第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営方針

当社では、歩むべき方向性を明確にするため、経営理念を2003年4月に制定しております。この理念に則り、当社はパワーエレクトロニクスを通じて貢献する企業となり、お客様のイノベーションのため、社員一人ひとりのイノベーションのため、そして、社会のイノベーションのため、サステナブルな未来を実現してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社では、2024年中期経営計画を策定し、推進しております。本計画は2024年度を震災影響の立て直し期間と位置づけた4ヶ年の計画としており、連結目標の達成に向けて、サンケンコアの収益性改善を通じた企業価値向上を最重要ととらえ、サンケンコアのKPIとして、「売上高CAGR10%以上」「営業利益率10%以上」を設定しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社では、長期的に目指す姿を「独自性のある技術、人と組織のパフォーマンスで成長し、社会のイノベーションに貢献する高収益企業の実現」としております。中長期的経営戦略としての24中計における骨子は以下の通りです。

 

24中計骨子

 

メインシナリオ

注力要素

期  間

4年(2024年を震災影響立て直し期間と位置づけ)

策  定

戦略コンサルティングファームの活用による施策立案

利益改善

レバー

新製品比率向上(継続)

開発ゲート管理

実現力の向上

既存製品の収益改善

適正売価条件の獲得

原価改善

(固定費削減含む)

原価低減活動

調達・前工程・後工程

P S L

第三者割当増資で規模拡大

3rd party受託生産獲得

ファブライト戦略

開発リソース

SPP開発の更なる推進

産学連携での要素技術開発

プロセス/パッケージ

連動した開発管理

新 技 術

社外との協業推進

化合物デバイス

 

 

(4)会社の対処すべき課題

今後の世界経済は、地政学リスクの高まりや各国経済及び金融政策の動向により、引き続き先行き不透明な状況が見込まれます。現在当社を取り巻く自動車・白物・産機の各市場では、過去のコロナ禍による半導体不足から過剰発注となり、結果的にサプライチェーンにおける在庫調整が生じ、これが当面継続する見込みです。下期に向けては、市況回復及び震災により一時的に減少した需要が回復することを見込んでおります。

こうした状況の下、当社グループでは「2024年中期経営計画」(以下、「24中計」)をスタートさせましたが、従来の3ヶ年ではなく、震災影響が色濃く残る2025年3月期を立て直し期間と位置づけ、2024年4月から2028年3月までの4ヶ年計画と定めております。24中計期間中にサンケンコアとして最優先に取り組むべき課題を収益性改善と定め、そのために、新製品売上高比率向上の継続や既存製品の適正売価条件の獲得に加え、徹底した原価改善に取り組むことで実現してまいる所存です。また、DX戦略とESG経営の推進による企業価値向上にも努めてまいります。

これらにより、サンケン電気は、パワーエレクトロニクスを通じて貢献する企業となり、お客様のイノベーションのため、社員一人ひとりのイノベーションのため、そして、社会のイノベーションのため、サステナブルな未来を実現してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する取り組みは、2020年にSDGsを経営に取り込み、重点課題(マテリアリティ)を「本業(省エネ・高効率化)によるCOの削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」と定めて活動を行っております。また、これらの活動を支える動きとして「働きやすさの価値創造」を目指し、安心・安全な職場の実現や柔軟な働き方への志向、そして社員の健康の向上を図っております。こうしたサステナビリティへの動きを一層活発化させるため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置し、ESG経営としての施策の明確化・指標化を行うなど、推進体制の整備を実施しております。

また、当社グループでは、「半導体をコアビジネスにパワーエレクトロニクスとその周辺領域の省エネ・高効率化製品の開発・生産・販売を通じて、国際社会の発展に寄与」することをグループCSR基本方針のひとつとして掲げています。持続可能な社会環境を実現するためには、気候変動への対応が重要課題であると認識しており、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った取り組み並びに情報開示を進めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 

 

(1)ガバナンス

ESG経営を推進するにあたり「サステナビリティ委員会」を中心に、環境・社会・ガバナンスの3部会と気候変動等のテーマごとのチーム活動を展開しています。この部会・チーム活動は当社グループのメンバーで構成されており、グループ一丸の活動体制としています。各部会・チームからサステナビリティ委員会への報告は、半期に一回行われています。その結果は、代表取締役社長を最高責任者とする業務執行の最高意思決定機関である「経営会議」に報告され、取締役会にも付議・報告されています。そこで協議された内容が、サステナビリティ委員会および配下の各部会・チームにフィードバックされています。2023年度は、臨時開催を含め、サステナビリティ委員会は3回、各部会は4回ずつ、チームの会議は37回開催されました。昨年よりチームの会議回数が減っていますが、令和6年1月に発生した令和6年能登半島地震により活動を縮小し、震災対応を優先したためです。また、サステナビリティに関する事項は、経営会議へ7回答申されました。サステナビリティ委員会の委員長は「ESG担当役員」である取締役 吉田智が務めております。

 また、TCFD提言の「ガバナンス」項目では、気候関連のリスクと機会に対応するガバナンス体制の設置と開示が求められており、当社では「ESG経営」を組織横断的に審議する「サステナビリティ委員会」がその役割を担っています。サステナビリティ委員会では、気候関連のシナリオ分析・気候変動に関するリスクと機会の特定・評価とそれに対する対応策の検討・対応策の具体化の推進・対応策の進捗状況の確認に関する協議・審議を行っております。

 

※ESG経営推進体制図


 

(2)戦略

(2)-1 重要なサステナビリティ項目と戦略

当社グループは、「本業(省エネ・高効率化)によるCOの削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」を重点課題(マテリアリティ)と定めて活動を行っております。グローバルの大きな変化に対する迅速な対応を強化するとともに、事業機会の拡大と社会課題の解決を目指し、柔軟で強靭なESGガバナンスを構築し、ESG経営の推進体制の整備を実施しております。

また、TCFD提言に基づき、気候関連リスク・機会の特定・評価を全社の統合リスクマネジメントに組み込んでおります。具体的にはまず考えられる、直接操業における気候変動リスクと機会を部門ごとに列挙します。その後本社・工場の各部門長により、重要度を①リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的)、②影響を受けるタイムスケール(短期、中期、長期の視点から)、③発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か)、④顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか)、⑤顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か)の5項目について、「大」「中」「小」の3段階で分析、審議します。この審議の結果、特定されたリスクと機会は、サステナビリティ委員会が気候変動関連リスクを含むESGに関する事業リスクを組織横断的に評価しております。また、サステナビリティ委員会は、年に2回以上、経営会議に付議・審議した議案を取締役会に報告しており、適宜情報開示も行っております。

■リスクと機会の特定方法

製品及びそのサプライチェーン全体に係る気候変動関連のリスク及び機会を各STEPに従い特定しました。

STEP1

考えられるリスクと機会の列挙

STEP2

本社・工場の各部門長により、重要度を以下の5項目基準、3段階分類にて分析

 ・リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的)

 ・影響を受ける期間(どの程度の期間、影響が続くか)

 ・発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か)

 ・顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか)

 ・顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か)

STEP3

結果の集計(項目の重みや重要度高の頻度も考慮)と類似項目をまとめ、

リスク5個、機会3個を特定し、その重みを「大」「中」「小」に評価・分類

 

(要約)

 ・1.5℃、2℃の分析のために3つのシナリオ、4℃の分析のために2つのシナリオを使用。

 ・リスクとして炭素税導入による、電気代高騰、原材料価格、輸送費用高騰等を考慮。

 ・リスク低減の施策として多面的な省エネ活動、水力由来の電力など自然エネルギーの購入。

・機会として、気候変動による低炭素商品ニーズが高まる中で、「EV向けパワーモジュール」等の販売拡大の期待。

   SiC等の次世代デバイスの開発加速を見込む。

 ・リスク管理体制として、サステナビリティ委員会(ESG各部会)と危機管理委員会等が連携し監視。

 

(2)-2 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社及び国内グループ会社は、21中計(中計期間2021~2023年度)より、事業の成長戦略に必要なスキル、メンタリティを持った人材の確保、育成を目指した人的資本経営を意識し、全社員が最大のパフォーマンスを発揮できる環境づくり、人材育成の促進、組織変革を進めています。

 

1)働きがいをもって働ける環境づくり

当社及び国内グループ会社は多様な人が効率的な働き方ができる場所の提供を通じて、新たな「価値創造」に結び付けるという発想のもと、ダイバーシティや働き方改革を推進し、誰もが安心して働きがいをもって働くことができる環境づくりを進めています。

①人材の多様化の推進

 国籍や性別等に関係なく、多様なバックグラウンドをもつ人材の採用を推進し、女性活躍だけでなく、シニア社員の活用等、組織変革の土台として人材基盤の強化を図っています。

②働く環境の整備

 フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務制度を整えるだけでなく、2022年度からは有給の産後パパ育休制度導入と育児休業の取得を原則必須化することで取得に後ろ向きになりがちな男性社員の取得促進を後押しする等、更なるワークライフバランスの充実を図っています。また併せて、自宅での勤務が難しい社員や出張者が最寄りで利用できるサテライトオフィスの導入や国内生産拠点を含めたオフィスの完全フリーアドレス化を実施するなど、働く場所の多様化だけでなく、よりフレキシビリティの高い働き方やコミュニケーションの活性化に繋げる取り組みを継続推進しています。

 

2)人材育成の促進

社員の成長は会社の成長につながるという考えの下、「人材育成ポリシー」を制定し、様々な成長支援、自立支援を行っています。

<人材育成ポリシー>

●会社は、成長機会を提供し、自己研鑚・OJT・研修を基本とし、社員一人ひとりの成長を積極的にサポートしながら、「学ぶ風土」、「育てる風土」を醸成する。

●管理者は、部下の成長支援の責任がある。成長意欲の醸成、成長機会の提供、フィードバックを行うと共に、率先垂範し、自己成長に努める。

●社員は自己成長に責任を持ち、主体的・計画的に取り組む。

●管理職の部下育成力の強化、社員の成長・自立を支援する。

 

<教育体系と主な施策> 


 

①Sanken Nexus School(技術学校)

『社員一人ひとりが繋がり(Nexus)、次世代の個人と会社の成長・成功に繋げる』という理念のもと、2023年4月に技術学校を開校し、コアビジネスとなるパワー半導体について、理系・文系を問わず学ぶ事ができる基礎教育と、技術者がより専門的な技術知識を身に付けるための講座を実施しています。

フレックス スタディー

社員のビジネス基礎スキルの底上げを目指し、デジタル学習コンテンツ(動画)を使い、いつでも・どこでも学び、成長する楽しさを実感し、学習の習慣化に結びつける教育を2023年度から実施しています。

③管理職研修

 2020年度から、将来の経営幹部候補者を選抜し、経営者として必要な知識・視野・リーダーシップなどの習得のための研修を体系化し、継続的かつ計画的に実施しています。

④DX研修

 サンケンデジタルビジョンの実現に向け、2021年度から、業務に携わるすべての社員がDXに取組めるよう、基礎教育から段階的にレベルアップできるDX教育プログラムを立上げ、DX人材の育成を推進しています。

 

3)社員の健康づくり

当社及び国内グループ会社では、従業員の健康・維持に向けた積極的な取り組みが、企業全体の持続的な成長に影響を与える重要な要素であることに鑑み、グループ一丸となって職場の健康づくりを推進しています。

 

4)組織の変革

①ES調査をベースとした対話会

組織の変革を目的として、2018年からES調査を年1回実施しています。この調査を活用し、組織の良さや不満、強み・弱みなど現状の課題を全員で共有し、ありたい組織の姿を語り、自分たちで創り出していける組織を目指し、経営層による対話会、また職場単位の対話会を実施しています。

②グループ・コーチング

役職や立場に関係なく、社員同士が信頼関係で結ばれ、傾聴・質問・フィードバックなど本質的な議論・対話ができる組織を目指し、2022年度から管理職に対し、グループ・コーチングを実施しています。

 

5)指標及び目標

   人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略において記載した事項に関する主な指標の目的と実績につきましては、次の通りであります。当社及び国内グループ会社は、連携して人材の育成及び社内環境整備に関する重要課題に取り組んでおりますが、具体的な実績及び目標に関しては連結ベースの数値ではなく、当社及び国内グループ会社の数値を記載しております。

   主な指標(目標及び実績)[当社及び国内グループ会社]

 

目標値

(2025年度)

実績

2023年度

男性育児休業取得率

80%

106.9%

女性管理職比率

11%

5.4%

 

 

(3)リスク管理

前述(2)-1のプロセスを経て特定・評価された気候変動リスクと機会はサステナビリティ委員会において戦略的な取り組み方針が定められ、具体的対応策の検討が行われております。サステナビリティ委員会の下に環境 (E)・社会 (S)・ガバナンス (G) に特化した部会が設置されており、その社会 (S) 部会の下に危機管理委員会を設置し、自然災害や情報管理リスクなどに対応しております。さらにガバナンス (G) 部会の下に内部統制推進委員会を設置することで、各部門における業務の点検を支援するとともに、全社レベルおよび業務プロセスレベルにおける統制活動の有効性を審査・評価しております。これらのリスク管理の内容はサステナビリティ委員会に報告され、そこで気候変動関連リスクを含むすべての事業リスクについて統合的に管理しております。

詳細については、3 事業等のリスクをご参照ください。

気候変動が事業に及ぼす移行・物理的リスクおよび機会については、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により適切に把握しております。

 

■リスク

種類

主なリスク

施策

重要度

移行リスク

施策および規制

化石燃料価格上昇により、電気代が高騰し操業費用が上昇

CO排出量の削減

・省エネ活動

・再生可能エネルギーの電力置換え

・生産時の効率化

・輸送の最適化

・リサイクルの促進

炭素税導入により、操業費用が上昇

気候変動の新たな規制の強化により、既存製品の需要減少に伴う売上の減少

中期経営計画による省エネ・高効率の新製品開発で売上拡大

評判

気候変動対策が遅れることにより、ステークホルダーからの信頼が下がり、市場評価が低下

カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行

物理リスク

急性

自然災害等により生産への影響、サプライヤーの操業停止や物流機能被害によって売上が減少

危機管理体制の充実等リスク管理の強化

 

 

■機会

種類

主なリスク

施策

重要度

製品およびサービス

カーボンニュートラルに向けた商品の市場拡大(車載・白物家電等)により売上増

・インバータ向け製品の開発

・IPMの開発

・高効率電源デバイスの開発

・次世代半導体の開発

資源の効率

生産ラインおよび社内インフラの省エネ・省資源化

DX・スマートファクトリー導入

評 判

生産段階のカーボンニュートラルを推進することでステークホルダーからの信頼向上

カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行

 

 

 

(4)指標及び目標

2015年のパリ協定の決定を踏まえ、シナリオ分析を行った結果、気候変動により平均気温が4℃上昇するシナリオでは物理的リスクとして拠点の洪水等被災リスクの上昇による財務リスク、低炭素経済に移行する1.5℃シナリオでは移行リスクとして炭素税の導入、電力価格高騰による財務リスクが大きいことがわかりました。また一方で、1.5℃シナリオにおいては、自動車のEV化の進展により、当社グループが製造するxEV向け半導体デバイスの売上機会が生じることも判明しました。

これら気候関連リスク・機会のうち、炭素税の財務インパクトが最も大きく、最優先で取り組むべき気候関連課題であることが判明しました。この結果を踏まえ、中長期温室効果ガス排出削減目標を策定しました。これは2020年を基準年とし2030年度までにScope1, 2を33%削減、2050年カーボンニュートラルを目指すものです。2023年Scope1,2は、2020年に対し、21%削減となっています(自社調べ)。2023年度より石川サンケンと福島サンケンにてオンサイトPPA電力の活用を開始しました。大連サンケンにおいても太陽光発電はもちろんのこと、風力由来電力の購入などを進めております。サンケン電気本社及び主要工場では、再エネ電力利用を進めており、再エネ電力導入率は12%となっております。

なお、上記記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における情報に基づいております。

 

■当社グループの中長期GHG(温室効果ガス)排出量削減のための具体策及び事例

 ①具体策

  ・国内外省エネの活動の推進

  ・太陽光発電の導入

  ・再生可能電力への転換

 

 ②事例

  ・福島サンケン:2022年4月から使用する全ての電力を100%「再生可能エネルギー」由来に切り替え。

                  2023年5月オンサイトPPA

  ・石川サンケン:2023年4月オンサイトPPA

  ・大連三墾電気有限公司:2023年 一部風力発電購入

             2023年 敷地内太陽光発電電力使用開始

 

 ③Scope1,2 の削減実績 (※1)                  単位:[Kt-CO2]

 

2020年度

2022年度

2023年度(※2)

Scope 1

6.4

6.2

6.1

Scope 2

80

69

62

 

  ※1 算定範囲:サンケン電気本社、石川サンケン、山形サンケン、福島サンケン、大連三墾電気

  ※2 2023年度データは暫定値。第三者検証機関により検証実施中(2024年6月6日時点)。

 

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして以下の事項を想定しております。なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において判断したものであり、不確実性を内在しています。このため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性がありますのでご留意下さい。

 

(1) 外部環境リスク

①国際情勢

当社グループの企業活動がさらにグローバル化する中、ウクライナ及び中東情勢、米中関係といった地政学的リスクの高まりや、これに伴う原材料価格の高騰、法制度・規制変更などにより、生産・物流・営業活動が制限を受け、顧客への製品供給に支障をきたす場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、各所管部門の統制及び現地法人による政治経済情勢、市場動向、税制、法規制動向などの情報収集、モニタリング、法令順守対応を行っております。不測の事態への対応については、発生した事象の内容とその重大性、影響度に応じて対応する社内体制を定めており、定期的に開催される危機管理委員会に状況報告され、適切な対応を適時行うこととしております。海外子会社の人的安全管理に関しては、危機管理委員会において情報の収集及び当社グループ内での共有化を行い、非常時における迅速な対応と事業活動への影響の最小化に努めております。

 

②為替変動

当社グループは、日本国内のほか、アジア、北米、欧州等の海外各国において部材の調達、生産、及び販売を行っているため、当該各地域における経済動向などの環境変化は、為替レートの変動を通じて当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは当該各国、地域における現地通貨、もしくは米ドルにて会計処理を行っていることから、円換算時の為替レートにより業績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループが部材調達、及び生産を行う国の通貨価値の上昇は製造コストの押し上げ要因となり、業績に影響が及ぶ可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループは、製品並びに原材料の海外調達の拡大による債権債務・取引高のバランスヘッジ、並びに為替予約取引等によるリスクヘッジを行い、米ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による影響の最小化を図っております。

 

③資金調達

当社グループは、設備投資、研究開発、所要運転資金などの資金調達方法として、社債の発行、コマーシャル・ペーパーの発行、コミットメントライン契約、銀行借入等を行っております。当社グループに対する債券市場あるいは金融機関、信用格付機関からの信用が低下した場合、こうした資金調達手段が制限されるか、もしくは調達コストが上昇し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループは将来のキャッシュ・フロー予測に基づく資金計画を策定し、計画の進捗状況を随時把握・報告し、適切な経営判断を下すことにより、財務規律を遵守した事業活動に取り組んでいます。また、資金調達においては手段の多様化とともに、保有資産に応じた期間・満期を考慮することによりリスクの軽減を図っています。当社グループは今後もディスクロージャーの透明性確保に一層努めるとともに、事業・財務状況についての市場、金融機関、信用格付機関との適切なコミュニケーションの維持により、安定的な資金調達実現に向け努めてまいります。

 

④環境問題

当社グループが存在する国の環境汚染、公害防止に関する法的規制を遵守することは勿論のこと、SDGsへの取り組みとして、ESG経営における当社のマテリアリティを明確化し、環境問題の解決に貢献する企業像を目指しております。製品の製造過程で使用する環境負荷物質及び製品に含有する環境負荷物質につきましては、その把握・削減に努めております。サステナビリティへの取り組みにつきましては、気候変動への取り組み、環境マネジメント、水を含む環境リスク管理、資源効率や生物多様性への取り組み、環境データに関し、当社ホームページでの情報開示を進めるとともに、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により、気候変動が当社の事業に及ぼすリスクと機会を把握し、今後の対応について明確にしています。環境に係る規制を遵守できなかった場合、環境負荷物質を大量に漏洩させる事故を起こした場合、あるいは含有が禁止されている環境負荷物質を製品から排除できなかった場合、その改善のために多額のコストが生じるほか、事業活動の制限、顧客への賠償責任、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらリスクに対し、サステナビリティ委員会に設置された環境部会において、環境・気候変動に関連するリスクを管理し、その内容はサステナビリティ委員会に報告・集約され、気候変動関連リスクを含む事業リスクについて、統合的な管理を実施しております。

 

⑤災害・感染症リスク

自然災害のリスクに関しては、近年、地球温暖化の影響と推定される大雨、大型台風・ハリケーンなどの異常気象や大規模地震の影響により、事業活動の停止やサプライチェーンの寸断が想定され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、平時より危機管理委員会による自然災害等に関するリスクの把握と対策、備蓄品の準備、防災訓練等を実施しており、また、同委員会と各拠点による緊密な連携によりさらなる体制強化を図っております。当社グループの生産子会社の多くは、地震リスクが比較的高い日本国内にあるため、大規模地震が発生した場合に備え、直接的な被害を最小限に抑え、早急かつ円滑な操業再開を可能とすることを基本的な方針とし、当社及びグループ会社の地震災害対策の計画・具体化を進めています。具体的な有事対応として、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、震源地に近い石川サンケン株式会社の3工場(堀松工場、志賀工場、能登工場)が被害を受け、同工場における製品の生産・出荷が一時的に停止する事態が生じたため、災害対策本部を速やかに設置し、従業員の安否確認を第一優先として対応し、工場の早期再稼働に向けた対応を進め、3月末までに全ての工場において、全面的に生産を再開いたしました。

平常時の取組みとしては、災害発生に備え、災害対策マニュアル(地震、風水害、雷害、電力停止、火災)を策定しております。災害避難訓練についてはフリーアドレス化やフレックスタイム制度に対応した方式を新たに構築するなど、災害対応力の向上を図っております。また、安否確認システムを導入しており、危機発生時には迅速な安否確認と、速やかな支援に繋げる体制を構築しております。事業継続に関する取り組みとしては、主に大規模地震のリスクを想定し国内生産子会社毎に事業継続マニュアルを策定しており、災害発生時の被害を最小限に抑え、早急かつ円滑な操業再開が可能となるよう努めております。

感染症のリスクに関しては、新型コロナウイルス感染症対策での経験を基に、新たな感染症が発生した場合においても、災害対策本部を設置し、影響の最小化と事業継続のための施策検討を行うこととしております。また、当社グループ各社においても当社との連携・情報共有を図ることとしております。

 

(2) 事業活動リスク

①新製品開発

当社グループは、市場のニーズに合った製品を開発し、市場に投入していく必要がありますが、製品のタイムリーな市場投入が出来なかった場合、あるいは市場に受け入れられなかった場合、当社グループの収益性が低下し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクへの対応として、各事業部門による市場動向・顧客ニーズ・競合製品に関する情報収集と、マーケティング機能による情報分析に基づく市場戦略の立案・管理及び次世代製品の企画策定を推し進め、顧客の潜在ニーズを先取りした製品開発、タイムリーな市場投入と収益性の改善に取り組んでおります。新製品開発においては、開発ゲート管理の強化により、その実現力を向上させるとともに、新製品開発活動を加速すべく、当社ものづくり開発センターを核とする開発改革を推進しております。

 

②価格競争

半導体業界における価格動向は需要変化により上下するものの、長期的には価格低減による競争力確保が必要となります。競合企業の台頭等により、当社製品の価格決定は大きな影響を受けることから、価格競争は今後とも厳しさを増していくことが想定されます。当社グループの価格引下げへの対応力を上回るような競合企業による低価格製品の出現、取引先の需要の変化、エネルギー価格及び原材料価格の大幅な高騰等による収益性の低下といったリスクが存在しております。

これらのリスクに対しては、一層の原価低減に努めるとともに、当社固有の技術を生かした高付加価値製品の市場投入、適正売価条件獲得による既存製品の収益改善、設計段階からの部材共通化・材料コストダウンといった調達改革により対応を図っております。

 

③知的財産権

一部海外の国や地域では、知的財産権の保護が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産を用いた類似製品の製造を効果的に防止できない可能性があります。一方、当社グループの事業に関連した知的財産権が第三者に成立した場合、又は、当社グループにおいて認識し得ない知的財産権が存在した場合には、第三者による知的財産権侵害の主張に基づき、ロイヤリティーの支払い、当該知的財産権の使用禁止もしくは訴訟の提起がなされる可能性があり、これらにより費用負担の増加又は製品の開発・販売の制限といったリスクが存在しております。

これらのリスクに対し、当社グループでは、自ら開発した技術とノウハウを用いて競合他社との製品の差別化を図っており、これら独自の技術を保護するため、日本、米国、中国を中心として必要に応じ可能な限りの知的財産権の出願、登録を行っております。

 

④品質問題

当社グループは、顧客の品質基準及び当社の品質基準を満足する各種製品を供給しております。品質管理体制を維持向上させるため、品質管理に関する国際基準ISO9001及びIATF16949の認証を取得しています。しかしながら、将来、全ての製品について欠陥がなく、また製品の回収、修理等が発生しないという保証はありません。大規模な製品の回収、修理等及び損害賠償責任につながるような製品の欠陥は、多額のコストや社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、保有する設計ノウハウや過去から蓄積している品質不具合情報の随時更新を行う他、製品企画や設計、試作、量産化の各審査ステージを通じて開発段階から品質の作り込みを実現するための様々な施策を実施し、高度化、複雑化する製品の信頼性確保に努めています。

 

(3) コーポレートリスク

①情報セキュリティ

当社グループは、事業を展開する上で、顧客及び取引先の機密情報や個人情報及び当社グループ内の機密情報や個人情報を有しております。これらの情報については、外部流出や改ざん、消失等を防止するため、「情報管理規程」をはじめとする関連規程類を整備するとともに、グループでの管理体制の構築やプライバシーポリシーの制定など、情報管理の徹底に努めております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃や、当社役職員の不正行為により、これら情報の流出、改ざん、消失、あるいは当社グループや取引先の情報システムが停止する等のリスクが存在しており、こうした事象が発生した場合、社会的信用の低下、損害賠償費用の発生等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、サイバーセキュリティに関しては、システム管轄部門によるサイバー攻撃対応、不正侵入の防止あるいは検知、データアクセスへの制限、全従業員を対象とする対応訓練など、リスク低減に向けた対応を実施しているほか、サイバーセキュリティについての定期的な内部評価も実施しています。また、人的セキュリティに関しては、SNSの適正な取り扱い、持ち出し可能な記録媒体の使用制限、退職者に対する機密情報の持ち出し防止などを徹底する他、役職員に対するコンプライアンス教育においても情報管理に対するテーマを充実させ、意識向上を図っています。

 

②コンプライアンス

当社グループは、日本国内のほか、海外各国、地域において開発、生産及び販売拠点を有し、各国、地域の定める様々な法令、規則、規制等(以下、「法的規制」)の適用を受け、事業が成立しております。また、当社グループが全世界において開発、生産及び販売等と遂行する為に必要な技術・製品・材料等の輸出入につきましては、展開する各国、地域の定める関税、貿易、為替、戦略物資、特定技術、独占禁止、特許、環境等に関する法的規制の適用を受け、事業活動を展開しております。当社が様々な地域で事業活動を展開する上で、コンプライアンスは全役職員の基本行動であり、行動規範である「サンケンコンダクトガイドライン」をはじめとする社内規程の整備と、定期的な研修実施による周知・啓発により社会規範の徹底に努めています。重大なコンプライアンス上の問題が発生した場合、当社グループの事業活動が制限されることはもとより社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、法的規制については、各事業の所管部門、グループ会社、法務部門における情報収集・分析・検討を実施し、必要に応じて弁護士等の外部専門家への相談・助言を得られる体制を構築しております。社会規範については、全役職員に対するコンプライアンス意識調査を定期的に実施するほか、個人単位で行われていたコンプライアンス教育に職場単位の教育も追加し、教育内容を質・量の両面で充実させています。また、既に運用している「内部通報制度」についても常に見直しを行い、実効性の向上を図っております。

 

③税務リスク

当社グループは、世界各国に生産・販売拠点を有しており、各国税務当局との間で見解の相違が生じる場合、多額の追徴課税を課されるリスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。また、税制の変更が当社グループの予想を超えて実施された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループでは、税務に関するガバナンス体制を整備するとともに、各国・地域における税制の変化に関して海外子会社と情報共有を実施することで、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理の決定を行っております。また、税務処理に不確実性が残った場合は、外部専門家への相談を行い税務リスク低減に努めております。

 

④人材採用・確保

当社グループのグローバルな活動を維持し、さらに発展を続けるための人材採用と確保は重要課題の一つでありますが、急速な市場規模の拡大、技術革新における専門性の高い人材獲得競争の激化により、今後さらに優秀な人材の維持確保が難しくなる可能性があります。

当社はこれらの課題解決に向け、計画的な定期・中途採用に加え、外国籍社員採用やリファラル採用等様々な採用手法の実施・強化、シニア層の活用、働き方改革の促進、教育制度の充実を図り、多様な人材の確保・定着に努めております。

 

(4) 上場子会社の取り扱い

当社グループの上場子会社につきましては、開発戦略、事業ポートフォリオ戦略といった成長戦略との整合性の観点から、互いの得意分野を組み合わせた製品の開発などにおいて、今後もシナジー効果の向上と一体的運営を継続すべきと考えており、これが、当社グループとしての企業価値最大化の実現に繋がるものと認識しております。しかし、経済・事業環境の変化、将来の不確実な要因、予期できない要因などにより、想定していた効果を得られない可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 

(財政状態)

当連結会計年度末における資産の部は、3,835億91百万円となり、前連結会計年度末より816億40百万円増加いたしました。これは主に、棚卸資産が102億69百万円増加し、有形固定資産が232億60百万円増加し、無形固定資産が612億24百万円増加したことなどによるものであります。
 負債の部は、1,849億71百万円となり、前連結会計年度末より562億16百万円増加いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金を含む短期借入金が76億19百万円増加し、長期借入金が482億9百万円増加し、社債が30億円増加したことなどによるものであります。
 純資産の部は、1,986億19百万円となり、前連結会計年度末より254億23百万円増加いたしました。これは主に、為替換算調整勘定が147億47百万円増加し、非支配株主持分が171億42百万円増加したことなどによるものであります。

 

(経営成績)

当連結会計年度における経営環境は、高インフレ状態が継続する中、米国経済は底堅く推移しました。一方、不動産市場の調整が長引く中国経済は成長鈍化が続き、総じて世界経済は不透明さを増して推移しました。

こうした環境の下、当社グループは、中長期での成長実現に向けた先行投資を実行しており、昨年5月に設立した新潟サンケン株式会社において、量産開始に向けた生産工程の改修を行ったほか、前工程・後工程における生産性改善や能力増強を進めてまいりました。

しかしながら、第4四半期に入り、石川県能登地域において最大震度7を記録する震災の発生により、当社の後工程主力工場である石川サンケン株式会社が被災いたしました。これを受け、全従業員の安否確認、建物や生産設備の被害の状況把握に努めるとともに、生産に必要な電力・水インフラの確保を進め、生産活動の早期復旧に努めてまいりました。この結果、3月末までに全ての工場において、全面的に生産を再開いたしました。

一方、当連結会計年度において、旧ユニット製品に係る事業からの撤退と当該製品の生産子会社解散を決定したほか、米国子会社Allegro MicroSystems, Inc.では、先進的なTMR(トンネル磁気抵抗)技術を提供するクロッカス社の全株式取得を完了いたしました。米国子会社Polar Semiconductor, LLCでの第三者割当増資への取り組みにつきましては、米国半導体補助金の申請が完了し、審査の最終段階にあります。

 

当連結会計年度における市況環境は次の通りです。

自動車向け製品は、前期比21.0%の増となりました。ICEやxEVなど各パワートレイン及び先進機能向けのパワーモジュール、パワーデバイス、センサーが大幅な増となりましたが、第4四半期以降、海外販売代理店における在庫調整、及び震災発生による影響が売上を押し下げる要因となりました。白物家電向け製品は、前期比17.0%の減となりました。韓国顧客の北米洗濯機向けでは伸長しましたが、中国不動産市場の調整長期化に伴う顧客での在庫調整が大きく影響しました。産機・民生市場は、前期比9.7%の減となりました。データセンター向けを始めとする海外産機の在庫調整がその主な要因です。

 

これらマーケットの状況に加え、為替の円安傾向による影響も含めた連結売上高は2,352億21百万円と、前連結会計年度比98億33百万円4.4%増加いたしましたが、損益面につきましては、上記の在庫調整による影響や、海外での買収関連費用、震災での稼働停止に伴う生産付加価値の減などから、連結営業利益は195億39百万円と、前連結会計年度比66億17百万円25.3%の減、連結経常利益は182億46百万円と、前連結会計年度比89億82百万円33.0%減少いたしました。また、震災影響による災害損失や米国子会社での減損損失、及び旧ユニット製品からの撤退に伴う損失などの特別損失を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純損失81億12百万円(前連結会計年度 親会社株主に帰属する当期純利益95億33百万円)を計上する結果となりました。

 

なお、当社は2023年11月30日に公正取引委員会から下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)に基づく勧告及び指導(以下、「本勧告等」)を受けました。当社は当社製品の一部部品の製造に使用する当社所有の金型を下請法の対象と認定されたお取引先様に貸与しておりましたが、当該金型を用いる部品の発注を長期間行わないにもかかわらず当該金型を無償で保管させるとともに、金型の現状確認等の棚卸し作業を行わせた行為が、下請法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)の規定に違反する等と判断されたものであります。当社では、2023年11月30日までに、すべての対象下請事業者様と補償のための協議を行い、金型保管等の費用に相当する額を支払い済みであり、また、次回以降の具体的な発注時期を示せない状態の金型については廃棄等の対応も実施いたしております。

当社は、本勧告等を厳粛に受け止め、本件について役員及び従業員に周知徹底するとともに、下請法遵守の社内教育、社内体制の整備を行うなど、再発防止策を講じた上で、公正取引委員会に改善報告書を提出いたしました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、481億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ156億99百万円の減少となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、155億28百万円のプラスとなり、前期に比べ36億72百万円の収入減となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、891億11百万円のマイナスとなり、前期に比べ614億31百万円の支出増となりました。これは主に、子会社株式の取得による支出の増加によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、512億75百万円のプラスとなり、前期に比べ395億63百万円の収入増となりました。これは主に、長期借入による収入の増加によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、単一の事業セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(生産実績)

当連結会計年度における生産実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

半導体デバイス事業

207,941

82.8

 

(注)1 金額は、販売価格で表示しております。

 

(受注実績)

当連結会計年度における受注実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

半導体デバイス事業

242,654

105.9

106,050

119.4

 

 

 

(販売実績)

当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

増減率(%)

半導体デバイス事業

235,221

100.0

9,833

4.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 相手先別販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、相手先別販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しました。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループの財政状態、経営成績については以下の通り分析しております。
  なお、本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において判断したものであり、不確実性を内在しているため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性もありますのでご留意ください。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の分析

(売上高及び営業損益)

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ98億33百万円(4.4%)増2,352億21百万円となりました。自動車向け製品は、前期比21.0%の増となりました。ICEやxEVなど各パワートレイン及び先進機能向けのパワーモジュール、パワーデバイス、センサーが大幅な増となりましたが、第4四半期以降、海外販売代理店における在庫調整、及び震災発生による影響が売上を押し下げる要因となりました。白物家電向け製品は、前期比17.0%の減となりました。韓国顧客の北米洗濯機向けでは伸長しましたが、中国不動産市場の調整長期化に伴う顧客での在庫調整が大きく影響しました。産機・民生市場は、前期比9.7%の減となりました。データセンター向けを始めとする海外産機の在庫調整がその主な要因です。

当連結会計年度の売上原価は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度に比べ66億29百万円(4.7%)増1,483億35百万円となり、売上原価率は前連結会計年度に比べ0.2ポイント悪化し、63.1%となりました。 
 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ98億21百万円(17.1%)増673億46百万円となりました。これは主として、労務費の増加によるものであります。売上高販管費比率は前連結会計年度に比べ3.1ポイント悪化し、28.6%となりました。
 この結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ66億17百万円減195億39百万円の利益となりました。

 

(為替変動の影響)

当社グループの海外売上高は1,816億94百万円で、連結売上高総額の約77.24%を占めており、そのほとんどを米ドル建で取引しております。また、主要な在外連結子会社の財務諸表は米ドル建で作成されております。このため、為替相場の変動は、円高が売上減少、円安が売上増加の方向に影響する傾向があります。
 一方、原価面でみますと、ほぼ同じ外貨ボリュームがあることから、売上高への影響額は利益段階では縮小することになります。

 

(営業外損益及び経常損益)

当連結会計年度の営業外損益は、前連結会計年度に比べ23億65百万円損失(純額)が増加し、12億92百万円の損失(純額)となりました。これは主として、支払利息が増加したことなどによるものであります。
 この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ89億82百万円減182億46百万円の利益となりました。

 

 

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、前連結会計年度に比べ77億37百万円損失(純額)が増加し、87億16百万円の損失(純額)となりました。これは主として、災害による損失を計上したことなどによるものであります。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ176億46百万円減81億12百万円の損失となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2021年4月から向こう3ヵ年にわたる中期経営計画において、最終年度である2024年3月期の目標値を連結売上高1,700億円、連結営業利益率13%、ROE12%として、主要課題に取り組んでまいりました。上記に記載した影響等もあり当連結会計年度の売上高は2,352億21百万円と目標値を上回る結果となりましたが、営業利益率は8.3%、ROEは△7.0%と目標値を下回る結果となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

当社グループの資金状況は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、155億28百万円の収入(対前年度比36億72百万円減)となりました。前年度比の主な要因は、税金等調整前当期純利益の減少によるものです。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、891億11百万円の支出(対前年度比614億31百万円増)となりました。前年度比の主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の増加によるものです。「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、512億75百万円の収入(対前年度比395億63百万円増)となりました。前年度比の主な要因は、前年度において借入金の増加によるものです。これにより、当連結会計年度末における有利子負債残高は1,407億77百万円となり、有利子負債依存度は36.7%となりました。これらの活動の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、481億15百万円(対前年度末比156億99百万円減)となりました。

 

(財務政策)

当社グループの資金調達の手段は、社債の発行、コマーシャル・ペーパーの発行、コミットメントライン契約、銀行借入などでありますが、2024年3月31日現在の残高は、1年内返済予定の長期借入金を含む短期借入金385億52百万円、コマーシャル・ペーパー90億円、社債150億円、長期借入金745億81百万円となっております。当社グループは、運転資金及び設備投資資金の調達は内部資金によることを基本としておりますが、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、未使用のコマーシャル・ペーパー発行枠210億円、当座貸越未実行分147億円及びコミットメントライン契約439億円などにより調達可能と考えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、当社の米国における連結子会社であるポーラー セミコンダクター エルエルシー(以下、「PSL」)に関して、当社、当社の米国における連結子会社であるAllegro MicroSystems, Inc.(米国NASDAQ市場「ALGM」、現在、PSLの少数株主)及び外部投資家(Niobrara Capital及びPrysm Capital)と協議を重ね、2024年4月25日の取締役会において、PSLが第三者割当増資を行い、当該外部投資家から過半数の出資を受け入れることを決定し、同日、出資に係る正式契約を締結いたしました。なお、外部投資家からの出資額は175百万米ドルを予定しており、本第三者割当増資が実行された場合、PSLは当社の連結対象から外れる予定です。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループの研究開発活動といたしましては、事業ドメインを「Power Electronics」と定め、研究開発活動を進めてまいりました。パワーモジュール、パワーデバイス、センサーの領域での成長戦略の実現及び技術マーケティングの確立と効率的な開発マネジメントによる新製品開発の促進を進め、連結子会社にも研究開発部門を有し、グループを挙げて研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費の総額は売上高の13.53%に当たる31,835百万円であります。
 

製品開発における技術マーケティングの導入により成長市場へのシフトを担う製品開発に注力するとともに、共通コンセプト(SPP: Sanken Power-electronics Platform)による設計改革、業務改革を推進し開発スピードのアップを図っております。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。

 

 

・技術開発力、提案力のさらなる向上のため、新たな技術教育体系を構築、社内の技術学校として「NEXUSスクール」を立ち上げ。

・高圧三相ブラシレスDCモータの小型化に伴い、これまで市場で認められてきた小容量モータドライバ用SXシリーズの機能を伝承しつつ、起動時180度変調方式を採用し、市場のターゲットコストを実現できるセンサー付き正弦波変調方式を搭載したモータ制御IC SIM262xMシリーズを開発。

・IGBTとDiodeの2つのデバイスそれぞれの構造を最適化し、当社旧世代品に比べ大幅に特性改善した第一世代RC-IGBTを開発。

・IPM製品に内蔵されるモータドライバIC向けに、低コストの高耐圧BCDプロセス、SG7.5HVプロセスを開発。

xEVの高電圧入力に対応した車載用フライバックコンバータコントロールIC YH2102/YH2103を開発。

・車載メインインバータ用IGBTチップとして、従来のFS-IGBTより大幅な特性改善を得ることができるBlueIGBT7のプロセスを確立。

PFC制御部とLLC制御部を1パッケージに統合し、端子共通化とICへの機能取り込みを行うことで、高い連携性と大幅な部品点数削減を実現したPFC+LLCコンボコントローラIC SSC4S910シリーズを開発。

・採用したセンサレス制御により、スポークモータなどで発生する起動時のモータ音鳴りを低減、薄型のSOP36パッケージに制御用IC、ゲート駆動用IC、6石のブートストラップダイオードを内蔵することで、駆動回路の実装部品点数を大幅に削減、また、モジュール化により駆動回路の信頼性向上に寄与するスポークモータ向けモータドライバIPM SX68144Mを開発。

絶対最大定格1200Vで産業機器の3相モータの駆動に最適、出力スイッチング素子、プリドライバ、制限抵抗付きブートストラップダイオード及び温度検出用サーミスタを1パッケージにした産業機器向けモータドライバIPM SAM212M10BF1を開発。

・PFC部は連続モードに対応し入力電圧や負荷に応じて周波数を最適制御することで軽負荷から重負荷まで高効率な電源システムが実現可能、LLC部はオートスタンバイ機能を内蔵することで周辺部品の削減により低コスト化が可能なフルデジタル制御の電源IC MD6759を開発。

・Wide入力で最大60Wまでカバー、低待機電力対応、充実した保護機能により構成部品が少なくコストパフォーマンスの高い電源システムを容易に構成できるPWM型スイッチング電源用パワーIC STR-W6000SAシリーズを開発。

・過電圧保護にラッチタイプを追加することで屋内外全ての照明用途に対応可能な高力率・高効率LED照明用コントローラIC LC5581LSを開発。

高圧バッテリーとインバータ回路の間に接続される遮断スイッチの駆動に最適、パッケージはHQFN32ウェッタブルフランクを採用しており、視認性が良く、省スペース化に適し、ローサイド出力のコンタクタドライバを3チャンネル搭載したIC LS1908を開発。

・漏れ電流が少なく、かつ、順方向損失の低減、電源効率の向上と高周波化を実現する電源2次側整流ダイオード SJPEシリーズを開発。

・3相インバータ回路用に低オン抵抗NチャネルパワーMOSFETを6個内蔵、小型SIP12パッケージを採用し、小型化が求められる家電製品などのファンモータの駆動に最適な3相ブラシレスDCモータ向けMOSFETアレイ SMA5145, SAM5146を開発。

・光透過率を抑えたパネルを使用したブラックアウトデザインに対応、従来LED光源の約2~3倍(当社比)の高輝度で発光可能、ルームランプ・マップランプなどの高輝度車室内照明で要求されるアプリケーションに対応した高輝度2835LED SEP1WC1L19DTAを開発。

・車載標準小型サイズで実装基板の小型化に貢献、センターチップレイアウト基板を採用することで従来品より指向性を改善し、光学設計の簡易化に貢献する車載インテリアスイッチ用1608パッケージ白色LED SECE1**A1Y***シリーズを開発。

 

 

なお、SiCデバイスに関しては、2023年度のNEDO先導研究プログラムで『SiCスマートパワーIC技術の研究開発』が産業技術研究所との共同提案で採択されました。本研究内で、現状Si製のゲートドライバーをSiC化することで、SiCモジュールの高速・高信頼性化を検討する計画です。

GaNデバイスに関しては、NEDO基盤技術研究促進事業で得られたGaN on Si技術を活かし、横型HEMTデバイスのカスタム製品を少量出荷中です。並行して、GaN基板を用いた縦型デバイスの検討を、名古屋大学中心に進められているGaNコンソーシアムに参画し行っております。