第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。
 
(1) 会社の経営の基本方針

NECグループは、NECグループが共通でもつ価値観であり、行動の原点として「NEC Way」 を規定しています。

 

「NEC Way」は、企業としてふるまう姿を示した「Purpose(存在意義)」「Principles(行動原則)」と、NECグループの一人ひとりの価値観・ふるまいを示した「Code of Values(行動基準)」「Code of Conduct(行動規範)」で構成されています。

 

「Purpose(存在意義)」はOrchestrating a brighter worldをもとに、豊かな人間社会に貢献する姿を示した宣言です。

 

 

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NECは、安全・安心・公平・効率という

社会価値を創造し、

誰もが人間性を十分に発揮できる

持続可能な社会の実現を目指します。

 

 

「Principles(行動原則)」は、NECグループとしての行動のもととなる原則であり、次の3つの心構えを示しています。

 

 

創業の精神「ベタープロダクツ・ベターサービス」

常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重

あくなきイノベーションの追求

 

 

「Code of Values(行動基準)」は、NECグループの一人ひとりが体現すべき日常的な考え方や行動の在り方を示した行動基準です。

 

 

視線は外向き、未来を見通すように

思考はシンプル、戦略を示せるように

心は情熱的、自らやり遂げるように

行動はスピード、チャンスを逃さぬように

組織はオープン、全員が成長できるように

 

 

「Code of Conduct(行動規範)」は、NECグループの一人ひとりに求められるインテグリティ(高い倫理観と誠実さ)についての具体的な指針であり、次の章から構成されています。

 

 

1.基本姿勢

2.人権尊重

3.環境保全

4.誠実な事業活動

5.会社財産・情報の管理

コンプライアンスに関する疑問・懸念相談、報告

 

 

NECグループは、「Purpose」を全うするため、「Principles」に基づき、中期経営計画をはじめとする中長期的な経営戦略を実践し、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化をはかっていきます。

また、NECグループの一人ひとりが、「Code of Values」に基づき、自らの働き方や組織のあり方を常に見直し、改善するとともに、高い倫理観と誠実さをもったよき企業人として「Code of Conduct」を遵守していきます。

社会や顧客が期待する価値は常に変化し続けていることから、NECグループがこれからも社会から必要とされる存在であり続けるためには、何が価値となるのかを常に考え、新たな価値を創造していく必要があります。NECグループは、情報通信技術とさまざまな知見・アイデアを融合することで、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現して未来に繋げてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

NECグループは、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。Purposeの具現化に向けて、戦略ではEBITDA成長率(*1)を、文化ではエンゲージメントスコアを、特に中核指標と位置づけています。加えて、売上収益、調整後営業利益(*2)、調整後当期利益(*3)、EBITDA(*4)、およびROIC(*5)を経営上の目標として掲げています。

*1 EBITDA成長率:2020年度から2025年度までの期間におけるEBITDAの年平均の成長率を意味します。

*2 調整後営業利益:営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。

*3 調整後当期利益:「親会社の所有者に帰属する調整後当期損益」の略称であり、親会社の所有者に帰属する当期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。

*4 EBITDA:売上総利益-販売管理費+減価償却費・償却費

*5 ROIC:(調整後営業利益-みなし法人税<30.5%>)÷(期末有利子負債+期末純資産<非支配株主持分含む>)

 

(3) 経営環境

当連結会計年度の経済環境は、欧米を中心としたインフレと金融引き締め政策、中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う影響により、世界経済は後半にかけて減速しました。日本経済は、資源価格上昇や急速な円安等で物価上昇が続いたものの、新型コロナウイルス感染症抑制に伴う行動制限緩和で国内需要中心に底堅く推移しました。

一方で、従来のIT市場におけるクラウドシフトへの流れに加えて、新しい生活様式への変化が進む中で社会全体のデジタル化が加速しました。欧州における先進的なデジタル・ガバメントの取り組みが世界的に拡大する中で、日本においてもデジタル庁が創設されるとともに、政府により「デジタル田園都市構想」が発表され、国および地方行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が一層進む見通しです。また、環境問題がさらに深刻化する中で、持続可能な社会の実現へ向けて企業の貢献が求められており、テクノロジーの役割が増大しています。

このような経営環境のもと、NECグループは、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げる「2025中期経営計画」を策定し、高いモチベーションをもって、日本を含むグローバルでの事業フォーカスと国内IT事業のトランスフォーメーションなどによる成長の実現や、サステナビリティ経営の基盤強化等を目指します。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

NECグループは、2021年5月に発表した「2025中期経営計画」に基づき、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げ、その実現に向けて、役員・社員一丸となって取り組んでいます。

 

① Purpose

NECグループは、「NEC Way」において、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現をPurposeとして掲げています。

NECグループは社会価値を創造する企業として、社会や顧客との「未来の共感」を創ることで、その実現を目指します。そのためNECグループは、2030年に目指すべき未来像を「NEC 2030VISION」として策定しました。

 

NEC 2030VISION(目指すべき未来像)

 

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また、Purposeの実現に向け、コーポレート・ガバナンスについては、指名委員会等設置会社への移行を契機として監督と執行の明確な分離をはかります。これにより、取締役会の監督機能を強化するとともに、業務執行に関しては取締役会から執行役に大幅な権限委譲を行うことで、意思決定と実行の迅速化をはかります。それにあわせ、新たに設置したCRO(チーフリスクオフィサー)主導での全社横断的リスクマネジメント体制の強化、経営会議を中心とした執行側の会議体の再整備による意思決定の質の高度化、内部監査機能の強化など執行側のガバナンス強化を推進します。

 

② 戦略

NECグループの強みである技術力を顧客価値に転換し、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」により成長を実現します。

「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」では、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンス事業について、利益率の高いソフトウェア事業へのシフトとオフショアの適用範囲の拡大により収益性の向上を実現するとともに、NECグループ内におけるグローバルなシナジーの発揮による事業成長に取り組みます。グローバル5G事業においては、国内外の基地局に関する商用商談の開拓を進めるとともに、自社製ソフトウェア・サービスの増強ならびに事業規模に応じた販売体制および開発規模の最適化により収益性の向上を目指します。

「国内IT事業のトランスフォーメーション」では、業種横断の共通商材の整備により、DX事業の共通基盤である「NECデジタルプラットフォーム」をさらに強化し収益性の向上を実現します。また、経営課題の解決や社会価値の共創を先進的な顧客とともに実現する戦略パートナーシッププログラムをさらに推進するとともに、スマートシティなど社会の変革を後押しするプロジェクトを政策と連動しながら取り組むことで、新たな事業機会を創出します。

「次の柱となる成長事業の創造」では、学術・研究機関を含む社外との連携をさらに加速し、AI、ヘルスケア・ライフサイエンス事業およびカーボンニュートラル関連事業での事業開発活動を進めます。

従来から当社事業を構成してきたベース事業においては、利益率が低い事業についてモニタリングを強化することで収益性の改善をはかるとともに、改善計画が未達成となった場合には事業撤退を含めた経営判断を行うなどして、各事業における堅調な成長と競合他社を上回る利益率の実現を目指します。

これらの成長戦略の実行の裏付けとなる財務力については、持続的なEBITDAの成長に加え、保有資産の最適化を進めることでキャッシュ・フローを創出します。それらを原資に事業成長を重視したキャピタル・アロケーションを実行するとともに、強固な財務基盤の維持・強化をはかり、今後の成長投資を支えます。

また、NECグループと社会のサステナブルな成長を支える非財務基盤の強化に向け、ESG視点の経営優先テーマである「マテリアリティ」として、気候変動、セキュリティ、AIと人権、多様な人材、コーポレート・ガバナンス、サプライチェーンサステナビリティおよびコンプライアンスの7つを特定しています。

これに加え、成長と機会創出に向けて取り組むテーマをマテリアリティとして示すことを予定しています。マテリアリティの実践を通じて社会・環境価値および経済価値の大きな事業を推進するとともに、主要なESGインデックスへの継続的な組み入れを目指します。

 

 

 

③ 文化

Purposeの実現には、高いモチベーションをもつ社員の存在が不可欠であることから、社員に選ばれる会社(Employer of Choice)への変革を目指しています。2023年度は、戦略を実行し文化を作る「人への投資」を重視し、組織と人材の力を最大限に活かすための制度改革や環境整備を行い、エンゲージメントの向上と人的資本経営の実現を目指します。特に、上位層に導入したジョブ型人材マネジメントの定着、社内人材公募制度の拡充による人材流動性の向上、有望人材への投資による次世代リーダー育成等に取り組み、事業戦略にタイムリーに連動した適時・適所・適材の人材配置の実行に取り組みます。また、イノベーションの源泉であるダイバーシティについてもさらなる推進をはかります。

 

上記の各施策を通じて、2025年度に、EBITDA成長率9%およびエンゲージメントスコア50%、ならびに、売上収益3兆5,000億円、調整後営業利益3,000億円(利益率8.6%)、調整後当期利益1,850億円(利益率5.3%)、EBITDA4,500億円(利益率12.9%)、ROIC6.5%の達成を目指します。

NECグループは、Purposeの実現に向け、「2025中期経営計画」の達成および「NEC 2030VISION」で掲げた未来像の共創をとおして、国際連合の定める「SDGs」の達成に貢献します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

NECグループは、サステナビリティを巡る課題が、NECグループの持続可能な発展や企業価値向上に対するリスクとなるだけでなく、事業機会の創出にもつながる重要な要素だと考えていることから、「NEC Way」に基づき、①事業をとおした社会課題解決への貢献、②リスク管理・コンプライアンスの徹底、③ステークホルダー・コミュニケーションの推進を基本方針として掲げサステナビリティ経営を推進しています。

当社は、サステナビリティ経営におけるESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」を、

グローバルなガイドラインを参考に、さまざまな分野の有識者との対話などをとおして、自社と社会の双方への影響を考慮し、リスクと機会の観点で特定しています。「2025中期経営計画」においては、企業と社会のサステナブルな成長を支える非財務(ESG/将来財務)基盤の強化に向けて取り組むべきテーマとしてマテリアリティを7つ特定し、取り組みを進めてきました。これに加え、成長と機会創出に向けて取り組むテーマをマテリアリティとして新たに示すことを予定しています。

また、NECグループは、2017年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同を表明し、持続可能な社会に向けてNECグループが目指すべき方向と長期目標を定めています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNECグループが判断したものです。

 

(1)ガバナンスおよびリスク管理

 

① ガバナンス

 当社は、サステナビリティ推進役員であるCFO(チーフフィナンシャルオフィサー)およびサステナビリティ推進に携わる担当役員(CHRO(チーフヒューマンリソーシズオフィサー)、CLCO

(チーフリーガル&コンプライアンスオフィサー)、CSCO(チーフサプライチェーンオフィ

サー))の主導のもと、サステナビリティ経営推進のための重要事項について、議題の内容により経営会議、事業戦略会議またはリスク・コンプライアンス委員会で随時議論のうえ、決定しています。加えて、サステナビリティ推進役員およびサステナビリティ推進に携わる担当役員が社外有識者に諮問するサステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ(以下「SAコミッティ」という。)を設置し、当社のサステナビリティ推進に関する取り組みについて、最新動向を踏まえるとともに客観性と専門性をもった議論を行うことで、変化が急速で不確実性が高い時代における自社の方向性を確認し、取り組みの改善につなげていきます。

 取締役会は、サステナビリティ推進役員およびサステナビリティ推進に携わる担当役員から、これらの会議体やSAコミッティで討議または承認された事項の報告を受け、リスクへの対応状況を監督するとともに、サステナビリティを巡る課題への対応について、事業機会創出の観点を含め、討議しています。

 

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 上記のサステナビリティ経営推進体制と併せて、NECグループでは環境経営のための体制を整備しており、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温室効果ガスの排出を削減する緩和策だけでなく、気候変動リスクに備えてその被害を未然に防止し、または最小限に抑えるための適応策の両面から、一貫した環境経営を推進しています。

 環境経営の実践における各組織の役割、責任および権限を特定するための環境管理規程のもと、各ビジネスユニットに設置された環境経営委員会やテーマ別専門部会で討議された事項を、重要性に応じて、各ビジネスユニットの環境推進責任者が一堂に会する環境経営推進会議でも討議しています。また各ビジネスユニットは、各部門や国内外の関係会社における具体的な取り組みにつながる体制を整えており、事業戦略会議や経営会議、取締役会で策定された環境戦略をもとに具体的な活動計画を立案および実践しています。

 さらに、気候変動を含めた環境に関わる重要事項が事業執行に与える影響や戦略に関しては、事業戦略会議で討議し、NECグループの事業に対して特に著しい影響を及ぼす議題については、経営会議や取締役会へ付議しています。

 

② リスク管理

 NECグループでは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、2023年4月1日付で設置したCRO(チーフリスクオフィサー)主導のもと、NECグループの事業に関連する社内外のリスクを的確に把握し対応するための全社横断的なリスク管理体制を整備しています。

 マテリアリティに関連する「部品等の調達」、「人材の確保」、「内部統制」、「環境規制等」、「情報管理」、「人権の尊重」、「自然災害や火災等の災害」等のリスクは、サステナビリティ経営推進体制による管理を通じて影響評価を行い、潜在的および顕在的リスクに対する対応の進捗、成果や課題の把握および今後の計画などを検討することにより、リスクの低減や未然防止活動を行っています。また、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 戦略並びに指標及び目標のうち重要なもの ②NECグループの気候変動に関する戦略並びに指標及び目標」に挙げている「移行リスク」や「物理リスク」等の気候変動への対応に関するリスクは、環境経営推進体制による管理を通じてリスク評価を行い、潜在的および顕在的リスクに対する対応の進捗、成果や課題の把握および今後の計画などを検討することにより、リスクの低減や未然防止活動を行っています。

 

(2)戦略並びに指標及び目標のうち重要なもの

① 当社のマテリアリティ並びに指標及び実績

 当社では、経営会議、事業戦略会議、リスク・コンプライアンス委員会および取締役会で審議のうえ、マテリアリティを決定しています。マテリアリティは、外部環境変化や財務・非財務指標間の相関・因果分析等を踏まえ、事業戦略の修正に応じて適宜見直しを行うことで、実効性のある取り組み目標としています。

 「2025中期経営計画」で取り組むマテリアリティ、マテリアリティの達成度合いを図るための指標である2025年度KPIおよび2022年度実績は次のとおりです。

 

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・「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」の実績値は、本有価証券報告書提出日現在は集計中のため、サステナビリティ情報を掲載した当社のウェブサイトや今後発行予定の「ESGデータブック2023」において報告予定です(「ESGデータブック2023」は、2023年度上期中に当社ウェブサイトで公表予定。)。

・「気候変動を核とした環境課題への対応」については、2040年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年度KPIを2023年度から引き上げ、「Scope1およびScope2におけるCO2排出量を33.6%削減(2017年度比)」から「Scope1およびScope2におけるCO2排出量を25.0%削減(2020年度比)」に再設定しました。

・「ICTの可能性を最大限に広げるセキュリティ」については、各種取り組みを強化した結果、2022年度に2025年度KPIを達成しましたが、さらなる信頼の獲得に向け、2025年度KPIを2023年度から引き上げ、「国際認定資格取得者数2倍(2020年度比)」から「同3倍(2020年度比)」に再設定しました。

・「サプライチェーンサステナビリティ」については、2022年度末時点で83%となり2025年度KPIである75%を達成しました。本比率は調達金額ベースであるため変動しますが、2025年度末時点においても達成できるよう取り組みを継続します。

 

② NECグループの気候変動に関する戦略並びに指標及び目標

 当社ではマテリアリティの一つとして「気候変動(脱炭素)を核とした環境問題への対応」を特定しており、事業におけるリスクの低減と事業を通じた社会貢献という両面から様々な活動に取り組んでいます。また、NECグループは、気候変動に関する戦略として、不確実な未来への対応力を高めるため、複数のシナリオで将来起こりうる社会を予想し、対応策を検討しています。気候変動に関する政府間パネル等の公開情報やICTの動向および社会情勢をもとに、サプライチェーン全体における中長期的なシナリオ分析を行い、次のとおり事業のリスクと機会を認識しています。

 

リスク

内容

対策

移行リスク

カーボンプライシングによるコスト増

SBT1.5℃(*1)達成に向けた効率化の徹底と再生可能エネルギーの活用拡大

物理リスク

気象災害(洪水、土砂崩れ、水不足など)に伴うサプライチェーンの寸断、電気・ガス・水道などライフラインの長期間にわたる停止

サプライチェーン全体のリスク評価と気象災害を含む事業継続計画(以下「BCP」という。)対策、データセンターでの発電設備強化

 

 

 

機会

内容

機会創出と拡大

移行リスク対策への価値提供

(緩和)

CO2排出の少ない交通インフラ整備

AIおよびIoT(Internet of Things)を活用した物流可視化・ルート最適化、EV・PHV充電クラウドなど

再生可能エネルギーの活用拡大支援

仮想発電所(VPP)、電力需給管理、RA事業化(需給調整市場への参画)、xEMS(エネルギーマネジメントシステム)、再生可能エネルギーを活用したデータセンターサービス提供など

エネルギーの無駄の削減支援

DXによるプロセス改革(業務自動化、スマートファクトリおよび需給最適化)、データ

センターの省エネ化を支える製品・技術(相変化冷却、新冷媒)など

物理リスク対策への価値提供

(適応)

気象災害の増加への備え

AIおよびIoT、画像解析などを活用した災害発生前の予兆検知、河川氾濫シミュレーション、避難支援など

防災・減災による将来のCO2抑制量を可視化し、金融商品化することで防災・減災対策への投資を促進する仕組みを検討

森林火災の増加への備え

森林火災監視・即応システム、人工衛星による災害監視など

農業生産適地の変化への備え

影響予測シミュレーション、農業ICTソリュー ションなど

感染症の拡大への備え

感染症対策ソリューション、地球規模感染症発生時の物流情報管理プラットフォーム、リモートワークによるワークスタイル変革、遠隔診療支援、教育クラウドなど

 

 当社は、2017年に策定した「2050年を見据えた気候変動対策指針」に基づき、2050年までに自社の事業活動に伴うCO2排出量(Scope1およびScope2(*2))を「実質ゼロ」とすることを目指していましたが、2022年9月、サプライチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにゼロとすることをめざすイニシアティブ「The Climate Pledge」(TCP)に参加し、従来計画比で10年前倒しとなる2040年カーボンニュートラルを宣言して目標を強化し、マテリアリティの2025年度KPIを「Scope1およびScope2におけるCO2排出量を25.0%削減(2020年度比)」に見直しました(「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 戦略並びに指標及び目標のうち重要なもの ①当社のマテリアリティ並びに指標及び実績」参照)。

 また、当社は、2030年までに「Scope1およびScope2において55%削減(2017年度比)」、「Scope3のカテゴリ1(購入した製品・サービス)、3(Scope1およびScope2に含まれない燃料、エネルギー活動)および11(販売した製品の使用)において33%削減(2017年度比)」という目標を掲げ、2021年5月にはSBTイニシアティブ(*3)からSBT1.5℃の認定を受けました。さらに、同年9月には、「Business Ambition for 1.5℃(BA1.5℃)」に署名し、2050年までにScope3(*2)を含むサプライチェーン全体からのCO2排出量実質ゼロを宣言しました。

 加えて、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際イニシアティブである「RE100」(*4)に加盟し、再生可能エネルギーの利用拡大を進めており、既に当社本社ビルやNEC Cloud IaaSのデータセンターで使用する電力は100%再生可能エネルギー由来に置き換えています。

 

 NECグループの気候変動の取り組みの詳細は、以下の当社ウェブサイトに掲載しています。

 なお、当該ウェブサイトの更新予定日は未定ですが、内容に更新があれば遅滞なく更新します。

 https://jpn.nec.com/csr/ja/eco/risk.html

 

*1 SBT1.5℃

Science Based Targetsの略。パリ協定が求める水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標。

*2 Scope1:事業者が所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

   Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

   Scope3:Scope1およびScope2以外の事業者の関連する他社の温室効果ガス排出

*3 SBTイニシアティブ

企業に対し、科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求めるため、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)、国際連合グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)および世界自然保護基金(WWF)の4団体により設立されたイニシアティブ。

*4 RE100

企業が自ら事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。

 

(3) 人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略

 当社の人的資本に関する戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針を含みます。)は、以下のとおりです。

 

① HR方針

 NECグループは、最大の経営資源を「人」と位置づけ、組織と人材の力を最大限に活かすための制度改革や環境整備を「人への投資」として進めてきました。2019年には、HR(Human Resources)方針「挑戦する人の、NEC。」を策定し、人材一人ひとりへの多様な挑戦・成長機会の提供やフェアな評価、挑戦する従業員がベストを尽くせるよう環境や風土の変革を進めています。

 

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(イ)多様な挑戦機会の提供

 社内人材公募制度(NEC Growth Careers)の拡充に取り組んでいます。機械学習を用いたAIレコメンド機能を導入しており、NECグループ内の人材の流動性を促進することによって、個人と組織が互いに選び選ばれる対等な関係を目指しています。そのほか、個人のキャリア形成を支援するNECライフキャリア㈱を設立し、年間5,000名以上にキャリアデザインワークショップを実施するなど社員が自律的にキャリアを形成するための施策を実施しています。また、年間1,000名以上の社員にリスキリングの機会も提供しています。

 

(ロ)限りない成長機会

 さらなる高みを目指す姿勢を支援し、広い視野と高い視座からビジネスを牽引するリーダーを育成するプログラム「次世代リーダーシップ育成」を実行し、有望人材に集中的に投資を行っています。

 

(ハ)フェアな評価の実現および次へ繋がるリワード

 年齢、性別などにかかわらず事業への貢献に応じた評価および報酬の制度を確立し、各種法令、労働協約および社内規程に基づき役割と成果に応じた適正な賃金、賞与を支給しています。

 

(ニ)従業員がベストを尽くせる環境、文化の実現

 働きやすさだけでなく働きがいを持って高いパフォーマンスを発揮できる環境を整備すべく、リモートとリアルを最適に組み合わせるハイブリッドワークの実践、社内コワーキングスペースや社外サテライトオフィスの拡充といったワークプレイスの整備、コアタイムのないフレックスタイム制度の導入などを実現し、ワークスタイルの革新をはかっています。また、よりよいコンディション(健康状態)のもと、一人ひとりが心身ともにいきいきと働くことで自己実現を果たし、ひいてはNECグループの社会価値創造につなげるべく、2019年度に「NECグループ健康宣言」を制定しました。健康診断結果データを活用し、AIが従業員の生活習慣改善を提案する「健診結果予測シミュレーション」の活用、ストレス制御やコミュニケーション能力を高めるセルフケア研修などさまざまな健康推進施策を行っています。このような健康経営活動が評価され、当社は「健康経営銘柄2022」の認定を受けました(2023年度は「健康経営優良法人2023(ホワイト500)」に認定されました。)。さらに、仕事と育児の両立支援に力を入れており、当社は法制化以前から育児・介護休職制度を導入するとともに、育児休業、育児短時間勤務制度、福利厚生制度などを整備し、管理職や育児休職取得者向け研修などを実施しています。また、NECグループの複数の会社は、「次世代認定マーク」(愛称「くるみん」)を取得しており、当社を含む複数の会社は「プラチナくるみん」認定を受けています。

 

② 「2025中期経営計画」の実現

 NECグループは、「HR方針」に基づく人と組織の改革を「2025中期経営計画」においてさらに推進し、多様なタレント人材の活躍、働き方マインドセット改革、適時適所適材の実現およびタレントマネジメントという4つの柱で「人の変革」を進め、社員に選ばれる会社(Employer of Choice)への変革を目指しています。

 

(イ)多様なタレント人材の活躍

 多様な人材が活躍し、多様な視点やアイデアが尊重されるカルチャーを醸成することは、

イノベーションの創出のために必要であり、重要な経営戦略の一環であると考えています。そのための施策として、グローバルな人材活用、女性の活躍推進、中途採用者の積極的な登用、障がい者の雇用促進および性的マイノリティに対する理解と支援の促進等に取り組んでいます。加えて、このようなインクルージョン&ダイバーシティへの取り組みは、「NEC Way」におけるPrinciplesで掲げる「人権の尊重」の実践に位置付けています。

 

(ロ)働き方マインドセット改革

 リモートワークを核とした「Smart Work」からパフォーマンスを最大化し、働きがいを追求する「Smart Work 2.0」にシフトしています。ロケーションフリーを原則として、従業員一人ひとりの働く時間と場所の自律的なデザインを後押しし、個人やチームがより高い生産性を発揮することができる勤務制度や仕組みを提供しています。

 

(ハ)適時適所適材の実現

 高速に変化を続ける市場で勝ち抜くために、ビジネス戦略とその実行体制をデザインし、各ポジションに社内外のベストな人材を起用し、迅速に戦略実行できる体制を目指します。

 当社は、2018年からジョブ型人材マネジメントのエコシステムとして、業績評価制度の仕組みと運用の見直しを開始しました。2023年4月から新たなジョブグレード制度および報酬制度を統括部長以上に適用し、2024年4月から全従業員向けに導入することを目指しています。また、社内人材公募制度(NEC Growth Careers)の拡充もあわせることで、従業員の意識を組織主導のキャリア形成から脱却させ、キャリアオーナーシップの個人へのシフトを加速します。

 

(ニ)タレントマネジメント

 「2025中期経営計画」に掲げる「国内IT事業のトランスフォーメーション」実現のため、社会価値を創造・実装し続けるDX人材(*1)を10,000名確保する計画を掲げ、 DX人材育成の強化を進めています。また、「次世代リーダーシップ育成」として、有望人材をリストアップし、各種の育成プログラムを提供するとともに、職位にかかわらずタフで多様な役割へのアサインメントをとおして成長のスピードを加速する取り組みを行っています。

 

*1 当社が各定義および要件を定めるコンサルタント、データサイエンティストおよびサイバーセキュリティ人材等を指しており、当社および次の連結子会社等を対象としています。
NECプラットフォームズ㈱、NECソリューションイノベータ㈱、日本電気通信システム㈱、NECネクサソリューションズ㈱、NECマネジメントパートナー㈱、NECネットワーク・センサ㈱、NECスペーステクノロジー㈱、日本電気航空宇宙システム㈱、NECライフキャリア㈱、㈱日本電気特許技術情報センター、NEC企業年金基金

 

(4) 人的資本(人材の多様性を含む)に関する指標及び目標

 上記「(3)人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略」に記載の戦略および方針に関する指標および目標は、以下のとおりです。

 

① 社員に選ばれる会社(Employer of Choice)への変革

 「NEC Way」のもとに多様な人材が集い、イノベーションを追求する会社、社員に選ばれる会社を目指し、2025年度にエンゲージメントスコア(*1)50%を達成することを目標として掲げています。2022年度のエンゲージメントスコアは36%です。

 

② 多様なタレント人材の活躍

 女性や外国人従業員に代表される多様な人材の積極的な登用と計画的な育成により、イノベー

ションの源泉であるダイバーシティを加速させます。2025年度末までに達成を目指す目標および2022年度末の実績(*2)は、次のとおりです。

区分

2025年度末目標

2022年度末実績

役員(*3)に占める女性または外国人の割合(%)

20

9.4

全管理職に占める女性の割合(%)(*4)

20

8.0

 

③ タレントマネジメント

 育成と獲得により、2025年度にDX人材を10,000名とすることを目標として掲げています。2023年3月末日現在、DX人材は8,163名在籍しています。

 

*1 One NECサーベイ(キンセントリック社によるグローバルサーベイを利用)に参画している当社および連結子会社(2022年度は49社)における調査結果に基づきます。
目標値であるエンゲージメントスコア50%は、「2025中期経営計画」を策定した2021年5月時点で、グローバル企業の上位25%タイルに相当します。

*2 当社単体の数値です。

*3 2025年度末目標における役員とは、2026年3月末日時点の取締役、執行役、Corporate SEVP、Corporate EVPおよびCorporate SVP(執行役、Corporate SEVP、Corporate EVPおよびCorporate SVP については2025年度内に決定された2026年4月1日付異動を含みます。)を指します。また、2022年度末実績における役員とは、2023年3月末日時点の取締役、監査役および執行役員を指します。

*4 全管理職に占める女性の割合は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。また、2025年度末目標は、2025年度内に決定された2026年4月1日付異動を含みます。

 

3【事業等のリスク】

 NECグループでは、NECグループの事業に関連する社内外のリスクを的確に把握し対応するための全社横断的なリスク管理体制を整備しています。

 具体的には、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、リスク管理に関する活動方針、NECグループとして対策を講ずべき重点対策リスクの選定・対応方針のほか、期中のリスク変動により全社横断対応が必要となったリスクの対応、その他の全社リスク管理に関する重要な事項を審議し、経営会議および取締役会に定期的に報告しています。また、NECグループとして認識しておくべきリスクを網羅的にとりまとめたリスク一覧をもとに、影響度・切迫性等の共通基準で各リスクを評価するリスクアセスメントを実施し、リスクの優先順位を可視化したリスクマップを作成しています。

 さらに、NECグループ全体のリスクを俯瞰して一元的・横断的に対応し、損失に繋がる可能性をコントロールする体制を強化するため、2023年4月1日付で新たにCRO(チーフリスクオフィサー)を設置しました。CROはリスク・コンプライアンス委員会の委員長を務め、日々変化する社会・事業環境の中で多様化・複雑化するリスクを感知・分析し、インパクトを評価するとともに、リスクマップにより対応の優先付けをした上で、各リスクを所管するチーフオフィサーと密に連携することで全社横断的なリスクマネジメントを主導します。

 

 本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者がNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。

 

(1) 経済環境や金融市場の動向に関するリスク

① 経済動向による影響

   NECグループの事業は、国内市場に大きく依存しています。NECグループの売上収益のうち国内顧客に対する売上収益の構成比は、当連結会計年度において連結売上収益の73.0%を占めています。今後の日本における経済情勢または国内顧客の業績および財政状態の悪化は、NECグループの業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業は、アジア、米国、欧州を含むNECグループが事業を行う国や地域の経済動向によっても影響を受けます。地政学的リスクおよび米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦は世界経済の不確実性を高めており、また、保護主義的な通商政策の広がりは世界経済の成長の鈍化の一因となる可能性もあります。下記「④新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行による悪影響」に記載する新型コロナウイルス感染症その他の感染症が流行した場合やロシアによるウクライナ侵攻が長期化した場合にも、世界経済情勢に悪影響を与える可能性があります。さらに、かかる地政学的リスクや経済摩擦が、NECグループが事業を行う国や地域において顕在化した場合には、NECグループの事業の遂行に悪影響を与える可能性があります。

   また、国内外の政府・政府系機関または地方公共団体が、経済上の理由などにより、政策や予算の方針を変更した場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業計画および業績予想は、NECグループが属する市場における経済活動の予測に基づき作成していますが、上記のような一般的な国内外の経済の不透明さによって市場における経済活動の予測も困難となっており、NECグループの将来の収益および必要経費についても、その予測が困難となっています。計画編成または業績予想を行う際に予測を見誤った場合、NECグループは変化する市場環境に適切に対応できない可能性があります。

 

② 為替相場および金利の変動

   NECグループは、米ドル/円相場やユーロ/円相場を中心に外国為替相場の変動リスクにさらされています。円建てで表示されている当社の連結財務諸表は、外国為替相場変動の影響を受けます。為替変動は、外貨建取引から発生する株式投資、資産および負債の日本円換算額ならびに外貨建てで取引されている製品・サービスの原価および売上収益に影響を与えます。2023年3月31日現在における、NECグループの営業債権、営業債務および為替予約等についてのエクスポージャー純額は米ドル建てで213百万米ドルの債権ポジションであり、同日において円が米ドルに対して1%円安となった場合、税引前利益は284百万円増加します。NECグループは、為替リスクを軽減し、またこれを回避するために外貨建て営業債権債務の相殺や先物為替予約、通貨オプションを利用するなど様々な手段を講じていますが、為替相場の変動はNECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。特定の外国為替の変動は、競合会社に有利に影響する一方で、NECグループには悪影響を与える場合もあります。

   また、NECグループは、金利変動リスクにもさらされており、かかるリスクは、NECグループの事業運営に係る経費全体ならびに資産および負債の額、特に長期借入金に伴う負担に影響を与える可能性があります。2023年3月31日現在における、NECグループの変動金利付の長期借入金残高は、2億円です。NECグループは、このような金利変動リスクを回避するために金利スワップ取引を利用するなど様々な手段を講じていますが、かかる金利変動リスクは、NECグループの事業運営に係る経費の増加、金融資産の価値の下落または負債の増大を招く可能性があります。

 

③ 市況変動

   NECグループの製品およびサービスの需要は、国内外におけるICT市場の市況変動の影響を受ける可能性があります。ICT市場の市況が低迷した場合の他にも、既存の製品・サービスの陳腐化、過剰在庫、コスト競争力の低下により、NECグループの製品およびサービスの需要は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの市場は不安定な性質を有しており、回復したとしても将来再び低迷する可能性があり、その結果、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行による悪影響

   新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行または拡大は、NECグループ、NECグループの仕入先および顧客が事業を行う地域において、不安定な社会、経済、財政および労働環境を招く可能性があります。これらがNECグループ、NECグループの仕入先および顧客の事業に与える影響の程度は、当該感染症の収束時期や各国政府の対応(渡航制限や外出自粛要請などの感染予防および感染拡大対策を含む。)などによるため、極めて不透明であり、予測することが困難です。NECグループの顧客である政府・政府系機関、地方公共団体および企業が感染拡大等の事態への対応に注力した場合、これらの顧客からのNECグループの製品およびサービスに対する受注が従前の想定を下回る可能性があります。新型コロナウイルス感染症については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた経済活動制限が緩和されたこと等により国内経済に復調が見られる可能性はあるものの、新型コロナウイルス感染症の変異株を含む今後の感染症の拡大状況、ワクチンの効果・接種率の推移、医療体制の逼迫状況といったNECグループがコントロールできない事情や今後の事態の進展次第では、国内の経済活動が期待されたとおりに回復する保証はなく、NECグループの事業および業績が悪影響を受ける可能性があります。

   NECグループは、ハイブリッドワークを強化した「Smart Work 2.0」のもと、感染予防対策を兼ねて相当数の従業員の在宅勤務を実施していますが、それによって不正なアクセスまたはサイバー攻撃を受ける危険性や、NECグループや顧客その他の第三者に関する個人情報または機密情報が流出する危険性が増大するおそれがあるほか、内部統制システムが新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準で有効に機能しない可能性もあります。現在、NECグループの生産施設への重大な悪影響やサプライチェーンの著しい混乱は生じていませんが、今後の感染症の拡大状況やそれに応じた各国政府による感染対策などによっては、顧客や仕入先の工場閉鎖、操業停止および財政状態の悪化が生じる可能性があり、また、調達物品の価格上昇や供給遅延、確保が困難となる状況が生じる可能性もあります。新型コロナウイルス感染症を含む感染症の流行または拡大がNECグループの事業活動へ与える悪影響については、その全体像および継続期間を予測することはできません。

   また、新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行または拡大による影響の程度やその収束時期によっては、のれんその他の無形資産や使用権資産などNECグループの保有資産の減損のほか、主要な保有株式の価値の減少が生じ、NECグループの財政状態に悪影響を与える可能性があります。2023年3月31日現在におけるNECグループのその他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は1,407億円ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響によりこれらの価値が減少する可能性があります。

   新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行または拡大およびその感染予防対策がNECグループの事業、業績および財政状態に与える悪影響について、その全体像を現時点で確実性をもって予測することはできません。

 

(2) NECグループの経営方針に関するリスク

① 中期経営計画

   NECグループは、2021年5月に、2026年3月期を最終事業年度とする「2025中期経営計画」を発表し、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。

   NECグループは、「2025中期経営計画」の実現に向けて、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」に記載した取組みを実行しているところですが、それらの取組みを通じて「2025中期経営計画」で掲げた目標を達成できるか否かについては、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスやグローバル5Gなどにおいて事業拡大を企図している市場が、NECグループが想定した規模に成長しないリスク、当該市場の成長が想定したスピードを下回るリスク、当該市場においてNECグループが獲得するシェアが想定を下回るリスク、「2025中期経営計画」において計画している戦略的費用の投入によっても期待した効果が発現しないリスクなど、本「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載した事項を含む様々なリスク要因により影響を受けるため、それらの取組みが計画どおりに進捗せず、「2025中期経営計画」で掲げた目標について、当初計画した期間内に達成できない、または全く達成できない可能性があります。

 

② 財務および収益の変動

   NECグループの各四半期または各年度の経営成績は、必ずしも将来において期待される業績の指標とはなりません。NECグループの業績は、新技術・新製品・新サービスの導入や市場での受容、技術・インフラの開発または事業化の遅延・失敗、技術進歩や広く利用されているソフトウェアのサポートサービスの終了および技術投資のサイクル、製品原価の変動とプロダクト・ミックス、顧客からの受注・納入時期に係る季節性、顧客の事業が成功するか否かにより影響を受け、また、製品・サービスごとに異なる顧客の注文の規模や時期、買収した事業や獲得した技術の影響、買収により期待するシナジーを実現する能力、固定費等を含む種々の要因により四半期ごと、年度ごとに変動しており、今後も変動します。

   NECグループの業績に影響を与え、特定の期間の業績予想を困難にする、NECグループがコントロールできないその他の動向や外部要因には、次のようなものがあります。

   (a) 提供する製品・サービスを取り巻く事業環境の悪化

   (b) ICT市場ならびに日本経済および世界経済の全般的な状況の変化

   (c) 競業会社による画期的な技術革新等により生じる予期しない市場環境の変化

   (d) 財政支出の規模、時期を含む政府のICTインフラの開発、展開に関する決定

   (e) 顧客による設備・ICT投資の規模や時期

   (f) 顧客の在庫管理方針

   (g) ICT業界に影響を与える法令、政府規制、政策等の変更

   (h) 資本市場の状況および顧客や取引先による資金調達力または設備投資能力の悪化

   (i) 顧客や取引先の信用状態の悪化等

   これらの動向や要因は、NECグループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

③ 企業買収・事業撤退等

   NECグループは、事業拡大や競争力強化などを目的として、企業買収、事業統合および事業再編を実施しており、例えば、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスを推進する戦略の一環として、2018年1月に英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)、2019年2月にデンマークのケーエムディ・ホールディング社、また、2020年12月にスイスのアバロク・グループ社をそれぞれ買収しました。NECグループは、今後も、「2025中期経営計画」で掲げた成長戦略の一環として、適切な企業買収等を検討していきます。しかしながら、NECグループの企業買収等の戦略に合致する適切な対象企業を見つけることができない可能性があり、また、適切な対象企業を見つけることができた場合であっても、次のような要因により、NECグループの戦略上の目標達成能力に悪影響を与える可能性があります。

   (a) かかる企業買収、事業統合および事業再編による成長機会の確保、財務体質の改善、投資効果やシナジー効果、期待されるその他の利益が、期待していた期間中に実現されないかまたは全く達成されない可能性

 

   (b) かかる企業買収、事業統合および事業再編に適用される規制・関係法令や契約上またはその他の条件により、計画された企業買収、事業統合および事業再編が予定どおりに完了しないかまたは全く実行されない可能性

   (c) かかる企業買収、事業統合および事業再編の過程において、海外市場を中心として、人事・情報システム、経営管理システム、および顧客向け製品・サービスの整理または統合の遅れや、想定外の費用および負担が発生するなど、予想を上回る問題が発生する可能性

   (d) 買収等の対象企業において、事業の継続・成長に必要な経営陣の確保や中長期的にNECグループとして事業を遂行するための体制の移行に支障が生じる可能性

   (e) 顧客が、費用やリスク管理等のために仕入先の分散を望む場合に、買収、統合または再編後の会社が既存の顧客および戦略的パートナーを維持できない可能性

   (f) 買収、統合または再編後の会社がNECグループの追加の財務支援を必要とする可能性

   (g) 経営陣および主要な従業員等が、企業買収、事業統合または事業再編に必要な業務に割かれることにより、NECグループの既存の主要事業の収益の増加およびコスト削減に注力できない可能性

   (h) かかる企業買収や事業再編から発生するのれんおよびその他の無形資産が減損の対象となる可能性

   (i) 買収、統合または再編後の会社への出資について、評価損が発生する可能性

   (j) その他、かかる企業買収、事業統合および事業再編が予期せぬ負の結果をもたらす可能性

   これらを含むいずれのリスクも、NECグループの事業、業績、財政状態および株価に悪影響を与える可能性があります。

   一方で、NECグループは、近年、事業戦略に整合しない事業や低収益事業のうちの一部について撤退・縮小を実施しています。しかしながら、市場環境や買手先候補の意向等により、NECグループが希望する時期・条件での事業の撤退・縮小が実現できる保証はなく、その事業戦略の実現のために望ましい条件での事業の撤退・縮小が行えない場合、NECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 戦略的パートナーとの提携関係

   NECグループは、新技術および新製品の開発ならびに既存製品および新製品の製造に関して、業界の先進企業と長期的な戦略的提携関係を構築しており、例えば、2020年6月には、楽天モバイル㈱との間で完全仮想化スタンドアローン方式の5Gコアネットワークの共同開発に合意し、また、同月、日本電信電話㈱との間で5Gや多様なICT製品の共同研究開発およびグローバル展開を目指した資本業務提携を実施しています。さらに、2021年7月には、米国マイクロソフト社と顧客へのクラウド導入やDXの加速を目的として、同社と戦略的パートナーシップを拡大する契約を締結しています。これらの戦略的パートナーに財務上その他事業上の問題が発生した場合や、戦略的パートナーが戦略上の目標変更や提携相手の見直し等を行った場合、NECグループとの提携関係を維持しようとしなくなるか、維持することができなくなる可能性があります。これらの提携関係を維持できない場合には、NECグループの事業活動に支障が生じる可能性があります。また、戦略的提携関係を構築した結果、共同開発の対象となる技術を使用した製品や、NTTグループや楽天モバイル㈱との提携を通じて推進するOpen RANに関する規格など戦略的提携関係による開発対象となる規格の取扱いを戦略的パートナーに依存し、NECグループの製品およびサービスの拡大または多様化に関するNECグループの自由度が制限される可能性があります。

   また、NECグループの競合会社は、NECグループの製品およびサービスと競合する分野における競争力強化や新技術の開発を目指して戦略的提携を実施することがあります。例えば、競合会社による戦略的提携により開発された規格が業界の標準規格としての地位を獲得したことにより、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と推進する規格が普及しないなど、競合会社による戦略的提携が成功した場合、その影響により、NECグループの事業戦略が奏功しない可能性があります。

   NECグループは、様々なプロジェクトに他の企業とともに参加し、NECグループと他の企業の製品またはサービスを統合して顧客の要求に合致するシステムとして提供することがあります。戦略的パートナーが倒産その他の要因により提携関係における役割を維持できない場合、またはNECグループ以外の企業が提供する製品もしくはサービスのいずれかに起因する当該統合システムの誤作動もしくは顧客の要求事項との相違その他の欠陥や問題が生じた場合、NECグループの評価および事業に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

⑤ 海外事業の拡大

   NECグループは、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスやグローバル5Gの推進など海外市場での事業拡大に向けて種々の施策を実行しています。このうち、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進の成否については、特に、2018年1月に買収した英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)、2019年2月に買収したデンマークのケーエムディ・ホールディング社および2020年12月に買収したスイスのアバロク・グループ社など近年買収した海外企業の成長やこれらの海外企業とNECグループとの適切な統合を通じた事業シナジーの実現の可否に左右されます。また、NECグループは、海外市場での事業拡大に伴い、特定の地域または市場に固有のリスクにさらされています。企図した製品・サービスの収益化や市場の成長が予想よりも遅い場合、NECグループの新しい製品・サービスが顧客に受け入れられない場合、収益獲得の機会が競争もしくは規制により損なわれる場合、または計画した買収、投資もしくは資本提携が規制当局に承認されない場合には、NECグループの新規市場への進出や新製品・サービスの提供が奏功しない可能性があります。また、現地の商慣行および法令規則の知見や理解が不十分な可能性や、市場によっては適切な事業や提携先を見つけることが困難である可能性もあります。そのほか、海外の潜在的な顧客と現地供給業者との間の長期的な提携関係の存在や国内事業者保護のための規制等の種々の障壁に直面しています。

   海外市場での成長機会を捉えるために、収益の計上が見込まれる時期より相当前から多額の投資を行う必要がNECグループに生じる可能性がありますが、このような投資が、期待される水準の収益成長をもたらす保証はありません。また、このような投資額の増大によって、利益の増加を上回るペースで費用が増加する可能性があります。さらに、海外におけるNECグループの事業および投資は、為替管理、外資による投資または利益もしくは投資資本の本国送金に対する諸規制、現地産業の国有化、5G関連技術を含む輸出入にかかる要件や規制の変更、海外当局からの許認可等の取得といった海外市場における規制、米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦、税制・税率の変更、さらには昨今のウクライナ情勢に代表される経済的・社会的・政治的・地政学的リスク等により悪影響を受ける可能性があります。

   さらに、海外の金融市場および経済に問題が発生した場合には、当該海外市場の顧客からの需要が悪影響を受ける可能性もあります。

   これらの要因により、NECグループは、海外市場における事業拡大に成功せず、その結果、NECグループの事業成長、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

(3) NECグループの事業活動に関するリスク

① 技術革新および顧客ニーズへの対応

   NECグループが事業を展開する市場は、急速な技術革新と技術標準の進展、顧客の嗜好の変化および新製品・新サービスの頻繁な導入を特徴としており、これらにより既存の製品・サービスは急速に陳腐化し、または市場性を失う傾向があります。NECグループの将来における競争力の維持・強化には、次のような技術革新への対応能力が必要です。

   (a) AI、IoT、生体認証やサイバーセキュリティ技術を中心とした分野における急速な技術革新に対応して、技術面でのリーダーシップを維持する能力

   (b) 既存の製品・サービスを向上させる能力

   (c) 顧客のニーズを満たす革新的な製品をタイムリーにかつコスト効率よく開発し生産する能力

   (d) 新たな製品・サービスおよび技術を使用し、またはこれらに適応する能力

   (e) 優秀な技術者や理工学分野の人材を採用し雇用する能力

   (f) 開発する新製品・新サービスに対する需要およびこれらの商品性を正確に予測する能力

   (g) 開発した技術を事業化する能力

   (h) 新製品の開発または出荷の遅延を回避する能力

   (i) 高度化する顧客の要求に対応する能力

   (j) 顧客の製品およびシステムにNECグループの製品が組み込まれるようにする能力

   NECグループの上記の対応能力は、特に、研究開発費用を確保した上で行われる技術革新等に対応するための適切な研究開発体制の維持と、かかる研究開発体制に基づき蓄積されてきた研究開発結果に支えられているところ、資金、人材、その他のリソース不足等により研究開発力の維持が困難となるなどし、上記の対応能力が不足・低下した場合、NECグループは将来における競争力を失う可能性があります。

   NECグループは、技術革新および顧客嗜好の急速な変化に対応する、製品・サービスの改良や新製品・新サービスの開発を行い、市場投入することができない可能性があります。将来の技術革新および顧客嗜好の変化は、過去に実際に生じた変化とは異なる傾向や時間軸で生じる可能性があり、現時点での予測とも異なる可能性があります。NECグループがこれらの技術革新および顧客嗜好の変化を適切に把握し対応できなかった場合、またはそのような変化の方向性を正確に予測できなかった場合、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。さらに、NECグループの技術を顧客の期待に沿ったかたちで製品に組み込むことができなかった場合、NECグループの顧客との関係、評価および収益に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、現在提供している製品およびサービスや将来提供しようとしている製品およびサービスについて、業界の標準規格となる技術を開発し商業化するために、他の企業との提携およびパートナーシップの形成・強化に努めています。また、NECグループは、かかる技術の開発および商業化に多大な資金、人材およびその他のリソースを投じています。例えば、2020年6月に公表した日本電信電話㈱との資本業務提携は、「O-RAN」をはじめとするオープンアーキテクチャの普及促進を目的としていますが、かかる「O-RAN」は、競合会社が推進しようとしているOpen-RANの規格と競合しています。競合会社の技術が業界の標準規格として採用された場合、かかる規格技術の開発や商業化を行うことができない可能性があります。そのような場合、NECグループの競争上のポジション、評価、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

② 競争の激化

   NECグループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争にさらされています。かかる競争状態は、NECグループの利益の維持に対する深刻な圧力となっており、当該圧力は特に市場が低迷した場合に顕著となります。また、競合会社の市場参入に伴い、NECグループの製品・サービスが厳しい価格競争にさらされるリスクが増大しています。主にアジア諸国における競合会社の中には、オペレーションコストの面でNECグループよりも有利であり、顧客に対する販売価格面で競争力を有している会社が存在する可能性があります。また、将来的には、NECグループよりも強固な財務基盤を有する多国籍企業とも競合する可能性がありますが、このような多国籍企業は、戦略的な価格設定や研究開発に向けた多額のリソースの投入・大規模な人材登用を実施することがあります。さらに、近年、NECグループが開発した新製品の市場投入から競合会社による同様または同種の製品の市場投入までの間隔が短くなっており、NECグループの製品が従来より早く激しい価格競争にさらされる可能性があります。

   NECグループは、大規模な多国籍企業から比較的小規模で急成長中の高度に専門化した企業まで、国内外を問わず多くの会社と競合しています。特定分野に特化している多くの競合会社とは異なり、NECグループは多角的に事業を展開しているために、競合会社より多くのリソースを保有していたとしても、それぞれの特定事業分野に関しては、競合会社ほどの資金を投入できない場合があり、また、そのような競合会社と同程度の迅速さや柔軟性をもって変化に対応することや、市場機会を捉えることができない可能性があります。さらに、特定分野において研究開発等のために多大な資金、人材およびその他のリソースを投入した場合であっても、これによってNECグループの収益性や競争力の向上が達成される保証はなく、かかる資金投入等が結果的にNECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

   競合会社の規模や競争力の差異を生む要因は、業界や市場により異なります。例えば、5G技術の分野では、多額のリソースの活用が可能な大規模な多国籍企業が競合会社に含まれるところ、当該分野において、かかる多国籍企業に対して競争上の優位性を確保できるかは、競合する業界において、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と開発・設計し、推進する技術・規格を用いたプラットフォームが支配的な地位を獲得できるかといった事情に左右されます。他方、デジタル・ガバメントやデジタル・ファイナンスの分野では、事業を展開する国や地域によりNECグループの有する市場シェアや競合会社となる企業が異なるため、競争上の優位性を確保するためには各国や地域における状況に応じた対応が必要となります。NECグループが多角的な事業を展開する上でこのような事業分野ごとの特性に応じた効果的な事業戦略の遂行ができない場合には、NECグループの事業および業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

   NECグループは、政府・政府系機関向けプロジェクトやその他の大規模なプロジェクトで発注価格等の条件が厳格に設定されている案件への入札や受注提案プロセスに参加することがあり、その場合、NECグループの収益性がさらに低下する可能性があります。厳格な条件に合致させつつも収益性を維持するために、NECグループは、革新的かつ独自の価値を顧客に提供することによって継続的に収益を増加させ、かつ、開発製造業務の最適化やビジネスプロセスの改善などにより費用削減に努めていますが、これらの取組みをもってしても、収益性を維持できない場合があります。

   NECグループは、現在の競合会社や潜在的な競合会社の一部に対し、製品やサービスを販売することがあります。例えば、大規模なプロジェクトで競合会社が主契約者となり、NECグループのソリューションを組み込みまたは利用して、ソリューションを提供する場合において、NECグループは、競合会社から注文を受けて、競合会社に対しNECグループのソリューションを提供する場合があります。この場合、かかる競合会社が、競合またはその他の理由により、かかる大規模なプロジェクトにおいてNECグループのソリューションを利用しないこととした場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

 

③ 特定の主要顧客への依存

   NECグループの事業ポートフォリオの大半は、政府・政府系機関向けの事業およびNTTグループをはじめとする大規模ネットワークインフラ企業向けの事業が占めますが、そのような事業の需要が変動した場合や事業を受注できなかった場合には、NECグループの売上収益に重大な悪影響を与える可能性があります。また、政府・政府系機関が予算、政策その他の理由で取引額を削減する可能性があるほか、顧客企業においても、事業上もしくは財務上の問題その他の理由により設備投資額もしくはNECグループとの取引額を削減または投資対象を変更する可能性があります。

   また、NECグループは、政府・政府系機関向け事業の獲得に必要な入札・受注提案プロセスへの参加が規制上の理由により制約される可能性があります。例えば、当社は、2016年および2017年に公正取引委員会から認定された独占禁止法違反行為に起因して、一定期間において、国内の多数の政府・政府系機関や地方公共団体から指名停止措置を受け、入札参加資格を停止されました。NECグループは、規制違反行為の発生を防ぐため内部統制システムの強化に努めていますが、かかる取組みを徹底しても、規制違反行為が発生する可能性を完全に否定することはできません。また、需要の変動、政策変更または規制により、政府・政府系機関向けの事業が縮小した場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 新規事業の展開

   新製品・新サービスを開発する際には、製品の開発・製造に要する期間・費用が非常に長期・多額となる可能性や、実際に製品・サービスの販売・提供による収益が生じる相当以前から多くのリソースの投入が必要となる可能性があるなど、多くのリスクを伴います。例えば、NECグループは、AIを活用した創薬事業への本格参入を企図して、2019年にオンコイミュニティ社(現NECオンコイミュニティ社)を買収しましたが、NECグループの創薬事業の経験が乏しいことにより、収益性を確保するまでには一定の期間を要し、場合によっては事業が奏功しない可能性もあります。また、新製品・新サービスの開発中に、異なる新技術が導入され、または標準規格が変更されること等により、NECグループが新たに開発した製品・サービスを市場に投入する前に、当該製品・サービスが陳腐化し競争力を失う可能性があります。新製品・新サービスには想定外の欠陥・エラーが含まれている可能性があり、新製品・新サービスを市場に投入・展開した後にこれらが発見された場合、顧客に生じた損失に対する責任を追及される可能性や、NECグループまたはその製品・サービスの評価が毀損される可能性があります。これらの要因により、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。

 

⑤ 製品およびサービスの欠陥

   NECグループが提供する製品およびサービスは、公的機関を顧客とするものも含み、その欠陥により顧客や多数のエンドユーザーに深刻な損失をもたらす可能性があります。顧客の基幹業務等高い信頼性が求められる、いわゆるミッションクリティカルな業務において使用されている製品またはサービスに欠陥や提供の遅延が生じた場合、NECグループは、顧客等に生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。また、製品またはサービスの欠陥により社会的評価が低下する可能性や、リコール費用を負担する可能性もあります。特に、ICTに関する製品およびサービスは、一般的に、技術的障害やコンピューターウイルスなどのリスクにさらされていますが、NECグループは、消防・防災システムなど生命身体の安全を保護する場面で利用される製品およびサービスを提供しているため、より重大な責任を追及される可能性があります。さらに、生体認証技術といった革新的な技術を使用した製品およびサービスは、予測が困難なリスクにさらされる可能性があります。これらに起因して社会的評価が低下した場合や規制当局により制裁を受けた場合には、NECグループの販売力が損なわれる可能性があります。また、これらは不採算プロジェクトが発生する要因ともなります。

   NECグループでは、製品またはサービスの欠陥や不採算プロジェクトの発生を防ぐため、システム開発などのプロジェクトを遂行するにあたっては、システム要件の確定状況や技術的難易度の把握、システムを構成するハードウェアやソフトウェアの品質管理など、商談開始時からプロジェクトのリスク管理を徹底していますが、これらの発生を完全に防ぐことは困難です。NECグループが提供する製品もしくはサービスに欠陥が生じた場合または不採算プロジェクトが発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑥ 部品等の調達

   NECグループの事業活動には、部品、製造装置その他の調達物品がタイムリーに納入されることが必要であり、中にはジャスト・イン・タイムの条件で購入しているものもあります。これらの部品等には、その複雑さや特殊性から仕入先が少数に限定されているものおよび仕入先または調達物品の切り替えが困難なものがあります。地政学的リスクや米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦等により、NECグループの主要顧客が属する業界を含む多くの業界が影響を受け得るところ、今後NECグループにおいても、製品やサービスの納入に遅れが生じる等、事業に悪影響が及ぶ可能性があります。また、NECグループに対する調達物品の供給に遅延もしくは中断が生じた場合、規制変更や規制動向の変化が生じた場合、業界内の需要が増加した場合または関税などの貿易問題が生じた場合などには、必要な部品が不足し、代替品の調達費用が増加し、NECグループの生産能力、効率および収益性に悪影響を与える可能性があります。さらに、金融市場の混乱によりNECグループの仕入先の資金繰りや支払能力に問題が生じた場合には、NECグループの調達物品の調達元が減少したり、そのサプライチェーンに混乱が生じる可能性があります。また、調達した部品、製造装置その他の調達物品がNECグループ製品の信頼性および評価に悪影響を与えるような欠陥を抱えている場合、または調達物品を適時に適切な価格で調達できない場合には、NECグループの事業、業績および財政状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 知的財産権等

   NECグループの事業は、NECグループが独自に開発した技術ならびにNECグループの製品、サービス、事業モデルならびにデザインおよび製造プロセスに必要な特許権その他の知的財産権を取得できるか否かにより大きな影響を受けます。特許権等の登録・維持には、長い時間と多額の費用を要します。これらの特許は、異議申立てを受け、無効とされ、または回避される可能性があります。また、NECグループが数多くの特許権その他の知的財産権を保有していたとしても、これらの権利によりNECグループの競争上の優位性が常に保証されているわけではありません。

   NECグループが事業を展開する領域での技術革新は非常に速いため、知的財産権による保護には陳腐化のリスクがあります。また、NECグループが将来取得する特許権の請求範囲がNECグループの技術を保護するために十分広範囲であるという保証もありません。さらに、国によっては、特許権、著作権、トレードシークレット等の知的財産権による効果的な保護が与えられず、または制限を受ける場合があります。NECグループの企業秘密は、従業員・元従業員、契約の相手方その他の者によって不正に開示または流用される可能性があります。また、NECグループの知的財産権を侵害した品質の劣る模倣品により、NECグループのブランドイメージが損なわれ、NECグループの製品の売上に悪影響を与える可能性もあります。さらに、NECグループが特許権その他の知的財産権を行使するために訴訟を提起する必要がある場合、当該訴訟に多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。

 

⑧ 第三者からのライセンス

   NECグループの製品には、第三者からソフトウェアライセンスやその他の知的財産権のライセンスを受けて製造・販売しているものがあり、今後もNECグループの製品に関連して第三者から必要なライセンスを受け、またはこれを更新する必要があります。NECグループは、経験および業界の一般的な慣行を踏まえ、原則としてこれらのライセンスを商業的に合理的な条件で取得することができると考えています。しかしながら、将来NECグループが必要とするライセンスを、第三者から商業的に合理的な条件で取得できる保証はなく、また、全く取得できない可能性もあります。そのような場合、かかるライセンスを利用する事業活動を制限または停止しなければならず、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑨ 顧客に対する信用リスク

   NECグループは、顧客に対してベンダーファイナンス(NECグループの製品・サービスの購入資金の供与)を提供することがあり、また、支払期間の延長や、NECグループの製品・サービスの購入を援助するためその他の方法による財務支援を行うことがあります。NECグループが財務上またはその他の事情により、顧客が受入れ可能な条件での支払条件の設定もしくはその他の方法による財務支援ができない場合、または条件にかかわらずかかる行為を一切行うことができない場合は、NECグループの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループの顧客の多くは、代金後払いの方法によりNECグループから製品・サービスを購入していますが、NECグループが支払期限の延長またはその他の支払条件の提案を行った顧客やNECグループが多額の売掛金を有する顧客に財務上の問題が発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑩ 人材の確保

   NECグループは、社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを開発するため、優秀な従業員を獲得し維持する必要があり、また、そのような優秀な従業員の獲得に際しては、豊富なリソースを有する多国籍のテクノロジー企業と競合する可能性があります。そのため、NECグループの人事部門は、中期経営計画の成長領域をはじめ、NECグループの事業を推進する部門に必要な人材を採用し、その雇用を継続することに努めており、将来の採用コストおよび人件費が増加する可能性があります。また、今後、技術および業界におけるトレンドの変化に伴い、社会感度が高く、様々な価値観、能力、バックグラウンドや従来とは異なる技術を有する多様な人材を採用する必要性が高まる可能性があります。具体的には、近年のデジタル化・自動化の進展に伴い、AI、機械学習、データサイエンスおよび統計分析等の技術を有する人材の需要が増していることから、これらの人材の獲得に向けた競争は今後より激しくなることが見込まれ、そのような技術を備えた人材の採用は、従来の採用方法とは異なる方法によって行う必要が生じる可能性があります。

   これらの要因により、優秀な従業員が多数離職した場合、優秀な人材を新規に採用することができなかった場合、または人材の多様性が確保できなかった場合には、NECグループの事業目的の達成が困難となり、社会価値創造型企業として社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを提供できなくなることがあります。

 

⑪ 資金調達

   NECグループは、営業活動によるキャッシュ・フローや銀行その他の金融機関からの借入金による資金調達に加え、コマーシャル・ペーパーその他の債券の募集等により資本市場から資金を調達しています。NECグループの信用状態が低下した場合、格付けが低下し、NECグループの金利負担が増加するとともに、NECグループのコマーシャル・ペーパー市場または債券市場における資金調達能力が悪影響を受ける可能性があり、その結果、NECグループの手許流動性、業績および財政状態にも悪影響を与える可能性があります。NECグループは、比較的高い財務レバレッジを維持しているため、負債による資金調達が困難になった場合には特に事業遂行に影響を与える可能性があります。

   NECグループの資金調達およびその費用は、NECグループの主要な貸手の倒産やNECグループに対する融資停止の決定、または資本市場の不安定さにより、悪影響を受ける可能性があります。NECグループが満足できる条件で外部から資金を調達することができない場合もしくは全く資金を調達することができない場合、または営業活動や必要に応じた資産の売却によって十分なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合、NECグループは債務を履行することができなくなり、NECグループの事業、業績および財政状態は重大な悪影響を受ける可能性があります。また、NECグループの事業のために必要な資金調達を追加的な借入れで行う場合、NECグループの成長戦略を実行する能力に制約を与えるような財務的その他の制限的義務が課される可能性があります。

   NECグループは、原則として純投資目的以外の目的(いわゆる政策保有目的)で上場会社の株式を保有しないこととしているものの、NECグループとの協業や投資先との事業上の関係等において必要と判断した会社の株式については、例外的に純投資目的以外の株式として保有します。ただし、純投資目的以外の株式を保有することとした場合であっても、個別銘柄ごとに保有の必要性や、得られるリターンを検証するなど資本コストの観点等を総合的に評価したうえで、取締役会において一定の基準に基づき保有の合理性を検証し、保有の合理性が認められないと判断される場合には売却することとしています。当連結会計年度においても保有する純投資目的以外の株式の売却を進めており、当該売却により192億円の資金を獲得しました。かかる売却後もNECグループは、2023年3月末時点で、純投資目的以外の株式(非上場株式を含む。)を1,407億円保有しているところ、これらの約33%が市場株価のある上場株式であり、国内外の経済情勢や株式市場の需給関係の悪化、保有先企業の経営状態の悪化等により株価が低下する可能性があります。売却時期についての具体的な目標の設定はありませんが、保有する純投資目的以外の株式の株価が低下した場合、NECグループは、希望する時期に純投資目的以外の株式の売却を進めることができず、純投資目的以外の株式の売却による資金の獲得ができなくなる可能性があります。

 

(4) 内部統制・法的手続・法的規制等に関するリスク

① 内部統制

   NECグループは、財務報告の正確性を確保するために、業務プロセスの文書化やより厳密な内部監査の実施により内部統制システムの強化に努めていますが、その内部統制システムが有効なものであっても、財務諸表の作成およびその適正な表示について合理的な保証を与えることができるにすぎず、従業員等の人為的なミスや不正、複数の従業員等による共謀等によって機能しなくなる場合があります。また、内部統制システムの構築当時に想定していなかった事業環境の変化や非定型的な取引に対応できず、構築された業務プロセスが十分に機能しない可能性もあり、虚偽の財務報告、横領等の不正および不注意による誤謬が発生する可能性を完全には否定することはできません。このような事態が生じた場合には、財務情報を修正する必要が生じ、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、NECグループの内部統制システムに開示すべき重要な不備が発見された場合、金融市場におけるNECグループの評価に悪影響を与える可能性があり、かかる不備を是正するために多額の追加費用が発生する可能性もあります。さらに、内部統制システムの開示すべき重要な不備に起因して、行政処分または司法処分を受けた場合には、NECグループは、事業機会を失う可能性があります。

   NECグループは、業務の適正化および効率化の観点から業務プロセスの継続的な改善・標準化に努めていますが、様々な国や地域で事業活動を行っており、また業務プロセスも多岐にわたっているため、特にNECグループにとって新しい事業を行う会社や新しい国や地域で事業を行う会社を買収またはNECグループに統合する場合、共通の業務プロセスの設計およびその定着化は必ずしも容易ではなく、結果として業務プロセスの改善・標準化に多くの経営資源・人的資源と長期間にわたる対応の継続を要し、多額の費用が発生する可能性があります。

 

② 法的手続

   NECグループは、特許権その他の知的財産権に係る侵害その他の主張に基づく訴訟または法的手続を申し立てられることがあります。NECグループの事業分野には多くの特許権その他の知的財産権が存在し、また、新たな特許権その他の知的財産権が次々と生じているため、ある製品またはサービスについて第三者の特許権その他の知的財産権を侵害する可能性の有無を事前に完全に評価することは困難です。特許権その他の知的財産権侵害の主張が正当であるか否かにかかわらず、かかる主張に対してNECグループを防御するためには、多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。特許権その他の知的財産権侵害の主張が認められ、NECグループが侵害したとされる技術またはそれに代わる技術についてのライセンスを取得できなかった場合には、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、商取引法、独占禁止法、贈収賄防止法、製造物責任法、環境保護法、各種業法などに関する様々な訴訟および法的手続の対象となる可能性があります。

   NECグループが当事者となっているかまたは今後当事者となる可能性のある訴訟および法的手続の結果を予測することは困難ですが、かかる手続においてNECグループにとって不利な結果が生じた場合、NECグループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループが関係する法的手続に関して必要となる財務資源および経営陣を含む人的資源等の経営資源についても同様に予測することは困難であり、その程度によっては、これらを適時に確保することが困難となり、NECグループの事業遂行に重大な悪影響を与える可能性があります。また、NECグループが法令および規制に違反した場合には、罰金または科料等が科されるおそれがあるほか、政府・政府系機関、地方公共団体および国際機関からの受注や入札参加資格が停止されるおそれ、各種業法等に基づきNECグループが取得している許認可等の取消しにより当該許認可に関わる事業が遂行できなくなるおそれがあるなど、NECグループの事業、業績、財政状態および評価に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制等

   NECグループは、事業を展開する多くの国や地域において、予想外の規制の変更、法令適用や政府の政策の運用の不確実性およびその法的責任が不透明であることに関連する多様なリスクにさらされています。日本およびその他の国や地域の政府の経済、貿易、租税、労働、国防、財政支出、個人情報保護等に関する政策を含め、NECグループが事業を展開する国や地域における規制環境の重要な変更により、事業内容の変更を余儀なくされるほか、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

   例えば、2021年4月に、欧州データ保護監督官(European Data Protection Supervisor)が、生体認証技術やAI技術の分野において新たな規制を設ける旨を公表しており、今後、EUその他の国や地域において、かかる新規制の導入や関連する法改正が行われた場合、NECグループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国の規制当局は経済制裁対象国や特定の個人または団体との取引等を制限または禁止しており、それらの規制は短期間のうちに大幅に改正される場合があります。NECグループはコンプライアンス・プログラムを実施していますが、当該規制への違反を防止する上で十分に機能しない可能性があり、違反が発生した場合等には、NECグループの社会的信用、事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 環境規制等

   NECグループの事業は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用および取り扱い、廃棄物処理、製品含有化学物質、製品リサイクルならびに土壌・地下水汚染の規制や地球温暖化防止などを目的とした様々な環境法令の適用を受けています。また、NECグループは、過去、現在および将来の製造活動に関し、環境責任を負うリスクを抱えています。NECグループが現在および将来の環境規制を遵守できなかった場合やNECグループが責任を負う汚染が発見された場合、罰金、有害物質の除去費用または損害賠償を含む多額の費用や、施設および設備を改良する多額の投資を要する可能性があります。また、将来、新たな環境問題が生じた場合や、自社の温室効果ガス排出量に応じて金銭的負担が生じるカーボンプライシングの導入など環境規制がより厳格化する場合など予期せぬ事態が生じた場合、NECグループの社会的評価の悪化、事業活動の制限または製品設計や商品性への影響などによって、NECグループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす著しい環境コストを負担する可能性があります。

   NECグループは、自主管理基準や2050年を見据えた長期視点の気候変動対策指針を設定・策定し、NECグループの環境方針に従って適切な業務遂行や環境監査を実施するなど、法令および政府当局の指針の遵守に努めています。また、2022年9月に、サプライチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにゼロとすることをめざすイニシアティブ「The Climate Pledge」(TCP)へ参加し、CO2排出量削減対策を強化しています。しかしながら、これらの措置やイニシアティブへの参加は過去、現在および将来の事業活動に関して生じるおそれのある潜在的な責任を回避する上で必ずしも有効に機能しない可能性があります。また、将来、新たなまたはより厳格化する環境規制の遵守や、有害物質等を除去する義務に関する費用が発生する場合、さらにはカーボンニュートラルに向けた目標を達成できなかった場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性ならびにNECグループの評価およびブランド価値が低下する可能性があります。なお、NECグループの気候変動への対応については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略並びに指標及び目標のうち重要なもの ②NECグループの気候変動に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。

 

⑤ 税務

   NECグループの実効税率は、税率の低い国や地域での収益が予想よりも少なく、税率の高い国や地域での収益が予想よりも多い場合や、NECグループの繰延税金資産および繰延税金負債の評価の変更、移転価格の調整、損金算入されない報酬の税効果、またはNECグループが事業を展開する多くの国や地域における租税法令、会計基準もしくはそれらの解釈の変更が行われた場合、悪影響を受ける可能性があります。今後、実効税率が大幅に上昇した場合には、NECグループの将来の利益が減少する可能性があります。現在、NECグループは、繰越欠損金および将来減算一時差異により繰延税金資産を計上していますが、これらはいずれも将来の課税所得を減額する効果があります。繰延税金資産は課税所得によってのみ回収されます。市況やその他の環境の悪化により、繰越期間中のNECグループの事業およびタックス・プランニングによる将来の課税所得が予想よりも低いと見込まれる場合には、回収可能と考えられるNECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。また、法人税率の引下げ等の租税法令の改正や会計基準の変更がなされた場合においても、NECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。かかる減額は、その調整が行われた期間におけるNECグループの利益に悪影響を与えます。

   また、NECグループは、税務申告について様々な国や地域の税務当局により継続的な監査および調査を受けています。NECグループでは、未払法人所得税等の妥当性を判断するため、これらの監査および調査の結果生じる悪影響の可能性について定期的に評価していますが、これらの監査や調査の結果は、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑥ 情報管理

   NECグループは、通常の事業遂行に関連して、個人番号(マイナンバー)や機微情報(センシティブ情報)を含む多数の個人情報や機密情報の収集、保有、使用、移転その他の処理をしています。近年、企業や機関が保有する情報や記録が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるといった事件が多発しています。NECグループが保有する顧客または従業員に関する個人情報や機密情報が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受け、それが不正に使用された場合には、NECグループは法的な責任を負い、規制当局による処分を受ける可能性があり、NECグループの評価およびブランド価値が損なわれる可能性があります。とりわけ、近時のサイバー攻撃の高度化や対象となる事業やインフラの規模の拡大および複雑化に伴い、不正アクセス等の脅威や、情報管理に関するシステム等の脆弱性の発見および軽減が適時に行えない可能性があります。さらに、これらの不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるリスクは、NECグループの製品、サービスおよびシステムだけではなく、顧客、請負業者、仕入業者、ビジネスパートナーその他の第三者の製品、サービスおよびシステムにも存在します。NECグループの顧客には金融機関や医療機関といった高度な規制業種および防衛関連を含む基礎的な社会インフラに関わる政府・政府系機関が含まれており、NECグループの製品、サービスおよびシステムは、これらの顧客にとって極めて重要な場面で利用されることもあるほか、センシティブなデータを取り扱うこともあります。

   NECグループは、個人情報を日本の個人情報保護法や欧州の「EU一般データ保護規則(GDPR)」等の関係法令に従い取り扱わなければなりません。NECグループが、かかる情報を保護できなかった場合、これにより生じた経済的損失または精神的苦痛に対し、賠償しなければならない可能性や規制当局により多額の制裁金等を科される可能性があります。また、さらなる情報保護対策を実施するために、多額の費用が発生し、または通常業務に支障が生じる可能性があります。さらに、NECグループの製品・サービス・システムを利用している顧客が、かかる情報を保護できなかった場合には、NECグループの評価および事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

   また、NECグループは、生体認証技術とAI技術等を活かしたデジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進により成長を目指しています。これらの先端技術の進展に伴い、新たな人権問題への対応の必要性が議論されており、かかる人権問題の関心の高まりを受けて、データ保護および個人情報保護に係る規制の範囲も拡大し、かつ、その規制内容は国や地域ごとに異なる複雑なものになっています。今後も生体認証技術やAI技術等の先端技術の利用に関する規制強化に向けた動きが継続する可能性は高く、その規制内容次第では、NECグループまたはNECグループがサービスを提供する顧客において、規制当局による調査や制裁を受けるおそれや第三者から訴訟等を提起されるおそれが高まる可能性があるほか、国や地域によっては、これらの先端技術の利用そのものが禁止または著しく制限され、かかる先端技術を利用した事業機会を失う可能性があります。

 

⑦ 人権の尊重

   NECグループが事業を展開する国や地域では、人権や労働安全衛生等に係る課題への企業の対応に関心が高まっており、これらに関する法令および規制も変化しています。また、人種差別や政治不安に起因する人権課題が存在する地域もあり、取引先と協働した取り組みが求められています。NECグループでは、「AIなどの新技術と人権」、「地政学的情勢や紛争影響をふまえた人権リスク」、「サプライチェーン上の労働」および「従業員の安全と健康」を顕著な人権課題に特定し、取り組みを進めています。しかしながら、NECグループの事業拠点やサプライチェーンのみならず協業先や顧客等を含む範囲において、これらの課題に適切に対応できなかった場合、行政罰や顧客との取引停止の可能性に加え、地域住民、顧客・消費者、株主・投資家、人権保護団体などの様々なステークホルダーからの批判にさらされることによるNECグループの評価およびブランド価値の低下など、NECグループの経営および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) その他のリスク

① 自然災害や火災等の災害

   国内外を問わず、NECグループが事業を展開する国や地域において、地震、台風、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、干ばつ、水不足等)などの自然災害や火災、致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が発生した場合、NECグループ、NECグループの仕入先および顧客に損害、混乱が生じる可能性があります。例えば、首都直下地震が発生した場合、NECグループの本社は、甚大な被害を受ける可能性があり、その場合、NECグループの事業は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの災害等が国内外の経済活動の停滞、為替変動・金利変動、政治不安・経済不安、治安および世情の悪化を引き起こし、NECグループの事業を阻害する可能性があります。

   NECグループでは事前の減災対策を行うとともに緊急時の復旧手順や行動要領等をまとめたBCPを策定し、訓練・教育も実施していますが、自然災害が発生すると被災地域における電気・ガス・水道・通信・交通などの社会インフラが破壊され、人的被害や製造停止、資材調達困難、物流困難、環境・品質リスクの発生など、事業に多大な影響を与える可能性があります。また、上記「(1)経済環境や金融市場の動向に関するリスク ④新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行による悪影響」に記載する新型コロナウイルス感染症その他の感染症の流行など、人類が免疫を持たない未知の感染症が蔓延すると、人材の確保や労働環境のリスクが高まるほか、感染症蔓延地域における顧客の需要低下、仕入先の操業中断など、事業運営に悪影響を与える可能性があります。

 

② のれんの減損

   NECグループは、2018年に英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社(現NECソフトウェア・ソリューションズ・ユーケー社)を、2019年にデンマークのケーエムディ・ホールディング社を、2020年にスイスのアバロク・グループ社をそれぞれ買収したことなどにより2023年3月31日時点で3,556億円ののれんを計上しており、今後さらに買収を行う場合には追加ののれんを計上する可能性があります。

   NECグループの連結財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)に準拠して作成しており、のれんを配分した資金生成単位については、減損の兆候の有無にかかわらず1年に1回、また、減損の兆候があると認められた場合には随時、当該資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超えるか否かを判断するための減損テストを行う必要があります。回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額に基づいて算出します。また、使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを、貨幣の時間的価値および当該資産に固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割り引くことで算定します。減損テストの結果、のれんを含む資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回っている場合、減損損失を認識します。減損処理にあたっては、資金生成単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額することになり、その結果、NECグループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 確定給付制度債務

   NECグループは、一部の子会社を除いて、2020年10月1日以降の積立分について確定給付年金制度から確定拠出年金制度に移行していますが、2020年9月30日以前の積立分については、今後も制度資産を構成する株式その他の資産の時価の変動または運用利回りの低下等によって、確定給付に係る負債が増加し、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。例えば、将来、割引率が低下した場合や、制度の変更により過去勤務費用が発生した場合には、確定給付制度債務および確定給付費用が増加する可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

※当連結会計年度から、セグメントを変更しています。

 また、前連結会計年度との比較数値については、前連結会計年度の数値を新たなセグメントに組み替えて表示しています。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度におけるNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度の経済環境は、欧米を中心としたインフレと金融引き締め政策、中国の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響により、世界経済は後半にかけて減速しました。日本経済は、資源価格上昇や急速な円安等で物価上昇が続いたものの、新型コロナウイルス感染症抑制に伴う行動制限緩和で国内需要中心に底堅く推移しました。

このような事業環境のもと、NECグループは、2021年5月に発表した「2025中期経営計画」に基づき、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針に掲げて、事業活動を行いました。

「戦略」においては、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」によって成長を目指しています。

「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」では、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンス領域において、ウクライナ情勢の影響などによる世界的な景気後退懸念から顧客がIT投資を控えている状況下で、欧州やアジアの顧客を中心に着実に受注・売上を拡大しました。また、グローバル5G領域においては、国内通信事業者の設備投資が抑制傾向にあるものの、基地局を中心として前期に続き当期も着実に売上を伸ばしました。海外においても商用プロジェクト向けの基地局の出荷を開始し、売上を拡大させました。一方で、市場開拓に伴う費用が増加するなど、収益性については課題を残しました。

「国内IT事業のトランスフォーメーション」では、DXにかかる領域での堅調な需要を背景としてコンサルティング事業を中心に着実に売上が拡大しました。NECグループが強みを活かせるコアDX領域においては、生体認証・映像分析、AI、セキュリティ技術などを統合した「NECデジタルプラットフォーム」のさらなる強化に取り組みました。また、当社子会社であるアビームコンサルティング㈱と連携して、経営課題解決や社会価値共創を先進的な顧客とともに実現する戦略パートナーシッププログラムを加速しました。さらに米国マイクロソフト社、米国アマゾン・ウェブ・

サービシズ社(AWS)および日本オラクル㈱との従来からのパートナーシップに加え、2022年9月には米国レッドハット社との協業を拡大し、グローバルパートナーとの共創による顧客の課題解決に取り組みました。また、AWSの認定資格者を3,000名まで倍増するなど、デリバリー体制も強化しました。

「次の柱となる成長事業の創造」では、ヘルスケア・ライフサイエンス事業において、最先端のAIの活用による個別化治療の開発に取り組みました。また、国際基金「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」から日本の企業として初めてファンドプロジェクトに採択され、広範なベータコロナウイルス属に対応する次世代ワクチンの開発を開始しました。さらに、2022年4月に塩野義製薬㈱とB型肝炎に対する治療ワクチン創製を目指した共同研究契約を締結しました。農業領域では、環境にやさしく収益性の高い農業の実現を目的として、2022年9月にカゴメ㈱と合弁会社「ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー社」を設立しました。また、2023年2月には、脱炭素に向けたESG投資の促進と防災・減災対策を目的とした投資活性化への貢献に向けて慶應義塾と潜在カーボンクレジットの共創を開始するなど、社会価値提供の加速に取り組みました。

「文化」においては、「2025中期経営計画」に基づく文化と経営基盤の変革を目的として、社内変革プロジェクト「Project RISE」を加速させました。問題解決と組織変革の手法である「Work-Out」を幅広い現場で展開・実践することで社内のビジネス課題を解決するとともに、組織風土の改革を推進しました。また、NECグループで実践した変革手法やノウハウをモデルとして顧客に提供することを前提としたデジタル基盤の構築を進めました。さらに、「Smart Work 2.0」の実践、個人のキャリア形成支援の拡充、キャリア採用や女性従業員比率拡大によるさらなる多様性の推進、ビジネスインフラの整備などにより、働きがいの実感を高める施策を展開しました。

また、「NEC 2030VISION」で示した未来の社会像の実現に向けて自らその構想を発信し、ステークホルダーとともに新たな価値の創造と社会への実装を目指すソートリーダーシップ活動として、スイスで行われたダボス会議に経営トップであるCEOが登壇したほか、NECグループのシンクタンクである㈱国際社会経済研究所の体制強化、NECグループの注力領域に関するホワイトペー

パーの発行などを行い、未来の共感創りの加速と成長事業の社会実装への貢献を推進しました。

これらの取り組みに加え、経営幹部と社員との継続的なコミュニケーションを実施したことなどにより、「2025中期経営計画」で指標に掲げたエンゲージメントスコアが、2020年度の25%から36%へと改善しました。

 

このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上収益は3兆3,130億円(前連結会計年度比9.9%増)、営業損益は1,704億円の利益(同379億円増加)、調整後営業損益は2,055億円の利益(同345億円増加)、税引前損益は1,677億円の利益(同232億円増加)、親会社の所有者に帰属する当期損益は1,145億円の利益(同268億円減少)、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は1,386億円の利益(同287億円減少)となりました。また、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計額)は、1,025億円の収入となりました。当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金およびリース負債を合計したもの)残高は、前連結会計年度末に比べ111億円増加し、6,085億円となり、デット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ、自己資本(「資本合計」から「非支配持分」を控除したもの)に対する有利子負債の割合)は、0.37倍(前連結会計年度末比0.02ポイント改善)となりました。なお、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ224億円増加の1,890億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は0.12倍(前連結会計年度末比0.01ポイント悪化)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,521億円の収入で、前連結会計年度に比べ46億円増加しました。これは運転資金が減少したものの税引前利益が増加したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、496億円の支出で、前連結会計年度に比べ138億円支出額が減少しました。これは株式の取得の減少などによるものです。

この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは1,025億円の収入となり、前連結会計年度に比べ184億円増加しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入などがあったものの、リース負債の返済や社債の償還による支出などにより、1,228億円の支出となりました。

 

上記の結果、現金及び現金同等物は、4,195億円となり、前連結会計年度末に比べ113億円減少しました。

 

③ 生産、受注および販売の実績

NECグループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため、生産、受注および販売の状況については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」におけるセグメントの業績に関連づけて示しています。

なお、外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、主要な販売先に関する記載を省略しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるNECグループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。連結財務諸表の作成には、期末日における資産、負債、偶発資産および偶発債務ならびに会計期間における収益および費用に影響を与えるような見積りや仮定を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。

 

① 当社の概要(主な事業内容)および経営成績に重要な影響を与える要因

NECグループの売上は、5つの主要なセグメントである社会公共事業、社会基盤事業、エン

タープライズ事業、ネットワークサービス事業およびグローバル事業から生じます。

各セグメントの製品およびサービス等の概要は、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりです。

NECグループの各セグメントの業績は、景気動向およびIT投資の動向や通信事業者の投資動向等に左右されます。

 

経営成績に重要な影響を与えるその他の要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

② 重要な会計方針および見積り

経営陣は、次の重要な会計方針の適用における見積りや仮定が連結財務諸表に重要な影響を与えると考えています。

 

重要な会計方針および見積りにつきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」と「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

③ 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上収益は、3兆3,130億円と前連結会計年度に比べ2,989億円(9.9%)増加しました。これは、すべてのセグメントで増収となったことによるものです。

収益面につきましては、営業損益は、前連結会計年度に比べ379億円増加し、1,704億円の利益となりました。これは、ネットワークサービス事業が減少したものの、グローバル事業やエンタープライズ事業などが増加したことによるものです。また、調整後営業損益は、前期に比べ345億円増加し、2,055億円の利益となりました。

税引前損益は、営業損益が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ232億円増加し、1,677億円の利益となりました。

親会社の所有者に帰属する当期損益は、法人所得税費用が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ268億円減少し、1,145億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は、前連結会計年度に比べ287億円減少し、1,386億円の利益となりました。

 

セグメント別実績については次のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益については、外部顧客に対する売上収益を記載しています。

 

a.社会公共事業

売上収益

4,567億円

(前連結会計年度比     3.2%増)

調整後営業損益

427億円

(    同     67億円増加)

 

社会公共事業の売上収益は、地域産業向けや公共向けが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ141億円(3.2%)増加し、4,567億円となりました。

調整後営業損益は、売上の増加に加え、費用の最適化などにより、前連結会計年度に比べ67億円増加し、427億円の利益となりました。

 

b.社会基盤事業

売上収益

6,497億円

(前連結会計年度比     6.8%増)

調整後営業損益

673億円

(    同     81億円増加)

 

社会基盤事業の売上収益は、航空宇宙・防衛向けが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ412億円(6.8%)増加し、6,497億円となりました。

調整後営業損益は、売上の増加に加え、不採算案件の抑制などにより、前連結会計年度に比べ81億円増加し、673億円の利益となりました。

 

c.エンタープライズ事業

売上収益

6,144億円

(前連結会計年度比    6.9%増)

調整後営業損益

734億円

(    同    159億円増加)

 

エンタープライズ事業の売上収益は、金融業向け、製造業向け、流通・サービス業向けがいずれも増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ397億円(6.9%)増加し、6,144億円となりました。

調整後営業損益は、売上の増加に加え、システム構築領域の収益性向上などにより、前連結会計年度に比べ159億円増加し、734億円の利益となりました。

 

d.ネットワークサービス事業

売上収益

5,434億円

(前連結会計年度比     6.2%増)

調整後営業損益

241億円

(    同     113億円減少)

 

ネットワークサービス事業の売上収益は、通信事業者の設備投資が低調に推移したものの、固定ネットワーク領域で増加したことに加え、特許のライセンス収入があったことなどにより、前連結会計年度に比べ319億円(6.2%)増加し、5,434億円となりました。

調整後営業損益は、海外5Gの一過性の費用計上や投資費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ113億円減少し、241億円の利益となりました。

 

e.グローバル事業

売上収益

5,863億円

(前連結会計年度比     20.8%増)

調整後営業損益

429億円

(    同     166億円増加)

 

グローバル事業の売上収益は、サービスプロバイダ向けソフトウェア・サービス、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンス、海洋システムが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ1,008億円(20.8%)増加し、5,863億円となりました。

調整後営業損益は、サービスプロバイダ向けソフトウェア・サービス領域などの収益性向上に加え、事業ポートフォリオ見直しなどにより、前連結会計年度に比べ166億円増加し、429億円の利益となりました。

 

f.その他

売上収益

4,626億円

(前連結会計年度比    18.2%増)

調整後営業損益

147億円

(    同     14億円増加)

 

その他の売上収益は、前連結会計年度に比べ713億円(18.2%)増加し、4,626億円となりました。

調整後営業損益は、前連結会計年度に比べ14億円増加し、147億円の利益となりました。

 

 

財政状態につきましては、当連結会計期間末の総資産は3兆9,841億円と、前連結会計年度末に比べ2,223億円増加しました。流動資産は、営業債権及びその他の債権や契約資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,592億円増加し、1兆9,959億円となりました。非流動資産は、有形固定資産の増加や為替変動などによるのれんおよび無形資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ631億円増加し、1兆9,881億円となりました。

 

負債は、2兆713億円と前連結会計年度末に比べ962億円増加しました。これは、営業債務及びその他の債務や契約負債などが増加したことなどによるものです。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ111億円増加の6,085億円となり、デット・エクイティ・レシオは0.37倍(前連結会計年度末比0.02ポイント改善)となりました。また、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ224億円増加の1,890億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、0.12倍(前連結会計年度末比0.01ポイント悪化)となりました。

 

資本は、自己株式の取得や配当金の支払があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に加え、為替変動に伴う在外営業活動体の換算差額の増加や、確定給付制度の再測定の増加など、その他の資本の構成要素が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,261億円増加し、1兆9,127億円となりました。

 

この結果、親会社の所有者に帰属する持分は1兆6,238億円となり、親会社所有者帰属持分比率は40.8%(前連結会計年度末比0.5ポイント改善)となりました。

 

④ 流動性と資金の源泉

NECグループは、手許流動性、すなわち、現金及び現金同等物と複数の金融機関との間で締結したコミットメントライン契約の未使用額との合計額を今後の事業活動のための適切な水準に維持することを財務活動の重要な方針としています。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物4,195億円、コミットメントライン未使用枠2,460億円、合計6,655億円の手許流動性を確保し、必要な流動性水準を維持しました。なお、現金及び現金同等物は主に円貨であり、その他は米ドルやユーロなどの外国通貨です。

また、NECグループは、短期・長期の資金需要を満たすのに十分な調達の枠を維持しています。まず短期資金調達では、その多くを国内コマーシャル・ペーパーの機動的な発行で賄っており、5,000億円の発行枠を維持しています。さらに、不測の短期資金需要の発生やコマーシャル・ペーパーによる調達が不安定になった場合の備えとして、コミットメントライン枠計2,480億円を維持し、常時金融機関からの借入れが可能な体制を敷いています。一方、長期資金調達では、国内普通社債の発行枠3,000億円を維持しています。

負債構成の考え方に関しては、必要資金の安定的な確保の観点から、十分な長期資金の確保、およびバランスのとれた直接・間接調達比率の維持を当面の基本方針としており、その状況を示すと次のとおりです。

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

長期資金調達比率 *1

60.5%

70.8%

直接調達比率 *2

35.1%

38.5%

*1 長期資金調達比率は、社債、長期借入金およびその他(1年超のリース債務)の合計を有利子負債で除して計算したものです。

*2 直接調達比率は、社債(1年以内償還予定を含む)およびコマーシャル・ペーパーの合計を有利子負債で除して計算したものです。

当連結会計年度末の長期資金調達比率は70.8%、直接調達比率は38.5%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況について

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

(4)経営戦略と今後の方針について

経営戦略と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

(5)新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症について、大きな売上の減少等はなく当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響は軽微と判断しています。

なお、事業等のリスクにつきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 重要な技術導入、提供契約

 2023年3月31日現在における重要な技術導入、技術提供等の契約は、次のとおりです。

当 事 者

契約の内容

契約期間

当社および

インターナショナル・ビジネス・

マシーンズ社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年9月28日

至:対象特許の終了日

当社および

インターナショナル・ビジネス・

マシーンズ社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2020年3月18日

至:対象特許の終了日

当社およびインテル社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2005年2月5日

至:対象特許の終了日

当社およびマイクロソフト社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年1月1日

至:対象特許の終了日

 

 

 

6【研究開発活動】

 NECグループは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会を目指しています。その実現に向けて、社会価値創造の軸となる既存事業を発展させる技術や、社会に新たな価値を提供しうる将来事業向けの先進的な技術を創出し、かかる技術の事業化を加速することで、NECグループの持続的な発展を支えていきます。

 具体的には、多種多様なデータの解析により新たな価値を創造する「データサイエンス」の技術領域と、これを効率的かつセキュアに支える「ICTプラットフォーム」の技術領域を中心に据え、研究開発を推進しています。

 「データサイエンス」の技術領域では、長年にわたる技術の蓄積と事業実績、世界トップレベルの性能を持つAIの技術群等を活用し、実世界の見える化をはかることで従来よりも広く深い情報の収集・分析を行い、複雑化・不確実化する社会システムの将来を予測することによって、社会システム全体のデジタルトランスフォーメーションに貢献していきます。

 「ICTプラットフォーム」の技術領域では、コンピューティングやネットワーキング、セキュリティの分野において、デジタルトランスフォーメーションの深化に対応するユニークな技術を発展させることにより、即時性・遠隔性・堅牢性とダイナミズムを実現するための研究開発に取り組んでいます。

 また、NECグループは、社会や顧客が求める新たな価値を実現するための研究開発機能、これらの価値を提供するための事業開発機能、および価値ある知財を創出し活用するための知的財産戦略機能をグローバルイノベーションユニット(現グローバルイノベーションビジネスユニット)に結集させ、「未来の共感」と「テクノロジー」でイノベーションを起こし、新たな社会価値創造を実現していきます。

 さらに、グローバルに研究成果を創出するため、北米、欧州、シンガポール、中国、インド、イスラエルにも研究開発拠点を設置し、それぞれの地の利を生かした研究開発を推進しています。また、学術・研究機関、顧客、世界最先端の技術を有する研究パートナー等とのオープンイノベーションを通じて、より大きな社会価値を創出することに挑戦しています。

 NECグループは、「2025中期経営計画」のもと、強い技術を生み出し続ける研究開発力と事業開発力とを統合することで技術と事業の繋がりを一層深め、技術力を顧客価値に転換し、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」によって、成長の実現を目指します。

 

 NECグループの当連結会計年度における主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。

 

(社会基盤事業)

衛星レーダとAIを活用し、橋の崩落につながる重大損傷を発見する技術を開発

 橋などの道路構造物に対し、事故やトラブルを未然に防ぐため5年に一度の定期点検が求められていますが、担当する専門家の人員が不足しており、点検の効率化や代替手段となる新技術が必要とされています。

 当社は、衛星レーダによるリモートセンシングで得られた変位データと橋の構造や気温の変化を学習させたAIを用いて橋の状態を遠隔から解析し、従来発見が困難であった橋の「異常なたわみ」を高精度で検知することで、橋の崩落につながる重大損傷を早期に発見することができる技術を開発しました。本技術を活用することで、ミリ単位の異常なたわみを複数の橋に対してまとめて検知することが可能になり、近接での目視点検が困難な河川・海・谷などに架かる橋の点検業務の効率化に貢献します。

 当社は、本技術を強化し、2025年度を目標に、橋の管理者や点検従事者向けの製品化をはかるとともに、橋を含むインフラ施設管理全般のDX推進に取り組んでいきます。

 

(グローバル事業)

多人数を追跡・認証して入場時の混雑緩和に貢献する「ゲートレス生体認証システム」を開発

 フラッパーゲートや警備員のいる通用門に多人数が集中した際には、一人ずつ通過して本人確認を行うことが求められるため、長い行列ができるなど混雑が発生します。

 当社は、服装の特徴で照合する人物照合技術と動きの特徴で追跡する技術を併用しリアルタイムに多人数を追跡しながら高精度な顔認証を行う「ゲートレス生体認証システム」を開発しました。本システムを活用することで、多人数が自然に歩いて入場している状態でも1台のカメラで1分間に100人以上認証することが可能となるため、混雑を緩和し利用者に負担のないスムーズな入場を実現します。

 当社は今後、テーマパークやイベント会場、オフィス・工場における入退管理に加えて鉄道の自動改札のゲートレス化などのさまざまなシーンでの活用検証を進め、2024年度を目標に本システムの実用化を目指します。

 

 当連結会計年度におけるNECグループ全体の研究開発費は、121,359百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。

 

社会公共事業

9,950百万円

社会基盤事業

11,832百万円

エンタープライズ事業

12,463百万円

ネットワークサービス事業

35,867百万円

グローバル事業

21,290百万円

その他

29,957百万円