文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、常に高品質で価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献するべく、法令等遵守のもと、各ステークホルダーの皆様と健全で良好な関係を維持しつつ、適正で効率的な経営に努めております。
また、当社グループは外部環境の変化に対応した強固な収益体質の構築を目指し、効率的な経営、生産効率の向上、研究・開発体制及び販売・サービス体制の強化等を行ってまいります。
当社グループは「企業価値の向上」を経営方針の一つに掲げており、株主・従業員を含む全てのステークホルダーとのより一層良好な関係を構築し、企業価値を高める為、収益構造の改善と企業体質の強化に努めてまいります。
なお、2022年5月13日に公表した2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「Reborn 2024」において営業利益2,500百万円、営業利益率6.3%を中期目標としております。(同計画値は、2024年3月期の連結業績を踏まえて、2024年5月10日に「中期経営計画の計画値修正に関するお知らせ」として開示しました。)
(注)上記業績予想につきましては、現時点で入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今
後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。
(3)経営環境
①全般
世界的なインフレのピークは過ぎたものの、金融引き締め政策が引き起こした不透明な金融市場、また、長期化するウクライナ紛争や中東地域の緊迫化による地政学リスクの高まり、さらには中国の経済減速など、世界経済は不安定な状況が続く一年となりました。
国別に見ますと、米国では金融引き締めにより不透明な金融市場となったものの、産業構造がコロナ禍前の状態に戻る過程で労働者の増加と職種転換がスムーズに進み、家計の所得増が続いたことなどから、個人消費と設備投資は堅調さを維持しております。欧州においては、物価高や金融引き締め政策の影響により個人消費は低迷しました。足元では物価上昇はピークアウトしましたが、当面は現状の金融引き締め水準が維持される見通しです。日本国内では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行後、経済社会活動が正常化するなかで、インバウンド需要の回復・円安による企業収益の改善や株価上昇、高い賃上げ率等により企業景況感が改善しました。一方で、物価高騰による個人消費の落ち込みや人手不足、機械の設備投資が伸び悩む等、実体経済は低迷しました。中国では、前年のゼロコロナ政策解除を受けて、一時的に景気は回復傾向にありましたが、バブル崩壊による不動産関連産業の低迷が続き、雇用情勢の改善の遅れやゼロコロナ政策の後遺症などから消費者マインドが悪化しました。また、過剰債務に配慮して政府が支出を抑制するなど、インフラ投資の拡大が控えられたことから景気は停滞しております。インドでは、夏場の天候不順による食料価格上昇が物価の騰勢を一時的に強めたものの、人口増加の中で個人消費の趨勢的拡大と旺盛なインフラ需要がインド経済を力強く牽引しており、高成長が続くとみられています。
今後の先行きについては、地政学的緊張によるエネルギー価格の再急騰や、インフレ率の高止まりによる金利の上昇や資産価格の下落の可能性などがあげられます。一方、世界的に相次いで行われる選挙を背景とした財政支出の拡大が、短期的に経済を押し上げることや、労働市場の状況が緩和され、インフレ率が低下することで、金融緩和が早まる可能性があります。
②家庭用機器事業
近年の家庭用ミシン市場環境は、ミシンキルト等を楽しむユーザーに高機能・高付加価値のミシンが幅広く受け入れられる一方、ネット通販の伸長による低価格モデルの定着などが進んでいます。
ミシンの多様な楽しみ方のニーズを広めるため、展示会や各種イベントなどを開催し、お客様との交流を持つ機会を増やすことにより、長年ハンドメイドに親しむミシン上級者から、ミシンを始めたばかりの初心者まで、コミュニケーションを図る貴重な機会となりました。また、つくることへの楽しさを改めて知るきっかけともなり、ハンドメイド文化の裾野は拡大していると確信しております。また、ウェブサイトやSNSを通じた情報発信等も引き続き継続して、お客様とのコミュニケーションの多様化に一層取り組んでいくことで、国内外におけるソーイング文化の深化・浸透、潜在需要のさらなる掘り起こしに繋がるものと考えております。
国内においては、代理店販売を中心とした販売体制の構築、及びミシン専門店以外のネット通販、量販店での販売等、時代に応じた販売チャネルを活用した積極的な販売活動を行うとともに、全国の学校に向けた販売や、小・中学校の先生方を対象としたオンラインミシン講習会を始めるなど充実したサービス・支援に取り組みました。また、インテリアに馴染むおしゃれなミシンとして「Epolku」の新色を発売し、ミシンのイメージアップに繋げることで、国内シェア№1の堅持に寄与するものと考えております。
海外においては、世界的物価高や地政学的リスクの高まりにより、不安定な世界経済の状況は、欧州やその他の新興国を含む幅広い地域に深刻な影響を与え、総じて厳しい状況が続きました。また、ロシア向けには2022年3月よりミシンの出荷・販売を停止しており、生産・販売数に影響を及ぼす結果となりました。
他方で米国においては、フラッグシップモデル「Continental M17」に続き、高機能・高付加価値の高級コンピュータミシン「Continental M8 Professional」、「HORIZON Memory Craft 9480 QC Professional 」を新たに市場投入し、当社のブランドイメージを向上させると同時に、当社の強みであるキルトミシン市場における地位の確立に努めました。
重点市場のインドを含むアジア地域では同地域の経済状況に比例して、普及モデルのミシン販売が好調に推移いたしました。地域毎に需要やニーズを的確につかみ、さらなるシェアの拡大が見込める市場では、新たなミシンユーザーの獲得に向けて積極的な取り組みを推進していきます。また、ミシンの価値発展を伝えるパイロットショップ「Bobinage(ボビナージュ)」の国内外における多店舗化展開など、積極的な需要喚起を行っていきます。
ミシンは家庭にある唯一の生産財とも呼ばれ、手づくりによるリメイクやリユースなどエシカル消費にも繋がり、製品そのものがサステナブルでエコに貢献できるものと認識しております。こうした環境への貢献度が消費行動に直結する時代において、ミシンの持つサステナビリティを訴求していくことで、特にこれまでミシンに馴染みのなかった若い世代を中心に裾野の拡大が期待できます。モノづくりを通じて人々の生活を豊かにすることができ、また、ミシンの価値を再評価いただけているものと考えております。
③産業機器事業
当社産業機器事業におきましては、中国の経済減速などの影響から生産現場の設備投資を控える動きが目立ち、ダイカスト製品を含め販売は依然として苦戦が続きました。他方で、半導体や電子部品等の部品調達難は解消され、生産体制は正常化し、卓上ロボットでは作業用途を想定した治具やアタッチメントを豊富に取り揃えるなど、製品の付加価値を高め、市場のニーズに応える製品提供に取り組みました。また、国内外に販売・サービス拠点を設立するなどネットワークの強化を図ることで、販売体制の安定化に繋がるものと考えております。また、部品の社内加工を推進するとともに、強固なサプライチェーンを構築していくことで、部品の安定供給を図り、生産の安定化にも努めてまいります。
足元では昨年から引き続き不透明感も残るものの、中長期的に見れば市場は拡大していくと考えております。特に国内を含めた先進国を中心に「脱炭素社会」を目指す動きが加速している中、主力市場である自動車産業の変化に対応していくことで、今後、様々なビジネスチャンスが増えてくるものと思われます。また、製造業におけるグローバル競争の激化や慢性的な人手不足から工場の自動化ニーズが高まっており、今後中小企業にも波及していくと見られ、これらに積極的なアプローチをかけることで、新規顧客の開拓にも繋がると考えております。
当社産業機器事業におきましては、これまで当社の第2の柱として着実に成果を上げてまいりましたが、外部環境の変化による煽りを受け、営業損失が続いております。これは、中国市場や自動車関連など特定の市場・業界への依存度が高いことも影響していると考えております。中期経営計画に基づき、これまでの重要市場への販売拡大にも注力しながら、新規顧客開拓を一層推し進め、新エネルギー、環境・エコ、医療関係など幅広い業種にアプローチを行っていくことで、外部環境に左右されない盤石な販売網が構築できるものと考えております。
④IT関連事業
情報サービス産業におきましては、IoT、AIなどの「デジタルトランスフォーメーション(DX)」による「第4次産業革命」が徐々に社会に浸透してきております。これにより、企業などの生産者側からは、これまでの財やサービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性が指摘されており、かつその対象領域も広がりを見せることが期待されています。企業における競争力強化や生産性の向上のためのIT投資は引き続き堅調に推移している一方で、人材不足が顕在化しており、技術者の増強と育成が重要な社会的課題となっております。
その中で当社グループは、「課題解決型パートナー」としての対応を強化しております。システムインテグレーションでは、様々な業務のシステム構築を行ってきた経験をもとに、システム・ソフトウェア構築を支援しており、アウトソーシングでは、システム運用・監視・機器管理や情報処理業務に付帯するデータエントリー業務、オフライン業務全般をトータルでサポートしています。これら経営戦略・方策の下、新規顧客獲得、品質管理の徹底、人財育成などを実施し、収益基盤の安定・強化を進めるとともに、これまで培った知見を活かし、グループ全体のDXも推進してまいります。
当社グループは、持続的に成長する企業集団を目指しております。短期的に会社の規模や売上高の増大を求めるのではなく、商品とサービスのご提供を通じて社会・文化の向上への貢献に堅実に取り組みながら、そこで得られた利益が次の成長に繋がるような持続的成長企業となることが目指すべき目標であり、また課題であると考えております。企業が成長するための要素は様々ですが、当社の強みは創業以来培ってきた「信用」であり、またこれを支えているのは当社製品の品質への評価であると考えています。引き続き、これに満足することなく、品質の維持・向上に努めてまいります。
①サステナビリティ・ガバナンス経営の推進
当社グループは、持続的企業価値の向上を目指しており、この「持続的(=サステナブル)」は、当社の事業経営・ビジネスモデルが持続可能とすることを指すのは勿論ですが、同時に当社が存在し活動する基盤となる社会・環境・経済が持続可能であることは、その前提であると考えております。
当社グループはこれまでも、ESGの重要性を鑑み持続可能な社会の実現に貢献することが、企業の社会的責任であるとの認識の下、ESGのそれぞれの視点に立った事業活動を通じ、SDGsの各目標のうち持続的成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を選定しその達成に取り組んでまいりました。引き続きこの姿勢は堅持しつつ、社会や環境に対し負荷を与えないような事業活動を目指すことに止まらず、広く持続可能な社会や環境に貢献するためにできることは何か、という課題に使命感を持って向き合い、自社の持続的企業価値の向上と一体的に取り組んでまいります。
・サステナビリティ推進委員会
当社は、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上の両立に向けて、グループ全体でサステナブル経営を一層推進し、企業の社会的責任である社会・環境問題をはじめとしたサステナビリティを巡る様々な課題への取り組みを加速させるため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
同委員会は、代表取締役社長を委員長に社内横断的メンバーで構成され、当社サステナビリティに関する重要事項を審議し、課題に対する取り組みとその進捗状況を管理・評価しております。また、議長には社外取締役を置き、客観的視点から活発な議論を促しております。
②中期経営計画
中期経営計画「Reborn 2024」の中間年度にあたる2024年3月期連結業績は、国際的な地政学リスクの高まりや、中国の需要回復の遅れ、国内における円安の定着による原価高等により、同前年対比で減収減益となりました。この事業環境は2025年3月期も続くものと想定し、2024年5月10日に計画値の修正を開示いたしました。2025年3月期の業績目標は、売上高40,000百万円、営業利益2,500百万円、営業利益率6.3%ととし、達成を目指し邁進します。
中期経営計画の最終年度にあたる2025年3月期は、「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」の基本方針に基づき、当社の3つの事業領域で「サステナブルな製品供給の推進」、「サプライチェーンの強化」、「重要市場への積極的な進出」の方針を掲げ引き続き進めてまいります。
サステナブルな製品供給では、ミシン・産業機器の研究開発・新製品投入、DX推進を積極的に実施してまいります。また、サプライチェーン強化では、重要市場(北米・欧州・大洋州・インド)におけるミシン販売の強化、及び柔軟な生産体制の確立に向けた開発・生産戦略の推進を図ってまいります。重要な市場への進出では、2024年4月、将来的な市場拡大と経済成長が見込まれるインドに産業機器販売子会社を設立した他、東南アジア等の有望な市場への進出も積極的に検討してまいります。
③家庭用機器事業
家庭用ミシンの市場としては、北米、欧州を重要市場と位置付けて、特に高付加価値製品を当社の強みとし、売上拡大を図っております。その他の市場におきましても、その市場ごとのニーズを的確につかみ、サービス・サポート体制の強化とブランドの浸透により普及に努めております。国内市場におきましても、時代にあわせた販売チャネルやSNSを活用した情報発信、展示会や講習会を通じてお客様のご要望に応え、トップシェアの確立を図ります。今後も手づくりの楽しさ、ミシンの魅力の訴求に力を入れて長期的な活動として取り組んでまいります。反面、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化などその他地政学リスクにより足元の経営環境は不透明感が続いております。当社グループは、北米や欧州、大洋州などの重要地域をはじめ、中南米、アジア・中東など世界各国で販売しておりますが、今後の外的環境から受ける影響も踏まえ、未開拓市場や有望市場の開拓を進める他、インドでの更なる地盤強化などリスク分散を図ってまいります。
④産業機器事業
産業機器事業は、卓上ロボット、サーボプレス、およびダイカスト製品を主たる事業商品として、ミシン事業に次ぐ第二の事業分野と位置付けております。卓上ロボットは、ねじ締めや塗布をはじめとする多様な用途に対応し、工場の様々な工程で活用されており、サーボプレスは、その動力がサーボモーターであることから、他のプレス機にはない高機能・高精度や環境優位性を実現し、多くの生産現場でご使用いただいております。また、ダイカスト製品は、自動車関連や精密機器、産業用ロボット向けを中心に採用されております。
市場規模は、用途の広がりにつれて拡大が期待できますが、技術力、開発力の強化を行い、特に有望市場や未開拓市場でのサービス・販売拠点の拡充を図り、また、パートナー企業とより一層協力関係を築き、新しい用途の可能性に繋がる提案型営業を進めてまいります。
産業機器の重要市場と位置付けている中国の経済減速による消極的な設備投資への影響から中国向け輸出の低下傾向が続いております。リスク低減及び未開拓市場の開拓を図るため、インドに販売拠点を設立いたしました。また、長期化するウクライナ情勢等の影響により一段と高騰するエネルギーや原材料の価格上昇分につきましては、機能・品質の向上を図りながら、製品の付加価値を高め、適正価格の見直しを行うなどして対応してまいります。
眼前には様々な懸念が飛び交うものの、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、主力市場である自動車産業の変化に対応していくなど、中長期視点では市場の拡大が見込まれます。既存分野に捉われず、医療やインフラなどの新規開拓に向けて積極的にアプローチをかけながら、産業機器事業の早期回復を図ってまいります。
⑤IT関連事業
当社は、社内のコンピュータシステム導入による電算処理のノウハウを活かし外部に提供できるよう、1970年にグループ会社である㈱蛇の目電算センター(現㈱ジャノメクレディア)を設立いたしました。それから50年以上、目まぐるしく変化し続けるIT業界において自らも進化しながら時代に対応し、お客様に確かな技術とサポートをお届けしてまいりました。その結果、当社の主要事業セグメントへと成長を遂げました。
現在のジャノメクレディアの強みは自社運用型サーバを基幹とするシステム構築・管理です。一方で企業ではクラウド型サーバの導入が進む中、DX化の急激な波が押し寄せるなど、IT企業に求められるスキルも変化及び多様化してきております。IT企業として更なる成長を目指すためには、時代に必要とされる技術を先読みし、これらの分野の経験を積む必要があります。現状を好機と捉え、まずは当社グループ内でDX化のためのシステム構築経験を蓄え、そのノウハウを強みとして外部へ向けて提供し、更なる収益増、及び事業安定化を図ります。
⑥研究開発・生産体制
当社は、国産初のミシンメーカーとして創業して以来、技術の改良を重ね、革新的機能の開発には常に先進的役割を果たしてまいりました。また、産業機器分野には、ミシンメーカーとして培った技術を応用・発展するなどして、高機能・高性能の商品開発を実現し、市場に送り出してまいりました。
「品質のジャノメ」として、世界のお客様に高い評価をいただいておりますが、今後はより高品質で耐久性に優れた商品を開発・生産し、信頼あるものづくりを行ってまいります。また、市場のニーズを的確に捉えた魅力ある商品をスピーディーにご提供してまいります。さらには、適地適産化や部品の社内加工化を念頭に、原価低減・生産性向上を推し進め、機動的な生産体制を構築するとともに、社会的要請が高まる環境に配慮した製品の開発や製造工程における環境負荷低減にも一層取り組んでまいります。
⑦働き方改革・ダイバーシティ&インクルージョン
当社では、働く全ての社員が社業の発展に向けて主体的・意欲的に取り組むことで、企業競争力や労働生産性を向上させ、それと同時に私生活も充実して過ごせるようにすることが目指すべき働き方であると考えております。当社は、業務での取り組み方や勤務態勢の見直し、時間外労働の縮小、年次有給休暇の積極的取得を一層進め、これらにより労働生産性を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ってまいります。
ダイバーシティ&インクルージョンでは、性別の区別にかかわらず外国人・中途採用者・障害者などの多様なバックグラウンドを持つ人財の積極的な登用を進めてまいります。そしてそれらの人財が働きがいを持って能力を発揮し、自らのアイデンティティが組織の成果達成に効果的に機能しているという実感を伴うよう、一体感を醸成してまいります。従来にない文化や価値観、考え方、新しい発想を尊重し、時に健全なコンフリクトも厭わずに取り入れていくことで、革新的なイノベーションの創出に繋げてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当社グループのサステナビリティ基本方針
当社グループは、「世界の人々の豊かで創造的な生活の向上を目指す」「常に価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献する」という企業理念と、同理念に基づく「企業価値創造プロセス」による事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、ESG経営の重要性を強く認識し、SDGsをはじめとした社会的課題の解決に向けて、中期経営計画「Reborn 2024」にも掲げる“サステナブル経営”を推進し、企業価値の向上を目指しております。(企業価値創造プロセス:https://www.janome.co.jp/company/process.html )
〈環境〉
世界の人々の豊かで創造的な生活環境を守るべく、当社グループの企業活動における環境負荷の低減を推し進めるとともに環境保全に努めます。
〈社会〉
製品・サービス等の創造的な価値提供により、様々な社会課題の解決に応え、企業価値を高めます。
〈人財〉
従業員一人ひとりが人権を尊重し、多様性を認め合い、かつ働きがいも感じられる組織作りを通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
当社グループは、経営の意思決定において、サステナビリティの観点を取り入れ、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上の両立を目指しております。SDGsなど社会的課題への取り組みに対しては、代表取締役社長を委員長に社内横断的メンバーで構成されたサステナビリティ推進委員会が当社グループの活動全般を統括いたします。サステナビリティ推進委員会は、定期的に開催し、サステナビリティに係る重要事項の審議および課題・目標ならびに施策の決定とその実践の評価・推進等を担います。また、執行部門の目線だけでなく、客観的視点から当社グループのサステナビリティに関する様々な重要テーマを審議していくため、議長には社外取締役を置きます。サステナビリティ推進委員会における審議内容は年2回以上取締役会に報告し、取締役会は、同報告を受けグループ全体の環境活動を監督するとともに、気候変動に係る重要な方針等を決定し、経営計画をはじめとする事業戦略に組み込むなど、グループ全体で取り組みます。

リスクを把握し事前に対応すること、またリスクが顕在化した場合、その影響を最小限にとどめ業務の早期復旧を図ることを目的として、リスク管理委員会を設置しています。同委員会は、取締役を委員長に部長職以上で構成され、グループリスク管理体制の整備や教育、情報の収集などを行うとともに、当社及びグループ各社のリスク評価を行い情報を共有し、その管理・低減に努めております。また、コンプライアンス委員会をはじめとする各種委員会を設置し、グループ全体のリスクを総合的にマネジメントする体制を構築しております。リスク管理体制については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ガバナンス」をご参照ください。リスク管理委員会は、各事業部門やグループ子会社からの報告またはヒアリングにより、年2回、グループ全体のリスク・機会の把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告します。サステナビリティに関連するリスク・機会は、サステナビリティ推進委員会においても共有され、重要度や具体的対応策について審議・決定し、その内容を取締役会に報告します。取締役会は、リスク管理委員会およびサステナビリティ推進委員会より、サステナビリティに関連するリスク管理の状況等について報告を受け、監督します。

2022年5月に策定した中期経営計画「Reborn 2024」では、「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」の基本方針の下に、当社の3つの事業領域で「サステナブルな製品供給の推進」、「サプライチェーンの強化」、「重要市場への積極的な進出」を掲げ、各事業での施策を着実に遂行しています。ミシンは、古くより家庭にある唯一の生産財と呼ばれ、手作りによるリメイクやリユースなど、産業機器製品と共に「環境にやさしい、環境に配慮した」製品自体がサステナブルでエコに貢献できるものと認識しております。企業としての社会的使命および社会的課題の解決に向けた積極的な取り組みを継続することで、自らの持続的成長の実現と企業価値向上を目指してまいります。
当社グループは社会の一員として、温室効果ガスの排出削減をはじめ、環境問題に積極的に取り組んでまいります。サステナビリティ推進委員会では、重要課題の一つとしてこの課題を大きく取り上げており、同委員会が中心となって、当社グループの気候変動に係るリスクと機会を評価し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示の充実に向けて取り組んでおります。
① ガバナンス
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ガバナンス」をご参照ください。
② リスク管理
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)リスク管理」をご参照ください。
③ 戦略
当社グループは、TCFD提言に基づき、2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定したシナリオ分析を実施し、気候変動が当社事業ならびにバリューチェーンにもたらすリスクと機会を特定し、財務影響等について検証いたしました。シナリオ分析の結果、4℃シナリオでは、脱炭素が推進されず、異常気象の激甚化をはじめ自然災害が増加し、それに伴う設備への被害やサプライチェーンへの影響など、物理的なリスクへの対応が重要であることを確認いたしました。一方で、2℃シナリオにおいては、炭素税やプラスチック規制をはじめとした政策・法規制によるコストの増加など、生産・調達の面で影響が大きいことが分かりました。また、脱炭素社会が進むことで、環境配慮製品への置き換え需要の増加や消費行動の変化による低炭素素材、省電力化、部材の共用化など環境にやさしい製品のニーズの高まりなどが機会であることを確認いたしました。

④指標及び目標
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、気候変動により様々な影響を受けることが予想されます。こうした影響を最小限に抑え事業を安定的に継続していくことはもとより、当社は社会を構成する一員として、環境問題の解決に向けて積極的に取り組むべき社会的使命があると考えております。こうした考えのもと、気候変動への取り組みの一歩として、当社事業活動等に伴うCO2排出量についてGHGプロトコルに基づき算定を行っております。対象範囲は、Scope1,2,3すべてにおいて当社及び連結子会社となります。今後は、算出した数値等も踏まえ、CO2排出量の具体的な削減目標やその達成に向けた施策などについて、サステナビリティ推進委員会を中心に協議・決定してまいります。当社グループは、より一層環境に配慮した事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現と会社の企業価値向上を図ってまいります。
CO2排出量の推移(3年間) 排出量(t-CO2)
※Scope3の算定範囲は本社のみ
(補足)2022年度における本社および連結子会社のScope3算定数値は153,910t-CO2
(6)人財育成及び社内環境整備に関する方針
当社グループは従業員を会社の最も貴重な財産ととらえ、働き方改革の推進によるワーク・ライフ・バランスの充実ならびにウェルビーイングの向上に努めるとともに、様々な研修制度を採り入れ、個々人のスキルアップのための人財育成にも注力して取り組んでおります。
当社グループにおける人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下の通りであります。
〈人財育成方針〉
当社グループは、企業が企業たり得るのは、人によって営まれているからであり、人の活力によって支えられ成長するものであるとして、人を最も大切な基幹であると位置づけております。会計上、人は人件費・労務費とされコストと認識されがちですが、人は基幹であることから資本と位置付けるべきと考えます。よって、業況の好不調下においても、採用及び教育は当然に、継続的かつ確実に実施されなければなりません。その意味からも当社グループでは、「人財」と表記しています。
1)採用
採用では、企業理念の理解と実践を通じて、永続的な企業価値向上のために、企業とともに成長できる人財を求めています。新卒定期採用を採用の基本とし、ここでの視点はポテンシャルであり、将来基幹要員としての成長の可能性を重点としております。高校卒業者から大学院課程修了者に亘り横断的に採用し、各学歴の修了教育課程に応じた修得教養・技能を生かした人財育成・人財登用を行い、より機能的・多面的な人財配置を目指しています。同様に中途採用についても重要視しており、それまでの就業経験による必要な技能・資格・経験等の発揮が期待でき、当社内に蓄積のない思考や発想が刺激となり、新たな可能性の広がりに繋がります。人財としての活躍には初期導入教育の多くを省略することが可能ですが、その能力の発揮をより早期に、より大きくするためには、組織との親和が重要となります。当社グループの業務は、個人の成績よりもチームとしての成果が重視されることが多く、多面的なコミュニケーションが求められており、企業風土に加え、この点がインクルージョン推進に寄与しています。
2)育成
当社グループでは、価値ある商品とサービスの提供を通じて社会に貢献するためには、「人」が最も大切な基幹であるとの認識のもと、管理職を含めた全ての従業員の教育に継続して取り組んでおります。人財教育は重要な経営課題の一つであり、経営トップ以下全面的に教育研修に関わるなど、会社全体で人財育成に取り組むという姿勢を堅持し、これにより経営理念の実現及び企業業績の向上を目指します。
基本方針は次の通りです。①社員個々が持つ、「成長への意欲」「変化の必要性」に対し、会社はこれに報いる機会を提供し、かつ支援する。社員一人ひとりは、主体的・意欲的に自己成長・自己変革を目指す。②成長度合いが上がるにつれて、徐々に「教わる」教育から「学ぶ」教育、さらに「考える」教育へと段階を進める。社員には、自らを客観的に見つめ、多様な観点から振り返り、気づき、そして自律的成長を図るよう促す。③仕事を通じて体験(経験)するという学習が人の成長に大きな成長をもたらすことから、会社は、社員が有益な体験を積む機会が得られるように努める。社員はこれを無為とすることなく、課題感を持ち、失敗に臆することなく取り組む。④教育課題に中には、緊急性・即効性を要するものもあるが、総じて人財教育は、促成栽培できるものではなく、またすべきでもない。人と人とがしっかりと対峙して、継続的に共に育ち(共育)続け、高め合うことが要諦である。
主たる教育領域としては、まずは①行動改革を促す長期的人財開発があり、これには、理念浸透及び行動憲章理解(会社全体の理念・指針の下で、自らの業務を行う目的・方向性についての意識を保持するための教育)、管理職教育、階層別教育、目的達成志向が含まれます。次に、②業務スキルや知識を習得する中期的訓練があり、これにはビジネスマナーや労務知識、法務知識、英会話等の継続的に必要な業務スキルや知識の習得が当たります。最後に、③緊急的課題解決を要する短期的教育があります。
一例として、階層別教育の一環として、入社3年目の従業員を対象に、これまでの仕事経験を振り返り、自律的キャリア開発の重要性を認識することで自己の強みや能力を明確にし、今後の方向性を決定することを目的とし、「入社3年目研修」を実施しております。その他、自己啓発を促進する取り組みとして、希望者にはオンライン英会話研修や通信教育講座、eラーニングなどを行っております。
当社の教育研修プログラムは当社ウェブサイト(https://www.janome.co.jp/recruit/careerpath/)をご参照ください。
〈社内環境整備方針〉
当社グループは、より良い労働環境の実現に向けて取り組んでおります。定期的な健康チェックやストレス管理を継続するなど、従業員の健康と安全を最優先課題とし、安全衛生委員会の活動を通し、安全対策や事故報告システムの整備を進めるなど、労働災害の予防と労働環境の改善に取り組みます。さらに社内環境の向上と従業員の働きやすさを目指し、業務執行に適した職場環境・安全と健康に備えた作業環境の整備に以下の取り組みを進めております。
1)働き方改革の推進
当社グループでは、高齢者や障害を持つ人を含む方々が正社員・非正規社員などの雇用形態で、男女を問わず働いています。一人ひとりの社員がそれぞれの持ち場で、社業の発展に向けて意欲的に働き、生産性の向上に努め、また社外の私生活も充実して過ごせていることが目指すべき働き方であると考えております。ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、出産・育児や介護などのライフイベントに合わせ、就業しやすい制度を設けております。
当社は、業務への取り組み方、業務プロセスの見直し、デジタルツールの導入を図ることで、時間外労働時間の縮小・年次有給休暇の消化率促進を一層進め、これにより労働生産性を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの充実を図っていきたいと考えております。長時間労働が常態化している訳ではありませんが、時間外労働防止の策として、毎週水曜日をノー残業デーとし、定時退社の帰宅を促すアナウンスを1日2回(始業時と終業時)実施しています。22時以降の労働禁止に加え、月間時間外労働時間を集計し、時間外労働の多い部署には警告することで長時間労働の防止に努めています。年次有給休暇の取得促進では、連続休暇の奨励やリフレッシュ休暇制度の導入、半日・1時間単位での有給休暇取得制度を設けるなど、従業員が安心してリフレッシュできる環境づくりに取り組んでいます。
2)女性活躍の推進
当社グループでは、ジェンダーの多様性を尊重し、特に女性活躍の促進については、女性従業員の能力が十分発揮されることが企業の発展に寄与すると考えており、育児休業制度の充実や昇給・昇格査定時の男女の機会均等は当然のこととしております。2020年に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」を策定し、「2025年までに、本社の女性管理職を20%にする」ことを掲げ、2024年3月に認定マーク「えるぼし」を取得しています。育児に関する制度等では、当社は、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」を2008年に取得しています。育児休業は、子供が満3歳に達する日までの間で取得でき、2回に分けての分割取得も可能としています。また、いわゆる産後パパ育休も制度化しており、この休業期間中14日間まで有給休暇扱いで取得できます。復職後も、子供が小学2年生の年度末まで短時間勤務が可能であり、また小学校就学前の子の看護休暇を1時間単位で最大5日間取得できます。
3)人権尊重
当社グループでは、人権問題への取り組みは企業の果たすべき社会的責任であるという自覚に立ち、社内組織「人権啓発推進委員会」を設置・運営し、差別のない人権を尊ぶ明るい職場を作り上げるために、人権啓発研修の積極的な推進を図り、従業員一人ひとりの人権意識の向上に取り組んでおります。その一環として、外部講師を招いての人権啓発研修会の開催や、「人権は自分たちの身近にあること」を気軽に学べる機会として人権啓発DVD上映会を開催しております。また、毎年12月の人権週間に合わせて、従業員やその家族から人権啓発標語を募集し、社内入選作品は外部団体に応募するなど、人権意識を広く浸透させる取り組みを行っております。
さらに、東京人権啓発企業連絡会等の人権問題に取り組む企業連に加盟し、人権尊重の企業文化としての定着を目指し、企業の立場から社会啓発に繋がる活動に参画しています。
当社グループは、2020年に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」を策定し、「2025年までに、本社の女性管理職を20%にする」ことを目標として掲げております。また、「社内向け女性活躍推進サイト」を立ち上げ、当社女性従業員の声として、管理職の立場や仕事と育児の両立について掲載するなど、女性従業員のキャリア形成を支援しております。
当社グループにおける、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、
[リスク管理体制]
リスクを把握し事前に対応すること、またリスクが顕在化した場合、その影響を最小限にとどめ業務の早期復旧を図ることを目的として、リスク管理委員会を設置しています。同委員会は、取締役を委員長に部長職以上で構成され、グループリスク管理体制の整備や教育、情報の収集などを行うとともに、当社及びグループ各社のリスク評価を行い情報を共有し、その管理・低減に努めております。また、コンプライアンス委員会をはじめとする各種委員会を設置し、グループ全体のリスクを総合的にマネジメントする体制を構築しております。
〈リスク管理体制図〉

[個別のリスク]
当社グループの経営成績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとして以下のとおり認識し、その発生の回避を図るとともに、発生した場合の影響を最小限にとどめるよう対処してまいります。
また、各事業における個別のリスク及び対応策は「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社グループの中長期的な経営戦略及び対処すべき課題 ③家庭用機器事業 ④産業機器事業」をご参照ください。その他の各事業共通のリスクは、「(各事業共通のリスク)①~⑮」の記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(各事業共通のリスク)
①為替変動がもたらす影響について
当社グループでは、家庭用機器事業及び産業機器事業における海外市場での積極的な営業展開により、連結売上高に占める海外売上高比率が70%前後で推移しております。そのため為替先物予約ならびに当社・子会社間のネッティング決済によって為替リスクを軽減しておりますが、海外売上高の大部分を占める取引を外貨建てで行っておりますので、為替変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②仕入れコストの上昇について
当社グループでは、日本、台湾、タイに生産拠点を構え、世界市場の需要動向に応じた効率的な生産を行っており、グローバルな視点からの部品の調達により、仕入れコストの安定ならびに低減を図っております。また、当社生産管理本部が国内、海外の生産拠点を統括管理し、グループ全体で、仕入れコストへの影響を最小限に抑える努力を続けておりますが、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック(樹脂)など原材料費の上昇により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③カントリーリスクについて
当社グループでは、生産及び販売活動を行っている各国におきまして、政治体制の変化、法規制の変更、政治・経済の変動、地震・台風等の自然災害、戦争・テロ等が発生し、事業活動の継続が困難になるなどの場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴い、ロシア向けの販売は停止していることに重ねて中東情勢の緊迫化の影響から中東全域及びその周辺国においても販売に影響があり、売上が減少するだけでなく、工場の稼働率低下や生産調整などにも支障をきたす可能性があります。このような状況が継続した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④品質管理について
当社グループの製品に関しては長年に亘る製造ノウハウを有しております。また、PL(製造物責任)委員会を設置し、製品に関する安全性等について毎月審議するとともに、当社品質保証部を中心に当社グループ全体の品質保証活動の推進をしており、当社及び国内外の関係会社において生産するミシン、産業機器などに対する品質監査と品質状況の把握に努めております。万一、重大な品質問題が発生した場合、リコール費用の発生やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤法規制等について
当社グループは業務の適正化、財務情報の信頼性を確保するとともに、関連法規・定款等を遵守する経営を行うべく、内部統制の充実に向けた管理体制を確立しております。しかしながら、関連法規や規制を遵守できない事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥市場環境について
営業活動を展開するうえで競合他社との競争は避けられませんが、そのような状況に応えるべく開発・製造・販売が一体となって商品・サービスの品質向上に努めております。しかしながら、競争が激化するなど、市場環境が大きく変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦個人情報の管理について
当社グループでは、「個人情報保護方針」及び「個人情報管理規定」等を策定し、個人情報管理委員会を設置するなど、個人情報保護法に基づく社内管理体制を確立しておりますが、万一、顧客情報をはじめ大量の個人情報が漏洩した場合は、当社グループの信用のみならず業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧金利変動について
当社グループの有利子負債には、金利変動の影響を受けるものがあり、金利上昇による金利負担の増加が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑨固定資産の減損について
当社グループが所有する有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等について減損処理が必要となった場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑩繰延税金資産について
当社グループは、繰延税金資産について適正な金額を計上しておりますが、将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合、あるいは制度面の変更等があった場合には繰延税金資産が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪退職給付債務について
当社グループは、退職給付債務について数理計算上で設定される割引率等の前提条件に基づき適正な金額を算定しておりますが、この前提条件が大きく変化した場合における退職給付債務の増加が、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑫借入金にかかる財務制限条項について
当社借入金の一部について、財務制限条項を付されているものがあり、抵触しますと金融機関から当該借入金の期限の利益喪失請求が行われる可能性があります。
⑬事業再編等について
当社グループは、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行うことがありますが、かかる事業再編が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑭自然災害について
当社グループの工場などにおいて、万一大きな自然災害などが発生した場合には、工場設備の被災や原材料調達などサプライチェーンの障害に伴う生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑮感染症等によるパンデミックについて
新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックによるロックダウンにより、取引先、サプライチェーンや物流の停滞・混乱により、売上の消失や製品供給の停滞など、当社グループの財政状態や経営に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの従業員への集団的感染の場合は、操業の一時的停止など事業活動への影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期におきましては、長期化するウクライナ紛争や中東地域の緊迫化により地政学リスクが高まりました。また、世界的なインフレのピークは過ぎたものの、金融引き締め政策が引き起こした不透明な金融市場、さらには中国の経済減速など、世界経済は不安定な状況が続いています。国内では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行後、経済社会活動が正常化するなか、外需の回復・円安による企業収益の改善や株価上昇、高い賃上げ率等により企業景況感が改善しました。一方で、物価高騰による個人消費の落ち込みや人手不足、機械設備の投資が伸び悩む等実体経済は低迷しており、両者のギャップが拡大しています。
このような環境の中、中期経営計画の2年目として、部品の内製化をはじめとした社内加工化の推進や新製品の投入を行い、積極的な事業運営に取り組んでまいりましたが、当社グループを取り巻く経営環境は依然として厳しい状況が続きました。
以上の結果、当社グループの当期の売上高は36,476百万円(前期比2,095百万円減)、営業利益は1,716百万円(前期比403百万円減)、経常利益は1,763百万円(前期比636百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,131百万円(前期は、393百万円の損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・家庭用機器事業
海外では、ミシンキルト愛好家をターゲットとした新製品の投入や展示会への出展など、販売拡大に努めました。地域別ではインドをはじめとしたアジア向けなど堅調さを示す地域がある一方、長引くロシア・ウクライナ情勢および中東地域の紛争や、世界的な物価高、金融引き締めが大きく影響し、消費者の購買意欲が戻らず、総じて厳しい状況が続きました。
国内では、代理店販売を中心とした販売体制の構築と、学校教育向けにサービス・支援の充実に取り組みました。中期経営計画の施策の一つに掲げる「メイド・イン・ジャパンプロジェクト」では、東京工場で生産する高機能高品質モデル「HORIZON Memory Craft 9480 QC PROFESSIONAL」を国内向けに発売いたしました。また、異業種とのコラボレーションを含む各種ワークショップや展示会の出展、SNSでの情報発信により新たな需要の創出に努めましたが、訪問販売事業撤退後の販売体制再編の立ち上がりに時間を要したこともあり、期待を上回る伸びには至りませんでした。
この結果、家庭用機器事業全体の売上高は27,706百万円(前期比2,059百万円減)、営業利益は1,372百万円(前期比522百万円減)となりました。
・産業機器事業
産業機器事業におきましては、部品調達難も期中には解消され、生産体制も正常化しています。また、卓上ロボットでは、作業用途を想定した治具やアタッチメントを豊富に取り揃えるなど、製品の付加価値を高め、市場のニーズに応える製品提供に取り組みました。原材料価格の高止まりを受け、価格転嫁を推し進め、利益率の改善に努めたほか、国内外に販売・サービス拠点を開設するなど、ネットワーク強化を図りました。しかしながら、中国の経済減速などの影響から生産現場の設備投資を控える動きが目立ち、ダイカスト製品を含め販売は苦戦が続きました。
この結果、産業機器事業全体の売上高は5,778百万円(前期比498百万円減)、営業損失は269百万円(前期は102百万円の営業損失)となりました。
・IT関連事業
ソフトウェア開発や情報処理サービス、システム運用管理の受託等を行うIT関連事業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透による需要増加等を背景に大型案件をはじめ安定した受注により売上げは順調に推移し、営業利益は過去最高となりました。また、品質管理の徹底による生産性の向上を図り、顧客に満足いただけるサービスの提供に努めました。
この結果、IT関連事業の売上高は2,782百万円(前期比462百万円増)、営業利益は487百万円(前期比149百万円増)となりました。
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象とした中期経営計画「Reborn 2024」において、「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」を経営方針に沿って、売上高40,000百万円、営業利益2,500百万円、営業利益率6.3%を目標(KPI)としております。
中期経営計画2年目にあたる2024年3月期は、家庭用機器事業において、国内外において高機能高品質モデルの発売や展示会への出展、さらに国内では代理店をメインとした販売体制の強化や学校教育向けのサービス支援の充実に力を入れ、事業拡大に取り組みました。産業機器事業においては、製品の付加価値を高めるアタッチメント等を取り揃え、市場ニーズに応える製品提供に取り組み、さらに重点市場となるインドを含めて、国内外に販売・サービス拠点を開設するなどネットワーク強化を図りました。
しかしながら、長期化するウクライナ紛争や中東地域の緊迫化による地政学リスクの高まりや、中国の経済減速などが不安定な世界経済を引き起こし、消費者の購買意欲の低下や、企業の設備投資に足踏みがかかり、厳しい状況が続きました。この結果、2024年3月期の実績は営業利益率4.7%、自己資本純利益率(ROE)3.4%となり、2023年3月期実績から減収減益となりました。この事業環境は2025年3月期も続くものと考えられたため、計画値の見直しを行い、2024年5月10日に開示いたしました。当社グループは、基本方針の下に各種施策を遂行し、業績目標の達成を目指し、積極的な事業拡大に努めていきます。
③ 財政状態
当社グループにおける財政状態の概況は次の通りであります。
当社グループの当連結会計年度末の総資産は、50,821百万円(前期比296百万円減)となりました。
資産の部では、流動資産が売掛金の増加、原材料及び貯蔵品の増加等により、26,570百万円(前期比859百万円増)となりました。固定資産は土地の減少、繰延税金資産の減少、有形及び無形固定資産の減価償却等により24,250百万円(前期比1,156百万円減)となりました。
負債の部では、短期借入金の減少、未払金の減少等により、15,825百万円(前期比1,928百万円減)となりました。
純資産の部(非支配株主持分を含む)は、利益剰余金の増加、為替換算調整勘定の増加、自己株式の取得等により、34,996百万円(前期比1,632百万円増)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から192百万円増加し、7,457百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,654百万円、減価償却費1,045百万円、事業再編による支出903百万円等により2,068百万円の資金の増加となりました。(前期は3,361百万円の資金の増加)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入980百万円、有形固定資産の取得による支出423百万円、関係会社株式の取得による支出331百万円等により、230百万円の資金の増加となりました。(前期は523百万円の資金の減少)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額の減少1,002百万円、自己株式の取得による支出700百万円、配当金の支払額482百万円等により2,432百万円の資金の減少となりました。(前期は2,464百万円の資金の減少)
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は製造価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
当社グループの生産は、主として見込み生産によっているため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債または損益の状況に影響を与えるような会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積もり特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
⑦ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは、安定した財務基盤を確保した上で、有利子負債を効果的に活用し、資本構成のバランスを図ることで、財務の健全性と資本効率の向上の両立を図ることを財務戦略としています。資本の健全性を維持するとともに、銀行借入を有効に利用することで資本コストの低減を進め、ROEの向上を目指します。
主な資金需要には、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用と売掛債権の回収までを繋ぐ運転資金や、生産能力・機能の維持・拡大を目的とする設備投資があります。また、新製品や新技術開発のための研究開発費も挙げられます。事業活動により得られた資金は、これらの運転資金の圧縮や生産性向上をもたらす設備投資、更には主力事業である家庭用機器事業と産業機器事業を市場競争力強化に導く研究開発に再投入いたします。
適正な手元現預金の水準につきましては、概ね月商の1.5ヶ月相当としております。これは、可能な限り資金活用の効率化を図ったものですが、当社は主力金融機関によるシンジケーション方式のコミットメントライン(総額100億円)を設定しており、緊急の資金需要が発生した場合も機動的な資金調達が可能なことから、流動性の確保については対処されております。現在、新規の資金調達は、短期資金の銀行融資のみとしておりますが、今後、これとは別に、大型の事業案件などのまとまった資金需要が発生した場合には、株式発行による調達や社債発行などの直接金融による市場からの長期資金調達も含め、資本構成や資本コストへの影響を踏まえて検討してまいります。
株主還元につきましては、2017年3月期決算期の再開以降実施しております配当を、安定的に継続していく方針です。中長期的な目標としては、自社株買いなども含め、総合的に検討しつつ、総還元性向30%を目安としております。なお、本質的な株主還元は、総資本を効率的かつ有効に活用することで事業の成長を図り、企業価値の向上、時価総額の増大を目指すことであると考えております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動については、顧客本位の価値ある商品とサービスを提供できるように、当社研究開発本部が中心となって、時代を先取りした家庭用ミシンと、ものづくりに必要とされる高機能を備えた産業用機器の開発で世界をリードしています。
電子部品を用いたマイコン制御技術によるミシン・産業用機器の応用開発、各種自動制御機構、金属素材の特殊鋳造加工技術・転写型技術など、あらゆるハイテク分野でその技術を蓄積し、次代を担う新技術・新工法の研究開発に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発活動をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(1) 家庭用機器事業
家庭用機器事業では、刺しゅう機能付きコンピュータミシンを始めとする家庭用ミシン、小型ロックミシン及びその関連商品(刺しゅう専用ソフト他)、スマホ・タブレットから操作する刺しゅう専用ミシンの入門機種などの研究開発を行っております。
また、海外生産子会社においても新たな商品開発拠点としての機能をもたせ、開発設計業務のスピードアップを図っています。
当連結会計年度の研究開発費の金額は、
(2) 産業機器事業
産業機器事業では、ミシンの生産技術を応用した業界初のサーボプレス(電動モータプレス機)、同じくミシンの研究開発過程でその技術を応用した卓上ロボット、そしてインライン型のサーボスカラーロボットや直交ロボットなどの研究開発を行っております。
その開発手法はサーボプレス、ロボット関連商品それぞれで要素技術をプラットフォーム化した開発を行っており、サーボプレス、ロボットともにそのシリーズ化において、商品開発のスピードアップを図っています。
当連結会計年度の研究開発費の金額は、
以上、その他事業の研究開発費