当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、道づくりのエキスパートとして歩んできた90余年にわたる建設技術をベースに、時代の変化や環境の変化に速やかに対応するため、「社是・社訓」「経営理念」のもと、「経営ビジョン」「経営基本方針」を掲げ、顧客満足度向上のための「道づくり」に誠実に取り組んでまいります。
《社是》
「創意研鑽」「協調親和」「信用高揚」
『論語と算盤』(清水建設㈱社是)
《社訓》
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一、 |
創意を活かし |
技術の向上と業務の改善に努めよう |
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一、 |
責任を自覚し |
緻密な計画と果断な実行に徹しよう |
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一、 |
誠意を尽くし |
相互の協調と秩序の確立に努めよう |
|
一、 |
身心を健全にし |
明朗な職場と幸福な家庭を築こう |
|
一、 |
社業に専念し |
会社の繁栄を通じて社会に貢献しよう |
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《経営理念》 |
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ESG経営を推進することによって、社会から信頼され、存続を望まれる企業になるとともに、持続可能な社会づくりに貢献する |
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《経営ビジョン》 |
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「従業員を大切にする会社」 |
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「道路建設を通じて社会に貢献する」 |
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「コーポレートガバナンスの充実」 |
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《経営基本方針》 |
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(安全衛生方針) 人命尊重を最優先した安全第一主義を徹底し、労働安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善、「安全文化」を定着させる |
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(品質方針) |
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全てのステークホルダーから高い信頼と評価を得る企業として持続的な発展を目指すよう品質マネジメントシステムを実行し継続的に改善する |
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(環境方針) |
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環境ビジョン「Nichido Blue & Green Vision 2050」に則り、地球環境負荷低減に向け環境マネジメントシステムを推進し、持続可能な地球環境の実現に貢献する |
(2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
①目標とする経営指標
当社グループは2024年5月に、当面3年間の基本方針と重点戦略を取り纏めた「中期経営計画2024(2024~2026年度)」を策定しました。
(経営戦略)
当社グループの主要事業は舗装工事を中心とした建設事業であり、経営環境の変化が激しい中、揺るぎない技術力をもって、都市型・地方型等各地域の実状に即したエリア戦略を策定し、市場競争力の強化を図っていくことが重要課題であると認識しております。また、地域舗装会社の体制をさらに強化することで相乗効果を発揮するとともに、成長戦略としてM&Aへの積極的な取組み、PPP/PFI事業への参画を推進してまいります。
(事業環境)
国土交通省については、国土強靭化実施中期計画が早期に策定され事業量が確保されるとともに、WISENET2050に基づくシームレスネットワークの構築、10年後が目標とされる高速道路を活用した自動物流道路の整備なども期待されると考えております。
また、防衛省については、防衛力抜本的強化において施設の強靭化が計画され、複数年に亘って事業が推進されると想定しております。
高速道路各社については、災害時の代替道路としての高速道路車線拡幅事業、また高速道路としての乗り心地維持のための舗装補修工事が今後も一定量が発注されると考えております。
民間市場については、今後も企業による建設投資が一定程度期待され、物流ネットワーク強化を目的とした拠点開発事業等、都市部を中心に成長が望めると考えております。
(中期経営計画2024における重要課題)
・コンプライアンスの徹底(法令等順守)
・提供サービスの品質と収益性の向上
・働き方改革から働きがい改革へ
・DE&Iの推進
(中期経営計画2024における成長投資方針)
手元資金をベースに、安定的な経営基盤構築のため、成長分野に対し優先順位をつけ、スピード感を持って設備投資を実行してまいります。
2024~2026年(3カ年累計) 135億円
|
(内訳) |
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①建設事業投資 |
15億円 |
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②製造・販売事業拠点整備投資 |
70 |
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③営業拠点環境整備投資 |
44 |
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④システム等情報投資 |
6 |
(中期経営計画2024の目標(連結))
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(単位:億円) |
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2023年度 実績 |
2024年度 計画 |
2026年度 目標 |
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建設事業受注高 |
1,435 |
1,380 |
1,390 |
|
建設事業売上高 |
1,315 |
1,350 |
1,370 |
|
製造・販売事業売上高 |
219 |
230 |
240 |
|
共創事業売上高(注) |
69 |
70 |
80 |
|
総売上高 |
1,605 |
1,650 |
1,690 |
|
営業利益 |
78 |
85 |
100 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
50 |
52 |
66 |
(注)従来の「賃貸事業」及び「その他」について、マルチステークホルダーと新たな事業展開を推進する「共創事業」に2024年度から統一しました。なお、2023年度実績については「賃貸事業」及び「その他」の売上高合計を記載しております。
(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応)
・現状認識
株主資本コスト(CAPM)は概ね5~6%程度と認識しております。
・評価
当社グループの自己資本利益率(ROE)は5.1%(2023年度)で資本コストを超える資本収益性を達成できているとは言えない状況にあります。主な要因は製造・販売事業の収益性悪化、自己資本比率の増加と考えております。また、PBRは1倍を下回る位置で推移しており、ROEの向上を含めた改善が必要であると認識しており、中期的にROE7%以上を目指してまいります。
②設備投資計画
「中期経営計画2024」の成長投資方針に則り、建設事業投資、製造・販売事業拠点整備投資、営業拠点環境整備投資、システム等情報投資を実行してまいります。
(2024年度実施ベースでは連結41億円を投資予定)
③技術研究開発
技術研究開発は、2050年のカーボンニュートラルの実現や資源循環などの環境問題解消技術のほか、少子高齢化による担い手不足を解消する生産性向上ICT、IoT技術、膨大な舗装ストックに対応した調査診断技術、モビリティーイノベーションへの対応技術、工事の安全対策技術、ライフサイクルコスト低減に資する高耐久舗装技術の充実等、幅広いニーズに的確に対応した研究開発を進めてまいります。
(3) 経営環境
当社グループの主要事業は舗装工事を中心とした建設事業であり、経営環境の変化が激しい中、揺るぎない技術力をもって、都市型・地方型等各地域の実状に即したエリア戦略を策定し、市場競争力の強化を図っていくことが重要課題であると認識しております。また、地域舗装会社の体制をさらに強化することで相乗効果を発揮するとともに、成長戦略としてのM&Aにも積極的に取り組んでおります。
親会社である清水建設㈱との連携強化については、大型プロジェクトへの協働での取組みは、新たな領域への挑戦として当社の事業規模の拡大と技術者のさらなるスキルアップに繋がると考えております。次に、同社の民間営業網を活用し、質の高い直接受注を増やすことが、当社の事業運営に貢献すると考えております。また、同社の最新のDXのノウハウと人財を活用することにより、当社グループの新技術の開発・導入、新工法開発、基幹システム・情報セキュリティの強化に繋がると考えております。これらの取組みは、環境負荷低減やコスト削減に繋がるとともに、両社の技術研究所、機械部門、管理部門での人財交流や連携を通じて、働き方改革による職場環境改善、コンプライアンス・ガバナンス強化といったESG経営の推進に繋がるものと考えております。
創業以来、90余年にわたって培った「技術の日本道路」というDNAを継承しながら同社との連携強化を図り、両社で事業領域の拡大に繋がるシナジー効果を発揮しながら、社会の発展に寄与してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、企業が中長期的な成長を遂げるために必要である3つの要素、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の観点からESG経営を実践しております。
(E)気候変動リスクへの対応として、循環型社会の形成、生物多様性への配慮など環境に対する長期的な目標の達成に向け、当社グループの環境ビジョン「Nichido Blue & Green Vision 2050」及び「エコ・ファーストの約束」の取組みを引き続き進めてまいります。
(S)社会課題として、働き方改革を全社で推進するとともに女性が活躍できる職場環境の実現、ダイバーシティ・マネジメントの実践など人的資本への投資による企業価値向上に努めてまいります。
(G)ガバナンスに関しては、清水建設㈱の連結子会社化に伴い、少数株主の利益保護の観点から取締役会の諮問機関として「特別委員会」を設置しており、同社又はその完全子会社との利益が相反する重要な取引・行為の有無について審議・検討を継続してまいります。
当社グループは、創立95年を迎えた本年、飛躍的成長を遂げる準備段階としての『成長基盤の強化期間』と位置付けて、「中期経営計画2024(2024~2026年度)」を策定しました。「コンプライアンスの徹底」「提供サービスの品質と収益性の向上」「働き方改革から働きがい改革へ」「DE&Iの推進」を重要課題として取組みを推進し、マルチステークホルダーとの価値創造を図って次世代につながる発展を目指してまいります。
①コンプライアンスの徹底(法令等順守)について
当社グループは、「中期経営計画2024」の重要課題の1つに「コンプライアンスの徹底(法令等順守)」を掲げ、「コンプライアンス基本理念」及び「コンプライアンス指針」を制定して役職員の行動規範としております。また、毎年7月30日を当社グループの「コンプライアンスの日」と定め、経営幹部を対象にした研修や職場での啓蒙活動を実施することにより、役職員の意識向上に努めております。
(コンプライアンスの強化等のための体制整備)
当社は、コンプライアンスの強化と業務上のリスクの未然防止を図るため、本社に「業務リスク管理委員会」を設け、所管部署として業務リスク管理部を置いております。また、支店に「支店業務リスク管理委員会」、事業所に「業務リスク連絡会」を設け、現業部門のコンプライアンス教育及びリスク管理を実施しております。
(内部通報制度)
当社グループの内部通報の受付窓口として、社内に「コンプライアンス相談窓口」、社外に「日本道路企業倫理の窓口」を設け、公益通報者保護法に対応した体制を整備しているほか、監査役が役職員からの通報を受け付ける「監査役直通窓口」を設けております。
(独占禁止法順守)
当社は、独占禁止法を順守するため、同業者との接触に係る事前審査及び結果報告、営業職員の行動記録の確認、工事の入札に係る役員・従業員の行動規則順守の確認等、公共入札のモニタリングシステムの運用等の施策を継続し、第三者による独占禁止法の順守状況の監査を定期的に実施しております。また、独占禁止法違反を懲戒事由として就業規則に明記し、違反に対する処分を厳格化しております。
(役員巡回会議の実施)
当社グループでは、従来から社長及び役員が各支店を回り、「役員巡回会議」を開催し、独占禁止法違反に関して法令順守やコンプライアンスの徹底、労働環境改善など全社で取り組むべき課題について説明を行ってきました。
経営者の声を直接届けると同時に、従業員との対話を継続することで、従業員エンゲージメント、組織エンゲージメントの向上を目指してまいります。
②提供サービスの品質と収益性の向上
(建設事業)
人命尊重を最優先に安全第一主義のもと、適正な工期を確保し、「質の高い仕事」をすることに徹して、企業価値を高める施策を確実に推進してまいります。大規模工事はもとより、中・小規模工事においても情報化施工、ICTの活用度を高め、災害や事故の発生を抑止するとともに品質向上、コストダウンによる収益率の向上を目指しております。
また、当社グループの重点実施事項として掲げております「エリア環境に適合した戦略的営業を実行し、質の高い受注を拡大する」という目標達成に向け、スピードと攻めの姿勢に徹した提案営業を強化するとともに、清水建設㈱と連携した新たな領域での民間営業を展開してまいります。
さらに、人財育成については4月に開設した土浦テクノBASEを活用して技術者のスキルアップのための教育を強化し、技術の伝承に取り組むとともに、次世代の担い手づくりも進めてまいります。
(製造・販売事業)
原材料価格や燃料、電力価格の高騰が続いている中、利益の確保に向け、コストに見合う価格改定を実施するとともに、引き続きコスト削減に取り組んでまいります。
また、リサイクル事業の拡大、営業力の強化と製造・販売拠点の効率化のための拠点再配置を進めることにより、シェアの拡大を図ってまいります。
さらに、安全環境対策についても、効果的な技術開発と環境に配慮した設備投資を実施するとともに、グリーン電力への切り替えや、化石燃料に代えて廃食油を始めとする代替燃料の導入も進めてまいります。
(海外事業)
海外現地法人を有しているマレーシア、タイにおいては、これまでの事業基盤を基に日系企業を中心としたさらなる新規営業先の拡充により、安定した事業量の確保に努めるとともに、日本企業ならではの高品質な建設サービス提供を目指してまいります。
また、新たな収益源となる事業として、高機能舗装材の販売促進や再生合材事業を推進するとともに、清水建設㈱との連携強化を通じて海外事業の拡大に取り組んでまいります。
さらに、将来を見据えた海外事業遂行に必要な人財育成も継続して実施し、収益体制の強化を目指してまいります。
(グループ事業)
当社との連携強化やM&A、PPP/PFI事業を含め、経営環境に応じたエリア戦略の実行による事業領域拡大、収益力強化と成長力底上げを実現するため、営業所・合材センター・地域舗装会社の連携をさらに深めるとともに、内部統制体制・コンプライアンス強化とICT環境の整備による効率化を進め、グループ支援体制の強化を図ってまいります。
③働き方改革から働きがい改革へ
当社は、「従業員を大切にする会社」を経営ビジョンとして掲げ、従業員一人ひとりが「自身の人生を豊かに楽しく!」を実感できるよう、ワークライフバランスを充実させる取組みを続けております。
働き方改革については、従来から、2024年問題をターゲットとして、従業員の労働状況の適切な把握と併せ、休日取得目標の設定、特定月に時間外労働45時間以内を必達するための活動を全支店で実施しており、上司と部下による「1on1ミーティング」を積極的に活用して課題解決に取り組んでいるところです。AI活用等DXによる業務のさらなる効率化などの施策を推進し「働きがい」を実感できる企業を目指してまいります。
④DE&Iの推進
「人財確保・育成に引き続き取り組むとともに、多様な属性を尊重し、公平な活躍の場を提供する」というDE&Iの行動指針に基づき、女性活躍、外国人の受入れ及び障がい者雇用を積極的に進めるとともに、人事制度の見直しなどの施策により、多様な社員がそれぞれの能力を真に発揮できる環境を整備し企業価値向上を実現してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、経営理念である『ESG経営を推進することによって、社会から信頼され、存続を望まれる企業となるとともに、持続可能な社会づくりに貢献する』ことを実践するためには、企業が果たすべき社会的責任をE(環境)S(社会)G(ガバナンス)視点で見据えた長期的な事業の継続が重要であり、同様の視点で経営の舵取りをしなければSDGsの達成は成しえないと考えております。当社グループを取り巻くあらゆるステークホルダーに対して責任を果たすために、「サステナビリティに関する基本方針」を策定し、経営理念、経営ビジョン、経営基本方針、コンプライアンス基本理念・指針に基づき、地球環境や社会の課題に真摯に取組み、積極的に役割を果たすとともに、ステークホルダーとの対話を尊重し、持続可能な社会の実現に貢献します。また、清水建設㈱の社是「論語と算盤」、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」の精神も共有し、様々な課題に向き合い、企業価値の向上を図ると同時に持続的な成長に繋げてまいります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、社長を委員長とする「ESG委員会」を設置し、当社グループのESGに関する方針と重点施策及びESGに関する情報開示(TCFD提言に基づく情報開示など)の審議・決定を行い、重要事項については、取締役会に報告を行い、監督する体制を構築しております。ESGに関して想定されるリスクについては、ESG委員会において報告・審議され、特定された環境関連リスクについては中央環境委員会、人権等のコンプライアンスに関わる社会・ガバナンス関連リスクについては業務リスク管理委員会に共有され、グループ全体でリスク管理体制の統合を図っております。
②戦略
≪経営基本方針≫
(安全基本方針)
人命尊重を最優先した安全第一主義を徹底し、労働安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善、「安全文化」を定着させる
(品質方針)
全てのステークホルダーから高い信頼と評価を得る企業として持続的な発展を目指すよう品質マネジメントシステムを実行し継続的に改善する
(環境方針)
環境ビジョン「Nichido Blue & Green Vision 2050」に則り、地球環境負荷低減に向け環境マネジメントシステムを推進し、持続可能な地球環境の実現に貢献する
≪中期経営計画2024(2024~2026年度)≫
時代の変化に柔軟に対応することを念頭に3カ年計画とし、これまでの施策を継続して実践していくとともに、「コンプライアンスの徹底(法令等順守)」「提供サービスの品質と収益性の向上」「働き方改革から働きがい改革へ」「DE&Iの推進」を重要課題としております。
ESG視点で取り組むべき課題を抽出し、重要課題(マテリアリティ)と位置づけております。特定したESGの各重要課題(マテリアリティ)は以下に記載のとおりです。課題解決の具体的な施策については、関係各部によって検討がなされ、全社で取組みを実施、推進を図り、その進捗はESG委員会が取り纏め取締役会に報告します。
③ESGマテリアリティの特定
≪環境≫
当社グループは、「持続可能な社会づくりに貢献する企業」として、事業活動を通じて起こりうる環境負荷を認識するとともに、可能な限りこれを低減させ、環境課題に対する社会的責任を果たし、次の世代に持続可能な社会を引き継いでまいります。2021年8月に環境ビジョン「Nichido Blue & Green Vision 2050」を策定し、カーボンニュートラル・循環型社会・生物多様性それぞれに関する行動指針を定め、温室効果ガス(CO2)の排出量削減、全事業で発生する廃棄物の削減、生態系の保全に努めるとともに社内浸透を図り、地球環境に配慮した経営を進めております。また、2022年2月には環境省から道路舗装業界では初となる「エコ・ファースト企業」として認定されました。企業が環境の分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードする事業活動」を行うことを「エコ・ファーストの約束」として宣言し、それを環境大臣が認定する制度です。今後も環境先進企業として環境ビジョンと併せてエコ・ファーストの約束を順守し、次の世代に持続可能な社会を引き継ぐ責任を果たしてまいります。
≪社会≫
当社グループが、高品質の工事・製品・サービスを提供し、全てのステークホルダーが安全・安心、快適に暮らせる社会インフラを支え続けるためには、それぞれの業務に従事する者の安全や労働環境、人権を守る必要があると考えております。また、会社と社会の持続的成長の実現には従業員とその家族が心身ともに健康で働き続けられることが重要であると認識し、2023年7月に「日本道路グループ健康経営宣言」を策定しました。この宣言に基づき、今後は全ての従業員とその家族の健康管理を経営的な視点で捉え、心身ともに健全で各個人の能力や個性を活かすことができる職場環境を形成し、活力ある企業として社会に価値を提供してまいります。
≪ガバナンス≫
当社グループは、経営の健全性・透明性・効率性の確保という視点から、2024年に「コーポレート・ガバナンス基本方針」を改定し、ステークホルダーとの関係を尊重した社内体制を整備構築しております。少数株主の利益保護の観点から、独立社外役員によって構成される「特別委員会」を設置し、親会社である清水建設㈱又はその完全子会社との直接取引のうち、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為の有無について審議・検討し、取締役会に助言・勧告を行っております。また、ガバナンスを健全に維持するため、経営幹部・取締役の多様性、スキル向上によるガバナンス機能の強化を図っております。今後もステークホルダーから信頼される企業であるためにコンプライアンスの徹底も継続し、公正で誠実な活動の実践と経営の透明性の維持向上に努めてまいります。
④指標
詳細は、「
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)
当社グループは、ESG経営の観点から気候変動対策の取組みを重要な経営課題の一つと捉えております。気候変動がもたらす「移行」及び「物理的」リスクと機会を適切に把握・分析して、対応策を経営・事業戦略へ反映します。また、これらの情報をステークホルダーに開示していくことは当社の企業価値向上と持続的成長につながるものと判断、2021年10月にTCFD提言への賛同表明と同時に「TCFDコンソーシアム」に加入し、2023年から同提言に沿った気候関連の情報開示を行っております。
①ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、気候変動を含めた環境問題を経営に影響を及ぼす重要課題と認識し、環境を担当する役員を選任しております。また、環境問題に関する基本方針や施策を審議する「ESG委員会(委員長:社長)」を設置しており、環境関連のリスクと機会を審議するとともに、環境目標である「環境ビジョン」等の進捗管理を行い、取締役会に四半期毎に報告しております。取締役会で決議された環境問題に関する重要決定事項は、「中央環境委員会(委員長:担当役員)」を通じて本社各部・支店・営業所・合材センター・子会社・関連会社・協力会社に伝達・共有され、環境関連のガバナンス体系を構築しております。
また、今後多様化が予想される気候関連のリスクについては、ESG委員会において報告・審議されております。特定されたリスクについては中央環境委員会にて当社グループのリスクを評価し、全社的なリスク管理体制の統合を図っております。気候変動関連リスクの管理にあたっては現業事業所の安全環境担当者又は支店各部門の安全環境担当者が、リスク情報の吸い上げ及びリスクの未然防止のための情報伝達や教育を行い、現業事業所及び支店各部門で自ら業務上のリスクを点検するための体制を整備しております。また、監査室の内部監査により、これらの実施状況を監視しております。
②戦略
当社グループでは、資材の調達・生産、施工・供給までのバリューチェーン全体を対象として、気候変動によるリスクと機会を洗い出し、事業への影響度と対応策について考察・分析を行っております。分析にあたってはIPCCやIEAが公表するシナリオを用いて、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに4℃上昇するとする4℃シナリオと、カーボンニュートラルへの取組みにより1.5℃~2℃程度に気温上昇が抑制される2℃未満シナリオの2つのシナリオを設定し、それぞれの世界観における2030年時点での当社グループへの影響について考察を実施しております。
(4℃シナリオ)
化石燃料需要の成り行き的な拡大などを背景に、化石燃料価格やアスファルト原材料価格が高騰すると予測しております。また、台風や大雨をはじめとする異常気象の激甚化に伴う物理的リスクの拡大により直接的な被害が想定されますが、同時に減災・防災関連工事の需要拡大が見込まれます。
(2℃未満シナリオ)
炭素税や電力価格の高騰により操業コストの増加が想定される一方で、再生可能エネルギー関連施設の工事が増加することが見込まれます。気象災害による物理的被害額は4℃シナリオと比較して半減する一方で、熱中症リスクをはじめとする慢性的な気温上昇による労働効率の低下は双方のシナリオともに同程度の影響が予想されます。
これらの分析を踏まえ、具体的な対応策を各事業で検討・立案し、不確実な将来世界のあらゆる可能性に備えるとともに、今後も様々な動向を踏まえて分析を定期的に行い、評価の見直しと情報開示の質・量の充実に努めてまいります。
③指標及び目標
当社グループは、「中期経営計画2019」の計画達成年である2023年を短期、SDGsのゴールである2030年を中期、パリ協定が目標とする2050年を長期目標として温室効果ガス(CO2)削減目標を設定し、事業活動における温室効果ガス(CO2)排出削減の取組みを推進してまいります。長期的な温室効果ガス(CO2)削減目標は段階的に見直しを図るとともに、削減目標を確実に達成するため、「環境ビジョン」で掲げた気候変動対策の行動指針に基づいた取組みを推進することとしSBT※1の認定取得に向けて2023年7月にコミットメントレターを提出しました。
温室効果ガス(CO2)排出量削減と目標 (単位:t-CO2)
|
対象Scope |
排出量基準 |
排出量実績 |
目標年排出量 |
||
|
2013年度 |
2021年度 |
2022年度※5 |
2030年度 |
2050年度 |
|
|
Scope1※2 |
|
|
- |
59,324 |
0 |
|
Scope2※3 |
|
|
- |
11,059 |
0 |
|
Scope1+2 |
|
|
- |
70,383 |
0 |
|
排出量基準年(2013年度)からの削減目標 |
|
|
|
△50% |
△100% |
|
Scope3※4 (Cat.1,2,3,4,5,6,7,13) |
|
|
- |
- |
- |
|
Scope1+2+3 |
|
|
- |
- |
- |
※1.SBT(Science Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、5年~10年先を目標年として企業が設定するGHG排出削減目標
2.Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
3.Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
4.Scope3:サプライチェーンを含めたScope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
5.2022年度実績は、集計後にホームページにて公開
(3)人的資本への対応
当社グループにとって「人」は最も重要な財産です。個人の能力を最大限に引き出し、持続的企業価値を創造するため、「中期経営計画2019」において「働き方改革の推進」を重要課題の1つとし、人財の確保と育成の強化を行ってまいりました。「中期経営計画2024」においては「働き方改革から働きがい改革へ」「DE&Iの推進」を重要課題に掲げ、経営ビジョンである「従業員を大切にする会社」を実現するために、長時間労働の削減、DE&I、DX投資、職場環境整備を推進してまいります。
戦略並びに指標及び目標
①人財育成方針・社内環境整備のための方針
当社グループでは、高い専門性と人間力を兼ね備えた人財の確保と育成に注力しております。職種毎の基礎教育標準を定め、OJT教育や年次・役職に応じて専門的技術やマネジメント力の習得を目的とした階層別研修を実施しております。2024年3月に技術研究所及び研修施設等を集約した複合施設「土浦テクノBASE」が茨城県土浦市に完成し、2024年4月から運用を開始しました。「技術の日本道路」の永続的な進化のため、技術と技能に関する教育を従来の「研修」から「習得」へと実現させてまいります。また、清水建設㈱との連携・人財交流も視野に入れ、人財の確保と人財育成を進めてまいります。道路舗装業界で働く上で必要不可欠である土木施工管理技士や舗装施工管理技術者などの資格については、各支店の技術センターが講習会を行い、日常業務との両立を支援しております。会社で定める資格を取得した社員に対して奨励金を授与する「資格取得奨励金制度」や、従業員が自ら自己啓発を通じて能力を高めていくために、資格取得やPCスキル向上、語学、コミュニケーションスキル、マーケティング、マネジメントなど豊富な講座を用意し、修了者には受講料の一部を助成する制度を設けております。また、2018年度から管理業務の効率化を目的として基幹システムの構築を進め、2023年10月より運用を開始しました。今後も、効率化・生産性向上につながる環境整備をさらに実施してまいります。
人財関連投資
|
|
( |
2022年3月末(実績) |
459,928 |
|
|
2023年3月末(実績) |
570,070 |
|||
|
2024年3月末(実績) |
|
|||
|
|
|
|||
|
2026年3月末(予定) |
958,000 |
|||
|
資格取得者数 (内、女性人数) |
(人) |
技術士 |
18 |
(-) |
|
1級土木施工管理技士 |
737 |
(18) |
||
|
1級舗装施工管理技術者 |
515 |
( 5) |
||
|
1級建設機械施工管理技士 |
84 |
(-) |
||
|
1級造園施工管理技士 |
78 |
(-) |
||
|
舗装診断士 |
23 |
( 5) |
||
|
1級建設業経理士 |
24 |
( 2) |
||
※人財関連投資として、採用活動に係る費用、各種研修や資格取得のための講習会開催に係る費用、資格取得奨励金、自己啓発のための通信教育・e ラーニング講座受講への助成金、土浦テクノBASEにおける人財育成に係る投資等を計上しております。
②DE&Iの推進のための方針
当社グループでは、役員・従業員一人ひとりが、性別、年齢、国籍、障がいなどの多様性を認め、全てのステークホルダーの人権を尊重し、生き生きと働く職場を目指して、2022年4月に「日本道路グループ人権基本方針」を策定しております。また、「人財確保・育成に引き続き取り組むとともに、多様な属性を尊重し、公平な活躍の場を提供する」というDE&Iの行動指針に基づき、女性活躍、外国人の受入及び障がい者雇用を積極的に進めるとともに、2025年4月より運用を開始する人事制度においては女性総合職数を維持、2026年には女性管理職を2024年3月末の2倍とするなど新たな目標の設定と現行制度の見直しなどの施策により、多様な社員がそれぞれの能力を真に発揮できる環境を整備し企業価値向上を実現してまいります。
当社グループは経営ビジョンに「従業員を大切にする会社」を掲げ、お客様の満足を果たす当事者である「従業員」が満足し、楽しく生き生きと、自分の仕事に誇りを持って働くことが重要であると考えております。グループ全従業員を対象に、2011年度から隔年で実施している「従業員満足度調査」は、2023年度調査では52.4%と過去最低のポイントとなりました。この調査結果を真摯に受け止め、2024年4月から適用された罰則付きの時間外労働の上限規制への対応、人事制度改革、DE&Iの推進など実効性のある施策を展開し、従業員の満足度向上に努めます。
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対象 |
時期 |
実績 |
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2024年3月末(実績) |
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2022年3月末(実績) |
3.3 |
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2023年3月末(実績) |
3.2 |
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2024年3月末(実績) |
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2015年度(実績) |
68.1 |
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2017年度(実績) |
62.6 |
|
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2019年度(実績) |
58.0 |
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2021年度(実績) |
61.1 |
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2023年度(実績) |
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タイ日本道路㈱、日本道路マレーシア㈱にて138名の現地職員を雇用しているほか、当社でも技術系4名、事務系1名の外国籍社員が現場の最前線で活躍しております。障がい者雇用については法定雇用率(現行2.5%)を上回る雇用を継続しており、応募者の職場実習受け入れ、個々の障がいに応じた職場環境の提供など、採用後の定着を見据えた取組みを行っており、今後安定して3.0%を目指すことを目標といたします。
このほか男性社員の育児休暇取得率向上などの育児・介護休暇を含め、仕事と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備など多様な働き方を推進する取組みを進めております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(特に重要なリスク)
(1) 自然災害によるリスク(事業継続計画の観点)
当社グループの事業所及び製造・販売拠点周辺で自然災害(地震、津波、洪水、暴風雨等)が発生し、人的被害や生産設備等に物的被害が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
また、感染症の感染拡大(新型コロナウイルス、新型インフルエンザ等)が発生した場合には、経済情勢が悪化することで建設市場の縮小による受注機会の減少並びに従業員や協力業者が感染し、事業所及び製造・販売拠点の閉鎖や工事が中断した場合は、業績に影響を与える可能性があります。
そうした事態に備え、当社グループでは、自然災害や感染症の感染拡大のリスクに対応したBCP(事業継続計画)を地域や事業に応じて策定し、工事現場、事業所及び製造・販売拠点における非常時の初動対応、安否確認方法、対策本部の設置基準と役割等を定め、自然災害や感染症の感染拡大時に適切な対応が取れる仕組みを構築しております。また、人的、物的被害の発生を防ぎ、万一被害が発生した場合も被害を最小限に抑えるために、計画的な設備投資の実施や定期的な防災訓練の実施等の対策をとっております。
(2) 法的規制のリスク
当社グループの事業活動においては、建設業法、独占禁止法等をはじめとする法令が適用され、事業を展開する各国においても現地の法的規制が適用されております。これらの法的規制や企業に対する社会的要請に反する行為があった場合には、刑事罰、行政処分、損害賠償請求、社会的信用の低下等により、業績に影響が生じる可能性があります。また、法令の制定、改廃等があった場合には、対応費用の増加等により業績に影響が生じる可能性があります。
当社グループは業務リスク管理体制の運用を強化し、社内規程の整備や教育研修を通じてコンプライアンスの推進、企業倫理の向上を図り、法令違反の顕在化リスクの低減に努めております。
(3) 情報セキュリティリスク
当社グループが、標的型攻撃メールやマルウェアによるウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合、また、従業員の過失等によって顧客に関する情報、経営・技術・知的資産に関する情報、個人情報等の情報が漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、サーバー等情報関連機器はクラウドサービスを活用し運用保守の効率化、セキュリティ向上、BCP対策を図っております。また、情報システム運用に関する危機管理マニュアルを定め、社内に周知するとともに、定期的にe-ラーニングを用いた情報セキュリティ教育や従業員対象の標的型攻撃メール訓練の実施等の対策を取っております。
(重要なリスク)
(4) 官公庁工事減少のリスク
当社グループの建設事業及びこれに関連する建設用資材の製造・販売事業は、公共投資の動向に大きく影響を受けます。官公庁発注建設工事の事業量が予想以上に縮減された場合や、官庁工事の入札地域要件がさらに強化された場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、民間受注を確保するために、自動車産業・スポーツ・物流の3部門を強化し、スピードと攻めの姿勢に徹した提案型営業を実施し、公共投資削減による官庁工事受注の減少を最小限に留めるよう努めております。
(5) 会計上の見積り前提変動のリスク
当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたって、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を計上する方法の適用、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度等に関して見積りを行っております。これらの見積りは、将来に関する一定の前提に基づいて作成しており、国内外の経済活動に多大な影響を与える可能性のある自然災害、感染症の感染拡大等予期せぬ事象の発生により、その前提と大きく異なった場合、業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応については、会計上見積り時に、入手可能な情報に基づき合理的な金額を算出するよう努めております。
(6) 収益性悪化のリスク
当社グループの建設事業及び製造・販売事業において、アスファルト合材の主要材料であるアスファルト及びその製造燃料である重油等の価格変動を、製品販売価格、請負代金に転嫁させることができない場合、業績に影響を与える可能性があります。
資材価格変動の理由は、海外の地政学的要因の他、為替の動向、需給バランス、投機的要因、パンデミック等、要因は様々で想定が困難ですが、調達専門部署による購買対策の推進や早期の製品販売価格への転嫁等により影響を最小限に留めるよう努めております。
また、資材価格や人件費の高騰の影響を受け、既受注の工事費用が増大する可能性があります。適正な工期の設定を発注者と協議するとともに、価格転嫁を適宜実施することでリスクの低減を図ってまいります。
今後受注する案件については、見積り提示時における条件設定と適正な価格の算定を確実に実施してまいります。
(7) 取引先の信用リスク
当社グループでは経営の多角化を推進しており、その取引先は多岐にわたっております。急激な事業環境の変化により取引先に信用不安が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。取引に際しての与信・債権管理を徹底し、信用リスクの軽減に努めております。
(8) カントリーリスク
当社グループは、東南アジア地域を中心に海外事業を展開しており、当該国の政治・経済・社会状況の不安定化や混乱及び予期しない法律・規制の変更等、また自然災害、感染症の感染拡大等により、事業投資における資金回収が困難になった場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、顧客との契約条件において、不可抗力条項等を設定するなどの対策を講じ、また、情報収集等によりリスクの低減に努めております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の日本経済は、原材料価格の高騰、円安の進行や地政学的な要因はあるものの、経済活動の正常化、雇用・所得環境の改善や価格転嫁の進展を受け、個人消費や設備投資を中心とした民間需要を主導に回復基調で推移しました。
当社グループの主要事業である建設業界においては、政府建設投資が引き続き20兆円を上回る水準を維持し、民間建設投資も原材料価格高騰の懸念はあるものの、好調な企業収益を背景に設備投資マインドは強く、底堅く推移しました。
このような状況下、当社グループは、シミズグループと連携し新たな領域での受注獲得、官庁工事は積算精度・技術提案力の強化による受注確保、民間工事は質の高い受注拡大に向け、エリア環境に適合した戦略的営業を実行した結果、工事受注高は143,513百万円(前連結会計年度比12.2%増)、工事売上高は131,578百万円(同3.8%増)、製品等を含めた総売上高については160,519百万円(同3.3%増)となりました。
利益については、建設事業において徹底した工事管理により採算性が向上したこと等により、売上総利益は18,264百万円(同21.3%増)、営業利益は7,833百万円(同37.5%増)、経常利益は7,994百万円(同35.0%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前年に投資有価証券売却益を計上したことによる反動減により5,053百万円(同11.4%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。(セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
(建設事業)
当社グループの主要部門であり、売上高は131,582百万円(同3.8%増)、営業利益は9,050百万円(同23.0%増)となりました。
(製造・販売事業)
売上高は32,237百万円(同1.0%増)、営業利益は2,443百万円(同98.3%増)となりました。
(賃貸事業)
売上高は6,803百万円(同6.2%増)、営業利益は529百万円(同1.1%増)となりました。
(その他)
売上高は1,281百万円(同0.8%減)、営業利益は291百万円(同1.5%増)となりました。
また、当連結会計年度の財政状態は、次のとおりです。
(資産の部)
当連結会計年度の資産合計は、149,926百万円(同1,924百万円減、1.3%減)、流動資産は109,042百万円(同3,946百万円減、3.5%減)、固定資産は40,883百万円(同2,022百万円増、5.2%増)となりました。
主な要因は、土浦テクノBASEの建設等により建物・構築物が3,131百万円増加し、当社が取引業者に対しての支払条件について、現金比率の引き上げ及び支払手形サイトを短縮させたことにより、現金預金が4,557百万円減少しました。
(負債の部)
当連結会計年度の負債合計は、49,711百万円(同5,229百万円減、9.5%減)、流動負債は40,430百万円(同6,715百万円減、14.2%減)、固定負債は9,281百万円(同1,486百万円増、19.1%増)となりました。
主な要因は、借入金の更新に伴い借入金が3,000百万円増加し、下請代金の支払条件改善等により支払手形・工事未払金等が3,116百万円及び電子記録債務が5,284百万円減少したことによります。
(純資産の部)
当連結会計年度の純資産合計は、100,214百万円(同3,304百万円増、3.4%増)となりました。
主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を5,053百万円計上し、株主配当金を2,460百万円支払ったことによります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローは、営業活動により92百万円、財務活動により536百万円それぞれ資金が増加し、投資活動により5,204百万円資金が減少しました。
その結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ4,543百万円減少し33,585百万円(前連結会計年度末は38,129百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益の計上により7,816百万円資金が増加し、下請代金の支払条件改善等による仕入債務の減少から8,430百万円資金が減少したこと等により92百万円の資金増加(前連結会計年度は10,918百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の売却による収入で1,334百万円資金が増加し、土浦テクノBASEの建設、製造・販売拠点の拡充更新等により有形固定資産の取得による支出で5,708百万円資金が減少したこと等により5,204百万円の資金減少(同307百万円の増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
借入金の更新に伴う長期借入れによる収入で3,100百万円資金が増加し、配当金の支払で2,460百万円資金が減少した等により536百万円の資金増加(同3,349百万円の減少)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 受注実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
建設事業(百万円) |
127,896 |
(6.3%増) |
143,513 |
(12.2%増) |
(b) 売上実績
|
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
建設事業(百万円) |
126,743 |
(2.2%減) |
131,578 |
(3.8%増) |
|
製造・販売事業(百万円) |
22,076 |
(9.2%増) |
21,984 |
(0.4%減) |
|
賃貸事業(百万円) |
5,350 |
(0.7%増) |
5,766 |
(7.8%増) |
|
その他(百万円) |
1,182 |
(10.3%減) |
1,189 |
(0.6%増) |
|
合計(百万円) |
155,353 |
(0.7%減) |
160,519 |
(3.3%増) |
(注)1.当社グループでは建設事業以外の受注実績はグループ各社の受注概念が異なるため記載しておりません。
2.当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3.セグメント間の取引については相殺消去しております。
4.( )内は、前連結会計年度比です。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
|
期別 |
工種別 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
舗装工事 |
42,836 |
73,201 |
116,038 |
74,695 |
41,342 |
|
土木工事 |
19,836 |
38,426 |
58,262 |
35,910 |
22,352 |
|
|
建築工事 |
339 |
709 |
1,049 |
679 |
370 |
|
|
計 |
63,012 |
112,337 |
175,350 |
111,285 |
64,065 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
舗装工事 |
41,342 |
81,973 |
123,315 |
75,455 |
47,860 |
|
土木工事 |
22,352 |
46,978 |
69,331 |
40,082 |
29,248 |
|
|
建築工事 |
370 |
19 |
389 |
384 |
4 |
|
|
計 |
64,065 |
128,970 |
193,035 |
115,921 |
77,113 |
(注)1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.次期繰越工事高は、(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
工種別 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
舗装工事 |
66.8 |
33.2 |
100 |
|
土木工事 |
66.6 |
33.4 |
100 |
|
|
建築工事 |
100.0 |
- |
100 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
舗装工事 |
65.2 |
34.8 |
100 |
|
土木工事 |
58.2 |
41.8 |
100 |
|
|
建築工事 |
100.0 |
- |
100 |
(注)百分率は請負金額比です。
完成工事高
|
期別 |
工種別 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
舗装工事 |
32,543 |
42,152 |
74,695 |
|
土木工事 |
5,801 |
30,109 |
35,910 |
|
|
建築工事 |
- |
679 |
679 |
|
|
計 |
38,344 |
72,941 |
111,285 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
舗装工事 |
29,314 |
46,140 |
75,455 |
|
土木工事 |
7,893 |
32,188 |
40,082 |
|
|
建築工事 |
- |
384 |
384 |
|
|
計 |
37,208 |
78,713 |
115,921 |
(注)1.完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
|
発注者 |
工事名 |
|
国土交通省 北海道開発局 |
新千歳空港 北側末端誘導路新設外工事 |
|
中日本高速道路㈱ |
新東名高速道路 駿河湾沼津SA~新富士IC間6車線化工事 |
|
日本中央競馬会 |
京都競馬場整備工事(馬場工区) |
|
(一財)日本自動車研究所 |
ADAS試験場新設工事 |
|
学校法人 亜細亜学園 |
日の出キャンパス再開発計画第3期工事 |
当事業年度
|
発注者 |
工事名 |
|
国土交通省 近畿地方整備局 |
大野油坂道路荒島第2トンネル下山地区舗装工事 |
|
国土交通省 北海道開発局 |
新千歳空港 南側A10誘導路新設外工事 |
|
東日本高速道路㈱ |
関越自動車道 高崎管内舗装補修工事 |
|
本州四国連絡高速道路㈱ |
令和4年度瀬戸中央自動車道舗装補修工事 |
|
学校法人 青山学院 |
V棟スタジアム人工芝敷設工事 |
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりです。
|
期別 |
相手先 |
金額(百万円) |
完成工事高総額に対する割合(%) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
清水建設㈱ |
14,577 |
13.1 |
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
清水建設㈱ |
18,407 |
15.9 |
次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
|
工種別 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
|
舗装工事 |
29,923 |
17,937 |
47,860 |
|
土木工事 |
12,651 |
16,597 |
29,248 |
|
建築工事 |
- |
4 |
4 |
|
計 |
42,574 |
34,539 |
77,113 |
(注)次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
|
発注者 |
工事名 |
完成予定年月 |
|
国土交通省 北陸地方整備局 |
R5新発田維持管内舗装修繕工事 |
2024年11月 |
|
中日本高速道路㈱ |
東海環状自動車道 山県IC~糸貫IC間舗装工事 |
2025年8月 |
|
防衛省 沖縄防衛局 |
空自那覇外(5)駐機場改修等土木その他工事 |
2026年3月 |
|
学校法人 佐藤栄学園 |
平成国際大学 サッカー場・野球場改修工事 |
2024年6月 |
|
清水建設㈱ |
阿武隈風力発電所建設工事 |
2024年12月 |
製造・販売事業におけるアスファルト合材等製品の販売状況
|
期別 |
アスファルト合材 |
その他売上高 (百万円) |
売上高合計 (百万円) |
|
|
売上数量 (千t) |
売上高 (百万円) |
|||
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
1,961 |
20,559 |
3,221 |
23,780 |
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
1,907 |
20,751 |
3,365 |
24,117 |
(注)その他売上高は、アスファルト乳剤、砕石等の販売、機械の賃貸等の売上高です。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、総売上高は160,519百万円(前連結会計年度比3.3%増)、営業利益は7,833百万円(同37.5%増)、経常利益は7,994百万円(同35.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,053百万円(同11.4%減)となりました。
(単位:百万円)
|
|
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
増減率 |
|
建設事業受注高 |
127,896 |
143,513 |
12.2% |
|
建設事業売上高 |
126,743 |
131,578 |
3.8% |
|
製造・販売事業売上高 |
22,076 |
21,984 |
△0.4% |
|
賃貸事業等売上高 |
6,533 |
6,956 |
6.5% |
|
総売上高 |
155,353 |
160,519 |
3.3% |
|
営業利益 |
5,695 |
7,833 |
37.5% |
|
経常利益 |
5,920 |
7,994 |
35.0% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
5,704 |
5,053 |
△11.4% |
(建設事業)
「エリア環境に適合した戦略的営業を実行し、質の高い受注」を重点実施事項とし、スピードと攻めの姿勢に徹した提案型営業を展開し、特に、自動車関連、スポーツ関連、物流関連を重点3分野と位置付けて民間営業強化を行った結果、当社での民間受注高は77,223百万円(前事業年度比5.1%増)となりました。さらに、官庁受注を確保するため積算制度・技術提案力の強化等に注力したことで、官庁受注高は51,747百万円(同33.1%増)となりました。その結果、連結での工事受注高は143,513百万円(前連結会計年度比12.2%増)、工事売上高は131,578百万円(同3.8%増)となりました。
利益については、「現場力(施工体制面+管理面)向上による収益力アップ」を重点実施事項とし、適正な価格転嫁と徹底した工事管理により採算性が向上し、完成工事総利益は14,501百万円(同16.6%増)となりました。
(製造・販売事業)
「営業力強化とコスト意識の徹底による製造数量と収益の向上」を重点実施事項とし、営業活動を行いましたが、市場規模が縮小し製造数量が減少したことにより、製品売上高は21,984百万円(同0.4%減)となりました。
利益については、原油価格の高騰、円安の影響によるアスファルト価格の高止まり等によるコスト増、価格転嫁の遅れなどにより、計画値には達しなかったものの、製品売上総利益は2,319百万円(同84.2%増)となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2024年5月に「中期経営計画2024(2024~2026年度)」を策定しており、当社グループを取り巻く事業環境を踏まえ、企業価値向上に向けた重要課題として、「コンプライアンスの徹底(法令等順守)」「提供サービスの品質と収益性の向上」「働き方改革から働きがい改革へ」「DE&Iの推進」を掲げて経営を進めることで、マルチステークホルダーとの価値共創を推進する計画としております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金需要の主なものとして、工事施工に係る工事原価、合材製造に係る製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用、設備投資等があります。設備投資については、建設事業における施工用機械、製造・販売事業におけるアスファルトプラント設備更新及び環境に配慮した設備新設、拠点増設による土地購入、賃貸事業における賃貸資産の購入等があります。
運転資金については、自己資金、金融機関からの借入による資金調達の他、取引銀行2行と43億円の貸出コミットメント契約(借入実行残高なし)及びコマーシャル・ペーパー発行のための格付を取得するなど、必要に応じた資金調達方法を確保しております。
また、資金の流動性を確保するために、グループ資金を当社に集中させ、当社の運転資金及び資金需要のある子会社に貸付を行っております。
当連結会計年度末の当社グループの借入金は9,700百万円、現金及び現金同等物は33,585百万円となりました。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を計上する方法の適用、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度等、会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、連結財務諸表等に反映されております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
これらの見積りについては、継続して評価、見直しを行っておりますが、自然災害、感染症の感染拡大等予期せぬ事態が発生し、国内外において経済活動に多大な影響を与える等の環境の変化により、実際の結果は見積りと異なることがあります。
特記事項はありません。
当社は、技術部、技術研究所を主体として、高度化、多様化する社会的ニーズに応えるべく技術開発活動を行っております。
2024年4月に開設した土浦テクノBASEを拠点とし、同施設に移転した技術研究所、機械センターを中心にマルチステークホルダーとの共創を加速させてまいります。
また、国立研究開発法人土木研究所等の公的機関や民間企業及び大学などの教育機関との共同研究開発にも積極的に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費は
2024~2026年度の3カ年の研究開発費は2,300百万円を予定しており、積極投資により収益性の向上に資する研究開発を推進させてまいります。
なお、連結子会社においては、研究開発活動は行っておりません。
当連結会計年度における研究開発活動の概要は次のとおりです。
(1)舗装の長寿命化に資する技術開発
ライフサイクルコスト低減に寄与する技術として、鋼床版・RC床版の両方に適用が可能で、耐久性の高い改質グースアスファルト混合物「ハイブリッドグース」を開発しました。また、既設橋梁のメンテナンスを目的として、「速硬性」を有する新たなラテックス改質速硬コンクリート「LMFC」や老朽化や損傷が進行した道路橋床版を補強・保護することで延命を図る特殊モルタル材料「スラブテクト」を開発しております。これらの材料を補修用材料として用いることで、床版や舗装の延命に寄与する技術として展開を行っております。
その他にも、安価で効率的な舗装延命工法であるリフレッシュシールMix-Hの派生技術として、既設アスファルト舗装やコンクリート舗装の応力緩和層にリフレッシュシールMix-Hを使用したひび割れ抑制工法も開発しており、普及に努めております。
(2)施工の省力化・高度化・安全に資する技術開発
i-Construction(アイ-コンストラクション)に対応した3Dスキャナ等の測量技術の活用及び舗装施工機械をコントロールする情報化施工について、より一層の省力化、省人化、高度化を図っております。
また、カメラ画像を用いて段差を検知しアスファルトフィニッシャのスクリード伸縮及びステアリングを自動化する技術を開発実用化しました。
高度な技術が必要な各種テストコースの設計技術、施工機械、施工技術の開発を行い、民間工事受注の拡大に寄与しております。
(3)道路ストックの効率的補修に資する技術開発
3D路面測定が可能な高性能路面形状測定車を導入しました。本車両は、従来の測定車では計測が難しいコンクリート舗装のひび割れや路面の凹凸などを検出することができ、舗装の健全性の診断が可能なシステムとなっております。本技術の開発により、これまでは人力で行う必要があった路面調査を車両で測定できるようになり、舗装点検技術の高度化や効率化に寄与しております。
(4)環境に優しい技術開発
環境に優しい技術として、廃ペットボトルを原料とする特殊添加剤を使用し、高耐久舗装である「スーパーPETアスコン」及び再生アスファルト混合物をベースとした「再生PETアスコン」を開発し、ペットボトルの再生利用に貢献しております。
また、道路分野において脱炭素社会の実現にさらに貢献していくため、道路でエネルギーを創出する路面太陽光発電舗装の開発を進めております。
さらに、アスファルト廃材から骨材として再生するMechanical Grinding技術を開発し、実用化に向けて試験施工を開始しております。
(5)労働環境、施工環境の改善に資する技術開発
人財不足、熟練技術者不足、作業員の高齢化に対応するため、新たな分野として異業種との連携による作業効率の改善技術、作業環境改善技術、AI、IoT技術を活用した自動施工技術、VR技術による社員教育技術の開発にも取り組んでおります。
今後も、あらたに策定した「中期経営計画2024」に基づきSDGsを基調とした中長期開発計画として、「Nichido Mirai Tech-Plan 2050」にて5つの開発目標を掲げ、多様化する社会的ニーズに応えるべく技術開発活動を行ってまいります。
・カーボンニュートラルの実現へ向けた技術開発
・アスファルト代替バインダ、再利用、リサイクル技術開発
・DX技術の活用と働き方改革へ向けた技術開発
・既存インフラの老朽化対策技術開発
・Society5.0で実現する社会への対応技術開発