文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、持続可能な社会に向けた“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装することをパーパス(存在意義)としております。企業と人、そして情報を有機的に結びつける「コンテクストカンパニー」であることが、業務を行う上での基本コンセプトであります。インターネット業界の黎明期からの実績に基づくソリューションノウハウと、最新のネットワーク技術を有効に活用することにより、種々複雑な情報を有機的に結びつけ、企業と人と情報、これら三者の存在価値を相互により高め得る機能を開発することを業務の目的としてまいりました。常に時代の数歩先に視点を合わせ、コンテクストの対象を冷静かつ的確に選別し、人と環境とデジタル情報化社会が共存できる快適な社会に貢献し得るサービスを構築することが、当社の経営における基本方針であります。
(2)経営環境
当社グループは、インターネット黎明期よりテクノロジーの発展に伴走し、社会のデジタル変革にあわせた数々の日本初となるインターネットビジネスを創出してまいりました。1995年の設立以来、インターネット業界の変遷とともに事業を拡大してまいりましたが、近年では、web3やGenerative AIといった新たなテクノロジーが次々と勃興し、かつてない規模でIT・インターネット業界の変革を促しております。当社グループにおいても、これまでに培った次世代テクノロジーの開発力のほか、アライアンスパートナーやスタートアップ企業をはじめとしたステークホルダーとの共創を通じて、時代の変化に即したサービスを提供していくことを目指しております。
なかでも、当社グループが展開する総合決済プラットフォームが立脚するキャッシュレス決済市場は、中長期的にも継続的な成長を見込んでおります。2022年の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、物販系分野において、新型コロナウィルス禍における急速な市場規模拡大の反動を受けて成長が鈍化した一方、サービス分野において、旅行、飲食、チケット販売が外出需要の増加とともに大きく回復したことから、前年比9.9%増の22兆7,449億円となりました(注1)。また、経済産業省により策定された「キャッシュレス・ビジョン」(注2)においては、2025年に国内におけるキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げることが目標とされており、2022年には36.0%(注3)まで到達するなど、国内におけるキャッシュレス決済は急速に普及しております。更に、将来的には同比率を80%まで引き上げることを目指すとされており、クレジットカード決済、QRコード・バーコード決済等の様々な決済手段の需要増加に伴う事業機会は一層の拡大が見込まれます。
出所 (注1)経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書(2023年8月)」
(注2)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」
(注3)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2023(2023年8月)」
(3)経営戦略等並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
当社グループは、2024年3月期を初年度とする5ヵ年の中期経営計画を策定しております。中期経営計画においては、当社グループの事業基盤である総合決済プラットフォームを軸とした持続的な事業拡大に加え、決済と連動するDX/フィンテック領域における新たな事業のほか、暗号資産領域をはじめとした非連続事業の開発等に取り組み、収益の多層化及び競争優位性の向上による更なる利益成長の加速を目指しております。投資・インキュベーション領域においては、投資リターンに加えて、当社グループ内の事業との連携・協業等によるスタートアップ企業の育成を通じて、当社グループ及び投資先の企業価値最大化に注力しております。また、投資リターンの早期実現を目標として設定するとともに、それらを原資として、中長期的な企業価値の向上に資する成長投資及び株主還元等へのキャッシュフロー・アロケーションを実施して行く方針であります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2024年3月期を初年度とする中期経営計画では、基礎事業における税引前利益の成長率及び2028年3月期における決済取扱高の目標を経営指標として設定しております。投資・インキュベーション領域では、現在保有する営業投資有価証券のポートフォリオの見直し及び組み替えを進めることにより、5年間で一定のキャッシュフロー創出を目指しております。
また、当社グループでは、株主の皆様に対する還元を重要な経営課題の一つとして位置づけており、キャッシュフローを軸とした株主還元方針を掲げるとともに、中期経営計画の目標として5年間の配当総額を設定することで、安定した配当政策を実施してまいります。具体的な目標は以下のとおりであります。
中期経営計画の定量目標(2024年3月期~2028年3月期)
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項目 |
目標値 |
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事業目標 |
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税引前利益 ※1 |
5ヵ年平均成長率 |
20%以上 |
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決済取扱高 |
2028年3月期 |
15兆円以上 |
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投資事業収入 ※2 |
5ヵ年合計 |
300億円以上 |
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株主還元 |
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普通配当における基本方針 |
各年度 |
累進配当 |
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配当総額 |
5ヵ年合計 |
100億円以上 |
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基礎事業キャッシュフローに対する配当性向 ※3 |
目安となる水準 |
30% |
※1 グローバル投資インキュベーション・セグメント及び㈱カカクコムの持分法投資利益を除く
※2 売却収入及びファンドからの分配金等の合計額
※3 経常的に利益創出する事業セグメントの税引前利益を基に、減価償却費、一過性の損益、関係会社配当金を調整し本社費用を控除した、当社グループの経常的なキャッシュフローを基準とした配当性向
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、「持続可能な社会に向けた“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装する」ことをパーパスとして掲げております。”リアルとサイバー”、”日本と海外”、”マーケティングとテクノロジー”、”現在と未来”、といった異なる事象をコンテクストで結び、世の中の役に立つ新たなサービスを生み出すことにより、社会課題の解決に取組んでおります。また、世界中の技術進化の波を捉え、アライアンスパートナーやスタートアップ企業をはじめとしたステークホルダーと共に、未来をより良くするための新たなテクノロジーの研究開発に取組み、社会実装することを通じて、当社グループの企業価値の向上と、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しております。
当社グループ一丸となったサステナビリティ経営の推進の為には、経営トップのコミットに加え、あらゆる事業部門および管理部門の連携が必要不可欠であるとの考えのもと、当連結会計年度には、社長執行役員を最高責任者とし、グループ横断的な観点により選任した人員で構成される「サステナビリティ委員会」を新たに設置しました。
当委員会において、当社グループにおけるサステナビリティ経営は、パーパスに基づくと改めて定義し、当社取締役会における協議のうえ、パーパスと同一の内容をサステナビリティ方針として位置付けることとしました。また、当社グループ及びステークホルダーの双方における様々な社会課題に関する影響について、機会とリスクの観点から総合的に分析し、優先的に取組む事項をマテリアリティ(重要課題)として特定しました。マテリアリティを軸に、社会と当社グループが共に持続的に成長発展し、より一層の企業価値向上を目指すサステナビリティ経営を推進してまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ経営の取組み強化を目的として、サステナビリティ委員会を設置しております。当委員会の最高責任者は社長執行役員、委員長はコーポレート本部長とし、グループ横断的な観点から各事業部門長および管理部門長またはそれに準ずる人員で構成することにより、委員会の実効性を確保しております。また、事務局としてサステナビリティ経営推進室を設置しており、同室が関連部署と連携しながら、グループ全体のサステナビリティに関する各種取組みを推進しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関わる方針の制定や改変、特定したマテリアリティに対する取組みの推進や進捗管理、気候変動に関する取組み等を行い、業務執行取締役及び執行役員等で構成される経営会議での諮問・答申を経て、取締役会にて定期的に報告しております。(開催頻度:年間2回以上)
② リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメント体制の強化を目的として、リスクマネジメント委員会を設置しております。当委員会の最高責任者は社長執行役員、委員長はコーポレート本部長とし、事務局としてリスクマネジメント室を設置することにより、実効性を確保しております。これらの体制により、全社的なリスク管理を強化し、発生し得るリスクの想定、重大性の評価、リスク管理フローの策定及びモニタリング等のサイクルを確立し、実行しております。(開催頻度:年間2回以上)
サステナビリティ委員会とリスクマネジメント委員会は相互連携し、経営会議及び取締役会による審議結果は、経営戦略やリスク管理、リスク評価に反映する体制としております。
サステナビリティマネジメント体制は以下のとおりであります。
③ 戦略
ⅰ.マテリアリティ特定プロセス
当社グループでは、当連結会計年度において、以下のプロセスを経てマテリアリティを特定しました。
GRI(Global Reporting Initiative)やSASB(Sustainability Accounting Standards Board、サステナビリティ会計基準審議会)等の国際的なフレームワーク等を活用しながら社会課題の把握を起点とし、当社グループにおける事業機会・リスクの分析を行った上で、社内外のさまざまなステークホルダーとの対話を通じ、重要課題の整理・抽出を行いました。特定したマテリアリティは、サステナビリティ委員会にて協議し、取締役会での審議・承認を経て最終決定しました。
ⅱ.当社グループのマテリアリティ
なおマテリアリティは、当社グループを取り巻く社会・環境の変化に応じて適切に変更していくものと認識しており、適宜見直しを行うこととしております。
④ 指標・目標
マテリアリティに対するアクションプラン、指標及び目標(KPI)の設定、進捗確認等の実効性のある取組みが肝要であると捉えております。今後それぞれのマテリアリティに対する目標を設定し、推進してまいります。
(2)気候変動への対応(TCFDの枠組みに基づく提言)
① ガバナンス
当社グループでは、気候変動への対応等のサステナビリティに関する方針や進捗、取組み内容を、サステナビリティ委員会を通じ、経営会議での諮問・答申を経て取締役会にて報告しております。取締役会では、当社グループの気候変動対応を含むサステナビリティの取組みについて、当委員会の最高責任者である社長執行役員を通じて監督しております。
② リスク管理
当社グループが留意すべき気候変動に係るリスクについては、TCFD提言に沿って定期的に評価と特定を行っております。また、気候変動におけるリスクは、サステナビリティ経営推進室とリスクマネジメント室が相互に連携し、把握・管理する体制を整えております。
③ 戦略
当社グループでは、TCFDが推奨するシナリオ分析の手法に基づき「1.5/2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオに沿って2050年までの社会の変化を考察し、気候変動が当社事業に及ぼし得る機会とリスクを抽出しました。
ⅰ.機会に対する認識
・決済事業においては、環境負荷の低いキャッシュレス化及びペーパーレス化を実現する決済サービスへの需要の増加等
・マーケティング事業においては、最新テクノロジーによる環境意識が高い消費者向け広告の需要増加等
・投資事業においては、“Earthshotファンド”を活用した脱炭素を促進するスタートアップ企業への投資育成の拡大等
ⅱ.リスクに対する認識
・移行リスク
- カーボンプライシングの導入により、データセンター及びオフィス等における電力費用の増加
- 政府により高い省エネ目標が掲げられる場合には、省エネ設備の導入等による対応費用の増加、他
・物理的リスク
- データセンター及びオフィス建物等が被災した場合、建造物の破壊、通信障害等による機能低下が事業活動に影響を及ぼし、収益減少や修繕費用等が増加
- 慢性的な気温上昇が続く場合、オフィス及びデータセンター等の運営費の増加、他
④ 指標と目標
現時点で温室効果ガス排出量の削減目標を策定しておりませんが、今後検討してまいります。詳細については、当社ウェブサイトを参照ください。
(3)人的資本の取組
当社グループの特有かつ専門性の高い業務を遂行・実施するため、多様な従業員が能力を最大限に発揮することが、当社グループの持続的な成長と社会への価値提供につながると認識しております。
当社グループのパーパスを実現するためには、様々なバックグランドを持つ従業員が協働する事に加え、従業員と企業の関係性を強化する事が重要であると考えのもと、会社が個人(従業員)に約束すること、会社が個人に求めたいことを記した「人財マネジメントポリシー」(下図参照)を当事業年度に定め、理想となる組織像の実現に向けた組織開発と人財開発を推進しております。
本ポリシーに基づき、当社グループが目指す組織の実現に向けて、従業員一人ひとりがそれぞれの持ち味を発揮しながら活躍・成長していける土台を作るため、当事業年度より人事制度改定に着手し、2024年4月に施行するとともに賃金水準を引き上げました。これは優秀な人財の獲得、育成、活躍が当社グループの成長戦略上、重要な要素と位置づけ、人的資本への適切な投資、意欲的で優秀な人財の確保へ向けて実施したものであります。
人財確保の観点では上記に加え、事業の成長戦略に不可欠な人財を積極的に採用するため、多様なスキルや経験を有するキャリア採用を中核に添え、M&Aや事業提携等の幅広い手法を用いて人財の確保を行っております。また、未来を切り拓く人財を育成すべく、従業員のキャリア意向を起点として、仕事を通じた能力開発を推進しております。
今後も多様な人財が活躍する仕組みづくりを推進し、当社グループの事業成長の加速と、事業を通じた持続可能な社会への貢献を目指してまいります。
<人財マネジメントポリシー>
① 人的資本
ⅰ.人財育成方針
当社グループの事業成長には、無形資産である「人財」が必要不可欠と考えております。特に事業を創造しテクノロジーで具現化できる人財、専門知識を有するエキスパート人財など、多様な人財ポートフォリオを構築していく必要があると認識しております。また、当社グループは創業以来「ファーストペンギン・スピリット」をValueとし、現状に満足せずリスクのあることにも勇気と強い意志をもって真っ先に挑戦してまいりました。常識にとらわれない発想と柔軟性をもち、主体的な成長を促進できるよう施策を講じております。
その一環として改定後の人事制度では、従来からのマネジメントコースに加え、エキスパートコースをキャリアの選択肢として新設し、あらゆる職種で専門知識を有するエキスパート人財が活躍できる環境を構築しております。従業員一人ひとりがそれぞれの持ち味を発揮しながら成長できるよう、従業員のキャリア自律を上司が支援する仕組みを導入し、キャリア支援施策を強化することで、従業員の成長を加速してまいります。
未来を切り拓く人財を育成することを通じて当社グループの事業成長の加速と、事業を通じた持続可能な社会への貢献を目指してまいります。
ⅱ.育成や教育機会
当社グループは、全従業員に対するパーパス浸透やプライバシーやインターネットセキュリティに関する基礎的な研修に加え、スキル開発や新しいアビリティ取得のための教育や研修プログラムを設けております。
また、従業員がキャリアの方向性を自ら決めて、主体的な自己成長を目指せるよう、キャリアの棚卸と目標設定を行うキャリアワークショップや人事評価者向けにはメンバーのキャリア自律の支援に繋がるキャリア支援研修を実施しており、今後も新たなプログラムの追加を予定しております。
昨今では、会社と個人の関係、管理職とメンバーの関係を強化するために、心理的安全性をベースとしたマネジメント力強化プログラムの開発と運用にも力を入れております。具体的には管理職を対象に360度サーベイやエンゲージメントサーベイの結果をもとに今後の組織運営に役立てるための研修に加え、組織マネジメントに活用できるスキルアップ研修プログラムも自社独自で制作し、運用しております。
その他にも会社や事業を横断した人事異動を行うことで、当社グループの全体視点での事業推進に努めております。具体的には、次世代リーダー育成のための主体的なチャレンジの機会創出を目的とした社内公募制度「Raise Your Hand」や、重要事業と新たな成長機会を求める人財のマッチング型異動制度「Career Shift」の異動プログラムを展開しております。
当社グループでは今後も多様な強みを持つ人財を受け入れ、育成、登用することで、当社の創造性をより高め、成長を継続させることを目指してまいります。
ⅲ.ダイバーシティ関連
当社グループでは、変化が激しく多様な事業推進を実現するため、設立当初より性別や国籍、職歴等の要素に関係なく、能力や実績を重視した人財登用を実施しております。様々な文化や価値観、スキルを持つ人財を採用し、活躍できる場や機会を提供していくことで、多様性を醸成しております。その結果、全体におけるキャリア採用の構成比率は92.0%に及びます。
また女性従業員比率は37.9%となり、今後も積極的に女性の活躍促進を行い、職場環境の改善や制度構築に努めてまいります。当社では、女性の活躍を測る指標として、管理職比率に加え管理職志向率も当事業年度より取得しております。当事業年度における女性の管理職志向率は32.4%でしたが、今後の向上に向けて主に管理職手前の職階にある従業員を対象に意欲醸成のコミュニケーションを強化してまいります。今後女性の活躍促進においては、育児休業中の従業員に対する支援、男性育児休業取得を含む様々な課題解決に向けた具体的な施策を全従業員に向けて取り組んでまいります。
当社グループの事業はグローバルに展開しており、外国籍従業員(構成比9.5%)のみならず、バイリンガル人財は17.9%、外国育ち・留学経験を持ち合わせている人財も10.2%所属しております。国境を越え、地球規模での新しいテクノロジー実装のため、海外ベンチャーへの投資に加え、国内においても地方創生や地域コミュニティ活性化による、ステークホルダーとの対話や関係性を強化しております。
当社グループのパーパスを実現するためには、グループ会社間やセグメント間における多様な従業員同士の協働が引き続き重要と考え、より一層グループ内コミュニケーションの充実にも努めてまいります。
② 社内環境整備方針
当社グループは、働きやすい環境づくりの一環として、リモートワーク制度やフレックス勤務制度を継続し、従業員それぞれの生活やライフスタイルに合わせた働き方を選択できる環境づくりを行っております。仕事を通したQOL(Quality of life)の実現の観点においては、勤怠管理システムによる労働時間の管理や、360度サーベイやエンゲージメントサーベイ等のデータによるモニタリングと対策を行い、事故発生の防止や未病に努めております。同時に、福利厚生の充実に加え、働く子育て世代への支援として、ベビーシッター制度や法定よりも長い中学校就学の始期までの短時間勤務制度を導入しております。
組織コンディションを把握し、課題解決に繋げるため、管理職を対象とした360度サーベイを通して上司、同僚、部下のコンディション可視化や、エンゲージメントサーベイを通して従業員の仕事内容、職場環境、会社へのエンゲージメント状況を定期的にモニタリングし、結果をもとに改善アクションのための研修や組織長向けのワークショップを実施するなど、より良い組織作りに活かしております。
従業員と会社の関係性を強化するために、当社が掲げる「人財マネジメントポリシー」の具体的な取組みの一環として、希望した従業員を対象に当社グループを横断した従業員コミュニケーション創出を行うシャッフルランチ施策「DG Lunch Meetup」を導入しました。当事業年度の「DG Lunch Meetup」では、200名弱の従業員が希望者として参加し、セグメント横断で構成されたグループで月4回の頻度で実施しました。実施後の満足度調査では平均4.5/5.0を記録し、社内コミュニケーションの活性化に確実に繋がっているため、今後も安定的で継続的な施策として取組んでまいります。
今後も社会環境や従業員のライフステージの変化に柔軟に対応できる制度設計を行い、当社グループ事業目標達成の原動力となる従業員が、最高のパフォーマンスを発揮できる環境整備に努めてまいります。
③ 各種データ
当社グループでは、上記において記載した人財の多様性の確保を含む人財育成方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
<グループ会社※1の実績と目標値>
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2023年3月31日時点 |
2024年3月31日時点 |
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実績 |
実績 |
目標 |
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955人 |
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※2 |
3.8 |
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17.2% |
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16.7% |
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※1 連結の大部分を占めるのは国内連結会社(1,021名)であるため、上表の従業員数を除く実績および目標値は国内連結会社での開示としております。なお、エンゲージメント指数に関しては調査実施時点の国内連結会社を対象としております。
※2 トータルエンゲージメントとは、企業を構成する「仕事・職場・会社」の概念に紐づけ、これら3つへのエンゲージメントの合計として解釈したものであります。満点を5.0とし、4.0が「非常に高い」と判断される指標になります。組織調査の実施は外部ベンダーに委託しております。
④ リスク管理
人的資本に関するリスク管理については、全社のリスク管理に統合されているため、詳細は「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
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(1)事業環境に係るリスク |
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市場環境の変化について |
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[リスク] 当社グループが事業を展開するEコマース市場は継続的に拡大しておりますが、今後、個人消費動向の変化および景気動向等により、市場規模の拡大が停滞した場合には、当社グループの業績成長に影響を及ぼす可能性があります。 |
[対処方針] 当社グループはこれまで、インターネットをはじめとしたテクノロジーの進化に合わせ、時代に即したサービス展開を行うことで継続的な成長を実現してまいりました。足もとでは、Eコマース以外の事業領域にもサービスを拡充しているほか、次世代テクノロジーを活用した新たなサービス開発にも注力し、収益の多層化に取組んでおります。 |
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競合について |
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[リスク] 当社グループは、インターネット関連業務について技術面、情報面等の強化を図っていますが、一層の競争激化等により価格競争や広告宣伝費等の費用増加があった場合、業績に影響を与える可能性があります。 また、技術の進歩が目覚ましいインターネット関連分野においては、新たな技術による競争力を有した競合他社の出現により、将来の競争力が低下する可能性があります。 現在取り組む新規事業等におきましても、他社との競合や事業環境の急速な変化等により計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 当社グループでは、顧客のニーズに合致したサービスの開発・提供を継続に行うとともに、当社グループサービスの多様化とシナジーによる付加価値の向上に取組むことにより、競合他社との差別化及び競争力の強化に注力しております。 また、創業来培ってきたグローバルネットワークを軸として、世界中のスタートアップ企業へリーチすることにより、いち早く新たなテクノロジーの情報収集が可能となる体制を築いており、今後もネットワークの維持拡大に取組んでまいります。 |
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法的規制の可能性及び影響について |
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[リスク] 当社グループが展開する事業は、各種法定による規制を受けているほか、監督官庁の指針、ガイドライン等を踏まえた対応を行っています。これら法令の制定や改正、新たなガイドライン等や自主規制ルールの策定又は改定等により、事業の一部が制約を受けた場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 弁護士や外部諸団体等の第三者からの助言・情報収集を通じて、コーポレート本部を中心とする関係部署が事業に係る法的規制の導入・改廃に関する対応を行っております。今後も法定改正や規制変更等に伴う業績影響の可能性を排除できるよう、体制を強化してまいります。 |
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自然災害等について |
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[リスク] 大規模な自然災害等が発生した場合は、事業所等が直接被害を受け、事業の遅延、中断等が生じることにより、業績に影響を与える可能性があります。また、今後新たな感染症が発生・拡大した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
[対処方針] 自然災害、火災、感染症の流行等に対する損害を最小限にするための危機管理体制を重要なものと位置付けており、当連結会計年度にはリスクマネジメント室を新たに設置し、突発的な災害等への対応を検討しております。 |
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(2)セキュリティ及びシステムに係るリスク |
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情報セキュリティについて |
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[リスク] 何らかの理由により顧客情報が外部漏洩した場合は、社会的信用問題や損害賠償等の発生から、業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 事業毎に外部認証を取得するとともに、必要なセキュリティ対策を実施するなど、十分な対策を講じています。 |
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システムセキュリティについて |
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[リスク] ハードウェア・ソフトウェアの不具合、人為的ミス、通信回線の障害、コンピュータウィルス、サイバーテロのほか、自然災害等によりシステム障害が発生した場合、又は適切な対応ができなかった場合には、業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 通信ネットワーク・システムの二重化及び適切なセキュリティ手段等による障害回避の取組みのほか、設備投資、セキュリティ対策、運用技術者教育の充実等、必要な対策を講じています。 |
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(3)人財に係るリスク |
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人材の流動化及び人材の確保について |
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[リスク] 計画に沿った採用ができない場合、あるいは従業員の離職が増加した場合には、事業拡大に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 優秀な人財の獲得及び育成は当社グループの成長戦略上重要な要素であると認識しており、人的資本への適切な投資の一環として、賃金水準の引き上げをはじめとした待遇向上のほか、能力や実績を重視した人財登用を実施しております。 また、「人財マネジメントポリシー」を定め、従業員が活躍・成長していける土台作りに努めています。 |
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経営人材の不足について |
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[リスク] 事業戦略上の重要ポジションの従業員が離職した場合、あるいは、重要ポジションの後継者育成が遅れた場合、事業の進化や継続性に影響を及ぼす可能性があります。 |
[対処方針] 将来の経営幹部の育成を目的に候補者を選抜し、役員との対話プログラムを通じた経営視座の醸成を図るなど、次世代経営人材の育成に注力しております。 |
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(4)投資関連事業に係るリスク |
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スタートアップ企業への投資について |
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[リスク] 当社グループで投資するスタートアップ企業は、将来性において不確定要因を多々含んでおり、景気動向、技術革新、株式市場の変化等により、業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 投資先選定にあたり専門知識を有するメンバーで構成する会議体にて慎重に検討し、投資実行後も投資先における事業の成長と企業価値の向上に関与する等により、極力リスクを回避しております。 |
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投資関連事業における業績変動について |
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[リスク] 投資先スタートアップ企業の成長状況及び経済環境や新規公開を含む株式市場全般の動向等に大きく影響を受け、コントロールが及ばない外部要因が業績に重大な影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 定期的に投資先の時価、財務状況、資金調達状況及び競争環境等を把握することにより継続的なリスクのモニタリングを行うとともに、当社グループの財務状況とリスクのバランスを適切に管理しております。また、リスクや投資先との関係を勘案しながら、投資ポートフォリオを継続的に見直しております。 |
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(5)その他事業に係るリスク |
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知的財産権について |
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[リスク] 第三者が保有する特許権等を侵害している場合、損害賠償義務を負う可能性や技術等の使用を継続できなくなる可能性があります。また、他社の特許権等の使用が認められた場合、ロイヤリティーの支払い等により業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 第三者が保有する商標権、特許権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払い、知的財産権専門の弁護士や弁理士に随時相談する等の対策を行っています。 |
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訴訟の可能性について |
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[リスク] 顧客や第三者等との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。かかる訴訟が発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 「コンプライアンス・プログラム」を策定し業務の運営を行うことで、法令違反などの発生リスクの低減に努めています。 |
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M&Aについて |
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[リスク] 事業環境の悪化等により当初想定していた成果やシナジーが得られない場合、又は買収先企業の企業価値が大きく下落した場合等には、のれんの減損損失が生じる等、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 |
[対処方針] 当社グループは、市場環境の変化に柔軟に対応できる組織体制の構築に取組み、変化に迅速に対応できる意思決定プロセスの確立を目指してまいります。 |
これらのリスクに対するリスク管理体制を「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備してリスクマネジメントを行っているほか、リスク発生の可能性を認識した時点で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
ⅰ.財政状態
当連結会計年度末におきましては、主に現金及び現金同等物が減少した一方、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権や持分法で会計処理されている投資が増加した結果、資産合計は231,431百万円となり、決済事業等に係る営業債務及びその他の債務が減少した一方、社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が増加した結果、負債合計は139,293百万円となりました。
また、自己株式が取得により増加した一方、資本業務提携契約を締結した㈱りそなホールディングスを処分先とする自己株式処分により減少したほか、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加した結果、資本合計は92,138百万円となりました。
ⅱ.経営成績
当連結会計年度におきましては、当社グループの事業基盤であるプラットフォームソリューションにおいて、決済事業が非物販領域を中心に取扱高が増加する等、安定的に事業拡大したほか、ロングタームインキュベーションにおいて、㈱カカクコムの業績が堅調に推移したことにより、持分法による投資利益が前期を上回りました。また、前連結会計年度に計上した投資先の公正価値評価損からの反動もありました。これらの結果、収益は37,853百万円、税引前利益は6,298百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,806百万円と増収増益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におきましては、主に税引前利益を計上した一方、営業債権及びその他の債権が増加し、営業債務及びその他の債務が減少した結果、営業活動によるキャッシュ・フローは11,032百万円の使用となりました。
投資活動としましては、主に投資有価証券の売却による収入があった一方、持分法で会計処理されている投資の取得、無形資産の取得による支出の結果、投資活動によるキャッシュ・フローは8,763百万円の使用となりました。
財務活動としましては、主に社債の償還による支出があった一方、長期借入れによる収入、短期借入金の純増による収入の結果、財務活動によるキャッシュ・フローは15,931百万円の獲得となりました。
これらにより当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、49,571百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
ⅰ.生産実績
当社グループの事業は、提供する主要なサービスの性格上、当該記載が馴染まないことから、記載を省略しております。
ⅱ.受注実績
当社グループの提供する主要なサービスは、受注から売上までの期間が短期間であり、期中の受注高と販売実績がほぼ対応するため、記載を省略しております。
ⅲ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
|
|
プラットフォームソリューション |
(百万円) |
24,472 |
103.1 |
|
ロングタームインキュベーション |
(百万円) |
5,898 |
76.7 |
|
グローバル投資インキュベーション |
(百万円) |
5,877 |
- |
|
調整額 |
(百万円) |
1,607 |
271.4 |
|
合計 |
(百万円) |
37,853 |
125.9 |
※1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
※2 調整額は、セグメントに配分していない主に本社機能から生ずる金融収益等の全社収益であります。
※3 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ⅰ.財政状態
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
前期比 |
||
|
増減額 |
増減率 (%) |
||||
|
|
流動資産 |
144,776 |
152,094 |
7,318 |
5.1 |
|
非流動資産 |
71,498 |
79,337 |
7,838 |
11.0 |
|
|
資産合計 |
216,275 |
231,431 |
15,156 |
7.0 |
|
|
|
流動負債 |
94,780 |
104,401 |
9,621 |
10.2 |
|
非流動負債 |
39,522 |
34,892 |
△4,630 |
△11.7 |
|
|
負債合計 |
134,303 |
139,293 |
4,991 |
3.7 |
|
|
資本合計 |
81,972 |
92,138 |
10,166 |
12.4 |
|
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて15,156百万円増加し、231,431百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が3,764百万円減少した一方、決済事業等に係る営業債権及びその他の債権が9,389百万円、持分法で会計処理されている投資が8,044百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて4,991百万円増加し、139,293百万円となりました。この主な要因は、決済事業等に係る営業債務及びその他の債務が6,308百万円減少した一方、社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が14,637百万円増加したことによるものであります。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べて10,166百万円増加し、92,138百万円となりました。この主な要因は、自己株式が取得により5,000百万円増加した一方、資本業務提携契約を締結した㈱りそなホールディングスを処分先とする自己株式処分により10,181百万円減少したほか、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により5,806百万円増加したことによるものであります。
なお、セグメント資産及び負債については、経営資源の配分の決定及び業績を評価するための検討対象とはなっておりません。
ⅱ.経営成績
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比 |
|
|
増減額 |
増減率 (%) |
|||
|
収益 |
30,070 |
37,853 |
7,783 |
25.9 |
|
税引前利益(△損失) |
△13,881 |
6,298 |
20,179 |
- |
|
当期利益(△損失) |
△9,315 |
5,551 |
14,866 |
- |
|
親会社の所有者に帰属する 当期利益(△損失) |
△9,051 |
5,806 |
14,857 |
- |
|
当期包括利益 |
△9,539 |
6,187 |
15,726 |
- |
当連結会計年度の経営成績につきましては、収益は37,853百万円(前期比7,783百万円増、同25.9%増)、税引前利益は6,298百万円(前期は13,881百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,806百万円(前期は9,051百万円の損失)となりました。
当連結会計年度は、当社グループの事業基盤であるプラットフォームソリューションにおいて、決済事業が非物販領域を中心に取扱高が増加する等、安定的に事業拡大したほか、ロングタームインキュベーションにおいて、㈱カカクコムの業績が堅調に推移したことにより、持分法による投資利益が前期を上回りました。また、前期に計上した投資先の公正価値評価損からの反動により、連結業績は大幅な増益となりました。グローバル投資インキュベーションにおいては、保有する有価証券の売却が進むなど、中期経営計画における施策が進捗しました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
なお、2024年3月期を初年度とする新たな中期経営計画の発表に伴い、当連結会計年度より事業セグメントの区分を変更しております。前連結会計年度の数値につきましても、新たな事業セグメント区分に組み替えた数値を記載しております。
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比 |
||
|
増減額 |
増減率 (%) |
||||
|
プラットフォーム ソリューション |
収益 |
23,742 |
24,472 |
730 |
3.1 |
|
税引前利益 |
6,405 |
6,787 |
382 |
6.0 |
|
|
ロングターム インキュベーション |
収益 |
7,687 |
5,898 |
△1,789 |
△23.3 |
|
税引前利益 |
3,813 |
1,810 |
△2,003 |
△52.5 |
|
|
グローバル投資 インキュベーション |
収益 |
△1,950 |
5,877 |
7,827 |
- |
|
税引前利益 |
△11,833 |
1,372 |
13,205 |
- |
|
|
調整額 |
収益 |
592 |
1,607 |
1,015 |
171.4 |
|
税引前利益 |
△12,266 |
△3,672 |
8,594 |
- |
|
|
合計 |
収益 |
30,070 |
37,853 |
7,783 |
25.9 |
|
税引前利益 |
△13,881 |
6,298 |
20,179 |
- |
|
〔プラットフォームソリューション〕
プラットフォームソリューションでは、Eコマース(EC)及び対面店舗等のBtoC商取引に必要不可欠なクレジットカード決済をはじめ、QRコード決済、コンビニ決済等のあらゆる電子決済手段を提供する決済プラットフォーム及びインターネットとリアルを融合した総合的なデジタルマーケティングを展開しております。マーケティングを活用した小売事業者等への集客による決済機会の拡大、決済プラットフォームにより蓄積される膨大な消費者購買情報を活用した新たなデータマーケティングの開発等、当社グループのコアアセットである決済プラットフォームを軸とした事業基盤の拡大及び持続的な収益成長に向けて取り組んでおります。
当連結会計年度は、決済事業において、旅行、外食関連をはじめとした非物販領域において決済取扱高が伸長したほか、アライアンス戦略による加盟店開拓が順調に進捗し、対面決済領域における総合小売店の取扱いが積み上がったこと等から、決済取扱高は6.2兆円(前期比18.0%増)、税引前利益は同15.6%増となりました。マーケティング事業においては、決済との事業連携強化を企図した事業体制への移行を進めたほか、持分法適用会社において一時的な損失を計上したことから、減益となりました。
これらの結果、収益は24,472百万円(前期比730百万円増、同3.1%増)、税引前利益は6,787百万円(前期比382百万円増、同6.0%増)となりました。
〔ロングタームインキュベーション〕
ロングタームインキュベーションでは、決済プラットフォームを軸とした強固な事業基盤及び㈱カカクコムが運営する日本最大級のメディアにおいて有する顧客資産等を活用した戦略事業の開発及びインキュベーションを行っております。企業間取引(BtoB)決済領域における新たなサービスのほか、各産業のDX化を支援するプロダクト開発による事業者の業務効率化及びキャッシュレス化の促進、次世代メディアの開発、暗号資産の社会実装を目指した事業開発等を行うことにより、プラットフォームソリューションの更なる高付加価値化及び成長加速を図るとともに、中長期的に企業価値を牽引する事業の創出に取り組んでおります。
当連結会計年度は、㈱カカクコムの業績が堅調に推移したことから、持分法による投資利益が増加しました。また、不動産業界のDX化を推進するプラットフォーム「Musubell」の導入拠点数が増加したほか、BtoB決済領域における取扱高が積み上がる等、新規事業領域におけるサービス拡大が進捗しました。一方、前期に計上した関係会社株式売却益の反動によりセグメント業績は減収減益となりました。
これらの結果、収益は5,898百万円(前期比1,789百万円減、同23.3%減)、税引前利益は1,810百万円(前期比2,003百万円減、同52.5%減)となりました。
〔グローバル投資インキュベーション〕
グローバル投資インキュベーションでは、国内外のスタートアップ企業等への投資及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。創業以来、北米・日本・アジア・欧州を中心に築き上げてきた独自のディールソースである「グローバルインキュベーションストリーム」のほか、当社グループが運営する日本初のシードアクセラレータープログラム「Open Network Lab」等により世界中の有望なスタートアップ企業へリーチするとともに、当社グループ事業との連携を一層深めることにより、当社グループ及び投資先の企業価値の最大化を目指しております。
当連結会計年度は、前期に計上した投資先の公正価値評価損からの反動により大幅な増益となったほか、外国為替相場が前連結会計年度末に比べ円安傾向で推移したこと等により、外貨建営業投資有価証券を中心に公正価値評価額が増加しました。また、有価証券の売却及びファンドからの分配金等により、56億円の投資事業収入となりました。
これらの結果、収益は5,877百万円(前期比7,827百万円増)、税引前利益は1,372百万円(前期比13,205百万円増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比 増減額 |
|
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
13,473 |
△11,032 |
△24,505 |
|
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
1,628 |
△8,763 |
△10,391 |
|
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△5,214 |
15,931 |
21,146 |
|
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
53,335 |
49,571 |
△3,764 |
|
|
有利子負債(リース負債除く) |
52,703 |
67,339 |
14,637 |
|
|
|
短期 (1年内に償還または返済予定の 長期有利子負債は除く) |
10,630 |
27,270 |
16,640 |
|
長期 |
42,073 |
40,069 |
△2,003 |
|
ⅰ.キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、49,571百万円(前期比3,764百万円減、同7.1%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、使用した資金は11,032百万円となりました。支出の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の増加額9,492百万円、営業債務及びその他の債務の減少額6,429百万円であり、収入の主な内訳は、税引前利益6,298百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は8,763百万円となりました。支出の主な内訳は、持分法で会計処理されている投資の取得による支出7,047百万円、無形資産の取得による支出2,216百万円であり、収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入1,683百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、獲得した資金は15,931百万円となりました。収入の主な内訳は、長期借入れによる収入26,100百万円、短期借入金の純増額16,640百万円であり、支出の主な内訳は、社債の償還による支出25,000百万円、自己株式の取得による支出5,076百万円であります。
ⅱ.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(資金調達)
当社グループは、財務の健全性・安全性の維持と、事業の維持拡大に必要な資金の流動性の確保を意識した資金調達を基本方針としております。資金調達手段の多様化・安定化と、資本効率の向上を企図し、金融機関からの借入等、一部有利子負債を活用しております。また、安定的かつ機動的な資金調達を実現するために複数の金融機関との間で総額150億円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度末における有利子負債(リース負債除く)の残高は、67,339百万円であります。
(資金需要の主な内容)
当社グループの資金需要の主なものは、各事業セグメントにおける事業資金、販売費及び一般管理費等の営業費用等のほか、決済事業における収納代行業務の一時的な立替資金によるものであります。また、投資資金需要の主なものは、決済事業のシステム機能拡充・強化等によるもののほか、新規事業に係るシステム開発等の投資によるものであります。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務の健全性と資本効率の向上を両立させながら対応していく方針であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
業務提携契約等
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会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱デジタルガレージ |
㈱電通グループ |
日本 |
資本業務提携に関する基本合意 |
1.両社の知見やノウハウを結集し、最先端のマーケティング・テクノロジーを開発・駆使して、デジタル・マーケティング事業及びビジネス・インテリジェンス事業の拡大を図り、両社の企業価値を向上させることを目的とした業務提携 2.業務提携の目的のために必要な資金の調達として、当社が第三者割当増資を実施し、㈱電通(現 ㈱電通グループ)がその全てを引受ける資本提携 |
― |
|
㈱デジタルガレージ |
㈱クレディセゾン |
日本 |
業務提携に関する基本合意 |
国内及び海外におけるインキュベーション事業及びマーケティング事業に関する事業連携を目指した業務提携 |
― |
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㈱デジタルガレージ |
㈱講談社 |
日本 |
資本業務提携に関する基本合意 |
両社の知見やノウハウを結集し、グローバルに亘るコンテンツのデジタル配信及びマーケティング事業の拡大を図り、両社の企業価値を向上させることを目指した資本業務提携 |
― |
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㈱デジタルガレージ |
東芝テック㈱ |
日本 |
資本業務提携 契約書 |
両社の協業関係を長期的かつ継続的に構築し、決済ビジネス関連及びデジタルマーケティングサービス関連において共同で取組みを実施し、それぞれの方針の実現に向け、推進していくことを目的とした資本業務提携 |
― |
|
㈱デジタルガレージ |
㈱ジェーシービー |
日本 |
資本業務提携 契約書 |
事業上の関係を発展させ、共同営業モデルの構築や新たな対面EC決済ソリューション開発の共同検討等を行い、互いの企業価値を向上させるため、相互に協力することを目的とした資本業務提携 |
― |
|
㈱デジタルガレージ |
㈱りそなホールディングス |
日本 |
資本業務提携 契約書 |
事業上の関係を発展させ、両社の既存決済事業基盤の強化・拡大及び新規事業の共同開発等を実施し、互いの企業価値を向上させるため、相互に協力することを目的とした資本業務提携 |
― |
当社グループは、2010年7月からグローバルに活躍する事を目標にインターネットビジネスの起業を志すエンジニアや起業家を育成する「Open Network Lab」事業を行っております。起業家育成プログラム「Seed Accelerator」には、ソフトウエアだけでなくハードウエアの開発を行うチームまで、世界各国の幅広い分野から例年多数の応募をいただいており、プログラムを通じて選出チームのビジネスの成長を促してまいりました。プログラムのメンター(指導者)に国内だけでなく、海外から各分野のスペシャリストに加わっていただくことで、日本市場に限らず、世界市場に向けたサービスを育成する体制を整えております。こうした取り組みが着実に成果を上げてきていることから、本プログラムは、日本を代表する起業家育成プログラムとして世界からも注目を集めております。
当連結会計年度においては、2010年から実施するシードステージのスタートアップに特化した「Open Network Lab」に加え、北海道で展開するシードステージのスタートアップに特化した「Open Network Lab HOKKAIDO」、スタートアップシティ福岡地域での実証実験から事業化を加速するスタートアップに特化した「Open Network Lab FUKUOKA」、これまで分野特化で運営してきたオープンイノベーションを1つにまとめ既存の産業との共創による新たな価値創造の実現を目指し再始動した「Open Network Lab Open Innovation」の支援プログラムを実施いたしました。
2016年7月に発足し、当社及び㈱カカクコム(持分法適用会社)の共同で運営するオープンイノベーション型の研究開発組織「DG Lab」は、「Blockchain」「AI」「xR」「セキュリティ」「バイオヘルス」を重点分野として、これらの分野において高いレベルの技術を持つ国内外の投資先企業と連携して、新たなプロダクトやサービスの基礎となる研究成果を生み出すことを目指し活動しております。
2022年11月に設立した研究組織「Digital Architecture Lab」は、変化する世の中の状況に主体的に取り組み、グローバルな視点を持ち、人間の包括性、分散性、持続性、多様性という価値観やデジタル時代の感受性を重んじ、新しいアーキテクチャの構築を目指し活動しております。
当連結会計年度においては、DAO(非中央集権型組織)モデルの実証店舗としてweb3特化型会員制スペース「Crypto Cafe & Bar」を開設し、DAOモデルを実証するための取り組みを開始いたしました。
また、サンフランシスコのインキュベーションセンター「DG717」を拠点に、Generative AIや周辺技術で新たな価値を生み出すスタートアップを多角的に支援するSTARTUP STUDIO「GenLab」を始動しました。これは、シリコンバレーの起業家やエンジニアを中核に、当社グループの持つグローバルなネットワークをベースとしながら、日本、米国東海岸、ヨーロッパ等の企業も広く参加するコミュニティを構築し、革新的なコンセプトやサービスを開発する次世代の起業家を支援していくものであります。
これらにおける研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は