第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中に将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 2023年10月2日、㈱リケンと日本ピストンリング㈱は経営統合し、リケンNPR㈱を設立いたしました。

 経営統合にあたり、リケンNPRグループの経営理念として次のMission、Vision、Valueを定め、持続可能な社会の実現に向け、努力と挑戦を続けてまいります。

 

 リケンNPRグループ経営理念

 Mission 生み出す力で人と地球の「今と未来」を支えます

 Vision  人と技術の融合によりイノベーションを創出し、変革に挑戦し続けます

 Value  信頼の「環」:ステークホルダーの皆様とのつながりを大切にし、高品質の製品とソリューションの提供を通じて企業価値を向上させます

成長の「環」:互いの価値を認めて尊重し合い、新たな挑戦を続けることで会社と従業員がともに成長します

社会の「環」:暮らし、環境の社会課題解決に貢献します

 

(2) 経営環境及び経営戦略

 当社グループは、2024年2月14日に2026年度を最終年度とする第一次中期経営計画を策定いたしました。

 その中期経営計画と定量目標は以下のとおりとなります。

 

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更に事業戦略として、既存事業をピストンリング事業とベース事業、ネクストコア事業に区分するとともに、新製品新事業についてもネクストコア事業に含め、以下の方針で取り組んでまいります。

● ピストンリング事業 ➡ 収益力強化

EV化進展の中でも引き続きエンジンが主力となる「商用・産業用」、「補修用」、「船舶用」に強みを発揮し、豊富な製品ラインナップを持つ「グローバルNo.1サプライヤー」の地位を維持しつつシナジー創出・抜本的生産性改善による収益力強化に取り組みます。また、カーボンニュートラルを念頭にエンジンの機能向上、水素・代替燃料対応等の技術革新に貢献してまいります。

● ベース事業 ➡ 収益力強化

焼結・樹脂・素形材部品等の分野において、グローバルニッチトップのサプライヤーとして、今後予想されるエンジン向けの減産を得意分野でのシェア拡大により補いつつ、合理化、製品の入れ替え等を通じて利益率改善に取り組みます。また、配管・建設機材分野については、子会社化した日本継手㈱とともに、積極的に事業拡大を図ります。

● ネクストコア事業 ➡ 売上規模拡大・中核事業化

熱エンジニアリング分野については、㈱シンワバネスの子会社化を通じて、今後も長期的な市場規模拡大が見込まれる半導体製造装置に必要となる発熱体について、幅広い用途・温度域の製品ラインナップを獲得し、当社グループが持つ既存リソースと合わせ、事業の大幅な拡大が可能となりました。その他EMC(※)分野等、次代を担う事業の拡大・基盤強化に加え、電動化ユニット、機能性樹脂、磁性材、医療機器等の新製品開発についても戦略的な投資等を進め、中核事業化に取り組んでまいります。

(※)電子機器等に関する電波影響を受けない・及ぼさない「電磁適合性」を確保するための設備・製品

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

自動車業界は100年に一度と言われる大きな変革の中にあり、エンジン部品を巡る市場環境は確実に厳しくなっております。そのような中で、内燃機関が当面のパワートレインの主力であるとの認識のもと、地球環境に優しいエンジン部品の開発を進めることが当社に課された使命であるとともに、事業環境変化に合わせてSDGsやESG、脱炭素といったグローバルな潮流を捉えた新たな事業領域への展開も経営上の重要な課題であると認識しております。

このような事業環境認識のもとで、当社は、「生み出す力で人と地球の“今と未来”を支えます」を経営理念のミッションに定め、第一次中期経営計画を策定いたしました。本計画において優先的に対処すべき課題、また、それらの課題に対する取り組み方針等については、上記のとおりと認識しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

 当社は、経営理念の実現に向けサステナビリティ基本方針を定め、SDGsの達成に貢献し、環境性能に優れた製品をより広く提供するなど、会社の持続的な発展と持続的な企業価値の向上を目差しています。

 

<サステナビリティ基本方針>

 

当社グループは、経営理念に掲げる「生み出す力で人と地球の「今と未来」を支える」ことを使命とし、ステークホルダーの皆様から信頼の得られる事業活動を行い、今までなかったものを創りだし、高品質の製品とソリューションの提供を通じた持続的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

■地球環境への貢献(Environment)

当社グループは、地球環境の保全が人類共通の重要課題であることを認識し、カーボンニュートラルをはじめとした環境負荷の低減に積極的に取り組みます。

 

■多様性と人権の尊重(Social)

当社グループは、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針を定めるとともに、国際的に認められた人権の原則を理解し尊重します。

 

■健全な企業統治(Governance)

当社グループは、「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示」、「経営の効率性・適法性・透明性の向上」、「株主との対話促進」を基本とし、コーポレート・ガバナンスの充実に努めるとともに、事業を行う各国・地域の法令を理解し遵守します。

 

① ガバナンス

 

 当社ではサステナビリティに関わる活動をグループで統一的に推進するため、取締役会の下、COOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ活動に関する方針や施策の審議・決定、進捗の確認、取締役会への報告を行っています。

 また、サステナビリティ委員会の下にコンプライアンス部会、カーボンニュートラル部会、リスクマネジメント・BCM部会を設置し、分野別にグループ重要課題の推進を行っております。

 

 

<サステナビリティ委員会の主な議題(2023年度)>

2023年10月

サステナビリティマネジメント(運営方針、部会の設置)

2023年11月

サステナビリティ基本方針、マテリアリティマトリックス

2024年 1月

サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の特定、

 KPI案レビュー

2024年 3月

サステナビリティレポート(統合報告書)作成進捗レビュー

 

 

<サステナビリティ推進体制>

 

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② 戦略

 当社はサステナビリティ経営を実現するために、SDGsなどサステナビリティに関連する課題・ゴールが当社の事業に与える影響と、それによるリスクと機会を分析し、適切な対応が企業経営に反映されることが重要と認識しています。

 この考えに基づき、当社のマテリアリティに関連するリスクと機会を抽出し、それらをアクションプラン、KPIに展開することで対応しています。

 

 

<マテリアリティの特定プロセス>

 

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STEP1 課題の認識

各課題を、「ステークホルダーにとっての重要性」「当社グループの重要性」の2軸でマッピングし、優先順位づけを行いました。さらに現在の自らの強みと将来果たすべき役割について考慮した上で、当社が事業を通じ、社会への責任として取り組むべき課題と、当社の事業基盤強化のために取り組むべき課題を整理しました。

 

STEP2 課題の整理

各課題について中長期的に財務や事業戦略への影響が大きいもの、当社グループとしてKPIを定めて具体的かつ継続的な取り組みを行えるものを抽出しました。

 

STEP3 絞り込み

抽出された課題及び当社グループにおけるその位置付けについてサステナビリティ委員会及び経営会議での審議を経て、取締役会決議により、社会の持続的な発展と持続的な企業価値の向上を目指すためにサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しました。

 

 

<特定した各マテリアリティのリスクと機会>

 

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※ ICE:内燃機関/エンジン(Internal combustion engine)

 

 

③ リスク管理

 当社グループ全体におけるリスク管理体制を構築し、適切なリスク対応を実施するため、サステナビリティ委員会の下にリスクマネジメント・BCM部会を設置し、リスク管理及び事業継続計画(BCP)の定着と運用の徹底を図るために必要な活動を推進しています。

 

④ 指標と目標

 当社はサステナビリティを推進するために、各マテリアリティからアクションプラン、KPIとして指標と目標に展開しています。

 また、当社は第一次中期経営計画(2024年度~2026年度)において非財務目標を設定するサステナビリティ経営を掲げ、特に成長基盤の整備に必要と考えるマテリアリティ6項目を主要マテリアリティと位置づけ、ESG・人的資本投資の4分野に整理の上、その期間におけるKPIを設定し、推進しております。

 

<中期経営計画におけるサステナビリティ目標>

 

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(2)気候変動

 当社は、気候変動を含む環境問題を重要な経営課題であると認識し、サステナビリティ委員会を設置し、環境負荷低減に貢献する製品供給のみならず、事業活動におけるCO排出量削減等の環境目標を定め対応するとともに、具体的な活動となるCO排出量の削減・カーボンニュートラル(CN)活動、それらに貢献する新製品開発などの進捗状況を評価しています。

 これらの取り組みを気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示を進め、ステークホルダーの皆様との信頼関係の強化につなげてまいります。

 なお、CDPの質問書にも回答を予定しています。

 

① ガバナンス

 当社は気候変動対応における実効性を確保するために、気候変動対応において重要となるCN対応においては、サステナビリティ委員会の傘下に専門部会であるCN部会を設置し、同じく主要な事業子会社の専門部門(㈱リケン:CN推進室、日本ピストンリング㈱:サステナビリティ推進室)を事務局とし、各種情報収集、グループ各社の各部門と連携した具体的な推進を行っています。

 また、その他の環境関連事項に関する計画の実行においては、事業子会社各社に環境委員会を設置し、推進を行っています。

 取締役会は気候変動に係る基本方針の策定や重要課題を設定するとともに、気候変動に関する(リスクと機会の両面で)業務執行に対する指示・監督・モニタリングを行っています。

 

 

<ガバナンス体制>

 

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② 戦略

 当社はサステナビリティ経営を実現するために、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスク(移行リスク、物理リスク)と機会に基づいて分析し、適切な対応が企業経営に反映されることが重要と認識しています。

 この考えに基づき、気候変動対策が推進されるシナリオ(NZE、2100年で1.4℃)、既存政策の成り行きであるシナリオ(STEPS、同2.5℃)の2つを想定し、下記のとおりリスク(移行リスク、物理リスク)と機会を抽出し、対応しています。

 また、中長期の時間軸はICE関連製品売上高比率の高い当社グループへの影響がICE変動時期、SDGsの達成年と重なる2030年を設定しています。

 

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<主なリスクの抽出>

 

分類

 

特定されたリスク

影響度

主要な財務上の潜在的影響

対応策

移行

リスク

法規制

ICE車の

販売規制

ピストンリング事業の売上減

(非ICE車の電気自動車世界販売シェアは2022年:10%から2030年:40~60%に増加)

非ICEかつ成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)のネクストコア事業の売上拡大

炭素税

2030年度負担の炭素税総額は成り行き(2022年度と同排出量の場合)最大31億円

・2030年度のCO₂排出総量

 削減目標を設定

 (2013年度比▲51%)

・省エネ、再エネの積極的

 な導入、エネルギー置換、

 クレジット導入

・ICP制度導入

物理的

リスク

急性

気候災害

(特に台風、異常降雨による内水被害)の重大性・頻度拡大による操業停止

浸水による損害(例:国内1事業所の被害最大金額及び復旧費用試算は40億円程度)

改修工事、止水など資材準備、定期的な訓練の実施

慢性

(気候変動による)渇水による生産減、操業停止

中長期的な渇水リスクが高いインドの製造子会社で損害発生(未試算)

水循環装置の導入、貯水タンク(貯水槽)設置の検討

 

 

<主な機会の抽出>

 

分類

特定された機会

影響度

主要な財務上の潜在的影響

対応策

製品とサービス

低燃費ICE、カーボンニュートラル燃料対応ICE、カーボンニュートラル燃料供給インフラの普及

 

低燃費を実現するICE用部品、カーボンニュートラル燃料に対応したICE用部品の需要が増加し売上増加

非ICEのネクストコア事業への投資が拡大する中、ICE用部品に振り向ける割合は減少していくが、これらを効率化の上、低燃費、カーボンニュートラル対応部品の開発に振り向けていく

熱源を化石燃料から電気に切り替える「Electrification」

=「電化」が進展

発熱体をはじめとした熱エンジニアリング製品の需要が増加

熱エンジニアリング事業が含まれるネクストコア事業の売上拡大(積極的投資)

電気自動車(BEV)の需要拡大

BEVの需要拡大に伴い、電気自動車用部品の需要が増加し売上増加

非ICEかつ成長分野(半導体、電動化、カーボンニュートラル対応)のネクストコア事業の売上拡大(積極的投資)

自然災害/異常気象の重大性・頻度の上昇(大雨、洪水、台風、水不足等)

災害対策商品の需要が増加

災害医療領域への貢献を続け、新たな商権の獲得を

行っていく

 

気候変動以外の社会課題:高齢化や人口減少に対して、当社グループは先進医療(低侵襲で生体親和性の高い医療部材製品)を支える医療部材の開発促進や、建設現場における職人減に対応した施工しやすく、ミスが起こりにくい配管継手、産業・農業分野で生産性向上を支える特殊モータ部材、モータ、減速機、高機能樹脂製品の開発促進により、財務上のプラスを見込んでおります。

 

※財務影響が経常利益に与えるリスク:大(5億円以上)、中(1~5億円程度)、小(1億円以下)

 

 

③ リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、2050年までに事業活動において排出するCO排出量を実質ゼロにすることを目指しています。その達成に向けたマイルストーンとして、2030年度までの削減目標を設定するとともに、省エネ、再エネの積極的な導入等の活動推進と達成状況の確認を行っています。また、Scope3の排出量の把握と削減に向けた取り組みを行っていきます。

 

年度

実績

目標

2013

2023

2026

2030

2050

CO₂排出総量

(Scope1・2)

t-CO₂

ベンチマーク

212,385

▲35.3%

137,475

▲39%

129,555

▲51%

104,069

カーボン

ニュートラル

※実績・目標は国内連結

 2023年度は削減目標2013年度実績対比▲30%に対し、実績▲35.3%で達成

 

(3)人的資本(人材の多様性を含む)

 

① ガバナンス

 「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社の経営理念において「変革と挑戦」は重要なキーワードであり、中期事業戦略においても(非ICE売上比率の拡大へ)事業ポートフォリオを改革し、持続的な売上・利益成長を目指すこととしています。また、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すための投資を行うことが、社会から強く求められるとともに、その実現が当社の持続的成長を左右すると認識しております。

 こういった事業・社会環境、当社方針、そして、経営トップ自ら従業員へ発信している共有したい価値観に基づき、当社は人材戦略において「成長を担う人材基盤の拡充」「変革への挑戦を後押しできる企業風土の醸成」をメインテーマに、5本柱の重要施策を定め、推進しています。

 

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<重要施策5本柱>

■事業戦略と連動した人材ポートフォリオの構築

 事業ポートフォリオ改革を目指す当社にとって現在と、将来求められる人材ポートフォリオは大きく異なると見込んでいます。よって、現在の人材ポートフォリオ・スキルを可視化するとともに、将来において求められる人材ポートフォリオ・スキルの明確化を現在行っています。その結果を受けて、人材ポートフォリオの充実に向けた具体的施策を立案し、推進していきます。

 

■人材の高度化に向けた主体的・自主的なキャリア形成支援

 当社は人材ポートフォリオ充実を目的とした人材の高度化において、OJTをはじめとした階層別教育・訓練、部門別教育による、各分野におけるプロフェッショナル・管理者の育成を重視しています。一方で、個々の従業員の主体的・自律的なキャリア形成を支援し、さらなる成長や挑戦の機会を提供することも重要と考えています。

 よって、現在個々のグループ会社で実施され成果を上げている人材公募制度、海外トレーニー制度、海外留学制度、通信教育講座受講の斡旋・費用補助、従業員が自主的に受講する外部講座・授業料等の費用補助など諸制度をグループとして一体で運用するとともに、キャリアフォロー面談の定期実施など、新しい制度も立案・推進していきます。

 

■従業員エンゲージメントの向上

 当社は、従業員エンゲージメントを高めるためには、環境性能に優れた製品提供など、当社が経営理念に基づく事業活動そのものを通じ、社会の持続的な発展に貢献していることを従業員に浸透させ、それが一人ひとりの価値観に結びついていくことが重要と考えます。

 現在個々のグループ会社で実施されている従業員エンゲージメント調査を統合し、グループ共通の土台で、現状の把握とさらなる改善に繋げていきます。

 また、経営トップがグループの従業員に、当社グループの今後の見通し、方針、共有したい価値観を自らの言葉で伝えるとともに、日々の疑問にも答える場をウェビナー形式にて開催し、直近では6カ国からのべ604名の従業員が参加しました。

 

■DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 当社は、性別や国籍などを問わずあらゆる人にとって「多様な人材が安心して活躍できる」職場づくりを目指し、開かれた職場環境の確保とともに、女性や外国人やシニア従業員等の採用、人材の多様化に取り組んでいます。

 当社グループは、多様な勤務形態の拡充や介護・育児への支援といった多様な働き方の実現に向けた取り組みに加えて、性別や時間的制約の有無にかかわらず、誰もが働き甲斐を感じ、能力発揮のしやすい雇用環境を創出することを重点的な取り組み課題としています。その上で、女性社員の積極採用、人材育成、役職登用を進めるとともに、女性管理職比率の向上を図ります。あわせて、女性正社員に占める女性管理職比率等にも注視していきます。

 また、当社は、男性が育児に積極的に参加できる環境を整備することが女性の活躍推進に繋がるとともに、男女問わず働きやすい職場環境の構築にも繋がると考えております。

 よって、男性育児休業取得の推進に向けた目標を設定し、制度周知、環境整備を行っていきます。目標に対する実績は定期的にモニタリングし、それを受けた目標の上方修正も視野に入れた推進活動を行っていきます。

 その他、外国人の管理職への登用、中途採用者の管理職への登用、障がい者雇用の推進にも積極的に取り組んでいきます。

 

■安心安全な職場環境の構築

 心身ともに安心安全な職場環境の構築は人材が持続的に能力を発揮し、また自ら成長し人的資本を向上させるために不可欠な取り組みです。

 現在個々のグループ会社で実施され成果を上げている働き方改革(生産性の向上、長時間労働是正、休暇取得推進、多様な勤務形態など)、健康経営(※)、安全衛生の取り組みをグループ全体で共有し、KPIを定め、推進していきます。

(※)当社の完全子会社である日本ピストンリング㈱は、5年連続で「健康経営優良法人」に認定されています。グループとして、従業員の健康増進が経営課題の解決に関連することを認識し、健康経営への取り組みを推進していきます。

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

■人材の高度化に向けた主体的・自主的なキャリア形成支援

 

2022年度

2023年度実績

2026年度目標

従業員人材開発投資(国内連結)

ベンチマーク

‘22年度実績対比

+17.2%

‘22年度実績対比

+30%

 

■DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 

2022年度

2023年度実績

2026年度目標

女性管理職比率(国内)

1.7%

2.0%

3%以上

女性管理職比率(連結)

5.8%

6.9

7%以上

男性育児休業取得率(国内)

15.3%

31.4%

50%以上

 

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。

当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めてまいります。

 

(1)経済・金融市場動向に関するリスク

①景気後退による需要減少のリスク

当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、世界や我が国の景気後退や経済成長の減速が発生した場合、自動車生産・販売台数や着工件数等が減少し、当社製品の需要が減少する可能性があります。

当社グループは需要動向の早期把握、動向に応じた仕掛品・在庫品の適正水準の維持、リードタイム短縮、コストダウンを強化する等、安定的な収益基盤を強化する取り組みを行っておりますが、想定を超える需要変動があった場合やその他の要因で大きな需要変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②原材料価格等の上昇及び調達リスク

当社グループ製品の主要材料である鉄、合金や硬質粒子などの金属材料、石炭、樹脂系原料等は需給バランス、為替レート変動等に伴い市場価格が変動することがあり、また一部調達先が限定されるものもあります。これらの原材料価格等が需給変化や市況変動により上昇する場合は、製造コストの上昇につながります。昨今、世界的な原材料価格等の高騰リスクも顕在化しております。

当社グループは生産の合理化、調達先の分散化、代替材料の選定など、原価低減策による影響緩和を図るとともに、顧客に対する適切な価格転嫁交渉の取り組みを鋭意すすめておりますが、予測を超えて市場価格に急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③為替レートの変動リスク

当社グループは海外における事業展開及び、海外の顧客向けに販売活動を展開していることから、外貨建取引から発生する為替変動の影響を受ける可能性があります。また、売上・費用・資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成時に円換算いたしますが、現地通貨における価値に変動がない場合も、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

当社グループは輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じて為替レート変動の影響を抑えるよう努めておりますが、予測を超える変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業及び外部の事業環境に関するリスク

①海外展開に伴うリスク

当社グループは海外において北米(米国、メキシコ)、欧州(ドイツ)、アジア(インドネシア、中国、台湾、タイ、インド、シンガポール、マレーシア)の拠点で生産・販売活動を展開しております。これら各国は政治、経済、社会的混乱等によるリスクが潜在しており、これらの事象により、影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは、海外において現地資本と合弁で事業を行っている会社について、合弁パートナーの経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは各社の在外子会社を所管する部門が定期的に海外子会社との情報交換及び継続的モニタリングに加え、経営状況の他、周辺環境の変化等についても情報の把握・分析を行い、可能な限りリスクの抑制を図っております。

しかしながら、当社グループの製品を製造・販売している各国の政治・経済・社会体制に予想を超える急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②特定業種(乗用車エンジン向け)への高依存度リスク

当社グループは自動車エンジン向け、特に乗用車エンジン(乗用ICE)向け部品関連事業の売上高が事業全体の半分以上を占めておりますが、自動車産業では電気自動車や自動運転等の開発・実用化等の技術革新のスピードが速まっております。この産業構造変化に伴う自動車構成部品の変動は、電動化による内燃機関搭載車市場の縮小として、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、非ICE領域の育成に経営資源を積極的に投入しております。

しかしながら、自動車産業における構造変化への対応が結果として不十分だった場合や変化が予想を超え急激に進展した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③価格競争リスク

当社グループの主要販売先である自動車、各種産業機械業界をはじめとして、すべての業界ではグローバルに激しい競争が行われております。よって、当社グループ製品自体のグローバル市場における競争力、ひいてはグローバルな製品供給能力、技術開発力、国際価格競争力が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、競合他社と差別化できる製品・生産技術の開発を必要な経営資源を投じて推し進めるとともに、お客さまのニーズを捉え、適時適切なソリューションを提供する技術提案型の営業体制の構築や評価技術サービスの展開、コストダウンの強化等の諸施策により、競争力の維持強化に努めてまいりますが、これらの取り組みが結果として不十分だった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④知的財産権リスク

当社グループは当社グループの産業財産権やノウハウ等の知的財産権がお客さまの課題解決に貢献し、環境性能に優れた魅力ある製品・サービスを提供し続けるために不可欠であり、競争力・差別化の源泉であると認識しています。

当社グループは自社権利の取得、活用及び保護と、他社権利の尊重に努めておりますが、第三者による当社グループの知的財産権の侵害、又は当社グループが意図せず他社等の知的財産権を侵害した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)業務運営に関するリスク

①品質リスク

当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、これら製品の品質に関する何らかの瑕疵が顕在化し、顧客等に付随した損害を与えるような場合、製造物責任やリコールにより、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。

当社グループは「品質方針」を定めるとともに、お客様の要求する品質保証体制を構築の上、ISO9001やIATF16949といった外部認証を取得し、品質の保持、向上に努めておりますが、品質に瑕疵のある製品の流出を防止できず、それが大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、その補償や社会的評価の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②環境汚染リスク

当社グループは製品の製造においては多種多様な環境負荷物質の取り扱いを行っております。よって、これら環境負荷物質が法定、あるいは社内基準以上に環境に流出し、環境汚染の原因となった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは「環境方針」を定めるとともに、地球環境保全に向けた環境負荷の低減のためISO14001に沿った環境マネジメント体制を構築しておりますが、想定外の事態による環境汚染が発生した場合、その処理費用の負担や行政命令等に基づく操業の停止、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③情報セキュリティリスク

当社グループは研究開発、生産、販売等に関する当社グループ及びお客様の機密情報に加え、お客様や従業員等の個人情報を保有しております。また、事業活動全般において、様々な情報技術、ネットワーク、システム等を活用しております。よって、これらの情報資産が不正アクセス等により「機密性」「完全性」「可用性」に関する脅威にさらされた場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティを強化するため「情報セキュリティ基本方針」を定め、サイバー攻撃からの防御の強化、各種情報・機器の取扱い規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発を行う等の取り組みを行っております。

しかしながら、サイバー攻撃の手口はますます高度化、複雑化しており、想定を大幅に超える不正アクセス等のサイバー攻撃により、当社グループのシステム停止や機密情報の外部流出が発生するなど、想定を超える事案が発生した場合、業務中断や社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④企業買収、資本提携及び事業再編リスク

当社グループは中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、その実現に向けた企業買収、資本提携及び事業再編を実施しており、当社及び出資先企業の事業環境の変化、経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、買収や提携等の検討対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収や提携後の事業計画を検証することによりリスクの低減に努めておりますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境に想定外の変化が生じた場合、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤人材に関するリスク

当社グループの持続的成長においては、人材に依存する部分が大きく、優秀な技術者をはじめとする、必要な人材

の採用・育成(キャリア開発)を行うとともに、安全、安心して働くことができる職場環境を整備することが重要であると認識しております。

今後、人的資本経営を展開するためには、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオを戦略的に企画・

構築し、人材の多様性やリスキリングなどを通じて、組織・個人の活性化を図ることが求められておりますが、この展開が停滞した場合は、人材の流出など、当社グループの持続的成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的手続き・災害等のイベント性のリスク

①法的リスク

当社グループはグローバルに事業を展開しており、環境法、安全衛生法、独禁法、贈収賄防止、安全保障貿易管理など、各国の多岐にわたる法令・規制が関連しています。

当社グループはこれらの法令等に適合する社内規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発を行うとともに、法令等の改正に適宜対応しておりますが、これらのコンプライアンスの徹底が十分でなく、結果として適用法令等の違反が発生した場合、処罰、処分その他の制裁、対応費用の負担、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②災害・感染症・テロ等の事業継続に影響を及ぼす事象に伴うリスク

当社グループの製品は自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されており、その供給責任を果たすことの重要性を認識しております。一方、当社グループの各国事業拠点において大規模地震、水害、火災、感染症の蔓延、テロなど、様々な障害による調達・製造・物流に関わる製品供給停止が発生した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは供給責任を全うするため「事業継続マネジメント(BCM)基本方針」を定め、災害時の事業継続又は早期復旧・再開を図るための取り組み方針、手続、組織・体制等について定めた事業継続計画(BCP Business Continuity Plan)を策定し、適切な管理体制を整備するとともに、建屋の耐震補強、製品や材料の安全在庫の確保、代替調達先、代替生産拠点の整備などの取り組みを行っています。

しかしながら、深刻な障害が発生した場合の被害や製品供給停止を完全に回避することは困難であるため、有事の際には当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

当社は、2023年10月2日付で㈱リケン及び日本ピストンリング㈱の経営統合にともない、共同株式移転の方法により両社の共同持株会社として設立されました。新たに発足したリケンNPRグループは、経営統合によるシナジーの創出や事業ポートフォリオ改革によるネクストコア事業等の育成・推進を進め、大きな相乗効果を出しつつ脱炭素実現に向けた取り組みを加速することで、持続的成長と企業価値向上を目指してまいります。

当連結会計年度における世界経済は、各国での高インフレや米欧を中心とした金融引き締め、中国での不動産不況の影響や、長期化するウクライナ情勢等の地政学リスクなどにより、依然として先行きは見通しにくい状況で推移しました。

わが国経済においては、エネルギー・原材料価格の高止まりや円安進行等が続いておりますが、雇用環境の改善やインバウンド需要の拡大等により、緩やかな回復基調となりました。

当社グループと関連の深い自動車産業につきましては、半導体の部品不足などによる生産調整が解消してきたことにより、日本及び海外の自動車生産台数は前年比で増加となりました。

このような状況のなか、当連結会計年度における当社グループの売上高は、自動車生産台数の回復に加え為替の円安等により、138,586百万円となりました。損益面におきましては、売上増加や原価低減の推進、エネルギー・原材料価格上昇分の価格転嫁を進めたこと等により、営業利益は8,764百万円、経常利益は海外の持分法適用会社の利益等により11,635百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、㈱リケンと日本ピストンリング㈱の経営統合による負ののれん発生益等を計上したため26,324百万円となりました。

当社は設立に際し、㈱リケンを取得企業として企業結合を行っているため、当連結会計年度の連結経営成績は、㈱リケンの2023年4月1日から2024年3月31日までの連結経営成績を基礎に、日本ピストンリング㈱の2023年10月1日から2024年3月31日までの連結経営成績を連結したものとなります。なお、当連結会計年度は、当社の設立後最初のものとなるため、前連結会計年度との対比は行っておりません。

セグメント別の状況は、売上高は自動車・産業機械部品事業が108,094百万円、配管・建設機材事業が17,443百万円、その他は15,782百万円となりました。営業利益は自動車・産業機械部品事業が6,507百万円、配管・建設機材事業558百万円、その他が1,208百万円となりました。

当社グループの当連結会計年度末における総資産は218,580百万円、負債につきましては69,413百万円となりました。

純資産につきましては、利益剰余金の増加等により149,166百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、22,261百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は18,496百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益29,753百万円、減価償却費6,763百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は13,548百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5,834百万円、子会社株式の取得による支出9,530百万円、定期預金の純減額1,600百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は8,615百万円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出6,310百万円、配当金の支払額1,477百万円、非支配株主への配当金の支払額157百万円によるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、資金調達は銀行借入が中心で、当連結会計年度末における借入金は17,382百万円です。また、国内金融機関において合計13,000百万円のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。

 

 ③生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、下記のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

自動車・産業機械部品事業

105,782

配管・建設機材事業

11,429

報告セグメント 計

117,211

その他

4,960

合計

122,171

(注) 金額は、販売価格等によっております。

 

 b. 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、下記のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

受注残高(百万円)

自動車・産業機械部品事業

112,619

15,890

配管・建設機材事業

17,516

2,673

報告セグメント 計

130,135

18,563

その他

6,858

2,210

合計

136,993

20,774

 

 c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、下記のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

自動車・産業機械部品事業

108,048

配管・建設機材事業

17,443

報告セグメント 計

125,492

その他

13,093

合計

138,586

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において判断したものであります。

 

 ①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債、製品保証引当金、環境対策引当金、固定資産の減損会計及び繰延税金資産の回収可能性であり、継続して評価を行っております。

 見積り及び判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 ②当連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度における財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 ③当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度における経営成績の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 ④当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 ⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 技術援助契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

台湾

台湾理研工業股份有限公司

2018.1.1

ピストンリング、シリンダライナ、ブロック、カムシャフト、ナックル及び各種鋳物製品の製造法

7年

販売価額の一定料率の受取

タイ

サイアムリケン社

2023.9.29

ピストンリングの製造法

5年

インド

ネシア

パカルティリケンインドネシア社

2016.1.1

管継手及び自動車用鋳造部品の製造法

10年

インド

シュリラムピストンアンドリング社

2014.3.1

ピストンリングの製造法

14年

米国

グレディホールディングス社

2019.1.7

鋳物製品の製造法

2029年4.30迄

米国

ヘイスティング社

2021.7.7

ピストンリングの製造法

対象製品の初出荷日から7年

韓国

コリアピストンリング社

2022.6.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

温州格羅孛活塞環有限公司

2022.6.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

厦門理研工業有限公司

2013.7.1

ピストンリングの製造法

契約更改交渉中10年

中国

厦門理研工業有限公司

2013.7.1

カムシャフトの製造法

契約更改交渉中10年

中国

理研汽車配件(武漢)

有限公司

2021.6.30

ピストンリング、シールリング、動弁製品及びその他鋳物製品の製造法

5年

中国

理研密封件(武漢)有限公司

2024.1.1

シールリングの製造法

5年

中国

南京理研動力系統零部件有限公司

2019.9.1

ピストンリングの製造法

10年

中国

南京飛燕活塞環股份有限公司

2019.11.1

ピストンリングの製造法

10年

メキシコ

リケンメキシコ社

2013.9.1

バルブリフターの製造法

2028.12.31迄

メキシコ

リケンメキシコ社

2014.7.1

シールリングの製造法

2028.12.31迄

メキシコ

リケンメキシコ社

2015.9.1

ピストンリングの製造法

2028.12.31迄

日本ピストンリング㈱

(連結子会社)

インド

アイピーリングス社

2023.4.1

スチールリングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

窒化リングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

組合せオイルリングの製造法

2026.3.31迄

2023.4.1

PVDコーティング技術

2026.3.31迄

中国

儀征亜新科双環活塞環有限公司

2013.11.15

ピストンリングの製造法

2024.10.31迄

 

(2) 合弁事業契約

契約会社名

相手方

合弁会社名称

出資

比率

契約年月日

備考

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

台湾

何 政廷 他

台湾理研工業股份有限公司

50%

1966.12.15

自動車部品の製造及び販売

タイ

サイアムモータース社

サイアムリケン社

49%

2015.2.25

インドネシア

①パカルティヨガ社

②明和産業㈱

パカルティリケンインドネシア社

40%

1975.8.22

管継手及び自動車部品の製造及び販売

日本

シーケー金属㈱

㈱リケンCKJV

40%

2011.12.14

配管機器の製造及び販売

中国

南京飛燕活塞環股份有限公司

南京理研動力系統零部件有限公司

40%

2019.6.11

自動車部品の製造及び販売

日本ピストンリング㈱

(連結子会社)

インド

インディア ピストンズ社他

アイピーリングス社

5.56%

1996.2.9

自動車部品の製造及び販売

中国

儀征亜新科双環活塞環有限公司

儀征日環亜新科粉末冶金製造有限公司

50%

2013.10.30

自動車部品の製造及び販売

ドイツ

大同メタル工業㈱

エヌピーアールオブヨーロッパ社

70%

2018.9.10

自動車部品の製造及び販売

 

(3) 商標権使用許諾契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

台湾

台湾理研工業股份有限公司

2018.1.1

市販品販売に係る商標権の使用許諾

7年

販売価額の一定料率の受取

中国

理研汽車配件(武漢)有限公司

2021.6.30

5年

日本

㈱リケン環境システム

2021.10.1

5年

日本

㈱リケンヒートテクノ

2023.7.1

5年

 

(4) 特許・ノウハウ実施許諾契約

契約会社名

相手方

契約年月日

内容

契約期間

対価の受払

国籍

名称

㈱リケン

(連結子会社)

日本

㈱リケン環境システム

2021.10.1

製造販売に係る特許及びノウハウの実施許諾

5年

販売価額の一定料率の受取

日本

㈱リケンヒートテクノ

2023.7.1

5年

スイス

Georg Fischer Automotive AG

2013.7.1

いずれかの当事者が終結を申し入れない限り、無期限

販売価額の一定料率の支払

 

6【研究開発活動】

 2023年10月に経営統合したリケンNPRグループでは、両社の強みを生かしながら研究開発を進めております。ICE製品の開発においては、社会の目指す「カーボンニュートラル」達成に向けて燃費低減技術や水素エンジン、バイオフューエル等の代替燃料に対応する主要製品の開発を進めております。新規事業創出活動は、両社の保有技術を活かした新分野(モータ、樹脂製品、磁性製品、医療機器等)の開発を行っており、中長期の主力となる製品を生み出すべく活動を推進させております。

 なお、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は2,910百万円であり、各セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1) 自動車関連製品事業

当連結会計年度における自動車関連製品事業に係る研究開発費は1,940百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

① 次世代低燃費エンジン用ピストンリング

今後のカーボンニュートラルに向け、エンジンにはより一層の高熱効率化、クリーン化、カーボンニュートラル燃料への対応が求められており、カーボンニュートラルへの対応のため、エンジンの比出力、燃焼圧力は上昇し、摩擦損失の低減、粒子状物質(PM)の低減への取り組みが行われております。これらのエンジン開発動向に対し、ピストンリングでは低摩擦で高耐久性を実現する厚膜DLC皮膜や、過給エンジンのノック環境に対応した高靱性CrN皮膜を市場に投入しており、また新たにカーボンニュートラル燃料に対応したピストンリングの提案も行っております。

一方で、エンジンシステムの高機能化に伴う製品コストのバランス配分や効率的な製品開発への対応として、機能予測ツールの開発とそれを活用したモデルベース設計、ものづくり革新として低コストで高精度なピストンリングの開発にも取り組んでおります。また、産学連携強化も進めており、AICEのエンジン研究活動に直接参加し、日系企業の技術開発強化にも取り組んでおります。

 

② 次世代ディーゼルエンジン用ピストンリング

商用ディーゼルエンジンにおいても燃費基準に適合したエンジン開発が行われており、これまで以上の低燃費技術が求められております。燃費基準に適合したエンジン開発においては、新たにフリクションを低減させるCrN改良皮膜、DLC皮膜、及び低摩擦、低張力で高い潤滑油調整機能を持つ新形状のオイルリングの開発が完了し、クリーンな排ガスと低燃費、耐久性を両立させる製品を市場展開しております。また、生産性向上の取組みとして素材形状の最適化に加え、加工精度の向上による生産性の改善を実現しております。

 

③ バルブシート

ハイブリッド専用機関等の環境に対応した内燃機関の熱効率を向上するために、熱マネージメントを考慮した開発や、高い耐摩耗性が要求される希薄燃焼ガソリンエンジン、EURO7対応ディーゼルエンジン、代替燃料(ガス、エタノール)エンジン、カーボンニュートラル燃料対応エンジンに対応可能な高機能製品の開発に取り組んでおります。また、機能面だけでなくコスト及びコンフリクトミネラル低減を意識し、お客様にとって満足して頂ける最適仕様の製品開発にも取り組んでおり、あらゆる地域の顧客ニーズに対応することを目指し、グローバルな技術提案を行っております。

 

④ 組立式焼結カムシャフト

環境対応内燃機関の熱効率向上に寄与する軸部薄肉化による軽量化や、低燃費・高出力に対応する高面圧対応が可能な材料技術を有しており、お客様へ提案を行っております。また、お客様での加工取り代削減と、加工後の材料不良を削減させるため、素材精度向上と素材内在不良低減の開発も継続して行っております。

 

⑤ メタモ―ルド(金属粉末射出成形部品)

CASE領域の中、加速していく自動車の電動化に伴い、操舵系や駆動系関連の部品及び産業機械向け部品について多数の引き合いを受けております。複雑形状をした部品の引き合いは継続して増えており、拡販活動に取り組んでおります。また昨年、外科用インプラントの標準規格ASTM-F2885に準拠したTi-6Al-4V合金材料の開発に成功し、インプラント関連製品への展開を図っております。

 

⑥ 新規焼結製品

高機能多孔質金属に関するマーケティング活動においては、具体的に様々なニーズも出てきており、そのニーズに応えるべく、一部製品化開発に着手しております。

現在開発中の3D金属積層造形法は金型不要でありかつ、当社保有のバインダージェット方式はメタモールドと同等の材料特性が得られるため、試作リードタイム短縮、顧客への試作金型費用削減などの利点を生かして量産獲得に向けた展開を図っております。

整形インプラント等の医療関連製品においては、複雑形状且つ生産数量が少ないことから3D金属積層造形法が有用であり、新規参入に向けて材料ラインナップの拡充を図っております。

 

 (2)配管・建設機材事業

当連結会計年度における配管・建設機材事業の製品に係る研究開発費は189百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

① ガス配管用継手

ガス配管用継手は、特に安全性と品質保証能力の向上が求められており、各都市ガス会社との共同研究を中心に開発を行っております。近年は、安全性・品質と同様に環境に配慮した製品設計や、配管施工者の人手不足に対応した省力化に注力した製品開発要請が強まっており、都市ガス、LPG向けにこれらに対応した高品質な製品の開発に取り組んでおります。

 

② 建築設備配管用継手

建築設備配管用継手もガス配管用継手同様に、安全性・品質はもとより、環境に配慮した製品設計や省力化に注力した製品開発要請が強まっております。同時に、消火・給水・給湯用の配管においては、近年、鋼管からステンレス管や樹脂管への材質代替が進んでおり、これらに対応した製品開発に注力しております。今期は、給水・給湯用の樹脂管用省力化製品であるポリブテン管用配管ユニットの開発が完了し、販売を開始しております。

 

③ 高強度ダクタイル製品

高強度ダクタイル製品は、独自の化学成分管理と製造ノウハウにより、FCD800・FCD900相当の高強度鋳鉄製品の大量安定生産が可能となっております。また、これら鋳造技術に加え素材のみならず、加工から表面処理まで一貫した生産対応で、鉄筋用継手や各種歯車等の開発に取り組んでおり、多様な顧客要望に対応しております。

 

(3) その他の製品

当連結会計年度におけるその他の製品に係る研究開発費は781百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

① 新製品開発部関連製品

1)モーター・減速機製品

小型産業用ロボット向けの小型軽量化、高精度化に貢献する波動減速機の開発を行っております。特徴としては、剛性と角度伝達精度に優れた新機構(3ローブ波動減速機)の適用や軽量化を実現する樹脂材料の採用(軽負荷用途向け)があります。展示会等に出展し、お客様の声をお聞きしながら、お客様の製造工程のロボットに組み込まれる部品(製品)としての引き合いなど多数受けており、お客様でご評価いただいております。

また、電動化要求の強まり、少子高齢化による労働力不足などの社会現象に鑑みて、小型搬送装置やパーソナルモビリティ、屋外用小型移動体(ロボット)への適用を目指したモーター及び減速機の開発を行っております。リケンでは取り付けスペースや軽量化に特徴を持たせた薄型(扁平)アキシャルギャップ型モーターと3K遊星減速機の設計開発を行っています。これらも展示会に出展し、お客様の開発システムや搬送装置に組み込むギヤードモーターとしての引き合いを受け、試作品を提供し、ご評価いただいております。NPRでは独自の圧粉コアを利用したアキシャルギャップ型オリジナルモーターを製作しており、扁平形状且つ高トルクを生かした小型移動体の駆動ユニットへの適用で量産化に向け進捗しております。

リケン及びNPRがこれまでに培ってきた設計技術、固有の要素技術を融合し、更に差別化されたモーター及び減速機、ギヤードモーターを開発し、製品化を図ってまいります。

 

2)樹脂関連製品

モビリティ用部品の分野で軽量化、静音化などに貢献する製品を開発しております。リケンのシールリング製品で培ったスーパーエンプラの射出成形技術を元に高強度樹脂ギアの開発を行っており、高強度樹脂材料の開発とオリジナルギア設計技術、それらの組み合わせにより高強度樹脂ギア製品を提案・提供し、超小型モビリティのドライブユニット向けでPEEK材を用いたギアを量産化いたしました。

また、電動化の流れの中で、金属から樹脂への置き換えによる軽量化検討が様々検討されており、電磁波対策を付与した樹脂成形品が求められております。当社ではEMC機能を付加したEV向けケース製品の開発を行っており、また併せて金属と樹脂を接合する技術を用いて、それぞれの特性・性能・機能を持ち合わせた製品の提案も行っております。(※異種材料接合技術のパイオニア企業である大成プラス㈱との資本業務提携による共同開発)

 

3)EMC関連製品

自動車関連ではCASEの領域拡大が見込まれ、通信関係でも基地局、通信機器や測定機器などで電磁波ノイズ対策が求められております。車載電装機器、ADASなどの次世代通信技術に貢献する電磁波対策部材を開発・提供しております。

通信技術の高速大容量化や電子機器の小型・薄型化に対応できる高周波ノイズ抑制シート(GHz、MHz)、車載用レーダーや5G通信機器の電波干渉対策・検知感度を向上させた電波吸収シートを開発しております。

またEVやHEV向けのワイヤハーネスからのノイズに対して高い抑制効果を確立させたノイズ抑制コア製品も開発しております。このコア製品は、軽量・省スペース化を狙った連結型や施工済みのワイヤハーネスに後付け可能な分割型など形状・設計のご要望にもお応えできる製品となっております。

 

4)医療関連製品

生体適合性に優れたチタンタンタル合金(NiFreeT)を使用した長期体内留置部材を医療機器メーカーと協業して製品化開発を進捗させております。NiFreeTはチタン合金でありながら優れたX線視認性を持つことから、プラチナ合金の代替部材としての開発も行っております。NiFreeTは骨に近い剛性であること、弾性率を変化させることができることから、整形インプラントへの適用を狙い、継続的に大学と共同研究をしております。

また、表面処理ではこれまでピストンリングで培ってきたPVD、DLCを医療機器に適用すべく生体適合性の評価も行っております。今後、生体毒性から規制が懸念されるコバルト合金や、フッ素樹脂の代替技術の候補になりえる可能性があることから、医療機器メーカーと共同で開発を行うとともに、大学との共同研究も開始しております。さらに、大学病院のドクターにアドバイスを頂きながらニーズをリアルタイムでキャッチし、QOL(Quality of Life)を向上させる医療機器の開発も進めております。

歯科インプラントの開発・改良では、顧客要望から特殊領域へのインプラント埋入手術用術具の開発を完了させ販売を開始しましたところ、国内外の歯科医師から高い評価を得ております。今後もデジタル化が進む歯科業界のニーズに応えた製品展開や顧客要望を基にした商品開発・改良により顧客満足度の向上を図ってまいります。

 

② 熱エンジニアリング応用製品

当社の熱エンジニアリング事業は、独自電熱材材料PYROMAX®とそれを活用した省エネ電気炉PYRORIK®の製造販売を手掛けており、60年を超える歴史があります。昨今のカーボンニュートラルの潮流をうけて、産業分野では熱エネルギーを化石燃料の燃焼加熱からヒータによる電気加熱への転換が加速度的に進むものと予想され、需要はさらに拡大するものと期待されます。さらなる環境性能を追求した製品・製造技術の研究開発に取り組み、事業の拡大を目指してまいります。

 

③ 水素・新エネ関連製品

当社は、カーボンニュートラルを実現する新世代燃料である水素、合成燃料、バイオ燃料などを使用する次世代エンジンに関連した新製品・新事業の創出を目指しております。評価設備拡充や車両による実証試験も進め、次世代を担う事業を模索してまいります。また、地域のカーボンニュートラルに貢献できる研究開発にも取り組んでまいります。