将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在での判断です。
当社グループは、「常に世界一の空間情報事業者であるために、革新的な思考と行動により、常に変化を創造し行動する」ことを経営方針に掲げ、品質方針、環境方針、情報管理方針、労働安全衛生方針、人材育成方針のもと、事業を通じて社会に貢献する企業を目指しております。
また、パスコの経営理念では、①空間情報事業を通じて、安心で豊かな社会システムの構築に貢献する、②社会的に公正であることを判断基準として、法令遵守、社会倫理を尊重し、常に正しさを追求する、③お客様の信頼を誇りに、最高レベルの空間情報を提供する、と定めております。
そして、2017年に当社グループの経営ビジョン「地球をはかり、未来を創る~人と自然の共生にむけて~」を新たに設定し、測量・計測技術によって地球上を捉えることだけに留まらず、あらゆる「はかる」を空間情報に融合させ、人と自然が共生した未来社会の構築を目指しております。
また、企業活動の持続可能性(サステナビリティ)を維持・発展させるために、企業の社会的責任(CSR)を包含したEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)に配慮した経営のもと、空間情報事業を通して国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指しております。
当社は「地球をはかり、未来を創る ~人と自然の共生にむけて~」を経営ビジョンに掲げ、空間情報事業を通じて自然環境や社会と共存し、持続可能な社会の一員として企業活動を持続的に発展させていくために中長期的な経営戦略を推進しています。当社の強みである空間情報の基盤技術(はかる・くらべる・みせる)をさらに磨くとともに自動化や超空間、未来予測等の最先端基礎研究・開発を強化し、空間情報イノベーション(つなぐ・ひろめる・いかす)を実現してまいります。
また、様々なステークホルダーとの連携を強化し、真に価値ある空間情報サービスの提供を通じて社会に貢献してまいります。
そして、2023年8月には、「“真に信頼される企業経営”への変革を第一に、空間情報の活用による新たな市場戦略の礎を築く」を基本方針とする「パスコグループ中期経営計画2023-2025」を策定し、「経営の真価」と「事業の進化」の2本柱の計画に基づく、活動に邁進しております。
当社の過年度決算において、年度内に作業が完了したにもかかわらず、作業が残存するとして案件を翌期に繰り越す処理、および年度内にすべての作業が完了しなかった案件について翌期に発生するであろう残作業を過大に見積もる処理が行われていたことが判明いたしました。その結果、本来は当該年度に計上すべき売上高および利益が翌期に繰り越される不適切な会計処理が行われていました。
過去に複数回、不適切な会計処理が行われてきた背景として、経営陣は現場に対する過度な業績達成のプレッシャーが過去の不適切会計の原因であることを認識していたにもかかわらず、それを深刻に受け止めず、コンプライアンス意識の向上、不適切な会計処理への対応にあたり危機感をもって行動することができておりませんでした。経営陣としては、改善のための施策が浸透したものと判断していたものの、その確認が疎かなまま現場は変わったと考えておりました。結果として、経営陣が現場の実情を熟慮することなく現場が正しく行動できるであろうという前提のもとに施策、指示を発信し、現場との認識の間に乖離が生じたことが、今回の不祥事の根本原因と考えております。
不適切な会計処理の判明を受けて設置した特別調査委員会からの提言を踏まえ、以下の再発防止策を講じて適正な内部統制の整備・運用を図ってまいりました。再発防止策の浸透は単年度で完了するものではなく、今後も運用を継続してまいります。但し、c.「現場発案による再発防止策の検討」、h.「稟議等にかかるルールの見直し」および、i.「決算期についての検討」については完了とします。
当社は2023年4月7日付「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」にて適時開示いたしましたとおり、特別調査委員会より利益の繰り越しに関する不適切な会計処理に対する調査報告書を受領したことを受け、調査報告書において指摘された原因分析と再発防止策に関する提言を真摯に受け止め、検討を重ね、今後取り組むべき再発防止策を策定いたしました。
このような状況のなか、当社グループは、過去の不祥事を二度と繰り返さないよう、社会の一員として、その存在を期待され、持続可能な地球環境の創出及び社会基盤の構築に貢献するため、経営の健全化と事業を通じて社会に貢献することを主眼とし、2023年8月に「パスコグループ中期経営計画 2023-2025」(以下、「本計画」という。)を策定いたしました。
当社グループは本計画に基づき、「“真に信頼される企業経営”への変革を第一に、空間情報の活用による新たな市場戦略の礎を築く」を基本方針として、「経営の真価計画」と「事業の進化計画」を掲げ、計画の実行性を高めるための具体的なアクションを実施してまいります。
社会に存在を期待され、持続可能な企業経営を維持するため、経営理念を重視した健全な経営を遂行するための計画を定め、パスコの真の価値を再構築する
持続可能な地球環境の創出及び社会基盤の構築に貢献するため、3つの“しんか(深化・伸化・新化)”計画を策定し、空間情報事業の拡大・成長を目指す
当社グループでは、持続可能性(サステナビリティ)を巡る課題が重要な経営課題であると認識し、ステークホルダーに配慮しながら、課題解決と継続的な改善に向けた事業活動に取組んでおります。2022年6月には、当社グループ全体におけるサステナビリティ推進の取組みのレベルを更に向上させるため、「サステナビリティ推進委員会」を設置いたしました。同委員会は、取締役会からの指示・監督のもと、サステナビリティ経営に係る基本方針の策定・改定、重要課題(マテリアリティ)の設定・開示、達成状況の評価などを行います。あわせて、「サステナビリティ基本方針」を策定し、空間情報事業を通じて、自然環境や社会と共存し、持続可能な社会の一員としてステークホルダーに配慮した事業活動の持続的な発展を目指すことを掲げています。
2023年3月には、この取り組みを具体化するため重要課題(マテリアリティ)の特定をいたしました。重要課題の特定プロセスは、セコムグループの一員としてセコム株式会社の「サステナビリティ重要課題」を踏まえつつ、当社の事業特性等を考慮して持続可能な企業成長に向けて優先的に取り組む経営上の課題の整理・抽出を行い、①お客様視点のサービス、②先端技術の活用とパートナーシップ、③社員の自己実現とダイバーシティ、④人権尊重と誠実な企業活動、⑤脱炭素・循環型社会、⑥地域コミュニティとの共生の6カテゴリを重要課題といたしました。
2023年11月には、環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加を表明し、事業をとおした地球環境保全への取組みを推進しています。
また、2023年12月には、多くのステークホルダーに当社の取り組みを発信すべく『パスコグループサステナビリティレポート2023』を刊行しました。持続的な企業成長に向けた価値創造ストーリー、TCFD(気候変動財務情報開示タスクフォース)に基づくリスクや機会の特定、温室効果ガス排出量等を公表しています。
今後も、企業活動の持続可能性(サステナビリティ)を維持・発展させるために、企業の社会的責任(CSR)を包含したESGに配慮した経営のもと、空間情報事業を通して国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社では、持続可能性(サステナビリティ)を巡る課題が重要な経営課題であると認識し、ステークホルダーに配慮しながら、課題解決と継続的な改善に向けた事業活動に取組んでおります。2022年6月には、パスコグループ全体におけるサステナビリティ推進の取組のレベルを更に向上させるため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティ推進担当役員を委員長とし、外部有識者を含めた委員で構成されます。取締役会の指示のもと、サステナビリティ経営に係る基本方針の策定・改定、重要課題(マテリアリティ)の設定・開示、達成状況の評価、リスクの評価ならびに対応策等に関する検討・審議を行います。その審議結果は、適切な時期に取締役会へ報告いたします。
あわせて、「サステナビリティ基本方針」を策定し、空間情報事業を通じて、自然環境や社会と共存し、持続可能な社会の一員としてステークホルダーに配慮した事業活動の持続的な発展を目指すことを掲げています。
2023年3月には、この取り組みを具体化するため重要課題(マテリアリティ)の特定をいたしました。重要課題の特定プロセスは、セコムグループの一員としてセコム株式会社の「サステナビリティ重要課題」を踏まえつつ、当社の事業特性等を考慮して持続可能な企業成長に向けて優先的に取り組む経営上の課題の整理・抽出を行い、①お客様視点のサービス、②先端技術の活用とパートナーシップ、③社員の自己実現とダイバーシティ、④人権尊重と誠実な企業活動、⑤脱炭素・循環型社会、⑥地域コミュニティとの共生の6カテゴリを重要課題といたしました。
また、2023年12月には、これらの取組を『パスコグループ サステナビリティレポート2023』として公表しています。
今後も、企業活動の持続可能性(サステナビリティ)を維持・発展させるために、企業の社会的責任(CSR)を包含したESGに配慮した経営のもと、空間情報事業を通して国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指してまいります。
当社では、金融安定理事会(FSB)により設立された「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同し、気候変動に関するリスクと機会についてTCFD 提言に沿った分析、評価を行うとともに、情報開示の充実に取組んでまいります。
当社は、サステナビリティ推進委員会において、気候変動によるリスク・機会の分析、CO2排出量等、各KPIの策定ならびに今後の達成状況の評価等を協議しています。本委員会で協議された内容は、定期的に取締役会へ報告され、取締役会が適切な助言や指示・承認を行うとともに、重要事項は取締役会の決議で決定されています。認識されたリスクは、サステナビリティ推進委員会において審議します。対応が必要と評価されたリスクに関しては、各部門と連携しながら取締役会へ報告しています。
②戦略
当社では、気候変動によるリスクと機会の特定にあたり、IPCC(International Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)やIEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)等、国際機関が公表するシナリオをもとに1.5℃シナリオと4℃シナリオの世界観を整理し、2030年、2050年時点における当社事業への影響を考察し、それぞれの世界観におけるリスクと機会を特定しています。
CO2排出量の算出にあたっては、全国64拠点の排出量から算定しました。売上当たりのマーケット基準排出量は6.22t‐CO2/億円となりました。燃料別内訳では電気による排出が約8割を占めます。当社は、セコムグループの一員として、セコム株式会社が2021年5月に公表している通り、2045年に自社の温室効果ガス(GHG)排出ゼロ(カーボンゼロ)を目指す、その通過点として、2030年度までに温室効果ガス排出を2018年度比で45%削減する目標に沿って、排出削減に向けた施策を強化し、脱炭素・循環型社会の実現を目指します。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。
当社では、最高レベルの空間情報を提供するため、真の適材適所の人事戦略とともに、価値創造型の人材の育成を図り、生産性向上と付加価値の最大化に努めています。また、性別、国籍、新卒・中途採用等の区別なく、多様な人材の登用を進めてまいります。
(ア) 未来を担う多様な人材の育成
社員一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できるよう、若手社員の早期戦力化や管理職のマネジメント能力の向上を図る階層別研修の実施、新規事業創出のための知見を獲得する場となるPASCO大学の開催、技術力の強化を推進する資格取得支援等を行っています。
(イ) 女性活躍の推進
当社では、管理職における女性の割合と全社員における女性社員の割合の増加を目指しています。今後も女性社員の職域の拡大や新卒採用における応募者の増加に向けた取り組みを継続することにより、女性管理職比率をはじめとした女性社員の活躍の場を増やしてまいります。
(ウ) 外国人・中途採用者活躍の推進
外国人・中途採用者においては、国籍、採用時期に関わらず、管理職にふさわしい人材を登用しています。外国人については、当社の今後のグローバル展開に合わせて、グループ内において人材強化策を推進し、積極的な登用を進めていくこととし、中途採用者においては、定着・早期活躍策を推進し、社内のバランスを考慮しながら、適正な登用を継続していきます。
b. 社内環境整備方針
当社では、多様な働き方の実現に向けて、以下に掲げる、社内環境の整備に努めてまいります。
当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
人材育成方針に関する取り組み内容
2024年3月31日現在
社内環境整備方針に関する取り組み内容
2024年3月31日現在
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、国および地方自治体を主要顧客としており、これらの官公庁等への依存度は高い状況となっております。このため、公共投資額の変動、および事業遂行上重大な支障を与えると認められる法令等の制定・変更により経営成績および財政状態に影響を与える可能性がありますが、公共系分野も多岐に渡るため有望分野への対応、人員のシフトにより収益性の向上を図ります。
民間事業においては、経済環境の変化等により顧客企業の投資の抑制が顕著になった場合や、市場環境・物価の変動があった場合、当社の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。得意分野への人員、資源を集中させ収益の確保を図ります。
衛星事業においては、人工衛星、地上システム等に不具合が生じた場合や、衛星事業パートナー事業者との契約解除が生じた場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。このため、複数拠点での対応、定期的なメンテナンスの実施、管理による故障リスクの低減を図るとともに損害保険に付保して万一の場合に備えております。
当社グループの成果品に重大な契約不適合があった場合には、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
本社および各事業部門に品質管理担当組織を設置するとともに、業務工程に応じたレビューの実施、従業員の能力向上を図るための社内外での教育訓練を実施しております。
(3) 自然災害・パンデミック等の異常事態について
当社グループ各事業所が、大規模な台風や地震等の自然災害、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック等の異常事態に見舞われた場合は、生産活動に支障が生じ、経営成績および財政状態に直接的または間接的に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、勤務場所や時間に左右されない在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務等のテレワーク環境と制度を構築し、事業リスクの低減に向けた施策を推進しております。
BCP(事業継続計画)を作成し、業務実施場所の分散、被災した場合でも速やかに事業を復旧することが可能なように準備を進めております。
当社グループが海外各地において展開している事業については、各地域固有の商慣行、政情不安等が、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。カントリーリスクを考量した受注段階での選別、業務実施場所を分散させてリスクの低減を図っております。
また、為替変動により外貨建取引における債権および債務の円貨換算額に影響を与える可能性があります。為替の市場動向をモニタリングするとともに、必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、為替変動の影響を低減することとしております。
(5) 工事原価総額の見積りの妥当性について
当社グループは、請負業務に関する工事収益の計上に際して、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度に基づいて収益を一定の期間にわたって認識しております。当該収益認識に係る進捗度は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合で算定しており、工事原価総額の見積りは請負業務の契約内容や性質による個別性が高く、原価項目が多岐にわたるため、業務の完了に必要な全ての作業に係る費用が工事原価総額に含まれている必要があります。
工事原価総額の見積りにあたっては高い不確実性を伴い、請負業務から損失が見込まれる場合には、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、工事原価総額を網羅的に見積り、変動があった場合には適時に見直すことにより、適切な収益認識となるよう対応しておりますが、「第1 企業の概況 (3) 会社の対処すべき課題」に記載のとおり、見積りの一層の妥当性向上に取り組んでまいります。
当社グループは、金融商品に関する会計基準等に従い定期的に保有資産の時価を算定し、時価が著しく下落した場合には評価損の発生が予測され、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、保有意義が乏しいと判断される投資については縮減を進めております。
(7) 固定資産の評価について
当社グループは、既存事業の競争力強化ならびに新規事業の創出のため設備投資およびシステム開発を行っております。固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フローを算定し資産性を検証しております。十分なキャッシュ・フローが見込めない場合は、減損損失の発生が予測され、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、厳格な投資審査およびモニタリングにより、適正なリスクコントロールに努めております。
(8) 年金資産および年金債務について
当社グループの年金資産の運用利回りが期待運用収益率を下回った場合や、予定給付債務の数理計算の基礎数値等に変更があった場合には、数理計算上の差異が発生し経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、確定給付型と確定拠出型を組み合わせた退職給付制度を導入しており、年金資産の運用において安全性と収益性を考慮した投資配分等を定期的に検証し、リスクを低減する取り組みを行っております。
(9) 人材の確保・育成について
当社グループの持続的発展のためには、高度な専門能力や管理能力を有する優れた人材の確保・育成が必要不可欠であり、人材の量的・質的不足は経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
新卒・キャリア採用の促進、シニア社員の積極的な登用を図ることで、顧客都合による納期の期末集中等を原因とする長時間労働などの労務問題が解消され、働き方改革に貢献するものと考えております。
また、技術者を中心とした公的資格の取得促進、教育研修や配置転換によるノウハウ蓄積、能力に対する人事評価などにより、個々のキャリアパスの実現を図っております。
さらに、女性活躍の機会を増やし、キャリア・障害者の採用を促進しており、その結果として多様性が高まることで組織風土が変化し、定着率の向上やハラスメント等の人権問題解決にも貢献するものと考えております。
(10) 法令遵守等について
当社グループの経営および事業活動に求められる法令遵守・倫理規範の水準は高まっており、法令や規制の改正への的確かつ迅速な対応や倫理的な企業活動の継続が経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
最優先方針として独占禁止法を厳格に遵守し、談合行為等は完全に排除しております。また、法規制の変更に基づくリスクを回避するため関係当局の動向を注視し適時適正に対応するとともに、コンプライアンス重視の方針を役職員に徹底しております。
(11) 情報セキュリティについて
当社グループは、業務遂行上、顧客の重要な秘密情報や個人情報を取扱っており、これらの情報が漏洩または不正利用された場合には、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
厳格な情報管理を行うため、情報資産管理規程および個人情報管理規程に基づき、情報セキュリティマネジメントシステムおよび個人情報マネジメントシステムを構築し、サイバー攻撃を含む情報漏洩等の事故発生防止のための社内体制の整備と社員教育を行っております。
(12) 訴訟その他法的紛争等について
当社グループは、国内外における事業に関連して、作業現場における事故、第三者との間の権利・義務に関して訴訟その他法的紛争等の当事者となるリスクが存在し、このリスクが顕在化した場合には、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社法務部は、契約審査等を通じて未然防止に努めるとともに、万が一、訴訟その他法的紛争等が発生した場合には、顧問その他外部弁護士および親会社の法務部との連携を図り、当社グループへの影響を低減するよう努めております。
また、ソフトウエアライセンスに関しては、これを一元管理し、契約上の使用許諾条件と著作権法を遵守する運用を徹底しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在における判断です。
当社グループを取り巻く事業環境においては、政府主導の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」や「デジタル田園都市国家構想」、国土交通省主導の「Project PLATEAU(プラトー)」などが引き続き推進されております。また、2024年問題を抱える建設・物流業界などの分野では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の拡大も続いており、当社グループが持つ技術やノウハウなどを発揮する事業領域に対するニーズは、継続して高い水準にあります。
このような事業環境下において2023年11月に創業70周年を迎えた当社グループは、2023年8月に「パスコグループ中期経営計画2023-2025」をスタートいたしました。本計画は、新たな飛躍に向けた経営基盤の再構築を目的としており、「“真に信頼される企業経営”への変革を第一に、空間情報の活用による新たな市場戦略の礎を築く」を基本方針とし、「経営の真価計画」「事業の進化計画」の達成に向けて、活動を開始しております。「経営の真価計画」では、経営理念を重視した健全な経営を遂行するため、パスコの真の価値を再構築することとしております。また、「事業の進化計画」では、3つの“しんか(深化・伸化・新化)”計画を策定し、空間情報事業の拡大・成長に向けた取り組みを進めております。
(具体的な活動)
中期経営計画の初年度となる当期は、計画の方針に則り、以下の通り着実な歩みを進めてまいりました。
経営の真価については、「公正・公平な業務姿勢の徹底」のため、コンプライアンス教育の徹底や社内体制の強化に取り組みました。また、「環境に配慮した事業活動への転換」の一環としては、環境省主導の「生物多様性のための30by30アライアンス」への参加や、当社初となる「サステナビリティレポート」を発行いたしました。
事業の進化については、「深化」(既存事業の革新・強化)のために、生産性向上に向けた取り組みや、事業領域拡大に向けた体制強化を進めております。また、「伸化」(持続可能な事業の拡大)のために、タイ王国との衛星分野における基本合意の締結や、茨城県との衛星とAIを活用した不法投棄早期発見の実証、森林変化情報サービス提供などに取り組んでおります。さらに、「新化」(多様性による新たな事業創造)のために、メタバースを活用した実証プロジェクトへの参加など、新たな事業創造に向けた活動も進めております。
また、空間情報事業者の使命として、2024年1月に発生した令和6年能登半島地震をはじめとする大規模自然災害などの被災状況把握に努め、二次災害の予防と迅速な復旧活動計画の策定などを支援いたしました。
各部門の活動の状況につきましては、以下の通りです。
国内公共部門においては、政府のデジタル規制改革の追い風により、「デジタル田園都市国家構想」に基づく各種台帳のデジタル化業務や、その利活用のためのシステム導入が、引き続き順調に拡大しております。
国内民間部門においては、次の飛躍期に向けたサービスラインナップの充実と販売戦略の強化に努め、継続型サービスの拡大に注力いたしました。
海外部門においては、新たな海外市場戦略に基づき、コア技術の海外展開を図るなど、引き続き、ビジネスチャンスの拡大に注力しております。
(当期の経営成績)
当期および前期の連結経営成績は下記のとおりであります。
連結経営成績
受注高、売上高等の損益の状況を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。
当社グループは、主要顧客である官公庁からの受注が第1四半期に集中し、収益は年度末の納期に向けて増加する季節的変動があります。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)
前連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)
受注高、売上高の状況をセグメントごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)
(注) 1 前連結会計年度末受注残高の上段( )内表示額は、前連結会計年度における年度末受注残高であり、下段は当連結会計年度の外国為替相場の変動を反映させたものであります。
<国内部門>(公共部門・民間部門)
国内公共部門の受注高は、国土強靭化による受注や衛星データ受信業務が好調だったことから前期比3,556百万円増加(前期比6.7%増)の56,480百万円となりました。売上高は、各種台帳業務等が堅調に推移し、前期と同水準となる前期比406百万円減少(同0.8%減)の53,527百万円となりました。受注残高は、複数年契約の受注が増加したことから前期比2,952百万円増加(同16.1%増)の21,302百万円となりました。
国内民間部門の受注高は、車両搭載型レーザー(MMS:モービル・マッピング・システム)による測量業務等が減少したことにより、前期比1,307百万円減少(同26.5%減)の3,631百万円となりました。売上高は、MMSによる測量業務等の減少により前期比746百万円減少(同13.4%減)の4,838百万円となりました。受注残高は前期比1,207百万円減少(同22.2%減)の4,240百万円となりました。
この結果、国内部門(公共部門・民間部門)合計では、受注高が前期比2,249百万円増加(同3.9%増)の60,112百万円、売上高は前期比1,152百万円減少(同1.9%減)の58,366百万円、受注残高は前期比1,745百万円増加(同7.3%増)の25,543百万円となりました。
<海外部門>
海外部門の受注高は、前期に当社において大型の国土基盤図整備業務の受注があったこと、およびインドネシア共和国の子会社において大型案件の受注があったことにより、前期比821百万円減少(同29.8%減)の1,937百万円となりました。売上高は、前期に3次元地図データ整備業務が好調だったことから、前期比158百万円減少(同6.4%減)の2,338百万円、受注残高は前期比370百万円減少(同30.2%減)の858百万円となりました。
この結果、受注高合計は前期比1,428百万円増加(同2.4%増)の62,049百万円、売上高は前期比1,311百万円減少(同2.1%減)の60,704百万円、受注残高は前期比1,374百万円増加(同5.5%増)の26,401百万円となりました。
利益面につきましては、売上総利益は、売上高の減少により、前期比567百万円減少(同3.2%減)の17,184百万円となりました。
営業損益は、人員増加および賃上げ実施に伴う人件費増加の影響で販売費及び一般管理費が前期比558百万円増加(同4.9%増)、および売上総利益の減少により前期比1,126百万円減少(同17.5%減)の5,306百万円の営業利益となりました。
経常損益は、営業利益の減少により前期比1,092百万円減少(同16.7%減)の5,433百万円の経常利益となりました。
税金等調整前当期純損益は、経常利益が減少したものの、前期に先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)の打上げ失敗による減損損失1,722百万円の計上、および当期にその打上げ失敗に係る受取損害保険金1,625百万円の計上により、前期比1,689百万円増加(同29.8%増)の7,349百万円の税金等調整前当期純利益となりました。
親会社株主に帰属する当期純損益は、税金等調整前当期純利益の増加により前期比992百万円増加(同24.2%増)の5,092百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
当社グループは、納品後の入金が年度明けの4、5月に集中することから、「受取手形、売掛金及び契約資産」および「短期借入金」が年度末にかけて増加していき、第1四半期で減少する傾向があります。「受取手形、売掛金及び契約資産」および「短期借入金」の推移を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度
前連結会計年度
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」)より3,144百万円増加し74,121百万円となりました。その主な要因は、前期末より「退職給付に係る資産」が1,283百万円増加、「受取手形、売掛金及び契約資産」が1,014百万円増加したことによるものです。
負債合計は前期末より1,995百万円減少し41,249百万円となりました。その主な要因は、当期に前期末営業債権の多くが回収され、回収資金で借入金を返済し、前期末より2,400百万円減少したことによるものです。
純資産合計は、前期末より5,140百万円増加し32,872百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益5,092百万円により「利益剰余金」が増加したことによるものです。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ634百万円増加し19,729百万円となりました。
当期におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは5,386百万円の資金の増加(前期は3,576百万円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益7,349百万円、固定資産の減価償却費1,841百万円です。また、主な資金の減少要因は、法人税等の支払額2,249百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは1,528百万円の資金の減少(前期は444百万円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、生産機材・ツール等の有形・無形固定資産の取得による支出2,230百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは3,437百万円の資金の減少(前期は3,416百万円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、短期借入金の純減額1,600百万円、長期借入金の返済による支出800百万円、配当金の支払額1,007百万円です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(貸倒引当金)
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額について貸倒引当金を計上しております。
経済状況、販売先の財務状況、支払能力および支払状況、担保の処分可能見込額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、事業用資産については管理会計上の区分に基づいて、賃貸用資産および遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。
回収可能価額は、将来キャッシュ・フローを割り引いた使用価値または不動産鑑定評価額等より処分費用見込額を控除した正味売却価額により算定しております。将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況・予算等)と整合的に修正し、各資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積っております。
将来キャッシュ・フロー、割引率および不動産鑑定評価額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、固定資産の減損の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性および将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度および繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況、予算等)と整合的に修正し見積っております。
当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産および法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(工事原価総額の見積り)
請負業務に関する工事収益の計上に際して、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度に基づいて収益を一定の期間にわたって認識しております。当該収益認識に係る進捗度は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合で算定しております。
工事原価総額の見積り時に想定していなかった原価の発生等により工事原価総額を見直した場合は、工事進捗度が変動するため、売上高および売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(工事損失引当金)
将来損失が発生すると見込まれ、かつ、連結会計年度末時点で当該損失額を合理的に見積ることが可能な請負業務について、翌連結会計年度以降の損失見積額を引当計上しております。
受注規模の大きい請負業務において、想定していなかった原価の発生や工期の延長等により見積りを超えた原価が発生する場合は、工事損失引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付に係る負債)
確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があります。
当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、連結財務諸表提出会社(当社国内部門)が担当しており、総合研究所が中心となって各種の要素技術および応用技術の研究・開発を行っています。新製品の開発や既存商品の機能強化などについては、関連部署と連携してチームを組み、積極的に取り組んでいます。
当社は、研究開発活動の成果を基に技術的優位性の確立、品質と生産効率の向上、ならびに価格競争力の向上に注力し、国内外を問わず既存市場の振興と新分野の開拓に努めています。
当連結会計年度における研究開発費の実績額は
航空機レーザーやMMS(モービル・マッピング・システム)で取得された3次元点群、画像、航空機やUAVで撮影された多視点画像などを使用し、高精度な3次元都市空間モデルの自動構築・高速化に取り組んでいます。また、航空機レーザー計測から得られた3次元点群を地盤点とその他の点に分類するフィルタリング処理およびクラスタリング処理の実用化・効率化に資する技術の開発や、レーザー点群から地形特徴量を抽出し、視覚的に理解しやすい情報を提供するための可視化技術の研究開発も進めています。
人工知能技術を活用した社内業務の自動化や、新たなサービスの開発・提供を目指しています。特に、航空写真、衛星写真、レーザー点群、定点カメラなどの画像や点群を用いて、AIによる、固定資産業務における地目自動判読、建物異動自動判読、森林資源解析における樹種自動判読、砂防基礎調査における土地改変・ソーラーパネル・伐採地・盛土の自動判読、風水害時の浸水深自動判読などの技術開発を行っています。また、林地境界判定に有効なモノクロ画像のカラー化技術や、画像を詳細化する超解像技術の開発にも取り組んでいます。
社内の研究開発や事業において人工知能技術を有効に活用できる人材を育成するために、東京大学EdTech連携研究機構と連携してAI人材教育教材を共同開発しています。この教材を用いて、昨年度は当社の技術者約280名に教育を実施し、2019年度からこれまでに延べ約1,200名の技術者を対象に高度な知識を提供し、育成に努めてきました。