(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念IDentityのもと、お客さまのニーズにあった付加価値の高い情報サービスを提供し、情報化社会に貢献することを経営の基本方針としています。「私たちはWaku-Wakuする未来創りに参加します」というミッションの実現に向けて、努めていきます。
(2)中長期的な会社の経営戦略
<経営環境・経営戦略等>
情報サービス業界において、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連する顧客投資は引き続き拡大傾向にあります。とりわけ顧客企業の競争力強化に寄与するようなコンサルティングや、先端技術を活用した高度なサービスへの要求が高まり、経営環境が大きく変動しています。
当社グループは、コンサルティングから、ソフトウェア開発、ITインフラ、システムマネジメント、サイバーセキュリティ、教育、ヘルプデスクまでワンストップで提供しています。とくにシステムマネジメント分野においては、他社にない大規模かつ高品質なサービスを実現し、高い顧客満足度を獲得してきました。また、金融、公共、製造業など、幅広い業種のミッションクリティカルな基幹系システムを長期にわたってサポートし、豊富な業務知識と経験を蓄えてきました。
当社グループはこうした事業の強みを活用し、デジタル技術に精通した技術者育成と各サービス領域の高度化に取り組んでいきます。
<中期経営計画について>
当社グループは、2023年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画「Next 50 Episode Ⅱ 『Ride on Time』」のもと、当社のDXポートフォリオに沿ったDXサービスの強化、大手ITベンダーとの協業によるサービスの高付加価値化、管理部門の高度化による販管費率の改善などに取り組みます。
中期経営計画の最終年度である2025年3月期は、売上高320億円、営業利益25.5億円を目標に掲げていましたが、2023年3月期の業績状況を踏まえ、2023年4月28日に売上高350億円、営業利益30.0億円に上方修正しました。
2025年3月期は、利益率の高い高度運用・ITインフラ領域に経営資源を集中し、収益力の強化を図るとともに、利益をステークホルダーに還元する成長サイクルの実現を目指します。
(中期経営計画の概要図)
具体的には、以下の4つの基本戦略を掲げ、各施策に取り組んでいきます。
① ITサービス戦略
既存ITサービスに先端技術を活用してDXサービスとしてUP-Gradeしていくことを目指します。
当社はDXサービスを「DX推進支援」と「自社ソリューション」の2つに大きく分類しています。「DX推進支援」では、大手ITベンダーとの協業を強化し、クラウド型リモート運用サービス(Smart運用)や、ニーズの高い技術分野(AI、ローコード等)を活用した次世代開発サービス(DX開発)に取り組みます。また、「自社ソリューション」では、成長分野であるクラウドやサイバーセキュリティを対象とした独自のソリューション開発体制を充実させ、サブスクリプション型ビジネスの拡大を図ります。
② 人材戦略
変化が激しい情報サービス業界においては、迅速に適応できるIT技術者の確保が求められます。当社は、デジタルテクノロジーに精通した技術者、およびデジタルソリューションを活用した企画提案型人材の採用と育成を強化します。
また、国籍、性別を問わず、さまざまな経験や価値観を持つ人材の採用を積極的に行い、多様性のある組織作りを推進します。
③ ニューノーマル戦略
社内基幹システムの刷新や、情報共有基盤の導入によるデータの集約化とその利活用の促進、および社内管理業務のスリム化や業務プロセスの見直し等により、業務の効率化・高度化に努めます。
また、山陰BPOセンターや海外拠点を活用した本社機能の分散化や、事業部門への人員の再配置などを進め、各拠点の強みを生かした効率的な役割分担を実現するスマートな管理部門を構築します。
④ SDGs戦略
「私たちはWaku-Wakuする未来創りに参加します」を経営ミッションとして、従業員を含めたステークホルダーの皆さまとともに、持続可能な社会の実現を目指します。とくに本業である情報サービスを通じ、社会インフラを守るべく、サイバーセキュリティ対策の提供や、デジタル技術を活用した地方創生など、サステナビリティに関する課題への取組みをよりいっそう加速します。
(1)ESG関連
中期経営計画において「SDGs戦略」を掲げ、情報サービスの提供を通じた社会課題の解決に積極的に取り組んでいます。そのひとつとして、働き方改革や健康経営に向けた取組を継続し、「健康経営優良法人」の認定を5年連続獲得しています。また、環境マネジメントシステム(EMS)ISO14001の認証を取得しています。
解決すべき社会課題については、グループの経営資源を投入し、事業活動を通して環境価値・社会価値・経済価値の創出につなげ、企業価値を向上するという好循環を目指しています(価値創造エコシステム)。
<サステナビリティ基本方針>
・地球にやさしい社会の実現
・安全安心な社会基盤作り
・ステークホルダーとの良好な関係を構築・維持
① ガバナンス
当社は、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、気候変動や人的資本を含むサステナビリティ課題に関する具体的な施策について積極的に議論・検討する体制を構築しています。
サステナビリティ関連の会議体における役割は以下の通りです。
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会議体 |
開催頻度 |
役割 |
責任者 |
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取締役会 |
13回/年 |
取締役会は、業務遂行に関して付議、決議を行う機関であり、サステナビリティ委員会で協議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティ課題への対応方針および実行計画等についての議論・監督を行います。 |
代表取締役社長 (議長) |
|
サステナビリティ 委員会 |
3回/年 |
当社グループのサステナビリティ課題に対する実行計画の策定と進捗のモニタリングを行っています。 |
サステナビリティ 担当役員 |
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グループ経営会議 |
1回/月 |
グループ経営会議では、サステナビリティのリスク課題に対し、基本方針に沿った推進のための実行策について決定しています。 |
代表取締役社長 |
|
グループリスク 管理委員会 |
4回/年 |
グループリスク管理委員会では、サステナビリティにおける重要課題(マテリアリティ)を含め、グループ全体のリスク事象の識別・評価・管理を実施し、取締役会に報告しています。 |
代表取締役社長 |
② 戦略
当社グループは、中期経営計画において「SDGs戦略」を掲げ、社会課題やメガトレンドのなかでも優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり特定し、「価値創造エコシステム」の循環サイクルにのせ課題解決を図っていきます。
<重要課題(マテリアリティ)>
・人材育成
・サイバー攻撃の脅威
・DX化の進行
・公正な取引
・人権尊重
・ダイバーシティ
・労働力不足
・個人情報保護
・労働慣行/健康経営
・地域創生
・グローバル化の加速
・気候変動 地球環境問題
また、当社グループは人的資本に関して、以下のとおり<人材育成方針><社内環境整備方針>を定めています。
<人材育成方針>
IDグループは、「人」こそが企業の競争力を高め、持続的成長をもたらすものであり、会社の重要な財産であると考えます。
事業を通じて社会課題を解決するために、お客さまから信頼される卓越した技術力と人間力を兼ね揃えた、未知への挑戦を続ける人材の育成を目指しています。
<社内環境整備方針>
多様性を尊重する企業文化のもと、一人ひとりの個性や能力が最大限に発揮できる制度や職場環境を整備し、ワークライフバランスの推進と自律的なキャリア形成支援により、社員のワークエンゲージメントの向上を実現します。
詳細は、当社HP「サステナビリティ 人的資本経営に向けて」をご参照ください。
(https://www.idnet-hd.co.jp/sustainability/human.html)
③ リスク管理
環境や社会に関わるあらゆるリスクは、企業の持続可能性や中長期的な企業価値に多大なる影響を与えることを認識しており、リスク管理はきわめて重要な施策であると考えています。
当社の代表取締役社長を委員長とするグループリスク管理委員会においてサステナビリティ委員会で策定した重要課題(マテリアリティ)を含め、グループ全体のリスク事象の識別・評価・管理を実施し、取締役会に報告しています。
想定されるリスクを「経営・財務リスク」、「人事・労務・社会全般リスク」、「事業部門リスク」の3つに分類し、それぞれ検討小委員会を設置、リスクの洗い出しと対策の立案を行ったうえで、グループリスク管理委員会がその内容について議論、検証を行っており、リスク事象は年1回見直しを図っています。
万が一リスクが発生した場合には、「IDグループ非常事態対応規程」に定めた緊急対策本部を設置し、迅速に事態の的確な対応を行います。
④ 指標及び目標
当社グループは、中期経営計画において「SDGs戦略」を掲げ、サステナビリティ関連の指標を明確化し、確実な進捗管理を実施しています。
また、人材育成および社内環境整備に関する方針における指標並びに当該指標を用いた目標・実績につきましては以下のとおりです。
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指標 |
目標 |
2022年3月期末 |
2023年3月期末 |
2024年3月期末 |
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1,602 |
1,567 |
|
|
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22.6 |
23.0 |
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|
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16.2 |
16.3 |
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法定雇用率を維持 (6月1日基準) |
2.39(2.30※) |
2.48(2.30※) |
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※障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく法定雇用率
対象会社となる当社グループの範囲等の詳細は、当社HP「サステナビリティ 数字で見るIDグループ」をご参照ください。
(https://www.idnet-hd.co.jp/sustainability/numbers.html)
(2)気候変動への取組みについて
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言への賛同を表明し、同提言に賛同する企業や金融機関等からなるTCFDコンソーシアムへ参画しています。重要なマテリアリティとした、気候変動・脱炭素への要請の高まりへの対策をTCFDの枠組みに沿って対応します。
気候変動は集中豪雨、大型台風などの自然災害を激甚化・頻発化させ、当社グループの事業継続に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動の緩和のためのカーボンニュートラル実現に向けて、炭素税等の規制が強化される可能性があります。一方、カーボンニュートラル実現に向けた、環境負荷低減に寄与する製品やITソリューションへのニーズ拡大が期待されます。
そのため、当社グループでは、ITソリューション・サービスの提供を通じて、社会全体の環境負荷低減を促進し、社会全体のカーボンニュートラル実現支援に務めています。
①ガバナンス
サステナビリティ委員会において、気候変動が当社グループにもたらすリスクや機会を分析し、環境課題に対する実行計画の策定と進捗のモニタリングを行っています。さらに取締役会は、サステナビリティ委員会で協議された内容の報告を受け、環境課題への対応方針および実行計画についての論議・監督を行っています。
②戦略
気候変動を事業機会ととらえ、省エネルギー性能に優れた製品やITソリューション・サービスの提供により、お客さまの環境負荷低減を図ります。またリスク対策として、オフィス等における省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの活用、BCP(事業継続計画)の定期的な見直しなどを実施しています。
③リスク管理
気候変動は、集中豪雨や大型台風などの自然災害を激甚化・頻発化させ、経営成績および財政状態に影響をおよぼす可能性があります。一方で、カーボンニュートラル実現に向けた、環境負荷低減に寄与する製品やITソリューションへのニーズ拡大が期待されます。当社グループは、ITソリューション・サービスの提供を通じて、社会全体の環境負荷低減を促進し、社会全体のカーボンニュートラルの実現を支援することに努めています。
当社の代表取締役社長を委員長とするグループリスク管理委員会において、気候変動関連を含むグループ全体のリスク事象の識別・評価・管理を実施し、その結果を取締役会に報告しています。
④指標及び目標
サステナビリティにおけるマテリアリティ(重要課題)として、気候変動の進行と脱炭素への要請の高まりを挙げ、以下のとおり具体的目標を掲げています。
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項目 |
実績 |
目標 |
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2030年度 |
2050年度 |
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温室効果ガス (GHG)排出量 (単位:t-CO2) |
SCOPE1(※1) |
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2020年度比 30%削減 (SCOPE1、2) |
ネットゼロ (SCOPE1、2) |
|
SCOPE2(※2) |
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合計 |
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|||
※算定の対象:本社
(※1)SCOPE1:自社による温室効果ガスの直接排出量
(※2)SCOPE2:他社から供給された電気、熱・蒸気などの使用に伴う間接排出量
当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるあらゆるリスクを的確に把握し、経営への影響を低減していくために、取締役会の諮問機関としてグループリスク管理委員会を設置しています。想定される各リスクを3つの主要リスク(経営・財務リスク、人事・労務・社会全般リスク、事業部門リスク)に分類、小委員会を設置し、リスクの洗い出しと対策の立案を行ったうえで、グループリスク管理委員会がその内容について議論、検証を行っています。
とくに当社グループの事業業績、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(重要なリスク)
① 市場環境の変化について
デジタル技術を活用した事業革新(デジタルトランスフォーメーション:DX)の需要は引き続き拡大傾向にありますが、先端技術を活用した高付加価値分野への対応の遅れによる受注機会の逸失や競合他社に対する競争力の低下、また社会や経済情勢の変動による顧客企業のIT投資意欲の減退により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、中期経営計画においてDXを成長戦略の柱と位置づけ、パートナー企業と連携して顧客企業のDXを支援するとともに、今後の成長分野であるクラウドやサイバーセキュリティの領域における当社独自のソリューション開発に取り組みます。また、DX関連分野における高度技術者や企画提案型人材を育成し、顧客ニーズにあった付加価値の高いサービスの提供に努め、市場環境変化に対応しています。
② 企業買収について
当社グループは、M&Aによる事業の拡大を経営戦略のひとつとしています。しかしながら、市場環境の変化や不測の事態により、事業が計画どおりに進まない場合や、当初予定していた効果を得ることができない場合に、のれんの減損処理や関係会社株式の評価損を行う必要が生じる等、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、それらを実施する場合には、対象企業の財務や税務、法務等について会計士や弁護士等の専門家によるデューディリジェンスを行うことにより、事前にリスクを回避するように努めています。また、実施後は出資先の取締役会等への陪席、または決算資料等の精査により、経営状況を定期的にモニタリングし、当社グループの経営成績および財政状態への影響の把握に努めています。
③ グローバル事業について
当社グループは、事業戦略の一環として、中国、シンガポール、ミャンマー、米国、ヨーロッパを中心にグローバル事業を推進しています。しかしながら、グローバル経済や為替等の動向、取引をめぐる法規制、商習慣の違い、政治的・社会的変動等のさまざまな要因が、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
各海外拠点の経営状況や外部環境の変化等については、グローバル統括部が中心となって適宜把握するとともに、個別のリスク事象についてはグループリスク管理委員会において内容の把握や状況確認、対策の進捗確認や効果検証を行い、リスク低減に取り組みます。
なお、ミャンマーに関しては、不安定な政治情勢が長期化していることから、2023年3月31日をもって営業を終了いたしましたが、当社グループの業績に与える影響は軽微です。
④ 人材確保について
最新技術への対応、顧客満足度の向上には、優秀な人材の確保と育成は重要な課題です。しかしながら、人材の確保・育成ができない場合、また、事業変革にともなうニーズにあった人材の補充ができない場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、国内・海外で新卒および中途採用により付加価値の高い人材確保に努めており、入社後から計画的ローテーションとトレーニングにより、高度技術者への育成・推進を図っています。また、顧客ニーズの変化へ対応するため、リスキルを進めるとともに、新規ビジネスを模索していきます。
⑤ 情報管理について
当社グループは、常に情報セキュリティの維持・向上を図り、お客さまに満足いただけるサービスの提供に努力しますが、万が一、不正アクセスや重大なエラー等により、取引に関する情報の紛失、改ざん、漏えい等を発生させた場合には、当社グループの信用は失墜し、経営成績および財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、個人情報をはじめとする情報資産を適切に取り扱うため「情報管理基本方針」、「プライバシーポリシー」等各種規程を整備しており、2022年4月施行の改正個人情報保護法にも対応済です。
また、情報管理全般について組織横断的に協議を行う情報管理委員会を設置し、情報管理体制を強化するとともに、サイバーセキュリティにかかる専門チーム(CSIRT)が中心となり各種セキュリティ対策の強化とインシデント発生時の対策に取り組んでいます。
社員に対しては、定期的なサイバー攻撃対応演習の実施、法令に対応した規程改訂に関する教育を行い、コンプライアンス意識のさらなる向上に努めています。さらに、PマークおよびISO27002の認証を取得し、維持・継続しています。
⑥ サステナビリティについて
第2「事業の状況」2「サステナビリティに関する考え方及び取組」(1) ESG関連をご参照ください。
⑦ 気候変動への取組みについて
第2「事業の状況」2「サステナビリティに関する考え方及び取組」(2) 気候変動への取組についてをご参照ください。
⑧ 自然災害・紛争・テロ・パンデミックレベルの感染症等について
地震・台風・洪水といった大規模な自然災害に関連するリスクは年々高まる中、世界各地で発生する紛争・テロやパンデミックレベルでの感染症等による被害は完全に回避できるものではなく、想定規模を超える被害発生時には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、様々なイレギュラー事象が発生し、業務遂行が阻害されるような場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、危機管理マニュアルおよび業務継続計画(BCP)を制定しています。また、山陰BPOセンターに本社業務を一部移管しており、一極集中によるリスクの低減を図るとともに、テレワークをはじめとする働き方の多様化も引続き進めていきます。今後も食料・衛生用品の備蓄、各種マニュアルの見直しや安否確認システムを活用した定期的訓練の実施により、業務継続性確保に努めています。
⑨ ソフトウェア開発およびITインフラ業務遂行について
当社グループにおけるソフトウェア開発およびITインフラ業務の売上比率は、当連結会計年度44.2%を占めています。高度化、複雑化、短納期化する当業務においては、開発途中での要件変更、品質の低下、納期遅延等の問題が発生した場合、プロジェクト完遂のための追加費用発生や損害賠償責任によって採算が悪化し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらのリスクをヘッジするために、ISO9001に準拠した品質マネジメントシステムを導入しています。新規大型案件の引合いを受けた際には受注検討会を開催し、取引方針、採算性、要員体制、技術対応力、技術蓄積の可能性等について経営的判断に基づく検討を行います。また、品質管理部門が各プロジェクトの提案、見積段階から納品に至るまでのプロセスをとおしたリスク分析・管理を実施し、プロジェクト遂行中のQCD(品質、コスト、納期)状況を定期的にレビューすることで、早期の異常検知につなげ、不採算案件の発生防止に努めています。
また、プロジェクト管理強化の対策として、グローバル・イノベーションセンター(GIC)を設置し、プロジェクト型組織でのプロジェクト統括管理を行う体制を構築しています。この組織により、一括受託型プロジェクトの管理強化、ならびに柔軟かつ適正な人員配置を行っています。
⑩ システムマネジメント業務遂行について
当社グループにおけるシステムマネジメントの売上比率は当連結会計年度44.7%を占めています。システムマネジメント業務において、誤操作等によるシステム障害や情報提供の遅延等を発生させる可能性は、皆無ではありません。大規模なシステム障害等を発生させた場合、損害賠償責任に発展することによって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、このような障害を未然に防止するため、「影響度の高い業務の再鑑体制徹底」、「ツールによる自動化推進」等を実施しています。また、品質管理部門を設け、「障害の未然防止研修」「障害要因分析・フィードバック」「現場立ち入り検査」等を企画実施しています。さらにISO9001認証を取得し、品質向上に向けた継続的改善を図っており、大規模なシステム障害は発生していません。
さらに、当社グループのコアビジネスであるシステムマネジメント業務は、DXが推進され、既存システムに対する保守費の削減、自動化、パブリッククラウドの利用、主要顧客に次世代システムへの移行やセンター集約も進み、大きな転換期を迎えており、従来の単純なオペレーション業務に限れば、規模が縮小する可能性があります。
当社グループは、システムマネジメント業務の将来性を鑑みた業務の付加価値を高めるオペレーションの自動化等のDX施策を推進するとともに、要員のスキルチェンジも進めています。
また、AIによる自動化や、遠地でのリモート運用支援による効率化、低コスト・高品質なSaaS型のシステム運用やメタバース上でつながるバーチャルなシステムオペレーションセンター(ID-VROP)の販売などの「Smart運用サービス」を推進しています。
⑪ パートナー会社からの要員調達について
当社グループは、案件ニーズにマッチした人材の調達、および受注量増減に対して機動的に対応するため、パートナー会社からの要員調達についても積極的に進めています。しかしながら、市場の変化により計画を大きく超える受注量の増減が急激に起きた場合には要員調達の不調、または、要員リリースがタイムリーに行えないことによって、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、パートナー会社に対し定期的にパートナー会や勉強会を実施することにより、事業方針や案件情報、トラブル事例共有等の情報交換を密にし、コアパートナー会社との協力関係をさらに深め、一括案件受注体力があり品質管理が期待できる協業体制を構築し、品質の向上と要員の調達力向上に努めています。
さらに、とくに需要が増加していくDX関連技術については、当社グループの施策と人材育成方針等の情報を開示し、当社社員の育成とあわせてパートナー会社の技術者育成を支援することによって、高度技術人材の確保に努めています。
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度における国内景気については緩やかな回復基調となったものの、物価上昇や、国際情勢不安、世界的な金融引締めにともなう景気の下振れリスク等の影響が懸念され、先行きは依然不透明な状況です。
当社グループが属する情報サービス業界では、新たなビジネスモデルの創出や変革に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)関連のIT投資ニーズが底堅く、引き続き堅調に推移するものと見込まれます。
このような環境のなか、当社グループの業績は、システムマネジメント(注)、サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育およびITインフラが堅調に推移したため、売上高は326億80百万円(前年同期比5.1%増)となりました。
収益面においては、従業員への還元などを進めたものの、増収にともなう増益や、利益率の高いDX関連ビジネスの拡大などがあり、営業利益は27億69百万円(同14.2%増)、経常利益は28億60百万円(同14.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億77百万円(同26.7%増)となりました。EBITDAは、34億21百万円(同12.8%増)となりました。
これにより、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で増収増益となり、いずれも過去最高を更新しました。
(注)当連結会計年度より、従来のサービス名「システム運営管理」を「システムマネジメント」に変更しています。なお、サービス名の変更は事業内容の変更をともなうものではありません。
当社の事業セグメントは単一セグメントであり、サービスごとの業績を以下のとおり記載しています。
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比 |
||
|
増減額 |
増減率(%) |
||||
|
システムマネジメ ント |
売上高 |
13,637 |
14,593 |
956 |
7.0 |
|
売上総利益 |
2,964 |
3,226 |
261 |
8.8 |
|
|
売上総利益率 |
21.7% |
22.1% |
0.4P |
― |
|
|
ソフトウェア開発 |
売上高 |
11,458 |
11,573 |
114 |
1.0 |
|
売上総利益 |
2,535 |
2,117 |
△417 |
△16.5 |
|
|
売上総利益率 |
22.1% |
18.3% |
△3.8P |
― |
|
|
ITインフラ |
売上高 |
2,602 |
2,862 |
259 |
10.0 |
|
売上総利益 |
644 |
796 |
152 |
23.6 |
|
|
売上総利益率 |
24.8% |
27.8% |
3.0P |
― |
|
|
サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 |
売上高 |
2,934 |
3,319 |
385 |
13.1 |
|
売上総利益 |
621 |
960 |
339 |
54.6 |
|
|
売上総利益率 |
21.2% |
28.9% |
7.7P |
― |
|
|
その他 |
売上高 |
467 |
331 |
△135 |
△29.1 |
|
売上総利益 |
36 |
52 |
15 |
42.6 |
|
|
売上総利益率 |
7.9% |
15.9% |
8.0P |
― |
|
|
合計 |
売上高 |
31,101 |
32,680 |
1,579 |
5.1 |
|
売上総利益 |
6,802 |
7,153 |
351 |
5.2 |
|
|
売上総利益率 |
21.9% |
21.9% |
0.0P |
― |
|
(注)ソフトウェア開発において、一部低採算案件の発生により、売上総利益が前年同期に比べ減少となりました。
① システムマネジメント
大手ITベンダーへの営業強化による新規案件の受注や既存取引の拡大などにより、売上高は145億93百万円(同7.0%増)となりました。
② ソフトウェア開発
一部案件の終了があったものの、大手ITベンダーへの営業強化による取引の拡大や、公共および金融関連顧客における受注拡大などにより、売上高は115億73百万円(同1.0%増)となりました。
③ ITインフラ
金融関連顧客における大型案件の受注や、大手ITベンダーにおける取引の拡大、運輸および製造関連顧客における受注拡大などにより、売上高は28億62百万円(同10.0%増)となりました。
④ サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育
大型サイバーセキュリティ案件の構築が終了し、今期保守フェーズへ移行したことによる反動減があったものの、コンサルティングにおける受注拡大、サイバーセキュリティにおける新規案件の獲得などにより、売上高は33億19百万円(同13.1%増)となりました。
⑤ その他
製品販売における受注拡大があったものの、一部案件のサービス区分変更の影響などにより、売上高は3億31百万円(同29.1%減)となりました。
《経営施策の取組み状況》
当社グループは、前中期経営計画において、デジタル技術に精通した技術者育成と各領域におけるサービスの高度化に取り組み、今後に向けた成長基盤を構築しました。そして2023年3月期からは、
①「顧客のDX推進支援の強化」と「自社のソリューション開発」という当社DXポートフォリオに沿ったビジネスモデルの展開
②高付加価値創出に向けたパートナーシップの強化
③管理部門の高度化と事業部門への人材シフト
の3つの基本テーマをもとにさらなる収益性向上を図るべく、中期経営計画「Next 50 Episode Ⅱ『Ride on Time』」(2023年3月期~2025年3月期)を策定しました。
この中期経営計画では上記3つの基本テーマの実現に向けて、「ITサービス戦略」「人材戦略」「ニューノーマル戦略」「SDGs戦略」の4つの基本戦略を掲げています。
※BP(ビジネスパートナー):プロジェクトをともに遂行していただくITパートナー
① ITサービス戦略
ニーズの高い技術領域を定め、パートナー企業との連携による顧客のDX推進支援や成長分野を対象とした自社ソリューション開発に努めます。昨年3月に鳥取大学と締結した共同研究契約をもとに、整形外科におけるX線画像診断AIシステムに関する研究を進めています。また、「ChatGPT」のAPIを利用した企業専用の対話型AIチャットサービス「ID AI コンシェルジュ」を開発し、8月には基本機能を備えたLite版の販売を、今年1月には規程等の社内データをもとにした回答を実現したPro版の販売を開始しました。さらに、かねてより開発を進めていたバーチャルオペレーションセンター(ID-VROP)の販売を1月より開始しました。くわえて、改ざんが困難なデータベース技術の一種であるブロックチェーンを利用した特許を3件取得しました。これらの特許技術をもとに、よりセキュアなサービスの創出に取り組んでいきます。
② 人材戦略
DXサービスの拡大や高付加価値化の実現に向けて、研修制度のさらなる充実を図り、中上級技術者および企画提案型人材の育成を加速させます。具体的な取組みとして、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が策定した「デジタルスキル標準」をベースに、DXを推進する人材の役割(ロール)ごとの育成ロードマップを整理し社内に展開しています。また、グループ全社員のAIリテラシー強化を図るべく、フェローによる社内研修を実施するとともにオンライン学習プランを約300名の社員に提供しています。12月にはJISA(一般社団法人情報サービス産業協会)主催「技術コンテスト第2回 ~若手エンジニアが楽しく総合的な技術を研鑽~」において、生成AI活用、UI/UX、技術課題解決の3部門における優秀賞ならびに総合優秀賞を受賞しました。さらに、若手社員100名を対象に認定サイバーセキュリティ技術者(CCT)のハンズオン研修を提供したほか、Web3に関するオンライン研修を約50名の社員に実施するなど、ニーズの高い技術領域で活躍できる人材の育成を積極的に進めています。
③ ニューノーマル戦略
社内基幹システムの刷新などによる業務の効率化・高度化に努めるとともに、スマートな管理部門の構築を図ります。管理部門業務のデジタル化および部署間・業務間の連携自動化、情報の一元化などを進め、セキュアで柔軟な社内ネットワークへと変革すべく、ゼロトラスト環境を構築しました。さらに、業務の効率化とシームレスなコミュニケーションを実現し、グループ全体の生産性を向上させるため社内システムを刷新しました。持続的な業務改革活動にくわえ、管理部門業務におけるよりいっそうの効率化を図り、山陰BPOセンターへのさらなるバックオフィス機能の移転を進めています。
④ SDGs戦略
事業活動をつうじてサステナビリティへの取組みを進め、「社会課題の解決」と「企業価値の向上」の好循環を目指します。人的資本経営にかかる取組みの可視化を目的として、グループ全体の人的資本情報や取組みをコーポレートサイトに公開しました。また、健康経営セミナーの開催や社員の禁煙サポートなど、社員の健康推進に取り組んでいます。そのほか、文化芸術活動支援や社会貢献活動としてクラシックコンサートを開催し、ビーチクリーンボランティア活動に参加しました。2月には継続的な献血活動「IDグループ献血DAY」の実施が評価され、日本赤十字社より感謝状を受領しました。くわえて、事業をつうじてLGBTQ+の支援を行う企業への出資や、「令和6年能登半島地震」で被災された方々への義援金支援を行いました。また、昨年11月にはダイバーシティや人権尊重、人的資本経営にかかる取組みが評価され、日経「スマートワーク経営」調査、「SDGs経営」調査において星3つ半の評価を獲得しました。さらに、「健康経営」の観点ではとくに経営理念・方針が評価され、3月に「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に5年連続で認定されました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8億79百万円増加し、56億80百万円(前年同期比18.3%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は14億22百万円(前期は16億54百万円の資金増)となりました。
これはおもに、税金等調整前当期純利益29億4百万円、売上債権の増加額1億21百万円、仕入債務の減少4億64百万円、法人税等の支払額10億48百万円およびのれん償却額4億44百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2億33百万円(前期は3億60百万円の資金減)となりました。
これはおもに、定期預金の払戻による収入3億15百万円、定期預金の預入による支出2億60百万円および有形固定資産の取得による支出1億72百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は4億32百万円(前期は12億75百万円の資金減)となりました。
これはおもに、短期借入金の純増加額8億円、長期借入金の返済による支出3億75百万円および配当金の支払額8億51百万円などによるものです。
生産、受注および販売の実績
当社グループは情報サービス事業の単一セグメントですが、当連結会計年度における生産実績、受注実績、販売実績をサービス別に示すと、次のとおりです。
(1)生産実績
|
サービスの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
システムマネジメント |
14,593,669 |
107.0 |
|
ソフトウェア開発 |
11,573,880 |
101.2 |
|
ITインフラ |
2,862,323 |
110.0 |
|
サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 |
3,319,277 |
113.2 |
|
その他 |
253,872 |
58.3 |
|
合計 |
32,603,023 |
105.0 |
(注)金額は、販売価格によっています。
(2)受注実績
|
サービスの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
システムマネジメント |
13,213,233 |
94.0 |
2,362,490 |
63.1 |
|
ソフトウェア開発 |
10,651,485 |
93.3 |
1,093,298 |
54.2 |
|
ITインフラ |
3,021,318 |
119.0 |
719,431 |
128.4 |
|
サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 |
4,380,524 |
144.7 |
1,501,417 |
341.1 |
|
その他 |
533,584 |
135.2 |
314,775 |
279.2 |
|
合計 |
31,800,147 |
101.2 |
5,991,414 |
87.2 |
(3)販売実績
|
サービスの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
システムマネジメント |
14,593,972 |
107.0 |
|
ソフトウェア開発 |
11,573,621 |
101.0 |
|
ITインフラ |
2,862,323 |
110.0 |
|
サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 |
3,319,277 |
113.1 |
|
その他 |
331,544 |
70.9 |
|
合計 |
32,680,739 |
105.1 |
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先が無いため、記載を省略しています。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先が無いため、記載を省略しています。
財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としています。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しています。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、とくに以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
① 繰延税金資産
繰延税金資産は、今後の課税所得の予測等を踏まえその回収可能性を判断したうえで計上しています。
② 退職給付費用
従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。従業員退職給付費用および債務は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。一部の連結子会社の確定給付企業年金制度においては、割引率を安全性の高い長期の債券の利回りにより決定しているほか、報酬水準の増加率および従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しています。
③ 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。
④ その他有価証券の減損処理
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客および金融機関に対するその他有価証券を所有しています。これらの株式および投資信託には価格変動性が高い上場会社の株式および時価のある投資信託と、株価の決定が困難である非上場会社の株式が含まれます。当社グループは投資価値の下落が一時的でないと判断した場合、これら有価証券の減損処理を実施しています。上場会社の株式および時価のある投資信託は、期末日の時価が取得原価に比べ50%以上下落した有価証券については、期末後1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準に回復することを合理的な根拠で予測できる場合を除きすべて減損処理を行い、30~50%程度下落した有価証券については、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。また非上場会社の株式は原則として、評価損の計上を検討すべき一定の事項が発生し、且つ、当該会社の純資産額に対する当社グループ持分額が取得価額より50%以上下落し、回復可能性が明確でない場合には、減損処理を行うこととしています。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度の311億1百万円に対し15億79百万円増収の326億80百万円となりました。
サービス別の状況は第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」「業績等の概要」(1) 業績をご参照ください。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度の242億98百万円に対し12億28百万円増加の255億27百万円となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の43億77百万円に対し6百万円増加の43億84百万円となりました。
③ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度の24億24百万円に対し3億44百万円増加の27億69百万円となりました。
④ 営業外損益(純額)
当連結会計年度の営業外損益(純額)は、為替差益の増加などにより、前連結会計年度の79百万円の利益(純額)に対し12百万円増加の91百万円の利益(純額)となりました。
⑤ 経常利益
当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度の25億4百万円に対し3億56百万円増加の28億60百万円となりました。
⑥ 特別損益(純額)
当連結会計年度の特別損益(純額)は、投資有価証券売却益などにより、前連結会計年度の1億72百万円の損失(純額)から43百万円の利益(純額)となりました。
⑦ 税金等調整前当期純利益
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の23億31百万円に対し5億72百万円増加の29億4百万円の利益となりました。
⑧ 法人税等
当連結会計年度の法人税等は、前連結会計年度の9億22百万円に対し1億95百万円増加の11億18百万円となりました。
⑨ 非支配株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の6百万円に対し2百万円増加の8百万円の利益となりました。
⑩ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の14億2百万円に対し3億74百万円増加の17億77百万円の利益となりました。
(3)当連結会計年度末の財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末の資産の部は、のれんの償却による減少4億44百万円などがありましたが、現金及び預金の増加8億51百万円、契約資産の増加4億99百万円、売掛金の増加1億26百万円および投資有価証券の増加5億92百万円などにより、前連結会計年度末に比べ25億41百万円増加し200億61百万円となりました。
② 負債の部
当連結会計年度末の負債の部は、有利子負債の増加4億22百万円などにより、前連結会計年度末に比べ9億63百万円増加し80億50百万円となりました。
③ 純資産の部
当連結会計年度末の純資産の部は、期末および中間配当金支払による減少8億52百万円がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の増加17億77百万円、その他有価証券評価差額金の増加4億20百万円および為替換算調整勘定の増加1億44百万円などにより、前連結会計年度末に比べ15億78百万円増加し120億10百万円となりました。
(4)資本の財源および資金の流動性についての分析
① 当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の16億54百万円より2億31百万円少ない14億22百万円の資金を獲得しました。これはおもに、税金等調整前当期純利益が5億72百万円増加、賞与引当金の増減額が2億83百万円減少、売上債権の増減額が12億76百万円減少および仕入債務の増減額が6億62百万円減少したことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の3億60百万円より1億27百万円少ない2億33百万円の資金を使用しました。これはおもに、定期預金の払戻による収入が3億8百万円増加、定期預金の預入による支出が1億15百万円増加および有形固定資産の取得による支出が1億17百万円増加したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の12億75百万円より8億42百万円少ない4億32百万円の資金を使用しました。これはおもに、短期借入金の純増加額9億60百万円増加および配当金の支払額が1億73百万円増加したことによるものです。
② 当社グループは現在、運転資金および設備投資資金につきましては、自己資金または借入により資金調達することとしています。当連結会計年度末現在、短期借入金の残高は22億円、1年内返済予定の長期借入金の残高は2億円、長期借入金の残高は1億50百万円です。
なお、当社グループは、資金調達の機動性と効率性を高めるため、取引銀行5行と総額41億円の当座貸越契約を締結しています。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発活動の金額は
当社グループでは、最先端技術を活用した新たなビジネス展開を目的とし、積極的に研究開発に取り組んでいます。おもな取組みとして、ブロックチェーンを活用することでネットワーク上でのセキュアなデータ通信や情報管理を実現するソリューションに関する特許を3件取得しました。
また、2024年1月には、当社グループの主要事業であるシステム運用をメタバース上に構築することで、担当者が世界中どこにいてもバーチャル空間上で共同作業が行えるバーチャルオペレーションセンター(ID-VROP)を販売開始しました。
くわえてAI技術について、とくに進化が著しい大規模言語モデル(LLM)の活用を中心に、音声認識や画像認識技術の研究開発にも力を入れています。具体的な事例としては2023年3月に鳥取大学と締結した共同研究契約をもとに、変形性膝関節症の早期治療介入を目的としたX線画像の評価を行うAIモデルに関する研究を進めています。ほかにも、慶應義塾大学病院向けに開発した、医療画像の個人情報識別および個人情報のマスキング化ソフトウェアの試験導入が2024年2月より始まりました。このAIシステムにより、患者情報の漏えいリスクおよび病院担当者の作業負荷の低減を実現しました。
さらに4月1日には、これまで蓄積してきたAI関連の技術を、当社グループのサービス領域であるシステムマネジメント、サイバーセキュリティ、ソフトウェア開発分野の高度化に貢献するべく、新会社「株式会社ID AI Factory」を設立しました。
なお、当社グループの報告セグメントは「情報サービス事業」の単一セグメントであり、セグメント別の記載を省略しています。