文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く競争環境が大きく変わりつつある中、この変化をチャンスととらえ、加速するデジタル社会の進展とあらゆる空間におけるビジネスフィールドの拡張を見据え、当社グループの果たすべき役割を定めたグループミッションを掲げています。
Space for your Smile
不安が「安心」にかわる社会へ
不便が「快適」にかわる生活へ
好きが「大好き」にかわる人生へ
Space for your Smileには、私たちの目指す世界が描かれています。宇宙も、空も、海も、陸も、家族が集うリビングも、ひとりの自由な場所も、これらすべてのSpaceが笑顔で満たされるように。日常のちょっとした幸せから、まだ見ぬ未来の幸せまで、ひとりひとりの明日がよりよい日になっていく、そんな世界を創りつづけます。
このグループミッションを、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に企業価値の向上に努めてまいります。
宇宙事業では、船舶・航空機向けの移動体衛星通信や多岐にわたる分野での衛星データ利活用の需要が拡大しております。また、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。
メディア事業では、有料放送市場でのマイナス成長や動画配信サービス市場での事業者の合従連衡やサービス間の連携もみられる等、厳しい市場環境が続いております。
(3) 経営方針・経営戦略
<経営方針>
当社グループは、中長期的に目指す姿や社会へもたらす価値の実現に向けた道程を示す価値創造ストーリーを策定しております。宇宙事業とメディア事業共通のビジネスモデルである「集める・届ける・拡げる」の追求により、変化する環境を捉えながら、既存ビジネスの延長線上にとどまることなく、事業領域を拡げ成長を実現し、目指す姿の「宇宙と地球のあらゆる情報・感動をつなげる」「親会社株主に帰属する当期純利益250億円超(2030年度)」の達成を目指してまいります。これらのプロセスによりグループミッションでありサステナビリティ方針でもある「Space for you Smile」を体現していくことが、当社グループが社会へ提供する価値創出であります。

<経営戦略>
中長期的な価値創造に向け、当社グループは「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」「人的資本強化」「経営基盤拡充」という4つの大きな柱から構成される経営戦略を掲げております。事業推進に関わる「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」では、宇宙・メディア両事業において、以下を推進してまいります。
(宇宙事業)
30年以上にわたり培ってきた宇宙・衛星サービス分野での経験を活かし、全ての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワークを構築し、超スマート社会の実現に貢献してまいります。既存の通信関連事業(国内衛星通信、グローバル・モバイルビジネス)では、お客様の多様なニーズに柔軟に対応し、成長市場に向けた高速かつ大容量の通信サービスの提供を拡大・強化してまいります。スペースインテリジェンス事業では、パートナー企業と連携し、様々なデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進してまいります。開拓領域では、新たな技術を用いたサービスの事業化に取り組み、事業領域の更なる拡大にチャレンジしてまいります。
(メディア事業)
衛星放送・動画配信ネットワークを持つプレイヤーとしての確固たるポジションを維持しながら、人と人、企業、社会をつなぐプラットフォームとして多様で創造性豊かな社会の実現に貢献してまいります。既存の放送・配信事業では、生産性の向上を図りつつ、中長期的に放送・配信を複合したプラットフォーム事業展開を推進してまいります。FTTH事業では、販路における顧客接点を強化する等、引き続き拡大に向けた取組を強化してまいります。開拓領域では、ファンの体験を拡張する等、新たな収益源の確立を目指してまいります。

「人的資本強化」では、 各事業のコア領域への積極的な人的資本投下や人と組織の活性化を図ります。詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性」に記載しております。
「経営基盤拡充」では、経済価値向上と社会(環境)価値向上の両立による成長実現に向け、サステナビリティ経営の深化を図ります。また、公共性の高い事業を営む企業としてコーポレート・ガバナンスの向上による経営の透明性を確保します。同時に、コンプライアンス・リスクマネジメント・個人情報保護・情報セキュリティマネジメント等、事業を支える経営基盤のさらなる強化を図ります。詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
2024年度の連結業績目標は以下のとおりです。
営業収益 1,233億円
営業利益 258億円
経常利益 262億円
親会社株主に帰属する当期純利益 180億円
EBITDA 460億円
(注)EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。
宇宙事業及びメディア事業において、近年のデジタル技術の急激な進化に伴い事業環境が変化していく中で、既存サービスの顧客維持や成長市場の需要の取り込みのための各種施策のほか、M&Aや事業提携にも積極的に取り組み、収支構造の改善及び事業領域の拡大を図ってまいります。
(宇宙事業)
世界規模で宇宙産業市場が拡大する一方、新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格開始される等、衛星通信事業においては競争が激化しております。
このような競争環境下において、以下に示す取り組みを推進することにより事業領域を拡大し、宇宙事業の持続的な成長を目指してまいります。
① 通信関連事業
国内衛星ビジネスにおいては、既存顧客に対する通信回線サービスの長期契約更新の提案に加え、衛星機器や当社グループの地上局設備を活用したサービス等を合わせて提供していくことで、国内衛星通信事業の基盤を強化してまいります。後継衛星についても、ビームや帯域に可変性を持たせたデジタルペイロードを採用する等、新しい技術を積極的に活用し、お客様の多様なニーズに柔軟に対応してまいります。
また、「宇宙基本計画」などに基づき、安全保障分野を含む政府主導のプロジェクトへの参画、政府系衛星の運用、観測・監視サービスなど、30年以上にわたる衛星通信事業を通じて培ってきた知見を活かした新たなサービスの提供を検討し、積極的に活動領域を拡げてまいります。
グローバル・モバイルビジネスにおいては、運用中のハイスループット衛星及び今後投入予定のフルデジタル衛星を活用し、船舶・航空機でのインターネット利用等の成長市場に向けた高速かつ大容量の通信サービスの提供を拡大することにより、競争力の強化と収益の拡大を目指してまいります。また、衛星カバレッジの拡大や、通信容量の増強に向けた海外事業者との連携やM&Aについても検討を進め、アジア・オセアニア地域を中心に海外における営業展開を強化してまいります。
さらに、未来社会が求める様々な通信要件に応えるため、パートナー企業と連携しながら、静止衛星に非静止衛星などを加えた多層的な通信ネットワークの構築を目指してまいります。
② スペースインテリジェンス事業
地球観測衛星事業者等との業務提携を推進し、衛星画像販売サービスを強化することにより、収益の拡大を目指してまいります。また、パートナー企業とも連携しながら、地球観測衛星から得られる画像や位置情報等の様々なデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進し、安全保障や防災分野に加え、金融、保険、農林水産、物流等、新たな市場の開拓に取り組んでまいります。
③ 開拓領域
㈱Space Compassほかパートナー企業と連携しながら、HAPS(高高度プラットフォーム)を用いた通信ネットワークと、光通信技術や宇宙コンピューティング技術を取り入れた宇宙空間でのICTインフラ基盤の構築を目指してまいります。宇宙デブリ除去事業、衛星量子鍵配送等、新たな技術を用いたサービスの事業化に取り組み、事業領域の更なる拡大を目指してまいります。
(メディア事業)
メディア事業においては、国内外の動画配信サービスとのコンテンツ獲得及び顧客獲得の競争激化や国内配信事業者による合従連衡の動き等、市場環境が激しく変化しており、従来の延長線上にある各種施策だけではスカパー!サービスの加入者数の減少を免れない状況にあります。このような競争環境下において、以下の展開を着実に推進することにより、収益性の改善及び新たな収益の獲得を図ってまいります。
④ 放送・配信事業
加入基盤の維持・拡大には、魅力的かつ差別化されたコンテンツが揃っていることに加え、様々なコンテンツジャンル毎にファンの嗜好に合わせた「ファン・マーケティング」を実践し、「スカパー!」ならではの顧客体験を継続して提供することが重要となってまいります。放送契約者向けの無料配信サービス「スカパー!番組配信」や、グッズやイベント等のリアルサービスを充実し、お客様にスカパー!に触れていただく機会を増やし、長期間にわたりサービスを楽しんでいただけるよう取り組んでまいります。
テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー!基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2024年3月末時点で741,678件に達しました。家庭内の複数の部屋で視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進につながっております。「ファン・マーケティング」によって興味を持たれたお客様にも「スカパー!基本プラン」をお勧めしてスカパー!ライフを長く楽しんでいただけるよう各種施策を検討・実行してまいります。
プロ野球においては、2024年シーズンもセ・パ全12球団公式戦を中継します。「プロ野球セットアプリ」の機能を充実させ、スマートフォンでもより快適にお楽しみいただけるように努めてまいります。その他のスポーツジャンルにおいても、引き続きファンの皆様の期待に応えられるよう、サービスの拡充に取り組んでまいります。
また、採算性や将来性の観点からこれまで実施していた施策を見直していくことで、コスト削減及び生産性の向上を図ってまいります。
さらに、将来的なコネクテッドTV領域での事業参入に向けた準備を推進し、中長期的に放送・配信を複合したプラットフォーム事業展開を推進してまいります。
また、放送・配信事業での収益拡大に向け、国内外の配信サービスを展開する事業者を支援する「メディアHUBクラウド」の受注拡大に取り組んでまいります。
⑤ FTTH事業
ご家庭内のインターネットブロードバンドサービスの中心となっている光回線において提供している地上波デジタル・BSデジタル等の再送信サービスは、様々なケーブルテレビ事業者様との協業も含め、引き続き提供エリアを拡大しながら拡販を図ってまいります。FTTH事業販路における顧客接点も強化し、新規の多チャンネル加入獲得やアップセル等、放送事業の基盤維持に向けても取り組んでまいります。また、有料放送市場の維持・発展に向けて、ケーブルテレビ事業者様向けパススルー方式による視聴鍵管理機能の提供に取り組んでまいります。
⑥ 開拓領域
新たな収益源の確立のため、メディア・エンターテインメント業界でのWeb3関連事業やリアルイベント等を通じて、ファンの体験を拡張するべく様々な取り組みを推進してまいります。
また、コンテンツデータベースの構築等、映像コンテンツ業界のDX推進に貢献すべく、総合ソリューションサービスの提供に向けた取り組みを進めております。これらにより、従来のBtoCの取り組みだけでなくBtoBの面においても新たな事業の確立を目指してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ共通
① サステナビリティへの考え方
当社グループはグループミッション「Space for your Smile」を持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会課題を解決するとともに、企業価値の向上を目的としてサステナビリティ経営を推進しております。すべてのSpaceが笑顔で満たされるためには、一人ひとりが関わる地球、社会、宇宙がよりよい世界であることが大切だと考え、SDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマについて事業活動を通じて取り組んでおります。その事業活動が当社だけでなく、気候変動・環境問題や人権尊重等、サプライチェーンやステークホルダーに与える影響に十分配慮して正しく行動するとともに、対話を通じて選ばれ続ける企業としての信頼を築くことにも努めております。
9つの重要課題テーマのもとには、2030年に目指すありたい姿と私たちのミッションと使命をより具体的に表現するマテリアリティをそれぞれ特定しており、事業推進による価値創造においてグループ共通の基軸となっております。
サステナビリティに関する具体的な進捗や各種データ等については、毎年発行する統合報告書や当社ホームページにおいて開示しております。
・
https://www.skyperfectjsat.space/ir/library/jsat_report/(2024年9月末「統合報告書2024」(日本語版)発行予定)
・ スカパーJSATグループWEBサイト
③ ガバナンス及びリスク管理
<ガバナンス>
当社グループは、サステナビリティ委員会(2023年度実績:6回開催、委員長は経営管理担当取締役の松谷 浩一、委員は中核の事業会社であるスカパーJSAT㈱の各部門の執行役員含む複数名)を中心として、サステナビリティに関するガバナンス体制を構築しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全体方針及び目標の策定、各種施策の実施状況の把握及び評価、経営会議及び取締役会へ定期的に報告しております。サステナビリティ委員会からの報告を受け、取締役会による監督が適切に図られる体制をとっております。全体方針、及び目標策定等の重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。
なお、サステナビリティのリスク及び機会については、マテリアリティ実現に向けた戦略・実行計画の策定を担う経営企画部(注1)を中心に、各関係組織が連携してそれぞれの洗い出し、評価、施策を検討し実行しております。気候変動を含む環境に関するマテリアリティの実現については、2023年度は環境保全推進委員会(注2)が実行を担い、2024年度以降はサステナビリティ推進委員会が実行を担っております。これらの組織は、各部門組織、グループ会社とも連携しながら、サステナビリティに関するガバナンスに取り組んでおります。
(注1)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、サステナビリティ推進部を経営企画部に統合いたしました。
(注2)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、環境保全推進委員会を廃止いたしました。今後はサステナビリティ委員会において議題毎に必要な対応をしてまいります。
<サステナビリティに関するガバナンス体制>(2024年4月1日時点)

サステナビリティに係る会議体開催状況(2023年度)
・取締役会
・サステナビリティ委員会
<リスク管理>
当社グループでは、リスクマネジメント委員会(年2回以上開催)で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止・リスクの低減に取り組んでおります。その中には人権対応等も含まれております。詳細は、
④ 戦略並びに指標及び目標
<戦略>
当社グループのサステナビリティ経営は、経営方針・経営戦略に連動し、グループとして取り組むべきSDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマを基軸に、社会的課題を解決するとともに企業価値の向上を目指しております。重要課題テーマのもとには、2030年に目指すありたい姿及び実現に向けたアクションをより具体的に表現したマテリアリティを特定し、長期目標及び、年度ごとの短期目標・KPIを設定しております。
重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスでは、事業活動の現状把握と分析、SDGsの169ターゲットやISO26000といったグローバルな指針やガイドラインへの照会、取引先企業・団体へのヒアリングや、外部有識者とのダイアログ等を通じ、社内の全部門によるディスカッションを行っております。マテリアリティに対しては、当社グループの持続的な成長への寄与の観点と、ステークホルダーや社会からの要請を反映した視点の両評価軸で分析し、1年間のPDCAサイクルを通じて社内外の環境変化に応じて見直しを行っております。
重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスの詳細については、サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/
<指標及び目標>
2024年3月31日時点での9つの重要課題テーマとマテリアリティに関連する短期目標、2023年度実績の概要は下表のとおりです。長期目標・KPIを含む全文及び詳細はサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis/
重要課題テーマ「パートナーシップの促進」は、全てのマテリアリティに関わるため、個別の目標は設定しておりません。

2024年6月には重要課題テーマとマテリアリティに以下の改訂を行っております。
・ TCFDにて開示したカーボンニュートラル達成目標(2025年度までにScope 1、 Scope 2、2050年までにScope 1~Scope 3全体)を反映
・ 表現・範囲の見直しを反映
2024年度の重要課題テーマ及びマテリアリティと「2030年にむけて」ありたい姿と長期目標、短期目標・KPIの一覧は、サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis/
各部門組織/グループ会社が各々の業務や事業を通じて、マテリアリティに係る目標・KPIを指標及び目標として達成に取り組む中、2023年度はサステナビリティ委員会及びサステナビリティ推進部を中心に、「環境(気候変動を含む)」「人的資本」「人権」の3つの重点領域と5つのテーマに関してグループ共通の施策も実行いたしました。
(2) 気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示
① 気候変動への取り組み
当社グループは、「脱炭素社会と循環型経済の実現に向けた環境への寄与」を重要課題テーマの1つに掲げ、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでおります。2023年10月には、Scope 1、2におけるカーボンニュートラル達成目標を2030年から2025年度に5年前倒しを決定し、2023年度末に当社グループの使用電力に占める実質再生可能エネルギー比率は95.0%に到達いたしました(注1)。今後はグループ会社や海外拠点の実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを推進することに加え、国際的に認められた各種オフセット手法も活用し、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みをすすめてまいります。環境問題に取り組む国際的な非営利団体CDPからは、「気候変動対応に関する調査」において、2024年2月に「A-スコア」に認定されております。
さらに、気候変動への対応は、衛星通信・地球観測分野において大きなビジネス機会であると捉えております。人工衛星は太陽光発電を利用しており、衛星通信システムは、地上機器も含めた効率的な電力利用により地上回線に比べて約3分の1の消費電力で通信が可能になります(注2)。環境に配慮したサービスを提供することにより、当社グループのみならずお客様のCO2排出削減にも寄与してまいります。地球観測分野では、気候変動に関連する様々な地球データや地表画像を取得し、防災・減災に役立てることが可能です。将来的に人工衛星にエッジコンピューターを搭載する宇宙データセンターの事業も進めており、大量の消費電力を必要とする地上のデータセンターの課題に対し、宇宙の技術で貢献してまいります。
(注1)2023年度の使用実績をベースに算出
(注2)当社調べ
② TCFD提言に基づく情報開示
当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFD提言に基づく当社グループの体制・取り組み等について積極的に開示することで、ステークホルダーの皆様との対話を進めております。TCFDの提言に従って気候変動が及ぼす事業への影響について、シナリオ分析に基づいたリスクと機会を評価し、その結果を経営施策に反映することにより戦略策定を進めております。
<ガバナンス>
当社グループは、気候関連のリスク及び機会について、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、社内関連部署が連携してリスク及び機会の洗い出し、ならびに評価等の詳細な検討を行っており、その検討結果につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、同委員会において議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。同委員会で議論された内容は、定期的に取締役会にて問題提起・報告がなされ、取締役会による監督が適切に図られる体制を取っております。
また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は、気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。なお、当社グループは気候変動のリスク及び機会の一部を重要課題テーマ及びマテリアリティとして定めており、その推進に当たっては、サステナビリティ委員会が実行しております。
<ガバナンス体制>(2024年4月1日時点)

<戦略>
当社グループは、気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5/2℃未満に抑制することを目指す動きに対して貢献していくことが重要であると考えております。1.5/2℃未満目標への対応力を強化すべく、気候関連のリスク・機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定を進めるため、2021年度より当社グループを対象にTCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候関連リスク・機会の選定、財務インパクトの評価を実施しております。
<シナリオ分析>
シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP、Shared Socioeconomic Pathways)」やIEA(国際エネルギー機関)の「World Energy Outlook(WEO)2022」等、専門機関が描く1.5/2℃未満と4℃のシナリオを使用しております。シナリオは以下をご参照下さい。
・ IEA Stated Policies Scenario (STEPS)
・ IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)
・ IPCC:AR6 SSP1-1.9, AR5 RCP2.6, SSP2 RCP4.5, SSP3 RCP8.5
■時間軸
当社グループでは、気候変動に関する戦略の策定にあたり時間軸を定めて検討しております。2030年以降を長期、1年未満を短期、その間を中期と設定し、時間軸を分けて分析を実施しております。
■対象事業・地域
分析対象事業は、全ての事業(宇宙事業・メディア事業)とし、対象地域はグローバルとしております。また、当社グループが保有する各拠点は、気候変動に伴い異常気象が増加した場合には、物理的リスクの顕在化による影響を受ける可能性があります。そのため、国内に保有する各拠点及び海外を含む事務所等、全13拠点の洪水リスクを算定いたしました。その結果、山口ネットワーク管制センターの周辺にて2030年時点で河川由来の洪水リスクが確認されました。一方で、山口ネットワーク管制センターは高台にあり、停電には非常用電源等の備えがあるため、重大な影響が発生する可能性は想定し難いと考えております。対応として事業継続計画(BCP)の強化を行っております。
■気候関連リスクに関する重要性評価
TCFDが提唱するシナリオ分析に基づき、気候関連リスクの特定をしたうえで、そのなかで重要度の高いリスク・機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量・定性評価を行っております。各リスク・機会の発現時期及びインパクトの多寡を勘案したうえで財務計画・事業戦略への影響を踏まえて優先的に取り組む項目について、当社グループの対応状況の把握、対応策の検討、具体的アクションを経営層とも議論し検討を行っております。
■移行計画
スカパーJSATグループは、2025年度までにScope 1、2のカーボンニュートラル達成を目標として掲げ、グループの使用電力を実質再生可能エネルギーに切り替え、省エネ施策の拡大を通じて確実に温室効果ガス(GHG)排出削減に取り組んでまいります。またScope 3については、調達先に対してグリーン調達の浸透を中心にサプライヤーと協働してGHG削減を図ることで、2050年のScope 1~Scope 3全体のカーボンニュートラル達成に向けて取組んでまいります。なお、Scope 3の取り組みについては、今後多様化させていく必要があると認識しております。
さらに、当社グループの強みである衛星関連サービスを積極的に展開していくことで、社会全体の脱炭素化への寄与と事業の成長の双方の実現を目指しております。

■1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会
当社グループでは2022年以降、継続的にシナリオ分析を行うことで見直し、リスク・機会の分析の高度化を図っております。リスクについては事業や財務への影響は限定的であります。機会については当社グループ事業の財務インパクトの分析を行い、環境価値を定量化しております。抽出した各機会はチャンスとみなし、事業戦略(対外発信含む)に気候変動観点を取り入れていくことを検討しております。
1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会評価結果について、重要度中以上の移行リスクと機会は以下のとおりです。なお重要度については緊急度と影響度によるマトリクス評価で低・中・高に分類しております。
気候関連リスク・機会分析結果の一覧はサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/esg/tcfd/
<リスク管理>
当社では、当社グループにおける気候関連リスク及び機会を洗い出し評価するために、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、グループ内関連部署が連携してシナリオ分析等を行い、気候関連リスク及び機会を識別・評価しております。さらに、リスク及び機会におけるそれぞれの項目に対して対応策を検討しております。検討されたリスク及び機会の重要度評価につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。
また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。
■リスク評価項目及び気候変動リスクの管理プロセス
当社グループは、気候変動をはじめ、業務における潜在的なリスク評価を実施しております。リスク評価の基準を定めるに当たっては、関連法令、国際基準、類似ビジネスにおける過去の事故事例等も参照し、ビジネスの業種・業態や事業を行っている国・地域に応じて、それぞれの評価項目における潜在リスクの重要度と影響度を判断しております。
気候変動リスクについては、事業におけるリスクとの時間軸や性質の違いを踏まえて、サステナビリティ委員会にて対応・改善策・管理・評価等を行っております。リスクマネジメント委員会では、サステナビリティ委員会で行っている気候変動対応プロセスを確認し、全社的なリスク管理の網羅性を担保しております。
<指標と目標>
気候変動に関する指標と目標指標について、以下に示しております。
(a) 気候変動に関する指標と目標指標
(b)GHG排出量実績推移(単位:t-CO2)
(注1) GHG排出量は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)及び、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)に基づく報告書を提出するため、環境省が公表している係数を利用して算出し開示しております。令和6年度報告(2023年度実績の報告)から、温対法に基づく算定方法の見直しと法令等の改正(令和6年4月1日施行)が適用となりますが、新たな各係数での算出に向けて集計中のため、上記GHG排出量実績は従来の係数で算出しております。新係数によるGHG排出量実績は、後日サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/
(注2) GHG排出量のScope 3実績については、現在算出中のため後日サステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/
(c)実質再生可能エネルギー使用比率(推移の表)
(注) 各年度における3月31日時点での数値
(3) 人的資本・多様性
① 人的資本への考え方
当社グループは、社会と会社の持続的な成長を実現するために、人的資本が非常に重要であると考えます。そのため、当社グループでは人材を人財と称しております。経営戦略である「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」を実現するために、「人的資本強化」は、「経営基盤拡充」とあわせて、企業価値向上に必要不可欠な基盤とし取り組みを強化してまいります。「多様な人財の活躍」を重要課題テーマの一つとしても掲げ、それに連なるマテリアリティとして「環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成」、「多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現」、「互いを尊重する安心安全な組織づくり」をそれぞれ定め、長期・短期計画及び施策を策定し、実行してまいります。
② 戦略
「人的資本強化」の実現に向けては、各事業の注力分野への積極的な人的資本投下や人と組織の活性化を図るため、「人財戦略」と人財が力を発揮するための「エンゲージメント強化」の2つを柱としております。
下図に、当社グループにおける経営戦略と、中核事業会社であるスカパーJSAT㈱における人的資本強化に紐づいた取り組み方針「人財戦略」と「エンゲージメント強化」を示します。なお、以降、特段の説明がない限りはスカパーJSAT㈱について記載いたします。


<人財戦略>
人財戦略では、環境の変化に対応し、変革・成長・改善の原動力となる人財を求める人財像とし、「社員一人ひとりの能力を引き出し、最大化して事業に貢献する」という人財育成方針のもと、求める人財を採用・育成すること、及び、注力分野への積極的な配置やハイパフォーマーの早期抜擢等により、個々のパフォーマンスの最大化、生産性向上を図ります。その一環として、2023年4月に人事制度を改訂いたしました。新人事制度では、当社グループの社員が持つタスク・スキルに応じた成長機会を創出し、タレントマネジメントや最適な人財配置に繋げていくことを目標とし、組織や等級を超えたアサインを可能とするジョブ型採用や、役割と等級を分離し、機動的な人財登用の促進を可能にしております。
<エンゲージメント強化>
エンゲージメント強化では、人財戦略にて確保・育成した人財が最大限に力を発揮できるよう、「安心安全な組織づくり」を通じて、組織の活性化を目指しております。
エンゲージメント強化では、役職員一人ひとりが持つ力を最大限に発揮して、全員がイキイキと活躍している会社を目指しております。
当社グループは、安心安全な組織には、互いを尊重し、心理的安全性のある環境が必要であると考えます。「従業員の心身の健康を維持し、パフォーマンスを最大化して、生産性を高める」という健康経営方針を定め、それぞれのライフスタイルに合った多様な働き方の実現や従業員一人ひとりのメンタルヘルス・フィジカルヘルスの維持と向上に努めてまいります。また、多様な働き方の実現に向けた社内環境の整備や、女性・シニア世代の活躍の推進、キャリア採用の拡充等による多様性のある環境を実現し、国籍等の外面的な違いや価値観等の内面的な違いに関わらず、個々の社員の能力が公正に評価、処遇されている状態を目指してまいります。
(※1) 一般事業主行動計画(対象期間:2020年4月1日~2025年3月31日)
③ リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、第2 事業の状況、3 事業等のリスクに記述のリスクマネジメント委員会で取り組んでおります。主なリスクの概要及び対策は以下の通りです。
④ 指標及び目標
人的資本に関する指標及び目標は、当社グループのマテリアリティに対する目標・KPIとして設定しております。人的資本は、9つの重要課題テーマのうち「⑧多様な人財の活躍」に該当し、その中で、人財戦略において示した重要課題「事業環境の変化に対応し変革を推進しうる人財の確保・育成」、「多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現」、及び「互いを尊重する安心安全な組織づくり」の3つをマテリアリティとして特定しております。
各マテリアリティには長期目標として、2030年にありたい姿を定めております。また、2030年達成を目指す長期のKPIとして「労働生産性(一人当たり利益)」の向上、「女性管理職比率」を社員男女構成比相当にすること、「エンゲージメント指標」の継続的な向上を実現することを設定しております。
短期のKPIには 、「育児休業復職」の100%維持、「男性育休取得率」の前年比プラス、「エンゲージメント指数」の前年比改善、「法定健診受診率」の向上、「高ストレス者割合」の前年比改善を設定しております。
人的資本に関する長期・短期の達成目標とKPIは、長期目標達成に向けた視点とともに、女性活躍推進法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法、労働安全衛生法、障害者雇用促進法等の法律やコーレポート・ガバナンスコードも踏まえて設定し、公表しております。
(注1) 長期・短期達成目標/KPIの数値につきましては、スカパーJSAT㈱を集計しております。
(注2) 付加価値/従業員数(派遣社員を含む)
付加価値は、経常利益、人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課を合計して算出しております。
(注3) 該当年度内に育休開始した男性社員/該当年度内に配偶者出産した男性社員
(注4) 復職者数/年度中における育児休業終了者数
(注5) 当該年度末までに受診した社員/健診の対象者(役員、正社員、契約社員)
(注6) ストレスチェックを実施した社員/ストレスチェック対象者(正社員、契約社員)
(注7)エンゲージメント調査各設問における肯定的回答割合
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金4の差異については
KPIは設定していないものの、実績を開示している指標もあり、詳細はWEBサイトのサステナビリティサイト
https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_s/
(1) リスクマネジメント体制について
当社は純粋持株会社であり、当社グループ全体のリスクマネジメントの推進と必要な情報の共有化を図るため、中核の事業会社であるスカパーJSAT㈱と共同で当社グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を定めています。その基本方針及び管理体制に基づき、リスクマネジメント担当取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止・リスクの低減に取り組んでいます。
具体的には、原則半期ごと、必要に応じて適宜、リスクマネジメントの対象とするリスク及びリスク評価の見直しを行い、各リスクの評価結果を踏まえ、当該リスクへの対策を策定しております。まず、リスク評価に関しては、各リスクの発生頻度と影響度の積をリスクレベルと定義し、当社グループの各リスクの発生頻度と影響度のスコアを分析して、一定以上のリスクレベルとなるリスクを優先的に対策を講じるべき重大リスクとして定めます。また、洗い出されたリスクの中で対策緊急度の高いリスクにおいては、リスクレベルにかかわらず重大リスクとして定めます。そしてこの重大リスクに対して、当該リスクの所管部署において重点施策を策定し、スカパーJSAT㈱経営会議及び当社取締役会等に報告され、定期的に進捗がモニタリングされるシステムを構築しています。
リスクマネジメント委員会の構成は、委員長以下、各部門の統括部署、管理系部署で構成され、事務局は内部統制推進部が担っております。
スカパーJSAT㈱では内部統制に係る様々な委員会を設けて、日々活動を行っておりますので、その内容についてもリスクマネジメント委員会で把握し、管理を行っております。なお、気候変動関連のリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、経営企画部を事務局としたサステナビリティ委員会にて別途詳細に検討を行った結果及びその内容をリスクマネジメント委員会において報告を受け、必要な協議を行った上でその内容について管理を行っております。
また、実際にリスクが顕在化した場合は、BCP(事業継続計画)や情報セキュリティ、サイバーセキュリティ等、各リスクに対応したマニュアルに従って、迅速かつ適切に対応を行うことに加え、適宜リスクマネジメント委員会を招集する体制を整えています。この取り組みを実施することにより適切にグループ全体のリスクをコントロールしております。
(注)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、サステナビリティ推進部を経営企画部に統合いたしました。

以下に記載のリスクは、当社グループが当連結会計年度において、重大リスクと認識しているリスク項目につき、その対策と併せて記載するものです。ここで取り上げたリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅しているわけではありません。また、当社グループが認識していない未知のリスク、あるいは今後重要性が増して当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重大な影響を及ぼすリスクが生じる可能性があります。なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(2) 当社グループが認識する重大リスクについて
<宇宙事業>
<メディア事業>
<全般>
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとし
ております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかに回復しております。
当社グループを取り巻く環境としては、宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や多岐にわたる分野での衛星データ利活用の需要が拡大しております。また、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。
メディア事業の分野では、有料放送市場でのマイナス成長や動画配信サービス市場での事業者の合従連衡やサービス間の連携もみられる等、厳しい市場環境が続いております。
このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。
なお、EBITDAは前期比24億円増加し、480億円となっております。
当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。
当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(経営成績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)
<宇宙事業>
(既存事業の強化)
・国内衛星ビジネス
2023年3月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で協定を締結した近地球追跡ネットワークに関し、海外地上局を共同でサービス提供することについて、2023年5月にKongsberg Satellite Services ASと合意いたしました。通信衛星及び回線の運用を通じて得たノウハウ、並びに衛星機器や地上局設備を活かして新たなサービスを展開し、宇宙利用の拡大や宇宙産業の発展に貢献してまいります。
・グローバル・モバイルビジネス
ハイスループット衛星であるJCSAT-1C及びHorizons 3eの利用が拡大いたしました。両衛星ともに今後も収益の拡大を見込んでおります。2023年10月にIntelsat US LLCとの間で、Horizons-4 Satellite LLCの持分の50%を譲り受ける契約及びHorizons-4衛星共同事業に関する諸契約を締結いたしました。今後同衛星によりアラスカ、ハワイを含む米国50州、メキシコ、カリブ海全域、及び太平洋地域の移動体通信需要に対応してまいります。
2027年上期に運用開始予定のフルデジタル衛星であるSuperbird-9について、打ち上げ前のプレセールスを開始し、パナソニック アビオニクス㈱との間で航空機向けに大容量の回線を提供する契約を締結いたしました。航空機内高速インターネット接続の実現に寄与し、乗客の機内体験の向上に貢献してまいります。
・低軌道衛星による通信サービス
Starlink Japan合同会社より再販事業者としての認定を受け、2023年12月より、低軌道衛星によるブロードバンドサービス「Starlink Business」の提供を開始いたしました。市場や顧客の多様なニーズへの対応を通して、一層の事業拡大と競争力強化に努めてまいります。
(新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み)
・通信分野
新たな宇宙インフラの構築を目指し、日本電信電話㈱(以下「NTT」)との合弁会社㈱Space Compass(以下「Space Compass」)において、光データリレーサービスの提供に向けた衛星の調達を進めております。
静止軌道衛星に低軌道衛星、HAPS(高高度プラットフォーム)などを加えた多層的な通信ネットワークの構築に向けて、Space Compass、NTT及び㈱NTTドコモとともに、国立研究開発法人情報通信研究機構が公募した「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に採択され、HAPSを介した携帯端末向け直接通信システムの早期実用化に向けた開発の加速と実用化後の利用拡大を見据えた高速大容量化技術の研究開発を開始いたしました。低軌道衛星事業者との連携も推進しており、2023年11月には、NTT、NTTグループ各社とともに、Amazon.com, Inc.が提供する「Project Kuiper」との戦略的協業に合意いたしました。
・ビジネスインテリジェンス分野
政府向け等の衛星画像販売の収益が拡大いたしました。2023年6月には、カタール環境省(Ministry of Environment and Climate Change)向けに、SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星画像を活用した海上オイル漏れ検知サービスの提供を開始いたしました。本サービスの提供を通して、持続可能な社会と環境の実現に貢献してまいります。また、2023年7月には、㈱QPS研究所との間で、同社が開発する小型SAR衛星の運用業務に係る契約を締結いたしました。さらに、2023年12月には、地球観測衛星から得られるデータを活用した事業の拡大と新規事業の共同開発を目指し、㈱天地人との間で出資契約を締結いたしました。パートナー企業との連携を強化しながら、新たなサービスの開発や販売活動を強化してまいります。
・更なる事業領域の拡大
レーザー技術を活用した宇宙ごみ除去事業を推進するため、2024年1月に㈱Orbital Lasersを設立いたしました。本事業を通して持続的な宇宙環境の維持改善に貢献してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。
放送トラポン収入が減少した一方で、国内衛星ビジネス分野の収益の増加4億円、JCSAT-1CやHorizons 3eの利用拡大及び円安の影響によるグローバル・モバイル分野の収益の増加17億円、衛星画像販売等による収益の増加9億円、減価償却費の減少9億円等により、営業収益、営業利益及びセグメント利益は増加いたしました。
<メディア事業>
(放送・配信事業)
主力商品である「スカパー!基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2024年3月末時点で741,678件になりました。視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進にもつながっております。
2023年シーズンプロ野球に関しては、「プロ野球セット」でセ・パ12球団の公式戦全試合を生放送・配信いたしました。30歳以下を対象とした「スカパー!プロ野球セットU30 初めてお試しキャンペーン」を行い若年層の加入拡大をはかりました。また、海外サッカーに関しては、「ドイツ ブンデスリーガ」全試合を放送・配信したほか、リアルサービスとして2023年7月に開催した「スカパー!ブンデスリーガジャパンツアー2023」においてFCバイエルン・ミュンヘンを招聘し、川崎フロンターレとの試合を主催いたしました。
2023年5月より、スカパー!ポイントプログラムを開始しております。幅広いサービスに触れていただくことでお客様の体験が深化し、コンテンツライフがこれまで以上に充実したものとなることを目指してまいります。
2023年8月より、一般社団法人OTGコンソーシアムが運営するサービス「Net-VISION」において、「スカパー!番組配信」及び「SPOOX」の配信を開始いたしました。本配信開始により、お客様は簡単な設定、リモコン操作で「スカパー!番組配信」及び「SPOOX」をテレビ上でご視聴いただけるなどの利便性の向上が見込まれます。また、当社グループとして、新たに「Net-VISION」利用者に対して当社グループが提供するコンテンツの魅力に触れていただく機会を得ることで、「スカパー!」サービス加入者を増やすことも目指してまいります。
(FTTH事業)
光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービス(以下「光再送信サービス」)では着実に提供エリア拡大を進めており、2024年3月末時点における提供エリアは37都道府県にわたり、提供可能世帯数は約4,280万世帯(注)、契約世帯数は275万世帯に達しております。
ケーブルテレビ業界の課題解決に向けた業界初の取り組みとして、前期から開始したBS/CS放送のパススルー伝送及び視聴制御を組み合わせたサービスについては、2024年3月時点で24局での導入が決定しております。
(注)国勢調査世帯数により算出。
当連結会計年度における「スカパー!」サービスの加入件数は次のとおりとなりました。
以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。
光再送信サービスの契約世帯数の増加等によりFTTH事業収入が3億円増加した一方で、スカパー!サービスの累計加入件数減少等の影響による視聴料・業務手数料・基本料収入の減少24億円等により、営業収益は22億円減少いたしましたが、営業費用における衛星回線料の減少5億円、広告宣伝・販促費の減少10億円、その他事業運営の効率化に伴う費用の減少等により、営業利益は5億円の増加となりました。
しかしながら、特別損失に上場株式の投資有価証券評価損8億円を計上したこと等により、セグメント利益は2億円の減少となりました。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。
当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
当連結会計年度末における資産合計は4,054億円となり、前連結会計年度末比(以下「前期比」)64億円増加いたしました。
流動資産は、Xバンド事業に関する債権回収等により売掛金が45億円減少いたしましたが、現金及び現金同等物の増加64億円、衛星画像の仕入等に係る前渡金の増加35億円により、前期比24億円増加いたしました。
有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資により164億円増加いたしましたが、減価償却費202億円等により、前期比38億円減少いたしました。
投資その他の資産は、Horizons-4 Satellite LLCの持分取得及び保有上場株式の時価評価等の影響で投資有価証券が141億円増加したこと等により、前期比78億円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は1,334億円となり、前期比88億円減少いたしました。
主な増加は前受収益28億円であり、主な減少はXバンド事業及びHorizons 3e事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少77億円、未払金の減少39億円であります。
当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,720億円となり、前期比152億円増加いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が117億円増加した一方で、自己株式を50億円取得したこと等により、株主資本は68億円増加いたしました。また、その他有価証券評価差額金の増加72億円の影響等により、その他の包括利益累計額が80億円増加いたしました。この結果、自己資本比率は66.7%となり、前期比2.7ポイント増加いたしました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益と減価償却費の合計465億円に加え、売上債権の減少46億円及び前受収益の増加28億円がありましたが、前渡金の増加35億円、未払金の減少39億円、法人税等の支払84億円等により、424億円の収入(前期は576億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出154億円、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収による収入38億円、Horizons-4 Satellite LLCへの出資にかかる関係会社株式の取得による支出36億円等により、154億円の支出(前期は169億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入10億円、長期借入金の返済による支出109億円、自己株式の取得による支出50億円、配当金支払による支出61億円等により、211億円の支出(前期は194億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比64億円増加し、1,143億円となりました。
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、グループミッション「Space for your Smile」を、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に、企業価値を向上させることを目指しております。このミッションの実現のため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、基礎収益力の向上に向けた成長分野への投資を推進することを財務戦略の基本方針としています。
(資金需要の主な内容及び資金調達)
当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、宇宙事業における通信衛星設備等の調達やメディア事業における放送・配信設備の拡充等における設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計132億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
(借入金の状況と返済方針)
当連結会計年度末における借入金残高は558億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金371億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金172億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 貸倒引当金
売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 固定資産の減損
管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
③ 投資の減損
所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
当社の連結子会社であるスカパーJSAT㈱は、2024年3月5日開催の同社取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、新設分割により㈱スカパー・ピクチャーズを設立し、同社の「グローバルIP事業」(アニメを中心とした映像コンテンツの企画・製作投資・販売、及び周辺事業)に関する権利義務を承継させることを決議しました。
詳細は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当社グループでは、宇宙事業及びメディア事業の両事業でそれぞれ研究開発活動を行っております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は