文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・ミッション
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」
当社では、マーケティングの基本概念を「人の心を動かすもの」と捉えており、インターネット/デジタルテクノロジーは企業と人々のエンゲージメントを高めるものと考えています。メンバーズは企業と人々の自発的貢献意欲を持って組織活動に参加する“MEMBERSHIP”による協力関係づくりを支援し、マーケティングの在り方・企業活動の在り方を「社会をより良くするもの」へと転換することで、世界の人々に心の豊かさ、幸せを広げ、社会をより良くすることに貢献します。
・経営指針
当社の経営指針である「超会社」コンセプトのもと、「社会への貢献」「社員の幸せ」「会社の発展」を同時に実現することを目指し、妥協することなく追求します。
(2)経営戦略等
当社グループは、デジタルビジネス運用支援を通じ、顧客企業の経営スタイルやマーケティング活動、サービスおよびプロダクトを「地球と社会を持続可能なもの」へと転換させることを目指しております。
当社は2024年4月1日付で、顧客企業のDXニーズにあわせ、各本部および専門カンパニーを「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4つの事業領域に再編しました。
当面は、収益性の回復・高収益事業の確立を目指し、新卒社員の採用抑制による人材ポートフォリオの改善を図ると同時に、新卒1、2年目を除く既存社員の稼働率の引き上げに最注力し、収益性の回復を最優先に取組んでまいります。そのうえで、付加価値売上高成長率25%への引き上げを目指し、事業領域ごとにサービス品質の向上と高付加価値化を進め、高収益ならびに高成長の事業体制を確立してまいります。具体的な戦略等については、過去の振り返りおよび現在の課題認識も踏まえ、「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりです。
デジタルテクノロジーの更なる進化や世界的な脱炭素への取組み、および日本の人口減少の影響等を受け、企業のデジタル投資は一段と加速すると同時にIT/デジタル人材の不足は更に拡大するものと捉えております。そのような環境において、当社グループは引き続き専門スキル育成等への人材投資を通じて、顧客への価値創造の源泉であるデジタルクリエイターのスキルの向上ならびに社員エンゲージメントの向上等、人的資本の拡充に取組み、顧客企業へのDX支援を通じ、顧客と共に社会変革をリードすることを目指してまいります。
(3)経営環境
地球温暖化が引き起こす気候変動により、深刻な大災害が世界各地で頻発しています。2023年11月より第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催され、世界の気温上昇を1.5度に抑えるという目標に対し、二酸化炭素など地球温暖化の主な原因となる温室効果ガスを、2019年対比2030年までに43%、2035年までに60%排出削減する必要があることが、採択された決定文書に明記されました。温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言する国や地域が増加し、GX(※1)に向けた取組みの成否が企業、ひいては国家の競争力に直結すると考えられる中、我が国においては「GX推進法」に基づき、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現することを目指し、脱炭素電源への転換等の取組みや、官民で150兆円のGX投資を行う等の方針が掲げられています。企業は継続的価値創造のためにデジタルを活用し、企業組織やビジネスモデルそのものを脱炭素型・社会課題解決型へ変容させることが求められています。
国内DX(デジタルトランスフォーメーション)市場は、企業のデジタル投資の活況を背景に、2022年度3兆4,838億円(実績)から2030年度には8兆350億円に拡大すると予測されています(株式会社富士キメラ総研 2024デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、2024年3月7日発刊)。一方で、企業がインターネットやデジタルテクノロジーに精通したクリエイター人材を自社で採用・育成することは難しい状況であり、人材不足が企業のデジタル推進を阻む大きな壁となっています。DX白書2023によると、日本企業の8割以上が、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材は質・量ともに不足していると回答しています(独立行政法人情報処理推進機構 DX白書2023、2023年3月16日発行)。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
これまでVISION2030で掲げる「世界一のデジタルビジネス運用への転換」ならびに「1万名体制に向けた新卒採用先行モデル」を推進し、毎期25%の付加価値売上高成長を見据え、新卒採用(2022年4月484名、2023年4月585名、2024年4月411名)を中心に積極的な先行採用を展開してまいりました。その結果、デジタルクリエイター数は2022年3月期から2024年3月期の3か年のみで1,176名増(2021年3月期末比90.0%増)となりました。他方、付加価値売上高については、2020年3月期と比べて2024年3月期にはほぼ2倍(年間平均成長率19.2%)と大きく伸長したものの、従来主力としていたWeb運用領域の想定以上の成長率鈍化の影響により、デジタルクリエイター数の伸び率を下回りました。そのため、グループ全体の稼働率が低下し、収益性が大幅に悪化しました。
しかしながら、顧客満足度は継続的に高水準であり、加えて社員エンゲージメントスコアも独自のミッション・ビジョン・コアバリューへの共感採用やCSV経営の浸透により高水準を維持していることから、サービス品質および当社の強みである顧客企業との中長期にわたる深い関係性、ならびに高い人的資本価値は引き続き強固であると捉えています。
当社グループが認識している2024年3月期までの課題は、従来の「運用」という事業のポジショニングおよび新卒採用先行モデルの成功体験への過信と、VISION2030の数値目標ありきで、顧客視点を欠いた拡大戦略であると考えております。2025年3月期以降は、VISION2030の数値目標よりも収益性の回復に最優先に取組み、先行投資型のマネジメントから利益重視マネジメントへと転換してまいります。加えて、事業・組織体制の再編により全事業領域においてサービス品質の向上と高付加価値化を進め既存顧客売上高を最大化するとともに、従来掲げていたWeb運用・デジタルビジネス運用から、AIを含むDXの実行計画業務から実行運用の伴走と内製化支援を行う独自のDX現場支援のポジショニングに転換するため、組織体制の確立と人材育成に全力で取組んでまいります。これらの取り組みを通じて、早期に高収益の事業ならびに高成長率を両立させる事業を確立することを目指します。具体的には以下に記載する「中期的な成長に向けた戦略」に基づき、事業基盤を再構築してまいります。
■中期的な成長に向けた戦略
1.収益性の回復・高収益事業の確立
2024年4月に新卒社員が411名入社しましたが、2025年以降は新卒社員の採用数を付加価値売上高の成長率の範囲内に抑制し、人材ポートフォリオにおける新卒割合の改善を図ります。併せて、グループ全体で利益重視のマネジメントを徹底し、稼働率が適切な水準になるまで中途採用の抑制、人員配置の最適化などにより新卒1、2年目を除く既存社員の稼働率向上に最注力し、未稼働人材を解消させます。それらの取り組みにより、売上総利益率を改善し収益性を回復することで、営業利益率を中期的には段階的に5%、10%と高めてまいります。
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KPI |
・新卒1、2年目を除く既存社員の稼働率 ・売上総利益率(連結) |
2.高成長事業の確立
上記施策と並行し、以下2点を強力に推進することで、付加価値売上高成長率20%超へと引き上げを図ります。
①サービス戦略の抜本的強化
顧客企業のDXへの取組み領域として「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4つの事業領域に再編することにより、これまで19の専門カンパニーが個別に事業を行っていた状態(2024年3月末時点)から、当社のグループとしての強みを築き上げるサービスを明確にすると同時に、事業領域内でのクロスセルにより主力顧客へのサービスを進化させ、取引拡大につなげます。
また主要顧客に対しては事業領域を跨いだアカウントマネジメントを強化し、既存の顧客企業一社あたり売上収益の最大化を強力に推進してまいります。この取り組みにより、年間取引額1億円以上を基準とした大口取引社数を増加させてまいります。
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KPI |
・DGT一社あたり付加価値売上高 ・一社あたり年間売上収益 |
②顧客のDX内製化伴走支援ポジションの獲得
顧客企業のDXの内製化の取り組みが大きく進む中で、当社はこれまで「実行運用」フェーズに集中してサービスを提供してまいりましたが、今後はこれまで「実行運用」フェーズで培ったUI/UXデザインやアジャイル開発などによるデジタルビジネス成果向上支援の強みを活かしつつ、顧客のDX投資効果最大化の実現に貢献するために、「実行企画・推進」フェーズにおけるサービスにより注力し、各段階においてデジタルクリエイターが顧客に伴走支援する体制へとポジショニングを転換します。
上記を実現するために、プロジェクトの進行、品質および予算管理、プロジェクトチームの人材調整などのプロジェクト全体のマネジメントを行うPMO人材(※2)の育成を強化します。そのために、従来のデジタルの専門技術育成のみならず、ビジネススキルやコンピテンシーの育成も強化し、業界一、顧客企業のDX現場の改善に伴走できるデジタル人材を数多く輩出することを目指します。
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KPI |
・売上単価 ・PMO人材数 |
3.将来への投資
当社のミッションおよびVISIONの実現に向けて更なる成長を目指すべく、脱炭素DX(※3)事業の確立と脱炭素DX人材の育成に取組み、顧客企業のサステナブル経営に向けた基盤確立を支援してまいります。
上記方針に基づき、2025年3月期の連結業績予想は売上収益23,230百万円(当期比13.5%増)、営業利益200百万円(当期比379.4%増)、税引前利益180百万円(当期比31.7%増)、当期利益150百万円(当期比18.6%増)を見込んでおります。
2024年4月の新卒社員411名入社以降は先行投資フェーズを改め、今後は新卒・中途採用を抑制すると同時に、稼働率の引き上げに最注力し収益化フェーズへと転換いたします。これにより、営業利益率を2026年3月期は5%、2027年3月期は10%を目標とし、高収益事業を確立させてまいります。
中期的には、上記のみならず、付加価値売上高の更なる成長を目指し、顧客企業のDX支援領域として4事業でのサービス展開とDX内製化伴走支援ポジションを確立させ、20%以上の高い成長率へ引き上げることを目指します。
以上の方針を着実に実行することで、2027年3月期において、付加価値売上高成長率25%、営業利益率10%の達成を目指してまいります。
(※1)GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用するための変革やその実現に向けた活動のこと。経済産業省では、「2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革」と定義。
(※2)PMO(Project Management Office):企業や各組織のプロジェクトを円滑に進めるために、部署の枠をこえて横断的にプロジェクトマネジメントを統括する部門や体制を指す。プロジェクトを統括し、様々な意思決定を担う立場であるPM(Project Manager)に対し、PMOはPMが円滑に意思決定できるよう情報収集や関係各所との調整を行い、PMのプロジェクトマネジメントを支援する立場。
(※3)脱炭素DX:GHG(Greenhouse Gas=二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)排出量を減らしながら経済成長を続ける「デカップリング・モデル」をデジタルテクノロジーの力で実現することを指す。
当社は、ミッション経営を推進しており、自社の社会における存在意義を「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」と定義しています。さらに2030年の目指す姿として「VISION2030“日本中のクリエイターの力で、気候変動、人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする”」を掲げ、以下の2つの社会課題に着目しております。
・地球温暖化および気候変動による環境変化
・人口減少による年金医療制度破綻、地方衰退による自治体の消滅/財政破綻
人々や企業が自己利益の追求のみではなく将来への希望や社会への参加意識を持ち、持続可能なより良い未来のために共に協力しあう心豊かな社会の実現に取り組みます。
〇共通
(1)ガバナンス
イ.基本的な考え方
当社グループは、ミッションである「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」の実現に向け、すべてのステークホルダーに配慮した経営を行うとともに、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、継続的なコーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
<機関設計>
① 当社は、意思決定の迅速化、経営の透明性と客観性の向上、監査・監督機能の強化に向け、コーポレート・ガバナンス体制を一層強化するため、監査等委員会設置会社の体制を採用し、任意の機関として指名・報酬委員会、グループ経営会議、リスク・コンプライアンス委員会、サステナビリティ推進委員会を設置しています。
② 当社は、代表取締役直轄の内部監査部門を設置し、業務活動における生産性向上や適正性の確保・法令遵守等の観点から、業務執行状況の監査を実施し、内部統制部門と連携の上、内部統制の改善指導及び実施の支援を行います。
③ 当社は、独立性の高い社外取締役を選任し、原則として監査等委員にも任命することにより監督機能を強化し、企業価値をより向上させ、業務執行機能の適正性を確保しております。
④ 監査等委員会は、内部監査部門と綿密に連携し、監査の実効性を高めます。
なお、提出日現在の当社の人的資本を含むサステナビリティに関する経営意思決定および監督に係る主な経営管理機関は以下のとおりです。
ロ.会議体および役割
<取締役会の体制および監督状況>
当社の取締役会は、取締役7名から構成されており、定時の取締役会を毎月開催するほか、必要に応じて臨時で開催し、経営に関する重要事項の協議決定、業務執行の監督を行っております。取締役会議長は、定款の定めに従い、取締役会が定めた取締役が務めます。
また、当社の取締役会は、経営指針である『超会社』コンセプトに基づき、ミッションの実現に向けて、次に掲げる役割を担います。
・経営の基本方針である『Members Story』およびそれに基づく中期的な経営戦略を決定し、社内外に示すこと
・グループ経営会議やグループ経営を管掌する執行役員(以下「グループ執行役員」という。)が適切なリスクテイクができる環境を整備すること
・グループ経営会議やグループ執行役員の業務執行の監督を行うこと
併せて、以下の事項に関する決定又はモニタリングを行います。
・株主総会に関する事項
・決算等に関する事項
・役員に関する事項
・経営計画に関する事項
・内部統制に関する事項
・サステナビリティに関する事項
・特に重要な業務執行の決定及び執行状況に関する事項
なお、意思決定の迅速化のため、取締役会で決議した経営の基本方針『Members Story』に基づく業務執行については監査等委員以外の取締役及びグループ経営会議への権限委譲を進め、取締役会はその業務執行を監督します。加えてコーポレート・ガバナンスの維持向上及び経営の健全性の観点から重要な責務のひとつとして、取締役会は、代表取締役社長の後継者の計画について適切に監督を行います。
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取締役会 |
経営の基本方針『Members Story』に基づき協議・承認された、人的資本や気候変動課題を含む環境課題に関する取組施策の進捗を監督するほか、戦略・リスク管理・年間予算・事業計画の審議と指導、及び主要な資本支出・買収・売却を監督します。 また、少なくとも年に1回気候変動に関係する議題を取り扱います。 |
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グループ経営会議 |
当社のグループ経営会議は、ミッションの実現に向け取締役会が決定した基本方針及び『Members Story』に則り、取締役会より委譲された権限に基づき、業務を執行します。原則として定時で毎月1回開催するほか、必要に応じて臨時グループ経営会議を開催し、グループ経営会議規程に基づき、人的資本や環境課題に対する具体的な取り組み施策を含む経営に関する重要事項の協議決定(取締役会決議事項を除く)、取締役会に上申する議題の細部の検討を行っております。 |
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リスク・コンプライアンス委員会 |
管理部門担当取締役を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。メンバーはグループ執行役員によって構成されており、常勤監査等委員である取締役がオブザーバーとして参加します。 環境課題、人権問題を含むリスク管理及びコンプライアンスに関する重点課題の策定及び目標達成に向けた課題について、四半期に1回以上協議、決定を行い、適宜取締役会に報告します。 |
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サステナビリティ 推進委員会 |
サステナビリティ担当取締役を委員長としたサステナビリティ推進委員会を設置しております。メンバーはグループ執行役員によって構成されており、常勤監査等委員である取締役がオブザーバーとして参加します。 気候関連リスクと機会の評価及び管理や目標達成に向けた対応について、協議、決定を行い、少なくとも年に1回取締役会に報告します。 |
詳細は、「
〇人的資本
(1)ガバナンス
詳細は、「
(2)戦略
当社のビジネスモデルは、デジタルクリエイターによる労働集約型のプロフェッショナルサービスを主体としているため、当社の成長ドライバーは人的資本の拡充となります。具体的には、デジタルクリエイターを育成・輩出することとその稼働率を最大限に高めることであり、そのために採用者数を増やし、営業体制を強化するとともに、従来のWebサイト運用に加えて、より高度な専門領域を拡大させるべく、強力に投資を実行してまいりました。
しかしながら、2024年3月期においては、グループ全体で新卒中途問わず採用先行の売上成長を重視したマネジメントにより、グループ全体のデジタルクリエイターの稼働率が低下し、収益性が大幅に悪化しました。
2025年3月期以降は、新卒をメインとした採用を抑制し、収益性の回復に最優先に取り組むことで、先行投資型のマネジメントから利益重視マネジメントへと転換いたします。
採用と稼働のバランスをとることで、2026年3月期には営業利益率5%の達成を、2027年3月期には営業利益率10%の達成を目指します。
当社の人的資本戦略は単なるリソース戦略ではなく、経営戦略の根幹であり、CSV経営の実践でもあります。具体的には、「人的資本」と「組織資本」を最大化させることで、真の「クリエイターが最も成長し活躍する会社」となり、事業戦略を遂行し、DX現場支援ナンバー1のポジションを獲得、高成長、高収益の事業を確立します。人的資本を最大化させるべく育成戦略および採用戦略を推進することで、高単価かつ高稼働率を実現する専門職種人材を増やし、クリエイターの価値向上につなげ、結果としてクリエイターの基準年収を引き上げることを目指します。並行して、組織資本を最大化させるべく、一人ひとりが自律した多種多様なクリエイターが集まる組織の価値を高めることで、より集団としてのシナジーをも高め、グループとしてのエンゲージメントの向上を図ります。そこにクリエイター一人ひとりの価値が加わることで、相乗効果となり企業の人的価値も高めてまいります。
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人的資本ストーリー |
対応する指標 |
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1.人的資本の最大化
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当社の人的資本とは、当社の社員、人材そのものであり、当社の競争力の源泉であるとともに、経営指針の重要な一項目かつ長期ビジョンの要となっています。当社の社員が、デジタルクリエイターとしてスキルを高め、顧客企業に求められ、価値を提供することで、当社の事業が成長、事業体として拡大し、ミッションやビジョンの実現に近づいてまいります。そのためには、デジタルクリエイターの数、クリエイター一人あたりの単価、顧客企業へ価値を提供するための稼働率を最大化させる必要があります。中期的には育成のための投資は惜しまず実行し、高稼働率を目指します。なお、当社の人的資本の価値として以下の計算式のとおり明示することが可能です。 人的資本額=デジタルクリエイターの数 × 単価 × 稼働率 |
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1-ⅰ.育成方針 ミッション・ビジョンを実現させるためには、自律的かつ協働して業務を遂行し、業務を通じて社会課題の解決を図ろうとするクリエイター志向性の高い人材が必要です。評価制度への組み入れや、全社員が参加するミッション・ビジョン研修への参加を通じて、ミッション・ビジョンの実現をリードできる人材を育成してまいります。 また、事業戦略を遂行するために、デジタルクリエイターとしての価値も向上させるべく、クリエイターの専門性の向上、カスタマーサクセスを追求するプロデューサー人材およびPMO人材輩出により、一人あたりの売上単価向上を目指してまいります。具体的には、2年目以降の若手社員の専門スキルを育成し、高度な案件や専門スキルが必要とされる案件を担わせていきます。専門スキルとは、データ分析やUXデザイン、SaaS(※1)開発・導入、AI導入・活用支援など、従来のWebサイト運用以外の専門性の高い領域のスキルであり、当社では、これらに特化した社内カンパニーを専門カンパニーと称し、数多く設立しています。また、カスタマーサクセスを追求するプロデューサー人材は若手社員を積極的に登用するとともに、顧客企業のDX投資効果最大化の実現に貢献するべくプロジェクト全体のマネジメントを支援するPMO(※2)人材を2025年3月期から積極的に輩出してまいります。 中長期的には、社会に有用なデジタル人材を多数育成・輩出する方針に変更はなく、収益性の改善の後、新卒・中途採用・育成モデルを継続し高収益・高成長を持続的に維持する方針としております。 当社グループは引き続き専門スキル育成等への人材投資を通じて、顧客への価値創造の源泉であるデジタルクリエイターのスキルの向上ならびに社員エンゲージメントの向上等、人的資本の拡充に取組み、顧客企業へのDX支援を通じ、顧客と共に社会変革をリードすることを目指してまいります。
(※1)SaaS(「サース」または「サーズ」:Software as a Service)とは、インターネットなどのネットワーク経由でソフトウェアの機能を提供するクラウドサービスの一種。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のこと。 (※2)PMO(Project Management Office)とは、企業や各組織のプロジェクトを円滑に進めるために、部署の枠をこえて横断的にプロジェクトマネジメントを統括する部門や体制を指す。プロジェクトを統括し、様々な意思決定を担う立場であるPM(Project Manager)に対し、PMOはPMが円滑に意思決定できるよう情報収集や関係各所との調整を行い、PMのプロジェクトマネジメントを支援する立場。 |
<短期的な指標> a.売上全体に占めるWeb運用以外の領域の比率 b.PMO人材 c.一人あたり売上単価
<中長期的な指標> d.ミッション・ビジョン研修受講率 a.売上全体に占めるWeb運用以外の領域の比率 e.専門特化型カンパニー数 b.PMO人材 c.一人あたり売上単価
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人的資本ストーリー |
対応する指標 |
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1-ⅱ.採用方針 当社ではコアバリューである「貢献」「挑戦」「誠実」「仲間」があらゆる活動の根幹となっており、ミッションやビジョン、経営指針もそれに則ったものです。従ってこのコアバリューやミッション・ビジョンに対する共感度が最も重要な採用基準となります。加えて、変化の激しい当社が属する業界(以下、当業界という。)において継続的に学び続ける学習意欲や、変化に率先して対応する、もしくは自ら変化を起こしていく変革リーダーシップを重視します。これは新卒・中途どちらの採用においても同様であり、スキル・経験があってもコアバリューがマッチしていなければ、長期の就業は見込めず、結果的には高いパフォーマンスが発揮できないと考えられるためであります。当業界においては、たとえ未経験であっても、継続的な学習意欲を持った人材が長期的に就業することの方が結果的には高いパフォーマンスにつながると考えます。 当社は、デジタル人材が不足する未来を見据え、新卒採用に注力することで採用した人材をデジタルクリエイターとして育成し、顧客企業へのご支援のみならず、世の中に不足する人材を輩出してまいりました。その結果、総社員数に対する新卒社員の割合が増加したことに伴う収益性の悪化により、短期的に採用を抑制し、既存社員の稼働率の向上に最注力する方針としております。 しかしながら、中長期的には社会に有用なデジタル人材を輩出する方針に変更はなく、人材ポートフォリオおよび収益性の改善の後、新卒、中途採用とともに採用・育成モデルを継続し、高収益の基盤を構築することで、高成長を持続的に維持する方針としております。 また、新卒採用に加えて中途採用においても、コアバリューおよびミッションを強く訴求することで、他社との差別化を図り、これに共感する人材の獲得が可能になると考えております。 |
<短期的な指標> c.一人あたり売上単価 f.稼働率
<中長期的な指標> g.社員(デジタルクリエイター)数 h.離職率 |
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1-iii.人的資本の投資 育成と採用によりスキルの高いデジタルクリエイターの数を増やすだけでなく、営業への投資も積極的に実行し、案件獲得も並行して強力に推進することで、クリエイター一人あたりの単価や稼働率を向上させます。育成への投資は付加価値売上高の2%と投資枠を設け実行いたします。 また、2025年3月期より専門カンパニーを含むグループ全体を4事業領域に分け、事業ごとのクロスセルを推進するとともに、顧客企業毎のアカウントマネジメントを向上させることで、当社のサービス力を強化します。具体的には、一人あたり売上単価、PMO人材を含む認定専門スキルの獲得数、若手管理職者数、稼働率の向上を目指してまいります。 |
b.PMO人材 c.一人あたり売上単価 i.教育投資額 f.稼働率
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人的資本ストーリー |
対応する指標 |
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2.組織資本の最大化
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人的資本の価値を向上させるためには、人的資本の最大化のみならず、人材が置かれる環境、すなわち、組織資本の最大化が必須であると考えております。具体的には、当社は、自律分散協働型の組織であり、かつ、多様なデジタルクリエイターが集まるプラットフォームとして組織を強化いたします。自律分散協働型の組織とは、分散して存在する個々人が自律的に行動し、協働的に相互作用しながら一つの組織として成り立つ体制であり、これにより個々人のコミットメントや責任感、主体性や創造性が高まりやすくなるものと捉えています。当社は、一人ひとりの社員が自律的に考え行動しつつ、ともにミッションビジョンの実現を目指す組織の実現を目指します。 また、多様な人材が集まることで、集団としてのシナジーも最大化させ、一人では成しえることができない『DX支援ナンバー1』と『CSVのリーディングカンパニー』を実現させます。 |
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2-i.自律分散協働型組織の実現 一人ひとりの社員が自律的に考え行動するための権限委譲を推進し、小さい組織単位での意思決定が可能な組織を目指します。当社は高付加価値な専門領域を拡大するための社内カンパニーの社長を社長公募制度により募ります。設立したカンパニーは一つの会社とみなされ、カンパニー社長は運営に十分な権限を移譲されています。また、当社ミッションに共感する社員が積極的かつ主体的に、自身にできることを考え行動し、経営に参画することを「全員参加型経営」と称し、2023年4月に策定を発表した新行動指針も用いて自律分散協働型の組織力を向上させます。全員参加型経営を体現するべく、当社では社員が当社株式を保有することも推奨しております。 |
<中長期的な指標> e.専門特化型カンパニー数 j.従業員持株会加入率
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2-ii. 多様性の確保 当社は、多様性を確保するべく、社内環境を整備しております。具体的には、男女ともに長く働きやすい働き方として、子育て社員への勤務時間の短縮や有給の看護休暇などの制度を設けています。また、国籍や性別を問わず採用や評価を実施しており、障がい者雇用も積極的に推進しています。働き方も、自律した社員であれば、リモートワークや地方での勤務も可能であり、社員の移住を支援する制度も設けています。 |
<中長期的な指標> k.地方勤務社員 l.女性社員比率 m.男性育児休業取得率 n.女性管理職比率
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2-iii. 組織資本への投資 自律した社員の働きやすさを追求し、社員一人ひとりのキャリアの充実化にむけた社内異動制度やカンパニー社長の公募制度なども整備しており、社員がチャレンジできる環境を整えております。これにより、社員エンゲージメント、離職率、女性管理職比率、男性育児休業取得率、従業員持株会加入率(エンゲージメントを高めるために経営に参画)、といった複数の指標から、組織資本の最大化が十分に進捗しているか確認していきます。これらの指標が改善することで、グループとしてのエンゲージメントが高まり、デジタルクリエイターの価値が掛け合わされることで、当社の人的資本価値は向上すると考えています。 また、社員エンゲージメントスコアを活用し、当社の人的資本の拡充のための定点観測を行うことで、中長期的な成長基盤を確立し当社グループの継続的な成長に繋げてまいります。 |
<中長期的な指標> o.社員エンゲージメントスコア h.離職率 n.女性管理職比率 m.男性育児休業取得率 j.従業員持株会加入率
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3.より高度な全員参加型経営の実践
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人的資本と組織資本の最大化により、企業価値を向上させると同時に、自律分散協働型の組織風土を作ることで、全員参加型経営をよりバージョンアップさせることを目指します。全員参加型経営とは、ミッションに共鳴する社員が積極的かつ主体的に、自身にできることを考え行動し、経営に参画することであり、まさに自律分散協働型の組織により実現が可能なものです。2023年4月から新たな取組みとして、評価制度の変更、社員のエンゲージメントスコア向上に向けた活動、新行動指針の浸透活動などを通して、社員が受け身姿勢ではなく、自らスキル向上や稼働率向上、顧客企業のビジネス成果の向上やCSV普及に取り組む姿勢を持つ、自律型の個人を育成し、自律分散かつチーム協働型の組織風土を作っていきます。 |
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(3)リスク管理
リスク・コンプライアンス全般を検討する横断的な組織としてリスク・コンプライアンス委員会を設置し、全社的なリスク管理を行っています。
・リスク・コンプライアンス委員会
管理部門担当取締役を委員長とし、委員会メンバーはグループ執行役員によって構成されております。常勤監査等委員である取締役がオブザーバーとして参加します。リスク管理及びコンプライアンスに関する重点課題の策定及び目標達成に向けた課題について、四半期に1回以上協議、決定を行い、適宜取締役会に報告します。取締役会は、リスク・コンプライアンス委員会から全社リスク管理の状況と対応について報告を受け、監督を行います。
リスク・コンプライアンスに関する事項を所管する、コーポレート・ガバナンス室が、社内の関係部署の協力を仰ぎながらリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行います。さらに、適切な対応を検討して少なくとも年に1回以上リスク・コンプライアンス委員会に報告・提言します。
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リスク管理プロセス |
担当する会議体 |
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リスク評価の範囲 |
当社グループ |
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リスクの識別・評価 ・絞り込み |
グループ経営会議 リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク、人権リスクを含んだ人的資本リスク) |
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リスク対応 |
各本部 |
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モニタリング・報告 |
グループ経営会議 リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク、人権リスクを含んだ人的資本リスク) |
・人権リスクへの対応
人権の尊重とハラスメント防止に向けた取組みとして社内および社外取引先を対象とした内部通報制度を運用しています。内部通報内容は人権への負の影響の抽出・特定を行い、リスク・コンプライアンス委員会にて審議を行い、審議内容は適宜取締役会に報告します。
また、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、当社グループのステークホルダーに与える人権への負の影響を抽出・特定し、その防止および軽減を図ります。
(4)指標及び目標
当社グループは、上記において記載した当社の成長ドライバーである人的資本の拡充について、1.人的資本の最大化、2.組織資本の最大化、3.より高度な全員参加型経営の実践について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。
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指 標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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a. |
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b. |
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c. |
毎年向上 |
2024年3月期第4四半期 (1月~3月)
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d. |
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e. |
事業領域ごとに |
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f. |
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連結(新卒を除く)累計 |
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g. |
社員数 (時期未定) |
社員数 デジタルクリエイター数 2,482人 |
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h. |
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i. |
人材育成投資 毎期、連結付加価値売上高 (注3)の |
連結付加価値売上高の |
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j. |
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k. |
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l. |
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m. |
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n. |
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o. |
毎年向上 |
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(注)1.
2.PMO(Project Management Office)とは、企業や各組織のプロジェクトを円滑に進めるために、部署の枠をこえて横断的にプロジェクトマネジメントを統括する部門や体制を指し、プロジェクトを統括し、様々な意思決定を担う立場であるPM(Project Manager)に対し、PMOはPMが円滑に意思決定できるよう情報収集や関係各所との調整を行い、PMのプロジェクトマネジメントを支援する立場となります。
3.付加価値売上高とは売上収益から外注・仕入を差し引いた社内リソースによる売上高となります。
・人的資本の投資管理における指標と目標(持続的な成長のための事業投資)
サービス産業である当社グループにとって、研究開発とは事業投資やサービス開発投資であり、高収益・高成長を持続的に維持するためには当該領域への投資が不可欠であると認識しております。当社グループでは持続的な成長に向けて、サービスの向上・開発に向けた継続的なサービス開発投資、新規事業開発を進めるための投資枠、経費枠の指標を次のとおり設けております。
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項 目 |
内 訳 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
指 標 |
付加価値売上高に 占める割合 |
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事業開発 投資 |
サービス開発投資 新規事業開発投資 生産性向上投資 DGT推進 |
329百万円 |
事業開発投資+人材育成投資 毎期、連結付加価値売上高の3.5%~5% |
4.0% (うち人材育成投資2.3%) |
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人材育成 投資 |
教育研修費 教育研修部門 総経費 |
435百万円 |
・人権の尊重
人権の尊重に関する目標および実績は、次のとおりであります。
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当社グループの取組み |
人権基本方針の策定、組織体制の確立、公開 内部通報制度の運用 内部通報制度の外部取引先への拡大 人権デュー・デリジェンスのプロセスの設定・導入 |
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2025年3月期目標 |
人権デュー・デリジェンスの運用開始 |
〇環境(脱炭素、持続可能な社会への取組み)
当社では、2030年の目指す姿を示した「VISION2030」において、最も重要な社会課題の1つに「地球温暖化および気候変動による環境変化」を挙げております。
国際社会において気候変動問題は、早急な解決が求められる重要な社会課題と認識されており、世界全体で脱炭素化に向けた取組みが進められています。日本においても、ESG投資の加速や炭素税の本格的な導入が議論されるなど、気候変動問題が企業経営にもたらす影響は一層増大し、マーケティング活動を含めた企業のビジネスそのものも脱炭素型・社会課題解決型へ変容していくことが予想されます。
イ.環境方針、環境宣言
当社は、ミッション経営を推進しており、自社の社会における存在意義を「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」と定義しています。さらに2030年の目指す姿として「VISION2030」を掲げ、その中で従来型のマーケティング活動がもたらしたとも言える社会課題「地球温暖化および気候変動による環境変化」に着目し、解決に取り組むことを宣言しています。従来型マーケティングを変革し、循環型経済モデルへと転換することで、人々の幸せ・環境・社会と調和した脱炭素型で持続可能な経済モデル、ライフスタイルへの変革を通じ、世界の人々に心の豊かさを広げ、社会をより良くすることに貢献することを目指しています。
当社は存在意義・社会的使命を示す「ミッション」を下記のとおり定款に明記し、ステークホルダーに対して表明しています。
・定款第2条 ミッション
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」
メンバーズはマーケティングの基本概念を「人の心を動かすもの」と捉えており、インターネット/デジタルテクノロジーは「企業と人々のエンゲージメントを高めるもの」と考えている。メンバーズは企業と人々の自発的貢献意欲を持って組織活動に参加する“MEMBERSHIP”による協力関係づくりを支援し、マーケティングの在り方・企業活動の在り方を「社会をより良くするもの」へと転換する。そして気候変動・人口減少等の現代の社会課題に取組み、自社のみならず取引先、生活者と共に、人々の幸せや環境・社会と調和した脱炭素型で持続可能な経済モデル、ライフスタイルへと変革することで、世界の人々に心の豊かさを広げ、社会をより良くすることに貢献する。
ロ.環境行動指針
1.マーケティングの在り方・企業活動の在り方を変革する
当社は企業と人々の自発的貢献意欲を持って組織活動に参加する“MEMBERSHIP”による協力関係づくりを支援し、マーケティングの在り方・企業活動の在り方を「社会をより良くするもの」へと転換する。
2.事業活動を通じて社会課題に取組み、脱炭素社会を実現する
気候変動・人口減少等の現代の社会課題に取組み、自社のみならず取引先、生活者と共に、人々の幸せや環境・社会と調和した脱炭素型で持続可能な経済モデル、ライフスタイルへと変革することで、世界の人々に心の豊かさを広げ、社会をより良くすることに貢献する。全人類の最大の課題である気候変動問題と、少子高齢化に伴う年金医療費問題、地方衰退による財政破綻問題に重点的に取り組む。温暖化が後戻りできないほど悪化しないよう排出するCO2を2030年までに半減させ、女性活躍や年齢問わず永く働ける環境づくり、地方雇用創出などに貢献できるよう具体的に行動する。
3.脱炭素DXの推進
DXの推進により業務プロセス・企業と顧客の関係性・ビジネスモデルを変革しつつ、脱炭素化を実現する。
4.環境保全活動
国際的環境規制ならびに国、地方自治体などの環境規制を遵守するにとどまらず、自社使用電力を100%の再生可能エネルギーとし、必要に応じて自主基準を策定して環境の保全に努める。
5.継続的な改善
環境におけるマネジメントシステム、各種制度を整備し、環境目的・環境目標を設定して、継続的な改善活動を実施する。
6.環境教育の推進
社員に対し環境に関する法令遵守、環境への意識向上、幅広い観点からの環境保全活動について教育する。
7.情報公開
本指針の内容および当社の環境に関する情報等、各ステークホルダーへの情報開示と積極的なコミュニケーションにより、相互理解と協力関係の強化に努める。
ハ.TCFD提言に沿った情報開示
当社グループは2021年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、シナリオ分析等を行い、当社ウェブサイトにおいて関連する情報について開示いたしました。
(
・TCFD提言が推奨する開示項目における情報開示
TCFD提言が推奨する4つの開示項目①ガバナンス②戦略③リスク管理④指標と目標と、項目毎の具体的な開示内容に基づき、当社グループは、気候関連情報を開示しています。
(1)ガバナンス
<環境マネジメントシステム>
当社は環境に配慮した企業活動を推進し、その中で従来型のマーケティング活動がもたらしたとも言える社会課題「地球温暖化および気候変動による環境変化」に着目し、解決に取り組むため、環境行動指針を定め、環境マネジメントシステムおよび管理体制を構築しています。
当社は環境マネジメントシステムの推進にあたり、環境保全の状況を毎年度分析・評価することにより、取組みを持続的・効果的に実施します。
<体制>
環境マネジメント体制構築のため、環境に関する事柄全般を検討する横断的な組織としてサステナビリティ推進委員会を設置し、全社的な環境保全活動を推進しています。
・環境マネジメント体制図
詳細は、「
(2)戦略
当社はTCFD提言に基づき、全社を対象として気候変動リスク・機会による事業インパクト、対応策の検討に向けたシナリオ分析を行い、1.5℃~2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、2020年度より将来までの間に事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。
その結果、リスクとしては、電力価格の上昇に伴う環境価値証書価格の大幅拡大が懸念され、価格影響額を試算した結果、以下のとおりコスト上昇の可能性があることがわかりました。
(2020年実績、2030年見込み)
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リスク |
1.5℃~2℃ 財務インパクト |
計算式 |
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環境価値証書価格 |
約1億円のコスト |
1tCO2あたりのJクレジット価格×調達量(※1)(※2) |
※1 Jクレジット価格の推移データを参考に、1.5℃~2℃では2020年10月の日本政府の脱炭素宣言~現在までのJクレジット価格の推移率を使用し、2030年のJクレジットの価格を算出。
※2 事業拡大に伴う増加分も加味。
機会としては、脱炭素・サステナビリティのニーズ拡大に伴う脱炭素DX支援・CSV経営・CSV型プロモーション実行支援等の拡大等が見込まれることがわかりました。
当社は今後一層、環境方針・環境行動指針に従い、自社のみならず取引先、生活者と共に、人々の幸せや環境・社会と調和した脱炭素型で持続可能な経済モデル、ライフスタイルへと変革することで、世界の人々に心の豊かさを広げ、社会をより良くすることに貢献してまいります。
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1.5℃の世界観(2030年) |
4℃の世界観(2050年) |
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気候変動に関する積極的な国内政策・法規制が進み、カーボンプライシングの導入、温室効果ガス排出量開示の義務化、再エネ設備投資への優遇等が行われ、企業や投資家の温室効果ガス排出量削減や再生可能エネルギーの導入、省エネへのニーズが高まると想定。同時に、脱炭素DX支援・CSV経営・CSV型プロモーション実行支援等の拡大が見込まれる世界観を想定。 |
気候変動に関する国内政策・法規制が進まず、不可逆的な環境変化が頻発。物理的なサプライチェーンへの影響が顕著に現れると想定。脱炭素DX支援・CSV経営・CSVプロモーション実行支援に関しては底堅いニーズがあり続けると想定。 |
・リスク
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区分 |
想定される事象 |
当社へのリスク |
対策 |
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現在の規制 |
(1)カーボンプライシングメカニズム |
温室効果ガス排出量0を既に達成しているため、現在の規制に関する当社への影響は小さい旨の判断を行いました。 |
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区分 |
想定される事象 |
当社へのリスク |
対策 |
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新たな規制 |
(1)カーボンプライシングメカニズム (2)排出量報告義務の強化 (3)既存の製品およびサービスに対する命令および規制 (4)日本の温室効果ガス削減目標の引き上げ (5)省エネ政策の強化 |
温室効果ガス排出量0を既に達成しているため、(1)~(4)に関する当社への影響は小さい旨の判断を行いました。 (5)により省エネを実施するためのコストが発生し、当社へ小規模のリスクがあると考えられます。 |
(5)将来的な省エネ規制を見据えた省エネ対応を推進。 |
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法的リスク |
訴訟リスク |
当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っておりません。また、デジタルおよびインターネットビジネス業は気候変動への影響は比較的小さいと考えられ、サステナビリティ推進委員会において当社の事業運営に伴う訴訟リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。 |
― |
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技術リスク |
(1)既存の製品・サービスを排出量の少ないものに置換 (2)新技術への投資失敗 (3)低排出技術への移行 |
当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っていないため、低炭素でエネルギー効率の高い事業への移行を支援する技術に関連するリスクへの影響はない旨の判断を行いました。 |
― |
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市場リスク |
(1)電力調達の不確実性 (2)電力の環境価値証書の価格高騰 (3)非財務情報開示の拡大 |
(1)電力市場の価格リスク(再エネ高騰、販売量の不安定) (2)証書の調達コストが上がり、当社の財務計画に中規模のリスクがあると考えられます。 (3)非財務情報開示の拡大により、投資家等市場参加者からの対応要求が拡大し、当社の財務・経営計画に変更が生じるリスクが考えられるものの、当社は定款第2条および『Members Story』において気候変動・人口減少等の社会課題への取り組みを明記し取り組みを進めており、当社の事業運営に伴う評判リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。 |
(1)(2)省エネ施策を強化し、調達するクレジット量を削減させる。再エネを自家発電・自家消費する。 |
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評判リスク |
(1)消費者の嗜好の移り変わり (2)セクターの非難 (3)ステークホルダーからの懸念または否定的なステークホルダーからのフィードバック |
当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っておりません。また、デジタルおよびインターネットビジネス業は気候変動への影響が比較的小さいと考えられるため、サステナビリティ推進委員会において当社の事業運営に伴う評判リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。 |
― |
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区分 |
想定される事象 |
当社へのリスク |
対策 |
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緊急性の 物理リスク |
(1)台風や洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇 (2)山火事の可能性と重大性の上昇 |
(1)当社の事業所のハザードマップの状況等から、長期間におよぶ事業所の浸水等のリスクは低いと考えられますが、豪雨、洪水により事務所・発電所や従業員が影響を受け業務遂行に支障をきたした場合、当社に中規模のリスクが考えられます。 また、自然災害時の従業員の安否確認や事業所等の災害対応、また保険料の上昇により当社へコスト増加の影響が考えられます。 (2)当社のオフィスは山間部から離れているため、関連するリスクへの影響はない旨の判断を行いました。 |
(1)災害発生時の対応計画策定、浸水対策 |
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慢性の物理 リスク |
(1)降水パターンの変化や気象パターンの極端な変動 (2)平均気温上昇 (3)海面上昇 |
(1)(2)(3)慢性的な物理リスクの一例として、酷暑日の増加による電力需要のひっ迫に伴う空調費用の上昇リスクが考えられます。 海面上昇により沿岸部の事業所、発電所、従業員の住宅が影響を受け業務遂行に支障をきたし、中規模のリスクが考えられます。 |
(1)(2)(3)データセンターの利用 自社発電等の各種施策の利用検討により安定供給を確保、省エネ施策の実施。 災害発生時の対応計画策定、浸水対策 災害発生時のBCP対応計画策定 |
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その他リスク |
(1)水資源・食料・エネルギー資源の競合、景気減退、地政学的な紛争拡大 (2)人々の健康被害の増加 |
(1)水資源・食料・エネルギー資源の競合等により地政学的な紛争が発生・拡大し、世界経済の景気減退により当社の財務計画に中~大程度のリスクがあると考えられます。 (2)平均気温の上昇により、社員の熱中症、マラリア等熱帯地方の感染症の拡大、就業環境の悪化、在宅勤務の長期化等、複合的な要因による精神疾患者の増加、労働意欲の低下といったリスクが考えられますが、健康経営の推進、拡大、社員への適切な就業環境の提供によりリスクは抑えられると考えられ、関連しない旨の判断を行いました。 |
― |
※財務影響度 小:1,000万円以内 中:1億円以内 大:10億円以内 甚大:10億円超
・機会
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区分 |
想定される事象 |
機会 |
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市場 |
サステナビリティ関連サービスのニーズ増加 |
企業にサステナビリティや社会課題の解決といった社会的価値の提供が求められることで、脱炭素DX支援、CSV経営、CSV型プロモーション実行支援のニーズが高まる可能性があります。 |
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技術 |
再エネ・省エネ技術の普及 |
再エネの価格低下により自社の再エネ調達費用が削減でき、当社のコスト削減につながる可能性があります。 省エネ技術の価格低下により、自社の省エネ対策にかかるコストが低下し、当社のコスト削減につながる可能性があります。 |
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評判 |
顧客の評判変化 |
顧客がサプライチェーン全体での温室効果ガス削減を求める場合、温室効果ガス排出量が0である当社と取引するインセンティブが働くと考えられます。 |
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投資家の評判変化 |
投資家が気候変動のリスクを投資判断時に考慮する場合、温室効果ガス排出量が0である当社に投資するインセンティブが働くと考えられます。 |
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物理的リスク (慢性) |
平均気温の上昇 |
冬季の電力使用量が減少し、当社のコスト削減につながる可能性があります。 |
(3)リスク管理
環境マネジメント体制構築のため、環境に関する事柄全般を検討する横断的な組織としてサステナビリティ推進委員会を設置し、全社的な環境保全活動を推進しています。
サステナビリティに関する事項を所管するグループ経営企画室は、社内の関係部署の協力を仰ぎながらリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行います。さらに、適切な対応を検討して少なくとも年に1回以上サステナビリティ推進委員会に報告・提言します。
また、特定した気候変動の影響について、必要に応じてリスク・コンプライアンス委員会へ報告・提言を行うことで、気候変動の影響を全社リスクに統合する役割を担っています。
サステナビリティ推進委員会は、グループ経営企画室から報告・提言された気候変動の影響と対応について選定と審議を行い、年に1回以上担当役員による評価・分析を行っています。
リスクの評価については、その他のサステナビリティ推進委員会で審議・調整した気候変動に関する事項とともに少なくとも年1回以上取締役会に報告されます。
リスク・コンプライアンス委員会は四半期に1回以上開催され、気候変動課題を含む環境課題リスクをリスク管理及びコンプライアンスに関する重点課題の策定及び目標達成に向けた課題について、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告いたします。
取締役会は、サステナビリティ委員会とリスク・コンプライアンス委員会から気候変動に関するリスク管理の状況と対応について報告を受け、監督を行います。
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リスク管理プロセス |
担当する会議体 |
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リスク評価の範囲 |
当社グループ |
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リスクの識別・評価・絞り込み |
グループ経営会議 リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク) サステナビリティ推進委員会(気候変動課題を含む環境課題リスク) |
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リスク対応 |
各カンパニー |
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モニタリング・報告 |
グループ経営会議 リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク) サステナビリティ推進委員会(気候変動課題を含む環境課題リスク) |
・リスク管理プロセス
(4)指標と目標
メンバーズは1.5℃未満のシナリオの実現に向けた戦略に基づき、2022年度目標とした再生可能エネルギー100%を2020年に前倒しで達成いたしました。自社で使用する電力相当分の再生可能エネルギー発電を安定的に行うことを目指して、発電事業を行う子会社「メンバーズエナジー」を設立し、非FIT太陽光発電所を建設して、2021年6月から発電を開始しました。当社はオフィスビルにテナントとして入居しており、メンバーズエナジーが発電した電気を直接使用することはできないため、再生可能エネルギー由来のJクレジットを購入し、当社では、2020年度のScope1,2の温室効果ガス排出量を0としております。
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目標年度 |
再生可能エネルギー比率 |
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2022年 |
100%(2020年達成済) |
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2019年(2020年3月期) |
2020年(2021年3月期) |
2021年(2022年3月期) |
2022年(2023年3月期 |
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Scope1,2(ロケーション基準※) |
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Scope1,2(マーケット基準※) |
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今後はScope3としてサプライチェーンでの企業活動に伴う温室効果ガス排出量を算出・開示し、早急に算出目標を達成することで、更なる活動の推進に取り組んでまいります。
(※)ロケーション基準、マーケット基準
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ロケーション基準 |
地域、国などの区域内における発電に伴う平均の排出係数に基づき電力等二次エネルギーからの排出を算定する手法です。省エネ努力は排出削減として反映されますが、再エネ等の炭素排出量の低い電力の選択では反映されません。需要家が証書等を購入していてもその効果を反映することはできません。 |
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マーケット基準 |
企業が契約に基づいて購入した電力の排出係数によって電力等二次エネルギーからの排出量を算定する手法です。 再エネ等の企業の炭素排出量の低い電力の選択が、排出削減に反映されます。 需要家が証書等を購入している場合は、その効果も反映することができます。 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①当社グループの事業を取り巻く環境について
当社グループは、Web運用やデジタルビジネスにおけるコンサルティング、プランニング、プロジェクトマネジメント、インターネット広告代理における付帯業務等、付加価値の高いサービスの提供を強みとしております。しかし、DX領域およびインターネット関連業界は、参入障壁が低く、技術進歩のスピードが速いことから、今後の新規参入、新技術・サービスの出現等によって当社グループの強みが消失し、当社グループ主力業務の規模縮小、価格競争の激化等の可能性があります。
また、一般に広告市場は景気の動向に左右されやすい傾向があります。インターネット広告は他の広告に比して成長市場ではありますが、景気動向により成長率が鈍化する可能性があります。したがって、わが国経済の景気変動が当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②AI(人工知能)等の拡大について
生成AIをはじめとするAI(人工知能)技術のビジネスへの活用の進展が注目され拡大を続けており、新技術を活用した新サービスの導入が社会全般で進んでおります。今後、AI技術の活用により、ビジネス領域を中心として単純作業等の自動化は進展する可能性があるものの、AI技術の導入だけでなく、運用領域においてその技術を活用し成果を創出するデジタルクリエイターへの需要は今後も拡大すると考えております。
当社グループではこういった技術革新に対応すべく、技術動向の注視、情報収集、デジタルクリエイターの教育、新技術の習得等のスキルの向上に努めております。しかしながら、革新的な新技術、代替技術の登場等、当社の想定を超えてAIに関する技術革新が急激に進んだ場合、当社グループのサービスの強みが消失し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③新規事業等に伴う業績推移について
当社グループは、新規事業等を積極的に展開してまいりましたが、必ずしも全ての新規事業が計画どおりの成果をあげたわけではございません。当社グループは今後も事業内容を陳腐化させないよう、DX領域の業務に軸足を置いたうえで新規事業の展開を積極的に進めていく予定でありますが、新規事業の開始後、社会のニーズに合致しないこととなる場合もありえます。その場合には投資額の回収が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④売上及び利益計上の季節性について
当社グループは顧客からWebサイト制作業務、広告代理業務等を受託する受注型の業務の影響により、第2四半期末・年度決算期末の9月、3月に納品が集中し、売上収益が大きくなる傾向にあります。また、優秀なデジタルクリエイターの確保を目的として、計画的に多数の新卒人材の採用・育成を行っており、期初に販管費が先行して増える傾向にあります。新卒社員のスキル・生産性の向上による稼働率の増加とともに、受注高が期末にかけて高まる事業形態であることから、利益額は年度決算期末にかけて増加する傾向にあります。
前連結会計年度及び当連結会計年度の業績変動の状況は以下のとおりであります。
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前連結会計年度(2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
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第2四半期累計 |
通期 |
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売上収益(千円) (構成比) |
8,213,871 (46.5%) |
17,662,288 (100%) |
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営業利益(千円) (構成比) |
288,534 (20.0%) |
1,441,771 (100%) |
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当期利益(千円) (構成比) |
157,614 (15.6%) |
1,009,045 (100%) |
(注)IAS第12号「法人所得税」(2021年5月改訂)の適用に伴い、2023年3月期について遡及適用後の数値を記載しております。
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当連結会計年度(2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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第2四半期累計 |
通期 |
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売上収益(千円) (構成比) |
9,616,516 (47.0%) |
20,467,084 (100%) |
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営業利益(千円) (構成比) |
△551,106 (-) |
41,722 (100%) |
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当期利益(千円) (構成比) |
△398,640 (-) |
126,515 (100%) |
⑤広告業界の取引慣行について
広告業界の取引慣行として、広告会社は、自己の名と責任でメディア会社等と取引を行うこととなっており、そのことはインターネット広告業界においても変わりはありません。したがって、当社グループは、広告主が倒産等により広告料を支払うことが不能となった場合でも、メディア会社等に対しては広告料の支払義務を負うこととなり、広告主の信用リスクを負担しております。当社グループは当該信用リスクを極小化させるために、一定の信用力のある優良企業と取引することが通常ではありますが、当該リスクはなお残ります。
また、広告業界の取引慣行として、一般に、インターネット広告を含めた広告取引に係る契約について契約書その他の書面が取り交わされることは少ないといえます。これは、広告取引においては取引当事者の信頼関係を基礎として迅速かつ柔軟に契約の締結・変更に対応する必要性が高いためですが、反面、取引当事者の合意事項について齟齬が生じてトラブルに発展するリスクがあります。当社グループは、このリスクを可及的に回避するために、広告取引に当たって顧客に発注書の提出を要請するなど契約内容を書面で残す努力を行っておりますが、顧客によっては発注書の提出要請に応じない場合もあります。したがって、書面化されていない広告取引に係る契約の成立又は内容についてトラブルが発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥外注の活用について
当社グループでは、専門業務分野ごとに特定のパートナー企業を選定し、相互協力してサービスを提供しております。その場合、そのパートナー企業に不測の事態が生じ又は市場の逼迫等によりパートナー企業への発注費用が上昇すると、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、パートナー企業の選定を、その業績、業界での評判、従前の当社グループとの取引関係等を勘案して慎重に行っており、これに加えて、パートナー企業選定後も、パートナー企業の業務運営の監督及びその提供する成果物の検収、品質レベル評価を厳正に行っております。しかし、パートナー企業の提供する成果物に隠れたる瑕疵が存在する可能性がないとはいえず、当該瑕疵により当社グループの顧客が損害を蒙った場合、当社グループに対する損害賠償の請求その他の責任追及又は当社グループの社会的信用の失墜等によって当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦システムトラブルについて
当社グループの業務はコンピューターシステムに依存しており、またインターネット回線を通じての顧客企業との取引もあることから、ほぼ全てのサーバーをデータセンターへ設置し、オフィスの選定に関してもシステム保守・保全の点を重視するなどの対策を講じております。しかしながら、想定を超えたシステム障害、自然災害、サイバー攻撃、テロ等によりコンピューターシステムが停止し、又はインターネット回線の接続が不能となった場合、当社グループの業務の遂行に支障を来すリスクがあり、当該リスクが顕在化すると、機会損失の発生、代金の返還、損害賠償の支払、社会的信用の失墜等によって当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧情報セキュリティ及び個人情報保護について
当社グループは、システム上の瑕疵、コンピューターウイルス、不正アクセス等に起因するシステム障害、情報の流出・漏洩・改竄等のリスクを未然に防止して情報セキュリティを確保することにより、顧客の機密情報及び個人情報を適切に保護することが、当社グループに対する顧客の信用の根幹をなすものであり、経営上の最重要課題であると考えております。そのため、当社グループは、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が付与適格しているプライバシーマークおよび情報セキュリティマネジメントシステム「ISO/IEC27001(JISQ27001)」を取得し、これらの管理手法に基づく情報の適正管理を継続的に行うことにより情報セキュリティ体制を構築・運営しております。しかしながら、こうした対策を講じていても、情報セキュリティ体制に完全はなく、何らかの要因からこれらの問題が発生した場合には、顧客の機密情報又は個人情報の漏洩、改竄、不正使用等が生じる余地が考えられ、その場合、当社グループに対する損害賠償の請求その他の責任追及や当社グループの社会的信用の失墜等によって当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨法的規制について
ⅰインターネット広告に関する規制
現在のところ、当社グループの事業の阻害要因となる直接的な法規制又はインターネット広告業界の自主規制はありません。しかし、インターネット取引が普及する一方で、インターネット広告を悪用した犯罪が頻発する等、社会情勢が大きく変化すると、インターネット広告事業等に係る法規制又はインターネット広告業界の自主規制が強化される可能性があります。現時点でその規制内容を予測することは困難ではありますが、その内容如何によっては、当社グループの事業展開に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
また、広告主を規制する法律としては、不当景品類及び不当表示防止法、特定商取引に関する法律等があります。広告主がこれらの法律に違反しても直ちに広告代理事業者の広告取引が違法となるわけではありませんが、広告代理事業者である当社グループの行為が広告主の違法行為を助長するものとして損害賠償の対象となり又は当社グループの社会的評判が失墜するリスクがあります。当社グループは、一定の信用力のある広告主とのみ広告取引を行い、風俗営業に係る広告取引を行わないことを基本方針としており、違法な広告の掲載に関与しないための防止策をとっておりますが、上記リスクが顕在化する余地がないとはいえません。
また、当社グループは既述のように、サービス提供に当たって外注業者等と相互協力しておりますが、当社グループが小規模事業者を外注先として選定して取引する場合、当社グループがその相対的な優越的地位を濫用して代金支払の遅延等を行うと、下請代金支払遅延等防止法に違反するものとして、公正取引委員会からその是正を勧告され又は原状回復措置を求められるリスクがあります。当社グループでは現在までこうしたリスクが顕在化した例はなく、また、顕在化しないように契約管理をしておりますが、当該リスクが完全にないとはいえません。
ⅱ派遣サービスに関する規制
当社グループにおいて提供する人材派遣ビジネスは、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)に基づいた一般労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を受けてサービス提供を行っています。
労働者派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、当社グループが一般労働者派遣事業主としての欠格事由(労働者派遣法第6条)、及び、当該事業許可の取消事由(同法第14条)に該当した場合には、厚生労働大臣が事業許可の取消、業務の停止を命じることができる旨を定めております。
現時点において認識している限りでは、当社グループはこれらの法令に定める欠格事由及び取消事由に該当する事実はありません。しかしながら将来、何らかの理由により許可の取消等が発生した場合には、当社グループのサービス運営に多大な支障を来すとともに、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。
⑩知的財産権について
当社グループは、第三者の特許権、著作権等の知的財産権を侵害することのないように、システム開発、Webサイト制作等の業務を行っておりますが、当社グループ開発物・制作物の全てにつき特許権等の侵害の有無を厳密に調査することは不可能であり、当該開発物・制作物が第三者の知的財産権を侵害していない保証はありません。万一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該開発物・制作物の使用の差止請求、損害賠償請求、使用許諾料の支払請求等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪新たな会計制度や税制等の変更について
当社グループは、わが国の会計制度および税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。
しかしながら予期しない会計基準や税制の新たな導入・変更により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、税制等の改正や税務申告における税務当局との見解の相違により、当社グループに予想以上の税負担が生じる可能性があります。
⑫のれんの減損損失のリスクについて
当社グループは、事業の成長加速のためM&Aも必要に応じて実施しております。その結果、のれんを有しております。
のれんについて、少なくとも年に一度、あるいは減損の兆候が認められる場合はより頻繁に減損テストを行っております。かかるテストの結果、これらの資産が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さない場合は、減損損失を認識する必要性が生じます。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの財政状態及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑬人材の確保、育成及び労務について
当社グループが、参入障壁が低く技術進歩のスピードが速いDX領域およびインターネット業界において、高付加価値のサービスの提供を継続し、拡大するためには、高度な専門知識・能力を有する人材の確保・育成が最重要課題であります。しかし、DX領域およびインターネット業界は比較的新しくかつ急成長している業界であることから人材の裾野は狭く、また、昨今のDX領域を中心とした技術者に対する需要の高まりから、優秀な人材の採用が困難となっております。
当社グループでは、新卒の採用・教育や優秀な人材の中途採用、社員の離職率の抑制に取組むとともに、地方拠点での採用やグローバル採用も行っておりますが、日本国内の人口減少や少子高齢化の一層の加速に伴い人材確保が難航したり、事業拡大の速度に比して中途採用の確保や新卒採用者の戦力化が遅れたりする場合、又は採用・育成した社員の離職率が高い場合等には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは諸規程の整備及び運用など適宜、内部管理体制及び教育制度等を整備しております。適切な内部統制システムの整備及び運用については、事業展開の状況に応じて徹底を図っており、内部通報制度の整備、リスク・コンプライアンス委員会の設置等、不法行為の防止およびコンプライアンスの徹底に取り組んでおります。しかしながら、当社グループ及び役職員の瑕疵に関わらず、役職員間で予期せぬトラブルが発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑭人的資本の拡充に伴うマネジメント人材の育成について
当社のビジネスモデルは、デジタル人材による労働集約型のプロフェッショナルサービスを主体としているため、多くの人材を採用し、当社の成長ドライバーである人的資本を拡充してまいりました。
さらなる企業価値の向上および組織力の充実のため、採用した人材の育成に加えて、マネジメント人材の育成が重要な課題と認識しております。マネジメント人材の育成が円滑に進展しない場合、また、既存のマネジメント人材の過度な流出があった場合は、当社の事業運営に重要な影響を与え、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
人的資本の価値を向上させるためには、人的資本のみならず、人材が置かれる環境、すなわち、組織資本の最大化が必須であると考えております。当社グループは「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 〇人的資本(2)戦略 人的資本ストーリー」に基づきマネジメント人材の育成、採用および定着に努めております。
⑮配当政策について
当社グループは、株主の皆様への利益還元の充実とさらなる企業価値の向上を図る観点から、長期的な利益成長に向けた新たな事業投資及び業容の拡大に備えるための内部留保を行うとともに、経営成績の伸長に見合った成果の配分や配当金額の継続的な増額を基本方針とし、中期的には連結親会社所有者帰属持分配当率(DOE)は5%程度を目標としております。しかしながら、将来の経営成績、財政状態等によっては、株主への配当等による利益還元が困難となる場合があります。
⑯新株予約権について
当社グループは、長期的な企業価値の向上に対する役員及び社員等の士気を高める目的等のため、新株予約権を発行しております。現在発行し又は今後発行する新株予約権が行使された場合、発行済株式総数が増加し、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、この株式価値の希薄化が株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
⑰自然災害等について
当社グループは既述のように、サーバーのデータセンター設置やオフィス選定において災害・事故への対策を講じており、伝染病・感染症の世界的流行(パンデミック)、地震・洪水等の大規模災害、テロ等の犯罪行為、情報システムの機能不全等によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、テレワーク・在宅勤務制度の拡充および事業継続計画(BCP)の整備を行っています。
しかしながら、想定を超える自然災害等が発生した場合は、オフィス、設備、人的被害も含め甚大な損失が生じる可能性があり、当社グループにおける全ての事業又は一部の事業が一時的又は中長期的に中断され、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、災害による停電や電力制限、計画停電等により電力供給が十分得られなかった場合、当社グループの事業活動やサービスの提供が停止し、当社グループの経営成績等に大きな影響を与える可能性があります。
なお、当社グループが直接被災しない場合であっても、自然災害等に起因する世界経済の減速、顧客企業、協力会社の被災、災害等に起因する個人消費の落込みや企業の広告自粛により、企業の広告宣伝費及び販売促進費等の抑制につながる可能性があり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑱気候変動に係るリスクについて
当社グループは、従来型のマーケティング活動がもたらしたとも言える社会課題「地球温暖化および気候変動による環境変化」に着目し、解決に取り組むことを宣言しています。また、当社グループは2021年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終提言に賛同し、TCFDコンソーシアムに加入しました。TCFD提言に沿い、気候変動による事業へのリスクと機会を特定するシナリオ分析を実施し、リスクの把握・分析と管理の強化、およびそれらの適切な情報開示に努めています。
シナリオ分析による定性評価の結果、気候変動により当社グループの業務遂行および財政状態及び経営成績に中程度の、または甚大な損害を与える可能性があると特定したリスクは以下のとおりです。
<新たな規制リスク>省エネ政策の強化等による対応コストの増加
<市場リスク>(1)電力調達の不確実性/(2)電力の環境価値証書の価格高騰 電力調達および証書の調達コストの増加
<緊急性の物理リスク>台風や洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇による業務遂行およびコストの増加
<慢性の物理リスク>酷暑日の増加による電力需要のひっ迫に伴う空調費用等のコスト増加、海面上昇による業務遂行への影響
<その他リスク>水資源・食料・エネルギー資源の競合、地政学的な紛争等を要因とする景気減退による影響
なお、当社グループは上記のとおりリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組み、その対応に努めておりますが、気候変動等に関する各国の政策及び法規制等が予測を超えて厳格化された場合や、想定以上に気候変動が進行した場合、当社グループの財政状態及び経営成績にさらなる影響を及ぼす可能性があります。
※TCFDに基づく情報開示につきましては、別途下記サイトに詳細を記載しております。
<https://www.members.co.jp/sustainability/tcfd/>
⑲大規模プロジェクトに関するリスクについて
当社グループでは、顧客との取引にあたり大規模なシステム開発等のプロジェクトを受注する場合があり、大規模なプロジェクトには高いプロジェクトマネジメントスキルおよびその強化が不可欠であると当社グループは認識しております。しかしながら大規模プロジェクトを担えるプロジェクトマネージャーが市場全般において不足している現状に加え、顧客企業との工数・仕様に関する認識のギャップを含めた当初見積からの乖離、その差異による追加コストの発生や予見できないトラブルの発生、仕様変更等を含む種々の要因による納期の変更が発生し、中小規模のプロジェクトに比べて期間の売上及び利益に大きな影響を与えると同時に、人員の追加等により大きな機会損失が発生し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループは受注前の見積段階における複数の監査体制、専門の監査部門における工数等のチェック、アジャイル型開発への移行、長期に渡る案件の一括受注を控え、短納期に区切って受注することでチェック機能を強化する等の対策を講じております。
また、業績、財務状況に影響を及ぼす可能性が高い一定の大規模プロジェクトの受注に際し、グループ経営会議でモニタリングを行うことでリスクの低減に努めております。
⑳大口取引先の変動リスクについて
当社グループは各事業における大口取引先が存在しますが、現時点で売上収益の割合が10%を超える取引先はございません。しかしながら、経済情勢などの変化、取引先の事業方針及びデジタル投資等の計画の変更など、何らかの理由により大口取引先との取引が終了または大幅に縮小した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、大口取引先との関係を継続するために、顧客ニーズの把握、技術動向の注視、情報収集、デジタル人材の教育、新技術の習得等の提供価値の向上に努めております。また、定期的な顧客満足度調査を通じ顧客との信頼関係の維持に努めると同時に、新規顧客開拓により顧客基盤の拡大に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
経営者の視点による当社グループの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
a.財政状態
当社グループは、適切なる流動性の維持、事業活動のための資金確保および健全なバランスシートの維持を財務方針としております。
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は11,527百万円(前連結会計年度末比221百万円の増加)となりました。これは主として、現金及び現金同等物が702百万円減少したものの、営業債権及びその他の債権が459百万円、その他の金融資産が399百万円、その他の流動資産が65百万円増加したことによるものです。
(負債)
負債合計は、5,592百万円(前連結会計年度末比652百万円の増加)となりました。これは主として未払法人所得税が107百万円、営業債務及びその他の債務が81百万円減少したものの、その他の流動負債が875百万円増加したことによるものです。
(資本)
資本合計は、5,934百万円(前連結会計年度末比431百万円の減少)となりました。これは主として、その他の資本の構成要素が130百万円、資本剰余金が50百万円、資本金が40百万円増加したものの、自己株式の取得により399百万円減少し、利益剰余金が254百万円減少したことによるものです。
b.経営成績
<連結決算の概況>
当連結会計年度の売上収益は20,467百万円(前期比15.9%増)、営業利益は41百万円(前期比97.1%減)、税引前利益は136百万円(前期比90.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は126百万円(前期比87.5%減)となりました。
売上収益は12期連続増収で過去最高を更新し、連結業績予想(2023年10月27日発表)を達成も、大型構築案件が多く付加価値売上高率が低下しました。専門カンパニーは前期比43.5%増と大きく伸長したものの、主力のWeb運用部門の成長率の鈍化を補うに至らず、付加価値売上高(※1)は前期比13.8%増の19,208百万円となり、売上収益の成長率と比して伸ばし切ることができませんでした。デジタルクリエイター数は前期比23.4%増と人的資本への大きな先行投資により稼働率が低下したことで、売上総利益率は21.0%と前期比8.4ポイント減少しました。人的資本への投資に加えて、生成AI等のサービス開発、マーケティングへの投資も引き続き拡大させ、販売管理費は前期比13.4%増となり、営業利益は通期で黒字転換したものの、連結業績予想を下回り、大幅な減益となりました。
一方で、新卒採用中心の大きな先行投資による低稼働の課題は継続しながらも、第4四半期連結会計期間(1月~3月)の営業利益は611百万円、営業利益率10.4%と、事業における基礎的な収益性は維持していると考えており、今後は新卒・中途採用を抑制し、既存社員の稼働率の改善に最注力することで、収益性の回復を図ってまいります。
また、Web運用領域以外の高付加価値な先端技術領域に特化した社内カンパニーの付加価値売上高は第4四半期連結会計期間においては前年同期比52.9%増と拡大し、Web運用領域以外の売上比率は37.7%(前年同期は35.8%)と伸長しております。加えて、全社取引社数は441社(前期末比+91社)、うちDGTモデル提供社数は150社(前期末比+34社)と顧客基盤は拡大するとともに、顧客満足度も高水準を維持しており、サービス品質および当社の強みである顧客企業との中長期にわたる深い関係性は引き続き強固であると捉えています。
当期利益においては、金融収益や賃上げ促進税制の適用により法人税等の負担が想定を下回ったことなどにより、ほぼ計画通りの水準となりました。
(※1)付加価値売上高=売上収益−外注・仕入=社内リソースによる売上。
②キャッシュ・フローの状況
a.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ702百万円減少し、3,776百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、584百万円(前年同期は1,398百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、その他945百万円、減価償却費及び償却費522百万円によるものであり、支出の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の増加額521百万円、法人所得税の支払額350百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、100百万円(前年同期は1,165百万円の使用)となりました。収入の主な内訳は、投資の売却による収入26百万円によるものであり、支出の主な内訳は、敷金及び保証金の差入による支出87百万円、有形固定資産の取得による支出23百万円、投資の取得による支出22百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、1,187百万円(前年同期は980百万円の使用)となりました。収入の主な内訳は、新株予約権の行使による収入72百万円によるものであり、支出の主な内訳は、リース負債の返済による支出467百万円、自己株式の取得による支出401百万円、配当金の支払額391百万円によるものであります。
b.資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向
(ア)持続的な成長のための財務戦略
当社グループは持続的な成長を実現するため、財務の安全性と収益性、およびステークホルダーへの収益還元の優先順位づけとバランスに留意した財務戦略を立案し、実施しております。
ⅰ.健全な挑戦のためのリスクに見合った適正現預金の確保
当社グループではクリエイター人材の旺盛な需要を見込み、積極的に体制増強を進めております。しかしながら、固定化した人件費はリスクを伴います。体制増強の推進を担保するためのリスクヘッジ策として、想定する危機を回避できるだけの現預金を常に保持することとし、指標化により管理しております。
具体的にはリーマンショックと同等の経済混乱ならびに、大口顧客との取引中止および信用不和による新規取引ゼロの事態が発生し、いずれもその状態の解消に1.5年から2年かかると想定した場合、最大の赤字幅は月間平均社内総経費の2.8~3.3ヶ月分と試算しております。
したがって、最適現預金を月間社内総経費予算の3ヶ月分と定めております。当連結会計年度(第29期)の最適現預金額は4,835百万円と試算しており、第30期の適正現預金額の試算額は5,445百万円としております。
ⅱ.資本コストを上回る高収益性の確保
資本コストを上回る高い収益性を確保するため、連結ROE指標と事業ROE指標を設定しております。
・連結ROE指標は、事業ROE指標をもとに運営される事業から生み出される利益に加え、適正現預金指標によって保持される現預金を加味した値とし、25%を目標としております。
・事業ROE指標は、メンバーズグループが行う事業が生み出す利益水準を示し、35%を目標としております。事業運営やM&A等、すべての事業における収益面で本指標をクリアすることを前提として行っております。
ⅲ.株主還元・配当方針
当社は、株主への利益還元の充実とさらなる企業価値の向上を図る観点から、ミッション実現に向けた新たな事業への投資及び業容の拡大に備えるための内部留保を行うとともに、経営成績の伸長に見合った成果の配分や配当金額の継続的な増額を実施してまいります。この方針に基づき、目標とする配当の指標を中長期的な目標連結親会社所有者帰属持分配当率5%としております。
(イ)持続的な成長のための事業投資
サービス産業である当社グループにとって、研究開発とは事業投資やサービス開発投資であり、高収益・高成長を持続的に維持するためには当該領域への投資が不可欠であると認識しております。当社グループでは持続的な成長に向けて、サービスの向上・開発に向けた継続的なサービス開発投資、新規事業開発を進めるための投資枠、経費枠の指標を次のとおり設けております。
|
項 目 |
内 訳 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
指 標 |
付加価値売上高に 占める割合 |
|
事業開発 投資 |
サービス開発投資 新規事業開発投資 生産性向上投資 DGT推進 |
329百万円 |
事業開発投資+人材育成投資 毎期、連結付加価値売上高の3.5%~5% |
4.0% |
|
人材育成 投資 |
教育研修費 教育研修部門 総経費 |
435百万円 |
③生産、受注及び販売の実績
a.制作実績
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
ネットビジネス支援事業(千円) |
16,145,362 |
129.36 |
|
合計(千円) |
16,145,362 |
129.36 |
(注)上記金額は、製造原価によっております。
b.受注実績
|
区分 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
ネットビジネス支援事業 |
20,467,581 |
111.52 |
1,384,984 |
100.04 |
|
合計 |
20,467,581 |
111.52 |
1,384,984 |
100.04 |
(注)上記金額は、販売価格によっております。
c.販売実績
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
ネットビジネス支援事業(千円) |
20,467,084 |
115.88 |
|
合計(千円) |
20,467,084 |
115.88 |
(注)外部顧客への販売実績において、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の重要指標・KPIに対する経営成績は次のとおりであります。
|
重要な指標 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
デジタルクリエイター数(連結) |
2,012名 |
2,482名 |
+23.4% |
|
付加価値売上高(連結) |
16,886百万円 |
19,208百万円 |
+13.8% |
|
成果型チームモデル提供社数(注) |
116社 |
150社 |
+34社 |
|
連結親会社所有者帰属持分配当率(DOE) |
6.4% |
6.5% |
+0.1% |
(注)3名以上のデジタルクリエイターが顧客専任チームとして成果を追求しサービスを提供する顧客の数。
旧EMCおよびPGTモデル提供社数の合計値。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資金需要及び資金調達
当社グループは、事業の競争力を維持・強化することによる持続的な成長を実現するために、事業投資やサービス開発投資や人材育成投資に取り組んでいく考えであります。これらの資金需要は手元資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。