第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社は、2023年4月に新中期経営計画「不易流行」(計画期間:2023年4月~2026年3月)を策定しております。計画の詳細は、当社ホームページをご参照ください。

(https://www.inui.co.jp/ir/library/managementplan.html)

 本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1.経営の基本方針

 当社の経営の基本方針については、①資産の力を事業の力に、②FUN to WORK、③「らしさ」の追求、という3つを定めております。

 ① 資産の力を事業の力に

 未来に向かって進化を続ける勝どき・月島は施設賃貸業の適地であり、当社の収益と財務基盤を支えます。この優良な資産がさらに成長する機会が到来します。再開発の期間は事業が資産を支えます。強化される資産の力は更なる基盤の強化となります。

 ② FUN to WORK

 やりがい×いきがい=FUN、としました。そもそも小さい会社です。人と人とが支え合って、助け合って此処まで来ました。新しい働き方や、Digitalの力もうまく使っていきますが、ひとり一人のニンゲン力、これからも大切にしていきます。

 ③ 「らしさ」の追求

 われらの「らしさ」は、実業に向き合い、地道な努力を練り込みながら生まれます。「らしさ」は差別化の源泉です。他と違うことを恐れず、素直に独自性を追求する、それがわれらの不易流行です。

2.経営環境

 当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の拡大や商品価格の見直しによる堅調な企業業績により、景気は緩やかながらも持ち直し傾向が見られました。一方で、中東情勢の緊迫化、資源価格や原材料価格の高騰、円安基調の長期化など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 外航海運事業においては、当社の業容であるハンディ船の輸送能力は、今後も続く大型環境規制への技術的・経済的な対応の難しさから船腹の緩やかな減少が予想されることや、船舶燃費規制下での省エネ運航により、減少もしくは停滞していくことが予想されます。世界に遍在しており、世界人口の増加と強い相関を持つバルク資源材は、世界の平和を前提とした場合には緩やかに需要が増加します。ハンディ船輸送能力の停滞・減少と、バルクハンディ需要の緩やかな増加から、当社の外航海運事業における事業環境は長期的には明るいと考えております。一方で短期的には、世界経済の動向、地政学的な要因や、自然災害など、さまざまな要因の影響を受けます。パナマ運河の通航制限などの市況引き締め要因もありますが、中東情勢の緊迫化、中国経済の減速停滞、インフレや金融引き締めによる投資抑制など世界的な経済活動の低迷が懸念されます。

 倉庫・運送事業においては、当社事業は一般倉庫、文書倉庫、引越事業の3領域で構成されており、一般倉庫においては売上高の約1/3を紙の荷主に依存している状況です。こうした事業構成に対し、一般倉庫・文書倉庫においては急激なペーパーレス化により取扱量は減少しており、電子帳簿保存法、インボイス制度等により、こうした潮流は今後更に加速していくと考えております。また、引越事業においてもコロナ禍での働き方の変化により需要が減少しており、今後もコロナ前の水準に戻ることはないと予測していることから、核となってきた一般倉庫の紙、文書倉庫、引越の何れもが、厳しい将来に直面するものと想定しております。

 不動産事業においては、当社主要施設の立地する勝どきエリアと隅田川対岸に位置する築地市場跡地再開発計画が始動することや、都心部・臨海地域地下鉄構想による交通インフラの進化、また勝どき・月島エリアには今後新たに約13,000戸の住宅供給計画があることから、当社主要施設の立地するエリアは都心にある水辺のResidence Zoneとして継続発展し、ますます便利で魅力的な住む街へ進化していくと想定しております。

 

 

3.中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ① 中長期的な会社の経営戦略

 乾汽船の祖業は、海運業であり、倉庫業です。当社グループの仕事は、人の営みに欠かすことのないモノを運ぶ実業の一端を担っており、産業や社会を支えている自負と共にあり、この想いは不易です。

 不易であるために、地球環境問題を考え、より良い社会の実現を願い、よく制御された統治の中で、より良い物流、より良い経営を目指します。

 世界の海で「よくはこぶ」外航海運セグメント、日本の「よくはこぶ」を支える倉庫・運送セグメント、当社グループの「よくはこぶ」を支える不動産セグメントという、「よくはこぶ」が礎にある3つの事業を通じて社会に貢献する、その実践が当社グループの存在理由です。

 Sustainableな実業に向かい実現可能な提案と実践を重ねることで「よくはこぶ」を実現するため、多種多様な要求から、如何に持続的価値を導き出すかという挑戦を続けていく、こうした思いから長期ビジョンとして「よくはこぶ」を掲げ、2023年4月に新中期経営計画「不易流行」(計画期間:2023年4月~2026年3月)を策定しております。

 配当方針については、「事業特性」、「中長期的成長を重視した経営資源の配分」、「財務基盤」の3つのバランスがとれた株主還元策であることを基本とし(株式市場環境等を踏まえ自己株式取得する場合を含む)、以下に記載の従来の方針を継続します。

・従来どおり「良いときは笑い、悪いときにも泣かない」方針とします。

・業績に応じて、良いとき、悪いときの判断基準および最低配当額を定め、「悪いとき」にも無配を前提にはしません。

・また、「良いとき」には配当性向の累進による増配を提案してまいりたいと考えます。

② 中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 1)外航海運事業

・事業方針

ご長寿お達者

航行のムダ排除と安心安全

徹底した効率配船

・施策

 地球環境を考えると新造船の発注は難しくなりました。しかし、船稼業には船舶が必要です。船隊整備の要諦は、勇気と資金と長期目線と心得ます。

 そして、世界の変異に激しく振り回されるのが外航海運業です。予測不能の事態が、しばしば勃発しますが、鍛え続ける地力で対応します。

 

 当社外航海運事業の事業領域であるハンディ船においては、今後も船腹の供給が難しい状況が継続すると考えております。そうした状況下で、船価動向や環境規制対応をにらみながらフレキシブルに船隊を整備すること、既存スクラバー搭載船を延命し、既存燃料でも「よくはこぶ」力を維持することにより船隊規模を確保することで効率航行にも寄与することは、温暖化ガス排出量/輸送量の削減へつながります。環境にも配慮しつつ、「よくはこぶ」力を削がずに更に強化し、Handy市場での存在感を増していきながら、長期的に「よくはこぶ」Handy船隊を運営してまいります。短期的な見通しの難しさに対しては、変事には予測力より対応力を重視してまいります。

 2)倉庫・運送事業

・事業方針

自動化・ロボ化が入りにくいニッチな実需に対応

足・手・倉の進化⇒2027年、新たな「業」へ

・施策

 核となってきた紙製品、文書保管業、引越の何れもが、厳しい未来に直面しようとしています。縮みゆく消費は、弱者の敗退を加速させます。

 FUN to WORKを実践する現場のためにも、新しい「よくはこぶ」をつくり上げねばなりません。

 

 

 当社の倉庫・運送事業の事業領域は、多様な小口荷主が主体で、標準化が難しいニッチな領域であるため、大型投資を前提とした自動化、ロボ化は適しません。また倉庫の多くが人を集めやすい市街地に立地していることも特性です。こうした特性の中、①カイゼン+FUN to WORKの更なる追求により現場力、働きやすさを更に向上させること、②これまでも取り組んできたSOS(倉庫オペレーションシステム)をデジタル化への導管として更に進化させること、③Advanceへの実証実験を行うことで実業実務の効率化検証をおこなうことと業務設計力を強化させること、の3つを「Basic」と定義し、更に進化しながら、自動化・ロボ化が入りにくいニッチな実需に引き続き対応してまいります。

 また、①足(配送力):NPO法人が提供する配送マッチングサービスを活用し、求荷求車の新しい仕組みを提案・実践していくこと、②手(現場力):現場の業務要件をアンバンドル/リバンドルすることでギグワーカーなどさまざまな働き方の人材を活用可能にすること、③倉(展開力):既存の倉庫業ネットワークのデジタル結合で境目を低くすることで、倉庫を立地に縛られずもっとムダなく活用するべく試みていくこと、の3つの取組みを「Advance」と定義し、足(配送力)・手(現場力)・倉(展開力)の進化に取り組んでまいります。「Basic」+「Advance」をテーマに、2023年度から5年間(2027年度まで)を目途に新たな業域を開拓していきます。

 3)不動産事業

・事業方針

既存物件での実証実験を経て、この街での新しい「住みごこち」を実現

・施策

 築地市場跡地の再開発が動き出しました。この対岸、隅田川・勝どき橋を挟んだわれらの既存施設は、この時を待っていました。巨大開発に呼応しながら、構想10年のわれらの再開発がはじまります。

 

 当社不動産事業が長く根差してきた勝どきは、築地市場跡地再開発計画の隅田川対岸に位置しております。築地市場跡地再開発という巨大計画に呼応し、構想10年を要してきた、当社既存物件であるプラザ勝どき再開発計画(Neo Plaza Kachidoki~NPK~)が始動します。既存の物件では安定高稼働に向けた目標設定と実践を行いながら、これまでも居住者と一体になった防災への取り組みなど、様々な取り組みを通して構築してきた当社独自の価値観・ノウハウ・リソースに基づく事業コンセプトに基づいた事業を展開してまいりました。これからもこうした取り組みを続け、「住まう人とつくる住みごこち」を指向し高めてまいります。既存物件での取り組みを「NPK」の実証実験の場ともすることで、NPKにおける事業コンセプトを洗練化し、また広域エリアの進化を見据えた事業計画を詳細化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、サステナビリティを巡る取り組みを重要な経営課題として認識しています。当社グループでは、長期ビジョンを「よくはこぶ」と定め、実現可能な提案と実践を重ねていくことで、持続可能性(サステナビリティ)を高めてまいります。

 外航海運事業では、船舶を長い期間において有効に活用する「ご長寿お達者」を続けており、また、配船計画においては空荷航海を減ずることで経済性を高め、環境負荷を軽減する目的で構築した情報ネットワークシステムを運営しております。

 また、倉庫・運送事業においても、求荷求車システムを核とする効率的で経済的な配送ネットワークの構築等を行っているNPO法人と提携することで、広く運輸物流業界の持続可能性を高める試みを進めております。

 全社の取り組みとして、「Fun to Work」を掲げ、就労環境の差別をなくし、「やりがい」を創出する環境整備に注力してまいります。なお、「Fun to Work」は経営の基本方針の一つに掲げております。

 本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティを巡る諸課題については組織のリスク管理体制に統合し、現行の「乾汽船グループ内部統制規程」で定めるリスク管理体制の下で管理しております。具体的には、原則、年1回及び必要に応じて開催される「リスク・コンプライアンス委員会」において、グループ内で認識されたリスク・機会について適切に管理しております。同委員会は代表取締役社長が委員長を、監査室が事務局を務めており、リスク及びコンプライアンスの管理に関する基本方針の策定を行うほか、リスク分析結果について総合的な観点から再評価を行うなどの役割を担っております。また、「リスク・コンプライアンス委員会」で協議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行っております。

 

(2)リスク管理

 サステナビリティ関連のリスク及び機会は、各部におけるリスクの識別・評価、「リスク・コンプライアンス委員会」における再評価、取締役会への定期的な報告を経て、取締役会による監督というプロセスで管理されております。これにより、組織における他のリスクとともに、現行の「乾汽船グループ内部統制規程」で定めるリスク管理体制の下に統合し、全社的なリスク管理を行っております。

 

(3)人的資本に関する戦略

① 人材育成に関する方針

 当社は、一人ひとりの社員の成長が、組織及び会社の持続的な成長に繋がり、社内に良い循環が生まれることを、当社の競争力の源泉と考えております。教育研修体系の拡充により、社員の自発的な能力開発を支援する環境の提供と、効果的な人員配置によるキャリア形成により、年齢、性別、国籍等に関係なく、社員一人ひとりが能力を発揮し、総員が生涯プレイヤーとして活躍できる組織づくりを目指しております。

 

② 社内環境整備に関する方針

 当社は、65歳定年制を導入しておりますが、社員が健康で長く活躍できるために、健康保持・増進支援に力を入れております。また、適正な労働条件や快適な職場環境整備をはじめ、出産・育児、介護を理由とした離職ゼロを目標とし、安心して働き続けられる環境整備に努めております。

 

(4)人的資本に関する指標及び目標

 当社は、人的資本に関する方針について、「(3)人的資本に関する戦略」に記載しておりますが、当該方針に関する指標として、「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」を採用しております。

 労働者の男女の賃金の差異については、その解消を目標としておりますが、女性の管理職への登用目標については、当社グループの事業規模、人員規模が限定的であることから、現状において測定可能な目標について示すことは困難な状況です。また、男性労働者の育児休業の取得についても、対象となる人員規模が限定的であることから、取得率にこだわらず、取得しやすい環境づくりを推進しております。

 なお、実績値につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。前項及び本項に関しては連結グループ内の取り組みの多様性や独立性により、統一的な指標や目標の設定が困難であるため、提出会社単体のものとなります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態及び株価等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、本項における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1)船舶の安全運航、環境問題によるリスク、または、海難事故によるリスク

当社グループは、SOLAS条約(海上人命安全条約)に基づくISMコード(International Safety Management Code/国際安全管理規則)及びISPSコード(International Ship and Port Facility Security Code/国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律)等の条約適合証書を取得し、それらをグループ内に浸透させ運用しております。海難事故発生時には、当社グループの主要な事業資産である船舶の破損により物理的被害が生じると同時に、人的被害及び環境破壊が発生する可能性があります。

また、油濁事故等による海洋汚染が発生した場合、当社グループの外航海運事業及び業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業環境変動のリスク

外航海運事業においては、世界各国の経済動向、政治的・社会的要因が事業に影響を及ぼす可能性があります。特に主要な船舶の就航区域である、中国、アメリカ、大洋州(またはオセアニア)、ASEANの景況は運賃及び不定期船市況に影響を及ぼします。また、特に当社の扱い船舶であるハンディサイズ船においては、今後の環境規制への技術的・経済的な対応の困難さから、船腹供給が滞る可能性があります。当社では、船価動向や環境規制の動向をにらみながら、フレキシブルに船隊を整備してまいります。

 

倉庫・運送事業においては、景気動向の変化及び顧客企業の物流コスト抑制・事業再編等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、特に一般倉庫・文書倉庫事業においてはペーパーレス化による紙取扱量減少、引越事業においては働き方改革による需要減少の影響が想定されます。

 

不動産事業においては、首都圏における賃貸市場の需給バランスの変化や市況動向等の影響を受ける可能性があります。

 

(3)自然災害、人災等によるリスク

当社グループは、外航海運事業、倉庫・運送事業、不動産事業を展開するにあたり、多くの船舶や施設を有しております。そのため、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故等が発生した場合には、船舶や施設の毀損等により、当社グループの事業に悪影響を及ぼし、また、所有資産の価値の低下につながる可能性があります。

特に、不動産事業においては、所有する施設が勝どき・月島エリアに集積していることから、このエリアで大規模災害が発生した場合には、不動産事業に甚大な支障を来たす可能性があります。そのような状況において、当社は、収益の多くを勝どき・月島エリアに頼る構造となっているため、会社事業への影響悪化も甚大となる可能性があります。再開発時には、地震に対して強い構造への変換(2004年制震、2013年低層)を念頭におき、次なる再開発の計画を進めております。また、主導的積極的に、住民と共に災害への備えを行っております。

 

(4)資産価格変動のリスク

当社グループが保有する資産(船舶、土地、建物、投資有価証券等)の収益性や時価が著しく下落した場合には、減損または評価損が発生する可能性があります。

また、不動産資産については、その担保価値を利用して資金調達を行っており、資産価値が下落した場合には資金調達へ影響を及ぼす可能性があります。

 

(重要なリスク)

(1)各種規制変更のリスク

当社グループは、現時点の規制及び基準等に従って事業を展開しております。将来における規制及び基準等の変更並びにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行及び業績等に影響を与える可能性があります。

 

 

(2)金利変動のリスク

当社グループの設備資金及び運転資金は、その大部分を金融機関より調達しております。調達した資金の金利リスクについては、金利スワップ取引による金利の固定化や有利子負債の削減等でヘッジするべく努めておりますが、変動金利で調達している資金については、金利変動の影響を受ける可能性があります。また、金利の変動により、将来の資金調達コストに影響を与える可能性があります。

 

(3)情報システムのリスク

当社グループは、基幹業務システムについて情報セキュリティや自然災害に対する安全対策をとる等、コンピューターの運用を含めた安全管理を図り不正アクセスを防止・監視する管理体制をとっておりますが、外部からの不正侵入により当社に重大な損害が発生する可能性があります。

 

(4)為替レートの変動

当社グループにおける外航海運事業の売上高の大部分は、米ドル建ての運賃及び定期貸船料が占めております。一方で、運航費や用船料(借船料)、船員費・潤滑油費等の主な費用については米ドル建ての割合が高いものの、国内で発生した船舶修繕費や一般管理費の多くが円建てであります。費用のドル化を進めているものの、米ドル建て収入と米ドル建て費用の収支のバランスによって、米ドル建て取引の円換算時において、為替変動が損益に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、為替換算の実現差損の縮小を図るため、円売りドル買いやドル売り円買いの為替取引を極力行わないよう円資金とドル資金それぞれでの資金繰り管理を行っております。一方で、急激な円安局面は、将来の円資金需要確保のためのドル売り円買いを行う好機であると認識しております。

また、当社グループは、外貨建ての資産及び負債を保有しており、その資産と負債の差額が、為替変動によって、決算時評価損益として収支に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)船舶燃料価格の変動

船舶運航に必要な船舶燃料については、SPOT契約においては都度足元の燃料価格あるいは船舶が保有する燃料価格に基づき運賃を算出しているため、燃料価格変動を運賃へ転嫁しております。しかし、急激に変動した場合は、運賃へ転嫁できず運航船の収支に影響を及ぼす可能性があります。そのため、燃料価格が国内に比べ安価なシンガポール等で調達することや、先物予約によるヘッジにより、燃料費の安定化に努めております。

 

(6)借入金の財務制限条項

当社グループの借入金の一部には、財務制限条項が付されているものがあり、これに抵触した場合には、期限の利益喪失等、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の拡大や商品価格の見直しによる堅調な企業業績により、景気は緩やかながらも持ち直し傾向が見られました。一方で、中東情勢の緊迫化、資源価格や原材料価格の高騰、円安基調の長期化など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような状況下、当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

 

 当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金の減少等により前連結会計年度末比3,067百万円減の66,505百万円となりました。負債は、未払法人税等の減少等により前連結会計年度末比625百万円減の34,887百万円となりました。純資産は、利益剰余金の減少等により前連結会計年度末比2,442百万円減の31,618百万円となりました。この結果、自己資本比率は49.0%から47.5%になりました。

 

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は前年同期比14,773百万円減収(△33.4%)の29,494百万円、営業利益は前年同期比11,388百万円減益(△87.2%)の1,678百万円、経常利益は前年同期比11,514百万円減益(△85.7%)の1,917百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比8,662百万円減益(△87.9%)の1,194百万円となりました。

 

当社グループのセグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

① 外航海運事業(ロジスティクス)

外航海運事業におけるハンディ船市況は、パナマ運河の通航制限や中東情勢の緊迫化により上昇する局面も見られましたが、中国不動産市場の長期低迷化による中国経済減速に伴う需要減の影響により、年度を通じて低調な市況が続く結果となりました。

なお、当連結会計年度における当社グループの平均為替レートは¥143.47/対 US $(前年同期は¥134.77)となりました。

このような状況下、当社グループの外航海運事業におきましては、市況の変動や為替の影響により売上高は前年同期比14,682百万円減収(△41.1%)の21,081百万円、セグメント利益は前年同期比11,836百万円減益(△99.5%)の59百万円となりました。

セグメント資産は、新造船発注に伴う建設仮勘定の増加等により前連結会計年度末比2,968百万円増加し、34,852百万円となりました。

② 倉庫・運送事業(ロジスティクス)

物流業界におきましては、貨物保管残高及び貨物取扱量は前年同期と概ね同水準で推移いたしました。このような状況下、当社グループの倉庫・運送事業におきましては、連結子会社の引越業や倉庫事業における文書保管の取扱高の増加があった一方で、一部案件の撤退により倉庫運送料売上が減収となったため、セグメント売上高は前年同期比80百万円減収(△2.0%)の3,896百万円となりました。セグメント利益は、前年同期比142百万円増益(+191.0%)の217百万円となりました。

セグメント資産は、減価償却費の計上等により前連結会計年度末比28百万円減少し、4,505百万円となりました。

③ 不動産事業

都心部の賃貸オフィスビル市況は、コロナ禍以降、テレワークの普及に伴いオフィス拠点の集約や縮小化の動きにより軟調に推移しておりますが、社会経済活動の正常化が進む中、オフィスに集まることの価値が見直される動きも見られ、空室率の上昇は落ち着きを取り戻しております。また、東京23区の賃貸マンション市況については引き続き堅調に推移しております。

当社グループが賃貸物件を所有する月島・勝どきエリアは都心へのアクセスが良く、大型都市開発が続いていることもあり、市況は好調に推移しております。

このような状況下、当社グループの不動産事業におきましては、コロナ禍を経てシェア型企業寮である月島荘の稼働率が回復してきておりますが、中期経営計画に掲げるプラザ勝どき(1987年12月竣工)の再開発計画に伴い、プラザ勝どきの立ち退き移転の推進により稼働率が減少してきていることから、売上高は前年同期比10百万円減収(△0.2%)の4,516百万円、セグメント利益は前年同期比70百万円増益(+3.1%)の2,359百万円となりました。

セグメント資産は、主に既存賃貸物件の外壁修繕による有形固定資産の増加や減価償却費の計上等により前連結会計年度末比1百万円減少し、12,698百万円となりました。

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、税金等調整前当期純利益1,918百万円(前年同期比86.0%減)を計上したこと等により、前連結会計年度末と比較して6,596百万円減少し、13,980百万円となりました。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動の結果として得られた資金は、516百万円(前年同期比95.8%減)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益1,918百万円、減価償却費3,131百万円、仕入債務の減少額750百万円、法人税等の支払額3,352百万円等によるものです。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動の結果として使用した資金は、4,446百万円(前年同期比29.5%減)となりました。これは主として、固定資産の取得による支出等によるものです。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動の結果として使用した資金は、3,602百万円(前年同期比43.5%減)となりました。これは主として、配当金の支払額等によるものです。

 

(3)生産、受注及び販売の状況

①売上高

当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

外航海運事業(百万円)

21,081

△41.1

倉庫・運送事業(百万円)

3,896

△2.0

不動産事業(百万円)

4,516

△0.2

合計(百万円)

29,494

△33.4

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、売上高に著しい変動がありました。これは、外航海運事業が市況の変動や為替の影響を大きく受けるためです。前連結会計年度前半まではコロナ禍による物流混乱のために海運市況は高騰しましたが、前連結会計年度の後半以降は、凡そコロナ禍前の水準に戻っております。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の売上高及び当該売上高の総売上高に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

 FORTUNA FOREST PRODUCTS LIMITED

4,760

10.8

1,749

5.9

 

 

②船舶の稼働状況

船名

第103期(2022年4月1日~2023年3月31日)

第104期(2023年4月1日~2024年3月31日)

総日数(日)

稼働日数(日)

稼働率(%)

補足

総日数(日)

稼働日数(日)

稼働率(%)

補足

KEN GOH

365

357

98

 

366

327

89

5月 中間検査

KEN REI

365

364

100

 

366

358

98

 

KEN MEI

365

354

97

 

366

323

88

10月 定期検査

KEN HOU

365

324

89

11月 中間検査

366

366

100

 

KEN SEI

365

340

93

3月 中間検査

366

366

100

 

KEN TOKU

365

304

83

1月 中間検査

366

366

100

 

KEN KON

365

365

100

 

366

346

95

6月 定期検査

KEN EI

365

357

98

 

366

341

93

9月 定期検査

KEN SHIN

365

331

91

1月 中間検査

366

348

95

7月 臨時修繕

KEN JYO

365

357

98

 

366

345

94

1月 定期検査

KEN HOPE

365

365

100

 

366

340

93

6月 中間検査

KEN BOS

365

364

100

 

366

365

100

 

KEN ANN

365

350

96

8月 中間検査

366

366

100

 

KEN BREEZE

365

309

85

10月 定期検査

366

366

100

 

KEN SPIRIT

365

365

100

 

366

366

100

 

KEN RYU

365

364

100

 

366

365

100

 

KEN UN

365

365

100

 

366

344

94

10月 中間検査

KEN YO

365

312

86

10月 定期検査

366

366

100

 

KEN VOYAGER

365

365

100

 

366

346

95

8月 中間検査

KEN SKY

365

365

100

 

366

343

94

7月 中間検査

KEN VISTA

365

365

100

 

366

366

100

 

KEN HARU

365

364

100

 

366

342

93

10月 中間検査

他社定期用船

2,062

2,039

99

 

1,830

1,826

100

 

合計又は平均

10,092

9,746

96

 

9,882

9,586

97

 

 

 

③主要品目別輸送量

船名

第103期

(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

木材

(キロトン)

セメント

(キロトン)

穀物

(キロトン)

アルミナ

(キロトン)

肥料

(キロトン)

その他

(キロトン)

合計

(キロトン)

KEN GOH

162,637

162,637

KEN REI

134,593

24,809

159,402

KEN MEI

59,245

59,245

KEN HOU

25,786

82,535

108,321

KEN TOKU

27,565

51,837

79,402

KEN KON

25,700

31,875

57,575

KEN EI

61,470

59,676

33,000

154,146

KEN SHIN

29,900

12,001

35,620

77,521

KEN JYO

115,958

66,350

24,336

206,645

KEN HOPE

65,574

43,041

30,815

27,852

18,000

185,282

KEN BOS

230,154

33,000

7,052

270,206

KEN ANN

188,638

68,000

25,000

281,638

KEN SPIRIT

14,022

46,413

61,850

122,286

KEN RYU

98,098

30,335

23,141

151,574

KEN UN

62,006

62,006

KEN YO

35,200

35,386

70,586

KEN VOYAGER

100,690

35,548

136,238

KEN SKY

22,000

47,371

26,880

96,251

KEN VISTA

114,521

64,480

35,871

214,872

KEN HARU

193,752

27,000

33,810

254,562

他社定期用船

854,219

167,669

56,466

173,000

95,916

214,423

1,561,693

合計

2,158,144

756,423

418,332

225,000

212,581

701,608

4,472,087

(注)上記は、当社の自社運航による輸送量のみを記載し、他社への貸船による輸送量は除外しております。

 

 

 

船名

第104期

(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

木材

(キロトン)

セメント

(キロトン)

肥料

(キロトン)

穀物

(キロトン)

スラグ

(キロトン)

その他

(キロトン)

合計

(キロトン)

KEN GOH

161,292

61,005

28,870

251,167

KEN REI

101,891

23,157

125,049

KEN MEI

22,000

19,800

41,800

KEN HOU

26,298

22,000

48,298

KEN SEI

28,320

59,140

87,460

KEN TOKU

27,810

68,720

96,530

KEN KON

33,000

33,000

KEN EI

64,045

13,000

35,400

112,445

KEN SHIN

29,900

67,400

97,300

KEN JYO

29,554

35,279

64,832

KEN HOPE

66,300

27,765

94,064

KEN BOS

75,971

10,016

30,952

5,002

42,900

164,840

KEN ANN

189,383

34,921

44,340

268,644

KEN BREEZE

122,704

122,704

KEN SPIRIT

22,460

26,001

16,500

62,190

127,151

KEN RYU

66,203

18,899

85,103

KEN UN

66,550

34,924

29,006

130,480

KEN YO

35,200

33,000

35,200

103,400

KEN VOYAGER

33,000

72,894

105,894

KEN SKY

25,174

25,174

KEN VISTA

182,151

34,648

216,799

KEN HARU

194,783

31,040

80,852

306,675

他社定期用船

762,162

95,726

204,084

103,256

1,165,228

合計

1,829,691

413,544

347,662

311,699

235,457

735,986

3,874,039

(注)上記は、当社の自社運航による輸送量のみを記載し、他社への貸船による輸送量は除外しております。

 

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度は中期経営計画「不易流行」(2023年4月~2026年3月)の初年度となりました。

外航海運事業におきましては、中国不動産市場の長期低迷化による中国経済減速に伴い、中期経営計画公表後の海運市況は軟調に推移し、売上高、営業利益においては計画値を下回りました。

倉庫・運送事業におきましては、連結子会社の引越業や倉庫事業における文書保管の取扱高の増加があった一方で、一部案件の撤退により倉庫運送料売上が減収となったため、営業損益において計画値を上回りました。

不動産事業におきましては、コロナ禍を経てシェア型企業寮である月島荘の稼働率が回復してきておりますが、中期経営計画に掲げるプラザ勝どき(1987年12月竣工)の再開発計画に伴い、プラザ勝どきの立ち退き移転の推進により稼働率が低下しております

① 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金の減少等により前連結会計年度末比3,067百万円減の66,505百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、未払法人税等の減少等により前連結会計年度末比625百万円減の34,887百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金の減少等により前連結会計年度末比2,442百万円減の31,618百万円となりました。

② 経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、前年同期比14,773百万円減収(△33.4%)の29,494百万円となりました。これは主として、外航海運事業における市況の変動や為替の影響等によるものです。外航海運事業におけるハンディ船市況は、パナマ運河の通航制限や中東情勢の緊迫化により上昇する局面も見られましたが、中国不動産市場の長期低迷化による中国経済減速に伴う需要減の影響により、年度を通じて低調な市況が続く結果となりました。

 セグメント別の売上高については、「1.経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

(営業利益)

 当連結会計年度における営業利益は、前年同期比11,388百万円減益(△87.2%)の1,678百万円となりました。これは主として、外航海運事業におけるハンディ船市況の変動や為替の影響によるものです。また、倉庫・運送事業における引越業や文書保管の取扱高の増加等によるものであります。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比8,662百万円減益(△87.9%)の1,194百万円となりました。これは主として、前連結会計年度において、投資有価証券売却益263百万円を計上したことや、当連結会計年度において、法人税等合計723百万円を計上した影響等によるものであります。

 

 

 今後の見通しにつきましては、パナマ運河の通航制限などの市況引き締め要因もありますが、中東情勢の緊迫化、中国経済の減速停滞、インフレや金融引き締めによる投資抑制など世界的な経済活動の低迷が懸念されます。一方で中長期的には地球環境課題の解を探しあぐねている船舶、特にハンディ船は今後も新造船供給が限定的と見込まれ、更に老齢船解撤は延命にも限界があることから、海運市況は底堅い高位が続くと思われます。

 倉庫・運送事業では、一般貨物や文書保管に係る倉庫事業においては、カイゼンによる効率化により業績は上向く見込みです。引越事業においては、転勤引越の需要が減退しておりますが、事務所移転の需要改善等により徐々に回復の兆しが見られます。そのような状況の中、コストを抑えつつも、社会課題となっているドライバーの高齢化や人材不足等の課題に対しても取り組み、安全で働き甲斐のある労働環境づくりを推進し、需要の回復に備えていきます。

 不動産事業では、コロナ禍に伴う企業業績の低迷や在宅勤務の普及などで需給は緩んでいましたが、徐々に回復傾向が見られるようになりました。当社グループが賃貸物件を所有する月島・勝どきエリアは、引き続き好調に推移すると予想されます。一方で、勝どきエリアの再開発計画に伴うプラザ勝どきにて、入居者及びテナントの退去により売上高の減少を見込みます。

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

② 財務政策

当社グループは、外航海運事業において、米ドル建てによる収入を得る一方で、従業員に対する給与の支払など円建てによる支出もあるため、為替変動による影響を受けやすい環境にあります。そのため、円・米ドル双方の通貨建てによる収益がある場合には、双方の通貨を多く保有することで、為替変動による資金効率の悪化を抑えることとしており、当社の現預金の保有は、他業種と比較して、事業規模に比して多くなる傾向にあります。また、運賃市況が悪い時は、船価は低く、絶好の船舶購入の機会が到来しますが、運賃市況の低迷時には、融資案件を成約させるのは大変な苦労が伴うため、円・米ドル双方の一定の現預金を保有して、商機を逃さないよう準備を整えております。

なお、当社グループは、運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行6行と当座貸越契約を締結しております。当連結会計年度末における当座貸越契約に係る借入未実行残高は630百万円であります。

また、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は28,684百万円、現金及び現金同等物の残高は13,980百万円となっております。

③ 資金需要

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、船舶の購入や重要な不動産資産の資産価値の維持等に係る設備資金、運転資金、借入金の返済、配当金の支払い等であります。また、容積率に余裕のある「プラザ勝どき(賃貸マンション)」において、建替えにより床面積を大幅に増加させ、将来の中長期的な収益性を向上させるべく、現在、大型再開発の検討を進めております。資金計画等については何ら決定した事実はありませんが、現状、工事費のみで数百億円規模となることが見込まれており、その実現に向けた資金面での備えが必要となります。

④ 資金調達

当社グループは現在、運転資金については内部資金又は金融機関からの短期借入金により充当し、設備資金については、設備投資計画に基づき、調達計画を作成し、内部資金又は金融機関からの長期借入金により調達を行っております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、当社保有の不動産資産の一定の含み益を背景に、超長期に資産から資金を抽出するアセットバックローンや、不動産資産の含み益を活用したファイナンス等、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保し、事業の基盤を整えております。

 

 

(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「第5 経理の状況」の「1.連結財務諸表及び財務諸表の作成方法について」に記載のとおり、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

財務諸表の作成に際しては、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。したがって、当該見積り及び予測については不確実性が存在するため、将来生じる実際の結果はこれらの見積り及び予測と異なる場合があります。

当社グループは、特に以下の会計上の見積りが当社グループの財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。

 

① 固定資産の減損処理

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、主として事業所別等の管理会計上の区分を単位としてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額の評価の前提条件には、投資期間を通じた将来の収益性の評価や資本コストなどが含まれますが、これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 

2024年3月31日現在のセグメントごとの有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は以下のとおりです。

セグメント

主な資産

金額(単位:百万円)

外航海運事業

船舶等

23,917

倉庫・運送事業

倉庫用の土地、建物及び構築物等

3,143

不動産事業

賃貸住宅や賃貸オフィス用の建物及び構築物等

12,607

その他

全社資産

89

 

39,757

(外航海運事業)

 当社保有船舶全船を1船団としてグルーピングを行っております。今後、海運市況の悪化等により固定資産の収益性が低下した場合は、減損損失の計上の可能性があります。

 なお、2016年3月期において、主に船舶について13,960百万円の減損損失を計上しております。この際の回収可能額は正味売却価額により測定しており、第三者により合理的に算定された評価額により算定致しました。

(倉庫・運送事業)

 主に事業所別にグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があります。

(不動産事業)

 主に事業所別にグルーピングを行っております。当社保有物件は簿価に比して多くの含み益を有しており、多額の減損損失の計上の可能性は低いものと認識しております。

 

② 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性が低下した場合に評価性引当額を計上することとしております。評価性引当額の計上に関する必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の一部又は全部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合は、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を収益として計上します。

当連結会計年度末においては繰延税金資産を90百万円計上しております(但し、繰延税金負債との相殺消去により連結貸借対照表上は計上しておりません。)。詳細につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

 

③ 航海日割基準に基づく収益認識

当社グループは、期末日を跨ぐ航海(期跨り航海)については、各航海の海運業収益総額に、見積総航海日数に対する期末日時点の進捗率を乗じて見積り計上しております。海運業収益の測定方法に含まれる総航海日数の見積りは、将来の航行スケジュールや予想停泊期間等の仮定を用いておりますが、将来の航行スケジュールは見積りの不確実性が高く、気象海象や港の混雑状況等によって変動します。総航海日数が変動した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表に影響を与える可能性があります。また、航海完了後に見積りと実績の比較を行い、見積りの合理性を確認しております。

当連結会計年度において航海日割基準に基づき計上した海運業収益の金額は997百万円であります。詳細につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

(4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画の初年度である当連結会計年度の達成・進捗状況は次のとおりであります。

指標

計画値

実績値

売上高

(上値)

(下値)

 

外航海運事業

29,700百万円

21,400百万円

21,081百万円

倉庫・運送事業

4,000百万円

3,896百万円

不動産事象

4,500百万円

4,516百万円

38,300百万円

29,900百万円

29,494百万円

営業利益

(上値)

(下値)

 

外航海運事業

6,200百万円

1,200百万円

59百万円

倉庫・運送事業

100百万円

217百万円

不動産事象

2,100百万円

2,359百万円

全社費用

△1,000百万円

△958百万円

7,400百万円

2,500百万円

1,678百万円

親会社株主に帰属する

当期純利益

5,000百万円

1,600百万円

1,194百万円

ROE(自己資本利益率)

15%

5%

3.6%

中長期経営計画は、見通しの難しい外航海運事業において、上値と下値の幅を持たせた計画となっております。当連結会計年度の売上高は、計画下値を下回る29,494百万円となりました。これは、主に外航海運事業において、ハンディ船市況下落による減収要因があったことによるものであります。2023年度のハンディ船市況は、平均1日あたり9,869ドルであり、計画下値11,500ドルを下回りました。

営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益においても、売上高と同様に外航海運事業におけるハンディ船市況が下落した影響等により、計画値に対して未達となりました。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。