当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続ける存在でありたいという経営理念のもと1990年に創業して以降、経営資源を研究開発に集中することで独自技術を磨くとともに、顧客の製品やサービスなどのアプリケーションに関する知識と長年培ってきたLSIの知識を融合させることで、顧客の課題解決と競争力向上に貢献するシステムLSIを企画・開発してまいりました。
また、生産を外部に委託するファブレスメーカーでありながら製品の解析を行う開発解析センターを整備するなど、厳格な品質保証体制を構築することで信頼性の高い製品を供給するとともに、システムLSIの企画・開発から供給まで一貫して顧客サポートができる体制で顧客の課題を解決するソリューションを提供し、顧客と共に成長してまいりました。
今後も当社グループは、経営理念のもと、「システム(機器)のソリューションを提供し、顧客と共に発展する」ことをミッションとして掲げ、新たな価値創造に挑戦し、独創性のある幅広いソリューションを顧客に提供することで、より豊かで安心できる社会の実現に貢献してまいります。そして、持続可能な社会の実現のために事業活動を通じて何ができるか、これらの課題をどう解決して社会に貢献できるかという発想で事業を展開し、地球環境、資源、社会、人権、多様性といった様々な課題に対して、ステークホルダーとの協働により長期的な視点で課題解決に取り組み、当社グループの成長と持続可能な社会をともに実現することを目指してまいります。
また、株主の皆様への適切な利益還元を重要な経営課題のひとつとして位置付け、経営環境の変化に柔軟に対応できる健全な財務体質を維持しながら積極的な利益還元に努めてまいります。

〔価値創造プロセスの循環〕
当社グループは独創性のある技術を活かし、お客様の製品やアプリケーションの問題を解決するLSIの設計、開発、生産を行っております。近年ますます高度化する多種多様な電子機器に使われる半導体製品により、複雑化する機能や仕様に新たな価値を提供していくことで、電子機器やシステムの性能を向上させ、さまざまな課題を解決いたします。当社の経営理念のもと、この価値創造プロセスを循環させ、より豊かで安心な持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(2) 経営戦略(ビジョン)
当社グループが属するエレクトロニクス産業分野においては、あらゆるものがネットワークに繋がる高度なネットワーク社会の実現に向けて、様々な機器に搭載される電子部品の高性能化・多機能化が進み、今後の産業発展を支えるものとしてその重要性が高まってきております。
当社が成長市場として主要なターゲットとする通信分野では、様々なものがインターネットに接続されるようになり、通信速度や通信距離の向上、タイムラグの減少、多数の機器が同時に接続できる多接続の実現等、IoT時代に対応する多岐にわたる通信技術の開発が進展しております。また、産業機器分野では、世界的な自動化ニーズの高まりやデジタルシフトが進む中で、物流、製造オートメーションをはじめ日常のいたるところで自動化の動きが加速し、産業用ロボットや各種の自動化機器の重要性が増しております。
このような状況から、様々な分野の機器に使用される電子部品の高性能化のニーズが高まるにつれ、機器の高精度・多機能・小型・低消費電力などを実現するためのキーデバイスとなるLSI製品の需要拡大は続くものと見込まれております。
このような環境の中、当社グループは、主力事業であるアミューズメント事業の事業基盤を強化しつつ、成長市場である産業機器分野、通信機器分野等をターゲットに経営資源を集中的に投下し、新規事業の育成と長期における事業構造転換を推進してまいります。3年後にはアミューズメント事業、ASIC事業、通信事業の三つの事業を、当社を支える事業の柱として確立いたします。さらに、5年後にはASIC事業と通信事業で売上高の50%以上の構成を目指し、さらに新たな事業をポートフォリオに加え、成長力の強化と収益構造の安定化を図っていく考えです。
また、技術の急速な進歩、地政学リスクの増大、世界情勢の変化など、事業環境の変化に耐え、長期の成長を支えるため、健全な財務体質を維持するとともに、資本効率の向上を図ってまいります。
さらに、サステナビリティを巡る課題への対応を経営戦略の重要課題として位置づけ、企業活動を通じてサステナビリティに関する取り組みを推進し、企業価値のさらなる向上とエレクトロニクス産業の発展に貢献してまいります。
(3) 中期の取り組み
当社グループは、これまで培ってきた独自技術と、他社の独創的な最先端技術やノウハウとを融合させることで、より付加価値の高い製品やサービスの創造に取り組み、顧客の課題を解決するソリューションを提供しております。
今後の中期においては、ビジネスモデルの異なるアミューズメント事業、ASIC事業、通信事業のそれぞれの特徴を活かした3事業による事業ポートフォリオを強化し、収益の増加と安定化を図ります。さらに、次世代を担う新たな事業の育成にも注力し、事業構造改革を継続してまいります。また、国内や海外の大学との最先端技術の共同研究開発を推進し新たな技術開発に取り組むことや、米国で立ち上げたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の活用により、最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業に対しての事業投資や戦略的提携を推進することで、新規市場の開拓や新規製品の開発に取り組んでまいります。これにより、新たな事業の芽を作り、独自性のあるビジネスの創出と事業化につなげていく考えです。

① アミューズメント事業
主力事業であるアミューズメント事業においては、引き続き顧客密着型の提案活動とサポート活動に注力するとともに、次世代ゲーム機のビジネス獲得に向けて万全を期して準備を進めます。また、製品の安定供給のため、パートナー企業や製造委託先等との情報連携や生産体制の強化を図り、サプライチェーン全体を盤石なものとするための取り組みを継続いたします。顧客密着型のビジネスモデルにより、さらなるサービスの向上に努め、引き続き主要なサプライヤーとしての地位を確実なものとし、安定した売上と収益の確保を目指します。

② ASIC事業
ASIC事業については、これまでの主力であったコンシューマ機器分野やOA機器分野等を中心とした事業展開に、成長ターゲットとして産業機器分野に通信インフラ分野を加え、引き続き事業の拡大に取り組みます。今後は、これまで培ってきた上流設計やアナログ技術、特に当社が得意とする通信インターフェース技術、セキュリティ技術や画像処理技術などを活用し、画像関連機器・FA機器・通信インフラ機器向けの製品開発を進め、順次量産化してまいります。国内に加え海外における市場開拓とビジネス獲得にも注力し、中長期における継続的な増収増益を目指します。

③ 通信事業
通信事業においては、中期における本格的な量産開始を目標として事業の立ち上げに取り組んでおります。具体的には、無線通信技術のIEEE標準規格である「Wi-Fi HaLow™」のトップ企業であるオーストラリアのMorse Micro PTY. LTD.(以下、Morse Micro社という)との戦略的提携による事業化を進めております。この通信事業においては、当社がこれまで培ってきた有線通信技術と、約1kmの非常に長い通信距離と低消費電力を実現したMorse Micro社の無線通信技術によって、LSIやモジュールを提供し顧客のニーズに応じた幅広い通信ソリューションによる事業展開を進めております。ターゲットアプリケーションは、ホームネットワーク分野やファクトリーオートメーション分野での建物内外の敷地全体における通信、音声トランシーバ、ドローンとのインターフェース、無線監視カメラネットワークなどです。顧客のアプリケーションに応じたサービス実現に貢献する幅広いソリューションを提供するとともに、国内外の新規顧客開拓に注力して、早期の販売実績の積み上げを目指します。

〔中期におけるサステナビリティに関する取り組み〕
当社グループは、より豊かで安心な社会の継続を実現するために、「社会・環境・人にやさしい会社」として、法令・社会的規範等の遵守、優れた製品の提供による社会貢献、人権の尊重とダイバーシティの推進、取引先・サプライヤーとの公正な取引、ステークホルダーの尊重、地球環境の保全への貢献といった様々な課題に取り組んでまいります。
① 人材育成・ダイバーシティの推進と社内環境の整備
多様な人材が仕事と生活のバランスをとりながら、付加価値生産性を高められるよう、人材の育成・ダイバーシティの推進、社内環境の整備に取り組みます。人材の育成・ダイバーシティにおいては、階層別教育、テーマ別研修等の教育体系の拡充、通年採用制度による多様な人材の採用、新卒採用活動におけるインターンシップ機会の充実などの施策を推進します。また、社内環境の整備においては、完全フレックスタイム制度、在宅勤務制度、育児休業制度、育児時短勤務など多様な働き方に対応した制度の充実と利用促進、従業員の健康維持を目的としたストレスチェックや女性の健康に関する勉強会の実施や有給休暇の取得促進等、全ての社員にとって働きやすく業務効率化につながる環境づくりに取り組みます。
② 地球環境の保全とサプライチェーンにおける課題への取り組み
地球環境保全のため、地球温暖化対策や環境負荷の低減に配慮した事業活動を行います。製品の研究開発においては、高速処理化、小型化、低消費電力化といったLSIの機能や品質の向上に取り組み、環境に配慮した製品づくりを推進します。当社は工場を所有しないため排出する二酸化炭素などは微量でありますが、自社製品の生産委託先企業に対しては、有害化学物質の使用に関する指針の順守、二酸化炭素や有害物質の排出基準の順守の徹底を要請するなど、持続可能なサプライチェーンの構築に継続して取り組みます。また、当社グループにおいてもオフィスのエネルギー消費や廃棄物の削減などの活動にも取り組みます。
③ エレクトロニクス分野における技術者の育成
日本の国力の基礎となる若者の支援として、国内の大学への寄付や共同研究・委託研究といった交流を通して、日本のエレクトロニクス分野で次世代を担う優秀な人材を育成するための支援に取り組むとともに、研究活動を通じて先端技術の創出を促進します。また、将来の優秀な女性技術者の育成に向けた取り組みとして女子大学への支援を行う他、2024年度より「株式会社メガチップス理系女子学生就学支援奨学金」として、返済不要の給付型奨学金による経済的支援を開始し、エレクトロニクス分野における技術者の多様化を推進します。さらに、当社創業者が率いる財団において運営している、学業優秀な中学・高校生を対象とした給付型の奨学金制度による支援など、将来を担う人材の育成にも取り組み、幅広い年齢層への支援を継続的に実施いたします。
(4) 経営指標
〔資本コストや株価を意識した経営について〕
当社グループは、高い資本効率と健全な財務体質の両立を目指しており、市場環境・競争環境・成長機会などに応じて適切な経営資源の配分を行ってまいります。
資本効率については、自社の資本コストを把握するとともに、資本収益性を評価する指標であるROEと市場評価に関する指標であるPBRを重要な指標として捉え、中長期の企業価値向上を図るべく資本コストを意識した経営に取り組んでまいります。
当社グループの自己資本利益率(ROE)は2024年3月期では5.1%となっており、当社が認識している資本コストを若干下回る水準となっております。当社としては、自社が把握する資本コストを上回るROEの水準を8%程度以上として定め、中長期においてこの水準を超えるROEを達成すべく、引き続き資本効率の向上と中長期の経営戦略を着実に実行し収益性の向上を図っていく考えです。また、資本効率の向上を図ることと投資家との対話を通じ当社の成長戦略について十分な理解を得ていくことで、株価やPBR等の市場評価を高めていくことが必要と考えております。
財務体質については、事業環境の変化に迅速に対応し、厳しい環境下においても経営の安定を維持し市場環境の悪化等のリスクに備えるため、自己資本の充実を図ってまいります。
また、企業価値・株主価値の一層の向上のため、当社グループが中長期に推進する各取り組みの方向性の概要は次のとおりです。
① 成長戦略
上記「(3) 中期の取り組み」に沿った施策を進めてまいります。中長期の持続的成長に向けて、アミューズメント事業とASIC事業の事業基盤を強化すること、通信事業などの新規事業の立ち上げを進めることで、収益性の向上と事業ポートフォリオの強化を図ってまいります。
② 財務戦略
事業構造転換や新規事業育成による中長期の成長を支えるため、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に適応できるよう健全な財務体質を維持します。また、下記方針を基本として積極的かつ安定的な利益還元を実施し、あわせて資本の効率化を図ってまいります。
・剰余金の配当については、中期的な経営状況の見通し等を考慮の上、親会社株主に帰属する当期純利益(特殊要因を除くこともあります)の30%以上に相当する額を配当金総額として決定いたします。
・資本効率向上のため、市場の状況、株価動向、財務状況等を勘案し、機動的に自己株式を取得いたします。
③ 人材戦略
人権と文化が尊重され多様な人材が活躍できる社会の実現に向けて、人材開発を当社の重要課題のひとつとして捉えております。従業員の活躍の場と成長の機会を提供するための施策やダイバーシティを推進、創業者設立の財団において給付型の奨学金を支給する他、エレクトロニクス業界の未来を担う若者に向けた様々な人材育成支援に取り組んでまいります。
④ IR活動の充実
機関投資家との個別のIRミーティング等のコミュニケーション機会を充実し、経営戦略等について建設的な対話を推進し理解を得ていくとともに、対話から得られた意見や要望を社内で共有し、今後の取り組み検討にも活用いたします。また、当社のウェブサイト等において、非財務情報についても積極的に発信し、投資家との対話の材料となる情報の提供に努めてまいります。
持続可能な社会の実現を目指し、社会全体でその取り組みが強化されておりますが、当社グループにおいてもサステナビリティを巡る課題への対応を経営戦略の重要課題として位置づけ、企業活動や事業を通じてサステナビリティに関する取り組みを推進し、ステークホルダーとの協働により企業価値の向上を目指してまいります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに対する考え方
メガチップスグループは、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続ける存在でありたいという経営理念のもと、企業活動や事業を通じて社会課題の解決に取り組み、「社会・環境・人にやさしい会社」として、より豊かで安心な持続可能な社会の実現に貢献します。

① 法令・社会的規範等の遵守
あらゆる法令や国際社会のルールを遵守し、会社の規程・標準に基づき、社会的規範にもとることのない公正で健全な企業活動を行います。社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力には断固とした姿勢で対応し、企業としての社会的責任を果たします。また、リスクマネジメントに継続して取り組み、様々なリスクの予防・低減に努めます。
② 優れた製品の提供を通じた社会貢献
市場や顧客のニーズを迅速に取り込み、独自の技術力をベースにシステム(機器)のソリューションを提供することを通じて顧客の信頼に応え、安心で快適な社会の実現に貢献します。技術と知恵の融合により、製品の企画力や開発力の向上に最大限努め、新たな価値創造に挑戦します。
③ 働きやすい職場環境づくり(ダイバーシティの推進)
職場の安全と全ての社員の健康を守るとともに、人権・プライバシーを尊重し、多様な人材が能力を発揮することのできる職場環境の整備と多様な働き方を推進します。また、人格や個性を尊重しつつ、社員一人一人が主体性と創造力を発揮できる企業風土を醸成し、専門性と創造性に富む個性豊かな人材を育成します。
④ 取引先・サプライヤーとの公正な取引の推進
サプライヤーをはじめとする取引先やパートナー企業との信頼関係を高め、各国の法令の遵守と国際的なルール・慣行に配慮し、自由な競争のもと公正な取引を行うとともに、取引先との間における強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止を徹底します。また、サプライチェーンにおける人権侵害をはじめとする様々な課題の把握に努め、持続可能なサプライチェーンの構築を推進します。
⑤ ステークホルダーの尊重
全てのステークホルダーの立場を尊重するとともに、積極的な情報開示とコミュニケーションにより信頼関係を築き、ステークホルダーとの協働により社会課題の解決に取り組みます。また、地域社会の伝統・文化を尊重して人々との信頼関係を高め、次世代を担う技術者の育成支援等を通じて、地域社会での発展に貢献します。
⑥ 地球環境の保全、豊かな社会づくりへの貢献
より安全な未来社会を実現するために環境保全を推進することが必要不可欠であるとの考えのもと、「環境と経営の共生」を実現することで、持続可能な地球環境の実現に貢献します。環境に配慮した製品づくり、製造における資源利用の効率化や化学物質の削減、輸送時のエネルギー削減等、事業活動に伴う環境負荷の削減に継続的に取り組みます。
⑦ 人権の尊重
当社グループは社会課題のひとつである人権保護についてその責任を認識し、全ての社員に尊厳をもって接し、あらゆる企業活動において人権を尊重するとともに、不当な差別、児童労働や強制労働を認めないことを表明します。
(2) ガバナンス及びリスク管理
当社はサステナビリティに対する取り組みの検討とその対応を、関係部門の代表者が参加するチームを中心として部門間で連携して実施しており、コーポレート・ガバナンス体制において運用しております。コーポレート・ガバナンス体制については「
また、コーポレート・ガバナンス体制において、サステナビリティに関するリスクをはじめとする経営に影響を与える可能性のあるリスク情報を認識し、その評価を行うとともに、重要なリスクへの対処を検討し、取締役会に報告する体制でリスクマネジメントを行っております。
(3) 気候変動とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に対する取り組み
気候変動は、人類の生活全体に影響を与えるだけでなく、安全保障、地政学的環境、自然資源に対して脅威ともなる社会全体で取り組むべき重要な課題です。当社は気候変動によってもたらされる問題を重要な経営課題のひとつとして認識し、持続可能な社会の構築に貢献するため「環境と経営の共生」の実現に向けた取り組みを推進しております。今後の気候変動に関連する事象をリスクと捉え対応すると同時に、新たな機会を見いだし、経営戦略に活かしてまいります。
① 戦略(シナリオ分析)
当社では気候変動によるインパクトを踏まえ、世界平均気温の上昇を「2℃」に抑制する社会を目指す上で、2030年度における気温上昇のシナリオを想定したリスクと機会を洗い出し、事業への影響度の分析と対応策の検討を行いました。引き続き、シナリオ分析の精度を高め、目標値の設定やその達成に向けた各取り組みの推進に役立ててまいります。
② リスクの認識と対応
[気候変動に対応した低炭素経済への移行リスクと財務への影響]
当社は自社で製造設備を保有せず生産を外部に委託する、製品の設計・開発に特化したファブレスメーカーであるため建物や設備などの長期資産への気候変動の影響は軽微です。
また、低炭素経済に対応した製品開発のための研究開発費の増加に備え、自己資本の充実を図っており、必要資金の需要の増加にも十分対応できる強固な財務基盤を確立しております。今後も引き続き、オフィス等におけるエネルギー使用量のデータを収集し管理するとともに、省エネルギー・省資源に配慮した事業活動を行います。
当社の国内の事業所におけるエネルギー使用量については、次のとおりです。
[低炭素経済への移行を想定した財務影響のあるリスク項目]
環境関連法規制の強化による人件費の上昇
低炭素経済に対応した顧客製品向けのLSI製品の開発費の増加
消費者行動の変化による顧客製品の需要の減少
生産委託先におけるエネルギーコストの上昇、原材料費の増加
LSI製品の輸送コストの上昇
[異常気象による物理的リスクと財務への影響]
異常気象による物理的リスクの財務影響のある項目としては、生産委託先における製造能力の低下や、気温の上昇による空調管理のためのエネルギーコストの上昇を想定しております。
[財務影響のあるリスク項目についての対応]
製造委託先と共同での温室効果ガスの排出量の把握と削減
従来の開発プロセスの見直しによる開発費の削減
低炭素経済に対応した低消費電力型LSI製品の開発
新たな事業分野のビジネス育成の強化
サプライチェーンのバックアップ体制の強化
製造委託先との連携強化による情報収集体制の強化及びBCP(事業継続計画)体制の再構築
製造委託先企業の範囲拡充、複数拠点化の推進
③ 機会の認識と取り組み
[気候変動に関する機会]
気候変動の緩和や気候変動に対する取り組みが進んでいく中でもたらされる機会については、LSI製品の需要増大による収益機会の確保、省エネ対応製品を通じた社会貢献及び認知度の向上、柔軟な原材料調達による新たな製品開発への積極的投資などを想定しております。
具体的には、製品の販売機会として、低消費電力のLSI製品、顧客製品の省エネ化・小型化に対応するLSI製品の市場への供給量の増加、製品開発面では、顧客ニーズに応える先進的な技術開発や研究開発を推進する積極的な開発投資の必要性が高まります。また、原材料の調達条件が緩和されると新しい素材を使ったLSI製品の開発や、既存製品の生産の安定化・効率化によるコストの減少が可能となります。
[機会に対する取り組み]
気候変動に関する機会をビジネスにつなげていくために、低炭素社会に対応した、低消費電力LSI製品や顧客製品の省エネ・小型化に貢献するLSI製品を市場に供給し、顧客のニーズにあった提案型営業を推進いたします。
また、新しい原材料を使った先進的製品の開発への投資や、市場の拡大が見込まれる事業分野へ経営資源を集中してビジネス拡大を図るとともに、新規事業創出のため、国内外における企業・大学との連携を推進し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドによる米国でのスタートアップ企業との提携や事業投資を行っていきます。
(4) 環境配慮型製品に対する取り組み
当社は、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続けるという経営理念に基づき、独自の技術力で低消費電力化、小型化、高速処理化といったLSIの機能・性能及び品質の向上に取り組んでおります。これからも省エネルギー・省資源化を実現するソリューションを提供することで、お客様とともに発展・成長し、地球環境の保全に貢献してまいります。
① 環境配慮、高循環型製品づくり
環境影響を考慮し、製品の低消費電力化・小型化などに取り組むことで、製品の直接材料・間接材料だけでなく、製造・輸送・利用の際に使用するエネルギーや廃棄物の排出量の削減を実現します。
② 低消費電力のASIC設計
環境への配慮が重要視される現在はASIC開発における低消費電力の追求が欠かせません。当社はファブレスの強みを活かし、世界中のウエハ製造ベンダーが提供する「低消費電力向け製造プロセス」と、IPベンダーが提供する「低消費電力向け特殊ライブラリ」を意欲的に採用することでASICの大幅な消費電力削減を達成しております。直近の具体的な事例では、CMOSトランジスタの動作電圧をダイナミックにコントロールする技術を適用し、それらを採用しなかった場合に比べて50%を超える消費電力の削減を達成しております。これらのASICは産業機器、通信機器、IoTデバイスなどの幅広いアプリケーションにおいて使用され、環境に配慮しつつ人々の暮らしをサポートすることに貢献いたします。
(5) 人的資本に関する方針と取り組み
① 人的資本政策に関する基本方針
人的資本政策において、当社は自社の価値観(経営理念、経営原則等)に立脚し、社員と会社が共に成長を続けることで企業価値を拡大させる事を目指しております。具体的にはそれぞれに対して次の政策を実施しております。
まず一つ目は社員向けの政策です。ファブレスメーカーである当社において最大の財産は人材であり、すぐれた人材の育成や確保こそ企業の発展の根源と考えております。このため、人材育成や社内環境整備を通じ、社員のモチベーションを向上させ、国籍、性別、年齢等に関係なく個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを目指します。二つ目として、これからの日本産業の競争力となる学生に向けた教育支援や、国内外の大学への研究支援と共同開発を行う事により、社会課題の解決に寄与する新たなイノベーション創出を支援しております。これにより社会課題の解決と人材育成に貢献してまいります。
以上のように、社員個々の付加価値向上、それによる当社の企業価値向上に加え、学生・産業界への取り組みを包括的にとらえた人材資本政策を通して、より良い社会の実現に貢献いたします。
[人的資本政策に関する全体像]

[人材育成方針]
・当社の価値観(経営理念、経営原則)に沿った考えと行動ができる人材を育てます。
・仕事に誇りとやり甲斐を持って働き、持てる能力を最大限に発揮し、自己成長できる人材を育てます。
・自ら学び、考え、創造性を発揮して挑戦し続ける人材を育てます。
[社内環境整備方針]
・国籍、性別、年齢等に関係なく社員一人ひとりが意欲をもって活躍し、能力を十分に発揮できる仕組みを整備します。
・女性のキャリア形成やリーダーシップの発揮を促進するとともに、全ての社員が仕事と生活を両立できる就業環境を整備します。
・社員の心身の健康づくりと男女問わず子育て中の社員も安心して働き能力を発揮できる快適な職場環境を整備します。
② 社内への取り組み
[人材育成]
人材育成方針に基づき、人材の価値を最大限引き出すために、人的資本への投資、教育施策、採用活動を積極的に実施していきます。取り組みの概要は次のとおりです。
・階層別教育
社員の階層(役職、年齢、勤務年数等)ごとに、必要なスキルを習得するプログラムを行っています。
・女性リーダー育成
女性社員のキャリア形成の促進を目的に、リーダーとして必要な思考力・スキルを学ぶ女性向けプログラムを行っています。
・語学支援
語学力向上のため、社員が選んだ語学スクール・通信教育の費用を補助します。また定期的なTOEIC受験支援を行っています。
・Eラーニング
組織上の役割・職位に応じた教育から、企業人として身につけるべき教育まで、幅広い研修コンテンツを用意したオンライン学習管理システムを受講することができます。
・社会人博士、MBA取得支援制度
働きながら博士号・MBA取得できる環境をサポートしています。
・キャリア開発休職制度
大学・専門学校等就学や資格取得できる休職制度を導入しています。なお学習するテーマの制限はなく、自身が実現したいキャリアの開発に向けて、一人ひとりの自律的な学びを支援しています。
・グローバル人材の早期育成
本人のやる気や適性を考慮し、海外大学との共同研究、海外子会社への駐在、海外大学への留学を経験させ、グローバルに通用する人材の早期育成に取り組んでいます。
・インターンシップの充実
当社は学生に幅広い分野のインターンシップを開催しており、現場において就業体験を積み、また高度な知識・技術に触れる機会を設けています。学生にとって大学で得られるものとは違い、社会人として必要な能力向上に自主的に取り組む機会を提供することにより、学生が実践的な社会人として成長し、当社にとっても優秀な人材の確保に繋がっています。
[社内環境整備]
社内環境整備方針に基づき、多様な個性を持つ社員一人ひとりにとって魅力的な職場環境及び働き方や制度を提供することにより、人材の定着と優秀な人材の確保に注力いたします。取り組みの概要は次のとおりです。
・ダイバーシティ
当社は、性別・属性に関わらず全社員が仕事と生活を両立させ、その能力を発揮できる就業環境の整備を行います。女性社員にはキャリア形成やリーダーシップの発揮を促進し、女性が活躍できる仕組みを作るとともに、男性社員には育児休業を取得しやすい環境を整えています。具体的には育児介護等と仕事の両立支援として、育児・介護休暇等に関する制度を定め推進しております。なお、育休復帰3年後定着率は2022年度に引き続き2023年度も100%を維持しております。
・働き方改革(多様な働き方)
時間、場所、雇用形態にとらわれない柔軟な働き方を選択することができるように、フルフレックスタイム制、時短勤務制度、フレックスワーク制度、在宅勤務制度、副業制度といった柔軟な働き方を可能とする各種制度を導入しています。なお、兼業及び副業制度の2023年度の利用人数は6名となっており、前年度より3名増えております。
・健康経営の促進
社員の健康維持・増進活動を目的とし、疾病欠勤休暇制度の拡充、フレックスホリデー制度等、有給休暇の取得促進のほか、産業医との連携によるサポート体制の強化、ストレスチェックや女性の健康に関する勉強会等を実施します。なお、2023年度の実績としては、ストレスチェックにおける高ストレス者率は15.6%となっており、前年度に比べ2.1ポイント下がっております。また、疾病休職者(フィジカル・メンタル含む)の割合は1.5%となっており前年度比0.1ポイント減少しております。
・ライフの充実
ライフイベントと仕事を調和させ、力を発揮できる環境を整えることで、ワーク・ライフ・バランスの実現を支援します。男性社員の育児休業取得制度、育児時短勤務の子供の対象年齢の引き上げ、配偶者転勤休職、ファミリーサポート休暇等、ライフイベントに合わせた休暇・休職制度の充実や利用を促進します。
・社員と株主との価値共有を促進するための制度の導入
当社は、当社の企業価値の持続的な向上を目的としたインセンティブとして自己株式を社員に付与することにより、社員と株主との一層の価値共有を進めるとともに、社員に株主としての視点を持たせ会社の成長に向けてモチベーションを高めるため、持株会を通じて譲渡制限付株式を社員に付与する制度の導入を2024年5月に決定いたしました。本制度は、当社から特別奨励金として金銭債権を社員に支給し、持株会が社員から拠出を受けた金銭債権を当社に出資することで、譲渡制限付株式を社員に付与する制度で、社員の資産形成を支援する制度となります。
また、当社は、社員の中長期的な資産形成と株価の上昇による経営への参加意識の向上を目的に持株会制度を設けております。この制度においては、社員の拠出金に対して導入企業の平均を上回る15%の奨励金を当社が支給し、自己株式の取得を支援しております。
なお、当社のダイバーシティや社内環境整備に関する実績及び目標は次のとおりです。
※ 当社の人材育成、社内環境整備に関する具体的な取り組み内容は、当社ウェブサイトにて紹介しておりますのでご参照ください。
③ 社会への取り組み
・学生向け人材育成
理系の女性が少ないと言われる中で、日本国内の大学・大学院の理系学部・学科・専攻へ進学され安心して学業に専念できるよう、奨学金による支援を行っております。
また、当社創業者が設立した公益財団法人進藤記念財団において、ひとり親家庭の環境にある生徒で学業優秀かつ品行方正でありながら厳しい経済状況である中高生に対し、給付型奨学金支給による支援を行っております。
・産業界への貢献
国内外大学への研究支援や共同開発を推進しております。研究費用の支援を通じて研究活動を充実させ新たなイノベーションの実現に挑戦しております。また、共同研究を通じて研究開発分野における人材の育成にも貢献します。
※ 当社の社会貢献に関する具体的な取り組み内容は、当社ウェブサイトにて紹介しておりますのでご参照ください。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループはLSIの設計、開発から生産までのトータルソリューションを提供しておりますが、自社で生産設備は保有せず、生産は全て外部に委託するファブレスの事業形態をとっており、台湾を中心とする国内外の大手ファウンドリーとのネットワークを構築し、顧客のニーズにあわせて製品の製造を委託しております。
したがって、半導体市況の需給バランスにより調達数量と価格が影響を受け、当社グループの望む納期、数量及び価格で製品が調達できない可能性があります。
これに対処するために、既存ファウンドリーとの連携をこれまで以上に強固なものとし、製品を優先的に調達できる環境整備に取り組んでおります。これに加え、新たなファウンドリーを検討し調達先を増やすことで、リスクの最小化に努めております。
当社グループは、LSI製品として、アミューズメント分野向けに使用されるゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)、ゲーム機本体・周辺機器向けのLSIの他、デジタルカメラ向け等画像処理用LSI、事務機器向けLSIを主に販売しておりますが、ゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)を主に供給している、任天堂株式会社への売上高の割合が高くなっております。
したがって、これらのLSI製品が使用されるゲーム機器やゲームソフトウェアの販売動向、また、同社におけるLSIの採用状況などにより、当社グループの業績が変動する可能性があります。
当該リスクは完全に排除できる性格のものではありませんが、当社は任天堂株式会社と良好かつ緊密な関係を構築し、最適なソリューションの提供や安定した製品の供給等により顧客満足の獲得に努め、リスクの最小化に努めております。また、今後の成長が見込める産業機器分野、通信分野、エネルギー制御分野等における新たな事業の育成にも注力し、中長期において事業ポートフォリオの適正化を進めていく考えです。
なお、任天堂株式会社への売上高については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (4) 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおりであります。
当社グループは、製品の生産を外部に委託するファブレスメーカーという事業形態を採用し、特徴のある技術力を核に顧客のニーズに最適な製品を開発しております。当社グループの主力取引先である任天堂株式会社へ供給するゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)及びゲーム機本体・周辺機器向けのLSIなどの製品の生産については、主にMacronix International Co.,Ltd.(以下「マクロニクス社」)へ委託しており、マクロニクス社への外注割合が高くなっております。
したがって、何らかの理由によりマクロニクス社で生産ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
現在のところ、当該リスクの顕在化の兆候はございません。なお、当社は任天堂株式会社及びマクロニクス社との間で製造委託契約を締結しており、両社と良好かつ緊密な関係を構築し、安定的な製品の供給に努めております。
また、生産委託しているファウンドリーは台湾が中心となっているため、地政学的なリスク等があることも認識しております。これらに対処するために、ファウンドリーを国内外に広く求め、信頼関係を築き不測の事態に備えてまいります。
当社グループは、独自のアナログ・デジタル技術を駆使し、技術開発力をベースとして事業を展開しており、その成長は人材に大きく依存しております。そのため、優れた技術者を獲得して維持することや、必要とする人材をどのように処遇し、どのように育成していくかは、人事政策上の重要課題と認識しております。
したがって、将来において、当社グループの国内外の優秀な技術者の維持や、人材の新規採用・育成・グローバル化が計画どおりにできなかった場合、当社グループの競争力が弱まり、企業価値そのものに影響を与える可能性があります。
これらに対処するため、当社グループは人事処遇体系を整備し、中長期の新たな事業育成等のための人材投資について、育成計画に基づいて人事政策を実行いたします。また、多様な環境で能力を発揮し、組織の成果を最大化出来る人材を育成できるよう、人材育成に積極的に取り組んでおります。なお、詳細につきましては、2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (5) 人的資本に関する方針と取り組みをご参照ください。
当社グループは、他社との事業連携、情報収集等を目的とした戦略的提携により当社の企業価値向上に資すると判断した場合に、提携先企業並びに最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業への投資を行っております。当連結会計年度末のこれらの投資有価証券の残高は123億5千5百万円となっており、連結総資産の9.8%を占めております。
このような事業の成長を加速するための投資を含めた戦略的提携におきましては、事業上の補完関係の構築や業績の拡大等において、当社の予測どおりの効果が得られない可能性があります。また、投資株式の時価の下落や実質価額の著しい低下による評価損の発生により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
なお、これら戦略的投資に関しては、取締役及び社外有識者を中心とした会議体において、投資先企業ごとに、事業連携等による当社グループの付加価値向上の状況並びに将来の収益力などを総合的に勘案し、投資効果やリスクの検証を行ったうえで戦略的投資の可否を決定し、取締役会の承認を得て実施しております。
② 為替変動について
当社グループと顧客や生産委託先などのパートナーとの取引においては、米ドルや台湾ドルを主とする外貨建取引が一定割合含まれております。また、海外子会社の財務諸表は連結財務諸表作成のために円換算されていることから、外国為替相場、殊に日本円・米ドル間の為替相場の変動により、当社グループの業績が変動する可能性があります。外国為替相場が円高方向に進行した場合、概して損失方向に影響し、その変動幅が大きいほど当該リスクの顕在化の可能性が高まります。
なお、為替リスクの低減のため、必要に応じて為替予約取引を利用しております。
当社グループは、研究開発を主体としたファブレスメーカーであり、知的財産権の保護は事業展開上の重要課題と認識しております。
しかしながら、当社グループが出願する特許や商標などがすべて登録されるとは限らないこと、また、公開前の他社技術など、他社権利を調査しても把握できないものもあることから、他社の知的財産権を侵害し、訴えを提起された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの独創的な技術が、特定の国・地域においては、法整備等の理由により充分な保護を受けることができない可能性があります。このような状況下で、他社が当社グループの知的財産を無断で使用し、類似の製品を市場に販売した場合、これを効果的に阻止することができない可能性があります。
なお、当社グループは、知的財産に係わる社内体制及び特許事務所との連携を強化し、当社グループが提供する製品・サービスを保護するための特許や商標などの出願・登録を積極的に行うと同時に、他社権利の調査を徹底することにより他社権利の侵害を防止するなど、リスクの最小化に努めております。
当社グループは、製品開発や知的財産などの機密情報の他、事業活動を通じて顧客やサプライヤー等の機密情報や従業員等の個人情報等を保有しております。このため、昨今のセキュリティリスクの高まりの中、情報の適切な管理と情報セキュリティ対策を十分に行うことが、事業を展開する上での重要課題となっております。
これらの情報の取り扱いにつきましては、社内に情報システムを整備し、情報の適切な管理とセキュリティ対策を行っておりますが、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には多額のコストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、社内の情報システムのセキュリティ強化や従業員に対するIT教育等による意識向上など、システムと運用の両面において情報セキュリティ対策に努めております。また、情報セキュリティの確保においては、政府や他社との連携により早期の情報共有を図り、万全を期すなど、リスクの最小化に努めております。
当社グループが事業を展開する国内外において、大規模な地震をはじめとする自然災害や火災、未知の感染症の流行、テロ行為や社会騒動、その他の事故・事件等が発生した場合、当社グループの事業拠点、生産を委託するファウンドリーやメーカー、あるいは顧客自身に対して大きな被害が発生する可能性があります。また、これらの影響によって当社グループの事業活動の縮小等を余儀なくされた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このような偶発的な災害等におけるリスクを全て回避することは極めて困難でありますが、当社においては、リスクの予防回避及び発災時の人命の安全、並びに被害の抑制・軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に危機管理マニュアルを策定し、危機管理についての必要事項と対応方法を定めるとともに、リスクの軽減に向けた対応を可能な範囲において実施しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における電子機器業界においては、産業用電子機器及び民生用電子機器の需要が堅調に推移し、電子部品・デバイスの需要も順調に推移した結果、電子機器業界全体の需要は前年同期と比べ増加となりました。
ASIC事業においては、顧客のアプリケーションに関する深い理解と独自のコア技術を基に、顧客の課題解決のために、独創的なアルゴリズム・アーキテクチャを搭載したシステムLSIを開発し、提供しております。主力のアミューズメント・デジタルカメラ・事務機器分野に加え、産業機器分野においては国内外の有力顧客に向け、顧客の機器・サービスのアプリケーションに最適なソリューションを提供し、事業基盤の強化を図っております。
ASSP事業においては、急速な情報通信技術の革新が進展する中で更なる成長を図るため、今後の成長が見込める通信分野・産業機器分野等をターゲットとした新規LSI事業の立ち上げに経営資源を集中しております。アナログ・デジタル回路の開発・設計技術の競争力強化と、国内・海外企業との戦略的な協業に取り組み、差別化できる付加価値の高いソリューションを開発・提供することで、将来の収益の重要な柱となる新たな事業の育成を図っております。
当連結会計年度の経営成績につきましては、ASIC事業において需要が堅調に推移した一方で、アミューズメント事業において需要が高水準ながらも前年同期比では減少となり、売上高は579億4千2百万円(前年同期比18.1%減)、営業利益は54億8千3百万円(同9.1%減)となりました。
経常利益は、受取利息が2億6千1百万円、為替差益が2億5千2百万円発生した一方で、持分法適用の関連会社であったSiTime Corporation(2024年3月31日付で持分法の適用除外)の持分法による投資損失(のれん等償却を含む)が29億1千4百万円発生したこと等により、34億5千6百万円(同52.7%減)となりました。
また、関連会社であったSiTime Corporationの株式を一部売却したこと等により、特別利益として関係会社株式売却益が55億2千4百万円、持分変動利益が10億5千3百万円それぞれ発生した一方で、特別損失として投資有価証券評価損が8億8千7百万円、関係会社株式評価損が4億5千4百万円それぞれ発生したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は44億8千6百万円(同36.7%減)となりました。なお、前連結会計年度においては、SiTime Corporation株式を一部売却したことにより、関係会社株式売却益が34億6千7百万円計上されております。
当社グループは単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
当連結会計年度末における総資産は1,266億1千万円(前連結会計年度末比375億8千9百万円の増加)となりました。主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、現金及び預金が87億9千4百万円、投資有価証券が614億9百万円それぞれ増加した一方で、有価証券が14億5千1百万円、未収入金が88億2千万円、関係会社株式が211億4千9百万円、繰延税金資産が9億9千2百万円それぞれ減少しております。なお、上記のうち、SiTime Corporationの持分法適用の関連会社からの除外及び時価評価に伴うものは、投資有価証券の増加599億9千2百万円、関係会社株式の減少182億2千1百万円であります。
負債合計は239億3千7百万円(同94億5千1百万円の増加)となりました。主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、SiTime Corporationの時価評価による増加が153億1千3百万円あったことにより繰延税金負債は144億5千4百万円の増加となった一方で、支払手形及び買掛金が48億3千6百万円減少しております。
純資産は1,026億7千3百万円(同281億3千8百万円の増加)となりました。主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、利益剰余金は、親会社株主に帰属する当期純利益が44億8千6百万円となった一方で、剰余金の配当が17億2千7百万円、自己株式の消却に伴う資本剰余金からの振替が26億1千4百万円、SiTime Corporationの持分法適用の関連会社からの除外による減少が43億1千8百万円それぞれあったことにより41億5千4百万円の減少となりました。自己株式は、取得が39億3千4百万円、消却が26億1千4百万円それぞれあったこと等により12億4千5百万円の増加(マイナス表示)となりました。また、SiTime Corporationの時価評価に伴う増加が347億6千3百万円あったこと等によりその他有価証券評価差額金は355億8百万円の増加となった一方で、SiTime Corporationの持分法適用の関連会社からの除外による減少が39億8千6百万円あったこと等により為替換算調整勘定は22億3千4百万円の減少となりました。
以上の結果、自己資本は1,024億8百万円となり、自己資本比率は80.9%(同2.8ポイントの下落)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、251億6千万円となり、前連結会計年度に比べ44億4千2百万円の増加(前年同期は50億5千2百万円の減少)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、81億6千万円の資金の獲得(前年同期は12億4千1百万円の資金の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が82億2千3百万円となり、持分法による投資損失が29億1千4百万円、投資有価証券評価損が8億8千7百万円、関係会社株式評価損が4億5千4百万円それぞれ発生したこと、その他の資産が95億8千5百万円の減少となった一方で、関係会社株式売却益が55億2千4百万円発生したこと、仕入債務が48億3千6百万円の減少となったこと、法人税等の支払額が31億6千1百万円あったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、2億1千4百万円の資金の獲得(前年同期は55億2千万円の資金の使用)となりました。これは主に、関係会社株式の売却による収入が70億3千1百万円あった一方で、定期預金の預入による支出が28億9千9百万円、有形固定資産の取得による支出が9億4千3百万円、投資有価証券の取得による支出が13億1百万円それぞれあったことによるものであります。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、83億7千5百万円の資金の獲得(前年同期は42億7千9百万円の資金の使用)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億9千2百万円の資金の使用(前年同期は17億3千8百万円の資金の使用)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が39億3千5百万円、配当金の支払額が17億2千5百万円それぞれあったことによるものであります。
当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は次のとおりであります。
なお、当社グループは単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
ASIC事業において需要が堅調に推移した一方で、アミューズメント事業において需要が高水準ながらも前年同期比では減少となり、売上高は579億4千2百万円(前年同期比18.1%減)となりました。
当連結会計年度の売上原価は、464億9千8百万円となりました。売上の製品構成の変化等に伴い当連結会計年度の原価率は2.7ポイント好転の80.2%となった一方で、売上高の減少に伴い売上総利益は114億4千4百万円(前年同期比5.0%減)となりました。
販売費及び一般管理費は59億6千1百万円となり、前連結会計年度と比較して5千8百万円減少いたしました。この主な内訳は、給料、賞与引当金繰入額等の人件費が21億9千3百万円(同1.2%減)、研究開発費が20億4千5百万円(同3.7%増)となっております。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は54億8千3百万円(同9.1%減)となりました。
当社は連結売上高営業利益率を重要な指標と考えており、その動向を注視しております。当該指標等の5年間の推移は次のとおりであります。
(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。なお、第30期及び第31期は営業利益に代えてのれん等償却前営業利益を使用しております。
のれん等償却前営業利益: 営業利益+企業買収によるのれん及び無形固定資産の償却費
売上高営業利益率: 営業利益/売上高×100
売上高のれん等償却前営業利益率: のれん等償却前営業利益/売上高×100
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第32期の期首から適用しており、第32期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
営業外収益として受取利息が2億6千1百万円、受取配当金が1億8千7百万円、為替差益が2億5千2百万円それぞれ発生した一方で、持分法による投資損失が29億1千4百万円発生したこと等により、営業外収益及び営業外費用の差引額は20億2千6百万円の費用となりました。
また、特別利益としてSiTime Corporationの株式を一部売却したこと等により関係会社株式売却益が55億2千4百万円、持分変動利益が10億5千3百万円それぞれ発生した一方で、特別損失として投資有価証券評価損が8億8千7百万円、関係会社株式評価損が4億5千4百万円それぞれ発生したこと等により、特別利益及び特別損失の差引額は47億6千7百万円の利益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は82億2千3百万円(前年同期比19.9%減)となりました。
当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税の額が36億5千6百万円(前年同期比40.9%増)、法人税等調整額がプラス9千5百万円(前年同期はプラス5億9千万円)となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は44億8千6百万円(前年同期比36.7%減)となりました。
当社は自己資本当期純利益率を重要な指標と考えており、その動向を注視しております。当該指標の5年間の推移は次のとおりであります。
(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
自己資本当期純利益率: 親会社株主に帰属する当期純利益/期中平均自己資本×100
2.各指標は、連結ベースの財務数値により計算しております。
当連結会計年度末における総資産は1,266億1千万円(前連結会計年度末比375億8千9百万円の増加)となりました。流動資産は、現金及び預金、受取手形、売掛金及び契約資産、未収入金を中心に461億2千9百万円(同26億2千2百万円の減少)となりました。固定資産は、投資有価証券を中心に804億8千1百万円(同402億1千2百万円の増加)となりました。
当社グループの資産構成の特徴はその流動性の高さにあり、総資産の36.4%を流動資産が占めております。流動負債は86億1千2百万円(同52億8千9百万円の減少)となり、流動比率は535.6%となりました。流動資産から、棚卸資産34億4千3百万円を控除した資産の額は426億8千6百万円となっており、総資産の33.7%を占めております。このような資産構成は、当社グループが資金を長期に亘り固定化する生産設備等の資産を持たないファブレスメーカーとして事業を展開してきた結果であります。当社グループは、今後も流動性の向上と健全な資産構成のバランスシートの維持に努めてまいります。
当連結会計年度末の負債合計は239億3千7百万円(同94億5千1百万円の増加)となりました。負債の主な内容は、LSI製品の製造委託先からの仕入等に対する仕入債務及び繰延税金負債であります。有利子負債の残高はありません。
純資産は1,026億7千3百万円(同281億3千8百万円の増加)となりました。
以上の結果、自己資本は1,024億8百万円となり、自己資本比率は80.9%(同2.8ポイントの下落)となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に適応できるよう健全で強靭な財務体質を維持してまいります。当社グループの安全性指標等の推移は次のとおりであります。
(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
流動比率: 流動資産/流動負債×100
自己資本比率: 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率: 株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数)/総資産
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社グループは、経常的な営業運転資金に充当するため、必要に応じて金融機関から資金を調達しております。営業運転資金は、新技術・新製品の研究開発費、売上原価、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであり、営業費用の主なものはLSI製品の製造委託費用であります。
当社グループは、その健全な資産構成と財務状況の維持に努めており、当社グループの成長に必要な資金を、保有する売掛債権の売却、銀行借入れ又は増資などにより、必要に応じて調達できるものと考えております。
当連結会計年度においては、関連会社であったSiTime Corporation株式の一部売却により70億3千1百万円の資金が獲得されております。これらの資金の一部は剰余金の配当、自己株式の取得等に活用されております。
なお、有利子負債は、当連結会計年度末の残高はございません。
当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の5年間の推移は下記のとおりであります。
(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
フリー・キャッシュ・フロー: 営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー
キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
4.第32期、第33期及び第34期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率については、有利子負債の残高がないため記載しておりません。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
貸倒引当金に関して、過去の貸倒実績率により算定した額のほか、個別に債権の回収可能性を見積もって計上いたします。
棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価よりも下落した場合に簿価の切下げを行います。
投資有価証券に関して、時価が著しく低下した場合には、当該投資有価証券は時価で連結貸借対照表に計上し、時価と簿価との差額はその期間の損失として認識いたします。適正な時価が容易に入手できない場合で、当該投資有価証券の実質価額が著しく低下している場合は、実質価額まで簿価の切下げを行います。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
有形固定資産、無形固定資産及び長期前払費用に関して、回収見込額が取得価額よりも下落した場合に簿価の切下げを行います。
工事契約に関して、工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に、その超過すると見込まれる額を計上いたします。
⑥ 繰延税金資産
繰延税金資産に関して、事業計画やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積って計上いたします。その見積りの変更により回収が見込めなくなった場合に繰延税金資産の取崩しを行います。
当社グループは、「独自のアナログ・デジタル技術をベースとしたシステムLSI及び当該製品を利用したソリューションを提供すること」を方針として掲げ、製品の差別化を実現する応用技術の研究開発活動に取り組んでおります。
半導体を必要とする技術革新の著しい市場において競争優位性を確保し維持するため、当社グループが保有するLSI開発の知識とアプリケーションの知識を活用し、顧客や市場の要求に応じた独創的なアルゴリズム(データの計算方法や処理方法)やアーキテクチャ(アルゴリズムを実現するためのソフトウェアやハードウェア構成)を開発し提供することで、製品の競争力と独自性の確保に努めております。
当社グループでは、従業員の過半数が研究開発に従事しており、当社グループの開発部門では、他社製品との差別化を図るアナログ・デジタル技術をベースとしたシステムLSIや、システムLSI向けIP(設計資産)などの研究開発に注力しております。
アナログ技術では、特に高速インターフェース関連の独自技術を保有しており、高耐圧技術と当社のコア技術である高速有線通信技術を組み合わせた産業向け低遅延電力線通信技術や、産業向けEthernet PHY(ネットワーク機器が電気信号をやり取りするための部品)など、将来のネットワーク社会を支えるインフラ向けの製品開発に取り組んでおります。また、高速インターフェース技術では、デジタル制御技術との組み合わせが必須でありますが、当社ではアナログとデジタルを融合した技術を確立しており、さらに当社独自のデジタルセキュリティ技術なども活用し、エレクトロニクス製品のデジタル化やIoT機器向け製品の開発に注力しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は、
〔知的財産の保護〕
当社グループは、事業競争力の源となる特許権等の工業所有権による知的財産の保護を重視しております。当連結会計年度末における工業所有権の所有状況並びに工業所有権のうち特許権の国別の所有状況は、次のとおりであります。
〔研究開発の状況〕
(1) アミューズメント事業
① ゲーム機向けゲームソフトウェア格納用LSI
ゲーム機向けの、大容量、低消費電力を実現したゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)を、引き続き開発いたしました。
② セキュリティ技術の開発
昨今、様々な分野における機器のデジタル化が進むにつれて、セキュリティ技術が幅広く使われております。プライバシーや機密情報の保護がますます重要となりセキュリティの重要性が高まる中、セキュリティを侵害する技術も進化しており、機器の開発においても新しいセキュリティ技術や対策技術の採用が求められております。このようなセキュリティを重視する顧客の製品競争力の維持・向上に貢献するため、当社では実用的な先進のセキュリティ技術や対策技術の研究開発を進めております。
③ メモリ制御技術の開発
不揮発性メモリの大容量化とコスト低減を実現するため、平面上にメモリセルを配置する従来の平面メモリから、複数の層で構成される3次元構造の3Dメモリが主流となっております。3Dメモリはその複雑な構造により平面メモリとは異なる特性を有しておりますが、当社では100層を超える3Dメモリの活用により、平面メモリに匹敵する信頼性を実現する技術開発を進めております。さらに、容量増加とコスト低減を実現しつつ高い信頼性が求められる顧客のニーズに対しても、実現を目指した取り組みを進めてまいります。
(2) ASIC事業
① アナログIPプラットフォームの開発
当社では、主に産業機器向けの顧客製品の小型化とコスト削減を実現するため、各種アナログマクロの開発プラットフォームを整備しております。IO-Link Transceiver IPに加えて、センサーインターフェースに必要なADC(アナログーデジタルコンバータ)、DAC(デジタル-アナログコンバータ)、Clock Generator、LED Driverなどの各種アナログマクロを保有しており、顧客の特定の要求に応じてアナログマクロをカスタマイズできる開発プラットフォームを構築しております。引き続き低コスト化や品質向上などの顧客ニーズに対応するためプラットフォームの機能向上を図っていきます。
② アナログ分野でのモデルベース開発
大規模ASIC製品に搭載するアナログ回路の設計においては、システム全体の要件を理解し、複雑なシステムレベルの要件をあらかじめ回路設計に組み込むことが有用です。そのため、当社ではシステムレベルの検証に有効なアナログ回路のビヘイビアモデルの開発を進め、これを活用することでアナログ回路の仕様妥当性を検証できる開発フローを構築しております。これにより、システムレベルの視点でアナログ実設計のトレードオフポイントを明確にし、確実に製品開発を進めることができます。引き続き、モデルベース開発の活用による開発の効率化及び品質向上を図っていきます。
③ 大規模LSI開発環境の整備
大規模なLSI開発では複数社で100名を超える多数のメンバーが参加するため、クラウド(AWS等)上でのLSI設計環境を整備し、ロケーションフリーでの開発を実施しております。最先端のネットワーク環境を活用することで、大規模化するLSI開発に迅速に対応しております。
(3) 通信事業
① Wi-Fi HaLow製品
Morse Micro PTY.LTD.(以下、Morse Micro社という)との戦略的パートナーシップを通じて、Morse Micro社のLSI製品を活かしたWi-Fi HaLowモジュールを開発いたしました。Wi-Fi HaLowは、高データレートでかつ長距離通信を可能とする技術であり、従来の技術では実現困難な領域に対応いたします。この技術は900MHz帯の電波を利用するため、各国の電波法に準拠したModule製品の開発に取り組んでおります。2023年度には日本の電波法に適合したモジュール製品を開発し、量産化いたしました。さらに、今後の成長が見込まれる北米市場向けの製品開発を進めております。Wi-Fi HaLowは、進化するIoT分野においてますます重要な技術となっております。当社は引き続き高い付加価値を持つ製品の開発に注力いたします。