第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「信頼・創造・奉仕」の企業理念のもと、センサーを核としてシステム、サービスをお客さまに提供することにより社会生活・産業の発展に貢献し、お客さまや社会の信頼を得て永続的に発展できるよう努力しております。

事業環境が激しく変化するこの時代を勝ち抜くためには、自社の強みであるコア技術を進化させるのはもちろんのこと、絶えず自らを振り返り、リファインされた姿でお客さまと向き合うことが大切だと考えております。そのためには、開発・製造・販売をはじめとした全部門が、お客さまの課題を共有することが、欠くことのできない必須条件と考えております。そして、全社一丸となってその課題を解決し、新しい価値をお客さまへ提供することで社会に貢献してまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略や目標とする経営指標

当社は、2024年5月10日に2024年度から2026年度の3ヵ年を対象期間とした「中期経営計画2026」を策定いたしました。

 

-ミッション-  当社のミッション(使命)は、次のとおりです。

 人と地球にやさしい明日をつくる

 

-ビジョン-  当社の目指すべき姿としては次のとおりです。

 はかる技術とつなぐ技術でサステナブルな社会づくりに貢献する

 

-基本戦略- 「ビジョン」を実現するための基本戦略は以下の3点です。

・市場、事業領域の拡大

・基盤事業の競争力強化

・企業価値の向上

 

-経営目標-

                                         (単位:億円)

 

実績

中期経営計画2026

 

2023年度

2024年度

2025年度

2026年度

売上高

512

530

570

600

経常利益

42

43

45

50

当期純利益

31

31

33

37

ROE

7.7%

7.0%

7.5%

8.0%

 

 

-重点施策-  上記目標達成のため、以下のような重点施策を行ってまいります。

 ①市場、事業領域の拡大

 (1)計測分野における新しい価値の創出

  ・データ配信サービスでの付帯サービス連携拡大とAI技術の活用による計測データ価値の最大化

  ・脱炭素社会に向けた水素計測技術の進化

  ・ライフサイクルの視点から見た製品の環境負荷低減(リユース・リサイクル促進)

 (2)グローバル展開の加速

  ・顧客ニーズに基づく製品開発の実現による市場での優位性向上

  ・既存市場、既存顧客の深耕による垂直的な拡大

 

 ②基盤事業の競争力強化

 (1)収益力向上

  ・生産性を高めるため生産拠点リソースの最大限活用

  ・生産設備の自動化、省人化の推進によるコスト競争力の向上

 (2)DX推進による業務改革

  ・全社でのDX推進による業務改革の実現

 

 ③企業価値の向上

   (1)サステナビリティへの取組み推進

    ・環境課題への取組み強化

    ・人的資本経営の推進

   (2)ガバナンスの高度化

    ・コンプライアンスの徹底

    ・コーポレートガバナンスコード、上場維持基準等への持続的な対応

 

(3) 当社グループが対処すべき課題

原材料やエネルギーコストの上昇が見込まれていることから、自動化や省人化をさらに進め、お客様にご満足いただける品質、コストを目指します。また、LPWA通信技術(※)をはじめとしたIoT技術を活用することで、ガス・水道メーターなど計測器のスマート化を促進し、データ配信サービス「アイチクラウド」の拡大を目指します。

環境面においては、2022年4月に「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定し、事業及び製品・サービスが社会に及ぼす影響を分析し、「温室効果ガス排出の抑制」「製品のライフサイクルにおける環境負荷の低減」「サプライチェーン全体の連携」を推進しております。今後も、製品の開発・製造における環境への負荷低減を目指し、都市ガスメーターのリユースや水道メーターの小型軽量化などの取り組みを推進いたします。

海外では、パートナーとの協力関係をさらに深めることで販路を広げ、お客様のニーズに合致した製品の開発や生産体制の構築を進めてまいります。積極的な海外展開やスマート化への取り組み、DXやカーボンニュートラルといった課題を解決するためには、主導的な役割を果たせる人材の育成が重要になります。そこで、社内外の教育を通じて人材を育成すると同時に、キャリア人材の採用も実施いたします。環境や社会情勢が急激に変化する中で、私たちは、はかる技術、IoT技術を融合させ、社会をより良い方向へ変えていくことに貢献し、ステークホルダーの皆様との価値共有を図ってまいります。

 (※) LPWA通信技術:Low Power Wide Areaの略語であり、低消費電力で広域な無線通信を可能とする技術の総称。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

愛知時計電機及び当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社及び当社グループが判断したものであります。

 

愛知時計電機及び当社グループでは、「信頼・創造・奉仕」の企業理念のもと、社会の持続可能な発展と当社グループの新たな企業価値の創造を実現するため、サステナビリティ推進を経営の主軸と位置付けております。この基本の考え方を明文化した「サステナビリティ基本方針」に則り、気候変動問題への取り組みを進め、気候関連の情報開示を拡充しております。また、「中期経営計画2026」において、企業価値向上の柱として人的資本経営の推進を掲げ、従業員エンゲージメント向上、人材育成の強化、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進に取り組むことを明記しています。気候変動への対応及び人的資本経営を通じて企業価値の向上を図りながら、事業を通して持続可能な成長を実現し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

愛知時計電機では、気候変動への対応を主要な経営課題の一つであると認識しており、2023年5月にTCFDの最終提言への支持を表明しております。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、気候変動問題及び人的資本経営の重要性に鑑み、サステナビリティ課題を議論する担当委員会として、2023年5月にサステナビリティ委員会を立ち上げ、気候変動問題に対するリスク・機会を含む、基本方針や行動計画の立案、活動実績のレビューなどに関する検討・審議を行っております。当委員会では内部統制委員会を通じてリスク管理委員会との連携を図るとともに、重要な事案に関しては、経営会議等での審議を経て、取締役会(議長:代表取締役会長)に報告され、その対応状況について監視・監督が行われます。なお、当社においては、カーボンニュートラルの実現に向けて、代表取締役社長の承認のもと、2022年4月に、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定いたしました。今後は、カーボンニュートラルチャレンジの進捗状況の報告や、人的資本経営等のサステナビリティ課題への対応方針についてもサステナビリティ委員会において、議論、審議を進めてまいります。

サステナビリティ委員会を含む体制図の概要は、4「コーポレート・ガバナンスの状況等」(1)「コーポレート・ガバナンスの概要」②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由に記載しております。

 

(2)戦略

TCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析を実施し、主要事業の気候変動リスク・機会の特定と影響度における定性評価を行い対応策を検討しております。

 

想定シナリオ

1.5℃-2℃シナリオの世界

厳しい温暖化対策をとれば、産業革命時期比で年平均気温は 1.5℃未満の上昇

4℃シナリオの世界

現状を上回る温暖化対策をとらなければ、産業革命時期比で平均気温は3.2~5.4℃上昇

 

出典:環境省 https://www.env.go.jp/content/000118155.pdf

 

 

 シナリオ分析において想定した世界観

1.5℃-2℃の世界

4℃の世界

・2050年までにカーボンニュートラルを達成する政府の表明を踏まえた新たな規制への対応

・低炭素技術導入・既存設備を目的とした公的資金の提供

・低炭素化への移行が十分ではなく、火力発電が一定割合以上稼動している

・GHG排出抑制規制(炭素税)が敷かれ、多くの活動主体において、省エネルギー化への移行、低炭素設備への更新、製品価格やサービス価格への租税分転嫁が行われている

・新興産業国(途上国)による低炭素化への移行が遅れ、多くの国・地域でGHG排出が増大し、結果として、地球全体の温暖化進行に歯止めがかからない状態

・カーボンニュートラル達成に向けた低炭素製品への更新促進施策が展開され、それを活用して、省エネ商品の需要が拡大している

・台風や洪水等の風水害の頻度増加と規模の甚大化に起因する社会インフラへのダメージや、感染症流行地域の拡大など、深刻な影響が経常化

・カーボンニュートラル達成に向けた再生可能エネルギー普及・拡大に向けた施策が展開され、新たなカーボンフリーエネルギー供給のためのインフラ整備が活発化

 

 

 

 気候変動リスク・機会の事業への影響と対応策

リスク/

機会

想定されるリスク、機会

戦略(対応策)

移行

リスク

政府のカーボンニュートラル取り組み表明を受けての対応

短期

・エネルギー効率の高い生産設備へ更新していくことにより、エネルギー使用量の低減を図っていく

・本社、主幹工場(本社工場・岡崎工場)にカーボンフリーエネルギーを導入し、他の生産拠点への拡大を検討していく(2050年までに排出量ゼロ達成)

カーボンプライシング(炭素税)による負担増の懸念

短期

・設備更新、カーボンフリーエネルギー使用拡大等計画の前倒しより、自社工場で使用するエネルギーへの課税の影響を低減する

・サプライチェーンにおいて価格転嫁が行われた場合、計画に基づき、製品の改良設計による原価コストダウンを進める

再生可能エネルギー推進、カーボンプライシング等によるエネルギー価格、輸送コスト、原材料調達コスト高騰

短期

・エネルギー、生産効率の高い設備へ更新により、エネルギー使用量の低減、生産効率の向上を図る

・製品の設計改良による原価コストダウンを進めることによりリスク低減を目指す

物理

リスク

気候変動(台風、豪雨、洪水等)、地震、津波に伴う操業停止

長期

・毎年定期的なリスク評価の見直しを実施する

・止水板や排水経路の見直しによる物理的な被害低減策を検討する

・本社工場の津波被害に関するBCPを策定、シミュレーションによる訓練を継続する

気候変動、地震、津波に伴う工場損壊による化学物質流出

長期

・建屋や倉庫等の施設・保存設備等を適切に維持管理し、定期的な修繕や更新を行う

・流出時の取り扱いや連絡方法をまとめ、関係するスタッフ研修を行うことにより、有事の際の対応に備える

気候変動、地震、津波による部品、材料の調達懸念(サプライヤ被災)

長期

・材料、購買品の複数社購買化の推進、外注品の代替え生産可能な取引先の選定を行う

・製造資源情報の維持管理と活用により早期に通常生産状態へ復帰させる

機会

カーボンニュートラル達成意識の高まりからの環境配慮製品(既存製品)ニーズ増

・政府や自治体の政策の方向性を踏まえ、環境配慮製品のPRや提案営業の強化を図る

・カーボンニュートラルの取り組みの積極的、戦略的広報による好感度を向上させるとともに、社会・投資家へアピールする

・シナリオ分析により得られた戦略を中期経営計画や売上・利益計画、商品企画・開発計画に反映する

カーボンニュートラル達成に貢献する新たな製品ニーズ増

 

 

また、中期経営計画2026においてサステナビリティ戦略の柱として、人的資本経営の推進を掲げております。人的資本経営に関する指標とするため、全社員を対象としたエンゲージメント診断を実施しております。診断結果を踏まえて、各部門で組織課題を設定し、エンゲージメントの向上に向けた取り組みを進めています。

その他人的資本経営に関する主な取り組み内容は以下のとおりです。

 

<健康経営>

 産業医及び常駐看護師による相談受付の体制を整備するとともに、以下の取り組みを行っております。

・年中無休、24時間相談可能な医療専門家への健康相談ダイヤルサービス

・定期的な健康情報の全社向け発信

・法定以上の検査項目を定期健康診断時に実施

・定期健康診断時に希望者に対するオプション検査の実施(オプション検査項目10項目以上)

・メタボリックシンドローム対策及び糖尿病患者や予備軍へのフォロー実施

・健康支援アプリ「あいち健康プラス」の導入

・禁煙サポート事業として、ニコチンパッチを無償配布

・全社敷地内での全面禁煙化

・メンタルヘルス研修の実施及びストレスチェックの実施によるメンタルヘルス不調の未然防止対策

・家族、外部医療機関とも連携した復職支援プログラムの継続的な実施

・残業抑制対策として本社ビルにおいて20時一斉消灯の実施

なお、2020年に「健康宣言」を行い、企業として健康経営(R)に取り組むことを社内外に公表しております。

 

<女性活躍推進>

・育児休業からの復職支援として、復職面談により対象者全員へのフォローの実施

・バイアスのない育成登用を実現するマネジメント教育として、管理職向けの研修を実施

・女性社員向けのアンケート及びキャリア教育の実施

・育児支援制度等を紹介する冊子配布により、社内周知を徹底

・法定を上回る育児短時間勤務制度及び子の看護休暇(有給)制度の整備

・女性活躍推進に関する相談窓口の設置

・メンター制度の導入

また、当社は2021年5月に子育てサポート企業として「くるみん認定」を、2023年1月には女性活躍推進の取り組みが認められ、愛知県より「あいち女性輝きカンパニー」の認証を受けております。

 

 

<人材育成>

「信頼・創造・奉仕」の企業理念を実現できる人材育成方針として、育成人材像を次のとおり設定しました。

・失敗を恐れず課題に自ら積極的に取り組むことができる

・多様な人々の力を引き出し、協同して物事を成し遂げることができる

・高い倫理観、責任感を持ち、社会人として自らを律することができる

 

また、主な教育・研修制度は以下のとおりです。

・昇格研修

・主要役職の就任時研修

・入社1年後のフォロー研修を含む新入社員向け研修

・女性活躍に関する女性社員向け及び管理職向け研修

・全社員向けDX推進研修

・コンプライアンス推進者向け研修及び全社員向け教育

・職種別教育

なお、2023年度中に研修体系の見直しを行い、昇格前後での等級別研修、選択型ビジネス研修等を新たに実施することといたしました。今後も、研修機会及び内容の拡充をはかってまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループでは、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を通じて、関連部門が事業の継続への影響度や発生可能性、顕在化が想定される時間軸を踏まえて、気候変動関連リスクと機会の抽出、重要度・事業へのインパクト評価及びリスク対応計画の策定を行いました。これらはサステナビリティ委員会において正式に承認され、同委員会でリスク対応の進捗を毎年モニタリングするとともに、各対応施策の有効性検証及び見直しを行っています。

気候変動リスクは当社の事業活動に大きく影響するリスクと認識しており、リスクの管理状況は経営層にも報告しています。

また、少子高齢化による労働力の低下を人的資本経営におけるリスクと考えております。働き方改革及びDXの推進による業務の効率化に加え、長期的人材確保を目的として、多様な働き方に必要な環境や制度の整備を進めていきます。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく、「カーボンニュートラル チャレンジ2050」を掲げています。再生可能エネルギーの利用や製品の軽量化・小型化等を進めており、2023年度のCO2排出量は2013年度比で61.6%削減となり、国が「地球温暖化対策計画」で示す、産業部門の2030年度目標(38%削減)を大幅にクリアしています。

 

<カーボンニュートラル チャレンジ2050>

●ターゲット2050

 2050年までに脱炭素社会、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指します。

●行動指針

1.温室効果ガス排出の抑制

事業活動におけるエネルギー起源の温室効果ガス排出を抑制し、カーボンニュートラルの達成に寄与

2.製品のライフサイクルにおける環境負荷の低減

製品のライフサイクルにおける全ての段階において、環境負荷の低減

・省エネ性、環境安全性の高い製品設計を推進

・生産活動における環境負荷物質の排出抑制と省エネ、省資源

・生産性を高め、環境負荷低減につながるDXを積極的に導入

3.サプライチェーン全体の連携

脱炭素社会実現に向けて、サプライチェーン全体で連携を取り、温室効果ガス抑制の取り組みを推進

 

 

 

また、人的資本については、中期経営計画2026に掲げる目標値を含め、以下のとおりであります。

 

項目

現状

目標値等

目標達成に向けた取組状況

従業員エンゲージメントの向上

エンゲージメント診断結果

3.35/5

エンゲージメント診断結果0.1ポイント以上UP(3.45以上)

・各部門単位で結果の振り返りと課題設定を実施。改善に向けた取り組みを実践

人材育成の強化

総合職研修時間

年間12.1時間/人

総合職研修時間

10%増

13.3時間以上)

・研修体系を見直し、新任部門長研修を新たに実施。また、海外赴任者研修は内容を拡充して実施

・2024年度より選択型ビジネス研修を実施

DE&I

新卒採用(総合職)に占める女性割合

27.7

3カ年平均30%以上

・女性が少なかった職種にも女性社員を配置

・女性社員向けキャリア教育の継続的な実施

・管理職向けダイバーシティ推進研修の継続的な実施

DE&I

未取組

人権方針策定・人権デューディリジェンスの実施

・サステナビリティ委員会の中に人権分科会を設立し検討中

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの業績や財務状況などに影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクがこれらに限られるものではありません。

 

(1) 製品の欠陥

当社グループは、国際的な品質マネジメントシステムに従い各種の製品を製造しております。しかしながら、全ての製品に欠陥がないという保証はありません。製品の欠陥が発生した場合は、迅速な対応と抜本的な対策により損害額の極小化と信用失墜の防止に努めますが、欠陥の内容によってはリコールが避けられず、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 販売価格の低下

当社グループを取り巻く市場環境は厳しい状況が続いております。とりわけ販売価格については、競争の激化とお客さま対応も重なり、低下する場合があります。販売価格低下の影響はコストダウンで吸収すべく、トータルコストダウンの推進に全力を注いでまいりますが、価格動向によっては業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(3) 原材料価格の変動

当社グループの主要購入原材料としては、銅・アルミニウム・石油化学製品等があります。これらの原材料は国際市況の影響を受けやすく、予想を上回る原材料価格の高騰が起こった場合、生産性向上やコストダウンでは吸収しきれず、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(4) 海外での事業展開

当社グループは、アジア諸国に生産拠点を展開しておりますが、予期しない法令・税制・規制の変更、政治変動、戦争・テロなど不可避のリスクを内在しております。これらのリスクが発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(5) 有価証券の時価下落

当社グループは、当連結会計年度末現在において、時価のある有価証券を帳簿価額ベースで87億8千万円保有しており、総資産の14.3%を占めております。また、退職給付信託資産も、当連結会計年度末の時価ベースで40億5千万円保有しております。経済情勢の悪化などにより、株価が急激に下落した場合、多額の評価損失の発生や自己資本比率の低下、さらに退職給付費用の増加などにつながり、業績及び財政状態の悪化を招く可能性があります。

(6) 自然災害による被害

当社グループの主要な生産拠点や関連企業の多くが所在している愛知県は、南海トラフ地震の防災対策強化地域に指定されておりますように、地震による多大な被害の発生が予想されております。当社グループといたしましては、建物やその他の設備などハード面の地震対策を講ずる一方、地震対策マニュアルの作成や地震訓練の実施などソフト面での対応を進めるなど、被害を最小限にとどめるべく対策を講じております。しかしながら、想定外の大地震やそのほか台風など予想を超える自然災害によっては、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(7) 指定感染症等の感染拡大

当社グループの主要な拠点において新型コロナウイルス感染症等の大規模感染が生じた場合、当社グループの事業にどの程度影響を与えるのかを正確に予測することは困難ではありますが、企業活動が滞り、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(8) 人的資本の不足

当社グループの持続的成長には、人材の獲得、確保及び育成が重要な要素と考えており、等級や役割に応じた階層別教育に加えて、職種別の専門教育、キャリアステージに応じた各種教育プログラムを実施するほか、DXの推進や優秀な人材の確保に向けて中途採用を必要に応じて実施しています。また、多様な働き方に必要な環境や制度の整備も進めており、ワーク・ライフ・バランスを重視し、ライフステージに合わせた働き方の実現に向けて取り組んでいます。しかしながら、人材の確保及び育成が進まない場合には、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における国内経済は、社会経済活動の正常化が一段と進展したことから、持ち直しの動きが見られました。しかしながら、地政学リスクの高まりに加え、金融引き締めの継続による海外経済の鈍化、中国経済の先行き懸念、円安の進行に伴う物価上昇などにより、景気の先行きは依然として不透明な状況となっております。

当社グループを取り巻く環境は、新設住宅着工戸数は一進一退が続いているものの、公共投資及び民間設備投資は底堅く推移しており、前期に続いて改善の傾向がみられました。

 このような状況のもと、当社グループは、2021年度から2023年度までの3ヵ年を対象期間とした「中期経営計画2023」の基本戦略「市場の拡大、事業領域拡大へのチャレンジ」、「基盤事業の競争力と収益力向上」並びに「経営力の強化」に基づき、各重点施策を推進してまいりました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ50億8千万円増加し、613億9千9百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億7千9百万円減少し、172億3千9百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ57億6千万円増加し、441億5千9百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高512億2千5百万円(前年同期比2.1%増)、営業利益36億1千7百万円(同9.1%減)、経常利益42億6千5百万円(同8.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益31億7千4百万円(同8.2%減)となりました。

 

事業部門別の状況は次のとおりであります。

(計測器関連事業)

売上高は、前期比2.2%増511億7千7百万円となりました。各分野別の状況は次のとおりであります。

 

ガス関連機器

LPガス関連は家庭用プロパンガスメーターの需要減をIoT関連製品がカバーし増加、都市ガス関連も大都市圏を中心にスマートメーターへの切り替えが増加しました。その結果、ガス関連機器の売上高は前期比2.6%増243億9千7百万円となりました。

 

水道関連機器

官需市場において入札価格の一部に改善の兆しが見られたほか、民間市場においても電子部品不足の影響が徐々に緩和されたこともあり、国内を中心に増加となりました。その結果、水道関連機器の売上高は前期比3.6%増177億6百万円となりました。

 

民需センサー・システム

当社のコア技術を活かした電磁流量計や超音波流量計を中心とした液体・気体の各種センサーとシステムを、工場における省エネ・省資源管理や環境対策に向けて拡販を進めました。電子部品不足の影響が徐々に緩和されたこともあり、民需センサー・システムの売上高は前期比15.7%増30億7千2百万円となりました。

 

計 装

大口物件の確保により受注拡大を図るべく、営業体制の充実や提案力・施工能力の強化などを従前から推し進めてまいりました。当分野の市場環境に大きな変化はありませんが、前期増加の反動減に加え、当期の受注減により、計装の売上高は前期比8.7%減60億1百万円にとどまりました。

 

(その他)

特 機

売上高は、前期比2千万円減4千7百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて2億7千5百万円減少し、85億7千2百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 棚卸資産の増加、買掛金や法人税等の支払いによる支出などがあったものの、税金等調整前当期純利益と減価償却費合わせて53億6千7百万円の収入があったことなどにより、17億4千2百万円の収入(前期比1億3千3百万円の収入減)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資有価証券の売却による収入があったものの、有形固定資産の取得による支出などにより、10億9千2百万円の支出(前期比4億8百万円の支出増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

配当金の支払いやリース債務の返済などにより、11億7千6百万円の支出(前期比3億4千7百万円の支出増)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

対前年増減率(%)

計測器関連事業

51,195

 

2.3

 

その他

47

 

△29.8

 

合計

51,242

 

2.2

 

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

対前年増減率(%)

受注残高(百万円)

対前年増減率(%)

計測器関連事業

51,195

0.1

6,056

0.3

その他

47

△29.8

合計

51,242

0.0

6,056

0.3

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

対前年増減率(%)

計測器関連事業

51,177

 

2.2

 

その他

47

 

△29.8

 

合計

51,225

 

2.1

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

 (資産)

流動資産は、棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて3.5%増加し、380億8千8百万円となりました。

固定資産は、繰延税金資産が減少しましたが、株価上昇に伴い投資有価証券及び退職給付に係る資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて19.5%増加し、233億1千1百万円となりました。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて9.0%増加し、613億9千9百万円となりました。

(負債)

負債は、支払手形及び買掛金、電子記録債務並びに退職給付に係る負債が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて3.8%減少し、172億3千9百万円となりました。

(純資産)

純資産は、利益剰余金に加え、その他有価証券評価差額金や退職給付に係る調整累計額が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて15.0%増加し、441億5千9百万円となりました。

この結果、自己資本比率は71.9%となり、前連結会計年度末と比べて3.7ポイント増となりました。

 

b.経営成績の分析

当連結会計年度の業績は、増収・減益であり、売上高は過去最高となりました。

2024年3月期は、前年までの新型コロナウイルス感染症の影響も微小となり、国内市場は堅調に推移しました。海外市場は中国景気悪化の影響があったものの、全体では売上高は堅調な伸びを見せました。また、前期までの電子部品などの資材調達が滞ることで生産に支障をきたしていた面についても、当期においては、影響は限定的でありました。

売上高は、国内市場を中心に需要が堅調に推移したことから、前期比2.1%増収512億2千5百万円となりました。利益面につきましては、原材料や部品調達価格の上昇、一部製品の不具合対策にかかる費用計上などにより、利益率が低下し、営業利益は前期比9.1%減益36億1千7百万円、経常利益は為替差益など営業外収益が加わり、前期比8.4%減益42億6千5百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比8.2%減益31億7千4百万円となりました。

また、当事業年度までを対象期間とする「新中期経営計画2023」における計画値との比較では、前述のとおり、増収・減益となったものの、売上高は計画値「495億円」に対し「512億円」、経常利益は、計画値「39億円」に対して「42億円」、当期純利益は計画値「27億円」に対して「31億円」といずれも計画を達成しました。また、これらの結果、ROA(総資産利益率)では、計画値「5.1%」に対して「5.4%」と計画を上回る結果となりました。

 

                                          (単位:億円)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

計画

実績

計画

実績

計画

実績

売上高

467

464

477

501

495

512

経常利益

35

38

37

46

39

42

当期純利益

25

27

26

34

27

31

ROA

4.6%

5.1%

4.9%

6.4%

5.1%

5.4%

 

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、内部資金又は借入により資金調達することとしており、借入による資金調達に関しましては、市場の金利状況や資金使途等を勘案し短期借入金や固定金利の長期借入金で信頼性の高い銀行等金融機関から調達しております。

当連結会計年度末における現金及び預金の残高は108億3千1百万円、短期借入金の残高は8億2千4百万円、長期借入金の残高は3千4百万円となりました。

なお、長期化しているウクライナ情勢による地政学リスクなど、今後の業績への影響は予測困難ではありますが、手許資金を確保しつつ、IT/設備/開発の各計画に基づいた成長投資、業績に応じた利益還元と安定的な配当の継続を重視した株主還元など、これらを反映した年度資金計画に基づき、適切に管理しております。

なお、金融機関と総額40億円のコミットメントライン契約を締結しており、不測の事態に備え、資金の流動性を確保しております。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債の報告数値及び収益、費用の報告数値について影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は過去の実績や合理的であると判断する一定の前提に基づき、継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、当社のR&D本部を中心に計測器関連事業として、ガス関連機器、水道関連機器、民需センサー・システム、計装の各分野における市場ニーズに対応した商品の開発を行う商品開発活動と、これらの商品群を伸ばし、さらに新たな商品群を作り出していくために必要な基礎研究・開発を行う技術開発活動の2つの活動を行っております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は1,384百万円であります。

 

当社グループの研究開発活動は全て計測器関連事業に関するもので、主に次のとおりであります。

計測器関連事業において、ガス関連機器分野では、LPガス家庭用超音波ガスメーターの機能拡張、地方ガス事業者に向けた都市ガスメーター用クラウドの配信サービスの開発、管理用燃料ガス超音波流量計のラインナップ追加や中国市場向け燃料ガス用超音波流量計の機能拡張、脱炭素社会を見据えた水素メーターに関する技術確立等、水道関連機器分野では、電磁式水道メーターや電磁式積算熱量計の機能拡張等、民需センサー・システム分野では、昨今のDXも相まって引き合いが増加している小型電磁流量センサーや薬液用小型電磁流量センサーの機能向上等、計装分野では、市場拡大に向けたインテリジェントプリンターの後継機種の開発等、市場ニーズに応えた商品の開発を引き続き進めてまいりました。また、水道関連機器分野においては、LPWA通信機能を搭載したスマートメーターを用いた「自動検針」「見える化サービス」「見守り」等の検証を行う各種実証実験へ参画しております。

技術開発活動では、主要国立大学との産学協同を推進し、新たな計測技術の研究を継続実施いたしました。また、IoTで取得するデータを分析・活用する上で基盤技術となる組込AI技術の研究を継続実施いたしました。