文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、独自の強みである「混合分散(まぜる)」「精密塗布(ぬる)」「高精度成形(かためる)」を柱とする「アナログコア技術」に立脚した事業を成長の主軸と位置付け、事業ポートフォリオ改革を進めるとともに、すべてのステークホルダーに最高の価値を提供する「価値創出企業」となることをめざしています。
また、以下を経営の基本方針としています。
a.経営理念
当社グループは、その創業の精神である“和協一致”、“仕事に魂を打ち込み”、“社会に奉仕したい”を継承しつつ、「和協一致 仕事に魂を打ち込み 社会に貢献する」を社是とし、今後もマクセル人としての誇りを堅持し、優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献することを基本理念とします。
あわせて、企業が社会の一員であることを深く認識し、公正かつ透明な企業行動に徹するとともに、環境との調和、積極的な社会貢献活動を通じ、良識ある市民として真に豊かな社会の実現に尽力します。
b.ミッション
当社グループは、優れた技術や製品の開発を通じて持続可能な社会に貢献することをめざし、「独創技術のイノベーション追求を通じて持続可能な社会に貢献する」をミッションとします。
c.ビジョン
当社グループは、すべてのステークホルダーにとってのMaximum Excellence(最高の価値)を創造する「価値創出企業」となることをめざし、「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとってのMaximum Excellenceを創造する」をビジョンとします。
d.バリュー
当社グループがステークホルダーに対して提供し続けるべき価値や強みを、Technological Value(技術価値)、Customer Value(顧客価値)、Social Value(社会価値)の3点とします。ミッションとビジョンの実現に向け、これらの価値を大切にしていきます。
e.スローガン
当社グループ共通のブランドスローガン(合言葉)を「Within, the Future」-未来のなかに、いつもいる-、とします。
f.マクセルグループ行動規範
当社グループの事業活動における共通の規範であるマクセルグループ行動規範を、今後も当社グループの経営に当たって遵守していきます。
g.コーポレートガバナンス・ガイドライン
当社グループの内部統制システムを構築するための基本方針であるコーポレートガバナンス・ガイドラインに従い、今後もコーポレートガバナンス体制の強化を図り、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざします。
上記の経営の基本方針に関わるキーワードとした、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリット、スローガン(MVVSS)の5項目は以下のとおりです。
なお、本経営の基本方針については、2021年3月期以降、経営トップによるタウンホールミーティングを主要拠点において順次開催し従業員に直接説明を行ったほか、社内報や社内ホームページも活用し、当社グループ全体への浸透を図っています。
グローバルの経済環境は、当連結会計年度において新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かい、景気回復が期待されましたが、米国、欧州の金融引き締め策の継続や不動産不況に起因した中国経済の減速に加え、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクが高まるなど、不安定な状況となりました。また、自動車市場の回復や円安の進行が好要因となった一方で、半導体製造装置市場の低迷や一部地域の経済停滞、電動力費の高騰などにより、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。2025年3月期以降は、自動車市場は引き続き堅調に推移し、半導体市場も回復に向かうと予想されますが、欧州や中国の景気低迷の継続、中東情勢の悪化によるエネルギー価格の高騰や物流面の停滞が懸念されます。
当社グループは、2025年3月期以降も事業ポートフォリオ改革や徹底した原価低減策を継続するとともに、企業価値向上に向けた諸施策を進めていくこととしています。
当社グループは、「アナログコア技術」に立脚した競争力のある製品・サービスを強化し、成長が期待される分野において販売を拡大し、当社グループの事業の柱としていくことを基本戦略としています。
a. 中期経営計画「MEX26」の概要
MEX23に続く2025年3月期から2027年3月期までの3年間の中期経営計画MEX26の策定にあたっては、MEX23と同様に当社グループが2030年に実現したい姿である「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとってのMaximum Excellence(最高の価値)を創造する」の実現に向け、世界経済や社会におけるメガトレンドを捉え、注力3分野を定義しました。各注力分野における成長事業を定め、先行開発の推進や新市場の開拓活動強化、積極的な設備投資など経営資源を重点的に配分することで成長戦略の柱とするとともに、事業ポートフォリオ改革の加速による事業基盤の強化、さらには人財育成の強化やサステナビリティ経営の推進など経営基盤の強化にも取り組んでいきます。
MEX26の最終年度である2027年3月期の経営目標は以下のとおりです。
MEX26 2027年3月期経営目標:
連結売上高 150,000百万円
連結営業利益 12,000百万円
連結営業利益率 8%
なお、MEX26の基本方針はMEX23に引き続き「価値(企業価値・利益成長)にこだわる」としています。PBR1.0倍超の実現も念頭に置き、MEX26の期間においては総還元性向を重視し、株主還元策を強化していきます。
当社グループは、MEX26の策定にあたり、モビリティ革命、ICT/AI革命、人/社会インフラ高度化といったメガトレンドの中での「アナログコア技術」による人、生活、社会の品質向上への貢献を念頭に置き、「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」を新たな注力3分野としました。
上記の注力3分野に関わる市場環境は以下のとおりです。
(モビリティ)
モビリティ分野では、ADAS (Advanced Driver Assistance System)、CASE (Connected、Autonomous、Shared、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)など、安全運転支援機能の拡充、自動運転化や電動化、移動手段の革新などが予想され、関連した部品・材料などの需要が中長期的に増加していくと考えています。なかでも、自動車を中心とした移動体の「安心・安全」が普遍的価値として求められています。当社グループは、自動運転、カーボンニュートラル、死亡事故ゼロなどの実現に向け、タイヤセンシング用の耐熱コイン形リチウム電池、自動運転センシング用の車載カメラ用レンズユニットやLEDヘッドランプレンズ、車載用リチウムイオン電池の材料である塗布型セパレーターを成長事業と位置づけ、先行開発と積極的な投資により事業拡大を図ります。
なお、当社グループは、技術革新に合わせて競争力のある製品開発を行い市場に投入していきますが、自動車市場が安定して成長することが極めて重要です。世界の自動車生産台数は、新型コロナウイルスの感染拡大や半導体の供給不足の影響もあり、2020年から2022年は年間約80百万台の推移となり低迷しましたが、2023年は約86百万台と回復に向かいました。今後も緩やかな成長が続き、2024年は約90百万台、2027年には約100百万台に到達し、2030年には約109百万台となると考えています。
(ICT/AI)
ICT/AI分野では、人が直接使用する機器のデジタル化の進展、クラウドサービス、SNSや言語・画像生成AIの普及拡大やこれに伴う通信データ量の急増、自動車の電動化などを各種半導体が支えており、半導体市場は今後も拡大すると予想されます。当社グループは、半導体製造装置向け組込みシステム、半導体の製造工程で使用される電鋳製品や半導体製造工程用テープを成長事業と位置づけ、既存市場におけるポジションをより強固にするとともに海外も含めた新市場・新顧客への事業拡大を図ります。
なお、当社グループの事業においては、半導体や半導体を使用する情報通信機器や自動車などの需要動向が影響します。当連結会計年度においては、半導体市場の低迷に伴い半導体関連製品の一部で顧客の在庫調整の影響による減収がありましたが、2025年3月期以降は半導体製造装置も含む半導体市場は年平均10%程度の成長が続き、2023年の約5,200億ドルから、2030年には約1兆ドルとなると考えています。
(人/社会インフラ)
人/社会インフラ分野では、QOL(Quality of Life)の向上や健康寿命の引き上げ、労働生産性の向上や人手不足への対応、社会インフラの適切な更新やメンテナンス、省エネ化や再生エネルギーへの転換など、人、生活、社会の持続可能性が求められています。当社グループは、医療機器用一次電池、筒形リチウム電池、建築・建材用テープ、電設工具を成長事業と位置づけ、人、生活、社会に関連した広範な市場における今後の需要拡大に合わせて事業拡大を図ります。また、新事業である全固体電池については、FA機器やインフラ・プラント設備向けで市場導入を開始します。
当社グループは、上記の成長戦略を柱として、2027年3月期の経営目標の達成をめざしていきます。
MEX26における注力分野別の成長事業とその基本戦略及び強み、は以下のとおりです。
(モビリティ)
* 当社による推計
(ICT/AI)
(人/社会インフラ)
* 当社による推計
c. 経営体制の強化
当社は、業務執行に係る迅速な意思決定及び経営の効率化を図るため、執行役員制度を採用しております。2025年3月期より、取締役4名が執行役員を兼務することも含め執行役員体制を強化しており、業務執行責任を明確化するとともに、コーポレートガバナンスのさらなる強化を図っています。
多様なステークホルダーとのコミュニケーションに対する投資を継続してブランド価値の向上を図ります。特に若年層を中心とした消費者にマクセルブランドを浸透させることが、中長期的な成長に向けた重要なテーマであると考えています。マクセルユニーク追求による脱コモディティへのブランディング、パブリシティ、SNSの活用強化、CSV(Creating Shared Value 共通価値創造)の推進、株主・投資家等との積極的な対話を基本施策としてコーポレートブランドの構築に取り組みます。
当社グループは、資本効率性の向上を経営課題に掲げています。株主の皆様からの投資に対するリターンを高めるべく、資本効率性を向上する経営の実践に取り組みます。成長のための投資を十分に確保する一方、投資案件を厳選することによって、投資額に対する収益率を高めていきます。このため、すべての事業部門においてROICを重要経営指標として認識し、その向上に向け運用を強化するとともに、資本効率性を踏まえた株主還元策を実施していきます。
また、中期的な経営戦略の実践のために当社グループが対処すべきその他の課題は次のとおりです。
当社グループは、人財の育成と活用を企業経営における最優先事項のひとつであると認識しています。経営環境の変化を捉えた効率的な人財配置の実践、公正で透明性のある人事評価制度の運用により価値に貢献した従業員に報いていくとともに、ダイバーシティ&インクルージョンをさらに深化させ、従業員のエンゲージメントの向上を図り、元気で活力のある企業をめざしていきます。当社グループの人的資本などのサステナビリティに関する考え方や取り組みの詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
当社グループは、中長期的な企業価値の向上に向け、すべてのステークホルダーの視点に立った経営施策を実施していくことが重要であると考えています。特に、サステナビリティを意識して企業価値を向上させることは、企業経営における最重要課題のひとつであると認識しています。当社グループの気候変動対応などのサステナビリティに関する考え方や取り組みの詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
また、リスク管理体制の強化や内部統制システムの整備によりコンプライアンス経営の徹底を推進します。特に、独占禁止法をはじめとする法令遵守の徹底につきましては、日本だけでなく欧米・アジアにおいても強力に推進していきます。当社グループは、これらの施策を通じて、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループをめざしていきます。
コーポレートガバナンスの強化
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的に2015年10月に「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しており、適正な情報開示と透明性の確保に努め、取締役会の役割・責務を適切に果たすとともに、株主及び投資家との建設的な対話(エンゲージメント)をさらに活性化させていきます。
当社グループは事業活動を通じて、グローバル市場における社会、環境、経済の課題解決に貢献し、持続的成長と企業価値の最大化につなげるサステナビリティ経営を行うことを基本的な考えとしています。
サステナビリティを巡る諸課題は、企業価値に影響を与えるリスクであると同時に機会でもあります。「中長期的に考え、評価する(短期利益追求主義に陥らない)」「社会・環境価値創出と経済価値を両立させる」という2つのコンセプトを浸透させて、将来にわたり価値創造企業となることをめざします。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは2020年4月に、社会や環境のサステナビリティに関する課題への取り組み強化を目的としてサステナビリティ推進組織を立ち上げました。なお、当該組織は2024年4月より社長直轄のサステナビリティ推進本部となり、当社グループのサステナビリティに関する取り組みのさらなる強化を図っています。
具体的な活動については、事業本部やグループ会社、コーポレート部門で組織される、全社横断活動の推進委員が連携するワーキンググループを構成し、サステナビリティ推進本部主導の基に活動を行っています。
サステナビリティに関する課題への取り組みの中で重要な案件については、取締役会で審議・承認を行っています。
当社グループは、2020年8月に、独創技術のイノベーション追求と事業活動を通じて、人と社会が豊かに共生した 「100年先の地球」に貢献し、人々の生活や社会の課題を解決する製品・事業をグローバルに展開し、社会、環境、 経済価値を創出し続けることを宣言した「コーポレートサステナビリティビジョン」を策定しました。
さらに2021年8月に、当社グループの中長期的な価値創造と持続可能なビジネスモデルを実現するために優先的に取り組むべき7項目の経営の重要課題(マテリアリティ)を特定するとともにアクションプランを定め、2022年8月に、アクションプランを確実に実行していくための指標(KPI)を策定しました。当連結会計年度においては、マテリアリティの解決に向け、より具体的な活動を推進しています。
詳細は当社ホームページに掲載の
当社グループは、全社リスクの洗い出しと見直しを行っており、各リスク項目について管理責任部門を定め、対応方針の決定と管理を行っています。
「戦略」「財務」「ハザード」「オペレーション」に関するリスク管理の重要事項の決定、各リスク管理活動の総括などを、年1回開催される「リスク管理委員会」で行い、その結果を「インターナルコントロール委員会」に報告しています。
当社グループは、経営の重要課題である7つのマテリアリティを特定し、アクションプランを確実に実行していくための指標(KPI)と目標を策定しています。当連結会計年度においては、マテリアリティの解決に向け、より具体的な活動を推進しています。
詳細は当社ホームページに掲載の
(1) 気候変動
当社グループでは、気候変動をはじめとする地球環境問題の解決を喫緊の課題と捉えています。事業活動における環境負荷低減の取り組みや独創技術による環境に配慮した製品開発、気候変動に伴うリスクと機会への対応を検討することにより、サステナブルな社会に貢献します。こうしたなかで、長期視点で環境経営のめざす姿を明確にするため、2023年7月に環境ビジョンを制定し、カーボンニュートラルを宣言しました。
気候変動に対する取り組みとして、2021年10月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同表明し、TCFDが定めたガイダンスに則ってシナリオ分析を行い、段階的に情報開示を行うことを決定しました。
2022年3月期においては、当社のエナジー事業本部のシナリオ分析を行い、シナリオ分析の結果については2022年9月に統合報告書において開示しました。2023年3月期においては他の事業本部のシナリオ分析を行うことで横展開を進め、2023年9月に統合報告書等においてシナリオ分析の結果を開示しました。また、当連結会計年度においては、グループ会社のシナリオ分析を行うことでさらなる横展開を進め、シナリオ分析の結果については2025年3月期中に統合報告書等において開示していきます。
(ガバナンス)
気候変動に対する当社グループ全体の戦略立案と気候変動に関する目標の達成状況の管理は「環境委員会」が行っています。環境委員会は年3回実施しています。
環境委員会のトップマネジメントは社長であり、すべての環境関連の課題を当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負っています。
また重要案件については取締役会にて審議・承認を行っています。
(戦略)
当社グループは、環境問題の解決を最優先課題のひとつと考え、長期視点で環境経営のめざす姿を明確にするために、2023年7月に環境ビジョンを制定するとともに、2051年3月期においてカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。
環境ビジョン:
「マクセルは、イノベーションの追求を通じて“脱炭素社会”と“循環型社会”の達成をめざし、誰もが安心して暮らせる 持続可能な社会の実現に貢献します。」
気候変動に関するシナリオ分析については、2022年3月期において、当社のエナジー事業本部をモデルケースとしてシナリオ分析を開始しました。2023年3月期は、機能性部材料事業本部、光学・システム事業本部、ライフソリューション事業本部の3事業本部を対象に分析を行いました。さらに当連結会計年度はグループ会社への横展開を行い、当社グループ全体の分析が完了しました。シナリオ分析においては、当社グループで気候変動の影響を最も大きく受けると思われる生産部門を中心に、1.5℃及び4℃の気温上昇時の社会を想定し、リスク・機会の抽出と対応策を検討しました。
気候変動の顕在化は、当社グループにとってリスクになる一方、長年蓄積されたマクセルの独創技術を活用することで 機会にもなり得ます。中・長期的なリスクとしては、1.5℃上昇時は炭素税の導入により事業活動に課せられる税負担増、消費者の行動変化が事業への大きなインパクトとなることがわかりました。また4℃上昇時は暴風雨など異常気象の激甚化が事業に大きく影響を及ぼすことがわかりました。
(リスク管理)
気候変動関連のリスクに関しては、環境委員会が管理しています。
環境委員会では、気候変動に対するリスクと機会、そして戦略を統括し、グループ全体の気候変動に関する目標の達成状況を管理する役割を担っています。
重要なリスク及び機会については、取締役会で審議・承認を行っています。
(指標と目標)
当社グループは、以下を目標として設定、公表しています。
<脱炭素社会の達成に向けた取り組み>
2031年3月期目標 CO2排出量削減率50%以上 (Scope1、2 国内。2014年3月期比)
2051年3月期目標 カーボンニュートラルの達成 (Scope1、2 グローバル)
<循環型社会の達成に向けた取り組み(省資源化とプラスチックなどの資源循環)>
2031年3月期目標 廃棄物生産高原単位* 0.0450(トン/百万円)以下(2022年3月期比 19%削減)
複合プラスチック廃棄物のケミカル、マテリアルリサイクル開始
* 廃棄物生産高原単位:廃棄物質量(トン)/生産高(百万円)で表す廃棄物の発生量を示す指標
当社グループは、中長期環境目標である「CO2排出量 (Scope1、2 国内) 2031年3月期50%削減 (2014年3月期比)」 「再エネ比率2031年3月期10%」の達成に向けて、国内工場におけるより広範囲で長期的な視点での省エネ施策(製法見直し、高効率設備の導入)、及び再生可能エネルギ―の活用(太陽光、再エネ証書活用 等)によるCO2削減計画を策定し、取り組みを進めています。なお、当連結会計年度におけるCO2排出量削減率は42%(2014年3月期比)となりました。2023年3月期の47%から42%へ低下した理由は、契約している主な電力会社のCO2排出係数が大きく悪化したことが原因です。省エネ活動による電力削減、太陽光発電(PPA)の導入、非化石証書比率の向上は継続的に実施する予定であり、2031年3月期における50%削減の実現に向けて対応していきます。
また、マテリアリティKPIとして「再エネ比率2031年3月期10%」の目標を設定していましたが、2023年3月期において本目標を達成したことを受け、新たなKPIとして「再エネ比率2031年3月期15%」を設定しました。
詳細は当社ホームページに掲載の
(2) 社会(サステナブル調達)
社会については、サプライチェーンにおいて環境や人権といった社会的要請に配慮しながら、持続可能な調達(SCM)を達成するための取り組みが重要と考えています。また、紛争鉱物等を含んだ部材を調達することによって紛争地域の武装集団の活動を助長することが無いように、責任ある調達活動に取り組んでいくことを方針として掲げています。
(ガバナンス)
原材料・部品、間接材、設備等の調達先であるお取引先様は、事業活動に不可欠であると同時に、ともに社会への責任を果たしていくパートナーと認識しており、お取引先様と一体となった活動を展開し、各事業活動への期待や要請に誠実に応える活動を実践しています。調達SCM本部を事務局として、当社グループ会社の調達部門を含めたメンバーで構成する「調達リスク管理委員会」がグループ全体の活動を推進しています。
(戦略)
調達ガイドライン*1に基づき、お取引先様には同ガイドライン遵守をお願いするとともにセルフアセスメントと同ガイドラインへの同意確認書にご協力いただきサステナブル調達の推進に努めています。その対象を「原材料・部品」のお取引先様からスタートしましたが、今後は「設備等」のお取引先様にも拡大し充実を図っていきます。なお、紛争鉱物についても同ガイドラインにおいて「(責任ある鉱物調達)人権等の社会問題を引き起こす原因となりうる鉱物を購入しない」と規定しています。
(リスク管理)
日本国内及び海外のお取引先様に対して、質問票*2で活動状況を確認し、現状把握と改善に取り組んでいます。
(指標と目標)
質問票の結果、4段階評価の最低グレードであるD評価のお取引先様に対して、訪問調査と改善活動支援を行います。C評価の場合は改善計画を書面で回答いただき継続フォローすることで、B評価以上となるよう推進しています。
詳細は当社ホームページの「
*1 調達ガイドライン:「マクセルグループ サプライチェーンCSR調達ガイドライン」
*2 質問票:CSRセルフアセスメント質問票(SAQ)
(3) 人的資本
当社グループでは、複数事業からなるポートフォリオ経営を実現していくためにダイバーシティ&インクルージョンを重視し、従業員一人ひとりの個性を発揮しながら、働きがいを持って仕事に取り組むことができる職場づくりを進めています。当社のダイバーシティ&インクルージョン推進では、職場選抜メンバーによって構成される全社プロジェクトを2013年より継続的に推進しており、多様な人財が活躍できる土台をつくる活動を展開しています。
(ガバナンス)
経営幹部による議論を経て決定した経営方針に沿って、経営トップが主催する「予算本会議」にて人財戦略及び主要人事施策に関する議論を行っています。
人的資本に関する取り組みの中で重要な案件については、取締役会で審議・承認を行っています。
(戦略)
従業員が価値を生み出す働き方を実現することで、持続的な企業価値向上につなげていくことを目的に「a.優秀な人財の獲得」「b.適性配置と持続的育成」「c.働きがいのある職場環境の整備」「d.経営参画意識の向上」の4つを人財戦略の柱としています。
a. 優秀な人財の獲得
当社グループは、ダイバーシティ重視の観点から、異なる価値観、感性、経験を有する人財を活かし、組織力強化を図るため、外国人、女性、さまざまなキャリア経験者など、多様な人財の採用を積極的に行っています。当社の新卒採用においては、女性採用比率の目標を技術系25%、事務・営業系50%と設定しており、2024年4月入社では技術系35%、事務・営業系57%と目標を達成し、取り組みを推進しています。
b. 適性配置と持続的育成
当社グループの経営目標を実現するために人や組織全体のパフォーマンスの最大化を図る仕組みとして2023年3月期よりタレントマネジメントシステムを導入し、人財の可視化を進めています。
また、当社の人財育成においては、経営幹部にて議論した教育基本方針に従って、事業本部の部門長を中心とした、「グローバル」「営業・マーケティング」「技術」の3つの分科会にて、各分野に求められる教育の計画・実行を行っています。また、全社共通の経営管理教育においては、当連結会計年度に若年層教育体系を刷新し、課題解決を中心としたビジネススキル強化及びチームで仕事を進めるためのマインドセットについて強化を図っています。
c. 働きがいのある職場環境の整備
当社グループでは、すべての従業員がライフスタイルやライフステージに応じて柔軟な働き方ができるよう多様な勤務制度を整備しています。当社では、当連結会計年度より育児休暇制度を拡充し、男性の育児休暇の取得推進を図るとともに、職場全体としての新しい働き方への取り組みを進めています。
d. 経営参画意識の向上
当社グループでは、全社員が対象となる社員持株制度において、加入促進のための活性化施策を継続的に進めています。また、当社の管理職には経営参画意識の向上と株主との一層の価値共有を図ることを目的として2022年3月期より株式報酬制度を導入しています。
(リスク管理)
若手人財の離職を防止するために、過去の従業員サーベイ、勤務情報、給与等のさまざまなデータをAI分析することで退職に至る人財を類型化し、部門長へ自身の組織状況及び対応策をフィードバックすることでリスク低減に努めています。
(指標と目標)
当社グループの人的資本に関する指標と目標につきましては、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが事業活動を行っている日本、欧米、中国や新興国等の経済環境の動向は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらの地域において、景気後退により個人消費や民間設備投資が減少した場合、当社グループが提供する製品及びサービスの需要の減少や価格競争の激化が進展する可能性があります。当社グループでは、当社が事業を行う国や地域の経済・市場動向を常に注視するとともに、原価低減や固定費削減を行い、経済動向の変化による影響を最小限とするよう努めておりますが、このような環境下において、当社グループは売上高や収益性を維持できる保証はありません。
主にエネルギー事業、機能性部材料事業及び光学・システム事業の市場規模は企業の投資動向などに、ライフソリューション事業の需要は個人の消費動向などにより影響を受ける可能性があります。特に民生用リチウムイオン電池やコンシューマー製品などは市場トレンドや機種の変更などにより、当社グループの製品の出荷実績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの生産・販売活動は日本を含む全世界で展開しております。地震及び洪水等の自然災害、疫病、火災、戦争、テロ及び暴動等が起こった場合、当社グループの販売活動の停滞や生産設備等への損害などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、文化や慣習の違いから生じる労務問題や疾病といった社会的なリスク、商習慣の違いから生じる取引先との未知のリスクが潜んでいる可能性があります。このようなリスクが顕在化した場合は、生産活動の縮小や停止、販売活動の停滞等を余儀なくされ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社が販売活動を行う、あるいは製造拠点を有する国や地域の法令や文化を遵守・尊重することに加え、事業継続性の観点及び顧客のサプライチェーンへの要求にも対応した製造拠点の配置の最適化についても検討を行っています。しかしながら、現在当社グループは、経済発展が著しい中国に製造拠点や協力工場を数多く有しており、同国へ進出している得意先及び現地企業への供給体制を確立していることから、同国にて政治的要因(法規制の動向等)、経済的要因(高成長の持続性、電力等インフラ整備の状況等)及び社会環境における予測し得ない事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、2022年3月期第4四半期において、ロシア・ウクライナ情勢が地政学的リスクとして浮上し、当連結会計年度も継続しました。当該リスクによる当社グループの業績への影響は、当該地域への販売面では軽微でしたが、対ロシア制裁の開始以降原油価格が上昇し、主に2023年3月期において原材料費高騰の影響を受けました。また、当連結会計年度においては中東情勢が緊迫化するなど、地政学的リスクはさらに高まっており、電動力費の高騰や物流面の停滞が懸念される状況となりました。
上記の「(1) 経済動向による影響について」、「(2) 災害、国際情勢等による影響について」とも関係しますが、2020年3月期第4四半期以降、新型コロナウイルス感染症が急速に拡大し、過去例を見ない新たなリスクとして浮上し、当社グループも2020年3月期において、中国など海外工場の操業度の低下や製品・部品の調達停滞、中国向け販売の減少といった影響を受けました。なお、2021年3月期において、国内外工場の操業や製品・部品の調達に関する大きな問題は解消されましたが、2022年3月期においては、新たな変異株の発生等により、新型コロナウイルス感染症の感染者数が急増しました。なお、2023年3月期以降には、経済・社会活動に対する制限は徐々に緩和の方向に向かい、当連結会計年度第1四半期には5類感染症へと移行するなど当該リスクはほぼ収束しましたが、今後も新型コロナウイルス感染症のみならず新たな感染症の台頭には引き続き注視が必要であると考えます。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大により、外出制限や在宅勤務の拡大に伴うステイホーム関連製品の需要が拡大したことや衛生意識の高まりにより健康関連製品の需要が喚起されたことは当社グループの事業にとって好材料となったほか、当社グループにおける在宅勤務の拡大や定着など働き方改革を進める契機となった側面もありますが、主に以下のリスクがあると考えられます。
(影響が及ぶ期間の長期化のリスク)
当社グループの主な事業は、自動車や半導体関連の部品など当社顧客の生産や販売の計画が大きく影響するものと、健康・理美容機器など個人消費の動向が直接影響するものなど、多岐にわたっています。従って、事業により回復時期に差が生じ、影響が及ぶ期間が長期化する可能性があり、新型コロナウイルス感染症の影響は、2020年3月期第4四半期以降2023年3月期まで、3年以上継続しました。当社では、今後もこうした市場の状況を見極めつつ、機会損失を最小限に留めるべく生産や在庫の計画を立てていきます。
(事業の継続性に係るリスク)
当社グループは、国内外に生産・販売拠点を有しており、顧客や従業員、その他関係者等の健康・安全確保、ひいては事業の継続のため、国内拠点では在宅勤務や時差出勤を推進するとともに、海外拠点でも営業停止、外出禁止や移動制限といった各国政府の指導に従った事業運営を行いました。しかしながら、グループ内感染の発生や製品・部品の調達停滞により、工場の操業や営業活動が行えなくなる可能性があります。当社では、今後もこうしたリスクを最小限に留めるべく、従業員の健康管理をさらに強化するとともに、国内外の生産拠点の柔軟な活用や調達先の複数採用などの対応を行っていきます。
(財務面のリスク)
経済環境の悪化により、当社グループの販売の低迷や、回収の遅延などが生じる可能性があります。このため、コミットメントラインの拡充や追加の資金調達を含めて手元流動性の確保を図るとともに、新規の投資計画については厳選のうえ優先順位を検討していきます。
なお、こうしたリスクについては、実際の程度や発生時期などにより、上記の対応策で完全にリスク回避できない可能性がありますが、当連結会計年度までの経験も活かしつつ、新型コロナウイルス感染症のような感染症の拡大に対応していきます。
(4) 為替相場の変動による影響について
当社グループは、日本を含む全世界において事業活動を行っており、海外売上高の割合が高く、為替相場の変動リスクにさらされている資産及び負債を保有しています。主に、米ドルをはじめとする現地通貨建ての製品の輸出及び原材料の輸入を行っていることから、為替相場の変動は円建てで報告される当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当連結会計年度は円安が進行する状況となりましたが、海外から完成品を輸入して日本国内で販売する比率が高かった国内コンシューマー製品販売事業に係る機能移管を実行したこともあり、売上高や利益面において当社グループにとっては好要因となりました。
当社グループでは、外貨建て輸出入取引のバランス調整や為替予約など、為替相場の変動リスクをヘッジする施策は行っておりますが、急激な為替相場の変動による経営成績への影響を完全に回避できる保証はありません。
当社グループの製品は、石油化学製品を原材料としているものが多く、また、一部の製品において希少な物質を原材料としているものがあります。
当社グループでは、部品・材料の調達ルートの定期的見直しや、安定供給が可能な材料を用いた製品の開発などの対策を行っておりますが、原油価格の大きな変動や国際市況などによる原材料価格の大きな変動があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業分野においては、多様な競合相手が存在するほか、一部の製品においては汎用品化や低コストの地域における製造が進んでおり、価格競争が激化しています。激しい競争のもとで成功するためには、価格、技術、品質及びブランド力の面において競争力を有する製品及びサービスを適宜市場に投入する必要がありますが、当社グループが提供するすべての製品及びサービスについて実現できる保証はなく、製品及びサービスが競争力を維持できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、継続的な原価低減や固定費削減、生産地の変更など競争力確保に向けた対応を行っていますが、中長期的に競争力や収益性の確保が困難と判断した事業や製品については、他の事業へのリソースの移管や撤退、対象製品の廃盤化といった対応を行い、当社グループ全体での収益性確保を図ります。
当社グループの事業分野においては、自動車におけるADAS(Advanced Driver Assistance System)、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)のように自動車の安全運転支援機能の拡充、自動運転化や電動化、移動手段の革新が進むなど新しい技術が急速に発展しています。
当社グループでは、技術革新を継続的に、迅速かつ優れた費用効率で実現し、製品及びサービスに適用することが競争力を維持するために不可欠であると考えており、研究開発においては、当社独自の強みである「アナログコア技術」に立脚した将来性の高い案件を厳選して行っておりますが、当社グループの研究開発が常に成功する保証はなく、先端技術の開発または製品・サービスへの適用が予定どおり進展しなかった場合は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが取り扱う製品及びサービス分野において、競合企業間の再編により業界動向が大きく変化した場合は、価格や開発ロードマップ、材料調達等の条件などが変動することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また当社グループが業界内で高いシェアを獲得している製品及びサービス分野において、競合企業間の再編によって当社シェアが下落した場合は、当該市場における当社グループのイニシアティブが低下する可能性があります。
当社グループでは、品質・コスト両面での競争力強化を継続して行い、単に市場シェアにとらわれることなく顧客から信頼される製品及びサービスの提供を行います。
当社グループは、エネルギー事業、機能性部材料事業、光学・システム事業及びライフソリューション事業の各事業分野において、事業拡大のために同業他社の事業譲受や買収または当社傘下への販路取り込み等を行う可能性があります。また、経営基盤の強化などのために他社との合併を行う可能性があるほか、個別事業の強化拡大のために当該事業を承継する新会社を会社分割により設立する可能性があります。
当社グループでは、こうした案件については、事前にフィジビリティスタディを行い、中長期的な収益性や当社グループの既存事業とのシナジー効果を充分に検証した上で実施しますが、当該買収、合併、会社分割等が当社グループの事業展開や経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、市場環境や経済環境によっては、当該買収、合併、会社分割等が当初想定した結果を創出できる保証はなく、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製造過程で生じる廃棄物や大気・水への排出物、製品に含まれる有害化学物質などについて、国内外の環境関連法令の適用を受けております。当社グループは、当連結会計年度において環境ビジョンを制定し、カーボンニュートラルの宣言を行うなど環境経営を積極的に推進しておりますが、過去の事業活動の結果生じた事象についても、現在の環境規制に対応するための費用が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各事業部門において、環境面も含めて、各事業・製品に係る法規制の最新動向を注視しており、これらの遵守を最優先していますが、ライフソリューション事業の一部製品は、医療機器として薬事法等の規制を受けており、国内外における法規制の予測できない改正等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また同様に、当社グループが取り扱う電池や部材料などの各製品分野において、今後、法規制が新設または強化された場合、当該製品の製造や出荷、販売等のコストに影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは国内外の生産拠点において、ISO(International Organization for Standardization 国際標準化機構)の品質マネジメントシステム規格(ISO9001)や顧客から高度な品質管理体制が求められる自動車業界向けの品質マネジメントシステム規格(ISO/TS16949)などに従って多様な製品の品質管理を行っております。
しかしながら、予想し得ない品質上の欠陥(規制物質含有を含む)や法令・規制等の不遵守、それに起因するリコールが発生しないとは限らず、当社製品のリコールや製造物責任の追及がなされた場合は、回収コストや賠償費用の発生、販売量の減少などの恐れがあります。さらに当社や当社グループ会社のブランドを冠した商品の品質上の欠陥によってブランドの信用が失墜し、企業としての存続を危うくする事態を招く可能性もあります。したがって重大な品質問題が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 知的財産権による影響について
当社グループは競合他社等に対抗していくためには特許権その他の知的財産権の確保が非常に重要であると認識しており、国内外において出願中のものを含めて多数の特許を保有しております。当社グループは二次電池や一次電池、光学部品、成形、機能性材料、プロジェクター、健康・理美容機器、小型電気機器、磁気テープ、光ディスク、RFIDシステム、ICカード等の分野において、有力な特許を保有しておりますが、さらにこれら事業の将来性を見越した技術及び周辺技術についても特許の出願を進めております。しかしながら、当社グループが出願中である特許について適時に登録を受けられる保証はなく、現在登録を受けている特許が将来においても当社グループにおける事業の知的財産権を保護するのに必要十分である保証はありません。
また当社グループは、第三者の知的財産権を尊重し、業界において必要な特許監視等を実施しておりますが、当社グループが使用する技術要素等について、当社グループが認識しない第三者の特許がすでに成立している場合、当該第三者より知的財産権を侵害しているとの事由により、当該第三者より使用差し止め及び損害賠償等の訴えを起こされる可能性があります。当該特許の使用差し止めや使用に係る対価等の多額の支払い等が発生した場合、当社グループの事業展開や経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、仮にこれらの紛争において勝訴した場合にも、これらの訴えに対して当社を防御し、解決を図るために多大な費用や経営資源を費やすことにより、当社グループの事業展開及び経営成績等に影響を及ぼさないとする保証はありません。
なお、一部の製品においては第三者の特許技術等に係るライセンスを受けております。現時点において、当社グループが導入する特許技術に係るライセンス継続に支障が生じる可能性は低いものと認識しておりますが、これらの継続使用が困難となった場合には当社グループの事業展開等に何らかの制約が生じる可能性があります。
当社グループでは、ファイアウォールの整備やコンピュータウイルス対策ソフトウエアの導入、データ及びシステムのバックアップ、教育啓発の実施など、ハード・ソフト両面において情報セキュリティ上のリスク対策を実施しておりますが、自然災害や人為的な原因により情報の消失・外部流出、システム障害等が起きた場合、システムの一時停止や復旧対策等による費用が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは事業遂行に関連して、当社グループまたは顧客等についての個人情報、技術・営業に関する営業秘密を保有しております。当社グループでは、これらの情報の適切な保護及び管理に努めておりますが、システム障害、人為的な原因、その他の原因でこれらの情報が流出した場合、当社グループに対する信頼ならびに当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業活動を行っている分野において継続的に事業を発展させるためには、多様な専門技術に精通した人財、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人財の確保、育成を継続的に推進していくことが重要と考えております。
このため、当社グループでは計画的な新卒採用や経験者の通年採用を積極的に実施して人財を育成するとともに、目標管理制度に基づいた公平な評価・処遇制度の充実、自立型人財やグローバル人財を育成するための各種教育制度の拡充など社員のモチベーションを高める諸施策や、離職率低減を目的としたさまざまなデータのAI分析により、退職に至る人財の類型化と対応策の各部門へのフィードバックを実施しております。
しかしながら、グローバルで優秀な人財を獲得するための競争は厳しく、日本国内においては、少子高齢化や労働人口の減少等が懸念されるほか、中国等の海外拠点においても、雇用環境の変化が急速に進んでおり、常に適切な人財を確保できる保証はありません。人財獲得や育成が計画どおりに進まなかった場合は、長期的視点から、当社グループの事業展開、業績及び成長見通しに影響を及ぼす可能性があります。
(15) 有価証券の相場変動による影響について
当社グループは時価のある有価証券を保有しているため、金融商品取引市場におけるこれらの価額が変動した場合は、有価証券の評価損益や売却損益の発生などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループでは、有価証券の保有に関して、定量、定性基準の判定により、定期的に保有意義の検証を行っています。また当社は、政策保有株式(保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式)を保有しないことを原則としています。取引関係の維持及び強化による中長期的な企業価値向上を目的として保有する政策保有株式については、保有目的、中長期的な経済合理性及び将来の見通し等について取締役会において定期的に検証を行い、保有合理性がないと判断した銘柄については適宜売却し、政策保有株式の保有額削減を進めています。
また、当社の政策保有株式には金融商品取引市場での取引が行われない非上場会社の株式が含まれており、この場合当該非上場会社の業績動向によって保有価額を評価する場合があります。このため投資有価証券評価損等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業を遂行する上で取引先や第三者から訴訟等が提起されるリスク及び規制当局より法的手続がとられるリスクを有しております。
当社グループでは、こうした訴訟や法的手続きの発生を防止すべく、法規制に沿った事業活動を行うことに加え、取引先等との十分な意思疎通を図っておりますが、当社グループに対して巨額かつ予想困難な損害賠償の請求がなされた場合や事業遂行上の制限が加えられた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、過年度に生じた税務上の繰越欠損金により課税所得が軽減されております。今後、業績の推移や税制改正等により、繰越欠損金の繰越期間の満了で欠損金が消滅し税金負担が増える可能性があります。また、移転価格税制をはじめとする各国の規制・税制等の変更のような、予測できない事態の発生により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループでは、収益性の向上を図るとともに、「グローバル税務ポリシー」を公表しており、当社グループが事業を行っている国及び地域において適正な納税を行うこととしております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、当連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるグローバル経済は、新型コロナウイルスの感染症拡大が収束に向かい、景気回復が期待されましたが、米国、欧州の金融引き締め策の継続や不動産不況に起因した中国経済の減速に加え、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクが高まるなど、不安定な状況となりました。当社を取り巻く事業環境としては、自動車市場の回復や円安の進行が好要因となりましたが、半導体製造装置市場の低迷や一部地域の経済停滞、電動力費の高騰などが影響し、厳しい状況が続きました。
このような状況のもと当連結会計年度の売上高は、車載光学部品や粘着テープ、ライセンス収入などの増収がありましたが、国内コンシューマー製品販売事業の移管による減収に加え、二次電池や半導体関連製品の販売減などにより、前年同期比2.7%(3,637百万円)減(以下の比較はこれに同じ)の129,139百万円となりました。利益面では、車載光学部品やライセンス収入の増収による増益に加え、健康・理美容製品の収益改善などにより、営業利益は、43.4%(2,445百万円)増の8,083百万円、経常利益は、為替差益の計上もあり、45.5%(3,059百万円)増の9,786百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、45.3%(2,351百万円)増の7,544百万円となりました。なお、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益において、ライフソリューション事業の改革に伴う一時費用を計上しました。
当連結会計年度の対米ドルの平均円レートは145円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
(エネルギー)
主に二次電池の販売減により、エネルギー全体の売上高は、4.9%(1,803百万円)減の34,971百万円となりました。営業利益は、全固体電池の開発費及び量産体制構築費用の計上などにより、78.6%(1,855百万円)減の504百万円となりました。
(機能性部材料)
粘着テープが増収となったことにより、機能性部材料全体の売上高は、2.9%(858百万円)増の30,144百万円となりました。営業利益は、粘着テープの販売価格適正化や高付加価値製品の販売拡大の効果、産業用部材の収益性改善により、56.4%(487百万円)増の1,350百万円となりました。
(光学・システム)
半導体関連製品が顧客の在庫調整の影響を受け減収となりましたが、車載光学部品とライセンス収入の増収により、光学・システム全体の売上高は、10.4%(3,893百万円)増の41,369百万円となりました。営業利益は、半導体関連製品が減益となったものの、車載光学部品やライセンス収入の増益により、44.2%(1,717百万円)増の5,606百万円となりました。
(ライフソリューション)
国内コンシューマー製品販売事業の移管によりコンシューマー製品や健康・理美容製品が減収となり、ライフソリューション全体の売上高は、22.5%(6,585百万円)減の22,655百万円となりました。営業利益は、シェーバーをはじめとした健康・理美容製品の収益改善や海外生産拠点の生産性向上が貢献し、2,096百万円増の623百万円となりました。
地域ごとの売上高は、次のとおりであります。
(日本)
粘着テープ、車載カメラ用レンズユニットやLEDヘッドランプレンズなどの光学部品が増収となりましたが、健康・理美容機器やコンシューマー製品がコンシューマー製品販売事業の移管により減収となったことに加え、半導体関連製品、二次電池、一次電池が減収となったことなどにより、売上高は12.8%減の66,959百万円となりました。
(米国)
一次電池や電設工具が減収となりましたが、ライセンス収入、健康・理美容機器、LEDヘッドランプレンズなどが増収となったことにより、売上高は19.7%増の16,843百万円となりました。
(欧州)
車載カメラ用レンズユニット、一次電池、健康・理美容機器などの増収により、売上高は26.0%増の15,844百万円となりました。
(アジア他)
二次電池、健康・理美容機器、LEDヘッドランプレンズなどが減収となりましたが、車載用を中心とした一次電池、粘着テープなどの増収により、売上高は0.4%増の29,493百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.ライフソリューションの生産高の減少は、前連結会計年度に締結した業務提携の開始によるものです。
3.生産実績には、完成品仕入にかかわる生産実績も含めており、仕入実績は次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.光学・システムの仕入高の減少は、射出成形事業の譲渡によるものであり、ライフソリューションの仕入高の減少は、前連結会計年度に締結した業務提携の開始によるものであります。
需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、以下の重要な会計方針が、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
当社グループは、棚卸資産の市場状況に基づく時価の見積額が原価を下回った場合に評価損を計上しております。
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得を合理的に見積って検討しております。
繰延税金資産の計上に用いた会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。当社の年金制度においては、割引率は優良社債の市場利回りを退職給付の平均支給年数で調整して算出しております。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
長期期待運用収益率は、年金資産の現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率を考慮しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に退職給付費用の一部として計上されます。
なお、当連結会計年度の長期期待運用収益率の算定の前提となる年金資産の構成割合は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (7)年金資産に関する事項」に記載のとおりであります。
当社グループは、主に管理会計上の区分を考慮して資産グループを決定し、将来キャッシュ・フローの回収額を見積った結果、十分な将来キャッシュ・フローが見込めない事業用資産、処分等の意思決定がなされた資産及び遊休資産について回収可能価額まで減額し、特別損失に計上することとしております。
f その他有価証券の減損
当社グループでは、売買目的以外の有価証券のうち、市場価格又は合理的に算定された価額(時価)のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を評価損として計上することとしております。また、市場価格のない株式等につきましても、当該発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したと判断される場合は、相当の減額を行い、評価差額は評価損として計上することとしております。
総資産は、前連結会計年度末比1.7%増(以下の比較はこれに同じ)の171,100百万円となりました。このうち流動資産は、主に棚卸資産の減少により、2.8%減の92,166百万円となり、総資産に占める割合は前連結会計年度の56.4%から53.9%となりました。一方、固定資産は、主に設備投資の実施による有形固定資産の増加及び退職給付に係る資産の増加により7.6%増の78,934百万円となり、総資産に占める割合は前連結会計年度の43.6%から46.1%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
(エネルギー)
エネルギーの資産は、1.4%減の37,063百万円となりました。このうち流動資産は、主に棚卸資産の減少により、6.3%減の27,375百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の77.7%から73.9%となりました。一方、固定資産は、有形固定資産の増加により15.8%増の9,688百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の22.3%から26.1%となりました。
(機能性部材料)
機能性部材料の資産は、7.4%増の35,427百万円となりました。このうち流動資産は、主に現金及び預金の増加により12.5%増の19,480百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の52.5%から55.0%になりました。一方、固定資産は、1.7%増の15,947百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の47.5%から45.0%となりました。
(光学・システム)
光学・システムの資産は、13.9%増の42,582百万円となりました。このうち流動資産は、主に現金及び預金、受取手形及び売掛金の増加により14.1%増の27,959百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の65.5%から65.7%となりました。一方、固定資産は、有形固定資産の増加により13.5%減の14,623百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の34.5%から34.3%となりました。
(ライフソリューション)
ライフソリューションの資産は、10.8%減の20,087百万円となりました。このうち流動資産は、主に受取手形及び売掛金の減少により19.0%減の12,243百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の67.1%から60.9%となりました。一方、固定資産は、5.9%増の7,844百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の32.9%から39.1%となりました。
(その他)
当社グループの全社共通業務を目的として保有している資産は、主に借入金の返済による現金及び預金の減少により4.6%減の35,941百万円となりました。
負債は、10.3%減の73,793百万円となりました。これは主に、借入金の返済によるものです。流動負債は、主に長期借入金からの振替えにより6.8%増の59,258百万円となりました。これにより流動比率は1.6倍に、また流動資産との差額である手持ち資金は32,908百万円となりました。固定負債は、主に1年内返済予定の長期借入金への振替えにより45.6%減の14,535百万円となりました。
(c) 純資産
純資産は、13.2%増の97,307百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益7,544百万円の計上及びその他の包括利益累計額が増加したことによるものです。また、自己資本比率は49.2%から54.9%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から10,239百万円増加し、14,240百万円の収入となりました。これは主に税金等調整前当期純利益9,133百万円、減価償却費4,803百万円、棚卸資産の増減額が前連結会計年度は3,868百万円の増加であったのに対し、当連結会計年度は3,750百万円の減少となったこと、法人税等の支払額又は還付額(△は支払)が前連結会計年度は2,611百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は646百万円の減少であったことによる資金の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から6,561百万円減少し、4,848百万円の支出となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入2,482百万円による資金の増加と、有形固定資産の取得による支出6,027百万円、定期預金の預入による支出881百万円による資金の減少によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度から4,495百万円増加し、9,490百万円の支出となりました。これは主に長期借入金の返済による支出8,123百万円、配当金の支払いによる支出1,834百万円による資金の減少によるものです。
これらのキャッシュ・フローに現金及び現金同等物に係る換算差額と、現金及び現金同等物の期首残高を合わせた当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末よりも2,096百万円増加し、38,665百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の5,714百万円から、当連結会計年度は9,392百万円へと増加しました。
当社グループは、資金の流動性を考慮して、資金運用については短期的な預金等とし、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用する方針であります。
当社グループの運転資金需要は、製品製造のための材料及び部品の購入のほか、加工費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。
当社グループの設備投資等の需要は成長が期待できる製品分野及び研究開発分野のほか、省力化、合理化及び製品の信頼性向上のための投資によるものです。
当社グループは、事業拡大のための成長投資を進めており、これらの資金需要に対しては主に銀行借入にて賄っております。
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)当社グループが対処すべき課題及び経営戦略 e 資本効率性の向上」を達成するため、今後もレバレッジを活用し、資本構成の最適化を意識したバランスシートマネジメントを追求していきます。
売上高は、車載光学部品や粘着テープ、ライセンス収入などの増収があったものの、国内コンシューマー製品販売事業の移管、二次電池や半導体関連製品の販売減などにより、前連結会計年度に対し、2.7%減の129,139百万円となりました。なお、為替レートは、前連結会計年度1ドル=135円、当連結会計年度1ドル=145円であります。
売上原価は、原材料高騰及び円安による輸入価格の高騰があったものの、固定費などの原価低減の成果により、3.9%減の98,643百万円となり、売上高に対する原価率は、前連結会計年度の77.3%から76.4%となりました。その結果、売上総利益は1.3%増の30,496百万円となり、売上高総利益率は、前連結会計年度の22.7%から23.6%となりました。また、販売費及び一般管理費は、主に国内コンシューマー販売事業の移管の影響により、8.4%減の22,413百万円となりました。
売上原価と販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は、主に国内コンシューマー販売事業の移管により研究開発費が昨年度より減少となったことにより14.3%減の5,480百万円となりました。なお、売上高に対する研究開発費の比率は前連結会計年度の4.8%から4.2%となりました。
営業利益は、車載光学部品やライセンス収入の増収による増益に加え、健康・理美容製品の収益改善などにより、43.4%増の8,083百万円となりました。
営業外収益(費用)は、受取利息及び為替差益の増加により、前連結会計年度の1,089百万円の収益(純額)から、1,703百万円の収益(純額)となりました。受取利息から支払利息を減じた純額は、前連結会計年度の98百万円の収益(純額)に対し、480百万円の収益(純額)へと増加しました。
経常利益は、売上高の減少があったものの、国内コンシューマー製品販売事業の移管及び原価低減による売上原価及び販売費及び一般管理費の減少により、45.5%増の9,786百万円となりました。
利益(損失)は、前連結会計年度における固定資産売却益の計上により、538百万円の利益(純額)となったことに対し、当連結会計年度は固定資産売却益の減少により653百万円の損失(純額)となりました。
税金等調整前当期純利益は、25.7%増の9,133百万円となりました。
法人税等は、26.2%減の1,482百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純利益は44百万円増の107百万円の利益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、45.3%増の7,544百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の109.33円に対し164.59円となりました。
当社グループは、中期経営計画MEX23の期間において、2022年3月期は不採算事業であったプロジェクター事業の大幅縮小を実行したほか、当連結会計年度は国内コンシューマー製品販売事業の移管を行うなど、事業ポートフォリオ改革による事業の新陳代謝進めるとともに、原価低減策の継続的推進や原材料費高騰対応を行いました。この結果、MEX23の最終年度であった当連結会計年度は、2023年3月期との比較で売上高は減収となったものの、営業利益は事業ポートフォリオ改革の効果もあり大きく増益となりました。2025年3月期から2027年3月期までの新たな中期経営計画MEX26においては、引き続き「価値(企業価値・利益成長)にこだわる」を基本方針として、事業基盤のさらなる強化に向けた事業ポートフォリオ改革の加速や徹底した原価低減策を継続し、収益力の強化を図っていくとともに、全固体電池を中心とした新事業などへの積極的な成長投資を進めていきます。併せてMEX26の期間においては、PBR1.0倍超の実現も目標に据えて、総還元性向を重視した株主還元策の強化により企業価値の向上を図っていきます。
該当事項はありません。
当社グループでは、当社及び当社の関係会社の研究開発部門や事業本部などが連携して研究開発活動を行っております。また、当社グループ外の企業との共同開発や産官学連携の活用により、一層の技術革新を推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
(エネルギー)
当社の研究開発部門や事業本部などが連携し、リチウム一次電池やボタン電池などの一次電池、リチウムイオン電池や全固体電池などの二次電池及び電池応用製品の研究開発を推進しております。当連結会計年度においても、全固体電池の研究開発を中心に行いました。硫化物系固体電解質を用いたセラミックパッケージ型全固体電池の開発を進め、リフロー基板実装が可能な高気密性、高耐熱性、105℃環境で10年の寿命(※)の技術を確立しました。2023年4月に量産設備を稼動し、2023年6月より産業機器メーカーを中心に多数の顧客へ量産サンプルを出荷しています。同電池は㈱ニコンのアブソリュートエンコーダに採用決定したほか、同電池とソーラー発電素子を組み合わせたハーベスティング・モジュールについてもローム㈱と共同で開発しました。並行して大型化の開発も進め、200mAhの円筒形全固体電池を開発しました。革新型蓄電池の開発においては、LIBTEC(技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター)で実施開始された第3期NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託事業(SOLiD-Next)に参画することで、新たな電池技術の確立を進めています。LIBTECへは研究員5名が出向し次世代全固体電池の電極開発などに従事しています。当セグメントに係る研究開発費は
※当社及び外部機関の試験による推計
(機能性部材料)
当社及びマクセルクレハ㈱、宇部マクセル京都㈱の研究開発部門や事業本部などが連携し、粘着テープ、機能性材料、塗布型セパレーター、工業用ゴム製品などの研究開発を推進しております。当連結会計年度においても、自動運転車両や次世代通信をターゲットにした支援技術やデバイスの開発を推進しました。発泡技術を応用した薄肉・軽量・高剛性・良外観の部分リブ発泡成形技術を開発しました。車載、IoT家電など多くの分野での活用が期待されます。今後、シナジー連携や協業により発泡部品及びその関連事業の創出を早期に実現します。また、アナログコア技術をベースに、5G通信やADASセンシングをターゲットにした電磁波対策部材の開発を継続し、Beyond 5Gを狙ったテラヘルツ波対応の技術開発を研究機関と連携して推進しました。さらに、海外の建築・建材市場向けの住宅用気密部材や3次元実装に対応した半導体製造工程用のダイシングテープやバックグラインドテープの開発にも取り組んでいます。当セグメントに係る研究開発費は
(光学・システム)
当社及びマクセルフロンティア㈱の研究開発部門や事業本部などが連携し、光学部品、電鋳・精密部品、半導体関連組込みシステム、金型・合成樹脂成形品、RFIDシステム、ICカード、プロジェクター、映像機器などの研究開発を推進しております。当連結会計年度においても、当社グループが保有する映像光学技術による新事業創出に向け、光と映像技術で新しい価値を生む製品開発を行い、社会の安心安全に貢献することをめざした製品開発を推進しました。当社グループ独自のLLIS(Laser Like Image Source)技術及び、高次自由曲面光学技術による高輝度・高コントラスト・低消費電力を実現する製品開発に注力しており、車載分野では、車の安全運転に大きく貢献するディスプレイとして量産中のARヘッドアップディスプレイに加え、小型かつ高精細のBM-Display (Bright Mirror Display)の開発を行っています。また、世の中の非接触ニーズと新たな映像表示の形を提供する空間浮遊映像装置であるAFID(Advanced Floating Image Display)は、パートナー企業との共創を進めています。映像技術分野としては、高演色・高速画像処理技術により見えにくい映像を見やすくすることで、さまざまな安心を提供することに取り組んでいます。当セグメントに係る研究開発費は
(ライフソリューション)
当社及びマクセルイズミ㈱の研究開発部門や事業本部などが連携し、安心、快適、スマートな空間づくりを通じて人々の心を豊かにすることをめざして、健康・理美容機器、小型電気機器、音響製品、光ディスク、充電機器、アクセサリー、乾電池、電設工具などの研究開発・商品開発を推進しております。当連結会計年度においても、ユニークな製品開発を通してお客様にさまざまな価値や感動を提供すべく、各種新製品の開発を進めました。シェーバーについては、サステナブル社会への対応を意識して、切れ味5年保証(※)の長寿命刃を開発し、シェービングAI技術やピタヘッド等の追加機能も加えた新製品を市場に投入しました。また、健康関連機器や理美容機器については、医療機器認証を活用し、グローバル展開も視野に入れながらBtoB顧客の要望に応える製品の開発を継続しています。電設工具においては、電力会社からの委託研究により、安全性を進化させたケーブルカッターの開発を進めるとともに、内線工具、配電工具、異業種工具の各市場向けにユーザーの利便性、機能性に配慮した製品を投入しました。当セグメントに係る研究開発費は
※当社規定の耐久試験を実施し確認