第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業の精神である「コンピューターは社会に奉仕する」のもと、ITを通じて新しい価値を創造することで社会に貢献することを経営理念としております。

・社是(創業の精神)

「コンピューターは社会に奉仕する」

・経営理念

私たちは、確かな技術で新たな価値を創造し、社会に貢献します

・行動指針

私たちは宣言します

夢と未来にむかって、あたらしさへ挑戦します

お客様の心の声に、しなやかな発想で応えます

的確な判断と責任のもと、すばやく行動します

・企業メッセージ

Grow on with Clients, now and forever

 

当社グループはこれからも、新たな技術に果敢に挑戦しながら、しなやかな発想で、価値あるITサービスをお客様に提供し、お客様とともに成長し続けることで、企業価値の一層の向上に努めてまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2024年度から2026年度までの3ヶ年を対象とする中期経営計画を策定しております。本計画では以下を基本方針とし、収益基盤の安定を維持しながらサービス事業への転換を図るとともに、開発を通じた技術力向上と主力ソリューション強化を両立させてまいります。

中期経営計画の目標については、2027年3月期に連結売上高230億円、連結営業利益率12%、連結配当性向45%以上の達成を掲げております。

 

中期経営計画の基本方針

<事業の観点>

 ・自主ビジネスの強化と主力ソリューションへの投資拡大による収益性のさらなる向上

 ・新ビジネスの創出に向けた取り組みの促進

 

<人材の観点>

 ・社員がさらに生き生きと活躍できる環境の構築

 ・人材への積極的な投資

 

<会社の観点>

 ・リスクマネジメントの強化に向けた品質マネジメント向上と技術力の強化

 ・サステナビリティへの取り組みの継続的な推進

 

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、収益性及び資本効率性を重視し、売上高営業利益率、ROE(自己資本当期純利益率)を重視すべき経営指標として用いております。各指標の中長期的な目標につきましては、売上高営業利益率は12%以上、ROEは10%以上としております。株主資本の有効活用、経営の効率化を図りながら収益性を高めることが、企業価値の向上に繋がり、株主の皆様、従業員を含め全てのステークホルダーの利益に叶うものと考えております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

次期の見通しにつきましては、コロナ禍から経済社会活動の正常化が進み、緩やかに回復、30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など前向きな動向が見込まれます。一方で、海外景気の下振れリスクや物価動向に関する不確実性により引き続き不透明な状況が続くものと予想されます。

企業においては、ITを活用したテレワークやデジタル化が進み新しい働き方が急速に広がりました。また、経済産業省の「2025年の崖」の警鐘を背景に、企業における老朽化、肥大化、複雑化及びブラックボックス化している古い基幹業務システムを刷新する動きが続いております。デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透が進み、企業におけるIT活用の重要性が再認識される流れは人手不足の深刻化を受けて大企業だけではなく中堅・中小企業にも広がり、IT投資は中長期的に拡大していくものと認識しております。

このような環境のもと、当社グループは2024年度より開始する中期経営計画(2024-2026)を策定し、真に社会から必要とされる“NCS&A”になるため、さらなる企業価値の向上を目指し、成長に向けた投資を継続・強化してまいります。

中期経営計画の基本方針に沿って以下の施策を実施してまいります。

・自主ビジネスの強化と主力ソリューションへの投資を拡大してさらなる収益性の向上を図ります。部品化と共通化を進め、幅広いバリエーションを用意し他社との差別化を図ります。

・持続的な成長基盤の獲得に向けて、研究開発を通じて新しい事業の芽を創出する「社内スタートアップ制度」をさらに活性化させます。また、新ビジネスの創出に向けた部門横断の取り組みや信頼できる相手との互いにリスクをとった協業ビジネスの模索を促進します。

・新卒採用及び通年採用を拡大し人材獲得を強化します。また、より充実した教育の提供や多様な人材活躍の推進、処遇の改善、福利厚生の充実、柔軟な勤務制度の導入など、社員が生き生きと活躍できる環境の構築に向けて、人材への投資を進めます。

・リスクマネジメントの強化に向けて、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)によるプロジェクトにおける品質マネジメントの向上と技術力の強化を図ります。

・サステナビリティへの取り組みを継続して推進します。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

<サステナビリティ基本方針>

当社グループは、サステナビリティへの取り組みが持続的社会の実現のみならず事業活動の継続においても重要であると考えております。創業の精神である「コンピューターは社会に奉仕する」のもと、企業や地域社会が直面する課題に対してITソリューションを提供することで社会の持続可能な発展に貢献します。また、地球環境や人々の暮らしに関する課題についても積極的に取り組むことで持続的な社会の実現に貢献し、企業価値の向上を目指します。

 

<NCS&Aのマテリアリティ>

当社では、企業理念や事業活動から社会への貢献を一層高めるためのマテリアリティ(重要課題)を特定し、当社グループが目指す6つのテーマを2022年度から設定しております。

(マテリアリティ特定の流れ)

・社会課題リストに挙げられる社会課題と当社の理念体系及び事業活動との紐づきの有無を洗い出し

・紐づきがあると判定した項目に対して、「当社における重要度」と「ステークホルダーにおける重要度」の2軸で関係性を整理するマテリアリティマップを作成

・ワークショップを開催し内容を議論、同時に取締役会でも議論(ワークショップは全社から選抜された若手社員により、計5回開催)

・外部有識者2名に検討結果を提示し意見をヒアリング

・外部有識者からのヒアリング結果を踏まえてワークショップでよりマテリアリティに対する当社テーマの具体イメージをすり合わせる議論を行い、その後、取締役会で議論

(当社グループが目指す6つのテーマ)

・社会への貢献

地域社会に貢献し、より豊かな生活に向けて寄り添います

・お客様の事業を支える

お客様が一番最初に思い浮かべるIT企業を目指します

・新しい技術への挑戦

お客様の未来に寄り添うために新しい技術に挑戦し続けます

・人生を豊かに

多様な個性を活かしあい、互いの人生を豊かにする集団になります

・地球環境への貢献

ITソリューションサービス事業を通じて環境側面の改善を継続的に行い、社会から信頼される事業者であり続けます

・透明、公正な経営ガバナンス

ガバナンスを通してステークホルダーからより深い信頼と理解を獲得します

 

(2)具体的な取り組み

①ガバナンス

当社グループの成長戦略である「サステナビリティ経営」を推進するため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。委員会は、サステナビリティにかかる全社的課題、取り組み施策の確認や検討、グループ全体へのサステナビリティ経営の浸透を目的としております。サステナビリティに関する取り組み状況等については、取締役会に報告し取締役会で審議しております。

 

 

②リスク管理

当社グループは、事業遂行上のリスクマネジメントシステムの適切な構築と運用及び部門横断的なリスク管理の推進を目的として、全社リスク管理部門としてリスクマネジメント部門を設置し、その管理のもとに事業遂行に伴うリスクに各リスク担当部門が対応しております。リスクは発生頻度と危害程度を評価し、その評価に応じたリスク値を算出することで優先的に対応すべきリスクを明確にして対策を行っております。

気候関連リスクに関しては、サステナビリティ委員会においてリスクと機会について検討しております。当社グループはITソリューションサービスの提供を主たる事業内容としており、環境負荷の高い事業を行っていないことから、現在のところ、気候変動問題が当社グループの事業に重大な影響を及ぼすことは想定しておらず、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)またはそれと同等の枠組みに基づく開示は行っておりません。

しかしながら、地球環境の保全に配慮した環境負荷の低減が、社会共通の重要課題であると認識しており、電気及び紙の使用量削減や地域清掃活動への参加を推進しております。電気使用量の削減に向けては対前年約3%の削減を目指し、意識啓発を目的としたポスターの社内掲示や照明・空調のこまめなスイッチオフなどを実施しております。また、紙使用量削減に向けては、全会議室へ大型ディスプレイを設置し、ペーパーレス会議を推進しております。 

当社グループは、社会から信頼される事業者であり続けるために、ITソリューションサービス事業を通じて環境側面の改善を継続的に行うとともに、環境に低負荷な事業活動を推進し、社会貢献活動を継続してまいります。

 

③戦略

<人的資本への取り組み>

社会構造や技術動向の急激な変革に伴い市場競争が益々激化する中で、IT業界にとって、事業を継続的に発展させるためには人材の育成と確保が非常に重要な課題となっております。当社グループが社会に貢献できる付加価値の高いITソリューションを提供し続けていくためには、新たな課題に自ら挑戦するプロフェッショナルとして自立した人材が必要と考えております。そのためには社員一人ひとりが果たすべき組織上の職務や職責を認識し、お客様と当社グループの成長に貢献するための意欲と能力を高めていく必要があります。

経営理念のもと、意欲と能力を互いに高め合える組織風土づくりを目指し、事業戦略・事業目標を実現する真のプロフェッショナル集団となるために、社員が向かうべき人材像として以下を掲げております。

「求める人材像」

・全体を俯瞰して、目標を達成するために何が必要かを考えられる人

・職責に対し、責任を持って自ら論理的に考え、行動ができる人

・社会の変化と技術の革新に挑戦し続ける、自己成長のエンジンを持つ人

・自らの得意領域を持ち、ビジネスに活かす人

そして、求める人材像の実現に向け、社員、職場、教育部門が一体となって以下の人材育成方針を推進しております。

 

<人材育成方針>

・社員は、お客様と会社の成長に貢献するために果たすべきことを認識し、自己研鑽に励み、自身の人格及び専門的な職務遂行能力の向上に努める。

・職場は、業績向上に向けて職場内実践教育(OJT)を中心とした組織的な人材育成をそれぞれの立場から全員で取り組む。

・教育部門は、職場と連携して意欲ある社員への自己啓発並びに職場の人材育成支援を計画的、継続的に実施することで人材育成の環境を提供する。

この方針に沿って、階層別教育、職種別教育、キャリア開発教育、その他必要に応じた教育を実施し、人材育成に取り組んでおります。

 

 

<社内環境整備方針>

当社グループでは、多様な価値観を持つ優秀な人材が、その能力を最大限に発揮し生き生きと働くことができる企業風土を目指し、「働き方改革」「健康経営」を主軸に働きやすい環境づくりを推進しております。

 

 (多様な人材活躍)

当社は、社員一人ひとりのライフステージに応じて働き方を選択し、よりパフォーマンスを発揮できる環境を実現するため、社員の活躍を推進する制度の充実を図っております。

・ライフワークバランス推進委員会の設置

2014年に「女性活躍ワーキングチーム」を立ち上げ、女性が長く働き仕事で活躍し続けられる環境の検討を開始し、2017年に「働き方改革タスクフォース」を立ち上げ、働き方改革を推進してまいりました。2018年にこれらを統合し「ライフワークバランス推進委員会」を立ち上げ、性別に関係なく、働きやすい環境づくりに取り組んでおります。2023年度は仕事と介護の両立に向けた介護応援ポスターの作成や男性育休座談会を開催しました。

 

・育児・介護支援制度の充実

社員が安心して育児・介護をしながら働けるよう、休職制度、短時間勤務の充実、利用しやすい環境整備を進めております。また、外部の育児・介護支援サービスを導入し、育児休職からのスムーズな復職に向けた支援や子どもの保育園・小学校への送迎、病児保育の委託、高齢の親の病院への付き添いなどのサービスを利用できるようにしております。

 これらの取り組みの効果もあり、男女別の採用10年前後の継続雇用割合は女性が男性を上回っております。

 

全体

男性

女性

10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

(2013年度~2015年度採用者平均)

43.8%

39.1%

46.3%

 

 

・女性活躍推進

女性社員のさらなる活躍に向け、2023年10月よりフェムテックサービスを導入し、女性特有の健康課題の軽減及び女性のキャリア形成の支援に取り組んでおります。また、管理職に占める女性の比率を現在の約5%から2026年度に20%とする目標を掲げ、女性管理職の育成に向けた研修等により、早い時点での管理職に向けた意識付けと学びの場を提供し、管理職候補者の育成を行ってまいります。

 

・男性育児休職の推進

職場全体の業務改善につながるとの考えから、女性社員だけでなく男性社員の育児休職取得も推進しております。希望する誰もが育児休職を取得できる環境づくりに取り組み、社内報での男性育児休職取得者紹介や推進ポスター掲示を実施しております。

 

2021年度

2022年度

2023年度

育児休業取得率(提出会社)

男性

20.0%

62.5%

93.3%

女性

100.0%

100.0%

100.0%

 

 

 

(健康経営)

当社は、経済産業省による「健康経営優良法人 2024」の認定を取得しております。社員一人ひとりが心身ともに健康で個々の力を最大限に発揮できることが会社の成長につながると考え、社員が生き生きと長く働くことができるよう、健康保持・健康増進に継続的に取り組んでまいります。

・総実労働時間の低減

2015年より健康経営の取り組みを開始し、残業時間の削減や有給休暇の取得促進に取り組んでまいりました。定時退社するノー残業デーの設定や会議の効率化などにより残業時間の削減に取り組んでおります。また、全社で有給休暇取得促進日の設定やメモリアル休暇の取得推進など、社員が有給休暇を取得しやすい環境を整えております。

・勤務時間内禁煙

2020年4月の健康増進法改正に先立ち、2019年より勤務時間内禁煙を実施しております。社員の健康障害防止、健康増進と社内における受動喫煙防止を狙いとしております。

 

(働き方改革)

当社は、人材こそが企業の持続的成長と企業価値向上の源泉であると考え、社員が生き生きと働ける会社を目指し、職場環境の改善に継続的に取り組んでおります。

・多様で柔軟な働き方の実現

多様な価値観を持つ人材が多様な働き方で活躍できるよう、ライフスタイルに合わせて出社時間を柔軟に選択できる勤務制度を導入しております。社員全員にテレワーク環境を整備するとともに、通勤定期を廃止し、テレワークの定着化に取り組んでおります。また、1時間単位での有給休暇の取得や社員に1台ずつ配布しているスマートフォンでの社外からの勤怠入力を可能とし、より柔軟な働き方の実現に向けた環境整備に取り組んでおります。

・テレワークと出社が共存する「ハイブリッド勤務」の推進

働き方改革の推進と利便性の高い就労環境の整備を図るため、大阪4拠点、東京3拠点にオフィスの分散化を図っております。社員が出社しやすいオフィスを選んで働くことができ、通勤によるストレスの軽減、モチベーションの向上につなげております。

 

④指標及び目標

人的資本への取り組みに関する主な指標の目標と実績は次のとおりであります。

なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

2022年度実績

2023年度実績

目標と達成時期

有給休暇取得日数

18.1日

17.9

18

2026年度

1月当たりの平均残業時間

12.5時間

12.1時間

10時間

2026年度

女性管理職比率

5.4%

5.2

20

2026年度

男女賃金差異

75.5%

76.4

80

2026年度

男性労働者の育児休業取得率

62.5%

93.3

100

2026年度

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢変化

当社グループが属する情報サービス産業においては、企業においてITを活用したテレワークやデジタル化が進み、新しい働き方が急速に広がりました。また、経済産業省の「2025年の崖」の警鐘を背景に、企業における老朽化、肥大化、複雑化及びブラックボックス化している古い基幹業務システムを刷新する動きが続いております。一方で、海外景気の下振れリスクや物価動向に関する不確実性により引き続き不透明な状況が続くものと予想されます。このような環境のもと、働き方の変化やデジタルトランスフォーメーション(DX)により顧客のITニーズが変容した場合、あるいは海外景気の下振れや物価高騰による経済情勢の変化等により顧客企業のIT関連投資抑制が急速に進行・持続した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社ではこうした事態に対し、主力ソリューションの商品力を強化するとともに、営業力を強化し顧客志向の事業活動を推進することで顧客ニーズをより早く、より正確に捉え、顧客満足度の向上を図り、顧客拡大及び顧客内シェア拡大を推進しております。また、当社はDX推進に寄与するマイグレーションサービスの強化や、「社内スタートアップ制度」(研究開発を通して新しい事業の芽を創出する活動)による事業創出活動の推進を図っております。

 

(2) 不採算プロジェクトの発生

当社グループの事業、とりわけシステム開発においては、お客様からの仕様追加や開発方式の変更等により当初見積り以上に作業工数が増大した場合、受託責任としてその開発リスクの負担を求められる場合があり、結果として不採算となるプロジェクトが発生することがあるほか、納入後の不具合の発生等により修復に要する費用が業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは外部専門家の知識・ノウハウの活用あるいは生産性向上のため、業務の一部を外部委託しておりますが、委託先において予想外の事態が発生した場合には、品質保持のためのコスト増、納期遅れに伴う顧客への損害賠償等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、品質マネジメントシステムを構築し、プロジェクト統制を策定するとともに、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置し、全社的な視点から各プロジェクトの規模、進捗、重要度及び緊急度を判断し、効果的な人材配分やプロジェクト支援、監査を実施することで、不採算プロジェクトの発生防止に努めております。また、委託先に対して品質水準及び管理体制に対して定期的な審査を実施し、必要に応じて改善指導を行う等、優良な委託先の安定的確保に努めております。

 

(3) 特定取引先への依存

当社は日本電気株式会社(以下、NEC)の販売特約店でありNECが製造販売するコンピュータ機器と当社グループの保有する情報技術やソフトウエアパッケージを組み合わせた情報システムを販売するとともに、NECグループが受注した大型プロジェクトのSIサービス、開発作業の一部を受託しております。これらの売上は当社グループの大きな事業収入の柱の一つとなっており、今後NECにおいて経営方針または取引関係における事業方針の大幅な変更がなされた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、こうしたリスクを回避するためにNECグループのITサービス事業における当社のポジションを明確にし、その強みを発揮して協業関係を維持・拡大するとともに、顧客企業との直接取引の拡大にも努めております。

 

 

(4) コンプライアンスに関するリスク

当社グループにおいて法令違反等の事象が発生し、当社グループの社会的信用が失墜すること等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、NCS&Aグループコンプライアンス基本方針を制定し、グループ社員に対し定期的なコンプライアンス教育を実施するほか、コンプライアンス委員会を通じてグループ全社に対し意識向上を図っております。また、内部通報窓口を社内と社外とに設置するなど、コンプライアンスに関するリスクの低減に努めております。

 

(5) 情報セキュリティ問題

システムの開発、運用に関連する情報セキュリティの確立・維持は当社グループにとって重要な経営課題と認識しており、万が一、悪意のあるセキュリティ侵害を受けた場合や、業務遂行上取り扱う機密情報や個人情報の漏洩が発生した場合は、情報サービス企業としての社会的信用の失墜や損害賠償責任など、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

当社では、情報セキュリティマネジメントシステムを構築し、社内へのセキュリティ意識の啓蒙を行うとともに、こうしたセキュリティインシデントの発生防止と発生時のリスクの最小化、及び再発防止にむけての実行体制を強化しております。また、その結果として、プライバシーマーク使用許諾事業者として認められており、また一部の事業においては第三者機関よりISO/IEC27001(情報セキュリティ)の認証を取得しております。

 

(6) 技術革新と人材の確保

当社グループが属する情報サービス産業においてはコンピュータのハードウエア技術、ソフトウエアの開発言語、アプリケーション及びネットワーク技術等の幅広い知識が求められると同時に、生成AIに代表される技術革新が急速に進んでおります。これらに対応できる開発技術者、優秀なプロジェクトマネージャ、及びシステム構築要員の確保が不十分であれば、競争力が低下し、受注の縮小、プロジェクト採算性の悪化等をもたらす可能性があります。

当社グループでは優秀な人材採用・雇用に努めるとともに、開発人材の教育・研修の強化と社員が新しい技術スキル獲得に挑戦するための支援制度を設けております。また、多様なスキルや価値観をもつ優秀な人材を惹きつけられる活力ある企業風土、男女を問わず育児や介護と仕事を両立しながら社員がその能力を最大限に発揮し生き生きと働くことができる企業風土、そして組織が健全な成果をあげ、社員が仕事を通じて大きな喜びを得られる環境づくりに努めるとともに、働き方改革に継続して取り組んでおります。

 

(7) 自然災害等

地震等の自然災害やテロ行為、感染症の流行等により、当社グループの主要な事業所等が壊滅的な被害を被った場合や多数の従業員が被害を受けた場合には、その復旧や代替のために多大な費用が発生するとともに、販売活動などの事業活動に大きな影響を与えるため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、社員及び会社資産の安全を確保するとともに、迅速かつ適切な対応による復旧及び事業継続が最優先であるとの認識のもと、こうしたリスクの発生に備えてデータセンターの活用等により事業継続活動に取り組んでおります。

 

(8) 知的財産権の侵害

当社グループが事業を展開する上で必要となる技術、ライセンス、及び各種商標等の知的財産権について、当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償請求を受ける可能性や、他社により当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、いずれの場合も、当社グループの事業及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、当該リスクに備えるため、社内におけるライセンスの利用状況を定期的に調査し、知的財産権の侵害やソフトウエアライセンスの不適切な利用の防止に努めております。また、CSR教育等により知的財産権の保護に関する社員の意識向上に努めております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍を乗り越え経済活動が一段と正常化に向かい、雇用・所得環境が改善する中で緩やかな回復がみられる一方、原材料価格の高止まり、世界的な金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社グループの事業領域である情報サービス産業におきましては、コロナ禍を契機としたIT活用の一時的な需要の急増は収まったものの、デジタル活用が社会に定着化したことや労働力不足を背景とした業務効率化に向けたIT活用の重要性の高まりにより、市場環境は一段と復調しております。また、経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を背景に、古い基幹業務システムを刷新する動きが活性化しております。

このような環境のもと、当社グループは収益性の改善を背景に、さらに「世の中から必要とされる会社」に向け引き続き投資による主力ソリュ-ションの強化と「社内スタートアップ制度」(研究開発を通して新しい事業の芽を創出する活動)による事業創出活動を積極的に推進しております。

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に寄与するマイグレーションサービスのさらなる拡大に向け、2023年6月にIBMi(AS/400)ユーザーを対象に、お客様の状況や将来の展望に合わせたマイグレーションを実現する「Airs RPG to Java」をリリースしました。さらに、2023年9月にはホテルレストラン等のオーダー業務をサポートするオーダーエントリーシステム「E.M.O(エモ)」の販売を開始し、複数のホテルチェーンへの導入が進みホテル事業の拡大に寄与しました。また、自治体向け給付金システム「The給付」による新設給付金制度への迅速な機能強化対応を実施し自治体ビジネスの拡大につなげました。その他、家賃債務保証基幹システム「Guras(グラス)」における、より精緻で迅速な審査業務を実現するための「JICC接続サービス」オプションのリリースや、組織内のITインフラ(セキュリティ・ハードウエア・ネットワーク・サービスなど)の稼働状況を一括監視する総合情報表示基盤「ScopNeo(スコップネオ)」の研究開発を進めるなど、様々な業界に向けたDX推進の積極的な取り組みを行っております。従業員に対しては2023年6月より平均4.5%の給与水準の引き上げを実施したのに加え、「社員が生き生きと働ける会社」に向けて働き方改革を継続しており、2023年10月よりフェムテックサービスの導入を開始いたしました。

 

当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は、機器販売において前期は部品不足の解消により一時的に売上高が増加しましたが、商品出荷時期の偏りが正常化したことなどにより今年度は前期に比べ4億77百万円減収189億7百万円となりました。利益面につきましては、利益率の高い自社製品によるソリューション及び高収益案件への注力を続けることにより営業利益は前期に比べ97百万円増加16億38百万円経常利益は前期に比べ1億42百万円増加17億59百万円となりました。また、退職一時金制度の一部廃止に伴う退職給付制度終了益の発生及び繰越欠損金解消による法人税等調整額の増加により親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ2億63百万円増加15億36百万円となりました。

 

当社グループは、ITサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの経営成績の記載を省略しております。なお、売上分類別の概況は次のとおりです。

 

<自社製品によるソリューション>

自社製品によるソリューションにつきましては、前期に引き続きマイグレーションサービスの外資系保険会社向け大型案件やアライアンス先との協業案件が順調に進捗、情報システム可視化ソリューション「REVERSE PLANET(リバースプラネット)」、個人信用情報接続サービス「Ccms(シーシーエムエス)」などの売上高が増加いたしました。しかし前期を超える大型案件の獲得には至らず、その結果、自社製品によるソリューションの売上高は前期に比べ92百万円減収の44億15百万円となりました。

 

 

<システムインテグレーション>

システムの設計・開発から導入後の運用・保守までをワンストップで提供するシステムインテグレーションサービスにつきましては、中堅・中小マーケットの受注環境の改善により、ホテル業向けシステム開発・機器販売や、生産管理システム「Factory ONE 電脳工場」の導入・カスタマイズを含むシステム開発案件などが復調してまいりました。一方で、インボイス制度に向けた対応など需要を大きく拡大する要素がひと段落を迎えたことで、システムインテグレーションの売上高は前期に比べ1億63百万円減収の84億54百万円となりました。

 

<機器・パッケージ>

コンピュータ機器及び周辺機器、パッケージソフトウエア等の売上のうち、他の開発・サービスを伴わない機器・パッケージ単体の販売による売上高は、前期は部品不足の解消により一時的に増加しましたが、商品出荷時期の偏りが正常化したことにより今年度は前期に比べ1億76百万円減収の17億51百万円となりました。

 

<受託開発>

大手SIerからの受託開発につきましては、前期に引き続き当社の得意領域にリソースを集中させ、また、受注条件の改善に努めるなど収益性の向上に取り組んでおります。引き続き当社の強みを活かせない領域からの撤退・縮小を進めており、受託開発の売上高は前期に比べ45百万円減収の42億86百万円となりました。

 

(資産)

当連結会計年度末における総資産は192億11百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億20百万円増加いたしました。流動資産は161億7百万円となり、5億31百万円増加いたしました。主な要因は、現金及び預金の増加(6億97百万円)売掛金の増加(65百万円)、その他に含まれる未収入金の増加(61百万円)、契約資産の減少(3億16百万円)等であります。固定資産は31億4百万円となり、89百万円増加いたしました。主な要因は、投資有価証券の増加(1億52百万円)無形固定資産の増加(1億21百万円)繰延税金資産の減少(91百万円)リース資産の減少(38百万円)等であります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は69億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億98百万円減少いたしました。流動負債は43億17百万円となり、1億90百万円減少いたしました。主な要因は、契約負債の減少(91百万円)受注損失引当金の減少(87百万円)等であります。固定負債は26億40百万円となり、8億7百万円減少いたしました。主な要因は、退職給付に係る負債の減少(7億77百万円)リース債務の減少(30百万円)等であります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は122億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億18百万円増加いたしました。主な要因は、利益剰余金の増加(10億86百万円)退職給付に係る調整累計額の増加(3億89百万円)その他有価証券評価差額金の増加(1億21百万円)等であります。

なお、自己資本比率は、前連結会計年度末の57.2%から63.8%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ6億97百万円増加し、98億37百万円となりました。

なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は15億12百万円(前連結会計年度は11億65百万円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上(21億18百万円)減価償却費の計上(2億53百万円)等による収入に対して、法人税等の支払(4億70百万円)退職給付制度終了益の計上(3億60百万円)等の支出によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は3億16百万円(前連結会計年度は6億36百万円の支出)となりました。主な要因は、無形固定資産の取得(2億79百万円)有形固定資産の取得(49百万円)等の支出によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は5億4百万円(前連結会計年度は6億93百万円の支出)となりました。主な要因は、配当金の支払(4億49百万円)リース債務の返済(42百万円)自己株式の取得(12百万円)等の支出によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績を品分類別に示すと、次のとおりであります。

 

品分類

生産高(千円)

前期比(%)

システム開発

 

8,342,712

1.4

サービス

サービス

7,020,619

△2.2

ハード保守

735,692

△5.5

小計

7,756,311

△2.5

合計

16,099,024

△0.5

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績を品分類別に示すと、次のとおりであります。

 

品分類

受注高
(千円)

前期比
(%)

受注残高
(千円)

前期比
(%)

システム開発

 

9,009,080

16.4

2,286,363

43.1

サービス

サービス

7,095,253

0.0

1,492,583

5.0

ハード保守

731,915

△7.1

6,698

△36.1

小計

7,827,169

△0.7

1,499,282

4.7

システム機器等販売

3,124,790

4.5

1,203,698

32.8

合計

19,961,041

7.3

4,989,344

26.8

 

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績を品分類別に示すと、次のとおりであります。

 

品分類

販売高(千円)

前期比(%)

システム開発

 

8,320,633

1.0

サービス

サービス

7,024,054

△2.2

ハード保守

735,692

△5.5

小計

7,759,747

△2.5

システム機器等販売

2,827,293

△11.2

合計

18,907,673

△2.5

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

日本電気株式会社

3,389,189

17.5

2,781,237

14.7

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高及び営業利益)

当連結会計年度における当社グループの売上高は、前期比4億77百万円減収189億7百万円、営業利益は前期比97百万円増益16億38百万円となり、「減収増益」となりました。

この営業利益につきまして前期からの変動要因を分析しますと、売上高減少に伴う利益減が1億34百万円、売上総利益率改善に伴う利益増が3億18百万円、販売費及び一般管理費の増加による利益減が86百万円であります。

売上高につきましては、機器販売において前期は部品不足の解消により一時的に売上高が増加しましたが、商品出荷時期の偏りが正常化したことなどにより前期に比べ減収となりました。

売上総利益率につきましては、自主ビジネスへのシフトが順調に進んでいることに加え、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)によるプロジェクト損失を最小限に抑えるための様々な活動が効果を発揮し、売上総利益率は前期に比べ1.7ポイント改善の29.8%となりました。

また、販管費率は前期に比べ1.0ポイント増加の21.2%となりました。

上記の結果、売上高営業利益率は前期に比べ0.8ポイント改善の8.7%となり、2021年度から2023年度の3ヶ年を対象とする中期経営計画の目標であった7%を大きく達成することができました。今後も、自主ビジネスの強化と主力ソリューションへの投資拡大による収益性のさらなる向上に取り組んでまいります。

 

(営業外損益及び経常利益)

営業外収益につきましては、前期比35百万円増加の1億28百万円となりました。また、営業外費用につきましては、前期比9百万円減少の7百万円となりました。

その結果、経常利益は前期比1億42百万円増加の17億59百万円となりました。

 

 

(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益につきましては、前期の発生はありませんでしたが、当連結会計年度に退職給付制度終了益3億60百万円など合計3億67百万円が発生いたしました。また、特別損失につきましては、前期は固定資産除却損として1百万円が発生いたしましたが、当連結会計年度は固定資産除却損として6百万円など合計8百万円が発生いたしました。

法人税等は、主に税金等調整前当期純利益の増加に伴い前期比2億38百万円増加の5億81百万円となりました。

その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2億62百万円増加の15億36百万円となりました。

ROE(自己資本当期純利益率)は前期に比べ1.1ポイント増加の13.4%となり、中長期的な目標としている10%を3.4ポイント上回る結果となりました。

 

(財政状態)

当連結会計年度末における当社グループの財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの主要な資金需要は、ソフトウエア開発及びサービス提供のための労務費、外注費、経費、販売用ハードウエア等の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用、並びに市場販売目的ソフトウエアの改良・強化にかかる投資等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。今後も棚卸資産の削減、受注の増大及び売掛金の早期回収等により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を図ってまいります。

当連結会計年度におきましては、堅調な業績により営業活動によるキャッシュ・フローがプラスとなったことから、当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は前期末比6億97百万円増加の98億37百万円となりました。

資金の流動性につきましては、海外景気の下振れリスクや物価動向に関する不確実性により引き続き不透明な状況が続いているものの、この十分な現金及び現金同等物により、事業環境リスク等を考慮した上で、通年にわたり流動性を確保しているものと認識しております。

なお、キャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 

キャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりであります。

 

第54期
2020年3月

第55期
2021年3月

第56期
2022年3月

第57期
2023年3月

第58期
2024年3月

自己資本比率(%)

54.1

55.4

57.2

57.2

63.8

時価ベースの自己資本比率(%)

44.0

48.8

45.7

56.5

65.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(倍)

0.0

0.8

0.1

0.0

0.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

3,037.2

289.0

1,613.6

1,211.7

2,136.4

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。

3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りが必要となります。これらの見積り及び判断につきましては、過去の実績及び状況等から合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は見積りと異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの当連結会計年度における研究開発活動は、「新たな技術への果敢な挑戦をし続けていくことでお客様にとって価値のあるITサービスを提供し続けられる」との考えのもと、新たな取り組みとして最近注目を集めている生成AIについての研究を開始いたしました。前年度から継続している取り組みとしては、様々な形で活用され始めたメタバースについての研究、一般的に使用されるようになったクラウド関連技術のレベルアップ、さらに当社独自技術のマイグレーションにおける機能拡大に関する研究を進めました。また、3年前に開始いたしました社内スタートアップ制度も継続し、新しいビジネスの創出を目指しております。その概要は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は179,296千円であります。 

 

 (1) 生成AIに関する研究

急速な広がりを見せる生成AIは、今や当たり前に利用でき、様々な場面で活用され始め、利用価値が認められつつあります。そのような中、当社でも活用に向けた取り組みを始めました。

一点目は、社内文書を学習させ、その内容に対する質問に答えるようなモデルを構築しております。AWS上の社内情報(ダミーデータ)を検索するChatアプリケーションを開発し、質問を投げかけると、関連する社内情報を効率的に取得できることなどを試行しております。当社が得意なクラウド技術を活用して環境を構築し、学習のさせ方や検索方法による回答内容の違いなど、実活用での実現可能性を研究しております。

二点目は、当社の本業でありますシステム開発作業、特にプログラミング時における品質・生産性向上に生成AIを活用できないか、という観点での研究であります。問い合わせをしながらのソース生成や設計書からのソース自動生成を試行しており、実プロジェクトでの使用も進めようとしております。

課題として情報漏洩、知的財産権の侵害、ハルシネーション(生成AIによって事実に基づかない情報が生成されることがある)等があり、技術検証とともにどのように対応すべきか検討しながら、今後も継続して社内利用とシステム開発利用などでの活用を目指した研究を進めてまいります

 

 (2) メタバースに関する研究

メタバースは、ゲーム・エンタメ市場が先行してきましたが、今後はメディア・広告やコマースに至るまで現実世界と同じようなビジネス領域がバーチャルへとスライドし、さらにメタバースに特化した業態も生まれると見込まれております。そのような状況を踏まえ、前年度から取り組み始めた「メタバース」について、今年度も研究を進めました、メタバース上での仮想オフィスを構築することでメタバースに対する基本的な技術を会得できた前年度の研究内容を踏まえて、今年度はさらにレベルアップした外部公開を前提とした仮想オフィスの構築により、今後のビジネス活用についても検討してまいりました。

外部へ公開できるようなクオリティのメタバース空間とするための具体的な取り組みとして、例えば、デザインや3DCGのレベルアップ、統一感を持たせることにより見栄えを向上させ、一般的な回線速度や端末スペックでもストレスなく動くように工夫し構築した仮想オフィスを使っての社内イベントを実施いたしました。その内容は、自社商品の紹介ブースやセミナールームを開設し、アバターとして参加することで実体験が可能となるようなものであり、利用者からも好評で、当社の技術力もかなり向上できたと考えております。このような取り組みから、メタバース関連の技術力を習得しビジネスへの活用を検討してまいります。

次年度以降は、この成果を踏まえて就職活動用の仮想空間を公開し、会社紹介や説明会、内定者イベントなどを開催し、会社のイメージアップに繋がればと考えております。

 

 

 (3) クラウドに関する研究

お客様がDXを推進するにあたり必須となっているクラウドの活用については、システムを素早く、低コストで導入し、柔軟に拡張できることが必要となります。そのための技術を提供できるように当社では以前からクラウドタスクチームを立ち上げ技術力習得に取り組んでまいりました。特にIaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)関連技術につきましては、これまでも10,000人以上の利用者を想定した負荷分散や冗長化のクラウド構成のような大規模なものから小規模なものまで数多くの構築を実施し技術力を向上させてまいりました。しかし、クラウドで提供されるサービスは非常に多岐に渡り、その使用方法も複雑で、日々新たなサービスが提供されていく状況であります。そのような中で、お客様にクラウドをより有効に活用していただけるよう、継続してクラウドの研究と実践に注力してまいります。

当年度はIaaS/PaaSの実案件をさらに実践することで、より高いレベルの技術習得を進めております。具体的には、クラウドで構築した自社の新たなソリューションサービスの提供を開始いたしました。また、デジタル庁主導で進められているガバメントクラウドにつきましては、自社の自治体向けソリューションがガバメントクラウドで問題なく利用可能かどうかの検証や、生成AI環境構築におけるクラウドの新たなサービスのノウハウを習得いたしました。さらに、以前から取り組んでおります、仮想化技術のコンテナや、クラウド設定要素をコード化し自動的に構築するInfrastructure as Code(IaC) によるクラウド構築効率化を図る技術のレベルアップにも取り組んでおります。

次年度は、さらなる技術のレベルアップや新たなサービスの技術習得、技術の標準化、技術者の育成などに取り組む予定であり、お客様のDX推進に役立つクラウド活用を提供できるように継続してまいります。

 

 (4) マイグレーションに関する研究

マイグレーションとは、既存のアプリケーションを再利用して新たなプラットフォームへ移行する手法のことであり、既存のビジネスロジックを踏襲できるためシステムの完成度も既存システムと同等に保てることが最大の利点となります。当社のマイグレーションの特長は、当社独自の可視化技術により解析したリポジトリを用いることで、アプリケーション全てを対象にライン毎の命令やデータ項目から同一構文を機械的に集約できることであります。

このマイグレーションに関する研究開発活動の取り組みとして、以前から進めている「マイグレーションにおける品質の均一化、生産性の向上の取り組み」を継続しております。

当年度においては新たなオープン系システムの可視化・影響分析機能の研究開発を実施し、新サービスとして開発いたしました。さらに、メインフレームCOBOLからオープン系COBOLへ変換する新機能についても研究開発に取り組み、新サービスとして提供する見込みであります。

次年度以降も「マイグレーションにおける品質の均一化、生産性の向上の取り組み」を継続し、コストの抑制に貢献できるマイグレーションサービスをお客様に提供できるようにするとともに、お客様のニーズに対応できるようなマイグレーションの対象範囲拡大についても研究・開発を進めていく予定であります。

 

 (5) 社内スタートアップ制度

3年前から開始しました社内スタートアップ制度とは、社内で広く新たなビジネスの種を募集し、採否を審査して採用された場合は会社としてバックアップを行い、研究開発を進めていくものであります。

当年度は1年間で28件の申請があり、例えば、新たなソリューションサービスの調査・研究、テスト自動化などの開発・テスト支援ツール、C/SシステムからのWeb化、レガシー言語のJava変換、新たな技術要素の研究などに取り組みました。その中から実際にユーザ先での実証実験を実施したもの、製品化につなげて販売しているものなど成果はあがっております。

次年度も、さらに積極的なスタートアップ申請を促し、研究開発から新たなビジネスへと繋げる取り組みを継続していく予定であります。また、このような取り組みにより社内で新しいことを考え、チャレンジしようとする風土を根付かせ、社員の意識改革・活性化を図り、成長し続ける会社を目指してまいります。