第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当該有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、下記の企業理念体系「パーパス/バリューズ 」を新たに制定しました。

パーパス:「無限の想像力で、新しい世界を創り出そう。」

バリューズ:「心にまで届けよう」「全力で挑戦しよう」「すばやく先駆けよう」「みんなで高め合おう」「進化し続けよう」「誠実であろう」

この新企業理念体系の下、当社グループは、日々変化するエンタテインメント業界において、お客様のニーズを捉え、当社グループ社員の想像力を活かした魅力あるIPの開発、そしてIPを起点としたゲームやコミックス、ミュージック、アミューズメント施設など多様なコンテンツを世界中のお客様に提供することで、グループ一丸となって成長し続ける企業を目指します。

 

(2) 経営戦略等

当社グループは、今般、新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)として、「Square Enix Reboots, and Awakens~さらなる成長に向けた再起動の3年間~」を策定致しました。

前中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)において、海外3スタジオ及び一部IP売却によるポートフォリオ整理、収益基盤としてのMMO事業拡大、出版事業における安定的成長フェーズへの移行、アミューズメント事業のV字回復実現、ライツ・プロパティ等事業の継続的成長といった成果があった一方、HDゲーム(HD)事業の低収益性、スマートデバイス・PCブラウザ等(SD)事業の成長減速、会社全体としてのポートフォリオ管理が不十分であること、および一部の経営管理基盤が未整備であること等、大きな課題も浮き彫りになりました。

これらの課題を解決し、確かな面白さをもつバラエティ豊かなコンテンツを世界中にお届けする存在へと進化すべく、新中期経営計画の3か年を「さらなる成長に向けた再起動の3年間」と位置づけ、下記の4つの戦略を実行していく所存です。

① デジタルエンタテインメント(DE)事業の開発体制最適化による生産性向上

② コンタクトポイント(顧客接点)強化による収益獲得機会の多様化

③ 経営基盤の更なる安定化に向けた各種施策の導入

④ 成長投資と株主還元のバランスを勘案したキャピタル・アロケーション

 

① デジタルエンタテインメント(DE)事業の開発体制最適化による生産性向上

・「確かな面白さ」をお届けする「量から質」への転換

DE事業における中長期ポートフォリオの考え方として、「量から質への転換」を推し進めてまいります。そのために、第一に、当社グループ社員の想像力から生まれる独創性のコンテンツへの反映(プロダクト・アウト)と、お客様の声やマーケットトレンドへのキャッチアップ(マーケット・イン)をバランスよく開発プロセスに組み込んでいきたいと考えます。

また、お客様に長く愛されるポテンシャルの高いタイトルに人材と開発投資を重点的に配分し、各IPを支えるタイトル開発を担うコアチームの練度向上を図ります。さらに、全体ポートフォリオおよび個別IP双方の観点から最適な頻度とタイミングを考慮したローンチスケジュールを可能とする重層的なタイトルラインナップ構築を目指していきます。

 

・スクウェア・エニックスならではの「面白さ」を届けるタイトル開発に注力

タイトル開発においては、以下の点を重視していきたいと考えます。

まず、大・中規模のHDにおいては、安定した「面白さ」をベースにファン層の維持・拡大に努めるとともに、SDタイトルについては、安心して長く遊べる「面白さ」をベースに、ヒットレシオ向上を目指します。

新規IPにおいては、新たなファン層開拓に向けて、新規性・独創性のある「面白さ」を重要視し、タイトル開発を行ってまいります。また、当社グループが保有する豊富なライブラリーIPの活用によるカタログラインナップの強化にも挑戦してまいります。

 

・スクウェア・エニックスならではの「面白さ」を生み出す開発体制の整備

社内開発体制を刷新し、内製開発力を強化すべく、事業部制組織モデルであるBU制を廃止し、開発機能に重心を置いた一体運営型の組織体制を導入しました。また、社内開発体制の刷新に加えて、「個」のクリエイティブと「組織」のマネジメントが調和した開発推進体制への転換をすべく、プロデューサーおよびそれに付随する職種のミッション再定義と社内支援体制整備、タイトル開発進捗管理プロセス全体の見直しによる開発投資効率向上を行ってまいります。

 

② コンタクトポイント(顧客接点)強化による収益獲得機会の多様化

・マルチプラットフォーム戦略への転換

HDタイトルについては、任天堂プラットフォーム、PlayStation、XboxやPCを含む、マルチプラットフォーム展開を強力に推進してまいります。そのために、主要IPタイトルおよびAAAタイトルは、カタログタイトルも含め、より多くのお客様に遊んでいただける環境をグローバルで整備していきます。

SDタイトルについては、iOS/Androidに加え、PC等のローンチも選択肢として検討していきます。また、ローンチ時の新規ユーザー獲得や運営開始後の継続的なユーザー獲得の最大化を図っていく所存です。

 

・デジタル販売強化による当社タイトル群の継続的コンタクトポイント構築

まず、新作タイトルのデジタル販売において、タイトルローンチ時のプロモーション施策におけるデジタル販売への導線強化を推進してまいります。次に、豊富なカタログタイトルライブラリーの収益獲得機会創出等によるカタログタイトル拡販を通じた収益基盤の強化を目指してまいります。さらに、PCユーザー獲得にフォーカスした各種取り組みの推進も検討してまいります。

 

・パブリッシング機能の高度化によるお客様とのインタラクション創出

国内におけるパブリッシング関連組織の一体運営推進を目指し、旧BU(開発事業本部)に点在していたマーケティング機能を集約し、共有知拡大と重複機能排除による効率化推進と、セールス機能とマーケティング機能の連携強化を企図した新たなレポートラインの導入に取り組んでまいります。

さらに、HDおよびSDタイトルのローンチキャンペーンにおけるCRM・データアナリティクスの活用等、ファーストパーティーデータ(自社保有データ)の活用によるマーケティングの高度化に対応していきます。

 

・IPの多面展開による新たな収益獲得機会創出への挑戦

クロスメディア戦略のさらなる推進による新規市場へのアプローチを推進してまいります。具体的には、グローバルマーケットに特化したIPビジネス開発専門部署の新設による、ライセンスビジネスのエリア拡大を図っていきます。また、IPの多面展開を推進する組織体制を構築し、ライツ・プロパティ事業関連組織の統合によるシナジー創出を目指してまいります。

 

③ 経営基盤の更なる安定化に向けた各種施策の導入

・海外事業部門の機能及び組織構造の見直し

ヨーロッパ、アメリカ両拠点の機能及び組織構造の見直しとそれに伴うコスト最適化に取り組んでまいります。具体的には、国内開発部門の新組織発足に対応した組織構造の再設計を目指していきます。また、国内外における当社グループ間での協業を促進し、ロンドン開発拠点の機能を強化してまいります。例えば、国内各部門(クリエイティブスタジオ・パブリッシング)との緊密な連携やグループ横断での人材活用を推進していきたいと考えております。

 

・国内事業における「創造力と生産性」の両立に向けた組織・人事関連施策群の導入

新たなタレント発掘を企図した抜擢登用のチャンス拡大に加え、意思決定機構の簡素化を図ることで、フラットな組織体制を構築していきます。

また、開発部門における一体運営型組織体制に呼応した人事施策を導入してまいります。具体的には、開発部門一体となった、採用・昇格・マネジメント任命制度の整備、導入を進めてまいります。

さらに、新入社員への研修・育成システムの再構築や若手・中堅社員の能力伸長をサポートする各種社内プログラムの導入を進めていく所存です。

 

・PDCAサイクルを高速で回す事業インフラ整備

事業活動のさらなる可視化に資する管理会計制度の精緻化を推進してまいります。また、ハイブリッド勤務体制下で社員の生産性を最大化する各種インフラへの投資、および開発部門の「クリエイティビティ」をサポートする魅力的なオフィス環境の整備等、開発環境整備に伴う設備投資を行ってまいります。

 

④ 成長投資と株主還元のバランスを勘案したキャピタル・アロケーション

成長投資と株主還元のバランスを勘案したキャピタル・アロケーションの方針を策定し、3か年累計戦略投資枠(成長投資または株主還元)として最大1,000億円を設定致しました。

成長投資については、企業価値向上に資する投資機会を厳選し、かつ自社事業の知見を活用するとともに、業容拡大及び安定化を企図したインオーガニック投資の実施を検討してまいります。

一方、株主還元については、配当性向30%を基本方針とする通常配当に加え、これまでの当社のキャピタル・アロケーションのあり方を見直し、戦略的な投資機会や財務状況、株価状況等を勘案した上で、機動的な自己株式取得を可能とする取得枠200億円(2024年5月14日~2025年5月13日)を設定いたしました。また、1株当たり配当額における内訳(中間配当及び期末配当)について見直しを実施致しました。

当社グループでは、これらの取り組みを通じて、さらなる企業価値の向上に努めていく所存です。

 

(3) 経営環境

家庭用ゲーム市場は、デジタル化をはじめとした技術の進化によって、コンテンツの提供形態がパッケージ販売から、ダウンロード販売といったデジタル化へのシフトに加え、ビジネスモデルが従来の売り切り型から、フリートゥプレイ、ゲーム内課金、サブスクリプション等に多角化しており、今後も成長が見込まれています。新作においては、一部の大型タイトルに人気が集中することにより、タイトルの成否が顕著に表れる傾向となっています。

モバイルゲーム市場は、スマートフォンの性能向上により、ゲーム体験に対する顧客ニーズが高まり、ゲーム設計やビジネスモデルが多様化しています。また、スマホゲームのグローバル化、マルチデバイス化によって、コンテンツの大型化がみられており、市場規模は、今後も成長が見込まれています。国内においては、上位のタイトルの固定化が目立つ一方で、アジア地域の企業が国内市場における存在感を増したことによって競争がさらに激化し、新作タイトルのヒット率が低下しております。

アミューズメント市場は、コロナ前の状況に戻り、国内の施設売上高は安定的に推移しています。

出版(コミック)市場は、紙媒体の売上高が減少する一方で、コミックアプリ等による電子書籍の売上高が伸長しています。スマートフォンでコミックを読むことが定着しており、今後も電子書籍市場についてはグローバルで成長が予測されています。

ライツ・プロパティ等事業を取り巻く環境としては、ユーザーの嗜好の多様化に合わせて幅広い商品・サービスが多様なチャネルで展開されています。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(2)経営戦略等を参照

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、下記の通り、3つの財務目標数値を設定致します。

・DE事業全体の安定的な利益創出を実現し、かつ、2027年3月期連結営業利益率15%を目指します。

・3か年累計の戦略投資枠(成長投資または株主還元)として、最大1,000億円を設定いたします。(2024年5月14日~2025年5月13日において200億円の自己株式取得枠を設定)

・資本効率を意識した経営にシフトし、ROE10%以上の達成を目指します。

 

(6) ESGへの取り組み

 当社はESG(環境保護・社会的責任・企業統治)への取り組みを通じて社会に貢献し、企業価値の向上と持続的成長の実現を目指しています。

 環境保護への取り組みとして、当社はパッケージゲームのダウンロード販売を促進することにより、パッケージ商品の物流に伴う排出ガスの削減、マニュアルやゲームパッケージの電子化による資源の節約などに取り組んでおります。さらに、パッケージ商品においても、リサイクル可能な素材を使用するなど、環境への負荷を最小限に留める事業活動に努めております。

 社会的責任への取り組みとして、当社は、お客様が安心して遊べるように、国内外で販売される家庭用ゲームソフトについて、各販売国・地域のレーティング制度を遵守しています。日本でのレーティング制度は、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構(略称CERO)が実施し、ゲームの表現内容に基づいて対象年齢を表示しております。また、当社は、当社が加盟する業界団体である一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が制定した「ネットワークゲームにおけるランダム型アイテム提供方式運営ガイドライン」を遵守し、有料ガチャ(金銭もしくは金銭で購入できる仮想通貨を直接の対価として行うことができるランダム型アイテム提供方式)で提供されるアイテムについて、全てのアイテムとそれらの提供割合を表示することによって、お客様の購入判断に役立てていただいております。このように、当社は法令や業界ガイドラインを遵守して、お客様により安心・安全なゲームプレイ環境とサービスを提供しております。

 企業統治については、株主のみなさまを始め、当社を取り巻く全てのステークホルダーの利益を尊重し、良好な関係性を維持することが当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値最大化の実現に必要不可欠と考えています。当社は、企業統治の一層の強化を目的として、監査等委員会設置会社制度を採用しております。社外取締役のみで構成する監査等委員会を設置することにより監視機能を強め、経営の健全性の維持を図っております。さらに、経営と執行の分離を明確にするため、業務執行を代表取締役に集約しており、「職務権限・業務分掌規程」に定める客観的基準のもとに、会社経営方針を決定する取締役会と業務執行に係る個別の意思決定を行う経営陣を明確に区分しております。これにより、経営判断の適正化と業務執行の効率化の両立を図っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当該有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

・取締役会は、サステナビリティ関連のリスク及び執行による対策について、代表取締役社長より適宜報告を受け、評価、モニタリングを実施します。

・代表取締役社長は、当社グループの事業内容に即してリスクを分析し、必要な対策を立案・実行し、取締役会に定期的に報告します。

 

(2)リスク管理

・代表取締役社長は責任者を定め、当該リスクの関係部門に対して必要な対策を実施させることとします。

・当社グループにおけるサステナビリティに係るリスクを選別し、重要なものについては、対応状況につき進捗管理を実施します。

 

(3)戦略

<気候変動に関する戦略>

(リスクと影響)

・将来の炭素税等導入による事業コストの増加

・プラスチック利用規制による原材料、生産・調達コストの上昇

・自然災害・温暖化の進行による事業継続の阻害、被災、従業員の働き方・生活への影響

(機会と影響)

・再生可能エネルギーへの移行による炭素税の削減

・デジタル化への更なる移行によるプラスチック等のコスト削減

(当社グループのリスクと機会への対応)

・当社グループにおいて、温室効果ガス排出抑制のためには、自社使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えが効果的かつ実行可能な施策と認識しております。国内事業所・データセンターに関して順次切り替えを予定しており、他の施設への対応も引き続き検討します。

 

<人的資本に関する戦略(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)>

 当社グループは、行動規範として、事業活動及び組織運営・人事管理にあたって、国籍、人種、宗教、思想信条、年齢、性別、性的指向、身体条件等の多様性を尊重する旨を定めており、管理職・中核人材を含むすべての従業員について、ジェンダー、国籍、新卒・中途採用にかかわらず、当社グループの事業活動に必要な人材を登用するようにしております。

 

(4)指標及び目標

<気候変動に関する指標及び目標>

 国内事業所・データセンター・アミューズメント施設における使用電力によるCO2排出量を定量的な指標とします。国内事業所・データセンターについては2030年には実質ゼロを目標とします。アミューズメント施設については2050年には半減を目標とします。

 

<人的資本に関する指標及び目標>

 2024年3月末日現在の状況としては、当社グループの全従業員における、女性比率は約29%、外国人比率は約19%、中途採用者比率は約85%であり、当社グループの管理職における、女性比率は約13%、外国人比率は約25%、中途採用者比率は約88%となっております。

 今後も、当社グループの事業活動に必要な人材について、個人の属性にかかわらず登用し、一層の多様性を推進してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当該有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業活動に関するリスク

 ①ゲーム開発費の高騰

 家庭用ゲーム機、PC、スマートフォン等、当社がゲームを提供するプラットフォームの高性能化・高機能化によって、コンテンツ体験が多様化・高度化しております。このような体験に対する顧客の期待は年々高まっており、それを満たすコンテンツ提供を行う必要があることから、ゲームの開発費は今後も増加すると予想されています。各タイトルの開発管理や収益管理を厳格化することにより、開発費の適正水準の維持に努めておりますが、販売本数が当初の想定を下回り、開発費を十分回収できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ②多様な顧客嗜好の変化、ビジネスモデルの多様化に対する当社の対応能力

 コンテンツの提供形態やビジネスモデルが多様化し、デジタルエンタテインメントの産業構造が大きく変化しています。それらの変化に適時的確に対応できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③新しいコンテンツ・サービスの創造や海外展開を核とする当社の成長戦略を担う人材の確保

 当社グループを取り巻く事業環境は大きく変わりつつあります。このような環境変化に適時的確に対応するためには、優秀な人材の確保が不可欠となりますが、必要な人材の確保が追いつかない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす能性があります。

 

 ④国際的事業展開

 当社グループは、国際的な事業展開を進めておりますが、当社グループが海外事業を展開している国における市場動向、政治・経済、法律・規制、社会情勢、その他の要因によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)経済環境に関するリスク

 ①経済環境の変化

 消費者の需要を減退させるような経済情勢の著しい低迷は、当社グループの扱っているエンタテインメント分野における商品・サービスの消費を減退させる恐れがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ②為替リスク

 当社グループは、北米・欧州・アジアに在外連結子会社を所有しております。当該子会社において獲得した現地通貨は、主として現地での決済に使用するほか、現地での投資に振り向けることから、実質的な為替リスクは軽減されております。しかしながら、外貨建ての在外連結子会社の売上、費用、資産等は、連結財務諸表の作成時に円換算するため、換算時の為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)法的規制・訴訟に関するリスク

 ①情報・ネットワークシステム

 当社グループでは事業推進及び業務運営に必要な情報・ネットワークシステムを適切に構築・運用管理しておりますが、システム障害、運用ミスなどにより、業務運営に支障をきたし、機会損失や追加的費用が発生する可能性があります。
 また、当社グループでは、情報・ネットワークシステムへのサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウィルス感染などの所謂セキュリティ・インシデントに対する堅固な予防・防御策を構築・運用管理しておりますが、万一、かかる対策によっても防止し得ないセキュリティ・インシデントが発生した場合、事業推進又は業務運営に支障をきたし、機会損失や追加的費用が発生する可能性があります。さらに、当社グループの顧客及び従業員の個人情報を含む営業秘密が社外へ漏洩し、追加的費用の発生や当社グループの社会的信用の低下を招くおそれがあります。

 

 ②個人情報の管理

 個人情報保護法やEU一般データ保護規則の施行に伴い、個人情報の厳重な社内管理体制を整備するとともに、役員・従業員に対する個人情報保護に係る教育訓練も随時実施しております。しかし、上記「①情報・ネットワークシステム」で述べたようなセキュリティ・インシデントの結果、個人情報が社外へ漏洩した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③風俗営業法

 ゲーム施設運営事業は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」及びその関連法令により規制を受けております。その内容は、店舗開設及び運営に関する許認可、営業時間帯の制限、入場者の年齢制限、出店地域の規制、施設の構造・内装・照明・騒音等に関する規制などです。当社グループは、同法を遵守しつつ適法適正な店舗運営を行っておりますが、同法の規制が強化された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④訴訟等

 当社グループは、法令遵守及び第三者の権利尊重を含む行動規範を制定し、役員及び従業員に周知徹底しておりますが、国内外の事業展開に伴い、争訟の当事者となるリスクを不可避的に負っております。当社グループを相手取った訴訟などの法的手続きが提起された場合、当社グループに有利な条件で早期に解決する努力にも拘わらず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)災害等に係るリスク

 ①事故・災害

 当社グループは、地震その他の大規模自然災害、火災、停電、システム・ネットワーク障害、テロ、感染症の流行、その他の事故・災害による影響を最小化するために、定期的な災害防止検査、設備点検、避難誘導体制の整備、適切な防災・避難訓練などの対策を行っておりますが、激甚な事故・災害が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ②感染症拡大の影響

 今後大規模かつ深刻な感染症が流行した場合、当社グループの事業領域においては、コンテンツに対する需要への影響、新作タイトルの開発スケジュールへの影響、アミューズメント施設運営の売上高減少などが生じる恐れがあります。その結果、当社グループへの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当社グループは、報告セグメントをデジタルエンタテインメント事業、アミューズメント事業、出版事業、及びライツ・プロパティ等事業と定め、各々のセグメントにおいて、事業基盤の強化と収益力の向上に努めております。

当連結会計年度の業績は、売上高は356,344百万円(前期比3.8%増)、営業利益は32,558百万円(前期比26.6%減)となりました。為替相場が前期末と比較して円安となり為替差益が9,304百万円発生したことなどにより、経常利益は41,541百万円(前期比24.1%減)となりました。また、HDゲームタイトルにおけるマルチプラットフォーム開発及び内製開発力強化等を企図した開発方針の見直しを行い、個々のプロジェクトについて開発継続可否を検討した結果、新たな開発方針に合わないデジタルエンタテインメント事業の一部の主要コンテンツ開発を中止したことに伴いコンテンツ等廃棄損22,087百万円を特別損失として計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は14,912百万円(前期比69.7%減)となりました。

 

当連結会計年度の報告セグメント別の状況は以下のとおりであります。

 

a .デジタルエンタテインメント事業

ゲームを中心とするデジタルエンタテインメント・コンテンツの企画、開発、販売及び運営を行っております。デジタルエンタテインメント・コンテンツは、顧客のライフスタイルにあわせて、家庭用ゲーム機 (携帯ゲーム機含む)、PC、スマートデバイス等、多様な利用環境に対応しています。

当連結会計年度は 、HD(High-Definition)ゲームにおいて、「FINAL FANTASY XVI」、「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター」、「ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅」、「FINAL FANTASY VII REBIRTH」等を発売したことにより、前期比で増収となりました。一方で、開発費の償却負担や広告宣伝費の増加に加えて、コンテンツ評価損が前年比で増加したこと等により、営業損失が拡大しました。

MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)においては、前期比で減収減益となりました。

スマートデバイス・PCブラウザ等をプラットフォームとしたコンテンツにおいては、2023年6月に「ドラゴンクエスト チャンピオンズ」、同年9月に「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」のサービスを開始したものの、既存タイトルの弱含み等により、前期比で減収減益となりました。

当事業における当連結会計年度の売上高は248,109百万円(前期比1.0%増)となり、営業利益は25,468百万円(前期比38.3%減)となりました。

 

b .アミューズメント事業

アミューズメント施設の運営、並びにアミューズメント施設向けの業務用ゲーム機器・関連商製品の企画、開発及び販売を行っております。

当連結会計年度は、既存店売上高が前年を上回ったことにより、前期比で増収増益となりました。

当事業における当連結会計年度の売上高は61,569百万円(前期比9.2%増)となり、営業利益は7,566百万円(前期比43.2%増)となりました。

 

c .出版事業

コミック雑誌、コミック単行本、ゲーム関連書籍等の出版、許諾等を行っております。

当連結会計年度は、2023年10月よりTVアニメ放送を開始した「薬屋のひとりごと」の大ヒット等により、紙媒体及びデジタル販売が前年を上回り、前期比で増収増益となりました。

当事業における当連結会計年度の売上高は31,089百万円(前期比6.6%増)となり、営業利益は11,984百万円(前期比2.9%増)となりました。

 

 

d .ライツ・プロパティ等事業

主として当社グループのコンテンツに関する二次的著作物の企画・制作・販売及びライセンス許諾を行っております。

当連結会計年度は、有力IPにかかる新規キャラクターグッズの販売が好調だったこと等によって、前期比で増収増益となりました。

当事業における当連結会計年度の売上高は18,924百万円(前期比20.8%増)となり、営業利益は5,658百万円(前期比52.0%増)となりました。

 

当連結会計年度の財政状態の概要は次のとおりであります。

 

a .資産

流動資産は、前連結会計年度末に比べて、0.9%減少し、339,219百万円となりました。これは主として現金及び預金が32,399百万円、受取手形及び売掛金が4,774百万円増加したこと、コンテンツ制作勘定が38,640百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて、24.9%増加し、71,656百万円となりました。

この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて、2.8%増加し、410,876百万円となりました。

 

b .負債

流動負債は、前連結会計年度末に比べて、13.7%増加し、81,559百万円となりました。これは主として未払法人税等が3,526百万円、支払手形及び買掛金が825百万円増加したこと、返金負債が776百万円減少したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて、14.3%増加し、12,187百万円となりました。

この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて、13.8%増加し、93,747百万円となりました。

 

c .純資産

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて、0.0%減少し、317,129百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益14,912百万円の計上、配当金の支払14,848百万円によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ32,277百万円増加して、223,181百万円となりました。キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

a .営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は52,238百万円(前期比327.3%増)となりました。

これは主として、税金等調整前当期純利益17,935百万円、コンテンツ等廃棄損22,087百万円、棚卸資産18,344百万円の減少、減価償却費7,557百万円、法人税等の支払額11,398百万円によるものであり、全体としては資金が増加しました。

 

b .投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は13,214百万円(前期は27,602百万円の獲得)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出9,285百万円、差入保証金の差入による支出2,176百万円及び無形固定資産の取得による支出1,162百万円によるものであります。

 

c .財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は14,787百万円(前期比4.7%減)となりました。

これは主として、配当金の支払額14,838百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a .生産実績

当社グループの生産は同種の商製品であっても一様でないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

b .仕入実績

仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

前期比(%)

デジタルエンタテインメント事業(百万円)

12,489

15.3

アミューズメント事業(百万円)

17,403

17.4

出版事業(百万円)

3,369

4.2

ライツ・プロパティ等事業(百万円)

7,210

10.9

合計(百万円)

40,472

14.4

 

c .受注実績

当社グループは受注による生産は行っておりません。

 

d .販売実績

販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

前期比(%)

デジタルエンタテインメント事業(百万円)

248,100

1.0

アミューズメント事業(百万円)

60,242

10.9

出版事業(百万円)

30,972

6.7

ライツ・プロパティ等事業(百万円)

17,028

18.1

合計(百万円)

356,344

3.8

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当該有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

・「当連結会計年度の経営成績等」及び「セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況」に関する認識及び分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

・経営成績に重要な影響を与える要因

 「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおり、当該事業リスクが発生した場合、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

 為替変動の影響

 当連結会計年度において主に円と米ドル及びユーロによる為替レートの変動の影響により9,304百万円の為替差益を計上しております。

 

・経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、下記の通り、3つの財務目標数値を設定致します。

・DE事業全体の安定的な利益創出を実現し、かつ、2027年3月期連結営業利益率15%を目指します。

・3か年累計の戦略投資枠(成長投資または株主還元)として、最大1,000億円を設定いたします。(2024年5月14日~2025年5月13日において200億円の自己株式取得枠を設定)

・資本効率を意識した経営にシフトし、ROE10%以上の達成を目指します。

 

 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・「当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況」に関する認識及び分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

・資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものには、デジタルエンタテインメント事業及びアミューズメント事業におけるソフトウェア制作に係る人件費及び外注開発費のほか、家庭用ゲームソフトのディスク製造費、アミューズメント事業のプライズ商材、出版事業の印刷物、ライツ・プロパティ等事業のグッズ等の商材、TVコマーシャル等の広告宣伝費があります。

当社グループでは、運転資金及び設備資金は内部資金より資金調達をしております。

また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は223,181百万円となっており、当社グループの事業を推進していく上で充分な流動性を確保しております。

 

 

 ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要な項目は以下のとおりであります。

 

a .コンテンツ制作勘定の評価

当社グループは、コンテンツ制作勘定の評価について、第5 経理の状況 連結財務諸表「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおり、重要な会計上の見積りと認識しております。

 

b .デジタルエンタテインメント事業にかかる返金負債

当社グループは、返金負債について、第5 経理の状況 連結財務諸表「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおり、重要な会計上の見積りと認識しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、ゲーム開発プロセスの効率化・高品質化を目的とした研究開発、ゲーム開発に係る先端的技術の調査・研究を行っております。また、ゲームの新作タイトルの開発にあたっては、企画段階において様々な先端的技術を用いた試作を行っております。

当連結会計年度においては、デジタルエンタテインメント事業において2,058百万円の研究開発費を計上しております。