当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは創業以来、人と企業を結ぶ総合人材サービスを提供しており、人材をテーマに社会に貢献すべく事業を展開しております。今後も「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」企業として成長を続けてまいります。
当社グループの事業については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりでありますが、これら各事業において、顧客企業や求職者等の市場ニーズに迅速に対応すべく事業の強化・営業体制の整備等を図りつつ、さらにグループ内での情報共有や連携による相乗効果を通じて経営効率の向上に邁進してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは事業規模の拡大を目指しつつ、独自の営業網や転職希望登録者の獲得ノウハウ等、グループ内の事業資産の有効活用により、収益力重視の体制を構築していく方針です。また、既存事業の強化や新たな事業領域の開拓に向けて必要な投資についても積極的に推進していくことで、中長期的に安定的な成長と堅実な財務体質を実現させ、売上高経常利益率及び自己資本当期純利益率(ROE)の向上を目指してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、総合人材サービス・情報サービス企業としての業容拡大に向けて、主力事業である人材サービス事業の一層の強化を図るとともに、その他の事業についても中長期的な成長を目指してまいります。
また、各事業において新たなマーケットの開拓や新商品・サービス・ビジネスモデルの開発に取り組み、市場ニーズの変化に迅速に対応できるよう営業体制の整備を図っていくとともに、事業間での連携強化から生じる相乗効果により、競争力を高めてまいります。
さらに、海外事業の推進に向けて海外各社と国内事業との連携を強化し、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント®)を進めていくことで、世界中でHR(ヒューマンリソース)サービスを展開する「世界の人事部®」構想の実現を目指してまいります。
(4)経営環境
足元では国内経済が緩やかな回復傾向にある中で、賃上げの動きやインバウンド需要の更なる高まり等による消費活動の改善が期待されます。しかしながら、ウクライナや中東における地政学リスクの高まり、円安の影響に伴う資源価格・原材料価格の高騰や物価上昇、さらには中国経済の減速をはじめとする世界経済の不透明感等により、国内景気の先行きについては依然として慎重な見方が必要な状況です。
雇用情勢につきましては、新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和やインバウンド需要の回復を背景に飲食・流通・サービス業の採用ニーズが拡大しております。また、運輸・建設業でも、残業時間の上限を規制する「2024年問題」に対応するために企業の採用意欲は旺盛な状況です。その他の分野におきましても、企業内の多様性向上やDX化、事業のグローバル化に向けて中途採用の強化を考える企業が増えてきております。さらに、少子高齢化に伴う構造的な人手不足も依然として解消されていないことから、企業の採用ニーズや人材の流動化は今後もさらに高まることが予想されます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは「関わった人全てをハッピーに」という経営理念に基づき、「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」を事業理念として、既存事業における新たなマーケットの開拓や新サービスを提案するとともに、注力する特定の分野においては投資を継続し、深耕することで当該マーケットでのNo.1を目指してまいります。また、海外進出先で人材採用や人事労務課題に直面する日系企業に加え、日本国内でも少子高齢化に伴う構造的な人手不足に悩む企業が多い中、グローバルHR(ヒューマンリソース)サービスの展開により、国内外各企業の人材採用をはじめとする様々な人事課題の解決に貢献する「世界の人事部®」構想の実現を目指してまいります。
さらには、これらの事業を推進するための人材採用及び育成、M&Aにも注力していくことで、グループとしての成長性を高めてまいります。
事業別の課題は次のとおりであります。
(人材サービス事業)
①人材紹介
人材紹介では、注力領域である建設や電気・機械、製薬、医療・福祉等の幅広い領域で、転職希望登録者獲得をはじめとする競合他社との競争激化が続いております。
こうした状況に対し、運営サイトの開発及び機能強化、コンテンツ拡充によるユーザビリティや満足度向上に加え、プロモーション強化によるブランド力向上、その他の手法の見直し等を進めるために積極的な投資を行い、転職希望登録者獲得と面談数確保に努めてまいります。また、既存領域の深耕と新規領域の開拓、顧客企業や転職希望登録者との関係性向上等を通じて競争優位性を高めてまいります。
さらに、2024年5月に取得したキャリタス看護事業(新卒採用サービス)の知名度や看護学生登録者等の事業資産を活かしたサービスを展開するとともに、積極的な人材採用と育成強化による若手社員の早期戦力化を図ることで組織全体の競争力を向上させてまいります。
②人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等
人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等では、注力職種である看護師において新型コロナウイルス感染症関連業務の派遣需要がほぼ終息となるものの、保育士とともに医療・福祉分野の派遣ニーズは今後も高い水準で推移すると予想されます。
こうした中、派遣スタッフの賃金相場の上昇に伴う負担コストの増加に対しては、派遣先施設等との派遣料金交渉を進めてまいります。
また、看護師紹介事業との連携による派遣サービスの浸透に加え、運営サイトのコンテンツ充実、セミナー開催、既存登録者へのアプローチ等、プロモーション以外の取り組みにも注力することで、効率的に派遣希望登録者の獲得や面談数の確保を行い、利益確保に努めてまいります。
(リクルーティング事業)
リクルーティング事業では、Indeedをはじめとするアグリゲーション型(特定の情報を複数のWebサイトから収集する検索エンジン型)や成果報酬型の採用メディアの台頭、さらには人材紹介やダイレクトリクルーティングの浸透等、人材採用手法の多様化が進み、これまで当社が取り扱ってきた採用メディアを取り巻く競争環境は変化が激しくなってきております。
こうした状況に対し、Indeed PLUSなどアグリゲーション型採用メディアの提案を軸に、採用戦略の構築支援や選考活動の改善支援など、採用成果を追求するための総合提案を強化してまいります。
また、採用ニーズが旺盛な特定業界への支援強化等、顧客基盤の拡大も進めてまいります。
(情報出版事業)
情報出版事業(2025年3月期の期首より地域情報サービス事業)では、顧客の広告手法についてWebメディアへのシフトがさらに進み、紙メディアへの広告出稿は今後も減少が予想されます。また、ポスティングサービスにおいても、コロナ禍に比べて配布需要の鈍化や慢性的なポスティングスタッフ不足が課題となっております。
こうした状況に対し、顧客ニーズに合わせた既存の自社メディアの改善を進めつつ、飲食店向けの販促広告では「Retty」、求人広告では「Indeed PLUS」等の新たなWebメディアの取り扱いを進め、メディアサービス全体として収益改善に取り組んでまいります。
また、ポスティングサービスは、富山県及び新潟県で配布エリアを拡大するほか、より細かな配布先の設定を可能とすることで顧客の配布ニーズに対応してまいります。ポスティングスタッフの人手不足に対しては、既存スタッフとの交流強化や職場改善に取り組むとともに、採用活動強化等を通じて配布組織の安定化を図ってまいります。
(HRプラットフォーム事業)
HRプラットフォーム事業では、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」に関して、競合サイトや類似イベント・サービスの増加による競争激化、HRソリューション企業内における広告投資基準の厳格化が進んでおります。
こうした状況に対し、広告掲載時の集客効果だけでなく、ブランド向上等に繋がるコンテンツづくりやサービスの拡充により、HRソリューション企業内における「日本の人事部」関連サービスの利用価値向上を図ってまいります。
さらに、多様化するユーザーの利用目的に対応したコンテンツも数多く揃えることで、会員数の増加及び利用頻度の拡大を図り、競争優位性を高めてまいります。
(海外事業)
海外事業では、欧米及びメキシコにおいて企業の採用ニーズは旺盛な状況が続いております。こうした好調な転職マーケットの中で、昨年、米国及びオランダにて新たに開設した拠点を軌道に乗せるべく、積極的な人材採用及び育成強化による営業体制の構築を進めつつ、更なる拠点展開に向けたマーケットリサーチも並行して行ってまいります。
一方、ベトナムやタイでは景気の減速感を受けて企業の採用スタンスは欠員補充が中心となり、中国においても景気悪化を背景に企業の採用マインドは低迷しております。こうした中、アジアにおいては人材採用や研修等による営業体制の強化に加え、新たなサービスの模索を通じて業績改善を目指します。
また、米国とメキシコ、英国とオランダをはじめとして子会社間の連携強化を進め、国際間の転職を希望する求職者への転職支援「クロスボーダーリクルートメント®」サービスにも注力してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティに関する考え方>
当社グループは、経営理念である「関わった人全てをハッピーに」のもと、真摯な企業努力により、事業理念である「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」企業として成長を続けることで、持続的な企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的な発展に貢献するという企業の社会的責任の遂行を目指しております。
(1)ガバナンス
<基本的な考え方>
当社は、真摯な企業努力により、ステークホルダーと良好な関係を構築・維持し、「持続的な企業価値の向上」を図りたいと考えております。そして、この考えに基づき事業展開することで、ステークホルダーの信頼と期待に応え、経営理念である「関わった人全てをハッピーに」を実現したいと考えております。
「持続的な企業価値の向上」を達成するためには、経営の透明性と効率性の確保、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応できる経営体制の確立、リスク管理をはじめとする内部統制機能の充実、ステークホルダーに対する説明責任の履行等が必要であり、これらが経営上の重要課題であると認識しております。これらの経営課題のうち、経営の透明性と効率性の確保は、コーポレート・ガバナンスの基本と捉え、以下に記載する体制を構築して、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を図っております。
また、ステークホルダーに対する説明責任の履行についても、コーポレート・ガバナンス上の重要課題と認識しており、企業・会社情報及び経営状況・経営方針や事業活動などの経営情報の適時適切な開示に努めております。
<コーポレート・ガバナンス体制>
当社は、毎月開催される定時取締役会に加え、必要に応じて臨時取締役会を開催し、スピーディーに重要事項を討議し、意思決定を行うとともに、適切に取締役の職務執行を監督・監視しております。
業務執行については、迅速かつ柔軟な業務執行体制を構築するため、執行役員制度を導入するとともに毎月グループ経営戦略会議を開催しております。グループ経営戦略会議では、業務執行状況と経営方針等の情報共有を図っておりますが、業務執行の健全性確保についても検証または検討しております。
また、当社は監査等委員会設置会社であり、監査等委員会は当社と利害関係がなく、独立性が確保された社外取締役である監査等委員によって構成されております。各監査等委員は取締役会をはじめ重要な会議に出席するほか、内部統制システムを用いた監査及び業務執行状況の調査等を通じ、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の職務執行及びグループの各事業活動が法令、定款及び社内規程等に適合しているか、監査しております。内部監査につきましては、代表取締役直轄の内部監査室がグループ全体を対象に業務執行の適正性を監査し、結果を代表取締役に報告しております。
さらに、当社は代表取締役会長兼グループCEOを委員長とするサステナビリティ委員会を、2024年4月1日付にて設置いたしました。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や重要課題の検討、目標とする指標の設定や進捗状況のモニタリングをはじめ、サステナビリティ推進に関する取り組みについての審議等を行い、取締役会へ付議または報告することで、経営によるサステナビリティの推進及びリスクや機会の適切なマネジメントに取り組んでおります。
こうした体制のもと、取締役会における適切な意思決定及び業務執行の機能強化・迅速化を図るとともに、監査等委員による取締役会の監査機能を一層強化し、コーポレート・ガバナンス体制の強化及び経営の効率化を推進していくことで、「持続的な企業価値の向上」に取り組んでおります。
(2)リスク管理
<リスク管理体制>
当社は、グループ経営に関するリスクに対して、毎月開催されている定時取締役会のほか、必要に応じて開催されている臨時取締役会において討議を行っております。また、グループ経営戦略会議を毎月開催し、経営の意思疎通を図るよう十分な討議を行っております。
さらに、取締役会の諮問機関としてリスクマネジメント委員会及びコンプライアンス委員会を設置し、リスクマネジメント体制の強化、法令遵守体制の構築に取り組んでおります。加えて、法令に抵触するようなリーガル・リスクについては、法務担当部門を中心に外部の顧問弁護士と連携を図りながら法令等の遵守に関する事項を審議しております。
これに加え、サステナビリティ委員会においてもサステナビリティ関連のリスクについてのマネジメントに取り組み、その内容に応じてリスクマネジメント委員会及びコンプライアンス委員会と連携を図っております。
一方、当社グループ会社につきましては、直接または間接的に経済的損失を及ぼす可能性、事業の継続を中断、停止させる可能性及び信用を毀損し、企業イメージを失墜させる可能性のあるリスク等を洗い出し、定期的に分析と見直しを行っております。なお、これらグループ会社のリスク情報については、必要に応じて当社の取締役より、当社の取締役会及びグループ経営戦略会議にて報告を行います。
海外の子会社における当該各国の経済的・社会的及び政治的リスクについては、定期的な監査等委員による子会社調査及び会計監査人による往査の実施により、相互に連携して現地の状況を把握するとともに、これらのリスクを未然にあるいは最小限に抑えることができるよう努めております。
<リスクマネジメントプロセス>
当社では、以下のプロセスに従い、リスク管理を行っております。
①リスク特定
適正かつ効率的な業務の遂行に関連する業務リスクや経営上の戦略的意思決定に関連する戦略リスクに関して、リスクの洗い出しを行います。
なお、経営環境の変化に応じて、定期的にリスク特定の基準の見直しを行います。
②リスク評価
各リスクの影響度及び発生可能性等を勘案してリスクを評価し、対応すべき優先順位を明確にします。
なお、経営環境の変化に応じて定期的にリスクの評価基準の見直しを行います。
③リスク対応
対応すべき優先順位に沿って、リスク対応を進めます。
なお、リスク対応後も日常的・継続的に経営リスクのモニタリングを行います。
(3)戦略
当社グループが展開する人材・情報ビジネスは、経営の4大資源であるヒト、モノ、カネ、情報の中でも特に重要な人材と情報を通じて、顧客企業の成長や特定の領域における人手不足等の社会課題の解決をサポートする非常に社会貢献度の高い事業です。こうした中、当社グループが今後も社会に貢献し、持続的に企業価値を向上させていくためには、当社グループの成長に必要な人材を獲得し続けることが必要となります。そのためにも、当社グループにおいては人材の採用及び育成を事業戦略上、重要な経営課題に掲げて採用活動に取り組むとともに、人材育成と実務能力の向上を目的とした社員研修に注力しております。
<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針>
当社グループでは、社員の成長を支援するために、富山県南砺市相倉の五箇山にある平村研修所における経営理念研修のほか、個人の成長や成長の状況に合わせた社内研修の実施や外部研修の活用等により、個人のスキルアップを支援いたします。
また、社員のモチベーションの維持・向上を目的として、毎年社員のキャリアに関するアンケートを取り、希望に応じて今後のキャリアの方向性を会社との間で協議することができる「キャリアチャレンジ制度」を設け、社員の多様なキャリア開発を会社として支援いたします。
<社内環境整備に関する方針>
当社グループでは、経験やスキルを身に付けた社員が長く働けるよう、仕事と生活の調和を図り、働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。
(4)指標及び目標
前述のとおり、当社グループでは、持続的な企業価値向上のため、事業戦略上、人材採用及び育成を重要視するとともに、働きやすい職場環境の整備を通じて社員の定着に努めております。そして、グループの成長に必要な人材の獲得及び定着に関する指標として「連結従業員数」、「離職率」、「新規雇用者の総数」、「離職者の総数」を重要な指標としてモニタリングしております。また、子を持つ社員にとっても魅力的で働きやすい職場環境を実現するという視点から、当連結会計年度より「育児休業後の復職率」も重要な指標としてモニタリングしております。
<連結従業員数>
2024年3月期末の連結従業員数は1,472名となり、前年同期比115名増となりました。
また、2025年3月期末の連結従業員数は1,705名を計画しております。
<離職率>
2024年3月期の従業員の離職率は8.3%となり、前年同期と比べ0.8ポイント改善いたしました。
2025年3月期も、引き続き2024年3月期の水準からの改善を目指してまいります。
<新規雇用者数及び離職者数>
2024年3月期における従業員の新規雇用者数は261名となり、前年同期比14名減となりました。また、離職者数は131名と、前年同期比2名増となりました。
2025年3月期も、引き続き積極的な採用活動を行ってまいります。また、人材の定着に向けたケアの充実や社内環境の整備を通じて離職者の抑制を目指し、2024年3月期の水準からの改善を目指してまいります。
<育児休業後の復職率>
2024年3月期における従業員の育児休業後の復職率は100%となりました。
2025年3月期も、人材の定着に向けたケアの充実や社内環境の整備を通じて、引き続き子を持つ従業員にとって魅力的で働きやすい職場環境の実現を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資判断あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の視点から記載しております。当社グループはこれらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場動向について
当社グループは、企業等の多様な人材ニーズに応えるべく人材関連のビジネスを展開しております。そのため当社グループの業績及び財政状態は、景気動向や雇用情勢の変化、企業等における人材採用活動や人材育成の動向等により影響を受ける可能性があります。
中長期的には、人口動態、就業意識の変化や働き方、雇用・就業形態の多様化等の構造的変化が生じた場合、顧客ニーズに応じたサービス提供等の変化が求められ、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、販促支援関連のビジネスにおきましては、飲食店やショップ、住宅メーカー等の販促広告を取り扱っておりますが、顧客企業の広告費は景況や消費活動に応じて変動するため、景気や消費動向の影響を受けやすい傾向があります。このため、国内の景気や消費動向が悪化した場合、顧客企業の販促ニーズの減退等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、取締役会等において定期的に各事業における市場動向や顧客ニーズの変化等について情報共有を図り、注力分野の選択や新たな商品・サービスの開発をはじめとする経営判断を迅速に行うことで、引き続きこれらのリスクの軽減に努めてまいります。
(2)人材の確保及び育成について
当社グループは、更なる業容拡大及び収益力強化、競合他社との差別化のために、優秀な人材の採用及び育成を重要な経営課題に掲げ採用活動に取り組むとともに、人材育成と実務能力の向上を目的とした社員研修にも注力しております。さらに、人材の定着に向けて、社員のエンゲージメントの向上、競合他社をはじめとするマーケットの状況を踏まえた処遇改善にも取り組んでおります。
しかしながら、各事業において、人材の採用及び育成が計画どおりに進まない場合又はスキルを有する人材の流出が生じた場合には、当社グループの事業活動に支障又は制約が生じる可能性があり、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)検索エンジンへの対応について
当社グループが運営するWebサイトの利用者の多くは検索サイトを利用して必要な情報を入手しており、当社グループが運営する各Webサイトにおいても、これらの検索サイトから多くの求職者や利用者を集客しております。また、より多くの求職者や利用者を集客するためのコンテンツ制作、ユーザビリティ向上のためのシステム構築、効果的なプロモーション実施のためのスキルに長けた人材を積極的に採用し、Webサイトの運営に取り組んでおります。今後、検索エンジン運営者による上位表示方針の変更等により、検索結果の表示が当社グループに優位に働かなくなり、当社グループが運営する各Webサイトの集客効果が低下した場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権について
当社グループは、Webサイトの運営や情報誌等の発行のほか、Webシステムやモバイルアプリの開発等にあたり、第三者の知的財産権侵害の可能性について調査可能な範囲で対応を行い、著作権や商標権等の知的財産権を侵害することのないよう努めております。しかしながら、予期せず第三者の知的財産権を侵害するなどの事態が発生した場合には、損害賠償請求や重要な技術の使用停止措置等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(5)訴訟に関するリスクについて
当社グループは、上場企業としての社会的責任を果たすため、社内研修の充実、諸規程の整備及び運用等、適宜、内部管理体制及び教育制度等を整備しております。また、適切な内部統制システムの整備及び運用については、事業展開の状況に応じて徹底を図ってまいります。しかしながら、当社グループ及び役職員の瑕疵に関わらず、取引先や第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟等に至った場合、当社グループの事業活動に支障が生じるとともに、損害賠償請求等の発生や社会的信用の失墜により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(6)災害及びシステム障害等について
当社グループの国内拠点は東京、大阪、愛知、石川、富山、福井、新潟、長野にて事業を展開しており、海外におきましてはニューヨーク、ロサンゼルス、ダラス、シカゴ、オレンジカウンティ、アトランタ、上海、ロンドン、ホーチミン、バンコク、アグアスカリエンテス、ケレタロ及びアムステルダムに事業拠点を有しております。そのため、これらの地域において大規模な地震・風水害等の自然災害や戦争、テロ、その他不測の事故や新型コロナウイルス感染症に代表される新たな感染症の発生・拡大により、当該地域の事業所や人的資源等において直接の被害を被った場合や、取引先の採用活動や販促活動・事業活動に支障が生じた場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
これらの災害等に対し当社グループは、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするためのBCP(事業継続計画)を策定・整備し、局地的な災害・事故等の発生時には他拠点からの事業活動・業務支援が行えるよう、引き続き体制を整えてまいります。
また、当社グループの事業はコンピュータシステム及びそのネットワークに多くを依存しております。このため、広範な自然災害や事故の発生、コンピュータウイルスやハッカーの侵入等により、システム障害が生じた場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(7)法的規制等について
当社グループのうち、人材サービス事業においては、有料職業紹介及び労働者派遣等にかかる厚生労働大臣の許可又は届出が必要となるほか、職業安定法、労働者派遣法及び関連法規の規制を受けております(海外においても、事業にかかる規制が同様に存在しております)。今後、何らかの理由により当社グループにおいて法規制等に抵触する事由が生じた場合や、法規制の新たな制定や重要な変更が生じた場合には、当社グループの事業活動に支障が生じるリスクがあり、これにより業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、連結子会社㈱ワークプロジェクトにおいて運営しております各保育施設は、主に児童福祉法に基づき許認可を受けておりますが、今後、何らかの事由によりこれらの許認可が取り消された場合や営業停止となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす場合があります。
これらに対し当社グループは、関連法案に関する法改正等の動きを注視し、法規制の新たな制定や重要な変更による事業活動への影響を軽減するための体制・施策等の構築等に、引き続き取り組んでまいります。
(8)個人情報管理について
人材サービス事業においては、労働者保護の観点から転職希望者や派遣登録者等の個人情報の管理について必要な対策を講じることが義務付けられており、情報漏洩等については罰則規定も設けられております。また、保育施設においては数多くの児童及びその保護者の氏名や住所等の個人情報も所持しております。
当社グループにおいては、これら転職希望者や派遣登録者、保育施設の利用者等の個人情報について、個人情報保護方針に基づきプライバシーマーク制度を導入するなど、Webサイト及びシステムにおけるセキュリティや事業所における管理体制強化を推進しており、一定の管理体制を構築しているものと認識しております。
しかしながら、当社において何らかの理由により当該個人情報等の漏洩が生じた場合には、当局より業務停止や許認可取消等の処分が行われる可能性があります。また、損害賠償請求等の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)業績の季節的変動について
当社グループは、人材サービス事業(人材紹介)において、紹介した転職希望者が企業等に入社・入職した日付を基準として売上計上することとしておりますが、これにより入退社や配置転換等と連動した人事異動が行われる年度始め(4月)に利益が集中する傾向があります。特に、看護師分野において4月入職の割合が高いことを要因として、当社グループの連結業績は、第1四半期に利益が集中する傾向が生じておりますが、人材サービス事業の業績動向により、今後も当該傾向が継続する可能性があります(2024年3月期の四半期業績は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (2)その他 当連結会計年度における四半期情報等」をご参照下さい)。
これに対し当社グループでは、看護師分野以外の領域における人材紹介マーケットの開拓を進めることで、引き続き業績の平準化に努めてまいります。
(10)人材サービス事業(人材紹介)における看護師分野への注力について
当社グループは、人材サービス事業(人材紹介)において看護師紹介業務に注力しております。近年の医療機関等における慢性的な看護師不足を背景として、看護師分野の人材需要は高水準で推移しており、今後も同様の傾向が続くものと当社は想定しております。しかしながら、医療分野における規制緩和等により人材ニーズが減少する場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当該業務分野は事業者間の受注競争や転職希望者の獲得競争が激しい状況にあり、今後も一層の激化が想定されます。当社グループにおいては、効果的なプロモーションやきめ細やかなコンサルティングの実施等により競争力を維持・向上させていく方針ですが、競合他社との差別化が困難となった場合には、受注や利益が減少し、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、看護師分野以外の領域への人材紹介の営業強化及び新規マーケットの開拓を進めていくことで看護師紹介への依存度の軽減を図り、業績の安定化に取り組んでまいります。
(11)保育施設における事故について
人材サービス事業において、連結子会社㈱ワークプロジェクトは保育施設を運営するにあたり、お預かりする児童の安全を第一に考え、万全の体制で業務に臨んでおります。しかしながら、事故の可能性は皆無とは言えず、万が一、施設運営に関する重大な事故やトラブル等が発生した場合、当局から営業停止の命令を受ける、もしくは、多くの児童が退園する等の可能性があります。また、事故等の内容によっては損害賠償請求の発生や社会的信用の失墜により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(12)リクルーティング事業におけるリクルート社との取引について
当社グループは、リクルーティング事業において、リクルート社の求人広告掲載枠を取り扱っております。当該取引については、代理店形態(当社が広告掲載枠を仕入れて広告主に販売する形態)及び販売委託形態(当社が広告主の求人広告を同社に取次ぎ販売委託手数料を受領する形態)があり、これらは契約に基づき求人広告媒体ごとに取引形態が定められております。
なお、リクルーティング事業において取り扱う求人広告掲載枠は、一部を除きリクルート社の求人広告媒体に掲載されるものであり、当該事業における同社に対する依存度は高い水準にあると言え、同社の営業戦略・販促施策の変更(契約形態の変更を含む)や同社求人広告媒体の優位性低下等が生じた場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループでは、顧客企業の採用戦略構築のためのコンサルティングや採用サイトをはじめとする採用ツールの制作、採用実務請負、入社後の社員研修等、求人広告取り扱い以外のサービスの充実、営業強化により、リクルート社の求人広告掲載枠取り扱いへの依存度の軽減に取り組んでまいります。
(13)情報出版事業における配布業務及び印刷業務について
情報出版事業においては、連結子会社㈱カラフルカンパニーにおいて、生活情報誌を各家庭に対して戸別に配布しておりますが、ポスティング方法や時間帯等に起因して、配布対象地域の各家庭からクレーム等が生じる可能性があります。なお、一部地域の情報誌については、配布業務を外部事業者に全て委託しておりますが、何らかの理由で配布業務委託の継続が困難となった場合、当該事業の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、情報出版事業については、全ての情報誌媒体の印刷業務を外注しておりますが、外注先における何らかのトラブル等により、情報誌媒体の発行日及び配布に遅延が生じた場合は、顧客及び読者からの信頼性低下により、当該事業の事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、情報誌媒体の印刷に必要な紙やインク等の原材料費の高騰等により情報誌媒体の印刷に係る外注費が上昇を続けた場合、当該事業の事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)HRプラットフォーム事業における競争環境について
HRプラットフォーム事業において連結子会社㈱HRビジョンが展開する、「日本の人事部」ブランドを活用したHRビジネス企業向けWebプロモーション支援事業は、HR領域に特化したサービスであることや当該領域において既に「日本の人事部」ブランドが浸透していること等から参入障壁は比較的高い事業となっております。しかしながら、人的資本への投資ニーズの高まり等を背景にマーケットとしての魅力がさらに高まり、競合他社のサービス拡充等により競争激化が生じた場合には、当該事業の事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、既存商品及びサービスの質向上や営業強化に加え、新たなマーケットの開拓や新商品・サービス・ビジネスモデルの開発に取り組むことで、引き続き他社との差別化に努めてまいります。
(15)海外展開について
当社グループは、米国(ニューヨーク・ロサンゼルス・ダラス・シカゴ・オレンジカウンティ・アトランタ)、中国(上海)、英国(ロンドン)、ベトナム(ホーチミン)、タイ(バンコク)、メキシコ(アグアスカリエンテス・ケレタロ)及びアムステルダムに子会社を有しており、人材紹介・人材派遣・人事労務コンサルティング等の事業を展開しております。海外での事業展開においては、為替変動、現地の法規制や行政政策の変更、人件費等の変動、戦争やテロ・暴動・感染症の発生及び拡大等の危険性など、様々なリスクが潜在しており、これらの動向により、当社グループの事業展開、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う経済活動の正常化やインバウンド需要の高まり等を背景に、景気は緩やかに回復いたしました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化をはじめとする不安定な国際情勢、資源価格や原材料価格の高騰による物価上昇、円安基調の継続、中国経済をはじめとする海外景気の減速懸念等、景気回復の足かせとなる問題は依然として解消されていない状況です。
また、国内の雇用情勢は2月の有効求人倍率(季節調整値)が1.26倍と改善傾向にあるものの、依然として企業等の人手不足は解消されておりません。
このような事業環境の中、当社グループでは既存事業のさらなる拡大とともに、新たなマーケットの開拓、グループ内での連携強化等により、顧客企業の人材に関する課題解決をサポートし、他社との差別化や顧客満足度の向上に取り組んでおります。また、人材への投資による事業基盤の強化も進めております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における連結総資産は22,042百万円(前年同期比9.2%増)となり、前連結会計年度末と比較して1,863百万円増加しました。
連結総負債は5,622百万円(前年同期比12.9%減)となり、前連結会計年度末と比較して832百万円減少しました。
連結純資産は16,420百万円(前年同期比19.6%増)となり、前連結会計年度末と比較して2,695百万円増加しました。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの売上高は29,487百万円(前年同期比6.1%増)、営業利益は4,964百万円(同10.6%増)、経常利益は5,029百万円(同10.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,505百万円(同7.5%増)と、売上高、利益とも過去最高を更新いたしました。
なお、当連結会計年度の期首より、事業内容をより適正に表示するため、従来「IT・ネット関連事業」としていた報告セグメントの名称を「HRプラットフォーム事業」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。
セグメントごとの経営成績(報告セグメント)は、次のとおりであります。
(人材サービス事業)
1.人材紹介
人材紹介では、注力分野である建設や電気・機械、自動車等の分野における各職種に加え、医療・福祉分野における看護師や保育士の採用ニーズが引き続き旺盛でした。こうした中、注力職種やエリア等の新たなマーケットの開拓や登録者獲得に向けた効果的なプロモーション、求人企業及び転職希望登録者との面談強化、迅速かつ丁寧な対応等に継続して取り組みました。この結果、建設関連職種や各種エンジニア、看護師、保育士をはじめとする特定領域の人材紹介は堅調に推移しました。
2.人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等
人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等では、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、コロナ関連業務の派遣ニーズは大きく減少しました。こうした中、上半期から取り組みを進めてきた介護施設や病院等への営業強化に加え、派遣希望登録者との面談強化の取り組みが奏功し、看護師派遣の業績は堅調でした。また、保育士派遣も、旺盛な派遣ニーズが続く中、派遣希望者と派遣先とのマッチング精度の向上に取り組んだことで派遣稼働者数が順調に拡大し、増収となりました。
これらの結果、人材サービス事業の売上高は20,631百万円(前年同期比8.1%増)、営業利益は4,435百万円(同14.4%増)となりました。
(リクルーティング事業)
リクルーティング事業では、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う行動制限の緩和や円安によるインバウンド需要の拡大や新年度からの学生アルバイトの入替等を背景に、飲食業や宿泊業、流通業、サービス業等において、企業の採用ニーズが旺盛でした。また、慢性的な人手不足に悩む医療・福祉分野でも採用ニーズは引き続き旺盛でした。
こうした中、注力商品のIndeed及び2024年1月より販売を開始したIndeed PLUSの取り扱いが順調に拡大しました。また、コロナ禍からの経済回復に伴う企業の新卒採用意欲の高まりを背景に、新卒採用メディアの取り扱いは堅調でした。一方、旺盛な求人需要を背景とする広告効果の減退、Indeed PLUSへの乗り換え等を背景に、既存の主力アルバイト・パート及び派遣スタッフ採用メディア、中途採用のための正社員採用メディアの取り扱いが減収となりました。
求人広告取り扱い以外のサービスは、新卒採用のためのインターンシップや会社説明会のプログラム作成等のコンサルティング領域が好調だったことに加え、採用サイトや会社案内等の制作領域の業績も堅調でした。
この結果、リクルーティング事業の売上高は3,242百万円(前年同期比3.9%減)、営業利益は559百万円(同13.4%減)となりました。
(情報出版事業)
情報出版事業では、生活情報誌において、新型コロナウイルスの感染症の5類移行に伴う販促マインドの回復、北陸及び新潟の旺盛な求人需要を受けて業績は堅調に推移しておりました。しかしながら、2024年1月に発生した能登半島地震の影響による広告出稿の見合わせ等もあり、生活情報誌全体の業績はほぼ横ばいとなりました。また、各家庭に折り込みチラシ等を配布するポスティングサービスも、住宅イベントや飲食店等のチラシの取り扱いが伸び悩み、こちらも業績はほぼ横ばいとなりました。
一方、「ココカラ。」ブランドで展開するコンサルティングサービスは、北陸及び新潟の旺盛な採用ニーズを背景に、北陸におけるメーカーの工場新設に向けた大規模採用プロジェクトへの参画に加え、登録者獲得のためのプロモーション強化や面談強化等の施策も奏功し、転職領域が好調でした。さらに、住宅領域やブライダル領域も増収となり、全領域とも業績が拡大しました。その他、Indeedの取り扱いやWeb制作をはじめとするWeb関連サービスの業績も順調に推移しました。
この結果、情報出版事業の売上高は2,491百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益は343百万円(同77.5%増)となりました。
なお、2025年3月期の期首より、事業内容をより適正に表示するため、従来「情報出版事業」としていた報告セグメントの名称を「地域情報サービス事業」に変更いたします。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。
(HRプラットフォーム事業)
HRプラットフォーム事業において、「日本の人事部」関連サービスに関するマーケットは、HR領域の課題解決のための業務の効率化やDX化に向けた設備投資、採用や育成に関するサービス等の販促ニーズが堅調に推移しております。また、人事労務に関する研修やセミナーへの集客ニーズも高い状況が続いております。こうした中、コロナ禍の収束後に販促活動を抑制していた一部顧客の広告出稿が回復してきたことで、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」の広告収入が改善傾向となりました。さらに、企業の人事リーダーや各分野の有識者、人事サービス企業の3者が対面で議論し、交流するリアルイベントとして2024年2月に開催した「HRカンファレンス2024-冬-」の成功も、下半期過去最高益更新を後押ししました。
この結果、HRプラットフォーム事業の売上高は1,321百万円(前年同期比20.5%減)、営業利益は680百万円(同11.1%減)となりました。
なお、2022年10月に㈱クロノスの全株式を譲渡したことにより、当連結会計年度には同社の業績が含まれておらず、前連結会計年度(前第2四半期連結累計期間までは同社業績を含む)との業績に差異が生じております。
(海外事業)
海外事業において、米国では自動車関連メーカーや食品メーカー等の製造業、物流やIT業界、商社をはじめ、引き続き幅広い分野で採用ニーズが旺盛でした。また、現地日系企業の中にも日本語を必要としない職種の採用ニーズが多いことから、日英バイリンガル人材だけでなく、職務経験を重視した人材の獲得強化にも努めました。こうした中、2022年以降に開設したシカゴ、アーバイン(現オレンジカウンティ)、アトランタの運営も軌道に乗り、人材紹介、人材派遣ともに増収となりました。また、メキシコでも自動車関連企業を中心に、製造業各社における生産拡大の動きに伴う日本からの出向者の増加に合わせて通訳や翻訳の採用ニーズが高まりました。さらに、エンジニアや営業職をはじめ現地人材の紹介にも注力したことで、業績は拡大しました。
英国では、企業の採用ニーズが引き続き旺盛な状況の中、人材派遣が増収となりました。また、人材紹介も営業体制の強化や新規顧客開拓等に取り組んだことにより、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント®)を含め順調に推移しました。さらに、2023年4月にCentre People Appointments Ltdがオランダに設立したCentre People Appointments B.V.においても、新規顧客開拓やセミナー開催等を通じて採用ニーズの獲得や企業との関係性構築が進む等、運営が軌道に乗り始めました。
中国では、中国経済の悪化の影響を受けて業績不振に陥る現地日系企業も増える中、各種法令変更に伴うリスク管理の必要性から相談顧問サービスは底堅く推移しました。また、人材育成のための研修サービスも必要性の高さから単発での受注が発生する等により、人事労務コンサルティングは増収となりました。一方、人材紹介は、国内景気の厳しさを背景に企業の採用ニーズが採用難易度の高い人材に制限される中、細かなニーズへの対応や継続的な営業強化により業績は改善傾向となりました。ベトナムでは、業績を牽引してきたIT・建築業界における顧客企業の採用基準の高まりに加え、製造業やサービス業、商社等、その他の領域においても欠員補充ニーズが中心となる等、厳しい事業環境となりましたが、ベトナムへ新たに進出する企業への顧客開拓を進めたことで増収となりました。さらに、タイでも採用ニーズは欠員補充中心という状況が続く中、営業職や日本語が話せる人材等の比較的採用ニーズと転職希望者の多い職種を中心に営業強化に取り組み増収となりました。
この結果、海外事業の売上高は1,801百万円(前年同期比32.7%増)、営業利益は170百万円(同62.6%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増減額は、法人税等の支払、配当金の支払等はありましたが、税金等調整前当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ783百万円資金が増加し、当連結会計年度末における残高は12,997百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
法人税等の支払1,574百万円等により資金が減少しましたが、税金等調整前当期純利益5,028百万円の計上等により資金が増加したため、営業活動の結果得られた資金は2,973百万円(前年同期比16.1%減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入17百万円等により資金が増加しましたが、有形及び無形固定資産の取得による支出751百万円等により資金が減少したため、投資活動の結果使用した資金は750百万円(前年同期比50.7%増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払1,493百万円等により資金が減少したため、財務活動の結果使用した資金は1,493百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.仕入実績
当社グループの各事業における仕入実績につきましては、提供するサービスの性格上該当事項がない又は金額が僅少であることから、記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
人材サービス事業(千円) |
20,631,273 |
108.1 |
リクルーティング事業(千円) |
3,242,138 |
96.1 |
情報出版事業(千円) |
2,491,027 |
107.4 |
HRプラットフォーム事業(千円) |
1,321,055 |
79.5 |
海外事業(千円) |
1,801,687 |
132.7 |
合計(千円) |
29,487,181 |
106.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
当連結会計年度末における連結総資産は22,042百万円(前年同期比9.2%増)となり、前連結会計年度末と比較して1,863百万円増加しました。主な要因は、繰延税金資産は減少しましたが、現金及び預金、投資有価証券が増加したこと等によるものであります。
連結総負債は5,622百万円(前年同期比12.9%減)となり、前連結会計年度末と比較して832百万円減少しました。主な要因は、繰延税金負債は増加しましたが、賞与引当金、未払法人税等が減少したこと等によるものであります。
連結純資産は16,420百万円(前年同期比19.6%増)となり、前連結会計年度末と比較して2,695百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加等によるものであります。なお、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して6.5ポイント改善し74.5%となりました。
b.経営成績の分析
売上高
当社グループでは既存事業のさらなる拡大とともに、新たなマーケットの開拓、グループ内での連携強化等により、顧客企業の人材に関する課題解決をサポートし、他社との差別化や顧客満足度の向上に取り組んでおります。また、人材への投資による事業基盤の強化も進めております。
この結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は、29,487百万円と前年同期比6.1%の増加となりました。人材サービス事業の売上高は、建設関連職種や各種エンジニア、看護師、保育士をはじめとする特定領域の人材紹介が堅調に推移し、また、看護師派遣の業績も堅調に推移したこと等により、20,631百万円(前年同期比8.1%増)となりました。また、他のセグメントについては、リクルーティング事業では、注力商品のIndeed及び2024年1月より販売を開始したIndeed PLUSの取り扱いが順調に拡大し、新卒採用メディアの取り扱いも堅調でしたが、既存の主力アルバイト・パート及び派遣スタッフ採用メディア、中途採用のための正社員採用メディアの取り扱いが減収となったこと等により売上高は3,242百万円(同3.9%減)となりました。情報出版事業では、生活情報誌全体の業績や各家庭に折り込みチラシ等を配布するポスティングサービスの業績はほぼ横ばいとなりましたが、「ココカラ。」ブランドで展開するコンシェルジュサービスにおいては、転職領域が好調であり、さらに住宅領域、ブライダル領域においても増収となったこと等により売上高は2,491百万円(同7.4%増)となりました。HRプラットフォーム事業では、コロナ禍の収束後に販促活動を抑制していた一部顧客の広告出稿が回復してきたことで、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」の広告収入が改善傾向となり、売上高は1,321百万円(同20.5%減)となりました(2022年10月に㈱クロノスの全株式を譲渡したことにより、当連結会計年度には同社の業績は含まれておりません)。海外事業では、米国、英国において人材紹介、人材派遣の業績が拡大したこと等により売上高は1,801百万円(同32.7%増)となりました。
売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度における当社グループの売上原価は、前年同期比2.2%増の9,576百万円となりました。人材紹介の売上高が増加したこと等もあり、売上原価率は32.5%となり、前年同期より1.2ポイント改善いたしました。
販売費及び一般管理費は、人材投資に係る人件費の増加等もあり、前年同期比7.3%増の14,945百万円となりました。
営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、営業利益は前年同期比10.6%増の4,964百万円となりました。営業外収益において、書籍販売手数料20百万円等の計上、また、営業外費用において支払利息1百万円等が計上された結果、経常利益は前年同期比10.7%増の5,029百万円となりました。
さらに、特別利益において投資有価証券売却益3百万円、また、特別損失において投資有価証券売却損4百万円等を計上したほか、法人税等1,521百万円の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比7.5%増の3,505百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上等により、投資を行うための十分な資金を獲得しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に事務所等に係る設備投資や社内システムへの投資であります。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払でありますが、フリー・キャッシュ・フローの範囲内であり、事業の運営に影響を与えるものではありません。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
資本政策については、財務の健全性や資本効率等を考慮し、将来の事業展開のための内部留保の充実と、株主への利益還元とのバランスを考えながら実施していくことを基本としております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、従業員に係る人件費等であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、事業所等の附属設備への投資、社内システムへの投資であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、必要に応じて金融機関から資金調達することとしております。また、設備投資や長期運転資金についても必要に応じて金融機関から資金調達することとしております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は123百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は12,997百万円となっております。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは事業規模の拡大を目指しつつ、独自の営業網や転職希望登録者の獲得ノウハウ等、グループ内の事業資産の有効活用により、収益力重視の体制を構築していく方針です。また、既存事業の強化や新たな事業領域の開拓に向けて必要な投資についても積極的に推進していくことで、中長期的に安定的な成長と堅実な財務体質を実現させ、売上高経常利益率及び自己資本当期純利益率(ROE)の向上を目指してまいります。
当連結会計年度においては、売上高経常利益率は17.1%(前年同期比0.8ポイント改善)となり、自己資本当期純利益率は23.3%(前年同期比2.0ポイント低下)でありました。引き続き当該指標の向上に取り組んでまいります。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものはありません。
当連結会計年度において締結した経営上の重要な契約等は、下記のとおりであります。
株式会社リクルートとの契約
当社はリクルーティング事業に関し、2023年4月1日付で株式会社リクルートとの間で下記の契約を締結しております。
会社名 |
契約内容 |
契約期間 |
株式会社リクルート |
当社が顧客に対し広告掲載の募集、広告出稿に関するコンサルティング、依頼された広告掲載の原稿作成等の業務を行い、同社に対して広告取次ぎを行い、同社が当社に対して一定の代理店手数料(代理店形態)、ないし販売委託手数料(販売委託形態)を支払う。 |
自 2023年4月1日 至 2024年3月31日 |
(注)1.当該契約については1年毎の更新でありますが、代理店形態は1980年9月より継続されており、販売委託形態は2001年6月より継続されております。
2.当該契約については、2024年4月1日付で新たに契約を締結しております。
該当事項はありません。