文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「自然の恵みをくらしに活かす」を基本理念として、植物資源「松」から得られる有効物質を化学製品にする循環型ビジネスモデルを通じて、地球環境に配慮した事業の展開を基本的な考え方としております。
今後もこの基本理念のもと、企業価値の一層の向上をめざします。
2023年度は新製品の投入やコストダウン、価格対応などで国内事業は増収増益となりましたが、海外事業でローター社が欧州景気後退や中国経済減速の影響を大きく受けて赤字転落したため、連結ベースでも営業赤字となりました。ローター社の業況は最悪期を脱し改善基調にありますが、2024年度は連結利益の黒字復帰をめざし、ローター社で間接部門経費の圧縮や事業の見直しを通じた収益改善に取組む他、樹脂・化成品事業では安価原料の調達等によって収益性を改善します。また、電子材料事業においては、成長が続く半導体用機能性樹脂の拡販および2022年に買収した海外はんだ材料事業を軌道に乗せ売上増加につなげていきます。更に製紙用薬品事業では、中国と米国で事業の拡大と収益力の強化に努めます。
これらを通じて中期経営計画「NEW HARIMA 2026」の目標である2026年度売上高1,100億円、営業利益70億円、ROE10%に向けて業績伸展に努めてまいります。また、2023年度には統合報告書を作成し公開しました。引き続き環境、社会、ガバナンスへの取り組みを明らかにしていくとともに、持続可能な企業活動をめざします。
〈中期経営計画「NEW HARIMA 2026」の基本方針と最近の取組み〉
〈資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応〉
当社グループは、中期経営計画で2026年に10%のROE達成の目標を設定しております。しかし、2023年度の業績は赤字であったため、前年に続きROEが株主資本コストを下回る結果となりました。
ROE向上のために、中期経営計画に沿って、①収益改善:ローター社の経営改善、製紙用薬品・電子材料事業の海外事業強化、安価原料の安定確保、②資産効率改善:製品ライフサイクルが成熟段階にある事業を見直し収益性の高い事業へシフト、③成長事業への投資:成長分野への研究開発投資、DX推進、M&Aを通じた新事業参入、といった施策を着実に進めていきます。
ROEの改善努力に加えIR活動の強化も推進し、現状低位にあるPBRの向上にもつながる取り組みを行います。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。参照先の書類等将来に関する記述は、本報告書作成時点で当社グループが入手している情報を踏まえた仮定、予期および見解に基づくものです。既知および未知のリスクや不確実性およびその他の要素を内包しており、3「事業等のリスク」などに記載された事項およびその他の要素によって、当社グループの実際の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは異なる可能性があります。
(1) サステナビリティに対する考え方
当社グループの企業理念「自然の恵みをくらしに活かす」は、「人と自然、そしてテクノロジーの調和」を願うものであり、豊かな社会の創造を追求するものです。この基本理念のもと、樹脂・化成品事業、製紙用薬品事業、電子材料事業を基幹事業として事業展開し、顧客のニーズを汲み、社会課題、環境課題解決にもつながる当社製品を提案・創出することで価値を創造しております。
このプロセスを通じて、当社グループの長期ビジョンHarima Vision 2030「自然の恵みをくらしに活かす 心と技術でサステナブルな未来を世界に届けます~Pine Chemicals & Beyond ハリマ化成グループ」の実現を目指しております。
(2) ガバナンス
サステナビリティにかかる重要な経営課題は取締役会に付議・報告されます。
取締役会は、サステナビリティを含む当社グループの事業全般のリスクおよび機会を監督し、対応方針および実行計画等について審議・監督します。
代表取締役が議長を務め、取締役および執行役員ならびに事業部門責任者をメンバーとするグループ経営会議(月1回)には、社外取締役、監査等委員である取締役を含む取締役会メンバーが直接参加し、経営の進捗およびリスク・課題の早期把握に努め、経営環境の変化やリスクに対して、各部門において迅速に対応できる体制を取っております。各執行部門におけるリスク・機会の報告は各メンバーから報告されるほか、グループ全体のサステナビリティにかかる重要課題は経営企画グループ内に設置したサステナビリティ推進室が取り纏め、報告します。
各取締役のリスクおよび機会への対応状況、成果は、当社グループの企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えるために設けられた業績連動報酬により反映されます。詳しくは、
(3) 戦略
<リスクと機会、経営の重要課題(マテリアリティ)の特定プロセス>
環境、社会、経済の変化を踏まえ、将来の経営環境を分析し、リスクと機会を特定しました。これらのリスクと機会は、当社グループの持続的な成長と発展に大きな影響を与えるため、適切に管理し、対応していく必要があると認識しています。
そして、これらの社会や環境から受ける財務的影響を考慮して、経営の重要課題「マテリアリティ」を特定しています。マテリアリティの特定にあたっては、長期ビジョン・中期経営計画を踏まえたうえで、SDGsやESG関連の評価指標やガイドラインなどを参考に、200超に及ぶ社会課題や社会変化に関するキーワードを洗い出し、テーマ別に9項目のマテリアリティ要素に集約の上、現在~2030年頃に予測される社会課題・社会変化の内容について検討・分析を行ったうえで影響を整理し、自社にとっての重要度とステークホルダーにとっての重要度の2つの観点から重要度評価を行い、マテリアリティを策定しました。取締役会はその報告をうけ、マテリアリティの特定を了承しました。
<当社グループのリスク、機会、経営の重要課題(マテリアリティ)>
リスクと機会 :当社グループの見通しに影響を与えることが予想されるサステナビリティ関連のリスクと機会
発生が予想される期間 :リスクと機会が発生すると予想される期間。短期(1年未満)、中期(5年未満)、長期(10年未満)。
投資家等に比較的馴染みのある日本国債償還期間に応じた分類を採用。
想定される財務影響 :財務影響度にリスク管理上の重要性を加味し、以下に分類。
(大)経営に大きな(事業継続が困難な)収益影響が出る
(中)経営に長期的な収益影響、一時的だが大きな収益影響
(小)部門運営に影響が出る、経営に一次的な収益影響が出る
リスク顕在化の蓋然性 :低減策を施した上でリスクが顕在化する蓋然性。
(高)直ちに、或いは連続年度で、或いは常態化の可能性が高く、有効なレジリエンスが講じられない
(中)対象期間中に断続的な発生が予見され、追加レジリエンス策を講じるまでに数年かかる
(低)対象期間中の発生が数年以内に留まる、速やかなレジリエンス策を講じることができる
・サステナビリティ関連情報について
サステナビリティ関連の情報については、当社グループのホームページ等にて適時適切に開示を進めます。
https://www.harima.co.jp/environment/
(4) リスク管理
(5) 指標および目標
当社グループを取り巻く事業環境、持続可能社会の建設に向けた環境課題や社会課題の解決、などの特性を鑑みて、指標と目標を管理しております。
※1 GHG排出量は温対法に基づく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の改正前の係数を使用。
※2 ハリマ食品(株)、ハリマ化成商事(株)が所有しているゴルフ場及びホテルは集計から除外。
(6) 重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンスおよびリスク管理を通して識別された当社グループにおける開示すべき重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
➀気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)
➁人的資本
それぞれの項目にかかる当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。
① 気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)
当社グループは2021年12月に「TCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言への賛同を表明しました。またカーボンニュートラル実現を成長の機会として捉え、自ら以外のステークホルダーも含めた経済社会システム全体の変革を行うための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として2022年3月に設立された「GXリーグ」に賛同を表明し、2023年度からの本格稼働にも参画しております。
TCFD提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について、積極的に情報開示を推進していきます。
ガバナンス
戦略
■社会的課題解決に向けたサステナブルな製品の拡販
パインケミカル事業の主要原料である粗トール油は、EUにおける再生可能エネルギー指令(RED II)で先進型バイオ燃料として規定されるなど、近年、急速にニーズが高まっております。当社は国内で唯一、粗トール油を原料としたトールロジン、トール油脂肪酸を生産しており、再生可能原料を使用するパインケミカル製品をはじめ、環境配慮型製品をさまざまな用途へ提供し続けております。
中期経営計画では、当社グループの強みを活かし、再生可能原料の使用、有害性物質・VOC低減、3R、脱プラといった環境負荷を低減する社会的課題の解決に役立つ製品として「サステナブル製品」を拡販する戦略を掲げております。

■脱炭素社会実現に向けた取り組み
当社グループは、経営理念「自然の恵みをくらしに活かす」のもと、再生可能資源であるロジン(松やに)を原料に、パインケミカル(松の化学)の「循環型事業」を中心に成長してきました。「自然に負荷をかけない生産システム」と「自然環境にやさしい製品」を通じて、潤いのある、豊かな社会の創造を使命に、人と技術を大切にするグローバルカンパニーを目指します。
製品の製造には、松材からパルプを製造するときに副生する粗トール油を原料として活用しております。また、粗トール油を精留しトールロジン、トール油脂肪酸などを生産する過程で得られる副生物は、カーボンニュートラルのバイオマス燃料(自然循環型エネルギー)として有効利用しております。
当社グループの循環型事業の成長と脱炭素社会実現に向けた取り組みには比較的長い歴史があります。1958年に国内で初めてトール油精留事業に参入し、1973年には人と地球にやさしい世界初の完全クローズドシステムのトール油精留プラントを建設しました。また、加古川製造所(兵庫県加古川市)にバイオマス発電設備(2005年)を稼働、伊保基地(兵庫県高砂市)には太陽光発電システム(2014年、発電能力1,129kW)を稼働させるなど、予てより脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っております。2022年にはカーボンニュートラル都市ガスを導入し、2023年には地域行政・住民との価値共創・課題解決プロジェクトとして「ため池水上太陽光発電事業」を開始しました。2023年4月には加古川製造所に実質CO2フリーのプラント運営をめざすミルセン(香料原料)の製造設備を完工しました。また、再エネ指定の非化石証書を組み合わせることでCO2排出量をゼロとする仕組みを導入し、加古川製造所の電力CO2排出量のゼロ化を実現する取り組みを行い、その他の国内工場でも同様の取り組みを進めております。
2021年6月には、国内の温室効果ガス削減ロードマップを公表しました。2030年46%削減(2013年度比)という政府の温室効果ガス削減目標に対して3年前倒しし、2027年に46%削減、2030年には50%削減を目標にしております。その実現に向けて、再生可能エネルギーやバイオマスエネルギーの拡大、エネルギーの効率化に取り組んでおります。
<温室効果ガス削減ロードマップ(CO2換算)>

これらの戦略への取り組み状況は、定期的に進捗を確認し、後述の「指標と目標」で開示します。
■気候関連リスク・機会の影響について
気候関連のリスクと機会が当社グループの事業、戦略、財務計画に及ぼす実際の影響と潜在的な影響について、重要(マテリアル)な財務影響を与える可能性のある気候関連リスク・機会を、2℃未満、4℃以上のシナリオごとに、後述のリスク管理プロセスで特定しました。的確なリスク認識の下、適時適切に対応策を図り、レジリエンスを備えます。
<気候関連リスク・機会と対応策(レジリエンス)>
※CP:カーボンプライシング。気候変動問題の主因とされる炭素に価格を付ける仕組み。炭素を排出する企業が排出量見合いの金銭的負担を求められたり、そのコストが販売価格に転嫁されたりする影響が考えられる。
<参照した気候変動シナリオ>
リスク管理
気候関連のリスクは、脱炭素社会実現に向けた社会の変容を捉えるべく、長期的かつリスク規模も大きくなる可能性があり、これはその他のリスクとも相互に関係し合うものであることから、統合的なリスク管理が重要と認識しております。
当社グループは、事業等のリスクを、経営環境に関するリスク、事業運営に関するリスク、経理・財務に関するリスクに大別して有価証券報告書等で開示しておりますが、気候関連リスクは「経営環境に関するリスク」の一つと捉え、相互の関連を認識したリスク管理を行っております。
気候関連リスクを識別・評価・管理するにあたって、以下のリスク管理プロセスを執っております。
<リスク管理プロセス>
指標と目標
戦略とリスクマネジメントに即して気候関連のリスクと機会の評価に使用する指標は下表のとおりです。温室効果ガス排出削減目標(Scope1,2)に向けた進捗管理に加え、2022年度よりScope3のモニタリングを開始しました。各目標の達成に向けて取り組みを進めて参ります。
<指標・目標と実績>
※1 GHG排出量は温対法に基づく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の改正前の係数を使用。
※2 ハリマ食品(株)、ハリマ化成商事(株)が所有しているゴルフ場及びホテルは集計から除外。
※3 情勢や政策ほか経営環境に大きな変化が生じた場合は目標の変更を行うことがあります。
※4 2021年度はハリマ化成(加古川)とハリマMID(加古川)、2022年度はハリマ化成(国内)とハリマMIDを対象に算定。
<気候関連リスク・機会の財務影響(最大損益額)試算>
※CP: カーボンプライシング。気候変動問題の主因とされる炭素に価格を付ける仕組み。炭素を排出する企業が排出量見合いの金銭的負担を求められたり、そのコストが販売価格に転嫁されたりする影響が考えられる。
② 人的資本について
当社グループは、「自然の恵みをくらしに活かす」、「人と技術を大切にするグローバルカンパニー」を企業理念とし、従業員は会社にとって最大の財産で、その成長が会社全体の発展に繋がるという意識のもとに、従業員一人ひとりが安心して仕事に全力投球でき、仕事を通して自己実現できる環境の整備に取り組んでおります。
特に2015年に導入した、統一された価値観“バリュー”を中心に据えた人材育成制度は、企業の経営戦略と人事戦略を連動させるための制度です。この制度では、“バリュー”を採用や教育、評価等に組み込み、多様化する価値観の中で従業員の方向性を統一します。この制度により、企業価値の創造や企業理念の実現に求められる人材ポートフォリオを実現できると考えております。
また、2022年度を初年度とする中期経営計画「NEW HARIMA 2026」では、基本方針3本柱の一つとしている「新規事業、成長分野に向けた研究開発」において、成長分野への資源配分と新製品開発による市場参入を目指しております。
今後も、企業理念の実現とその時代に求められる社会課題解決に柔軟に対応できる人材育成に努めてまいります。
ガバナンス
重要な組織変更や人事異動、幹部の採用、人事諸制度の新設・改廃は取締役会で決議されます。また、人事委員会は、資格等級審査や重要な人材開発施策、人事制度に関する事項を決議し、その結果を取締役会に報告します。人事に関する諸制度(評価、福利厚生、労働組合、採用、人材育成、等)の企画・立案・管理・推進・運営は、人事グループが統括します。各事業カンパニーやカンパニーに属さない子会社、グループ本社管理部門は、所管組織の人材育成・指導・管理を行い、その運営状況を人事グループに報告します。また、海外拠点における従業員の採用や労働組合との対話は各拠点長が担い、そのための人事組織をそれぞれ有し、その運営状況はその拠点を所管するカンパニー長に報告されます。

戦略
当社グループは、長期ビジョン「Harima Vision 2030」において、2030年度に売上高1,200億円以上、営業利益85億円以上、ROE10%以上、海外売上高比率65%以上、温室効果ガス排出量50%削減、という目標を設定しており、その達成に向け中期経営計画を策定しております。
この中期経営計画の達成に必要となる人材開発を、達成目標よりバックキャストし人材開発計画を策定しております。

<as-is to-be分析によるリスキル・リカレント能力開発領域>
■事業基盤の強化と事業領域の拡充
当社の達成目標からのバックキャストで、次世代幹部候補生の育成、およびそれを補佐する人材の育成、ならびに、今までとは異なった事業領域での新規事業を創出できる人材の育成という課題を認識しております。人材ポートフォリオにおけるスキルセット拡充に向けて、リスキル・リカレントを推進します。
■新規事業、成長分野に向けた研究開発
研究開発投資の強化とM&Aを通じたサステナブルな新製品の開発と新規事業領域への参入にチャレンジし、そのための人材育成・採用を進めております。研究分野の採用では、化学はもとよりその製造プロセスや戦略事業分野ほか幅広い分野の人材を採用しております。
また、国際機関・産官学連携をはじめとする様々なパートナーシップを深化させ、社会インパクトとともに人材ポートフォリオの厚みを増していくために、機動的な人材派遣を行い、派遣先でもより活躍しやすい環境の構築に努めております。
■新時代に向けた経営の革新への対応
AI・IoT活用による製造現場での生産性・安全性向上、AI活用による研究開発のスピードアップ、ならびにDXの推進に必要な人材を育成していきます。
■人材育成方針
従業員一人ひとりの能力向上を支援する教育研修では、特にフォローアップに注力し、研修の内容を確実に習慣として身につけ「能力」とすることを研修の主眼としております。また、これらの教育研修と併せてキャリア面談を実施し、「自己の明確な目標に向かって、自己の成長を感じ、働きがいを持って仕事に取り組める」環境づくりを推進しております。
■Harima Growth Program System(H-GPS)
キャリア開発プログラム(CDP)は、統一された価値観“バリュー”を基軸とし、従業員の10年後のキャリアからバックキャストした計画を実践するという人材育成制度で、従業員の自己成長と上司による部下育成を同時実現する制度です。
人事評価制度(GPS)は、CDPを基に単年ごとの目標に落とし込み、「テーマ達成度(成果評価)」と「バリュー実践度(バリュー評価)」を評価軸とすることを特長としており、単年の積み上げがキャリア形成に繋がっていく仕組みとしております。

■社内環境整備方針
従業員が持てる能力を最大限発揮できる環境づくりとして、福利厚生の充実を図っております。
人的資本に関する詳細な情報については、当社グループのホームページ
リスク管理
取締役会や人事委員会などにおける議論の過程で特定される重要なリスクについて、そのレジリエンスも含めコントロールをしております。
指標と目標
従業員エンゲージメント向上に必要な施策を実施していきます。
当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境に関するリスク
① 各国の経済状況、世界情勢(影響度:3、発生可能性:2)
当社グループの製品需要は販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。従いまして、日本、北米、南米、アジア、欧州等の主要市場における景気後退、政情不安、貿易摩擦などの世界情勢、およびそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの業績予想では、世界のマクロ経済の動向や規制動向、市場動向を調査し、想定に沿った現実的な目標設定を行っております。
② 原材料の調達(影響度:2、発生可能性:2)
当社グループは、ロジン、粗トール油および石油化学製品などの原材料を購入して製品を製造・販売しております。そのため、市況によって原材料購入価格の変動リスクがあります。
また、戦争、暴動、テロ、自然災害、感染症、環境規制、ストライキ、サプライヤーの工場における事故災害やサプライチェーンの混乱などにより原材料の調達が制限された場合は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの業績予想は、原材料価格の動向や契約状況、仕入れ先の原材料提供可能量を踏まえて策定しております。また、原材料調達の制限といったリスクを極小化するために、仕入れ先の分散などサプライチェーンの冗長化などに取り組んでおります。
③ 自然災害や感染症(影響度:3、発生可能性:1)
当社グループが事業展開している地域で大規模な自然災害や想定を超える感染症の拡大により操業を中断する事象が発生した場合、生産能力が著しく低下し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、自然災害を想定して、国内外各地に配置する生産拠点の相互広域バックアップ体制の構築を進めて参りました。また、感染症につきましては各国・各地域の行政の方針に沿った社内ガイドラインを策定し、当社グループ内で周知徹底の上、日々の管理・監視を行っております。
④ 為替レートの変動(影響度:3、発生可能性:3)
当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれております。各国における財務諸表の現地通貨建ての各項目は、連結財務諸表作成のため円換算されております。これらの項目は外貨建数値に変動がない場合でも、円換算後の当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、金融市場の動向を踏まえつつ、為替予約などでリスク回避に努めております。
⑤ 公的規制(影響度:2、発生可能性:2)
当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許認可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管理制度、環境・リサイクル関連の法規制の適用も受けております。これらをはじめとする規制の改正によっては当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、各国法規制を遵守すべく、グローバル行動指針や社内規程を整備の上、社員教育を行い、監査体制を整備しております。また、各国法規制の改正についても適時に対応する体制としております。
(2)事業運営に関するリスク
① 生産活動における事故(影響度:4、発生可能性:1)
当社グループは、生産活動で爆発や有害物質の漏洩などが生じた場合、近隣住民ならびに従業員の安全確保、復元処置を速やかに行いますが、そのためのコストが発生し、生産能力や信頼の低下を招く可能性があります。
当社グループは、生産拠点の重要な設備すべてについて定期点検・保守を行っております。また、排水処理施設には異常値を即時に検知する常時監視システムを備えております。加えて、従事する監督者や従業員の資格取得、研修を実施しております。
② 製造物責任(影響度:3、発生可能性:1)
当社グループは、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、賠償額が保険の補償範囲を超える大規模なクレ―ムや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥により売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、グループ品質方針を定め、品質マネジメントシステムの運用と改善を継続することで、顧客からのご要請と各種法規制に適合する質の高い製品を提供し続ける体制を整備しております。
③ 知的財産(影響度:1、発生可能性:1)
当社グループの事業分野に関する知的財産権については、特許権、商標権を取得しております。当該知的財産権に基づく具体的な製品ノウハウについては、当社グループ内に蓄積しているため、知的財産権が侵害されることにより当社グループの業績に重大な影響を受ける可能性は低いと想定しておりますが、知的財産に関しての紛争が発生した場合、製品販売への影響、訴訟対応とその結果によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、適切な知財管理を行うための組織を設置することにより、リスクの低減に努めております。
④ 情報セキュリティ(影響度:3、発生可能性:2)
当社グループの財務、人事、顧客、戦略、技術など、紙、電子媒体、ネットワーク上にある機密情報が毀損、漏洩した場合、事業活動に支障を来たすことがあります。また、情報インフラの増強で投資・経費が増加することがあります。これらによって、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、電子情報については各種セキュリティ対策および研修による社員のセキュリティレベル向上により、機密情報の毀損・漏洩の防止に努めております。
(3)経理・財務に関するリスク
① 資金調達リスク(影響度:2、発生可能性:1)
当社グループの事業に必要な資金は、株主や金融機関より調達しております。金融市場の不測の混乱により、借入コストの大幅な上昇や、借入そのものが困難になることで、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、資金調達の効率化および安定化を図るため、国内外取引銀行との特定融資枠契約を締結しております。
② 固定資産の減損(影響度:2、発生可能性:2)
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。このため、今後の土地等の時価や事業環境の大幅な変動によって、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績および
キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
その結果、当社グループの当連結会計年度の連結業績は、売上高は923億3千万円となり、前期に比べ21億8千万円(△2.3%)の減収となりました。
利益面では、エネルギー価格高騰などによる製造原価上昇もあり、営業損失は2億1千1百万円(前期は営業利益17億6百万円)となりました。
経常損失は2億7千5百万円(前期は経常利益25億4千1百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は11億6千1百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益8億8千5百万円)となりました。
当社グループのセグメント別経営成績の概況は次のとおりであります。
売上高は214億3千6百万円となり、市場価格の上昇により、前期に比べ21億8千4百万円(11.3%)の増収となりました。営業利益は2億1千1百万円となり、売上高の増加に伴い、前期に比べ1億7千6百万円(502.6%)の増益となりました。
塗料用樹脂は、一般家庭や工場など建築用塗料の需要は前年並みで推移し、一部の原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、売上高は前期に比べ増収となりました。
印刷インキ用樹脂は、商業用印刷などに使用される平版インキ市場の縮小が継続しましたが、新製品の拡販および一部の原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、売上高は前期に比べ増加しました。
合成ゴム用乳化剤は、合成ゴムの生産量減少に伴い販売数量は減少しましたが、原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、売上高は前期に比べ増加しました。
b.製紙用薬品
売上高は246億2千7百万円となり、中国で販売数量は増加したものの、製品価格の低下により、前期に比べ3億6百万円(△1.2%)の減収となりました。営業利益は15億4千8百万円となり、原材料価格などの製造原価増加の影響を受けた一方、収益改善を進めたことにより、前期に比べ1千4百万円(0.9%)の増益となりました。
紙力増強剤は、国内では段ボール原紙の需要が減少しましたが、原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、売上高は前期に比べ増加しました。中国では販売数量は増加しましたが、競合他社との価格競争などにより、売上高は前期に比べ減少しました。その結果、紙力増強剤の売上高は前期並みとなりました。
サイズ剤は、紙・板紙の生産量が減少し、国内、米国ともに販売数量が減少しましたが、米国で原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、売上高は前期並みとなりました。
(単位:百万円)
c.電子材料
売上高は、115億8千5百万円となり、前期に買収したはんだ材料事業の拡大により、前期に比べ23億4千3百万円(25.4%)の増収となりました。営業利益は5億8千2百万円となり、売上高の増加および原材料価格高騰分を販売価格へ転嫁できたことにより、前期に比べ4億1千8百万円(255.3%)の増益となりました。
はんだ付け材料は、前期の事業買収により海外事業が拡大しました。また、自動車生産台数の増加に伴い、売上高は前期に比べ増加しました。
熱交換器用ろう付け材料は、自動車生産台数の増加に伴い、売上高は前期に比べ増加しました。
半導体用機能性樹脂は、当期の下半期は半導体市況が回復基調となり売上高も増加しましたが、上半期が低調であったため、売上高は前期に比べ減少しました。
(単位:百万円)
d.ローター
売上高は311億8千1百万円となり、欧州での需要低迷の影響もあり、前期に比べ76億1千6百万円(△19.6%)の減収となりました。営業損失は16億7千5百万円となり、エネルギー価格の高騰や世界的なインフレの影響で製造原価が上昇したことにより、前期に比べ29億9千万円の減益となりました。
粘接着剤用樹脂分野は、顧客の在庫調整による需要減少は底打ちの傾向が見られたものの、特に欧州での需要が、長期化するウクライナ情勢や景気後退の影響により低調に推移しました。また、路面標示塗料用樹脂や合成ゴム用乳化剤の需要も低迷したことから、売上高は前期に比べ減少しました。
印刷インキ用樹脂分野は、物価上昇に伴う消費財の需要が低調となり、新聞や商業印刷などの出版用インキの出荷が落ちこみました。また、需要減少に伴う競合他社との価格競争などが原因で、欧州、北米、アジアでの販売数量が減少したことから、売上高は前期に比べ減少しました。
(単位:百万円)
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ61億4千4百万円増加し、985億8千3百万円となりました。増減の主な内容は以下のとおりとなりました。
(流動資産)受取手形及び売掛金が4億6千7百万円減少しましたが、現金及び預金が5億5千1百万円増加、原材料及
び貯蔵品が39億3千3百万円増加しました。
(固定資産)機械装置及び運搬具が12億1百万円増加し、投資有価証券が10億2千5百万円増加しました。
(流動負債)支払手形及び買掛金が4億3千2百万円、短期借入金が115億7千6百万円それぞれ増加し、1年内返済予定
の長期借入金が57億7千7百万円減少しました。
(固定負債)退職給付に係る負債が3千万円増加しました。
(純資産) 為替換算調整勘定が17億4千2百万円増加したことにより純資産は増加しましたが、総資産も増加した
ことにより、自己資本比率は37.8%となりました。
(単位:百万円)
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は66億3千3百万円となり、前連結会計年度末と比べ4億1千4百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
a.営業活動によるキャッシュ・フローでは、3億5千3百万円の収入となりました。
これは主として、棚卸資産の増加額が35億8千4百万円、利息の支払が5億7千4百万円あったものの、減価償却費27億2千9百万円、売上債権の減少額が11億1千7百万円、為替差損4億3千7百万円、利息及び配当金の受取額が3億1千8百万円等により資金の収入が支出を上回ったことによるものであります。
b.投資活動によるキャッシュ・フローでは、31億9千7百万円の支出となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出が32億9千6百万円等により、資金の支出が収入を上回ったことによるものであります。
c.財務活動によるキャッシュ・フローでは、28億9千5百万円の収入となりました。
これは主として、長期借入金の返済による支出が15億7千4百万円、配当金の支払額が10億1千7百万円、非支配株主への配当金の支払額が5億1百万円あったものの、短期借入れによる収入49億9千8百万円、長期借入による収入12億円により、資金の収入が支出を上回ったことによるものであります。
③生産、受注および販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当社グループは見込生産を行っており、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は985億8千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ61億4千4百万円増加しております。これは主として、流動資産では、受取手形及び売掛金が4億6千7百万円減少しましたが、現金及び預金が5億5千1百万円、原材料及び貯蔵品が39億3千3百万円増加しました。固定資産では、有形固定資産が13億8千万円増加し、投資有価証券が10億2千5百万円増加したためであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は577億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ60億8千3百万円増加しております。これは主として、流動負債では支払手形及び買掛金が4億3千2百万円増加、短期借入金が115億7千6百万円増加し、1年内返済予定の長期借入金が57億7千7百万円減少したためであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は408億8千1百万円となり、前連結会計年度末に比べ6千万円増加しております。これは主として、その他有価証券評価差額金が4億9千4百万円、為替換算調整勘定が17億4千2百万円増加し、利益剰余金が21億7千9百万円減少したためであります。
(自己資本比率)
自己資本比率は前連結会計年度末の40.1%から37.8%へと2.3ポイントの減少となりました。連結会計年度末の発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は前連結会計年度末の1,533.01円から1,535.78円と2.77円の増加となりました。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は923億3千万円となり、前連結会計年度に比べ21億8千万円の減収となりました。これは主として、海外子会社の欧州の粘接着剤用樹脂、印刷インキ用樹脂の出荷量が減少したことによるものであります。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度の売上原価は744億8百万円となり、エネルギー価格高騰などによる製造原価の上昇により、売上原価率が0.9ポイント増加し80.6%となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費の合計は181億3千3百万円となり、従業員給料及び賞与の増加や旅費交通費の増加等により6億2千9百万円増加しております。売上高比率は前連結会計年度に比べ1.1ポイント増加し19.6%となりました。
この結果、当連結会計年度の営業損失は2億1千1百万円となり、前連結会計年度に比べ19億1千8百万円の減益となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当連結会計年度の営業外収益は10億6千6百万円、営業外費用は11億3千万円で、持分法による投資利益が減少したため、営業外損失は6千3百万円となりました(前連結会計年度の営業外利益は8億3千5百万円)。
この結果、当連結会計年度の経常損失は2億7千5百万円となり前連結会計年度に比べ28億1千7百万円の減益となりました。
(特別利益、特別損失)
当連結会計年度の特別利益は1億9千3百万円となり、投資有価証券売却益として1億9千3百万円計上しております。特別損失は1億6千9百万円となり、訴訟損失引当金繰入額として4千3百万円、減損損失として1億2千5百万円計上しております。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
上記の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は11億6千1百万円となり、前連結会計年度に比べ20億4千7百万円の減益となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、主に営業活動によるキャッシュ・フローの収入が3億5千3百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの支出が31億9千7百万円、財務活動によるキャッシュ・フローの収入が28億9千5百万円あったことにより、前連結会計年度に比べ4億1千4百万円(6.7%)の増加となりました。
当社グループの資金の財源につきましては、短期借入金の残高が299億2千5百万円、長期借入金(一年内返済予定長期借入金を含む)の残高が75億2千2百万円となっております。
また、当社グループの資金の流動性については、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの収入が3億5千3百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を66億3千3百万円保有しております。さらには、金融機関との間にコミットメントライン契約を締結しているので、国内・海外で必要なタイミングで資金調達を行える体制になっております。将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する債権の貸倒による損失見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化しその支払能力が低下した場合、追加計上が必要になる可能性があります。
b.投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係維持のために、特定の顧客および金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、公開会社株式と非公開会社株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、投資に対する減損額を計上しております。公開会社株式への投資の場合、通常決算期末時点で株価が取得価額に対して50%以上下落した場合に減損額を計上しております。また、取得価額に対して30%以上50%未満の範囲で下落した場合には、過去における時価の推移等を勘案し、回復可能性がないと判断した銘柄については、減損額を計上しております。非公開会社株式への投資の場合、その会社の純資産額が、投資額に対して50%程度以上、下回る場合に減損額を計上しております。将来、市況悪化または投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要になる可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額を計上しております。繰延税金資産を評価するにあたっては、将来の課税所得および過去の業績等を基準に検討しております。しかし、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、および計上された繰延税金資産を上回る金額を今後回収できると判断した場合、当該判断を行った各々の期間に繰延税金資産の調整額を費用および収益として計上が必要になる可能性があります。
d.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ、将来キャッシュ・フローの総額が減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
研究開発では、“新規事業、成長分野に向けた研究開発”をキーワードとし、“パインケミカルを軸に、成長分野への資源配分を継続し、新製品開発による新市場参入を目指す”ことを目標として活動しております。また、デジタル技術を活用したものづくりとDX体制づくりを推進し、研究開発の合理化とスピードアップを図っております。
各分野の取り組みとして、パインケミカル分野ではロジンや脂肪酸の組成および純度をコントロールする技術開発や機能性および環境調和性の高いゴム用添加剤、機能性樹脂分野では乳化・分散技術を利用した水系樹脂の研究開発に取り組んでおります。また製紙用薬品分野では海外の紙製食品包装材料規制に対応する製品の拡充、紙素材に撥水や撥油およびヒートシール性を付与できるバリアコート剤の開発に注力しております。これらの分野は、いずれも化学素材のバイオリニューアブル化への流れを意識した製品開発を進めていきます。電子材料分野では、引き続き、成長が期待される半導体産業や自動車産業向けの材料開発に取り組んでおります。さらに先端技術分野として、「情報通信市場」「エネルギー市場」「環境・ヘルスケア市場」に向けた新製品開発にも着手しており、顧客での製品展開ステージに進展している複数のテーマについては現中期計画期間中の製品化を目指しております。
当社グループは、日本以外にも、ベルギー、オランダ、英国、米国、アルゼンチンに研究開発拠点を持っており、これら拠点間の連携を密に取り合うことで、グローバル市場の多様なニーズを迅速かつ的確に捉え、顧客の課題解決につながる研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度の研究開発費は、
(1)パインケミカル
当分野においては、当社の強みである粗トール油精留事業に関連した技術開発に加え、印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤や脂肪酸誘導体等の研究開発を行っております。
松材から得られるバイオマス資源である粗トール油は、温室効果ガスの排出量削減に貢献できるため、世界的にニーズが高まっております。当社グループでは、特性の異なる世界中の粗トール油を余りなく活用できる技術の構築や、粗トール油から得られたロジンや脂肪酸を使った製品におけるトレーサビリティに関わる認証取得を通じ、これらを使用した製品の価値向上に取り組んでおります。
印刷インキ用樹脂は平版インキ市場が縮小しておりますが、販売数量の確保と収益性の改善のため、印刷適性に優れた新製品の開発と市場への投入を進めていきます。粘接着剤用樹脂は、高温使用環境下でも粘着力を維持できる耐熱性を重視した新規の粘着付与材樹脂を開発しており、当社が保有する水系化技術を駆使して同樹脂のエマルション製品の開発も進めております。またゴム用添加剤の分野では、建物を守る制振ゴム用添加剤の拡販に加え、防振ゴム用やタイヤ用の新たな製品開発に取り組んでおります。顧客での評価に進展しているタイヤ用添加剤は、初期の評価段階であるものの、複数顧客で目的とした機能を確認いただいております。いずれも各分野で要求される機能について、その発現機構を踏まえながら新しい添加剤の開発を進めていきます。
当事業における研究開発費の金額は427百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。
(2)機能性樹脂
当分野においては、塗料用樹脂およびフィルム等のコーティング剤に使用される機能性樹脂の研究開発を行っております。
塗料用樹脂は、建築外壁用の環境配慮型弱溶剤系樹脂の開発を進めるとともに、より環境に配慮した水系塗料用樹脂の開発に取り組んでおります。水系塗料用樹脂では高光沢で高い密着性と耐水性を併せ持ち、建築外装だけでなく鉄部等の塗装に適した耐久性を持つ樹脂を開発しました。市場でも高い評価を得ることができ、現在、拡販活動を進めております。
コーティング剤に使用される機能性樹脂は、ディスプレイや電子部品等の伸長市場や高い付加価値が要求される市場に向けた製品開発を進めております。当社の基盤技術である樹脂合成、分散、表面・界面制御技術を応用した光学フィルム向けの光学調整用ハードコート剤を開発しており、他用途への技術展開を検討していきます。また、様々な用途で使用される離型剤の開発にも取り組んでおり、市場への提案、顧客評価へと進めていきます。
当事業における研究開発費の金額は
(3)製紙用薬品
当分野においては、水性樹脂の合成をコア技術とし、段ボール等に使用される紙の強度を高めるポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤、紙の吸水性を制御して水性インクのにじみ防止や耐水性を付与するロジン系サイズ剤、紙の表面に塗ることで印刷適性や撥水性を付与する表面紙力増強剤や表面サイズ剤など、製紙工程で使用される機能性薬剤を軸とする研究開発を行っております。
基盤製品であるPAM系紙力増強剤やロジン系サイズ剤については、国内の紙の内需減少を踏まえ、紙生産量の約50%を占める中国と米国、生産量が増加している東南アジア市場で適用できる製品やアプリケーションの開発を進めております。特に紙製品の世界的な輸出入、脱プラスチックの潮流から需要が高まりつつある食品包装用紙向け薬剤として、米国食品医薬品局(FDA)、ドイツ・BfR、中国・GB9685といった、世界的に主要な三法規制に対応可能な安心で安全な製品(間接食品添加物として海外法規制に対応可能な製品)の拡充に注力しております。また事業拡大に向け、紙の原料となるパルプを生産する際の工程改善薬剤であるピッチコントロール剤や、脱プラスチックの動きの中で紙製素材の利用を促進できるバリアコート剤を開発しました。バリアコート剤に関しては、新たに開発したバイオマスベースの製品も顧客での評価に進展しており、更なる機能向上を検討しております。
海外市場に関しては、当社子会社である中国の杭州杭化哈利瑪化工有限公司や米国のPlasmine Technology,Inc.と連携して、現地市場に合致した製品や技術の開発を進めております。紙生産量世界一位の中国では、昨年、PAM系紙力増強剤の添加率上昇によって頭打ちとなる効果を改善するために開発した助剤の販売が順調に伸長しました。米国では、FDA認証取得製品を軸とした事業展開を進めることで、従来のロジン系サイズ剤に加え、PAM系紙力増強剤の販売も順調に増加しております。環境負荷が少なく、紙製素材の利活用に大きく貢献できる製品の開発と市場への提供によって、サステナブルな社会の構築に貢献していきます。
当事業における研究開発費の金額は
(4)電子材料
当分野においては、成長が期待される自動車産業、半導体産業用途を中心に、はんだ付け材料、ろう付け材料、レジスト用樹脂の研究開発を行っております。
はんだ付け材料は、精緻な電子制御が要求される自動車向け車載電機器の高機能化への対応と併せて、大きなストレスでも壊れない接合耐久性を実現するソルダペーストの開発に注力しております。また、ヘンケル社のはんだ事業買収により取得した技術と当社技術との融合により、新たな製品の開発を進めております。
ろう付け材料は、自動車用アルミニウム熱交換器接合用材料の海外展開推進と、給湯器等への搭載が拡大しているステンレス熱交換器を接合するろう付け材料の開発に注力しております。熱交換器の軽量化や熱交換効率の向上に留まらず、顧客の生産工程における使用エネルギーの削減に繋がる製品の開発にも取り組んでおります。
レジスト用樹脂では、当社の得意とする高分子合成技術や有機合成技術を活用することで、微細・微小な配線や電極形成に対応できる製品の開発に注力しております。生成AI(人工知能)等、成長分野における採用が進んでおり、今後の市場成長に大きく貢献していくことを期待しております。
当事業における研究開発費の金額は
(5)先端技術
当分野においては、今後の成長が期待される「情報通信市場」「エネルギー市場」「環境・ヘルスケア市場」に向けた新製品の開発に取り組んでおります。これまで当社が培ってきた金属ナノ粒子の設計技術、分散剤の設計技術、分散技術、バイオテクノロジーをコアコンピタンスとして、それぞれの市場の発展に貢献できる製品や技術の開発を進めております。
情報通信市場では、積層セラミックコンデンサ(MLCC)用部材や各種チップ部品用電極材料の開発に注力し、進化・発展する市場において、さらなる付加価値の向上に貢献できる製品開発に取り組んでおります。エネルギー市場では、リチウムイオン二次電池(LiB)用部材の開発に注力しており、市場で要求される高エネルギー密度・高出力密度に対応できる製品開発に取り組んでおります。また環境・ヘルスケア市場においては、抗菌材料およびバイオプロセスによる新規ヘルスケア商品の開発に注力しており、環境に配慮した付加価値の高い商品開発に向けた検討を進めております。
当事業における研究開発費の金額は174百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。
(6)ローター
当事業においては、サステナビリティをキーワードとして粘接着剤用樹脂、道路標識塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤およびアロマケミカル等の研究開発を行っております。
粘接着剤用樹脂の分野では、水系粘着付与剤樹脂(商品名:SnowTackTM)の高いグローバルシェアを維持しつつ、得意とするラベル・シール用途だけでなく、産業用テープ向け粘着付与剤樹脂市場への用途拡大をめざしております。また、省エネルギーの観点から水系粘着付与剤樹脂の高濃度化、熱乾燥工程を必要としないUV粘着剤向け粘着付与剤樹脂の開発も進んでおり、量産準備段階に入っております。さらに、自動車部品等に使用される当分野の製品については、顧客から事業継続計画(BCP)の策定を強く求められるようになっており、ハリマ化成の日本国内拠点とローターのグローバル拠点で共通の製品づくりができる体制へ向けた研究開発も推進しております。
印刷インキ用樹脂の分野では、印刷のデジタル化、小ロット化に伴い、紫外線硬化型インキが伸長しております。当社開発品(商品名:ReactolTM UVシリーズ)は、紫外線硬化型インキに優れた顔料分散性、耐乳化性を付与できることから大手印刷インキメーカーで採用となり、欧州、米国、アジアへのグローバル展開を進めております。水系フレキソインキ市場では、持続可能な社会の創造をめざす顧客が掲げる温室効果ガス削減目標を達成するために、包装容器に使用されるインキ、コーティング剤の原料を従来の石油由来から植物由来に置換したいという需要が高まっております。その需要に対応すべく開発したロジンをベースにした水系フレキソインキ用樹脂(商品名:SnowpackTM)は一部の顧客に採用され、商業化の段階に入りました。
アロマケミカルの分野では、テレピン油から派生する香料原料の開発を進めております。香料市場においては、昨今の環境志向の高まりにより、石油由来香料から植物由来香料への原料置換ニーズが高まっております。ローターでは、ニュージーランドで、松材を原料としたパルプ製造工程で副生する粗サルフェートテレピン油を蒸留し得られた成分から香料原料の製造を行っておりますが、今後の需要拡大に対応すべく生産効率向上をめざした製造技術の開発を進めております。
さらに、ローターでは中長期的な視野で研究開発を行う部門を設け、ロジンや脂肪酸等バイオマス原料の機能を追求し、石油化学品を代替できるグリーンな製品の開発を行っております。今後、市場伸長が見込める事業への新規開発投資を推し進め、ハリマ化成の研究開発カンパニーと連携の上、戦略的な技術開発、マーケティングを進めております。
当事業における研究開発費の金額は