文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営の基本方針(企業理念及び経営理念)
当社は、「わが社は内外のあらゆる技術を駆使して人の役に立ち人によろこばれるものを創る」という企業理念を頂点に置いた経営を目指し、その企業理念を実現するために、時代のニーズに対して柔軟に対応する経営の羅針盤としての「私たちはファインケミカルに機軸を置き叡智と技術を結集した真の『ものづくり』に挑戦します」という経営理念のもと、企業活動を健全に継続、成長させ、株主の皆様、お客様、従業員、地域社会の皆様等、全てのステークホルダーに対して、中長期的な視点に立ち、企業価値を常に向上させ、最大化することが使命であると考えております。
(2)経営環境及び対処すべき課題
今後の経済見通しにつきましては、新型コロナウイルスの流行は継続しているものの、ウィズコロナの浸透とともに、経済活動も徐々に活発になるものと思われますが、ウクライナ情勢の長期化などによる原燃料の高騰や、為替動向の不透明などにより、当社を取り巻く事業環境は、引き続き予断を許さないものと見ております。
このような状況の中、当社は2024年3月期を起点とする3カ年の中期経営計画を策定し、『激変する経済環境の中、主要製品の売上を拡大しながら、新製品を継続的に導入し、以て向こう10年間の成長に資する礎を築く』を基本方針に、新たな目標を達成するための経営課題に取り組み、より一層の収益力向上を図ってまいります。新たな中期経営計画の重点施策は以下5点でありますが、詳細につきましては、「新中期経営計画の策定に関するお知らせ」をご覧ください。
「新中期経営計画の重点施策」
・クオリティーカルチャーの醸成
・企業価値の向上
・アミノ酸分野の事業構造改革
・医薬品分野の受託ビジネス拡充
・化成品事業の拡大・再構築
(3)目標とする経営指標
※当社は、収益性(売上高営業利益率)と事業の効率性(総資産回転率)の向上が企業価値を高めると考え、それらを示す
指標として、ROA(総資産営業利益率=売上高営業利益率×総資産回転率)を経営目標値としております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、経営の健全性、効率性、透明性を向上させ、株主をはじめとするステークホルダーの期待に応えつつ、持続可能性向上への取組を行い、企業価値を高めていくことが、サステナビリティの基本であり、経営の重要課題のひとつであると認識しております。
当社では、サステナビリティに係るリスク及び機会をいち早く認識し対応が取れるよう、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会を監督する責任と権限を有しており、経営会議やリスクマネジメント・コンプライアンス委員会で協議・決定された内容の報告を受けるなどして、当社のサステナビリティのリスク及び機会に対する対応について監視するようにしております。
当社は、サステナビリティの発展には環境保護の取り組みが必要不可欠であるとの認識のもと、「自然と共生し、地球にやさしい企業」をスローガンに、水質汚濁防止、大気汚染防止、廃棄物の削減・リサイクルに取り組んでおります。その中でも、省エネ推進委員会が中心となり推し進めているカーボンニュートラル(CO2排出量削減)への取り組みは2007年から着手し、2030年には2006年度比、CO2排出量を50%削減する目標を掲げ、地球環境の保全に努めております。
また、当社における、「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」は、以下のとおりであります。
◆人材の育成及び社内環境整備に関する方針
当社は、クオリティーカルチャーを醸成することが、企業競争力を高め、持続可能な社会の実現に貢献できるものと考えており、2023年度を初年度とする中期経営計画では、事業継続性の向上を目標に、一人ひとりが自主的に改善活動に取り組めるよう「一人ひとりが自分で考え、判断し、行動する人材を育成する」をテーマに人材育成してまいります。
また、当社は多様性の確保が社内活性につながるとの認識のもと、性別や国籍、時期などによらず採用を行い、これら人材の管理職登用は能力や適性などを総合的に判断して、女性・外国人・中途採用者も主要ポストに登用しております。
第2 事業の状況 3 事業等のリスク に掲げるような当社における全社的なリスクの管理は、全業務執行役員が出席するリスクマネジメント・コンプライアンス委員会にて行われており、サステナビリティに係るリスクの評価やその対応等について決定したり、対応状況をモニタリングするなどしております。また、新製品の開発などのサステナビリティに係る重要な機会と認識されるものについては、経営会議の協議を経て対応を決定しております。
なお、これら委員会や会議にて協議した内容は取締役会へ報告され、監督されます。
当社では、「CO2排出量削減」ならびに「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績
は、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
取引上位10社の占める割合は、65.6%となっております。
これらの企業とは取引を通じての良好な信頼関係を構築しつつ対応しておりますが、取引条件の急激な変更や契約解除等の場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社で使用する原材料等の購入価格は、国内、国外の状況、並びに原油、ナフサ価格の動向等に影響を受ける他、原材料等を一部取引先に依存しております。コストダウン、販売価格への転嫁等によりその影響を極力回避する努力をいたしておりますが、原材料価格の高騰が当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
食品添加物の製品群には、海外品の品質向上もあり、価格競争が激化している製品があります。このため、更なる付加価値の創出等により価格水準の維持及び向上を目指すとともにコスト低減にも取り組み、販売価格の下落リスクに備えておりますが、今後も価格競争が継続し業績に影響を与える可能性があります。
当社は在庫水準については常日頃より意識し、販売需要予測等からその適正化に努めています。しかしながら、市況の著しい悪化等により、販売価格の急激な落ち込みや在庫の長期化が生じて、在庫評価損の計上を余儀なくされた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
本社は東京都中央区に、東京研究所は東京都板橋区にそれぞれ位置しておりますが、生産拠点である工場は福島県いわき市にある常磐工場のみとなっております。
当社では災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練等の対策を講じていますが、常磐工場が地震等の自然災害・火災及び水災等に罹災した場合は、生産機能が回復するまでの間、操業停止となる可能性があります。
当社は、取引先金融機関とシンジケートローンを締結し、当該契約に基づく借入金の当事業年度末残高が2,168百万円あります。当該シンジケートローンの他にも貸出コミットメントライン契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金についての期限の利益を喪失する可能性があり、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期におけるわが国経済は、経済活動の正常化に伴う緩やかな景気回復基調が続く中、インバウンド需要にも拡大の動きがみられたものの、円安、資源・原材料をはじめとする物価高騰、地政学的な緊張感、世界的な金融引き締めによるインフレ抑制、中国景気の減速等、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
化学工業におきましては、汎用化学製品、半導体関連材料、EV電池関連材料等、化学工業をけん引してきた製品群の市況が低迷し、依然として原燃料価格が高い水準にあるため、収益への影響が避けられない状況にあり、引き続き厳しい経営環境が続いていると認識しております。
こうした状況下、当社は外部環境の変化に迅速かつ的確に対応するために、当期を起点とする3か年の中期経営計画を策定し、定めた経営目標を達成するために重要課題の克服・解決に取り組んでおります。
当期の業績状況としましては、半導体向け一部製品の販売が減少したものの、電子材料向け新製品や主に海外で展開している原薬等の販売拡大により、売上高は5期連続で過去最高となる前期比0.7%増の12,932百万円となりました。前述の販売拡大した製品による利益増加に加え、円安の影響、並びに経費の節減等により、営業利益は前期比25.4%増の1,125百万円、経常利益は前期比71.2%増の1,130百万円、当期純利益は前期比39.5%増の776百万円と大幅に増加しました。
製品区分別の経営成績は、次のとおりであります。
(アミノ酸関係)
食品用途の輸出販売は好調を維持し、また医薬用途の販売も順調であったものの、半導体関連用途の販売が減少したことから、売上高は4,237百万円と、前年同期に比べ779百万円(15.5%)の減収となりました。
(化成品関係)
農薬中間体の販売が減少した一方で、新製品の高分子材料、機能性ポリマー原料などの輸出販売が好調であったことにより、売上高は4,450百万円と、前年同期に比べ1,053百万円(31.0%)の増収となりました。
(医薬品関係)
原薬の販売は概ね好調であったものの、一部の原薬及び原薬中間体の販売が減少したことから、売上高は4,245百万円と、前年同期に比べ179百万円(4.1%)の減収となりました。
輸出売上に関しましては全売上に対して44.4%を占め、5,737百万円と前年同期と比べ629百万円(12.3%)の増加となりました。
当期の資産合計は、24,370百万円と前事業年度末と比べ2,251百万円(10.2%)の増加となりました。これは主に、売掛金、建設仮勘定、投資有価証券の増加と、現金及び預金の減少によるものであります。
当期の負債合計は、11,940百万円と前事業年度末と比べ1,300百万円(12.2%)の増加となりました。これは主に、買掛金、短期借入金、長期借入金の増加と、1年内返済予定の長期借入金の減少によるものであります。
当期の純資産は、12,430百万円と前事業年度末と比べ951百万円(8.3%)の増加となりました。これは主に、繰越利益剰余金、その他有価証券評価差額金の増加によるものであります。
当期のROA(総資産営業利益率)は4.6%と、前年同期と比べ0.5%上昇しました。これは主に上記の理由による売上高の増加に伴い、営業利益が前期比増益となったことによるものであります。
(参考) ROAの推移
(注) ROA=総資産営業利益率(総資産営業利益率=営業利益/総資産額)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は588百万円となり、前事業年度末に比べ555百万円減少いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は388百万円(前期は668百万円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益905百万円、減価償却費977百万円による資金の増加と、棚卸資産の増加548百万円、売上債権の増加1,378百万円による資金の減少との差額によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は1,894百万円(前期は1,237百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,751百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は948百万円(前期は158百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,600百万円と、長期借入金の返済による支出519百万円によるものであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
※ 有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
③ 生産、受注及び販売の実績
(注) 金額は販売価格によっております。
当社は受注による生産は僅かであり、主として見込み生産によっておりますので、受注及び受注残について、特に記載すべき事項はありません。
(注)1.最近2事業年度の主要な輸出、輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。
( )は総販売実績に対する輸出高の割合であります。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであ
ります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当期の業績状況としましては、半導体向け一部製品の販売が減少したものの、電子材料向け新製品や主に海外で展開している原薬等の販売拡大により、売上高は5期連続で過去最高となる前期比0.7%増の12,932百万円となりました。前述の販売拡大した製品による利益増加に加え、円安の影響、並びに経費の節減等により、営業利益は前期比25.4%増の1,125百万円、経常利益は前期比71.2%増の1,130百万円、当期純利益は前期比39.5%増の776百万円と大幅に増加しました。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、売上高に占める大口取引先上位10社の売上高比率は、当事業年度において65.6%(前事業年度67.5%)となっており、これらの企業との取引条件の急激な変更や契約解除等は当社の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性もあるものの、安定的な経営基盤を維持するため、現行製品の用途開発、生産技術の強化向上等によりこれらの企業との引き続き良好な関係を維持するとともに、新規取引先の確保や新製品の研究開発、現有設備を使った新規事業への参入を積極的に行っております。
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、以下のとおりであります。
・営業活動により増加した資金は388百万円(前期は668百万円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益905百万円、減価償却費977百万円による資金の増加と、棚卸資産の増加548百万円、売上債権の増加1,378百万円による資金の減少との差額によるものであります。
・投資活動により減少した資金は1,894百万円(前期は1,237百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,751百万円によるものであります。
・財務活動により増加した資金は948百万円(前期は158百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,600百万円と、長期借入金の返済による支出519百万円によるものであります。
また、当社は経営基盤の強化に向けて内部留保に努めるとともに、利益水準を勘案した安定配当の継続を基本方針としつつ、事業拡大に伴うキャッシュ・フローの増加と合わせて、資本効率向上を目指した資金運営を行ってまいります。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成に当たって重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針を適用するにあたり、より重要な判断を要し財政状態及び経営成績に影響を与える項目は下記のとおりであります。
・繰延税金資産の回収可能性
当社は、繰延税金資産の回収可能性があると考えられる金額まで減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を検討するに当たっては、将来の課税所得見込み及び税務計画を検討しておりますが、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
高付加価値新製品の創製を目指し、医薬品関連分野及びファインケミカル分野に関わる研究開発に重点をおいております。
医薬品関連分野では、ジェネリック原薬の製造、あるいは新薬(治験薬を含む)及び既存薬の原薬・重要中間体の受託製造を目指した研究開発を重点的に進めております。また、当社の戦略物質のひとつであるピリジン・ピペリジン・キヌクリジン誘導体を中心とした医薬中間体・原料の研究開発にも注力しております。
ファインケミカル分野では、還元反応、グリニャール反応、バイオ反応等の戦略技術の応用・深化の研究を進めつつ、IT関連分野、ポリマー関連分野、機能性材料分野を視野に、アミノ酸誘導体、ピリジン・ピペリジン・キヌクリジン誘導体及び有機ケイ素化合物を中心とした研究開発を進めております。
また国内外を問わず、これら化合物の市場展開を積極的に図っております。
なお、当事業年度の研究開発費の総額は、