第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

当社は2019年度に「10年後に日工グループがありたい姿(ビジョン)」を描いたうえで、長期(10年)の基本方針を策定しました。この方針の達成に向けて、3年ごとの中期経営計画を作成しています。

 

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①長期基本方針について

当社グループは2030年ビジョンの中で、メーカーとして技術力・製品力の日工ブランドを維持・強化しつつ、サービスビジネスを拡張させることで、経済価値として売上高600億円、営業利益60億円(営業利益率10.0%)を目指しています。また、社会・環境価値は4つのマテリアリティのうち環境価値に関わる「カーボンニュートラルの実現」と「資源循環型社会の確立」、社会価値に関わる「人財育成と働きがいの向上」を挙げています。経済価値と社会・環境価値を同時に引き上げることで、企業価値の向上を目指します。

2030年ビジョン達成へのプロセスを進める上で、2024年度迄は「内部投資フェーズ」と位置づけており、人的資本や知的資本への先行投資を積極化し、製造資本へも高水準の設備投資を続けることとします。具体的に、カーボンニュートラルへの対応が必要なAP事業領域の社員増強59名を始めとして、日工単体で145名の人員増(過去3年間は69名増)をはかります。研究開発費においても、AP事業領域の環境対応新製品、遠隔化・自動化サポートなどを始めとして、25億円強(同12億円弱)を予定しています。

2024年度以降は「内部投資フェーズ」から、先行投資が具現化する「ビジネス拡大フェーズ」を想定しています。国内の新サービス、システムが収益拡大に繋がるとみておりカーボンニュートラルにむけた環境対応新製品もお客様のニーズが増えてくると予想しています。海外AP事業もASEANへの展開が先行投資を終えて、本格的な収穫期を迎える見込みです。内部的にも運転支援センター開設や本社工場の組立集中による生産体制の見直しが寄与すると考えています。

 

②長期基本方針(ビジョン)達成のための重要な経営課題

日工グループは新たに策定した2030年ビジョンに伴い、持続的に企業価値創造するためのマテリアリティ(重要課題)を見直しました。経営理念に掲げる「広く社会から信頼され、お客様とともに発展する“ソリューションパートナー”となることを使命に自己変革する」ことを念頭にして、マテリアリティを解決することが、2030年ビジョンにある日工グループが目指す姿「高い技術に裏打ちされたプラント設備・環境機器製品のトップメーカー」「且つ、運用・保全サービスによる顧客の経営パートナー」につながります。今後はマテリアリティでKPI(重要業績評価指標)を設定して実効性を高めると同時に、取締役会でのモニタリングも必要と考えています。

 

日工グループのマテリアリティは、社会課題や業界環境の変化をもとにした2030年ビジョンの目指す姿から、ステークホルダーと日工グループが企業価値を上げるために重要度が高いと想定する、

1.「カーボンニュートラルの実現」

2.「資源循環型社会の確立」

3.「新たな顧客価値の創造」

4.「人材育成と働きがいの向上」

の4つです。2023年に位置づけを少し変更しました。位置づけ変更のポイントは、4.「人材育成と働きがいの向上」を2023年4月から開始された新人事制度の効果も含めて、マテリアリティマップの最も右側に移動し、日工グループの企業価値向上で重要度を高めたことです。「カーボンニュートラルの実現」は引き続き、最も重要なマテリアリティであり、この達成なくして日工グループの長期的な企業価値向上はありえません。また、顧客の経営パートナーになるには「新たな顧客価値の創造」はマテリアリティとして妥当であり、強みを持つメンテナンス・サービス事業でDXやAIなど使いながら、お客様の満足度向上に繋げます。

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③長期(10年)基本方針 5つのポイント

長期計画の前提となる当社を取り巻く事業環境につきましては、当社グループに関係の深い建設関連業界は今まで民間建設投資が大幅に増加するなど総じて堅調に推移してきました。今後も2021年度に始まりました防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを背景に好調に推移していくと思われます。しかし、長期的にはこうしたプロジェクトも一服が見込まれます。このため、当社では既存事業における収益基盤強化と成長余地が大きい海外売上の確立、カーボン・ニュートラルに向けた製品開発への取組、既存プラントにおけるメンテナンスのサブスクリプションなどの新しいビジネスモデルへの取組、さらには新規分野を伸ばすことが中期経営計画の達成に必要と考えております。

 

これらを踏まえて、長期経営計画での基本方針は以下となります。

 

 イ. 国内の収益基盤の強化は全部門のレベルアップにより製品力を向上させて、現状一桁の国内売上高営業利益率を10%にする。

 ロ. 海外売上の確立は実績を積み上げているタイ、インドネシアにおいて攻め方を変えて強化する。

 ハ. 新規事業の推進はM&Aだけでなく現在取り組んでいる新規事業に対して経営資源を投入、柱とすべく10年後に100億円の売上を創出する。

 ニ. 働き方改革の実践は当社製品でお客様の働き方改革に貢献できるような製品を展開し、当社においては労働生産性を高めて余力を作り、新規領域に投入する。

 ホ. 以上の結果として、10年後に時価総額500億円以上、ROEで10%以上を目指す。また配当性向を60%以上とし、株主還元も強化する。

 

④長期目標を達成するに当たっての経営者の認識

長期経営目標を達成するにあたり、当社の価値創造プロセス(=ビジネスモデル)との関連性を示しつつ、コアとなる4つの技術、すなわち混練、加熱、制御、搬送で参入障壁の高い独自技術(=競争力の源泉)をより強化させることが重要と考えております。これらは強固な財務基盤や顧客ニーズに応える研究・開発体制、ソリューションパートナーとしての顧客企業からの信頼、調達先とのパートナーシップ、代理店・協力工事店との協働に支えられています。

 

国内のアスファルトプラント(AP)関連事業は、顧客の8割が大手舗装会社で固定化しており、アスファルト合材製造量も4,000万トンをやや下回った水準が続くと考えられます。当面の国内需要は、1980年代に製造されたAPの更新需要に支えられた高原横這いの状況が続くと予想されますが、中長期的には成長余地が大きい海外事業の拡大が不可欠と見ています。国内の当社APシェアは8割程度(国内メーカーは他1社)ですが、リサイクル合材をメインに差別化したVPシリーズの拡販、カーボン・ニュートラルに向けた製品開発への取組、慢性的な人手不足を抱える顧客への遠隔化・自動化による工場運営のサポートサービス、などのビジネスモデル刷新を進めてまいります。海外は主力の中国に加えて、現地法人を設立、工場を新設したタイを起点としたASEANの顧客基盤の拡大を目指します。

 

国内のコンクリートプラント(BP)関連事業は、生コンクリートの工場数が2015年末の3,396箇所から2023年末には3,054箇所へ減少、中期的にも工場数の減少が予想されます。市場は成熟化しており、競合2社と静態シェアが拮抗した状況にあります。当社の強みである自社製操作盤による最適なプラントの保守運用、運営状況の把握による生コン工場のトータル管理やプラントの標準化を推進することが、シェアアップと収益確保に寄与するものと考えています。加えて、プラントの集約化に伴う遠隔地域での需要や災害復興など向けにモバイルBPの拡販をおこない、地場ゼネコンに向けても新しい需要の創出をおこないます。

 

また、世界的に気候変動リスクへの対応が叫ばれる中、日工グループの事業内容は社会や環境課題と深い関係があります。現在稼働する国内アスファルト合材工場全体から排出されるCO2は年間約130万トンであり、日本の年間CO2排出量10億トンの0.1%に相当します。日工グループは2050年にCO2排出量実質ゼロを目指すことを経営方針として明確に打ち出しており、プラント製造時に自社で排出するCO2だけではなく、販売先の日工製プラントが稼働時に排出するCO2を含めてカーボン・ニュートラルを達成できるよう顧客企業様と緊密に連携していきます。

 

最後に株主様からお預かりした資金を最大限活用して、その期待に応えるため、資本コストを全社で共有し、それを上回るリターンを上げることも重視いたします。この結果として、2029年度末には株式の時価総額500億円以上、ROE8%以上をKPIとして目指します。また成長投資と株主還元を同時に強化し、配当性向60%を継続致します。これらが中長期の企業価値向上に欠かせないと考えております。

 

< 日工のビジネスモデル >

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                                       日工グループ統合レポート2023

 

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(2)中期経営計画のセグメント別見通し

当連結会計年度よりはじまりました中期経営計画(2022~2024年度)の2年目は、売上高、利益項目ともに対前年比増となりましたが計画未達に終わりました。国内事業は回復基調となり製造請負関連事業、破砕機事業が大きく伸長したものの中国の景気落ち込みによる販売低下などにより未達となりました。

 

中期経営計画である2022年度から2024年度における各セグメントの財務目標は次のとおりです。

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※AP=アスファルトプラント、BP=バッチャープラント(コンクリートプラント)

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ①アスファルトプラント事業の収益性向上

 道路舗装業界は、昨年同様原材料費並びにエネルギーコストの高騰が続き、一部改善されたものの、価格転嫁の途上にあり、厳しい状況が続いております。そのような環境の中、当社はGX(グリーントランスフォーメーション)対応の中温化合材普及などに伴う対応設備の開発、市場投入を推進するとともに、引き続き、水素バーナ、バイオマス燃料バーナなど脱炭素製品の開発や市場投入を行い、収益性を改善してまいります。さらに、ユニット化した生産効率の高い新型アスファルトプラントの販売比率を上げることで、収益を改善してまいります。

 

 ②コンクリートプラント事業の国内シェア拡大

 生コン業界は、出荷量が減少する中で、電力や原材料、輸送コストなどのコストアップ分を経済産業省、国土交通省、生コン議員連盟の協力を得て適正に価格転嫁し物価資料の掲載価格などにも反映されたことにより好調に推移しており、今後も継続的な需要を見込むことができます。

 コンクリートプラントのトップメーカーとして更なるシェアを拡大するため、生コン工場におけるトータル管理、プラント支援センター、モバイルプラントの拡販、プレキャストの高い要求水準を満たす製品開発によって差別化を図ってまいります。

 また、引き続き経済産業省及びNEDO等による『グリーンイノベーション基金事業/CO₂を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト』にも積極的に参画してまいります。

 

 ③メンテナンス事業の安全対策

 当社では年間1000件以上のプラント工事に携わる中、安全対策を最優先事項としております。労働災害撲滅に向けプラント安全対策プロジェクトを立ち上げ、安全対策マニュアルや注意喚起動画の制作、見直しを進めております。

 その取り組みのなかで、昨年は作業管理アプリ「みまもり君」を開発しリスクアセスメントの強化を図りました。

 当社社員だけではなく、工事協力店やお客様にも安全衛生のサポート業務を展開しており、さらなる信頼性の向上に努めてまいります。


 

 ④海外市場の深耕

 タイにおけるリサイクル合材の普及が始まり、リサイクル装置の市況が活性化しております。日本のリサイクル技術は世界トップレベルであり、リサイクル合材普及に向けてタイ政府や民間会社と積極的に関わっております。新型リサイクル設備を市場に投入する事によりタイにおけるシェアを拡大し、タイでのトップメーカーを目指してまいります。

 

 ⑤新規発展領域の拡充

 国内砕石プラントの多くが老朽化による更新時期を迎え、扱いやすい自走式破砕機の需要が増加しております。この需要に応えるべくモバイルプラント事業部では、在庫管理体制や人員の強化、積極的な販促イベントを行い更なる事業規模拡大に取り組んだ結果、事業規模が2年で2倍に成長いたしました。2024年度も積極的な販促イベントによる更なるシェア拡大を目指してまいります。

 また、製造請負事業の強化のためM&Aを実施し、2022年3月に宇部興機株式会社を、2023年7月に株式会社松田機工を当社グループに迎えました。本社工場での製造請負事業は20年以上にわたる実績から信頼を積み重ね、2023年度は近年最高の受注を獲得いたしました。

 2024年度以降もグループ連携を強化し、高収益な事業として注力いたします。

 

 ⑥環境負荷低減への取り組み

 「脱炭素社会」の実現に向け、アスファルトプラント用燃料として、天然ガス、各種バイオマス燃料、アンモニア、水素などを利用できる燃焼装置、技術の開発を進めております。これらの低・脱炭素燃料については既存燃料と比べ、コスト、流通量の面で発展途上ではありますが、環境が整い次第これらの新技術を用いた製品を市場に投入することで、先行優位性を確保いたします。また、引き続き省エネルギー、省コストへの取組みにも注力し、長期・短期での環境負荷低減に寄与してまいります。

 一方、コンクリート業界においても低炭素化は大きな潮流となっております。当社としましては廃コンクリートへCO₂を吸着する技術を利用した各種プラント装置の開発を進めており、今後普及が見込まれ、社会的に大きなインパクトを与えることが期待されます。上記を一例として、引き続き環境負荷低減に関わる技術開発、製品開発に取り組んでまいります。

 

 ⑦成長投資と株主還元

 前中期経営計画の期間では、今後の成長に備えた基盤づくりとして、タイ工場建設、企業買収、生産性改善を目的とした投資を積極的に行ってまいりました。

 現在の中期経営計画期間中は人的資本の充実に向けた積極投資を行っております。

 具体的には中期経営計画の3年間で社員採用を積極的に行い145名の純増(日工単体)を予定しております。今年度においては新卒33名、中途36名の合計69名を採用いたしました。

 株主還元に関しましては、現在の中期経営計画期間中は配当性向60%以上を継続いたします。

 

 以上の対処すべき課題を踏まえた上で、目標とする経営指標の推移は以下となります。中期経営計画ではROEをKPIに設定し、2029年度にROE10%以上を目指します。

 

中期経営計画の数値計画

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※計画=中期経営計画

※2019年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行いました。2019年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり配当金を算出しております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

日工グループの事業はさまざまなステークホルダーとの信頼の上に成り立っています。ステークホルダーの皆様との継続的な対話を通じて、日工グループのビジョンである「世界を、強くやさしい街に。」の実現を目指します。

 

(1)サステナビリティ基本方針・委員会

①日工グループサステナビリティ基本方針

<社会に対する責任>

・持続可能な社会を実現するため、人権の保護を支持、尊重し企業倫理を高め、バリューチェーン全体で共有するとともに公正な事業活動を実践します。

・新しい働き方を推進し、多様性に富み、健康的で安全・安心かつ働きがいのある職場づくりを実践します。

・市場のリーダーとしての役割を認識し、提供する製品やサービス&ソリューションを通じて、豊かな未来とレジリエントな社会の実現に貢献します。

<地球環境に対する責任>

・脱炭素経済への移行を促進し、資源循環の効率化と汚染防止に努め、生物多様性の保全に寄与すべく、地球環境の未来に対する責任ある企業として行動します。

 

②サステナビリティ委員会

  当社グループのサステナビリティに関する議論を集約、コンプライアンス・リスク管理委員会と連携し、実行の質・スピードをさらに高めることを目的として、サステナビリティ委員会を2023年6月1日に設置しました。

  サステナビリティ委員会は委員長を取締役経営企画部長とし、委員は、コンプライアンス・リスク管理委員会委員長で財務・人事を統括する取締役副社長を含む経営層4名で構成、当社のサステナビリティに関する課題を議論し、取締役会に報告・提案を行ないます。事務局は委員長~委員の部署に関連する5名であり、原則として、年4回開催します。

  サステナビリティ委員会での役割、機能としては、以下を定めています。

<役割>

1.長期ビジョンの実現に向けたマテリアリティの特定

2.マテリアリティのリスク・機会の特定、進捗管理方向(指標と目標)の明示

3.長期ビジョンからバックキャストした中期経営計画の叩き台づくり

4.ステークホルダーへの価値提供に向けた体制整備

5.コンプライアンス・リスク委員会との連携

<機能>

1.サステナビリティ基本方針の策定

2.人権方針の策定、人権DDの実施

3.腐敗防止(企業倫理)方針の策定

4.方針に基づいた啓発活動の推進

5.環境方針(脱炭素・資源循環・水資源・生物多様性保全)の策定

6.サプライチェーンへの適用(調達ガイドラインの策定)

7.人的資本の拡充(エンゲージメント・多様性・ライフサポート・健康と安全衛生)

8.ステークホルダーとの対話

 

サステナビリティ推進体制

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③マテリアリティの抽出・特定

  日工グループは2030年ビジョンに伴い、持続的に企業価値創造するためのマテリアリティを2022年に見直しました。経営理念に掲げる「広く社会から信頼され、お客様とともに発展する“ソリューションパートナー”となることを使命に自己変革する」ことを念頭にして、マテリアリティを解決することが、2030年ビジョンにある日工グループが目指す姿「高い技術に裏打ちされたプラント設備・環境機器製品のトップメーカー」「且つ、運用・保全サービスにより顧客の経営パートナー」につながります。今後は以下の4つのマテリアリティでKPI(最重要業績評価指標)を設定して、実効性を高めると同時に、取締役会でのモニタリングも強化します。

・カーボンニュートラルの実現

・資源循環型社会の確立

・新たな顧客価値の創造

・人材育成と働きがいの向上

 

(2)気候変動への取り組み

  温室効果ガス(GHG)の排出による気候変動が社会・経済に与える影響は膨大で、日工グループとして取り組むべき最重要のサステナビリティ課題だと認識しています。パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向け、日工グループは2030年度の中間目標として、自らの事業活動に加えてお客様の日工製プラントから排出される二酸化炭素(Co2)排出量の50%削減(2021年度実績比)の実現を目指しています。

  2050年のカーボンニュートラルに向けて、CO2排出量の低減を実現する関連技術の開発と製品・サービスの提供を推進していきます。2021年10月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動問題に関して株主・投資家をはじめとするステークホルダーとの円滑なコミュニケーションのため、TCFDフレームワークに沿った情報開示を充実させていきます。

 

①ガバナンス

各部門から選抜されたメンバーで構成されたローカーボンタスクフォース(LCTF)が、カーボンニュートラルの実現を推進しています。毎月開催されるLCTF会議では、データ検証やエビデンスに基づいてカーボンニュートラル実現に向けた課題を横断的に検討・議論しています。

LCTFで作成された企画案を社内役員会で討議し、目標値の設定とともに目標達成に向けた具体的な戦略を策定します。必要に応じて取締役が委員長を務めるサステナビリティ委員会や財務委員会とも連携を行っています。社内役員会で策定された投資計画、製品開発計画およびリスク対応策は取締役会で審議を通してその妥当性と進捗状況を監督します。

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②戦略

ア.気候変動に対するシナリオ分析

 当社グループでは、将来における気温上昇のシナリオとして、2℃と4℃の温度帯を想定し、2030年

および2050年におけるシナリオ分析を実施しています。

 

(参照シナリオ)

 IEA World Energy Outlook 2020・STEPS(現行政策シナリオ)・SDS(持続可能な開発シナリオ)

 IPCC AR5・RCP2.6(2℃シナリオ)・RCP8.5(4℃シナリオ)

 

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イ.低・脱炭素関連製品開発計画及び市場投入計画の策定

 当社グループでは、シナリオ分析、スコープ1,2&3の詳細分析に基づき脱・低炭素関連製品の開発計画、市場への投入計画を策定し、製品開発を行っています。計画に沿って順次市場へ投入してまいります。

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③リスク管理

 カーボンニュートラルに関する企画立案については、LCTFがこれを行い、全社的な気候変動への対応を推進しています。

 コンプライアンス・リスク管理委員会は、気候変動に関する自社への影響を評価・識別し、その影響を管理しています。さらに社内役員会と緊密に連携しつつ、気候変動リスクの影響を全社リスクに統合する役割をになっています。

 社内役員会は、気候変動の影響と対応について討議を行い、評価します。さらに気候リスクの最小化に向けた対応方針、重点施策・目標・行動計画を策定いたします。社内役員会で討議された内容は、取締役会に定期的に報告されます。

 取締役会は、社内役員会およびコンプライアンス・リスク管理委員会から気候変動に関する行動計画およびリスク評価について定期的に報告を受け審議を行って監督機能を果たします。

 

④指標と目標

 当社グループは、自社の事業活動および販売する製品からのCO2排出量を2030年に50%削減、2050年には実質ゼロとすることを目指し、CO2排出量低減に寄与する製品開発を進めるとともに徹底した省エネ活動や再生可能エネルギーの積極的な利活用を推進しています。

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  (3)人的資本

 「世界を、強くやさしい街に。」という当社のビジョン実現に向け、日工の高い技術力を活かして、新たな市場・製品・サービスの開発に取り組む人材として以下の3つの人材像を定義しています。

・将来に向けて改革する人材

・失敗を恐れず挑戦する人材

・多様な仲間を尊重し協働する人材

これらをふまえ、人材育成方針及び社内環境整備方針を定め、社内外に発信しています。

①戦略

<人材育成方針>

 「世界を、強くやさしい街に。」という当社のビジョン実現に向けては、日工の高い技術力を活かして、新たな市場・製品・サービスの開発に取り組む人材が必要です。なかでも、従業員一人ひとりが自律的に改革・挑戦を行うこと、社内外の多様な仲間を尊重し協働することは、従業員自身のさらなる成長や当社のビジョン実現に向けて重要な要素であると考えています。そのためにも、自律的な人材の育成、社内外の多様な仲間とのつながりを生み出す仕組みづくり、新たな改革・挑戦に向けた協働を支援する仕組みづくりに取り組みます。

 上記方針を踏まえた具体的な取り組みとして「ビジョン浸透に向けた対話機会の創出」や「研修体系の整備」、「組織としての人材育成のあり方の定着・浸透」などに取り組みます。

 

<社内環境整備方針>

 当社のビジョン実現に向けた人材育成に取り組む前提として、社内外の多様な仲間を尊重すること、仲間から尊重されていると感じること、またその結果としてイキイキと安心して協働ができる環境を整えることが重要であると考えています。そのためにも、従業員一人ひとりが多様な仲間の価値観を尊重する風土づくりや、従業員自身及び家族や仲間の安全とウェルビーイングの実感・働きがいの向上に向けて取り組みます。

 上記方針を踏まえた具体的な取り組みとして「多様な人材の受け入れ促進」や「挑戦や協働を評価する仕組みの整備」、「労働時間の適正化に向けた業務改善」などに取り組みます。

②指標及び目標

 人材育成方針及び社内環境整備方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績については、以下の通りです。(注)1

区分

指標

実績

(2023.4~2024.3)

目標

(特に記載がない場合は2030年度

人材育成方針

女性管理職比率

1.0%

7.0%

研修時間

1名あたり15.4時間

(延べ9697.5時間)

1名あたり20時間

研修費用

1名あたり75,779

(延べ47,816千円)

1名あたり100,000

社内環境整備方針

育児休業取得率

女性:100%

男性:42.9%

女性:100%

男性:50%(2025年)

女性比率

女性比率17.7%

役員を含む

女性比率22.5%

ウェルビーイング

アンケートスコア

全項目平均5.9pt

全項目平均8.0pt

離職率

離職率:4.8%

入社後1年間離職率:6.3%

入社後3年間離職率:10.3%

離職率:3.0%

入社後1年間離職率:3.0%

入社後3年間離職率:7.0%

労働災害発生件数

休業災害:1件

不休災害:4件

休業災害:0件

不休災害:3件以下

労働災害による死亡者数

0

ゼロ災

健康・労働安全に関する研修

・中央安全研修会

・中央衛生研修会

・健康教室

同左(継続的に開催)

(注)連結子会社はいずれも従業員数が 100 名以下のため、重要性の観点から記載を省略しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

これらのリスクを認識した上で、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載している方法などにより、事態の発生の回避及び発生した場合の対応に努めます。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1)国内アスファルトプラント関連事業に関するリスク

 <競合相手との差別化が十分にできないリスク>

 国内のアスファルトプラント市場は当社と他1社でほぼ100%の市場シェアを占める寡占市場です。当社の市場シェアは70%以上あり、トップメーカーとしての位置づけは永年にわたって変わっておりません。当社としては、圧倒的なトップメーカーの地位を将来にわたって維持するために、カーボンニュートラル・CO2削減に貢献できる新製品開発や、メンテナンス事業のビジネスモデル変革を進めること、遠隔化・自動化サポートで差別化を図っております。しかしながら、十分な製品開発ができない場合や、他社が当社と遜色のないきめ細かなメンテナンス体制を整備してきた場合、顧客に対して差別化の訴求力が弱まる可能性があります。

 

 <海外メーカーの日本市場への参入リスク>

 近年には、国内アスファルトプラント市場への海外メーカーの参入はありませんが、中国・韓国メーカーは徐々に技術力をつけてきており、日本市場参入を計画している可能性があります。十分なメンテナンス体制がない中での海外メーカーの日本市場参入は容易ではありませんが、母国市場での成長が止まった暁には日本市場参入を本格的に検討してくる可能性があります。海外メーカーが国内市場に参入してきた場合にはメーカー間での競争が激化する可能性があります。

 

 <道路舗装業界再編による市場縮小のリスク>

 大手道路舗装会社の組織再編が活発になっており、今後、道路舗装業界の再編に発展する可能性があります。業界再編により、アスファルトプラント工場の集約化が進めば市場が縮小する可能性があります。

 

 (2)環境負荷低減への取り組みに当社の技術革新が間に合わないことに関するリスク

 アスファルトプラントでは主に化石燃料をエネルギー源として使用しています。アスファルト合材製造のため、国内で年間約130万トンのCO2が排出されていると推計され、市場シェアからそのうち7割は当社製プラントからの排出と考えられます。当社としてはお客様である道路会社と緊密に連携しながら、アスファルトプラントの燃料効率向上や熱源の転換(カーボンニュートラル燃料、エレクトロヒート等)、合材の搬送方法の革新による輸送効率向上、アスファルトプラントで排出されたCO2の回収、生コンへの吸着技術など、より早い時期での社会実装を目指して取り組んでいますが、今後、世界の環境負荷低減の動きが想定を上回る速さで進んだ場合に、当社の技術革新が間に合わない可能性があります。

 

 (3)海外事業に関するリスク

 <中国のアスファルトプラント・ハイエンド市場が競争激化するリスク>

 中国のアスファルトプラント市場で当社はハイエンド機種のカテゴリーですでに一定のポジションを確保し、毎年、安定的に売上・利益を計上しております。これまでのところ、ハイエンド市場の競合相手はヨーロッパ企業2社と中国のトップ企業1、2社であり、激しい競争環境にはありません。しかしながら最近、中国企業が全般的に技術力をつけており、将来的にはハイエンド市場においても多くの中国メーカーが参入し、激しい競争が繰り広げられる可能性があります。

 

 <ASEAN市場で計画どおりの販売計画が達成できないリスク>

 当社の成長戦略として、2020年度、タイに製造現法を設立し、10億円を超える工場への投資をしておりますが、タイ及びASEAN諸国で毎年、安定的に当社のアスファルトプラントが販売できることがこの投資の前提となっております。しかしながら計画に反して当社のプラントがタイを始めとするASEAN諸国の顧客の支持を十分に得られず、販売台数が伸びない場合や工場の生産性が改善せず赤字が続く場合には工場の減損リスクが生じます。

 

 (4)公共投資予算削減に関するリスク

 過去、自民党政権から民主党政権に代わった際に「コンクリートから人へ」がスローガンになり、その当時、当社の多くの顧客は、設備投資を抑制する動きに出ました。その結果、当社の売上は大きく減少しました。将来、公共投資抑制策をかかげる政権に代わった場合、前回の民主党政権交代時と同様、顧客に投資抑制の動きが出る可能性があります。

 

 (5)現場作業従事者の人材確保に関するリスク

 当社の事業モデルでは、プラント製造から現場での据付工事、更にはメンテナンスサービス提供を自社で行っております。メンテナンスサービスにおいては、IoTの活用等によるメンテナンス業務のシステム化を通じた省人化を進めていますが、近年、メンテナンスサービス要員、工事施工要員などの現場作業従事者の採用が、人手不足の中で難しくなっております。これら現場作業従事者の採用が必要人数に満たない場合、競争優位性のある当社事業モデルを維持することが難しくなる可能性があります。

 

 (6)材料等の価格上昇に関するリスク

    依然として物価上昇、インフレ懸念は高い状況が続いており、今後もこの状況が続く場合は、当社が購入する材料等の価格も上昇し収益が悪化する可能性があります。また、物価上昇が当社顧客に与える影響により、当社顧客が設備投資計画を延期、見合わせる可能性があり、当社の売上高が減少する可能性があります。

 

 (7)地域紛争の増加、激化に関するリスク

    ロシアのウクライナ侵攻、中東紛争等地域紛争の増加、激化影響による原油等の価格上昇や世界経済の変調によって、当社顧客の設備投資計画等が影響を受ける可能性があります。

 

 (8)為替相場変動に関するリスク

    当社のモバイルプラント事業における主力商品はヨーロッパから輸入し、販売しております。輸入する場合は、事前の外貨購入や為替予約をすることにより為替変動に関するリスクをヘッジしておりますが、ヘッジができていない場合には為替相場の変動リスクを受ける可能性があり、円安が進む場合は当社販売商品の価格競争力が低下する可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の世界の経済は、長引くロシアによるウクライナ侵攻に加え中東での紛争が始まる等地政学的なリスクの高まりを見せるなか、米国経済は金融引締め姿勢が続くにも関わらず底堅く推移する一方で、欧州経済は景気減速が一段と進行し、中国経済においては不動産事業を中心とした不況が鮮明となりました。日本経済においては、人手不足と円安が物価高に拍車をかけ国民経済に大きな影響を与える状況となっています。

 当社では、2022年3月に日工グループの2030年のありたい姿を示した2030年ビジョン「高い技術力に裏打ちされたプラント設備・環境製品のトップメーカー且つ、運用・保全サービスによる顧客の経営パートナー」と2022年度から始まる「3ヶ年新中期経営計画(23/3~25/3)」を発表いたしました。新中計は2030年ビジョンの実現に向けた体制・プロセス・制度を構築する内部投資フェーズと位置付け、新製品・新サービスの市場投入と目標達成に必要な組織能力の強化に向けて積極投資を行う方針です。数値目標は、最終年度に連結売上高500億円、営業利益30億円(営業利益率6.0%)としていきます。そして、2025~2030年の期間を脱炭素に向けた環境対応製品の本格展開やASEAN地域へのエリア拡大、自動化・遠隔化などの技術導入効果の顕在化、生産プロセスの見直しなどが奏功、利益率の改善を伴うビジネス拡大フェーズと位置付けました。2030年ビジョンでは、連結売上高600億円、営業利益60億円(営業利益率10%)を目指すとともに、長期(10年)基本方針で掲げた時価総額500億円を目指します。

 当期の経営成績ですが、国内では当社の主要顧客である道路舗装会社の業績の改善にともなう設備投資需要の回復の影響を受け、アスファルトプラント関連事業の売上が増加いたしました。コンクリートプラント関連事業においては、生コン業界で原材料価格等上昇の販売価格への転嫁がすすんでいることから、引続き設備投資意欲が強く堅調に推移いたしました。環境及び搬送関連事業では原材料価格等上昇の販売価格への反映が進み売上が増加いたしました。破砕機関連事業はウクライナ復興支援案件等により売上が増加、製造請負関連事業もM&Aにより7月にグループ入りした株式会社松田機工が寄与し、売上が増加しております。その他の事業も原材料価格等上昇の販売価格への反映や市況の回復をうけ、売上が増加しております。

海外においては、中国では中国経済の不況の影響を受けたことにより減収減益、赤字となりました。また、タイにおきましては依然として赤字ではありますが、受注、販売は大きく増加しており、改善基調となっています。

 こうした事業活動の結果として当連結会計年度は、連結売上高440億97百万円(前期比11.2%増)、連結営業利益19億68百万円(前期比91.5%増)、連結経常利益は21億44百万円(前期比70.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益13億12百万円(前期比28.6%増)となり、3ヶ年の中期経営計画の連結売上高480億円、連結営業利益28億円に対して、売上高、利益面とも計画にとどかない結果となりました。

 

 部門別の概況は以下のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「破砕機関連事業」、「製造請負関連事業」について、量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。

<アスファルトプラント関連事業>

 アスファルトプラント関連事業の売上高は前期比3.4%増の179億38百万円となりました。受注残高も、前期比12.2%増の89億75百万円となっています。

<コンクリートプラント関連事業>

 コンクリートプラント関連事業の売上高は前期比7.2%増の119億7百万円となりました。受注残高も増加し、前期比40.1%増の85億55百万円となっています。

<環境及び搬送関連事業>

 環境及び搬送関連事業の売上高は前期比14.6%増の33億9百万円となりました。受注残高は大幅に増加し、前期比176.5%増の7億78百万円となっています。

<破砕機関連事業>

 破砕機関連事業の売上高は前期比44.3%増の31億98百万円となりました。受注残高も、前期比27.0%増の9億62百万円となっています。

<製造請負関連事業>

 製造請負関連事業の売上高は前期比38.6%増の30億72百万円となりました。受注残高も、前期比30.3%増の23億75百万円となっています。

<その他事業>

 その他事業の売上高は前期比20.0%増の46億70百万円となりました。受注残高は、前期比4.8%増の7億22百万円となっています。

 

 

   ②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は155億4百万円(前期102億70百万円)となり、前連結会計年度に比べ52億33百万円増加いたしました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、43億32百万円の収入となりました。(前期16億44百万円の支出)

これは、税金等調整前当期純利益が22億31百万円、減価償却費が9億98百万円、契約負債の増加による収入が8億44百万円、仕入債務の増加による収入が5億27百万円あったものの、棚卸資産の増加による支出が2億81百万円、売上債権の増加による支出が17億70百万円、法人税等の支払額が3億9百万円あったことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、23億33百万円の支出となりました。(前期12億26百万円の支出)

 これは、投資有価証券の売却及び償還による収入が1億11百万円あったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が3億32百万円、有形及び無形固定資産の取得による支出が23億21百万円あったことによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、31億85百万円の収入となりました。(前期7億10百万円の収入)

 これは、短期借入れによる収入が20億81百万円、長期借入れによる収入が37億40百万円あったものの、長期借入金の返済による支出14億88百万円、配当金の支払額が11億49百万円あったことによります。

 

 ③生産、受注及び販売の実績

 イ.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

アスファルトプラント関連事業(百万円)

17,654

99.11

コンクリートプラント関連事業(百万円)

11,386

98.96

環境及び搬送関連事業(百万円)

3,843

128.22

破砕機関連事業(百万円)

1,149

108.12

製造請負関連事業(百万円)

2,719

122.70

報告セグメント計(百万円)

36,752

103.25

その他(百万円)

3,518

99.37

合計(百万円)

40,270

102.90

 (注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

 

 ロ.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

前年同期比(%)

受注残高

前年同期比(%)

アスファルトプラント関連事業(百万円)

18,948

107.57

8,975

112.21

コンクリートプラント関連事業(百万円)

14,323

124.97

8,555

140.12

環境及び搬送関連事業(百万円)

3,812

149.16

778

276.51

破砕機関連事業(百万円)

3,403

145.27

962

127.01

製造請負関連事業(百万円)

3,625

142.17

2,375

130.35

報告セグメント計(百万円)

44,114

120.77

21,648

127.59

その他(百万円)

4,634

107.18

722

104.82

合計(百万円)

48,749

119.33

22,371

126.70

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 ハ.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

アスファルトプラント関連事業(百万円)

17,938

103.44

コンクリートプラント関連事業(百万円)

11,907

107.17

環境及び搬送関連事業(百万円)

3,309

114.58

破砕機関連事業(百万円)

3,198

144.28

製造請負関連事業(百万円)

3,072

138.65

報告セグメント計(百万円)

39,427

110.21

その他(百万円)

4,670

120.02

合計(百万円)

44,097

111.17

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績

  2022年度実績、2023年度計画・実績値は次のとおりであります。

0102010_012.png
  ※AP=アスファルトプラント、BP=バッチャープラント(コンクリートプラント)

 

(売上高)

 売上高は、前連結会計年度に比べ11.2%増の440億97百万円となりました。

 国内のアスファルトプラント関連事業につきましては、アスファルト合材の値上げが徐々に浸透し道路舗装会社の収益が改善、プラント製品、メンテナンスの売上高がそれぞれ前年比85.8%の増加、3.8%の増加となりました。海外においては、タイはプロモーション効果により売上が前年比増加しましたが、中国事業が中国経済の冷え込みにより、売上高は前年比半減となりました。海外事業は前年比43.7%減となりました。この結果、当事業の売上高は、前年比3.4%増の179億38百万円となり計画値の180億円を若干下回りました。

 コンクリートプラント関連事業につきましては、ユーザーの強い設備投資需要が継続しています。プラント製品は竣工時期の遅れ等の為前年比0.8%の減少となりましたが、メンテナンスの売上高は21.0%の増加となりました。この結果、当事業の売上高は前年比7.1%増の119億7百万円となりましたが、計画値である122億円を下回りました。

 環境及び搬送関連事業につきましては、環境製品が大阪万博、IRの土壌改良向け物件が継続し前年並み、搬送事業売上高は前年より18.9%の増加となりました。この結果、当事業の売上高は前年比14.6%増加の33億9百万円となり、計画値である31億円を上回りました。

 破砕機関連事業につきましては、国内での事業拡大に加えODAによるウクライナ案件も増加し、売上高が44.2%増の31億98百万円となりました。当事業の売上高計画値である35億50百万円は、一部案件の遅れにより下回りました。

 製造請負関連事業につきましては、2023年7月にグループ入りした株式会社松田機工も業績に寄与し、売上高は38.6%増の30億72百万円となり、計画値である30億円を上回りました。

 その他の事業につきましては、水門・防水板事業等の売上が増加、売上高は20.0%増の46億70百万円となり、計画値の41億50百万円を上回りました。

 

(売上原価)

 売上原価は、前連結会計年度と比べ26億44百万円増加し319億92百万円となりました。鋼材をはじめとした原材料費の上昇はありましたが、外注費の圧縮と生産性の改善を行い、売上原価率は1.4ptの減少となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ8億47百万円増加し101億36百万円となりました。これは主として、給料及び手当、旅費交通費、事務費のそれぞれ増加によるものであります。

 

(営業利益)

 連結営業利益は、前期比91.5%増の19億68百万円となりました。これは主として、売上高の増加、売上原価率の低下によるものであります。売上高営業利益率は、前期比1.9pt増加し4.5%となりました。これは主に、販管比率の低下によるものであります。

 

(営業外収益、営業外費用)

 営業外収益は、前連結会計年度と比べ86百万円増加し4億16百万円となりました。これは主として、受取配当金の増加、保険解約返戻金の計上によるものであります。営業外費用は、前連結会計年度と比べ1億37百万円増加し2億40百万円となりました。これは主として、損害賠償金の増加によるものであります。

 

(特別利益、特別損失)

 特別利益は、前連結会計年度と比べ4億77百万円減少し87百万円となりました。これは投資有価証券売却益が減少したことによるものです。特別損失は、前連結会計年度と比べ1億27百万円減少し0百万円となりました。これは主として、減損損失の減少によるものであります。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の結果、前連結会計年度に比べ2億92百万円増加し13億12百万円となりました。

 

(ROE)

 当社はROEをKPIとしております。当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度に比べ0.9pt増加し4.1%となり、計画値の3.8%を上回りました。対処すべき課題にも挙げていますが、アスファルトプラントにおける高い国内シェアを活かしたメンテナンスサービス事業での新たな商品開発、事後的メンテナンスから予防保全的メンテナンスへのビジネスモデルの変革、カーボンニュートラル・CO2削減に貢献できる新製品開発、機能向上と現地工程短縮化に寄与するユニット製品の拡販などによる収益性向上と製造原価低減に取組んでまいります。

 

ロ.財政状態

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産は、410億33百万円となり、前連結会計年度末に比較して73億10百万円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金の52億33百万円、売掛金の23億30百万円、仕掛品の8億99百万円のそれぞれ増加、受取手形の5億84百万円、商品及び製品の1億62百万円のそれぞれ減少によるものです。

 

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産は、211億96百万円となり、前連結会計年度末と比較して27億92百万円増加いたしました。主な要因は、投資有価証券の17億60百万円、建設仮勘定の8億42百万円、土地の3億25百万円のそれぞれ増加、繰延税金資産の4億31百万円の減少によるものです。

 

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債は、217億43百万円となり、前連結会計年度末に比較して64億5百万円増加いたしました。主な要因は、短期借入金の28億53百万円、未払法人税等の7億円、契約負債の9億12百万円のそれぞれ増加、受注損失引当金の89百万円の減少によるものです。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債は、73億99百万円となり、前連結会計年度末に比較して22億14百万円増加いたしました。主な要因は、長期借入金の21億1百万円の増加によるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、330億86百万円となり、前連結会計年度末に比較して14億82百万円増加いたしました。主な要因は、その他有価証券評価差額金の11億57百万円の増加、資本剰余金の1億47百万円の減少等であります。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の60.7%から53.1%になりました。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度に比べ52億33百万円増加し、155億4百万円となりました。なお、詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 当社の主な資金需要は、原材料等の購入費用等の製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用のための運転資金及び設備投資資金であります。資本の財源は、主として営業活動により得られた資金と借入れにより得られた資金であります。

 今後の財務戦略としましては、政策投資株の売却と、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善を推進してまいります。政策投資株の売却につきましては、事業上の影響がない取引先の株式は原則すべて売却の方針で進めてまいります。CCCの改善は、プラントの受注時に前受金を原則受領することと、アスファルトプラントの標準化等による棚卸資産の縮減により進めてまいります。

 将来にむけて人的資本投資を含む成長投資は積極的に進めますが、株主還元についても2023年3月期からの中期経営計画期間において引続き配当性向を60%以上とし、成長投資と株主還元の強化を共に進めてまいります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の数値、報告期間における収益・費用の数値に与える要因は色々ありますが、継続した会計基準で評価を行っております。見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて、合理的と考えられる基準に基づき作成しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、ソリューションパートナーとしてお客様の期待に応える研究開発及び製品開発を研究開発部門が中核となって関連部門と連携協力して推進しております。

 当連結会計年度に係る研究開発費は603百万円であります。

(1)アスファルトプラント関連事業

 アスファルトプラント関連事業では、市場規模の拡大が見込まれる海外ASEAN地区にローカライズさせた専用プラント(ACEシリーズ)を開発、販売を開始しました。現地生産を前提として部品や使用材料を一から見直し、深掘りした市場調査から現地ニーズに合わせた仕様で設計された本格的な世界戦略機種となります。一方国内市場に向けて、従来機種と比べ安全性、メンテナンス性、作業性を大きく向上させたミドルクラス(VPⅣ)の開発を行いました。

 また道路舗装業界における脱炭素化を推進するため、中温化合材(通常より30℃低い加熱温度で製造できる環境配慮型合材)製造に欠かせないアスファルトフォームド装置を、より使いやすくメンテナンス性に優れたタイプに改良し、開発、販売しており、既に先期までに74台を納入し高いシェア率を確立しております。さらに前年度より引き続き水素、アンモニア、バイオマス燃料などの脱炭素燃料用の燃焼装置の開発を行い、各種脱炭素燃料に対応できる技術を獲得しています。

当事業に係る研究開発費は264百万円であります。

 

(2)コンクリートプラント関連事業

 コンクリートプラント関連事業では、工製減速機を搭載したHYPERミキサ―を販売開始しております。161期には10台、通算17台を納入済みで、デザイン性・メンテナンス性・省スペースが特徴で、今後は小型ミキサへも展開を目論んでいます。また、環境改善製品としてエコタンカル製造設備とエコCSパウダー製造設備を納入しました。コンクリートスラッジを再活用し、ボイラの排ガスに含まれるCO2を吸着させて合成タンカルを製造する設備です。この設備によってCO2固定化と産業廃棄物の削減が同時に可能となります。独自機構として溶出槽と反応槽を縦型に配置した省スペースタイプです。

当事業に係る研究開発費は205百万円であります。

 

(3)環境及び搬送関連事業、破砕機関連事業、製造請負事業、その他事業

 環境及び搬送関連事業では、お客様より建設残土や泥土の処理に関するご相談を多き頂き、市場が広がっている建設発生泥土を再利用するためのプラント設備を多数販売しました。今期は流動化処理プラントや改良土を船積みするための大型ベルコン、小型の残土を改良する設備や、業界最大級の能力(160t/h)を誇るコンクリートガラ・クラッシングプラントを納入しました。

 また、建設発生土の有効利用、現場内利用のための自走式土質改良機(MOBIX-ECO)を開発、販売開始いたしました。二軸連続式ミキサ搭載で、さまざまな原料土を効率よく高品質な土質改良を実現できます。また電気と油圧のハイブリッド駆動で、低燃費も実現しております。土質改良機で適切な処理を行った建設発生土は「土質改良土」として生まれ変わることで再利用の幅が広がり、循環型社会の実現につながる事で注目されており、複数台の納入実績ができました。

 当事業に係る研究開発費は133百万円であります。