第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営理念

当社グループを取り巻く競争環境が大きく変わりつつある中、この変化をチャンスととらえ、加速するデジタル社会の進展とあらゆる空間におけるビジネスフィールドの拡張を見据え、当社グループの果たすべき役割を定めたグループミッションを掲げています。

Space for your Smile
不安が「安心」にかわる社会へ
不便が「快適」にかわる生活へ
 好きが「大好き」にかわる人生へ

 

Space for your Smileには、私たちの目指す世界が描かれています。宇宙も、空も、海も、陸も、家族が集うリビングも、ひとりの自由な場所も、これらすべてのSpaceが笑顔で満たされるように。日常のちょっとした幸せから、まだ見ぬ未来の幸せまで、ひとりひとりの明日がよりよい日になっていく、そんな世界を創りつづけます。

このグループミッションを、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 経営環境

宇宙事業では、船舶・航空機向けの移動体衛星通信や多岐にわたる分野での衛星データ利活用の需要が拡大しております。また、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。

メディア事業では、有料放送市場でのマイナス成長や動画配信サービス市場での事業者の合従連衡やサービス間の連携もみられる等、厳しい市場環境が続いております。

 

(3) 経営方針・経営戦略

<経営方針>

当社グループは、中長期的に目指す姿や社会へもたらす価値の実現に向けた道程を示す価値創造ストーリーを策定しております。宇宙事業とメディア事業共通のビジネスモデルである「集める・届ける・拡げる」の追求により、変化する環境を捉えながら、既存ビジネスの延長線上にとどまることなく、事業領域を拡げ成長を実現し、目指す姿の「宇宙と地球のあらゆる情報・感動をつなげる」「親会社株主に帰属する当期純利益250億円超(2030年度)」の達成を目指してまいります。これらのプロセスによりグループミッションでありサステナビリティ方針でもある「Space for you Smile」を体現していくことが、当社グループが社会へ提供する価値創出であります。

 


 

<経営戦略>

中長期的な価値創造に向け、当社グループは「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」「人的資本強化」「経営基盤拡充」という4つの大きな柱から構成される経営戦略を掲げております。事業推進に関わる「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」では、宇宙・メディア両事業において、以下を推進してまいります。

 

   (宇宙事業)

30年以上にわたり培ってきた宇宙・衛星サービス分野での経験を活かし、全ての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワークを構築し、超スマート社会の実現に貢献してまいります。既存の通信関連事業(国内衛星通信、グローバル・モバイルビジネス)では、お客様の多様なニーズに柔軟に対応し、成長市場に向けた高速かつ大容量の通信サービスの提供を拡大・強化してまいります。スペースインテリジェンス事業では、パートナー企業と連携し、様々なデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進してまいります。開拓領域では、新たな技術を用いたサービスの事業化に取り組み、事業領域の更なる拡大にチャレンジしてまいります。

 

(メディア事業)

衛星放送・動画配信ネットワークを持つプレイヤーとしての確固たるポジションを維持しながら、人と人、企業、社会をつなぐプラットフォームとして多様で創造性豊かな社会の実現に貢献してまいります。既存の放送・配信事業では、生産性の向上を図りつつ、中長期的に放送・配信を複合したプラットフォーム事業展開を推進してまいります。FTTH事業では、販路における顧客接点を強化する等、引き続き拡大に向けた取組を強化してまいります。開拓領域では、ファンの体験を拡張する等、新たな収益源の確立を目指してまいります。

 


 

「人的資本強化」では、  各事業のコア領域への積極的な人的資本投下や人と組織の活性化を図ります。詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性」に記載しております。

「経営基盤拡充」では、経済価値向上と社会(環境)価値向上の両立による成長実現に向け、サステナビリティ経営の深化を図ります。また、公共性の高い事業を営む企業としてコーポレート・ガバナンスの向上による経営の透明性を確保します。同時に、コンプライアンス・リスクマネジメント・個人情報保護・情報セキュリティマネジメント等、事業を支える経営基盤のさらなる強化を図ります。詳細につきましては、「第2 事業の状況」の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。 

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2024年度の連結業績目標は以下のとおりです。
 営業収益             1,233億円
 営業利益               258億円
 経常利益              262億円
 親会社株主に帰属する当期純利益   180億円
 EBITDA                       460億円

(注)EBITDAは、親会社株主に帰属する当期純利益、法人税等合計、支払利息、減価償却費、のれん償却額の合計として算定しております。

 

(5) 対処すべき課題

宇宙事業及びメディア事業において、近年のデジタル技術の急激な進化に伴い事業環境が変化していく中で、既存サービスの顧客維持や成長市場の需要の取り込みのための各種施策のほか、M&Aや事業提携にも積極的に取り組み、収支構造の改善及び事業領域の拡大を図ってまいります。

 

(宇宙事業)

世界規模で宇宙産業市場が拡大する一方、新たな事業者が宇宙ビジネスに参入し、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格開始される等、衛星通信事業においては競争が激化しております。

このような競争環境下において、以下に示す取り組みを推進することにより事業領域を拡大し、宇宙事業の持続的な成長を目指してまいります。

 

① 通信関連事業

 国内衛星ビジネスにおいては、既存顧客に対する通信回線サービスの長期契約更新の提案に加え、衛星機器や当社グループの地上局設備を活用したサービス等を合わせて提供していくことで、国内衛星通信事業の基盤を強化してまいります。後継衛星についても、ビームや帯域に可変性を持たせたデジタルペイロードを採用する等、新しい技術を積極的に活用し、お客様の多様なニーズに柔軟に対応してまいります。

 また、「宇宙基本計画」などに基づき、安全保障分野を含む政府主導のプロジェクトへの参画、政府系衛星の運用、観測・監視サービスなど、30年以上にわたる衛星通信事業を通じて培ってきた知見を活かした新たなサービスの提供を検討し、積極的に活動領域を拡げてまいります。

 グローバル・モバイルビジネスにおいては、運用中のハイスループット衛星及び今後投入予定のフルデジタル衛星を活用し、船舶・航空機でのインターネット利用等の成長市場に向けた高速かつ大容量の通信サービスの提供を拡大することにより、競争力の強化と収益の拡大を目指してまいります。また、衛星カバレッジの拡大や、通信容量の増強に向けた海外事業者との連携やM&Aについても検討を進め、アジア・オセアニア地域を中心に海外における営業展開を強化してまいります。

 さらに、未来社会が求める様々な通信要件に応えるため、パートナー企業と連携しながら、静止衛星に非静止衛星などを加えた多層的な通信ネットワークの構築を目指してまいります。

 

② スペースインテリジェンス事業

地球観測衛星事業者等との業務提携を推進し、衛星画像販売サービスを強化することにより、収益の拡大を目指してまいります。また、パートナー企業とも連携しながら、地球観測衛星から得られる画像や位置情報等の様々なデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進し、安全保障や防災分野に加え、金融、保険、農林水産、物流等、新たな市場の開拓に取り組んでまいります。

 

③ 開拓領域

㈱Space Compassほかパートナー企業と連携しながら、HAPS(高高度プラットフォーム)を用いた通信ネットワークと、光通信技術や宇宙コンピューティング技術を取り入れた宇宙空間でのICTインフラ基盤の構築を目指してまいります。宇宙デブリ除去事業、衛星量子鍵配送等、新たな技術を用いたサービスの事業化に取り組み、事業領域の更なる拡大を目指してまいります。

 

 

(メディア事業)

メディア事業においては、国内外の動画配信サービスとのコンテンツ獲得及び顧客獲得の競争激化や国内配信事業者による合従連衡の動き等、市場環境が激しく変化しており、従来の延長線上にある各種施策だけではスカパーサービスの加入者数の減少を免れない状況にあります。このような競争環境下において、以下の展開を着実に推進することにより、収益性の改善及び新たな収益の獲得を図ってまいります。

 

④ 放送・配信事業

 加入基盤の維持・拡大には、魅力的かつ差別化されたコンテンツが揃っていることに加え、様々なコンテンツジャンル毎にファンの嗜好に合わせた「ファン・マーケティング」を実践し、「スカパー」ならではの顧客体験を継続して提供することが重要となってまいります。放送契約者向けの無料配信サービス「スカパー番組配信」や、グッズやイベント等のリアルサービスを充実し、お客様にスカパーに触れていただく機会を増やし、長期間にわたりサービスを楽しんでいただけるよう取り組んでまいります。

 テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネルが見放題となる「スカパー基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2024年3月末時点で741,678件に達しました。家庭内の複数の部屋で視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進につながっております。「ファン・マーケティング」によって興味を持たれたお客様にも「スカパー基本プラン」をお勧めしてスカパーライフを長く楽しんでいただけるよう各種施策を検討・実行してまいります。

 プロ野球においては、2024年シーズンもセ・パ全12球団公式戦を中継します。「プロ野球セットアプリ」の機能を充実させ、スマートフォンでもより快適にお楽しみいただけるように努めてまいります。その他のスポーツジャンルにおいても、引き続きファンの皆様の期待に応えられるよう、サービスの拡充に取り組んでまいります。

 また、採算性や将来性の観点からこれまで実施していた施策を見直していくことで、コスト削減及び生産性の向上を図ってまいります。

 さらに、将来的なコネクテッドTV領域での事業参入に向けた準備を推進し、中長期的に放送・配信を複合したプラットフォーム事業展開を推進してまいります。

 また、放送・配信事業での収益拡大に向け、国内外の配信サービスを展開する事業者を支援する「メディアHUBクラウド」の受注拡大に取り組んでまいります。

 

⑤ FTTH事業

ご家庭内のインターネットブロードバンドサービスの中心となっている光回線において提供している地上波デジタル・BSデジタル等の再送信サービスは、様々なケーブルテレビ事業者様との協業も含め、引き続き提供エリアを拡大しながら拡販を図ってまいります。FTTH事業販路における顧客接点も強化し、新規の多チャンネル加入獲得やアップセル等、放送事業の基盤維持に向けても取り組んでまいります。また、有料放送市場の維持・発展に向けて、ケーブルテレビ事業者様向けパススルー方式による視聴鍵管理機能の提供に取り組んでまいります。

 

⑥ 開拓領域

新たな収益源の確立のため、メディア・エンターテインメント業界でのWeb3関連事業やリアルイベント等を通じて、ファンの体験を拡張するべく様々な取り組みを推進してまいります。

また、コンテンツデータベースの構築等、映像コンテンツ業界のDX推進に貢献すべく、総合ソリューションサービスの提供に向けた取り組みを進めております。これらにより、従来のBtoCの取り組みだけでなくBtoBの面においても新たな事業の確立を目指してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ共通

① サステナビリティへの考え方

当社グループはグループミッション「Space for your Smile」を持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会課題を解決するとともに、企業価値の向上を目的としてサステナビリティ経営を推進しております。すべてのSpaceが笑顔で満たされるためには、一人ひとりが関わる地球、社会、宇宙がよりよい世界であることが大切だと考え、SDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマについて事業活動を通じて取り組んでおります。その事業活動が当社だけでなく、気候変動・環境問題や人権尊重等、サプライチェーンやステークホルダーに与える影響に十分配慮して正しく行動するとともに、対話を通じて選ばれ続ける企業としての信頼を築くことにも努めております。

9つの重要課題テーマのもとには、2030年に目指すありたい姿と私たちのミッションと使命をより具体的に表現するマテリアリティをそれぞれ特定しており、事業推進による価値創造においてグループ共通の基軸となっております。

 

② サステナビリティへの取り組み

 

マテリアリティ の達成に向けては、年間の活動計画を策定し毎年PDCAのサイクルを回しております。

中間・期末にはグループ全体で実績レビューを行い、同業他社の事例や外部評価も参考にしながら第三者の視点を入れて見直すことにより、実効性の向上を図っております。年度末から年度始めにかけては通期での実績レビューを行い、次年度計画を策定しております。活動の詳細は④戦略並びに指標及び目標の項目をご参照ください。


 

 

サステナビリティに関する具体的な進捗や各種データ等については、毎年発行する統合報告書や当社ホームページにおいて開示しております。

統合報告書

 https://www.skyperfectjsat.space/ir/library/jsat_report/(2024年9月末「統合報告書2024」(日本語版)発行予定)

・ スカパーJSATグループWEBサイト「サステナビリティサイト」https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/

 

③ ガバナンス及びリスク管理

<ガバナンス>

当社グループは、サステナビリティ委員会(2023年度実績:6回開催、委員長は経営管理担当取締役の松谷 浩一、委員は中核の事業会社であるスカパーJSAT㈱の各部門の執行役員含む複数名)を中心として、サステナビリティに関するガバナンス体制を構築しております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全体方針及び目標の策定、各種施策の実施状況の把握及び評価、経営会議及び取締役会へ定期的に報告しております。サステナビリティ委員会からの報告を受け、取締役会による監督が適切に図られる体制をとっております。全体方針、及び目標策定等の重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。

なお、サステナビリティのリスク及び機会については、マテリアリティ実現に向けた戦略・実行計画の策定を担う経営企画部(注1)を中心に、各関係組織が連携してそれぞれの洗い出し、評価、施策を検討し実行しております。気候変動を含む環境に関するマテリアリティの実現については、2023年度は環境保全推進委員会(注2)が実行を担い、2024年度以降はサステナビリティ推進委員会が実行を担っております。これらの組織は、各部門組織、グループ会社とも連携しながら、サステナビリティに関するガバナンスに取り組んでおります。

 

(注1)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、サステナビリティ推進部を経営企画部に統合いたしました。

(注2)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、環境保全推進委員会を廃止いたしました。今後はサステナビリティ委員会において議題毎に必要な対応をしてまいります。

 

<サステナビリティに関するガバナンス体制>(2024年4月1日時点)


 

サステナビリティに係る会議体開催状況(2023年度)

・取締役会

日付

会議

主な協議事項・報告事項

2023/04/28

取締役会

マテリアリティ及び2030年目標・KPI見直し

2023/06/07

取締役会

2022年度活動報告及び2023年度活動計画の審議

2023/10/04

取締役会

人権方針/贈収賄・腐敗防止方針の制定及びグループ役職員行動規範の改訂に関する報告

2023/11/01

取締役会

Scope 1、2カーボンニュートラル目標の前倒し、サプライヤーサステナビリティガイドラインの制定に関する報告

2024/01/10

取締役会

サステナビリティ活動中間報告

 

 

サステナビリティ委員会

日付

会議

主な協議事項・報告事項

2023/05/19

第24回サステナビリティ委員会

2022年度マテリアリティ実績報告、2023年度マテリアリティ目標・KPI、TCFD対応状況報告

2023/07/07

第25回サステナビリティ委員会

社内浸透対応施策、有価証券報告書におけるサステナビリティ関連開示対応報告

2023/09/19

第26回サステナビリティ委員会

人権方針/贈収賄・腐敗防止方針の制定及びグループ役職員行動規範の改訂

2023/10/19

第27回サステナビリティ委員会

Scope 1、2カーボンニュートラル目標の前倒し、サプライヤーサステナビリティガイドラインの制定

2023/12/18

第28回サステナビリティ委員会

マテリアリティ中間報告、マテリアリティとSDGs169ターゲットとの紐付け見直し、人権方針等の社内研修アンケート結果の報告、外部評価報告

2024/03/01

第29回サステナビリティ委員会

2024年度マテリアリティ目標・KPIの検討、気候変動リスク対策計画の進捗状況及び対策見直し、外部評価報告、サプライヤーサステナビリティガイドラインの実施状況、価値創造ストーリー見直し

 

 

<リスク管理>

当社グループでは、リスクマネジメント委員会(年2回以上開催)で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止・リスクの低減に取り組んでおります。その中には人権対応等も含まれております。詳細は、第2 事業の状況、3 事業等のリスクをご参照ください。気候変動に関するリスク管理については、(2)「気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示」に記載しております。人的資本に関するリスクは(3) 「人的資本・多様性」③リスク管理をご参照ください。

 

④ 戦略並びに指標及び目標

<戦略>

当社グループのサステナビリティ経営は、経営方針・経営戦略に連動し、グループとして取り組むべきSDGsやESGにも対応する9つの重要課題テーマを基軸に、社会的課題を解決するとともに企業価値の向上を目指しております。重要課題テーマのもとには、2030年に目指すありたい姿及び実現に向けたアクションをより具体的に表現したマテリアリティを特定し、長期目標及び、年度ごとの短期目標・KPIを設定しております。

重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスでは、事業活動の現状把握と分析、SDGsの169ターゲットやISO26000といったグローバルな指針やガイドラインへの照会、取引先企業・団体へのヒアリングや、外部有識者とのダイアログ等を通じ、社内の全部門によるディスカッションを行っております。マテリアリティに対しては、当社グループの持続的な成長への寄与の観点と、ステークホルダーや社会からの要請を反映した視点の両評価軸で分析し、1年間のPDCAサイクルを通じて社内外の環境変化に応じて見直しを行っております。

重要課題テーマとマテリアリティの特定プロセスの詳細については、サステナビリティサイト「マテリアリティ」で開示しております。

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/

 

<指標及び目標>

2024年3月31日時点での9つの重要課題テーマとマテリアリティに関連する短期目標、2023年度実績の概要は下表のとおりです。長期目標・KPIを含む全文及び詳細はサステナビリティサイト「目標・KPI」をご参照ください。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis/

 

重要課題テーマ

レジリエントな放送・通信インフラの構築/情報格差の解消


短期目標

2023年度実績

・静止衛星フリートの利用帯域を前年度末より拡大する

・保有衛星以外も含めて衛星通信サービスの拡充を進める

・防災支援機関や企業等との耐災害パートナーシップを拡大する

・衛星フリート利用帯域:前年度比 112%

・事業提携先の主要衛星サービス(船舶向け)契約数はほぼ前年度並みを維持

・災害時等に重要な情報源となる光ファイバー経由の再送信サービスの累計契約件数を2024年(2023年度末)までに、273万件に拡大する

再送信サービスの累計契約件数 275万件

・放送及び配信サービスを安全且つ安定して提供できる環境を向上する

・放送を通じて災害情報をいち早く視聴者にしらせ、災害から人命を守る

・竣工15年大規模建物修繕を実行開始(24年度完了予定)

・㈱スカパー・エンターテイメントが日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画を策定し、防災対策を実行開始

重大なサービス断を毎年ゼロ件にする※ 重大なサービス断…電気通信事業法施行規則第58条に準じる

JSAT MOBILE Communications㈱が提供するサービスにおいて重大なサービス断が1件発生

 

 

重要課題テーマ

多様なコンテンツによる生活の豊かさの向上


短期目標・KPI

2023年度実績

・衛星放送だけでなく、配信サービスや双方向機能をより活用し、人々がコンテンツを楽しめる機会を増やす

・そのために配信サービスのコンテンツ数、放送及び配信サービスの契約者数、イベント開催数を増やす

・配信サービスのコンテンツ数:前年度比約2倍

・イベント開催数:ブンデスリーガジャパンツアー他3件

・人々がコンテンツを楽しめる機会を増やすためにSPOOX利便性向上に向け新アプリをリリース

・コンテンツ提供者にスタジオ機能、コンテンツの伝送、配信機能等を統合的に提供できる仕組みをつくる

・コンテンツデータベースサービスを2023年度内に開始する

・メディアソリューション事業の顧客数:前年度比増加

・コンテンツ伝送、コンテンツデータベースサービスを提供開始。コンテンツ提供者向けメディアソリューションサービス「メディアHUBクラウド」の利用拡大を推進

提供コンテンツのガイドラインに沿った適切な運用を実施し、時代の変化に合わせ随時改定を行う

・スカパーJSAT提供サービスのガイドライン(2021年度策定)に沿った運用を実施

・社員への啓蒙、理解促進のため考査勉強会を実施

 

 

 

重要課題テーマ

脱炭素社会と循環型経済の実現に向けた環境への寄与


短期目標

2023年度実績

・再生可能エネルギー使用比率を前年度よりも向上させる

・GHG排出量を前年度より70%削減する

・実質再生可能エネルギー使用比率:95.0%(2023年度末時点)※当社及び連結子会社(JSAT International Inc.除く)

・Scope1、2におけるGHG排出量:前年度比90.9%削減

※当社及び連結子会社の国内拠点

・TCFDに基づく情報開示

・日射量予測/太陽光発電出力予測システムサービスをユーザーに提供開始し、ユーザー企業による再生可能エネルギーの活用効率や運用効率を向上させる

・チャレナジーの風力発電機と衛星通信サービスを組み合わせた脱炭素防災通信ソリューションを拡大させる

・日射量予測/太陽光発電出力予測システムユーザー企業の太陽光発電所の出力の総計:前年度比:約8倍

・チャレナジー風力発電案件の件数:1件

・廃棄物排出量を集計し、実績を開示する

・リサイクル推進に向けて、廃棄物の内訳を調査する

・廃棄物総排出量:141.1t(内、産業廃棄物は56.0%、一般廃棄物は44.0%)

※当社及び国内連結子会社(㈱スカパー・カスタマーリレーションズの一部拠点を除く)、グループ全体の実績把握には至らず

サービス関連製品に関わるリサイクル活動を拡大する

・番組情報媒体である会報誌の発行を終了し、デジタルコミュニケーションツールへの切り替えたことにより紙資源を削減。

・文具等消耗品におけるグリーン購入を開始する

・事業系へのグリーン調達導入に向けて検討を開始する

・文具等消耗品のグリーン購入を開始※スカパーJSAT㈱、㈱スカパー・ブロードキャスティング

・事業系へのグリーン調達に向けては継続検討

 

 

重要課題テーマ

宇宙環境の改善


短期目標・KPI

2023年度実績

技術研究開発を推進する

宇宙ごみ除去サービスを行う衛星システムの開発・製造及び本格的な事業展開に向けて、㈱Orbital Lasersを設立(2024年1月)

 

 

 

重要課題テーマ

環境や社会に寄与するイノベーションの推進


短期目標・KPI

2023年度実績

・リモートセンシング活用事例を拡大する

・地球観測(EO)事業者、データ解析プラットフォーム事業者、データ利用事業者とのパートナーリングを拡大する

・斜面・インフラモニタリング

「LIANA」サービスの契約数が順調に伸長

・盛土モニタリング

自治体向けに衛星画像を利用した盛土モニタリング業務をパートナー企業とともに実施

・衛星SAR画像

QPS研究所と幅広く連携しながら、SAR画像の応用範囲を広げるために複数の画像解析アルゴリズムを開発・実証中

・事業開発関係先とのパートナーシップを推進する

・事業計画を策定し(見直し含む)、アクションプランを実行する

・3GPPへの参加等を通じて標準化活動を推進する

・パートナー企業とともにHAPS(高高度プラットフォーム)を用いた携帯端末での高速通信を実用化することを目指して研究開発を推進。

・GEO/NGSOを連携させた将来のマルチオービット戦略を視野にLEO事業者との業務提携契約を締結

メディア事業において顧客価値を高める新たなサービスを毎年投入し続ける

・スカパーポイントプログラムを導入開始

・スカパー+(プラス)ネットスティック サービスのドングル(端末)を開発中

 

 

重要課題テーマ

強靭な経営基盤の整備


短期目標・KPI

2023年度実績

・コーポレートガバナンス・コードを遵守する

・重大な違反件数をゼロにする(前年度より継続)

・コーポレートガバナンス・コードを遵守すべく取組み実施:内部統制システムに基づき安定かつ実効性のある体制維持、プライム市場が求める基準適合に向けガバナンス体制を整備(詳細は以下)

-取締役会実効性評価を毎年度実施中

-2023年度開催取締役会への取締役平均出席率は100%

-取締役会の取締役構成人員は9名(男性7名・女性2名)(社外5名、うち独立3名)

-指名報酬委員会の構成人員は取締役5名。社外過半数を維持(議長を含め社外4名)

・重大な違反件数0件

開示内容を充実させ、ステークホルダーごとの対話実績や対話内容を開示する(前年度より継続)

・機関投資家や金融機関を含むステークホルダーとの対話を積極的に実施、対話回数は前年度比約1.5倍

・サステナビリティサイトのリニューアルを実施し、情報充実などステークホルダーとのコミュニケーションツールの利便性向上を企図

・ポジティブ・インパクト・ファイナンスによる資金調達を実施

・ISMS・Pマーク認証を毎年維持する

・サイバーセキュリティを強化する

・ISMS・Pマーク認証を維持

・社内セキュリティ講習会や標的型攻撃メール訓練等の啓蒙活動の実施

・当社及び連結子会社サーバへの不正アクセスを確認し、不正アクセス経路の遮断と再発防止に向けた対策を実施。引き続きサイバーセキュリティ対策の強化を実施

人権対応について方針を策定する

・「スカパーJSATグループ人権方針」を制定(2023年10月)

・グループ内での教育、浸透に向けた社員研修を実施

 

 

重要課題テーマ

多様な人財の活躍


短期目標・KPI

2023年度実績

・キャリア自律促進のために手挙げ式研修プログラムを増やす、参加率を高める

・スキルギャップを明らかにするためにスキルマップ構築を進める

・キャリア自律促進を目的とした手挙げ式研修プログラムを実施

・教育研修資格補助制度の拡充(DXスキル底上げのためIT系資格など)

・スキルマップの作成(部署毎のタスクとスキルの可視化)

・内発的動機を高める施策や働きかけにより、社員の意識変容を進める

・働きやすい環境整備とコミュニケーション活性化により、多様な働き方への理解浸透を図る

・育児休業復職率100%を維持する

・男性育休取得率を前年比プラスにする

・育児休業復職率100%を維持

・男性育休取得率:60.0%(前年度より7.8ポイント増)

・人事関連データ詳細は以下リンクにて掲載(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/esg/social/

・多様性尊重を促す情報発信を実施

・エンゲージメント指標を前年より改善する

・法定検診受診率100%を目指す

・ストレスチェック受検率100%を目指す

・エンゲージメントサーベイを実施

 肯定的回答率2023年度67%(前年度66%)

 ※スカパーJSAT㈱

・法廷検診受診率:98.9% ※スカパーJSAT㈱

・ストレスチェック実施率:95.3%(前年度93.7%)

 ※スカパーJSAT㈱

・労働実態の把握と適正化に向けた取り組みを実行

・マネジメント・コーチング力強化の施策実施

 

 

重要課題テーマ

次世代教育・地域共生などの社会貢献


短期目標・KPI

2023年度実績

アセットを活用した社会貢献活動を継続及び企画し推進する

■東南アジア教育支援支援PJ

ブンデスリーガジャパンツアーの実施に合わせ、SNS等を通じて賛同を募り、スカパーJSATスクールへのサッカーゴールを寄贈。スカパーJSAT杯を開催

■次世代教育支援

・高校生を対象としたワークショップを開催。スカパーJSAT㈱の事業についてサステナビリティ視点で動画制作を行い、次世代教育へ貢献

・例年に続き「科学の甲子園」へ参加し、中高生へ当社グループ事業の紹介を通じて、科学への探求心や創造性の育成へ貢献

■Satellite Crayon Project

・「海のクレヨン」「山のクレヨン」を展開中

・児童向けイベント参加、ワークショップ等複数開催

・タイガー魔法瓶とのコラボボトルを発売

・地域活性化促進を目的に、福岡ソフトバンクホークスと連携した中学生の野球大会の生中継、女子硬式野球九州大会決勝の生中継を無料放送・配信

・コロナ禍で中止となった夏の甲子園大会を取り戻す交流試合「あの夏を取り戻せプロジェクト」を無料放送・配信

スカパー東京メディアセンターにおける災害時の地域貢献のため地方公共団体との連携を強化する

スカパー東京メディアセンターが在する江東区との災害協定締結について継続検討中(スカパー東京メディアセンターにおける災害時の近隣住民の避難受入は整備済)

 

 

重要課題テーマ「パートナーシップの促進」は、全てのマテリアリティに関わるため、個別の目標は設定しておりません。


 

2024年6月には重要課題テーマとマテリアリティに以下の改訂を行っております。

    TCFDにて開示したカーボンニュートラル達成目標(2025年度までにScope 1、 Scope 2、2050年までにScope 1~Scope 3全体)を反映

    表現・範囲の見直しを反映

 

2024年度の重要課題テーマ及びマテリアリティと「2030年にむけて」ありたい姿と長期目標、短期目標・KPIの一覧は、サステナビリティサイト「目標・KPI」をご参照ください。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/targets_kpis/

 

各部門組織/グループ会社が各々の業務や事業を通じて、マテリアリティに係る目標・KPIを指標及び目標として達成に取り組む中、2023年度はサステナビリティ委員会及びサステナビリティ推進部を中心に、「環境(気候変動を含む)」「人的資本」「人権」の3つの重点領域と5つのテーマに関してグループ共通の施策も実行いたしました。

 

2023年度重点領域

主要な実行施策(実施時期)

環境(気候変動を含む)

・「環境基本方針」「グリーン調達方針」策定(4月)

・TCFD提言に基づく気候変動対応の見直し(6月)

・Scope 3の一部データ集計・開示(9月)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/

・Scope 1、2カーボンニュートラル達成目標を2025年度へ5年前倒し宣言(10月)

・グループ実質再生可能エネルギー利用率95.0%達成(3月)

人的資本

・人財戦略の策定・見直し(4月・通年)

・人事制度の改訂(4月)※スカパーJSAT㈱

人権

・「人権方針」の策定と社員研修(10月)

 

 

2023年度活動テーマ

主要な実行施策(実施時期)

マテリアリティ/目標・KPIの達成に 向けた実行サイクルの着実な進行

・事業ビジョンや戦略の見直しを反映したマテリアリティの見直し(4月)

・「贈収賄・腐敗防止方針」の策定と社員研修(10月~11月)

・「サプライヤーサステナビリティガイドライン」策定と重要サプライヤーに対する調達アンケートの実施(11月~3月)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/esg/social/procurement_survey/

外部評価対応継続

・各種調査への対応、外部評価等のフィードバックを踏まえた改善(通年)

-CDP気候変動対応に関する調査「A-」

-FTSE Blossom Japan Sector Relative Index 初選定

-MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数 初選定

対外発信強化

・「サステナビリティサイト」リニューアル(9月)

・ESGデータの開示項目拡充(通年)

-連結データの一部データ、コンプライアンスデータの開示開始

社内浸透

・社内報等のインターナルコミュニケーションの活用、勉強会・講演会開催

・グループ会社への展開と浸透へ向けた連携強化(通年)

-取締役と有識者とのダイアログ実施(6月)

 https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/materiality/

SDGs起点の新事業創出

社会課題解決意欲向上

・サステナビリティ視点での新事業創造ワークショップ開催(8月)

 

 

(2) 気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示

① 気候変動への取り組み

当社グループは、「脱炭素社会と循環型経済の実現に向けた環境への寄与」を重要課題テーマの1つに掲げ、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでおります。2023年10月には、Scope 1、2におけるカーボンニュートラル達成目標を2030年から2025年度に5年前倒しを決定し、2023年度末に当社グループの使用電力に占める実質再生可能エネルギー比率は95.0%に到達いたしました(注1)。今後はグループ会社や海外拠点の実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを推進することに加え、国際的に認められた各種オフセット手法も活用し、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みをすすめてまいります。環境問題に取り組む国際的な非営利団体CDPからは、「気候変動対応に関する調査」において、2024年2月に「A-スコア」に認定されております。

さらに、気候変動への対応は、衛星通信・地球観測分野において大きなビジネス機会であると捉えております。人工衛星は太陽光発電を利用しており、衛星通信システムは、地上機器も含めた効率的な電力利用により地上回線に比べて約3分の1の消費電力で通信が可能になります(注2)。環境に配慮したサービスを提供することにより、当社グループのみならずお客様のCO2排出削減にも寄与してまいります。地球観測分野では、気候変動に関連する様々な地球データや地表画像を取得し、防災・減災に役立てることが可能です。将来的に人工衛星にエッジコンピューターを搭載する宇宙データセンターの事業も進めており、大量の消費電力を必要とする地上のデータセンターの課題に対し、宇宙の技術で貢献してまいります。

 

(注1)2023年度の使用実績をベースに算出

(注2)当社調べ

 

② TCFD提言に基づく情報開示

当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFD提言に基づく当社グループの体制・取り組み等について積極的に開示することで、ステークホルダーの皆様との対話を進めております。TCFDの提言に従って気候変動が及ぼす事業への影響について、シナリオ分析に基づいたリスクと機会を評価し、その結果を経営施策に反映することにより戦略策定を進めております。

 

<ガバナンス>

当社グループは、気候関連のリスク及び機会について、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、社内関連部署が連携してリスク及び機会の洗い出し、ならびに評価等の詳細な検討を行っており、その検討結果につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、同委員会において議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。同委員会で議論された内容は、定期的に取締役会にて問題提起・報告がなされ、取締役会による監督が適切に図られる体制を取っております。

また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は、気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。なお、当社グループは気候変動のリスク及び機会の一部を重要課題テーマ及びマテリアリティとして定めており、その推進に当たっては、サステナビリティ委員会が実行しております。

 

<ガバナンス体制>(2024年4月1日時点)

 


 

<戦略>

当社グループは、気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5/2℃未満に抑制することを目指す動きに対して貢献していくことが重要であると考えております。1.5/2℃未満目標への対応力を強化すべく、気候関連のリスク・機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定を進めるため、2021年度より当社グループを対象にTCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候関連リスク・機会の選定、財務インパクトの評価を実施しております。

 

<シナリオ分析>

シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP、Shared Socioeconomic Pathways)」やIEA(国際エネルギー機関)の「World Energy Outlook(WEO)2022」等、専門機関が描く1.5/2℃未満と4℃のシナリオを使用しております。シナリオは以下をご参照下さい。

・ IEA Stated Policies Scenario (STEPS)

・ IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)

・ IPCC:AR6 SSP1-1.9, AR5 RCP2.6, SSP2 RCP4.5, SSP3 RCP8.5

 

■時間軸

当社グループでは、気候変動に関する戦略の策定にあたり時間軸を定めて検討しております。2030年以降を長期、1年未満を短期、その間を中期と設定し、時間軸を分けて分析を実施しております。

 

■対象事業・地域

分析対象事業は、全ての事業(宇宙事業・メディア事業)とし、対象地域はグローバルとしております。また、当社グループが保有する各拠点は、気候変動に伴い異常気象が増加した場合には、物理的リスクの顕在化による影響を受ける可能性があります。そのため、国内に保有する各拠点及び海外を含む事務所等、全13拠点の洪水リスクを算定いたしました。その結果、山口ネットワーク管制センターの周辺にて2030年時点で河川由来の洪水リスクが確認されました。一方で、山口ネットワーク管制センターは高台にあり、停電には非常用電源等の備えがあるため、重大な影響が発生する可能性は想定し難いと考えております。対応として事業継続計画(BCP)の強化を行っております。

 

■気候関連リスクに関する重要性評価

TCFDが提唱するシナリオ分析に基づき、気候関連リスクの特定をしたうえで、そのなかで重要度の高いリスク・機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量・定性評価を行っております。各リスク・機会の発現時期及びインパクトの多寡を勘案したうえで財務計画・事業戦略への影響を踏まえて優先的に取り組む項目について、当社グループの対応状況の把握、対応策の検討、具体的アクションを経営層とも議論し検討を行っております。

 

■移行計画

スカパーJSATグループは、2025年度までにScope 1、2のカーボンニュートラル達成を目標として掲げ、グループの使用電力を実質再生可能エネルギーに切り替え、省エネ施策の拡大を通じて確実に温室効果ガス(GHG)排出削減に取り組んでまいります。またScope 3については、調達先に対してグリーン調達の浸透を中心にサプライヤーと協働してGHG削減を図ることで、2050年のScope 1~Scope 3全体のカーボンニュートラル達成に向けて取組んでまいります。なお、Scope 3の取り組みについては、今後多様化させていく必要があると認識しております。

さらに、当社グループの強みである衛星関連サービスを積極的に展開していくことで、社会全体の脱炭素化への寄与と事業の成長の双方の実現を目指しております。

 


 

■1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会

当社グループでは2022年以降、継続的にシナリオ分析を行うことで見直し、リスク・機会の分析の高度化を図っております。リスクについては事業や財務への影響は限定的であります。機会については当社グループ事業の財務インパクトの分析を行い、環境価値を定量化しております。抽出した各機会はチャンスとみなし、事業戦略(対外発信含む)に気候変動観点を取り入れていくことを検討しております。

1.5 /2℃未満/4℃シナリオにおける気候関連リスク・機会評価結果について、重要度中以上の移行リスクと機会は以下のとおりです。なお重要度については緊急度と影響度によるマトリクス評価で低・中・高に分類しております。

 

リスク

分類

内容

詳細

時間軸

重要度

対応策

移行

リスク

技術

製品・サービスの脱炭素化に伴う投資の増加

[宇宙]脱炭素素材を機器や設備、衛星やロケットに使用することにより、新規研究開発に要する追加費用が上乗せされることによる、調達コストの増加

中・長期

・複数調達先による安定調達と適正価格での調達
・製造メーカーや業界の市場動向及び技術動向のモニタリング
・調達における技術リスクを軽減するための長納期の確保や費用増を配慮した長期的な調達計画の策定

[メディア]脱炭素素材を放送関連機器や設備に使用することにより、新規研究開発に要する追加費用が上乗せされることによる、調達コストの増加(※本項目のみ重要度低)

[宇宙]衛星打ち上げ燃料が水素等非化石燃料への変更に伴うロケット調達費用の増加

市場・評判

気候変動対応に関する消費者/顧客行動(調達条件の変化等)・ステークホルダーからの懸念の増加

[共通]電力が再生可能エネルギーを使用していない場合に評判低下や顧客が再生可能エネルギーを使用している他の事業者に移るリスク

短・中期

・再生可能エネルギーの使用率の向上
・脱炭素に資する事業展開とそれらに関わる積極的な情報発信
・事業継続計画(BCP)の継続的な見直しと対応
・GHG排出削減の目標(ロードマップ)策定と戦略への統合
[メディア]・SDGsに関連する番組/イベントの提供(環境等の啓蒙番組の制作や編成)

[メディア]企業として気候変動への取り組み意識が低い場合、環境関連の情報やコンテンツ等への要請に応じた企業へ消費者が流出することに伴い、新規契約の減少・解約の増加

[共通]入札条件や企業の調達方針に含まれる環境配慮の条件に対して、対応が不可能なことによる収益の減少

[共通]BCP対応を含む気候変動への取り組み意識が低いことや設定した目標が達成されないことに起因するサービスや企業に対する評判低下や収益の減少

 

 

機会

分類

内容

詳細

時間軸

重要度/財務インパクト

機会

資源

効率

低炭素排出を可能にするリサイクルの活用

[宇宙]リサイクルされたロケットの活用による調達コストの削減

短・中期

市場

行政補助を通じた気候変動対応の促進

[共通]環境活動に対する行政補助の拡大による収益の増加

短期

積極的な気候変動対応による市場評価の向上

[共通]気候変動に積極的に取り組むことで、企業評価にプラスの影響を与え、投資家からの支持獲得を通じた資金調達機会の拡大

短期

製品

及び

サービス

気候変動の緩和に資する新サービスの拡大に伴う新たな収益源の獲得

[宇宙]Mission YAMATOによる宇宙太陽光発電サービスの拡大

中・長期

中/
~10億円

 

気候変動への適応に資する新サービスの拡大に伴う新たな収益源の獲得

[宇宙]河川の氾濫等における浸水域の把握、土砂災害のリスク評価・被害状況の把握等、自然災害における被害状況の予測、早期把握と対応の迅速化に資する観測サービスの拡大

短・中期

中/
~50億円

[宇宙]電力設備や港湾等の社会インフラの安定運用に資する観測サービスの拡大

[宇宙]災害に強い衛星通信の特長を活かした、自治体や電力・ガス等の重要ライフラインを担う企業向けの災害対策・BCP関連サービスの拡大

環境意識の高い顧客へのサービス提供の機会増加

[宇宙]排出量の少ない衛星やHAPS等により環境負荷の低いサービスを提供することで、環境意識の高い官庁や民間企業からの受託件数が増加

短・中・長期

中/
~50億円

[メディア]環境負荷の低いサービスを提供することで、環境意識の高い企業から、メディアソリューション事業の受託件数が増加

[宇宙]CO2を排出しない宇宙データセンターの運営による、サービス拡大に伴う収益の拡大

 

 

 

 

気候関連リスク・機会分析結果の一覧はサステナビリティサイト「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/esg/tcfd/

 

<リスク管理>

当社では、当社グループにおける気候関連リスク及び機会を洗い出し評価するために、サステナビリティ委員会の事務局である経営企画部を中心に、グループ内関連部署が連携してシナリオ分析等を行い、気候関連リスク及び機会を識別・評価しております。さらに、リスク及び機会におけるそれぞれの項目に対して対応策を検討しております。検討されたリスク及び機会の重要度評価につきましては、サステナビリティ委員会に報告され、議論しております。重要事項については、サステナビリティ委員会から取締役会へ諮り、取締役による議論を経て承認を行っております。

また、特定したリスクについては、取締役会で取締役の中から任命されたリスクマネジメント統括責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会へも報告され、議論しております。リスクマネジメント委員会は気候関連リスクを含む、グループ全体のリスクを管理しております。

 

■リスク評価項目及び気候変動リスクの管理プロセス

当社グループは、気候変動をはじめ、業務における潜在的なリスク評価を実施しております。リスク評価の基準を定めるに当たっては、関連法令、国際基準、類似ビジネスにおける過去の事故事例等も参照し、ビジネスの業種・業態や事業を行っている国・地域に応じて、それぞれの評価項目における潜在リスクの重要度と影響度を判断しております。

気候変動リスクについては、事業におけるリスクとの時間軸や性質の違いを踏まえて、サステナビリティ委員会にて対応・改善策・管理・評価等を行っております。リスクマネジメント委員会では、サステナビリティ委員会で行っている気候変動対応プロセスを確認し、全社的なリスク管理の網羅性を担保しております。

 

<指標と目標>

 気候変動に関する指標と目標指標について、以下に示しております。

(a) 気候変動に関する指標と目標指標

 

指標

目標

GHG排出量(Scope 1,Scope 2)

2025年 カーボンニュートラル

当社及び連結子会社

再生可能エネルギー使用比率

2030年 100% 

当社及び国内連結子会社

 

 

(b)GHG排出量実績推移(単位:t-CO2)

 

主要な事業会社

 スカパーJSAT㈱

指標

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope 1

8

10

13

13

Scope 2

11,415

10,218

5,535

315

合計

11,423

10,228

5,548

328

 

 

 

 

 

 

当社及び国内連結子会社

指標

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope 1

-

-

51

47

Scope 2

-

-

5,720

480

合計

-

-

5,771

527

 

 

(注1) GHG排出量は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)及び、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)に基づく報告書を提出するため、環境省が公表している係数を利用して算出し開示しております。令和6年度報告(2023年度実績の報告)から、温対法に基づく算定方法の見直しと法令等の改正(令和6年4月1日施行)が適用となりますが、新たな各係数での算出に向けて集計中のため、上記GHG排出量実績は従来の係数で算出しております。新係数によるGHG排出量実績は、後日サステナビリティサイト「環境データ」にて開示いたします。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/

(注2) GHG排出量のScope 3実績については、現在算出中のため後日サステナビリティサイト「環境データ」にて開示いたします。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_e/

 

(c)実質再生可能エネルギー使用比率(推移の表)

指標

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

実質再生可能エネルギー

使用比率

-

-

約30%

93%

95.0%

  当社及び国内連結子会社

 

 

(注) 各年度における3月31日時点での数値

 

(3) 人的資本・多様性

① 人的資本への考え方

当社グループは、社会と会社の持続的な成長を実現するために、人的資本が非常に重要であると考えます。そのため、当社グループでは人材を人財と称しております。経営戦略である「既存事業の収益性強化」「新領域事業の展開」を実現するために、「人的資本強化」は、「経営基盤拡充」とあわせて、企業価値向上に必要不可欠な基盤とし取り組みを強化してまいります。「多様な人財の活躍」を重要課題テーマの一つとしても掲げ、それに連なるマテリアリティとして「環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成」、「多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現」、「互いを尊重する安心安全な組織づくり」をそれぞれ定め、長期・短期計画及び施策を策定し、実行してまいります。

 

② 戦略

「人的資本強化」の実現に向けては、各事業の注力分野への積極的な人的資本投下や人と組織の活性化を図るため、「人財戦略」と人財が力を発揮するための「エンゲージメント強化」の2つを柱としております。

下図に、当社グループにおける経営戦略と、中核事業会社であるスカパーJSAT㈱における人的資本強化に紐づいた取り組み方針「人財戦略」と「エンゲージメント強化」を示します。なお、以降、特段の説明がない限りはスカパーJSAT㈱について記載いたします。

 



 

<人財戦略>

人財戦略では、環境の変化に対応し、変革・成長・改善の原動力となる人財を求める人財像とし、「社員一人ひとりの能力を引き出し、最大化して事業に貢献する」という人財育成方針のもと、求める人財を採用・育成すること、及び、注力分野への積極的な配置やハイパフォーマーの早期抜擢等により、個々のパフォーマンスの最大化、生産性向上を図ります。その一環として、2023年4月に人事制度を改訂いたしました。新人事制度では、当社グループの社員が持つタスク・スキルに応じた成長機会を創出し、タレントマネジメントや最適な人財配置に繋げていくことを目標とし、組織や等級を超えたアサインを可能とするジョブ型採用や、役割と等級を分離し、機動的な人財登用の促進を可能にしております。

 

 

採用・育成

2023年度活動内容

・採用ルートの拡充(新卒・キャリア)

・教育研修資格補助制度の拡充等、リスキリングを支援できる体制の確立

・異業種交流・選抜型研修による変革を推進するリーダーシップ醸成

・システミック・コーチングを用いた組織変革の実行

2024年度取組目標

・多様な成長機会の提供

 (e-learningプログラムや公募型プログラムの提供等)

・事業ビジョン実現のため部門特化型の能力開発プログラムの継続

・ITリテラシーの全体底上げ(DX、ビジネススキル)

・自律的キャリア形成を促進する研修・セミナー、キャリアディベロップメントの継続実施

・最適な組織運営を行うためのマネジメント向けプログラム実施

 (部長研修、コーチング等)

 

 

抜擢・配置

2023年度活動内容

・組織や等級を超えたアサインを可能とし、ハイパフォーマーの早期抜擢を実現できる

  人事制度の制定

・部署毎に必要なタスクとスキルの可視化(スキルマップ構築)

・アセスメントを用いたポテンシャル人財の輩出

・ポートフォリオ毎での必要人財の整理

2024年度取組目標

・人事制度の適切な運用(評価者向けトレーニングの実施等)

・スキルマップを用いたスキルチェックの実施とスキルデータの活用

・アセスメントを活用したマネジメント人財の育成と人財プールの形成

・人財ポートフォリオの策定

 

 

<エンゲージメント強化>

エンゲージメント強化では、人財戦略にて確保・育成した人財が最大限に力を発揮できるよう、「安心安全な組織づくり」を通じて、組織の活性化を目指しております。

エンゲージメント強化では、役職員一人ひとりが持つ力を最大限に発揮して、全員がイキイキと活躍している会社を目指しております。

当社グループは、安心安全な組織には、互いを尊重し、心理的安全性のある環境が必要であると考えます。「従業員の心身の健康を維持し、パフォーマンスを最大化して、生産性を高める」という健康経営方針を定め、それぞれのライフスタイルに合った多様な働き方の実現や従業員一人ひとりのメンタルヘルス・フィジカルヘルスの維持と向上に努めてまいります。また、多様な働き方の実現に向けた社内環境の整備や、女性・シニア世代の活躍の推進、キャリア採用の拡充等による多様性のある環境を実現し、国籍等の外面的な違いや価値観等の内面的な違いに関わらず、個々の社員の能力が公正に評価、処遇されている状態を目指してまいります。

 

安心安全な組織づくり

健康経営

・ 労働安全衛生管理体制の確立

・ 人事部・産業保健(産業医・保健師)による健康維持活動の推進

・ 労働状況の実態把握と改善

・ 全社員のストレスチェック実施(毎年)

・ 従業員一人ひとりの健康リテラシー向上施策の実施

環境整備

・ 多様性を活かすハイブリッドな働き方の実現

  (完全フレックス制度、テレワーク勤務制度、居住地制限の緩和等)

・ 感染予防や安全衛生を講じたオフィス環境の整備(座席事前予約システムの活用等)

多様性の確保

・ 女性活躍や次世代育成支援を推進していくための一般事業主行動計画(※1)の策定と施策

   実行。「えるぼし」「くるみん」認定の継続維持

・熊本農園導入による障がい者の雇用機会創出

・介護や育児、治療と仕事の両立を支援する社内制度の案内とセミナーの開催

・コア領域の強化に向けて即戦力を確保するためのキャリア採用の拡充

・シニア世代の活躍を促す等級体系・報酬体系の見直し

・社員のLGBTQ+理解促進のためのセミナー等の実施

組織文化

・ 1on1コミュニケーションを通じた信頼関係の構築

・ 360°フィードバックの実施

・ 組織診断(スマイルサーベイ)結果を元にした組織単位の改善活動の継続

 

 

(※1) 一般事業主行動計画(対象期間:2020年4月1日~2025年3月31日)

目標

 

・在宅勤務やテレワークの利用を現在の42%から80%に上げて、柔軟な働き方を定着させる

・産休、育休からの復職率100%を維持する

・女性のキャリア形成を支援する教育訓練を、計画期間内に3回以上実施する

取り組み内容

 

・在宅勤務やテレワークをしやすい環境と仕組みを整備し、提供する

・育休復職者に対してキャリアコンサルタントによるキャリア面談を実施する

・経営層、管理職を対象とした、ダイバーシティ、キャリア形成支援教育を実施する

 

 

③ リスク管理

人的資本に関するリスク管理は、第2 事業の状況、3 事業等のリスクに記述のリスクマネジメント委員会で取り組んでおります。主なリスクの概要及び対策は以下の通りです。

 

リスクの概要

概要

対策

1

労務管理の不備

時間外労働の法定超過、サービス残業等の発生、勤務状況の実態との乖離・把握困難、リモートワーク等における労務管理の不備等

・フルフレックス制度、テレワーク下における正しい働き方の啓蒙、勤怠研修の実施

・勤怠分析、勤怠管理、業務の平準化

・健康支援体制の強化

2

労働年齢構成の偏り

人員配置の困難

年齢構成の偏り等による適材適所への人員配置の困難化

 

・再雇用による労働力の継続確保

・中途採用による必要スキル・人財の補充、カムバック施策

・新人事制度運用による人財配置の適正化

・現存社員のスキルの可視化と必要人財の採用と内部育成

 

 

④ 指標及び目標

人的資本に関する指標及び目標は、当社グループのマテリアリティに対する目標・KPIとして設定しております。人的資本は、9つの重要課題テーマのうち「⑧多様な人財の活躍」に該当し、その中で、人財戦略において示した重要課題「事業環境の変化に対応し変革を推進しうる人財の確保・育成」、「多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現」、及び「互いを尊重する安心安全な組織づくり」の3つをマテリアリティとして特定しております。

各マテリアリティには長期目標として、2030年にありたい姿を定めております。また、2030年達成を目指す長期のKPIとして「労働生産性(一人当たり利益)」の向上、「女性管理職比率」を社員男女構成比相当にすること、「エンゲージメント指標」の継続的な向上を実現することを設定しております。

 

重要課題
(マテリアリティ)

長期

2030年にありたい姿

KPI

環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成

一人ひとりの能力アップのための環境が整備され、個々の能力の総和としての人的資本が拡大し、変革の推進、労働生産性の向上が実現している状態

労働生産性
(一人あたり利益)
※労働生産性を22年度よりも向上させる

多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現

多様性のある環境を実現することで、活発にイノベーションを創出している状態

女性管理職比率
※女性管理職比率は、社員男女構成比相当を目標とする

互いを尊重する、安心安全な組織づくり

心理的安全性が高く、一人ひとりが力を発揮できる職場環境・制度が整っている状態

エンゲージメント指標
※継続的な向上を実現する

 

 

短期のKPIには 、「育児休業復職」の100%維持、「男性育休取得率」の前年比プラス、「エンゲージメント指数」の前年比改善、「法定健診受診率」の向上、「高ストレス者割合」の前年比改善を設定しております。

 

重要課題
(マテリアリティ)

短期

短期達成目標

KPI

環境の変化に対応し、変革を推進しうる人財の確保・育成

キャリア自律促進のために手挙げ式研修プログラムを増やす、参加数を増やす

スキルギャップを明らかにするためにスキルマップ構築を進める

-

多様な人財の活躍を促すDE&Iの実現

内発的動機を高める施策や働きかけにより、社員の意識変容を進める

働きやすい環境整備とコミュニケーション活性化により、多様な働き方への理解浸透を図る

育児休業復職率100%を維持する

男性育休取得率を前年比プラスにする

育児休業復職率

男性育休取得率

互いを尊重する、安心安全な組織づくり

エンゲージメント指標を前年より改善する

法定検診受診率100%を目指す

高ストレス者割合を前年より改善させる

エンゲージメント指標

法定検診受診率

高ストレス者割合

 

 

人的資本に関する長期・短期の達成目標とKPIは、長期目標達成に向けた視点とともに、女性活躍推進法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法、労働安全衛生法、障害者雇用促進法等の法律やコーレポート・ガバナンスコードも踏まえて設定し、公表しております。

 

長期・短期達成目標/KPI(注1)

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2020年3月末

2021年3月末

2022年3月末

2023年3月末

2024年3月末

労働生産性 (注2) 

-

-

-

51.1百万円

52.6百万円

男性育児休業取得率 (注3)

-

-

28.6%

52.2%

60.0%

育児休業復職率 (注4)

100.0%

100.0%

100.0%

100.0%

100.0%

法定健診受診率 (注5)

-

-

98.9%

98.9%

98.9%

ストレスチェック受検率 (注6)

-

-

-

93.7%

95.3%

エンゲージメント指標(注7)

-

-

64.4%

66.4%

67.1%

 

(注1) 長期・短期達成目標/KPIの数値につきましては、スカパーJSAT㈱を集計しております。

(注2) 付加価値/従業員数(派遣社員を含む)

       付加価値は、経常利益、人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課を合計して算出しております。

(注3) 該当年度内に育休開始した男性社員/該当年度内に配偶者出産した男性社員

(注4) 復職者数/年度中における育児休業終了者数

(注5) 当該年度末までに受診した社員/健診の対象者(役員、正社員、契約社員)

(注6) ストレスチェックを実施した社員/ストレスチェック対象者(正社員、契約社員)

 (注7)エンゲージメント調査各設問における肯定的回答割合

 

管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金4の差異については、第1企業の概況 5従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異をご参照ください。

KPIは設定していないものの、実績を開示している指標もあり、詳細はWEBサイトのサステナビリティサイト「社会データ」をご参照ください。(2024年7月公開予定)

https://www.skyperfectjsat.space/sustainability/library/data_s/

 

 

3 【事業等のリスク】

(1) リスクマネジメント体制について

当社は純粋持株会社であり、当社グループ全体のリスクマネジメントの推進と必要な情報の共有化を図るため、中核の事業会社であるスカパーJSAT㈱と共同で当社グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を定めています。その基本方針及び管理体制に基づき、リスクマネジメント担当取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会で、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止・リスクの低減に取り組んでいます。

具体的には、原則半期ごと、必要に応じて適宜、リスクマネジメントの対象とするリスク及びリスク評価の見直しを行い、各リスクの評価結果を踏まえ、当該リスクへの対策を策定しております。まず、リスク評価に関しては、各リスクの発生頻度と影響度の積をリスクレベルと定義し、当社グループの各リスクの発生頻度と影響度のスコアを分析して、一定以上のリスクレベルとなるリスクを優先的に対策を講じるべき重大リスクとして定めます。また、洗い出されたリスクの中で対策緊急度の高いリスクにおいては、リスクレベルにかかわらず重大リスクとして定めます。そしてこの重大リスクに対して、当該リスクの所管部署において重点施策を策定し、スカパーJSAT㈱経営会議及び当社取締役会等に報告され、定期的に進捗がモニタリングされるシステムを構築しています。

リスクマネジメント委員会の構成は、委員長以下、各部門の統括部署、管理系部署で構成され、事務局は内部統制推進部が担っております。

スカパーJSAT㈱では内部統制に係る様々な委員会を設けて、日々活動を行っておりますので、その内容についてもリスクマネジメント委員会で把握し、管理を行っております。なお、気候変動関連のリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、経営企画部を事務局としたサステナビリティ委員会にて別途詳細に検討を行った結果及びその内容をリスクマネジメント委員会において報告を受け、必要な協議を行った上でその内容について管理を行っております。

また、実際にリスクが顕在化した場合は、BCP(事業継続計画)や情報セキュリティ、サイバーセキュリティ等、各リスクに対応したマニュアルに従って、迅速かつ適切に対応を行うことに加え、適宜リスクマネジメント委員会を招集する体制を整えています。この取り組みを実施することにより適切にグループ全体のリスクをコントロールしております。

(注)2024年4月1日を効力発生日とする組織変更により、サステナビリティ推進部を経営企画部に統合いたしました。


 

 以下に記載のリスクは、当社グループが当連結会計年度において、重大リスクと認識しているリスク項目につき、その対策と併せて記載するものです。ここで取り上げたリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅しているわけではありません。また、当社グループが認識していない未知のリスク、あるいは今後重要性が増して当社グループの事業、財政状態、経営成績等に重大な影響を及ぼすリスクが生じる可能性があります。なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(2) 当社グループが認識する重大リスクについて

<宇宙事業>

リスク名称

①   衛星通信市場における競争力低下のリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 宇宙事業部門長

リスクの状況

昨今の地上回線の発達・低廉化、5G(第5世代移動通信システム)時代の新しい通信ネットワークの発展、低軌道衛星等を利用した新たな衛星通信サービスの開始、ハイスループット衛星や搭載通信機器がフルデジタル化された大容量通信衛星の投入により、世界的には通信全般及び衛星通信の供給量は年々増加傾向にあります。

競合他社との価格競争により、帯域単価やサービス単価の下落が続くことが予想され、当社グループとしていかに収益を維持するかが課題となっております。

リスクへの対策

ハイスループット衛星やフルデジタル衛星等、先進技術を取り入れた衛星の調達・打ち上げを継続して行い、競争激化する市場でも需要の取り込みに注力しております。近年ではIntelsatとの共同所有衛星Horizons 3eとKacific社との区分所有衛星であるJCSAT-1Cの2機のハイスループット衛星でサービスを提供し、着実に収益を拡大しております。

2027年上期のサービス開始を予定するフルデジタル衛星Superbird-9は現在製造中ですが、日本をはじめとする東アジアにおいて大容量かつ自由度の高い通信サービスを提供予定で、既に当該サービスの利用契約の獲得を開始しております。

また2023年12月より低軌道衛星によるブロードバンドサービス「Starlink Business」の提供を開始しました。市場や顧客の多様なニーズへの対応を通して、一層の事業拡大と競争力強化に努めます。

近年のデジタル技術の急激な進化に伴い事業環境が変化していく中で、当社グループは、既存の衛星通信事業のビジネスモデルに加え、新たな技術の活用や事業領域拡大へ積極的に取り組んでいます。通信分野においては静止・非静止衛星及びHAPS(高高度プラットフォーム)などを用いた多層的な通信ネットワークと、光通信技術や宇宙コンピューティング技術を取り入れた宇宙空間でのICTインフラ基盤の構築を目指しています。ビジネスインテリジェンス分野では衛星画像販売サービスを強化するとともに、地球観測衛星から得られるデータを活用したサービスの開発と販売活動を推進し、新たな市場の開拓に取り組んでいます。他にも衛星量子鍵配送、宇宙ごみ対策など新たな技術を用いたサービスの事業化にも取り組み、事業領域の更なる拡大を目指しています。 新規事業への取り組みは、既存事業よりも不確実性が高く様々なリスクが高いことを認識しておりますが、企業価値の更なる向上には不可欠と考えています。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、低軌道衛星等を利用した新たな衛星事業者の台頭によって市場環境が急速に変化するなど、当社グループの提供する通信サービスが市場における競争力を維持できない可能性があります。

新規事業への取り組みは、事前の調査や分析を入念に行い、事業パートナーの選定や設備投資の規模などについても、事業計画を策定した上で、必要な判断プロセスを経て実施しますが、技術開発の遅延や事業パートナーの経営状況、当該新規事業で想定した市場の状況変化など、当初計画と異なる状況が発生した場合には、当社グループの事業及び経営指標に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク名称

②   通信衛星調達に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 宇宙事業部門長

リスクの状況

通信衛星調達の際には、調達先における製造の遅延や打ち上げの遅延または失敗等のリスクがありますが、これらの事由により予定されていた通信衛星の運用開始が遅延し、継続的なサービス提供が不可能な期間が生じた場合、当該期間における収益の低下や顧客流出の可能性があります。

また、通信衛星の製造期間中に設計上その他の要因によって予定外の支出を負担することがあります。

リスクへの対策

調達スケジュールを設定する際には、打ち上げ失敗の場合を想定し、予備衛星や既存衛星によるフリートバックアップ対策、もしくは代替衛星の早期納入をより確実にするための代替衛星用の長納期品の先行発注等の対応策を講じております。

調達先への支払いに関しては、衛星の製造、打ち上げサービスともに、進捗度に応じたマイルストーン支払いとし、衛星の製造に関しては納期遅延時には一定額の賠償金請求ができる権利を確保することでリスク低減を図っています。打ち上げサービスに関しては、衛星の完成後できるだけ速やかに打ち上げが行えるよう、衛星の予定納期に合わせて打ち上げ予定時期を設定し、製造期間中も可能な限りの契約調整を行いますが、衛星の製造が大幅に遅延した場合など、当社の希望する条件や時期での打ち上げが行えない場合があります

 保険契約については、打ち上げ時及び軌道上における運行時それぞれの保険契約を締結しております。打ち上げ危険担保保険は、初期段階において通信衛星の全部又は一部が損傷を受けた際に、通信衛星の再調達、その他修復に必要な費用を填補するもので、打ち上げ時点から、通常1年間有効となっております。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、後継衛星の製造・打ち上げが技術開発の進捗及びサプライチェーンの問題や予期せぬ事故及び地政学的な状況により遅延するリスク、衛星の損傷の度合いや原因その他の要因により、打ち上げ危険担保保険では打ち上げに要する費用の全額を補償できないリスク、宇宙保険市場環境の変動による保険料高騰のリスク及び戦争危険等の絶対免責に該当する場合に損害保険の対象にならないリスクが想定されます。

 

 

 

リスク名称

③   通信衛星の運用に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 宇宙事業部門長

リスクの状況

当社グループが保有する通信衛星は15年以上の長期にわたって使用されますが、運用期間中に製造上の瑕疵、欠陥部品、太陽活動に伴う磁気嵐、デブリや隕石等との衝突、過度の燃料消費、衛星管制上又は運用上の不具合その他の要因による衛星の機能不全又は運用能力低下の可能性があります。このような事態が生じた場合、サービスの提供ができないことによる収益の低下や顧客の流出、あるいは当社グループ所有の別衛星への顧客移行にかかわるコスト負担などで、収益性の低下等の悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

打ち上げ保険が期間満了となった後に効力を生じる軌道上危険担保保険契約を、打ち上げた通信衛星ごとに締結しています。ただし、この保険は通信衛星の技術上の機能不全に起因して当社グループが負う第三者賠償責任や収益の喪失などの営業上の損害を補填するものではありません。

 当社グループはこれまで、軌道上にバックアップ専用の予備衛星を保有し、運用中の衛星に不具合が生じた場合に可能な限り短期間でバックアップができる体制をとってきましたが、後継機として調達した衛星のサービス開始予定日に遅れが見込まれているため、後継衛星のサービス開始まで、バックアップ専用の予備衛星を一時的に後継機として運用する計画としました。

そのため、運用中の衛星に不具合が生じた場合は、バックアップ専用の予備衛星を維持する軌道位置ではバックアップ専用衛星への切り替えを、それ以外の軌道位置では、衛星フリート計画に基づいて、当社グループの所有する他衛星を用いたサービスの継続など可能な対応を行いますが、不具合の発生した通信衛星の能力を完全には代替できない可能性があります

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、不測の事態により、当社グループ所有衛星による代替機能が提供できないことによる収益低下リスク、通信衛星の機能不全の要因によっては免責条項が適用され軌道上危険担保保険の対象にならないリスク、宇宙保険市場環境の変動による保険料高騰のリスク及び戦争危険等の絶対免責に該当する場合に損害保険の対象にならないリスクが想定されます。

 

 

<メディア事業>

リスク名称

④   有料多チャンネル事業の事業性低下に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ メディア事業部門長

リスクの状況

加入者の獲得及びその維持は、当社グループの収益拡大にとって重要な要素です。2024年3月末において加入件数は2,740千件を有していますが、将来にわたって当社グループの計画どおりに加入件数が推移する保証はありません。今後、コンテンツの差別化やプロモーションの強化、キャンペーンなどの各種マーケティング施策の実施にも関わらず、同様のコンテンツを提供するインターネット経由での動画配信サービスの浸透等、競合サービスとの競争激化やユーザーの視聴習慣の変化により加入件数の減少が継続または急激に発生した場合、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼします。

また、競争の激化によって有力コンテンツを獲得できなかったこと等により当社グループのサービスの魅力が低下し、既存加入者の解約が想定以上に多く発生する場合には、累計の加入件数の減少につながり、また、放映権料が高騰することにより有料多チャンネル事業の収益性が低下し、これにより当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

有料多チャンネル事業において加入者数が減少する状況においても一定の利益を確保するべく、事業収支をベースとした中期的な事業構造改革の方針を作成し、実行しております。また、放映権料の高騰を受け、加入者の獲得・維持に資するコンテンツの優先順位を明確にしたコンテンツの取得方針を定め、かつ、その費用対効果の事後レビューを実施しています。更に、有料コンテンツを提供している同業他社との適切な協業や提携を通じて、マーケティング力の強化や事業全体の効率化を進めていきます。一方で、FTTH事業の収益拡大のため営業体制の強化を行い、ケーブルテレビ局各社との連携やサービスの充実を行うほか、東京メディアセンターの設備の有効活用などを実施し、また、Web3などの先端領域における事業拡大を進め、有料多チャンネル事業以外の収益の増加に向けた施策を実行しています。

残存リスク

インターネット経由の動画配信サービスの台頭が一層進んでいることなどから、従前よりリスクレベルが上がっていると認識しており、有料多チャンネル事業のサービス加入者向けに「スカパー番組配信」を、また独自の動画配信サービス「SPOOX」を展開するなどの対策を行っておりますが、現在想定している対策を講じていてもなお、競争激化による加入者の減少や放映権料、配信権料の高騰が想定以上となる場合、更なる収益性悪化のリスクが想定されます

なお、メディア事業の成長戦略として「コンテンツの拡大」、「伝送路の拡大」、「先端領域への拡張」、「エンタメインフラ領域の拡大」の4つの大きな取り組みを積極的に推進するとしておりますが、有料多チャンネル事業の事業性低下に関するリスクが顕在化してしまうと、かかる変革への取り組みが鈍化し、その結果として更なる魅力の低下と収益性の悪化をもたらすというスパイラルに陥ってしまうことが避けられないため、当該リスクをいかに顕在化させないかが課題となります。

 

 

 

リスク名称

⑤   不正視聴に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ メディア事業部門長

リスクの状況

当社グループが提供する有料多チャンネル放送「スカパー」ではB-CASカード/ACASチップというICカード/チップを利用しています。B-CASカードについては、有料放送を不正に視聴できるようにした改ざんB-CASカードの販売者が逮捕されております。また、大手ECサイトでのネット配信専用違法デバイスの販売についても、公衆送信権・送信可能化権侵害を幇助する行為に当たるとして、販売差し止め事案が発生しております。このような改ざんB-CASカードやネット配信専用違法デバイスによる不正視聴は、有料多チャンネル放送全体の健全な普及拡大に多大な悪影響を及ぼすとともに、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループが提供する有料多チャンネル放送「プレミアムサービス」「プレミアムサービス光」はB-CASカードとは異なるICカードを利用しておりますが、同様の不正視聴により、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

これまで当社グループでは4K8K放送開始に伴うACASチップの開発に積極的に参画してまいりました。ACASチップはセキュリティ機能が強化されていることに加え2K放送にも対応しており、ACASチップを搭載した4Kテレビ等でも「スカパー」の視聴がこれまでと同様に可能となっております。今後4Kテレビ等の普及により、B‐CASカードがACASチップに置き換わっていくことで、一定のリスク低減が見込まれます。また、当社グループはB-CASカードによる不正視聴が発覚した場合、有料放送事業者各社及びB-CASカードの所有者である㈱ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ等と連携し、損害賠償請求等の法的措置を含むあらゆる手段を講じて厳正に対処する方針であり、引き続き、刑事・民事での訴訟の提起や広報における違法性の周知などを行ってまいります。今後はより効果のある技術的な対応策を継続して検討していくとともに、不正視聴機器の利用による不正視聴者の法的対処が実現出来るよう関係省庁との連携を強化してまいります。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、ACASチップが想定通りに普及しない場合や上記の取組みによっても有効な抑止効果が生じなかった場合には、改ざんB-CASカードによる不正視聴が長期間にわたり継続的に発生するリスクが想定されます。また、近年インターネット経由での不正視聴を幇助する、ネット配信専用違法デバイスが海外より流入しており、これらによる不正視聴が広がるリスクがあります。この対策を検討するため、これまで大手ECサイトへの不正視聴機器に対する販売差し止めの実績を上げている一般社団法人衛星放送協会が中心となり、総務省の支援を得て、放送事業者、関連団体等が参画して不正ストリーミングデバイス対策協議会が設立されています。当社グループとしても本協議会の活動に積極的に協力し、ネット配信専用違法デバイスの流通阻止に向けて取り組んでおります。なお、かかるネット配信専用違法デバイスや不正視聴を可能とする新たな技術や機器が登場し、当社グループがこれらに対する有効な対応策を講じることができなかった場合、またはかかる対応策のために多額の費用を投じざるを得ないような場合には、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク名称

⑥   顧客管理システムに関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ メディア事業部門長

リスクの状況

当社グループでは、有料多チャンネルサービス等に関する新規加入申し込み、契約チャンネルの変更、解約処理、課金、請求など、各種お客様情報・契約情報の管理に大規模な顧客管理システムを使用しており、メディア事業の運営や収益管理において重要な役割を担っています。

このシステムにおいて重大なシステム障害が生じた場合、またはシステム設定や仕様変更に伴うプログラム変更等に不備があった場合、加入手続き等のサービスの停止、放送事業者との各種取引や手続きへの不具合による事業運営への支障、社会的信用の低下、不具合の解消や顧客対応に要する不測のコスト負担等により、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、不適切なデータ入力や改ざんが行われると経営成績の基礎となる営業収益の信頼性が損なわれ、事業運営や経営成績に悪影響が生じます。

リスクへの対策

重大なシステム障害を予防するため、顧客管理システムを免震構造の施設に設置し、各機器・装置は冗長構成を取っております。

また、アプリケーションやデータ等の情報は遠隔地のサーバへ定期的にバックアップしております。更にシステム設定等の不備に対しては、設定手順書の整備等により運用管理を徹底する他、プログラム変更時の社内手続きの整備やシステムへのアクセス権限の定期的な棚卸し等の対策を取っております。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、人為ミスによる障害が発生するリスク及びシステム更改時の要件定義等の不備により予期せぬ障害が発生するリスクが想定されます。

 

 

<全般>

リスク名称

⑦   事業投資等に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 経営管理部門長

リスクの状況

当社グループは、事業拡大のために、他企業のM&Aや出資、他企業との提携及び協力体制構築等の検討を行い、その結果、将来の当社グループの事業戦略や経営成績に貢献すると判断した場合には、これらを実行することがあります。

しかしながら、買収等の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って統合することができない場合や当社グループの期待する相乗効果が得られなかった場合、買収等の対象事業に当社グループの内部統制体制を適用することができなかった場合、当社グループに必ずしも経験や知見の無い技術分野における問題点を含む、想定しなかった重大な問題点が買収等の後に発見された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、買収等により多額ののれん及び無形資産を計上する可能性があり、対象事業の収益性が低下した場合にはのれん及び無形資産の減損が発生するほか、事業再編等に伴う事業売却損、事業清算損その他これに伴う損失の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

投資に係る規程を整備し、出資・投資に際しては、事業計画、内部収益率、撤退基準、その他リスク等を検討して審議・判断しております。加えて、大型出資案件については、各部門の会議を経て、代表取締役社長の諮問機関である経営会議にも付議し、取締役会でも決議を行う等、複数のチェック体制を取っており、慎重に多角的な検討を行っております。

また、適切な内部統制構築・運用のため、出資先への人員派遣や当社グループで定めている規程等の遵守を求め、適正に管理を行っております。投資判断時には、マイルストーンを設定し、適切なタイミングでレビューを行っており、出資後においても、各出資先の財務状況、取組方針、収益性、資本コスト、保有意義、出資の適正性等についてレビューを行い、その結果を取締役会に報告しております。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、市場・競争環境の変化や出資・買収後の事業管理の不徹底等により、買収等をした事業における損失の発生、投資有価証券やのれんの減損等を完全に防止することは不可能であり、投資に見合う利益を確保できる保証はありません。

また、出資先でコンプライアンスに関する問題等が発生した場合には、当社グループの社会的信用を損なう可能性があります。

 

 

リスク名称

⑧   事業上の法的規制等に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 経営管理部門長

リスクの状況

当社グループの事業の遂行にあたって、国内においては、放送法、電気通信事業法、電波法、独占禁止法、個人情報保護法、環境諸法令、補助金適正化法等の法的規制の適用を受けています。また、事業を展開する各国においては、当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁・事業停止命令等を受けたり、お客様をはじめとする関係者からの信頼を失う可能性があり、これにより当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、国内における衛星放送、並びに国内外における通信衛星の打ち上げ、運行及び商業利用に対して適用される現行の制度を変更するような法令等が新たに制定されたり、当社グループの事業に不利益な改正が行われた場合には、事業運営上の制約が生じる可能性があり、これにより当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

更に、サプライチェーン含む人権課題に適切な対応が取られていない場合、顧客との取引の停止や行政罰、また、当社グループの社会的信頼の喪失に繋がる可能性があります。

リスクへの対策

「スカパーJSATグループミッション」及び「スカパーJSATグループ行動指針」を基に、スカパーJSATグループコンプライアンス基本規程及びグループ役職員行動規範並びに人権方針を定め、取締役及び使用人に対し、人権尊重を含む法令等を遵守するよう求めております。

また、当社グループは、コンプライアンス統括責任者を任命し、コンプライアンス統括責任者を委員長とするコンプライアンス委員会を設置して定期的に開催しております。

更に、コンプライアンスを社内に定着させていくため、取締役及び使用人への教育・研修等を行うと共に、新たな法令等の制定や改正に関する情報が随時配信されるサービスを利用する等、当該法令への対応を行っております。

当社グループの事業活動又は取締役及び使用人に法令違反の疑義のある行為等を発見した場合、速やかに社内及び社外に設置する窓口に匿名でも通報・相談できるシステムとして、「コンプライアンスヘルプライン」を整備し、適切に運用しております。上記対応状況も含め、当社の内部監査部門は、当社グループのコンプライアンスの状況を定期的に監査しております。

そのほかにも、国内外において現行制度を変更するような法令の制定や改訂については、関係省庁等の動向を常に注視し、必要な意見表明や制度変更等への事前の準備をすることで、リスクを軽減する対応をしております。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、法令違反の可能性を完全に排除できないリスクや、国内外における新たな法令等の制定や改正に関する情報の入手が遅れる等、適切な対応が行えず、事業運営に悪影響を被るリスクが想定されます。

 

 

 

リスク名称

⑨   個人情報及び重要情報の流出や取扱い及びサイバーセキュリティに関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 経営管理部門長

リスクの状況

当社グループは、メディア事業においては提供するサービスへの加入者情報をはじめとした顧客情報を、宇宙事業においては技術情報を含む重要な情報をそれぞれ保有しております。当該情報がハードウェア、ソフトウェアの不具合及び人為的ミスによるシステム障害や第三者による不正アクセス等により流出した場合や、個人情報の不適切な取扱いが発生した場合は、社会的信用の低下や損害賠償その他の対応に係るコスト負担等により、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模なサイバー攻撃を受けた場合、当該情報が流出するのみならず、放送・配信サービス及び衛星通信サービスの運用に障害が生じる可能性があります。

リスクへの対策

当社グループは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証及びプライバシーマークを取得し、情報セキュリティ・個人情報保護マネジメントシステムを構築し、厳格な情報管理を行っております。当該活動の一環で、当社グループを対象とした個人情報管理委員会・情報セキュリティ管理委員会を設置し、情報セキュリティ管理の状況をモニタリングしております。

また、セキュリティインシデント発生時の対応を行う組織としてCSIRT(シーサート、Computer Security Incident Response Team)を設置し、訓練も実施しております。一方、システム対応として、個人情報及び事業上の重要情報保管時の暗号化サーバの利用、不正侵入防止システムやウィルス対策ソフトによる感染防止、各システムによるログの取得、セキュリティ診断による脆弱性の発見等を実施しております。

更に、サイバー攻撃の多様化、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進等によるサイバーセキュリティリスクの増加等を受け、最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer)を任命し、サイバーセキュリティへの対策を実施・強化しております。

そのほか、マルウェアや不正な通信の検知力強化や社内ネットワーク構築基準の見直しを実施しています。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、新技術を用いた高度なサイバー攻撃など、現在想定している対策を超える事態の発生により、情報流出やサービスに障害が発生する可能性があります。

 

 

 

リスク名称

⑩   大規模災害、新型感染症等による事業継続に関するリスク

リスクオーナー

スカパーJSAT㈱ 経営管理部門長

リスクの状況

当社グループは、放送と通信という公共性の高いサービスを提供する企業グループとして、放送設備や衛星管制・通信設備を国内に所有しております。大規模災害や事故、新型コロナウイルス感染症やその他の感染症の大流行等が発生した場合、施設の設備損傷や施設の閉鎖または活動自粛等により事業継続が困難となるリスクがあります。

その他にも従業員の被災状況や公共交通機関等の不通等により、継続業務従事者の確保ができなくなるといったリスクがあります。

リスクへの対策

事業ごとに継続業務を定め、人員計画含め非常時の体制をBCP(事業継続計画)として構築・運用しています。また、新型コロナウイルス感染症やその他感染症の拡大に対する事業継続体制も同様に事業継続計画としてあらかじめ定めています。

継続業務を担う拠点は制震または免震構造を採用しており、非常用発電機能や、食料品の備蓄を有しております。特に災害発生時に通常以上の利用が見込まれる衛星通信の管制施設に関しては、無停電電源設備を有し、一拠点が休止しても他の拠点からサービスを提供できるようにして業務に重大な支障を生じない設計にする等、サービス不断を目指した設備構築を行っております。また、気候変動などにより昨今頻発する可能性のある台風等の強風・豪雨被害等の脅威に関しては継続的に対策を検討・策定し、対応を進めております。

残存リスク

現在想定している対策を講じていても、全てのサービスはフルバックアップ設備を有していないため、現在想定している対策では対処しきれない大規模災害等が発生した場合には、放送・配信・通信を長期間停止するリスク及び交通機関等の断絶の長期化による拠点の燃料・人員確保のリスクが想定され、当社グループの事業及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

なお、本文中の記載金額は、億円単位の表示は億円未満四捨五入とし、百万円単位の表示は百万円未満切捨てとし
ております。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかに回復しております。

当社グループを取り巻く環境としては、宇宙事業の分野では船舶・航空機向けの移動体衛星通信や多岐にわたる分野での衛星データ利活用の需要が拡大しております。また、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始され、価格及びサービスの競争が激化する等ビジネスの環境が大きく変化しております。

メディア事業の分野では、有料放送市場でのマイナス成長や動画配信サービス市場での事業者の合従連衡やサービス間の連携もみられる等、厳しい市場環境が続いております。
 

このような経済状況の下、当連結会計年度の当社グループの連結経営成績は次のとおりとなりました。

区分

前期

(百万円)

当期

(百万円)

前期比

(百万円)

増減率

(%)

営業収益

121,139

121,872

732

0.6

営業利益

22,324

26,545

4,221

18.9

経常利益

23,194

27,128

3,933

17.0

税金等調整前当期純利益

23,122

26,259

3,136

13.6

親会社株主に帰属する当期純利益

15,810

17,739

1,928

12.2

 

なお、EBITDAは前期比24億円増加し、480億円となっております。

 

当社グループのセグメント区分は次のとおりであります。

区分

主要な事業内容

宇宙事業

衛星通信事業及び宇宙関連事業

メディア事業

放送・配信事業及びFTTH事業

 

 

当社グループのセグメント別の概況は次のとおりであります。(経営成績については、セグメント間の内部営業収益等を含めて記載しております。)

 

<宇宙事業>

(既存事業の強化)

・国内衛星ビジネス

2023年3月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で協定を締結した近地球追跡ネットワークに関し、海外地上局を共同でサービス提供することについて、2023年5月にKongsberg Satellite Services ASと合意いたしました。通信衛星及び回線の運用を通じて得たノウハウ、並びに衛星機器や地上局設備を活かして新たなサービスを展開し、宇宙利用の拡大や宇宙産業の発展に貢献してまいります。

・グローバル・モバイルビジネス

ハイスループット衛星であるJCSAT-1C及びHorizons 3eの利用が拡大いたしました。両衛星ともに今後も収益の拡大を見込んでおります。2023年10月にIntelsat US LLCとの間で、Horizons-4 Satellite LLCの持分の50%を譲り受ける契約及びHorizons-4衛星共同事業に関する諸契約を締結いたしました。今後同衛星によりアラスカ、ハワイを含む米国50州、メキシコ、カリブ海全域、及び太平洋地域の移動体通信需要に対応してまいります。

2027年上期に運用開始予定のフルデジタル衛星であるSuperbird-9について、打ち上げ前のプレセールスを開始し、パナソニック アビオニクス㈱との間で航空機向けに大容量の回線を提供する契約を締結いたしました。航空機内高速インターネット接続の実現に寄与し、乗客の機内体験の向上に貢献してまいります。

・低軌道衛星による通信サービス

Starlink Japan合同会社より再販事業者としての認定を受け、2023年12月より、低軌道衛星によるブロードバンドサービス「Starlink Business」の提供を開始いたしました。市場や顧客の多様なニーズへの対応を通して、一層の事業拡大と競争力強化に努めてまいります。

 

(新たな技術の活用や事業領域拡大への取り組み)

・通信分野

新たな宇宙インフラの構築を目指し、日本電信電話㈱(以下「NTT」)との合弁会社㈱Space Compass(以下「Space Compass」)において、光データリレーサービスの提供に向けた衛星の調達を進めております。

静止軌道衛星に低軌道衛星、HAPS(高高度プラットフォーム)などを加えた多層的な通信ネットワークの構築に向けて、Space Compass、NTT及び㈱NTTドコモとともに、国立研究開発法人情報通信研究機構が公募した「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に採択され、HAPSを介した携帯端末向け直接通信システムの早期実用化に向けた開発の加速と実用化後の利用拡大を見据えた高速大容量化技術の研究開発を開始いたしました。低軌道衛星事業者との連携も推進しており、2023年11月には、NTT、NTTグループ各社とともに、Amazon.com, Inc.が提供する「Project Kuiper」との戦略的協業に合意いたしました。

・ビジネスインテリジェンス分野

政府向け等の衛星画像販売の収益が拡大いたしました。2023年6月には、カタール環境省(Ministry of Environment and Climate Change)向けに、SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)衛星画像を活用した海上オイル漏れ検知サービスの提供を開始いたしました。本サービスの提供を通して、持続可能な社会と環境の実現に貢献してまいります。また、2023年7月には、㈱QPS研究所との間で、同社が開発する小型SAR衛星の運用業務に係る契約を締結いたしました。さらに、2023年12月には、地球観測衛星から得られるデータを活用した事業の拡大と新規事業の共同開発を目指し、㈱天地人との間で出資契約を締結いたしました。パートナー企業との連携を強化しながら、新たなサービスの開発や販売活動を強化してまいります。

・更なる事業領域の拡大

レーザー技術を活用した宇宙ごみ除去事業を推進するため、2024年1月に㈱Orbital Lasersを設立いたしました。本事業を通して持続的な宇宙環境の維持改善に貢献してまいります。

 

以上の結果、当連結会計年度の宇宙事業の経営成績は次のとおりとなりました。


 

前期
(百万円)

当期
(百万円)

前期比
(百万円)

増減率
(%)

営業収益

 

 

 

 

 

外部顧客への営業収益

55,419

58,276

2,856

5.2

セグメント間の内部営業収益等

6,734

6,473

△261

△3.9

62,154

64,749

2,595

4.2

営業利益

19,151

22,798

3,647

19.0

セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)

13,515

15,532

2,016

14.9

 

送トラポン収入が減少した一方で、国内衛星ビジネス分野の収益の増加4億円、JCSAT-1CやHorizons 3eの利用拡大及び円安の影響によるグローバル・モバイル分野の収益の増加17億円、衛星画像販売等による収益の増加9億円、減価償却費の減少9億円等により、営業収益、営業利益及びセグメント利益は増加いたしました。

 

 

<メディア事業>

(放送・配信事業)

主力商品である「スカパー基本プラン」の契約件数は順調に増加し、2024年3月末時点で741,678件になりました。視聴人数・視聴時間が増加することで、解約率の抑制や他商品の追加契約の促進にもつながっております。

2023年シーズンプロ野球に関しては、「プロ野球セット」でセ・パ12球団の公式戦全試合を生放送・配信いたしました。30歳以下を対象とした「スカパープロ野球セットU30 初めてお試しキャンペーン」を行い若年層の加入拡大をはかりました。また、海外サッカーに関しては、「ドイツ ブンデスリーガ」全試合を放送・配信したほか、リアルサービスとして2023年7月に開催した「スカパーブンデスリーガジャパンツアー2023」においてFCバイエルン・ミュンヘンを招聘し、川崎フロンターレとの試合を主催いたしました。

2023年5月より、スカパーポイントプログラムを開始しております。幅広いサービスに触れていただくことでお客様の体験が深化し、コンテンツライフがこれまで以上に充実したものとなることを目指してまいります。

2023年8月より、一般社団法人OTGコンソーシアムが運営するサービス「Net-VISION」において、「スカパー番組配信」及び「SPOOX」の配信を開始いたしました。本配信開始により、お客様は簡単な設定、リモコン操作で「スカパー番組配信」及び「SPOOX」をテレビ上でご視聴いただけるなどの利便性の向上が見込まれます。また、当社グループとして、新たに「Net-VISION」利用者に対して当社グループが提供するコンテンツの魅力に触れていただく機会を得ることで、「スカパー」サービス加入者を増やすことも目指してまいります。

 

(FTTH事業)

光ファイバーによる地上デジタル・BSデジタル等の再送信サービス(以下「光再送信サービス」)では着実に提供エリア拡大を進めており、2024年3月末時点における提供エリアは37都道府県にわたり、提供可能世帯数は約4,280万世帯(注)、契約世帯数は275万世帯に達しております。

ケーブルテレビ業界の課題解決に向けた業界初の取り組みとして、前期から開始したBS/CS放送のパススルー伝送及び視聴制御を組み合わせたサービスについては、2024年3月時点で24局での導入が決定しております。

(注)国勢調査世帯数により算出。

 

当連結会計年度における「スカパー」サービスの加入件数は次のとおりとなりました。

 

新規

解約

純増減

累計

当期

539千件

673千件

△135千件

2,740千件

前期比

△31千件

△30千件

△1千件

△135千件

 

 

以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の経営成績は次のとおりとなりました。


 

前期
(百万円)

当期
(百万円)

前期比
(百万円)

増減率
(%)

営業収益

 

 

 

 

 

外部顧客への営業収益

65,720

63,596

△2,123

△3.2

セグメント間の内部営業収益等

3,012

2,932

△80

△2.7

68,733

66,528

△2,204

△3.2

営業利益

3,863

4,402

539

14.0

セグメント利益(親会社株主に帰属する当期純利益)

2,779

2,548

△231

△8.3

 

光再送信サービスの契約世帯数の増加等によりFTTH事業収入が3億円増加した一方で、スカパーサービスの累計加入件数減少等の影響による視聴料・業務手数料・基本料収入の減少24億円等により、営業収益は22億円減少いたしましたが、営業費用における衛星回線料の減少5億円、広告宣伝・販促費の減少10億円、その他事業運営の効率化に伴う費用の減少等により、営業利益は5億円の増加となりました。

しかしながら、特別損失に上場株式の投資有価証券評価損8億円を計上したこと等により、セグメント利益は2億円の減少となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

a. 生産実績

当社及び連結子会社は、サービスの提供にあたり、製品の生産を行っていないため、生産実績について記載すべき事項はありません。

b. 受注実績

当社及び連結子会社は、受注生産を行っておりませんので記載すべき事項はありません。

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比(%)

宇宙事業(百万円)

58,276

5.2

メディア事業(百万円)

63,596

△3.2

合計(百万円)

121,872

0.6

 

(注1) セグメント間取引については相殺消去しております。

(注2) 主な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は4,054億円となり、前連結会計年度末比(以下「前期比」)64億円増加いたしました

流動資産は、Xバンド事業に関する債権回収等により売掛金が45億円減少いたしましたが、現金及び現金同等物の増加64億円、衛星画像の仕入等に係る前渡金の増加35億円により前期比24億円増加いたしました。

有形固定資産及び無形固定資産は、設備投資により164億円増加いたしましたが、減価償却費202億円等により、前期比38億円減少いたしました。

投資その他の資産は、Horizons-4 Satellite LLCの持分取得及び保有上場株式の時価評価等の影響で投資有価証券が141億円増加したこと等により前期比78億円増加いたしました。

 

当連結会計年度末における負債合計は1,334億円となり、前期比88億円減少いたしました
 主な増加は前受収益28億円であり、主な減少はXバンド事業及びHorizons 3e事業に関する借入金の返済等による有利子負債の減少77億円、未払金の減少39億円であります。

 

当連結会計年度末における非支配株主持分を含めた純資産は2,720億円となり、前期比152億円増加いたしました

親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が117億円増加した一方で、自己株式を50億円取得したこと等により、株主資本は68億円増加いたしました。また、その他有価証券評価差額金の増加72億円の影響等により、その他の包括利益累計額が80億円増加いたしました。この結果、自己資本比率は66.7%となり、前期比2.7ポイント増加いたしました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益と減価償却費の合計465億円に加え、売上債権の減少46億円及び前受収益の増加28億円がありましたが、前渡金の増加35億円、未払金の減少39億円、法人税等の支払84億円等により424億円の収入(前期は576億円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出154億円、Horizons 3e事業に関する貸付金の回収による収入38億円、Horizons-4 Satellite LLCへの出資にかかる関係会社株式の取得による支出36億円等により、154億円の支出(前期は169億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入10億円、長期借入金の返済による支出109億円、自己株式の取得による支出50億円、配当金支払による支出61億円等により、211億円の支出(前期は194億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期比64億円増加し、1,143億円となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループは、グループミッション「Space for your Smile」を、持続可能な社会に向けた活動を進めるための「サステナビリティ方針」としても掲げ、社会的課題を解決すると共に、企業価値を向上させることを目指しております。このミッションの実現のため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、基礎収益力の向上に向けた成長分野への投資を推進することを財務戦略の基本方針としています。

 

(資金需要の主な内容及び資金調達)
  当社グループにおける主な資金需要は、事業活動上の必要な運転資金、宇宙事業における通信衛星設備等の調達やメディア事業における放送・配信設備の拡充等における設備投資資金、戦略的なM&A資金等です。これらの資金需要は、主に営業キャッシュ・フローにより賄っておりますが、必要に応じて社債発行や借入による資金調達を行っております。また、機動的な資金調達を可能とすべく400億円の社債発行登録枠を確保しております。
  なお当社グループでは、一定の手元流動性を維持する資金計画を作成・実行するとともに、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約(合計132億円)を締結して資金の流動性リスクに備えております。また、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ内資金の活用により、資金効率の向上に努めております。
 
(借入金の状況と返済方針)
  当連結会計年度末における借入金残高は558億円となっておりますが、このうちXバンド事業に関する金融機関からの借入金371億円については当該事業に係る防衛省に対する債権の回収により、Horizons 3e事業に関する金融機関からの借入金172億円については当該事業に係る営業キャッシュ・フローにより返済する予定としております。
 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって当社グループが用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

① 貸倒引当金

売上債権や貸付金等の貸倒損失に備えるため、過去の債権回収実績や債務者の財政状態より算出した回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。このため、将来債務者の財政状態悪化により支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

 

② 固定資産の減損

管理会計上の区分に基づいた各事業用資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナス又はマイナスの見込みの場合、当該資産グループの回収可能価額を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、その差額を減損損失として計上しております。このため、将来事業用資産グループの収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

③ 投資の減損

所有する有価証券、投資有価証券及び出資金の投資価値が著しく下落した場合、回復する見込があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。このため、将来の市況悪化や投資先の業績悪化により、現在の投資簿価に反映されていない損失が発生した場合や投資簿価の回収が困難となった場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

 

④ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は、将来回収が見込まれる一時差異等に係る税金の額を計上しておりますが、その回収可能性は将来の合理的な課税所得の見積りにより判断しております。このため、業績悪化による課税所得の見積りの変更等により回収可能性の見直しが必要となる場合、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 当社の連結子会社であるスカパーJSAT㈱は、2024年3月5日開催の同社取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、新設分割により㈱スカパー・ピクチャーズを設立し、同社の「グローバルIP事業」(アニメを中心とした映像コンテンツの企画・製作投資・販売、及び周辺事業)に関する権利義務を承継させることを決議しました。

 詳細は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、宇宙事業及びメディア事業の両事業でそれぞれ研究開発活動を行っております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は153百万円であり、主な内容は宇宙用レーザーを利用した不用衛星等の移動(除去)サービス開発等であります。