第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、当社が果たすべき使命と役割を十分に認識し、「永遠に伸びる会社」、「社員一人ひとりが幸せになれる会社」、「社会に貢献できる会社」を目指して、経営理念として以下の「四つの心」に基づき、確かな技術と先進のソリューションの提供を通して、お客様と社会の発展に貢献することを目指しております。

あわせて、当社は、企業が社会の一員であることを深く認識し、公正かつ透明な企業行動に徹し、国の内外を問わず、人権を尊重し、関係法令及びその精神を遵守するとともに、良識ある市民として真に豊かな社会の実現に尽力することを目指しております。

 

経営理念 四つの心で

「永遠に伸びる会社」

「社員一人ひとりが幸せになれる会社」

「社会に貢献できる会社」

にしよう

1. 感謝の心

今ある自分に感謝し、働く喜び、生き甲斐を持とう

2. 人格向上の心

仕事を通じて自己啓発し、人格向上を図ろう

3. 生活向上の心

豊かな安定した生活を目指そう

4. 企業の心

デジタル・IT関連などの情報システム技術、サービスの提供を通じて持続可能な社会の実現に

貢献しよう

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社は、創業以来、「情報を通じて、お客様や社会に貢献する」ということを使命に、持続可能な社会の実現性を目指す、公共性・社会性の高いシステム開発を中心に、システムインテグレーターとしてお客様にサービスを提供してきました。

サービスラインとして、「金融事業」、「産業流通事業」、「社会公共事業」、「ITイノベーション事業」を展開しており、当社の強みとしましては全てのサービスラインにおいて、売上の半数以上を長年のシステム開発実績を有する同一の大口顧客である元請システムインテグレーター企業からの継続案件や運用保守案件が占めていることです。これにより、安定的な経営基盤を確立していると認識しております。

中長期的な成長戦略として、業務システム開発力・人材を計画的に強化していくことで、好調な市場環境に対応する形で既存事業の拡大を図ってまいります。さらに、取引先のニーズに対応する中で、新たな事業拡大の可能性を常に探索し、自社のみならず、広く協業できる企業との業務提携等により新たな成長の芽を創り、新事業の創出・拡大を図ってまいります。

 

当社は、中期経営計画において、以下の基本戦略を展開してまいります。

 

① 業務システム開発力・人材の一層の強化

経験豊富な社内人材が中心となって、取引先の開発を牽引できる点が当社の最大の強みであり、当該強みを引き続き強化してまいります。具体的には社内人材拡大のため、新卒採用、経験者採用を問わず積極的な採用活動を行ってまいります。

また、協力会社との連携を深めるとともに、新規の協力会社の発掘にも注力しており、外注戦力を積極的に活用することにより、開発力の上方弾力性を常時確保できる体制を目指してまいります。

さらに、教育投資の強化を推進することで、専門性を有する人材確保への取組み策を着実に実行してまいります。AIやIoT、ロボティクス関連、クラウド関連等の新技術は、新デジタル分野として当社に必須の技術であることから、これらの社員教育についても機動的に対応してまいります。

技術革新へ対応の観点から、リスキリング支援を手厚くし、部門間異動を柔軟化することで事業変革への対応、社員のやる気をサポートしてまいります。

 

② 業務提携拡大による事業拡大の加速

既存取引先との事業規模拡大に対応しつつ、生産性向上を推進するために、特長ある技術やソリューションをもった企業との業務提携を加速し、自社の取引先への付加価値の提供や新たな取引先の発掘を図ることによって、事業の成長スピードを加速してまいります。

直近における具体的な取組みとしては、自社製品へのAI適用におけるパートナー連携やマイグレーションニーズ対応のための海外ベンダーとの提携等を行っております。

 

③ 資本業務提携(M&A)拡大による事業拡大の推進

当社は2024年4月1日に株式会社ヒューマン&テクノロジーとの資本業務提携(子会社化)を実施いたしました。今後、両社の特長を活かし、増加する国内のソフトウェア開発への対応を強化し、事業体制の一層の強靭化を推進してまいります。

引き続き、2027年3月期の連結売上高100億円を目指し、連結事業拡大を狙いとした資本業務提携(M&A)の拡大を推進してまいります。

 

(3)経営環境

当社が属する情報サービス業界におきましては、DXの実現に向けた企業の旺盛なIT投資による需要拡大が続いております。また、供給面では、システムエンジニア等のIT関連の人材不足は続いており、需給ギャップの拡大に伴い、システムソフトウェアの開発単価の上昇も続いております。このような需要拡大と単価上昇を受け、足元の国内情報サービス市場は過去最高水準を更新するとともに、中長期的においても市場規模の拡大が期待されております。

こうした環境のもと、当社はクラウド、ビッグデータなどのDX関連事業、AIの活用を成長の柱とする中期経営計画を推進しており、引き続き不足する人材を確保するため、リファラル採用、おかえりなさい採用等、経験者採用へのアプローチを積極的に実施するとともに、DX人材の教育育成にも力を入れ、早期に戦力化することに全力をあげております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、前述の経営方針、経営戦略、経営環境のもと、継続的な事業収益の拡大による成長と、より強固な経営基盤を構築するため以下の事項を対処すべき重要課題と捉え、その対応に引き続き取組んでまいります。

 

① 優秀な人材の確保

当社が属する情報サービス業界は、技術革新が急速に進んでいるため、常に最新技術への対応が求められております。これに応えられる優秀な人材を確保することが、今後の重要な課題であります。

当社では、優秀な人材を確保するために採用選考基準を明確化するとともに、「リファラル採用制度」や「おかえりなさい採用制度」を導入するなど、新卒採用、経験者採用を問わず積極的な採用活動を行っております。

 

② 人材育成

人材教育投資を当社の成長戦略の最重要課題と位置付け、官民あげてのDX化・IT化の流れに遅れないよう技術スキルの向上を図るために、人材教育予算を拡充してまいります。また、ますます重要性を増しているクラウド化技術の習得、AIやロボティクス等DX関連技術の習得のための教育プログラム(OFF-JT教育)の充実を図ってまいります。なお、当社の教育は、現場教育(OJT教育)が基本でありますが、新技術についてはOJTとOFF-JTが連動できるような形で進めてまいります。

 

③ 既存事業分野のさらなる強化

当社が属する情報サービス業界におきましては、顧客ニーズの高度化・多様化、オフショア活用の拡大やサービスの低価格化等により、ますます競争が激しくなる中、継続的な事業の拡大は一段と厳しい状況となっております。このような状況の中で継続的に安定した収益を確保していくためには、高度な専門性で付加価値を創造し、競合他社との差別化を図っていく必要があるとの理解のもと、これまで培ってきた業務知識・技術を基に、既存事業分野のさらなる強化が必要と認識しております。特に、FinTech(金融サービスのITイノベーション)、IoT、AI、ビッグデータ、RPA(ロボットによる業務自動化)等のITを利用した生産性向上や省人化・自動化による労働力不足等への対応等の進展に伴い、DX関連サービスへの需要は顕著であることから、当社は、以下に注力しDX関連事業の拡大を図ってまいります。

<ユーザのDXを含めた業務改革の取組みを支援するビジネス>

・各ユーザより様々な事業領域のDX案件(オープン化、モダナイゼーション(注))への参画要請に対応

・データ利活用等、DX領域での日立製作所グループとの協業

<マネジメント力と開発力のある人材群の構築>

・事業領域にとらわれないDX案件獲得、技術・ノウハウの共有を促進

・クラウド環境における技術検証・研究開発の促進

・技術者を育成(リスキリング(研修・講習・教育))

<DX案件拡大営業アプローチ>

・営業本部主体にサービスラインの枠を超えたDX案件獲得活動の推進

・主要取引先のDX案件開発企画等上流フェーズへの提案活動を推進し案件を早期獲得

 

④ 資本・業務提携拡大による事業拡大

当社は、2023年6月に東証スタンダード市場に上場し、さらなる成長を加速させるため、既存事業分野の拡大だけでなく、新事業の創出・拡大にも取り組んでまいります。具体的には、特長を持った企業との資本・業務提携により、自社の取引先への付加価値提供や新たな取引先の発掘を図ってまいります。

 

⑤ 品質向上と生産性向上

お客様のシステム開発に対する要求事項の高度化が進む中、お客様に満足していただけるシステムの品質 確保が重要な課題と認識し、継続的な取組みを行っております。

具体的には、品質管理部による「品質保証検査」をより一層徹底するとともに、当社標準品質目標値の継続的な整備を行い、組織的な品質向上・生産性向上に取組んでおります。

 

⑥ 人と組織力の強化

人材が当社の最大の財産であるという認識のもと、基礎技術スキルや先端技術スキルをはじめ、ヒューマ  ンスキルの向上によるプロジェクトマネジメント力の向上等、常に研修等の充実を図り優秀な人材の育成を積極的に推進し、人材を活かす組織の基盤を作ってまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、成長性と収益性を重視しておりますので、重要な経営目標は以下と捉えております。

・成長性:売上高成長率(対前期増加率)

対前期増加率 6.0~8.0% を目標として設けております。

・収益性:売上高営業利益率

売上高営業利益率 10% を重要な目標としております。

 

(注)モダナイゼーションとは、現行のIT資産を新技術に対応する形に更新することで、ソフトウェアやハードウェアのシステム基盤の最適化、近代化を行う手法をいいます。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 サステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会において検討項目としています。当該委員会の委員長は代表取締役社長で、担当役員は管理本部長とし、所管部署を総務部と定めております。当該委員会で報告・審議された内容は、取締役会に報告され、必要事項を取締役会において審議・検討することを規定しております。

 

(2)戦略

 経営理念に基づき、当社の持続的成長を図り、社会課題の解決に向けて産業と技術革新の基礎を作り持続可能な社会の実現に貢献します。当該目標に向けて、企業行動規範にサステナビリティに関する重要課題を設定しています。

人権   :当社の事業活動に関わる人々の人権を尊重

人材   :従業員の力を引き出す、心身の健康と安全に配慮した働きやすい職場環境の実現

環境   :組織的な危機管理の対象として適切な対策構築

ガバナンス:法令及び社会規範の遵守、情報開示と情報管理、知的財産の保護、組織的な危機管理、
実効性のある管理体制の整備

 

 サステナビリティに関する諸課題については、事業上の重要なリスクとして、コンプライアンス・リスク管理委員会における審議項目とし、その検討内容は取締役会へ定期的に報告しております。

 

①人材育成方針(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針)

 当社は、経営理念の一つに「仕事を通じて自己啓発し、人格向上を図ろう」を掲げ、教育投資を強化し、人材の確保・育成を行っております。人材の確保においては、採用選考基準を明確化し、新卒採用、経験者採用を問わず積極的な採用活動を行っています。

 教育投資においては、成長戦略の最重要課題と位置付けており、クラウド化技術、AIやロボティクス等のDX関連技術に関する教育プログラムの充実を通じて、戦略事業ドメインに係る技術スキルを維持向上させるための人材を育成しております。

 

②社内環境整備方針(社内環境整備に関する方針)

 従業員の力を引き出す、心身の健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を実現するために、健康経営優良法人の認定を受けるとともに、次のような対応の一層の充実を考えております。

(a)健康経営の推進

(b)女性のキャリア形成支援

(c)仕事と育児の両立支援

(d)経験者採用の常時実施

 

(3)リスク管理

 主要なリスク項目については、3[事業等のリスク]に記載のとおりです。

 各リスクについて、要因ごとに所管部署を定め、各年度の管理方針・計画(重点管理対象の見直しを含む)を立案し、指標を明確にしてリスクの状況を測定しております。指標等の推移や機会など必要事項は、コンプライアンス・リスク管理委員会において報告・審議を行っています。

 管理すべきリスク項目・重点管理対象・機会等の見直しは、年度計画編成時以外にも、取締役会での指摘などを踏まえ、必要に応じて随時見直しを行っております。

 

 

重要課題

主な機会とリスク

3[事業等のリスク]記載の関連リスク

人権

協力会社への業務委託による生産性向上及び専門性の高いノウハウ活用による売上げ増加(機会)

(6)協力会社依存に関するリスク

人材

会社の成長と利益が人材に大きく依存(機会とリスク)

(2)技術革新によるリスク

(5)人材確保、育成及び労務管理に関する
リスク

環境

気候変動による想定外の事態が発生した場合の業績等への影響(リスク)

(12)自然災害等に関するリスク

ガバナンス

実効性のある管理体制を整備することにより業績等への影響を限定(リスク)

(3)プロジェクト管理に関するリスク

(4)特定顧客依存に関するリスク

(7)顧客情報等漏洩のリスク

(9)許認可について

(10)知的財産権について

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

女性の管理職への登用

女性の管理職8以上

(管理職人員の10%以上)

1

健康診断再検査受診率

70

55.6

ストレスチェック受診率

100

100

クラウド関連資格の取得者

(Azure関連、AWS関連)

55以上

21

 

 

3【事業等のリスク】

当社の事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なものとしては、以下の内容が挙げられます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者に対する積極的な情報開示の観点から、以下に開示しております。

当社では様々なリスクについて、「顕在化可能性/影響度/発生時期」による重要性を認識した上で、『当社事業をとりまく環境に関するリスク』・『当社事業に関するリスク』・『その他のリスク』にリスク分類しております。

なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

『当社事業をとりまく環境に関するリスク』

(1)景気変動によるリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社が提供するシステムインテグレーションサービスは、景気の影響を受けやすい傾向にあります。経済情勢や景気動向等の理由による、顧客企業におけるシステム投資の縮小や製品開発の遅れ、事業縮小、システム開発の内製化等により、当社が提供するサービスに係る市場規模が縮小される可能性があります。したがって、国内システム投資動向が悪化した場合及び当社の顧客が属する事業分野の市況が悪化した場合等には、既存顧客からの受注の減少や新規顧客開拓の低迷により、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、金融事業・産業流通事業・社会公共事業・ITイノベーション事業の4つのサービスラインを有しており、事業領域を分散しバランスを取ることにより業績の安定化を図っております。

 

(2)技術革新によるリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社は、長期的な視点に立って技術革新に対応するため、DX関連事業への投資を行っております。高度な技術に対応できる人材確保や、クラウド関連技術教育への投資を行い確実な競争力を持つべく注力しております。

しかし、当社が属する情報サービス産業においては、技術革新が急速に進んでおり、当社が急激な技術変化等の方向性を予測、認識できない場合や、適時適切に対応できない場合及び競合他社に対して技術革新に遅れを取った場合等には、既存顧客からの受注の減少や新規顧客開拓の低迷により、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

『当社事業に関するリスク』

(3)プロジェクト管理に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし」

システム開発においては、開発規模の「大型化」と顧客の要求の「高度化」、オープン化の進展によるシステムの「複雑化」が進み、開発の難易度がますます増大しております。さらに、顧客に提供するサービスや構築システムは、社会的にも重要性が高く、納期厳守と高い品質の確保が要求されることにより、テスト段階以降のシステムエンジニアの負担が増加するケースが多く、開発時間の超過につながる可能性があります。これに対し、当社では開発推進本部(注)が、商談発生時からプロジェクトの進行監視を通じてリスク管理を行っております。

また、請負契約に関しては各工程の成果物について品質管理を行っておりますが、対応の遅れ等による不適合責任が発生した場合には、賠償金の支払いを含めプロジェクトの収支が不採算となるだけでなく、顧客の信頼を失うことでクレームやトラブルに発展し、商流の喪失につながる可能性があり、当社の業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(注)開発推進本部は、プロジェクトのリスク管理と品質管理の標準化を推進しております。

 

(4)特定顧客依存に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし」

当社の売上高比率は、2024年3月期において、取引年数40年以上の大口顧客である株式会社日立製作所が44.4%(日立製作所グループ全体では67.6%)、取引年数30年以上の顧客である三菱電機ソフトウエア株式会社が9.9%となっており、安定的な収益基盤となっております。また、日立製作所グループからは取引安定性確保の観点から、パートナー認定を継続的に得ている状況です。

当社は、日立製作所グループ及び三菱電機ソフトウエア株式会社との売上高比率を月次で定量的に管理するとともに、特定顧客以外への営業活動も行い直接取引等の拡大を図ることで、過度な依存とならないように努めてまいります。

当社としましては、継続的に大口顧客との良好なパートナーシップ関係の構築に努めてまいりますが、業界環境の大きな変化や営業施策の変更等により、当社の受注が大幅に減少した場合や受注条件が大幅に悪化した場合には、大幅な売上の減少により、当社の業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

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(5)人材確保、育成及び労務管理に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社の成長と利益は、人材に大きく依存いたします。人件費高騰が予想される中で、優秀な技術者やシステムエンジニア、管理者等、必要とする人材を厚待遇(給与・休日等)で採用、育成することは当社にとって重要であり、これに対して積極的な新卒採用やキャリア採用の促進を、十分な予算を確保し実施しております。

また、従業員の学習意欲に応えるために、当社の教育体系表を用いた階層別、技術ランク別の「技術・ヒューマンスキル研修」及びリスキリングによる「DX技術研修」に教育研修費予算を十分に確保し実施しておりますが、このような人材を採用又は育成することができない場合には、適切な人材配置が困難となり、延いては長時間労働の発生につながると従業員の心身の健康状態が悪くなり、労働災害に至る可能性があります。

この対策として、当社では労働時間の把握・管理をシステムによる客観的方法により行っており、加えて健康管理・メンタルヘルス研修等を実施しております。

しかし、人材採用及び労務管理に関して、適時適切に対応できなかった場合には、事業拡大に制約が発生するなどにより、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)協力会社依存に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社は業務上必要に応じて、生産性向上及び専門性の高いノウハウ活用等のため、情報システムの構築に関する業務を協力会社(外注先)に委託しております。協力会社への委託は、顧客要請への迅速な対応を実現し、受注の機会損失を防ぐことを目的としており、当社の受注拡大には協力会社の確保及び良好な取引関係の維持が必要不可欠であります。

協力会社との関係をより確実なものにするために、当社の外注管理規程による新規協力会社選定、継続評価等の各施策を実施しておりますが、2024年3月期における当社の製造費用に占める外注費の割合は44.5%となっており、外注費高騰等により協力会社から役務の提供を十分に受けることができない場合、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)顧客情報等漏洩のリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社は、顧客の情報システムの構築、保守並びに運用に当たり、個人や顧客情報を含んだ情報資産を取り扱っております。当社では、このような情報資産の漏洩、紛失、破壊のリスクを回避するために、様々な対策を講じております。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証取得やプライバシーマーク認証取得はもとより、各部門担当者と管理者から選出された委員で構成する「情報セキュリティ委員会」を設置し、従業員教育、各種ソフトウェアの監視、情報資産へのアクセス証跡の記録等各種の情報セキュリティ対策を講じ、個人情報を含む重要な情報資産の管理を実施し、情報漏洩のリスクの回避を図っております。

しかし、万が一にも、コンピュータウイルスをはじめとしたサイバー攻撃や、人為的過失等により情報の漏洩が発生した場合には、顧客からの損害賠償請求や当社の信用失墜・損害賠償請求の発生等により、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)業績の季節変動

「顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:第2四半期、第4四半期」

当社が提供するシステムインテグレーションサービスは、顧客である国内ITメーカ及び元請システムインテグレーターやエンドユーザのシステム投資予算の対象となり、顧客企業の予算執行のタイミングや開発システム工期との兼ね合いから、第2四半期会計期間及び第4四半期会計期間に売上計上が集中する傾向があり、営業利益もこの期間に偏重する傾向があります。

 

 

前事業年度(自 2022年4月1日・至 2023年3月31日)

 

上半期

 

下半期

通期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

売上高

(千円)

1,449,714

1,568,961

3,018,675

1,522,335

1,622,825

3,145,160

6,163,836

構成比

23.5%

25.5%

49.0%

24.7%

26.3%

51.0%

100.0%

営業利益

(千円)

61,115

152,673

213,789

148,562

139,800

288,363

502,153

構成比

12.2%

30.4%

42.6%

29.6%

27.8%

57.4%

100.0%

 

 

当事業年度(自 2023年4月1日・至 2024年3月31日)

 

上半期

 

下半期

通期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

売上高

(千円)

1,558,758

1,711,031

3,269,789

1,751,000

1,876,040

3,627,040

6,896,830

構成比

22.6%

24.8%

47.4%

25.4%

27.2%

52.6%

100.0%

営業利益

(千円)

77,397

164,271

241,669

188,757

160,767

349,525

591,194

構成比

13.1%

27.8%

40.9%

31.9%

27.2%

59.1%

100.0%

 

(9)許認可について

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

当社は、顧客先に社員を派遣してシステム開発等を行う場合があるため、労働者派遣事業者として厚生労働大臣の許可等を受け事業を行っております。当社の許可・届出状況については以下のとおりであります。

取得・登録者名

許可名称及び

所管官庁

許可番号

取得年月

有効期限

当社

労働者派遣事業許可

厚生労働省

派27-302462

平成29年3月1日

令和7年2月28日

当社は、労働者派遣法の遵守に努めており、事業活動に支障をきたす要因は発生しておりません。しかし、労働者派遣法に定める派遣元事業主としての欠格事由に該当したり、法的規制の変更に当社が的確に対応できなかった等により関係法令に違反があった場合には、当該許可等の取消し又は事業の停止を命じられること等により、当社の事業活動に支障をきたすとともに当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)知的財産権について

「顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし」

当社が行うシステム開発等において、当社の認識の範囲外で他社の所有する著作権及び特許権を侵害する可能性があります。このように、第三者の知的財産権を侵害してしまった場合には、多額の費用負担が生じたり、損害賠償請求を受ける等、当社の業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社では、システム開発等において、他社の所有する著作権や特許権を侵害しないように、「知的財産に関する教育研修規程」に基づき、従業員全員に知的財産保護に関する指導や教育の実施を行うとともに、「コンプライアンス・リスク管理委員会」においても該当する事案がないか常に注意を払い、全社的な取組みを推進しております。

 

『その他のリスク』

(11)大株主に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

株式会社オービック(以下「同社」という。)は、本書提出日現在、当社の発行済株式総数の27.88%を保有しており、当社は同社の持分法適用会社であり、同社は当社の「その他の関係会社」であります。

現在は同社との取引は一切ありませんが、将来は当社の取引先を通じて競合する可能性があります。ただし、同社はシステム開発について内製化の方針(自前主義)を有していることから、重大な競合関係が生じる可能性は低いと考えております。

当社の監査役である阿南友則は、同社の執行役員経営企画室長兼経理本部長でかつ、同社の複数ある子会社の監査役を兼務しております。当社と兼任が生じている理由は、当社はシステムインテグレーターであり、システムインテグレーション事業を長年営んできた同社における経営にかかる知見を、監査役として当社の経営体制強化に活かすことを目的としているためです。

同社は、今後も引き続き大株主であり、その結果当社の取締役の選任・解任などの株主総会決議事項の決定に影響を与える可能性があります。しかし、同社との間に事前承認事項はなく、当社として独自に意思決定を行っております。役員指名につきましては、社外役員を過半数とする指名報酬委員会を設置し客観性と合理性を高めており、将来の役員兼任の必要性につきましてもその都度検討を行う方針です。

このように、同社との相互の独立性は引き続き十分確保しておく方針です。今後、同社の経営方針に変更があり、当社議決権の保有比率に大きな変更があった場合には、当社の事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社創業者であり、大株主(本書提出日現在、当社の発行済株式総数の31.90%を保有)でもある当社相談役の山田孝は、今後も持株については安定保有の方針ですが、同氏の株式保有方針に変更があり、当社議決権の保有比率に大きな変更があった場合には、当社の事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)自然災害等に関するリスク

「顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし」

台風、地震、集中豪雨等の自然災害や異常気象によるリスクは年々高まってきております。当社において、直接的な被害の発生や通信障害等による情報システムの深刻なトラブルの発生等により、外的な脅威が顕在化した際には、事務所・オフィスの確保、要員の確保、安全の確保等の観点から事業の継続に支障をきたす可能性があります。当社は自然災害等に備え、事業継続のためのインフラ・人員計画や対応策の優先順位について整備する等、自然災害の発生等を想定した緊急事態発生時対応体制の整備を実施しておりますが、想定外の事態が発生した場合には、当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における流動資産は4,121,025千円となり、前事業年度末に比べ281,904千円減少いたしました。これは主に売掛金が160,074千円増加した一方、現金及び預金が483,590千円減少したことによるものであります。固定資産は1,757,916千円となり、前事業年度末に比べ941,653千円増加いたしました。これは主に満期保有目的の債券の購入(600,000千円)や時価の変動により投資有価証券が1,067,705千円増加した一方、繰延税金資産が173,503千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は939,909千円となり、前事業年度末に比べ307,326千円減少いたしました。これは主に買掛金が55,633千円、人件費関連の引当金(賞与引当金及び役員賞与引当金)が56,435千円増加した一方、未払金が483,090千円減少したことによるものであります。固定負債は227,390千円となり、前事業年度末に比べ84,741千円増加いたしました。これは主に繰延税金負債が112,210千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は4,711,642千円となり、前事業年度末に比べ882,334千円増加いたしました。これは主に東京証券取引所スタンダード市場への上場に伴う増資及び自己株式の処分並びにオーバーアロットメントに係る新株発行によって資本金が115,630千円、資本剰余金が282,682千円増加したこと、また、その他有価証券評価差額金が324,681千円、利益剰余金が266,719千円増加したことによるものであります。

 

b.経営成績の状況

当事業年度における国内経済は、コロナ禍から経済社会活動の正常化が進み、東欧・ロシアや中東地域をめぐる情勢の不安、国内における円安によるコスト負担増加や能登半島地震等の自然災害の影響はあったものの、インバウンド消費の拡大や大手企業を中心とした賃上げをはじめとした雇用、所得環境の改善により、引き続き回復傾向がみられました。

当社が属する情報サービス業界におきましては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた企業の旺盛なIT投資による需要拡大が続いております。また、供給面では、システムエンジニア等のIT関連の人材不足は続いており、需給ギャップの拡大に伴い、システムソフトウェアの開発単価の上昇も続いております。このような需要拡大と単価上昇を受け、足元の国内情報サービス市場は過去最高水準を更新するとともに、中長期的においても市場規模の拡大が期待されております。

こうした環境のもと、当社はクラウド、ビッグデータなどのDX関連事業、AIの活用を成長の柱とする中期経営計画を推進しており、当事業年度においては、不足する人材を確保するためリファラル採用等、経験者採用へのアプローチを積極的に実施してきました。また、DX人材の教育育成にも力を入れ、早期に戦力化することに全力をあげております。また、既存顧客とのパートナーシップの強化による当社事業領域の拡大及び顧客満足度の向上に努め、DX関連分野をはじめとする新分野に係る案件獲得に努めてまいりました。

 

この結果、当事業年度の業績は、売上高6,896,830千円(前年同期比11.9%増)、営業利益591,194千円(前年同期比17.7%増)、経常利益632,479千円(前年同期比22.2%増)、当期純利益441,579千円(前年同期比11.2%減)となりました。

 

当社事業は、システムインテグレーションサービス事業の単一セグメントでありますが、事業戦略上、事業領域を「金融事業」、「産業流通事業」、「社会公共事業」、「ITイノベーション事業」の4つのサービスラインに区分しております。

 

当社のサービスライン別の業績を示すと、次のとおりであります。

 

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

売上高

 

(千円)

6,163,836

6,896,830

111.9

 

金融事業

(千円)

2,469,705

2,726,279

110.4

産業流通事業

(千円)

1,757,123

1,898,927

108.1

社会公共事業

(千円)

1,449,100

1,684,978

116.3

ITイノベーション事業

(千円)

487,906

586,645

120.2

営業利益

(千円)

502,153

591,194

117.7

経常利益

(千円)

517,413

632,479

122.2

当期純利益

(千円)

497,479

441,579

88.8

 

(a) 金融事業

金融事業は、地銀・都銀、保険、証券、クレジットの各分野のソフトウェア設計開発及び運用保守を中心に事業を展開しております。

注力している生損保関連分野において、大型マイグレーション案件の受注が順調に拡大できたこと、及び、地銀・都銀、証券分野においても中型案件の受注拡大、新規案件の獲得ができたことにより堅調に推移いたしました。

この結果、売上高は2,726,279千円(前年同期比10.4%増)となっております。

(b) 産業流通事業

産業流通事業は、産業流通、マイコン、医療の各分野のソフトウェア設計開発及び運用保守を中心に事業を展開しております。

主力である産業流通分野につきましては、流通システム案件、医薬システム案件を中心に継続して堅調に推移いたしました。また、医療分野におきましては下半期に複数の大規模案件が受注できたことにより大きく伸長いたしました。一方、マイコン分野におきましては、開発の延期、縮小の影響が残っているものの、家電案件、車載案件を中心に引き合いは活発になってきており、回復の途上ではありますが、その手応えを感じております。

この結果、売上高は1,898,927千円(前年同期比8.1%増)となっております。

(c) 社会公共事業

社会公共事業は、電力ICT分野、社会インフラ分野、メディア情報分野、公共分野、文教・教育系分野のソフトウェア設計開発及び運用保守を中心に事業を展開しております。

主力である電力ICT分野、メディア情報分野につきましては堅調に推移しております。また、公共分野においても自治体及び独立行政法人向けの案件は堅調に推移しており、下半期は上半期に比し、受注も増加傾向になってきております。なお、自治体標準化、ガバメントクラウド案件は本格始動を前に準備段階であり、緩やかな立ち上がりとなっております。

この結果、売上高は1,684,978千円(前年同期比16.3%増)となっております。

(d) ITイノベーション事業

ITイノベーション事業は、システム全体を支えるフロントシステムエンジニアとして、受託開発、運用保守を中心に事業を展開しております。

金融機関における自社運用のサーバから仮想サーバ、クラウドサーバへの移行ニーズを計画通り受注拡大に結び付けることができました。また、クラウドを中心とした案件の獲得に注力した結果、継続して案件を受注できたことにより業績は堅調に推移いたしました。

この結果、売上高は586,645千円(前年同期比20.2%増)となっております。

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ116,409千円増加し、2,205,544千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は30,973千円(前事業年度は305,821千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が632,479千円、未払金の減少額が493,236千円、売上債権の増加額が161,319千円、仕入債務の増加額が55,633千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は7,245千円(前事業年度は18,112千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入及び払戻による収入(純額)が600,000千円、投資有価証券の取得による支出が600,000千円、固定資産の取得による支出が6,340千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は92,681千円(前事業年度は106,850千円の支出)となりました。これは主に、株式の発行による収入が231,260千円、自己株式の売却による収入が224,967千円、自己株式の取得による支出が165,295千円、配当金の支払額が174,764千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当事業年度の生産実績をサービスラインごとに示すと、次のとおりであります。

サービスライン名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

金融事業

(千円)

2,260,674

107.8

産業流通事業

(千円)

1,577,564

106.4

社会公共事業

(千円)

1,314,985

116.3

ITイノベーション事業

(千円)

494,285

121.1

合計

(千円)

5,647,510

110.4

(注)金額は製造費用によっております。なお、サービスラインに共通して発生する品質管理等費用(29,306千円)は上記には含めておりません。

 

b.受注実績

当事業年度の受注実績をサービスラインごとに示すと、次のとおりであります。

サービスライン名称

当事業年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

金融事業

2,827,674

111.5

652,381

118.4

産業流通事業

1,932,255

106.7

374,301

109.8

社会公共事業

1,678,628

107.5

300,201

97.9

ITイノベーション事業

595,430

119.0

127,928

107.4

合計

7,033,988

109.7

1,454,813

110.4

(注)金額は販売価格で表示しております。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績をサービスラインごとに示すと、次のとおりであります。

サービスライン名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

金融事業

(千円)

2,726,279

110.4

産業流通事業

(千円)

1,898,927

108.1

社会公共事業

(千円)

1,684,978

116.3

ITイノベーション事業

(千円)

586,645

120.2

合計

(千円)

6,896,830

111.9

(注)1.金額は販売価格で表示しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社日立製作所

2,755,932

44.7

3,061,872

44.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の状況

当事業年度末における総資産は5,878,942千円となり、前事業年度末と比較して659,749千円の増加となりました。また、当事業年度末における自己資本は4,711,642千円となり、前事業年度末と比較して882,334千円の増加となりました。

以上の結果から、当事業年度末における自己資本比率は80.1%(前事業年度末は73.4%)となり前年同期比で6.7ポイント上昇いたしました。

 

b.経営成績の状況

(売上高、売上原価及び売上総利益)

当事業年度の売上高は6,896,830千円であり、前事業年度より732,994千円増加(11.9%増)いたしました。主な要因としては、企業の旺盛なIT投資による需要拡大によるものであります。

また、売上原価は5,683,586千円となり、前事業年度より552,032千円増加(10.8%増)となりました。これにより、売上総利益につきましては、前事業年度より180,961千円増加(17.5%増)の1,213,243千円となっております。

当事業年度におけるサービスライン別の経営成績(売上高)の状況に関する認識及び分析は、4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績の状況 の項目をご参照ください。

 

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は622,048千円であり、前事業年度より91,919千円増加(17.3%増)いたしました。主な要因は、外形標準課税の適用により租税公課が38,720千円、人員増加に伴い給料及び手当が31,823千円増加したことによるものであります。

その結果、営業利益は591,194千円となり、前事業年度より89,041千円増加(17.7%増)いたしました。

 

(営業外損益及び経常利益)

当事業年度の営業外収益は64,937千円となり、前事業年度より46,677千円増加(255.6%増)いたしました。これは主として保険解約返戻金44,431千円の計上によるものであります。また、当事業年度の営業外費用は23,652千円であり、前事業年度より20,652千円増加いたしました。これは主として上場関連費用が20,487千円増加したことによるものであります。

その結果、経常利益は632,479千円となり、前事業年度より115,066千円増加(22.2%増)いたしました。

 

(当期純利益)

当事業年度の法人税等合計は190,900千円となり、前事業年度より170,966千円増加(857.7%増)いたしました。主な要因としては、前事業年度においてスケジューリング可能となった長期未払金に係る繰延税金資産の計上(152,900千円)に伴う法人税等調整額の減少が生じたことによるものであります。

以上の結果より、当期純利益は441,579千円となり、前事業年度より55,900千円減少(11.2%減)いたしました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討)

当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況の項目をご参照ください。

当事業年度においては、未払金の減少により営業活動によるキャッシュ・フローは減少したものの、財務活動で獲得した資金と合わせ、投資活動により使用した資金を賄えており、財務健全性を維持できているものと判断しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

当社の主な資金需要は、労務費、外注費、事務所の賃借料並びに経費等の支払いを目的とした運転資金となります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローや自己資金で賄うことを基本としております。また、財務資本提携等に関連する必要な資金需要に対しては、財務健全性を勘案しながら金融機関からの借入等も含め、柔軟な資金調達を行ってまいります。

なお、当事業年度末現在、当社は通常の営業上の運転資金に対して十分な規模の現金及び現金同等物を保有しており、資金の流動性は十分に確保されているものと判断しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項(重要な会計方針)」に記載されているとおりであります。この財務諸表の作成に当たっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 

(繰延税金資産)

当社は、一時差異等のスケジューリングの結果、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。しかしながら、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得水準の見積りに依存するため、結果として将来の繰延税金資産の計上額が変動し、税金費用に影響を与える可能性があります。

 

(受託開発のソフトウェアに係る収益及び費用の計上基準)

当社は、受託開発のソフトウェアに係る収益について、原則として、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合に、その進捗を、発生したコストに基づくインプット法(原価比例法)により見積って収益を認識しております。

収益総額、見積原価総額及び決算日における進捗度について、最新の情報を使用しておりますが、作業内容及び工数等に不確実性を伴う要素が含まれるため、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(受注損失引当金)

当社は、受注契約に係る将来の損失に備えるため、当事業年度末において損失の発生可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる開発案件について、翌事業年度以降に発生が見込まれる損失を引当計上しております。損失見込額は最新の情報を使用して算定しておりますが、予見不能な事象の発生や作業内容及び工数等に不確実性を伴う要素が含まれるため、見積りと実績に差異が生じる可能性があります。なお、当事業年度末におきましては、計上はありません。

 

(プログラム保証引当金)

当社は、販売済ソフトウェアの保証期間中における補修費に備えるため、過去の実績に基づく補修見込額及び個別案件に対する補修見込額を引当計上しております。補修見込額は最新の情報を使用して算定しておりますが、予見不能な事象の発生や作業内容及び工数等に不確実性を伴う要素が含まれるため、見積りと実績に差異が生じる可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

当社は、2024年3月15日開催の取締役会において、株式会社ヒューマン&テクノロジーの株式を取得し完全子会社化することについて決議いたしました。また、同日付で株式譲渡契約を締結し、2024年4月1日付で株式を取得いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、新技術の研究・開発を探求するとともに、新しいビジネスを展開するための新製品を開発することを主目的として取組んでおります。

産業流通事業サービスラインの医療分野において、6~10年周期で「販売目的製品の研究開発」を行っておりますが、当事業年度は該当ありません。