(1) 会社の経営の基本方針
当グループは、「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ことを存在意義(Purpose)とし、企業理念(Vision)の実践を通して、社会価値の創造と企業価値の向上を目指してまいります。
企業理念:「オークマは、統合一貫した“ものづくりサービス”を通して、世界中のお客様の価値創造に
貢献することで、オークマと共に歩むすべての人々の幸せを実現します。」
労働人口の減少とデジタル革新技術の進展がもたらす社会変化と共に、地政学リスクの高まり、そして気候変動への対応などにより、産業構造の変化がグローバルに急速に進んでいます。
感染症の拡大や頻発する大規模な自然災害に対し、自動化・省人化、製造拠点の分散など、ものづくりの強靭化が求められ、経済安全保障の観点からも、サプライチェーンの再編・複線化、製造拠点の再配置など、リスク対応が一層重要となってきています。
そして多様化する顧客要求や環境対応に伴う脱炭素化の流れにより、ものづくりのあり方は変革が求められております。
■ ビジネスモデル「総合ものづくりサービス」
製造業全体が大きな転換点に差し掛かる中、当グループは、工作機械を制御する数値制御装置(NC装置)を自社開発する世界有数の総合工作機械メーカーとしての強みを活かし、「機電情知」(機械、電気(制御)、情報、知識創造)の融合技術を基盤に、ものづくりをトータルで支援、提供するというトータルレスポンシビリティの思想のもと、「総合ものづくりサービス」を提供しております。
「総合ものづくりサービス」は、独自のスマートマシン(知能化・AI技術を搭載した工作機械)だけでなく、加工技術、そして自社工場で培ってきたスマートファクトリー構築のノウハウをスマートファクトリーソリューションとして提供していくこと、そしてさらには工場全体の自動化・工場運営支援を提供する「ものづくりDXソリューション」まで個々のお客様におけるものづくりのライフサイクル全体において課題を解決し、新たな価値を提供します。そして労働人口減少や脱炭素社会の実現等、社会課題の解決に貢献すると共に、当グループとしての成長を図り、「世界の製造業における社会課題を解決する企業」を目指してまいります。
■ 中期ビジョン
「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」という存在意義(Purpose)の実現に向け、基本戦略(Basic Strategy)として、スマートマシンからスマートファクトリーソリューションを徹底的に強化しながら、ものづくりDXソリューションの展開の加速を進めてまいります。
世界の課題解決の需要に応えること、 そしてものづくりの課題解決を通じてお客様に貢献することが当グループの成長につながります。その上で、成長産業、強みの産業を大きくカバーすることによる成長、さらにグローバル70(海外売上高比率70%以上)の実現を目指して、グローバル市場における成長を掛け合わせ、当グループの中長期的な成長を図ってまいります。
中期ビジョン

■ 中期経営計画の基本方針と重点的な取組み
中期ビジョンの達成に向けて2023年度~2025年度の中期経営計画では、5つの基本方針を定め、収益性の向上を図ると共に、需要変動に左右されにくい事業構造・企業体質の構築を進めてまいります。そして事業活動を通じて社会課題を解決することで、新たな価値を生み出し、当グループの持続的成長、企業価値向上につないでまいります。
中期経営計画における重点的な取組み
当グループは、中期ビジョンにおいて2030年度の連結売上高を3,000億円とし、最も重要な経営指標として連結営業利益率15%を目指すものとしています。その中間地点として2025年度に達成を目指す経営目標としては、中期経営計画の基本方針に基づく取組みを展開して収益力強化と高効率経営の実践を図り、連結売上高2,500億円、連結営業利益率13~15%、ROEを10%以上とする目標を設定いたしました。
株主還元の方針としましては、安定した財務基盤と将来の成長に向けた投資枠を確保しながら、平均して総還元性向35%以上を実施してまいります。また、フリーキャッシュフローの状況に応じて、投資のタイミング、財務の健全性、キャッシュの保有レベルを加味しながら、追加的な株主還元も柔軟に行う考えです。
当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。
(1) 全般的なサステナビリティ課題への対応
ガバナンスとリスク管理
当グループは、安全保障、情報セキュリティに関する組織及び会議体、そして社会・環境に関する会議体を設け、サステナビリティに関する重要事項はこれらの組織、会議体での議論を経て、執行役員会で審議、決定され、必要に応じて取締役会に報告又は付議されます。またESG推進室は、カーボンニュートラル、人権尊重など環境や社会に関わる課題を見出し、提言を行うと共に、課題対応の取組みを企画しその推進を図ります。
サステナビリティ体制

(2) 事業戦略を通じた社会課題の解決
世界が多岐にわたる環境・社会課題に直面する中、当グループは、企業理念やPurpose、そして事業活動をSDGsのゴールや課題に整合させることによって、当グループの「持続的成長」を図りながら「持続可能な社会」の実現に貢献していく考えです。
持続可能な社会の実現に向け、当グループはイノベーションの創出を通して、少子高齢化に伴う労働力不足や脱炭素社会の実現等の社会課題の解決に貢献してまいります。またイノベーションを生み出す源泉は人材と考え、先端技術の研究・熟練技術の習得促進、ダイバーシティの推進、働きやすい環境づくり等、人的資本の強化を進めています。

マテリアリティ分析のプロセス
Step 1 課題と機会の抽出
国連グローバルコンパクトが発行するSDG Com-passなどのフレームワーク、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)などが発行する報告基準を参照しながら、バリューチェーン全体(材料調達から製品の廃棄まで)を見渡して、当グループの技術・製品、販売、生産活動などが環境や社会へ与える、あるいは与える可能性のある正と負の影響について、また社会情勢や自然環境が当社の事業に与える影響について、各本部の事業計画の取組みをSDGsのゴールに紐づけながら分析し、課題や機会を抽出しました。
Step 2 優先課題(マテリアリティ)の選択
抽出した課題に対して、「当グループが経済、環境、社会に与えるインパクトの大きさ」、「ステークホルダーや社会、環境にとっての重要度」、「コスト増加やリスクになる可能性」、「競争力強化や企業成長の機会」の観点から重要性を評価し、「マテリアリティ」を評価しました。
労働人口減少、省エネルギー・脱炭素化など、ものづくりを巡る社会課題に直面する中、その課題解決を自社の工場、Dream Siteで実証し、そこで得られたナレッジを製品と共にソリューションとして提供しています。このような当グループのビジネスモデルは、自社における課題解決の取組みが社会課題の解決につながるものであり、また当グループの工作機械は、お客様のもとで長期に亘り使用される生産財であることから、人や環境へ大きなインパクトをもたらすと共に、当グループの発展にとって強く財務的な影響を及ぼすものとして最も重要な課題は、「ものづくりを通じた脱炭素社会の実現への貢献」であり、高効率生産、省エネルギー、省資源など気候変動、環境負荷低減に向けた技術、製品、加工技術、生産システム、ソリューションの開発、そのための人材育成と考えました。
Step 3 課題に対する施策の立案、KPIの設定
選択した重要課題は、「イノベーションの創出を通して、ものづくり産業の持続的な成長に貢献する」、「イノベーションの源泉となる人材を育成する」という方針のもと、より具体的なテーマに落とし込み、KPIを定めて推進しています。
半期ごとに定める各本部の事業計画では、施策とマテリアリティやSDGsのゴールとの関連性が示され、各本部の事業計画は執行役員会で承認後、取締役会で報告が行われます。
(3) 気候変動への対応と脱炭素社会の実現への貢献
当グループは、低環境負荷の製品を開発し提供することは、お客様のニーズに応えることであると共に、脱炭素社会の実現に資するものと考え、2021年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、TCFDのフレームワークを踏まえた気候変動への対応を進めています。
当グループは、気候変動への対応をマテリアリティに位置づけています。具体的な目標や計画、施策は、当社の環境マネージメントシステムを統括する安全・環境会議、及び機会管理を行うESG推進室の提言を踏まえて、半期に1回、当社の全部門が参加する会議にて事業計画として策定しています。同計画は執行役員会での承認を経て、その内容や進捗は取締役会に報告しています。また施策の進捗状況は全ての部門が参加して毎月開催される当社の経営会議で報告・議論され、必要に応じて追加措置や強化策などを施しています。
「環境委員会」は毎月1回開催され、環境に関するリスクを評価・管理しています。評価結果は当社の各本部の担当役員及び本部長で構成する「安全・環境会議」で審議され、特に重要とされたリスクについては、社長を議長とする執行役員会で審議しております。
当グループは主要生産拠点である国内の本社、可児、江南工場について、4℃シナリオと2℃シナリオの2つのシナリオにより気候変動が及ぼすリスクと機会について評価を行いました。その結果、物理リスクは軽微であると判断しております。移行リスクにつきましては、主にはScope2に相当する電力消費に伴うCO2の間接的な排出に伴うものであり、自社内において温暖化ガスが大量に発生する機器、工程はないことを確認いたしました。
また、気候変動への対応は、製品を生産する際のCO2排出量削減はもとより、お客様の工場で稼働する際の消費電力の削減が重要であることを認識し、高い生産性と高エネルギー効率を併せ持つ環境負荷の技術・製品を提供することでお客様の脱炭素化のニーズに応え、脱炭素社会の実現に貢献すると共に、気候変動、脱炭素化の対応は当グループの成長の機会としています。
移行リスク・物理リスク
機会
当グループは、気候変動における指標をCO2排出量と定め、カーボンオフセット等を活用しながら2030年度までにScope1、Scope2におけるカーボンニュートラルの達成を目標として掲げています。そして2050年までにバリューチェーン(Scope1、2、3)全体でのCO2排出量の実質ゼロを目指します。
a. 省電力の取組み
当社のCO2排出量のうち生産工程の電力消費が約60%を占めており、CO2排出量の削減には国内工場の電力消費の抑制が重要となります。生産における電力消費を抑制するため、加工時間を短縮する加工技術を開発するなどさらなる生産性向上を図り、あわせて加工機及びその周辺機器のアイドリング時間を削減するなど機械の運転制御も一段と高度化します。また当社の加工設備の大半は自社製工作機械であることから、さらなる省エネ化を進めた工作機械の開発を進め、それを製品として提供することで、お客様の工場での電力消費の削減に貢献していきます。
b. 照明のLED化、太陽光パネルの設置など
省電力の取組みと共に、照明のLED化、太陽光パネルの設置、省エネ型空調機器への切り替えなど、ハード面からのCO2排出削減の取組みも計画的に、費用対効果を見極めて適切に判断して進めていく考えです。
c. 再生可能エネルギー由来の電力導入
当グループは、CO2を多く排出する鋳物、鋼材などを外部から調達していることからCO2排出量はScope2が大半です。従ってカーボンニュートラルの達成には、生産性向上や省エネ機器への切り替えを図った上で、再生可能エネルギー由来の電力の導入が不可欠となります。
Scope1、2におけるカーボンニュートラルの達成に向けて、製造技術の革新、独自の省エネ技術の適用により生産効率の大幅向上を図った上で、再生可能エネルギー由来の電力の導入も進めており、2022年10月より国内の生産拠点(本社、可児、江南)はカーボンニュートラル工場とし、2024年4月から当社の国内拠点及び国内連結子会社のScope1、2はカーボンニュートラル化を達成しました。
⑥CO2排出量
当社と国内外の連結子会社を合わせた2023年度のCO2排出量は13.4千t-CO2でした。このうち当社の排出量は7.2千t-CO2であり、全体の54%を占めています。また、当社の本社、可児、江南、群馬の各工場及び国内拠点において、Scope1をカーボンニュートラル化するため、6.7千t-CO2分のJ-クレジットを調達いたしました。
(注) 1.国内の本社、可児、江南工場を対象としています。
2.国内の本社、可児、江南、群馬工場を対象としています。
3.2024年1月よりカーボンニュートラル化をいたしました。
4.J-クレジットによるオフセット(△6.7千t-CO2)を含みません。
(4) サプライチェーンを含めた人権尊重の取組み
当グループは工作機械のグローバルメーカーとして、多岐にわたるサプライチェーンとつながりを持ち、また製品は幅広い産業分野、顧客層のユーザーに及んでいます。サプライチェーンにおける人権尊重は当グループの事業を営む上で重要な基盤のひとつと考え、人権リスクの把握と低減を図っております。また取引先をはじめとするビジネスパートナーに対しても人権尊重を働きかけてまいります。
当グループは、国際的に認められた人権(「国際人権章典」で表明されたもの、及び、「労働における基本的原則及び権利に関するILO(国際労働機関)宣言」に挙げられた基本的権利に関する原則等)を尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等のガイドラインに沿って、人権尊重に取り組んでおります。また、事業活動を行うそれぞれの国や地域で適用される法令を遵守し、国際的に認められた人権と各国や地域の法令の間に矛盾がある場合には、国際的な人権の原則を可能な限り尊重するための方法を追求してまいります。
(5) 人材戦略
当グループの果たす役割は、工作機械のサプライヤーという従来の位置づけに加えて、お客様のバリューチェーンの一員として、お客様と共に新たな価値を創り出すことにあると考えています。「総合ものづくりサービス企業」としてこの使命を達成するプロセスでは、社員の成長こそが競争力の源泉になると考えており、当社では「人づくり」に重きをおいています。そして、「総合ものづくりサービス企業」としての組織機能の高度化を目指し、その組織を動かす多様な人材の育成と多様な人材がその能力を最大限発揮できる環境づくりを進め、Purposeの実現を進めてまいります。
中期ビジョンの実現に向けた人材・組織

①多様な社員が最大限能力を発揮できる環境づくり
企業価値向上に繋がる新たな価値創造を実現するには、多様な個人が最大限能力を発揮することが不可欠と考え、当グループでは、異なるバックグラウンドを持つ人材の採用・登用、そして活躍できる仕組み・環境の整備を進めています。女性活躍の促進としては、育児をしながら働き続けられる環境整備として、短時間勤務制度の拡充や時間単位有休制度の導入等、柔軟な働き方を推進しています。また部門横断の活発なコミュニケーションにより新たな気づきやイノベーションの創出を促進するため、談話スペースを設ける等、オフィスフロアの改装、リノベーションも段階的に進めております。
ダイバーシティの推進の重点指標(当社(提出会社))
女性が働きやすい環境づくりの重点指標(当社(提出会社))
②人材育成
当グループの事業領域は、「ものづくり」から「コトづくり」、即ち工作機械単体の販売からお客様の生産や加工の課題を解決するソリューションの提供へと拡大しています。「コトづくり」を強化するためには、ものづくりのプロフェッショナルとして、自身の専門領域だけではなく、幅広い領域で知識・スキルを吸収・応用することが重要と考え、「コトづくり」を含めた人材育成を強化するため、2019年に社内教育の機関として「Okuma University」を設立いたしました。Okuma Universityは、「創発と熟練」、「ものづくり教育」、「オークマウェイ」といった3つの柱を軸に、部門ごとの必修科目を定めつつ、本部の垣根を越えて学ぶ場としております。 Okuma Universityを通じて「多角的な視点を持ったプロフェッショナル人材」の育成を推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、2024年3月末日現在で当グループが判断したものであります。
工作機械の需要は、主要消費地域(日本、米州、欧州、中国を含むアジア)の経済状況と同地域における設備投資需要の変動に左右されます。特に、当グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は、当連結会計年度において69.2%、前連結会計年度においても66.7%といずれも高い比率となっており、海外消費地域の経済状況の悪化により需要が低下した場合は、当グループの業績への影響が懸念されます。
当グループは、中国及び台湾の子会社にて工作機械を製造しており、米州、欧州及びアジア・パシフィック地域の子会社を通じて製品の販売及びアフターサービスの提供をしておりますが、これらの国または地域において、政情の悪化、予期せぬ法律・規制の変更等があった場合は、当グループの業績への影響が懸念されます。
また、グループ会社間の取引価格に関しては、適用される日本及び相手国の移転価格税制を順守するよう細心の注意を払っておりますが、税務当局から取引価格が不適切であるなどの指摘を受ける可能性があります。さらに政府間協議が不調となるなどの場合、結果として二重課税や追加課税を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合は、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当グループはグローバルに販売及び生産活動を展開しているため、外貨建て商取引及び投資活動等は為替変動の影響を受けます。また、有利子負債の削減を軸に財務体質の強化に努めておりますが、金利上昇は支払利息の増加を招き、当グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループは、為替変動及び金利の変動リスクを回避すべく、輸出地域の分散、社内管理規程に従ったヘッジ取引等を実施しておりますが、その影響を完全に回避できるとは限りません。また、当社は、取引先企業や金融機関等の株式を保有しており、株価が大幅に下落した場合は投資有価証券評価損が発生し、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しており、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。事業環境の大幅な変動が生じた場合や土地等の固定資産価格が下落した場合には減損損失が発生し、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
工作機械の主要原材料として使われる鋳物・鋼材などは、原油価格の動向、国際的な需給の状況などにより価格が変動し、コストアップ要因となる場合があります。また、海上運賃の高騰は工作機械の輸送費として、コストアップ要因となります。このコストアップに対しては、コストダウン推進や製品価格への転嫁によってカバーする方針でありますが、さらなる価格の高騰が続いた場合には、当グループの業績への影響が懸念されます。
当グループは製造、販売及びサービス拠点をグローバルに展開しているため、予測不可能な自然災害、疫病の蔓延、コンピュータウイルス、テロといった多くの事象によって引き起こされる災害に影響を受ける可能性があります。
特に、当グループの本社機能及び主要な製造拠点があります愛知・岐阜両県は、東海大地震の防災強化地域であり、ひとたび大きな地震が発生した場合には、大きな損害が発生し、当グループの業績への甚大な影響が懸念されます。当グループといたしましては、建物等の耐震工事、防災訓練の実施及び従業員への啓蒙などの地震対策を逐次実施しており、リスクの極小化に努めております。疫病については、感染拡大を防止するため、衛生管理の徹底や時差出勤・テレワーク等の効率的な事業運営を実施しております。また、政府や地方自治体による要請や声明等の趣旨を鑑みて、主要な製造拠点の操業休止や一時帰休の実施等を行う可能性があります。
自然災害、疫病の蔓延等によって調達先の生産が滞ることや、製造業の繁忙に伴い、工作機械の構成部品やユニットの調達難が生じ、安定した生産が阻害される可能性があります。調達部品の確保のために、調達難の要因となる事象の監視と対応、代替手段の確保等により、リスクの極小化に努めております。
発電所の停止等により電力供給不足に陥った場合、節電対応により、安定した生産が阻害される可能性があります。
(9) 情報システム・情報セキュリティのリスクについて
当グループの事業活動において、情報システムの利用は不可欠となっており、コンピュータウイルス、システム障害等により情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また電子取引等、業務のデジタル化の拡大は情報漏洩等、情報セキュリティに係るリスクを伴います。
このようなリスクへの対応として、当グループは、サイバーセキュリティ対策を継続的に講じており、また情報システムの運用手順、機密情報の管理規則を厳格に定め、システム障害や情報漏洩等の防止を図っております。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当期における当グループの経営環境は、国内、海外共、工作機械需要は弱含みの動きが続きました。
日本では半導体製造装置関連や自動車関連からの需要は持ち直しには至らずも、底打ちを探る兆しが見られ始めました。米州では中堅、中小事業者においては金融引き締めが想定以上に需要を減速させました。欧州では主要国の景気の減速等により次第に弱含みが強まる展開となりました。中国では経済活動が停滞する中、不動産を巡る問題が顕在化し、設備投資を控える動きが続きました。その他のアジア諸国においても設備投資に対する慎重な動きが続きました。
他方、労働人口減少、脱炭素化、サプライチェーン再編等、社会課題や地政学リスクへの対応に伴う需要は底堅く推移しました。
こうした中、当グループは2023年度を初年度とする「中期経営計画2025」を策定し、「ものづくりDXソリューションの展開」を基本戦略として、「成長産業・強みの産業における成長」と「グローバル市場における成長」に向けた諸施策に取組みました。そして省熟練・省人化の高精度・高効率生産を実現する知能化技術と自律的にエネルギー消費量を削減し脱炭素化に貢献する機能を備えた当グループの工作機械を「Green-Smart Machine」として一斉展開し、受注獲得に注力しました。
地域別の市況については、日本は底打ち時期を探る中、受注は動きの鈍い状況が続きました。年度後半には半導体製造装置関連等、一部で投資再開を検討する企業も見られ始めました。他方、自動車関連は設備投資の様子見が続きました。
米国の市況は弱含みで推移しましたが、大手企業や航空宇宙等、ハイテク産業での需要は底堅さを維持しました。中堅、中小事業者においては金融引き締めの影響等により設備投資の抑制傾向が続きました。
欧州では、東欧、トルコ等の周辺国を中心に各種の産業機械、農業・建設機械、油圧機器、自動車、航空宇宙関連等、幅広い需要が見られました。しかしながらインフレや景気の先行きを警戒し、設備投資に対する慎重な動きが続く中、周辺国への製造拠点の再配置に伴う需要は次第に落ち着き、また主要国では景気は減速傾向となり、年度後半以降、市況の弱含みが強まる展開となりました。
中国では、景気後退により製造業全体に設備投資を控える動きが広がり、工作機械需要の減速が強まる展開となりました。活況を呈していたEV関連からの需要が一巡する中で大手EVメーカーの設備投資が一部継続しており、その需要を着実に取り込みました。
中国を除くアジアにおいては、タイ、マレーシア、インドネシアの市況は緩やかな回復傾向となり、インドにおいては設備投資への旺盛な意欲が見られました。他方、韓国、台湾等では弱い動きが続きました。
このような市況の下、米国では積極的な販売活動で中堅・中小事業者の設備投資意欲を喚起し、欧州では2023年9月18日から23日にかけてドイツ ハノーバー市で開催された欧州工作機械見本市(EMO Hannover 2023)に出展し、自動化ソリューション、環境対応の技術・製品をアピールし、潜在需要の掘り起こしを図りました。2023年11月15日から17日にかけて本社工場で開催したオークママシンフェア2023では、自動化、脱炭素、デジタル化を巡るものづくりの課題を解決する製品、ソリューションを提案し、顧客の設備計画の具体化を後押しました。
また基本戦略とする「ものづくりDXソリューションの展開」を着実に進め、その一環として中国では4か所目となるテクニカルセンターを寧波に開設し、日本では埼玉県に国内6か所目のCS(Communication & Solution)センターとして東日本CSセンターを開設しました。また、オークマのスマートファクトリー Dream Siteで培った自動化技術やDXのノウハウを活用して、㈱木村鋳造所との協創においては新世代鋳造製造技術の開発を進め、ロボットによる省人化、工程間のデジタルデータ連携等により多品種少量の小物鋳物の生産革新、ものづくりDXの取組みを進めました。
部品・ユニット類や鋳物・鋼材の調達難は解消に向かう中、協力会社を中心にサプライチェーンの強化を加速させ生産の安定化を図りました。部材コストの高止まり乃至緩やかな上昇に対しては生産の効率化等、自助努力に注力しながら販売価格への転嫁を進めました。
また中期経営計画の中で進める革新的な自動化技術の開発やお客様の生産改革に向けたサポートビジネスへの展開の一環として江南工場再開発に着手し、自動化ソリューションの提案・生産出荷等を行うエンジニアリングセンター及び次世代の自動化技術開発やお客様の生産改革に向けたサポートビジネス、ソリューション提案を行うイノベーションセンターの建設を決定しました。
これらの事業戦略を確実に実行した結果、当期の連結受注額は204,019百万円(前期比17.6%減)、連結売上高は227,994百万円(前期比0.2%増)、営業利益は25,364百万円(前期比2.3%増)、経常利益は25,557百万円(前期比3.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は19,381百万円(前期比1.0%増)となりました。
次に、セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 日本
日本は、底打ち時期を探る中、受注は動きの鈍い状況が続きました。年度後半には半導体製造装置関連等、一部で投資再開を検討する企業も見られ始めました。他方、自動車関連は設備投資の様子見が続きました。
このような状況の下、売上高は175,014百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。損益面では、部品・ユニット類や鋳物・鋼材の調達難は解消に向かう中、協力会社を中心にサプライチェーンの強化を加速させ生産の安定化を図ると共に、部材コストの高止まり乃至緩やかな上昇に対しては生産の効率化等、自助努力に注力しながら販売価格への転嫁を進め、営業利益は15,100百万円(前連結会計年度比11.5%減)となりました。
セグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比較して171百万円減少し、219,785百万円となりました。
② 米州
米国は、市況が弱含みで推移しましたが、大手企業や航空宇宙等、ハイテク産業での需要は底堅さを維持しました。中堅、中小事業者においては金融引き締めの影響等により設備投資の抑制傾向が続きました。
このような状況の下、売上高は70,658百万円(前連結会計年度比3.8%増)、営業利益は5,441百万円(前連結会計年度比15.3%減)となりました。
セグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比較して4,313百万円減少し、52,250百万円となりました。
③ 欧州
欧州は、東欧、トルコ等の周辺国を中心に各種の産業機械、農業・建設機械、油圧機器、自動車、航空宇宙関連等、幅広い需要が見られました。しかしながらインフレや景気の先行きを警戒し、設備投資に対する慎重な動きが続く中、周辺国への製造拠点の再配置に伴う需要は次第に落ち着き、また主要国では景気は減速傾向となり、年度後半以降、市況の弱含みが強まる展開となりました。
このような状況の下、売上高は41,531百万円(前連結会計年度比8.4%増)、営業利益は2,982百万円(前連結会計年度比8.6%増)となりました。
セグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比較して1,585百万円増加し、30,861百万円となりました。
④ アジア・パシフィック
中国は、景気後退により製造業全体に設備投資を控える動きが広がり、工作機械需要の減速が強まる展開となりました。活況を呈していたEV関連からの需要が一巡する中で大手EVメーカーの設備投資が一部継続しており、その需要を着実に取り込みました。中国以外のアジアでは、タイ、マレーシア、インドネシアの市況は緩やかな回復傾向となり、インドにおいては設備投資への旺盛な意欲が見られました。他方、韓国、台湾等では弱い動きが続きました。
このような状況の下、売上高は28,475百万円(前連結会計年度比15.4%減)、営業利益は1,388百万円(前連結会計年度比27.0%減)となりました。
セグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比較して448百万円減少し、37,662百万円となりました。
(2) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における当グループの連結生産実績は、231,128百万円(前年同期比7.7%減)であります。なお、日本での生産高が90%以上であるため、セグメントごとの記載を省略しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主要な販売先については、総販売実績の100分の10以上を占める販売先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示、並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや前提が必要となります。当グループは、過去の実績、または各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。
以下、当グループの財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針についてご説明いたします。
① 貸倒引当金
当グループは、貸倒れによる損失に備えるため、連結会社間の債権債務を相殺消去した期末の金銭債権に対し、一般債権につきましては貸倒実績率により、また貸倒れが懸念される債権につきましては、回収可能性を勘案して貸倒見積り額を計上しております。取引先の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
② 棚卸資産
当グループは、棚卸資産について、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積り額と原価との差額に相当する陳腐化の見積り額について、評価損を計上しております。将来需要または市場状況が当グループの見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
③ 繰延税金資産
繰延税金資産のうち、将来において回収が見込めない部分については評価性引当額を設定しております。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りに依拠します。将来の課税所得が、経済環境の変化や収益性の低下により予想された額よりも低い場合には、繰延税金資産の金額は調整される可能性があります。
④ 退職給付債務及び費用
従業員の退職給付債務及び費用の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。当グループは、使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実績との差異または仮定自体の変更により、退職給付債務と将来の費用に影響を与える可能性があります。
⑤ 投資有価証券の減損
当グループは、その他有価証券のうち、取得価額に比べ実質価額が著しく下落したものにつきましては、回復可能性があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。市場価格のない株式等以外のものにつきましては、期末日における時価の簿価に対する下落率が50%以上の場合には、回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満の下落の場合には、当該有価証券の発行会社の財務状況及び将来の展望などを総合的に勘案して回復可能性を判断しております。市場価格のない株式等につきましては、その有価証券の発行会社の1株当たり純資産額が、取得価額を50%程度以上下回った場合に回復可能性がないものとして判断し、30%以上50%未満の場合には、当該有価証券の発行会社の財務状況及び将来の展望などを総合的に勘案して回復可能性を判断しております。
将来の時価の下落または投資先の業績不振や財政状態の悪化により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
⑥ 固定資産の減損
減損損失の認識及び回収可能価額の算定に際し、将来キャッシュ・フローについて見積りを行っております。当グループは将来キャッシュ・フローの見積りは合理的であると考えておりますが、予測不能な事業上の仮定の変化による将来キャッシュ・フローの見積りの変化が、固定資産の評価に影響する可能性があります。
当グループは、持続的な「利益ある成長」をすべく、収益性、効率性を高めていく考えで事業戦略を進めております。併せて、中長期的な視点で「利益ある成長」を続けるために、財務の健全性を維持し、企業価値の向上に繋げてまいりたいと考えております。このため、売上高営業利益率を重要な指標として位置付けております。
なお、当連結会計年度における経営成績等の状況は以下のとおりであります。
① 売上高
当グループは、オークマブランドの強化・浸透、生産性向上に結び付くソリューションの提案等、顧客拡大に向けた諸施策を進め、受注・売上高の拡大を図ってまいりました。
その結果、売上高は227,994百万円(前連結会計年度比0.2%増)となりました。
② 営業利益
生産効率向上、コストダウン施策に注力し、収益力の強化を進め、営業利益は25,364百万円(前連結会計年度比2.3%増)となり、売上高営業利益率は、前連結会計年度に比較して0.2%増加の11.1%となりました。売上総利益率は、前連結会計年度に比較して0.6%増加の32.7%となり、販売費及び一般管理費の対売上高比率は、前連結会計年度と比較して0.3%増加の21.5%となりました。
③ 経常利益
営業外収益から営業外費用を差し引いた純額は193百万円の利益となりました。そのうち、受取利息及び受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は1,275百万円の利益となりました。また、その他の営業外費用として、為替差損867百万円等を計上し、経常利益は25,557百万円(前連結会計年度比3.4%減)となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は26,873百万円となりました。また、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は19,381百万円(前連結会計年度比1.0%増)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前年同期と比較して15,453百万円減少し、49,242百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,251百万円の収入となりました(前年同期は16,061百万円の収入)。主な資金の増加項目としては、税金等調整前当期純利益26,873百万円、減価償却費9,634百万円、及び棚卸資産の減少2,633百万円などであります。一方、主な資金の減少項目としては、仕入債務の減少18,013百万円、法人税等の支払額9,085百万円、及び売上債権の増加1,908百万円などであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、12,579百万円の支出となりました(前年同期は6,528百万円の支出)。主な資金の増加項目としては、投資有価証券の売却による収入1,409百万円などであります。一方、主な資金の減少項目としては、無形固定資産の取得による支出6,510百万円、有形固定資産の取得による支出6,374百万円、及び投資有価証券の取得による支出578百万円などであります。有形固定資産の取得による支出の主な要因としましては、世界的に高まる工作機械の需要に応えるべく、加工用設備機械等の更新1,837百万円の投資を行ったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、10,727百万円の支出となりました(前年同期は7,616百万円の支出)。主な資金の減少項目としては、配当金の支払額5,867百万円、自己株式の取得による支出3,690百万円、及びリース債務の返済による支出1,036百万円などであります。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
当グループの運転資金需要のうち主なものは、部材の購入費のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。
当グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
資金調達は、将来の資金需要、資本コスト、資本構成等を総合的に勘案し、手元流動性資金の活用、金融市場からの調達も視野に入れ、最適な資金調達方法を選択しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は7,367百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、49,242百万円となっております。
2024年度における重要な資本的支出としては、本社工場、可児工場等の補修、江南工場のエンジニアリングセンター、イノベーションセンターの投資、及び㈱日本精機商会の物流センターの投資を支出する予定であります。その資金の調達源は、主に自己資金を予定しております。
該当事項はありません。
当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
半導体や自動車関連の需要の落ち着きや中国経済減速の影響を受け、2023年暦年の日工会受注額は前年比15.5%減の1兆4,865億円と3年ぶりに減少しました。しかしながら、日工会受注額は過去7番目であり、労働人口減少、脱炭素化、サプライチェーン再編等、社会課題や地政学リスクへの対応に伴う需要は底堅く推移しました。
こうした中、「ものづくりDXソリューションの展開」を基本戦略とし、Purposeである「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ため、当社の強みである機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合技術を活かし、高い生産性と安定した稼働を実現する新機種(スマートマシン)・新技術開発を進めています。特に「脱炭素化」「自動化」の対応に注力しており、開発した新技術は自社のスマートファクトリー「Dream Site(ドリームサイト)」で実証確認し、ここで得られたノウハウを反映することで、信頼性の向上を図っております。
国内外の大手の製造業が脱炭素化に向けた取組みを開示し、サプライチェーン全体への波及が進んでいることから、中小規模企業においても脱炭素化の取組みが必要となっています。このような状況を踏まえ、部品加工工場の電力消費量の多くを占める工作機械の省エネルギー(CO2排出量の削減)技術の開発を進めております。具体的には、精度安定化のために必要となる工作機械の暖機運転や工場の環境温度変化を抑制するための空調を削減しても工作機械が自律的に高精度の安定維持を行うと共に、周辺機器の稼働を自動できめ細かく運転することで省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」として展開し、提供しております。2023年度は、工作機械の基本となる加工性能と環境温度変化に対する精度安定性をさらに高めた立形マシニングセンター「MB-V Ⅱシリーズ」を開発し、機械稼働時の保守作業が大きく削減できるスラッジレスタンクも進化させたことが高く評価され「2023年十大新製品賞本賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。
また、労働人口減少により自動化・省人化への要望が高まる中、Dream Site(ドリームサイト)での経験を活かした技術開発を行っております。一般に産業ロボットを操作するには工作機械とは異なったロボット特有の言語を習得する必要があり、ロボット導入の障壁となっています。この課題に対して、「工作機械オペレータがすぐに使える自動化」をコンセプトに特徴のある技術開発を行い、工作機械とロボットを完全融合した次世代ロボットシステム『ARMROID(アームロイド)』を提供しております。さらに、2023年度はロボットと工作機械を組み合わせた加工セルに対して、ロボットの動作順を表形式の工程表で指定するだけで動作可能なスマート加工セルコントローラー「smarTwinCELL(スマ―ツインセル)」を開発しました。Green-Smart Machineの複合加工機MULTUS B300Ⅱと組み合わせ「smarTwinCELLロボットキット」として提供を開始しました。また、生産の繁忙に合わせて柔軟に自動化することを目的に、移動可能なワークストッカとロボットを組み合わせた移動式協働ロボット「OMR」を開発し、提供を開始しました。自動化したい工作機械に対して約4分半で設置でき、最大10台の工作機械に対応ができること、最大30種の加工部品に対応可能であることが特徴で多品種少量生産の生産現場の生産性向上に貢献いたします。このような自動化の普及推進と並行し、㈱木村鋳造所との協創において、工程間のデジタルデータ連携や、これまで培ったソリューションを応用したロボットによる砂型の直接加工の実現で、多品種少量の中・小型鋳物の生産性を向上する新鋳造製造技術を開発しました。このように自動化の適用範囲を拡大することで、ソリューションの提供範囲を広げています。
自働化において重要となるワークの製造品質向上にも積極的に取り組んでおります。加工精度に対しては、精度確認を目的に活用される機内計測装置の校正作業を自動で行う機能を開発し、提供を開始しました。従来の手作業を無くすことができるだけでなく、計測誤差に伴う製品不良を未然に防止します。また、稼働の安定化に対して、ドリル加工時に工作機械が自動で加工不具合を防ぐ「AI加工診断機能(ドリル)」を開発し、提供を開始しました。Dream Site(ドリームサイト)で4年以上運用し、ガンドリルによる加工不具合の撲滅を実証すると共に、お客様によるモニタ活用で、機械・ワークの保護や工具費用の削減に貢献できることを実証しています。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度と高生産性」を追求し、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」の実現に必要な技術開発、新製品開発を行い、「最高のものづくりサービス」を提供することで、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。
当グループは、1963年(昭和38年)に自社製NC装置「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。
近年、社会における人々の志向の多様化、脱炭素社会への移行、安全保障など地政学的リスクへの対応など、時代が大きく転換しようとしている中で、ものづくり産業における生産革新、スマート化が進展しております。こうしたスマートなものづくりを支えるのが、スマートマシンであり、スマートマニュファクチャリング(スマートなものづくりの仕組み)であります。
スマートマシンを支えるNC装置では、お客様の「ものづくりDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を実現する新世代CNC「OSP-P500」を2023年5月より複合加工機、横形マシニングセンター、5軸制御のマシニングセンターに搭載を開始しました。迅速かつ正確なフロントローディングを実現するデジタルツイン、初心者でも簡単に加工が可能な革新的操作性、加えて高精度・高生産性と環境対応を両立する脱炭素ソリューション、セキュアな環境を実現する強固なセキュリティを備え、先進のデジタル技術や知能化・AI技術、脱炭素化技術により、幅広い産業の製造現場においてお客様の「ものづくりDX」の実現を支援し、社会課題解決と高精度・高生産性を両立したものづくりを推進します。
1) スマートマシンを支える新世代CNC「OSP-P500」での機能開発
1-1) 2つのデジタルツイン
実際の機械から収集した様々なデータを元に、限りなく実際の機械に近いシミュレーションを可能とするデジタルツイン技術を活用し、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するPC上でのデジタルツインと、実際の機械動作を行わず、機械動作を高速、高精度でシミュレーション可能な実際の機械上でのデジタルツインの2つのデジタルツインを開発しました。
PC上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」)では、実際の機械の軸動作だけでなく、ATC等の周辺装置などの様々な動作情報をNC装置(OSP-P500)により収集、PCに送出することにより、PC上においても精度の高い機械動作のシミュレーションを高速で実行することにより、より精度の高い工具パスや干渉チェックの検証、高精度の加工時間見積を可能にしました。
実際の機械上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンマシン」)では、実際の機械を制御するための制御データをそのままシミュレーションに用いることにより、加工を開始する前の作業者が設定したデータ設定ミスなど、今まで実際に動かしてみないとわからなかったことが事前に確認できるようになりました。
この2つのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」および「デジタルツイン オンマシン」)により、迅速かつ正確なフロントローディングや実際の機械上での作業確認時間の短縮を図り、生産性の向上を実現します。
1-2) スマートOSP操作
製造業での人手不足、熟練技能者の高齢化が叫ばれる中、NCプログラムを全く知らない初心者の方でも、簡単に加工を行えるようガイダンスにより作業者を支援する「スマートOSP操作」を開発しました。
「スマートOSP操作」の加工においては、加工に必要データを表形式に順に入力することにより、加工するための動作を定義でき、加工工程、工具、切削条件を自動決定し、直ぐに加工が行えます。加工をするための原点設定や工具の取付けなどの段取り作業についても、表形式で手順をガイダンスし、作業者の作業を支援します。
これにより、作業者は短期間で機械の操作や加工を習得できます。
1-3)セキュリティ機能
製造現場でのIoTが加速しています。工場内の機械や様々な機器がネットワークで繋がるだけでなく、グローバルに拡がる複数の工場間、あるいは、取引先を含めたサプライチェーンがネットワークで繋がっていきます。このような中で、サイバー攻撃により生産が停止したというニュースも耳にします。このようなサイバー攻撃のリスクから工作機械を守るために、工作機械での強固なセキュリティ機能を開発しました。
不正なアクセスや接続を防ぐオペレータ認証機能による「防衛」、被害を抑制するホワイトリスト方式のウィルス対策による「防御」、万が一に備える制御ソフトウェアとデータのバックアップ機能による「復旧」の3つの観点で、サイバー攻撃のリスクから お客様の大切な資産を守ります。
1-4) ECO suite plus
環境対応として、脱炭素社会の実現に向け、工作機械の使用によるCO2排出量(消費電力)を見える化すると共に、加工中は、必要な時に必要な分だけ周辺機器を運転するよう制御、加工完了後は、機械が自律的に不要な周辺機器をアイドルストップしたり、作業者の作業状況を自動で判別して周辺機器のアイドルストップと復帰を自動化するなど、様々な機能により当グループが提案する「Green Smart Machine」を支えています。
2) スマートファクトリー実現の取組み
次世代のものづくりが拡がる中、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」では、当グループが目指すスマートファクトリーとして、導入した自社製スマートマシンを活用し、全体最適の見える化工場、部品加工プロセスの制御周期の高速化によるスループット向上、ロボット・自動化システムによる自動化・省人化に取組んでいます。さらには、業務・製造プロセスのデジタル化を進め、デジタルマニュファクチャリングの実現に向けて、着実な成果を上げております。
加えて、この取組みを会社全体の業務プロセスに拡張し、当グループにおいて「ものづくりDX」として取組んでいます。
今後は、「ものづくりDX」ソリューションとして、上記の当グループ工場や社内の業務プロセスにおけるDXの取組みの成果やお客様のものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウや成功事例を、個人や個別組織の経験値として蓄積するだけでなく、デジタル化により全体で共有し、リードタイム短縮、生産性向上、品質向上に利活用し、変化する顧客や社会のニーズに迅速に適合できるように変革することをお客様と共に協創して取組み、お客様の価値創造を支援していきます。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC装置開発の基本理念を今後も継承すると共に、当グループの強みである機・電・情・知融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術、先進のAI活用技術の開発と強化を進め、スマートマシンの実現を推進すると共に、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」で実証されたデジタルマニュファクチャリングを、「ものづくりサービス」として提供し、世界中のお客様の価値創造の実現と社会に貢献できるように推進してまいります。