに広範囲かつ安定した無線通信の検討を進めております。
(注)M2M/IoT通信:携帯電話通信を機器・装置間通信に適用することにより、広範囲での情報収集やサービス向上を実現する技術
(1-b)監視サーバー
監視サーバーは、遠隔監視端末からの情報を一時的に保存し、接続されている監視コンソールへ通知するための装置です。相当数のノードからの情報通信が集中するため、地震・台風のような災害時などの発報集中時や今後実装される遠隔端末の各種センサーの情報収集にも十分に耐え、かつ当社各所での監視作業のための多地点監視コンソール接続を可能にする必要があります。
これらの設備における事業継続対策として、災害対策が施されたデータセンターについて関東及び関西で稼働し、通信回線については複数の通信事業者の閉域網の敷設が完了いたしました。また、自社運用中の各種サーバーシステムとパブリッククラウド(クラウドサービス)を並行利用するインフラ・基盤の構築が完了いたしました。これにより、エレベーター管理台数の増加に伴うサーバーリソース調整の容易性、災害及び障害時の安全性・事業継続性の向上が期待できます。併せて、各種センサーやエレベーターの稼働状況などの情報をより迅速かつ正確に収集するためのデータ分析基盤を整備しています。これにより、AIによる予測や最適化を実現し、より高品質なサービス開発の検討を進めるとともに、これまでに蓄積された経験・知見を生かした生成AIの活用を検討いたします。
(1-c)監視コンソール
監視コンソールは、遠隔監視端末にて検出したエレベーターの異変をモニター上に表示し、エレベーターの動作状況の確認、エレベーターの遠隔操作を可能にするためのパソコンプログラムです。災害時のような大量のエレベーター異常検出状況下においても安定稼働させる仕組みを研究・開発し、コントロールセンターへ展開、稼働しております。また、機能向上及び情報処理の高速化、監視作業の高効率化のための施策、開発を継続しており、遠隔監視端末より送られる各種センサーデータの一部可視化を行い、スマートフォン端末やタブレット端末でも一部の監視・エレベーターメンテナンス作業ができるようにプログラム開発を実施しております。さらに、海外拠点での監視業務に対応するため、多言語化対応の検討を開始いたしました。
(2)自社製エレベーター制御盤に係る研究開発
現在、国内外の協力会社より制御盤を含めた各種部品を購入し、設置するエレベーターごとにカスタマイズした上でリニューアル業務を行っておりますが、今後は、当社で開発した制御盤の採用と併せ、Quick Renewal製品を組み合わせることにより、顧客のさまざまなニーズ(フルリノベーション、低コストリニューアル、超短工期リニューアル)に対応した提案を推し進めていくとともに、当社のエレベーター遠隔監視システムと密接に連携することによるメンテナンスコストの削減を図ります。さらに、海外のメーカーとの技術提携により、より低価格で高性能なエレベーター制御盤の開発を推し進めることで、リニューアル事業のさらなる低コスト化及び海外市場を見据えた製品開発を図ってまいります。
また、基本モデルの開発が完了した油圧式制御盤において、運用の幅を広げる為の追加開発を実施いたしました。この結果、群管理運転機能、不停止運転機能、警備会社・ビル管理室とエレベーター情報を共有する監視盤等の機能・装置が追加され、従来では対応できなかったリニューアル場面において、対応できるようになりました。
さらに、これまで社外製品でしか対応できなかった小荷物制御リニューアルにおいて、完全自社設計による小荷物リニューアル製品の開発が完了し、販売・運用が可能となりました。従来、小荷物については、部品の納期や品質のバラつきに課題があったものの、入手性の高い汎用部品を活用した設計で安定量産が可能となり、納期や品質についてのコントロールが容易になりました。また、将来的に特殊な顧客ニーズにも対応できるよう、拡張性をもたせた設計により、従来は対応できなかった場面での運用も想定しております。
引き続き、幅広い顧客ニーズに対応できるよう取り組んでまいります。