OKIグループ(当社及び連結子会社)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてOKIグループが判断したものであります。
OKIはミッションクリティカルなモノづくり・コトづくりを通じて社会課題を解決する「社会の大丈夫をつくっていく。」企業であります。社会インフラを止めず、その維持に貢献する企業として、「安心・便利な社会インフラ」「働きがいと生産性向上」「地球環境の保全」の3つの貢献分野で社会課題の解決につながる価値を提供していくことが、創業150年を迎える2031年に向けたOKIのありたい姿であります。このありたい姿の実現に向け、2023年度から「中期経営計画2025」(中計2025)をスタートさせました。
中計2025では「成長へ舵を切り、縮小均衡から脱却する」を基本方針としておりますが、初年度である2023年度は売上高4,219億円、前連結会計年度比528億円の増収、営業利益187億円、同163億円の増益と前年対比大幅な増収増益となり、着実な1歩を踏み出すことができました。
中計2年目となる2024年度は、カルチャー改革とスタイルチェンジを加速させ、成長への舵切りを更に進めてまいります。
・成長事業
パブリックソリューションは消防、防災、道路、特機を中心に案件を順調に確保。EMSは生産能力強化を梃に市場の回復に確実に対応。
・安定化事業
エンタープライズソリューションは引き続き大型案件を確実に実施しつつ将来に向けた筋肉質な経営体質への転換を推進。コンポーネントプロダクツはOEM拡大と開発・生産体制の合理化を推進。
・将来事業創出
Crystal Film Bonding(CFB)の事業拡大戦略を推進。海外事業リスタートとしてグローバルのR&D拠点での活動推進。
また、ROIC視点に基づく投資実行と運転資本マネジメントの強化を通して、財務の健全性と資本効率改善に努めることで、持続的な企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。
OKIグループ(当社及び連結子会社)のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてOKIグループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
OKIグループは企業理念に基づき、「社会の大丈夫をつくっていく。」企業としてサステナビリティの取り組みを推進しております。商品・サービスを通して社会課題・環境課題の解決に貢献するとともに、自社拠点におけるCO2排出など環境負荷の低減、多様な人材が前向きに挑戦できる環境づくりなどを進め、これらの活動を支えるガバナンスを整備してまいります。
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ガバナンス |
● OKIグループは、持続可能な成長を目的に、特定したマテリアリティに基づく取り組みを推進するため、2023年4月に専任組織であるサステナビリティ推進部を設立するとともに、サステナビリティ推進部担当役員を設置いたしました。 ● サステナビリティに関する重要事項については、経営会議において決定しております。上述の専任組織は、マテリアリティを具体化した環境・社会・ガバナンスの取り組み状況や課題について、経営会議への報告を行っております。 ● 取締役会に対しては、事業に大きな影響を及ぼす事項が報告されます。2023年度は、「OKI環境ビジョン2030/2050」の2050年度目標の改定について審議、決定されました。 |
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リスク管理 |
● OKIグループのサステナビリティ全般のリスクは、サステナビリティ推進部が中心となり、外部動向や社内状況などを踏まえ、関連部門への共有や連携を図り管理しています。 ● サステナビリティリスクは、その性質により、全社的な経営判断が必要なリスク、事業に関連し認識・特定すべきリスク、法令のように各社各部門に共通に存在しグループ横断的に管理すべき共通リスクに大別し、それぞれに有効な方法で管理されています。 リスク内容の概要については、 |
(2)気候変動への対応
OKIグループは、気候変動が深刻化するなか、社会課題の解決を通してより良い地球環境を次世代に継承することをミッションと捉え、環境に関連する経営上のリスクや機会を中長期の視点で考慮し、環境経営を推進しております。
<気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD※1)に沿った開示情報>
OKIは経済と環境の好循環の観点から2019年5月にTCFDに賛同し、気候関連のリスクや機会とそれらへの対応策を組織的に管理するとともに、その内容の情報開示の充実を図っております。
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ガバナンス |
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戦略 |
以下のとおり、シナリオ分析によるリスクと機会の特定及び対応を実施しております。 ● 国際機関が発行する気候変動に関するレポートなどを踏まえて、物理的/移行リスクを特定し、気温上昇が4℃になった場合の気候変動の激甚化、気温上昇を1.5℃に抑えるための社会変動を念頭にシナリオ分析を行っております。 ● シナリオ分析においては、後述のとおり気候変動、資源循環、汚染の予防の観点も網羅し、これらのシナリオ下におけるリスクと機会を特定、対応策を設定して、今後発生しうる事象への柔軟な対応力の向上を図っております。 |
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リスク管理 |
OKIグループ全体のリスク管理については ● 年に1回以上、気候変動に関連する最近の事象を抽出し、これらがもたらすリスクや機会の影響度/頻度/発生時期などを評価し重要度を特定しております。 ● 上記のリスクと機会に対する対応策を検討し、環境経営のグループ全体の計画を策定し、各組織や各拠点の環境実行計画に落とし込んでおります。これらの計画の実行状況は内部監査などによりチェックされ、必要に応じて是正されます。このプロセスはOKIグループ全体の環境マネジメントシステムにおいて統合的に管理されております。 |
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指標及び目標 |
<使用する指標> ● 自社拠点を含むサプライチェーンにおける事業活動に伴うCO2排出量(スコープ1+2、スコープ3-カテゴリー1とカテゴリー11) ● 環境貢献売上高 <目標> ● CO2排出量 2030年度目標(SBT※2認定済み): 自社拠点のCO2排出量※3 42%削減(2020年度比) 調達先と製品使用時のCO2排出量※4 25%削減(2020年度比) 2050年度目標: 自社拠点を含むバリューチェーン全体のCO2排出量実質ゼロ(SBT※2準拠) 特に自社拠点のCO2排出量実質ゼロ、新製品の消費電力実質ゼロ としております。 ● 環境貢献売上高2030年度目標:対グループ全体売上高比率 50%としております。 <実績> ● 当社Webサイトをご参照ください。2023年度の各指標に関する実績は、統合報告書「OKIレポート」発行時(2024年10月予定)に掲載いたします。 ・Webサイト 環境への取り組み:https://www.oki.com/jp/eco/ |
※1 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):気候変動に対する企業の対応について、投資家への情報開示の必要性を勧告する提言
※2 SBT(Science Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、温室効果ガス排出削減目標基準
※3 スコープ1(燃料由来)+スコープ2(電力由来)
※4 2020年度スコープ3実績の67%以上を占める、スコープ3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)とカテゴリー11(販売した製品の使用)の合計
<シナリオ分析を踏まえた戦略>
気温上昇を1.5℃に抑えるための社会の変化が進むと、炭素税などの法制、技術進化、市場ニーズの変化などが生じ、OKIグループの脱炭素ソリューションへのニーズが高まると分析しております。気温上昇が3〜4℃となった場合、気候変動の影響による激甚災害に伴う物理的リスクが高まり、OKIグループの自社拠点を含むサプライチェーンに重大な影響が生じる可能性があります。また、激甚災害の予防策としての防災情報システムなどのニーズが高まると考えられます。
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シナリオ分析 |
戦略・施策 |
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カテゴリー |
想定する事象 |
リスク/機会 |
将来の財務への影響 |
時間軸 ※3 |
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気候変動 1.5℃シナリオ※1 <移行リスク> |
脱炭素ニーズの一層の高まり、広範囲化 |
リスク |
● ハードウェア製品に対する省エネ基準や顧客要求未達による販売機会の喪失 |
短期 |
● SBT1.5℃に準拠したCO2排出量削減目標の設定と以下の施策の推進 ● 商品:ハードウェア製品の省電力化 ・ 規制強化を先取りした開発目標の設定 ・ 研究開発や技術開発の強化及び商品化の加速 ● 拠点:CO2排出ゼロ(ZEBなど)に向けての下記の施策を推進 ・ 省エネの徹底:拠点の生産設備、ファシリティの高効率化、全業務の効率化 ・ 再エネの導入:自拠点での再エネ設備設置、再エネ由来の電力契約など |
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● 製造プロセスに対するお客様からの再生可能エネルギー使用の要請への対応、化石燃料賦課金(炭素税)の影響 |
中期 |
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● 事業拠点における脱炭素強化に伴うコストアップ |
短期 |
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機会 |
● OKIグループの以下の商品に対する需要の拡大 ・ 脱炭素/省力化ソリューション ・ 再生可能エネルギー普及を支援する技術 ・ ハードウェア製品に対する再生可能エネルギー駆動型製品 |
短期 |
● 商品:環境貢献商品の拡大と創出 ・ 環境貢献売上高の見える化と訴求 ・ IoTやAIを活用した脱炭素/省力化ソリューションの創出 例:交通分野、建設/インフラ分野、金融分野、流通分野、海洋分野、ビジネスコミュニケーション分野、ビルエネルギー管理分野 ・ 業務受託によるお客様業務の効率化支援 例:ATMのフルアウトサービス ・ 再生可能エネルギー駆動型ハードウェア製品の拡大 例:ゼロエナジーゲートウェイ ・ 研究開発の強化(AI軽量化など) |
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シナリオ分析 |
戦略・施策 |
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カテゴリー |
想定する事象 |
リスク/機会 |
将来の財務への影響 |
時間軸 ※3 |
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気候変動 4℃シナリオ※2 <物理的リスク> |
異常気象の増加と激甚化(風水害の増加/極端な熱波・寒波/落雷増加) |
リスク |
● 拠点・調達先:工場や調達先の被災による、事業所資産の損失/稼働停止/サプライチェーンの寸断 |
短期 |
● 拠点:気候変動BCP/BCMの強化 ・ 止水板の設置、設備の嵩上げ ・ 製造設備の落雷時停止装置 ・ 検査装置における空調設備の冗長化 ● 調達先:調達BCPの強化 ・ 調達先に対する気候変動リスクの調査の強化 |
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● 拠点:気温上昇に伴う装置故障 |
短期 |
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機会 |
● 商品:OKIグループの防災・減災高度化対応商品への需要の拡大(防災分野、海洋分野) |
中期 |
● 商品:防災情報システムなどの事業展開強化 |
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化学物質による 汚染の予防 |
対象法令物質の拡大、複雑化 |
リスク |
● 商品:含有化学物質の基準違反 ● 拠点:施設老朽化に伴う汚染 |
短期 |
● 商品:グループ全体の運用共通化の強化 ● 拠点:施設の点検・交換基準の見直し |
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機会 |
● 商品:化学物質管理の効率化需要の拡大(製造分野) |
短期 |
● 商品:製品含有化学物質の分析サービス、調査システムの展開 |
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資源循環 |
海洋プラスチック、マイクロプラスチック対応の法令強化 |
リスク |
● 拠点:廃棄物処理費用の高騰、処分業者による引き取り拒否 ● 商品:資源の枯渇リスク、部材の供給不足リスク |
中期 |
● 拠点:廃棄物削減 ・ プラスチック梱包材のリユース ・ 金属素材からの採取率向上による廃棄率削減 ● 商品:広域認定処理制度を活用した使用済み製品からの部品回収とリユース |
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機会 |
● 商品:省資源製品やリサイクルサービスの需要拡大 |
中期 |
● 商品:お客様設備の長寿命化ソリューションの提供、広域認定処理制度を活用した使用済み製品回収によるお客様負担の軽減 |
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※1 IEA NZE 2050を参照
※2 IPCCのRCP8.5を参照
※3 長期=10年以上/中期=3~10年未満/短期=1~3年未満
(3)人的資本・多様性
OKIグループは、人材を最も重要な経営資源と位置づけております。「中期経営計画2025」においては、経営戦略を支えるための「多様な人材が前向きに活躍できる施策の推進」を掲げ、多様な人材が最大限能力を発揮できる環境の整備と社員の成長支援に取り組んでおります。
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戦略 |
● 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針 ・多様な人材が前向きに挑戦できる環境づくり OKIグループでは、社員一人ひとりの働きやすさや働きがいの向上を目指し、「心理的に安全な職場」、「心身の健康」、「働きがいの醸成」が実現できている状態を『OKI Well being』と定義して、多様な人材が前向きに挑戦できる環境づくりと組織風土の改革に取り組んでおります。社員エンゲージメントの向上、全員参加型イノベーションの取り組み、組織を越えた自由闊達なコミュニケーションにより挑戦する風土の実現を目指してまいります。 また、さまざまな経験や知識、スキルを持った人材を獲得し、一人ひとりが最大限に能力を発揮できるよう仕事と育児の両立の支援をはじめとする各種制度を整備しております。いわゆる男性育休の取得推進の観点から、2022年10月より産後8週間以内の子どもを養育する社員を対象に、当該期間に最大25日の有給休暇を取得できる制度「Baby8(べびはち)休暇」を導入いたしました。なお、2023年度のOKIの男性育休取得率は78.6%でした。 これらの各施策については、OKIグループ全社員を対象とした意識調査等により効果を検証し、取り組みのさらなる推進をはかっております。
・新たな価値創造に向けた、個々人の適性やキャリア志向に応じた人材配置・成長支援 1)管理職の人事制度の変更 成長への舵切りに向け、組織パフォーマンスの向上と新たな価値創造を図るため、2023年4月に管理職の等級制度の変更を約20年ぶりに行いました。管理職がリーダーとして組織や事業を牽引する力を最大限に発揮するため、管理職が担う役割に応じて等級制度を複線化(マネジメント/プロフェッショナル/エキスパート)することで、個々人の適性やキャリア志向に応じた適所適材の人材配置を実現する制度としました。あわせて報酬水準を8年ぶりに見直し、平均8%ほど引き上げました。これは成長に向けて走り出すための先行投資という位置づけであり、将来を担う人材の確保のためにも必要な投資と考えます。さらに、管理職の評価制度を見直し、「役割責任を果たし」「結果に拘る」ことへの意識転換とチャレンジを促しております。 2)社員の成長支援の取り組み 社員一人ひとりの成長を支援するため、研修、OJT、eラーニング等の多様な学習機会の拡充に取り組んでおります。 また、社員が自律的にキャリアビジョンを描き、業務において個人と組織がベクトルを合わせ挑戦することができるよう、キャリアデザインや目標管理、人事評価、1on1等の仕組みを運用しております。 これらの取り組みを通じて、経営人材、モノづくりを支える人材、グローバル人材、AI技術者等の経営戦略・事業戦略に必要な社員の成長支援に取り組んでおります。
● 社内環境整備に関する方針 OKIグループ行動規範に「労働安全衛生に関する法令や社内規則を遵守し、安全で清潔な職場環境づくりに努める」ことを掲げるとともに、労働法関連リスクを(1)サステナビリティ全般「リスク管理」に記載した「共通リスク」として、社員の健康と安全に取り組んでおります。 ・労働安全衛生の取り組み OKIは、労使で構成する「安全衛生委員会」を各地区に設置して安全衛生体制を構築し、計画的に社員の危険及び健康障害の防止・健康増進対策を進めております。また、年に一度、「中央安全衛生委員会」を開催し、各地区の活動の評価や水平展開を行っております。 ・健康経営への取り組み OKIグループは、社員の心身の健康確保を経営の重要事項であると認識し、心身ともに健康であることによって社員一人ひとりが十分な力を発揮できることを目指しております。「OKIグループ健康経営宣言」のもと、産業保健スタッフを含む会社と健康保険組合が連携する「コラボヘルス」体制でグループ一丸となって健康経営を推進しております。 |
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指標及び目標 |
上記戦略に記載した項目のうち、以下について具体的な指標・目標を定めております。 ● 人材の多様性の確保を含む人材の育成 ・多様な人材が前向きに挑戦するための環境づくり 1)国内グループ全社員を対象とした意識調査の「働きがい(働きやすく、働きがいをもって働けるか)」項目について、3年間(2023年度~2025年度)の計画でポジティブ回答を2025年度までに70%とすることを目標としております。 <国内OKIグループ全社員を対象とした意識調査結果。()内はOKIの数値>
※ ポジティブ回答:とてもそう思う/どちらかと言えばそう思う
2)OKIの女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(2023年4月1日~2026年3月31日)における目標と実績は以下のとおりであります。目標1・2ともに、達成しました。 <目標1>2026年4月までに女性管理職比率を5%以上とする <目標2>男性の育児目的の休暇及び育児休職について、取得希望者が全員取得できることをめざすとともに対象者の取得率を毎年50%以上とする <女性活躍推進法の事業主行動計画における目標と実績(OKI)>
目標1の2021年度及び2022年度の実績は、各年度末時点の実績であります。2023年度については、一般事業主行動計画上の目標数値を年度初時点の数値としているため2024年度初の数値を掲載しております。目標2の実績は、各年度末時点の実績であります。
● 社内環境整備に関する方針 ・健康経営への取り組み OKIグループが重点的に取り組むべき健康課題と指標を「からだ」「こころ」「いしき」の3つの観点で整理し、2026年度に向けた目標を設定して健康づくりの施策を推進しております。目標及び実績の推移(国内OKIグループ)は以下のとおりであります。
※ 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施している社員の割合
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(1)OKIのリスクマネジメント体制
OKIは、OKIグループ(当社及び連結子会社)の事業活動に関わるリスクについて、リスクマネジメント規程に基づき、リスクを分類、区分して範囲を確定したリスク分野を定め、それぞれにリスク分野責任部門を配置したリスク管理体制を構築しております。また、発生した危機・懸念事象、リスクマネジメントの運営状況等は、定期的に経営会議、取締役会に報告しております。
OKIでは、社長を委員長とするリスク管理委員会を設置して、リスク・危機管理の年間方針と管理すべきリスク及び対応部門を決定するとともに、事業等のリスクについても審議しております。
(2)事業等のリスク
OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、当該事項は2024年3月31日現在においてOKIグループが判断したものであります。
また、業績に影響を与える要因は、これらに限定されるものではありません。OKIグループはこれらのリスクを認識し、その影響の最小化に取り組んでまいります。
①世界の政治経済の動向に係るもの
OKIグループの製品に対する需要は、製品を販売している日本国内、海外の各地域の政治経済状況の影響を受けます。
OKIグループの海外市場は米州、欧州、アジア等であり、当該地域における売上は当連結会計年度においては497億円(連結売上高比率11.8%)を占めております。これらの海外市場をはじめとする各地域においてエネルギー不足、物価上昇、サプライチェーンの混乱等が発生した場合、OKIグループ製品への需要縮小や、半導体等の部品供給不足によるハードウェア製品の製造遅延等が発生し、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、各国での急激な金融引き締めによる景気後退及びそれに伴う需要の縮小、製品に対する輸入規制、世界的に強化されつつある環境規制や各国で施行される情報保護関係等の各地域の法律・規制等の変更により、OKIグループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
なお、各事業における海外向け売上については、定期的に売上状況等をモニタリングするとともに、海外各国の政治経済の変動による影響を極力早期に認識するよう努め、また各種規制、法律の動向についても日本本社で把握、対応を行い、さらに売上が個別地域に過度に集中しないようにする等適切な対策が必要であることを認識しております。また、サプライチェーンの混乱に伴う影響については、調達先の拡大や設計変更による代替部材対応等によりその影響の低減を図っております。
②カントリーリスクに係るもの
OKIグループは海外に30の子会社を有しており、数多くの販売・生産拠点が存在しております。対象地域は、主な生産・製造拠点としてタイ、ベトナム、また、主な販売拠点として欧州、米国、中国のほか、インド等があります。
それらの国、地域において、感染症、公害病等の疾病の蔓延に起因した社会的混乱、生産、物流の停滞等が発生する可能性があり、その影響を受け、原材料部品の調達の支障、生産の遅延等により事業そのものに影響が及ぶ可能性があることを認識しております。
さらには、クーデター・紛争・革命、または、暴動・テロ・自然災害等による社会的混乱、それらに関連して、OKIグループの資産の接収、収用、また、人的・物的被害が発生する可能性があることを認識しております。
そのようなリスクが高まる場合、または、具体的な危機事象が発生した場合は、代替の原材料部品・物流ルートの確保、また、関連する拠点の機能の移管、それらの影響により人材が不足する場合は、補完人員の確保等の代替手段の確保が必要であると考えております。
また、発生した事象を的確に分析し、採算性等から適切な事業運営が継続できないと判断した場合には、撤退も含めた対応の検討が必要であることを認識しております。
③外国為替の影響に係るもの
OKIグループは海外での事業展開、主要製品の生産を行っており、日本国内、海外の政治経済の状況に影響を受ける為替変動リスクにさらされております。その結果、OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、外貨建て資産と負債のポジション不均衡に対して、一定の方針に基づき為替予約やマリー取引等によりリスクヘッジを実施しております。さらに、投機的な取引は原則禁止しております。これらにより、OKIグループとして外国為替の影響を極力抑制するよう努めております。
なお、当連結会計年度における具体的に為替レートが1円円安に変動した場合の各通貨が営業利益に与える影響は、ユーロは欧州での利益増により約1億円の良化、米ドルは調達・製造コスト増等により約2億円の悪化となっております。
④金融市場・金利変動に係るもの
OKIグループの有利子負債は、金融市場及び金利変動の影響を受けます。現在のOKIグループの長期・短期借入金残高の合計は1,100億円でありDEレシオは0.8倍となっております。また、当連結会計年度における支払利息は23億円となりました。金融市場、または、OKIグループの信用力の変動等により、借入金利の上昇、資金調達方法の制限等が発生した場合、OKIグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、借入には、金利スワップ取引を行う等さまざまな対策を講じるとともに、健全な借入レベルを維持するよう努めております。従いまして、OKIグループとして金利上昇の影響は極めて限定的と考えております。
また、株式市場の低迷や資産の運用環境が悪化した場合には、OKIグループが保有する上場株式や年金資産の価値が下落し、評価損の計上や純資産の減少により、OKIグループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
なお、政策保有株式については、毎年個別銘柄ごとに定量的・定性的要因を考慮し、保有株式の縮減に取り組んでおります。
また、年金資産は企業年金の積立金の運用を行っておりますが、その運用目標等は、資産運用委員会が起案し、代議員会にて決定しております。両会のメンバーは、従業員代表、並びに、財務及び人事部門の専門性を有するもので構成されております。
⑤法規制に係るもの
OKIグループは事業展開する日本国内、海外の各地域において、事業・投資の許認可、国家安全保障、環境関連法規制、情報保護関連規制、外国貿易及び外国為替法関連規制、競争法関連規制、贈収賄関連規制、経済制裁規制等の理由による輸出入制限、税務制度等といったさまざまな法規制の適用を受けております。
また、日本国内においては、製品・サービスにかかわる法規制・技術基準、下請法、建設業法、労働安全衛生法、さらには、インターネットその他の高度情報通信ネットワークに関しては、サイバーセキュリティ基本法等の適用を受けております。
日本国内、海外において、これらの法規制(類似・同種の法規制含む)等を遵守できなかった場合、追加費用が発生し、事業活動に支障をきたす可能性があります。加えて、お客様の信用、社会の負託を失うこととなり、結果としてOKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、上記の法規制をはじめとしてOKIグループの事業に密接に関係する各法規制については、OKIグループ内にて法規制の遵守を徹底させるべく、統括する主体となる部署を指定し、社員教育の推進、遵守状況のモニタリング等、全社横断的に法規制の遵守を推進しております。
また、必要に応じ、弁護士、コンサルタント等の専門家並びに専門機関の協力を得て、対策を講じております。
なお、個別項目においても法規制が関係する場合には、当該項目にて法規制影響等について記載しております。
⑥事業別市場の動向・製品・サービスに係るもの
OKIグループでは、「中期経営計画2025」の初年度である今年度から、モノづくり・コトづくりを通じて社会課題の解決を目指すため、既存事業領域とともに新領域にも積極的に取り組むべく、事業セグメントを新たに4つの領域に再編しております。
具体的にはパブリックソリューション、エンタープライズソリューション、コンポーネントプロダクツ、EMSの4事業に区分し、それぞれ取り扱う製品・サービス機軸について日本国内、海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しております。それぞれの事業において、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があるものを以下に記載します。
1)パブリックソリューション事業
当事業におけるビジネス領域では、消防・防災・交通・防衛といった社会インフラ市場をベースに止まることが許されないミッションクリティカルなソリューションを提供しております。
当連結会計年度は売上高940億円、営業利益44億円、連結売上高に占める割合は22%となっております。
当領域のビジネスにおいては豊富な市場導入実績や業務ノウハウをいかし、顧客ニーズを取り込むことで差別化した新商品を投入し、消防・防災を中心として更改需要の獲得に取組んでおります。
さらに鉄道事業者や道路事業者、海洋などの新領域に対して、OKIの強みであるエッジ領域を中心としたセンシング技術やネットワーク技術をいかし、エッジデバイスから取得したデータの利活用を深化させ個別の顧客業務に特化したプラットフォームの提供に取組んでおります。
社会インフラ市場におけるDXへの期待は大きく、5G通信やAI、クラウド環境を活用したリアルタイムデータの活用・分析予測による効率性の向上、安全性の確保などの新たな価値の提供が求められており、交通プローブを活用した交通分析や安全対策への貢献や、2030年のBeyond5Gの実現に向けた光アクセス通信システムの開発に着手しております。
なお、2022年4月1日に事業を譲り受けた航空機用計器事業のPMIは順調に進み事業運営の安定化と成長に向け一歩を踏み出しました。
この領域でのリスクとしては、部材供給を中心としたサプライチェーンの回復の遅れ等を起因とした製品供給の遅れや過去に販売した製品の品質に関するトラブル、案件失注などによる売上・利益の減少があげられます。
また、環境やエネルギーの観点でデジタル化は省エネルギー、CO2削減などの面で重要な役割を果たすことから、社会インフラ市場におけるデジタル化はこれからも加速し、ここに追従するための技術の進展と活用に遅れをとった場合に、新領域における事業機会の獲得を逸する可能性があります。
加えてお客様のニーズの変化に迅速に対応できなかった場合、計画通りのビジネス獲得ができない可能性があります。
しかしながら、サプライチェーンの回復の遅れ等によるビジネスリスクに対しましては内製化を進め国内外のサプライチェーン環境の変化への対応力を高めます。
また、研究開発への積極的な投資により、新しい製品やサービス、技術を開発し競争優位性獲得し向上させると共に新たなビジネスチャンスをつかみ事業拡大につなげてまいります。
2)エンタープライズソリューション事業
当事業におけるビジネス領域は、さまざまなメカトロ製品(自動化端末・機器)を提供するプロダクト事業、金融・運輸旅客・製造関連の各種システムを提供するソリューション事業、ATMのフルアウトソーシングによる監視・設置・運用・保守をリカーリングで提供するサービス事業で構成されております。
当連結会計年度は売上高1,801億円、営業利益220億円、連結売上高に占める割合は43%となっております。
当領域のビジネスにおいては現金処理機、ATM、発券端末といった商品群を社会インフラを中心とする多様なお客様に提供しております。事業環境において大きく2つの環境変化が起きております。第一は少子高齢化・人口減少に伴う労働力不足、第二はキャッシュレス、ペーパーレス等の現物レス化であります。これらの環境変化を事業機会と捉え、セルフ化・省人化を実現する商品の品揃えを強化してまいります。さらにパートナーのお客様には組込みが容易なモジュールとして提供してまいります。
また、新規市場として医療分野での人手による作業、監査業務などの支援機器、空港のセルフ化・自動化機器、製造現場における組立支援ツールなど、各種業種における人手不足・労働力不足に対する課題解決をテーマに研究開発投資を行ってまいります。
部品・原材料についてはサプライヤーと連携し安定調達に努めておりますが、天災や事故等によりサプライヤーの生産活動が停止した際には、部品・原材料の調達に困難が生じる可能性があります。これらの事態が発生した場合、生産に影響が生じ業績に影響を与える可能性があります。
これらの部品・原材料の調達リスクに対し、サプライヤーとの連携を強化し調達課題を検知した際は影響の極小化に向けて代替部材の採用を促進する体制を組んでおります。
3)コンポーネントプロダクツ事業
当事業ではメーカー直販・間接販売並びにOEMビジネスを展開しており、センシング、AI、通信、データ出力に関わる製品を提供しております。プリンターとIoT機器のコア技術の融合が可能な体制を活かし新たなエッジデバイスを生み出します。
当連結会計年度は売上高734億円、営業利益6億円、連結売上高に占める割合は17%となっております。
当領域で扱うプリンター事業は海外展開をしており、販売・生産・開発拠点がグローバルに存在し、また研究開発に関するパートナーも多いという強みをいかして、これらの資産を他製品に活用、特に成長領域と位置付けているエッジデバイスについては、カーボンニュートラル、インフラモニタリング市場への参入を目指し、国内実績の海外展開や国内外のアライアンスを推進しながら2031年に向けて事業の育成・独立採算事業化を図っております。
また、電源レス、低消費電力を強みとした通信技術や狭小空間での設置に優位性を持つ小型化・メカトロ技術などの強みをいかすことで、今後の成長が期待できるインフラモニタリング市場への製品展開を図ります。
一方でプリンター、PBXは成熟から減少へ市場が変化しており、この分野は事業の縮小が避けられない状況であります。
さらに商品をグローバルに展開する上では、各地域の規制に対応できない場合、市場から受け入れられない懸念があります。
これらのリスクに対してプリンター、PBXは販売力強化、市場シェア維持施策により影響の最小化・残存者利益の最大化を図ってまいります。また、各国の規制情報を素早く把握し製品への適用を進めるとともに、省エネ・省資源といった環境性能を一段と高める製品を提供していきます。
4)EMS事業
当事業領域では主にEMS/DMS(設計・製造受託サービス事業)や部品事業、エンジニアリング事業で構成され、設計から製造、信頼性試験までを網羅するモノづくり総合サービスを提供しております。当連結会計年度は売上高739億円、営業利益11億円、連結売上高に占める割合は18%となっております。
当領域のビジネスにおいては、昨今のカントリーリスク拡大による国内生産回帰や人手不足による国内EMS活用拡大の機会と捉え、高品質/変種変量生産に対応できる強みをいかしたモノづくり総合サービスを提供し、お客様の困りごとを生産面で支える製造プラットフォーマーを目指しております。OKIが保有する高い技術力がお客様のニーズを満たすよう営業・技術・生産が一体となり活動してまいります。
リスクとしては半導体部品の需要拡大による部材入手難等のサプライチェーン問題の再燃や人的資源の不足にともなう生産能力不足により、製品・サービスの提供遅れが想定されます。また、新たな技術開発や新商品・サービスの創出が実現できない場合や、市況変化に伴うお客様の需要変動に追随できない場合、売上高の減少による経営成績への悪影響が懸念されます。
しかしながら、EMS事業におけるビジネスリスクに対しては部材の先行手配や自動化促進による生産性向上により提供遅れに対応すると共に、新商品・サービス創出のリソース強化、事業ポートフォリオの多角化による売上減少リスクの解消を図り、事業成長を実現してまいります。
⑦イノベーション、技術開発に係るもの
OKIグループとして、項番⑥記載の4つの事業セグメントにおける市場動向への追随、お客様のニーズに叶う製品設計・サービスが実施できない場合、既存事業にとらわれない研究開発やイノベーションが功を奏せず、新商品・新技術の創出が為されない場合、新たな収益源となるような新事業が構築できない場合は、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
特に「中期経営計画2025」の初年度である今年度から、全社横断組織として技術開発マネジメントを担う技術本部、新規事業開発の加速を担うイノベーション事業開発センターを新設しました。これらの機能強化により外部環境の変化にも揺るがず、OKIグループとしての総合力を発揮できる体制を整え事業力の底上げを図ります。
1)イノベーション
OKIは国際規格ISO56002を先取りしたイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「YumePro」を構築し「全員参加型イノベーション」を全社展開しております。2023年度からは実践モードのイノベーション活動として本格運用し、マテリアリティに掲げた「価値を創造し続ける企業文化への変革」を加速すると共に将来事業の創出、グローバル展開に挑戦しております。
なお、OKIではISO56002に基づき事業化に向けて、4つの観点(需要リスク、実現性リスク、事業環境リスク、収支リスク)を低減していくことにより、事業の解像度を上げております。また、これらの観点は、イノベーションプロセスの段階に応じて低減する観点が異なることから、各段階でのステップアップ時には、これらの観点を如何に低減したかを注意深く確認することが、解像度向上にとって重要ととらえております。
「中期経営計画2025」においても本イノベーション機能は、将来事業の創出の活動そのものに位置付けられており、グループ内におけるモノづくり基盤やイノベーション活動を進化させ、そこで培った技術やプロセスをソリューション、プロダクト、サービスにいかすことで、価値を創出し社会やお客様の課題に貢献することを明確にしております。OKIの強みである情報通信技術、センシング技術、セルフ化や自動化に必要なコンポーネント技術などのエッジ技術の強化とともに、データマネジメントにも力を入れ、「社会インフラ」「製造」「海洋」を注力領域としてリアルな現場から得られるデータの活用を深化させるためのプラットフォーム化を推進します。また、「高度遠隔運用」「物流」「ヘルスケア・医療」「CFB(Crystal Film Bonding)」という領域において、グローバルでの事業化を加速しております。物流領域における配送計画最適化サービスの市場投入、高度遠隔運用を実現するリモートDXプラットフォームの開発も推進、並行してお客様との共創を進めながら新たな事業化に向けて着実に推進してまいります。
2)技術開発
市場の技術革新や社会の変化を適切にとらえ、お客様のニーズの変化に対応できない場合、OKIグループ横断で共通する技術開発の統合・再利用が進まない場合、OKIグループ全体の研究開発効率と業績に影響を及ぼす可能性があります。
「中期経営計画2025」では4つの事業領域から中長期の成長を描くため、技術コンセプト「エッジプラットフォーム」を提唱し、AI・データとコンポーネントの観点で技術強化に取り組んでおります。AI・データの観点ではデータマネジメント機能によるデータの共有化と、それらを促進するプラットフォーム技術の強化、OKIに強みのあるアナログ技術やデータ分析技術には発展著しい生成AIのコラボレーション、またコンポーネントは事業分野横断の共通化を推進しております。
これらの技術開発に対する継続的な活動は中期経営計画の達成並びにその後の中長期の成長に不可欠なものと認識しております。
3)生産技術
OKIグループの各生産拠点を有機的につなぎコスト競争力の向上と付加価値の最大化によってグループ全体で強いモノづくりを推進してまいります。
また、最先端の生産技術開発を行い、これらを各生産拠点へ展開することにより、更なる生産効率向上を推進してまいります。
OKIグループでは、商品開発の加速、成長領域へのリソースの再配置、既存市場における一層深度ある事業展開等に継続注力し、事業の成長・継続に努めております。
なお、持続的成長に向けた事業戦略がスピード感をもって実行されていくため、2023年度に大幅な組織再編を実施しております。組織再編については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。
⑧調達に係るもの
国内外での自然災害・紛争・テロ等や調達先の事業方針転換等の不測の事態が発生することによる資材調達不足、それらの影響を受けてOKIグループ自体の工場稼働率が低下した場合、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンにおける人権侵害の発生も調達先の操業に影響を与え、資材調達の不足や遅延を生じるリスクとなります。
OKIグループでは特定の製品、部品や材料を複数の調達先より調達する仕組みをとっております。資材不足、生産設備の非稼働が余儀なくされる場合は、資材調達先の代替確保、代替生産設備の確保や適切な在庫管理等に尽力する体制を構築しております。また、調達先へのCSR調査の実施等により、人権侵害等のリスクについても配慮した取組みを進めてまいります。
これらによりOKIグループとして調達に係るリスクの影響を極力抑制するように努めております。
⑨重要な特許関連契約及び技術援助契約に係るもの
OKIグループは、日本国内、海外の複数の企業との間で知的財産関連契約または技術援助契約を締結しております。これらの契約が適正に遂行されない場合の他、不公平な内容で契約が締結された場合、また、その知的財産、援助技術が適正に活用されない場合には、OKIグループの関連する日本国内、海外の事業に影響を及ぼす可能性があります。
なお、OKIグループの製品・サービスには、OKIグループ独自の技術を効果的に活用し、多方面にわたり、その性能に反映させております。他方で、他者の知的財産を尊重すると共に、OKIグループの製品・サービスに許可なく実施することのないように侵害予防調査を実施しております。
また、関連する契約に関しては、社内の知的財産及び法務に関連する専門部署による内容の精査等を実施しております。あわせて専門人材の育成、配置や経験豊富かつ知見ある国内外の弁護士との連携を積極的に行っております。
これらにより、OKIグループとして知的財産関連契約並びに技術援助契約に関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。
⑩品質に係るもの
OKIグループは、国内外の生産拠点や生産委託先にて厳格な品質管理を行い、提供する製品・サービスについて品質の徹底に努めております。品質の責任が担保できない場合、その欠陥に起因したリコールの処置費用及びお客様あて賠償責任・費用が発生する可能性があります。また、その欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性もあり、加えて当該問題により当社の企業ブランド、製品ブランドが棄損され、お客様の信用失墜から経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、OKIグループ「品質理念」のもと、事業ごとに品質責任と権限を定め、個々の事業特性に則した品質マネジメントシステムを構築し、商品の企画から製造・保守・運用に至るまで、全ての業務プロセスにおいて、品質向上に努めております。
また、品質問題に関係する情報はグループとして一元管理し、適時、適切に関連部門に共有され、迅速な対応に努めております。
特に安全に関しては、法令遵守に留まらず、OKIグループ「商品安全基本方針」に従った安全・安心の確保に取り組んでおります。
品質不正を起こさない取組みとして、教育、品質アンケート、現場調査等を実施し、運用の徹底をはかっております。これらにより、OKIグループとして品質に関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。
⑪M&A、アライアンスに係るもの
OKIグループは、業容拡大、経営の効率化等を目的に、研究開発、製造、販売等、多岐にわたり他社とのアライアンス、事業買収、関係会社の統合等を国内、海外で適宜推進しております。これらの活動はグループの事業ポートフォリオ強化にとって有効な手段であると考えております。双方が有する技術、お客様基盤、人材等経営資源の有効活用につながり、持続的な事業成長の機会に直結するものと認識しております。
しかしながら、経営戦略、製品・技術開発、資金調達等について相手先と当初想定した協力関係が維持できない場合や、不公平な内容の契約締結、関連契約の相手先による一方的な反故、契約違反等が発生した場合、また、M&A、アライアンスにより参入を計画した市場において、当初想定した市場の開拓がなされない場合は、OKIグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
その対策として相手先との取引開始時には、先方についての信用調査、コンサルタントの活用、また、各種の契約締結時には、社内の知的財産、及び法務に関連する専門部署による内容の精査、市場調査等を実施し、M&A及びアライアンスに関するリスクの影響を極力抑制するよう努めております。
⑫環境保全に係るもの
OKIグループでは、生産活動において、大気・水質・土壌汚染等の原因となりうる化学物質等を使用・排出する工場があります。また、工場やオフィスにおける電力等のエネルギーの使用やお客様による製品使用を通じて間接的にCO2を排出しております。
気候変動に伴う社会変動リスク(移行リスク)としては、投資家やお客様等から、再生可能エネルギーの導入等による温室効果ガスの排出量の抑制等への要求が急速に高まりつつあり、こうした要求に応えられない場合や、OKIが得意とするIoT、AI、制御等の技術を気候変動に伴うビジネス機会に活かせない場合には、販売機会の逸失等につながる可能性があるものと考えられます。
また、気候変動の影響による風水害等の激甚化に伴うリスク(物理的リスク)としては、自社及び取引先における工場や調達先の被災による、事業所資産の損失・稼働停止・サプライチェーンの寸断リスクなどが想定されます。このほか、風水害等に起因し許容範囲を超えて環境汚染が生じるリスクがあります。環境汚染が発生した場合、賠償責任の発生や販売機会を逸するリスクがあります。
OKIグループでは当該リスクを低減するために、ISO14001統合認証を取得し、環境法規制等の遵守、環境負荷の低減活動、環境関連データの監視、再生可能エネルギーの導入検討のほか、気候変動起因のBCP・BCM、環境貢献売上高の拡大等を推進しております。
その一環として、OKIグループ中長期環境ビジョン2030/2050において、2030年度における温室効果ガス排出削減目標について、国際的なイニシアティブである「Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)」より、科学的知見と整合した水準であるとして認定(SBT認定)を受けました。2023年に行なった改定では、2050年度目標として自社拠点を含むバリューチェーン全体の「ネットゼロ」を実現することを掲げ、本長期目標についてもSBT認定取得を目指します。この目標の達成に向け、本庄工場のH1棟が大規模生産施設として国内初の『ZEB(Net Zero Energy Building)』を取得するなど、自社拠点における再生可能エネルギーの導入を進めているほか、製品の省電力化などを進めております。
これらの活動により、OKIグループに関連する環境リスクは限定的と考えております。
⑬情報セキュリティに係るもの
OKIグループでは、業務において多種多様なコンピューターシステムを利用、運用しております。システムの利用、運用については、適切な使用、システムトラブルの回避、情報の社外漏洩の防止等を実施すべく、各種マニュアル類の制定、システム機器の適切な取扱いの励行、情報の暗号化、多要素認証導入等、多面にわたり様々な対応を行っております。
しかしながら、防御策を講じてもなお外部からのサイバー攻撃、コンピューターウイルスの感染、システム機器の不適切な取扱等により、システムの停止、データの紛失・改ざんや個人情報、機密情報といった情報漏洩の発生等の可能性があること、及びそれらの事象発生による企業価値やブランドの毀損、信用低下などのレピュテーションリスクを招く可能性があることを認識しております。
特に企業を狙ったサイバー攻撃が多発しておりますが、OKIグループにおいても、過去に海外子会社のサーバを経由して第三者による日本のファイルサーバへの不正アクセスを受けました。この事案を受け、OKIグループではエンドポイント・セキュリティツールの全端末への導入及び24時間365日の監視体制の構築等により対策を強化しております。
OKIグループでは、このような事態を極力抑制するため、再三にわたる社員教育の徹底、システムの運用状況のモニタリング、情報セキュリティの推進体制の整備を継続、推進しております。特に新たに認識した課題については、是正並びに強化策の対応を推進しております。
⑭人材に係るもの
OKIグループが、社会やお客様のニーズを理解し、最適な商品・サービスを提供し続けるために、経営から現場まであらゆる領域で多様性を持ちながら適材を確保し、一人ひとりが十分に力を発揮する必要があります。また、OKIグループの年齢構成は50歳代にピークがあり、今後離脱が増えることが想定されます。加えて、特に、ニーズを理解しDXにつなげていける人材、グローバルに活躍できる人材、競争力あるモノづくりを実現する人材等は労働市場での獲得競争が激しいことが想定されております。
こうした背景のなか、離脱者の補完や事業計画で必要としている人材の確保ができない場合、今後のOKIグループの中長期的な事業推進に影響を及ぼす可能性があります。
OKIグループでは、質・量ともに十分な人材を確保するために、採用方法の見直し・強化、種々の採用形態・チャネル開拓等により採用増を実現し、全員参加型イノベーションの浸透を起点に人材を育成し、事業間の人員のシフトやシニア人材の活用を行っております。
さらに、役割とその遂行を軸足とする新たな幹部社員等級制度・評価体系の導入、時間と場所に制約されない働き方を実現するための制度の拡充、学びと経験を多く積めるようなキャリアアップ環境の整備、従業員エンゲージメント向上施策や健康経営の推進等の組織風土改革といった多様な人材が前向きに活躍できる職場づくりに取組んでおります。
2024年3月期の活動の成果は、次のとおりであります。
当期におけるOKIグループ(当社及び連結子会社)を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和により、経済活動の正常化が進みましたが、資源価格の高騰による物価上昇、各国でのインフレ抑制に向けた金融引き締め、中国経済の停滞に加えて、ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの高まりにより、依然として、先行き不透明な状況が継続しております。
このような環境下、OKIグループは、新たに「中期経営計画2025」を策定するとともにマテリアリティをアップデートしました。そして、マテリアリティと事業の関係をより明確にするため、「安心・便利な社会インフラ」「働きがいと生産性向上」「地球環境の保全」の3つの貢献分野を設定し、社会インフラを止めず、その維持に貢献する企業として、これらの貢献分野を中心とした社会課題の解決につながる価値の提供に取り組んでおります。
2024年3月期の業績については、以下のとおりであります。
売上高は4,219億円、前連結会計年度比528億円の増収となりました。部材調達難による生産減影響の改善やエンタープライズソリューション事業の大型案件等の物量増により増収となりました。
利益面につきましては、人件費や成長投資による固定費の増加があったものの、増収や価格適正化を着実に実施したことにより、営業利益は前連結会計年度比163億円増益となる187億円となりました。なお、第1四半期連結会計期間に計上した中国向けATM債権に対する貸倒引当金戻入額43億円による一過性収益を除いても前連結会計年度比増益となりました。
経常利益は、為替差損益の良化等により、前連結会計年度比186億円良化となる183億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額(益)等の計上により、前連結会計年度比284億円良化の256億円となりました。
事業別の業績状況は、以下のとおりであります。
パブリックソリューション事業の売上高は940億円となりました。注力領域の道路、消防、防災及び特機は堅調でしたが、通信キャリア向け案件の減少により前連結会計年度比17億円の減収となりました。営業利益は44億円となりました。セグメント全体では特機が牽引したことにより、同10億円増益となりました。
エンタープライズソリューション事業の売上高は1,801億円となりました。部材調達難による生産減影響の改善、大型案件等により、前連結会計年度比672億円の増収となりました。営業利益は、220億円となりました。物量増による増益に加えて貸倒引当金戻入額による一過性収益により、同205億円増益となりました。
コンポーネントプロダクツ事業の売上高は734億円、前連結会計年度比112億円の減収、営業利益は6億円、同10億円減益となりました。プリンターにおいて、海外での需要停滞等による減収影響が大きく、セグメント全体では前期比減収減益となりました。
EMS事業の売上高は739億円、前連結会計年度比14億円の減収、営業利益は11億円、同12億円減益となりました。半導体市場の回復遅れや中国経済の減速によるFA・ロボット向け市場での需要減による影響により、前期比減収減益となりました。
その他の事業の売上高は4億円、前連結会計年度比1億円の減収、営業損失は将来事業創出に向けたR&Dなど成長に不可欠な投資を行ったため、11億円、同15億円減益となりました。
総資産は前連結会計年度末から330億円増加の4,234億円となりました。自己資本は、親会社株主に帰属する当期純利益を256億円計上したこと及びその他の包括利益累計額が182億円良化したこと等により、前連結会計年度末に対して421億円増加の1,412億円となりました。その結果、自己資本比率は33.3%となりました。
資産では主に、受取手形、売掛金及び契約資産が195億円増加しております。
負債では主に、借入金が減少しており、前連結会計年度末1,180億円から80億円減少し、1,100億円となりました。
また、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローとをあわせたフリー・キャッシュ・フローは104億円の収入(前連結会計年度207億円の支出)となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益を計上したことにより、247億円の収入(同31億円の支出)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得による支出があったことにより、143億円の支出(同176億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金及びリース債務の返済による支出により、157億円の支出(同233億円の収入)となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額による増加22億円により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末の375億円から344億円となりました。
事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金又は借入金等により充当することとしております。
主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、事業活動に必要な運転資金、設備投資等の資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。
現在保有している手元現預金に加え、コミットメントラインも保有しており十分な流動性を確保しております。
OKIグループは財務規律を重視し、事業拡大に必要となる投資についてはメリハリあるコントロールを行ってまいります。
また、運転資金の効率的な調達を行うため当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しており、当連結会計年度末現在の未使用残高は、770億円となっております。
なお、当連結会計年度末の借入金及びリース債務の概要は以下のとおりであります。
(単位:億円)
|
契約債務 |
年度別要支払額 |
||||
|
合計 |
1年以内 |
1年超 3年以内 |
3年超 5年以内 |
5年超 |
|
|
短期借入金 |
367 |
367 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
733 |
233 |
332 |
168 |
- |
|
リース債務 |
84 |
33 |
35 |
9 |
7 |
(注)1.連結貸借対照表上、「短期借入金」として表示されている1年内に返済予定の長期借入金(233億円)は、
本表においては、「長期借入金」として表示しております。
2.オペレーティング・リース取引のうち、解約不能のものに係る未経過リース料は44億円であります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
2024年3月31日現在における重要な契約は、下記のとおりであります。
(1)技術援助契約
|
契約会社名 |
相手先 |
国名 |
契約対象機器 |
契約の内容 |
契約期間 |
|
当社 |
International Business Machines Corporation |
米国 |
情報処理機器 |
特許実施許諾 (クロスライセンス) |
契約特許 存続期間中 |
|
当社 |
キヤノン(株) |
日本 |
プリンター、 FAX、複合機 |
特許実施許諾 (クロスライセンス) |
契約特許 存続期間中 |
(2)その他の経営上の重要な契約
|
契約会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
|
当社 |
Hewlett-Packard Company |
米国 |
1992年4月7日に情報通信分野でのシステムインテグレーションビジネスを強化することを目的として、双方向かつ長期的な関係を維持・発展させるための基本契約を締結しました。 |
|
当社 |
シスコシステムズ合同会社 |
日本 |
2000年2月9日に、同社製品の再販及びこれに付加価値化を行い、トータルソリューションをエンドユーザーに提供するパートナーとして基本契約を締結しました。 |
(3)その他
① 借入契約
|
借入先 |
契約締結時期 |
契約の内容 |
|
みずほ銀行 三井住友銀行 他 |
2020年1月 |
安定資金の確保を目的とした総額224億円のシンジケートローン |
|
みずほ銀行 三井住友銀行 他 |
2021年2月 |
安定資金の確保を目的とした総額112億円のシンジケートローン |
|
みずほ銀行 三井住友銀行 他 |
2022年3月 |
安定資金の確保を目的とした総額203億円のシンジケートローン |
|
みずほ銀行 三井住友銀行 他 |
2023年7月 |
安定資金の確保を目的とした総額222億円のシンジケートローン |
|
みずほ銀行 三井住友銀行 他 |
2024年1月 |
安定資金の確保を目的とした総額170億円のシンジケートローン |
② 株式譲渡契約
当社は、2023年9月7日開催の取締役会において、持分法適用会社であるバンキングチャネルソリューションズ株式会社の株式を追加取得することについて決議し、2023年9月14日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
当該契約により、バンキングチャネルソリューションズ株式会社は当社の完全子会社となりました。
1)追加取得する会社の事業の内容
金融機関向けチャネルシステムの企画・開発・製品提供及び運用・保守・ATMフルアウトソーシングサービス
2)追加取得の時期
2023年11月1日
OKIグループ(当社及び連結子会社)は、2023年5月に発表した「中期経営計画2025」のとおり、「『進取の精神』をもって、情報社会の発展に寄与する商品を提供し、世界の人々の快適で豊かな生活の実現に貢献する」という企業理念のもと、「社会の大丈夫をつくっていく。」のキーコンセプト実現に向けて、成長領域へ向けた研究開発と先行技術開発に集中して技術開発を取り組んでおります。
当連結会計年度のOKIグループの研究開発費は
(1)パブリックソリューション領域における活動
OKIは、水平方向距離2kmで速度32kbps(=64kbps・km)の水中音響通信技術を開発し、一般的な性能指標40kbps・kmを超える性能を海上試験にて確認したことから、海中通信の新たな可能性を示しました。この技術は32kbpsでの高速通信を実現し、海洋資源調査や水中構造物の点検を含む広範囲の一斉探索が可能となります。今後、水中無線ネットワークの構築による効率化や新ビジネス創出を目指し、マルチホップ通信などの技術開発を進めることで、水中ドローンやロボットなどの広範囲利用を実現します。この技術は、海洋探索やインフラ点検など人類の課題解決に寄与します。
福岡県大牟田市では、OKIと大牟田市のコンソーシアムが自動運転バス「ARMA」の公道実証実験を2023年11月4日から10日に実施しました。目的は交通課題解決と自動運転技術の認知度向上であります。実験は大牟田商工会議所のイベントと連携し、試乗体験会も行いました。NAVYA社製の「ARMA」は、オペレーター同乗の下で2ルートを無料運行し、地域交通の新たな可能性を模索していきます。
当事業に係る研究開発費は、
(2)エンタープライズソリューション領域における活動
OKIは、2024年7月の新紙幣発行に向け、富岡事業所でATM、現金処理機の組み立てを進めております。国内シェア約5割のATM約20万台のプログラム更新・新規生産が対象であります。最新の偽造防止技術が施された新紙幣を正しく識別できるようにソフトウエアのプログラムを開発設定しております。既存の機器は遠隔操作でソフトウエアのプログラムを更新可能であります。20年前に新紙幣が発行された際、新札の特質で複数枚が重なって搬送し出てしまうことがありましたため、防止用の部品を追加し機能を向上させました。
当事業に係る研究開発費は、
(3)コンポーネントプロダクツ領域における活動
OKIは、新たに産業カメラ用MLA(マイクロレンズアレイ)技術を開発、マシンビジョンを軸に事業化を目指しております。被写界深度が±5mmと従来レンズ比で約5倍大きく、高さも3分の1と低背化可能であります。全視野で真上から見た画像を取得するテレセントリック光学系で縦横の並列化が可能であります。ラインスキャンで歪みがない画像を取得できるなどの特徴があります。社内製品への応用を検討するとともに、2026年度にもコンタクトイメージセンサー(CIS)などに外部提供を目指しております。
当事業に係る研究開発費は、
(4)EMS領域における活動
OKIは、新宇宙時代の到来と共に宇宙産業の拡張に対応し、製造プラットフォーマーとしての役割を担うべく、宇宙向けの高品質なモノづくりに挑戦しております。特にJAXAのH3ロケット試験2号機の成功や、民間企業主導の宇宙プロジェクトNew Spaceの動向に注目が集まっております。OKIは、人工衛星向けの長尺フレキシブル基板やJAXA認定のプリント配線板など、これまでの実績を生かし、QCD課題の解決を図りながら、New Space市場への進出を目指します。
OKIのDMS(Design and Manufacturing Service)は、従来の電子機器受託製造サービス(EMS)に設計要素を加えた総合サービスで、設計から製造まで一貫して提供しております。これにより、情報通信機器や産業機器などの変種変量機器の開発支援を提供しております。DMSは、新商品開発、既存製品の改良から量産化、コスト低減まで、幅広い技術支援を行い、付加価値の高い製品を共に創出し、新たな市場への進出を支援しております。
当事業に係る研究開発費は、
(5)全社共通等領域における活動
OKIは、信越化学工業株式会社と共同で、信越化学工業株式会社が独自改良したQSTTM基板(注1)からOKIのCFBTM(注2)技術を用いてGaN(窒化ガリウム)の機能層のみを剥離し、異種材料基板へ接合する技術開発に成功しました。本技術によりGaNの縦型導電が可能となり、大電流を制御できる縦型GaNパワーデバイスの実現と普及に貢献します。今後は、GaNデバイスを製造するお客様とのパートナーリングやライセンシングにより、社会実装可能な縦型GaNパワーデバイスの開発を進めます。
(注)1.QST基板:Qromis社(米国カリフォルニア州、CEO Cem Basceri)により開発されたGaN成長専用の複合材料基板。2019年に信越化学工業株式会社がライセンス取得。なお、QSTはQromis社の米国登録商標であります。
2.CFB:Crystal Film Bondingの略。OKIが開発した、結晶膜を成長基板から剥離し異種材料基板へ接合する技術。なお、CFBは沖電気工業株式会社の登録商標であります。
OKIと東北大学は、NEDOプロジェクトの一環として、パッシブ光ネットワーク(PON)の効率的運用を目的としたAIを活用した新技術を開発しました。通信量の予測と波長資源の自動調整が可能となり、消費電力を20%以上削減して、年間約2GWhの節約とCO2約920tの削減を実現しました。
OKIは、エッジデバイスを使った「遠隔作業支援システム」の無償βサービスを2023年10月から開始しました。遠隔地の熟練者が映像を通じて現場作業をリアルタイムで指導・支援できるよう設計されており、製造や保守の分野でリモートシフトを加速させてコスト削減を促進します。またWebRTCを利用し、多くのデバイスでアクセス可能であります。2025年度の商品化を目指しております。
全社共通等に係る研究開発費は、3,052百万円であります。