第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

 当社グループは、「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念のもと、オープンでフェアな企業活動に努めるとともに、社会的責任の遂行と地球環境の保全に取り組み、創造性を発揮して、お客様、株主、従業員、地域社会等、すべてのステークホルダーにご満足いただける付加価値の提供を経営の基本理念としております。

 

(2)経営環境

 地政学面では緊張が高まる中東情勢やアメリカ大統領選挙をはじめとする、各国での代表選挙に向けた政治の分断が発生しており、経済面ではインフレ抑制を目的とした金融引き締めが消費行動を鈍化させる等、引き続き不確実性の高い状況が続いております。また、自動車の電動化・自動化や生成AIに見られる技術革新、気候変動を背景とする環境問題への意識の高まり、世界各地で市場が地政学リスクの影響を受ける等、変化のスピードは早まっております。

 

(3)経営戦略等

 当社グループは、2016年5月に「Global Vision」を策定し、あるべき姿として「Be the Right ONE」を掲げ、当社グループらしい事業を広げております。また「未来の子供たちへより良い地球環境を届ける」というスローガンのもと、産業ライフサイクルを通じて温室効果ガス排出削減に貢献する事業を加速・推進してまいります。2030年には2019年比50%削減し、2050年には実質カーボンニュートラルとする目標実現に向けてグローバルでの脱炭素社会への移行に貢献してまいります。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

 脱炭素社会の実現を含む未来社会への貢献を加速させるために、当社グループが強みを持つ事業と社会課題解決に向けたカーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーの取り組みを掛け合わせ、成長戦略「7つの重点分野」へと整理しております。この成長戦略の更なる加速のため、組織体制を見直すとともに、明確なミッションに基づいた社会やお客様への提供価値を表す本部名称へ変更いたしました。

 また、これまで当社グループが、成長の過程で育んできた強みの源泉である「豊田通商らしさ」は当社グループ従業員の共通価値観として大切にしてまいります。そして「安全とコンプライアンスは全ての仕事の入口」の考えのもと、安全と品質に配慮して事業運営を行い、足元を固めつつ着実に成長戦略を推進し、事業を通した社会課題の解決、企業価値の最大化を目指してまいります。

 

 当社グループは新たな成長戦略と新たな組織体制のもと、社会やお客様にとってかけがえのない存在「Be the Right ONE」を追求し、「社会・環境にもたらす価値」と「お客様と当社グループが共に創造する価値」という2つの価値の最大化を目指してまいります。

 

    新組織体制(2024年4月以降)

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念を、「恒久的に変化しない、世代を通じて継承すべき最高概念」と位置付け、地球環境に配慮したビジネスの展開、社会に貢献する人づくりを通して、企業価値を高めてまいりました。

 現在、私たちが住む世界は気候変動に伴う異常気象、森林破壊、資源枯渇、人権問題などさまざまな問題に直面しており、企業活動を行う上で環境や社会は「配慮」するだけではなく、ビジネスを進めるにあたっての「前提条件」、ビジネスの対象そのものになってきております。企業にとって環境や社会課題はリスクであり同時に機会でもあります。こうした中、当社グループでは、従来「CSR活動」として行ってきた活動を発展させ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの観点から、長期的な視野を持って持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化しております。

 当社グループにとってのサステナビリティは、「経営そのもの」であります。当社の「企業理念」を実現すべく社会・環境にもたらす価値とお客さまと共に創造する価値を増強しながら、持続的に成長し続けることが、当社のサステナビリティ経営であります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループのサステナビリティ経営の推進体制は下図のとおり、取締役会の監督の下、社長がサステナビリティ推進委員会を招集し、その議論・決定事項を取締役会に報告する体制になっております。また、取締役はESGに関する豊富な能力・経験を有しており、取締役会による適切な監督が行われる体制を整えております。さらに、各関連会議体にてサステナビリティに関する個別のテーマについての議論を行っており、特に気候変動については社長を議長として毎月開催されるカーボンニュートラル推進会議で脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論しております。サステナビリティ推進委員会では、サステナビリティ担当役員であるCSOの下、経営企画部サステナビリティ推進室が事務局となり、各営業本部・コーポレート部門・グループ会社と協働しながら、サステナビリティ推進施策を実行しております。

 

 サステナビリティ推進体制(2024年3月現在)

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(2)リスク管理

 当社ではサステナビリティ推進委員会を年1回開催しております。社長が同委員会の委員長を務め、副社長、営業本部CEO、コーポレートの関連役員に加え、アドバイザーとして社外取締役4名、オブザーバーとして会長と常勤監査役を招集しております。同委員会ではサステナビリティに関する重要な方針を決定するとともに、社会動向の把握と当社の対応等について議論・決定しております。2023年12月に開催された同委員会の主な議題は以下のとおりであり、審議内容については2023年12月の取締役会で報告を行っております。

<主な議題>

・当社グループのサステナビリティの基本的な考え方の確認

・2024年3月期の振り返りと中長期の取り組みについての報告と議論

・マテリアリティKPI変更の承認

・マテリアリティへの取り組みと外部環境変化を踏まえた今後の対応についての議論

・委員長、社外取締役からの講評

アドバイザーとして参加している社外取締役からは、「マテリアリティKPIの在り方を継続的に見直すこと」「当社グループのサステナビリティに貢献するグローバルでの取り組みに多くの人が賛同し、一緒に働きたいと思えるような社内外コミュニケーションを検討すること」との講評がありました。マテリアリティKPIの見直しに向けた検討を進めるとともに、統合レポートとウェブサイトでの情報開示や社内外ステークホルダーとの対話をより一層強化してまいります。さらに、コーポレート部門の関係部署の責任者が集まるサステナビリティコーポ分科会を2ヶ月に1回開催し、同委員会で議論・決定した事項等も含めてサステナビリティ課題への対応を着実に進めてまいります。

 

サステナビリティ推進年表

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(3)重要な課題への対応

 当社グループは経営戦略に基づき注力する社会課題を明確にするために、「企業理念」「Global Vision」の実現に向けて意識すべき重要課題(マテリアリティ)を特定しております。

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「社会課題の解決と会社の成長を両立する最重要課題」

・交通死傷者ゼロを目指し、安全で快適なモビリティ社会の実現に貢献

・クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCOを削減することで、脱炭素社会移行に貢献

・廃棄物を資源化することで、モノづくりを支え、循環型社会に貢献

・アフリカをはじめとした開発途上国と共に成長し、事業を通じて社会課題の解決に取り組む

「会社の成長を支える土台となる最重要課題」

・安全とコンプライアンスの遵守をビジネスの入口とし、社会に信頼される組織であり続ける

・人権を尊重し、人を育て、活かし、「社会に貢献する人づくり」に積極的に取り組む

 

 社会課題の解決と会社の成長を両立する4つのマテリアリティの一つである「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCOを削減することで、脱炭素社会移行に貢献」では、気候変動を重要な経営課題の一つと認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づいた取り組みの拡充を図り、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーを推進し解決に向け取り組んでおります。

 また、会社の成長を支える土台となる2つのマテリアリティの一つである「人権を尊重し、人を育て、活かし、『社会に貢献する人づくり』に積極的に取組む」では、グローバルな視点で事業創造ができる人財、世界の市場で活躍できる人財の育成に注力するとともに、地域コミュニティでの職業訓練機会の提供などを通じ、社内外で社会に有用かつ貢献する人づくりに積極的に取り組んでおります。

 

①気候変動

(a)ガバナンス

 当社グループでは気候変動に関わる事業リスク・機会をマテリアリティの一つとして選定しております。マテリアリティについては、社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(年1回開催)(※1)でその取り組み内容を確認し、同委員会の構成メンバーである各営業本部CEOを通じて、事業戦略に反映させております。2020年よりマテリアリティに係るKPIを設定し、同委員会がその進捗を確認、議論内容を取締役会へ報告しております。また取締役は気候変動も含めたESGに関する豊富な能力・経験を有しており、適切な監督が行われる体制を整えております。

 気候変動については社長を議長とするカーボンニュートラル(CN)推進会議(毎月開催)(※2)において脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論するとともに、当社が排出する温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)削減の進捗管理も行っております。同会議の事務局は2022年4月に設置されたカーボンニュートラル推進部が務めており、同部は専門組織として脱炭素への取り組みをさらに加速させる役割を担っております。

 省エネに関する目標達成状況や気候変動に関する法令改正及び新たな要求事項への対応状況については、年に1回、安全・環境会議(※3)で審議し、その進捗の確認を行っております。その審議内容は、同会議の構成メンバーである各営業本部・グループ会社担当者を通じて、事業活動に反映しております。

 なお、当社はGHG排出削減を促進するために、社内カーボンプライシング制度を導入しております。この制度では、GHG排出削減への各営業本部の取り組みの進捗状況をその責任者である本部CEOの業績・報酬に反映させております。

 

※1

サステナビリティ推進委員会

気候変動を含むマテリアリティに係る方針、重要事項の決定

委員長

貸谷 伊知郎(取締役社長)

担当役員

富永 浩史(取締役・CSO)

事務局

経営企画部 サステナビリティ推進室

 

※2

カーボンニュートラル推進会議

カーボンニュートラル実現に向けた戦略の決定

議長

貸谷 伊知郎(取締役社長)

担当役員

今井 斗志光(副社長・CTO)

事務局

カーボンニュートラル推進部

 

※3

安全・環境会議

気候変動に関する法令対応などの進捗管理

議長

佐合 昭弘(副社長)

担当役員

齋藤 彰徳(CSKO)

事務局

安全・環境推進部

(注)2024年3月現在

 

 

(b)戦略

[ⅰ]シナリオ分析

 当社は、気候変動の影響が大きい事業を選定し、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。

 事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析を実施いたしました。リスクでは移行リスク(政策・規制、技術、市場、評判)及び物理リスク(急性・慢性)を、機会では資源効率、エネルギー源、製品及びサービス、並びに市場を考慮しております。

 また、当社グループでは2030年にGHG排出量を2019年比50%削減することを目指しており、今回のシナリオ分析においても同様に2030年を分析のタイムフレームとしております。

 

<参照シナリオ>

 気候変動に起因して、当社グループの事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネスの機会及び事業レジリエンスを評価し、事業への影響を分析することを目的として、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの下記シナリオを参照しております。

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<対象事業選定>

 当社グループ事業のうち、気候変動の影響が大きい事業(下記A~Dの観点)をシナリオ分析の対象事業として選定し、リチウム事業、アルミ溶湯事業、再生可能エネルギー事業、自動車販売事業についてシナリオ分析を実施いたしました。今後、対象事業の範囲を拡充してまいります。

 

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 当シナリオ分析におけるシナリオ・事業環境認識は、国際的な機関などが提示する主なシナリオを基にしており、当社グループの中長期の見通しではありません。

 

[ⅱ]各事業におけるシナリオ分析結果

 

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<リチウム事業>

 当社グループは、電動車に不可欠な車載用リチウムイオン電池の原料を供給するため、アルゼンチンのオラロス塩湖で炭酸リチウムの生産を2014年に開始しております。また、日本国内では、福島県双葉郡楢葉町において水酸化リチウムの製造工場を建設しており、2022年に生産を開始しております。

 

気候関連・リスク機会

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各シナリオ下における事業への影響

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いずれのシナリオにおいてもリチウム電池を使用する電動車や蓄電池の需要増加が見込まれる。

 

当社グループの対応策

 電動車の本格的な普及に伴うリチウムの需要増加に対し、既存能力の増強により長期安定的な供給体制構築を目指しております。また、今後の電池高容量化に伴う水酸化リチウムの需要増加を見込み、事業領域を拡大し、安定供給に向けた体制構築を進めてまいります。

 

<アルミ溶湯事業>

 当社グループは、再生アルミをよりCO削減効果のある溶湯状態でお客さまへ供給しており、世界トップクラスの取り扱いとなっております。今後、電動車の普及は加速し、それに伴い軽量化に必要となるアルミ部品の需要が高まってまいります。また、環境への配慮から、アルミスクラップの再資源化による再生アルミの需要の増加も見込まれております。

 

気候関連・リスク機会

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各シナリオ下における事業への影響

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当社グループの対応策

 当事業は重点分野である「循環型静脈事業」の一つと位置付けられており、アルミリサイクルバリューチェーンの川上から川下までの機能強化をグローバルに進めてまいります。炭素税導入などによるコスト増加に対して、新技術などの活用によりGHGの排出削減に努めてまいります。

<再生可能エネルギー事業>

 当社グループは、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどの発電事業をグローバルで展開しており、アフリカ、新興国での開発促進、洋上風力開発などの事業にも注力しております。

 

気候関連・リスク機会

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各シナリオ下における事業への影響

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当社グループの対応策

 当事業は当社グループの重点分野である「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント」と位置付けられており、既存ビジネスモデルを強化してグローバル展開を加速させるとともに、電源メニューの多様化やエネルギーマネジメントなど、事業領域の拡大を図っております。競争力のある再生可能エネルギーの安定供給で、より良い地球環境づくりに貢献してまいります。

 

<自動車販売事業>

 当社グループは、トヨタグループを中心とした自動車・輸送用機器メーカーが国内外で生産する乗用車、バス・トラックなどの商用車、産業車輌、補給部品を世界各国へ輸出しております。また、世界150カ国に及ぶグローバルネットワークを通じて、輸入販売総代理店や販売店の事業を展開しております。

 

気候関連・リスク機会

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各シナリオ下における事業への影響

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いずれのシナリオにおいても、新興国を中心にグローバルでの新車総販売台数の増加が見込まれるた

め、当事業全体のリスクは軽微と想定される。

 

当社グループの対応策

 新車販売市場は新興国を中心に今後も拡大していくことが想定されていることから、当社グループは全世界での販売体制を強化してまいります。また、電動車ラインアップの拡充に併せて、その基幹部品である電池素材の資源確保や電池の3R(リビルト、リユース、リサイクル)の事業領域を開拓し、電動車の普及を促進いたします。

 

(c)リスク管理

 当社グループは気候変動を含む環境リスクを高い基準で管理しております。気候変動に関わる事業機会とリスクは、CN推進会議、安全・環境会議とサステナビリティ推進委員会で審議され、その構成メンバーが事業戦略策定や活動に取り入れております。特に、CN推進会議は社長を議長として毎月開催、外部環境を踏まえた気候変動のリスク・機会の識別や当社への影響の評価、また気候変動に関連する事業の進捗を確認しております。統合リスク管理委員会では、グローバルなリスクマネジメント状況を検証するために、最も注力すべき10のリスク項目を定義、その一つとして、環境を掲げ、全社的なリスク管理プロセスの中でも気候変動リスクを管理しております。さらに、そのリスク管理プロセスをモニタリングするために、当社は環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001を取得しており、3年に1度国内外の連結子会社を対象に本社による環境内部監査を実施しております。

 

<投融資案件>

 投融資委員会には副社長・CSO・CFOが、投融資協議会にはCSO補佐・CFO補佐が、また、投資戦略会議には社長・副社長・CSO・CFO・経営企画部長がメンバーとして参加することで、投資案件がESGに与える影響を確認しております。投融資委員会・協議会の評価項目の中には環境リスクがあり、投融資委員会または投融資協議会に上げられた一定要件以上の案件は、CNに関する事前評価を必須としており、投資に伴って増加するScope1(※1)、Scope2(※2)の排出量の把握とその削減方法、また、その投資によるScope3(※3)の削減効果、社会のGHG削減に貢献する効果について確認をしております。

※1 自社での燃料の使用などによるGHGの直接排出(石油・ガスなど)

※2 自社が購入した電気・熱の使用などによるGHGの間接排出

※3 製品の原材料調達、製造、販売、消費、廃棄までの過程における排出温室効果ガス

 

(d)指標及び目標

[ⅰ]GHG排出削減目標と今後の取り組み

 社会のCNへの貢献と同様に、自社が排出するGHGのCNは不可欠であります。当社はパリ協定を支持し、脱炭素社会移行に貢献するための具体的な方針として、GHG排出量(Scope1、2)を、2030年までに2019年比で50%削減し、2050年にカーボンニュートラルとする目標を策定しております。当社グループは徹底的な省エネ・再エネ推進(LED化、太陽光発電設備の設置等)を実施しております。また、生産プロセスや物流においても燃料転換・消費効率化・技術革新によるGHG排出量削減を進めることで、この目標の実現を目指してまいります。産業ライフサイクルを通じてGHG削減に貢献する事業を、全社レベルで加速・推進できるのは当社グループの強みであります。当社グループの全従業員が一丸となり、全力で取り組んでいくことで、社会課題の解決に貢献してまいります。

 

 

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[ⅱ]GHG排出量データ

 

2023年実績

(単位:千t-CO

Scope1、2

736

上記数値は速報値であり、確定値については第三者保証と共に別途当社ウェブサイトにて開示いたします。

 

②人的資本

(a)戦略

 当社グループは、経営戦略実現の基盤となる事業戦略と人事戦略をコインの裏表と捉え、事業戦略と連動した人事戦略を推進することが成長のカギと考えております。そのためには、社員をHuman Capital(人的資本)と捉え、持続的にその価値を高めるための環境・文化風土、個を活かす仕組みが不可欠であります。人財の価値を高めることを通じて、社会づくりに貢献する価値創造企業「People Company Toyotsu(人の豊通)」を実現することが、私たちの目指す姿であります。

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 「People Company Toyotsu」の実現に向け、質・量両面での人財の強化及びその活躍推進(社員がいきいきと働ける組織・環境づくり)を主軸とし、以下の観点で施策を推進しております。

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[ⅰ]人財開発

 「商魂」「現地・現物・現実」「チームパワー」をキーワードとする「豊田通商グループウェイ」を実践し、主体的に考え、行動できる人財の育成を目的に、さまざまな教育・研修を展開し、社員の能力向上に取り組んでおります。また、会社を取り巻く経営環境の変化に柔軟に対応し、より良い未来に向けて多様な人財が活躍し、グローバルパートナーとの活発な価値創造を継続的に実現するために、グローバルで事業創造や事業経営のできる人財の育成に注力しております。豊田通商の教育プログラムは、OJT(現場実務教育)・Off-JT(研修・講習会)・自己啓発(通信教育等)の3つで構成されております。毎年、社員一人ひとりが将来のキャリアプランを検討した上で、自己実現に向けた業務アサインや、能力開発に向けた研修プログラムへの参加について、上司と対話する機会を設けております。また、近年ではe-learningも積極的に活用しております。

[ⅱ]健康経営

 健康保持・増進に関する取り組みは、社員のエンゲージメント向上や組織の活性化に寄与し、結果として企業の生産性向上につながるという考えの下、社員の健康意識の向上に努めております。中でも、社員の「ヘルスリテラシーの向上(注)」は最重要課題と考えており、「健康経営のための3つの指針」に基づき、各種施策を推進しております。

(注)社員一人ひとりが自立的に自身の健康を保持・増進すること

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[ⅲ]DE&I

 当社グループは、性別や年齢、国籍等のさまざまな「違い」を尊重して受け入れ、積極的に活かすDE&Iを経営戦略として推進しております。ビジネス環境が変化し続け、顧客ニーズが多様化する中、これに柔軟に対応し、持続的な成長を目指すためにも、さまざまなアイデアとシナジーを生み出し、グループ全体の優位性をつくり上げてまいります。

 これまでさまざまな企業との合併やパートナーシップにより、事業や展開地域を拡大してきており、グローバルに多様性に富む約69,000名の社員が働いております。このような状況から、次の3テーマをDE&Iの取り組みの軸としております。

1. 多様な人財の活躍

2. 働き方の見直しとワークライフバランス

3. 多様性を活かす会社風土の醸成と個人の意識改革

 

[ⅳ]適所適材、適材適所

 当社グループは、ありたい姿(Be the Right ONE)の実現に向け、社員一人ひとりが最大の活躍ができるよう、ポストに最適人財を配置する「適所適材」と人財を最適ポストに登用する「適材適所」を実現するための仕組みづくりに取り組んでおり、次の4つのテーマを軸として取り組んでおります。

1. タレントマネジメントプロセスの強化

2. 人財のグローカル化

3. 人的資本データ基盤の整備

4. 本部間 (機能間) 異動の促進

 

[ⅴ]人権尊重

 当社グループは、企業理念において「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」ことを掲げ、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組んでおります。その中で、私たちが「Be the Right ONE」となるため、事業展開する国・地域の人権課題を理解し、適切な行動をとっていくことが極めて重要な責任であると認識しており、サステナビリティ重要課題の一つとして「人権を尊重し、人を育て、活かし、『社会に貢献する人づくり』に積極的に取り組む」ことを掲げております。

 豊田通商グループ人権方針については、当社ウェブサイトをご確認ください。

 

(b)指標及び目標

 女性管理職比率(注)

指標

指標の説明

前事業年度実績

当事業年度実績

目標

女性管理職比率

豊田通商㈱における管理職の女性割合

6.5%

7.4

多様な人財が活躍できる場・機会の拡大を目指し2025年度10%とする

 女性の次世代管理職候補者層の育成・拡大を目的に、2015年より女性社員を対象としたウィメンズメンタリングプログラム(WMP)を継続的に実施。社内の他本部の部長や社外の女性管理職経験者がメンターとなり、キャリア意識の啓発、視野の拡大、課題解決の支援を行っております。

 また女性管理職の継続的な輩出に向けて2021年より個別育成計画を策定及びレビューを実施。女性のライフイベントも考慮に入れ、早期の海外派遣を実施したり、国内外でのマネジメント経験を積む機会提供を行っております。この様な活動内容を、毎年のDE&I役員報告で各本部が報告し、進捗を確認しております。

 

 育児休業等取得率(注)

指標

指標の説明

前事業年度実績

当事業年度実績

目標

育児休業等取得率

育児休業及び育児の為の休暇制度の利用率

74.0%

内、男性66.9%

91.6

内、男性84.3%

性別を問わず育児に参加することを目的に特に男性の育児休業及び育児の為の休暇の取得率の向上を目指し2025年度100%とする

 2016年以降、イクメン・イクボスセミナーを実施、それを機に、子どもが生まれた男性社員全員とその上長宛に育児休業取得を勧める個別案内の送付、2023年4月から育児から学ぶ「育習」を推奨するとともに、育児休業期間のうち最大20営業日を有給化することで、育児休業制度の理解と利用しやすい風土作りを行い、男性の育児参画を促進しております。

 

(注)現時点では、当社のみの管理としているため、指標及び目標は、当社に限ります。

3【事業等のリスク】

(1)当社グループのリスク管理

①リスク管理基本方針

 当社グループは、「リスク管理基本方針」において「リスク」を「業務に不測の損失を生じさせ、当社グループの財産、信用等を毀損する可能性を有するもの」と定義し、業務から生じる様々な「リスク」について認識・検討を行い、経営の安全性を確保し、企業価値を高めるため、適切かつ統制された範囲内でリスクを取ることを基本的な考え方としております。

 同方針に基づき、連結ベースのリスクエクスポージャー(RA元本)に与信格付やカントリーリスク等に基づく最大予想損失率であるリスクウェイト(RW)を乗じてリスクアセット(RA)を算出し、当社の財務的な企業体力であるリスクバッファー(RB) との均衡を図る「リスクアセットマネジメント」に取り組んでおります。

 財務基本方針である「RA÷RB<1.0」を堅持する為、投資パイプライン等を踏まえたRA÷RBのシミュレーションを行い、投資と財務健全性の両立を図っております。相対的にカントリーリスクが高い新興国へのエクスポージャーについては、NEXI(㈱日本貿易保険)の保険等によるリスクヘッジのほか、リスクバッファーに応じて国別の上限値を設定し、特定国への過度な集中を防ぐカントリーリスク管理を行っております。

 また、取引審査や投資案件の協議ではRVA(Risk adjusted Value Added)による評価を実施し、リスクに対する十分なリターン確保の意識付けを図っております。

 これらの取り組みによるRAの管理とRBの継続的な積み上げの結果、2024年3月期は引き続きRAがRBの範囲内(RA÷RB=0.6<1.0)となっており、健全かつ安定した財務体質を維持しております。

 

[地域別RAの分散状況(2024年3月末)]

 

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②リスク管理体制

 リスク管理基本方針を具体的に遂行する体制として、COSO-ERMフレームワークなどの考え方を参考に、従来各リスクに対してリスク主管部が個別に行ってきたリスク管理に加えて、よりグローバルなリスク管理を推進するため、2020年4月に「統合リスク管理委員会」を発足いたしました。同委員会は、CFOを委員長とし、海外各地域のリスク担当ヘッドである地域CFOを中心に、営業本部企画部長や各リスク主管担当役員・部長により構成されております。

 当社グループの経営に重大な影響を及ぼすリスクを明確化し、経営目標に関する全社的な重要リスクの特定及び対応方針の協議・決定と、リスク管理プロセスの有効性検証を行い、社長への報告及び取締役会へリスクマネジメントに関する議題の提言を行っております。取締役会はその提言に基づいてリスク管理プロセスの有効性を継続的に監督し、変更が必要な場合は適切な措置を講じております。また、同委員会では、各リスクの中から当社として特に注力すべき10のリスク項目を抽出し、各リスクに対してグループ会社各社が当該項目の達成度を自己点検し、グループ会社の所在する地域の中心となる地域統括部門が点検結果をレビュー、その結果を踏まえてグループ会社各社が改善活動を行う「Check10」という仕組みを導入しております。

 Check10では、リスク項目ごとにリスクの大きさと管理体制の2軸評価による評点を付けてヒートマップを作成、グループ会社各社のリスク項目ごとのリスク管理状況を視える化することで、脆弱な部分をあぶり出し、適切に改善策を打つことを狙いとしております。改善には必要に応じてリスク主管部が支援を行っております。このCheck10活動を拡充することにより、本社のリスク主管部とグループ会社各社の連携強化のみならず、当該地域内での関係強化も図り、連結ベースでの統合的なリスク管理体制の構築を図っております。

 

[Check10活動のPDCA]

 

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[Check10のリスク項目]

 

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[リスク影響度と管理体制の2軸マトリックスによる評価]

 

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[リスク評価結果(ヒートマップ)のイメージ]

 

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(2)個別のリスクについて

 当有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものであります。

<全社管理が必要なリスク>

①カントリーリスク

 当社グループは、海外の多岐の地域にわたり、商取引及び事業活動を行っており、各国の政府による規制・政治的不安・資金移動の規制等による製品の製造・購買に伴うリスクに加え、投資の損失またはその他の資産が毀損するリスクが存在しております。当社グループは、カントリーリスクが高い国における商取引及び投資については、貿易保険等によりリスクを低減することに努めております。また、最大想定損失額であるリスクアセットの上限値を各国ごとに設定し、定めた上限値の範囲内に抑えることで、特定の地域または国に対するリスクの過度な集中を防ぐことに努めております。しかしながらこうした管理やヘッジ策を講じていてもなお、取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の環境の悪化によるリスクを完全に回避することは難しく、状況によっては債権回収や事業遂行の遅延・不能等により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②世界マクロ経済環境の変化によるリスク

 当社グループは、国内及び海外における自動車関連商品、その他各種商品の販売を主要事業として、これらの商品の製造・加工・販売、事業投資、サービスの提供等多岐にわたる事業を行っております。このため、日本及び関係諸国の政治経済状況の影響を受けております。ロシア・ウクライナや中東情勢、米国や中国等の影響による世界的な景気後退に伴う個人消費や設備投資の低迷が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③自然災害等による影響について

 2011年3月の東日本大震災と同年10月のタイ大洪水でサプライチェーンが深刻な影響を受けたため、2012年4月に専門組織として総務部内にBCP推進室を設置いたしました。現在はコンプライアンス・危機管理部の危機管理・BCM推進室が、「豊田通商グループ事業継続基本方針」に従い、地震、台風等の自然災害、テロ、パンデミック等、あらゆるシナリオにおいても社員が出社不可、本社が入館不可、IT使用不可、長期停電のように重要な経営資源が使用不可になった場合のリスクへの対応として、国内外210事業でオールハザードの事業継続計画(BCP)により平時の対策と有事の対策を文書化し、事業継続マネジメント(BCM)の運用を実施しております。また、毎年3月と9月には、大規模地震によって名古屋本社または東京本社が重度に被災するシナリオで状況付与訓練(参加者にシナリオを開示せず臨機応変に対応させる訓練)を実施し、災害対策初動マニュアル並びに対策の継続的改善を実施しております。しかしながら、地震・洪水等の自然災害により、当社グループの事業活動に支障が生じ、追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④特定の販売先への依存

 当社グループの収益のうち、トヨタ自動車㈱グループへの収益が占める比率は17.4%であります。従いまして、トヨタ自動車㈱グループとの取引の動向が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤金利変動リスク

 当社グループは、営業債権等による信用供与・有価証券取得・固定資産取得等のために金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により事業資金を手当てしておりますが、一部が変動金利条件となっており、金利上昇局面では利息負担が増加するリスクがあります。ただし、その相当部分は、変動による影響を転嫁できる営業資産に見合っております。また当社グループでは、アセット・ライアビリティ・マネジメント(ALM)を通じて金利変動リスクをミニマイズすべく取り組んでおりますが、完全に金利変動リスクを回避できるものではなく、今後の金利動向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑥上場有価証券の価格変動リスク

 当社グループは、取引先との関係維持・強化、事業収益拡大及び企業価値向上を目的に、活発な市場で取引されている有価証券を保有しております。活発な市場で取引されている有価証券は価格変動の影響を受けることがあり、価格下落の場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

<Check10にて注視しているリスク>

①商品リスク

 当社グループが取り扱う非鉄金属・レアアース・食料・繊維等の相場商品には価格変動のリスクが存在いたします。そのため、商品ごとにポジション限度枠を設定し、限度枠内での運用状況を定期的にモニタリングしております。こうした価格変動のリスクを低減する施策を講じておりますが、必ずしも価格変動リスクを完全に回避できるものではなく、商品市況や相場の動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

②信用リスク

 当社グループは多様な営業活動により生じた国内外の取引先に対する金銭債権回収に関するリスクが存在いたします。こうした信用リスクに対応するため、当社グループでは取引先に対し、売掛金・前払金等の取引種別ごとに債権限度、約定限度枠を設定、全社システムによりグループの信用リスクを把握しております。また、財務内容を基にした当社独自基準の格付(8段階)を定め定期的に取引先の状況を確認し、低格付の取引先に対しては、取引条件の見直し、債権保全、撤退等の取引方針を定め、個別に重点管理を行い、損失発生の防止に努めております。このような与信管理を行っておりますが、取引先の財務内容が悪化した場合や予期せぬ事態発生によるリスクを完全に回避することは難しく、取引先の倒産等による債権回収が困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③事業投資リスク

 当連結会計年度末現在、当社は780社の連結子会社及び242社の持分法適用会社を有しており、既存提携関係の強化や新規提携を行うことにより既存事業の拡大や機能強化または新規事業への参入を目指しております。

 当社グループの投資スタンスは、短期的な利益を狙うのではなく中長期的に事業を育て、当社グループのバリューチェーンの拡大・強化に繋がるような戦略的投資を基本としております。「当社ならでは」の強みを発揮できる事業に経営資源を集中するため、全社方針を踏まえて営業本部の方針や投資パイプラインを方針会議で協議し、一定額を超える投資は投資戦略会議で戦略性・優先順位付けを協議し、推進可否の見極めを行っております。

 投資案件の検討過程では、コーポレート部門が専門的観点と定量的指標(TVA(※1)やRVA(※2)等)に基づいて事業計画を検証しております。投資案件毎にリスク評価とリスク低減策を検討した上、投融資協議会・委員会の議論を経て最終的な機関決定に至っております。また、投資意思決定の迅速化を目的に、一定の条件や金額的重要性に応じた決裁権者の設定や、国内外の一部の関係会社への決裁権限の委譲を進めております。投資実行後は、課題のある案件について、コーポレート部門と営業本部共働で課題の進捗管理・支援を継続的に実施しております(チェック&サポート活動)。また、業績悪化兆候、事業計画進捗、撤退条件等の投資モニタリングを実施し、計画通りに進行していない案件に対する再建・撤退ルールを厳格に運用しております。

 しかしながら、事業環境の変化や技術革新、その他不測の事態により投資先企業の価値または株式の市場価値が低迷した場合には、当社グループが投資金額の全部もしくは相当部分を失う、またはこれらの投資先企業に対する追加の資金提供を余儀なくされることがあります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[投資サイクル]

 

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※1 TVA:Toyotsu Value Achievementの略称=(基礎収益-利息収支)×(1-各国税率)-使用資金×

      国別使用資金コスト率

   -基礎収益とは、営業活動以外から発生した、非経常的で臨時的、かつ多額の損益を調整した税引前

    当期利益であり、営業本部・事業体の「稼ぐ力」を示す

   -国別使用資金コスト率とは、営業活動・事業活動に要する使用資金から生じる、国別資本コストと

    国債利回りの加重平均によるコスト率を示す

※2 RVA:Risk adjusted Value Addedの略称=税引後基礎収益-リスクアセット×リスクコスト率

   -リスクアセットとは、不測の事態が起こった場合に発生し得る最大予想損失額

   -リスクコスト率とは、当社の株主資本利益率(ROE)目標値13%以上を目線とした株主期待収益率

 

 

④外国為替リスク

 当社グループが行っている商品の売買及び投資活動等のうち、外国通貨建ての取引については、外国為替の変動による影響を受けることがあります。当社グループはこうした外国為替のリスクを一定程度まで低減するよう為替予約等によるヘッジ策を講じておりますが、必ずしも完全に回避できるものではありません。

 また、当社は海外に多くのグループ会社が存在しており、各社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑤資金調達リスク

 当社グループは、事業資金を国内外の金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により調達しているため、金融市場の混乱や格付機関による当社信用格付けの大幅な引き下げ、取引金融機関の融資方針変更等の事態が生じた場合、当社グループの資金調達に制約が課される可能性や、調達コストが増加する可能性があります。そのため、資産構成に合わせた最適資金調達を行うと同時に、長期資金の返済・償還時期の分散を図ることで借り換えリスクの低減を図っております。また、現預金、コミットメントライン等の活用により、安定的な流動性を確保すると同時に、金融機関との良好な取引関係の維持に努めておりますが、リスクを完全に回避できるものではありません。このようなリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥人事労務リスク・人権リスク

(a)人事労務リスク

 当社グループは、各国・各地域で事業を行うにあたり、本社及び海外拠点にて研修実施やツールの提供などによる労務管理知識向上や事業継続計画(BCP)整備による体制強化を働きかけておりますが、ストライキなどの労働争議を原因として操業が停止・制限される事態が発生した場合には、サプライチェーンや当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(b)人権リスク

 当社グループは、各国・各地域で事業を行うにあたり、全連結子会社への人権デューデリジェンスを通じた人権尊重に取り組んでいるほか、国連「世界人権宣言」を含む国際人権章典、「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際基準に則った「豊田通商グループ人権方針」を定め、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーのみなさまに対し、当該方針を遵守頂くことを働きかけております。しかしながら、不測の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦情報セキュリティリスク

 当社グループは、トヨタグループ及び豊田通商グループ標準の情報セキュリティ規程・ガイドラインを制定し、グループ全体の対応状況の可視化と継続的な改善を実施しております。また、本ガイドラインに合わせ、ネットワークやメールセキュリティ等のITインフラ領域については、システム共通化によって、グループ全体で効率的に有効性を高める施策を実施しております。サイバー攻撃対応体制も構築し、定常的に製品脆弱性情報やセキュリティ事故等の脅威情報の収集と、迅速な対策・予防措置を実施しております。また、昨今のサイバー攻撃トレンドに鑑み、攻撃を受けた際に被害を最小化する施策として、常時通信監視及び端末のふるまい監視・自動隔離を導入しております。しかしながら、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備・通信障害等による情報システム停止等の可能性は排除できず、この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧コンプライアンスリスク

 当社グループは、国内外において多岐にわたる事業を行っており、日本における会社法、税法、独占禁止法、金融商品取引法、贈収賄関連諸法、安全保障貿易管理等貿易関連及び制裁関連諸法等の各種法令、事業活動を行う各国・地域の各種法令・規制といった様々な分野における広範な法律及び規制に服しております。当社では、役職員の職務の執行がこれら法令、規制及び企業倫理に適合することをコンプライアンスの基本方針としております。コンプライアンス専任部署であるコンプライアンス・危機管理部は、同部をハブとしたグローバルネットワークを通じてグループ全体のコンプライアンス体制を強化し、法務部等、関連するコーポレート部署の協力を得て、各種コンプライアンス施策(コンプライアンストップメッセージ、階層別コンプライアンス教育、グローバル内部通報制度整備等)を策定・実施することで、法令遵守の徹底等コンプライアンス意識の向上を図っております。

 なお、物流関連のコンプライアンスリスクについては、国内の外国為替及び外国貿易法・関税法等、海外では当該国の法令、それに加えて国内・海外共に米国制裁法・米国再輸出規制等を遵守する貿易管理体制を整えることや、国内外において輸入通関時のHSコード誤りによる事後追徴を回避するための適切なHSコード判定規程の制定に努めております。また、物流業者の起用においては当社の管理規則に則った物流業者選定ルールの浸透を図り、物流業者の関与する不正・異常損等の発生を阻止する対策を行っております。

 しかしながら、このような施策を講じても、事業活動におけるコンプライアンスリスクは完全に排除できるものではなく、役職員が不正・不法行為を行った場合、社会的な信用を毀損する可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨安全関連リスク

 従業員並びに委託者の労働災害、及び火災・爆発により、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があります。災害未然防止に関する設備、作業標準の整備、教育、日常管理を行っておりますが、大規模な労働災害、及び火災・爆発の発生等により追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩環境関連リスク

 気候変動、水資源、生物多様性保全を含む環境関連のリスクは、当社グループ経営に与える影響が高いと判断し、安全・環境会議やサステナビリティ推進委員会で審議、取締役会へ適宜報告され、担当部門や構成メンバーを通じて事業戦略や活動に組み込まれております。

 気候変動については、影響が大きい事業を選定し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。「リスク」では、移行リスク及び物理リスクを、「機会」では、資源効率・エネルギー源・製品及びサービス・市場を考慮しております。また、当社単体・国内海外連結子会社における、豊田通商グループの事業活動を通じた温室効果ガス排出量を、2030年までに2019年比で50%削減を目指し、2050年にカーボンニュートラルとする目標を策定しております。加えて、2018年に策定したサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)においても、「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCOを削減することで脱炭素社会移行に貢献」することを掲げております。

 気候変動や森林破壊、人口増加等に伴い世界規模で水不足、水質悪化、洪水、生物多様性の毀損が深刻化しております。水資源の持続可能な利用・生物多様性の維持は、当社事業活動に多大な影響を及ぼすリスクであり、重要課題と認識しております。水リスクについては、連結子会社を対象にAQUEDUCT(世界資源研究所(WRI)が提供する水リスクに関するグローバルな基準となっている評価ツールの一つ)で調査し、利用効率の改善や使用量削減等を含むリスクに応じた対応を行っております。

 生物多様性については、新規の投資案件に対し生態系サービスへの影響を事前に調査・評価し、森林保全、環境負荷低減に努めております。既存事業に対しては、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム内部監査により、水及び生物多様性を含むリスク評価を実施しております。しかしながら、このような施策を講じても、不測の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①経営環境

 当連結会計年度の世界経済を概観しますと、コロナ禍からの経済活動再開や半導体の供給制約解消による自動車等の生産回復が成長を下支えしたものの、主要国における物価上昇と金利の高止まりが重石となったほか、ロシア・ウクライナ情勢の長期化やハマスによるイスラエルへの攻撃に端を発した中東地域の不安定化等、地政学的な不透明感が高まりました。

 米国経済は、長引く金融引締めの環境にある中でも堅調な個人消費が経済をけん引し、成長を持続させました。一方で、米中間の緊張の高まりや11月の大統領選挙に向けた国内政治の分断等先行きに不安が残りました。欧州経済は、長引くインフレが個人消費を抑制し、経済の重石となったほか、ウクライナへの支援を巡ってEU加盟国の間で意見の相違が生じたものの、企業の景況感が上向く等明るい兆しも見られました。中国経済は、不動産市況の悪化や米国との対立が個人消費や輸出、対内投資を抑制し、成長に力強さが欠けました。新興国経済は、中国経済の減速と米欧の金利高止まりを背景に、引き続き抑制的な経済成長に留まりました。

 こうした中、わが国経済は、一定の賃上げは実現したもののインフレに起因する実質賃金の低下が個人消費の重石となりました。一方で、自動車の生産・輸出やインバウンドの回復等が経済をけん引し、日経平均株価も史上最高値を更新する等、経済は堅調に推移しました。3月には日本銀行がマイナス金利を解除する等金融政策を大幅に修正し、金融市場の正常化に向けた動きが見られました。

 

②セグメント別の事業活動

(Ⅰ)金属

 使用済みの車載用電池のリサイクル技術のさらなる確立を目的に、豊田ケミカルエンジニアリング㈱はトヨタ自動車㈱との共同プロジェクトとして、「燃やさない電池リサイクル」処理パイロットラインの稼働を2023年秋に開始しました。本取組みにより、サーキュラーエコノミー及びカーボンニュートラル実現へ貢献していきます。

(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス

 インド市場における2輪EV駆動ユニットの製造・販売を目的に、武蔵精密工業㈱とDelta Electronics, Inc.と共に、2023年9月に合弁会社の設立に合意しました。2024年度中の立ち上げに向けて、準備を進めております。同国市場をはじめ全世界での2輪EVの普及をリードするとともに、カーボンニュートラルの実現にも貢献していきます。

(Ⅲ)モビリティ

 途上国におけるワクチンコールドチェーンのラストワンマイル輸送を目的に、Gaviワクチンアライアンスと共同で約1年間にわたり実施した実地走行試験が2023年6月に完了し、ワクチンの破損削減等の成果がGaviワクチンアライアンスに評価されました。同輸送の改善によるグローバルヘルスへ貢献していきます。

(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト

 ㈱ユーラスエナジーホールディングス等が出資・設立した北海道北部風力送電㈱は、2023年4月、北海道道北地域で、約78kmの送電線や国内最大規模のリチウムイオン蓄電池で構成される送変電設備一式の商業運転を開始しました。同地域では、ユーラス傘下の合同会社道北風力を含む3社が、2025年度までに国内最大級となる約540MW規模の風力発電所の建設も進めており、再生可能エネルギーの普及とカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス

 バッテリー電気自動車用電池の生産能力の増強を目的に、Toyota Motor North America, Inc.と共に、現在建設中のToyota Battery Manufacturing, Inc.へ約3.7億米ドルを追加投資し、累計投資額が約7.5億米ドルとなる事を、2023年11月に発表しました。需要が拡大する電動車に必要なリチウムイオン電池を生産・供給し、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

 

(Ⅵ)食料・生活産業

 インドのベンガルールで2014年からセコム医療システム㈱と運営するサクラ・ワールド・ホスピタルに続き、同社と同地域に2つ目の新病院を建設する事を決定しました。新病院は、病床数を増加するとともに、診療機能や先進医療環境を更に充実させ、2027年初頭の開院を予定しております。「日本式」総合病院の運営を通じて、同国の地域医療に一層貢献していきます。

(Ⅶ)アフリカ

 カーボンニュートラル実現と産業発展及び人財育成への貢献を目的に、2024年2月にケニア政府と覚書を締結しました。「再生可能エネルギープロジェクト開発」、「送電ロスを低減する高効率変圧器の普及」、「電動車のマルチパスウェイによる普及促進」を推進する事で、同国においてグリーンエネルギーを「つくる・はこぶ・つかう」のバリューチェーン構築に尽力していきます。

 

③業績

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2023年3月期)

当連結会計年度

(2024年3月期)

増減

収益

98,485

101,889

3,404

売上総利益

9,688

10,523

835

営業活動に係る利益

3,887

4,415

528

当期利益(親会社所有者帰属)

2,841

3,314

473

総資産

63,770

70,599

6,829

 

(2)仕入、成約及び販売の実績

①仕入の実績

 仕入と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。

 

②成約の実績

 成約と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。

 

③販売の実績

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③業績」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項4.セグメント情報」を参照してください。

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。また、重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の収益は、金属市況及び欧州電力価格下落の一方で、自動車販売の増加及び自動車生産関連の取り扱い増加等により、前連結会計年度を3,404億円(3.5%)上回る10兆1,889億円となりました。

 利益につきましては、営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費の増加の一方で、売上総利益の増加により、前連結会計年度を528億円(13.6%)上回る4,415億円となりました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、欧州電力価格及び金属市況の下落等による持分法投資損益の減少があったものの、営業活動に係る利益の増加等により、前連結会計年度を473億円(16.6%)上回る3,314億円となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

(Ⅰ)金属

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車生産関連の取り扱い増加の一方で、市況下落等により、前連結会計年度を159億円(20.8%)下回る607億円となりました。

(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、日本、北米を中心とした自動車部品の取り扱い増加等により、前連結会計年度を112億円(32.6%)上回る455億円となりました。

(Ⅲ)モビリティ

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州を中心とした海外自動車販売会社の取扱台数増加等により、前連結会計年度を102億円(22.3%)上回る559億円となりました。

(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州電力価格の下落等により、前連結会計年度を47億円(14.3%)下回る279億円となりました。

(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、エレクトロニクス事業、自動車材料事業における自動車生産関連の取り扱い増加等により、前連結会計年度を71億円(14.8%)上回る550億円となりました。

(Ⅵ)食料・生活産業

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、国内生活産業事業において前期一過性利益があったものの、南米食料事業における輸送費負担減少等により、前連結会計年度を23億円(23.8%)上回る118億円となりました。

(Ⅶ)アフリカ

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、西アフリカ地域を中心とした自動車販売会社の取扱台数増加等により、前連結会計年度を328億円(90.0%)上回る691億円となりました。

 

 次期の業績の見通しにつきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)は3,500億円となる見込みであります。

 

③財政状態

 資産につきましては、その他の投資で2,117億円、有形固定資産で1,351億円、現金及び現金同等物で1,071億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6,829億円増加の7兆599億円となりました。また、資本につきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金が2,934億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ5,516億円増加の2兆6,201億円となりました。

 その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は34.9%、ネットDERは0.5倍となりました。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

(a)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による増加、投資活動及び財務活動による減少等により8,787億円となり、前連結会計年度末より1,071億円の増加となりました。資金の増減額は前連結会計年度と比べて384億円の減少となっており、この主な増加または減少要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は5,421億円となりました。これは税引前利益等によるものであります。前連結会計年度比では979億円の収入増加となりましたが、これは主に税引前利益が425億円増加したこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は2,195億円となりました。これは有形固定資産の取得による支出等によるものであります。前連結会計年度比では796億円の支出増加となりましたが、これは主に子会社の取得による支出が898億円増加したこと等によるものであります。

 以上の結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは3,226億円の資金の増加となりました。前連結会計年度比では183億円の増加となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は2,632億円となりました。これは短期借入金の純増減等によるものであります。前連結会計年度比では566億円の支出増加となりました。

(b)財務戦略

 当社グループでは、財務健全性を維持した安定的成長を目指して、「資産の効率化」と「資産の内容に見

合った調達」を柱とする財務戦略を推進しております。

 「資産の効率化」については、“最小限の資金で最大限の利益確保”を目指し、売掛債権回収の早期化、在庫の削減等による運転資本の効率化や不稼動・非効率固定資産の削減など、資金の効率化を進めております。これらの活動により得られる資金を、より将来性の高い事業への投資や、有利子負債の圧縮に充当することにしており、“企業価値の向上”と“財務の健全性向上”の両立を目指しております。

 一方、「資産の内容に見合った調達」については、固定資産は長期借入金と株主資本でカバーし、運転資本は短期借入金でカバーすることを原則としておりますが、同時に運転資本の底溜り部分も長期資金でまかなうことを方針としております。また、連結ベースでの資金管理体制については、親会社からの国内グループファイナンスに一元化すると共に、海外子会社の資金調達についても、アジア及び欧米の海外現地法人などにおいて集中して資金調達を行い、子会社への資金供給をするというキャッシュマネジメントシステムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の更なる充実を図っております。更には、当社グループの資金調達の安全のため、マルチカレンシー・リボルビング・ファシリティー(複数通貨協調融資枠)等を設定するなど、不測の事態にも対応できるように備えております。

 今後の資金調達について、当社グループの営業活動が生み出すキャッシュ・フロー、資産の内容、経済情勢、金融環境などを考慮し、資産の一層の効率化と安定的な資金調達に対応していきたいと考えております。

 当連結会計年度末の流動比率は連結ベースで162%となっており、流動性の点で当社の財務健全性を維持しております。また、当社及び連結子会社では、主として現預金及び上述コミットメントラインの設定により、十分な流動性を確保しております。

 

 当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。

 

長期

短期

格付投資情報センター(R&I)

AA-(安定的)

a-1+

スタンダード&プアーズ(S&P)

A(安定的)

A-1

ムーディーズ(Moody's)

A3(安定的)

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記すべき事項はありません。

 

※将来情報に関するご注意

 本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものであります。実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。