代表取締役社長高橋識光及び常務取締役グループ経営・経理・広報・IR・総務担当宮本和久は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会が公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。
なお、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見できない可能性があります。
当事業年度の末日である2024年3月31日を基準日として行っております。
企業会計審議会が公表した基準などの一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠しております。
連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを合理的に選定しております。
当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価いたしました。
当社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、金額的及び質的影響並びに財務諸表上の重要な虚偽記載の発生可能性を考慮し、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から次の範囲を決定いたしました。
当社及び連結子会社1社を評価の範囲といたしました。
当社の連結子会社は8社、持分法適用関連会社は1社であります。
連結子会社7社は、当連結会計年度を含む過去3年平均の売上高(連結会社間取引消去後)に占める割合は、最大で1.77%、平均0.55%となっており、金額的及び質的影響並びに財務諸表上の重要な虚偽記載の発生可能性の観点から、重要性が低いと判断し、評価範囲に含めておりません。
また、持分法適用関連会社1社につきましては、「持分法による投資損益」が僅少であるため、評価範囲に含めておりません。
これら連結子会社7社を除外したとしても、評価の範囲となる当社及び連結子会社1社の連結売上高は、全体の96.09%となります。この値は、従来から採用されてきた割合(95%)を上回ることから、当社及び連結子会社1社を評価の範囲といたしました。
当社の内部統制評価における事業拠点は、法人格単位で専業をとっており、会社と定義しております。重要な事業拠点の選定に際しては、主に金額的影響への判断により、事業拠点の規模を適切に表す指標として連結売上高(当連結会計年度を含む過去3年平均の連結会社間取引消去後の売上高)が適切と判断いたしました。
連結売上高に占める当社の割合は90.84%であり、連結売上高の大半を占める当社を「重要な事業拠点」として選定いたしました。この事業拠点(当社)において、内部統制が機能していないという仮定の上で、各勘定科目固有の虚偽記載の発生リスクの識別を行い、また、その事業に照らして、量的、質的な重要性があり、虚偽記載の発生リスクが相対的に高いと判断した売上高、売掛金及び契約資産、仕掛品に至る業務プロセスを、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として評価の対象といたしました。
選定した重要な事業拠点以外の事業拠点も含めた範囲について、質的重要性の要件と追加的に評価するプロセスの有無を検討した結果、重要な事業拠点において追加すべきと判断したプロセスは、下記のとおりです。
財務報告の重要な事項の虚偽記載に結びつきやすい事業上のリスクを有する業務や、複雑な会計処理が必要な取引を検討した結果、下記を評価対象に含めることといたしました。
① 投融資評価プロセス
金額的重要性を勘案し、財務諸表における虚偽記載の発生可能性が相対的に高いと判断いたしました。
経営者や経理担当者による恣意性が介在する余地が大きい項目を検討した結果、下記(①から⑥)を評価対象に含めることといたしました。
① 貸倒引当金算定プロセス
② 損失予想引当金算定プロセス
③ 固定資産減損判定プロセス
④ ソフトウエア及びコンテンツ減損判定プロセス
上記プロセス(①から④)は、事業に直接関わる見積りであり、金額的重要性が高いと判断いたしました。
⑤ 税効果会計プロセス
⑥ 退職給付会計プロセス
上記プロセス(⑤及び⑥)は、会計処理の複雑性が高く、経営者の見積りが介入する可能性が高いと判断いたしました。
不規則な取引を行っている等から虚偽記載の発生が高いものとして、財務報告への影響を検討した結果、関連当事者との取引は、一般には見ることのできない条件で行われることがあり、虚偽記載の発生可能性が相対的に高いため、非定型・不規則な取引の有無を判断するには、関連当事者との取引の把握を行うことが適切と判断し、下記を評価対象に含めることといたしました。
① 事業報告(附属明細書)及び計算書類(附属明細書)作成プロセス
② 有価証券報告書及び四半期報告書作成プロセス
注:開示資料作成の過程において、関連当事者取引を把握し、非定型・不規則な取引の有無について確認しております。
① 研究開発・投資プロセス
研究開発・投資について、ソフトウエア仮勘定の金額的重要度が高くなり、虚偽記載の発生リスクが増加したため、追加いたしました。
全社的な内部統制の評価範囲の決定に際し、全子会社の全勘定科目を対象に、当社が定めた一定金額を超過した勘定科目について、前期末と当期末の金額を比較し、変動の合理的な理由を確認した結果、虚偽記載は検出されませんでした。このため、重要な虚偽記載の発生リスクは低いと判断し、長期間にわたり評価範囲外とした特定の事業拠点について、評価範囲に含めないことといたしました。
また、業務プロセスは対象事業拠点(当社)が定めた一定金額を超過した勘定科目について、前期末と当期末の増減を比較した勘定科目毎の勘定明細を作成し、増減分析を実施いたしました。その結果、長期間にわたり評価範囲外とした業務プロセスに関わる勘定科目の金額的重要性は僅少であり、重要な虚偽記載の発生リスクは低いと判断し、長期間にわたり評価範囲外としていた業務プロセスは、評価範囲に含めないことといたしました。
下記について評価を行った結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断いたしました。
当社では、「全社的統制チェックリスト」及び「決算財務報告統制チェックリスト」に基づき、整備及び運用状況の評価を行っております。
内部統制評価の実施基準が示す42の評価項目例を参考に、当社及び連結子会社1社の置かれた環境や特性に適合した評価項目を決定しております。
決定した評価項目それぞれを主管する部署(連結子会社を含む)に対し、統制の状況を確認した上で「全社的統制チェックリスト」を作成し、整備及び運用を行っております。
当社で評価項目を決定した評価項目について、主管する部署(連結子会社を含む)に統制の状況を確認した上で「決算財務報告統制チェックリスト」を作成し、整備及び運用を行っております。
作成したチェックリストに基づき、評価範囲とした当社及び連結子会社1社において、関連文書(証跡等)を確認し、必要に応じ、主管する部署(連結子会社を含む)の担当者にヒアリングを行い、整備及び運用状況の評価を実施いたしました。
その結果、評価期間を通じ、定められた手順にしたがって整備及び運用が図られていることを確認いたしました。
これにより、当社及び連結子会社1社は、当事業年度末日時点における全社的な内部統制は有効に機能していると判断いたしました。
重要な事業拠点(当社)において、評価対象となる業務プロセスについて、業務フロー図及び業務記述書を作成いたしました。その上で、業務プロセスの分析を行い、その中に存在するリスクを抽出し、リスクコントロールマトリクス(RCM)を作成いたしました。
作成したRCMに基づき、財務報告に重要な影響を及ぼすキーコントロール(統制上の要点)を選定し、キーコントロールが有効に機能していることを確認できる証跡を確認し、整備及び運用状況を評価いたしました。
その結果、キーコントロールが評価期間を通じ、継続的かつ有効に機能しており、重要な事業拠点(当社)は、当事業年度末日時点において、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目の決定に至る業務プロセスが有効に機能していると判断いたしました。
前項イと同様、重要な事業拠点(当社)において、評価対象となる以下の業務プロセスについて、業務フロー図及び業務記述書を作成いたしました。その上で、業務プロセスの分析を行い、その中に存在するリスクを抽出し、リスクコントロールマトリクス(RCM)を作成いたしました。
作成したRCMに基づき、財務報告に重要な影響を及ぼすキーコントロール(統制上の要点)を選定し、キーコントロールが有効に機能していることを確認できる証跡を確認し、整備及び運用状況を評価いたしました。
その結果、キーコントロールが評価期間を通じ、継続的かつ有効に機能しており、重要な事業拠点(当社)は、当事業年度末日時点において、その他の重要性の大きい業務プロセスが有効に機能していると判断いたしました。
① 貸倒引当金算定プロセス
② 損失予想引当金算定プロセス
③ 固定資産減損判定プロセス
④ ソフトウエア及びコンテンツ減損判定プロセス
⑤ 税効果会計プロセス
⑥ 退職給付会計プロセス
① 事業報告(附属明細書)及び計算書類(附属明細書)作成プロセス
② 有価証券報告書及び四半期報告書作成プロセス
① 研究開発・投資プロセス
当社は、2023年4月7日付「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」及び同年6月23日付「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」に記載のとおり、当社で発生した請負契約に係る作業が各事業年度末までに完了していた案件について、利益の一部を翌事業年度に先送りするという不適切な会計処理が行われていたことが判明いたしました。
本件に対し当社は、外部から招聘した弁護士、公認会計士で構成された特別調査委員会を設置し、事案の原因分析、再発防止の提言を盛り込んだ報告書をとりまとめ公表いたしました。
これを受けて当社は、特別調査委員会による再発防止の提言等を踏まえ、「4.付記事項」に記載の再発防止策を講じ、継続して運用を行ってまいりました。
当事業年度末日時点においては、再発防止策について次の点を確認し、開示すべき重要な不備が是正されているものと判断いたしました。
・前事業年度末における開示すべき重要な不備の是正のための再発防止策が適正に実践されていること
・当社で発生した請負契約に係る作業の繰越し案件に対する、繰越し妥当性チェックの結果、前事業年度末における開示すべき重要な不備とされた不適切な繰越しが行われていないこと
当社は、特別調査委員会の提言を受け、経営陣及び全ての役職員の意識改革、適切な経理処理に向けたルールの明確化と運用、企業風土の改革が再発防止に向け重要であると考え、下記の再発防止策を講じ、実行してまいりました。
この結果、当連結会計年度末日においては、開示すべき重要な不備は解消され、当社グループの財務報告に係る内部統制は上記「3.評価結果に関する事項」に記載のとおり有効であると判断いたしました。
当社では、これまで不適切会計が複数回発生しております。この真因として、公共部門での不適切な会計処理の発生リスクについて、真剣に考えていたとは言えない経営陣の意識、それが作用して経営陣と事業部の認識に乖離が生じていたことにあると特別調査委員会の調査報告書で指摘されておりました。
この再発防止策として、経営陣の意識改革を目的に下記に示す3つの方策を講じてまいりました。今後も引き続き、キックオフミーティング等の場において定期的にメッセージを発信してまいります。
当社では、期の始まりにあたる4月及び下半期の初めである10月にキックオフミーティングを開催し、当期の経営方針、運営状況等を代表取締役社長から全役職員に向け配信する機会としております。2023年度は、不適切会計事案の影響から、通常は4月に開催する上半期キックオフミーティングを6月に実施いたしました。
代表取締役社長から全役職員に対し、2023年度中にメッセージを配信した機会は下記のとおりです。
さらに、10月26日、代表取締役社長は、翌日に創立記念日を迎えるに際し、二度と同じ不祥事は起こさないという固い決意で再発防止に取り組むこと、全役職員で今回のことを肝に銘じ自らの手で襟を正したい旨を記したメッセージを全役職員宛にメール配信いたしました。加えて、「法令遵守」、「社会倫理を尊重」、「常に正しさを追求する」という当社が掲げる経営理念を再度周知するため、社報を発出し、併せて社内イントラサイトのTOPページに経営理念を掲示いたしました。
特別調査委員会による調査報告書の中で、「経営陣において、現場(事業部)の実態を理解すること、その上で、部門や職位にかかわらず、不適切な会計処理は、事業存続に関わること、そのため絶対に起こしてはならないとの強い決意を持つことが何よりも重要である。」と経営陣の意識改革が求められております。
特別調査委員会の提言を受け当社では、2023年7月28日、今後の事業運営に際し、取締役が市場環境の変化や新規事業の開拓に潜在するリスクを的確に把握し、当社の実情に即した政策を立案・遂行するため、高い水準のコンプライアンス意識を全社的に実現することを目的とした役員研修を実施いたしました(2024年度も同時期の開催を検討しております)。
また、当社が抱えるリスクを明らかにすべく、法務部及び専門コンサルタントが主催となり、2024年3月5日に全取締役参加のワークショップを開催し、リスクマップ、リスク体制及びリスクカルチャーについて整理いたしました。
当社は、「1.空間情報事業を通じて、安心で豊かな社会システムの構築に貢献する 2.社会的に公正であることを判断基準として、法令遵守、社会倫理を尊重し、常に正しさを追求する 3.お客様の信頼を誇りに、最高レベルの空間情報を提供する」という経営理念を掲げております。
今回の不適切会計事案が発生した背景を鑑みると、各役職員が経営理念を胸に抱き事業活動を行ってこなかったことは明らかです。このため、先ずは現在、各役職員個々が持ち合わせている慣習である企業風土を改善し、「法令遵守」、「社会倫理を尊重」、「常に正しさを追及する」という経営理念に則った事業活動を実施する企業に立ち返る必要があると判断いたしました。
この活動を推進する組織として、2023年6月1日付で代表取締役社長の直下に常設の「企業風土刷新本部」を設置いたしました。本組織は、経営理念・風土の醸成を目的としており、取締役を本部長とし、経営改革推進担当及び風土改革推進担当にそれぞれ執行役員を配置いたしました。
先ずは、事業部及び労働組合と連携し、手法・出席者・開催環境等を計画的に準備した上で、代表取締役社長、事業統括本部の役員及び企業風土刷新本部の役員が事業部に出向き、様々な立場の役職員から広く意見・提案等を聴取するため、「企業風土に関するミーティング」を開催いたしました。ミーティングは、各事業部(11事業部)及び本社管理部門を対象に、7~8月の期間で全14回開催し、代表取締役社長から今回の不適切会計事案及び再発防止策の重要性を説明した上で、企業風土刷新本部がミーティング出席者に対し、再発防止策や企業風土に関する意見・要望を収集いたしました。
本組織では、各ミーティングで得られた合計818件の意見を、進めている再発防止策の10項目に合わせて整理、分析いたしました。また、その結果を報告書として取りまとめ、10月10日に社内イントラサイトで全社公開し、労使懇談会、取締役会、事業部長会議等の主要会議で報告いたしました。
企業風土刷新に向け必要なことは、これまで複数回発生してきた不適切会計事案を二度と起こすことなく、全役職員が常にコンプライアンス意識を高く保ち、事業活動を進めることと考えております。このため、当組織では先ず、再発防止策の確実な実行に向け、進捗管理を行い、経営層、親会社をはじめとした関係者に適宜報告し、いただいた意見を反映しながら、今回策定した再発防止策の確実な実行を管理してまいりました。
さらに、再発防止策のより一層の浸透・周知を目的として、実施状況と今後の対応を社内イントラサイトで公開いたしました。
今後は、組織開発の専門コンサルタントの支援を受けながら、今回のミーティングで収集した意見と風土刷新に向けた課題について、順次整理検証を行い、解決に向け取り組みを強化いたします。
経営陣は、事業部の実態を理解し、事業部の声や実情を踏まえ、正しいことを求める指示がメッセージの発信方法によっては、不適切な会計処理を行う動機に繋がることから、意識が伝わるメッセージの発信を心がけるべきであると、特別調査委員会の調査報告書で指摘されておりました。
この再発防止策として以下の3つの対策を講じてまいりました。実施してきた対策は、単年度で完結するものではなく、継続した運用が重要であると考えます。このため、当社では今後も引き続き、これらの対策を実施してまいります。
これまで本社は、「事業部から提出された計画数値を尊重しており、最終的に決定した計画数値は必達目標ではなく、あくまでもガイドラインである」と説明してまいりました。他方、事業部では「事業部提出の数字に本社が上乗せした数字が計画数値になっており、その数値は必達である」との認識があり、双方の考え方に乖離があるまま運営されてきたことが問題であると調査報告書で指摘を受けておりました。
そのため、企業風土刷新本部が中心となり、事業統括本部及び事業部管理職と「事業計画の在り方」や「計画策定プロセス」について検討協議を重ねつつ、「持続的成長と企業価値向上」を目指し、事業部と経営陣・本社の双方が納得し得る事業計画を策定いたしました。
不適切会計事案の影響から2023年度の事業計画策定作業は遅れておりましたが、2023年5月から事業計画のあるべき姿や計画策定プロセス時の課題と改善案について、企業風土刷新本部と各事業部が意見交換を始めました。
事業部からは、「常に右肩上がりの計画である」、「年度による浮き沈みや特定年度の特需等、市場動向を考慮していない」、「生産体制を考慮していない」等、課題の抽出とそれらに対する解決策として「受注計画は、市場動向を考慮した計画とする」、「社内生産体制に見合った計画とする」等、企業風土刷新本部に提案がありました。
当社では、2023年度から2025年度まで3か年の中期経営計画の策定に、2021年5月より着手いたしました。同年12月からは、各事業部及び本社部門を管轄する執行役員が中心となり、意見を出し合い、市場動向、会社の将来像を見据え策定を進めてまいりました。策定した中期経営計画は、2023年5月の取締役会で決議され、現在は全社一丸となり計画の達成に向け尽力しているところです。
今回策定した中期経営計画は、事業部を管轄する執行役員も含めて策定したものであり、企業として目標とするものではあるが、この値に固執することなく、向かう方向として提示したものであり、必達のものではないことを、企業風土刷新本部を含む本社と各事業部は確認しあいました。2024年度事業計画策定に際し、従来は、翌事業年度の計画策定作業を12月から開始しておりましたが、今回は9月から開始し、地域特性、市場環境や予算要求の状況等を踏まえつつ各事業部にて9月末時点の計画と10月末時点の計画を検討いたしました。
事業部が抱える課題と対応策、移稼働(※)関連の情報を一覧にまとめ、本社と各事業部が早期に共有することで、事業部間での協議・調整を促進いたしました。
※:移稼働とは、抱えている案件が多く自事業部で生産ができない又は、自事業部に業務を遂行する生産体制が整っていない場合、他事業部に案件の生産を委託することを指します。
しかし、事業部からのボトムアップによる申告値は、受注・受託型産業である当社の事業特性上、本社計画値から大きく乖離する傾向は避けられず、2023年度の損益推移、過去実績及び事業部からの意見を参考に、企業風土刷新本部が各事業部と調整いたしました。その上で「計画値は必達ではなく目指すべき目標値」であることを繰り返し説明した上で、目標利益額を決定し、事業部と意識の統一を図りました。決定に際しては、事業部幹部に対面で説明するとともに、各事業部の部長及び課長向けにメールで報告し、理解を得ました。
今回、本社と事業部で進めてきた協議結果と計画策定プロセスをとりまとめ、2025年度の計画策定に向けたマニュアルを整備いたしました。マニュアルには、期初から仮決めした計画値に基づき予算要求活動を活発化し、その状況を踏まえ、本社と事業部との協議を重ね、事業計画の策定に取り組むことを記載しており、今後の計画策定に活用してまいります。
現在、企業風土づくりに資する、事業部における自発的な取組みの実践と展開を図るため、企業風土刷新本部と各事業部の幹部との間で窓口を設置し、本社と事業部との双方向の対話を促進しております。
また、2月に実施した労使懇談会の中で行なわれた「企業風土に関するミーティング」後、各支部の組合員からの意見を各支部長に確認いたしました。各支部長から得られたこれらの意見を集約し、経営者側との意見交換を実施の上、対応してまいります。
今回の不適切会計事案の原因の一つとして、各役職員の会計知識の欠如、コンプライアンス意識の欠落が指摘されております。このため、今回の不適切会計事案を“他人事”ではなく“自分事”に転換する意識醸成を図り、再発防止に繋げるため、定期的に開催している階層別研修において、コンプライアンス意識の醸成と再発防止対策を組み入れた研修を実施いたしました。
研修では、今回発生した事案の説明を行い、不適切会計に至った原因を明らかにした上で、コンプライアンスの重要性について講義を実施いたしました。
また、「今回の不適切会計事案を“他人事”ではなく“自分事”として捉えるためには、どのようにしたらよいか?」をテーマとしたグループ討議と発表を行い、役員との意見交換を実施する中で、各自の意識転換を図りました。
2023年度階層別研修概要
当社では、過去に複数回の不適切会計事案が発生しておりますが、その際の再発防止策は本社主導で策定されたものを事業部に実行させる形態のものが主体となっておりました。このため、今回は現場で実務にあたる事業部役職員に再発防止に向けた取り組み案を紹介し、意見聴取を実施いたしました。
当社では、実行予算の計画時に登録する工数は時間単位であるのに対し、実績数値は費用で表示されております。このため、実際に運用している事業部の役職員は、計画と実績を直接比較することが困難な状況にありました。これに対し、計画と実績の両方を経験や職位に応じて4段階に分類された技術者区分それぞれに対し、時間単位で出力されるツールを開発し、事業部の役職員から意見を聴取いたしました。その結果、利便性が向上すること、実行予算の見直しに役立つことを確認できたと同時に、工数以外の費目(外注費、諸経費等)も同様の仕組みが欲しいとの要望を受け、併せて開発いたしました。
このツールの導入により、各事業部の実行予算見直し率が向上するとともに、第2ディフェンスライン(事業統括本部 事業管理部)が行う日常的なチェックの利便性が向上いたしました。
今後も引き続き、現場からの意見を汲み上げ、より良き対策が講じられるよう継続してまいります。
当社では、これまで繰越しに関する明確なルールが定められておりませんでした。これにより、繰越しの判断が現場任せとなり、不適切な会計を招く元凶になったと指摘を受けておりました。このため、当社では繰越しに関するルールを明文化し、定められた手順に従い適切な繰越し処理がなされているかモニタリングする体制を整備し、運用してまいりました。この結果、適切な処理がなされていることを確認いたしました。
なお、この活動は今後も継続し、適切な運用がなされていることを確認してまいります。
前期発覚した不適切会計事案では、案件の不適切な利益の繰越しが問題となっておりました。当社では、業務の特性上、国や地方公共団体の会計年度末にあたる3月工期の案件が多くを占めておりますが、一部の業務では、お客様都合又は降雨等、自然環境条件で業務が遅延することもあり、契約工期を超過して生産を継続する案件があります。これらの案件が適切な理由で繰り越されているか、適切な金額を繰り越す計画となっているか等、確認する必要があります。
当社では、これまで案件の繰越しに関する明確な基準が示されておらず、特別調査委員会の調査報告書においても問題として取り上げられておりました。このため、案件の売上/繰越しの判断基準及び可否を判断するための要件について、事業部でマネジメントを実行している技術系管理職からの意見も取り入れ、2023年度第1四半期末から適用できるよう整備いたしました。
検討に際しては、特性の異なる契約内容(請負契約・商品販売契約・月額商品契約等)を網羅するとともに外形的・客観的に判断することができる基準のみならず、定性的に判断せざるを得ないケースも想定されることから、具体的な事例を提示し、的確かつ明解な内容といたしました。
また、これまでは複数の規程や通達等が散在し周知・浸透に課題があったため、決定した内容は、社内イントラサイトで『業務の手引き』に明文化するとともに、説明会を通じて全従業員への周知を図りました。
繰越しは、各事業部の技術部長の承認の上で実施されることを必須といたしました。各担当技術者は、繰越しが必要となる理由が明確な書面、それに要する予定金額、必要な期間を明記した上で、自部署の課長に電子申請を起案し、部長、技術部長の承認を得て繰越しの手続きを行うよう手順を定めました。
これまで、第2ディフェンスライン(事業統括本部 事業管理部)を「統制監理を行うべき組織」として位置付けておりましたが、実際には第2ディフェンスラインが事業部生産部門に対し直接確認を行い、第1ディフェンスライン(事業部の生産部署)は指摘項目について確認・報告を行うという体制が常態化し、第2ディフェンスラインでは第1ディフェンスラインが担うべき機能を補助する役割も担っておりました。
このため今回、事業部側の第1ディフェンスラインと本社側の第2ディフェンスラインによる管理体制を見直し、それぞれの役割を明確化いたしました。
チェック体制の強化として、第2ディフェンスラインには、2023年6月1日付で請負業務のプロジェクトマネージャーとしての経験と知見を有する2名を増員し7名といたしました。また、第3ディフェンスライン(業務監査部)には、2023年11月1日付で社外から内部監査業務の経験者1名を増員いたしました。
事業部から行われた繰越しに関する電子申請は、第2ディフェンスラインで申請内容、添付書類とともに実行予算を確認し、その適切性を判断いたします。申請内容に疑義や不備があった場合には、事業部に再度確認を行い、適切性が判断されるまで繰り返し確認を行い、申請、適切性の確認ともに厳格化いたしました。
第2ディフェンスラインでその適切性を確認された繰越し案件は、さらに第3ディフェンスラインである業務監査部でサンプリング調査を実施し、申請内容と実行予算の整合性を確認しております。
当社では、全役職員に対し、グローバルコンプライアンス研修の受講を毎年義務付けております。今回、これに加えて、CSR・コンプライアンス研修を新設し、役職員への教育に取り組んでまいりました。
コンプライアンス意識は、一朝一夕で醸成されるものではなく、継続することが重要であると考えます。今後も途絶えることなく、コンプライアンスに関する取り組みを継続して行くため、役職員に向けたコンプライアンス研修の充実を図ってまいります。
コンプライアンスの重要性、当社の経営理念・行動憲章から企業の社会的責任(CSR)を理解し、自身の業務や役割を改めて再認識する研修を実施いたしました。
当社は、過去の不適切会計事案に基づき、再発防止の諸対策を講じたにもかかわらず、今回も不適切会計が繰り返された背景の一つに、当社の企業風土・カルチャー固有の課題(※)があると認識いたしました。そのため、当社としては初めての取り組みとして、①諸規則の背景にある社会的規範及びその変化を常に意識することの重要性並びに②経営・事業・オペレーションの健全性を自律的に維持するための基盤となる「社員の心理的安全性」の重要性に焦点を当てた研修プログラムを企画し、当期は、実際の業務をコントロールする立場にある管理職及び専門職を対象に実施いたしました。
当社は、今後、不適切会計を二度と繰り返さないためには、当社の仕組みやプロセスを着実に改善することと併せて、当社役職員が自らステークホルダーの視点から常に物事を考えられるカルチャーを継続して醸成していくことが不可欠であると考えております。
役職員の意識改革、企業風土・カルチャーの変革を一朝一夕になすことは容易ではありませんが、この研修プログラムを、不適切会計の再発防止策のみならず、当社のコンプライアンス重視の経営方針を支える基礎研修と位置づけ、来期は、順次受講対象者を拡大するとともに、最新の社会情勢を反映したり、当社の現場オペレーション実務に即したケースを採用したりする等、研修プログラムをアップデートすることに加え、研修事務局体制を整備・強化し、研修形態も効果と負荷のバランスをとった形に再編する等、最終的には全役職員を対象とした研修として恒常的に実施して行く予定です。
※:当社が認識する企業風土・カルチャー固有の課題
b.今回の不適切会計事案についての内部申告は、検知の契機となった告発1件のみであったにもかかわらず、特別調査委員会が申告者保護を掲げた調査には多数の役職員からの申告がなされた事実は、当社の職場における「社員の心理的安全性」が十分には確保されていないと認識せざるを得ない点
全役職員に毎年受講を義務付けているグローバルコンプライアンス教育に、不適切会計事案の内容と再発防止の取り組みに関する特別プログラムを追加いたしました。2023年11月9日~12月8日の期間に実施し、当社及び国内子会社の受講対象者全員の受講を確認いたしました。
また、社内におけるコンプライアンス啓発及び役職員の意識改革を目的に、代表取締役社長より全役職員に向けて、2023年10月26日及び11月8日に社長メッセージを発信いたしました。
今後も様々な形態で発信を続ける予定です。
当社では、業務の専門性の高さや事業部ごとに顧客特性がある等の理由から、人事異動は、業務に支障が生じ得るとして、促進しづらい面があります。しかし、人事異動の少ない固定化した組織は、属人的な業務手法を招く、過度に人的結束が強まる、組織の同質化が進み異論が出しづらくなる等の問題につながります。
このため、人事ローテーションを制度化する等、対策を講じてまいりました。今後も人材育成、キャリアパス、人事制度改革等を勘案の上で人事異動の促進を図ってまいります。
当社では、作業の手順や作業ツールの違い等から生じていた属人的な業務プロセス、組織内の具申しにくい雰囲気、過度の人的結束や組織の同質化等、特別調査委員会から指摘されていた幾つかの弊害が存在いたしました。このため、同部署での在籍期間が比較的長期(概ね3~4年超)に該当し、かつ上級管理職である技術センター長(4名)及び航空写真測量系技術部長(4名)を対象に、2023年6月1日付で人事異動を実施いたしました。
2024年度の組織編成に際しては57名の事業部間異動を実施し、特別調査委員会で指摘された弊害を除去するために、人事ローテーションを制度化いたしました。また、将来にわたって組織の活性化を図るべく、企業風土に関するミーティングにおける意見・提案等を参考に、職員の同部署での在籍期間の集計結果、事業部の異動候補者の調査結果、自己申告等を勘案し、人事異動ガイドライン及び人事異動案を策定いたしました。
2024年度の組織編成は完了いたしましたが、人事異動は、従業員のキャリアパスや生活環境のみならず、人事制度をはじめとする会社や仕事に関する様々な制度等が関連いたします。今後、2年間をかけて2024年度組織編成時の課題抽出と反省に基づき、実施評価と課題解決を進め、必要に応じて適宜ガイドラインの見直しを行います。ガイドラインの見直しは、特に効果的かつスムーズな人選等に留意した上で、スケジュールを含め検討し、実施いたします。
2025年度からは、社員一人ひとりによるキャリア開発の実践に向け、並行して検討中の人事評価制度を見ながら「キャリアパスガイドライン」に基づく、上長への将来希望申告、上長からの指導及び教育につながる施策を実行いたします。
また、社員の異動履歴の管理強化、中長期的な組織人材ニーズの蓄積、同一組織長期在籍者の把握に向けた人事システムの改良により、社員のキャリア開発の推進強化を図ります。これらの情報蓄積を基盤として、全社的な見地から人材育成及び人材の最適配置を実現してまいります。
当社は、従来から「業績評価」を人事評価制度の評価項目としてまいりました。これに、2023年度から新たに「目標達成に向けたプロセス(実施度)」を加えることで、成果目標(達成度)とプロセス(実施度)の二つの軸で評価する仕組みに改定いたしました。
2023年度の目標設定に際しては、管理職全員に対する評価者研修を実施し、改定内容の理解度を深めるよう配慮いたしました。
また、「パスコグループ中期経営計画 2023-2025」を踏まえた新たな経営戦略のもとで、社員に報いることができる新たな人事制度を2025年4月からの実施を目標に、人事コンサルタントの支援を受けつつ、既存の三つの人事制度(処遇、等級、評価)を一体的に見直し、現状の課題を解決する仕組みを引き続き検討しております。
モニタリングの実施体制は、「④繰越しルールの明確化およびチェック体制の強化」で示したとおり、各ディフェンスラインの役割を明確化いたしました。従来は、第2ディフェンスラインと事業部の生産部署管理者との間で内容の確認を行っておりました。今回、事業部で業務の進捗を監理してきたプロセス監理室を第1ディフェンスラインの窓口として位置づけ、第2ディフェンスラインとの連携強化を図りました。また、生産部署で完結していた確認作業を営業部門と共有し、日々発注者と接している営業担当者の視点を取り入れることで精度の向上を図りました。
さらに、モニタリングの強化として、工数、進捗具合の確認作業において費目(人件費、外注費、その他変動費) 単位の計画と実績の乖離資料を参考として確認を行う等、モニタリング項目に新たなチェック項目を追加し、モニタリングの内容を拡充いたしました。
今後も引き続き、適切な実行予算の見直しが図られるよう、モニタリングを継続してまいります。
当社では、これまで運用してきた基幹システムを再構築するPDXプロジェクト(Pasco Digital Transformation)を進めております。この基幹システムの再構築に合わせ、これまでの業務フローを再確認するとともに、今回の不適切会計事案で問題となった手続きの見直しを進めております。
稟議発議手続きの作業負担が、今回の不適切会計の動機の一つになっておりました。このため、稟議発議手続きの簡素化を目的に、追加原価見込額が一定額未満の場合は稟議不要とし、不適切会計の動機とならないよう、稟議等に係るルールを見直しました。この対策は、完了いたしました。
決算時期は、不適切な利益の繰越しの直接的な原因ではないものの、十分なチェックを行う時間を確保することを目的として、業務繁忙期と異なる決算期への変更の要否について検討いたしました。
検討の結果、決算期変更による効果を見出すことができませんでした。このため、今回の検討をもって本対策は、完了といたします。
2023年3月期の期末決算において繰越し案件の申請ルールを明確化し、申請システムによる運用を開始したことにより、2023年度の各四半期決算及び期末決算では繰越し案件の適正性が確保されました。また、生産統制人員を2名増員し統制人員を全体で7名といたしました。これにより、繰越し案件の申請ルールに基づいた処理に対し十分なチェック機能が働いていることを確認いたしました。
案件の繰越し処理のチェックに要する作業ボリューム、生産統制部署の増員による繰越しのチェック体制及びモニタリング状況について確認いたしました。
2023年度の各四半期決算及び期末決算において、繰越し案件のチェック及びモニタリング業務は、決算スケジュールに影響を与えることなく、十分なチェックを行う時間を確保することができております。そのため、a.の繰越しルールの明確化とチェック体制の強化を継続的に実施することにより、繰越しのチェック及びモニタリング業務はより有効となることを確認いたしました。
繁忙期を理由に決算期を現状の3月から9月、又は他の四半期に変更しても、決算開示は四半期毎であることから、各決算日の前後に実施していた処理や確認作業に大きな変更はありません。繰越し案件のチェック方法やチェックに要する時間を検証した結果、決算期変更による有益性を見出すことはできませんでした。
これらイ及びロの検討結果から、決算期変更は当社グループ全体の作業量及びコストの増加、資料の組み替えによる誤謬リスクが伴うことにより、現時点の決算期変更は見送ることが妥当と判断いたしました。
今回の不適切会計事案では、内部通報情報の報告・対応遅延が問題となりました。このため当社では、ガバナンスを含むチェック機能を見直し、体制の強化を進めてまいりました。この度、予定されていた全ての改善策について対応が完了いたしました。
2023年6月16日の定時取締役会で「コーポレート・ガバナンス体制図」を改定し、代表取締役社長の直轄組織として経営改革・風土改革を推進するとともに、不適切会計処理の再発防止策を事業部・本社部門と連携して実行する組織として企業風土刷新本部を新設いたしました。
法務部(内部統制推進課)内に全社統制総合事務局を設置し、全社統制及びリスクマネジメント主管部署として事務局を担うことを明確化し、2023年度の年間対応計画を作成いたしました。
内部統制・リスクマネジメント内容毎に、それぞれを主管する部署を明確化いたしました。
今回の不祥事を通じて明らかになった内部通報情報の報告・対応遅延に対処するため、従来、法務部長1名で対応していた内部通報窓口は、法務部長と法務課長の2名に、社員通報窓口の事務局体制は、法務部長と副部長の2名に2023年6月1日付で強化いたしました。また、内部通報及び社員通報窓口以外でも、内部通報に相当すると思われる事案は、法務部に連絡する旨、関係部署に周知しております。
今回の事案についても、内部通報窓口以外への通報から発覚いたしました。このため、内部通報窓口以外から受け付けた情報を適正に処理するための手順を確立し、マニュアルを整備いたしました。
該当事項はありません。