第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

1.会社経営の基本方針

当社グループは、社会の一員として、社会との調和を図りながら持続的に発展し、さらにステークホルダーの期待に積極的に応えていくことの重要性を強く認識しており、「新しい潮流の変化に鋭敏であり続けるアグレッシブな先進企業を目指す」「世界とともに生きる」を経営理念として、独自性のある優れた技術で、時代の先端をいく製品と顧客ニーズに合った製品を提供し、企業の社会的責任を果たしていくことを経営の基本方針としています。
 

2.目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、中長期的な目指すべき方向性を示した2030年のありたい姿『ADEKA VISION 2030~持続可能な社会と豊かなくらしに貢献するInnovative Company~』を掲げ、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、幅広い事業を世界中で展開し、革新的な技術で世界をリードすることで、持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する企業となることを目指しています。
 『ADEKA VISION 2030』の実現に向けたセカンドステージとして、2024年度から2026年度の中期経営計画『ADX 2026』をスタートしました。

「ADX」は「ADEKAは変わります(ADEKA Transformation)」という決意を表しています。『ADX 2026』は、『ADEKA VISION 2030』の実現に向けて、変革を続ける3年間と位置付け、成長戦略としてサステナビリティを推進し、社会価値の創出を通じた稼ぐ力の強化を図ります。また、環境貢献製品の拡大やカーボンニュートラルの実現に向けたGHG排出量削減の推進に努め、より強靭な経営基盤のもと企業価値のさらなる向上を目指してまいります。

 


 

 

〔基本方針〕

〔基本戦略〕

 社会価値と利益の共創による企業価値のさらなる向上を目指し、「稼ぐ力の強化、高収益構造への転換」「環境貢献製品の拡大、及び事業構造の変革によるGHG削減」「経営基盤の強靭化」を進めます。

 

◆稼ぐ力の強化、高収益構造への転換

収益の柱である情報・電子化学品に積極的に経営資源を投下していく一方、将来を見据えた事業の再構築を進めます。各事業の成長戦略を遂行し収益性向上を図るとともに、将来の成長の柱となる新製品の拡大や新規事業を推進します。また資本効率性の向上に向けた施策を実行し、当社の稼ぐ力の向上を図ります。稼ぐ力の強化により、規模拡大から利益を重視した事業成長を図ります。

 

◆環境貢献製品の拡大、及び事業構造の変革によるGHG削減

環境貢献製品の拡大と創出を進め、社会課題解決の機会を取り込んだ成長戦略を遂行します。また、カーボンニュートラルの実現に向けて各事業でGHG排出量削減に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な人財活躍の機会を創出するとともに、人権デュー・ディリジェンスの実行により、サプライチェーン全体で人権を尊重します。

 

◆経営基盤の強靭化

各事業における戦略製品群の安定生産に向けて、重要原料を把握・管理し、外部環境が激しく変化した際にも事業継続できる強靭なサプライチェーンを構築します。人的資本活用の基盤を整備し、各事業の成長ステージにあわせた人財の配置・育成を推進します。デジタル技術を取り入れ、継続的に業務改革を進めていきます。

 

3.サステナビリティを意識した企業経営

当社グループは、中長期的な視点に立ち「サステナビリティ」における課題に取り組むことで、グループの持続的かつ安定的な成長による企業価値の向上を実現し、持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献していきます。

ADEKAグループ サステナビリティ基本方針「ADEKAグループは、公正・透明な企業活動を通じて、技術と信頼でステークホルダーの期待に応え、持続可能な社会に貢献します。」は、当社グループが社会の一員としての基本的責務を果たしつつ、本業を通じて持続可能な社会に貢献すること、ひいては自らの持続的成長を目指す基本姿勢を表現したものです。

同基本方針に基づいた企業活動を具体的に推進するため、サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)では、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の3分野にわたるサステナビリティ優先課題と、SDGs達成の目標年度である2030年を念頭に置いた目標(2030年KPI)を定め、全社横断的な取り組みを行っています。

2023年度は、環境(E)においては「カーボンニュートラル推進戦略」の実行及び浸透活動、社会(S)では、D&Iから「DE&I」プロジェクトチームへと改称しての女性活躍推進の加速、ガバナンス(G)では「委任型執行役員制度」の導入など、下掲の取り組みを実行しました。

 

〔2023年度の主な活動〕

環境(E)

・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、全事業のシナリオ分析結果を開示(2023年5月)

・「カーボンニュートラル推進戦略」の実行及び浸透活動

・設備投資の参考指標としてICP(インターナル・カーボンプライシング)を導入(2023年度より)

・FIT非化石証書の導入。非生産拠点を中心に国内9拠点の使用電力を実質再エネ100%に(2023年5月)

・「環境貢献製品」2023年度売上高は、対2019年度比1.7倍へ拡大。

社会(S)

・D&Iから「DE&I」プロジェクトチームへと改称し、女性活躍推進を加速(2023年11月)

・2023年度(単体)実績では女性管理職比率5.4%となり、一般事業主行動計画2025年度目標(5%以上)を前倒しで達成

・エンゲージメントサーベイの開始(2023年12月)

・「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」の認定。3年連続の取得(2024年3月

・人権デュー・ディリジェンスの仕組み構築に着手

ガバナンス(G)

・取締役会実効性向上

 -取締役員数削減(16名→10名)と独立社外取締役比率の向上(10名中5名が社外取締役)を図り、取締役会構成を見直す(2023年6月)

 -女性社外取締役として、人権、人財開発分野に強みを持つ平沢郁子氏を選任(取締役に占める女性の比率10%)(2023年6月)

 -取締役会報告事項に関する付議基準の見直し、報告内容の簡素化を図る

・「委任型執行役員制度」を導入し、監督と執行の分離をさらに推進(2023年6月)

・地政学リスク対応の一環として有事対応を中心とした「リスクマネジメント研修」の実施(2023年11月)

 

 

4.グループ戦略課題

2025年3月期の世界経済は、低い成長率に留まる見通しです。緊迫した中東情勢、高金利政策の長期化、世界的な貿易低迷等が、グローバルな生産活動や経済活動を抑制し景気を下押しするリスクとして懸念されます。

当社グループの主要ターゲットである自動車、半導体、食品、農業等の各分野は労働市場の改善や底堅い個人消費に支えられ、安定した成長が続くと見込んでいます。

このような状況のなか、当社グループは2030年のありたい姿『ADEKA VISION 2030~持続可能な社会と豊かなくらしに貢献するInnovative Company~』の実現に向けて、本年4月から中期経営計画『ADX 2026』をスタートしました。さらなる変革を加速する3カ年と位置付け、成長戦略としてサステナビリティを推進し、社会価値の創出を通じた稼ぐ力の強化を図っていきます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.基本的な考え方

(1) ガバナンス

ADEKAグループは、社会の一員としての基本的責務を果たしつつ、“素財”メーカーとしての価値提供を通じて、持続可能な社会への貢献、ひいては自らの持続的な成長を目指します。

「ADEKAグループ サステナビリティ基本方針」

ADEKAグループは、公正・透明な企業活動を通じて、
「技術」と「信頼」でステークホルダーの期待に応え、
 持続可能な社会に貢献します。

 

サステナビリティ推進体制

    当社グループでは、サステナビリティの意思決定機関「サステナビリティ委員会」、その下に「サステナビリティ推進部会」を設置し、全社的な取り組みを推進しています。

  サステナビリティに関する事項のリスクと機会の適切な評価・管理を推進していくために、サステナビリティ委員会は、委員長は代表取締役社長、委員は常勤取締役及び常務執行役員、上級執行役員、環境・安全対策本部長が務めています。

 


 

 下部組織であるサステナビリティ推進部会での討議によりサステナビリティ委員会への上程案を作成し、サステナビリティ委員会では、方針決定、施策の審議とモニタリングを行います。

 従って、サステナビリティ委員会の委員長である代表取締役社長は、サステナビリティに関する事項の方針決定、リスクや機会への取り組み推進、目標達成等について責任を負っています。

 重要な決議事項に関しては、取締役会に報告しており、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えています。

 

(2) リスク管理

当社グループでは、全社レベルのリスク管理として、グローバルリスクマネジメント、クライシスマネジメント、事業継続マネジメント、情報セキュリティ等のほか、当社独自の概念である「4つの安全」(労働安全、環境安全、品質安全、設備安全)によるPDCAサイクルを用いた継続的な取り組みを行っています。一方、サステナビリティに関する事項のリスク・機会の識別・評価を行うことに関しては、以下のマネジメント体制を敷いています。

 

・当社グループでは、サステナビリティ委員会の直下にサステナビリティ推進部会を設置し、会社全体を包括する重要なサステナビリティ関連リスクと機会の抽出・評価を行っています。

・重要リスクと機会の評価は、サステナビリティ委員会で審議の上決定し、取締役会に報告しています。

 

また当社グループでは、人権リスク低減の観点から、人権デュー・ディリジェンスの推進、苦情処理メカニズムの構築・運用、人権教育・啓発活動に取り組み、サプライチェーン全体で人権を尊重してまいります。

 

(3) 戦略

サステナビリティ優先課題 決定プロセス

当社グループが、社会の一員として持続的成長を遂げていくためには、本業を通じた社会課題解決により、積極的に社会の発展に寄与していくことが求められます。こうした考えをグループ全体で共有し、一丸となって取り組んでいくために、社内外のステークホルダーにとっての重要性や、当社ビジネスに対する重要性を踏まえ「サステナビリティ優先課題」を特定しました。

 

 

2030年の外部環境イメージ

・モビリティの進化(CASE)

・途上国の人口増・急激な都市化

・樹脂産業の持続的な発展への対応

・食品ロス削減

・ICTでつながる社会

・食糧不足

・希少資源不足

・新たな部材・機能素材の開発

・持続可能な原料調達

・仮想空間と現実空間の融合

・脱炭素社会

・高度医療技術への対応

・クリーンエネルギーの活用

 

・高齢化社会

・地球温暖化

・代替食品・栄養素の提供

・地球環境の保全

 

 


 

(4) 指標と目標

サステナビリティ優先課題 2030年KPI

サステナビリティ優先課題(4つの優先領域、7つの優先課題)を特定し、『ADEKA VISION 2030』の達成に向けたKPI(重要業績指標)を設定しました。事業活動をKPIで管理し、目標達成に向けて取り組んでいきます。


 

2.重要なサステナビリティ項目

(1) 気候変動

① ガバナンス

TCFDとADEKAグループの方針

ADEKAグループは2022年2月に、TCFD*賛同を表明しました。

世界的に脱炭素社会実現への取り組みが加速するなかで、当社グループは特に環境面において、サステナビリティ優先課題として掲げる「地球環境の保全(GHG排出量削減等)」「環境貢献製品の提供」を積極的に推し進め、サプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献してまいります。

今後もTCFD提言に沿って気候変動が事業活動に与える影響を分析・評価し、複数のシナリオに基づく対応策を策定し、事業のレジリエンス向上を図るとともに、これらの取り組みをステークホルダーの皆さまにより分かりやすくお伝えできるよう発信してまいります。

*TCFD

気候関連財務情報開示タスクフォース。金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対して気候変動による影響を分析・評価したうえで「ガバナンス」「リスクマネジメント」「戦略」「指標と目標」の4項目について開示することを推奨している。

 

気候関連リスク・機会に対する取締役会の監督

・当社グループでは「サステナビリティ優先課題」を決定する際に「気候変動への対応」を、優先して取り組む社会的課題のひとつに挙げています。

・GHG排出削減量のKPI検討(2030年、2050年)などの重要な審議は、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」(2023年は9回開催)にて実施しています。

・気候変動に関連する課題を含む重要な決議事項に関しては、取締役会に報告しており、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えています。

 

気候関連リスク・機会を評価、管理する上でのマネジメントの役割

・事業活動における気候変動関連のリスクと機会の適切な評価・管理を推進していくために、サステナビリティ委員会は、委員長は代表取締役社長、委員は常勤取締役及び常務執行役員、上級執行役員、環境・安全対策本部長が務めています。

・下部組織であるサステナビリティ推進部会での討議によりサステナビリティ委員会への上程案を作成し、サステナビリティ委員会では、気候変動関連課題の方針決定、施策の審議とモニタリングを行います。

・従って、サステナビリティ委員会の委員長である代表取締役社長は、気候変動対応に関する方針決定、リスクや機会への取り組み推進、目標達成等について責任を負っています。

 

② リスク管理

気候関連リスクのマネジメントプロセス

・ADEKAグループ・サステナビリティ優先課題の中で、気候変動問題は重要な課題として、優先課題「地球環境の保全」「環境貢献製品の提供」の両方に含まれています。

 ・当社グループでは、気候変動問題における取り組みの進捗を定期的にサステナビリティ推進部会で討議し、さらにサステナビリティ委員会に報告して審議・承認を行っています。

 ・進捗を評価する項目

(1)サステナビリティ優先課題で定めているKPI

①「地球環境の保全」・・・GHG排出量

②「環境貢献製品の提供」・・・「環境貢献製品」売上高

(2)TCFDの要件に照らした活動の進捗

 

  戦略

考え方

TCFD提言は、戦略の開示にあたり、2℃以下のシナリオを含む複数の気候シナリオで分析を行うことを推奨しています。そこで移行面での影響が顕在化する「1.5℃/2℃未満シナリオ」と、物理面での影響が顕在化する「4℃シナリオ」を設定しました。

 

対象とする事業を選定し、以下のステップに基づいて、原料調達から製品需要のバリューチェーン全体を考慮して、気候変動リスク・機会を抽出し、事業へのインパクトや対応策の検討を行っています。

 

①リスク・機会の特定→②影響度の評価→③影響分析→④対応策の検討

 


 

シナリオ分析の対象は、当社グループの全事業としました。(樹脂添加剤、情報・電子化学品、機能化学品、食品、ライフサイエンス)

 

中期経営計画における「カーボンニュートラルに向けた取り組み」を踏まえ、中期的なマイルストーンとして排出量削減目標を設定した「2030年」と、長期なマイルストーンとしてカーボンニュートラル達成を目指す「2050年」について、シナリオ分析を行っています。

 

シナリオとしては、具体的には、国際エネルギー機関(以下、IEA)によるNZE(1.5℃シナリオ)やSDS(2℃未満シナリオ)、国連気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC)によるRCP8.5(4℃シナリオ)やRCP2.6(2℃未満シナリオ)などを参照しています。

 

設定シナリオ

設定シ
ナリオ

移行シナリオ(1.5℃/2℃未満シナリオ)

物理シナリオ(4℃シナリオ)

社会像

今世紀末までの平均気温の上昇を1.5℃や2℃未満に抑え、持続可能な社会を実現するため、大胆な政策や技術革新が進む。脱炭素社会への移行に伴う変化が、事業に影響を及ぼす。

<事例>

  炭素税の導入

  自動車のEVシフト など

パリ協定に即して定められた約束草案などの各国政策が実施されるも、今世紀末までの平均気温が成り行きで最大4℃まで上昇する。気候の変動が事業に影響を及ぼす。

<事例>

  風水害による被害の増大

  平均海面水位の上昇 など

参照シ
ナリオ

  「NZE」(IEA WEO2022)

  「SDS」(IEA WEO2021/ETP2020)

  「RCP2.6」(IPCC AR5)

  「RCP8.5」(IPCC AR5)

  「STEPS」(IEA WEO2022/ETP2020)

リスク
と機会

移行リスク・機会が顕在化

物理リスク・機会が顕在化

 

 

財務影響評価

・設定したシナリオに基づき、当社グループにおける気候変動関連のリスク・機会を整理し、その規模や時間軸についても評価しました。

・2030年時点の想定(GHG排出量、炭素税による影響)を下記のとおり行いました。

2030年 当社グループGHG排出量見通し

 (排出量削減目標を達成・事業成長も考慮)

2030年 炭素価格の将来予測に基づく

炭素税による追加コスト負担の想定

123千トン(Scope1+2)

20億円

 

※外部シナリオ「WEO2022 NZEシナリオ」における、2030年時点の炭素価格

(先進国:140$/t-CO2、新興国:90$/t-CO2)、1$=130円想定での日本円換算。

 

 

主要なリスクと機会、影響度、対応策

対象事業全体→「全」、樹脂添加剤→「樹添」、情報・電子→「情電」、機能化学品→「機能」、食品→「食品」、ライフサイエンス→「ライフ」


※リスク・機会の影響度 「大」・・・利益への影響が、規模「20億円以上」と想定される

            「中」・・・利益への影響が、規模「5億円以上、20億円未満」と想定される
            「小」・・・利益への影響が、規模「5億円未満」と想定される 

 

ビジネスチャンス

下記の5製品群は、気候変動対応の観点から、中長期的に当社グループのビジネスチャンスと判定されました。これらの分野の、より一層の伸長に注力することにより、社会価値と経済価値の同時追求を目指します。

 


 

 

④ 指標と目標

ADEKAグループ カーボンニュートラル・ロードマップ

ADEKAグループとして「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みとして

ⅰ.「2030年:GHG排出量46%削減(Scope1+2)」

ⅱ.「技術・製品の創出によるGHG削減貢献」

上記を二本柱として推し進める旨を示したロードマップを定めています。

 

削減目標の対象範囲は自社グループにおける排出=Scope1+2としますが、社会のカーボンニュートラルに貢献する製品・技術の創出にも並行して取り組み、市場や社会におけるGHG排出量削減への貢献を目指します。

(Scope3を含むサプライチェーン全体での排出量は、現時点では精査中であり、算出対象とするカテゴリ選定、排出量精査、削減方針策定などに注力中です。体制整い次第Scope3、サプライチェーン全体含めた排出量削減に努めます)

 

サステナビリティ優先課題「地球環境の保全」のKPI

オールADEKAでアイデアを結集し 2050年:カーボンニュートラルを目指す

(2030年:2013年度比46%削減(Scope1+2))

 

 

GHG排出量(Scope1,2,3)、排出原単位実績推移

ADEKAグループでは、GHG排出量(Scope1,2,3) 、排出原単位の実績推移を公開しています。削減に向けて製品の安定供給を維持するとともに、生産効率化などの改善を進めており、社長工場監査及び環境・安全対策本部監査にて進捗を確認しています。

 


 

「環境貢献製品」の開発・提供加速

ADEKAグループでは、サステナビリティ優先課題の1つである「環境貢献製品の提供」の2030年KPIを「『環境貢献製品』売上高:2019年度比3倍に拡大」と定めています。これはADEKAグループの気候変動に伴うビジネスチャンスの拡大を目指す指標でもあります。

「環境貢献製品」は、「気候変動対応」「環境負荷低減」「資源有効活用」の3分野のいずれかで社会に貢献する製品・技術を当社サステナビリティ委員会で認定したものです。(現在17製品群、2019年時点売上高:約452億円)


 

(2) 人的資本

  戦略

ⅰ.多様性の確保に向けた人財育成方針及び社内環境整備方針

当社では、人事理念の一つとして「従業員の人間性と個性の尊重」を掲げています。当該理念に基づき多様な価値観やキャリア、経歴をもった人財を採用するとともに、全ての従業員がその能力と個性を最大限発揮し、グローバルに活躍できるよう、キャリアディベロップ研修をはじめとした各種育成施策を実施する方針です。また、多様な人財が活躍するためには、ワーク・ライフ・バランスを図り、各個人のニーズにあった柔軟な働き方を可能とする制度が必要と考えています。当社では、フレックスタイム制度や専門型・企画型裁量労働制、テレワーク勤務制度といった、時間や空間にとらわれない働き方を導入しています。今後は、現在試行中の勤務間インターバル制度の正式導入等さらなる制度改定に取り組んでまいります。加えて、個々の人財が組織の中で活躍していくためには、一人ひとりの適性を把握し、個々に合ったキャリア構築や研修プランを策定する必要があると考えています。そのため、業務適性や本人の希望、モチベーション等を踏まえて、より適した業務へのアサインメントや個別の研修プランを提供することを企図し、タレントマネジメントシステムの導入・展開を進めています。また、互いの個性を受け入れ、尊重し合う環境の整備に向けて、LGBTQへの理解促進も含めたダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン研修を実施しています。引き続き多様性の確保に向けた取り組みをハード・ソフト両面から進めてまいります。

 

ⅱ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進

当社グループでは「多様性を受け入れ、能力発揮における公平性を確保することで、自社の成長に活かす」ことを目的に、2022年に「DE&Iプロジェクトチーム」を発足し、取り組みを推進しています。

発足にあたり、まずは当社における最大のマイノリティである「女性」にターゲットを絞って活動することとしました。現状分析を通じて課題を整理し「要対応4分野」を特定、そこから展開した「9つの施策」を選定しました。具体的には「DE&Iに対する理解浸透・風土醸成」「職群固有の課題への対応」「能力発揮における公平性の確保」「セルフ・キャリアプランの推進」等に関する取り組みを、分科会を編成して進めています。

 そして、一連の取り組みの成果を測る指標として、サステナビリティ優先課題・2030年KPI「女性管理職比率10%(ADEKA単体)」をおき、PDCAを回しています。

 

 

ⅲ.健康経営の推進 

当社が社会の一員として持続的成長を遂げていくためには、本業を通じた社会的課題の解決により、積極的に社会の発展に貢献していくことが重要だと考えています。

そのため、サステナビリティ優先課題の一つである「人財活躍の機会拡大」の一環として健康経営に取り組んでおり、社員が生き生きと働く上での基盤となる健康の維持向上と職場環境づくりに注力しています。

各種取り組みにより、2022年から3年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定されています。当社の取り組みの詳細は、当社HP『健康経営に対する取り組み』(https://www.adeka.co.jp/csr/kenko_keiei.html)をご参照願います。

■ ADEKAグループ健康経営宣言

ADEKAグループは、「社員一人ひとりが会社の大切な財産である」と考え、健康の維持向上と安全にいきいきと働くことが出来る職場環境づくりに取り組んでいきます。

 

■ 健康経営の推進体制

社長直轄のプロジェクトを立ち上げ、「人事部」、「産業医・産業保健スタッフ」、「健康保険組合」が三位一体となり、労働組合と連携を図りながら健康経営を推進しています。


 

  ② 指標及び目標

(女性・外国人・経験者採用者の管理職登用に関する目標・状況)

当社グループでは、ありたい姿『ADEKA VISION 2030』においてサステナビリティ優先課題の1つに「人財活躍の機会拡大」を掲げ、多様な人財の視点や価値観を活かし、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めています。人財の多様性を確保・強化することが、環境の変化に強い、しなやかで強靭な経営基盤をつくり、当社グループの持続可能な成長につながるという考えのもと、性別、年齢、国籍などを問わず、一人ひとりが個性を活かして能力を発揮できる職場環境を整えています。女性、外国人、経験者採用者、高齢者、障がい者など、多様な人財の採用を積極的に行っています。当社グループのありたい姿に関する詳細は、当社のHP『ADEKA VISION 2030・中期経営計画』(https://www.adeka.co.jp/ir/strategy.html)をご参照願います。

 

 

ⅰ.女性従業員の登用

    当社では、女性従業員が十分に能力を発揮できる環境、仕事と子育てが両立できる職場づくりを目指して、育児休業制度の拡充やワーク・ライフ・バランスの促進に取り組んでおり、育児のための積立特別休暇制度の拡充や育児・介護に関する制度を周知するためのパンフレット作成等の取り組みを積極的に進めています。また、前述のDE&Iプロジェクトチームの活動を通じて、より一層女性が活躍できる風土醸成に向けた取り組みを実施しています。現在、当社在籍人数に占める女性従業員の比率は約16%であり、管理職に占める女性の比率は5.4%です。2030年度までに管理職に占める女性の比率を10%以上にすることを目標に掲げています。女性活躍に関する現況や目標の詳細は、当社のHP「次世代育成支援/女性活躍推進行動計画」(https://www.adeka.co.jp/csr/ngns.html)をご参照願います。


ⅱ.外国人の登用

当社では、2019年度から2023年度までの5年間で7名の外国籍従業員を採用しています。当社グループではグローバル展開の拡大が進み、2020年度には海外売上高比率が5割を超えました。当社グループの外国人比率は4割を超え、海外にも多くの拠点を有し、海外拠点(含む子会社)における外国人の割合は9割を超えています。海外拠点ではローカライゼーションを推進していることから、多くの外国人役員や外国人管理職が活躍しており、前述のタレントマネジメントシステムの導入を進めることで、当社グループ全体で外国人を含むグローバル人財の適材適所への登用を加速させていきます。当社に現在在籍している11名の外国籍従業員のうち、管理職に登用されている従業員は現時点では1名です(現在出向中)。当社従業員に占める外国籍従業員の比率は0.6%です。引き続き積極的な採用を進めていきます。また、2030年には当社従業員に占める外国籍従業員比率と同等の水準にまで管理職比率を引き上げられるよう、管理職への登用・育成を進めていきます。

 

ⅲ.経験者採用者の登用

    当社では、バリューチェーンでの川上や川下業界の経験者や高度の専門性を有する人財の登用は、新たなイノベーションの推進や業務革新のために欠かせないと考え、経験者採用を積極的に行っています。現在当社従業員に占める経験者採用者の比率は16%ですが、近年経験者採用の比率は高まっており、2021年度から2023年度までの3年間で56名の経験者採用を行い、3年間の平均経験者採用比率は30%になりました。現在の管理職に占める経験者採用者の比率は11%ですが、2030年には当社従業員に占める経験者採用者比率と同等の水準にまで管理職比率を引き上げられるよう、管理職への登用・育成を進めていきます。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当連結グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものです。

なお、ここに記載しました事項は、当連結会計年度末現在において、当連結グループがリスクと判断したものであり、当連結グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 

1.経済状況、地政学リスク等

グローバル事業展開の拡大を進めている当連結グループは、海外に多数の生産・販売拠点を有しており、当連結グループが製品を販売する国や地域の経済状況、地政学リスク、天候等による影響を受ける可能性があります。

また、当連結グループは多様な事業ポートフォリオを有しており、提供する製品は幅広い業界で産業用中間素材として使用されています。このため、当社の関連需要業界における景気や市場動向、公的規制等による需要の減少と、それに伴う取引先の倒産による貸倒れリスクや棚卸資産の長在化リスク等、直接的、間接的な影響を受けます。

地政学リスクに関しては、ロシアによるウクライナ侵攻が続いています。当連結グループは、ロシア・ウクライナに生産・販売拠点を有しておらず、直接的な影響は少ないものの、両国の軍事的対立の長期化による原燃料価格の高止まりや物流停滞、世界的なインフレの加速といった間接的なリスクが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、台湾情勢は緊迫化しており、台湾有事リスクが懸念されています。当連結グループは、台湾に複数の生産・販売拠点を有しており、万一、台湾で有事が発生した場合、従業員の生命・身体への危険、台湾封鎖に伴う供給網の寸断、対中金融制裁による決済の滞りや、サイバー攻撃による情報流出・事業中断など、様々な影響が想定されます。さらにイスラエル・パレスチナ地域における紛争は、今後の紛争の動向によっては中東地域の顧客との取引に大きな影響が発生する可能性があります。これらの他、米国と中国の間の貿易摩擦等、地政学リスクに対しては、リスクマネジメント委員会を中心として、各国法制や政策の動向など外部情報をタイムリーに入手し、事業影響分析を行う等、グループにおける体制の強化に取り組んでいます。

 

2.新型コロナウイルス感染症の影響について

当社グループの従業員に新型コロナウイルス感染症等のパンデミックが発生した場合、一時的に当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルス感染症はその感染力や変異性の強さから、引き続き、警戒が必要であり、予期せぬ事態の発生に備え、リスクマネジメント委員会が中心となり、情報収集と有事対応を準備しています。当社グループでは、ウィズコロナの事業活動への転換を進める一方で、従業員・顧客を含むステークホルダーの感染防止対策を引き続き徹底し、万一、感染症の世界的な蔓延が発生した場合にも、製品・サービスの提供に支障が生じないよう、業務のデジタル化、事業継続計画(BCP)の整備と、サプライチェーン網の維持等に努めます。また、在宅勤務・サテライトオフィス等でのリモートワーク、会議のオンライン化やペーパーレス化を推進し、従業員のパフォーマンスの向上と業務効率化に向け、きめ細かなITサポートを拡充していきます。

 

3.原材料の価格変動について

当連結グループの事業で用いる主要原材料である石油化学原料及び油脂原料、電力等ユーティリティの購入価格は、国内・国外の市況、為替相場の変動の影響を受けます。

業績に及ぼす影響は、販売価格への転嫁、為替リスクヘッジ等により極力回避していますが、予期せぬ異常な変動が生じた場合には、販売価格への転嫁の時間的ギャップ等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

① 産油国の地政学リスク等により、投機資金が大量に流入若しくは流出すると、原油価格、ナフサ価格及び天然ガス価格が影響を受け、石油化学原料にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
② 油糧作物、穀物の価格は天候により大きな影響を受けますが、温暖化、大規模森林火災の発生等、異常気象(旱魃・豪雨等)が頻発しています。また、パーム油や大豆油等の原料価格は、生産国の地政学リスク等や、中国・インドといった大口需要国の動向による影響を受けます。昨今は、搾油量の減少、石油代替燃料としての需要拡大や、人口増加等により、動きが激しくなっています。

 

 

4.為替の変動について

当連結グループは世界各国で事業を展開しており、連結子会社の財務諸表項目は連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、輸出入等の外貨建て取引においても、同様の可能性があります。これに対し、当連結グループでは、主要通貨の為替動向を注視するとともに、ヘッジ等を通じて為替リスクの低減に努めていますが、為替相場が大きく変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

5.新製品開発

当連結グループは、新製品開発力の強化に注力しており、成長事業として位置づけている情報・電子化学品事業は、半導体やデジタル関連製品等に用いられる革新的な新材料の占める割合が多くなっています。

当連結グループは、継続して当社独自の技術優位のある新製品を開発し提供できると考えていますが、関連需要業界は、技術的進歩、変化が著しく、それに伴うメーカー間の技術競争が激しくなっています。また、近年は、製造技術の進歩により、新興国をはじめとする海外のコンペティターによる追随の速度が速まっています。

従って、次のようなリスクが想定されます。

① ユーザーとの共同研究開発により新製品開発を進めるケースが増えており、共同研究開発のパートナーである当社ユーザーの最終製品の技術が業界で優位となれば、当社製品の売上も増大しますが、逆の場合には、当社製品の需要が実現しない可能性もあります。
② 技術の急速な進歩により、当社製品・技術の一部が陳腐化する可能性があり、また、技術の急速な普及や国内外のコンペティターの新規参入に伴う価格競争の激化により、製品価格が想定以上に下落する可能性があります。
③ 新製品の開発や生産、販売を行うにあたり、他者の知的財産権を侵害することがないよう、事前に調査しています。しかしながら見解の相違等により、他者に知的財産権侵害を主張される可能性が否定できません。その場合、当該製品を販売できなくなる可能性や、損害賠償責任や訴訟費用が発生する可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、当連結グループが、業界と市場の変化を十分に予測できず、顧客のニーズにあった魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクが顕在化する時期や程度は、現時点で想定していません。

 

6.製品の欠陥

当連結グループは、人体や環境への安全性に配慮して、製品の品質規格と安全審査基準を定めており、新製品を開発・販売する際に厳しくチェックしています。また、化学品ではSDS、イエローカードにより、食品では製品規格書により、安全な使用と取扱いのための情報提供を行っています。加えて、工場は、ISO9001、FSSC22000等の品質や食品安全に対するマネジメントシステム、トレーサビリティシステム等を導入し、製造を行っています。

製品検査値の改ざん・転記ミス防止対策を含む品質安全管理は、統一したルールに基づき実施されていることを監査により確認しています。

しかし、全ての製品について欠陥がなく、将来的にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 

7.災害・事故等のトラブル

当連結グループを取り巻くステークホルダーに安全・安心を提供すべく、「4つの安全(労働安全、環境安全、品質安全、設備安全)」活動を推進しており、ISO45001、ISO14001、ISO9001、FSSC22000、ISO22301等の国際標準に基づくマネジメントシステムを導入し、運営しています。当社では保安力の向上活動に注力し、生産工場における事故・災害の予防を図っています。また、自然災害、パンデミック等による予期せぬ事業停止に備えた事業継続マネジメントシステム(BCMS)の構築に取り組み、2010年に国内の化学工業として初めて、当社化学品の一部製品の製造についてBCMS規格 BS25999-2の認証を取得しました。さらに、2013年にISO22301を取得、2015年には適用範囲に物流関係会社を加え、顧客への安定供給体制を構築し運営しています。

グループ全体でトラブル情報を共有化しており、監査により安全管理状況を確認しています。

4つの安全活動を当社の重点テーマとし、パトロール、入出管理の強化、安全教育と技術継承、設備点検とメンテナンス、緊急時対応訓練、海外拠点、OEMを含めた併産工場の確保及び取引先事業者への監督指導等の強化に努めています。

しかし、当連結グループ又はサプライチェーンにおいて以下のトラブルが発生した場合には、工場停止又は稼動率低下による供給不能又は供給困難、製品の品質・環境・地域住民や従業員の安全への影響が発生する可能性があります。

① 地政学的リスクやパンデミック等によるサプライチェーン供給網の寸断、調達への影響

② 無差別テロによる食品への異物・毒物混入、化学品等の危険物漏洩

③ 天災による工場破損、製品在庫の滅失・毀損
④ 爆発・火災・人為的ミスによる事故災害
⑤ 集団食中毒や伝染病・感染症の蔓延による操業停止
⑥ コンビナート関連企業、公共機関の事故災害による影響
⑦ 単一工場での工場トラブルによる生産停止
⑧ 原料サプライヤー、外注先、OEM依頼先における工場トラブル等による製品供給停止
⑨ 物流事故

 

8.情報漏洩、セキュリティ・インシデント

当連結グループは、研究開発の強化・生産技術の深化によるイノベーションの創出と競争力の強化を目指しています。技術立地なハイテクメーカーとして、技術情報等の営業秘密の保護は不可欠であり、また、各国における個人情報保護法制の強化に伴い、個人情報保護対策が重要性を増しています。当連結グループでは、コンプライアンス推進委員会の下部組織である情報管理部会が中心となり、情報セキュリティ・ポリシー及びセキュリティ関連規程に基づき、ハッキング、コンピューターウイルス、サイバー攻撃への対策や、従業員教育等、情報セキュリティと情報管理の強化に向けた様々な取り組みを実施していますが、情報漏洩やセキュリティ事故等が発生した場合、当局による行政処分・制裁、利害関係者からの損害賠償請求による経済的損失や、当連結グループの競争力やレピュテーションの低下につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

9.システムトラブル

(1) ソフトウエアの更新・改良に伴うトラブル

多様化する業務に対応すること等を目的として、ソフトウエアの更新・改良を行う場合があります。ソフトウエアの更新・改良にあたっては、システム保守体制等の万全を期していますが、更新・改良に伴う予期せぬ障害等によりシステムトラブルが発生した場合には、当連結グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 災害等によるシステムトラブル

データセンター等に設置しているシステムが災害等により稼働できなくなった場合に備え、遠隔地へのデータ複製のほかバックアップ用回線等の整備を行っていますが、予期せぬ災害等によりシステムトラブルが発生した場合には、当連結グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。

 

10.公的規制

事業を取り巻く様々な政府規制、法規制に対し、コンプライアンス推進委員会その他の各種委員会の活動を通じて、コンプライアンス強化に努めています。特に近年は欧州REACH規則をはじめとして世界各国で化学物質規制法が大幅に改定され始めているため、情報収集力の強化と法規制対応に注力しています。また、米国・中国間の対立激化に伴い、米国の安全保障貿易関連規制等が強化され、中国で2020年12月に輸出管理法が施行されるなど、幅広い分野で規制措置の応酬が繰り広げられています。当連結グループは、両国の幅広い業界で産業用中間素材として使用される製品を供給していることから、このような米中対立に伴う規制強化により、製品の販売に、直接的、間接的な影響を受ける可能性があります。規制に関する重大な変更がなされた場合には、当連結グループの活動が制限され、あるいはコストが増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

11.プラスチック規制

プラスチックは車の軽量化に貢献する等のメリットが多く、世界的な需要量は今後も増加が見込まれているものの、使い捨て用途の部材で使用が見直される等、一部で環境問題から敬遠されるケースも見受けられます。当社のプラスチックに関係する製品は、万一プラスチックの規制に関する国際条約案による規制が行われた場合、その影響を受ける可能性がありますが、サーキュラーエコノミーの推進への取り組みやプラスチックの長寿命化を含めた高機能化を推進する製品供給により、社会とプラスチック産業に貢献していきます。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。

 

(1) 業績等の概要

当期における世界経済は、先進国を中心に低い成長率に留まりました。世界的な金融引き締めやウクライナ・中東情勢の影響、さらには中国経済の減速が不安視され、先行き不透明な状況で推移しました。

当社グループ事業の主要対象分野である自動車関連分野は、緩やかながらも着実に生産回復が進みました。ICT・家電分野は、個人消費の減退や買い替えサイクルの長期化により、スマートフォンやパソコンの販売低迷が続きました。食品分野は、インバウンドの急増を追い風に土産物や外食の需要回復が続きましたが、消費者の節約・低価格志向を背景に菓子等の嗜好品は厳しい状況となりました。農業分野は、天候不順や過年度の流通在庫の影響から、国内外ともに農薬需要は総じて弱含みで推移しました。

このようななか、当期は中期経営計画『ADX 2023』の最終年度となり、次の成長ステージを見据えながら、各事業において施策を遂行しました。樹脂添加剤では、循環型社会の実現に貢献する「アデカシクロエイド」シリーズにおいて、新たにリサイクル樹脂向けの光安定剤ワンパックタイプを市場投入しました。情報・電子化学品では、日本、韓国、台湾において半導体材料の投資を積極的に実行しました。韓国では全州第三工場内に先端半導体向け材料の新製造棟建設を、日本では久喜地区開発研究所内に情報・電子化学品の研究開発力強化を目的として新研究棟建設を決定しました。食品事業では、収益基盤をさらに強化するべく国内販売体制を見直し、連結子会社を再編しました。また、プラントベースフード「デリプランツ」シリーズのおいしさを実感していただく企画として、原宿に「アデカフェ~Delicious & Sustainable~」を期間限定でオープンし、本製品を使用したオリジナルメニューを展開しました。ライフサイエンス事業では、アジュバント等の添加剤やバイオスティミュラントの製造・販売会社であるInteragro (UK) Ltd.の全発行株式を、Nichino Europe Co., Ltd.が取得しました。また、インドにおいて、新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサン等、複数の農薬原体を製造できるマルチパーパスプラントが竣工しました。グループシナジーの創出では、当社と日本農薬の技術を結集した共同研究において、抗寄生虫剤として期待される化合物群を見出し、2023年7月に本件特許出願4報が世界知的財産機構より国際公開されました。サステナビリティの取り組みでは、「2030年:GHG排出量46%削減(2013年比)、2050 年:カーボンニュートラル」の実現に向けて、インターナルカーボンプライシング制度と再生可能エネルギー由来電力の導入を開始しました。

 

(2) 当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等の状況の分析

① 経営成績の状況
(売上高及び営業利益)

売上高は前連結会計年度に比べ、35億72百万円(前連結会計年度比△0.9%)減収3,997億70百万円となりました。

売上原価は前連結会計年度に比べ、100億45百万円(同比△3.3%)減少し、2,950億79百万円となりました。

販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ、34億14百万円(同比+5.2%)増加し、692億62百万円となりました。

営業利益は前連結会計年度に比べ、30億58百万円(同比+9.4%)増益354億28百万円となりました。

(営業外損益及び経常利益)

営業外収益から営業外費用を控除した営業外損益は、前連結会計年度の利益(純額)2億9百万円に比べ、1億26百万円利益額が増加し、3億35百万円の利益(純額)となりました。

経常利益は前連結会計年度に比べ、31億84百万円(同比+9.8%)増益357億63百万円となりました。

(特別損益及び税金等調整前当期純利益)

特別利益から特別損失を控除した特別損益は前連結会計年度の損失(純額)33億86百万円に比べ、33億5百万円損失額が減少し、81百万円の損失(純額)となりました。

これは、主に前連結会計年度に食品事業に係る減損損失を計上したことによるものです。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ、64億90百万円(同比+22.2%)増益356億82百万円となりました。

(法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益)

法人税等は前連結会計年度に比べ、11億39百万円(同比+13.8%)増加し、93億71百万円となりました。

非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ、8億49百万円(同比△20.3%)減少し、33億33百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

上記要因の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ、61億99百万円(同比+37.0%)増益229億77百万円となりました。

 

② 報告セグメントの状況

セグメントの状況は、以下のとおりです。

(化学品事業)
イ.樹脂添加剤

自動車向けでは、自動車生産の回復が続き、光安定剤の販売が好調に推移し、核剤、高機能可塑剤の販売も堅調でした。

建材向けでは、世界的にコスト高騰や工期の長期化を受け、床材をはじめ住宅内装材の需要が停滞し、塩ビ用安定剤の販売が低調に推移しました。

食品包装向けでは、上期にかけてサプライチェーンにおける在庫調整が続いたことや、安価な海外製品の流入が続いたことにより透明化剤の販売が低調でした。

ポリオレフィン樹脂に使用されるワンパック顆粒添加剤や酸化防止剤は、景気減速の影響から中東・欧州での樹脂生産が低迷し、競争環境も激化したことから販売に苦戦しました。

難燃剤は、一昨年来低調が続いていた家電筐体等に使用されるエンジニアリングプラスチック向けの販売が2023年末以降回復基調に転じたほか、ポリオレフィン樹脂向けもEVでの販売が拡大しました。

樹脂添加剤全体では、販売数量の減少と固定費の増加により、前期に比べ減収減益となりました。

ロ.情報・電子化学品

半導体向けでは、先端フォトレジスト向け光酸発生剤の販売が拡大し、先端DRAM向け高誘電材料の販売も好調に推移しました。一方で、旧世代製品向け高誘電材料の販売が世代交代の影響と顧客の減産影響を受けて低調に推移しました。

ディスプレイ等のエレクトロニクス関連向けでは、パネル市況が回復し、カラーフィルター向け光重合開始剤の販売が好調に、ブラックマトリクス樹脂とエッチング薬液の販売も堅調に推移しました。一方で、パネル生産の中国シフトが進み、光学フィルム向け光硬化樹脂の販売が低調でした。また、プリント基板に使用される電子部品用エッチング薬液の販売も低調でした。

情報・電子化学品全体では、先端半導体向け製品の販売好調とディスプレイ関連材料の持ち直しにより増収となりました。利益は原材料価格の高騰、一部製品の販売価格下落に加え、設備投資に伴う固定費の増加もあり、前期に比べ減益となりました。

ハ.機能化学品

自動車向けでは、エンジンオイル用潤滑油添加剤の販売が、米国での採用拡大や世界的な自動車生産の回復を背景に好調に推移しました。また、自動車の構造用接着剤向けエポキシ樹脂や車載用電子部品向けエポキシ樹脂接着剤の販売も堅調でした。

建築塗料向けでは、反応性乳化剤の販売が、中国、インドでのシェア拡大を背景に好調に推移しました。化粧品向け特殊界面活性剤は、欧州を中心に需要低迷が続き、販売が低調でした。

工業用途で使用されるプロピレングリコール類は海外市況の軟化により需給バランスが悪化し販売が低調でした。過酸化製品は下期以降に市況が持ち直し、販売が堅調でした。

機能化学品全体では、工業用薬品等の落ち込みを自動車向け材料や反応性乳化剤の販売拡大でカバーし、前期に比べ増収、僅かに減益となりました。

以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ75億90百万円(前連結会計年度比△3.6%)減収2,041億30百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ25億61百万円(同△9.8%)減益236億99百万円となりました。

 

(食品事業)

国内の製パン、製菓用マーガリン、ショートニング類は、食料品高騰による消費支出減や最終商品のダウンサイジングの影響もあり、汎用品を中心に販売数量が減少しました。一方で、インバウンドの回復を背景に土産菓子向けのマーガリン類やフィリング類の販売は好調に推移しました。食品ロス削減に貢献する機能性マーガリン「マーベラス」シリーズでは、少量の配合でパン等のおいしさ持続に寄与する新製品の販売が好調でした。食の多様性や環境に配慮したプラントベースフード「デリプランツ」シリーズは、おいしさと使いやすさを追求するとともに、普及浸透に向けた提案強化により国内外での販売が伸長しました。

海外では、東南アジアや中国での販売が堅調に推移し、また価格改定が進捗したこともあり、売上、利益ともに回復が進みました。

食品事業全体では、品種統合や生産の効率化・コスト削減による収益性改善と販売価格の改定に取り組んだことに加え、2022年度の減損処理による減価償却費の削減効果もあり、前期に比べ増収増益となりました。

以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ14億87百万円(同比+1.8%)増収840億12百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ65億15百万円増益41億11百万円(前年同期は24億3百万円の営業損失)となりました。

 

(ライフサイエンス事業)

農薬は、海外では、世界最大の農薬市場であるブラジルで、競争激化に伴う一部ジェネリック品目の価格下落の影響等から、販売に苦戦しました。北米では、殺虫剤の販売が上期に低迷しましたが、下期は春先のシーズンに向けた需要が高まり、総じて堅調に推移しました。欧州では、南欧地域でダニが多発生した影響により殺ダニ剤の需要が増加したこと等から、販売が堅調に推移しました。アジアでは、インドで天候不順の影響があったものの、棉や野菜分野向け園芸用殺虫剤等の自社開発品目の普及拡販に努めたことにより、販売が堅調に推移しました。

国内では、天候不順や過年度流通在庫の影響を受けたものの、前期に実行した価格改定の効果が通年寄与したほか、ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)をはじめとする主力自社開発品目の普及拡販に努めた結果、販売が堅調に推移しました。

医薬品は、外用抗真菌剤「ルリコナゾール」の中国での終売の影響により、販売が低調に推移しました。

ライフサイエンス事業全体では、為替の影響もあり農薬販売が増加したものの、ブラジルにおける収益性悪化の影響が大きく、前期に比べ増収減益となりました。

以上の結果、当事業の売上高は前連結会計年度に比べ9億38百万円(同比+0.9%)増収1,030億21百万円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ18億86百万円(同比△24.2%)減益59億7百万円となりました。

 

③ 財政状態の状況

(資 産)

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ、429億88百万円(前連結会計年度末比+8.6%)増加5,430億57百万円となりました。

主な要因は、以下のとおりです。

流動資産は前連結会計年度末に比べ、311億97百万円(同比+9.9%)増加3,465億98百万円となりました。

これは、主に受取手形、売掛金及び契約資産並びに現金及び預金の増加によるものです。

固定資産は前連結会計年度末に比べ、117億91百万円(同比+6.4%)増加1,964億58百万円となりました。

有形固定資産は前連結会計年度末に比べ、73億51百万円(同比+6.2%)増加1,268億40百万円となりました。

これは、主に建物及び構築物の増加によるものです。

無形固定資産は前連結会計年度末に比べ、15億46百万円(同比△8.6%)減少164億97百万円となりました。

これは、主に技術資産の減少によるものです。

投資その他の資産は前連結会計年度末に比べ、59億86百万円(同比+12.7%)増加531億19百万円となりました。

これは、主に投資有価証券の増加によるものです。

 

(負 債)

当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べ、150億15百万円(同比+8.0%)増加2,033億74百万円となりました。

主な要因は、以下のとおりです。

流動負債は前連結会計年度末に比べ、49億39百万円(同比+3.8%)増加1,344億27百万円となりました。

これは、主に短期借入金の増加によるものです。

固定負債は前連結会計年度末に比べ、100億76百万円(同比+17.1%)増加689億47百万円となりました。

これは、主に社債の増加によるものです。

有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表  ⑤ 連結附属明細表」に記載しています。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べ、279億73百万円(同比+9.0%)増加3,396億82百万円となりました。

これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の増加による利益剰余金の増加によるものです。

その結果、自己資本比率は前連結会計年度末52.2%に比べ、0.3ポイント増加の52.5%となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末の資金残高に比べ173億63百万円(前連結会計年度末比+21.8%)増加し、969億1百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金収入は、前連結会計年度に比べ247億1百万円(前連結会計年度比+143.2%)増加し、419億54百万円となりました。

これは、主に棚卸資産の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金支出は、前連結会計年度に比べ35億49百万円(同比+18.2%)増加し、230億69百万円となりました。

これは、主に有価証券の取得による支出の増加によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金支出は、前連結会計年度に比べ19億40百万円(同比+74.1%)増加し、45億59百万円となりました。

これは、主に社債の償還による支出の増加によるものです。

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

自己資本比率(%)

51.4

52.1

52.6

52.2

52.5

時価ベースの自己資本比率(%)

34.1

51.3

58.6

46.3

60.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

2.2

1.6

2.8

4.0

1.9

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

27.2

40.4

26.4

8.3

13.0

 

(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により算出しています。

営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

4.2023年3月期より、一部の在外子会社等の収益及び費用は、在外子会社等の決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更し、2022年3月期のキャッシュ・フロー関連指標について、遡及処理後の数値を記載しています。

 

⑤ 生産、受注及び販売の状況
イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化学品事業

152,180

△2.8

食品事業

64,445

△1.6

ライフサイエンス事業

62,232

△3.7

報告セグメント計

278,858

△2.7

その他

合計

278,858

△2.7

 

(注) 1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.その他については、生産は行っていません。

 

ロ.受注実績

その他の一部で受注生産を行っていますが、金額僅少のため省略しています。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化学品事業

204,130

△3.6

食品事業

84,012

1.8

ライフサイエンス事業

103,021

0.9

報告セグメント計

391,164

△1.3

その他

8,606

22.7

合計

399,770

△0.9

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。

2.販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上である販売先はありません。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。また、この連結財務諸表を作成するにあたっては、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積りを用いています。これら繰延税金資産の回収可能性や固定資産の減損等の見積りは、過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果と異なる可能性があります。

なお、繰延税金資産の回収可能性に係る会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。当連結グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入及び社債により調達しています。

当連結会計年度末現在において、当連結グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の総額は969億1百万円となっています。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

会社名

契約締結先

契約年月日

内容

技術料

契約期間

当社

AMFINE CHEMICAL
CORP.(アメリカ)

1994年

4月1日

樹脂添加剤の製造・
販売追加技術供与

頭金及び販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

ADEKA POLYMER
ADDITIVES EUROPE
SAS(フランス)

2002年

11月1日

樹脂添加剤粉砕の
製造・販売技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

ADEKA KOREA CORP.

(韓国)

2003年

10月1日

樹脂添加剤の製造・
販売追加技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

ADEKA FINE CHEMICAL
(THAILAND) CO.,LTD.

(タイ)

2004年

6月15日

安定剤の製造・販売
技術供与

頭金・販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

艾迪科食品(常熟)
有限公司(中国)

2004年

7月1日

マーガリン、ショートニング等の製造・販売技術供与

頭金・販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

台湾艾迪科精密化学股份有限公司(台湾)

2004年

12月1日

情報化学品の製造・
販売技術供与

頭金・販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

ADEKA KOREA CORP.

(韓国)

2006年

7月1日

誘電材料の製造・
販売技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間(継続中)

艾迪科精細化工
(常熟)有限公司
(中国)

2015年

4月1日

難燃剤の製造・販売技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

2015年4月1日
から11年間

艾迪科精細化工
(浙江)有限公司

(中国)

2019年

8月26日

化学品・樹脂添加剤の製造・販売の技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間

ADEKA AL OTAIBA

MIDDLE EAST LLC

(UAE)

2020年

3月16日

樹脂添加剤の製造・販売の技術供与

販売金額に対し一定率のロイヤリティー(収入)

販売開始日から
10年間

ADEKA KOREA CORP.

(韓国)

2021年

11月15日

半導体材料用充填容器整備の技術供与

販売数量に対し一定率のロイヤリティー(収入)

2021年11月15日から10年間

日本農薬㈱

全国農業協同組合連合会

2003年

12月11日

農薬製品の売買に関する売買基本契約(更改)

2003年10月1日から1年間とし、文書による別段の意思表示なき時は1年ごとの自動延長(継続中)

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社の研究開発体制は、既存事業に密着した6つの開発研究所(樹脂添加剤開発研究所、情報化学品開発研究所、電子材料開発研究所、機能化学品開発研究所、機能高分子開発研究所、食品開発研究所)、将来の柱となる新規事業の創出を担う2つのコーポレート研究所(ライフサイエンス材料研究所、環境・エネルギー材料研究所)、及びこれらを支援する研究企画部により構成されています。

国内の連結子会社である日本農薬㈱、ADEKAクリーンエイド㈱、ADEKAケミカルサプライ㈱、及びADEKA総合設備㈱でも、独自の研究開発を行っています。また、海外拠点においては、国内の研究所と連携しつつ研究開発のローカライゼーションを推進しています。

第162期(2023年度)の研究開発方針として、

① 持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する研究開発を推進する。

② 戦略製品と環境貢献製品を中心とした市場開発・新製品開発に注力し、更なる事業拡大へ繋げる。

③ エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域での新規事業創出を加速する。

④ カーボンニュートラルの実現に向けて、GHG排出量低減と、CO2の利活用に向けた研究開発に取り組む。

の4項目を掲げて研究開発活動を推進しました。当連結会計年度の研究開発費の総額は、16,130百万円です。

 

(1) 化学品事業

事業のさらなる拡大に向け、戦略製品を中心とした市場開発や新製品開発に注力しています。市場環境の変化やユーザーニーズを鋭敏に捉えて社内で共有することで、タイムリーな製品開発を推進しています。

① 樹脂添加剤分野

環境対応型製品アデカシクロエイドシリーズとして、バイオマス原料を活用した塩ビ用可塑剤や、生分解性バイオプラスチック用可塑剤、リサイクルプラスチックに従来のプラスチックと同等以上の機能を付与する添加剤パッケージなどを開発しています。また、新しい機能付与剤として、ポリプロピレンの靭性と衝撃性を向上するβ晶核剤や繊維向け帯電防止剤、3Dプリンタ用フィラメント向け改質剤の紹介を進めています。

② 情報・電子化学品分野

半導体向けでは、次世代DRAM用の新規高誘電ALD成膜材料の開発に注力しています。ロジック半導体向けの新規ALD材料も、ユーザーでの性能評価が進展しています。また、ArFやEUVなどの先端フォトレジスト向けに光酸発生剤や周辺材料の採用が拡大しています。3月には、ALD成膜材料の研究開発機能を強化するため、ADEKA KOREA CORP.の研究開発センターを華城市に移転、延床面積を7倍に拡張しました。

③ 機能化学品分野

一般社団法人日本接着学会より、「第45回技術賞」を㈱デンソーとともに受賞しました。共同開発した「カーボンニュートラル レーザ硬化型接着システム」が、省エネルギー化を達成し、CO2削減を可能にする接着技術として高く評価されました。一方、自動車エンジンオイル向け潤滑油添加剤サクラルーブは、海外市場開発が進展し、中国や米国を中心に海外での採用が拡大しています。化粧品原料は、自然由来化を進めており、皮膜剤、高粘度油剤、保湿剤など複数の製品を開発し化粧品メーカーへの提案を進めました。

 

子会社であるADEKAクリーンエイド㈱の業務用洗浄剤分野では、環境衛生用途のウェットワイプに含浸させる新たな薬剤を上市しました。本品は、各種業界のガイドラインに記載されている酸化剤を使用し、従来市販品よりも酸化剤安定性、除菌性、低材質影響性に優れています。また、あらかじめ薬液をワイプに含侵させているため、使い勝手にも優れており、お客様から好評です。食品工業用洗浄剤分野では、高濃縮対応の中性除菌洗浄剤を上市しました。本品は、高濃縮型のため地球環境に優しく、汚れの多い条件下でも十分な除菌・洗浄力を発揮し、お客様の衛生環境の改善に貢献します。

 

子会社であるADEKAケミカルサプライ㈱の湿式伸線剤分野では、取引先との共同研究において、中量試験に向け、新たに2製品を紹介しました。2024年2月に新たな試験機を導入し、開発スピードをいっそう加速していきます。粉末冶金用潤滑剤分野では、取引先との共同研究テーマにおいて、潤滑剤サンプルの実機レベル評価が決定しました。今後は、ナノ粒子配合サンプルの効果をより明確にするための評価を実施予定です。

 

 

(2) 食品事業

人々の健康で豊かなくらしに貢献する食品の創造を目標に掲げ、サプライチェーンのあらゆる場面での環境負荷の低減や食品ロス削減、労働力不足などの社会課題や、消費行動など市場ニーズを捉えた新製品開発を行っています。

2023年度新製品は、「おいしさと笑顔を食卓のあたり前に ~Healthy & Sustainable~」をテーマに、以下の製品を中心とした10製品をラインナップしました。年度新製品で原料にパーム油を配合する製品にあっては持続可能なRSPO認証パーム油を使用しています。

① プラントベースフード「デリプランツ」シリーズ

非動物性原料のみで“プラントベースフードの常識を覆すおいしさ”を実現した「デリプランツ」シリーズのラインナップを拡充しました。

(ⅰ) バターのような自然なコク味を持つ「デリプランツ コクバター」、(ⅱ) シュレッド加工やダイス加工など様々な用途に対応できる「デリプランツ チーズ(セミハード)」、(ⅲ) 昨年発売し好評の「デリプランツ オーツコンク」「同 ホイップ」「同 チーズ クリーミー」の小容量個包装タイプなど、計7製品を上市しました。今後もラインナップを拡充するとともにアプリケーションの開発を進め、市場への更なる浸透を図ってまいります。

② 食品ロス削減対応製品

パンの経時的な品質低下を抑制することで消費期限を延長し、食品ロス削減に貢献する機能が好評の製パン用練込油脂「マーベラス」のコンセプトを進化させた製品開発を推進しました。

(ⅰ) 油脂の使用量を従来よりも約40%低減が可能な高濃度タイプの機能性練込油脂「マーベラスCNC」、(ⅱ) パン、菓子、惣菜の製造時の品質を安定させ生産ロスを削減する高濃度タイプの機能性リキッド「フォーカスC」などの3製品を上市しました。より多彩となったラインナップでターゲット市場の拡大と展開を進めてまいります。

 

(3) ライフサイエンス事業

連結子会社である日本農薬㈱では、持続的な新規剤創出を目指したパイプライン化合物の拡充及びそれらの最速ステップアップのための選択と集中を推し進めるとともに、さらなる将来を見据え、AI活用を含むデータ駆動型創薬のための研究環境を整備し、新たなリード化合物の創出にも精力的に取り組みました。また、新規開発剤の価値最大化や既存剤価値の維持・拡大のため、海外グループ会社とも連携して戦略的かつグローバルな研究活動を推進しました。

当期における主な成果は以下のとおりです。

新規汎用性殺虫剤(開発コード:NNI-2101)は、本年度も一般社団法人日本植物防疫協会が実施する新農薬実用化試験に供試し、農薬登録申請に必要な有効な試験事例を集積しました。これら知見により幅広い殺虫スペクトル、既存剤に感受性の低下した害虫に対する有効性、優れた浸透移行性など、本剤の特長を示すことができたと考えています。また、多くの害虫や作物を対象に様々な処理方法で実用性が確認されつつありますので、利便性の高い害虫防除資材となるように農薬登録申請を準備中です。

水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンは、日本ではオーケストラフロアブルに加えて混合剤(オーケストラロムダンモンカットエアー、オーケストラスタークルエアー、オーケストラロムダンモンカット粉剤DL)の販売を開始し、さらに新規混合剤(開発コード:NNIF-2241フロアブル)の開発も開始しました。また、水稲の農薬市場が大きいインドでは、既に販売を開始したOrchestra剤に加え、速効性に優れるピメトロジンとの混合剤Orchestra Duet(2023年6月登録取得)の販売を開始しました。インドでも本剤ビジネスの最大化を目指して混合剤開発を進めてまいります。

汎用性園芸殺菌剤ピラジフルミドは、国内では省力的で使いやすい製品を目指して、無人航空機散布やセルトレイ処理など幅広い処理法での適用拡大(登録内容の拡大)を進めました。また、各国での開発も進めており、カナダ、ヨルダン、ペルーでは新規に登録を取得し、米国、メキシコ、コロンビア、エクアドル、チリ、サウジアラビア、ベトナムでは登録申請中です。

 

(4) 新規事業の推進

エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域において、ADEKAグループの強みを活かした新規事業創出を推進しています。将来ニーズと時間軸を意識し、組織の壁を越えた技術の融合とオープンイノベーションにより、早期事業化に向けて取り組んでいます。

① ライフサイエンス分野

日本農薬㈱とライフサイエンス分野における新規事業創出を目指した共同研究を進めています。動物用医薬品の創出を目指した取り組みにおいて、抗寄生虫薬として期待される化合物群を見出し、本化合物群に関する特許出願4報が世界知的財産機構(WIPO)より国際公開されました。本化合物の動物薬メーカーへの導出を開始し、パイプラインの継続的な拡充に向けて本共同研究を加速していきます。

② 環境・エネルギー分野

硫黄変性ポリアクリロニトリル「SPAN」の開発と、SPANを用いて世界最軽量二次電池を実証したことが評価され、産経新聞社主催の「第36回 独創性を拓く先端技術大賞」において、「経済産業大臣賞」(社会人部門の最優秀賞)を受賞しました。また、公益社団法人新化学技術推進協会より、第22回GSC賞「奨励賞」を受賞しました。