第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「お客様本位の精神で安全・確実な業務の遂行により顧客の信頼を高め、人々の生活や経済を支える社会的に重要なインフラの創造をとおして社会に貢献する」という企業理念のもと、設備工事の設計・施工・保守を行う企業として、品質の高い設備づくりを目指し企業努力を重ねていく。
 また、「安全は会社経営上の最重要課題」として、安全・安定輸送の重要性が高まる鉄道の電気設備や一般電気設備及び情報通信設備などの社会インフラの構築や維持に対して一層寄与できる企業体制づくりを推進し、大きく変化する社会環境の中で変革に挑戦し、持続的成長を目指していく。
 当社グループは、経営の透明性を確保しつつ、働き方改革と個々の取り組みをとおして経営基盤を強化し、人間中心企業として「人間力の向上」と「本物志向の実践」により企業価値の向上を図ることで、株主及び取引先等の皆様の期待にお応えできる企業へと成長していく。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、持続的成長を目指し、2025年3月期は連結売上高2,051億円、連結営業利益146億円を目標としている。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略と会社の対処すべき課題

今後の国内経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。一方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが国内経済を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意が必要な状況が続くものと思われる。

当建設業界においては、公共投資は補正予算の効果もあって底堅く推移していくことが見込まれており、民間設備投資は堅調な企業収益等を背景に持ち直し傾向が続くことが期待される。

当社グループを取り巻く経営環境は、各鉄道会社の旅客収入の回復に伴い設備投資の増加が見込まれることや都市圏の再開発、既設インフラの老朽化対策の計画が進んでいることなどにより緩やかに回復していくものと考えている。

このような状況の中で、当社グループは各工事部門で次の取り組みを行っていく。

鉄道電気工事部門については、安全・安定輸送に寄与するための安全レベルの向上及び施工体制の整備を推進し、最大の得意先である東日本旅客鉄道株式会社をはじめJR各社からの受注の確保に努めていく。また、公営鉄道、民営鉄道及びモノレール等にも積極的な営業活動を展開することにより受注拡大を目指していく。

一般電気工事部門については、大型再開発工事等への営業を推進するとともにデータセンターなどの投資が拡大する分野に営業展開を図り、受注の確保に努めていく。また、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、ZEBで培った技術力などをもとに、付加価値を高めた提案営業により環境エネルギー分野の受注拡大を目指していく。

情報通信工事部門については、ネットワークインフラ構築工事、通信事業者各社の基地局建設工事等を受注するため全社的な連携のもと積極的な営業を図り、受注の確保に努めていく。また、インフラシェア事業については、企画・施工・保守までの一貫した質の高いサービスを展開することにより受注拡大を目指していく。

当社グループは、このようにグループを挙げて営業活動を展開して受注の確保に全力を傾注し、安全と品質の確保に努め、コスト競争力の強化、新規事業の開発及び人材育成を推進し、業績の向上に鋭意努力する所存である。

なお、当社グループは、2025年3月期以降3年間の中期経営計画である「日本電設3ヶ年経営計画2024」を策定した。この新しい経営計画は、2032年3月期(第90期)にありたい姿の実現に向けた足掛かりと位置付け、得意分野を伸ばしつつ、新しい分野への挑戦を通じて新たな価値を創出し飛躍していく意気込みをこめて、副題として「飛躍への挑戦」を掲げている。

当社グループは、この経営計画における次の5つの重点実施テーマに基づく諸施策を進めることにより、持続的成長を目指していく。

 ① 安全・品質レベルの向上とガバナンスの徹底

お客様・工事従事者の安全確保と質の高い成果物の提供とともに、リスク管理体制の強化、法令や社会規範の順守により、お客様や社会からの信頼を高めていく

 ② 新たな挑戦への風土づくりと価値創出

「挑戦」を根底に既成概念を打破する広い視野と思考で、自ら考え・行動する風土の醸成と仕組みづくりを推進し、新たな価値を創出していく。

 ③ 人材確保と施工体制の強化

人材確保を重点に進めるとともに、社員一人ひとりが様々な経験をとおして成長を実感できる施策を推進していく。また、共に働く協力会社への人材確保・育成の支援などを推進し、『チームNDK』の実行力強化を図っていく。

 ④ エンゲージメントと生産性の向上

多様な人材が活き活きと働けるように、社員間の交流や組織の活性化の推進と働きやすい環境や制度の整備を行い、エンゲージメントと生産性の向上につなげていく。

 ⑤ 環境・社会への貢献

工事や事業活動をとおした環境負荷低減への貢献や地域社会活動への取り組みを推進し、共にその価値観を共有していく。

 

なお、「日本電設3ヶ年経営計画2024」の最終年度である2027年3月期の数値目標は、連結売上高2,215億円、連結営業利益153億円としている。

「日本電設3ヶ年経営計画2024」の数値目標(連結)は、次のとおりである。

 

(参考)

2024年3月期

第82期実績

 

 

2025年3月期

第83期目標

 

 

 

2026年3月期

第84期目標

 

 

 

2027年3月期

第85期目標

 

売上高(億円)

1,940

2,051

2,107

2,215

営業利益(億円)

134

146

138

153

営業利益率(%)

6.9

7.2

6.6

6.9

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

サステナビリティ基本方針

当社グループは、「お客様本位の精神で安全・確実な業務の遂行により顧客の信頼を高め、人々の生活や経済を支える社会的に重要なインフラの創造をとおして社会に貢献する」という企業理念に基づき、当社グループの持続的成長と事業活動を通じた持続可能な社会の実現に貢献する。

 ① 地域社会と共に発展・成長の実現

当社グループは、安全・安心な業務の遂行により社会からの信頼を高め、技術開発や研究開発の推進により社会課題を解決し、快適な社会インフラの構築により社会へ貢献するとともに地域社会の発展に寄与する企業を目指す。

 ② 事業を通じた地球環境への貢献

当社グループは、「NDKグループ環境方針」を定め、環境負荷低減や資源の有効活用に向けた技術を積極的に提供していくとともに、事業を通じて排出する温室効果ガスの削減をはじめとした地球環境の保護に向けた取り組みを継続的に推進する。

 ③ 多様な人材の育成・活躍・ダイバーシティの推進

当社グループは、「人間中心企業」として、人材を最大の経営資本と認識し、社員一人ひとりが健康で自立的に能力を発揮できる環境づくりを行い、人材育成の推進や組織の活性化により社員が「希望」「誇り」「責任感」を持って働ける活力に満ちた企業を目指す。

 

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示については、当社ウェブサイトに掲載している。

(URL https:// www.densetsuko.co.jp/01sustainability/environment/index.html#anc6)

なお、サステナビリティの取り組みの進捗により、今後内容を更新する予定である。

 

(1) ガバナンス

当社は、サステナビリティの推進を重要な経営課題と位置付けており、取締役会がサステナビリティに関する監督・重要事項の決定を行っている。

経営会議ではサステナビリティに関する意思決定及び進捗管理を行い、取締役会への報告事項について審議している。

具体的な検討については、担当役員の責任の下、経営企画本部が中心となり、組織横断的に取り組みの議論を行っている。

 


 

(2) 戦略

当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針並びに気候変動への対応は、以下のとおりである。

 

人材育成方針

当社グループは、人材を最大の経営資本と認識し、性別や国籍等で判断することなく、幅広く採用を行うとともに、障がい者雇用等を積極的に推進することにより、多様性の確保に努めている。あわせて、教育環境及び教育体系の充実により人材の育成を推進し、働きやすい社内環境を整備して人材の定着化を図っている。

なお、当社グループの主要な事業は電気工事の施工管理業務であるため、安全と品質を重視した施工を積み重ねることで、より信頼される工事会社を目指し、エキスパートの育成に力を注いでいる。

① 教育環境及び教育体系の充実

a.NDK中央学園

日本電設工業株式会社は、教育環境の整備に取り組み続け、大規模研修施設である中央学園(千葉県柏市)を半世紀以上にわたって運営している。中央学園では、技術職であれば入社後半年から1年間に及ぶ東京都の認定を受けた職業訓練プログラムによる研修を行うことで、確かな知識・技術の土台を築いている。また、入社2年目以降においても、技術レベルに応じた教育を体系的に実施しており、重要な社会インフラの創造を担う人材を育成している。

b.TEMS技術学園

東日本電気エンジニアリング株式会社は、2009年4月、研修施設として、TEMS技術学園(栃木県小山市)を開校した。TEMS技術学園では、電気設備の仕組みの理解、技術・技能の習得、安全にメンテナンス・設備工事を実施できる技術の習得を教育の目的としている。入社から4年間で技術的に独り立ちできるようにカリキュラムを組んでおり、この内容で職業訓練校としての認定を受けている。また、仙台・新潟エリアにも教育施設である訓練センターを設置している。

 

社内環境整備方針

当社グループは、心理的安全性の高い職場環境を醸成し、従業員が自発的に業務に携わることができる環境を構築すること、また、様々な属性の従業員が働きやすく、働きがいを実感しながら活躍できる職場環境を構築することを推進している。あわせて、従業員とその家族の幸せを大切にすることで、従業員ひとり一人が「この会社に入って良かった」と思える会社を目指している。

主な取り組み内容は次のとおりである。

① ダイバーシティ&インクルージョンの推進

各種制度の充実、講習や教育の実施をとおして、今まで以上に、育児や介護に携わる従業員、障がい者、シニア人材等、様々な属性の従業員がお互いを尊重し合い、そして働きやすく、働きがいを実感しながら活躍できる職場環境を構築していくことを目指している。

② 従業員エンゲージメントの向上

a.働きがい談話(従業員同士の対話型ワークショップ)の継続的実施

あるテーマについて、参加者同士で話し合いながらテーマを深堀りしていく働きがい談話という取り組みを継続的に実施し、社内幹部を含めた従業員間のコミュニケーションの促進を図っている。

これにより、風通しの良い社内環境の構築や、対話文化を醸成することを目指している。

b.褒め合う文化の活性化

上司・部下に関わらず従業員同士がお互いの良い行動・仕事を推薦し、褒め合う行動を表彰する制度(グッドジョブ制度)を制定している。推薦された内容は全従業員に公開し、広く紹介することで、年齢や立場を超えた社内コミュニケーションの促進を図っている。

③ 職場環境づくり(働き方改革と健康経営)

業務の効率化及びICTの活用による生産性の向上を推進するとともに、働き方改革、健康経営の取り組み、従業員のニーズに合わせた各種制度の改正を推進している。

また、従業員の職場環境改善のためZEB化を基本とした事務所の建替えを推進している。

 

気候変動への対応

TCFDの提言に基づき、気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し評価の上、気候関連の問題が事業に与える影響を中長期的な視点でシナリオ分析している。

具体的には、脱炭素社会への移行に向けた再生可能エネルギー関連工事の需要やエネルギー効率向上のためのZEB、モーダルシフトによる鉄道電気設備の投資増加等を機会として捉え、一方では、平均気温の上昇による夏季の高温による作業効率低下等をリスクとして捉え、各種対策を推進している。

 

(3) リスク管理

サステナビリティ関連のリスクについては、業務に関わる各リスクを適切に管理・統制することにより適正な事業運営を行い、経営の健全性確保と信頼性向上に努めるリスク管理体制をとっている。

具体的なリスクの識別・評価については、担当役員の責任の下、経営企画本部が中心となり組織横断的に検討を行っている。

経営会議では想定されるリスク・機会を特定した上でリスク対応への進捗管理を実施するとともに、リスクが顕在化した場合の影響を最小限にする対応策を審議し、定期的に取締役会に報告している。

 

(4) 指標及び目標

① 人材育成方針・社内環境整備方針に関する事項

当社グループでは上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないことから、連結グループにおける記載が困難である。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社及び東日本電気エンジニアリング株式会社のものを記載している。

 

a. 提出会社

指標

目標

実績(当事業年度)

一級電気工事施工管理技士の新規資格取得者数

2024年度50以上

47

男性労働者の育児休業取得率(%)(注)

2026年度までに年度単位の

取得率70以上

51

年次有給休暇の年間平均取得日数

2026年度までに15以上

13.3

 

 (注)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。

 

b. 東日本電気エンジニアリング㈱

指標

目標

実績(当事業年度)

一級電気工事施工管理技士の新規資格取得者数

2024年度20以上

4

男性労働者の育児休業取得率(%)(注)

2025年度までに年度単位の

取得率50以上

42

年次有給休暇の付与日数に対する年間平均取得率(%)

2024年度まで80以上を継続

84.3

 

 (注)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものである。

 

 

② 気候変動への対応に関する事項

当社グループは、「脱炭素社会への貢献」をサステナビリティにおける重要課題の一つとして捉え、自社事業活動による温室効果ガス排出量削減に取り組んでいる。

気候変動に関する事項に係る指標及び目標は次のとおりである。

 

当社単体での自社事業活動による温室効果ガス排出量(Scope1・2)

指標

目標

温室効果ガス排出量(Scope1・2)

2030年度 2013年度比50%削減

2050年度 カーボンニュートラル

 

 

 

3 【事業等のリスク】

事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。

リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載していない。

 

(1) 顧客依存のリスク

当社グループの完成工事高総額に占める東日本旅客鉄道株式会社の比率が高いことから、同社が何らかの理由により設備投資等を削減しなければならなくなった場合、受注活動に影響を及ぼす可能性がある。

 

(2) 社会的信用力低下のリスク

当社グループでは安全を会社経営上の最重要課題と認識し、「日本電設3ヶ年経営計画2024」の中で安全推進の施策を策定し安全大会・各種安全会議・研修等をとおして教育し、社員・協力会社社員が共通認識のもと事故防止に取り組んでいるが、当社グループの行う工事施工の過程で重大な事故を発生させた場合、社会的に厳しい批判を受ける場合があることから、社会的信用力の低下等により受注活動にも影響を及ぼす可能性がある。

また、当社グループは法令順守を会社経営の基本とし、内部管理・内部統制体制を整備し、役員・従業員に対して定期的な勉強会や研修に加え、ICTを活用したコンプライアンス教材による随時学習可能な環境を整えることにより、適切な業務運営を行っているが、建設業法等関連法令において保有資格等の許可要件が厳密に定められているほか、各種規制や罰則が定められており、それらに抵触した場合には営業停止等の処分が行われる可能性がある。

 

(3) 受注事業のリスク

当社の事業である建設業は受注事業であり、主なリスクは次の事項が挙げられる。

a.労働集約事業であり、多くの協力会社と連携して事業を遂行していることから人材の育成及び教育等が求められるため、施工体制強化の取り組みを推進しており、協力会社社員の新規採用支援、育成支援、安定的な工事発注による工事平準化に努め、協力会社の体制強化策を講じているが、当社が必要とする能力を持った協力会社社員の確保が十分に行われなかった場合には事業遂行上影響を受ける可能性がある。

b.工事の受注から完成までに期間を要し、請負金額が高額となるため工事の施工に伴う立替金も高額となり、発注者の業績悪化等による工事代金回収の遅延や貸倒れが発生する可能性がある。

c.「日本電設3ヶ年経営計画2024」に基づく各工事部門での取り組みをとおして同業他社との差別化を図っているが、他社との受注競争の激化により工事採算が悪化する可能性がある。

d.施工期間が長期にわたる工事の受注はコスト上昇のリスクを十分検討するとともに、材料費について集中購買を実施し購買量の拡大による価格交渉を行い、取引会社を選定のうえ集中的に材料を発注することで材料費の低減に取り組んでいる。また、労務費については、職場環境整備等による人材の確保、協力会社への施工能力向上支援による施工体制強化を行うことで、原価低減に努めている。これらの取り組みが奏功しない場合、材料費・労務費の高騰の影響を受け工事採算が悪化する可能性がある。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 経営成績の状況

当連結会計年度の国内経済は、原材料価格の高騰や円安による物価上昇の影響等があったものの、コロナ禍からの経済社会活動の正常化に向けた動きの加速により緩やかな回復の動きがみられた。一方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが国内経済を下押しするリスクとなった。

当建設業界における受注環境は、公共投資は底堅く推移しており、民間設備投資は持ち直しの動きがみられた。

当社を取り巻く経営環境は、各鉄道会社の旅客収入の回復に伴い設備投資の増加や都市圏の再開発、既設インフラの老朽化対策が進んだことなどにより緩やかに回復した。

このような状況の中で、当社グループは前連結会計年度からの豊富な繰越工事の効率的な施工に加え、グループを挙げて新規工事の受注確保に努めた結果、当連結会計年度の連結受注高は2,080億円(前連結会計年度比114%)、連結売上高は1,940億円(前連結会計年度比113%)となり、連結繰越高は1,737億円(前連結会計年度比111%)と高水準を維持することができた。

利益については、大型工事をはじめ全般的に工事の進捗が順調であったことなどにより、連結営業利益は134億48百万円(前連結会計年度比139%)、連結経常利益は149億0百万円(前連結会計年度比137%)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億42百万円(前連結会計年度比140%)となった。

 

部門別の状況は次のとおりである。

 

鉄道電気工事部門

当連結会計年度は、東日本旅客鉄道株式会社をはじめとするJR各社、公営鉄道及び民営鉄道等に対して組織的営業を展開し受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は1,171億円(前連結会計年度比120%)となり、連結完成工事高は1,091億円(前連結会計年度比108%)となった。また、連結繰越工事高は836億円(前連結会計年度比111%)となった。

 

一般電気工事部門

当連結会計年度は、駅周辺の大型再開発工事を中心に顧客志向に基づいた営業活動を展開し受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は625億円(前連結会計年度比108%)となり、連結完成工事高は529億円(前連結会計年度比128%)となった。また、連結繰越工事高は730億円(前連結会計年度比115%)となった。

 

情報通信工事部門

当連結会計年度は、得意先等に対し全社的な受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は267億円(前連結会計年度比106%)となり、連結完成工事高は273億円(前連結会計年度比105%)となった。また、連結繰越工事高は167億円(前連結会計年度比97%)となった。

 

その他

当連結会計年度は、連結受注高は15億円(前連結会計年度比89%)となり、連結売上高は46億円(前連結会計年度比141%)となった。

 

 (注) 「その他」の事業には、不動産業及びビル総合管理等の関連事業、ソフトウェアの開発及び電気設備の設計等を含んでいるが、不動産の賃貸・管理等は受注生産を行っていないため、連結受注高に金額は含まれていない。

 

② 財政状態の状況

資産

当連結会計年度末における資産の残高は、2,825億97百万円(前連結会計年度末は2,613億71百万円)となり、212億26百万円増加した。

 

 

負債

当連結会計年度末における負債の残高は、834億82百万円(前連結会計年度末は711億36百万円)となり、123億45百万円増加した。

 

純資産

当連結会計年度末における純資産の残高は、1,991億15百万円(前連結会計年度末は1,902億34百万円)となり、88億80百万円増加した。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、営業活動による資金の増加があったものの、投資活動及び財務活動による資金の減少により、前連結会計年度末から47億28百万円減少し、358億96百万円となった。

営業活動によるキャッシュ・フローは、73億83百万円の資金増加(前連結会計年度比58億51百万円減少)となった。これは、税金等調整前当期純利益154億41百万円の計上及び仕入債務の増加額61億30百万円等による資金増加要因と、売上債権の増加額166億19百万円等による資金減少要因によるものである。

投資活動によるキャッシュ・フローは、41億78百万円の資金減少(前連結会計年度比82億62百万円増加)となった。これは、有価証券の純減少額17億0百万円等による資金増加要因と、有形固定資産の取得による支出36億25百万円及び無形固定資産の取得による支出21億75百万円等による資金減少要因によるものである。

財務活動によるキャッシュ・フローは、79億32百万円の資金減少(前連結会計年度比55億90百万円減少)となった。これは、自己株式の取得による支出52億15百万円及び配当金の支払額22億70百万円等によるものである。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 受注実績

区分

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

鉄道電気工事(百万円)

97,936

117,132

(19.6%増)

一般電気工事(百万円)

57,797

62,542

(8.2%増)

情報通信工事(百万円)

25,180

26,775

(6.3%増)

その他(百万円)

1,779

1,585

(10.9%減)

合計(百万円)

182,693

208,036

(13.9%増)

 

(注) 「その他」の事業のうち受注生産を行っていない不動産の賃貸・管理等は、上記金額には含まれていない。

 

b. 売上実績

区分

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

鉄道電気工事(百万円)

101,415

109,165

(7.6%増)

一般電気工事(百万円)

41,391

52,943

(27.9%増)

情報通信工事(百万円)

26,032

27,319

(4.9%増)

その他(百万円)

3,261

4,602

(41.1%増)

合計(百万円)

172,100

194,031

(12.7%増)

 

(注) 1.当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載していない。

2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

東日本旅客鉄道㈱

89,333

51.9

96,390

49.7

 

 

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

建設業における受注工事高及び完成工事高の状況

(a) 受注工事高、完成工事高及び繰越工事高

前事業年度  自 2022年4月1日  至 2023年3月31日

区分

前期繰越工事高

(百万円)

当期受注工事高

(百万円)


(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高
 (百万円)

鉄道電気工事

62,071

69,049

131,120

71,634

59,486

一般電気工事

46,821

57,033

103,854

40,793

63,061

情報通信工事

16,880

20,673

37,554

21,606

15,948

その他

1,728

合計

125,774

146,755

272,530

135,762

138,496

 

(注) 1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。

2.「その他」の当期完成工事高には、受注生産を行っていない不動産の賃貸等の売上高が含まれているため、当期完成工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-次期繰越工事高)に一致しない。

 

当事業年度  自 2023年4月1日  至 2024年3月31日

区分

前期繰越工事高

(百万円)

当期受注工事高

(百万円)


(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高
 (百万円)

鉄道電気工事

59,486

84,125

143,611

77,657

65,954

一般電気工事

63,061

61,631

124,692

52,477

72,215

情報通信工事

15,948

21,967

37,915

22,660

15,254

その他

2,977

合計

138,496

167,724

306,220

155,773

153,424

 

(注) 1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。

2.「その他」の当期完成工事高には、受注生産を行っていない不動産の賃貸等の売上高が含まれているため、当期完成工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-次期繰越工事高)に一致しない。

 

 

(b) 受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

鉄道電気工事

68.0

32.0

100

一般電気工事

27.1

72.9

100

情報通信工事

77.1

22.9

100

当事業年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

鉄道電気工事

69.9

30.1

100

一般電気工事

32.5

67.5

100

情報通信工事

80.4

19.6

100

 

(注) 百分比は請負金額比である。

 

(c) 完成工事高

期別

区分

民間
(百万円)

官公庁
(百万円)

合計
(百万円)

前事業年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

鉄道電気工事

61,951

9,683

71,634

一般電気工事

31,938

8,855

40,793

情報通信工事

19,194

2,411

21,606

その他

1,728

1,728

合計

114,811

20,950

135,762

当事業年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

鉄道電気工事

67,803

9,853

77,657

一般電気工事

43,981

8,495

52,477

情報通信工事

20,296

2,364

22,660

その他

2,977

2,977

合計

135,059

20,713

155,773

 

(注) 1.完成工事のうち主なものは、次のとおりである。

前事業年度の完成工事のうち主なもの

東日本旅客鉄道㈱

渋谷駅改良第3回切換信号設備改良工事

(独)鉄道・運輸機構

西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)30k2・38k7間電車線路設備工事

佐賀県

SAGAサンライズパークアリーナ新築電気設備工事

シャープエネルギーソリュー

ション㈱

矢吹町上の前太陽光発電所建設工事

楽天モバイル㈱

楽天モバイル関東地区屋内対策工事

 

当事業年度の完成工事のうち主なもの

東日本旅客鉄道㈱

高崎線岡部構内・本庄間電車線路修繕工事

(独)鉄道・運輸機構

北陸新幹線455k4・敦賀車両基地間電力設備工事

国立大学法人北海道大学

北海道大学総合研究棟(資源工学系)新営電気設備工事

四国電設工業㈱

四国電設工業㈱松山営業所新築工事 ZEB事業

地方独立行政法人

東京都立病院機構

都立駒込病院新院内ネットワーク整備工事

 

2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。

前事業年度

東日本旅客鉄道㈱

60,583百万円

44.6%

当事業年度

東日本旅客鉄道㈱

65,833百万円

42.3%

 

 

 

(d) 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)

区分

民間
(百万円)

官公庁
(百万円)

合計
(百万円)

鉄道電気工事

58,927

7,026

65,954

一般電気工事

54,466

17,748

72,215

情報通信工事

15,023

231

15,254

合計

128,418

25,006

153,424

 

(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。

東日本旅客鉄道㈱

東北新幹線福島・一ノ関間耐震支持物改良工事

京葉臨海鉄道㈱

列車集中制御装置更新工事

名古屋市交通局

浄心変電所受電設備等更新工事(設備更新)(受変電工事・電気工事)

東日本旅客鉄道㈱

TAKANAWA GATEWAY CITY 複合棟Ⅱ 新築電気設備工事

国土交通省

長崎空港滑走路灯改良その他工事

シャープエネルギーソリュー

ション㈱

泉佐野市日根野太陽光発電所 建設工事

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 経営成績の状況に関する分析・検討内容

「日本電設3ヶ年経営計画2021」の最終年度である2024年3月期は、各鉄道会社の旅客収入の回復に伴い設備投資の増加や都市圏の再開発、既設インフラの老朽化対策が進んだこと等により経営環境が改善した。このような状況の中で、業績の確保に向けて鋭意努力した結果、前連結会計年度比で増収増益となり、連結受注高、連結売上高、連結経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益とも計画を達成した。

部門別の経営成績の分析・検討内容は次のとおりである

 

鉄道電気工事部門

連結受注工事高は、主な得意先である東日本旅客鉄道株式会社を始めとする鉄道会社に対して営業活動を展開し受注の確保に努めた結果、前連結会計年度比で大幅に増加した。

連結完成工事高は、豊富な繰越工事に加えてJR各社からの受注が回復したこと等により、前連結会計年度比で増加した。

 

一般電気工事部門

連結受注工事高は、駅周辺の大型再開発工事を受注したこと等により、前連結会計年度比で増加した。

連結完成工事高は、大型工事が順調に進捗したこと等により、前連結会計年度比で大幅に増加した。

 

情報通信工事部門

連結受注工事高は、東日本旅客鉄道株式会社及び同社グループ等に対して営業活動を展開し受注の確保に努めた結果、前連結会計年度比で増加した。

連結完成工事高は、大型工事が順調に進捗したこと等により、前連結会計年度比で増加した。

 

その他

連結受注高は、グループ会社のソフトウェア開発の受注が減少したこと等により、前連結会計年度比で減少した。

連結売上高は、賃貸ビルの賃料収入増加等により、前連結会計年度比で増加した。

 

② 財政状態の状況に関する分析・検討内容

資産

当連結会計年度末においては、コマーシャル・ペーパー等の償還に伴い有価証券が減少したものの、工事量の変動に伴い受取手形・完成工事未収入金等が増加したほか、保有株式の時価上昇に伴い投資有価証券が増加した。

 

負債

当連結会計年度末においては、工事量の変動に伴い支払手形・工事未払金等及び電子記録債務が増加したほか、利益増加に伴い未払法人税等が増加した。

 

純資産

当連結会計年度末においては、自己株式の取得による減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことに伴い利益剰余金が増加したほか、保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券評価差額金が増加し、自己資本比率は65.7%となった。

利益剰余金のうち提出会社の繰越利益剰余金については、2024年6月21日開催の第82期定時株主総会において、下記のとおり決議された。

1株当たり配当額   47円

配当総額     2,773百万円

別途積立金の積立 5,600百万円

なお、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」の項目を参照のこと。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度における「現金及び現金同等物の期末残高」(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加があったものの、投資活動及び財務活動による資金の減少により、前連結会計年度末から47億28百万円減少し、358億96百万円となった。

なお、詳細については、「第2  事業の状況  4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)経営成績等の状況の概要  ③ キャッシュ・フローの状況」の項目を参照のこと。

 

b. キャッシュ・フロー指標のトレンド

 

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

自己資本比率(%)

64.6

66.9

67.8

65.7

時価ベースの自己資本比率(%)

44.8

37.8

37.3

44.5

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

0.1

0.1

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

 

(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出している。

3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出している。

4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。

 

c.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、現金及び現金同等物並びに営業活動によるキャッシュ・フローを資金の源泉としている。一方、資金需要については、運転資金をはじめ、成長投資や経営基盤の強化として、人材の確保と育成・教育、技術開発、DXの推進、軌陸車等の工事用機材、事業所整備、M&A、新規事業、施工体制強化等の支出のほか、自己株式取得及び株主の皆様への配当である。

資金の流動性については、これらの資金需要に対して自己資金により対応できる適切な水準を維持することを基本方針としている。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物358億96百万円を確保し必要な流動性水準を維持している。

また、現時点では上記基本方針を維持することとしているが、緊急時における資金需要に備えるため、複数の金融機関と当座貸越契約を締結している。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりである。

 

a. 貸倒引当金

売上債権、貸付金等の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率に基づき、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に債権の回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上している。

将来の不確実な経済条件の変動等により、貸倒実績率を補正すること等が必要となった場合、引当金の金額が増減する可能性がある。

b. 完成工事補償引当金

完成工事に係る契約不適合責任により要する費用に備えるため、当連結会計年度の完成工事高に対し、過去の完成工事に係る補償額の実績を基に将来の発生見込額を加味して計上している。

見積りを超える費用が発生した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。一方、実際の費用が引当金の金額を下回った場合は引当金戻入益を計上することとなる。

c. 工事損失引当金

受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持受注工事のうち、損失が確実視されその金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上している。

損失見込額の見積りは、工事契約ごとに策定した実行予算に基づき算定している。また、実行予算は、作成時点で入手可能な情報に基づき、作業内容や原材料価格等について仮定し策定している。工事の進捗等に伴い継続して実行予算の見直しを行っているが、工事契約の変更や仕様変更、工事着手後の状況の変化等が発生した場合は、引当金の金額が増減する可能性がある。

d. 退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しており、これらの前提条件には、割引率、予定昇給率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれている。

将来の不確実な経済条件の変動等により前提条件の見直しが必要となった場合、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性がある。

e.固定資産の減損

固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしている。

将来の不確実な経済条件の変動等により見積りの見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性がある。

f. 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性については毎期見直しており、過年度の業績、納税状況及び将来の業績予測等を総合的に勘案し、課税所得の額を合理的に見積ることにより判断している。

将来の不確実な経済条件の変動等により見積りの見直しが必要となった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が発生する可能性がある。

g. 履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり認識した収益

履行義務の充足に係る進捗度の測定は、当連結会計年度末までに発生した工事原価が、予想される工事原価総額に占める割合(原価比例法)に基づいて行っている。

工事原価総額は、工事契約ごとに策定した実行予算に基づき算定している。また、実行予算は、作成時点で入手可能な情報に基づき、作業内容や原材料価格等について仮定し策定している。工事の進捗等に伴い継続して実行予算の見直しを行っているが、工事契約の変更や仕様変更、工事着手後の状況の変化等が発生した場合は、完成工事高及び完成工事原価に影響を与える可能性がある。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項なし。

 

6 【研究開発活動】

鉄道電気工事、一般電気工事及び情報通信工事の各部門では、「安全性の向上」、「作業の効率化」、「品質向上」及び「働き方改革」につながる研究開発活動を行っている。

当連結会計年度における研究開発費の総額は297百万円であり、主な研究開発内容は次のとおりである。

 

(1) 鉄道電気工事部門

①「剛体電車線用摩耗測定装置の開発」

電車線の保守・管理に必要な摩耗量の測定は、架空電車線ではトロリー線の断面形状が円弧状であることから専用装置により、しゅう動面にレーザー光を当て、その幅を測定することで連続的に行われている。地下鉄等で使われている剛体電車線ではその形状から同じ手法が使えないため、手作業で測定せざるをえなかった。公益財団法人鉄道総合技術研究所と共同開発した測定装置は、光切断法という形状を認識できる新手法を用いることにより、レーザー光が当たっている断面形状の連続的な測定が可能となった。

 

②「架空送電工事用監視支援ロボットの開発」

架空送電線工事の鉄塔上部作業における作業員の安全確保のために、鉄塔のエスコートレール(墜落防止装置)を昇降して鉄塔上の作業員を遠隔監視し、不安全行動には注意喚起を行うロボットを、神奈川大学の協力を得て開発している。

 

(2) 一般電気・情報通信工事部門

①「絶縁抵抗測定表自動作成システムの開発」

電気設備の施工後の通電前に行われる絶縁抵抗測定は、回線名等の必要事項をメーカーの図面から手作業でEXCEL表に転記して記録表を作成するとともに、その記録表に絶縁抵抗測定器で測定したデータを手入力する必要があり多大な時間を要していた。開発したシステムは、自動で盤製作図から絶縁抵抗測定表を作成し、さらにこの測定表を保存したタブレットに、Bluetoothを備えた絶縁抵抗測定器で測定したデータを取り込むことで、自動で測定表を作成することができ、作業時間の大幅な削減が可能となった。

 

②「中央監視用チェッカの開発」

受変電設備の改修工事後、中央監視装置からの遠隔操作・監視が正常にできるか確認する必要があるが、従来は実電源により実際に機器を動作させることによって行っていた。この場合、誤配線等があると事故や故障につながる恐れがあるため、慎重に時間をかけて段階的に確認していた。開発しているチェッカは、実電源による試験を行う前に試験用の電源により中央監視装置からの模擬試験を行うことが可能となり、安全かつ効率的な確認が可能となる。